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 16/17シーズンのコスチュームをランキング形式で紹介するベストコスチューム16/17。例年どおり、個人的に良いと思った現役選手たちの衣装を各カテゴリー別に1位から10位まで振り返っていきたいと思います。この記事ではアイスダンスのショートダンスのベスト10を書いていきます。
 その前に、コスチュームを選ぶ上でのルールをまとめると、


●16/17シーズンに着用された衣装が対象。
●グランプリシリーズ、欧州選手権、四大陸選手権、世界選手権、世界国別対抗戦に出場した選手が、該当する試合で着用した衣装のみ対象とする。
●各部門につき、各選手1着のみに限定。1つのプログラムで複数の衣装を使用している場合でも1着しか対象にならない。また、1人の選手が1シーズンで複数のプログラムを演じた場合でも1つの衣装しか対象にならない。
●16/17シーズンに着用している衣装でも、すでに昨シーズン以前に使用されたことのある衣装は対象外とする。



 という感じになります。これらのルールに基づいて、10着の衣装を選びました(アイスダンスやペアの場合は男女で1組なので、衣装ももちろん2着で1つという扱いです)。ではさっそく、アイスダンスショートダンス部門の1位から見ていきます。

*****

 アイスダンスショートダンス部門の1位は、日本の村元哉中&クリス・リード組の「レイ・チャールズ・メドレー」です。

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 ソウルの神様と呼ばれるレイ・チャールズの楽曲を組み合わせたメドレープログラム。明るく軽快なプログラムということで衣装もポップさを前面に押し出したデザインになっています。
 男女ともに基調となっている色はイエローと紫。女性の村元選手はホルターネック風のワンピースで、ボディの部分は濃いめの紫のベルベット風生地。胸元は白襟のようなデザインに小さなボタンが4つ並んでいます。スカートは透け感のある紫のチュールスカートの上にサテンのような艶のある素材の白いスカートを重ねていて、白いスカートは輪っかのような一風変わったイエローのドット模様となっています。ドット以外にもスカートの縁や首にかかったストラップ、腰を囲むベルト(背中側でリボンを結んだデザインになっている)がイエローとなっていて、アクセントをつけています。
 一方、男性のリード選手は白いシャツの上に、紫をベースにイエローの格子柄が入った五分袖のジャケットを着用。ネクタイはイエローにシルバーのラインストーンが施された作りで、ポケットにはイエローのチーフと、こちらもベースは紫ですがイエローをアクセント的に使ったコーディネートとなっています。
 紫とイエローという組み合わせは珍しい色づかいですが、プログラムのポップな雰囲気によく合っていますし、また、女性のワンピース姿も男性のジャケット姿もどこかレトロで古き良き時代を思い起こさせるデザインになっていて、レイ・チャールズというアメリカを代表する往年のスターの音楽にもピッタリ合っていると思いますね。


 2位はアルメニアのティナ・ガラベディアン&シモン・プルー=セネカル組の「Blues/Swing」です。

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 プログラムに関しては今季の課題であった「ブルース」と「スウィング」の表記があるのみで具体的な曲名はわからないのですが、前半はしっとりとした女性ボーカルによる上品な世界観、後半は同じく女性ボーカルですが軽快でリズミカルな曲調という構成のプログラムになっています。
 ということで後半の「スウィング」の軽快さよりも、前半の「ブルース」の落ち着いたイメージを意識したコスチュームになっていますね。男性はシンプルな黒のタキシード姿でクラシカルな紳士を演出。女性はラインストーンやビジューがふんだんにあしらわれた上半身と深いスリットが入った長めの群青色のスカートという個性的でありながらも気品のあるドレス姿。特に上半身はかなりキラキラとした一見派手なデザインですが、使う装飾の色をある程度絞って統一してあるので、そんなにごちゃごちゃした感じはせずゴージャスかつ洗練された印象を与える衣装になっていると思います。プログラムが醸し出すイメージよりは男女ともにクラシックな趣きが強いかなと思いますが、よく工夫された美しい衣装ですね。


 3位はロシアのヴィクトリア・シニツィナ&ニキータ・カツァラポフ組の「Love Creole/It Don't Mean A Thing」。

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 ジャズの大家デューク・エリントンの「Love Creole」とアメリカを代表するエンターテイナー、トニー・ベネットとレディー・ガガのデュエット曲「It Don't Mean A Thing」のメドレープログラム。全体的にしゃれた小気味の良い雰囲気の作品ですが、コスチュームもそれに合わせて比較的カジュアルなデザインになっています。
 男性は五分袖の白シャツに黒いベストというスマートながらも着崩した雰囲気のある着こなし。一方、女性はネイビーのワンピースですが、裾はゴールドなどさまざまな色が入り混じったフリンジっぽい作りになっていて、上半身から腰にかけてはシンプル、スカートはゴージャスというギャップのあるデザインが印象的で良いですね。プログラムの後半はトニー・ベネットの渋い歌声とレディー・ガガの華やかなソプラノのデュエットなので、そういったイメージにも合っている衣装だなと思います。


 4位はイタリアのアンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ組の「Cry For Me/Choo Choo Boogie」です。

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 クリント・イーストウッド監督作品『ジャージー・ボーイズ』の劇中曲「Cry For Me」による前半はしっとりとしながらも軽快さもあるバラード、後半はとにかくノリノリのブギウギというプログラム。
 女性のカッペリーニ選手は全身水玉のモノトーンの半袖ワンピースというポップないでたち。一見シンプルですが、ドットの大きさが部分部分で違いますし、裾の広がり方も絶妙で、よく考えられたコスチュームだと思います。また、男性のラノッテ選手は黒いインナーに黒いパンツ、赤いジャケットというコントラストがきれいなコーディネート。男女であまり共通点のないように見えるコスチュームですが、カッペリーニ選手が赤いイヤリングや赤いマニキュアでラノッテ選手の衣装に合わせているところもしっかり工夫していますし、男女で並んだ時に黒と白と赤というコントラストのハッキリとしたカラーコーディネーションがプログラムの雰囲気にも合っていて素敵ですね。


 5位はアメリカのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組の「That's Life」。

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 プログラムはフランク・シナトラが歌うスタンダードナンバー「That's Life」ですが、後半はそれをヒップホップ風にリミックスしたバージョンになっていて、ゆったりとした前半と急激に激しくなる後半とのギャップが魅力的な作品です。
 コスチュームは男性と女性とで少し趣の異なるものになっていて、男性は白シャツに黒いジャケットとパンツという非常にシンプルなスタイル。一方で女性は胸元が大胆に開いたデザインのノースリーブのトップスで、その下にはランジェリーがのぞくような作りになっており、また、背中側は全てシースルー生地になっているので、さらにセクシーさを感じさせます。しかしトップスの襟元はスーツの襟のような形になっていて男性の衣装との統一感もあり、ボトムスはスカートではなく脚を全て覆うパンツルックということもあり、セクシーだけれども羽目を外し過ぎない品の良さもちゃんとある衣装になっています。女性の衣装は中国杯までは胸元も覆うようなデザインの衣装を着ていてそちらも素敵だったのですが、よりセクシーなこちらを今回は選びました。
 男性のオーソドックスな衣装でプログラム前半のフランク・シナトラのパートを、女性の個性的な衣装でプログラム後半のヒップホップのパートを表しているようにも思えて、プログラムの持つ二つのイメージを男女それぞれが表現するという考えられたコーディネートになっていますね。


 6位はカナダのアレクサンドラ・ポール&ミッチェル・イスラム組の「Big Spender/シング・シング・シング」。

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 ムーディーな女性ボーカルが特徴的なミュージカルナンバー「Big Spender」と、スウィング・ジャズの名曲「シング・シング・シング」を組み合わせたプログラム。
 衣装は男女ともに黒を基調としたシックなのものとなっています。男性は白シャツにグレーのストライプが入った黒いベストとパンツ、白い水玉のネクタイというコーディネートで、シンプルではありますが単に黒一色ではなく、ストライプやドットといった模様の入ったスタイルにすることでより軽快さやポップさも醸し出していて、スウィング・ジャズを使ったノリの良いプログラムの世界観に合わせています。女性は胸元の大きく開いたホルターネック風のワンピース姿で、黒いラインが細かく交差するような素材感が特徴的。スカートの裾はフリンジになっていて、全体的に古き良きアメリカの踊り子が着ていたような衣装を想起させるデザインとなっています。また、シーズン初戦のUSインターナショナルクラシックでは女性のポール選手は髪をポニーテールにしていましたが、写真のスケートカナダでは髪をまとめて、さらにシルバーの髪飾りをつけたことによって、よりオールドアメリカのクラシックな雰囲気が強調されていて、プログラムのイメージをしっかり体現していると思いますね。


 7位はフランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組の「Bittersweet/Diga Diga Doo」。

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 女性ボーカルによるロマンティックな前半と、トランペットの音色が特徴的なリズミカルな後半という構成のプログラム。シーズンを通して男女ともに2着の衣装を使用していましたが、個人的に好きなシーズン後半の衣装を選ばせていただきました。
 女性のパパダキス選手は胸元が大きく開いたワンピースを着氷。ベースとなるネイビーのシースルー生地の上にボタニカル柄っぽい金色の刺繍を施したようなデザインで、スカートは一切模様や装飾のないシンプルなものとなっています。金色の刺繍によってゴージャスな印象もありますが、細めのストラップや透け感のある生地など全体的に華奢な印象もあり、可憐さと華やかさのバランスが取れたコスチュームだと思います。男性はこちらも胸元をはだけた白シャツの上にグレーの五分袖ジャケットとパンツといういでたちですが、ジャケットの襟と袖は女性のワンピースと同じような金色の刺繍がなされていて、地味すぎず派手すぎずというセンスの良さを感じさせますね。


 8位はスペインのオリヴィア・スマート&アドリア・ディアス組の「Proud Mary」。

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 ティナ・ターナーの楽曲を使用したパワフルでソウルフルなプログラム。ということで衣装もわりときらびやかなものになっています。
 女性はシルバーのノースリーブドレス。スカートはフリンジになっていて色づかいも伴ってゴージャスな印象を与えますが、上半身はシルバー一色ではなく肌色に合わせたベージュとの縞模様っぽくなっているので、見た目にも変化がありますね。一方で男性はグレーのシャツに黒いパンツというごくごくスタンダードなスタイルで、女性の引き立て役という感じ。
 カップルとして見ると、色的にはシルバー、グレー、黒というモノトーンに近い組み合わせで必ずしもカラフルではありませんが、ブロンドのボブヘアにシルバーのフリンジワンピースという女性のいでたちがとても華があり、また、プログラムの雰囲気ともよく合っていて、色の印象以上に華やかさを感じさせる衣装だなと思います。


 9位はイギリスのライラ・フィアー&ルイス・ギブソン組の「Save My Soul/Diga Diga Doo」。

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 アメリカのスウィング・バンド“ビッグ・バッド・ヴードゥー・ダディ”の楽曲2曲のメドレープログラム。古き良きアメリカ音楽をリバイバルしたような音楽が特徴的なバンドの楽曲とあって、どこか懐かしい雰囲気も漂わせるプログラムになっています。
 男性のギブソン選手は五分袖の白シャツに黒いベスト、黒いパンツというオーソドックススタイル。一方、女性のフィアー選手は鮮やかなライトブルーのホルターネックワンピース。胸元にふんだんにビジューが施されていてとても華やかな印象を与えます。また、上半身は流れるような曲線が縦に走るデザインともなっていて、シンプルな中にも工夫が感じられます。
 こちらも上述したスマート&ディアス組同様に、男性は地味目に、女性は比較的華やかにという組み合わせで、男性が女性を際立たせる二人のコーディネートですね。


 10位はロシアのエレーナ・イリニフ&ルスラン・ジガンシン組の「Big Bad Love/シング・シング・シング」です。

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 レイ・チャールズとダイアナ・ロスのデュエット曲「Big Bad Love」と超定番の「シング・シング・シング」を組み合わせたプログラムですが、コスチュームはスウィングのノリノリのイメージよりも、前半のブルースのしっとりとした世界観の方をイメージしたデザインになっていますね。
 女性のイリニフ選手はノースリーブのスカート長めのドレス。シックなネイビーですが、上半身を中心に施された細かなビジューや、ネックレス風の装飾、腰のコサージュ風の装飾、頭の髪飾りなど、全体的に装飾多めになっているのでわりと華やかな印象です。男性の方は白いシャツに黒い蝶ネクタイ、黒いスーツという正統派のクラシカルスタイルですが、襟には女性同様にキラキラとしたビジューがあしらわれているのでこちらも華のある雰囲気。ブルース&スウィングというよりはクラシック音楽のプログラムで使用してもおかしくない衣装ですが、あえてこういったプログラムでクラシカルなコスチュームを用いることで、上品さを前面に押し出していて良いですね。



 ベストコスチューム16/17のアイスダンスショートダンス部門は以上です。フリーダンス部門に続きます。


:記事冒頭の国際スケート連盟のロゴは、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、村元&リード組の写真は、デイリースポーツのニュースサイト内の写真特集記事から、ガラベディアン&プルー=セネカル組の写真、シニツィナ&カツァラポフ組の写真、カッペリーニ&ラノッテ組の写真、シブタニ&シブタニ組の写真、ポール&イスラム組の写真、スマート&ディアス組の写真、イリニフ&ジガンシン組の写真は、アイスダンス情報サイト「ice-dance.com」から、パパダキス&シゼロン組の写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、フィアー&ギブソン組の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。

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# by hitsujigusa | 2017-05-25 17:23 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

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 世界国別対抗戦(ワールド・チーム・トロフィー)2017、女子フリーとペアフリーについてお伝えします。なお、この大会のルール、システムについては、こちらの記事をご参考下さい。

ISU World Team Trophy 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 まずは女子です。
 女子フリーを制したのは世界女王、ロシアのエフゲニア・メドベデワ選手。

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 まずは得点源となる3フリップ+3トゥループから、これをいつもどおり手を上げてクリーンに跳び切り2.1点の高い加点を得ます。続く3ルッツも危なげなく下りて前半を終えます。後半はまず3ループ、3フリップを立て続けに成功させどちらも2点前後の加点を得ると、2アクセルからの3連続ジャンプもきれいに着氷。そして鍵となる3サルコウ+3トゥループも確実に成功。最後の2アクセルも難なく決め、ステップシークエンス、スピンも全てレベル4と非の打ちどころのない完璧な演技で今シーズンを締めくくりました。得点は先日の世界選手権でマークしたばかりの世界最高を約6点塗り替える160.46点を叩き出し、キス&クライでメドベデワ選手はロシアチームの仲間たちとともに歓声を上げました。
 150点でも充分にハイスコアにもかかわらず、160点という想像を絶するような数字で女子フィギュア界の新たな扉を開いたメドベデワ選手。技術点も全てのエレメンツに対して全ジャッジが3もしく2という驚くべき評価でもの凄い得点となりましたが、演技構成点ではパフォーマンスの項目で全ジャッジが10点満点という史上初めての快挙を成し遂げました。現在の採点システムにおいてはもうこれ以上伸ばしようがないというくらいの得点ですが、さらに伸ばすとすれば技術点ではGOEの加点3をもっと増やすことができるでしょうし、演技構成点も全ての項目において10点満点を目指すというメドベデワ選手にしかありえない領域に入っていくのかなと思いますね。この演技内容と得点を持って、メドベデワ選手がどんなオリンピックシーズンを送るのか、今から楽しみでなりません。


 2位となったのは四大陸女王、日本の三原舞依選手です。

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 冒頭は得点源の3ルッツ+3トゥループ、いつもより詰まった着氷になりましたが乱れなく下りて加点を獲得。続く3フリップ、2アクセルはスムーズにクリーンに成功させます。レベル4のステップシークエンスとスピンを挟んで後半、最初の2アクセル+3トゥループをしっかり下りると、3ルッツからの3連続コンビネーションもきっちり着氷。終盤の3ループ、3サルコウも全く問題なく、最後まで衰え知らずの勢いに乗った滑りで「シンデレラ」を演じ切りました。得点は自己ベストを約7点更新する146.17点というハイスコアをマークしました。
 ネーベルホルン杯の優勝から始まったまさに“シンデレラ”のようなシーズンを最後まで笑顔で滑り切った三原選手。日本女子歴代最高となる146.17という得点は、日本開催の試合ということもありますし、元々国別対抗戦はシーズン最終戦とあって点が出やすい試合なので、そういったボーナス的な意味合いが強いのかなと思います。ですが、このスコアが公式のパーソナルベストであることは間違いないですし、今後はこの得点を目安に結果を求められていくことになるでしょうから、シニア2季目となる来季は今季以上に難しいシーズンになるかもしれません。その中でも今季と同じようにスケートができる喜びを大切にして、三原選手らしい演技でさらなる飛躍を目指してほしいですね。


 3位は同じく日本の樋口新葉選手です。

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 まずは得意の大技3ルッツ+3トゥループを危なげなくクリーンに着氷させて1.4点の高加点を獲得すると、続く3ループ、3サルコウも余裕を持った着氷で両方とも加点1.4点の高評価を得て最高の前半とします。後半はまず2アクセルを難なく着氷すると、2つ目の3ルッツ+3トゥループも完璧に成功。残りの3フリップ、2アクセル+2トゥループ+2ループも安定してこなし、フィニッシュした樋口選手はショートに続きガッツポーズで喜びを露わにしました。得点は自己ベストを何と15点以上更新する145.30点を叩き出し3位に入りました。
 全てのジャンプが背中に羽が生えているかのように軽やかで見ていて安心感のある演技でしたね。まだ130点も出したことのなかった樋口選手が一気に145点というのはさすがに驚きましたが、ジャンプに関してはジュニア時代からロシア女子を凌ぐくらいのポテンシャルの高さは示していた選手なので、シーズンの最後にしてようやく実を結んだのかなと思います。表現面に関しても、ジュニア時代に得意にしていたアップテンポなプログラムとはあえてイメージの異なるプログラムに挑んだことで産みの苦しみみたいなものもあったのかなと想像しますが、最後にはショートもフリーもしっかり自分のものにしましたね。シニア1季目に新たな挑戦をしたことで今後演技のバリエーションも増えるでしょうし、今季をオリンピック出場に向けて力を蓄えるシーズンと考えるならば、好いシーズンの送り方ができたんじゃないかなと思います。来季は今季よりも笑顔で終われる試合が一つでも増えることを願っています。


 4位は世界選手権2017の銅メダリスト、カナダのガブリエル・デールマン選手です。

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 冒頭の3トゥループ+3トゥループはショート同様2.1点の加点。続く3ルッツも驚異的な跳躍で1.3点の加点を得ますが、次の3フリップは踏み切りのエッジが不正確とされ加点はあまり伸びず。後半はまず3ルッツからの3連続ジャンプをきっちり成功させると、続く3ループは若干着氷が乱れたものの、その後のジャンプは全てクリーンに跳び切り、142.41点と自己ベストを約1点更新しました。
 世界選手権の疲れを感じさせない相変わらずのダイナミックなジャンプとエネルギッシュな演技でしたね。デールマン選手にとってはスケート人生の変わり目となったであろう今シーズン。ジャンプの安定感が増したのはもちろんですが、表現面でも力強さだけではない女性的なしなやかさや優雅さがプラスされて、そうしたプログラムとのハマり具合も演技構成点の評価の高まりに寄与したのかなと思いますね。今季のような好調さを来季も持続し、さらにプラスアルファの進化を見せられればオリンピックのメダルも夢ではないのではないでしょうか。


 5位はロシアのエレーナ・ラディオノワ選手です。

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 冒頭は大技3ルッツ+3トゥループ、これをしっかり回り切って下り1.4点の加点を獲得します。続く3フリップも踏み切りのエッジ、着氷ともにクリーンに成功。スピンやステップシークエンスを挟み、後半最初は3ルッツでしたが回転が足りず着氷でもよろめきます。しかし直後の3+1+3の難しい3連続ジャンプはパーフェクトに成功。続く2アクセルは再び回転不足で着氷でもバランスを崩します。残りの2つのジャンプは着氷でこらえながらも大きなミスなくこなし、演技後は少し疲れた表情を見せました。得点は自己ベストに約2点と迫る137.08点をマークしました。
 久しぶりの実戦だったためか演技後半は疲労が垣間見え、細かなジャンプミスが重なってしまいました。それでも情熱的な演技力はさすがで、18歳とは思えない重厚さや風格を感じましたね。今シーズンは思ったような成績が残せなかったラディオノワ選手ですが、メドベデワ選手を除けばロシア女子勢の実力は横一線で、誰が2番手、3番手と断言できないような状況なので、ラディオノワ選手もさらにジャンプを確実なものにできれば今季の苦境を跳ね返せるのではないかと思います。


 6位となったのはアメリカのアシュリー・ワグナー選手です。

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 まずは得意の2アクセルをさらりとこなして始まると、ショートでは回転不足となった3フリップ+3トゥループも回り切って着氷。続く2アクセル+2トゥループはセカンドジャンプでこらえつつも成功させます。後半は得点源となる3+1+3に挑みましたが、1つ目と3つ目がどちらもアンダーローテーション(軽度の回転不足)の判定。次の3フリップ、3ループは危なげなく着氷し1点前後の加点を得ますが、最後の3ルッツは踏み切りのエッジエラーを取られて減点となります。最後の2つのスピンはレベル4でまとめ、フィニッシュしたワグナー選手は納得したように笑顔で何度か頷きました。得点は133.26点でシーズンベストを更新しました。
 細かなジャンプミスはあり会心の演技とはなりませんでしたが、経験を積み重ねてきたからこその深みのある演技は若い選手たちには醸し出せない魅力に満ちていてひときわ印象に残りましたね。ワグナー選手にとって競技生活の集大成になるであろう来シーズン、もちろんオリンピックのメダルというのは目標としてあるかもしれませんが、どの国も10代の選手たちが若い勢いで躍進している時代だからこそ、ベテランのワグナー選手にしかできない円熟した表現で存在感を示してほしいなと思いますし、ジャンプ以外のフィギュアスケートの魅力というのをワグナー選手らしい演技で伝えるシーズンにしてほしいなと思いますね。


 ということで、女子フリーは以下の順位となっています。

《女子フリー》

1位:エフゲニア・メドベデワ(ロシア)、12ポイント
2位:三原舞依(日本)、11ポイント
3位;樋口新葉(日本)、10ポイント
4位:ガブリエル・デールマン(カナダ)、9ポイント
5位:エレーナ・ラディオノワ(ロシア)、8ポイント
6位:アシュリー・ワグナー(アメリカ)、7ポイント
7位:李子君(中国)、6ポイント
8位:李香擬(中国)5ポイント
9位:カレン・チェン(アメリカ)、4ポイント
10位:ロリーヌ・ルカヴェリエ(フランス)、3ポイント
11位:アレーヌ・シャルトラン(カナダ)、2ポイント
12位:マエ=ベレニス・メイテ(フランス)、1ポイント




 ここからはペアフリーです。
 ペアフリーでトップに立ったのはショートでも1位だったフランスのヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ組です。冒頭のツイスト、3トゥループ+2トゥループ+2トゥループのジャンプを高いクオリティーでまとめると、大技のスロー4サルコウは両足着氷になったものの回転は認定。その後も3サルコウやスロー3フリップを次々とクリーンに決め、リフトやスピンなども全てレベル4を揃え、146.87点とパーソナルベストを約1点更新しました。
 2位はGPファイナル王者かつ欧州王者、ロシアのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組。序盤の3サルコウが2回転になるミスはありましたが、そのほかのエレメンツはほぼレベル4に加えてほぼ1点以上の加点という質の高さを見せつけ、140点台に乗せました。
 3位は中国の彭程(ペン・チェン)&金楊(ジン・ヤン)組。冒頭の2アクセルで転倒する失敗から始まりましたが、その後は大きなミスなく手堅く演技をまとめ、自己ベストに約3点と迫るスコアをマークしました。
 4位はカナダのカーステン・ムーア=タワーズ&マイケル・マリナロ組。3ツイストがレベル2になる取りこぼしはありましたが、全体的には目立ったミスなく滑り切り、130.09点と自己ベストを更新しました。
 5位はアメリカのアシュリー・ケイン&ティモシー・ルデュク組。序盤から前半は細かなミスがありながらもまずまずのエレメンツをこなしていきましたが、中盤のつなぎの部分で氷にエッジが引っかかり女性がバランスを崩し、それにぶつかるような形で男性も倒れ、男女ともに激しく転倒してしまうというアクシデントが発生。しかしその後は気持ちを切り替えて丁寧に滑り切りました。ただ、複数のミスが響き得点を伸ばすことはできませんでした。
 6位は日本の須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組です。

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 冒頭の3ツイストは少しスムーズさを欠いてレベル2にとどまりGOEでもマイナスの評価。続く3サルコウは女性の須藤選手の回転が抜けて1サルコウとなります。直後のスロー3ループはクリーンに成功。波に乗りたいところでしたが、中盤のソロジャンプでも須藤選手にミスが出てしまいます。その後も細かく減点を取られるエレメンツがいくつかあり、97.57点と自己ベストから11点ほど低い得点にとどまりました。
 世界選手権では披露できなかったフリーを日本の観客の前でノーミスでという思いはあったと思いますが、ショートから須藤選手がジャンプに苦労していてなかなか噛み合わなかったのかなという印象ですね。須藤選手にとっては初めての国別対抗戦ということで調整の仕方も難しかったかもしれませんが、こうした試合ごとのバラつきが来季はさらに減っていくと演技構成点の得点アップも狙えるでしょうから期待したいですし、昨季と比べても二人のユニゾン、調和というのは間違いなく成長していると感じるので、来季をまた楽しみにしたいですね。


 ペアフリーの順位は以下のようになりました。

《ペアフリー》

1位:ヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ組(フランス)、12ポイント
2位:エフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組(ロシア)、11ポイント
3位:彭程&金楊組(中国)、10ポイント
4位:カーステン・ムーア=タワーズ&マイケル・マリナロ組(カナダ)、9ポイント
5位:アシュリー・ケイン&ティモシー・ルデュク組(アメリカ)、8ポイント
6位:須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組(日本)、7ポイント




 さて、これで全ての競技が終了しました。ということで、総合順位は以下の通りです。

《総合順位》

1位:日本、109ポイント
2位:ロシア、105ポイント
3位:アメリカ、97ポイント
4位:カナダ、87ポイント
5位:中国、80ポイント
6位:フランス、62ポイント




 2012年以来の優勝を果たしたのは日本チームです!

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 最後の実施となった女子フリーまでどう転ぶかわからない展開でしたが、見事に金メダルを勝ち取ってくれましたね。予想以上の活躍を見せてくれたのは初出場の女子二人で、三原、樋口の両選手ともにショート、フリー合わせてミスらしいミスが一つもなく、ベストの演技をしてくれたというのは来季に向けて明るい材料になったのではないでしょうか。日本女子は浅田真央さん、村上佳菜子さんという日本を引っ張ってきたベテラン選手が引退を表明しましたので、それと入れ替わるように勢いのある10代の選手が頭角を現してきたというのは嬉しい限りですね。
 一方で男子は羽生選手の思いがけないSPこそありましたが、フリーは実力どおりのワンツーフィニッシュ。羽生選手が普通にショートをやれていれば日本チームの優勝はもう少し余裕のあるものになっていたと思いますので、羽生選手の出遅れによって優勝争いが接戦となってより展開がおもしろくなったという意味では、今思うとそれはそれで良かったのかもしれません。


 銀メダルを獲得したのはロシアチームです。

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 日本とは4点差で惜しくも初優勝を逃したロシア。女子はメドベデワ選手は言わずもがな、ラディオノワ選手もまずまずベストに近い力を発揮したと思うのですが、男子はコリヤダ選手はショート、フリーともに上位に食い込んで健闘したものの、コフトゥン選手の方が本調子ではなく得点を稼げませんでしたね。ペア、アイスダンスも実力を考えればもう少し上の順位も狙えたかなという感じもするので、女子以外は全体的に本来取れるポイントを取りこぼしてしまったような印象を受けました。


 銅メダルはアメリカチーム。

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 アメリカは男子が二人とも安定していてチームのポイントリーダーになった感じですね。女子はワグナー選手はしっかりショートもフリーも上位をキープしましたが、全米女王として期待されたカレン・チェン選手は初出場というのも影響したのか中位から下位にとどまりました。ペアもアイスダンスもほぼ予想されたとおりの順位だったので、チェン選手の不振だけが残念だったかなと思います。



 ということで世界国別対抗戦の記事はこれで終了とします。
 女子を振り返ると、メドベデワ選手の世界新のみならず、三原選手、樋口選手とフリー世界歴代4位、5位という目を見張るようなハイスコア連発で、日本開催かつシーズン最終戦といえども、さすがにちょっと大盤振る舞いしすぎ感は否めませんでしたが、それはともかくとして、メドベデワ選手のフリーの演技構成点で初の10点満点が出されたのを見ると、この採点システムの限界が少し見えたというか、行き着くところまで行き着いたのかなという感じはしましたね。将来的な採点システムの根本的な変更も国際スケート連盟で検討され始めているようですし、男子も女子もペアもアイスダンスも年々得点がインフレしているのは間違いないので、何かをどこかの段階で大きく変えなければいけないというのは致し方ないのかなと感じますね。
 ペアはジェームズ&シプレ組がショート、フリーともに1位という完全制覇で、少し予想外ではありましたがこの結果によって来季のペアの勢力図がさらに掻き回されることになればおもしろいなと思いますね。
 選手の皆様には最後まで全力で演技する姿を見せていただいて本当に感謝ですね。来季は4年に1度のオリンピックシーズン。全ての選手にとって五輪シーズンが幸い多きものとなることを祈っています。では。


:メダリスト3チームの集合写真はスケート情報サイト「icenetwork」から、メドベデワ選手の写真、三原選手の写真、樋口選手の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、デールマン選手の写真、ワグナー選手の写真、須藤&ブードロー=オデ組の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、ラディオノワ選手の写真は、アイスダンス情報サイト「ice-dance.com」から、日本チームの写真は、ジャパンタイムズのニュースサイトが2017年4月22日に配信した記事「Japan completes wire-to-wire lead to capture second World Team Trophy title」から、ロシアチームの写真、アメリカチームの写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
世界国別対抗戦2017―日本、3大会ぶり2度目の優勝(女子SP&アイスダンスSD) 2017年4月24日
世界国別対抗戦2017―日本、3大会ぶり2度目の優勝(男子SP&ペアSP) 2017年4月26日
世界国別対抗戦2017―日本、3大会ぶり2度目の優勝(男子フリー&アイスダンスFD) 2017年4月27日

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# by hitsujigusa | 2017-04-29 01:32 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 前記事、前々記事に続き、世界国別対抗戦(ワールド・チーム・トロフィー)2017の内容、結果について書いていきます。今回は男子フリーとアイスダンスフリーダンスです。この大会のルールやシステムについてはこちらの記事をご覧ください。

ISU World Team Trophy 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 まずはさっそく男子から。
 男子フリーで1位となったのは日本の羽生結弦選手です。

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 まずはショートで失敗した4ループ、これを今度は完璧に決めます。続いて4サルコウはパンクして1回転に。続く3フリップは難なく下りてここから後半、鍵となる4サルコウ+3トゥループをクリーンに着氷させると、4トゥループ、3アクセル+3トゥループもきれいに成功。そして初の試みとなる5本目の4回転、4トゥループ+1ループ+3サルコウは最後のジャンプの着氷で若干乱れたものの4トゥループ自体は成功。最後に組み込んだ2本目の3アクセルは珍しく1回転となりますが、初めての構成に挑んだ羽生選手はフィニッシュすると穏やかな笑みを浮かべました。得点は200.49点で1位となり、ショートの7位から挽回しました。
 2月の四大陸選手権では演技途中にプランを変更しての4回転5本というのはありましたが、今回は演技前から5本跳ぶことを決めて臨んだ初めての挑戦。結果的には前半の4サルコウが1回転になったことによって自身初の4回転5本成功はなりませんでしたが、その一方で後半に4回転3本という世界でも史上初の快挙を達成させ、また新たなバリエーションを手にしました。ただ、羽生選手自身は現時点では来季は今季の構成を大きく変えるつもりはないとのことで、現在の4回転4本をベースに完成度を高めて、5本の4回転はあくまでオプションとして考える方向で行くようですね。また、フリー後にはエキシビションの練習で4ルッツを着氷する姿も見せていて新技にも期待がかかりますが、大事なオリンピックシーズンということを考えるとよっぽど自信がない限りプログラムに取り入れることはないのかなと思いますね。個人的には来季の羽生選手にはジャンプを全て完璧に下りるだけではなく、ステップや技と技のあいだのつなぎ、プログラム全体の緻密さや完成度も期待したいですし、そのためには今と同じ構成をさらに極めていくことで体になじんで余裕も生まれてくると思うので、ジャンプはもちろんのこと、それ以外の部分でももっと魅せる演技、プログラムを来季は楽しみにしたいですね。


 2位となったのはSP1位の宇野昌磨選手です。

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 自身初となる4フリップ2本の構成で挑んだ宇野選手。まずは今季後半から組み込んでいる4ループ、これをクリーンに下りて2.29点の加点を得ます。続く4フリップは回転は充分でしたが着氷が乱れ減点となります。直後の3ルッツは回転と着氷は問題なかったものの踏み切りのエッジエラーでこちらも減点。スピンとステップシークエンスを挟んで後半、最初の3アクセル+3トゥループは危なげなく成功で2.86点という極めて高い加点。続いて初挑戦の2本目の4フリップでしたが、ダウングレード(大幅な回転不足)で転倒となり予定していたコンビネーションにはできず。しかしその後は4トゥループ、3アクセル+1ループ+3フリップ、3サルコウと全てのジャンプをクリーンにこなし、しっかり立て直して演技を終えました。得点は198.49点で2位となりました。
 4フリップを2本跳ぶというチャレンジは残念ながら不首尾に終わりましたが、4フリップ自体はすっかり自分のものにしているジャンプなので、オフシーズンの練習次第でこの構成も思ったより早く安定するんじゃないかなという気がしますね。何といっても4フリップにしても4ループにしても武器になったのはこの1年のあいだのことですから、宇野選手の習得と上達の早さを考えると楽しみですね。また4ルッツや4サルコウといった新たな4回転も練習中で、現時点ではまだ確率は低いようですが、“攻める”を常にテーマに掲げている宇野選手なので、オリンピックシーズンといえども守りに入らず新しいことを試していく可能性もあるのかなと想像します。あとは攻めすぎて怪我しないかが心配ですが、そのあたりの冷静さは若いわりにしっかり持ち合わせている選手だと思いますし、今大会中のインタビューでは「世界選手権自体はあまり疲れなかった」とか「もうちょっと試合が多くてもいい」と語っているくらいフィジカル的にも強靭な選手なので、さっそくゴールデンウィークにはアイスショー出演が待ち受けているなどまだまだ過密日程が続きますが、練習と休息のバランスをうまく取って、来シーズンも宇野選手らしく攻め続けてほしいですね。


 3位に入ったのは元世界王者、カナダのパトリック・チャン選手です。

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 まずは得意の4トゥループ+3トゥループをきっちり決めて加点2.71点を獲得。さらに今季からの新技4サルコウもクリーンに着氷させます。続いて鬼門の3アクセルでしたがわずかな乱れにとどめます。そして後半はまず4トゥループ、これも着氷で若干の乱れ。直後の3アクセルからのコンビネーションは1アクセル+2トゥループに。しかしその後のジャンプは全て難なく下り、リズムを大きく崩すことなく演技をまとめ、190.74点をマークしました。
 今季から挑戦している4トゥループ2本、4サルコウ1本、3アクセル2本という構成ですが、シーズン最終戦にしてまとまった形が見えてきたのかなという感じですね。シーズン序盤はなかなか決まらなかった4サルコウも徐々に安定してきましたし、3アクセルも以前よりはミスが少なくなってきている印象があるので、重要な来季に向けてこの構成をベースにさらに完成度が高まっていくと、元々演技構成点はピカイチなので楽しみだなと思います。来シーズンはチャン選手にとってスケート人生の集大成になるでしょうから、演技もプログラムもチャン選手らしい、チャン選手にしかできないフィギュアスケートの魅力を詰め込んだ作品を期待したいですね。


 4位はアメリカの新星ネイサン・チェン選手です。

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 ショート同様に最高難度の4ルッツは回避し、冒頭は4フリップの連続ジャンプから幕を開け、セカンドジャンプは2回転となったものの確実に成功させます。続く2本目の4フリップは着氷で大きくバランスを崩します。さらに4サルコウは2回転にとミスが相次ぎますが、4トゥループからの3連続ジャンプはクリーンに着氷。後半は5本目の4回転となる4トゥループをまず成功させると、苦手の3アクセルもふんばって着氷。残りのジャンプは問題なく予定どおりに下り、最後まで若さ溢れるエネルギッシュな演技を披露しました。得点は185.24点で4位となりました。
 足首を負傷している中での試合となったチェン選手でしたが、そうした不具合をほとんど感じさせない力強いパフォーマンスでした。大きなミスとしては4サルコウのパンクくらいで、4本の4回転を着氷させる安定感はやはりさすがでしたね。不完全燃焼に終わった世界選手権からしっかり切り替えて集中し直せていて、ジュニアとは違うシニアならではの日程だったり、短期間でのメンタルコントロールの仕方だったり、五輪シーズンに向けて貴重な収穫が得られたのではないかと思います。来季チェン選手がどんなジャンプ構成で臨むのかはわかりませんが、何といってもまだまだ若いので攻めてほしいと思いますし、シニアデビューシーズンとなった今季の経緯を見ると昨シーズンの宇野選手の状況と似ているので、シニア2季目に大飛躍した宇野選手同様、今季得たものを来季にさらに昇華させられれば今季以上に強いチェン選手の姿が見られるのではないかという気もしますね。


 5位はロシアのエース、ミハイル・コリヤダ選手です。

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 冒頭は今季からチャレンジしている大技4ルッツ、回転は充分でしたが転倒し初成功はならず。しかし直後の4トゥループはクリーンに跳び切ってすぐに立て直します。さらに3アクセル+2トゥループ、3ルッツ+2トゥループと立て続けに成功させ、上々の前半とします。後半は最初の3アクセルを決めると、得点源となる3+3もクリーンに着氷。その後のジャンプもさらりとこなし、スピン、ステップシークエンスも全てレベル4でまとめ、フィニッシュしたコリヤダ選手は満面に笑みを浮かべました。得点は184.04点で自己ベストを更新し、有終の美でシーズンを締めくくりました。
 ショート、フリーともに自己ベストを更新し、今回出場した男子選手の中でもひときわ輝きを放ったコリヤダ選手。4ルッツの失敗こそありましたが、その後の切り替えは見事で、心身ともに充実していることをうかがわせるパフォーマンスでしたね。現時点で完全に自分のものにしている4回転は4トゥループだけで、羽生選手や宇野選手らトップグループとはまだ基礎点での差がありますが、4ルッツが確実に計算できる武器となれば一気に躍進して台風の目的な存在となる可能性も秘めていると思いますし、スピンやステップもしっかりレベルが取れてしかも加点も稼げるので、今以上に取りこぼしの少ない選手となればおもしろいなと感じますね。ロシアのエースとしてコリヤダ選手が来季どんな活躍を見せるのか、楽しみにしたいですね。


 6位となったのはアメリカの実力者ジェイソン・ブラウン選手です。

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 4回転は外し確実な構成で臨んだブラウン選手。まずは得点源の3アクセル+3トゥループをパーフェクトに決めて2点の加点。続いて2アクセルをこなし、前半のジャンプをきっちりまとめます。後半に6つのジャンプ要素を固め、まずは単独の3アクセルをクリーンに成功。3ルッツ、3+2、2アクセルと危なげなくクリアし、3ループはタイミングが合わなかったのかパンクし1ループになりましたが、最後の3+1+3はスムーズな流れできれいに成功。終始丁寧かつ繊細に演じ切り、自己ベストに迫る179.35点で6位に入りました。
 世界選手権に引き続き、4回転はほぼなしという構成ながらも唯一無二の表現力で観客を引き込んだブラウン選手。今大会あえて4回転に挑まなかったのは、シーズン最終戦だからこそ挑戦してミスを含んだ演技にするよりも自分らしい演技で締めくくりたいと思ったのかもしれませんね。来シーズンのブラウン選手がどこまで上位に食い込んでいくのか、それは4回転次第になりそうですが、4回転があってもなくてもブラウン選手らしい演技で観客を楽しませてほしいなと思います。


 男子フリーは以下のような順位と獲得ポイントになりました。

《男子フリー》

1位:羽生結弦(日本)、12ポイント
2位:宇野昌磨(日本)、11ポイント
3位:パトリック・チャン(カナダ)、10ポイント
4位:ネイサン・チェン(アメリカ)、9ポイント
5位:ミハイル・コリヤダ(ロシア)、8ポイント
6位:ジェイソン・ブラウン(アメリカ)、7ポイント
7位:金博洋(中国)、6ポイント
8位:シャフィク・ベセギエ(フランス)、5ポイント
9位:ケヴィン・レイノルズ(カナダ)、4ポイント
10位:マキシム・コフトゥン(ロシア)、3ポイント
11位:ケヴィン・エイモズ(フランス)、2ポイント
12位:李唐続(中国)、1ポイント




 さて、ここからはアイスダンスのフリーダンスです。
 FDで1位となったのはカナダのケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組です。前半のサーキュラーステップがレベル3となった以外は全てレベル4という極めて質の高いエレメンツを揃えた演技で自己ベストを一気に3点以上更新しました。
 2位はショートで1位だったアメリカのマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組。前半のサーペンタインステップで男性のベイツ選手がバランスを崩す場面があり加点が稼げなかったものの、それ以外のエレメンツはしっかりレベル4でまとめ上げ、2位に食い込みました。
 3位はロシアのエカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組。スピンやステップでのレベルの取りこぼしや思ったほど加点を稼げないエレメンツもいくつかあり100%の演技とはならず3位にとどまりました。
 4位は中国の王詩玥(ワン・シーユエ)&柳鑫宇(リュー・シンユー)組。ステップ以外の要素は全てレベル4というそつのない演技を見せ、パーソナルベストを約1点更新しました。
 5位はフランスのマリー=ジャド・ローリオ&ロマン・ルギャック組。こちらもミスらしいミスなく演技をまとめて自己ベストを更新しました。
 そして6位は日本の村元哉中&クリス・リード組です。

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 序盤のツイズルで若干回転がずれる場面があり、レベルこそ4だったもののGOEではわずかに減点。しかしその後はステップ以外のエレメンツを全てレベル4と目立ったミスなくこなし、自己ベストを約1点上回る92.68点をマークしました。
 ショートではリード選手がガッツポーズを見せるなど達成感と満足感に満ち溢れていた二人。FDはそこまで大きなミスはなかったものの心から満足という表情ではなく、まだまだできる、もっと出せるという感情が滲み出ているように感じました。世界選手権も今大会もツイズルで細かなミスがありもったいないところでしたが、カップルとしての経験を積み重ねるにつれ演技中でもお互いにカバーできる部分も増えてくるでしょうから、結成3季目となる来シーズンは今季得た二人の技術やユニゾンをさらに進化させて、ぜひオリンピックの切符をつかんでほしいと思います。


 ということで、アイスダンスFDは以下のとおりの順位です。

《アイスダンスFD》

1位:ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組(カナダ)、12ポイント
2位:マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組(アメリカ)、11ポイント
3位:エカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組(ロシア)、10ポイント
4位:王詩玥&柳鑫宇組(中国)、9ポイント
5位:マリー=ジャド・ローリオ&ロマン・ルギャック組(フランス)、8ポイント
6位:村元哉中&クリス・リード組(日本)、7ポイント




 男子フリー、アイスダンスフリーの記事は以上です。ショートも含めて振り返ってみると、男子はやはり日本の二人が圧倒的な強さを示しましたね。カナダやロシアが一人は上位に食い込んだけれどももう一人は下位に沈んでしまったという順位のバラつきがあったのと比べると、羽生選手のSP以外は日本は予想どおりの力を発揮できたのかなと思います。一方でアメリカもショート、フリーともに二人ともしっかり上位をキープしていて、オリンピックの団体戦を占う意味でもこの層の厚さは頼もしいなと感じました。
 アイスダンスはアメリカ、カナダ、ロシアのアイスダンス3国が下馬評どおりにトップスリーを独占。ですが、その中でもショートではアメリカのチョック&ベイツ組が1位、フリーではカナダのウィーバー&ポジェ組が1位という結果で、現時点ではアイスダンス界においては北米勢がロシアの先を行っているのかなという印象を受けましたね。
 さて、次の女子フリー&ペアフリーの記事がいよいよ16/17シーズンの最後のフィギュア大会関連記事となります。では。


:メダリスト3チームの集合写真はスケート情報サイト「icenetwork」から、羽生選手の写真、宇野選手の写真、チャン選手の写真、ブラウン選手の写真、村元&リード組の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、チェン選手の写真、コリヤダ選手の写真は、アイスダンス情報サイト「ice-dance.com」から引用させていただきました。

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# by hitsujigusa | 2017-04-27 23:53 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)