c0309082_00031836.jpg


 2018年1月8日から14日にかけて、カナダ選手権2018が行われました。カナダ選手権も全米選手権同様、シニアやジュニア、ノービスを一気にまとめて行うので、シニアの試合が実際に行われたのは12日と13日の2日間のみになります(14日はエキシビションのみです)。この記事ではそのシニアの結果のみお伝えします。

2018 Canadian Tire National Skating Championships この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

《男子シングル》


 男子を制したのはベテランのパトリック・チャン選手です。SPは4トゥループで転倒し波乱の幕開けに。3+3は決めますが、苦手の3アクセルは着氷で乱れ、順位としては首位だったもののスコアは90.98点と伸び悩みます。フリーは冒頭の2本の4トゥループを最小限のミスに抑え成功。しかし2アクセルを3本跳んでしまう珍しいミスもあり、得点は自己ベストより20点以上低いスコアにとどまります。それでも他を寄せつけることなく史上初となる10度目の優勝を果たしました。
 GP初戦のスケートカナダ後は、出場予定だったNHK杯を辞退して練習拠点での調整に集中してきたチャン選手。ただ、今大会も鬼門の3アクセルが振るわず、調整に全力を注いできた成果が全て出し切れたのかどうかはわかりませんが、五輪での集大成の演技に向けてまずは一歩前進したのかなと思いますね。五輪の男子フィギュア個人戦までは約1か月、短いといえば短いですが、1か月あればできることも多いと思いますので、チャン選手らしい息を呑むような美しいスケーティングと目が離せない演技が五輪で見られることを楽しみにしています。

 2位に入ったのはキーガン・メッシング選手です。SPは4トゥループこそ入りませんでしたが、全てのエレメンツを加点が付く出来でまとめ、3位と好位置につけます。フリーも1本目の4トゥループでは転倒。しかし2本目の4トゥループはしっかりコンビネーションにして成功。3アクセルも2本とも決め(1本は3連続ジャンプで、最後のジャンプで乱れたためGOEではマイナス)、フリーも3位、総合では2位となり、五輪代表を引き寄せました。
 混戦となった五輪代表2枠目を射止めたメッシング選手ですが、ショート、フリーともにミスを引きずらなかったのが勝因と言えるでしょうか。また、元々ジャンプの質は高いですから、そういった部分でメッシング選手より下位だった4回転を得意としている選手たちを上回れたのかなと思います。今までカナダ選手権では5位が最高だった彼が2位になるとは少し意外でしたが、今季はシーズン初戦のオータムクラシックで3位、NHK杯でも5位と健闘を見せていましたから、シーズン前半の良い流れをこのカナダ選手権にうまく繋げたという印象ですね。

 3位は若手のナム・グエン選手です。SPは3ルッツでの転倒があり5位と出遅れ。フリーは中盤の4トゥループで転倒した以外は全てのエレメンツで加点を引き出し2位と追い上げましたが、トータルではメッシング選手の得点には約1点届かず、惜しくも3位でした。
 ショート、フリーともに4回転や3アクセルはおおむね安定していたグエン選手。それだけにショートの3ルッツやフリーの4トゥループの転倒がもったいなかったですね。結果的にメッシング選手とは1点差しかなかったからこそ余計にそう思えるのですが、どちらのジャンプも成功と紙一重という感じだったので、ちょっとしたミスと言えばちょっとしたミスだったのが、転倒したことによってGOEでマイナスになるだけなく、演技全体からも1点引かれてしまうわけですから、本当に惜しかったです。ただ、ここ最近は苦戦が続いていたことを考えると、この試合にきっちり合わせて一定の成果を出せたと思うので、収穫の多い試合だったのではないでしょうか。

 4位はエラジ・バルデ選手。SPは4回転なしの構成で臨み、クリーンに演じ切って4位。フリーも4回転はなく、3アクセルは2本とも成功。しかし後半のジャンプで細かなミスが散見され点数を伸ばし切れずフリーも4位、総合4位と表彰台には及びませんでした。
 5位はベテランのケビン・レイノルズ選手。SPは大きなミスなく滑り切って2位と好発進。しかしフリーは序盤に固めた3本の4回転―4ループ、4トゥループ、4サルコウ+3トゥループ―でミスを連発。後半もミスが重なり、フリー6位、総合5位と順位を落としました。
 6位はジュニアのジョセフ・ファン選手。SPは4+3とと3アクセルを完璧に決めたものの、3ルッツが2回転になり規定違反で無得点となったことによって8位にとどまります。フリーも4トゥループでの転倒こそありましたが、大崩れすることはなく演技をまとめて5位、総合6位と躍進しました。
 7位はシニア1年目のローマン・サドフスキー選手です。ショートは4回転2本を組み込み、どちらもミスはありましたが何とか着氷。しかし3アクセルは回転不足で転倒し7位に。フリーも4トゥループでの転倒など細々とミスがあり8位、総合7位と順位を上げることはできませんでした。
 8位はリアム・フィラス選手。ショートは全ジャンプで減点があり9位。フリーもジャンプは全体的に不安定な着氷が続きましたが、何とか踏ん張ってフリー7位、総合8位と一つ順位を上げました。


《女子シングル》

c0309082_20431423.jpg


 女子のチャンピオンとなったのは世界選手権2017銅メダリストのガブリエル・デールマン選手です。得点源の3+3を完璧に決めると、3ルッツ、2アクセルもクリーンに下り、非公式ながら77.88点という極めて高いスコアで首位に立ちます。フリーもショートからの流れをそのまま引き継ぎ、3+3始め全てのジャンプをノーミスで着氷。151.90点という驚異的な得点を叩き出し、2度目の優勝に花を添えました。
 好演技をした選手には気前良く加点や演技構成点を与えるのが国内大会というものですから、229.78点というトータルスコアは突拍子もない印象を受けるものの、決して驚くべきものではないのかなと思います。それはさておいて、ジャッジが大盤振る舞いをしたくなるほどデールマン選手の演技が素晴らしかったのは間違いなく、229.78点とはいかなくとも、オリンピックでもこの演技ができれば充分にメダル争いに加われるのではないかと想像します。今季苦戦していたフリーを昨季の「ラプソディー・イン・ブルー」に戻すことで昨季終盤の輝きを取り戻したデールマン選手が、五輪でさらに加速するのかどうか、注目ですね。

 銀メダルを獲得したのは世界選手権2017銀メダリストのケイトリン・オズモンド選手。SPは冒頭の3+3が単独の3フリップに。続く3ルッツに急遽2トゥループをつけてカバーし、その後のエレメンツは落ち着いてこなしましたが、デールマン選手には及ばず2位発進。フリーはショートで失敗した3+3を決め、2アクセル+3トゥループ、3ルッツと得点源のジャンプをクリーンに下りて波に乗るかに見えましたが、課題の後半でミスを連発。フリーも2位で逆転優勝はなりませんでした。
 オズモンド選手の代表作であるショートから珍しくほころびが見え、さらに鬼門となっているフリーの後半ではやはりミスが重なり……と、オズモンド選手にとっては五輪に向けて課題が如実に露わになった試合でしたね。一つ一つの要素の質の高さ、演技構成点での評価の高さは変わりませんが、五輪の表彰台というのを考えるとフリー後半のスタミナ切れはやはり重い課題かなと思いますので、これからの約1か月間で彼女がいかに壁を乗り越え、仕上げてくるかに期待ですね。

 3位は若手のラーキン・オーストマン選手です。ショートは2つのジャンプでミスがあり6位と出遅れ、フリーも転倒を含むミスが複数ありましたが、それでもフリー3位、総合3位と挽回し、五輪の切符をつかみました。
 今季スケートカナダでGPデビューしたばかりの選手ですが、4年に1度の五輪のチャンスを見事に活かしましたね。ほかの選手たちのミスに助けられたという面もありますが、そうした接戦を勝ち抜けた経験というのは今後の彼女のキャリアにおいても記念碑的なものになるのかなと思います。

 4位は2016年のカナダ女王、アレーヌ・シャルトラン選手です。ショートはコンビネーションが入らなかった上に2度の転倒もあり9位と大幅に出遅れ。フリーも転倒があり、コンビネーションが一つしか入らなかったこともあって、フリー4位と追い上げましたが総合4位と表彰台には立てませんでした。
 5位はオーロラ・コトップ選手。SPは3+3と3ループで2度転倒し14位と下位に沈みます。フリーは3+3は組み込まず、さらに7つのジャンプ要素のうち5つを前半に跳ぶ構成で確実にジャンプをこなし、フリー5位、総合5位と一気に順位を上げました。
 6位はキム・デグイーズ=レヴェイエ選手です。ショートは転倒が1つあり11位に。フリーもミスはちょこちょことありましたが、転倒やパンクはなく滑り切り6位、総合6位となりました。
 7位はミシェル・ロン選手。ショートは細かなミスはあったものの、ステップシークエンスではレベル4を獲得するなど本領も発揮し、4位と好発進。しかしフリーはパンクや転倒など大きなミスが相次ぎ8位、総合7位と順位を落としました。
 8位はアリシア・ピノー選手。ショートは単独の3ループが1回転になり規定違反で0点になったため12位。フリーは大きなミスなく演じ切り7位、総合8位と追い上げました。


《ペア》

c0309082_15483471.jpg


 ペアで前人未到の7連覇を達成したのはメーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組です。SPは今季苦戦していたサイドバイサイドの3ルッツを決め非公式ながら自己ベストを上回る得点で首位に立ちます。フリーもサイドバイサイドの3ルッツをこらえて最小限のミスに抑え、大技のスロー4サルコウは転倒に終わったものの、その後はミスらしいミスなく圧巻の滑りを見せフリー1位、トータルでは2位に20点以上の差をつけ7連覇しました。
 シーズン前半は特にサイドバイサイドジャンプで苦労する姿が多く見られたデュハメル&ラドフォード組ですが、今大会はしっかり修正してきましたね。かつて世界の舞台で快進撃を続け世界選手権を連覇した時のことを考えると、今回の演技内容はようやく彼ららしい滑りが見られたという印象で決して驚くべきものではありませんが、なかなか理想的な演技ができなかった時期を乗り越えてですから、感慨深い優勝なのではないでしょうか。この好調を維持して五輪でも優勝争いに加わってほしいですね。

 2位はジュリアン・セガン&シャルリ・ビロドー組です。SPはサイドバイサイドの3サルコウで転倒したものの、ほかの要素は全てレベル4に揃えて2位と好発進。フリーはサイドバイサイドの3ルッツで若干減点はありましたが、そのほかのエレメンツは全て加点の付く出来で、しかも軒並みレベル4を揃え、フリーも2位、総合2位で五輪代表の切符を手にしました。
 ショートで転倒があったとはいえ、今大会のセガン&ビロドー組は全体的に安定感が際立っていましたね。特にショート、フリーともに全てレベル4というのはお見事としか言いようがありません。昨年はセガン選手が脳震盪を起こしたことによってカナダ選手権は欠場せざるをえませんでしたから、今年のカナダ選手権は今まで以上に思い入れもひとしおだったのではないでしょうか。高い技術力を武器に、セガン&ビロドー組が五輪でどこまで上位に食い込んでくるのか、楽しみです。

 3位はカーステン・ムーア=タワーズ&マイケル・マリナロ組です。ショートは3ツイストやスピンでレベルの取りこぼしがあったものの目立ったミスなくまとめて3位。フリーも2アクセル+1ループ+3サルコウの3連続ジャンプでアンダーローテーション(軽度の回転不足)があった以外はミスなくクオリティーの高い演技を披露し、フリーも3位、総合3位で昨年に続き銅メダルを獲得しました。
 順位としては昨年と同じ3位ですが、昨年はセガン&ビロドー組が不在の中での3位だったので、世界選手権の代表からは惜しくも漏れてしまいました。ですので、ベストメンバーが揃った中での今年の3位は、昨年とはまた違った意味合いのある3位と言えますね。


《アイスダンス》

c0309082_17153582.jpg


 8度目の優勝を果たしたのはテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組です。SDは全てのエレメンツでレベル4を獲得し断トツの首位に立つと、FDも全てレベル4という完全無欠の演技で他のカップルを寄せつけることなく頂点を射止めました。
 何も言うことなしという演技内容ですね。オリンピックに向けて着々と準備を進めていて、このカナダ選手権も一つの通過点として、五輪へのステップアップとしてさらなる進化を見せつけました。五輪ではフランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組との一騎打ちとなると思いますが、怪我なく無事に五輪の舞台で集大成の演技が見られることを祈っています。

 2位に入ったのはパイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組です。SDではパターンダンス以外全てレベル4とヴァーチュー&モイア組にも負けず劣らずレベルの高い滑りを披露し2位につけます。FDではツイズルで女性のギレス選手がよろめくシーンがありレベル2どまりに。そのほかのエレメンツはまとめフリーは3位でしたが、総合では3位のカップルを約1点差でかわし自己最高位タイの2位でフィニッシュしました。
 ツイズルはアイスダンスの技の中でも最もミスを犯しやすい場面なので、今後に深刻な影響を及ぼす失敗の形ではないと思うのですが、むしろここでミスをしたことで五輪ではより注意を向けられるでしょうから、そういった意味でポジティブにとらえることもできそうですね。何よりSDで素晴らしい演技をしたことが自信になると思いますから、五輪ではフリーも納得のいく演技ができるよう頑張ってほしいですね。

 3位はケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組です。SDはツイズルで男性のポジェ選手が転倒するというまさかのミスがあり4位と出遅れ。FDはそのツイズルもしっかり修正し、軒並みレベル4を揃えて2位と挽回しましたが、ショートの点差が響き総合では惜しくも3位でした。
 このウィーバー&ポジェ組にしても上述したギレス&ポワリエ組にしてもそれぞれツイズルでのミスがあったわけですが、それくらい五輪の切符が懸かるカナダ選手権というのは尋常ではない緊張感があったのだろうなと想像します。普段起こらないようなことが起こってしまう舞台と言えますが、その意味では五輪はそれ以上の魔物が住んでいる場所だと思いますので、今回の経験を財産として五輪では悔いのない演技ができるよう願っています。



 カナダ選手権の結果は以上ですが、この結果を受けて選出されたシーズン後半の主要国際大会の代表選手をまとめます(敬称略)。


《平昌五輪代表》

男子シングル:パトリック・チャン、キーガン・メッシング
女子シングル:ガブリエル・デールマン、ケイトリン・オズモンド、ラーキン・オーストマン
ペア:メーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組、ジュリアン・セガン&シャルリ・ビロドー組、カーステン・ムーア=タワーズ&マイケル・マリナロ組
アイスダンス:テッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組、パイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組、ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組

《世界選手権代表》

男子シングル:パトリック・チャン、キーガン・メッシング
女子シングル:ラーキン・オーストマン、ガブリエル・デールマン、ケイトリン・オズモンド
ペア:メーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組、カーステン・ムーア=タワーズ&マイケル・マリナロ組、ジュリアン・セガン&シャルリ・ビロドー組
アイスダンス:パイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組、テッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組、ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組

《四大陸選手権代表》

男子シングル:エラジ・バルデ、ナム・グエン、ケビン・レイノルズ
女子シングル:アレーヌ・シャルトラン、ミシェル・ロン、アリシア・ピノー
ペア:リュボーフィ・イリュシェチキナ&ディラン・モスコヴィッチ組、シドニー・コロジー&マキシム・デシャン組、カミーユ・ルエ&ドリュー・ウルフ組
アイスダンス:サラ・アーノルド&ウィリアム・トーマス組、ヘイリー・セールズ&ニコラス・ワムスティーカー組、カロラーヌ・スシース&シェーン・フィラス組




 五輪、世界選手権に関してはカナダ選手権の表彰台そのままのメンバーですね。非常に明快で疑問の余地のないベストな選出と言えます。一方で四大陸選手権はそれらの大会から漏れた選手たちによって構成されています。



 世界最強と言っても過言ではない層の厚さを誇るカナダチーム。五輪では個人戦でのメダルはもちろん、団体戦での金メダルも十二分に狙えるメンバーだと思いますから、そちらも非常に楽しみです。では。


:記事内の画像は全て、フィギュアスケート情報サイト「Golden Skate」から引用させていただきました。

[PR]
# by hitsujigusa | 2018-01-18 16:03 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_14395722.jpg


 2017年の年末から年始にかけて全米選手権が行われました。全米選手権はノービスやジュニア、シニアなどをまとめて一つの大会として開催していますが、この記事では1月3日から7日にかけて行われたシニアについて書いていきます。

2018 U.S. Figure Skating Championships この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

《男子シングル》


 優勝したのはディフェンディング・チャンピオンのネイサン・チェン選手。SPは苦手の3アクセルのミスがありながらも自己ベストを超える104.45点で断トツの首位に立つと、フリーもミスらしいミスは3アクセルのパンクくらいで3種類5本の4回転を完璧に決め、210.78点をマークし、トータルではもちろん300点を優に超えて圧巻の2連覇を果たしました。
 今大会のチェン選手は代名詞である4ルッツを外し、フリップ、サルコウ、トゥループの3種類の4回転のみで試合に挑みました。が、それでも高難度であることに変わりはなく、しかもそれらの4回転を全てクリーンに、高い出来栄え点のつく出来でまとめたということに改めて感嘆せざるをえません。一方で鬼門の3アクセルはショート、フリーともに失敗に終わって課題は残りましたが、これからの約1か月間でさらに仕上げ、高いレベルで最終調整を行っていくと思いますから、国内大会とはいえ315点という驚異的なスコアを叩き出したチェン選手が、どんなふうにさらなる進化を見せてくれるのか、期待したいと思います。

 今大会において最大の番狂わせを起こしたのが2位に入ったロス・マイナー選手です。ショートをほぼノーミスでまとめ6位につけると、フリーは鍵を握る4サルコウを含めすべてのジャンプを大きなミスなくこなしフリー2位、総合2位と大きく躍進しました。
 昨季、今季とあまり目立った活躍はできていなかったマイナー選手ですが、今大会にきっちりと合わせてきましたね。4回転は1本のみでしたが、ほぼ全てのエレメンツを高い質で揃え、GOE、演技構成点でも高評価を得ました。ただ、ほかの選手との総合的な比較で優位に立てず、残念ながらオリンピック代表からは外れました。全米選手権という最も緊張する試合にピークを合わせて2位になったにもかかわらず選ばれなかったということで、マイナー選手が代表に選出されるためには優勝しか残されていなかったということになり、非常に厳しい選考だなと思いますが、マイナー選手にとって良い意味でも悪い意味でも最も強烈に記憶に刻まれる全米選手権となったのではないでしょうか。

 銅メダルを獲得したのは今季シニアデビューのヴィンセント・ジョウ選手です。ショートは大技4ルッツ+3トゥループを決めたものの、4フリップは回転不足、3アクセルは回転不足の上に転倒で得点を伸ばし切れず、5位にとどまります。フリーも4ルッツ+3トゥループは完璧に成功。しかし、そのほかの4回転は全て回転不足となり、転倒も。ただ、3アクセル2本や、3+1+3の3連続ジャンプは大きなミスなく跳び切りフリー3位、総合3位に何とか滑り込みました。
 昨季は全米選手権で2位となり、世界ジュニア選手権でも優勝と飛躍を遂げたジョウ選手。その勢いを加速させたいシニアデビューシーズンでしたが、GPでは表彰台に届かず、五輪代表に向けていまひとつアピールし切れませんでした。なので、3位という結果ではたして五輪代表に選ばれるか不透明でしたが、結果的には昨年の全米2位という成績も選考に影響したのか、選出という吉報に結びつきましたね。ジョウ選手の強みと言えば、何といっても4ルッツを始め多種類の4回転を跳べることですが、それがとんでもない爆発力に繋がることもあれば、真逆の結果に至ることもあり、五輪でサイコロの目がどんなふうに出るか、少し心配でもあり楽しみでもありますね。

 そして、全米選手権特有のピューター(錫)メダルを獲得したのはベテランのアダム・リッポン選手です。ショートは4回転を回避した構成でパーフェクトに演じ切り2位と好発進。しかしフリーは冒頭の4ルッツで転倒、後半の3アクセル2本はクリーンに下りましたが、3+3が回転不足になると、3サルコウと3ルッツがそれぞれ1回転になるミスを連発し、フリー4位、総合4位と順位を落としました。
 予想どおりの素晴らしいショートから一転、フリーは演技終盤にらしからぬミスが相次ぎ、五輪代表選考において危うい立場に追い込まれたリッポン選手。結果的には昨季、今季の国際大会での結果が考慮され代表入りしましたが、あれだけ安定感のある演技を続けていたリッポン選手でさえも、五輪の最終選考会である全米選手権は比べものにならないくらいのプレッシャーがかかるんだろうなと改めて感じさせられました。最初で最後となるであろう平昌五輪では、リッポン選手らしい演技がショート、フリーともに見られることを期待したいですね。

 5位はこちらもベテランのグラント・ホフスタイン選手です。SPは4+3を決めるなど完璧な演技で4位と好発進。フリーはその4回転が不発で、3アクセルもミスと不安定な出だしとなりましたが、その後はおおむね致命的なミスなく立て直し、フリー5位、総合5位で大会を終えました。ショートが素晴らしかっただけにフリーのミスはもったいなかったですが、ホフスタイン選手らしさはまずまず出せたのかなと思いますね。
 そして6位に入ったのが実力者のジェイソン・ブラウン選手。ショートは3アクセルのミスを犯しながらも3位と好位置につけましたが、フリーは4トゥループに挑んだもののダウングレード(大幅な回転不足)で転倒し、さらに3アクセル、3ループと続けて回転不足に。後半にもミスが散見され、フリー6位、総合6位と表彰台から遠ざかってしまいました。GPでは表彰台にも立ち、ファイナルにも進んでいたブラウン選手が6位というまさかの結果となりましたが、NHK杯からジャンプの調子を落としていて、復調の兆しがなかなか見えず心配していたのですが、最後までその課題を克服できませんでしたね。個人的に彼のファンなので五輪で見られないのは寂しいですが、勝負の世界ですから致し方ないですし、この悔しさをバネにまた頑張ってほしいと思います。
 7位はティモシー・ドレンスキー選手。ショートは3アクセルでミスがあり7位。フリーは4サルコウ、3アクセルで転倒し、ほかのジャンプでも細かいミスが重なり9位、総合7位と3年連続で同じ順位となりました。
 8位はアレクサンダー・ジョンソン選手。ショートは大きなミスこそなかったものの、3+3が3+2になり10位と出遅れ。フリーは3アクセルと3ループでミスがありましたが、そのほかの要素にミスを波及させることなくフリー8位、総合8位と順位を上げました。


《女子シングル》

c0309082_17310304.jpg


 初優勝を遂げたのは今季飛躍中のブレイディ―・テネル選手です。SPをパーフェクトにまとめて首位に立つと、フリーは2アクセルがアンダーローテーション(軽度の回転不足)を取られたのみで目立ったミスなく演じ、145.72点という極めて高い得点で1位、完全優勝で初めて全米の頂点に上りました。
 今シーズンは強豪が集うロンバルディアトロフィーで4位と健闘してブレイクの兆しをのぞかせ、GPデビュー戦のスケートアメリカで200点超えで3位となったことによって、全米の優勝候補として名乗りを上げました。そして今大会、その期待どおりの演技を見せてくれました。昨季まで五輪代表候補としてさえ全く名前の挙がらなかった選手が、今季は着実に結果を残しジャッジへも好印象を植え付け、その結果が五輪シーズンの全米で優勝ですから、本当にシンデレラストーリーと言わざるをえないドラマチックな展開ですね。とはいえまったくノーマークだったわけではなく、スケートアメリカでメダルを獲得したことによって紛れもなく優勝候補だったわけですから、注目を浴びてから短期間とはいえプレッシャーはあったと思います。しかしそんな重圧さえはねのける勢い、滑る喜びというのが、今のテネル選手には備わっているのかなと思います。この底知れないエネルギーがオリンピックではどう発揮されるのか、期待したいですね。

 銀メダルを獲得したのはベテランの長洲未来選手です。SPから大技3アクセルに挑み、回転は充分だったもののステップアウトで減点に。しかし3+3、単独の3ループはきっちり決め、2位と好発進します。フリーも冒頭は3アクセルでしたが、両足着氷でクリーンな成功とはならず。しかし、3+3を始め、そのほかのジャンプはほぼノーミスで揃え、140点を超えるスコアでフリーも2位、総合2位で五輪代表の座を引き寄せました。
 惜しくも3アクセルは成功なりませんでしたが、3アクセルのミスをその後の演技に引きずらない強さは際立っていましたね。3アクセルというリスキーな技に挑んでいるからこそ、以前よりも精神的に強靭な選手になっている気がしますし、3アクセルがあるからこそ誰よりも強い気持ちを持てているのかなとも思います。4年前の全米で3位に入りながらも五輪代表に選ばれなかったことを思うと、今回の結果は本当に心から嬉しく感じますし、長年の想いを五輪にぶつけてほしいですね。

 3位に食い込んだのは昨季の全米女王、カレン・チェン選手です。ショートは3+3のセカンドジャンプが回転不足と判定されますが、ほかをまとめて3位と好位置につけます。フリーもその3+3を含め、4つの回転不足が散見されましたが、成功させた要素ではおおむね高い加点を稼ぎ、また、演技構成点でも高い評価を得て、フリー4位、総合3位となりました。
 今大会のチェン選手はウイルス感染による体調不良があったようで、回転不足の多さもそのせいなのかもしれませんが、難しいコンディションの中で転倒やパンクなく滑り切ったというのはチェン選手の意地を感じましたね。また、両プログラムをシーズン途中に昨季のものに戻したことも功を奏し、演技構成点はショートでは1位、フリーでも2位となっていて、そういった意味でプログラム変更は戦略として成功だったと言えますね。

 ピューター(錫)メダルを獲得したのはベテランのアシュリー・ワグナー選手です。SPは3+3の回転不足が響き5位にとどまります。フリーは前半のジャンプを完璧に跳び切ったものの、後半の得点源である3+1+3が3+1+1に。フリー3位と追い上げましたが、ショートと合わせて4位ともう一歩届きませんでした。
 細かなミスはあったワグナー選手ですが、ショート、フリーともに彼女らしさは存分にうかがえる演技だったのではないかと思います。にもかかわらず演技構成点はあまり伸びず、ショートは2位、フリーは3位でした。このことに関してはワグナー選手自身が採点に対する疑問を呈していて、確かに転倒のような演技の流れを断絶する大きな失敗がなかったのに演技構成点が伸び悩んだというのは、今までのワグナー選手に対する採点傾向からすると疑問符がつきます。ただ、ショートはともかくとして、フリーは初お披露目の「ラ・ラ・ランド」だったので、プログラムとしての熟成が足りないと見られた可能性もありますし、国内大会での採点というのは海外へ向けたアピールといういう面もあるので、アメリカのジャッジたちは勢い溢れる若手をより高く評価したと言えるかもしれません。
 ワグナー選手の「ラ・ラ・ランド」がオリンピックで見られないのは残念ですが、ワグナー選手が今後どういう道を進むのか見守っていきたいですね。

 5位は昨年3位のマライア・ベル選手です。ショートは3+3でステップアウト、ステップシークエンスもレベル2にとどまり6位に。フリーは終盤の2アクセルの転倒以外ミスらしいミスなく演じ切りましたが、全体的に加点を伸ばすことができず、フリーも6位、総合では5位でした。
 6位はジュニアのスター・アンドリュース選手。ショートは3ループでミスを犯したものの、全体的にはまずまずの滑りで8位。フリーは全てのエレメンツを予定どおりに減点なくこなし、フリー5位、総合6位と躍進しました。
 7位はアンジェラ・ワン選手。SPは完璧な演技で4位と好発進。しかしフリーは後半にミスが相次ぎ7位、総合7位と順位を落としました。
 8位はアンバー・グレン選手。SPは3ルッツで転倒があり7位。フリーもパンクや回転不足など複数ミスが散見され9位、総合8位にとどまりました。


《ペア》

c0309082_15095686.jpg


 ペアを制したのは夫婦ペアのアレクサ・シメカ=クニーリム&クリス・クニーリム組です。ショートはサイドバイサイドの3サルコウでミスがあったものの、そのほかは大きなミスなくまとめて唯一の70点超えでトップに立ちます。フリーは冒頭で大技4ツイストに挑み、完璧に成功。3サルコウは転倒となり、3トゥループからの連続ジャンプも2+1になりましたが、決めたエレメンツは全て1点以上の加点を積み重ね、フリー1位、総合1位と完全優勝を果たしました。
 昨シーズンは女性のシメカ=クニーリム選手の病気のためシーズン前半の試合を欠場したシメカ=クニーリム&クニーリム組。シーズン後半は四大陸選手権、世界選手権と出場したものの振るわず、今季もGP2試合は苦戦している印象でしたが、しっかりとこの大会にピークを合わせてきましたね。サイドバイサイドジャンプでの課題は露わになりましたが、平昌五輪へ向けて課題を修正して最高の演技を見せてほしいと思います。

 2位は2016年の全米チャンピオン、タラ・ケイン&ダニエル・オシェア組です。ショートはGOEの減点なくエレメンツを揃えましたが、3ツイストがレベル2となり2位に。フリーはサイドバイサイドの2アクセル+2アクセルが回転不足となり、スロー3ルッツでは転倒とミスが重なり、フリー2位、総合2位と2年ぶりの優勝には届きませんでした。
 昨年の全米は、ケイン選手がショートで転倒し脳震盪と診断されてフリーを棄権。シーズン後半の国際大会に出場できず悔しいシーズンとなりました。今季もケイン選手の負傷のため、12月のゴールデンスピンというB級国際大会でようやく実戦復帰し、そして復帰2戦目が全米という非常に難しいシチュエーションでした。が、その中で今できるベストを尽くした演技だったのではないかと思います。ISUの規定により五輪のアメリカのペアの枠は1つしかなく、残念ながら五輪代表には選ばれませんでしたが、世界選手権も大きな舞台ですから、3年ぶりの大舞台で実力を発揮してほしいですね。

 3位はディアナ・ステラート=デュデク&ネイサン・バーソロメイ組です。SPは全てのエレメンツを完璧に揃えて3位と好位置につけると、フリーは前半のサイドバイサイドジャンプと大技のスロー4サルコウでミスを犯したものの、後半は大きなミスなく滑り切り3位、トータルでも3位と自己最高位で大会を終えました。
 フリーはジャンプ系エレメンツでミスが続き不安定さも露呈しましたが、そのほかの要素はおおむね安定していて技術力の高さが際立ちましたね。女性のステラート=デュデク選手は現在34歳、昨シーズン16季ぶりに競技復帰した異色のキャリアの持ち主ですが、話題性だけではなく実力も日々進歩しているというのを顕示した大会になったのではないでしょうか。

 4位はアシュリー・ケイン&ティモシー・ルデュク組。ショートはツイストを始め、スロージャンプ、サイドバイサイドジャンプでもミスがあり8位と出遅れ。しかしフリーはジャンプ系エレメンツのミスを最小限にとどめ4位、総合4位と挽回しました。


《アイスダンス》

c0309082_17404920.jpg


 アイスダンスは成長株のマディソン・ハベル&ザカリー・ドノヒュー組が初制覇。SDは5つの要素のうち、2つでレベル4を取り2位と好発進。FDも演技全体において質の高い滑りを披露し2位、総合では1位となり、初めて全米チャンピオンに輝きました。
 シブタニ兄妹の3連覇が有力視される中、その下馬評を見事に覆すドラマチックな優勝でしたね。ショート、フリーそれぞれの順位では2位でしたが、トータルで最も取りこぼし少なく、完成度の高い演技を披露したと言えます。ここ1、2年常に勢いはあったものの、全米は最高が3位で、なかなかツートップの壁を破れずにいましたが、今回の優勝によって潮目が変わってくるかもしれませんね。

 銀メダルを獲得したのは昨年まで2連覇していたマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組です。ショートはパターンダンス以外全てレベル4という二人らしいノーミスの演技で堂々の首位発進。しかしフリーは後半のステップの途中で妹のマイア選手がバランスを崩しかける場面があり、レベルは3だったものの加点は伸びず。フリー3位、総合2位と3連覇を逃しました。
 絶対王者と目されていたシブタニ兄妹にとってはまさかの2位でした。ミスらしいミスといえばステップで体勢を崩した部分のみなのですが、たった一つの些細なほころびでガクッと順位が落ちてしまうのがアイスダンスの怖さですね。12月のファイナルでもフリーでミスがあり、圧倒的な技術力の高さを誇るシブタニ兄妹にしては気になるところですが、ミスを引きずらず五輪では思い切った二人らしい滑りを見せてほしいですね。

 3位はマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組です。SDは目立った取りこぼしなく演技をまとめ3位。FDは中盤のステップ以外全てレベル4と会心の演技で1位となり、トータルでは3位でしっかりと表彰台の一角をキープしました。
 2013年以来、全米では常に2位以上のポジションに立ち続けてきたチョック&ベイツ組からすると、3位となったのは少し悔しい結果かもしれませんが、演技内容としては取りこぼしと言える取りこぼしはなく、しっかりとこの大会にピークを合わせてきたなと感じられる滑りでしたね。フリーでは1位だったことからわかるようにハベル&ドノヒュー組やシブタニ兄妹との差は本当に僅差ですから、五輪でも何があるかはわかりませんね。

 4位は若手のケイトリン・ハワイエク&ジャン=リュック・ベイカー組です。SDは非接触ステップがレベル3になった以外は全てレベル4と精度の高い演技で4位発進。フリーでは全組中、唯一の全要素レベル4を獲得し(レベルがつかないコレオツイズルやコレオリフトは除く)、全体の2位の技術点をマーク。フリーも4位で、総合4位で大会を終えました。



 さて、ここからは全米選手権の結果を受けて決定されたシーズン後半の主要国際大会の派遣メンバーをまとめます(敬称略)。なお、名前はアルファベット順となっており、今大会の成績順、これまでの実績順などではありません。


《平昌五輪代表》

男子シングル:ネイサン・チェン、アダム・リッポン、ヴィンセント・ジョウ
女子シングル:カレン・チェン、長洲未来、ブレイディー・テネル
ペア:アレクサ・シメカ=クニーリム&クリス・クニーリム組
アイスダンス:マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組、マディソン・ハベル&ザカリー・ドノヒュー組、マイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組

《世界選手権代表

男子シングル:ネイサン・チェン、アダム・リッポン、ヴィンセント・ジョウ
女子シングル:カレン・チェン、長洲未来、ブレイディー・テネル
ペア:タラ・ケイン&ダニエル・オシェア組、アレクサ・シメカ=クニーリム&クリス・クニーリム組
アイスダンス:マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組、マディソン・ハベル&ザカリー・ドノヒュー組、マイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組

《四大陸選手権代表》

男子シングル:マックス・アーロン、ジェイソン・ブラウン、グラント・ホフスタイン、ロス・マイナー
女子シングル:スター・アンドリュース、マライア・ベル、アンジェラ・ワン、アシュリー・ワグナー
ペア:アシュリー・ケイン&ティモシー・ルデュク組、タラ・ケイン&ダニエル・オシェア組、ディアナ・ステラート=デュデク&ネイサン・バーソロメイ組
アイスダンス:ケイトリン・ハワイエク&ジャン=リュック・ベイカー組、ロレイン・マクナマラ&クイン・カーペンター組、レイチェル・パーソンズ&マイケル・パーソンズ組




 大会前の下馬評とは異なる試合展開により、五輪代表も波乱含みの選考となりました。
 まず男子は優勝のチェン選手はすんなり選出されましたが、2人目、3人目は混戦模様に。結果的に全米3位のジョウ選手と4位のリッポン選手が選ばれた一方で、2位に入ったマイナー選手は外れました。個人的には疑問符の残る選考というか、だとしたら全米選手権の意義とは?とも思ってしまうのですが、結局は今季や今大会だけではなく、昨季からの積み重ねが必要ということなのでしょうか。
 他方で女子はワンツースリーがそのまま選出。過去の実績を重んじるならば4位のワグナー選手が選ばれてもおかしくなかったのでしょうが、2位の長洲選手は昨季は四大陸で銅メダルを獲得していて、今季もまずまず安定した成績を残していますし、3位のチェン選手は今季は振るいませんが、昨季は全米を制し、世界選手権で4位に食い込んだというのも記憶に新しいところなので、ワグナー選手の昨季や今季の成績と比較しても、見劣りするものではないと判断されたのかもしれません。
 ペアは五輪は1枠のみですが、一方で世界選手権ではアメリカのペアは2枠持っています。これはどういうことかと言いますと、昨季の世界選手権は五輪の予選を兼ねていたわけですが、この世界選手権の時点で確定する五輪の出場枠数は最大で16で、1位から順に各国が獲得した五輪出場枠を合計していき16に達した時点で、それ以上の枠を取ることはできないルールとなっています。昨季の世界選手権のペアは、中国は1位と4位でまず3枠を確保。ドイツは2位と19位で2枠。ロシアは3位と5位で3枠。カナダは6位と7位で3枠。フランスは8位と27位で2枠。イタリアは9位と13位で2枠。この時点で枠数の合計は15となり、続いてアメリカが10位と20位で世界選手権ならば2枠ですが、世界選手権で配分される五輪の枠数は残り1枠なので、アメリカには1枠しか与えられないということになります。本来ならば2組出場できることを考えると不運ですが、五輪の出場枠は世界選手権よりも少なく、より多くの国や地域にチャンスを広げるという意義があると思うので、致し方ないですね。
 アイスダンスも女子同様、トップスリーが順当に選出ですね。

 世界選手権もオリンピック代表がそのまま派遣されるという形に。ペアだけは、上述した理由でシメカ=クニーリム&クニーリム組に加え、全米2位のケイン&オシェア組も選出されています。

 そして四大陸選手権は五輪メンバーは外れ、五輪を逃した選手たちが中心に。ただ、その中でも全米の順位順ではなく、過去の実績も含めた総合的な選出となっています。一方、男子のマイナー選手、女子のワグナー選手は当初代表に選出されましたが、それぞれ辞退したということで、ホフスタイン選手、ワン選手が繰り上がりで出場となりました。



 以上で全米選手権2018の記事は終了です。いろいろと予想外なことがありましたが、選ばれた選手たちはベストを尽くして笑顔で滑り終えてほしいですね。では。


:記事内の画像は全て、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。

[PR]
# by hitsujigusa | 2018-01-15 01:23 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_17034511.jpg


 ロシアの王者を決めるロシア選手権が2017年の12月21日から24日にかけて開催されました。男女、ペア、アイスダンスそれぞれにおいてフィギュア大国ロシアらしいハイレベルな戦いが繰り広げられました。なお、大会名は2018となっていますが、実際に大会が行われたのは2017年末です。

Rostelecom Russian Nationals 2018 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

《女子シングル》


 まずは女子の結果から。
 女子は世界女王のエフゲニア・メドベデワ選手が怪我の治療のため欠場する中、今季シニアデビューしたばかりながら出場した全ての試合で優勝しているアリーナ・ザギトワ選手が下馬評どおりに初優勝。ショートで出遅れるパターンの多いザギトワ選手は、今回もショートはミスがありましたがそれでも自己ベストを上回るスコアで首位発進すると、フリーも3サルコウの小さなミスのみで抑え、2位に10点以上の大差をつけて初のロシア女王に。とはいえまだ本当の意味でパーフェクトな演技は今季は披露できていないので、完全無欠の演技をしたら一体どれだけの点数が出るのか今後への期待がますます募りますね。

 2位に入ったのはGPファイナル銀メダルのマリア・ソツコワ選手。SPはほぼノーミスの演技でまとめ2位につけると、フリーもミスを最小限にとどめて2位、総合では220点を超えるハイスコアをマークしてロシア選手権における自己最高位でフィニッシュしました。今シーズンは上述したザギトワ選手に注目がいきがちですが、ソツコワ選手もザギトワ選手に負けず劣らず安定感を発揮し続けています。表現面も磨かれてきていて、爆発力というイメージはないけれど、シーズンが進むにつれてうまく調子を上げてきているなという印象ですね。昨季は表彰台に届かなかった欧州選手権でもしっかりピークを合わせられるかどうか、オリンピックに向けても試金石になりそうです。

 3位はジュニアのアリョーナ・コストルナヤ選手。SPは完璧な演技で4位と好発進。フリーも全てのジャンプを後半に組み込む攻撃的なプログラムをマイナス要素なしで滑り切り4位、総合では3位となり、初出場ながら銅メダルを獲得しました。コストルナヤ選手は先月のジュニアGPファイナルで銀メダルを手にしており、今勢いに乗りまくっているジュニア勢の一人ですが、その勢いのままにこの大会も面目躍如しましたね。コストルナヤ選手がいきなり表彰台というのは意外でしたが、ジャンプが一番跳びやすい年齢でもあるので、彼女にとって本当の勝負はこのあとに待ち構えているジュニアのロシア選手権、そして世界ジュニア選手権というところで、シニア同様に群雄割拠のロシアジュニア女子の中で、どれだけずば抜けた存在感をアピールできるか、他の選手との差異を印象付けられるかが重要になってきそうですね。

 4位はスタニスラワ・コンスタンティノワ選手。SPは単独の3フリップが2回転になったことによって規定違反で0点となり、10位と大幅に出遅れましたが、フリーはノーミスの演技で3位と驚異の追い上げを見せ、総合4位と表彰台まで迫りました。コンスタンティノワ選手は今季はJGPに1試合のみ出場し、そのほかはチャレンジャーシリーズの試合でシニアの選手として活躍しています。ジュニア時代もそこまで際立った成績を残しているわけではありませんが、まだまだ伸びてくる可能性はありそうですね。
 5位は今季シニアデビューのポリーナ・ツルスカヤ選手。ショートは3位と上々のスタートを切りましたが、フリーは6位と失速し、総合5位に沈みました。そこまでミスを連発しているわけではないですが、1つのミス、ちょっとした取りこぼしによって順位が極端に変わってしまうのが、世界で最も過酷なロシア選手権の怖さですね。
 6位はジュニアのアナスタシア・グバノワ選手です。ショート、フリーともに5位とまずまず安定した滑りを披露。今季はJGP1試合とチャレンジャーシリーズのジュニアの試合に出場していますが、彼女も昨季はJGPファイナルでザギトワ選手に次ぐ2位という実力者ですから、もっともっと上の順位も目指せる選手でしょうし、まずは世界ジュニア選手権の出場権を獲得するためにロシアジュニア選手権での好演技が最重要となりますね。
 7位は元世界女王のエリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手です。ショートは目立ったミスなくプログラムをまとめて6位、フリーもミスを最小限に抑えましたが8位、総合7位で表彰台に返り咲くことはできませんでした。やはり技術点で若い選手には差をつけられてしまうので、彼女の代名詞である3アクセルが入ればよりチャンスが広がったかなと思うのですが、今季試合では成功がありませんので、なかなか現実的には厳しかったかもしれませんね。
 8位はジュニアのダリア・パネンコワ選手。ショート、フリーともに7位で、ミスらしいミスはほぼありませんでしたが、GOE加点の部分で上位に入ったジュニア勢とは少し差がついてしまいました。


《男子シングル》

c0309082_01251457.jpg


 2連覇を達成したのはGPファイナル銅メダリストのミハイル・コリヤダ選手です。ショートは大技4ルッツと3アクセルでミスがありましたが、100点台に乗せて首位と僅差の2位につけます。フリーは4ルッツのミスを最小限にとどめますが、4サルコウでは転倒。3アクセル+3トゥループは決めたものの、4トゥループは3回転に、3アクセルは1回転に、3ループは2回転にとパンクが相次ぐ演技に。それでも180点に迫る高得点でフリー1位、逆転で再びロシアチャンピオンとなりました。ロシア男子を引っ張る存在として確固たる地位を築きつつあるコリヤダ選手ですが、さすがに今大会は緊張が強かったのか普段見られないようなミスも多かったですね。そういった部分でまだまだ発展途上の選手と言えると思うのですが、これからオリンピックまでの短い期間でどれだけ仕上げられるかに注目したいですね。

 2位は今季シニアデビューのアレクサンデル・サマリン選手です。ショートは大技4ルッツ+3トゥループを完璧に成功させると、4トゥループ、3アクセルも決めて103.11点というハイスコアで首位発進します。フリーは4ルッツ、4トゥループとも不成功で点数を伸ばし切れず4位でしたが、トータルでは2位とショートのアドバンテージが効いた形となりました。今季はGPのスケートカナダで銅メダルを獲得して名を上げたサマリン選手ですが、まだ技術的にも精神的にも不安定ではあるので、ハマれば爆発力はあるけれども……という感じですね。ですが、数少ない4ルッツジャンパーとして、このあとのシーズンも場合によっては台風の目のような存在になっていくかもしれません。

 3位はこちらも今季シニアデビューのドミトリー・アリエフ選手。ショートは4トゥループ始め全てのエレメンツを確実にこなし3位と好位置につけると、フリーは2本の4トゥループを決めますが(1本目の4トゥループは連続ジャンプでセカンドジャンプが1回転になったため結果的には減点)、後半ではつなぎの部分とジャンプで2度転倒する波乱の演技に。ですが、他選手のミスに救われフリー2位、総合3位と初めて表彰台に立ちました。上記のサマリン選手と比べると大技は持っていない選手ですが、スピンやステップでレベルを取りこぼすことは少ないですし、全体的にバランスの取れた選手と言えますね。

 4位は大ベテランのセルゲイ・ボロノフ選手です。ショートは4+3が4+2になったため少し出遅れて4位。フリーは4トゥループが2本とも単独になり、もう1つの得点源である3アクセルが1回転にとミスが重なり、表彰台までは約3点届きませんでした。今季は安定して結果を残してきただけにここでピークを合わせられなかったのは痛いですね。今大会の結果のみで五輪代表が決まるわけではありませんが、ボロノフ選手にとっては厳しい状況に追い込まれたと言えます。
 5位はアルトゥール・ドミトリエフ選手。SPは4フリップに挑戦したもののダウングレード(大幅な回転不足)で転倒し7位。フリーもその4フリップは転倒に終わりましたが、そのほかのジャンプはミスを最小限に抑えて5位、総合でも5位と追い上げました。
 6位はウラジミール・サモイロフ選手。ショートは減点なくエレメンツをまとめて6位。フリーは2本目の4サルコウが2回転になり、後半で再び4サルコウに挑むも転倒、さらに終盤の3サルコウでも転倒し8位、総合ではショートと変わらず6位でした。
 7位は今季GPデビューを果たしたアンドレイ・ラズキン選手。ショートはほぼノーミスで5位と好位置につけましたが、フリーは得点源のジャンプがことごとく決まらず9位、総合7位と順位を落としました。
 8位はジュニアのアレクセイ・エロホフ選手です。SPは細かなミスはありましたがまずまずまとめて8位。フリーは4回転を3本組み込み、4トゥループ+3トゥループは決めましたが、4サルコウは転倒、後半の4トゥループも転倒、スピンでもミスがあり7位、総合8位にとどまりました。


《ペア》

c0309082_15562621.jpg


 優勝は世界選手権2017銅メダルのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組。SPは3トゥループで転倒し2位にとどまりましたが、フリーはミスを3サルコウのパンクとコンビネーションスピンの回転のズレのみに抑え1位、逆転で初のロシア王者に輝きました。タラソワ&モロゾフ組が初優勝というのは意外でしたが、今回はショートで少々出遅れたとはいえ、フリーはさすがの貫録を感じさせる内容と言えるのではないでしょうか。12月上旬のファイナルではフリーで崩れて5位に沈んだだけに、今回はしっかりフリーに照準を合わせてきたのかなと思いますね。

 2位はソチ五輪銀メダリストのクセニア・ストルボワ&ヒョードル・クリモフ組。SPはほぼノーミスの演技で首位と好発進。しかしフリーは2度の転倒含めミスが散見され2位、総合2位とタラソワ&モロゾフ組に逆転を許しました。今季はジャンプに苦労している印象があるストルボワ&クリモフ組ですが、それ以外のエレメンツではおおむねレベル4は取れているので、あとはジャンプとツイストが課題ですね。ソチ五輪のメダリストがここからどれだけ調子を上げて、五輪の表彰台争いに絡んでくるか期待したいと思います。

 3位はナタリア・ザビアコ&アレクサンデル・エンベルト組。SPは全てのエレメンツを完璧にこなして3位と好位置につけましたが、フリーは2度転倒と荒れた演技に。しかし他の要素は目立ったミスはなく3位、総合3位と2年連続で銅メダルを手にしました。


《アイスダンス》

c0309082_16402567.jpg


 3連覇を達成したのはエカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組です。SDはステップやパターンダンスがレベル3にとどまったものの首位に立ち、FDもステップ2つがレベル3だった以外は全てレベル4を揃え、他のカップルを寄せつけることなく7個目の金メダルを獲得しました。SDは2位のカップルと僅差で、さすがのボブロワ&ソロビエフ組も次世代の風におびやかされてきているのかなと感じましたが、FDは底力で差を広げましたね。この勢いを持って五輪でどこまで上位に食い込めるか注目です。

 銀メダルを獲得したのは若手のアレクサンドラ・ステパノワ&イワン・ブキン組です。SDは技術点トップで首位と0.58点差の2位につけます。FDは得意のツイズルで女性のステパノワ選手がバランスを崩し思ったように点を伸ばし切れず2位、優勝には届きませんでした。フリーはもったいないミスがあり残念でしたが、絶対王者のボブロワ&ソロビエフに昨季よりも迫れたのは事実ですし、実力的にも拮抗する力を充分つけてきているなと思いますね。

 3位はティファニー・ザホースキー&ジョナサン・ゲレイロ組です。SDはリフトやパターンダンスでレベル4を取り70点台に乗せて3位と好発進。FDは前半のステップの途中で女性のザホースキー選手が体勢を崩しかける場面があり加点を稼げませんでしたが、そのほかの要素は確実にこなし4位、総合では3位と初めて表彰台に乗りました。今季はGP2試合に出場しましたが、4位&6位とそこまで際立った順位ではなかったザホースキー&ゲレイロ組。なので一気に台乗りというのは予想外でしたね。男女ともにロシア出身でないカップルというのはロシアでは異色ですが、このカップルが今後のロシアアイスダンス界を盛り上げていきそうで楽しみですね。



 さて、これらの結果を受けて決定された欧州選手権2018のロシア代表をまとめたいと思います(敬称略)。


《欧州選手権代表》

女子シングル:アリーナ・ザギトワ、マリア・ソツコワ、エフゲニア・メドベデワ
男子シングル:ミハイル・コリヤダ、アレクサンデル・サマリン、ドミトリー・アリエフ
ペア:エフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組、クセニア・ストルボワ&ヒョードル・クリモフ組、ナタリア・ザビアコ&アレクサンデル・エンベルト組
アイスダンス:エカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組、アレクサンドラ・ステパノワ&イワン・ブキン組、ティファニー・ザホースキー&ジョナサン・ゲレイロ組




 ロシア選手権のトップスリーがほぼそのまま選出された形ですが、女子だけは怪我で不出場だったメドベデワ選手が救済措置で代表入り。NHK杯以降、実戦から離れているメドベデワ選手が欧州選手権でどんな演技を見せるのか大注目ですね。そして、その欧州選手権を経て、五輪代表も発表されます。ですので、欧州選手権で実績を残すこともロシア選手権同様に非常に大切で、欧州選手権での演技があまりに悪ければ五輪代表入りを逃す可能性もあり、欧州選手権代表メンバーにとっては、まだまだ予断を許さない日々が続きそうですね。



 そうこうしているうちに年も明け、1月5日現在はアメリカで全米選手権が行われています。こちらも五輪代表を決める重要な大会ですので、終わりましたらできるだけ早めに記事にしてアップしたいと思います。では。


:記事内の画像は全て、フィギュアスケート情報サイト「Golden Skate」から引用させていただきました。

[PR]
# by hitsujigusa | 2018-01-05 00:58 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)