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 12月7日から10日にかけて日本の名古屋で行われたグランプリファイナル2017。前回の男子&ペア編に続き、今回は女子&アイスダンス編をお送りします。
 女子を制したのは今季シニアデビューしたばかりのロシアの新星、アリーナ・ザギトワ選手です。トータルで自己ベストをマークし、シニア1季目にして初優勝の快挙を達成しました。2位は同じくロシアのマリア・ソツコワ選手、3位はカナダのケイトリン・オズモンド選手となりました。
 アイスダンスはフランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組が世界最高得点を塗り替え、圧巻の初優勝を果たしました。

ISU Grand Prix Final 2017/18 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 優勝は昨季の世界ジュニア女王、ロシアのアリーナ・ザギトワ選手です。

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 SPはスピンで幕を開け、続いてステップシークエンスと、丁寧に確実にこなしてレベル4を獲得。後半に入りようやくジャンプが登場し、最初の3ルッツ+3ループを完璧に成功させて加点1.2を得ると、続く3フリップは若干着氷で乱れたものの最小限のミスに抑え、最後の2アクセルも成功。終盤の2つのスピンも問題なくクリアし、自己ベストとなる76.27点で2位と好発進します。
 フリーもジャンプは全て後半で、前半はコレオシークエンス、スピン、ステップシークエンスを比較的ゆったりした曲調の中でメリハリをつけながらこなしていきます。そして後半、最初はショートできれいに決めた得点源の3ルッツ+3ループ、これをクリーンに回り切って着氷すると、2アクセル+3トゥループはセカンドジャンプでバランスを崩しかけるも大きなミスなくまとめ、3+2+2も成功。次の3ルッツでも着氷ミスによる減点はありましたが、3サルコウ、3フリップ、2アクセルと終盤のジャンプは軽やかに決め、フィニッシュしたザギトワ選手はホッとしたような笑みを浮かべました。得点は147.03点でフリー1位、トータルでは223.20点とパーソナルベストをマークし1位となり、逆転で金メダルを手にしました。
 ショート、フリーともに細かなミスはありましたが、大勢に影響を及ぼすような致命的なミスはなく、シリーズ2戦と変わらない安定感を発揮しましたね。そのシリーズ2戦に関してはショートで出遅れて、フリーで驚異の追い上げを見せるというパターンが続いていたのですが、今回はショートでもミスを最小限にとどめて首位と僅差の2位につけ、フリーでも大きなミスはなしと、ザギトワ選手にとって理想的な試合運びができたのではないでしょうか。ファイナル初出場とあってさすがに緊張感の感じられる場面もありましたが、その中でも自分のペースを崩すことなく平常どおりの演技に徹する姿は腹が据わっているなという感じがしますし、シリーズ2戦での課題をしっかり克服してきたのもお見事でした。
 次戦のロシア選手権はまた今回とは違うプレッシャーがかかる試合になると思いますが、ここまでのシーズンで得た経験を活かして頑張ってほしいですね。ファイナル初優勝、おめでとうございました。


 2位に入ったのはロシアの成長株、マリア・ソツコワ選手です。

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 SPはまず得点源の3ルッツ+3トゥループから、両方のジャンプで片手を上げて跳び1.4点の加点を得ます。後半に組み込んだ3フリップ、2アクセルもクリーンに着氷。ステップシークエンス、スピンは全てレベル4と隙のない演技を披露し、パーソナルベストとなる74.00点で4位につけます。
 フリーも冒頭は3ルッツ+3トゥループ、これを確実に決めると、次いで3フリップも正確な踏み切りと着氷で加点1.4点を引き出します。後半に5つのジャンプ要素を固め、その最初の3ループは若干着氷で身体が傾いたものの、直後の3+1+3の高難度の連続ジャンプはきっちり成功。さらに3ルッツ、終盤の2アクセル+2トゥループ、2アクセルと全てクリーンに決め、ソツコワ選手は控えめながらも安堵したように微笑みました。得点はショートに続き自己ベストの142.28点でフリー2位、総合でも2位となり、銀メダルを獲得しました。
 今大会ショート、フリーともに全選手中最も安定感を発揮したと言えるソツコワ選手。昨シーズンは自身の高身長に対応し切れていなかったためか回転不足も多く見られましたが、今季はその癖もかなり修正されたように感じます。プログラムもソツコワ選手のエレガンスさ、可憐さを存分に活かした作りとなっていて、さらに演技全体で緩急をつけられるようになれば演技構成点の得点アップも望めるのかなと思いますし、まだまだ伸びしろの大きい選手ですね。
 オリンピック選考に関しては、ソツコワ選手といえども代表の座はまだ確定的ではありませんが、ロシア選手権でも今回のような演技ができればぐっとオリンピックは近づいてくるでしょうね。


 3位となったのは世界選手権2017銀メダル、カナダのケイトリン・オズモンド選手です。

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 ショート冒頭は得点源の3フリップ+3トゥループ、これを抜群のスピードと高さで決め1.4点の加点を得ると、続く3ルッツは踏み切りのエッジが不正確とされたもののしっかり加点を引き出します。後半の2アクセルも難なく下り、スピン、ステップシークエンスは全てレベル4に加え、加点は1点以上と高い質でまとめ、77.04点と世界歴代6位となる自己ベストを叩き出し、トップに立ちます。
 フリーもまずは3フリップ+3トゥループ、ショートに続いてパーフェクトに決めて1.6点の加点を獲得。さらに、2アクセル+3トゥループ、3ルッツも成功させ前半を最高の形で終えます。しかし後半に入ると、3ループが2回転に。3フリップはきれいに着氷しますが、3サルコウはアンダーローテーション(軽度の回転不足)で転倒。最後の2アクセルからの3連続ジャンプは成功させたものの、尻すぼみの演技となってしまい、演技を終えたオズモンド選手は疲れたように顔を曇らせました。
 昨季から継続している「パリの空の下/ミロール」のSPはいつもどおりの安定感でしたが、懸念だったフリー後半は予想どおりと言ったら失礼かもしれませんが、やはり崩れてしまいましたね。演技序盤のパワーがどうしても後半では萎んでしまうのがもったいないのですが、それでも一つ一つのエレメンツは手を抜くことなくしっかりこなしているので加点は稼げますし、演技構成点での評価も高いので、オリンピックの表彰台候補であることに変わりはないですね。ショートに関してはオズモンド選手本人も余裕と自信を持って臨めていると思いますので、あとはフリーの完成度をどれだけ高められるか、ミスを最小限にとどめられるか、カナダ選手権を経て、オリンピックでショート、フリーともに完成されるのを楽しみにしたいですね。


 惜しくも表彰台まであと一歩の4位だったのは、イタリアの大ベテラン、カロリーナ・コストナー選手です。

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 SP冒頭は得点源の3トゥループ+3トゥループでしたが、セカンドジャンプが2回転となってしまいます。直後の3ループはスムーズな流れで決め、後半の2アクセルも問題なし。ステップシークエンス、スピンは全部レベル4とそつなくこなしますが、コンビネーションジャンプのミスが響き、72.82点で6位にとどまります。
 フリーは3+3なしの構成で臨み、まず3フリップ+2トゥループを完璧に下りて1.3点の加点を得ると、続く単独の3フリップもパーフェクト。さらに3ループは加点1.5と前半のジャンプを申し分ない出来でクリアします。後半最初の3トゥループもノーミス。続いて2アクセル+1ループ+3サルコウでしたが、これは3つ目が2回転に。2アクセルは決め、最後の3+2はファーストジャンプで氷に手をつきかけますが何とかこらえセカンドジャンプに繋げます。最終盤のコレオシークエンス、ステップシークエンスでは2点という極めて高い加点を得るなど本領を発揮し、フィニッシュでは両手を合わせて喜びを抑えきれないというように破顔しました。得点は自己ベストに0.78点と迫る141.83点をマークしフリー3位、総合4位と順位を上げました。
 ショートもフリーも細かなミスはあったのですが、全体を通してコストナー選手らしさ、そして彼女の滑る喜びというのが滲み出るような素晴らしい演技でしたね。ジャンプの難度はほかの5選手と比べて圧倒的に劣りますが、それらを補って余りある表現力というのがやはり大きな武器となっていて、シリーズを勝ち残ったファイナリストたちというのは全員極めて素晴らしいスケーターですが、その中でもコストナー選手の滑りによって生み出される空気感や世界観というのはまた別次元というのを改めて感じて、思わず見とれため息がこぼれてしまいました。また、ステップはもちろん、ジャンプもスピンも非常に高い加点を引き出せるので、技術点でも充分に点を稼げますし、何より過去3度のオリンピックの経験というのはほかの誰も持っていない最強の強みであり、総合的に見てオリンピックでコストナー選手がメダルを取る可能性は大いにあるのではないかなと思います。
 4度目のオリンピックでコストナー選手がどんな集大成の演技を披露してくれるのか、期待ですね。


 5位となったのは日本のエース、宮原知子選手です。

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 SP冒頭は今季まだクリーンな成功がない3ルッツ+3トゥループでしたが、これをしっかり回り切って着氷します。後半の3ループ、2アクセルも危なげなく下り、スピン、ステップシークエンスは全てレベル4と完璧にまとめ、パーソナルベストに0.03点と迫る74.61点で3位と好位置につけました。

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 フリーはまず得意の3ループから、これはクリーンに回り切って成功させます。次いで得点源の3ルッツ+3トゥループでしたが、高さが足りず両ジャンプともアンダーローテーションと判定されます。続く若干苦手としている3フリップも勢いに欠け回転不足に。スピン2つとステップシークエンスは丁寧にこなしてレベル4を獲得し勝負の後半、最初の3+2+2を着氷すると、2アクセル+3トゥループも問題なく下ります。3サルコウ、2アクセルと残りのジャンプも確実に決め、最後は柔軟性を活かした美しいレイバックスピンで締めくくると、会場は割れんばかりの拍手に包まれました。ただ、得点はジャンプの回転不足が響き138.88点と伸び切らずフリー4位、総合5位と表彰台には届きませんでした。
 世界女王のエフゲニア・メドベデワ選手の辞退により、3年連続となるファイナル出場のチャンスが巡ってきた宮原選手。結果というよりも全日本選手権に向けた実戦感覚を養う場として臨み、SPは思い切りの良い演技でキャリアベストと言っても過言ではない演技を披露。フリーは序盤こそ慎重さが目立ち回転不足が続きましたが、そこから中盤の軽快かつ滑らかなステップシークエンスを経て、後半に入るとどんどんスピード感と力強さを増していって、息を呑むような迫力が感じられました。元々繊細で優雅な表現力の持ち主ではありましたが、左股関節の疲労骨折によって休養せざるをえなかった時期、表現力向上やスケーティング強化に力を入れてきたというのが、一つのプログラムの中での緩急や身のこなしの使い分けの巧みさからヒシヒシと伝わってきました。正直個人的にはフリーの演技構成点がオズモンド選手より下というのは納得がいかないのですが、ジャッジの宮原選手に対する評価が高まっているのは間違いないですから、一歩一歩着実にフィジカルを100%の状態に戻していけば、技術点も演技構成点ももっともっと上積みしていけるでしょうね。
 たった2枠しかない五輪代表の切符を狙う全日本選手権は、栄光も挫折も経験してきた宮原選手といえども難しい試合になるでしょうが、自分のペースで順調に調整することさえできれば“ミス・パーフェクト”の名にふさわしい演技が見られると思うので、楽しみにしたいですね。


 6位は日本の有望株、樋口新葉選手です。

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 SPは得意の2アクセルから、余裕たっぷりに成功させ1点の加点を得ます。後半に入り鍵となる3ルッツ+3トゥループもクリーンに着氷。最後の3フリップは踏み切りのエッジが不正確とされわずかにマイナス評価となりますが、ステップシークエンス、スピンは全てレベル4で、特にステップシークエンスでは躍動感に満ち溢れた滑りで観客を沸かせました。得点は73.26点で5位発進とします。

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 フリーも冒頭は2アクセルで、これはいつもどおり危なげなく着氷。続いて3ルッツ+3トゥループはいつもより高さが低めとなりましたがノーミスでまとめます。スピンを挟んで中盤の3サルコウはパンクして2回転に。そして後半の3ルッツ+3トゥループは、3ルッツが2回転となって予定どおりとはならず。直後の3ループはクリーンに決め、次の2アクセルに急遽3トゥループを付けますがオーバーターンの着氷に。3フリップ+2トゥループ+2ループは回転は問題ありませんでしたが、3フリップの踏み切りのエッジが不正確だったことにより減点。終盤のステップシークエンスやコレオシークエンスは丁寧にこなしそれぞれ1.4点の加点を獲得しましたが、実力を発揮し切れずフィニッシュした樋口選手はがっくりと肩を落としました。得点は128.85点でフリー6位、総合6位で初めてのファイナルを終えました。
 今大会は練習からジャンプの感覚が狂っていたとのことで、本番での立て直しに苦慮する様子がうかがえた樋口選手。SPはジャンプの数が少ないということもあって大きなミスなくまとめられましたが、フリーは冒頭から硬さが見受けられ、演技終盤は樋口選手にしては珍しくぐっとスピードが落ちて本来のキレのある滑りは見られませんでした。フリー後はかなり落ち込んでいるような様子で、「去年から何も変わっていない」というような発言もありましたが、たった一度の試合だけで樋口選手がこれまで地道に積み重ねてきたものが否定されるわけではありませんし、ファイナル前の3試合で得たものの方がファイナル1試合で失ったものよりずっと多いはずなので、気を落とさず全日本選手権に向かっていってほしいですね。
 ファイナルは悔しい試合になったと思いますが、樋口選手が1年前よりも強い選手になっているのは間違いないですから、気負いすぎずに自信を持って、全日本では笑顔が見られることを祈っています。



 ここからはアイスダンスです。

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 アイスダンスを制したのは前世界王者、フランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組です。SDは非接触のステップ以外は全てレベル4を揃え、軒並み高い加点を積み重ね、パーソナルベストを上回る82.07点をマークし首位発進。FDも2つのステップ以外は全てレベル4で、隅々まで非の打ちどころのない完全無欠に近い演技を披露し、自身が保持する世界最高得点に迫る120.09点を叩き出し、トータルでは自己ベストかつ世界最高を塗り替える202.16点をマークし、初優勝に花を添えました。
 今季は出場した全試合でSD、FDともに1位を逃していないパパダキス&シゼロン組。中国杯でアイスダンス史上初めて総合200点を突破してからというもの敵なしの快進撃を続けていますが、今大会も強敵の世界チャンピオン、テッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組が背後に迫っているのもお構いなしという感じでしたね。優勝を意識せざるをえないはずのFDも全く硬さを感じさせないゆとりのある滑りでしたし、演技構成点も徐々に10点満点を出すジャッジの数が増えてきて、オリンピックの頃にはどうなっているんだろうと今からワクワクします。その前にフランス選手権や欧州選手権があり、また世界最高得点の更新の可能性もありますから、パパダキス&シゼロン組がどこまで点を伸ばしていくかにも注目です。ファイナル初優勝、おめでとうございました。

 2位は現世界王者、カナダのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組です。SDは非接触のステップ以外で全てレベル4を獲得し自身が持つ世界最高得点に迫るハイスコアで2位につけると、FDも死角のない演技でパーソナルベストを更新、トータルでも自己最高をマークしましたが、パパダキス&シゼロン組には及ばず連覇は逃しました。
 ショート、フリーともに本当に完璧に近い演技だったと思うのですが、結果的にはパパダキス&シゼロン組に2点以上の差をつけられての2位ということで、ヴァーチュー&モイア組としてはパーソナルベストを更新した嬉しさなどよりも、優勝に届かなかった悔しさの方が大きいんじゃないかなと思います。たった2点差と言えばたった2点差なのですが、アイスダンスではなかなかこの2点差を埋めるのは難しく、パパダキス&シゼロン組が明確なミスでも犯さない限り、この格付けをシーズン中にひっくり返すのは厳しい状況です。それでもオリンピックでは実際に何が起こるかはわかりませんから、ヴァーチュー&モイア組にも五輪金の可能性はもちろんあって、その目標のために二人がこれからの約2ヵ月間で、どのようにプログラムを仕上げてくるか期待したいと思います。

 3位は全米王者のマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組です。SDは序盤のパターンダンスのレベルが2にとどまる取りこぼしがあり、自己ベストから約1点ほど低い得点で3位。FDは珍しく得意なツイズルで二人のタイミングがずれるミスがあり、その後のステップでもいつもほどの伸びのあるスケーティングではなくレベルも2どまりで、自己ベストから5点以上低い得点でまさかの6位に。しかしトータルでは4位のカップルを0.6点上回り、ギリギリで表彰台を死守しました。
 確かな技術力が最大の武器であるシブタニ兄弟にしては珍しいミスが散見されたフリー。演技後は兄のアレックス選手が特に疲労感を強く漂わせていて、キス&クライで点数が表示されると頭を抱えていましたが、何かいつもとは違う感じがあったのか、体の調子が悪かったのかはわかりませんが、予想外の演技ではありました。普段ミスらしいミスをするということがほとんどないカップルですので、滅多にないことが起こって二人の動揺も画面越しに伝わってきましたが、この経験も必ず今後の競技人生に活きてくるはずですから、全米選手権では満足のいく演技となることを願いたいですね。



 GPファイナル2017、女子&アイスダンス編は以上です。
 女子は大本命のメドベデワ選手が不在となり、シリーズのポイントランキングでメドベデワ選手に次ぐ2位のザギトワ選手が優勝と、下馬評どおりの結果でした。ただ、2位がソツコワ選手というのは少し意外で、驚くべき大技や目を引くような新鮮な特徴を持っている選手ではないのですが、確実に安定感をつけてきているなと感じました。そのソツコワ選手から5位の宮原選手までは3点差もなく、本当にちょっとしたミスや取りこぼしで順位が大きく左右された試合となり、現在の女子フィギュア界の混沌とした勢力図を如実に反映した結果と言えるのではないでしょうか。
 アイスダンスは予想どおりのワンツースリーの顔ぶれ。4位以下も順当な順位でしたが、あのシブタニ兄妹でさえもミスをすれば銅メダルは危うかったということで、試合は何が起こるかわからないなと改めて感じさせられましたね。
 ほとんどの選手は次戦は国内選手権になると思いますが、当ブログではこのファイナルと同時に開催されたジュニアのGPファイナルについての記事を次はアップしたいと思いますので、しばしお待ちください。では。


:女子メダリスト3選手のスリーショット画像、ザギトワ選手の画像、コストナー選手の画像、樋口選手の画像、アイスダンスメダリスト3組の画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、ソツコワ選手の画像は国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、オズモンド選手の画像、宮原選手の画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
グランプリファイナル2017・男子&ペア―ネイサン・チェン選手、ファイナル初制覇 2017年12月12日

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# by hitsujigusa | 2017-12-13 02:42 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 グランプリシリーズ全6戦を戦い抜いたトップ6のみが集まるグランプリファイナルが今年も行われました。今年の開催地は日本の名古屋でしたが、オリンピックの前哨戦としても見どころの多い、熱い試合となりました。この記事では男子とペアについてお伝えします。
 男子を制したのはアメリカのネイサン・チェン選手。チェン選手本来の演技とはなりませんでしたが、攻めの演技で接戦をものにしました。2位は日本の宇野昌磨選手。地元名古屋での試合でしたが、わずかな差で惜しくも優勝を逃しました。3位はロシアのミハイル・コリヤダ選手となっています。
 一方、ペアは世界選手権2017銀メダルのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組が完全優勝を果たしました。

ISU Grand Prix Final 2017/18 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 優勝は全米王者のネイサン・チェン選手です。

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 SP冒頭は代名詞の大技4ルッツ+3トゥループ、これはファーストジャンプでバランスを崩しかけながらもセカンドジャンプに繋げます。後半に跳んだ4フリップは若干着氷が乱れ減点。最後の鬼門の3アクセルはノーミスでまとめ、終盤のステップシークエンスではエネルギッシュかつ緻密な滑りで加点2.1点という高評価を得、自己ベストに迫る103.32点で首位発進します。
 フリーもまずは4ルッツ+3トゥループから、これを完璧に軽々と決めて加点2を獲得。しかし続く4フリップはショートに続き着氷が乱れて減点されます。さらに4サルコウは2回転にと、前半はミスが相次ぎます。スピンとステップシークエンスを挟んで後半、最初の4ルッツはアンダーローテーション(軽度の回転不足)で下りてきてしまい着氷も乱れます。次の4トゥループからの3連続ジャンプはクリーンに下りますが、直後の4トゥループはダウングレード(大幅な回転不足)で転倒。最後の3アクセル+2トゥループ、3ルッツは成功させましたが、フィニッシュしたチェン選手は残念そうに肩を落としました。得点は183.19点でフリーは2位でしたが、総合では1位となり、初優勝を遂げました。
 優勝したスケートアメリカから中1週間でのファイナルでしたが、そういった疲れや調整の難しさがあったのか、全体的にジャンプは安定しませんでしたね。フリーでは4回転に6本挑んできれいに決まったのは2本のみと、特定の4回転というよりは全体的に不安定でした。スケートアメリカの時もフリーは似たような演技内容だったので、その時の感覚を引きずっていたのか、約2週間という短期間で調子を上げられなかったのかなという印象です。それだけ4回転というのはチェン選手ほどの選手にとってもデリケートで、難しい技なのだということを改めて感じさせられますね。
 ただ、それでもファイナル優勝と、昨季の四大陸選手権に続きビッグタイトルを獲得し、大舞台での強さを発揮したチェン選手。最重要の大会としては全米選手権に照準を当てているでしょうし、このファイナル制覇も通過点に過ぎないと思うので、全米選手権ではより良い、納得のいく演技をして、オリンピックに繋げてほしいですね。ファイナル初優勝、おめでとうございました。


 銀メダルを獲得したのは日本の宇野昌磨選手です。

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 SPは代名詞の4フリップから、これをクリーンに決めて1点以上の加点を得ると、スピン、ステップシークエンスはレベル4に加えてどちらも1点以上の加点と丁寧にクリア。そして後半の4トゥループ+3トゥループを完璧に着氷し加点2を獲得し、残すは得意の3アクセルのみでしたが、着氷後にエッジが滑る形で転倒するという珍しい失敗となり、演技を終えた宇野選手は舌を出し、悔しさをのぞかせつつも破顔しました。得点は転倒による減点1と、演技時間超過による減点1もあり、101.51点で2位となりました。

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 フリーはまず4ループからでしたが、回転が足りずに転倒します。ですが、自身2度目の挑戦となる4サルコウは回り切って着氷し加点も1点以上獲得。さらに3アクセルは完璧な流れで加点2.86点と極めて高い評価を得て、前半のジャンプを終えます。後半は4フリップから、これを若干耐えながらも成功させると、続いては4トゥループでしたが着氷が大きく乱れます。2本目の4トゥループは空中で回転がほどけダウングレードとなりコンビネーションジャンプにもできず。続く3アクセル+1ループ+3フリップは完璧に下り、最後の3サルコウも難なく成功。最後までスピード感溢れる滑りで観客を魅了しましたが、細かなミス多発の演技にフィニッシュした宇野選手は天を仰いで悔しさを露わにしました。得点は184.50点でフリー1位、しかしトータルではチェン選手に0.5点及ばず、惜しくも逆転優勝はなりませんでした。
 ショートでは3アクセルの着氷後に通常よりエッジが傾き転倒、さらに演技が1秒タイムオーバーで減点1、そしてフリーでは練習で成功率の高い4トゥループで2本ともミス、また、2本目の4トゥループが空中分解したことによって3トゥループの本数を勘違いし、最後の3サルコウにセカンドジャンプをつけられるはずがつけられず結果的にコンビネーションが1つのみにと、宇野選手にしては珍しいシーンが相次いだ今大会。ですが、本人はそこまで優勝を逃したという意識はなさそうであっけらかんとしていて、ファンからして見れば0.5点差の2位は本当に惜しいと思ってしまいますし、もしショートのタイムオーバーがなければ、もしフリーで最後の3サルコウに2トゥループでもいいから付けていたら等々、“タラレバ”を想像してしまうのですが、宇野選手自身がその時々、その場面場面でのベストを尽くした結果の2位ですし、何より本人があれだけすっきりと晴れやかな表情をしているのを見ると、こちらもまあいいかという気がしてしまいますね。
 改めて今回感じたのは宇野選手の試合や演技に対するスタンスの独特さで、順位や点数ではなく、いかに自分がその試合に向けてしっかり練習を積めて、そしてどれだけ演技でベストを尽くせたか=攻めることができたかということが最重要ポイントなんだなというのがヒシヒシと伝わってきました。そして、その姿勢はシニア1季目からほとんど変わっていなくて、これだけシニアでの経験を積み重ねるともっと欲も出てきて、新人の頃の気持ちというのが薄れてもおかしくないと思うのですが、彼に関しては良い意味で全く変わっていなくて、周りの環境がどうであれ常にマイペースを保てていて、周りの自分を見る目やかけられる言葉にも全然翻弄されていないというのは、もの凄いことだなと再認識しました。
 次戦はオリンピック出場権が懸かる全日本選手権ですが、きっとその大舞台もいつもの宇野選手らしく淡々と乗り切ってくれると思いますから、また攻めの演技を楽しみにしています。


 銅メダルを手にしたのはロシア王者のミハイル・コリヤダ選手です。

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 SPは今季習得した大技4ルッツから、スピードや高さは充分でしたがあえなく転倒となります。ですが、直後の4トゥループ+3トゥループは完璧な跳躍で加点2。後半の3アクセルもクリーンに決めて1.86点を獲得し、スピン、ステップシークエンスは全てレベル4とそつなくまとめ、99.22点で3位と好発進します。
 フリーもまずは4ルッツからでしたが、ショート同様に転倒となります。次いで4サルコウも転倒。さらに3アクセルも着氷で乱れ、不穏なスタートに。しかし、後半は4トゥループ+3トゥループを決めると、3アクセル+2トゥループも成功。得点源となる3ルッツ+1ループ+3サルコウもクリーンに下ります。3ループはタイミングが合わなかったのかパンクして1回転となりましたが、最後の3ルッツは軽々と決め、軽快な「エルヴィス・プレスリー・メドレー」を躍動感たっぷりに演じ切りました。得点は182.78点でフリーも3位、総合3位となり、ファイナル初出場にして表彰台に立ちました。
 ショート、フリーともに4ルッツは成功せず、フリーは冒頭の2つのジャンプで転倒ということでどうなることかと少しヒヤッとする滑り出しでもありましたが、その後大崩れしなかったのはコリヤダ選手の最も成長した部分と言えますね。これだけミスがあってもトータル280点台というハイスコアが出ているわけなので、ここにショートもフリーも4ルッツがハマって、些細な凡ミスもなくまとめられれば、まだまだ大幅な上積みができる選手だと思うので、今後のシーズンも楽しみですね。一つ一つのエレメンツの質が高い選手でもあるので、オリンピックでノーミスに近い演技ができればメダル争いに食い込む可能性も大いにあるのではないかと思いますし、ぜひ台風の目のような存在になってほしいですね。もちろんその前にロシア選手権がありますし、そこで出場権を獲得して、さらにはロシアは選手団としての参加が不可能となったので、個人で参加するための資格も認められなければいけませんが、それらがクリアされた際には思いっきり頑張ってほしいと思います。


 4位はロシアの大ベテラン、セルゲイ・ボロノフ選手です。

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 ショート冒頭は得点源の4トゥループ+3トゥループ、これを確実に成功させると、続く3ルッツもクリーンに下りますが、ステップから直ちに跳ばなければいけないところジャンプに入るまでの構えが長かったため減点となります。また、後半の3アクセルも珍しく乱れ、87.77点で5位発進となります。
 フリーもまずは4トゥループ+3トゥループ、これをショートと同じく完璧に決めて加点2を得ると、ショートでミスのあった3アクセルも危なげない跳躍と着氷で加点2.14と上々の出だしとします。しかし2本目の4トゥループは着氷ミス。スピンとコレオシークエンスを挟んで後半、最初の3アクセル+2トゥループ+2ループはしっかり回り切って成功。さらに3ルッツ、3+2,3ループ、そして最後の2アクセルとリズミカルにジャンプを次々と決め、締めくくりのステップシークエンス、スピンも力強くこなし、演技を終えたボロノフ選手は満面に笑みを浮かべました。得点は178.82点でフリー4位、総合4位と順位を一つ上げました。
 細かいミスはところどころありましたが、今季を通じての安定感は今大会も存分に発揮されましたね。特にフリーは今季一番なんじゃないかというくらいボロノフ選手自身も乗っていて、NHK杯やスケートアメリカはフィニッシュは肩で荒い息をして疲れ切ったというような表情を見せていましたが、今回はそこまで息絶え絶えという感じではなく余裕も感じられて、シーズンの中でも進化しているというのがうかがえましたね。
 ボロノフ選手に関しては、ジャンプの基礎もしっかりしていますし、精神面も非常に充実しているというのは間違いなさそうですから、あとはロシア選手権でいつもどおりの実力を発揮さえすれば、おのずと五輪の切符は近づいてくると思いますので、期待したいですね。


 5位はアメリカのベテラン、アダム・リッポン選手です。

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 SP冒頭は3フリップ+3トゥループ、これをクリーンに成功させると、続く3アクセルもパーフェクトで両方とも1点以上の加点を得ます。しかし、後半の3ルッツは回転が足りず減点。スピン、ステップシークエンスは全てレベル4と安定感抜群で、86.19点で6位につけます。
 フリーは冒頭で大技4ルッツに挑戦、しかしスケートアメリカに続きダウングレードで激しく転倒してしまいます。しかし、直後の3フリップ+3ループは回り切って着氷。次いで2アクセルも問題なく下り、挽回します。後半最初は3アクセルからの連続ジャンプ、これを完璧に決めると、単独の3アクセルも軽やかに成功。3+3はファーストジャンプもセカンドジャンプもわずかに回転不足と判定されますが、終盤の3サルコウ、3ルッツはクリーンにまとめ、“鳥”をモチーフにした物語性豊かなプログラムを終始しっとりと演じ切りました。得点は168.14点でフリー5位、総合5位で大会を終えました。
 2週間前のスケートアメリカではフリー冒頭の4ルッツで転倒し激しく右肩を氷に打ちつけ脱臼。しかしすぐに肩をはめ演技を続け観客から拍手喝采を浴びたリッポン選手。今大会もその右肩に痛みは多少残っているとのことでしたが、ショートもフリーもリッポン選手らしさは変わらずでしたね。細かなジャンプミスはありましたが、ささやかなものですし短期間でも修正は充分可能でしょう。あとはフリーで挑み続けている4ルッツを全米選手権でも組み込むのかどうかという点が注目ですが、リッポン選手の唯一無二の完成された表現力、エレメンツのクオリティーの高さを考えると、4ルッツなしでも3位以上には入れるんじゃないかという気もしますし、一方で爆発力のあるジャンプ構成を組める若手選手もアメリカにはいるので、確率が低くとも4ルッツを外せない事情も理解できますね。やはりアメリカ男子はチェン選手以外は実力が拮抗している印象ですので、リッポン選手がその過酷なレースを勝ち抜いてオリンピックにたどり着くためには、まずはショートでミスをしないこと、そしてフリーで4ルッツのミスを最小限に抑え、そのほかのエレメンツを完璧にまとめる必要があるのかなと思います。
 リッポン選手にとって今回がオリンピックへのラストチャンスになる可能性が高いですから、全米選手権で悔いのない演技をして、あの素晴らしい2つのプログラムを五輪の大舞台でも見せてほしいと思います。


 6位はアメリカのジェイソン・ブラウン選手です。

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 SPはまず鍵を握る3アクセルから、これをクリーンに着氷させ1.43点の加点を得ます。続く3+3はセカンドジャンプでステップアウトしますが、後半の3ルッツは余裕を持って成功。ステップシークエンス、スピンでも軒並み高い加点を積み重ね、89.02点で4位と好位置につけます。
 フリーも4回転は回避。冒頭の3アクセルは何とかこらえて成功。次いで2本目の3アクセルはコンビネーションにしなければならないジャンプでしたが、回転不足で転倒してしまいます。次の3フリップは難なく下り、中盤のステップシークエンスも丁寧に、正確なエッジワークでこなしレベル4に加え、加点1.7点を獲得。そして後半はNHK杯から構成を変更しまず2アクセル+3トゥループでしたが、着氷で若干乱れます。続いて3ルッツ、3ループとクリーンに決めますが、3+1+3の3連続ジャンプは3+1+2に。最後の2アクセルは危なげなく決め、繊細かつダイナミックなプログラムの世界観を全身を使って余すことなく表現しました。得点は164.79点でフリー6位、総合6位と順位を落としました。
 中国の金博洋(ジン・ボーヤン)選手の辞退により、約1週間前に初のファイナル出場が決まったブラウン選手。調整としては難しさがあったと思いますし、各ジャンプもブラウン選手本来のゆとりのある跳躍ではなかったかなと感じました。NHK杯の時も3アクセルに苦戦している印象でしたが、3アクセルはブラウン選手の生命線なので、これが決まってこないと点数的には厳しいですね。ただ、いくつジャンプのミスがあっても表現を疎かにしないのがブラウン選手の凄さでもあって、演技構成点はショートで3位、フリーで2位と確固たる高評価は揺るいでいないので、全米選手権に向けてジャンプの調子を取り戻して、うまくピークを合わせてオリンピックの切符を再びつかんでほしいですね。



 ここからはペアです。

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 金メダルを獲得したのはドイツのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組。ショートは全ての要素を高い質で揃え、自己ベストに0.43点と迫るハイスコアで首位に立つと、フリーは冒頭の3ツイストがレベル3だった以外は全てレベル4で、GOEも全て加点を引き出し、フリーの世界歴代最高得点となる157.25点を叩き出し、トータルでも世界歴代2位のスコアをマークし、圧巻の初優勝を成し遂げました。
 ショート、フリーともにとにかく強かったとしか言いようのない演技でしたね。もちろん世界選手権の銀メダリストなので優勝してもおかしくなかったのですが、ここまでの強さを見せつけて優勝するとは想像以上でした。二人の好調さがピタリと今大会にハマったのでしょうが、スケートアメリカから中1週間でさらに一段階も二段階もレベルを上げてきたというのは驚くべきことです。また、結成してからまだ4季目ということを考えても(実戦デビューからは3季目)、ほかのトップペアと比べて日が浅い中でこれだけ年々急激に進化できるというのは、よほど二人の相性が良くないとできないことだと思いますし、そういったパートナーを見つけられたというのはお互いにとって本当に幸運なことだったのだなと今更ながら感じましたね。
 オリンピックの優勝候補としてますます期待を高める演技を見せてくれたサフチェンコ&マッソ組。オリンピックで金メダルを手にするためには再び今回のような演技が求められると思いますが、1シーズン中に二度もこれほどまでの演技をするのは大変だと思います。オリンピック前には欧州選手権もありますから、うまく調整してオリンピックでの最高の演技を楽しみにしたいですね。

 2位となったのは現世界チャンピオン、中国の隋文静(スイ・ウェンジン)&韓聰(ハン・ツォン)組です。SPは冒頭の3トゥループで男性の韓選手が転倒するという滅多にないミスがあり、首位と僅差の3位にとどまります。フリーもサイドバイサイドの3サルコウで韓選手に着氷ミスがあったものの、高難度の大技4ツイストや3+2+2の3連続コンビネーションジャンプ、2つのリフトなど得点源となるエレメンツは完璧に成功させ、NHK杯でマークした自己ベスト(=当時の世界最高得点)に0.03点と迫るハイスコアで2位と追い上げましたが、サフチェンコ&マッソ組には届かず初優勝はなりませんでした。
 ソロジャンプにも安定感のある隋&韓組にしては珍しくショート、フリーともにミスがありましたが、演技自体の完成度はさすがのもの。フリーはしっかり巻き返したのですが、ショートで勢いをつけたサフチェンコ&マッソ組を止めることはできませんでしたね。正直、今回のファイナルは隋&韓組の優勝はほぼ間違いないであろうと思っていたのでこの結果は意外でしたが、ジャンプは水物とよく言われますので、韓選手にとってはその調子の悪い時にあたってしまったのかなという感じですね。根本的な技術面の問題があるわけではないと思うので、長いシーズンの中での小休止ととらえるくらいが良いのかもしれません。とはいっても3試合連続でフリー150点台、トータル230点台ですから、すごいことに変わりはないのですが。
 残念ながらファイナル初制覇はなりませんでしたが、それでもオリンピックの優勝候補筆頭であることは間違いないですから、今大会で得た課題や収穫を活かして、オリンピックではベストな演技ができるよう祈っています。

 3位は世界選手権2015、2016のチャンピオン、カナダのメーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組です。SPはサイドバイサイドの3ルッツでこらえる着氷となり、スロー3ルッツでも氷に手をつくミスを犯し5位にとどまります。フリーは大技のスロー4サルコウは転倒、3+2+2のコンビネーションジャンプが3+2+1となるミスがありましたが、そのほかのエレメンツはおおむねコンスタントにまとめてフリー3位、総合3位と順位を上げました。
 演技としてもスコア的にもデュハメル&ラドフォード組の絶好調だった時にはまだ少し遠いかなという内容でしたが、その中でも接戦の3位争いを制することができたというのはシーズン後半に向けて貴重な財産であることは間違いないでしょう。現在世界をリードしているサフチェンコ&マッソ組、隋&韓組とはエレメンツの精度において差があるように思いますが、デュハメル&ラドフォード組もクリーンにまとめられれば高い加点の付く技を多く持っているペアですし、何といってもトップペアでも稀なサイドバイサイドの3ルッツやスロー4サルコウという武器もありますから、その武器を最大限活かせるフィジカル面とメンタル面のコンディションさえ整えば、オリンピックでも充分優勝争いに絡めるペアだと思いますね。まずはカナダ選手権で納得のいく演技をして、オリンピックに繋がることを願っています。



 GPファイナル2017、男子&ペアの記事は以上です。
 男子は終わってみればシリーズのポイントランキングどおりの順位ということで、順当な結果ではあったのですが、上位3選手はミスが散見される演技となり、4回転多種類複数の時代の弊害も感じさせられました。4回転を3種類以上というのが当たり前になっている中で、ショートはともかくとして、フリーをクリーンにまとめるのは至難の業となっていますが、オリンピックではぜひ極力ミスの少ない演技で優勝争い、メダル争いが繰り広げられることを願いたいですね。
 ペアは私個人の予想とはだいぶ違う方向に行ってしまい、特に世界選手権銅メダリストのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組が5位となったのが最大の予想外ではあったのですが、3位から6位までは約4点差だったので、裏を返せば現時点ではサフチェンコ&マッソ組と隋&韓組の実力が抜きん出ているというのが明確に露わになった試合でもありましたね。となると、オリンピックの銅メダル争いがどうなっていくのか……、今から楽しみです。
 ということで、女子&アイスダンス編に続きます。


:男子メダリスト3選手のスリーショット画像、チェン選手の画像、宇野選手の画像、リッポン選手の画像、ペアメダリスト3組の画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、コリヤダ選手の画像、ボロノフ選手の画像、ブラウン選手の画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
グランプリファイナル2017・女子&アイスダンス―アリーナ・ザギトワ選手、パーソナルベストで初優勝 2017年12月13日

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# by hitsujigusa | 2017-12-12 02:44 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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※2017年12月2日、GPファイナルの辞退選手と追加選手について追記しました。


 グランプリシリーズ第6戦、スケートアメリカが11月24日から26日にかけてレークプラシッドにて行われました。今回はその女子とペアについてお伝えします。
 女子は日本のエース、宮原知子選手が優勝。股関節の疲労骨折からの復帰2戦目での劇的な優勝で、オリンピック出場に向けて一歩前進しました。そして2位には同じく日本の新星、坂本花織選手が入り、日本勢のワンツーフィニッシュというこれ以上ない結果となりました。3位はアメリカの伏兵、ブラディー・テネル選手となっています。
 ペアは世界選手権2017銀メダリストのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組が制し、ファイナル進出を決めました。

ISU GP Skate America 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 女子の覇者となったのは昨年のGPファイナル銀メダリスト、宮原知子選手です!

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 SP冒頭は得点源の3ルッツ+3トゥループ、回転は充分だったもののセカンドジャンプで軽くステップアウトします。しかし、その後の2つのスピンで確実にレベル4を取り、加点も稼ぐと、後半の3ループ、2アクセルはきっちり成功。ステップシークエンスではレベル4に加え、1.7点という極めて高い加点を得、最後のレイバックスピンもレベル4かつ1点以上の加点で、ミスを重ねませんでした。得点はシーズンベストとなる70.72点で堂々のトップ発進となりました。

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 フリーはまず3ループから、回転はギリギリになりましたが認定され加点も得ます。そしてショートでミスのあった3+3、今度は着氷もクリーンにまとめ加点を獲得。若干苦手としている3フリップは踏み切りのエッジも着氷も問題なく跳び切り、上々の前半とします。レベル4のスピン2つとステップシークエンスを挟んで後半、3+2+2を完璧に下りると、2アクセル+3トゥループも成功。NHK杯ではパンクした3サルコウもきれいに着氷し、最後の2アクセルもクリアし、最後はほとんどのジャッジが加点3を与えるレイバックスピンでしっとりとプログラムを締めくくり、観客からスタンディングオベーションを受けました。得点は自己ベストに0.38点に迫る143.31点でフリーも1位、総合1位となり、2年ぶりにGPの頂点に立ちました。
 ミスらしいミスはショートの3+3のステップアウトのみと、本当に素晴らしい演技でした。前回のフランス大会の記事の最後にスケートアメリカで宮原選手が優勝争いに絡んでくれたらと書きましたが、願った以上の見事な内容とスコアでした。宮原選手や濱田美栄コーチにとってもこのスコアは意外だったというのが、キス&クライでの驚きぶり、喜びようから伝わってきましたが、特に濱田コーチは宮原選手本人よりも喜んでいるという印象で、股関節の疲労骨折で練習の虫だった教え子が練習ができなくなり、苦悩しながらもリハビリに取り組んでいる姿を横でずっと見守ってきたコーチだからこそ、感情を抑えきれないくらい嬉しかったんだろうなと感じました。
 演技そのものに関しては、NHK杯の時点でも11か月ぶりの実戦とは思えないくらい戻ってきているなと感じましたが、今回はそこからたった2週間でさらに何段もステップアップしたと言える内容で、改めて宮原選手が秘めている底力の底知れなさを思い知らされました。それだけ質の高い練習を2週間で積めたということでもあるでしょうが、怪我をする前に培ってきた技術が今でもしっかり活きているということでもあると思います。そして、何より表現面が1年前よりもさらに上手になっていて、緩急、メリハリの付け方、表情でのジャッジや観客への訴え方、体の使い方の大きさ、スピード感、全ての面において進化しているなと感じました。故障で生じたブランクもただ空白の期間として消化するのではなく、来たるべき勝負の時に備えてプログラムの表現に役立つ勉強をしたり、ジャンプが跳べなくてもスケーティングを強化したりとしっかり成長する時間に変えていて、怪我をする前よりも強くなって帰ってきたということにただただ称賛と脱帽せざるをえません。
 今大会の優勝によってポイントランキング7位となった宮原選手。ファイナル進出を決めているロシアのエフゲニア・メドベデワ選手が疲労骨折しており、ファイナルを辞退するかもしれないという現状でもあり、もしかしたら宮原選手にもファイナルのチャンスが回ってくるかもしれません。ただ、あまり連戦が続くと故障の再発の可能性もないではないので、今後のメドベデワ選手の動向が気になるところなのですが、宮原選手は全日本に向けて頑張りすぎずにじっくりと調整していってほしいですね。スケートアメリカ優勝、おめでとうございました。


 銀メダルを獲得したのは世界ジュニア選手権2017銅メダリスト、日本の坂本花織選手です。

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 SPは全てのジャンプを後半に組み込んだアグレッシブな構成で臨み、まずはスピンとステップシークエンスを丁寧にこなすと、後半に入り最初の3フリップ+3トゥループを目を見張るような高さと幅で決め加点1.4点を獲得。さらに3ループ、2アクセルと続けざまにクリーンなジャンプを続けます。最後のスピンは珍しく途中でバランスを崩しレベルを落とした上に加点を伸ばせず、フィニッシュでは少し悔しそうな表情も滲ませました。それでも得点は69.40点で自己ベストを更新し、2位と好発進しました。

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 フリーも最初のジャンプは得点源の3+3から、これをショート同様に抜群の高さと飛距離で決めて加点1.3を得ると、続く3サルコウも完璧で同じく1.3の加点が付きます。次いでステップシークエンス、スピンとレベル4を揃え、5つのジャンプ要素が集中する後半、まずは若干苦手としている3ルッツをクリーンに成功。さらに3+2を下りると、2アクセル+3トゥループ+2トゥループも着氷。終盤の3ループ、2アクセルも難なく下り、演技を終えた坂本選手はぴょんぴょんと跳びはねガッツポーズで喜びを露わにしました。得点は自己ベストを13点以上更新する141.19点でフリーも2位、総合でももちろん2位でGPデビュー2戦目にして表彰台に立ちました。
 GPデビュー戦のロシア大会から約1か月でしたが、見違えるように素晴らしい演技でした。前回もショートはほぼノーミスで4位と良い滑り出しだった一方、フリーは緊張も手伝ってか終始硬い滑りに終わり、悔しさと課題の残る試合となってしまいましたが、今回のフリーは終盤になっても全く疲れの色が見えず、むしろどんどん元気になっていくような感じさえあって驚かされましたね。元々ジャンプ能力の高い選手で、そのジャンプがことごとくきれいに決まったことによって気持ち的に乗っていったというのはあると思いますが、表現面でも細かい動作がふんだんに盛り込まれた「アメリ」のプログラムを、細部まで疎かにせず丁寧に滑っている感じがうかがえて、1か月でこんなにも成長するものなんだなとビックリしました。
 この結果によってオリンピック代表候補として存在感を強くアピールできた坂本選手。今回演技後に感じたであろう歓喜、達成感というのを大切にして、今大会以上に緊張するかもしれない全日本選手権でも、坂本選手らしいのびやかでダイナミックな演技をして、再びあの弾けんばかりの笑顔とガッツポーズを見せてほしいと思います。


 銅メダルを手にしたのはアメリカの成長株、ブラディー・テネル選手です。

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 SPは「映画『ブラザーフッド』より」。冒頭は得点源の3ルッツ+3トゥループ、これをしっかり回り切って着氷し好スタートを切ると、後半の3ループ、2アクセルも危なげなく成功。スピンも全てレベル4とそつなくまとめ、67.01点と自己ベストをマークし、4位と好位置につけます。
 フリーは「映画『シンデレラ』より/バレエ「シンデレラ」より」。まずはショートでも完璧に決めた3+3を再びクリーンに成功。続いて2アクセル、3フリップと問題なく決めます。後半に入っても勢いは衰えず、2アクセル+3トゥループを成功させ、3+2+2も着氷。残りの3ルッツ、3サルコウもクリーンに下り、終盤の2つのスピンではどちらも加点1以上と最後まで気を緩めずこなし、フィニッシュしたテネル選手は観客から喝采を浴びました。得点は137.09点とショートに続き自己ベスト更新、フリー3位、総合3位でGPデビュー戦にして表彰台を射止めました。
 今季から本格的にシニアに参戦し、9月に行われたチャレンジャーシリーズのロンバルディア杯では200点に迫る高得点で4位と好調さをうかがわせていたテネル選手。とはいえ、まさか彼女がこのスケートアメリカでいきなり表彰台に立つとは予想外でした。ですが、メダルに価する演技だったことは間違いないですし、テネル選手の演技を見るのは初めてだったのですが、ジャンプもスピンも安定していて、総合力の高い選手だなと感じました。課題としてはテレビの解説で織田信成さんもおっしゃっていたように直線的な動きが目立つかなという感じなので、それはこれからの伸びしろとしてさらに良くなることを期待したいですね。
 アメリカ女子は今大会に出場していた全米女王のカレン・チェン選手が下位に沈み、ベテランのアシュリー・ワグナー選手は足の感染症による痛みでフリーを棄権、また、実力者のグレイシー・ゴールド選手は摂食障害とうつ病の治療でオリンピックを断念と、オリンピック出場権争いは混沌とした状況がますます強まっていますが、その中でダークホースのテネル選手は言い方は悪いですが不気味で存在感を漂わせています。4年前のソチ五輪ではシニアでの実績がほぼなかったポリーナ・エドマンズ選手が全米選手権で2位に入り切符を手にしたという過去がありますが、テネル選手もそういったシンデレラガールになれるのか、全米選手権に向けてここからが本当の勝負と言えそうです。五輪を意識しすぎてしまうと、今回のような心の余裕、のびやかさが失われてしまうリスクもありますから、何よりもメンタルの強靭さが求められそうですね。


 4位に入ったのはロシアの新星、ポリーナ・ツルスカヤ選手です。

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 SP冒頭は得意の3ルッツ+3トゥループ、これを余裕を持って成功させると、スピン、ステップシークエンスも目立ったミスなく丁寧にこなします。後半に2つのジャンプを組み込み、その最初は3ループでしたが転倒。さらに焦ったのか2アクセルでもステップアウトと後半にミスが続き、63.20点で8位と出遅れます。
 フリーもまずは3+3からで、しっかり回り切って着氷させ1.2点の加点を獲得。次いで3フリップもクリーンに下ります。中盤に入り2アクセル+3トゥループ+2トゥループは後半に跳ぶ予定でしたが、わずかに時間が早く後半のジャンプとしては認められず、またセカンドジャンプが若干詰まり3連続ではなく2連続にとどめます。次の3ルッツは難なく成功。3サルコウに2つの2トゥループを付け3連続にする冷静なリカバリーも見せ、残りの3ループ、2アクセルもクリーンに着氷。演技後、ツルスカヤ選手は小さくうなずき納得したような表情を見せましたが、得点は132.36点と思ったほど伸びず、フリー4位、総合4位で表彰台には届きませんでした。
 ショートでは思いがけないジャンプミスが2つあって8位スタートとなったツルスカヤ選手。巻き返しを狙ったフリーはミスらしいミスはほとんどなくて安定した技術と心の強さを印象付けるには充分でしたが、一つ一つのジャンプを見るとNHK杯よりは少し余裕がなくて、その部分で加点を稼げなかったですね。ほかにもNHK杯と今大会との違いということで言えば、シニアデビュー戦だったNHK杯は失うものが何もなく思い切ってぶつかっていけたけれども、今回はファイナルの出場が懸かるという点で守りの気持ちや慎重さが生じてしまったのかなと想像します。ただ、際立った才能の持ち主であることはこの2戦で存分に伝わってきましたから、GPで得た経験は良いことも悪いことも全て肥料になると思うので、ロシア選手権で全てをぶつけて今のベストを尽くしてほしいですね。


 5位は同じくロシアの若手、セラフィマ・サハノヴィッチ選手です。

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 SPは「And The Waltz Goes On」。まずは得点源の3フリップ+3トゥループ、若干詰まり気味ながらも回り切って成功させます。後半の3ルッツでは両手を上げて跳び、2アクセルもクリーンに着氷。スピンは全てレベル4とそつなくこなし、パーソナルベストに0.3点と迫る66.28点で5位につけます。
 フリーは「アランフェス協奏曲」。冒頭はショートと同じ3フリップ+3トゥループ、これをショートよりもスムーズな流れで決め1.1点の加点を獲得。さらに3ルッツは両手を上げて跳び切りこちらも1.1点の加点を得、2アクセルも着氷と完璧な前半とします。後半は最初の3サルコウ+3トゥループを決めますが、次の2アクセルはパンクして1回転に。3+2、3ループはクリーンに着氷し、スピンは全てレベル4とまとめ、滑り終えたサハノヴィッチ選手は安堵したように微笑みました。得点は自己ベストに1.91点と迫る123.47点でフリーも5位、総合5位でGP自己最高位をマークしました。
 同じロシアのアンナ・ポゴリラヤ選手が怪我のため辞退し、その代役としてチャンスが巡ってきたサハノヴィッチ選手。フリーは前の滑走者だったワグナー選手が演技中に棄権し、サハノヴィッチ選手は通常とは違う演技前の準備を余儀なくされましたが、その動揺はほとんど見られない落ち着いた演技でしたね。3ルッツや3フリップで両手を上げるなど昨季からの進化、工夫も見られましたし、ジャンプの着氷後の流れや苦手としている2アクセルの克服といった課題はあるかなと思いますが、着実な成長が感じられる演技でした。サハノヴィッチ選手の変化と言えば、今季からあのエフゲニー・プルシェンコさんに師事しているというのも新たな試みで、プルシェンコさんほどの経験豊富な名選手がついているとなれば、サハノヴィッチ選手もこれからどんどん伸びてくるんじゃないかなと楽しみですね。


 6位は世界選手権2017銅メダル、カナダのガブリエル・デールマン選手です。

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 ショート冒頭は得意の3トゥループ+3トゥループ、これを抜群の高さで飛び切り1.9点という極めて高い加点を得ます。しかし、後半の3ルッツ、2アクセルはそれぞれ着氷で乱れがあり、68.08点で3位発進となります。
 フリーもまずは3トゥループ+3トゥループで、ショート同様にクリーンに決めて1.8点の加点を獲得。前日は失敗した3ルッツも1.1点の加点を引き出す出来で成功させ、次いで3フリップも着氷と上々の出だしとします。レベル4のスピンとステップシークエンスを挟んで後半、最初は得意の3ルッツでしたが、着氷が乱れコンビネーションにできず。さらに3ループは1回転にとミスが重なります。2アクセルは決めますが、最後の3サルコウも乱れ、フィニッシュしたデールマン選手は顔を曇らせました。得点は121.06点でフリー8位、総合6位と順位を大きく落としました。
 今季はフィンランディア杯、中国杯ともに6位と、世界選手権のメダリストとしてなかなか本領が発揮できていないデールマン選手。面目躍如を狙った今大会だったと思うのですが、またもや6位と本来のデールマン選手の演技は見られませんでしたね。世界選手権の銅メダリストであるという肩書きが彼女を硬くさせているのか、それともオリンピックシーズンという特別感が余計な緊張感を生み出しているのかはわかりませんが、昨季の終盤に見られた思い切りの良さが鳴りを潜めているような気がします。ジャンプの調子自体がそんなに悪いようには見えないので、気持ち的な問題とスタミナ面の問題なのかなと思いますね。



 ここからはペアの結果です。

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 優勝は世界選手権2017銀メダリスト、ドイツのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組です。SPはサイドバイサイドの3サルコウで転倒、スピンでも取りこぼしがあり72.55点で3位にとどまります。フリーも3+2+2の3連続ジャンプが3+1+1になるミスはあったものの、そのほかは目立ったミスなくまとめ、出来栄え点でも冒頭の3ツイスト以外は全て加点1以上と死角のない演技を披露し、自己ベストの150.58点をマークしフリー1位、総合1位と逆転でGP3勝目を上げました。
 ショートこそ3位でしたが1位との点差は2点もなく、サフチェンコ&マッソ組としては思い切り演技できる良い条件でしたね。シーズン前半のこの時期でフリー150点台というのは素晴らしいというほかないですが、まだまだ細部まで改善できるところは多々あるでしょうから、さらなるレベルアップ、ブラッシュアップに期待したいと思いますし、ファイナルでも好演技を楽しみにしています。スケートアメリカ優勝、おめでとうございました。

 2位は中国の于小雨(ユー・シャオユー)&張昊(ジャン・ハオ)組。ショートは全てのエレメンツで加点を引き出す確実性の高い滑りを見せ、自己ベストに約2点と迫るスコアで2位と好位置につけます。フリーはペアコンビネーションスピンで2人の回転がずれてしまうミスがあり加点が取れない場面はありましたが、それ以外のエレメンツは軒並み高い加点を積み重ね、自己ベストを9点以上更新。トータルでも自己ベストをマークし、2年連続のファイナル進出を決めました。
 ショート、フリーともに安定感抜群だった于&張組。中国杯では鬼門となっているソロジャンプでミスが複数ありましたが、そうした課題も今回はしっかり修正されていて、ペアとして一段階レベルを上げたという感じがしますね。ただ、スピンでのミスはもったいないところで、こういった凡ミスがなくなればオリンピックでもメダルを狙えるペアになるでしょうから、次戦のファイナルでの演技にまずは期待ですね。

 3位は前世界チャンピオン、カナダのメーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組。SPは3ツイストとペアコンビネーションスピンがレベル2にとどまり、サイドバイサイドの3ルッツでもミスがありましたが、全体的に加点は稼いで首位に立ちます。フリーは冒頭の3ツイストが再びレベル2に。さらに3ルッツは回転不足で転倒とミスが相次ぎます。大技のスロー4サルコウは最小限のミスに抑えますが、デススパイラルやスピンがレベル2となる取りこぼしもあり、自己ベストより10点以上低いスコアでフリー3位、総合3位と優勝を逃しました。
 前回のスケートカナダで久しぶりにデュハメル&ラドフォード組らしい演技を見せ優勝しましたが、今大会は細かいミスが散見され完全復活とまではいきませんでしたね。ただ、修正するのにそこまで時間がかかるようなミスではないと思うので、次戦のファイナルではオリンピックにも繋がるような演技をしてほしいと思います。



 ということで、スケートアメリカ2017、女子&ペア編は以上です。女子はファイナル最後の1枠を争うツルスカヤ選手がショートで8位と出遅れ、ワグナー選手がフリーを棄権と、思いがけない形で日本の樋口新葉選手が切符を獲得しました。結果的に日本の2人―宮原選手、坂本選手―が樋口選手をアシストする形となり、ここまでシリーズ全体を通して苦戦を強いられていた日本女子でしたが、最後の最後にドラマチックなハッピーエンディングとなりましたね。
 では、そのファイナルの進出者を一覧にまとめます(敬称略)。


《女子シングル》

①エフゲニア・メドベデワ(ロシア):30ポイント ロシア大会優勝、日本大会優勝
②アリーナ・ザギトワ(ロシア):30ポイント 中国大会優勝、フランス大会優勝
③ケイトリン・オズモンド(カナダ):26ポイント カナダ大会優勝、フランス大会3位
④カロリーナ・コストナー(イタリア):26ポイント ロシア大会2位、日本大会2位
⑤マリア・ソツコワ(ロシア):26ポイント カナダ大会2位、フランス大会2位
⑥樋口新葉(日本):24ポイント ロシア大会3位、中国大会2位
―――
補欠⑦宮原知子(日本):22ポイント 日本大会5位、アメリカ大会優勝
補欠⑧坂本花織(日本):20ポイント カナダ大会5位、アメリカ大会2位
補欠⑨ポリーナ・ツルスカヤ(ロシア):20ポイント 日本大会3位、アメリカ大会4位



《ペア》

①隋文静&韓聰組(中国):30ポイント 中国大会優勝、日本大会優勝
②エフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組(ロシア):30ポイント ロシア大会優勝、フランス大会優勝
③アリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組(ドイツ)28ポイント カナダ大会2位、アメリカ大会優勝
④メーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組(カナダ):26ポイント カナダ大会優勝、アメリカ大会3位
⑤クセニア・ストルボワ&ヒョードル・クリモフ組(ロシア):26ポイント ロシア大会2位、日本大会2位
⑥于小雨&張昊組(中国):26ポイント 中国大会2位、アメリカ大会2位
―――
補欠⑦ヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ組(フランス):24ポイント カナダ大会3位、フランス大会2位
補欠⑧クリスティーナ・アスタホワ&アレクセイ・ロゴノフ組(ロシア):22ポイント ロシア大会3位、日本大会3位
補欠⑨ニコーレ・デラ・モニカ&マッテオ・グアリーゼ組(イタリア):20ポイント 中国大会4位、フランス大会3位




 女子はロシア勢が3名とやはり圧倒的な層の厚さを見せつけました。その中で優勝候補と言えばメドベデワ選手を置いてほかにはいません。ただ、そのメドベデワ選手が足の指を疲労骨折しているという衝撃的なニュースがスケートアメリカの前に飛び込んできて、ファイナルの出場も不透明な状況です。本人は出場に意欲を示しているとのことですが、オリンピックを第一に考えるならばここで無理をすべきではありませんし、オリンピック後のことを考えても今は治療を最優先させた方が良いのではないかと思います。どちらにしろ最終決定はファイナル直前(といっても1週間くらい前?)まで引き延ばされる可能性があるので、メドベデワ選手がどんな決断を下すか、見守りたいですね。
 そのメドベデワ選手を追うのは同じく2連勝でファイナルに駒を進めたザギトワ選手。技術点だけを見ればメドベデワ選手をも上回るポテンシャルの高さがあり、今最も勢いのある選手なのは間違いありません。今季は出場した3試合ともショートで出遅れていますが、出遅れても首位と大差がついていなければ逆転優勝できる可能性は十二分にあるので、この選手のショートの出来、点数がまずは最大の注目ポイントですね。
 そのほかの4選手に関しては誰にでもメダルのチャンスはあり、予想は難しいところですが、樋口選手はランキングこそ6位ではあるものの、安定感という点では4人の中ではいちばんじゃないかなと思います。初めてのファイナルということで、その経験のなさが良い方に出るか悪い方に出るかはわかりませんが、今季の樋口選手は自分の中に確固たる軸を持って試合に臨めているような印象を受けますので、ファイナルも安心感を持って見られるのではないかと思いますね。

 ペアはやはり世界王者の隋&韓組が圧倒的な優勝候補と言えますね。安定感、完成度の高さという点において群を抜いていて、怪我や体調不良などよっぽどの事態が起きない限り、他を寄せつける隙は皆無なのではないでしょうか。
 銀メダル争いということを考えますと、やはり世界選手権銀のサフチェンコ&マッソ組、銅のタラソワ&モロゾフ組の対決が濃厚かなと思います。一方で、シーズンベストだけで見ると、サフチェンコ&マッソ組、タラソワ&モロゾフ組、デュハメル&ラドフォード組、ストルボワ&クリモフ組は全組220点台で、ほとんど力の差はないと言っていいでしょう。その中で安定感という点ではサフチェンコ&マッソ組、タラソワ&モロゾフ組が一歩リードしていますが、ファイナルで4組ともがベストな演技をしたらどのペアが最も上に行くかというのは、正直予想できないですね。また、シーズンベスト(=パーソナルベスト)ではまだ220点台に到達していない于&張組も進化のペースとしてはとても速いので、隋&韓組を除く5組は混戦模様となりそうですね。



 始まったばかりと思っていたGPも6戦全てが終わり、いよいよ来週末はファイナルです。ジュニアも含め、日本の名古屋に集うトップ6たちが全員元気に、今後のシーズンに繋がる演技ができることを祈っています。では。


※以下、2017年12月2日に追記した部分です。


 GPファイナルに関して、辞退選手と追加選手が国際スケート連盟によって発表されましたので追記します。
 辞退が判明したのはロシアのエフゲニア・メドベデワ選手です。先月下旬、右足の骨を疲労骨折していることが報じられたメドベデワ選手ですが、やはり辞退となりましたね。本人はファイナルについて、ドクターストップがかからない限り出場したいとの意思を示していたようですが、オリンピックのことを考えるならばファイナル辞退は妥当な判断だと思います。今後は12月末のロシア選手権を目標に治療、調整することになるのでしょうが、疲労骨折というのはなかなか厄介なものだと思うので、まずはロシア選手権に間に合うのかどうかも心配ですね。もちろん彼女の実績を持ってすれば、ロシア選手権をパスしてもオリンピック代表に選ばれる可能性は高いですが、万全な状態でオリンピックの舞台にたどり着けるのかどうか、今はただ見守るしかないですね。
 そして、メドベデワ選手の辞退を受けて、補欠1番手だった日本の宮原知子選手が繰り上がり出場することが決まりました。この記事にも書きましたように、スケートアメリカで見事な演技を見せてくれた宮原選手ですから、ファイナルではメダル、さらには優勝の可能性も大いにあり楽しみです。ただ、彼女も故障から復帰したばかりなので、スケートアメリカから約2週間という密なスケジュールで怪我をした部分に負荷がかかりすぎないかが少し心配です。そのあたりはコーチやトレーナーとともに緻密な調整を進めていると思いますので、ファイナルでも100%の状態で臨み、良い収穫が得られる試合になることを願っています。


:女子メダリスト3選手のスリーショット画像、デールマン選手の画像、ペアメダリスト3組の画像は、マルチメディアサイト「Zimbio」から、宮原選手の画像、坂本選手の画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、テネル選手の画像、ツルスカヤ選手の画像、サハノヴィッチ選手の画像は、スケート情報サイト「icenetwork」の公式サイトのフォトギャラリーから引用させていただきました。

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# by hitsujigusa | 2017-11-29 23:38 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)