c0309082_10385337.jpg


 前回に引き続き、ベストコスチューム16/17・男子フリーの衣装のベスト10をお送りします。なお、ベスト10を決めるにあたってのルールについては、こちらの記事をご参考下さい。また、男子のショートプログラムの衣装ベスト10は、こちらの記事をご覧ください。

*****

 男子フリー部門1位は、日本の羽生結弦選手の「Hope & Legacy」です。

c0309082_14483057.jpg

 プログラム名の「Hope & Legancy」は曲名ではなく、久石譲さんの「View Of Silence」と「Asian Dream Song」という2曲を組み合わせた羽生選手オリジナルのタイトルです。“希望と遺産”という壮大な題名にふさわしく、ダイナミックで、それでいて繊細さと優雅さに満ちた世界観のプログラムとなっています。
 そんな重層的なプログラムを表すように、衣装も非常によく考えられた繊細な作りになっています。形としては両袖とも長袖ですが、左肩の方にだけ布が垂れ下がるアシンメトリーなデザイン。そして、上半身全体に左上から右下にかけて流れるような細かいギャザーが入った立体的な作りです。色は肩の辺りは白、胸の辺りは明るいグリーン、そこから絶妙なグラデーションで深い群青色、そして黒へと徐々に変化しており、腕も同じような色づかいで、極めて繊細なカラーコーディネーションと言えますし、また、細かく散りばめられたビジューも派手すぎず控えめな光を放っています。
 比較的曲調の変化の少ないしっとりとした音楽なので、衣装も地味すぎると音楽に埋もれてしまいかねないと思いますが、音楽よりも主張しすぎず、かといって地味すぎもせず、ほどよい華やかさを持った芸術的に美しい衣装だと思います。


 2位はアメリカのネイサン・チェン選手の「韃靼人の踊り 歌劇『イーゴリ公』より」。

c0309082_15060916.jpg

 フィギュア界でも定番の「韃靼人の踊り」。ロシアから北アジア、東ヨーロッパにかけて暮らした“韃靼人(タタール人)”をモチーフにした異国情緒満載の楽曲ということで、チェン選手のコスチュームもそうしたエキゾチックさを前面に押し出していますね。
 衣装は長袖のトップスの上に半袖の上着を重ねたようなコーディネートで、そのどちらも深い赤を基調に襟元や裾、袖が金糸で縁取りされたような作りです。この刺繍風の部分が非常に細やかな意匠となっていて、異国らしさをひしひしと感じさせます。また、腰に巻いたベルト(と、長袖シャツの袖口)も花の周りを円が囲んだようなモチーフをいくつも連ねたデザインで特徴的ですし、胸の中心に配置された勲章のようなメダルのような装飾品も、好いアクセントとなっています。
 異国情緒を表現した衣装は過去にも数多くありますが、どうしてもステレオタイプに陥りがちでもあります。チェン選手の衣装はそうしたオーソドックスさを引き継ぎながらも、オリジナリティーもしっかりある素晴らしい衣装に仕上がっているのではないでしょうか。


 3位は日本の宇野昌磨選手の「ブエノスアイレス午前零時/ロコへのバラード」です。

c0309082_15304142.jpg

 タンゴ界の巨匠アストル・ピアソラの楽曲2曲のメドレープログラムで、衣装はタンゴらしい赤と黒を基調とした色づかいとなっています。
 作りとしては上から下まで繋がったいわゆる“つなぎ”の上に、長袖の上着を着用したスタイル。下に着た衣装はベージュから赤、グレー、黒へとグラデーションになっていて、細かいビジューが縦のラインを描くように施されています。そして上着は立て襟に丈の短いものでジャケットというよりボレロですね。前身頃から裾にかけてと、腕の肘から下の外側全体に曲線的なデザインがあしらわれています。この模様が暑い国の植物っぽくもあり、また、燃え盛る炎のようでもあり、タンゴらしい情熱を明確に伝えていますね。色づかい自体は定番ですが、デザインで個性を表した衣装だと思います。


 4位はウズベキスタンのミーシャ・ジー選手の「バレエ「くるみ割り人形」より」。

c0309082_15514034.jpg

 王道中の王道、チャイコフスキーのバレエ作品「くるみ割り人形」の中でも特に有名な場面「パ・ド・ドゥ」を使用したプログラム。「パ・ド・ドゥ」は金平糖の精と王子の踊りのシーンですが、ジー選手の衣装はまさに王子を演じるバレエダンサーそのものです。
 トップスは立て襟の白い長袖で、縦に金色の模様がシンメトリーにあしらわれています。ボトムスは黒いパンツで、全体的にごくシンプルなスタイルですが、「くるみ割り人形」という誰もが知る名曲だからこそ、あえて衣装で派手派手しく主張する必要はないのかなと思います。また、現役随一の表現力を誇るジー選手だからこそ、これくらいシンプルな衣装でも音楽の壮大さに負けることなく演じ切れるのだろうなとも感じますね。


 5位はアメリカのアダム・リッポン選手の「O/Arrival of the Birds 映画『The Crimson Wing: Mystery of the Flamingos』より」。

c0309082_16381165.jpg

 イギリスのバンド、コールドプレイの「O」という楽曲と、フラミンゴを取材したネイチャードキュメンタリー映画のサウンドトラックを組み合わせたプログラム。リッポン選手は元々その前のシーズンで「O」をエキシビションナンバーとして使用しており、衣装も写真のものを着用していましたが、エキシビションやアイスショーで使用した衣装は「昨季以前にすでに使用された衣装は対象から除外する」というルールには当てはめず、今回選ばせていただきました。
 使用されているそれぞれの楽曲が、「O」は“Fly On”=「飛ぶ」というサブタイトルがついていますし(厳密には「O」のインストゥルメンタルバージョンで、アルバムの隠しトラックとして収録されている曲のタイトルが「Fly On」)、もう一つの楽曲もフラミンゴをフィーチャーした映画のサントラということで、プログラムも全体的に鳥をイメージした世界観となっています。
 ということで衣装も“鳥らしさ”が控えめながら感じられるデザイン。トップスは透け感のある白い素材に、鳥の翼のような異素材が組み合わせられています。この異素材の部分に黒やグレーで羽のようなラインが描かれ、まさに“鳥”を思わせるコスチュームとなっているわけですが、わかりやすく“鳥”というよりは、あえてアシンメトリーに、少し外した感じのデザインになっていて、この控えめさが素敵だなと思いますね。


 6位は韓国のイ・シヒョン選手の「Take Me to Church/From Eden」です。

c0309082_15185217.jpg

 アイルランド出身の歌手ホージアの楽曲2曲のメドレープログラム。バラード調の「Take Me to Church」からアップテンポな「From Eden」へと曲調は変化しますが、基本的にはロックということもあってか、イ選手の衣装は全身デニム生地というカジュアルなものとなっています。
 トップスはデニムの長袖シャツを腕まくりした風の五分袖、ボトムスはジーンズというスタイルですが、トップスは襟の周囲にさまざまなビジューが散りばめられ、また、短めのネクタイにもラインストーンがあしらわれており、カジュアルではありますが華やかさもある衣装となっています。全身デニムだけだとラフすぎる印象になりかねませんが、部分的に装飾品を用いることで効果的なアクセントとなっていて、カジュアルさと華やかさのバランスが取れた衣装になっていると思います。


 7位は日本の田中刑事選手の「フェデリコ・フェリーニ・メドレー」。

c0309082_15384356.jpg

 イタリアの名映画監督フェデリコ・フェリーニ作品のサウンドトラックを組み合わせた軽快かつユーモラスなプログラム。ということで衣装も軽快さを強く意識したデザインと言えます。
 トップスは黒白のストライプ柄シャツで、ボトムスは黒っぽいジーンズ風パンツ。上述したイ選手同様にシャツの袖をまくってボトムスはジーンズ風にすることでカジュアルさ、軽やかさを演出していますが、田中選手の場合はシャツもパンツも黒をベースにしている分、より大人っぽくシックになっているかなと感じます。さらに、シャツは襟の一部分と右側面に濃いめのピンクをあしらい、また、左胸のポケットは赤い生地の上にストライプの生地を斜めに貼りつけ、その上に花のようにも見える赤と白のビジューの装飾を施すという凝ったデザインで、カジュアルな中にもさりげない品を感じさせる考えられたコスチュームだなと思います。


 8位はアメリカのグラント・ホフスタイン選手の「歌劇「道化師」より」。

c0309082_15531686.jpg

 レオンカヴァッロの名作「道化師」。フィギュア界でも近年男子選手の使用が増えてきており、定番になりつつあります。
 冒頭からテノールの迫力に満ちたボーカルで始まるプログラムですが、そんな重厚さにふさわしい気品と大人の華やかさを感じさせるコスチュームは、トップスが深みのある臙脂色。形としてはシンプルな長袖シャツですが、胸元が一部三角形に開いて肌がのぞくような作りとなっています。また、細かなラインストーンによって左肩から右の脇へと流れるようなラインをあしらったり、そのほかの部分ではランダムに散りばめるようにあしらったりとバランス良く装飾品を使っていて、色づかいが重厚で渋い分、装飾品の使い方でうまく華もプラスしていて工夫されているなと感じます。


 9位はカザフスタンのデニス・テン選手の「歌劇「トスカ」より」。

c0309082_15000134.jpg

 大定番のオペラ「トスカ」を使用したプログラムということで、衣装もその重厚さを意識したデザインです。
 上下とも黒をベースにし、トップスは立て襟で胸元が大きく開いた作り。その胸元から肩、腕、背中の中心にかけて赤をあしらってアクセントにしています。ハッキリとした鮮やかな赤というよりは渋みのある赤なので、派手すぎない落ち着いた色づかいと言えますし、一面赤ではなく小さいラインストーンを無数にあしらうことで複雑な色味を作り出していて、「トスカ」のどっしりとした雰囲気にピッタリ合ったカラーコーディネーションだなと思います。


 10位はアメリカのティモシー・ドレンスキー選手の「Sometimes I Dream」です。

c0309082_17502648.jpg

 ギリシャ出身のテノール歌手マリオ・フラングーリスさんの歌う「Sometimes I Dream」。一部「トスカ」の有名なアリア「星は光りぬ」のアレンジバージョンが入っており、いわゆる名曲をサンプリングしたクラシカルオーバー曲と言えます。
 そんなオペラのアリアを用いた重厚なプログラムということもあり、コスチュームもやはりシックに落ち着いた色づかい。透け感のある素材の服の上に、透け感のない黒の長袖トップスを重ね、腰に装飾的なベルトを巻いています。何よりこの衣装のポイントとなっているのはベルトで、実際はもちろん軽い素材を使っていると思うのですが、まるで本物の金属のように見える質感と、赤や緑といったビジューで形作られた模様もエキゾチックで、音楽の世界観に合っているなと思います。トップスやボトムスといった服自体は極めてシンプルですが、ベルトのみを派手めにするという一点豪華主義の良い例と言えますね。



 男子フリー部門のベスト10は以上です。次はペアのショートプログラムに続きますので、またしばしお待ちください。


:記事冒頭の国際スケート連盟のロゴは、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、羽生選手の写真、田中選手の写真、テン選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、チェン選手の写真、リッポン選手の写真、ドレンスキー選手の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、宇野選手の写真は、デイリースポーツのニュースサイト内のフィギュアスケート写真集から、ジー選手の写真はフジテレビの公式サイトのスケートページ「FujiTV Skating Club フジスケ」から、イ選手の写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、ホフスタイン選手の写真はマルチメディアサイト「Zimbio」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
ベストコスチューム16/17・アイスダンスショートダンス部門 2017年5月25日
ベストコスチューム16/17・アイスダンスフリーダンス部門 2017年6月1日
ベストコスチューム16/17・男子ショートプログラム部門 2017年6月9日

[PR]
# by hitsujigusa | 2017-06-15 18:55 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_10385337.jpg


 16/17シーズンのコスチュームのベスト10を勝手に決めるベストコスチューム16/17。今回は男子のショートプログラムで使用された衣装のベスト10です。なお、この記事を書くにあたってのシステムについては、こちらの記事の冒頭をご覧ください。

*****

 男子のSP1位は、アメリカのネイサン・チェン選手の「バレエ「海賊」より」です。

c0309082_17033858.jpg

 バレエ「海賊」はギリシャを舞台にした作品。ということで「海賊」を演じる場合、エキゾチックな衣装が使用されることが多く、チェン選手もGP初戦のフランス杯では白いシャツに東洋風の柄の袖なしボレロを重ねたコスチュームだったのですが、NHK杯からは写真の全身黒の衣装を着用しています。
 衣装の形としては襟付きのレース調の黒いトップスに、同じく黒い半袖のボレロを重ねたスタイル。パンツももちろん黒で、その前に来ていた衣装と比べると「海賊」らしいエキゾチックさは鳴りを潜めています。ですが、上半身のレースはところどころペイズリー柄っぽい模様になっており、控えめながらエキゾチックさが表現されていますし、かなり丈の短いボレロも一般的な洋服にはない形ですので、西洋でもなく東洋でもない独特の雰囲気が醸し出されています。また、全身黒にしたことによってチェン選手の体の線の美しさ、身のこなしの美しさがきれいに氷に映えるようになっていて、プログラムに合わせるだけではなく、チェン選手の魅力を存分に引き出すコスチュームだなと感じます。


 2位は日本の宇野昌磨選手の「ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジー 映画『ラヴェンダーの咲く庭で』より」。

c0309082_15584550.jpg

 映画『ラヴェンダーの咲く庭で』の中で演奏されるヴァイオリン協奏曲「ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジー」を使用したプログラム。衣装は2種類あり、シーズン初戦から四大陸選手権まではラベンダー色の衣装、冬季アジア大会から世界国別対抗戦までは写真のブルーの衣装でしたが、個人的により好きな後者を選ばせていただきました。
 衣装はブルーのスタンドカラーのシャツに黒いパンツというスタイル。シャツは上から下に向かって濃くなっていくグラデーションで、全体的に細かなビジューが散りばめられていて華やかです。特に襟や袖口の周辺には集中的にビジューがあしらわれており、襟の周りは曲線状の模様も施されていて、シックさときらびやかさのバランスがうまく取れているコスチュームだと思います。


 3位はウズベキスタンのミーシャ・ジー選手の「黒くぬれ!」です。

c0309082_16250617.jpg

 16/17シーズンのジー選手は2つのショートプログラムを使用し、「黒くぬれ!」はシーズン前半に演じたプログラムです。その「黒くぬれ!」はローリング・ストーンズのヒット曲ですが、ジー選手が使用しているのはアメリカの歌手シアラがカバーしたバージョン。
 「黒くぬれ!」ということで衣装ももちろん黒。上半身は黒をベースに繊細なビジューによって幾何学模様がデザインされていて、非常にスタイリッシュな印象を与えます。こういった模様はともすれば野暮ったい印象を与えかねないと思うのですが、衣装の素材にそのままプリントするのではなく、ビジューによって立体感のある模様になっているので、新鮮味のあるコスチュームになっているなと感じますね。


 4位は韓国のイ・シヒョン選手の「映画『アマデウス』より」。

c0309082_17114894.jpg

 モーツァルトを題材にした映画『アマデウス』のサウンドトラックを使用した華麗なプログラム。ということで衣装もモーツァルトの生きた中世の時代らしさを意識したデザインとなっています。
 下に着た白シャツはシルクのような光沢のある生地で袖口は金色に縁取りされ、形もフリルっぽくなっています。そして首元はダイヤモンド風の装飾で白いタイを締めたようなスタイルで、タイは袖口と同様のデザインに。何よりも目を引くのが鮮やかな赤のベスト。金糸で葉っぱが連なったような模様の刺繍が惜しげもなく施されており、非常にゴージャズな印象を与えます。“モーツァルトらしさ”を前面に押し出した衣装で、プログラムの華やかさとも合っていて良いですね。


 5位はカザフスタンのデニス・テン選手の「幻想序曲「ロメオとジュリエット」」です。

c0309082_17450417.jpg

 チャイコフスキーの代表作の一つ、「ロメオとジュリエット」を一部ヒップホップ調にアレンジした個性的なプログラム。シーズンを通して複数種類の衣装が使用されましたが、今回選んだのはフランス杯で用いられた衣装です。
 コスチュームはレザーっぽい素材を使った硬質感のある作り。黒い長袖トップスの上にジッパー付きのベストを重ねたようなスタイルですが、そのジッパーを境目に左右非対称なデザインとなっています。テン選手から見て左側は縦に複数のラインが入り、右側はビジューが均等に配置されたデザイン。全体的にどことなく日本の戦隊モノのヒーローが着ているスーツのような雰囲気がありますが、色を黒やグレーでまとめ、さまざまな異素材を組み合わせることで、クールでスタイリッシュな雰囲気が醸し出されていますし、何よりヒップホップアレンジがなされたプログラムの世界観にも合っていて、唯一無二のオリジナリティーを表現できていると思いますね。


 6位はロシアのマキシム・コフトゥン選手の「Bahamut」です。

c0309082_18305057.jpg

 アメリカのワールドミュージックバンド“Hazmat Modine”の「Bahamut」という曲を使用した、どこか異国情緒を感じさせるような、それでいて現代的なアレンジも利いた不思議な世界観のプログラムとなっており、それに合わせたコスチュームも個性的です。
 白いTシャツの上に黒いジャケットを重ねたコーディネート自体はシンプルな着こなし。ですが、ジャケットはたくさんのワッペンが貼りつけられたようなデザインになっていて、インパクトがあります。Tシャツ&ジャケットというスタイル自体は現代の若者ならば誰でもするような一般的なコーディネートで、フィギュアスケートの衣装という感じが全くないカジュアルさなのですが、さらにそのジャケットに大量のワッペンがあしらわれていることによって、一般の人が日常生活の中で着る服とは違う、どこかしらステージ衣装のような雰囲気も醸していて、フィギュアスケートの衣装というステレオタイプのイメージを良い意味で裏切るおもしろいコスチュームだと思いますし、ジャンルを特定できない音楽の世界観だからこそ、コスチュームもステレオタイプのイメージにハマっていないのが良いのかなという気がしますね。


 7位は日本の無良崇人選手の「Zepateado」です。

c0309082_01450729.jpg

 無良選手の新境地を示したフラメンコプログラムですが、フラメンコにも関わらずあえていかにもスペイン風といった感じの色づかいをしていないところに新鮮さを感じさせます。
 フラメンコを使用したプログラムは数多くあり、多くの場合、赤や黒、もしくはオレンジ、金色など、スペインらしさを前面に押し出した色づかいが多く見られるのですが、無良選手の衣装は白と黒というフラメンコではあまり見ない色づかい。ですが、素材感や意匠などでフラメンコらしさを表しています。最も特徴的なのはやはり首から胸元にかけて施されたフリンジでしょうか。フリンジ自体は特にスペインらしいというものではありませんが、目を引くアクセントになっていますね。一方、袖はヒラヒラとしたフリルのようになっていて、フラメンコの踊り子が着るドレスに似た作りに。そして、ベースとなる白い生地はよく見るとレース調の花柄になっていて、それが派手すぎず地味すぎない絶妙な模様を浮かび上がらせていて、品のあるフラメンココスチュームになっていて良いなと思いますね。


 8位はアメリカのアダム・リッポン選手の「Let Me Think About It」。

c0309082_15085045.jpg

 ノリノリのダンスミュージックということで、ノースリーブのランニング姿という思いきった大胆なコスチューム。ともすればチープになりかねないタイプの衣装かなとも思うのですが、素材を体の正面は光沢感のある生地、体の側面は透け感のある生地と工夫しているので、野暮ったさを感じさせません。また、体の左側にビジューで施された模様もブルーを基調にシックな色づかいで、シャープさとクールさを感じさせるラインの入れ方がなされていて、シンプルではあるものの考えられているなと感じます。
 実は男子選手のノースリーブのコスチュームが解禁されたのは16/17シーズンからということで(そもそも禁止ということさえ知らなかったのですが)、その第1号(たぶん)としても記念すべき革新的な衣装と言えると思うので、その意味もあって選ばせていただきました。


 9位はイスラエルのアレクセイ・ビチェンコ選手の「Chambermaid Swing」です。

c0309082_15233485.jpg

 “Chambermaid”とはいわゆる召使いとか使用人みたいなことだと思うのですが、そんな音楽の世界観をイメージしてか衣装もどことなく召使いっぽいデザインとなっています。白いシャツにベスト、ジャケット、蝶ネクタイというスタイルだけでは“召使い感”は出ないと思うのですが、ポイントとなるのは色づかいで、ブラウンという比較的カジュアルで庶民的な色をベースにしたことによって、召使いを使う側の主人の方ではなくて、召使いの方を演じているという雰囲気がよく表現できているなと思います。さらにジャケットはチェック柄になっているので、“Swing”らしい軽快さも出ていて良いですね。


 10位はロシアのアレクサンドル・ペトロフ選手の「火祭りの踊り バレエ「恋は魔術師」より」。

c0309082_15474309.jpg

 スペインを代表する作曲家マヌエル・デ・ファリャのバレエ「恋は魔術師」の中でも特に有名な「火祭りの踊り」を使用したプログラム。エキゾチックで怪しげな旋律が印象的な曲ですが、ペトロフ選手の衣装もエキゾチックさを強く意識したデザインになっています。
 何といっても目を引くのは金色のトップス。全体的にプリントされた格子柄のような模様にしても、さらに肩から二の腕を覆う部分の作りにしても、西洋の鎧のような雰囲気を醸し出しています。しかし、ところどころに細かなフリンジがあしらわれていたり赤い宝石風のビジューが施されていたりと装飾性もあり、衣装の形と色、装飾の使い方に良い意味でギャップが感じられます。また、腰に締めた赤いベルトもアクセントになっていて、無良選手のところで上述したようにスペイン風衣装の定番である赤と黒と金色がきっちり揃っています。が、普通ならば赤をメインに用いて、金色をポイントカラーとしてアクセント的に使うことが多いので、それが全く逆になっているこのコスチュームはある意味思い切った、珍しいタイプのスペイン風衣装だなと思います。



 さて、ベストコスチューム16/17・男子SP部門は以上です。男子フリー部門に続きます。


:記事冒頭の国際スケート連盟のロゴは、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、チェン選手の衣装、無良選手の写真、リッポン選手の写真、ビチェンコ選手の写真、ペトロフ選手の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、宇野選手の写真、テン選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、ジー選手の写真、イ選手の写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、コフトゥン選手の写真は、フィギュアスケート情報サイト「Absolute Skating」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
ベストコスチューム16/17・アイスダンスショートダンス部門 2017年5月25日
ベストコスチューム16/17・アイスダンスフリーダンス部門 2017年6月1日
ベストコスチューム16/17・男子フリー部門 2017年6月15日

[PR]
# by hitsujigusa | 2017-06-09 16:59 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_10385337.jpg


 前記事に引き続き、ベストコスチューム16/17、アイスダンスのフリーダンス部門を書いていきます。なお、ショートダンスのベスト10についてはこちらをご覧ください。また、衣装を選ぶ上でのルールに関しても、ショートダンスの記事の冒頭に記してありますので、ご参考下さい。

*****

 フリーダンス部門第1位は、アメリカのケイトリン・ハワイエク&ジャン=リュック・ベイカー組の「愛の夢」です。

c0309082_23480472.jpg

 フィギュア界でも定番のフランツ・リストの「愛の夢」ということで、衣装も優しく柔らかい印象になっています。
 女性のハワイエク選手は胸元がV字になったノースリーブドレス。ラベンダー色が上から下にかけて濃くなるグラデーションとなっています。衣装は薄く柔らかい素材感で、スカートの部分は繊細なタックによって美しい布の表情が出ていて、全体を見ると装飾は控えめでシンプルなのですが、非常に上品でエレガンスな印象を与える衣装だなと感じます。一方男性は白いシャツに黒いパンツというモノトーンスタイル。色を使わないコーディネートにすることで女性の美しさを引き立てていて、両者のバランスで見ても、とても素晴らしい組み合わせだなと思いますね。


 2位はカナダのケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組の「アランフェス協奏曲」です。

c0309082_00524698.jpg

 こちらも大定番の「アランフェス協奏曲」を使ったプログラム。ということで衣装もスペインらしさを感じさせるデザインになっています。
 女性のウィーバー選手はボディ部分がゴールド、スカートが赤というスペイン風衣装のおなじみのカラーコーディネーション。ともすれば平凡な印象になりかねませんが、ボディ部分をペイズリー柄のようなエキゾチックなデザインにすることで個性を表していますし、スカートも右脚を大胆に露出するスリットの深い作りとなっていて、一工夫しています。比較的肌の露出は多い衣装ですが、いやらしさを感じさせない高貴な雰囲気を漂わせるドレスになっていると思います。そして、男性のポジェ選手は対照的にシンプル。白シャツに黒いパンツ、黒いサスペンダーですが、女性の方が華やかな分、男性はこれくらいシンプルなくらいがちょうど良いですね。
 ウィーバー&ポジェ組はこのプログラムでシーズン前半は女性が濃い紫の、男性が全身真っ黒の衣装を着ていましたが、「アランフェス協奏曲」ということを考えると、やはり定番ではあるものの赤やゴールドを使った衣装というのはものすごく合うので、こちらの方を今回は選びました。


 3位はフランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組の「Stillness/Oddudua/Happiness Does Not Wait」。

c0309082_01053335.jpg

 ゆったりとしたピアノの音色から始まって少しずつテンポアップしていき、最後は壮大なオーケストラで幕を閉じる情感たっぷりのプログラム。衣装は男女ともに青を基調としていて音楽の静けさ、壮大さの両方に合っています。
 女性はワンショルダーの独創的なデザインのワンピース。布を体に巻きつけたような作りになっていて、色は上半身は青ですがスカートはグラデーションでピンクと少しギャップのある色づかい。しかしグラデーションの具合が絶妙なのでとても自然な色づかいに見えますし、スカートだけ淡いピンクにすることで軽やかさも感じさせますね。男性はトップスが青、パンツが黒という衣装ですが、トップスは胸元が大きく開いたスタンドカラーのノースリーブというこちらも個性的なデザイン。しかしシゼロン選手が非常にスタイリッシュに着こなしていますし、色も青一色ではなく少しシルバーのような色味が入った美しいグラデーションになっていて、女性の衣装同様に重厚さと軽やかさの両方が相まっていますね。


 4位はチェコのコートニー・マンスール&ミハル・チェスカ組の「映画『ゴッドファーザー』より」。

c0309082_14072345.jpg

 名作『ゴッドファーザー』のサウンドトラックを使用したプログラムですが、『ゴッドファーザー』のストーリーを踏襲したりイメージしたりということはなく、壮大かつドラマチックな音楽を表現したプログラムになっています。
 女性の衣装はライトブルーのレオタードの上に深みのある青のノースリーブワンピースを重ねたようなデザイン。ワンピースは胸元と腰元に細かくビジューが施され、黒いベルトで腰をウェストマークしたデザインがどことなくクラシカルでエレガントな雰囲気を醸し出しています。一方、男性は黒いシャツにストライプ柄の黒いベストとパンツというシックなスーツスタイル。紳士らしい正統派のコーディネートではありますが、全身黒にすることでクラシカルなスタイルとは違うおしゃれ感も出ていて、『ゴッドファーザー』のダークな感じにも合っているように思います。


 5位はカナダのアレクサンドラ・ポール&ミッチェル・イスラム組の「愛の夢第3番/ハンガリー狂詩曲第2番/「リゴレット」による演奏会用パラフレーズ」。

c0309082_14302832.jpg

 上述したハワイエク&ベイカー組も使用した「愛の夢」に始まり、「ハンガリー狂詩曲」と「「リゴレット」による演奏会用パラフレーズ」で軽快かつ熱狂的に締めくくられるフランツ・リストのピアノ曲メドレー。
 その華やかさを示すように、女性の衣装は鮮やかなピンク。上半身は濃いめのピンクで、細かな刺繍とビジューがあしらわれた非常に繊細な作り。そこからグラデーションで淡いピンクとなったスカートは柔らかく優雅な印象を与えます。衣装自体が豪華なのでほかは装飾らしい装飾なくシンプルなコーディネートにしているのが良いなと思います。男性は女性と比べると地味目な色づかい。ブルーグレーの長袖シャツに黒いパンツですが、シャツはデザイン性のある作りなので華やかさもあります。シックな色が女性の衣装のピンク色ともマッチしていてバランスが取れているなと思いますね。


 6位は日本の村元哉中&クリス・リード組の「ポエタ」です。

c0309082_15133500.jpg

 フィギュア界でもたびたび使用されるフラメンコ曲「ポエタ」。村元&リード組の衣装もフラメンコらしさを前面に押し出した色づかい、デザインになっています。
 女性の衣装は上半身が黒のレース調の胸元が大胆に空いたデザイン。そしてスカートは透け感のあるこちらも縁取りがレースになっている黒のチュールスカートに、赤いサテン風素材のスカートを重ねています。男性は黒いトップスに黒いパンツで、トップスの襟元は女性と同じようなレース調のデザイン、腰にはエキゾチックな模様が入った赤いベルトというスタイルで、女性との統一感があります。男女ともに赤と黒というフラメンコらしい色づかいですが、それに加えレースやサテンといった素材感の工夫もあり、定番のスタイルの中にも彼らならではの個性を表した衣装になっていると思います。


 7位はアメリカのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組の「Evolution: Mirror In Mirror」。

c0309082_15324167.jpg

 壮大で重厚なオーケストラプログラムで、シーズン中に使用された衣装は男女ともに2種類。両方ともネイビーを基調にしていることは変わらないのですが、シーズン終盤で使用したものはより装飾が多いデザインとなっており、私が今回選んだのは主にシーズン前半に使用されたものです。
 女性はシンプルな形のワンピースで、上の写真では分かりにくいかもしれませんが、胸元に向けて放射線状にギャザーが寄せられたデザインとなっています。男性もトップスはネイビーの長袖シャツで、うっすらと透け感があります。見た目に分かりやすい華やかさはなく、地味といえば地味なのですが、音楽の重厚で穏やかな世界観にはよく合っていると思いますし、氷の上でもきれいに映える衣装だなと感じました。


 8位は中国の宋林書(ソン・リンシュー)&孫茁鳴(スン・ジュオミン)組の「映画『007 ゴールデンアイ』より/映画『007 スカイフォール』より」。

c0309082_16032283.jpg

 おなじみの「007」のサントラを使用したダイナミックなボーカル入りプログラム。
 女性はボルドー色の個性的な形のドレス。胸元はスーツの襟のようなデザインになっていて、腰のコサージュ風の装飾でその布を留めるような作りに。そこから垂れ下がった布がスカートになっているわけですが、体の前面は覆わず脚が全て見えるようなセクシーなデザインで、素材感や色は品がある一方で露出は大胆にというギャップが魅力的な衣装ですね。男性は白シャツに黒いスーツ、黒い蝶ネクタイというスタンダードなスタイルですが、スーツに細かなビジューが散りばめられていたりと隠れた工夫がなされています。
 「007」のかっこよく、クールで、セクシーなイメージをうまく自分たちらしく個性的に演出した衣装だと思います。


 9位は中国の王詩玥(ワン・シーユエ)&柳鑫宇(リュー・シンユー)組の「ニューヨーク・ニューヨーク」。

c0309082_16381816.jpg

 定番のスタンダードナンバー「ニューヨーク・ニューヨーク」をアレンジした女性ボーカル入りの軽快かつパワフルなプログラム。写真の衣装はシーズン初戦のスケートカナダのみで着用されたもので、シーズンのほとんどは男女ともにピンクを基調とした衣装を着ていたのですが、個人的にはこのプログラムにはピンクじゃない方が合うかなと感じたのでこちらを選びました。
 女性は鮮やかなライトブルーのスカート短めのワンピース。細かなビジューが施されて華やかさもありつつ、色づかいであったりスカートのふわっと広がる感じであったりと全体的に明るさ、軽快さを感じさせるデザインで素敵です。男性は白シャツに蝶ネクタイ、サスペンダーにパンツというオーソドックススタイルですが、一つ一つのアイテム、たとえばシャツはシルバーのラインが入っていたり、パンツは黒と白のストライプ柄にしたりと、アイテムごとに華やかさや軽やかさを印象づける工夫がなされています。男女ともにプログラムの世界観に合ったポップなコスチュームで好いですね。


 10位はイスラエルのイザベラ・トバイアス&イリヤ・トカチェンコ組の「パ・ド・ドゥ バレエ「くるみ割り人形」より」。

c0309082_16520149.jpg

 王道のバレエ「くるみ割り人形」を使用した華麗なプログラム。ということで女性も男性も白の衣装でバレエらしい清らかさ、優雅さを表していますね。
 女性はデコルテや腕をシアー素材で覆った白のワンピース。首元や胸元にふんだんに繊細なビジューをあしらっていて、白一色の中にも控えめなゴージャスさを感じさせます。シーズン前半は同じ白いワンピースでビジューのないものを使用していたのですが、それだとあまりにもシンプルすぎるように感じたので、この写真のようにビジューを施した方がほどよい華やかさがあって良いですね。一方、男性の衣装はシーズンを通して変わらずノーカラーのシンプルな白シャツと黒いパンツの組み合わせ。こちらももう少し装飾性があってもいいかなとも思いますが、逆にこれだけシンプルに徹底しているのを見ると、衣装のインパクトではなくプログラムで勝負、という感じがしますし、「くるみ割り人形」という誰もが知る名曲だからこそ、音楽が持つ力だけで十分アピールできるのかなという気がしますね。



 アイスダンスフリーダンス部門のベストコスチューム16/17は以上です。次は男子のショートプログラム部門を書く予定ですので、またしばしお待ちください。


:記事冒頭の国際スケート連盟のロゴは、国際スケート連盟公式フェイスブックページから、ハワイエク&ベイカー組の写真、シブタニ&シブタニ組の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、ウィーバー&ポジェ組の写真、パパダキス&シゼロン組の写真、ポール&イスラム組の写真、王&柳組の写真、トバイアス&トカチェンコ組の写真は、アイスダンス情報サイト「ice-dance.com」から、マンスール&チェスカ組の写真、宋&孫組の写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、村元&リード組の写真は、デイリースポーツのニュースサイト内の写真特集記事から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
ベストコスチューム16/17・アイスダンスショートダンス部門 2017年5月25日
ベストコスチューム16/17・男子ショートプログラム部門 2017年6月9日
ベストコスチューム16/17・男子フリー部門 2017年6月15日

[PR]
# by hitsujigusa | 2017-06-01 23:41 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)