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 本格的なシーズン開幕前の小手試しの場となるチャレンジャーシリーズが始まりました。チャレンジャーシリーズは全10試合からなる大会の総称ですが、グランプリシリーズとは違ってファイナルのような試合はなく、トップ選手たちにとってはあくまでグランプリシリーズ前の調整の場という意味合いが強い前哨戦です。
 そんなチャレンジャーシリーズですが、今年は時をほぼ同じくしてイタリアのベルガモで行われたロンバルディアトロフィーとアメリカのソルトレイクシティで行われたUSインターナショナルクラシックで幕を開けました。複数の日本選手が表彰台に上る活躍を見せ、オリンピックシーズンの始まりとしてこれ以上ないスタートダッシュとなりました。まずはロンバルディアトロフィー、そのあとUSインターナショナルと内容をざっくりまとめていきたいと思います。

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《ロンバルディアトロフィー》

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 まずは男子から。優勝したのは日本の宇野昌磨選手です。ショート、フリー通じてほぼノーミスという初戦とは思えない完成度の高さで他を圧倒、ショート、フリーともに自己ベストを更新し、総合319.84点という驚かんばかりの高得点で優勝に花を添えました。
 内容的には言うことなしのパーフェクトに近い出来で、ショートは4フリップ、4トゥループ+3トゥループ、3アクセル、フリーは4ループ、4サルコウ、3アクセル+3トゥループ、4フリップ、4トゥループ+2トゥループ、4トゥループ、3アクセル+1ループ+3フリップ、3サルコウと全てのジャンプを着氷。唯一失敗らしい失敗といえばフリー冒頭の4ループの着氷が乱れたくらいで、それでもその次には自身初挑戦となる4サルコウをあっさりと決め、昨シーズン後に掲げていた新しい種類の4回転習得という一つの目標を早くもこの時点でひとまず達成したことになり、本人も「初戦から良すぎて逆に不安」と言っているとおり、出来すぎなくらい出来すぎでしたね。特に4サルコウはあまりにも簡単に決めたので、見ていてあれっ?と拍子抜けするくらいでしたが、宇野選手によると本来は4ルッツを跳ぶつもりで練習していたのを急遽4サルコウに変更したとのこと。4サルコウについては前々から宇野選手は苦手意識があると発言していて、むしろ4ルッツの方が可能性が高いというようなニュアンスだったと思うのですが、インタビューでは夏のシカゴ合宿の時まで4サルコウはプログラムに入れるつもりは皆目なかったものの、コーチに言われて練習を始め、確率は4ルッツの方が良かったけれどもやっていくうちに4サルコウの方が失敗してもほかのジャンプに響かなかったため、とりあえずプログラムに入れる方向に転換したということのようです。それでも実際に試合でやる気はなく成功するイメージもなかったそうですが、今回成功させられたことで「4フリップより確率が良くなるジャンプ」「挑戦ジャンプじゃなくて自分を手助けるジャンプにしたい」と4サルコウに対する認識が変わったようで、このあとオリンピックに向けてどういう構成になっていくのか、そして5種類目の4回転となる4ルッツの今季中の成功もあるのかどうかなど、気が早すぎるかもしれないのですが、一ファンとして勝手に想像を繰り広げてしまうくらい、それくらいシーズン初戦としてあまりにも衝撃的で華麗な優勝劇でした。
 表現面という点ではさすがに初戦とあって緩急だったり要素間の密度だったりは本人も言っているように物足りなかったかなと思うのですが、フリーの方は2季前と同じ「トゥーランドット」なので体に馴染んでいるような感じは見受けられましたし、何といってもシーズンは始まったばかりどころか本格的な開幕はこれからという段階なので、ショートもフリーもどのように進化して魅せてくれるのか期待したいですね。

 2位はアメリカのジェイソン・ブラウン選手。ショートでは4トゥループに挑み残念ながらダウングレード(大幅な回転不足)で転倒となったものの、そのほかのジャンプはフリーも含め大きなミスなくまとめ、昨年と同じ銀メダルを獲得しました。
 4回転に関してはショートでダウングレードだったということもあってかフリーでは回避しましたが、そのほかの部分はさすがブラウン選手という美しさでした。ショートはミュージカル音楽ですが、変則的なリズムでところどころ歌詞がセリフっぽくなるところもあり、にもかかわらず曲とぴったりマッチした動きができていて、これだけ難しいプログラムを滑りこなせるのはブラウン選手だからこそだなと感じました。一転フリーは静かなピアノの音色で幕を開け、徐々に力強さと壮大さを増し、終盤はオーケストラでドラマチックに締めくくられるプログラム。静けさも激しさも見事に演じ分けられるブラウン選手の表現力を存分に活かした作品という印象で、こちらもシーズン初戦とは思えない音楽との一体感からはすでに傑作の匂いがぷんぷんしましたね。このプログラムがさらに磨かれて完成される日が今から待ち遠しく思います。

 3位はオーストラリアのブレンダン・ケリー選手。SPは冒頭の4トゥループこそステップアウトしましたが、続く4サルコウ+2トゥループ、3アクセルはクリーンに成功。最小限のミスに抑えて3位発進。フリーはショートで成功させた4サルコウが3サルコウになり、3アクセル2本でも細かいミスが重なり5位にとどまりましたが、ショートのアドバンテージで何とか逃げ切って銅メダルを獲得。ケリー選手にとってチャレンジャーシリーズの大会での表彰台は初めてとなりました。

 もう一人の日本代表、佐藤洸彬選手は12位となりました。SPは冒頭の3アクセル、4トゥループと転倒が続き、後半のコンビネーションジャンプも2ルッツ+3トゥループにと立て直せず、17位にとどまりました。フリーは2本の4トゥループに挑みどちらも転倒に終わったものの、2本の3アクセルは大きなミスなくまとめて10位、自己ベストで総合12位まで順位を上げました。
 今季はNHK杯の出場が決まっている佐藤選手。その前にこのロンバルディアトロフィーで存在をアピールしておきたいところでしたが、なかなかリズムに乗りきれなかったのかなという印象ですね。NHK杯までは時間がありますから、今度こそ佐藤選手の本領発揮となるよう楽しみにしたいですね。


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 女子の優勝はこれがシニアデビューとなったロシアのアリーナ・ザギトワ選手。言わずと知れた昨季の世界ジュニア女王ですが、昨季同様にショート、フリー全てのジャンプを後半に固める驚異的な戦略を組んで臨み、SPこそ珍しく2アクセルで転倒するミスがありましたがそれでも自己ベスト更新で3位。フリーは全てのジャンプを完璧に着氷しやはり自己ベストを更新して逆転でシニアデビュー戦を優勝で飾りました。
 ジュニアの世界最高得点保持者とあって鳴り物入りでのシニア参戦となったザギトワ選手ですが、その名に恥じぬ演技をさっそく見せてくれましたね。彼女の強みは何といっても全てのジャンプを後半に跳ぶスタミナと、大半のジャンプで手を上げて跳べる技術力の高さで、今大会もその強みがいかんなく発揮されていました。この演技を見る限りオリンピック代表に入ってくる可能性はかなり高いのではないかと思わされましたし、まだ今季はそこまで身体的な変化がないという点でも安定感があって、一気に五輪のメダル争いにも絡んでくる存在になりそうですね。個人的には全ジャンプを後半に持ってくるというのはバランスが偏っていてあまり好きではないのですが、戦略的には効率的に得点アップを望める方法であるのは間違いないですし、ザギトワ選手のフリー「ドン・キホーテ」を見ていると前半はゆったりとしたパートでコレオシークエンスとステップシークエンス、後半に入ると徐々にテンポアップし、その盛り上がりに合わせてたたみかけるようにジャンプを連発するさまは痛快さを感じさせて、プログラムとしてもよくできているなと感じます。ザギトワ選手が今シーズンの女子フィギュア界の勢力図にどんな影響をもたらすのか、楽しみ&戦々恐々ですね。

 2位に入ったのは日本の樋口新葉選手です。ショート、フリーともに全ての要素で加点を引き出すほぼパーフェクトな内容で、ショートとトータルの自己ベストを更新しました。
 ショート「ジプシーダンス バレエ「ドン・キホーテ」より」、フリー「映画『007 スカイフォール』より」ともに樋口選手の持ち味であるパワフルさを活かしつつも、女性的な柔らかさもうまくミックスされていて素晴らしかったですね。もちろんシーズンは始まったばかりも始まったばかりなので、プログラムとしてまだまだ改善できるところはあると思うのですが、この時期としては思った以上にプログラムとの調和が素晴らしかったので非常に今後に期待が持てましたし、今大会の女子は全体的に気前の良い得点傾向だったかなという気はするのですが、何にしてもこのスコアが今シーズンのベースとなっていくことは間違いないので、国際大会初戦でこの点数を得られたというのは樋口選手にとって大きなメリットだと思いますね。

 3位には地元イタリアの大ベテラン、カロリーナ・コストナー選手が入りました。SPは3+3を回避しながらも演技をそつなくまとめ2位と好発進。しかしフリーは複数のミスが重なって技術点を伸ばし切れず5位。総合では3位と何とか表彰台に留まりました。
 高い演技構成点を武器にメダルはしっかり獲得しましたが、本来のコストナー選手の姿からはほど遠く物足りない内容だったと言えるでしょう。いくら演技構成点が高いといっても若い選手たちは難しいジャンプ構成を確実にこなしてくるので、そこまでジャンプ構成の難易度が高いわけではないコストナー選手としては、要素を完璧に取りこぼしなく揃えなければトップに立つのは厳しいのかなと思います。しかしスケーティング技術や表現力は彼女にしかない唯一無二の武器ですし、ジャンプが決まればそれがさらに際立たせられるわけなので、次の試合こそカロリーナ・コストナーここにあり、という演技で若い選手たちを圧倒する姿を見せてほしいですね。

 日本の松田悠良選手は今までの自己ベストを16点以上更新する会心の演技で5位と健闘を見せました。特にSPの3フリップ+3ループ、フリーの2アクセル+3トゥループ+3ループといった、得意ではあるものの回転不足を取られることが多かったジャンプで回転を認定されていたのは大きかったですね。同時期に行われたUSインターナショナルクラシックと比べるとロンバルディアの女子はアンダーローテーション(軽度の回転不足)の数が全体的に少なかったので、もしかしたらロンバルディアのスペシャリストの方が回転のグレーゾーンに対して若干優しかったのかなという気もするのですが、私が見る限り松田選手の3+3や2アクセルからの3連続はきっちり回り切っていたように見えましたから、この調子で世界でも稀有なこれらの技の精度をさらに高めていってほしいなと思います。今季はGPのエントリーがないのが残念なのですが、そのほかの大会で今回のようにどんどん存在をアピールしていってほしいですね。


 ペアはロシアのナタリア・ザビアコ&アレクサンドル・エンベルト組が優勝。自己ベスト更新はなりませんでしたが、ショート、フリーともにミスの少ないまとまった演技で完全優勝を果たしました。
 銀メダルは地元イタリアのニコーレ・デラ・モニカ&マッテオ・グアリーゼ組。フリーでは2度の転倒がありましたが、フリー、トータルでは自己ベストに迫る得点をマークしました。
 3位もイタリアのヴァレンティーナ・マルケイ&オンドレイ・ホタレク組。ショートでは複数ミスがあり3位、挽回を狙ったフリーでも転倒があって順位を上げることは叶わず、スコア的にもパーソナルベストから20点以上低い得点にとどまりました。


 アイスダンスはこちらもイタリアのシャルレーヌ・ギニャール&マルコ・ファッブリ組が優勝しました。SDで1位につけると、FDはリフトでミスがあり得点を伸ばし切れなかったものの、2位を寄せつけず断トツでの優勝となりました。
 2位は今季シニアデビュー、ロシアのアッラ・ロボダ&パヴェル・ドロースト組。ショート、フリーともにそつなくまとめてシニアデビュー戦を銀メダルで飾りました。
 3位はウクライナのアレクサンドラ・ナザロワ&マキシム・ニキーチン組。ショートはレベルの取りこぼしが多々あり4位にとどまりましたが、フリーで挽回し3位に上がりました。

 日本の小松原美里&ティモシー・コレト組は8位、深瀬理香子&立野在組は11位という結果となっています。



《USインターナショナルクラシック》


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 女子はこれがシニアデビューとなった日本の本田真凛選手が金メダルを獲得しました。ショートをノーミスでまとめ首位に立つと、フリーは後半の3サルコウが2回転になるミスはありましたが、そのほかはほぼ完璧な内容でトップを守り切りました。
 シニア初戦、そして標高1300メートルという慣れない土地での試合ということを考えても上々のスタートでしたね。得点的には同時期に行われたロンバルディアトロフィーで同じく今季シニアデビューのザギトワ選手が210点を軽く超えているのと比べると物足りない気もしますが、ロンバルディアの方が気前が良すぎでUSインターナショナルの方が普通な感じもするので、あまり気にすることはないのかなと思います。得点の内容を見るとまだまだGOEの加点を取れる部分が多くあるので、今大会の演技をベースとして、さらなる上積みに期待したいですね。

 2位は地元アメリカのベテラン、長洲未来選手です。ショート、フリーともに冒頭で大技3アクセルにチャレンジ、ショートは着氷後にオーバーターン、フリーは若干両足着氷となりましたが、どちらも回り切っていると認定。しかしその他のジャンプで細かな回転不足が相次ぎ得点は伸ばし切れず、自己ベストからは10点ほど低いスコアでの2位となりました。
 近年練習動画で3アクセルをクリーンに下りる姿を見せて話題となっていた長洲選手ですが、満を持しての実戦での挑戦、そして見事に成功させました。ISUが認める国際大会での女子選手の3アクセル成功は史上8人目、アメリカの女子選手としてはトーニャ・ハーディングさんに次ぐ2人目の成功者となりました。また、24歳での初成功は最高齢でもあり、若く身軽な選手でさえ成功させるのは至難のこの大技を、年齢を重ねさまざまな苦労や怪我を乗り越えてきた長洲選手が達成したという事実に感慨を覚えざるをえません。それだけに3アクセル以外のジャンプでアンダーローテーション(軽度の回転不足)が重なってしまったのはもったいないなと思いますが、これだけ回転不足があったにもかかわらず自己ベストから10点ほど低い得点にとどまったのは3アクセルの成功があったからですし、全てのジャンプがきちんと揃ったらどんな得点になるんだろうと楽しみにもなりました。
 4年に1度のオリンピックシーズンにほかのアメリカ女子選手が持っていない武器を手にしたことは本当に大きなアドバンテージだと思うので、3アクセルを毎回毎回クリーンに成功させるというのはなかなか難しいことでしょうが、攻める気持ちを持ってこのあとのシーズンも頑張ってほしいですね。

 3位は全米女王のカレン・チェン選手。ショートは細かいジャンプミスはあったものの崩れることなくまとめて2位と好発進。しかしフリーは序盤から回転不足が相次ぎ、中盤には転倒もあって得点を伸ばせず3位、トータルでも3位と順位を落としました。
 昨季は初の全米選手権優勝から世界選手権でも4位と飛躍を遂げたチェン選手。そうした好演技の際はおもしろいようにジャンプも決まって比例するように演技構成点でも高評価を受けていたのですが、今大会は回転不足が多々あり波に乗り切れませんでしたね。昨季後半に好成績を収めたとはいえ、ミスがミスを呼ぶ悪循環に陥ってしまう試合も昨季は少なからずあったので、そうした不安定さをどこまで克服できるか今季は注目したいと思います。

 本田選手同様、こちらもシニアデビュー戦となった坂本花織選手は5位となりました。全ジャンプを後半に固めたSPは3+3をクリーンに決めたものの3ループで転倒し5位どまり。フリーは前半2つのジャンプを確実に着氷して良いスタートを切りましたが、疲れが出たのか後半はジャンプのパンクや転倒が重なり本領を発揮できませんでした。
 初めてのシニアの国際大会で緊張があったのか、坂本選手らしい活きの良さが鳴りを潜めてしまったのが残念だったのですが、これは慣れによって改善されていくものなのであまり心配はいらないのかなと思います。また、今大会は標高の高い場所での試合だったので後半にスタミナが切れてしまったのだと思いますが、本来はスタミナ面に課題があるタイプの選手ではないので、次の試合は坂本選手らしい元気の良い演技が見られることを楽しみにしたいですね。


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 男子の優勝は全米王者のネイサン・チェン選手です。今大会は4回転の数を減らして臨み、SPは冒頭の3アクセルをクリーンに決めると、後半の4フリップからの連続ジャンプは着氷が若干乱れましたがこらえ、最後の3ルッツは難なく成功させ91.80点で首位発進。フリーは冒頭に初挑戦となる4ループを組み込み完璧に成功させると、続く4ルッツも着氷。その後は3回転を中心に無難な構成でまとめて2位に大差をつけての優勝となりました。
 チェン選手本来の実力からすればかなり難度を落とした構成でした。とはいっても4ルッツや4フリップ、4ループと世界でも数人しか跳べない極めて難しい4回転ばかりで、これでもまだまだ序の口なわけですから凄い時代になったなあと改めて思い知らされますね。そんな中でチェン選手にとって新たな試みとなったのが4ループ。すでに羽生結弦選手、宇野昌磨選手が公式試合では成功させていますが、チェン選手はこれが試合では初挑戦で見事に成功させました。これでチェン選手はルッツ、フリップ、ループ、サルコウ、トゥループ、5種類の4回転を公式試合で成功させた唯一の選手となりました。今回は抑えめのジャンプ構成でしたが、今シーズン中に5種類の4回転全てを1つのプログラムの中で跳ぶ可能性もあり、それによって試合の勝敗というのももちろん影響されますが、それ以上に単純に今見られる全種類の4回転が入ったプログラムを見たいというワクワク感の方が強いですね。もちろん羽生選手や宇野選手にもその可能性はあり、来シーズンからは4回転の基礎点が下がるということもあって、ここまで熾烈な4回転競争というのは今季限りになるかもしれませんから、これ以上ないという行き着くところまで行き着いてほしいなと個人的には願ってしまいますね。

 2位は同じくアメリカのマックス・アーロン選手。ショートは冒頭の4トゥループが乱れたものの、続く4サルコウ+3トゥループ、3アクセルはきれいに着氷し自己ベストに約1点と迫る得点で2位につけます。フリーは4サルコウは着氷ミスがあったものの、2本の4トゥループ、2本の3アクセルはほぼノーミスで揃え、自己ベストとなる175.50点をマーク、トータルでも自己ベストを更新し銀メダルを手にしました。
 昨シーズンはパーソナルベストから10点以上低い試合ばかりが続き、全米選手権も9位に終わったアーロン選手にとって、シーズン初戦で自己ベストを塗り替えられたのはスタートダッシュ成功と言ってもよいのではないでしょうか。もちろん細かいところを言えばもったいない取りこぼしがないではないですが、初戦と考えれば許容範囲内でしょうね。だからこそ次戦はより大切で、今大会同等かそれ以上の演技を見せないと昨季の二の舞になりかねないので、アーロン選手の進化に期待したいと思います。

 3位はカナダのリアム・フィラス選手。ショートは3アクセルで転倒したものの、ほかのジャンプやスピンで高い加点を稼ぎ自己ベストで3位。フリーも転倒がありましたが、決まった4トゥループや3アクセルでは高いGOEを積み重ねこちらも自己ベスト。チャレンジャーシリーズでは初めての表彰台となりました。
 実力者が揃う現在のカナダ男子。その中でもフィラス選手は演技構成点の評価が高い選手だと思いますが、今大会は技術点もまずまずといったところでしたね。昨季こそカナダ選手権7位だったフィラス選手ですが、その前年までは3年連続で表彰台に立った実力の持ち主なので、2枠しかないオリンピック代表に向けて頑張ってほしいですね。

 シニア初戦となった日本の友野一希選手は5位と健闘。ショートは全てのジャンプにミスがあり8位と出遅れましたが、フリーは冒頭の4サルコウの転倒以外は致命的なミスなく滑り切り5位、総合でも5位まで追い上げ、またショート、フリー、トータル全てにおいてパーソナルベストを更新しました。
 初めてのシニアの国際大会の緊張感がもろに影響を及ぼしたショートから、自己ベストを10点近く更新したフリーへの切り替えが素晴らしかったですね。今回は残念ながら4サルコウがクリーンに決まりませんでしたが、この大技がハマれば一気に得点アップが望めますし、ショートは自己ベストを更新したとはいえ1点ほど上回っただけで内容も振るわなかったので、まだまだ伸びしろがあることを思うと、日本男子の3人目候補としておもしろい存在になってきたなと思いますね。

 ベテランの無良崇人選手は7位となりました。ショートは冒頭の4トゥループの着氷で踏ん張り、後半の得意の3アクセルはさすがの跳躍で加点2と高評価を得たものの、3+3がまさかの単独の3ルッツとなり、5位発進。フリーは冒頭の4サルコウが2回転となり、続く4トゥループで立て直しましたが、後半は3アクセルが2本とも1回転になるなどミスを連発し8位、総合7位と順位を落としました。
 ショート、フリーともに最後まで無良選手らしからぬ内容で、練習からリズムを作れなかったのかそれとも本番だけの問題だったのかはわかりませんが、今後に向けて少し心配が残りますね。フリーの後半で大崩れしてしまったのもそうですが、ショートからしてコンビネーションジャンプが抜けてしまうようではトップ選手たちと同レベルで戦うのは難しくなってくるので、この状況からどう挽回するのか、スケートカナダでの盛り返しに期待したいですね。


 ペアは地元カナダのカーステン・ムーア=タワーズ&マイケル・マリナロ組が優勝。SPは冒頭のツイストがレベル1となるミスがあったものの、その後は落ち着いてエレメンツをこなしトップに立ちます。フリーもツイストを始め、ジャンプ、リフトでもミスを犯しますが、おおむね演技をまとめて2位と2点差の接戦を制しました。
 2位はアメリカのアレクサ・シメカ=クニーリム&クリス・クニーリム組。ショートは3サルコウが2回転となったりスピンがレベル1になったりと細かなミスを重ね3位。フリーも3サルコウが1回転となりましたが、そのほかのエレメンツで高い加点を積み重ねて1位、総合2位となりました。
 3位もアメリカのチェルシー・リュー&ブライアン・ジョンソン組。ショートは全ての要素をそつなくまとめて自己ベストを5点以上更新して2位と好スタート。フリーはいくつかミスがありましたが大きくリズムを崩すことはなく3位、総合でも3位とシニアデビュー戦を銅メダルで飾りました。

 日本の須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組は7位となっています。


 アイスダンスはアメリカのマディソン・ハベル&ザカリー・ドノヒュー組が3連覇を達成しました。ショート、フリーともにミスらしいミスなく全米3位の実力を見せつけ、2位に20点以上の差をつける圧勝でした。
 2位は同じくアメリカの若手カップル、ケイトリン・ハワイエク&ジャン=リュック・ベイカー組。SDは終盤のツイズルで女性のハワイエク選手が転倒する珍しいミスがあり自己ベストからはほど遠いスコアで3位。しかしFDは切り換えて臨み目立ったミスなく演じ切り2位となりました。
 3位は日本の村元哉中&クリス・リード組。ほぼノーミスの演技でショートを2位と好位置で折り返し、フリーもミスらしいミスなく自己ベストに約1点と迫る得点で2年連続で表彰台に立ちました。
 1年前はこの大会で当時のパーソナルベストをマークしましたが、今回も自己ベストに近い得点で二人らしい演技ができたのではないかと思います。ただ、まだ上位2組とは技術点でも演技構成点でも差があるので、1つ1つのエレメンツの質のレベルアップが全体のクオリティーを磨くことにもなると思いますから楽しみにしたいですね。次戦は平昌オリンピックの出場が懸かるネーベルホルン杯。村元&リード組個人としても五輪に出場できるか否かが決まりますし、その結果によって日本チームとしての団体戦出場可否も左右されます。二人らしい演技を見せることができれば出場権獲得は問題ないと思うので、ぜひ頑張ってほしいと思います。



 ロンバルディアトロフィー&USインターナショナルクラシックの記事は以上です。そうこうしているあいだに今度はスロバキアでオンドレイネペラトロフィーとカナダでオータムクラシックインターナショナルが開幕。すでに一部ショートの演技が終わっていますが、競技が全て終わってからこちらも記事にしたいと思いますのでお待ちください。では。


:記事冒頭の国際スケート連盟のロゴは国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、そのほかの画像は全て、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。


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# by hitsujigusa | 2017-09-22 17:39 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 普段はスケーターごとにさまざまなコスチュームを振り返って、その選手の衣装の特徴、魅力を再発見しようという意図でお送りしているフィギュアスケーター衣装コレクション。ですが、今回は特別編として称して、一人の選手の衣装に焦点を当てるのではなく、フランスの作曲家ジョルジュ・ビゼーが作曲したオペラ「カルメン」の音楽を用いたプログラムで、古今東西のスケーターたちがどんな衣装を着用してきたのかを見ていく、という趣旨で記事を書いていきたいと思います。
 その「カルメン」といえばフィギュア界の中でも定番中の定番作品。古いところだとサラエボとカルガリーの2度のオリンピックを制したドイツ(東ドイツ)のカタリナ・ヴィットさんの代表的プログラムとして知られていますが、私自身がフィギュアスケートを見始めたのがせいぜい十数年前なので、この記事で取り上げるのも主に2000年代以降と比較的新しく、その中でも特に印象深い「カルメン」となっていますのでご了承ください。
 では、さっそく時代の古い順に見ていきましょう。

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# by hitsujigusa | 2017-09-14 02:25 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

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 フィギュアスケーターたちの華麗なるコスチュームの数々をスケーター別に紹介するフィギュアスケーター衣装コレクション。第14弾となる今回は日本の男子フィギュア界の一時代を築いた織田信成さんの衣装を取り上げます。
 織田さんといえば涙もろいことで知られ、その表情の豊かさが強烈に印象に残っているスケーターですが、コスチュームも正統派から個性派まで多彩なデザインのものが使用され、織田さんの山あり谷ありの競技人生に色を添えました。そんな衣装のごく一部ではありますが、個人的に特に印象に残っているものを紹介していきたいと思います。

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# by hitsujigusa | 2017-08-31 18:25 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)