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ロステレコム杯2013・男子&アイスダンス―町田樹選手、GP通算3度目の優勝

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 グランプリシリーズ13/14、最終戦のロステレコム杯の男子&アイスダンスについて書いていきます。(女子&ペアはこちら
 男子シングルで優勝したのは町田樹選手。スケートアメリカに続いての優勝で、ファイナル進出を自身の手で勝ち取る勝利となりました。2位にはロシアの新星、マキシム・コフトゥン選手が、3位にはスペインのハビエル・フェルナンデス選手が入っています。
 アイスダンスではロシアのエカテリーナ・ボブロワ、ドミトリー・ソロビエフ組が金メダルを獲得しました。

ISU GP Rostelecom Cup 2013 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 見事、男子シングルを制したのは町田樹選手です!

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 SPは冒頭の4+3の4回転はほぼ完璧に降りますが、強引に付けた形となった3回転は着氷でこらえステップアウト。しかしそのほかのエレメンツでミスらしいミスはなく、「エデンの東」の世界を豊かに表現しました。


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 そしてフリー、1本目の4トゥループはコンビネーションの予定が、着氷で手を付くミスで単独に。が、2本目の4トゥループに2トゥループを付け、しっかりとミスをカバーしました。続く3アクセル+3トゥループは完璧なジャンプ。後半冒頭の3アクセルでミスがあった後は、次々とジャンプを成功させ、演技をきっちりとまとめました。
 今大会の町田選手は決して調子が良くなく、練習でもなかなか4回転や3アクセルが決まらなかったそうです。その上、ファイナルの切符も懸かっているとなれば相当キツイ精神状態だったでしょう。その中でこれだけ安定した、大きなミスのない演技ができたというのは町田選手にとって本当に自信になったのではないでしょうか。スケートアメリカの時はそもそも調子が良かったわけですから、ある意味、彼の実力と努力を持ってすれば、優勝は当然の結果かもしれません。でも今回は本調子でなく、どうなるか分からない不安定な状態での優勝ですから、アメリカ以上に意義深い優勝と言えますね。
 このあとのシーズン、ファイナルでも全日本でも調子が上がらないことはあり得ますから、今大会の経験、そして内容と結果は貴重な財産になったのではないかと思います。
 とにもかくにも、素晴らしい優勝&ファイナル進出です。おめでとうございます。今大会では出し切れなかった町田選手の“表現”を、福岡ではぜひ存分に見せてほしいですね。


 惜しくも2位となったのは、ロシアのマキシム・コフトゥン選手です。

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 SPは4サルコウ+3トゥループ、単独の4トゥループと2本の4回転を成功させると、3アクセルもパーフェクトに決め、のびのびとした「フラメンコ」の演技で地元ロシアの観客を魅了、フィニッシュではガッツポーズを見せました。得点はパーソナルベストで92.53点、ショートの世界歴代4位となる高得点で断トツの首位に立ちました。
 フリーでは1本目の4サルコウで転倒、2本目の4サルコウは2回転となってしまいます。しかし4トゥループはクリーンに成功させました。後半でも複数のミスが出て得点は伸びず、フリーのみでは4位となりますが、ショートのアドバンテージが利いて何とか総合順位2位に留まりました。
 ショートの素晴らしい演技から一転、大乱調のフリーとなったコフトゥン選手。女子シングルのリプニツカヤ選手もまさに同じ状況・状態でしたが、ショートでの最高の演技が逆に自分を苦しめるプレッシャーとなってしまったのでしょう。
 それでもあれだけの確率でクリーンに4回転を跳べるわけですから、あとはメンタルの問題。フリーで3本の4回転を成功させる日もそう遠くないような気がしますね。
 中国杯2位&ロステレコム杯2位で初のファイナル進出。福岡ではルーキーらしい若々しい演技を見せてくれることを期待しています。


 銅メダルを獲得したのはスペインの実力者、ハビエル・フェルナンデス選手です。

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 SPは冒頭の4サルコウで転倒しますが、その後のエレメンツではミスといえるミスはなく、しっかりとまとめて3位発進となりました。
 フリーは前半の2本の4回転でミス、3アクセルで転倒すると、後半に入っても4サルコウで転倒、3連続コンビネーションジャンプが規定違反でノーカウントになるなど、最後までフェルナンデス選手らしい演技が出来ぬまま演技が終わってしまいました。
 今大会の演技は私も見ていて衝撃的というか、どうしちゃったんだろうというかなり悪いレベルの演技でしたね。2週間前のNHK杯も良くなかったですが、GP初戦だから仕方ない面もあったと思います。でも今大会は2戦目で調子が上がっているどころか、NHK杯より悪いようにさえ見えました。
 ジャンプの調子が全体的に悪そうで、練習時から空中で軸が完全に曲がっているジャンプがチラホラとあって、それが本番でもそのまま表れているんですね。それも4回転だけではなく、ほかのジャンプにまで影響が及んでしまっているのが少し心配です。
 オリンピックまではまだ時間がありますから、それまでにじっくり焦らず立て直していってほしいと思います。フェルナンデス選手らしいジャンプ、演技が再び見られることを楽しみにしています。


 4位に入ったのはロシアのベテラン、コンスタンティン・メンショフ選手。

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 SPは冒頭の3アクセルは完璧に決めると、減点されるも4回転ジャンプを成功させます。ただ、単独のトリプルジャンプがダブルになったり、スピンのレベルを取りこぼしたりとミスもあり、パーフェクトな演技とはいきませんでした。
 フリーは1本目の4回転をクリーンに決めますが、その後の3つのジャンプ要素は不完全なものが続きます。が、しっかり降りた3アクセル+3トゥループの後からは演技を立て直し、パーソナルベストの得点を叩き出し、トータルスコアでも自己ベストとなりました。
 メンショフ選手は今年4月の世界国別対抗戦で右肩を脱臼してしまい、その後の状態が心配されましたが、ここまでのシーズン、見事なジャンプ、演技を見せてくれていますね。まだ演技後に右肩を気にするような仕草もあり、脱臼というのはやはりのちのちに影響が大きい怪我なのだろうとは思います。その中であれだけの4回転を跳べるというのはすごいなーと改めて感じました。
 ロシア男子の五輪1枠争いは、強力な若手の出現でさらに混迷を深めています。元々メンショフ選手の枠でこの大会に出場するはずだったエフゲニー・プルシェンコ選手もいますし、要注目ですね。


 5位となったのはアメリカのリチャード・ドーンブッシュ選手。

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 SPでは4サルコウがダブルに、3アクセルが転倒、3+3のファーストジャンプがダブルになるなど、全てのジャンプ要素でミスが出て7位発進となってしまいました。ですが、フリーでは4回転や3アクセルなど、いくつかのジャンプミスはあったものの、大崩れはしないまとまりのある演技を見せ、フリーのみでは2位。総合順位でもグンと5位にアップしました。
 中国杯の時はフリーで2度の4回転を入れていましたが、今大会は1本のみ。そのほかでもだいぶ構成を変えていましたね。トータルスコア的には中国杯より低くなりましたが、のびのびとしたスケートは出来ていたように感じました。


 6位はロシアのアルトゥール・ガチンスキー選手です。

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 SPは4回転で転倒、3+3が3+2になるといった取りこぼしはありましたが、何とか最小限のミスに抑え、5位となりました。フリーでは2本の4回転に挑戦しますが、1つは転倒、1つはトリプルにと、クリーンな成功は見られませんでした。その後、単独の3アクセルでのミスはありましたが、後半はジャンプをまとめ立て直しました。
 世界選手権でメダルを取ったシーズンでも、必ずしも4回転をバンバン決めるという選手ではなかったですが、それでも今よりは確率は高かった気がします。それでも先月のスケートアメリカのフリーでは4回転も成功させていましたし、絶不調の時と比べれば良くなっているのかなという印象もありますね。
 今大会でおもしろかったと言ったら失礼かもしれませんが、興味深かったのが、ガチンスキー選手とコフトゥン選手の対決ですね。別に2人で直接戦っていたわけではありませんが、ガチンスキー選手のコーチ、アレクセイ・ミーシンコーチとコフトゥン選手のコーチ、タチアナ・タラソワコーチは各々ロシアフィギュア界の重鎮。両コーチの歴代の教え子たちはロシアを引っ張る存在として、互いにロシアチャンピオンを争ってきました。そういった意味で、同世代のガチンスキー選手とコフトゥン選手がグランプリのロシア大会で競っている姿を見て、いろいろ想像(妄想?)が膨らんでしまいました。同世代といってもガチンスキー選手は先輩であり、かつ、世界選手権のメダリスト経験者でもあるわけで、かたやコフトゥン選手はシニアデビューしたばっかりのルーキーなわけです。でも、コフトゥン選手はGPデビューでさっそくメダルを獲得して、ショートで2本も4回転を成功させちゃうほど勢いに乗っていて、一方ガチンスキー選手はしばらく低迷が続いていて、でも先輩としてのプライドもあるだろうし……とか、それぞれのコーチの顔が映し出されても全く対照的な表情をしていて……とか、とにかくどうしても対比してしまう材料がいっぱいあって、今大会はかなりこの2選手(と、2コーチ)のことが気になっていました。
 ましてや今季はオリンピックがありますから、2人のどちらが1枠により近づくのかというところも非常に興味を惹かれます。また、それとは別に、次世代のエースを巡る争いでもあるんですよね、多分。
 全く違った個性を持った両選手が、どんなふうに成長・進化していくのか、今から楽しみですね。


 男子についてはここまで。続いて、アイスダンスです。
 優勝したのはロシアのエカテリーナ・ボブロワ、ドミトリー・ソロビエフ組です。ショートでほぼノーミスの演技を見せ首位に立つと、フリーは順位こそ2位でしたが、取りこぼしの少ない演技でパーソナルベスト、総合で1位となりました。中国杯2位の結果との合計で28ポイント、グランプリファイナル進出となりました。
 銀メダルを獲得したのはカナダのケイトリン・ウィーバー、アンドリュー・ポジェ組。ショートではパターンダンスやリフトでレベルの取りこぼしがあり、スケートカナダでマークした自己ベストより9点ほど低い得点となりました。フリーは挽回して1位となりましたが、総合では2位に留まりました。ただ、カナダでの成績2位、今大会も2位で、ファイナル進出を決めました。
 3位はアメリカのマディソン・チョック、エヴァン・ベイツ組。こちらもショートでミスがあり、4位と出遅れましたが、フリーで盛り返して表彰台に登りました。


 さて、女子&ペア編と同様に、ファイナリストをまとめたいと思います。(敬称略)


《男子シングル》

①パトリック・チャン(カナダ):30ポイント カナダ大会優勝、フランス大会優勝
②町田樹(日本):30ポイント アメリカ大会優勝、ロシア大会優勝
③羽生結弦(日本):26ポイント カナダ大会2位、フランス大会2位
④マキシム・コフトゥン(ロシア):26ポイント 中国大会2位、ロシア大会2位
⑤高橋大輔(日本):24ポイント アメリカ大会4位、日本大会優勝
⑥閻涵(中国):24ポイント 中国大会優勝、フランス大会4位
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補欠⑦織田信成(日本):24ポイント カナダ大会3位、日本大会2位
補欠⑧アダム・リッポン(アメリカ):22ポイント アメリカ大会2位、日本大会4位
補欠⑨ジェイソン・ブラウン(アメリカ):18ポイント アメリカ大会5位、フランス大会3位


《アイスダンス》

①メリル・デイビス、チャーリー・ホワイト(アメリカ):30ポイント アメリカ大会優勝、日本大会優勝
②テッサ・ヴァーチュー、スコット・モイヤー(カナダ):30ポイント カナダ大会優勝、フランス大会優勝
③エカテリーナ・ボブロワ、ドミトリー・ソロビエフ(ロシア):28ポイント 中国大会2位、ロシア大会優勝
④ナタリー・ペシャラ、ファビアン・ブルザ(フランス):26ポイント 中国大会優勝、フランス大会3位
⑤ケイトリン・ウィーバー、アンドリュー・ポジェ(カナダ):26ポイント カナダ大会2位、ロシア大会2位
⑥アンナ・カッペリーニ、ルカ・ラノッテ(イタリア):26ポイント アメリカ大会2位、日本大会2位
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補欠⑦エレーナ・イリニフ、ニキータ・カツァラポフ(ロシア):22ポイント 日本大会4位、フランス大会2位
補欠⑧マイア・シブタニ、アレックス・シブタニ(アメリカ):22ポイント アメリカ大会3位、日本大会3位
補欠⑨マディソン・チョック、エヴァン・ベイツ(アメリカ):22ポイント 中国大会3位、ロシア大会3位



 男子のグランプリシリーズの中心はやはり世界チャンピオン、パトリック・チャン選手でしたね。フランス大会では世界歴代最高得点を更新しましたし、やはり手強い選手です。このチャン選手に、ほかの5選手がぶつかっていく、というような構図でしょうか。
 その中で日本勢は3人がファイナルに残りました。町田選手は2大会優勝ですからこれは本当に素晴らしいものです。羽生選手は優勝こそできませんでしたが、2大会ともチャン選手と一緒でしたからね。高橋選手は本調子から程遠かった初戦で4位、ファイナルが危うくなったところから、NHK杯での見事な演技、そしてファイナルへの滑り込みでした。3選手が自国開催のファイナルでどんな演技を披露してくれるのか、今からワクワクドキドキです。
 アイスダンスはさすがの2強、アメリカのデイビス、ホワイト組と、カナダのヴァーチュー、モイヤー組が強さを見せました。金メダル争いはやはりこの2組で行われることになりそうですね。


 ロステレコム杯の記事は以上です。が、いよいよオリンピックの前哨戦ともいえるGPファイナルです! こちらの方でもまた長々と書きたいことを心の赴くままに書き連ねていきたいと思います。ぜひ、読んでいただけると幸いです。


:男子シングルメダリスト3選手の写真、町田選手の写真、フェルナンデス選手の写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」から、コフトゥン選手の写真、メンショフ選手の写真、ドーンブッシュ選手の写真は、エンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、ガチンスキー選手の写真は、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから引用させていただきました。


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by hitsujigusa | 2013-11-28 03:14 | フィギュアスケート(大会関連)