世界選手権2014・男子ショート―町田樹選手、パーソナルベストで首位

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 世界選手権2014inさいたま、始まりました! この記事では男子ショートの模様についてお伝えしたいと思います。
 男子シングル、ショート首位となったのは町田樹選手。これまでのパーソナルベストを大きく上回る高得点で、初めての世界選手権をショート1位で折り返すこととなりました。2位はスペインのハビエル・フェルナンデス選手、3位はソチ五輪金メダリスト、羽生結弦選手となっています。

ISU World Championships 2014 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 ショート1位は町田樹選手です!

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 本っ当に素晴らしい演技でした。初めての世界選手権ということで変に緊張していないかな?と余計な心配をしてしまったのですが、全くの杞憂でしたね。
 冒頭の4トゥループ+3トゥループは完璧としか言いようのないパーフェクトなコンビネーションジャンプ。高い加点を得ます。続く得意の3アクセルもいつもどおりの安定感、かつ、いつも以上に美しいランディング。ソチ五輪では珍しくミスしてしまった後半の3ルッツも難なく決めると、クライマックスのステップシークエンスはスケーティングもよく伸びて、滑らかで柔らかさをそなえつつも、力強い滑り。終始スピードに乗った演技を披露しました。フィニッシュした町田選手は微塵も顔色を変えることなく、押し寄せる感情をじっくり噛み締めるような表情でしたが、リンクから上がり大西勝敬コーチと抱き合うと喜びを爆発させました。得点はこれまでの自己ベストを7点以上更新する98.21点。世界歴代3位の高得点で1位となりました。
 演技後、町田選手はインタビューに対し、「町田樹史上最高傑作を、最高傑作の形でお届けできた」と答えましたが、シーズン最後の大舞台で紛れもなくベストの「エデンの東」を見せてくれましたね。町田選手の仕草、動きのひとつひとつがとても美しく、また、心が溢れ出るような演技に、琴線と涙腺が揺さぶられました。
 そして、ソチ五輪以来の「エデンの東」を見て、改めて美しい選手だなと思いました。オリンピックの時はジャンプでミスしませんようにと祈ったり、大丈夫かなとドキドキしたりで冷静に演技を見られなかったのですが、久しぶりに落ち着いてこのプログラムを拝見して、腕や脚、腰などの動かし方、頭の先から指先までひとつの流れとなった繊細な身のこなしの美しさは、やはり格別だなと感じ入りました。こんなに一挙手一投足や佇まいが美しい選手は、トップスケーターの中でもそう多くはいないですね。
 初の世界選手権でショート首位になるという予想以上の滑り出しで、逆にプレッシャーになっちゃうんじゃないかなという心配もありますが、何はともあれシーズン最後の演技なので、何にもとらわれることなく、町田選手らしく「火の鳥」を演じてほしいなと思います。


 2位となったのは昨年のメダリスト、スペインのハビエル・フェルナンデス選手です。

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 こちらもよくまとまったフェルナンデス選手らしい演技でした。冒頭の4サルコウは力みのないスムーズな入りと跳び上がりで完璧な着氷。3アクセル、3ルッツ+3トゥループをきれいに決め、ステップ、スピンは全てレベル4。軽快なリズムに乗って表情豊かに音楽を表現し、納得の笑み。得点は96.42点、自己ベストを4点以上上回り2位となりました。
 ソチ五輪では2つのジャンプでミスがあったフェルナンデス選手ですが、しっかりと今大会に合わせてきましたね。特に4サルコウはソチでのものよりも軽やかで、“らしい”4回転でした。フリーも楽しみにしています。


 3位はソチ五輪王者、羽生結弦選手です。

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 冒頭は抜群の安定感を誇る4トゥループでしたが、軸が空中で斜めになってしまい転倒、アンダーローテーション(1/2以内の回転不足)判定となります。しかしその後は崩れることなく、スピンは確実にレベルを獲得。後半の3アクセル、3ルッツ+3トゥループもクリーンに決めて、ステップシークエンスもいつもどおりにこなしました。演技を終えた羽生選手は苦笑い、悔しそうに顔を歪めました。得点は91.24点、ソチ五輪でマークした自己ベストには大きく及ばないものの、高得点で頂点を狙える好位置につけました。
 それにしても4トゥループの失敗は驚きました。羽生選手の発言からすると、演技前は特に過信はなくいつもどおりに臨んだようですが、4トゥループは練習からほとんど失敗らしい失敗がなかったからこそ油断してしまったのかもしれません。今シーズン、絶対的といっても良いほどショートはミスが無かったので、この演技内容、結果は意外でしたが、ほんのちょっぴりの心のブレが大きなミスに繋がってしまうのが4回転の難しさなんでしょうね。ですが、シーズンの中で一度や二度落ちる時はあるので、たまたまそれが世界選手権だったということではないかと思います。今まではショートで優位に立ってフリーで守るというパターンが多かったですが、今回はショートで追いかける立場となったことで、フリーでは思い切り攻めていけるでしょうから、また一味違ったフリーが見られるかもです。
 気になった点としては2つあり、1つは4トゥループの回転不足。映像で見る限り、回り切っていたように見えたのですが判定はアンダーローテーション。テレビ中継の実況でも回転不足判定が厳しめだと言っていましたが、確かに厳しかったですね。
 もう1つは羽生選手の言葉。演技後のコメントで羽生選手は、「4回転をミスしてしまいましたが、そのあとはしっかりとGOE(出来栄え点)を取れば90点台に乗せられると思ったので、やっぱGOEというのが、今回のプログラムで一番点数を稼げるところだと思っていました」と話しました。得点計算を頭に入れながらの演技というのは、エレメンツを機械的にこなしている感じになるというか、プログラム全体の音楽表現というより技を消化していく演技みたいになってしまうのではないかと思うので、少しどうなのかなと感じました。
 ソチではフリーで大きな悔しさを背負った羽生選手。その分もぶつけて、満足のフリーとなることを願っています。


 4位発進となったのはチェコの実力者、トマシュ・ベルネル選手です。

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 今大会限りでの現役引退を発表しているベテランのベルネル選手。最近なかなかクリーンに決まらなかった4トゥループをまずきっちりと成功させると、続く3アクセルも完璧。後半の3+3も問題なく着氷し、ステップシークエンスでは全身を大きく使った元気いっぱいの滑りを披露。フィニッシュしたベルネル選手は歓喜が大爆発、氷上に身を横たえ満面に笑みを浮かべました。得点は89.08点でこちらもパーソナルベストを5点以上更新しました。
 久しぶりの会心の出来でしたね。曇りのないすっきりした表情のベルネル選手を見て、こちらも嬉しくなりました。今季はグランプリシリーズにこそ参戦せず、ほとんどがB級大会だったものの、出場した大会では軒並み80点を超えていて1月の欧州選手権でも自己ベストをマークしていました。一流国際大会への出場が少なかったためにあまり目立ってはいませんでしたが、バンクーバー五輪以降では最も調子の良いシーズンだったのではないかと思います。それがシーズン最後に結実した形となりましたね。これが現役最後の競技会になってしまうなんてとても寂しいですが、納得のいく終わり方ができるよう祈っています。


 5位は中国の新星、閻涵(ヤン・ハン)選手。

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 冒頭は代名詞ともいえる得意の3アクセル。これを普段どおりの安定感でパーフェクトに決めて波に乗ると、次の4トゥループもしっかりまとめます。後半の3+3はファーストジャンプの着氷で詰まったために、セカンドジャンプがダブルになりましたが、ステップ、スピンは全てレベル4を揃えるなど落ち着いた演技を見せました。得点は86.70点、5位につけました。
 3アクセルと4回転がお見事だっただけに、後半のジャンプミスがもったいなかったですね。今季はこういった形でのミスが何度かあるので、そつなくエレメンツを揃えられるようになると、巧いだけではなく強い選手になるんだろうなと思います。フリーも期待しています。


 6位となったのは小塚崇彦選手です。

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 緊張した面持ちでリンク中央に立った小塚選手。冒頭の4トゥループは回転不足とはならなかったものの、両足着氷で減点。3アクセルも回転がギリギリで降りてきてしまい危うい着氷に。しかし後半は立て直し、3+3、スピンを丁寧にクリア。終盤のステップシークエンスでは小塚選手らしい淀みない自由自在のスケーティングを披露。7拍子の独特のリズムに合わせクールで端正な小塚選手の世界を存分に表現しました。得点は85.54点、シーズンベストをマークしました。
 高橋大輔選手の欠場で繰り上がりの出場となった小塚選手。3週間しかない調整期間の中で見事に仕上げてきました。こういった落ち着きというか、自分のペースを持っているというのはさすが経験豊富な実力者らしいところですね。フィニッシュでは控えめながらもガッツポーズを見せましたが、まだまだ余力が残っていそうな、そんなちょうど良い具合に力の抜けた演技でした。フリーも小塚選手らしく頑張ってほしいと思います。


 7位はロシアチャンピオン、マキシム・コフトゥン選手。

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 ショートでは2つ、2種類の4回転を組み込んだコフトゥン選手。1本目の4サルコウは体勢を崩しながら着氷しましたがアンダーローテーションの判定。しかし、2本目の4トゥループ+2トゥループは回転し切って降り、3アクセルもきっちり成功させるなど、全体的にまとまった演技を見せました。得点は84.66点で7位発進となりました。
 ロシア選手権ではかの皇帝プルシェンコを破って優勝したものの、欧州選手権ではフリーでミスが複数出て順位を落とす結果に。今大会もショートはまずまずの内容、位置なので、フリーで挽回できることを願っています。


 8位となったのはアメリカ王者、ジェレミー・アボット選手。

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 冒頭の4トゥループはそんなに悪くない形で着氷しましたが、惜しくも回転不足で転倒。ですが3+3、3アクセルはクリーンに成功させ、コンテンポラリーな雰囲気の音楽に乗ったステップシークエンスでも、細かさと雄大さが融合したフットワーク、エッジワークで魅せました。得点は79.67点でシーズンベストをマーク。
 今大会をもって引退するアボット選手とあって、会場の声援、盛り上がりも日本選手と変わらないくらいひときわのものがありましたね。どれだけ彼が日本のフィギュアファンに愛されているかというのが改めてよく分かりました。他の選手が4回転をバンバン決める中、残念ながらその点で出遅れてはしまいましたが、そんなことを忘れさせるくらいスケートが美しく、アボット選手にしかできない魅せ方、演技をしていたと思います。現役ラストとなるフリー、楽しみにしています。



 90点台の選手が3人とハイレベルな戦いとなった男子ショート。初出場の町田選手が初の栄光に輝くのか、フェルナンデス選手のヨーロッパ選手として久しぶりのタイトル獲得となるのか、ソチ五輪チャンピオン羽生選手の逆転優勝か、はたまた……。28日のフリーを待ちたいと思います。では。


:記事冒頭のショート上位3選手のスリーショット写真は、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、町田選手の写真は毎日新聞のニュースサイト内の写真特集「世界フィギュア2014」から、フェルナンデス選手の写真はAFPBB Newsが2014年3月27日の9:35に配信した記事「町田、五輪王者の羽生抑え男子SP首位 世界フィギュア」から、羽生選手の写真、閻選手の写真、小塚選手の写真、コフトゥン選手の写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、ベルネル選手の写真、アボット選手の写真は、エンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から引用させていただきました。


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by hitsujigusa | 2014-03-27 23:37 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)