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スケートカナダ2014・女子&アイスダンス―アンナ・ポゴリラヤ選手、GP2度目の優勝

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 スケートカナダ2014、女子とアイスダンスの競技結果、内容について書いていきます。
 女子で頂点に立ったのはロシアのアンナ・ポゴリラヤ選手。安定感抜群のジャンプで、昨年の中国杯以来のGPの金メダルを獲得しました。2位にはアメリカのベテラン、アシュリー・ワグナー選手が入り、3位となった日本の宮原知子選手は初めてのGP表彰台となりました。
 一方、アイスダンスではカナダのケイトリン・ウィーバー、アンドリュー・ポジェ組がGP初優勝を果たしました。

ISU GP Skate Canada International 2014 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 女子シングルを制したのはロシアのアンナ・ポゴリラヤ選手です。

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 SPは「アルビノーニのアダージョ」、後半に2つのジャンプ要素を固める構成です。冒頭の大技3ルッツ+3トゥループは完璧な跳躍とランディングで成功、3ループもきれいに決めます。しかし、苦手としている2アクセルの着氷でバランスを崩し、減点。それでも65.28点の高得点で首位発進となりました。
 フリーは王道バレエの「火の鳥」。ショート同様に3ルッツ+3トゥループは軽々と成功させ、続く3ループ+1ループ+3サルコウも見事に着氷。その後、3フリップでのエッジエラーはありましたが、スピンやステップシークエンスのレベルもしっかり取り、全体的に危なげない演技を披露しました。得点は126.53点、フリーも1位で、2位に5点以上の差をつける優勝となりました。
 ほとんど失敗しそうな感じのしないジャンプばかりで、安定感ありまくりでしたね。パーフェクトではなかったのですが、決まらなかったジャンプもそんなに心配のないジャンプでしたし、充分修正可能なものでしょうね。ただ、ポゴリラヤ選手の唯一の難点と言えるのが2アクセルで、どうしても跳び方がぎこちなくなってしまうので、失敗ではないのですがGOEの加点が伸びないんですよね。でも、今回ショートとフリーで跳んだ3つの2アクセルは全て2回転半回り切ったものでしたし、1年前は完全にすっぽ抜けるものも多かったことを考えると、だいぶ改善されてきたのかなという印象を受けます。
 2年連続のファイナル進出へ好スタートを切ったポゴリラヤ選手、次戦は母国のロシア大会です。スケートカナダ優勝、おめでとうございました。


 銀メダルを獲得したのはアメリカのアシュリー・ワグナー選手。

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 ショートは「スパルタクス」。冒頭の3フリップ+3トゥループは一見成功したかに見えましたが、セカンドジャンプがアンダーローテーション(軽度の回転不足)判定となります。後半の2アクセルは難なく決めましたが、3ループは再びアンダーローテーションに。しかし、大きなミスのないまとまった演技で、63.86点をマークし2位につけます。
 フリーは「映画『ムーラン・ルージュ』より」。3+3は入れず、まずは得意な2アクセルで流れを作ります。続いて2アクセル+3トゥループに挑みますが、セカンドジャンプが回転不足。その後はショート同様に3ループの回転不足もありましたが、安定したジャンプを次々と成功させ、ワグナー選手は納得の表情。得点は122.14点でフリー2位、総合2位となりました。
 コンビネーションジャンプの2つ目のトリプルジャンプだったり、3ループだったりで微妙に回転が不足して減点対象となってしまいましたが、ジャンプの跳び方やフォーム自体はきれいで不安のないものでしたね。
 ジャパンオープンではほとんどのジャンプが回転不足で、しかもスピンのレベルも2ばかりという不満の残る演技だったのですが、それから1か月ない中でしっかりと立て直してたのは、さすが経験豊富なベテランだなと感じました。
 ワグナー選手の次戦はフランス大会、今大会以上の演技となることを願っています。


 3位となったのは日本の宮原知子選手です。

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 SPはモーツァルトの歌劇「魔笛」です。冒頭は得点源となる3ルッツ+3トゥループでしたが、両方のジャンプでアンダーローテーション判定となり、若干のマイナスを受けます。後半に2つのジャンプ要素を固め、そのうち3フリップではアウトサイド気味に踏み切ってしまったため微小の減点となりますが、続く2アクセルはしっかり決めました。得点は60.22点で4位につけます。
 ミスらしいミスは無く、いつもどおりの落ち着いた演技でしたね。3+3で回転不足は取られましたが、私がスロー映像で見る限りはほぼ回り切っていたような気がしましたし、テレビ解説をしていた織田信成さんもスロー映像を確認した上で「回転もしっかり良かったと思います」と言ってたくらいなので、ちょっと厳しめの判定だったなと感じます。
 これは誰が悪いとかではなく、高さがあって余裕を持ってジャンプを降りてくる選手と、あまり高さがなくわりとギリギリにジャンプを降りてくる選手とでは、やはりジャンプに対するジャッジの見方も変わってくるんでしょうね。ジャンプが高い選手はいかにも余裕があるから大丈夫、という感じですが、そうじゃない選手のジャンプは最初から「本当に回り切ってるんだろうか」という前提で見るかもしれないですし、たとえしっかり回り切って着氷しているとしても、厳しい目というのが付いて回るので回転不足を取られやすいということになってしまうんですね。選手としてはジャンプの高さが一気にアップするわけもないですし、どうしようもないことなので、ここは我慢に我慢を重ねて、着実にクリーンな回転のジャンプを跳び続けるしかないのかなと思います。

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 フリーはミュージカル「ミス・サイゴン」。冒頭の3ルッツ+3トゥループはセカンドジャンプが回転不足の判定。3フリップは前日同様、アテンションマークが付く不正エッジとの判定で減点されます。しかし、その後も大きなミスは無く、2アクセル+3トゥループを決めるなど確実にジャンプを成功させていき、演技を終えた宮原選手は控えめな笑顔を見せました。得点は121.53点でフリー3位、ショートから順位を上げて初めてのGPメダルを獲得しました。
 SPに続き素晴らしい演技でしたね。ジャパンオープンでは130点台だったので、そこまではいかなくとももう少し点が出てくれてもいいのになという感じはしましたが、1年前より得点は上がってきているのでジャッジの評価も着実に高まっているなという印象です。
 それにしても宮原選手は本当に大きな失敗をしませんね。昨シーズン本格的にシニアデビューしてからというもの、転倒とかすっぽ抜けとかそういった大きなミスがほとんど無く、唯一昨季のガルデナスプリング杯のフリーで2度転倒というのがあったのですが、それ以外の試合では跳ぶ予定のジャンプをほぼ予定どおりに跳んでいます。この失敗しなさ、落ち着きぶりは、ものすごいメンタルの強さだなと感じますね。
 目標のファイナル進出へまずは一歩前進した宮原選手。ただ、次戦のNHK杯は同じ日本の村上佳菜子選手、ロシアのアデリナ・ソトニコワ選手、アリョーナ・レオノワ選手、アメリカのグレイシー・ゴールド選手、ポリーナ・エドマンズ選手など、世界トップレベルの強豪が集まるので、表彰台に上るだけでも至難の業になるでしょう。宮原選手は今大会で3位だったので、確実にファイナル出場を決めるためにはNHK杯で優勝、確実にとはいかずとも出場の可能性大にするためには2位という結果が望ましいですね。シビアなメダル争いになることが予想されますが、周りのシチュエーションにとらわれることなく、いつもどおりの宮原選手らしく頑張ってほしいなと思います。


 4位となったのはアメリカのコートニー・ヒックス選手。

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 ショートは「Code Name Vivaldi」。得点源となる3フリップ+3トゥループをまず成功させ、2つのスピンをこなしての後半のジャンプでしたが、3ルッツが2回転になり、規定の回転数に満たなかったため無得点となってしまいます。2アクセルは問題なく着氷しましたが、ルッツの失敗が影響して得点は56.36点、8位発進となります。
 フリーは「映画『アンナ・カレーニナ』より」。SPでは見事に成功させた3+3は回避して3+2に。これをきっちり決めると、前半のジャンプを相次いでクリーンに着氷します。後半は3ルッツ+2トゥループ、単独の3ルッツのミスがありましたが、それを引きずることなく最後までしっかりと滑り切り、演技をまとめました。得点は118.15点でパーソナルベスト、トータルでも自己ベストとなって、GP自己最高の4位で大会を終えました。
 SPのルッツのミスがもったいなかったですが、フリーでは素晴らしい演技で挽回しましたね。ヒックス選手はさほど難しいジャンプ構成を組んでいるわけではないのですが、決まったジャンプはどれも高さや余裕のある見栄えのするものなので、その分3ループや3サルコウといった比較的基礎点の低いジャンプでも高いGOE加点を稼げていて、それが彼女の持ち味、武器になるのかなと思います。
 ヒックス選手の次戦はフランス大会。ヒックス選手らしい演技をまた楽しみにしています。


 5位はGPデビューとなった日本の本郷理華選手です。

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 SPはバレエ「海賊」。冒頭は3トゥループ+3トゥループから、これをパーフェクトに決め、後半の3フリップ、2アクセルもクリーンに着氷。ステップシークエンス、スピンも取りこぼしなく丁寧にこなしました。得点は59.10点でこれまでのパーソナルベストを7点近く更新し、5位という好位置につけました。
 GPデビューということで緊張もあったと思うのですが、本郷選手らしい伸びやかかつ迫力のある演技ができていたと思います。何よりミスなく、ひとつもマイナス要素なくやり切ったというのが素晴らしいですね。
 私は本郷選手の演技を見るのはフィンランディア杯に続いて今季2度目なのですが、昨季、一昨季と比べてもより女性らしさや優雅さの表現力が増してきたように感じます。身のこなしにもしなやかさが出てきて、バレエ音楽「海賊」の繊細な部分、力強い部分の両方伝わってきました。さらにメリハリがつけられるようになると、もっと良いプログラムになっていくのではないかと思います。

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 フリーは王道の「カルメン」。冒頭はSPから難度を上げて挑んだ3フリップ+3トゥループでしたが、セカンドジャンプがわずかに回転不足の判定。続く3ルッツもエッジエラーとなります。しかし、その後は落ち着いてジャンプを次々とクリアしていき、華やかな「カルメン」の世界を存分に表現しました。得点は112.37点でこちらも自己ベスト、初めてのGPで5位という幸先の良い船出となりました。
 初GPとは思えないくらいの堂々とした演技で素晴らしかったと思います。ジャンプがほぼ予定どおりに決まったことによって、演技全体に本郷選手の魅力であるスケールの大きさやエネルギッシュさが表れていて、引き付けられる滑りでした。「カルメン」のイメージと本郷選手のイメージが重なっていてとても合っているなと感じましたし、これからさらに洗練されていくと思うので楽しみですね。
 本郷選手の次戦はロシア大会、再び本郷選手らしいスケートが見られることを願っています。


 6位に入ったのはロシアのベテラン、アリョーナ・レオノワ選手です。

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 ショートはチャップリンをテーマにした「スマイル/序曲 彫像の序幕 映画『街の灯』より/テリーのテーマ 映画『ライムライト』より」。冒頭の3トゥループ+3トゥループはしっかりした回転と余裕のある着氷で高い加点を得ます。スピンとステップシークエンスを挟んで後半、3フリップと2アクセルもきっちり成功させましたが、最後のレイバックスピンのスケート靴のブレードを掴む動作のところで掴み損ねたため、予定していた基礎点が取れず、さらに減点となります。しかし、得点は62.54点でメダル争いの目安となる60点台に乗せ、3位につけました。
 フリーはタンゴを組み合わせた「Asi Se Baila El Tango 映画『レッスン!』より/ブエノスアイレスの秋」。冒頭はショートの3+3より難しい組み合わせの3フリップ+3トゥループに挑戦したものの、回転不足で着氷が乱れます。続く単独の3ルッツもエッジエラーの上に回転不足で序盤のジャンプにミスが相次ぎます。中盤から終盤にかけてもジャンプミスを連発し、また、スピンでのレベルの取りこぼしも複数あり、フリーは101.61点と得点を伸ばすことができず、ショートの3位から総合6位に順位を落としました。
 SPはレオノワ選手らしい躍動感と軽快さ溢れる滑りでとても良く、久しぶりのGP表彰台にも充分手が届く位置につけただけに、フリーは一転らしくない演技になってしまい残念でした。今シーズンはGPの前にネーベルホルン杯に出場していて、その時はSPでパーソナルベスト、フリーでも120点に迫るスコアをマークしています。その際、フリーはミスこそありましたが全体的にまとまった演技を見せていたので、決して調子が悪いわけではなく、それどころかシーズン序盤としては好調だったと思うのですが、今回はSPで好位置につけてメダルが見えた分、もしかしたらフリーではそれを意識しすぎてしまったのかなという気もします。
 今大会はフリーで本来の力が発揮できませんでしたが、次のNHK杯ではショートでもフリーでもレオノワ選手の笑顔が見られることを楽しみにしています。


 7位は地元カナダのアレイン・チャートランド選手。

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 ショートの演目は「La Leyenda del Beso」。まずは簡単な2アクセルから入り、2つ目に大技の3ルッツ+3トゥループを持ってきましたが、セカンドジャンプが回転不足に。後半の3ループでもミスがありましたが、スピンやステップシークエンスは全てレベル4を揃え、57.06点という自己ベストに近いスコアをマークし、7位発進となります。
 フリーは「映画『ドクトル・ジバゴ』より」。冒頭は3ルッツ+1ループ+3サルコウの難しい3連続ジャンプを成功させ上々の滑り出しでしたが、直後の3フリップ、3ループでミスが続きます。後半もジャンプミスが相次いでしまい、得点は99.16点でフリー7位、総合7位に留まりました。
 ショートはまずまずだったのかなという印象ですが、フリーでは冒頭の得点源となるコンビネーションジャンプを見事に成功させて、良い流れをつくっていけそうだなというところから失敗の連続となってしまったので、気持ちをうまく立て直すことができないまま後半まで行ってしまったのかもしれないですね。
 次戦は2週間後のロシア大会。ジャンプの課題を修正してチャートランド選手らしい演技となることを祈っています。



 女子シングルについてはここまで。ここからはアイスダンスの結果をお伝えします。

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 優勝者は世界選手権2014銀メダリスト、カナダのケイトリン・ウィーバー、アンドリュー・ポジェ組です。ショート、フリーともにミスらしいミスのない安定した演技を見せ、世界選手権メダリストの貫録を見せつける優勝となりました。その一方で意外だったのが、ウィーバー&ポジェ組はこれがGPシリーズ初めての優勝だということ。今までずっと最高2位で、なかなか頂点には手が届かなかったんですね。だからこそ、ふたりの喜びもひとしおなのではないかと思います。次戦はNHK杯、しばらく間が空きますが体調に気を付けて、万全な状態で来日してくれたらと願っています。初優勝、おめでとうございました。
 2位となったのは同じくカナダのパイパー・ギレス、ポール・ポワリエ組。ショートはツイズルでミスがあり、4位発進となりましたが、フリーではほぼノーミスの演技を見せ、銀メダルを獲得しました。GPには2シーズン前から参戦しているカップルですが、表彰台は初めてですね。地元のカナダということもあって、嬉しさも倍増なのではないでしょうか。初のファイナル進出がかかる2戦目は、フランス大会です。
 銅メダルを獲得したのはアメリカのマディソン・ハベル、ザカリー・ダナヒュー組。ショートはレベルの取りこぼしもありましたが演技をまとめて3位、フリーもリフトでの規定違反やコレオスピンでの転倒など珍しくミスが重なったものの3位、トータルでも3位で昨年のスケートカナダに続き2年連続で銅メダリストとなりました。



 さて、スケートカナダについては以上です。この記事を書いている時点ですでに中国杯が開幕してしまっていて、GPシリーズが進行するスピードに全然追いつけてないのですが、何とかもう少し記事を更新するタイミングを早めて、あんまり遅れすぎないように頑張りたいと思います。では、また中国杯の記事で。


:女子シングルメダリスト3選手のスリーショット写真、宮原選手のフリーの写真、アイスダンスメダリスト3組の写真は、カナダのフィギュアスケート連盟「スケートカナダ」の公式ウェブサイトが2014年10月31日に配信した写真特集記事「2014 Skate Canada International」から、ポゴリラヤ選手の写真は、フィギュアスケート情報ウェブサイト「icenetwork」が2014年11月2日に配信した記事「Russian-of-the week Pogorilaya wins Skate Canada」から、ワグナー選手の写真、ヒックス選手の写真、本郷選手の写真、レオノワ選手の写真、チャートランド選手の写真は国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、宮原選手のSPの写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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