2015年 07月 02日
浅田真央選手、15/16シーズンのプログラムを発表&新プログラム情報②
続々と選手たちの15/16シーズンの新プログラムが発表されている今日この頃ですが、先日現役続行を発表した浅田真央選手が6月29日放送の自身がパーソナリティーを務めるラジオ番組でプログラムについて明かしました。この記事ではその浅田選手のプログラム情報と、そのほかの選手たちのプログラム情報をお届けします。
まずはもちろん浅田真央選手から。6月29日の生放送のラジオ番組「浅田真央のにっぽんスマイル」で、リスナーからの質問に答える形で浅田選手がプログラム名を発表しました。ショートプログラムは「素敵なあなた」、フリーは「蝶々夫人」、どちらもローリー・ニコルさん振り付けとのことです。
予想外にあっさりと早い段階での発表だったので最初はちょっとビックリしましたが、これまでも浅田選手はわりと発表をもったいぶるとか引き延ばすとかいうことはなく、さらりと発表することがけっこうあったので、今回もという感じですね。
ショートの「素敵なあなた」はジャズナンバー。個人的にはジェレミー・アボット選手がかつて滑ったのが印象に残っていますね。浅田選手は今まで本格的なジャズプログラムというのはありませんが、近年はガーシュウィンの「アイ・ガット・リズム」や休養中にショーナンバーとして滑っていたゴスペル曲「This Little Light of Mine」など、大人っぽさもありつつ明るさや軽快さのある曲というのをいくつか演じているので、「素敵なあなた」もその系統に近いのかなという感じがします。浅田選手自身はこのプログラムについて、「女性らしい」「かわいい」「セクシー」といったキーワードを挙げていて、ジャズ特有のおしゃれなイメージが想像できますね。曲自体はボーカル入りですが、浅田選手のプログラムでもボーカル入りが用いられるかどうかについては言及はなされていません。
そして、フリーは王道のオペラ「蝶々夫人」。浅田選手のオペラプログラムといえばシニアデビューシーズンのSPの「カルメン」がありますが、オペラらしさというよりも浅田選手の初々しさ、少女らしさを前面に押し出したものだったので、今回の「蝶々夫人」は初めての本格的なオペラプログラムということで新鮮味がありますね。重厚で壮大な作品は浅田選手はお手のものという感じですが、「蝶々夫人」はその中にヒロイン・蝶々さんの悲劇あり、華麗な恋愛ありといったさまざまな要素が詰まった物語性の濃いドラマチックな作品ですから、浅田選手にとって新たなチャレンジですね。なお、こちらも元々ボーカル入り作品ですが、プログラムにもボーカルが入るかどうかは明かされていません。
浅田選手は今後、自身がホストを務めるアイスショー「THE ICE」に出演、そして10月3日にさいたまで行われる地域別の団体戦、ジャパンオープンにて久しぶりの競技復帰を果たすことが決まっています。現役続行を正式発表した当初は全日本選手権出場の資格を得るために国内の地方大会に出場するのではないかといわれていましたが、最終的には休養以前と同じくシーズン初戦としてジャパンオープンを選びました。これはいつもどおりにしたいという浅田選手の意思によるもののようですね。ジャパンオープンに出場することでその1週間以内に行われる中部選手権への出場は免除され、西日本選手権に関してもグランプリシリーズの中国杯と時期的に近いということでこちらも免除。全日本の予選をパスして、これまでどおりのスケジュールでシーズンを進められることとなりました。浅田選手の15/16シーズンがどのようなものになるのか、遠くから見守りつつ楽しみにしたいなと思います。
そして、同じく今シーズン競技復帰するカナダのパトリック・チャン選手も新プログラムを明かしています。
ショートプログラムは「マック・ザ・ナイフ」、フリーは「革命のエチュード/前奏曲28第4番/スケルツォ第1番」、振り付けは両方ともデヴィッド・ウィルソンさんだそうです。
SPの「マック・ザ・ナイフ」はアメリカのポピュラーなスタンダードナンバー。元々は戯曲「三文オペラ」の劇中曲ですが、さまざまな歌手によって歌われおなじみのポピュラーソングとなりました。今回チャン選手が使用するのはカナダを代表する歌手マイケル・ブーブレが歌うバージョン。これまでもチャン選手はエキシビションなどでマイケル・ブーブレの歌を使用していますし、マイケル・ブーブレのスタイリッシュな感じとチャン選手の醸し出すスマートな雰囲気は相性が良いので、このプログラムも素敵に仕上がるんじゃないかなと想像できますね。
一方、フリーはショパンの楽曲を組み合わせたプログラムです。このプログラムは2014年のジャパンオープンにチャン選手が出場した時に披露したもので、それを引き続き使用するという形になりそうです。この時のジャパンオープンでは休養中にもかかわらず見事な演技で1位となったチャン選手ですが、プログラムの内容もとても素晴らしくて印象に残りました。ピアノ曲ということでソチ五輪シーズンのSP「エレジー」を思わせる部分もありつつ、複数の楽曲を繋げている分メリハリやダイナミックさもあり、チャン選手の今までのプログラムと比べても個人的にはけっこう好きでした。初披露したジャパンオープンから時間が経っているので、その時のプログラムと完全に同じものをそのまま用いるのかは分かりませんし、もちろん細かな構成や振り付けなど変わっている部分もあるでしょうから、一度披露済みとはいっても新プログラムといっても差し支えないと思います。
復帰するチャン選手がどんな演技を見せてくれるのか今から楽しみですね。
ここからはアメリカの選手たちの新プログラム情報です。
まずは現全米王者のジェイソン・ブラウン選手。SPは「Love Is Blindness 映画『グレート・ギャツビー』より」、フリーは「The Scent of Love 映画『ピアノ・レッスン』より」で、2つとも振り付けはジュニア時代からブラウン選手のプログラムを多く手がけているロヒーン・ワードさんです。
ショートは映画『グレート・ギャツビー』のサントラからですが、本来のボーカル入りのものではなくてインストゥルメンタルのものになるようですね。ネットにアップされている動画を拝見しましたが、軽快でポップでブラウン選手らしさ満載のダンサブルなプログラムになりそうな感じです。フリーは映画『ピアノ・レッスン』のサントラの一曲を使用したもので、こちらもネットに動画がアップされていて、ショートとは真逆の静謐なピアノの音色が印象的なバラードプログラムですね。多彩な表現力を持つブラウン選手の新たな一面が見られそうで、期待大です。
前全米女王で現全米2位のグレイシー・ゴールド選手の新プログラムについても伝わってきていて、SPは「タンゴ」、フリーは「火の鳥」とのことです。
ショートは現時点では「タンゴ」のみで、具体的な曲名や作曲家名、また、どういったタンゴかというのは分からないのですが、タンゴはゴールド選手にとってはシニアに上がってからは初めてですから、楽しみですね。フリーは定番の「火の鳥」ということで、エレガンスさが何より持ち味のゴールド選手が壮大かつ力強い「火の鳥」をどう演じるのか、どんなふうにゴールド選手らしさがプラスされるのかという点が気になります。ショート、フリーともにこれまでの選曲の傾向とは一味違う、新鮮味が感じられますね。
全米選手権2015銀メダリストのアダム・リッポン選手も新プログラムを発表していて、ショートはイギリスの伝説的なロックバンド、クイーンの「リヴ・フォーエバー」で振り付けはトム・ディクソンさん、フリーは「ビコーズ/ゲット・バック/イエスタデイ/サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のビートルズメドレーで振り付けはジェフリー・バトルさんになるそうです。
ショート、フリーともにロック音楽ですが、ボーカルの有無やアレンジなど詳細はまだ分かりませんが、正統派でクラシカルな印象の強いリッポン選手にしては珍しい選曲と言えます。クラシック音楽であれば間違いなくリッポン選手に合いますし外れることもありませんが、そういった定番にとどまることなくあえて今まであまり滑ったことのないジャンルに挑戦することで、まだまだアグレッシブに成長を追い求めているんだなというのを感じますね。昨季は4ルッツにチャレンジしましたし、今季もリッポン選手の挑戦に注目ですね。
そして全米選手権2015では4位だったマックス・アーロン選手はSPが「誰も寝てはならぬ オペラ『トゥーランドット』より」、フリーが「映画『ブラック・スワン』より」で、振り付けはフィリップ・ミルズさんです。
アーロン選手は2015年1月の全米選手権の後にさっそく新プログラム作りに着手していて、4月に行われた世界国別対抗戦ではその新プログラムを初披露しました。2015年の世界選手権の切符を逃したことによって、早め早めの準備を行ったわけですね。振り付けは昨年引退した町田樹さんの振り付け師として馴染み深いフィリップ・ミルズさんで、こちらの記事にも書かれていますが、元バレエダンサーのミルズさんと新たにタッグを組むことで表現面の向上、プログラムコンポーネンツ(演技構成点)の得点アップを目指すということのようですね。これまでもアーロン選手がクラシック音楽を使用したことはありますが、ミルズさんの振り付けということで雰囲気も変わってくるでしょうし、特にフリーはバレエをモチーフにした作品で、ミルズさんはかつてアシュリー・ワグナー選手に同じ「ブラック・スワン」を振り付けて彼女を一躍世界のトップ選手に押し上げていますから、アーロン選手の場合も今までと違う新境地が見られるのではないかなと楽しみに思います。
実力者の長洲未来選手もすでにショート、フリーともに判明していて、SPは「Demons」、フリーは「Young and Beautiful/Back to Black 映画『グレート・ギャツビー』より」です。
SPの「Demons」はアメリカのロックバンド、イマジン・ドラゴンズのヒット曲ですが、そのまま用いるのではなくアレンジバージョンのようです。フリーは上述したブラウン選手同様、映画『グレート・ギャツビー』のサントラからですが、使う曲自体は全く違うものなので、もちろん雰囲気も全然違うでしょうね。ボーカルが入るかどうかはまだ分かりません。
今季は今のところGPシリーズはNHK杯の1試合のみのエントリーなのですが、新しいプログラムでぜひ昨季の悔しさを晴らしてほしいですね。
2015年全米選手権6位のロス・マイナー選手はSPがビリー・ジョエルの「New York State of Mind」、フリーが「リヴ・フォーエバー/トゥー・マッチ・ラヴ・ウィル・キル・ユー」のクイーンメドレーです。ショート、フリーともに現代的なポップ&ロックソングとなったわけですが、特にフリーは同じアメリカのリッポン選手と同じクイーン、しかも同じ楽曲を使用するということで、おもしろいなーと思いますね。
アイスダンスでは2015年世界選手権5位のマイア・シブタニ、アレックス・シブタニ組が新プログラムを早々に発表していて、SDはバレエ「コッペリア」、フリーはイギリスのロックバンド、コールドプレイの「フィックス・ユー」とのことです。ショートは正統派で優雅な雰囲気が魅力のシブタニ姉弟らしいバレエですが、意外にもバレエは初めてなんですね。そしてフリーはロック音楽ということで意外性がありますが、2シーズン前にはマイケル・ジャクソンメドレーも演じていますし、王道にとどまらない幅の広さがありますね。
ペアでは昨季初の全米王者となるなど躍進したアレクサ・シメカ、クリス・クニーリム組が公式サイトでプログラム名を明かしています。SPはヘビメタルバンド、メタリカの「Nothing Else Matters」、フリーは「映画『エリザベス:ゴールデン・エイジ』より」だそうです。フィギュアでヘビメタルが使用されるのはなかなか珍しいですが、元気の良さが印象的なシメカ&クニーリム組ならなるほどなという感じもしますね。
ここからはアメリカ以外の海外選手の情報です。まずはロシア勢を一挙に。
ペアのソチ五輪チャンピオンのタチアナ・ボロソジャー、マキシム・トランコフ組は休養した昨シーズンと同じプログラムで、SPは「ボリウッド・セレクション」、フリーは「ドラキュラ」です。14/15シーズンは当初は競技会にも参加する予定でプログラムを用意していたボロソジャー&トランコフ組ですが、トランコフ選手の負傷のため結果的にフル休養することとなりました。なので、プログラムも2年越しとなりますね。
こちらも昨シーズン休養したアイスダンスのエカテリーナ・ボブロワ、ドミトリー・ソロビエフ組。SDは「仮面舞踏会/ロメオとジュリエット」、フリーは「映画『アンナ・カレーニナ』より」です。ショートダンスはもちろん昨季と課題が異なり、今季の課題はパターンダンスが「ラベンスバーガーワルツ」、クリエイティブパートが「ワルツとフォックストロットorマーチorポルカ」なので、全くの新プログラムとなりました。フリーは昨季からの持ち越しとなります。
そしてカップル結成2年目となるエレーナ・イリニフ、ルスラン・ジガンシン組はSDがロックバンド、クイーンの曲を組み合わせた「Somebody to Love/We Will Rock You」、フリーは「映画『フリーダ』より」です。ショートはリッポン、マイナー両選手と同じまたもやクイーンです。ただ、上述したようにショートダンスの15/16シーズンの課題は“ワルツ”ですから特別なアレンジが施されているでしょうし、ワルツでクイーンメドレーをどのように表現するのか注目ですね。フリーの方はラテン映画のサントラですから、情熱的な演技が印象的なイリニフ&ジガンシン組に合いそうだなと思います。
フランスの実力者、フローラン・アモディオ選手は自身のツイッターで新プログラムを発表していて、SPは2013、2014年の世界的な大ヒット曲、ファレル・ウィリアムズの「Happy」、フリーはイギリスの新進ミュージシャン、ベンジャミン・クレメンティンの「Winston Churchill's Boy/Nemesis」だそうです。SPはポップでどことなくコミカルな感じがアモディオ選手の軽快なダンス、フットワークに合うでしょうね。フリーはどんな曲か知らないのですが、つい最近の曲を持ってくるというところが独特の感性を持つアモディオ選手らしいですね。
記事の最後は、中国のペア、2015年世界選手権4位の彭程(ペン・チェン)、張昊(ジャン・ハオ)組です。SPはビートルズの「カム・トゥゲザー」、フリーはオペラ「真珠採り」。SPは正統派ペアの彭&張組にしては珍しいなと感じますが、ペア結成1年目にもポール・マッカートニーの曲をSPで使用しているので、全く初めてという感じでもないんですね。フリーの「真珠採り」は「カルメン」で有名なビゼーの作品ですが、フィギュア界ではあまり使われないマニアックな選曲なのでどんな雰囲気、世界観なのかあまり想像がつきませんね。
とりあえず今回はこれで終了です。ざっと見渡してみるとロックバンドの曲を用いるというのが多く見られます。特にクイーン。リッポン選手、マイナー選手、イリニフ&ジガンシン組と3組も使用が決まっています。なぜこれほどまでにクイーンに人気が集まったのかは分かりませんが、14/15シーズンの「オペラ座の怪人」さながらの様相を呈していて、おもしろいですね。ほかにもロックやポップスが散見され、昨季からの歌詞入り解禁が今シーズンはこういった形で影響しているのですね。
7月1日から15/16シーズンが正式に始まり、選手たちの新プログラムも続々と発表されています。このあとも当ブログで取り上げていきますので、ぜひご覧ください。
注:浅田選手の写真、チャン選手の写真は、エンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、ブラウン選手、ゴールド選手の写真は、フィギュアスケート情報ウェブサイト「Absolute skating」から引用させていただきました。
【参考リンク】
David Wilson: On Working With Patrick Chan チャン選手の新プログラムについて報じた記事です。
Aaron striving to become more balletic on the ice アーロン選手の近況について報じた記事です。
【ブログ内関連記事】
羽生結弦選手、15/16シーズンのフリープログラムを発表&新プログラム情報① 2015年6月19日
各選手の15/16シーズンの新プログラムについて・その③ 2015年8月13日
各選手の15/16シーズンの新プログラムについて・その④ 2015年9月27日