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ジャパンオープン2015について

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 10月3日にさいたまにて地域別団体戦のジャパンオープン2015が行われました。団体戦形式のジャパンオープンとしては今年で10周年ということですが、浅田真央選手の久しぶりの競技復帰戦ということもあり、例年以上の盛り上がりを見せました。この記事ではその模様を、ざっくりとお伝えしていきます。

Kinoshita Group Cup Japan Open 2015 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 まず、ジャパンオープンのシステムについて改めて記しますと、形式は日本、欧州、北米の地域別の団体戦です。ショートプログラムは行わず、フリーのみで順位を決定します。選手は各チーム女子二人、男子二人の4人で、各選手のフリーの得点をシンプルに足していって、その得点の合計でチームの順位も決まります。
 ということで、2015年のジャパンオープンのチーム順位は、1位は日本で607・62点、2位は北米チームで545・23点、3位は欧州チームで528・90点となりました。
 ここからはチーム別に各選手の演技、結果について書いていきます。


●日本チーム


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 まず何といっても最大の注目は復帰初戦となった浅田真央選手。初お披露目となった「蝶々夫人」でしたが、この時期にしてこの完成度!と驚かされる内容でした。ジャンプ構成は6位となったソチ五輪、優勝した世界選手権と同じ構成で、初戦から自分のベストの構成で臨めるということもすごいですが、実際に大技3アクセルを成功、3+3は入りませんでしたが、もう一つの得点源コンビネーションである2アクセル+3トゥループは完璧に決め、文句なしの仕上がりでした。ジャンプに関しては練習風景を見ていてもかなり調子が良いんだなということはうかがえましたが、練習と本番は違うので、練習の好調をそのまま演技に反映させたというのが素晴らしいと思いますね。そしてジャンプ以上に素晴らしかったのがプログラムの表現。解説の元選手の方々も多くのフィギュアファンの方々もおっしゃっていますが、ほどよく力が抜けて休養前以上に表現が深まったなと感じました。元々多彩な表現力を持つ選手ですが、今まではやはりどうしてもジャンプの安定に集中せざるを得ない場面が多く、そのため独特の緊張感が漂っていたように思うのですが、今回の演技からはそういった空気がほとんど感じられず、本当に自然体で滑っているように見えましたし、ジャンプ含めプログラムの端々から余裕が見て取れました。シニア参戦以降の浅田選手は、バンクーバー五輪、ソチ五輪といった明確な目標があり、その舞台に向けて一直線に走り続けてきたわけですが、現在はそういった形での目標というのはなく、ただシンプルにスケートが好き、試合が恋しいという想いで戻ってきているので、変に気負うものや背負うものもなく、純粋にスケートを楽しんでいる気持ちが演技から伝わってきましたね。浅田選手が今後いつまで現役を続けるかは分かりませんが、現役を続ける限り、責任感やプレッシャーなど背負うことなく、スケートを楽しむ気持ちだけを大切にして浅田選手らしいスケート人生を歩んでいってほしいですね。
 浅田選手同様に申し分のない演技を見せたのが全日本女王・宮原知子選手。冒頭の3+3を始め、後半の2アクセル+3トゥループなど全てのジャンプを確実に着氷。GOEで一つもマイナスの付かない完璧な内容で、非公認ながら134・67点とパーソナルベストを上回る得点をマーク。世界選手権銀メダリストとしての力を見せつけました。宮原選手は先月行われたUSインターナショナルクラシックで上々のシーズンスタートを切り、そして今大会も前大会以上の演技で相変わらずの安定感。また、ジャンプはシニア1年目の頃よりも確実に高さが出てきており、今回は一つも回転不足を取られませんでした。図抜けたものを持っている選手ではありませんが、地道な努力の積み重ねによってゆっくりではあるものの、しかし着実かつ想像以上の飛躍と進化を遂げている選手と言えますね。今シーズンは大エース浅田選手が復帰するわけですが、現在の全日本女王として浅田選手にも負けない存在感を見せていたと思いますし、ダブルエースと言われるくらい浅田選手と競っていってほしいなと個人的には願っています。
 そして、全男子選手の中で最も輝いたのが今季からシニアに本格参戦する宇野昌磨選手。冒頭の4トゥループはこらえ気味の着氷となったものの成功に繋げ、続く2本の3アクセル、後半の4トゥループからのコンビネーションと、次々と難度の高いジャンプを着氷。表現面でも重厚な「トゥーランドット」を見事に自分のものにしていて、圧巻の演技に会場は演技が終わる前からスタンディングオベーション。得点も非公認ながらパーソナルベストを上回るスコアをマークし、宇野選手自身も満足そうな表情を浮かべました。宮原選手同様、先月のUSインターナショナルクラシックに出場した宇野選手ですが、その時はSPで大きく出遅れ9位、フリーで1位と挽回したものの総合5位という意外な結果に終わりました。ジュニアからシニアへ主戦場を移すということで、体力的な部分の課題が表れた形となったのですが、今大会ではそれから2週間という短期間で課題を修正してみせ、世界ジュニア王者らしい非凡さを発揮しました。ジュニアで輝かしい成績を収めた選手であっても、男子選手がシニア1年目からジュニア時代並みにバリバリ大活躍するというのはそうそうなく、なのでGPシリーズ前にまずこれほどまでの演技を披露したということが本当に凄いなと思うのですが、宇野選手も焦らずじっくりとシニアに慣れていってほしいですね。
 昨季ブレイクした村上大介選手もジャパンオープンに初出場。冒頭の単独の4サルコウ、4サルコウからの連続ジャンプは成功させたものの、2本の3アクセルや3連続ジャンプなどにミスが出てしまい、納得の演技とはなりませんでした。ただ、4サルコウの安定感はさすがのもので、世界でも1、2を争うくらい確実性があると思うので、あとは他のジャンプも含め全体的な安定性を維持していくことで、演技構成点の方も上がっていくでしょうからそちらを期待したいですね。また、村上選手はフリーで4回転を3本入れることも示唆していて、将来を見据えた戦略もうかがえて、ますます楽しみだなと思います。


●北米チーム


 北米チームの最大の注目選手は、浅田選手と同じく1季ぶりに競技復帰するパトリック・チャン選手です。プログラムは1年前のジャパンオープンで披露した「ショパン・メドレー」をアレンジして再構成したもの。冒頭は得意の4トゥループでしたが、回転が抜けて3回転に。続いて苦手の3アクセルも着氷で乱れてしまいます。その後の得意なジャンプでもチャン選手らしからぬミスがちょこちょこ出てしまい、演技を終えたチャン選手は苦い笑みを浮かべました。残念ながらジャンプはうまく揃わなかったですが、相変わらずスケーティングは有無を言わさぬ凄さがあって圧倒されましたね。他の選手と格段に違うスピード、驚異的な一蹴りの伸び、特にステップシークエンスでは複雑な全身の動き、足さばきをしながらもずっと同じスピードでリンクを縦横無尽に駆け抜けていて、やはりこういった部分では唯一無二の選手だなと感じましたね。ただ、ジャンプは男子全体がどんどんレベルアップしていますし、チャン選手といえども簡単なシーズンにはならないでしょうから、現王者のフェルナンデス選手始め、羽生結弦選手、デニス・テン選手らと競って、男子フィギュア界のさらなる進化に繋がればいいなと思いますね。
 チャン選手とは逆に、今シーズンの休養を発表しているジェレミー・アボット選手も2年ぶりにジャパンオープンに出場。4回転こそ入れませんでしたが、2つの3アクセルを両方完璧に決めるなど上々の演技内容で、昨季のフリー「弦楽のためのアダージョ」を存分に演じ切りました。休養に入るアボット選手が今後どういう道を歩むのかは分かりませんが、表現力、スケーティング技術は現役でも一流中の一流だなと改めて思いました。特にこの「弦楽のためのアダージョ」は本当に美しいプログラムなので、機会があればまた試合で見たいなと感じましたね。
 女子ではアメリカのダブルエースがふたりとも出場。現全米女王のアシュリー・ワグナー選手は昨季からの持ち越しとなる「映画『ムーラン・ルージュ』より」で、滑り慣れているプログラムということでさすがにこなれ感がありましたね。ジャンプは2連続3回転や3連続ジャンプなど得点源となるジャンプで回転不足が見られたので、そこはやはり今後も課題になるでしょうが、そのあたりさえクリアできれば世界選手権の表彰台にもかなり近づけるのではないかなと思いますね。
 もう一人のアメリカのエース、グレイシー・ゴールド選手は3+3や2アクセル+3トゥループといった大技が不発に終わり、女子の最下位となりました。体の動きなどもまだ本来のものではないように感じましたが、まだこの時期ですので、これからGPに入ってシーズンが進むごとにさらにキレも増してくるんじゃないかなと思いますし、新プログラムの「火の鳥」は定番の音楽ながらもゴールド選手らしいエレガンスが強調され、それでいて今までの彼女のイメージとは少し違う力強さもあって、とても素敵なプログラムでしたので、今後の仕上がりが楽しみですね。


●欧州チーム


 欧州チームは現世界チャンピオン二人とソチ五輪チャンピオンが揃う豪華な顔ぶれとなりました。女子のワールドチャンピオンであるロシアのエリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手は昨季習得した大技3アクセルに挑みましたが、惜しくも転倒。その後も中盤に予定していた3+3が3+2になるなど細かなミスはありましたが、グリーグの「ペール・ギュント」に乗せたチャンピオンらしい迫力ある演技を見せ、女子の3位となりました。3アクセルは成功しませんでしたが、回り切ってはいたのであと少しの着氷のタイミングなどのズレなのかもしれませんね。そしてステファン・ランビエールさん振り付けのプログラムもトゥクタミシェワ選手の大人びた雰囲気によく合って、それでいて新鮮味もあって、より滑り慣れてくるとさらに良いプログラムになるでしょうから楽しみだなと思います。
 同じくロシアのソチ五輪女王、アデリナ・ソトニコワ選手はソチ五輪以来の競技復帰となりました。ジャンプの回転が抜けるところがいくつかあり本領発揮とはいきませんでしたが、跳ねるような高さのあるジャンプ、柔軟性を生かした独特のポジションのスピンなど、ソトニコワ選手らしさを端々にのぞかせました。層の厚いロシア女子の中で、オリンピックチャンピオンとはいえ必ずしもソトニコワ選手もポジションを確固たるものにしているとは言えないと思うのですが、今のところGPには1試合しかエントリーしていないので、ロシア選手権に向けてシーズン後半勝負になるのでしょうね。
 男子の現世界王者、スペインのハビエル・フェルナンデス選手は3回目のジャパンオープン出場。冒頭の4トゥループ、4サルコウからの連続ジャンプは3回転かと見間違うほどのシャープな回転。3アクセルと2本目の4サルコウは失敗したものの、さすが世界チャンピオンという演技を披露しました。プログラムはミュージカル映画音楽で、以前のフェルナンデス選手のプログラムともところどころイメージがかぶるところがあるので、今後いかにこれまでのプログラムと差別化していくか、個性的なプログラムにしていくかに注目したいと思います。
 ソチ五輪以来、競技会から離れているフランスのブライアン・ジュベール選手は代名詞の4回転は跳ばず、難度の低いジャンプで固めた構成。残念ながらミスが多く本来の演技とはなりませんでしたが、かつて演じた「映画『マトリックス・リローデッド』より/映画『レクイエム・フォー・ドリーム』より」の再演で観客を沸かせました。現在のジュベール選手は明確な引退宣言こそしていませんが、実質的には競技からは距離を置いてコーチなどの方向にシフトしています。なので現役バリバリの選手たちが集まる今大会は彼にとってモチベーションの持っていき方が難しかったのではないかなと思いますが、その中でもらしさを発揮してくれましたね。



 例年以上の華やかなメンバーが集まったジャパンオープン2015。ますます今シーズンが楽しみになりました。10月末からはGPシリーズも開幕し、いよいよシーズンの本格的な幕開けとなります。遠くから選手たちの活躍を見守りたいと思います。では。


:記事内の写真は全て、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」から引用させていただきました。
by hitsujigusa | 2015-10-07 15:47 | フィギュアスケート(大会関連)