人気ブログランキング | 話題のタグを見る

四大陸選手権2016・女子&アイスダンス―宮原知子選手、パーソナルベストで圧巻の初優勝(後編)

四大陸選手権2016・女子&アイスダンス―宮原知子選手、パーソナルベストで圧巻の初優勝(後編)_c0309082_145114.jpg


 前回の前編に引き続き、この記事では四大陸選手権2016の女子の6位~8位の選手とアイスダンスのメダリスト、日本選手の結果について書いていきます。前編はこちらからお読みください。

ISU Four Continents Championships 2016 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 6位となったのはカナダのケイトリン・オズモンド選手です。

四大陸選手権2016・女子&アイスダンス―宮原知子選手、パーソナルベストで圧巻の初優勝(後編)_c0309082_1142089.jpg

 SPはまず得点源の3フリップ+3トゥループに挑みましたが、ファーストジャンプとセカンドジャンプのあいだにターンが入ってしまい減点を受けます。直後の3ルッツはしっかり成功させますが、後半の2アクセルが1回転となり、規定の回転数に満たなかったため無得点に。ジャンプミスが影響し、得点は56.14点で11位に留まりました。
 フリーはまず3フリップ+2トゥループを確実に決めます。続く2アクセル+3トゥループはセカンドジャンプが2回転になりましたが、クリーンに着氷。その後も3ルッツの不正エッジなどのミスはあったものの、大幅に点を失うようなミスなく演技をまとめ、フィニッシュしたオズモンド選手は安堵したように笑みを浮かべました。得点はパーソナルベストにあとわずかと迫る119.49点でフリー4位、総合6位となりました。
 腓骨骨折から1季ぶりに競技復帰した今シーズンのオズモンド選手。シーズン前半はなかなかジャンプが安定せず波が激しかったですが、シーズンを追うごとに徐々にオズモンド選手らしさを取り戻してきたんじゃないかなと思いますね。特に表現面では以前は元気いっぱいに踊りまくる女の子というイメージが強かったのが、今シーズンは愁いを帯びた大人の女性の表現というのを手に入れていて、その点では休養前よりもぐっと進化しているように感じましたね。
 オズモンド選手の今季はこれで終了となると思いますが、復帰2季目となる来季はさらなる活躍を楽しみにしています。


 7位となったのは日本の村上佳菜子選手です。

四大陸選手権2016・女子&アイスダンス―宮原知子選手、パーソナルベストで圧巻の初優勝(後編)_c0309082_15392989.jpg

 SPはまず単独の3フリップをクリーンに成功させて好スタートを切ると、続く2つのスピンはどちらもレベル4。後半に入り鍵となる3トゥループ+3トゥループはパーフェクトに下りて1・3点の高い加点を獲得。そして鬼門となっている2アクセルは着氷時に身体が傾きながらも踏ん張って何とか成功に繋げ、終盤のステップシークエンスではスピード感溢れる鬼気迫る滑りを披露。フィニッシュした村上選手は派手なガッツポーズで歓喜を爆発させました。得点は68.51点で3季ぶりに自己ベストを更新し、2位と好発進しました。

四大陸選手権2016・女子&アイスダンス―宮原知子選手、パーソナルベストで圧巻の初優勝(後編)_c0309082_1633198.jpg

 フリーはまず若干苦手としている3ループからでしたが、アンダーローテーション(軽度の回転不足)で下りてきてしまい減点されます。続く2アクセル+3トゥループもセカンドジャンプが回転不足。次の3フリップは回転不足こそ取られませんでしたが、着氷で乱れます。後半も3ループが1回転になったり3フリップが回転不足になったりする場面があり、消化不良の演技に終わりました。得点は106.61点と伸びずフリー13位、総合7位で大会を終えました。
 ショートはまさに会心の演技といった感じで、全て出し尽くした晴れ晴れとした痛快感の残る演技だったのですが、フリーにその勢いを繋げることができませんでしたね。今シーズンに限ったことではありませんが、村上選手はショートで好演技を見せながらもフリーで崩れてしまうというパターンがしばしばあります。フリーはジャンプの数も増えますし、苦手なジャンプも複数含まれていますので、ショートと比べると全体的に慎重さが目立って彼女らしい思い切りの良さが影をひそめてしまうのが残念ですね。来シーズンはそのあたりの課題を克服して、ショート、フリー両方で弾けた演技が見られることを願っています。


 8位は韓国のチェ・ダビン選手です。

四大陸選手権2016・女子&アイスダンス―宮原知子選手、パーソナルベストで圧巻の初優勝(後編)_c0309082_16525063.jpg

 SPの演目は「Mama, I'm a Big Girl Now 映画『ヘアスプレー』より」。冒頭は3ルッツ+3トゥループを完璧に決め上々の滑り出しを見せます。後半も3フリップ、2アクセルを問題なく成功させましたが、スピンでのミスやステップシークエンスでのレベルの取りこぼし、全体的にGOEが伸びなかったこともあり、56.79点での10位発進となりました。
 フリーは「ミュージカル『レ・ミゼラブル』より」。まずはショートでもきれいに決めた3ルッツ+3トゥループを再びパーフェクトに下りると、3フリップ、3ループと続けてクリーンに着氷。中盤の2アクセル+3トゥループはセカンドジャンプがアンダーローテーションとなったものの、それ以外は全てのジャンプを加点が付く出来で成功させ、納得の演技となりました。
 2シーズン前からジュニアグランプリに参戦し、今季は2大会とも表彰台に乗るなどジュニア界ではおなじみのチェ選手。今大会がシニアの国際大会デビューとなりましたが、物怖じしない勢いのある演技で存分に存在感を示したのではないかと思います。さすがにシニアの選手たちに交じると、スケーティングや表現面でジュニアらしさが目立ったかなとは思いますが、まだ16歳なので、これからが楽しみですね。



 女子はここまで。ここからはアイスダンスについてです。


四大陸選手権2016・女子&アイスダンス―宮原知子選手、パーソナルベストで圧巻の初優勝(後編)_c0309082_17361154.jpg


 優勝はアメリカのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組。SDで全てのエレメンツをレベル4で揃え2位のカップルを超僅差でかわして首位に立つと、FDはステップが一つレベル3となったものの、圧倒的な技術力でトップの座を守り切り、パーソナルベストで完全優勝を果たしました。
 1月の全米選手権では、ここ数年後塵を拝し続けてきたチョック&ベイツ組を破り初の全米チャンピオンとなったシブタニ兄妹。その勢いのままに、今大会もチョック&ベイツ組、カナダのウィーバー&ポジェ組という強豪を突き放しての圧勝でしたね。シブタニ兄妹はシニアデビューシーズンでいきなり世界選手権のメダリストになって以降、常にトップレベルで活躍はしてきましたが、世界の表彰台にはあと一歩及ばないというシーズンが続いてきました。ですが、今シーズンはいよいよ久しぶりの世界選手権表彰台、また頂点に向けて、これ以上ない良い風が吹いているように思います。世界一の技術力を武器に、アレックス選手の生まれたボストンで、最高の結果をつかんでほしいですね。四大陸選手権初優勝、おめでとうございました。
 2位は同じくアメリカのマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組です。SDはツイズルでレベル2になるなど、ところどころで取りこぼしが散見され、4位に留まります。ですが、フリーでは目立ったミスなく巻き返し、2年連続となる銀メダルを獲得しました。
 3位はカナダのケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組。SDは自己ベストに迫る高得点かつ演技構成点トップで2位につけましたが、FDはツイズルとスピンがレベル2、リフトがレベル1になったため技術点を伸ばせず、ショートから順位を落としてしまいました。


 今大会がチャンピオンシップデビューの日本の村元哉中&クリス・リード組は7位となりました。

四大陸選手権2016・女子&アイスダンス―宮原知子選手、パーソナルベストで圧巻の初優勝(後編)_c0309082_2255469.jpg

四大陸選手権2016・女子&アイスダンス―宮原知子選手、パーソナルベストで圧巻の初優勝(後編)_c0309082_22381916.jpg

 SDは一つ目のラベンスバーガーワルツとツイズル、リフトでレベル4を獲得。まとまりのある演技でNHK杯でマークした自己ベストを3点以上更新して7位につけます。
 FDは序盤のステップがレベル2となったものの、それ以降はステップ以外のエレメンツ全てでレベル4を獲得し、ショートに続きパーソナルベスト更新で6位、総合では7位で初めての四大陸を終えました。
 ISU公認の試合としては2試合目、大きな国際大会としては初出場だった村元&リード組ですが、ショート、フリーともに目立ったミスなく、ジャッジの評価もぐんぐん上げていて、ますますこれからが楽しみになりましたね。ですが、二人のコンビはまだ始まったばかり。今大会も一つのステップアップのための踏み台として、世界選手権ではさらなる飛躍を期待したいと思います。


 日本の平井絵己&マリオン・デ・ラ・アソンション組は12位となりました。

四大陸選手権2016・女子&アイスダンス―宮原知子選手、パーソナルベストで圧巻の初優勝(後編)_c0309082_22502870.jpg

四大陸選手権2016・女子&アイスダンス―宮原知子選手、パーソナルベストで圧巻の初優勝(後編)_c0309082_22515945.jpg

 SDはツイズルやステップなどで減点される部分があり、シーズンベストには及ばず12位発進となります。
 FDはツイズルやスピン、リフトなど複数のエレメンツでレベル4を獲得しましたが、減点を受けるエレメンツも多々あり、ショートから順位を上げることはできませんでした。
 今シーズンの平井&デ・ラ・アソンション組はデ・ラ・アソンション選手の怪我もあり、実力を最大限発揮することが困難なシーズンだったと思うのですが、その中でもパーソナルベストを更新する試合もあり、まだまだ発展途上のカップルなのだなと感じました。来季は怪我などトラブルなく、安定してシーズンが送れるよう祈っています。



 さて、女子&アイスダンスの記事は以上です。
 今大会は台湾の台北で開催されたわけですが、フィギュアスケートの大会運営に慣れていない土地柄ということもあってか、リンクの氷のコンディションがあまり良くなかったようです。途中からは男子のパトリック・チャン選手が氷を作る責任者と話し合うなどしたことによって改善されたようですが、アイスダンスに関してはその改善が行われる前に競技が終わってしまったので、その影響もところどころにあったかもしれません。
 それはともかくとして、女子もアイスダンスも優勝者がパーソナルベストをマークするという素晴らしい演技で大会を盛り上げてくれましたね。この結果、実績を持って強力なヨーロッパ勢と対峙した時、どんなドラマが生まれるのか、今から楽しみでなりません。
 男子とペアについては、次の記事で取り上げますので、またしばしお待ちください。


:記事冒頭の女子メダリスト3選手のスリーショット写真は、AFPBB Newsが2016年2月21日の7:48に配信した記事「宮原、SPからの首位守り圧勝V フィギュア四大陸選手権」から、オズモンド選手の写真、村上選手の写真、チェ選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、アイスダンスメダリスト3選手の写真、村元&リード組のFDの写真、平井&デ・ラ・アソンション組の写真は、マルティメディアサイト「Newscom」から、村元&リード組のSDの写真は、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
四大陸選手権2016・女子&アイスダンス―宮原知子選手、パーソナルベストで圧巻の初優勝(前編) 2016年2月25日
四大陸選手権2016・男子&ペア―パトリック・チャン選手、4年ぶり3度目の優勝(前編) 2016年3月1日
四大陸選手権2016・男子&ペア―パトリック・チャン選手、4年ぶり3度目の優勝(後編) 2016年3月2日
by hitsujigusa | 2016-02-26 02:17 | フィギュアスケート(大会関連)