ベストコスチューム15/16・男子フリー部門

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 前回の男子ショートプログラム部門に引き続き、ベストコスチューム15/16をお送りします。今回は男子フリー部門です。ベストコスチュームシリーズのルールについては、こちらの記事をご覧ください。

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 男子フリー部門第1位は、日本の宇野昌磨選手の「トゥーランドット」です。

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 フィギュア界大定番中の大定番「トゥーランドット」。重厚で壮大な曲想とあって、宇野選手のコスチュームもクラシカルかつ本格的な作りです。色はグリーンで統一しまとまりのある色づかいとなっていますが、同じグリーンでも抹茶色から黄みがかった緑のグラデーションになっているシャツ、鮮やかな緑のベスト、モスグリーンのパンツと色味を変えていて、のっぺりした感じではなく印象に変化を与えています。そして布づかいも巧みで、下に着たシャツは透け感のある柔らかなシースルー生地、ベストとパンツは光沢感のあるビロード風と、服ごとに素材を変えることで同じグリーンながらバリエーションを持たせています。デザイン的にもベストの植物のアップリケや、襟元のくしゅくしゅした感じなど、細かいところまでこだわって気品溢れる作りにしていて、本当に美しい衣装だなと思いますね。


 2位はロシアのマキシム・コフトゥン選手の「ベートーヴェンセレクション」。

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 ベートーヴェンの有名な交響曲などを組み合わせたダイナミックで荘厳なプログラム。ということで衣装はベートーヴェンの時代をイメージしたデザインになっていますね。
 下に着た白いシャツは首元をきゅっと白いスカーフで締めていて、有名なベートーヴェンの肖像画と同じような感じです。上に着たベストはシックな色合いの紫で、びっしりと並んだ金ボタンがさらに高貴な雰囲気を強調しています。そのボタンに沿うように銀糸で蔓草の刺繍がなされていて繊細さもあり、重厚さと柔らかさが共生している練られたコスチュームだなと思います。


 3位はアメリカのアダム・リッポン選手の「ビコーズ/ゲット・バック/ブラックバード/サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」。

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 ビートルズの楽曲4曲をメドレーにしたプログラム。コスチュームはロックらしさを強調した斬新なデザインで、人によっては好き嫌いが分かれるかもしれないのですが、リッポン選手ならではの、彼にしか着こなせない衣装だと思います。
 ベースとなる素材は紫のスケスケ生地。体にぴったり密着してリッポン選手の体の線の美しさを活かしています。そして最も特徴的なのはミリタリー風のシンメトリーなデザインですね。“肋骨服”というそうですが、左右両側のボタンを飾り紐で繋いだ装飾的な意味合いが強い軍服のスタイルの一つで、それをアレンジしてビジューやラインストーンを贅沢に使用し、一昔前のロックスターのステージ衣装のような派手派手しさを再現しています。ビートルズもアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のジャケットでミリタリー風の衣装を着ていますが、ミリタリールックというのは歌手のステージ衣装の定番でもあるので(特に一昔前)、リッポン選手もビートルズを滑るにあたってそういったイメージを用いたのでしょうし、あえてギンギラギンな感じが往年のロックスターっぽくて良いですね。


 4位は日本の川原星選手の「ピアノ協奏曲「宿命」」。

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 日本を代表する作曲家、千住明さんの「ピアノ協奏曲「宿命」」は2004年に放映されたドラマ『砂の器』で使用されたことで知られ、壮大かつ華麗、まさにピアノ協奏曲の正統を往く趣きのある曲想です。ということで川原選手の衣装も奇をてらわず、シンプルな白シャツ&ジャケットというスタイルとなっています。しかしそこに細かな工夫がなされていて、シャツは大きめの襟にジャケットと同系色の大きめのボタン、淡いシルバーのカマーバンドとアクセントをつけながらも色味のバランスを揃えています。そして青いジャケットはビロードの光沢感で高級感を持たせ、襟の部分のみにビジューをあしらうことで控えめながらも華やかさを演出。シンプルなコーディネートの中にも色づかいや素材感、細部の装飾など、全体的にバランスの取れた衣装だなと思いますね。


 5位は日本の村上大介選手の「Anniversary」。

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 X JAPANのドラマーであり、ソロでも作曲家として活躍するYOSHIKIさん作曲のピアノ曲「Anniversary」を使用したプログラムで、ダイナミックかつ静謐な音楽の世界観を個性的なコスチュームで表現しています。
 衣装は3つのパートで構成されていて、白いシャツと金色のベスト、黒いジャケットの組み合わせ。全体的にアシンメトリーな作りで、ジャケットの襟も左右でデザインが違いますし、シャツも右から左に下がるような形になっていて、ともするとバランスの悪い印象になりかねないと思うのですが、ジャケットとシャツのあいだにシンメトリーなベストを挟むことでちょうど良くバランスを取っているように感じます。色づかいという面でも白と黒と金色というハッキリした色の組み合わせですし、布づかいも柔らかな素材のシャツ、硬めでかっちりした印象を与えるベスト、ジャケットと全く異なる素材感の組み合わせで、全体的にいろんなイメージを盛り込んだコスチュームなのですが、奇抜になりすぎたりゴテゴテしすぎたりしないよう考えられていて、音楽とぴったり合った品の良い衣装になっていると思います。


 6位はチェコのミハル・ブレジナ選手の「海賊」です。

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 アドルフ・アダン作曲のバレエ「海賊」。14/15シーズンに本郷理華選手がSPで用いたことでも日本のフィギュアファンにはおなじみでしょう。
 「海賊」の物語の舞台はギリシャ、西欧から見た異国です。実際のバレエの衣装でもエキゾチックさが前面に押し出されていますが、ブレジナ選手のコスチュームもその世界観を忠実に再現しています。ゆったりとした長袖の白シャツ、赤字に金糸の刺繍が施されたベスト、腰に巻いた赤や黄の縞々のベルト、そして写真では切れていますが、膝下から足首まであしらわれたアラベスク柄の刺繍など、細部まで異国情緒漂うデザインを凝らしていて、プログラムとぴったり合った素晴らしい衣装だと思います。


 7位はフィリピンのマイケル・クリスチャン・マルティネス選手の「ロメオとジュリエット」です。

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 ロシアの作曲家、セルゲイ・プロコフィエフのバレエ「ロメオとジュリエット」を使用したプログラムということで、衣装は高貴なロメオのイメージを反映した非常にゴージャスなものとなっています。下に着た白いシャツの袖は肩の部分が膨らんだ“レッグオブマトンスリーブ”で中世やルネサンス期のクラシカルなイメージを表現。そして何より特徴的なのは上着の贅沢な装飾でしょう。金や銀のビジューなどをふんだんに用いたかなりデコラティブなデザインで、ロメオの高貴さを表しています。この装飾自体は非常に豪華ですが、それ以外の部分をシンプルにまとめることでいやらしくないゴージャスさを作り出していると思います。


 8位は日本の羽生結弦選手の「SEIMEI」です。

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 映画『陰陽師』のサントラを使用した「SEIMEI」。衣装は映画の中で主人公・安倍晴明が着ている平安装束に近いデザインです。
 形式としてはいわゆる“狩衣”をベースにしたものだと思いますが、下に着た単は古代の日本で最も高貴な色とされた紫、上に着た狩衣は神聖さを醸し出す白、袖をくくる紐は黄緑となっています。狩衣全体に黄緑と金色の糸で細かな刺繍がなされていて、パッと見はシンプルながらも、よくよく見ると非常に贅沢な作りとなっていて、シンプルさと華やかさをうまく両立させたコスチュームだと思いますね。


 9位はウズベキスタンのミーシャ・ジー選手の「夜想曲第19番」。

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 ショパンの「夜想曲第19番」、“夜想曲”ですからもちろん静かさでしっとりとした曲調の作品です。衣装は鮮やかな水色一色とシンプルで、清らかな音楽の世界観を壊さない色合いですね。装飾は右肩から広がるような形でビジューやラインストーンが散りばめられていて、華やかさというよりはささやかに光る星々のような控えめさを感じさせます。静謐な雰囲気のプログラムにふさわしい、音楽を引き立てるような衣装ですね。


 10位はスペインのハビエル・フェルナンデス選手の「映画『野郎どもと女たち』より」。

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 フランク・シナトラのボーカルが入った軽快かつコミカルなプログラムで、それに合わせて衣装もカジュアルなものとなっています。ブルーの五分袖シャツにグレーのサスペンダー、ストライプのパンツと、一見シンプルでよくありそうなコーディネートですが、全体のバランスだったり色づかいだったり、何でもないコーディネートだけど何となくおしゃれという雰囲気が醸し出されていて、これもフェルナンデス選手の個性がなせる業なのかもしれません。
 余談ですが、このコスチュームには2パターンあり、欧州選手権まではシャツのあいだから下着(?)がのぞくスタイル、世界選手権ではボタンを上の方まで留めているスタイルとなっていて、下に着たランニングが見えるか見えないかというだけの違いなのですが、個人的な好みでなんとなくランニングが見えている方が良いかなと思い、今回はこちらを選びました。



 さて、ベストコスチューム15/16、男子フリー部門は以上です。次はペアかアイスダンスのどちらかを取り上げると思いますが、次の記事までもう少しお待ちください。


:記事冒頭の写真はフィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから、宇野選手の写真、コフトゥン選手の写真、村上選手の写真、マルティネス選手の写真、フェルナンデス選手の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、リッポン選手の写真、ジー選手の写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、川原選手の写真、羽生選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、ブレジナ選手の写真はスケート情報サイト「icenetwork」のブレジナ選手のプロフィールページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2016-05-12 17:25 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)