ベストコスチューム15/16・ペアフリー部門

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 ベストコスチューム15/16、ペアフリー部門です。ペアショートプログラム部門はこちら、衣装のベスト10を選ぶにあたってのルールについてはこちらをご覧ください。

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 ペアフリー部門第1位は、カナダのリュボーフィ・イリュシェチキナ&ディラン・モスコヴィッチ組の「交響曲第2番」です。

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 ラフマニノフの「交響曲第2番」を使用した甘美かつダイナミックなプログラム。ラフマニノフの作曲した数多い旋律の中でも最も有名なうちの一つである甘美なメロディから始まり、徐々にオーケストラが力強さを増し壮大に幕を閉じますが、女性の方が甘美な面、男性の方が壮大な面を表しているように思えます。男性は襟ぐりの深いネイビーのシャツ。シャツの右肩から背中にかけてと、右腕にのみビジューがあしらわれています。女性は白いワンピースで、胸部分は白というよりもベージュに近いピンク色のようになっていて、色とりどりのビジューが散りばめられています。男女ともにシンプルな形ながらも、派手過ぎず地味過ぎず音楽の世界観に合ったエレガンスなデザインになっていて、素晴らしいですね。


 2位はフランスのヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ組の「映画『ロミオ+ジュリエット』より/映画『Romeo & Juliet』より」です。

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 ひとえに“ロミオとジュリエット”といってもさまざまありますが、ジェームズ&シプレ組が使用したのは1996年に公開されたレオナルド・ディカプリオ主演の「ロミオ+ジュリエット」と2013年公開の「Romeo & Juliet」のサントラの組み合わせです。
 フィギュア界でも定番中の定番である“ロミジュリ”ですが、ジェームズ&シプレ組は奇をてらうのではなく、シンプルな衣装で“ロミジュリ”感を出していますね。男性は襟部分が黒く縁取られた白いシャツ姿。腰は黒いベルトで締めてアクセントとしています。女性は清楚な印象の白いワンピース。下に着た淡いピンクのレオタードの上にシースルーの白いワンピースを重ね、露出は割と多いのですが、素材感の柔らかさや色づかいの美しさによって、ジュリエットらしい清らかさを醸し出しています。最終盤を除いてプログラム自体が全体的に甘美でしっとりとした感じなので、男女ともにソフトな印象のコスチュームで世界観にぴったりだと思いますね。


 3位は中国の隋文静(スイ・ウェンジン)&韓聰(ハン・ツォン)組の「あなたの声で心は開く 歌劇『サムソンとデリラ』より」。

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 サン=サーンスの「サムソンとデリラ」を使用したプログラム。前半はゆったりと優雅に、終盤は激しく熱狂的に幕を閉じる構成です。衣装は華やかな作りでエレガンスさを醸しながらも音楽の曲想に合ったエスニックさも感じさせます。
 男性の韓選手は袖部分がブラウン、ボディ部分が濃い青という変わった色合わせとなっています。ところどころに金色の装飾があしらわれていて、全体的にエキゾチックな雰囲気です。女性の隋選手は鮮やかな水色のワンピースで、ダイヤモンドを模した小ぶりのビジューがふんだんにあしらわれています。こちらはあまりエキゾチックさというのはなく、女性的な優雅さを表しているように感じます。男性と女性で全く違うデザインの衣装ですが、それぞれプログラムの異なる面を表現しているような感じで、よく工夫された衣装だなと思います。


 4位はロシアのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組の「夜想曲第2番/前奏曲第4番/革命のエチュード」です。

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 ショパンのメドレープログラムで、コスチュームはクラシック音楽の正統を表現しているように感じます。男性は白いシャツに黒いスーツというシンプルかつスタンダードないでたち。一方、女性は淡いピンク色の片袖が長袖タイプのスカートが長いワンピース。この写真では少しわかりにくいかもしれませんが、胸元からお腹にかけて大きなト音記号がデザインされています。ショパンというクラシックの中でも正統派中の正統派だからこそ、このデザインなのかなと思いますし、ワンピースと違和感なく溶け合っていて素敵ですね。男女の組み合わせで見ても、とてもクラシカルな雰囲気を漂わせていて、ショパンにぴったりだと思います。


 5位は中国の彭程(ペン・チェン)&張昊(ジャン・ハオ)組の「真珠採り」です。

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 オペラ「真珠採り」は「カルメン」で有名なビゼーの作品。物語の舞台はセイロン、現在のスリランカです。ということで衣装もアジアっぽさを意識したエキゾチックなデザインになっています。
 男性の張選手は濃い紫の七分袖の上着に同色のパンツ姿。スリランカの民族衣装については全く詳しくないのですが、上着の形はスリランカにも似たような民族衣装があるようですね。そして色づかいは胸元のポケットや袖口に鮮やかなピンクをあしらっていて、シンプルな中にも遊び心が感じられます。一方、女性の彭選手は胸元はピンク、スカートは白、首元などはゴールドと、多彩な色づかいのワンピース姿。ゴールドの部分は襟が立て襟っぽくなっていたり、アジアの建築や装飾、美術品などによく見られるデザインになっていたりと、アジアらしさを前面に押し出しています。男女ともにスリランカらしさというよりも、大まかなアジアらしさというのをイメージしているように感じますね。


 6位はカナダのカーステン・ムーア=タワーズ&マイケル・マリナロ組の「映画『ロミオ+ジュリエット』より」。

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 1996年公開の『ロミオ+ジュリエット』のサントラを使用したプログラム。上述したジェームズ&シプレ組と同じ物語ですが、コスチュームの様相はかなり違います。
 男女ともに淡い紫を基調とした衣装。男性は襟付きの長袖シャツで、白から紫のグラデーションになっています。女性は片方の肩だけにストラップのあるアシンメトリーなワンピースで、首や肩のシルバーの装飾に加え頭の髪飾りなど、全体的にデコラティブな印象ですが、色味を統一しているのでそこまでごちゃごちゃ感はなく、まとまりのある衣装になっていると思います。
 同じ“ロミジュリ”でもジェームズ&シプレ組とは違い、華やかさを前面に押し出し、プログラムのドラマチックな雰囲気をより強調しているように感じますね。


 7位はロシアのタチアナ・ボロソジャー&マキシム・トランコフ組の「映画『ドラキュラ』より/映画『ヴァン・ヘルシング』より」。

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 “ドラキュラ”をテーマにした映画2作品のサントラを組み合わせたプログラムで、おどろおどろしさだったり不気味さ、ダークさというのが前面に押し出されています。
 男性は白いシャツに光沢のある臙脂色のベスト、黒いパンツといういでたちで、シンプルながら高級感のあるコスチュームです。女性は同じ臙脂色の長袖ワンピースで、ほとんど装飾らしい装飾はありません。ですが、首元やボディ部分に入ったライン、後ろ側だけ長くなったスカートなど、細部に渡って繊細な工夫がなされていて、そういった細かな意匠によって簡素ではあるけれども素朴ではなく、気品のある衣装になっていると思います。中世のヨーロッパを舞台にした作品の世界観が忠実に反映されたコスチュームですね。


 8位はアメリカのアレクサ・シメカ&クリス・クニーリム組の「映画『エリザベス:ゴールデン・エイジ』より」。

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 イギリスの女王エリザベス1世を描いた映画のサントラを使用したプログラム。ということで衣装も中世のイギリスの高貴なイメージを反映したものになっています。
 男性は襟付きの白いシャツにブラウンの上着。上着には金属っぽいブロンズ色の細かな装飾が施されています。女性はクリーム色のワンピースで、胸からお腹にかけて金色やブロンズ色で三角形の装飾がデザインされています。映画のタイトルに“ゴールデン”とあるように金色が象徴的に使われていて、ワンピースの形自体はシンプルですが、この装飾があることによってプログラムの世界観にふさわしいゴージャスさがプラスされています。エリザベス1世が主人公の映画なので、男性の方はあくまでも控えめに、女性の方を引き立てるような男女の衣装のバランスになっていて良いと思います。


 9位はイタリアのニコーレ・デラ・モニカ&マッテオ・グアリーゼ組の「映画『Romeo & Juliet』より」。

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 2013年公開の映画『Romeo & Juliet』のサントラを使用していて、上述したジェームズ&シプレ組、ムーア=タワーズ&マリナロ組とは少し趣きの異なるプログラムになっています。
 衣装は二人とも臙脂色を基調とし、男性は体の中心が大きく開き、その左側が臙脂色、右側が黒という2色づかいとなっています、女性は右側だけが長袖というアシンメトリーな作りのワンピースで、左側は布地で覆うのではなく、アップリケで花を重ねたようなデザインとなっています。男性と女性で同じ色づかい、同じ雰囲気の衣装ですが、男性は臙脂色一色にするのではなく黒も取り入れたり、女性は片袖のみを長袖にするなどそれぞれ変化をつけていて、ペアルックだけれども少し違うという絶妙な差異の付け方が、ちょうど良いバランスになっている気がしますね。


 10位はカナダのヘイリー・ベル&ルディ・スウィガース組の「映画『ハウルの動く城』より」。

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 宮崎駿監督のアニメ映画『ハウルの動く城』のサントラを使用したプログラム。映画の内容のイメージからすると明るさや陽気さなどが想起されますが、ベル&スウィガース組の衣装は映画の内容というよりも音楽そのもののイメージを表現した衣装という感じでしょうか。
 男性は白いシャツに深みのある青のベスト姿。ベストは縁取りがグレー(シルバー?)になっています。一方、女性は臙脂色のノースリーブワンピース。上半身前面に立体的な模様が施されています。どちらもシックかつシンプルなデザインで、一見『ハウルの動く城』のイメージと合わないような気がしますが、音楽そのものはワルツのリズムを用いた非常にクラシカルなものなので、そのイメージから考えるとこれくらいシックな方が音楽の邪魔をせずむしろ良いのかなと思いますね。



 さて、ペアフリー部門のベストコスチューム15/16は以上です。ここで選んだだけでも“ロミジュリ”が3組もいて、同じ作品を比べるのもフィギュア衣装鑑賞のおもしろさかなと思います。では。


注:記事冒頭の写真はフィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから、イリュシェチキナ&モスコヴィッチ組の写真は、カナダのフィギュアスケート組織「スケートカナダ」の公式サイトが2016年2月20日に配信した記事「Lubov Ilyushechkina and Dylan Moscovitch fifth at ISU Four Continents」から、ジェームズ&シプレ組の写真、タラソワ&モロゾフ組の写真、彭&張組の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、隋&韓組の写真は、フィギュアスケート情報サイト「Golden Skate」が2016年2月20日に配信した記事「China’s Sui and Han take third Four Continents title」から、ムーア=タワーズ&マリナロ組の写真は、カナダの新聞「Sarnia Observer」の公式サイトが2016年4月3日に配信した記事「Sarnia's Michael Marinaro finishes eighth with partner at world championships 」から、ボロソジャー&トランコフ組の写真は、「Golden Skate」が2016年1月30日に配信した記事「Volosozhar and Trankov golden in Bratislava」から、そのほかの写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2016-05-27 17:19 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)