ベストコスチューム15/16・女子フリー部門

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 ベストコスチューム15/16、いよいよこれがラストとなる女子フリー部門です。なお、衣装を選ぶ際のルールについてはこちらの記事を、女子のショートプログラム部門はこちらの記事をご覧ください。

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 女子フリー部門第1位は、日本の宮原知子選手の「ため息」です。

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 フランツ・リストのピアノ曲「ため息」は、「3つの演奏会用練習曲」というピアノ曲集の中の一曲。リストらしいエレガンスで、タイトルのとおりため息をこぼすような優しい旋律が印象的な作品です。
 そんな音楽を用いたプログラムに宮原選手が掲げたテーマは“初恋”。ということで、コスチュームはまさに初恋を思わせる鮮やかなピンク色です。ですが、ひとえにピンク色といっても衣装の場所によって異なるピンク色を配置していて、特にスカートは5枚以上の生地を重ねてグラデーションになるように作られていて、単調なピンクにならない工夫が凝らされています。また、特徴的なのは布づかいで、上半身は3種類の生地を組み合わせたアシンメトリーなデザインになっていて、この異素材感がピンク一色の衣装に効果的に変化を与えているように思いますね。
 プログラムの世界観を余すことなく伝えた、甘美で素晴らしい衣装です。


 2位はアメリカのグレイシー・ゴールド選手の「火の鳥」です。

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 定番の「火の鳥」をゴールド選手らしく優雅に、しかし力強くダイナミックに演じたプログラムですが、衣装にも彼女らしいフェミニンさというのが反映されているように感じます。
 色はまさに“火の鳥”といった感じの赤。衣装の形はストラップレスで、胸部に羽やビジューがあしらわれ、鳥の翼のようなデザインとなっています。首元や腕にも同じ赤でアクセント的に装飾が施されていて、特に腕の装飾があることによってよりいっそう“鳥感”が出て良いですね。
 火の鳥らしい激しさや情熱的なさまを表しながらも、女性的な美しさも表現した見事なコスチュームだと思います。


 3位はフランスのマエ=ベレニス・メイテ選手の「トリスタンとイゾルデ」です。

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 古典作品「トリスタンとイゾルデ」を元にフランスの作曲家マキシム・ロドリゲスが作曲した音楽作品で、壮大でありながら悲哀漂うプログラムとなっています。
 コスチュームは紫を基調としていて、両袖とも長袖ですが、襟ぐりが斜めになっているアシンメトリーなデザインです。そして最も特徴的なのが上半身に大きく描かれた独創的な絵柄。鳥の羽のようにも見えますし、葉っぱっぽくも見えます。この部分が色とりどりのビジューによって描かれていて、まるでアート作品といっても過言ではないような美しさです。
 オリジナリティーを存分に発揮しながらも、奇抜になり過ぎず、ほかにない唯一無二の美しさを表現した素晴らしい衣装ですね。


 4位はアメリカのアシュリー・ワグナー選手の「映画『ムーラン・ルージュ』より」。

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 14/15シーズンからの持ち越しプログラム「映画『ムーラン・ルージュ』より」ですが、コスチュームは14/15シーズンの赤いワンピースから一新しました。
 新しいコスチュームはガラリと変わって白いストラップレスのワンピースで、胸の部分に金糸でさまざまな文様や植物をかたどった少しエキゾチックなデザインな施されています。そして首元も金色やブロンズ色のゴージャスなネックレス風の装飾がなされていて、プログラムの世界観にふさわしい華やかさをいっそう強調しています。白をベースにすることで可憐さも醸し出しつつ、ゴールドを多用することで品の良い豪華さもプラスしていて、14/15シーズンの赤い衣装も素敵でしたが、そこから全く違うコスチュームにすることでプログラムのイメージをも新たにしていて、プログラムと衣装のコンビネーションというのを改めて感じさせてくれましたね。


 5位は日本の浅田真央選手の「蝶々夫人」です。

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 日本を舞台にした王道のオペラ「蝶々夫人」。ということで衣装は着物風となっています。色は淡いラベンダー色を基調とし、うっすら透け感があります。袖はたっぷりと広がっており、腰の帯は繊細な刺繍がなされ、写真では見えませんが背中側は実際の着物で用いられる帯の結び方っぽくなっていて、さらには帯紐もしっかり施されていて、本物の着物の趣きに近い、上質な和服アレンジコスチュームになっています。また、タイトルにかけて上半身には蝶もあしらわれていて、蝶を衣装の中にデザインとして取り入れると、ともすればそこだけ浮いてしまったり子どもっぽっくなったりしかねないと思うのですが、この衣装の蝶は明らかに蝶と分かるデザインを用いながらも、うまく衣装の中に溶け込ませていて、絶妙だなと思いますね。


 6位は日本の本郷理華選手の「リバーダンス」です。

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 アイルランドの伝統音楽や舞踊などを取り入れた舞台作品「リバーダンス」の楽曲を使用したプログラム。本郷選手がこのプログラムで使用した衣装は2パターンあり、シーズン前半から四大陸選手権までは黒地に青や白のビジューを散りばめたもの、世界選手権以降は同じ黒地で胸の部分に大ぶりのビジューをあしらったものでしたが、今回はより華やかな後者を選びました。
 ベースとなる色はシックな黒ですが、胸元を中心にダイヤモンド風のビジューで花がいくつも連なったようなデザインとなっており、腕の部分はシースルー生地に細かなビジューが施されています。全体的に際立って目立つ色は使われていないのですが、贅沢に用いたビジューが放つ輝きがアクセントとなっていて、黒と青の寒色系のコスチュームですがしっかり華やかさもある衣装ですね。


 7位はロシアのアデリナ・ソトニコワ選手の「Je Suis Malade」。

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 「Je Suis Malade」はフランスの歌手ララ・ファビアンが歌う情熱的なラブソングです。ソトニコワ選手が纏う衣装で何より特徴的なのは左胸のハートでしょう。複数の立体的なビジューによってハート形が作られていて、まさにラブソングにぴったりなデザインです。コスチュームのベースとなる素材は黒いシースルー生地で(この写真だと光の効果でかなりスケスケに見えますが、実際に映像などで見るとここまで透けてません)、放射線状の黒いラインがハートに引き寄せられるようなデザインになっています。
 パッと見の華やかさやゴージャスさはないものの、一方で黒地にピンクのハートというインパクト大のデザインによって新鮮な印象を見る者に与える、考えられた衣装だなと思います。


 8位は日本の木原万莉子選手の「映画『ブラック・スワン』より」。

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 バレエ「白鳥の湖」をテーマにした映画『ブラック・スワン』のサントラを使用したプログラム。衣装はまさに“白鳥の湖”らしいもので、上半身は白、腰から下は黒というツートーンで白鳥と黒鳥の両方を表しています。その色づかいも完全に白と黒に分かれているんじゃなくて、絶妙に白と黒が混じり合うようなデザインになっていますし、胸元の羽の部分にもところどころ黒が交じっていて、表裏一体の白鳥と黒鳥の世界観をコスチュームで見事に表現しているなと思いますね。


 9位はアメリカのポリーナ・エドマンズ選手の「映画『風と共に去りぬ』より」。

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 名作『風と共に去りぬ』のサントラを使用した壮大で華麗なプログラム。衣装は白を基調としていて、決して一目で分かる豪華さはないのですが、よく見ると上半身全体に生地と同系色の細かなビジューが施されていて、気品のある華やかさを演出しています。そしてワンポイントとして目を引くのが蝶々結び風のリボンで、この部分が本物のリボンだとより素朴な感じになると思いますが、これは服と一体化したアップリケになっていてリボン自体がキラキラとしたビジューをあしらっているのでやはり華やかです。また、リボンや服の縁取りは深みのあるグリーンで、映画の主人公スカーレット・オハラがアイルランド系で、アイルランドのナショナルカラーがグリーンという点をしっかり踏まえています。
 プログラムの音楽自体がわりと重々しい部分もあるので、衣装の色も濃い色にすると音楽と相まってより重厚さを漂わせる作品になったと思いますが、白という軽やかな色を選択したことで重厚さと軽快さのバランスをうまく取っているように思います。


 10位はアメリカの長洲未来選手の「映画『華麗なる・ギャツビー』より」。

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 1920年代のアメリカの富裕層の人々の姿を描いた映画『華麗なるギャツビー』。長洲選手のコスチュームはその華麗さ、ゴージャスさ、アメリカらしさというのをよく表わしていますね。
 ベースとなる色は落ち着きのあるベージュですが、衣装の装飾や腕のバングルなどきらめくビジューが多用されていて、色の印象以上の華やかさを感じさせます。衣装は体の線を強調する形・デザインでセクシーさが前面に押し出されていますが、色づかいが淡く柔らかさを感じさせる分、いやらしいセクシーさではなくて上品なセクシーさになっていると思います。
 古き良き時代のアメリカの華々しさ、リッチさを伝える素晴らしい衣装ですね。



 ベストコスチューム15/16、女子フリー部門は以上です。そして15/16シーズンのベストコスチュームシリーズもこれで全て終了となります。フィギュアスケートのシーズンも7月1日から新シーズンとなり、今から選手たちの新プログラム、そしてそれに伴う新コスチュームが楽しみでなりません。来季もプログラムとともに、衣装にも大いに注目していきたいと思います。では。


:記事冒頭の写真はフィギュアスケート誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから、宮原選手の写真、浅田選手の写真、本郷選手の写真、長洲選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、ゴールド選手の写真はマルチメディアサイト「Newscom」から、メイテ選手の写真、木原選手の写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、ワグナー選手の写真、エドマンズ選手の写真は、マルチメディアサイト「Zimbio」から、ソトニコワ選手の写真はフィギュアスケートブログ「FS Gossips」内の記事「Adelina Sotnikova: people love me」から引用させていただきました。

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Commented by ベス at 2016-06-23 20:44 x
いつも楽しく読ませていただいでいます。私は長洲選手の衣装が素晴らしいな、と思っていました。

ところで、本郷選手の衣装、私にはシーズン前半後半共に黒ではなく深い緑に見えたのですが?あの色が色白の本郷選手にとてもよく似合っていて、肩の出るデザインが彼女の少し猫背気味の姿勢を目立たなくして効果的だなと思いました。

もうすぐ次のシーズンの幕開きですね。プレオリンピックシーズンもこちらのブログを楽しみにしています。それでは失礼します。
Commented by hitsujigusa at 2016-06-24 13:14
べス様、コメントありがとうございます。
本郷選手のフリーの衣装についてですが、たぶんシーズン前半の衣装も後半の衣装も実際に使われている色は黒だと思うんです。ただ、衣装に用いられているビジューが青やグリーンなので、その効果で緑の印象が強くなったのではないかと思います。あと、書き忘れましたが、黒いスカートの下にはグリーンのスカートも重ねていて、スカートが翻るとそのグリーンがはっきりと見えるので、その効果もあってグリーンが印象深くなったのでしょうね。
ポリーナ・エドマンズ選手のところでも書きましたが、グリーンはアイルランドのナショナルカラー。そして「リバーダンス」はアイルランド発の舞台作品ですから、本郷選手もやはり意味のあるグリーンの使い方をしていますね。
今後もお時間があれば、当ブログを覗いてみてください。
Commented by ベス at 2016-06-24 19:51 x
なるほど、そうかもしれませんね。生地がベロアのようにも見えたので、ビジューの色が映っていたのかも。もう一度録画をよく見てみます。

時々書かれる本についての記事もいつも興味深く拝見しています。これからも楽しみにしています。
Commented by hitsujigusa at 2016-06-26 01:05
べス様、再びのコメントありがとうございます。
そうですね、上半身の方はちょっと光沢感がある感じなので、その光り具合で緑がかって見える時があるかもしれません。
また気になったところ、疑問などございましたら、ご指摘ください。いつでもコメントお待ちしております。
by hitsujigusa | 2016-06-23 15:26 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(4)