フィギュアスケーター衣装コレクション⑫―長洲未来編

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 フィギュアスケーターのコスチュームを振り返るフィギュアスケーター衣装コレクション。今回で第12弾となります。取り上げるのはアメリカの長洲未来選手。日系アメリカ人であることから日本のフィギュアファンにもおなじみの選手ですが、08/09シーズンのシニアデビュー後、さまざまな怪我やアクシデントに見舞われながらも、困難を乗り越え第一線で活躍し続けています。そんな長洲選手の主な衣装を見ていきたいと思います。



 まずはバンクーバー五輪が開催された09/10シーズンのフリー「カルメン」です。

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 女子スケーターにとって一つのステータスともいえる定番の「カルメン」ですが、この衣装も赤と黒というスタンダードな色づかいでスペインらしさを表しています。ワンピースのベースとなるのは赤で、そこに黒をバランス良く組み合わせています。胸の部分は植物が這っているような黒いレース風のシンメトリーなデザイン、脚の付け根の部分には黒い3枚の葉っぱと黒い縁取りでバラの花がデザインされていて、ベースとなる赤い生地の色をそのまま活かしながら黒いラインやビジューを巧く使って絵柄を作り出していて、オーソドックスな色づかいながらも、個性的なコスチュームになっているなと思います。


 続いては10/11シーズンのフリー「映画『SAYURI』より」。

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 日本を舞台にした映画『SAYURI』は映画音楽界の巨匠ジョン・ウィリアムズがサントラを担当し、女子選手、特に日本の女子選手にとっては定番のプログラムとなっていますが、長洲選手も日本にルーツを持つ選手として、日本らしさを意識したプログラムを演じました。
 ということで衣装もまさに日本らしい和服風のデザイン。このプログラムで長洲選手は2種類のコスチュームを着用し、シーズン前半は白とピンクのワンピースでしたが、シーズン後半からこの青を基調としたワンピースに変更しました。ベースとなるのは青ですが、襟の合わせ目は紺色になっていて着物の襟っぽいです。そして胸からお腹にかけて写実的に桜の枝と花が描かれていて、日本のシンボルフラワーを用いることで日本らしさというのをさらに強調していますね。


 次は12/13シーズンのSP「ダウンヒル・スペシャル」とフリー「交響曲第3番」です。

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 この頃の長洲選手は若手から大人のスケーターへと脱皮しつつあるという印象で、プログラムの選曲も衣装も大人びたものへと変化している時期でしたね。
 ショートプログラムはスウィング・ジャズを代表する作曲家であり演奏者であるベニー・グッドマンのノリノリでどことなく洒落た雰囲気が特徴的な楽曲。音楽の明るさ、陽気さを表すように衣装も華やかな濃いピンク色で、首から胸にかけて垂れ下がるようなアクセサリー風の装飾がよりゴージャスさをプラスしています。そしてスカートの裾をフリンジにすることで必然的に露出多めとなり、セクシーさが前面に押し出されています。
 一方、フリーはサン=サーンスの交響曲という王道のクラシックで、重厚な曲調に合ったシックなブルーのドレス姿。お腹の部分を横切るように斜めのラインが入っていて肌がのぞくデザインになっていますが、ホルターネックのストラップの部分や上半身全体に細かなビジューが散りばめられていて、気品のある音楽にふさわしい高級感のあるコスチュームになっています。


 次は13/14シーズンのフリー「映画『ジェームズ・ボンド』より」。

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 こちらも近年定番となっている“ジェームズ・ボンド”ということで、衣装は黒を基調としたカッコいいデザイン。首元と胸からお腹にかけてはシルバーのビジューでシャープなラインが走り、デコルテと胸元は透け感のある黒いシースルー生地、それ以外は透け感のない黒い生地と、素材感の違いがうまく活かされています。黒とシルバーというクールな色づかい、そしてシャープさを強調したデザインで、「007」の世界観を忠実に表現していると思います。


 続いて14/15シーズンのSP「パガニーニの主題による狂詩曲」とフリー「蝶々夫人」です。

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 SPは定番のラフマニノフのピアノをメインとしたオーケストラ曲。壮大ながらもエレガンスな曲想が魅力ですが、鮮やかな紫色でその優雅さを表現しています。片方だけが長袖のアシンメトリーなデザインで、胸元からお腹にかけて火花のように伸びる幾本ものラインが特徴的な絵柄を作り出していて、じっくり見ると個性的なデザインではあるのですが、細部までこだわった繊細な装飾づかいが正統派のクラシックにピッタリ合っていますね。
 フリーはこちらも大定番のオペラ「蝶々夫人」。ということで、ワンピースは胸の部分がそのまま蝶々になった斬新なデザイン。蝶の翅の模様の感じにしても、触角のごとく伸びたシルバーの細い曲線にしても、蝶を写実的に描きつつ、ドレスのデザインとしてもモダンで美しく、一方でデザインは個性的な分、色はシックな黒でまとめてごちゃごちゃしないようにしていて、全体的なバランスの取れた素晴らしい衣装だと思います。


 最後は15/16シーズンのSP「デーモンズ」とフリー「映画『華麗なるギャツビー』より」。

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 ショートの「デーモンズ」はアメリカのロックバンド、イマジン・ドラゴンズの楽曲をサム・チョイというシンガーがカバーしたバージョンで、ダイナミックであり抒情性もあるプログラム。グレーを基調としているので一歩間違うと地味になり過ぎかねない色づかいですが、ボディのバスト部分を縁取るビジューだったり、そこから肩に伸びる紐状のラインだったり、首元のゴージャスなジュエリーだったり、細部のデザインや小物の装飾性というのがアクセントになっていて、全体的に色味はそこまで華やかではありませんが、グレー、シルバー、赤の色合いが絶妙で、ほどよいゴージャスさのあるコスチュームになっていますね。
 そして、フリーの「映画『華麗なるギャツビー』より」は、古き良き華やかなりし時代のアメリカの上流階級を描いた物語ということで、長洲選手の衣装もその時代の富裕層のレディのドレスを意識したデザインですね。お腹の部分がのぞく作りとなっていて比較的露出度の高いデザインですが、衣装全体に散りばめられた繊細なビジューや、ベージュという落ち着きのある色づかいなど、高貴さや上品さを感じさせるデザインで、まさに作中の登場人物のような、本格的なコスチュームだなと思います。



 こうして長洲選手のコスチュームをざっくりと見返してみると、少女スケーターから大人の女性のスケーターへと少しずつ脱皮を遂げてきたことがうかがえます。「カルメン」や「SAYURI」の衣装はまだまだ少女らしい、リリカルな印象ですが、12/13シーズン以降の衣装は選曲の傾向の変化に伴って、衣装も趣向がガラリと変わって、特にビジューやラインストーンなど装飾の使い方が印象的なコスチュームが多いですね。
 長洲選手は16/17シーズンのプログラムについて、SPがショパンの「夜想曲第20番」、フリーがABBAが原曲の「The Winner Takes It All」であるとすでに発表していて、今からプログラムの内容とともに、衣装に関しても楽しみでなりません。
 長洲選手の16/17シーズンが昨季以上に充実したものになることを心から祈っています。では。


:記事冒頭のポートレート写真は、ロシアのフィギュアスケートサイト「FSKATE.RU」のロステレコム杯2013のページから、「カルメン」の写真、「ダウンヒル・スペシャル」の写真、「映画『ジェームズ・ボンド』より」の写真、「蝶々夫人」の写真は、マルチメディアサイト「Zimbio」から、「映画『SAYURI』より」の写真、「交響曲第3番」の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、「パガニーニの主題による狂詩曲」の写真はAFPBB Newsが2015年10月26日の16:33に配信した記事「トゥクタミシェワが女子SP首位、スケート・アメリカ」から、「デーモンズ」の写真、「映画『華麗なるギャツビー』より」の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2016-08-05 18:27 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)