フィギュアスケーター衣装コレクション⑬―アリョーナ・レオノワ編

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 フィギュアスケーター衣装コレクション第13弾。今回取り上げるのはロシアのベテランスケーター、アリョーナ・レオノワ選手です。
 レオノワ選手は1990年生まれの現在25歳。日本の浅田真央選手やカナダのパトリック・チャン選手、引退された韓国の金妍兒(キム・ヨナ)さんなどと同い年の、いわゆる黄金世代の一人ですね。現在の最強ロシア女子軍団の一角をなす選手ですが、ロシア女子が今のように世界を席巻する前、まだ日本女子やアメリカ女子に押されていた時代からロシア女子を引っ張る存在として活躍し続けてきました。最近は10代の若い選手たちに押され気味で、なかなか以前のように存在感を発揮できてはいませんが、数少ない20代半ば過ぎのベテラン選手として、円熟味を増した演技を披露し続けてくれています。そんな彼女の衣装を、振り返っていきます。




 まずはレオノワ選手にとってシニア2年目の09/10シーズンのSP「バリーニャ」とフリー「映画『シカゴ』より」です。

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 ショートの「バリーニャ」はロシア民謡。国際大会で使用された衣装は2種類あり、今回選んだのはシーズン後半で着用していたものです。赤い生地に金色の布で花や葉など植物がデザインされていて、派手派手しい色づかいがエキゾチックで、異国情緒漂う感じをシンプルに表しています。
 一方フリーはミュージカル映画『シカゴ』のサントラを用いたプログラムで、青紫や黒の生地をさまざま組み合わせ、幾本もの曲線が右胸のピンクの花に集約されるというわりと複雑な凝ったデザインとなっています。いかにも“シカゴ”らしいコスチュームとは言えませんが、右腕のロンググローブやお腹の部分に網状の生地を使うことでセクシーなイメージを演出していて、女性的なセクシーさを表現しつつ、レオノワ選手らしい明るさ、ポップさも前面に押し出されていて、個性的な“シカゴ”になっていると思います。


 続いては10/11シーズンのSP「ポルカ/映画『道』より」とフリー「映画『イーストウィックの魔女たち』より」。

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 このシーズンのプログラムはショートもフリーもユニークさだったり奇抜さだったりという点においてレオノワ選手の個性が爆発したシーズンで、それがコスチュームにも大いに表れていますね。
 ショートはロシアの作曲家シュニトケの作品とイタリアを代表する映画監督フェデリコ・フェリーニの代表作『道』のサントラを組み合わせたプログラム。演技冒頭にマリオネットになりきったような振り付けが入っていたり、ところどころにコミカルな動作が差し挟まれていたりと、コスチュームから見てもピエロ的なイメージなのかなと感じます。その衣装はシーズンを通して2着使用され、どちらも基本的にはほぼ同じデザインの色違い。今回選んだのはシーズン後半着用のもので、ベースとなるネオンカラーの黄緑に、カラフルなグラデーション生地と黒い生地とのストライプ柄で、そのグラデーション生地の先っぽがピンクや黄緑、イエローの飾り玉になっていて、クルクルした髪型も含め、全体的にポップさを強調していますね。
 フリーはホラーファンタジー映画のサントラということで怪しげな雰囲気を醸しつつ、独創的でユーモラスな振り付けも取り混ぜられたプログラムになっていて、衣装も黒やグリーン、ショッキングピンクなど本来調和しない色同士をあえて組み合わせることで逆に毒々しさや妖しさを表現していて、“魔女”らしさがよく伝わってきますね。


 次は11/12シーズンのショート「Sirens 映画『シンドバッド 7つの海の伝説』より/映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』より」とフリー「弦楽のためのアダージョ/レクイエム・フォー・タワー」です。

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 レオノワ選手にとって11/12シーズンはグランプリファイナルや世界選手権など主要な国際大会でメダルを獲得した最高潮のシーズンでしたが、プログラム的にもそれまでとは一味違った個性を見せたシーズンでした。
 SPは海や海賊をテーマにした映画2作のサントラのメドレー(大部分は『パイレーツ・オブ・カリビアン』)で、レオノワ選手らしい元気の良さ、陽気さというのは変わらないものの、シンプルにポップというのとは違うクールさや男っぽさという新たな魅力を備えていて、コスチュームでもあえて薄く汚れさせた風合いの白いシャツ、ストラップ部分がベルト風になっているゴツいトップス、光沢感のあるタイトなパンツ、レザー風のかっちりとした手袋と、女性的な部分も残しつつ、“海賊”というテーマを忠実に表したデザインになっていて、前シーズンからのイメチェンに成功していますね。
 そしてショート以上にイメチェンを遂げたのがフリー。悲愴的な旋律で幕を開け、後半で激情的に展開するプログラムで、少女スケーターから大人の女性スケーターへと脱皮したプログラムと言えます。コスチュームも黒やネイビーのシックな色づかいで、デザイン的には体の中心に向かって炎が立ち上るような作りで静かな激しさを感じさせていて、それまでのポップでキラキラしたイメージから大きく転換した分水嶺のような衣装かなと思います。


 次は14/15シーズンと15/16シーズンのSP「スマイル/序曲 彫像の序幕 映画『街の灯』より/テリーのテーマ 映画『ライムライト』より」です。

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 チャップリンの映画のメドレーということで、コミカルな振り付け、表情の豊かさが特徴的なレオノワ選手らしさ満載ながらも、10代の時とは違い成熟したスケーターの味わいも漂わせるプログラム。チャップリンっぽいスーツ姿ですが、シャツは襟の部分のみでジャケットの下はジャケットと同系色のベストというコーディネート。シャツ+ベスト+ジャケットの定番スタイルではなく、あえて素肌にそのままベストを着たようなコーディネートが、女性らしさやちょっとドキッとさせるような雰囲気を醸し出していて、女性スケーターがスーツ風衣装を着る場合の良いお手本スタイルになっているなと思いますね。


 最後は14/15シーズンのフリー「Asi Se Baila El Tango 映画『レッスン!』より/ブエノスアイレスの秋」。

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 12/13シーズン以降のレオノワ選手はタンゴやフラメンコを始めとしたラテン系プログラムを滑ることが多くなり、このプログラムもそのうちの一つなのですが、やはり若手スケーターだった頃とは違う大人の女性の色香を漂わせるプログラム&衣装になっていますね。色は情熱的な赤、素材は艶やかな光沢感があり高級感を漂わせます。肩紐はシルバーの細かいビジューを連ねたようなデザインで、その肩紐とドレスを繋ぐ部分と右のウエスト部分にダイヤモンド風の大ぶりなビジューがあしらわれていて、こういった細部でもゴージャスさを演出しています。ただ、ゴージャスといっても以前のようにさまざなま色やモチーフを重ねる感じではなく、シンプルな色づかい、布づかいながら、一つ一つの素材やアイテムの存在感、高級感で品の良い華やかさを作り出していて、こうした衣装の工夫からもベテランスケーターらしさを感じますね。



 さて、こうしてレオノワ選手のコスチュームをこれでもごく一部ではあるのですが振り返ってみると、やはりくっきりと若手からベテランへの変化というのが見て取れて興味深いですね。シニアにデビューしたばかりの頃のレオノワ選手は、とにかく明るく陽気で、プログラム自体の雰囲気もそうですが、演技後の歓喜を爆発させるガッツポーズや弾けんばかりの笑顔というのが印象的なまさに元気印という感じで、それが独創的なデザインの衣装にも表れていたように思います。そこから年齢を重ねて、レオノワ選手自身の佇まいも、プログラムの内容も変化し、それに伴って衣装もぐんぐん大人びたものに変わっていきました。ただ、その中でも近年の代表作といえる「チャップリン・メドレー」のようにコミカルでユーモアたっぷりのレオノワ選手らしい演技ではコスチュームもほかにないオリジナリティー溢れるものとなっていて、年月が経っても変わらぬこの人にしか出せない味、魅力というのを改めて感じさせられましたね。
 16/17シーズンのプログラムに関してはまだ未発表ですが、ほかの若いロシア女子選手には表現できないもの、いろんな経験を積み重ねてきたレオノワ選手だからこそ演じられる作品を、また見せてほしいなと思います。


:記事冒頭のポートレート写真は、イタリアのフィギュアスケート情報サイト「Art On Ice」から、「Sirens 映画『シンドバッド 7つの海の伝説』より/映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』より」の写真は、スポーツ情報サイト「Eurasia-Sports」のフィギュアスケートページから、「Asi Se Baila El Tango 映画『レッスン!』より/ブエノスアイレスの秋」の写真は、フィギュアスケート情報サイト「GOLDEN SKATE」が2014年10月20日に配信した記事「Alena Leonova fights back」から、それ以外の写真は全て、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。


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by hitsujigusa | 2016-09-03 00:32 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)