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羽生結弦選手、16/17シーズンのプログラムを発表&新プログラム情報④

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 選手たちの16/17シーズンの新プログラムについてお届けするこのシリーズ。今回は第4弾です。現在のフィギュア界はジュニアのグランプリシリーズ真っ最中で、シニアの方でもグランプリシリーズのワンランク下に位置付けられているチャレンジャーシリーズも始まっていて、本格的なシーズン開幕を前に選手たちも動き始めています。そんな中で判明してきた各選手のプログラム情報を書いていきたいと思います。


 まずは日本男子のエース、羽生結弦選手についてです。
 羽生選手は9月13日、練習拠点としているカナダのトロントで報道陣に練習を公開し、新ショートプログラムと新フリーを発表しました。SPは「レッツ・ゴー・クレイジー」、フリーは「Hope & Legacy」です。
 ショートは今年4月に亡くなったばかりのアメリカの歌手プリンスが1984年に発表したヒット曲。プリンス自身が主演した映画『パープル・レイン』のサントラに収録されている曲でもあり、いわばプリンスの代表曲の一つといっても過言ではないのでしょう。私は今までこの曲を知らなかったのですが、実際に聴いてみると羽生選手のイメージとは全く正反対の歌ですね。羽生選手は以前にもブルース・ロックの「パリの散歩道」で滑ったことはありますが、「レッツ・ゴー・クレイジー」はそれとは全然違った雰囲気のロックですから、良い意味で想像を裏切られて期待が募ります。
 フリーは久石譲さんの楽曲を使用したプログラムで、プログラムのタイトルとしては「Hope & Legacy」となっていますが、これは曲名ではなくあくまでプログラム名です。実際に使用される曲としては「View Of Silence」など複数の曲を繋ぎ合わせるようです。作曲者が日本の作曲家ということで日本らしさも織り交ぜられつつ、正統派のクラシックの趣きもしっかりあるプログラムなのかなと想像します。羽生選手の言葉によると、「(14/15、15/16シーズンのSP)「バラード」で培った音の取り方と、(15/16シーズンのフリー)「SEIMEI」で学んだ表現をさらにグレードアップ」させたものになるようで、フリーでのクラシックというのは久しぶりなので楽しみですね。
 また、羽生選手はショート、フリーともに新技4ループを取り入れることも明かし、世界最高得点を叩き出した昨季を上回る、とどまるところを知らない向上心をうかがわせました。唯一怪我だけが心配の種ではありますが、ここまで来たら体に気を付けつつ思いっきり突き進んでほしいですね。


 次は今季シニアデビューとなる樋口新葉選手。

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 樋口選手はチャレンジャーシリーズ第1戦のロンバルディアトロフィーに出場し、そこで新プログラムをお披露目。SPは「映画『ラ・カリファ』より」、フリーは「シェヘラザード」です。
 ショートの映画『ラ・カリファ』は1970年公開のイタリア映画で、映画音楽界の巨匠エンニオ・モリコーネが音楽を担当しています。樋口選手のプログラムをさっそく拝見しましたが、ピアノと管弦楽による華麗でありながら哀愁漂うメロディで、聞き覚えのある曲だったので以前にも誰か選手が使用していたかもしれませんが残念ながら覚えがありません。それはともかくとして樋口選手はシーズン初戦とは思えないほどこの音楽を自分のものにしていて、元気で躍動感溢れる樋口選手とはまた違った雰囲気が醸し出されていて今後がさらに楽しみになりましたね。
 そしてフリーは定番の「シェヘラザード」。さまざまな名スケーターが滑ってきたこの音楽でどう自分の個性を発揮していくか、どう自分のカラーを出していくか、楽しみにしたいと思います。なお、ロンバルディアトロフィーについてはもうしばらくあとに別の記事で書きたいと思いますので、それまでお待ちください。


 一方、村上佳菜子選手も同じくロンバルディアトロフィーに出場しました。フリーに関してはアイスショーで「トスカ」をお披露目済みでしたが、この大会でショートの「カルメン」も披露。定番中の定番である「カルメン」ですが、村上選手の演じる「カルメン」は女性ボーカル入りの軽快なプログラムで、よく見聞きする「カルメン」とは少し違う変化球の「カルメン」という感じがしました。女性的な仕草や振り付けも多く盛り込まれていて、大人のスケーターとなった村上選手が魔性の女カルメンをどう表現していくのか楽しみです。


 ここからは海外選手のプログラム情報。
 まずはアメリカの若手ポリーナ・エドマンズ選手です。

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 SPは「Palladio」、フリーは「サラ・ブライトマン・メドレー」でどちらもルディ・ガリンドさん振り付けだそうです。
 ショートの「palladio」はニューエイジのミュージシャンであるカール・ジェンキンスさんの楽曲。エドマンズ選手への取材記事によると、モダンダンスやモダンバレエの要素が盛り込まれたプログラムになるようで、若手の中でも類まれな多彩な表現力を持つエドマンズ選手にさらに新たな魅力がプラスされることになりそうですね。
 フリーは世界的ソプラノ歌手サラ・ブライトマンのメドレーで、曲は「Bilitis-Gènèrique」と「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」を使用するとのこと。サラ・ブライトマンの美しくもダイナミックな歌声と、透明感がありながら力強さもあるエドマンズ選手のスケートがどんな化学反応を見せるのか、期待大ですね。


 続いては今季シニアデビュー、全米3位のネイサン・チェン選手です。

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 SPはバレエ「海賊」、フリーは「だったん人の踊り」になるようです。
 チェン選手といえば踊りの巧さで知られていますが、ショートもフリーも思いっきり正統派のクラシックにしてきたというのが興味深いですね。昨季のショートは「マイケル・ジャクソン・メドレー」でノリノリで踊りまくったわけですが、今回の「海賊」はそれとは対極にあるようなバレエ音楽。ですが、チェン選手のこれまでのプログラムを振り返るとクラシックも数を多くこなしてきているので、やはり基礎的なダンスの素養があるからこそ、「マイケル・ジャクソン」もバレエ音楽も同じように滑りこなせるのかなという感じがしますね。「海賊」は比較的陽気でアップテンポな曲でもありますから、そういった意味でもチェン選手の“踊り”をアピールしやすい選曲かもしれません。そしてフリーの「だったん人の踊り」はロシアの作曲家ボロディンの代表曲。スラブらしいエキゾチックで優雅な曲想が美しい楽曲で、「海賊」とはまたジャンルの違った“踊り”が見られそうですね。


 同じくアメリカ男子のロス・マイナー選手は、ショート、フリーともに昨季と同じ「New York State of Mind」「クイーン・メドレー」を持ち越すようです。プログラムの内容としてアレンジが加えられているのか、加えられていないかなどはまだわかりません。


 シニア2年目となるカレン・チェン選手はSPが「映画『黄昏』より」、フリーが「タンゴ・ジェラシー」であることを明かしています。ショートは老夫婦を描いた映画のサントラなので、チェン選手の年齢にしては大人びたテーマ性を持った音楽かなという気がします。フリーの「タンゴ・ジェラシー」も大人の女性のタンゴというイメージなので、シニア2年目で表現面でのステップアップを目指しているのでしょうね。2年目の進化を楽しみにしたいと思います。


 そして、フリーのみ演目を発表済みだったベテランのアシュリー・ワグナー選手は、インスタグラムに動画付きでショートプログラムについても発表。イギリスのポップスグループ、ユーリズミックスの「Sweet Dreams (Are Made of This)」であることがわかりました。動画はごく短いものでどういったプログラムになるのかはわかりませんが、毎シーズン新たな表情を見せてくれるワグナー選手なので、新フリーとともに今季もとても個性的なプログラムになりそうですね。


 アイスダンスの全米王者であるマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組は、SDが「That's Life」、FDが「Evolution」であることがわかっています。
 SDはアメリカのポピュラーソングで、使用するのはその中で最も有名なフランク・シナトラバージョンのようです。今季のショートダンスの課題はブルースがメインなので、この曲をブルース風に滑るということですね。
 FDは「Evolution」というタイトルと、アーティストは“various artists”=さまざまなアーティストと表記されているのみなので、具体的な使用曲だったり内容は不明です。元々はクラシカルな印象が強いシブタニ兄妹ですが、昨季のフリー「フィックス・ユー」で新境地を開拓し、今季もその延長線上でさらなるチャレンジに邁進しているというのが選曲からも伝わってきますね。


 ペアの前全米チャンピオン、アレクサ・シメカ&クリス・クニーリム組はSPが「Come What May 映画『ムーラン・ルージュ』より」、フリーが「アンチェインド・メロディ ミュージカル『ゴースト』より」です。
 SPはフィギュア界定番の『ムーラン・ルージュ』からの楽曲で、リチャード・ドーンブッシュ選手が昨季のショートで使用していましたね。フリーは世界的に大ヒットした映画の主題歌ですが、映画からの使用ではなくて映画を基にしたミュージカル版からの選曲なので、映画版とはちょっと違うのでしょうか。


 アイスダンス全米3位の実力者、マディソン・ハベル&ザカリー・ドノヒュー組はSDが「Feeling Good/ヒップホップメドレー」、FDが「ラブ・メドレー」であることがわかっています。
 ショートに関しては往年のアメリカのR&Bやジャズの歌手ニーナ・シモンの歌と、さまざまなアーティストによるヒップホップのメドレーの組み合わせだそうです。今季のショートダンスの課題はパターンダンスが“ミッドナイトブルース”、クリエイティブパートがブルースとスウィングもしくはヒップホップからの選択となっているので、まさにそれに合致する選曲ですが、個人的にはハベル&ドノヒュー組は上品でクラシカルなイメージの強いカップルなので、ヒップホップというのが意外でしたね。フリーは「ラブ・メドレー」というタイトルのみで、詳しい使用曲などは分かっていません。


 カナダの元世界チャンピオン、パトリック・チャン選手は、すでにフリーの演目のみ発表していましたが、SPに関しても「ビートルズ・メドレー」であることが判明しています。「ビートルズ・メドレー」の中身は詳細には分かりませんが、チャン選手は昨シーズンのエキシビションで「ビートルズ・メドレー」を滑っているので、それをアレンジしたものを用いるのかもしれません。


 世界選手権2連覇中の圧倒的なペア王者、メ―ガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組はインタビュー記事などで、SPが「Killer」、フリーが「水に流して」であると明かしています。
 SPはイギリスのソウル歌手シールの楽曲。ソウルミュージックというのはフィギュア界では頻繁に用いられるジャンルではないので、新鮮で楽しみですね。一方、対照的なのがフリーでこちらはシャンソン。シャンソンもそんなに使用頻度が高いというわけではないですし、特にペアでは珍しいんじゃないかなという気がします。ただ、デュハメル&ラドフォード組は毎シーズン定番ではない挑戦的な選曲をしているという印象があるので、ある意味彼ららしいとも思いますね。


 アイスダンスの元世界王者でバンクーバー五輪金メダリストのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組はカナダのスケート団体「スケートカナダ」の公式You Tubeの動画で、SDが「キス/パープル・レイン/5 Women」、FDが「Latch」であると語りました。
 SDは羽生選手と同じプリンスの楽曲で、偶然の一致なのでしょうが、プリンスが先日亡くなったばかりというのが影響しているのでしょうか。FDはイギリスのハウスミュージックのグループ、ディスクロージャーが2012年にリリースした楽曲。フィギュア界ではアメリカのジェレミー・アボット選手が14/15シーズンのエキシビションで演じていますし、かなりヒットした曲なので有名ですね。
 久方ぶりに競技に戻ってくるヴァーチュー&モイア組があえてクラシックなど王道のものではなく、定番を外してきたのがおもしろいなと思いますし、競技から離れているあいだアイスショーなどで競技とは別の経験を積み重ねてきた2人がどんな新たな表情を見せてくれるのか、注目ですね。


 同じくカナダのアイスダンサー、ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組も「スケートカナダ」の公式You Tubeの動画に出演し新プログラムについて話し、SDが「Black Velvet/Swingin'」、FDが「アランフェス協奏曲」であると説明。
 ショートはカントリーがテーマと言い、ブルースパートで使う「Black Velvet」はカナダのロック歌手アランナ・マイルズが、スウィングパートで使う「Swingin'」はアメリカのカントリー歌手リアン・ライムスが歌っています。フリーはフィギュア界大定番ですね。男性のポジェ選手は男の色気ムンムンでこういった情熱的な音楽にぴったりですし、女性のウィーバー選手も上品さの中に力強さがあって、「アランフェス協奏曲」での二人のユニゾンが楽しみです。


 イタリアのベテラン、ロベルタ・ロデギエーロ選手はロンバルディアトロフィーに出場し、SP「ブエノスアイレスのマリア」、フリー「Non Dimenticar/L-O-V-E/スマイル/イッツ・オンリー・ア・ペーパー・ムーン」を披露。
 ショートはピアソラのタンゴですね。ベテランスケーターならではの味を出せる選曲だなと感じます。フリーはアメリカの歌手ナタリー・コールが父であるナット・キング・コールの曲をカバーしたアルバム『アンフォゲッタブル』に収録された曲のメドレー。動画でロデギエーロ選手の演技を拝見しましたが、少し曲のつぎはぎ感が目立って一つの作品としてまとまりに欠けているように感じました。3曲以上の楽曲を組み合わせたプログラムの場合、いかに全体的に調和をもたらすかというのがやはりポイントになると思うので、そのあたりの完成度を期待したいですね。


 韓国の朴小宴(パク・ソヨン)選手はすでにフィリピンのマニラで行われたアジア杯、ロンバルディアトロフィーと精力的に2つの試合をこなしていて、SP「映画『黄金の腕』より」とフリー「アランフェス協奏曲」を披露しています。
 ショートは1955年公開のアメリカ映画のサントラで、いわゆる“カッコいい系”のプログラムになっていますね。朴選手の昨季のショート「黒いオルフェ」と雰囲気は違うものの、クールさだったりシャープさという共通点で延長線上にある感じがします。フリーはウィーバー&ポジェ組のところでも書いたようにフィギュア界定番の曲で、朴選手は情熱的な演技もうまい選手なのでハマると代表作になりそうだなと思います。


 同じく韓国の期待の新星であるチェ・ダビン選手はアジア杯に出場して演技を披露していて、ショートは「ある恋の物語/Qué rico el mambo」、フリーは「映画『ドクトル・ジバゴ』より」であることがわかっています。
 ショートの曲は日本のフィギュアファンには高橋大輔さんが演じたことでも馴染み深いラテン音楽ですが、さまざまあるラテン系の曲の中でもわりと濃厚度の高い方かなと思うので、シニア本格参戦1年目のチェ選手にとっては背伸びした感じの選曲ですね。一方でフリーも大人びた曲調ではありますが、ジュニアでもしばしば使われている曲なので、比較的スローペースの曲調で滑りやすいかもしれません。



 とりあえずこの記事はここで終了しますが、まだまだ情報が入ってきているので、今後も新プログラム情報をお伝えしていきます。では。


:羽生選手の写真、樋口選手の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、エドマンズ選手の写真はマルチメディアサイト「Zimbio」から、チェン選手の写真は、フィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから引用させていただきました。

【参考リンク】
Edmunds focused on musicality of new programs エドマンズ選手の新プログラムについて報じた記事です。
Chen hopes to put injury bug behind him in 2016-17 ネイサン・チェン選手の近況について報じた記事です。
Wagner, Gold hit Champs Camp in different places 記事の中にカレン・チェン選手の新プログラムについての言及があります。
New short program a ‘release’ for Duhamel and Radford デュハメル&ラドフォード組の近況について報じた記事です。

【ブログ内関連記事】
浅田真央選手、16/17シーズンのプログラムを発表&新プログラム情報① 2016年6月27日
宮原知子選手、16/17シーズンのプログラムを発表&新プログラム情報② 2016年7月23日
各選手の16/17シーズンの新プログラムについて・その③ 2016年8月19日
各選手の16/17シーズンの新プログラムについて・その⑤ 2016年9月24日
各選手の16/17シーズンの新プログラムについて・その⑥ 2016年10月9日


by hitsujigusa | 2016-09-15 01:12 | フィギュアスケート(大会関連)