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ジュニアグランプリシリーズ16/17について

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 ジュニアのグランプリシリーズ(以下、JGP)が8月末から10月初旬にかけて全7試合行われました。今シーズンは歴史的な快挙もあり、シニアに負けず劣らず日進月歩でレベルが上がり続けているジュニアの現状を如実に表したJGPとなりました。そんなJGP全体の結果をカテゴリー別に振り返りつつ、ファイナルに向けてのちょっとした予想もしていきたいと思います。


Junior Grand Prix Standings Men 男子のスタンディング(シリーズ全体の順位)が見られます。
Junior Grand Prix Standings Ladies 女子のスタンディングが見られます。
Junior Grand Prix Standings Pairs ペアのスタンディングが見られます。
Junior Grand Prix Standings Ice Dance アイスダンスのスタンディングが見られます。

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《女子シングル》

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①アナスタシア・グバノワ(ロシア):30ポイント チェコ大会優勝、ドイツ大会優勝
②ポリーナ・ツルスカヤ(ロシア):30ポイント ロシア大会優勝、エストニア大会優勝
③紀平梨花(日本):28ポイント チェコ大会2位、スロベニア大会優勝
④坂本花織(日本):28ポイント フランス大会2位、日本大会優勝
⑤アリーナ・ザギトワ(ロシア):26ポイント フランス大会優勝、スロベニア大会3位
⑥本田真凛(日本):26ポイント 日本大会2位、スロベニア大会2位
―――
補欠⑦エリザヴェータ・ヌグマノワ(ロシア):24ポイント ロシア大会3位、エストニア大会2位
補欠⑧スタニスラヴァ・コンスタンティノワ(ロシア):22ポイント ロシア大会2位、ドイツ大会4位
補欠⑨白岩優奈(日本):22ポイント ロシア大会4位、ドイツ大会2位




 女子は3年連続で日本3名、ロシア3名というファイナリストの顔ぶれとなりました。
 ポイント数ではグバノワ、ツルスカヤの両選手が2大会とも優勝で一歩リードしていますが、トータルスコアでは全体的に拮抗していて誰にでも優勝の可能性があると思います。特にパーソナルベストでは坂本選手を除く5名が190点台というハイスコアを持っていて、1つの技の成否でファイナルでは順位が大きく変動しそうですね。
 そんな中で最も爆発力がありそうなのはやはり紀平選手ですね。紀平選手といえば何といっても代名詞のトリプルアクセル。優勝したスロベニア大会のフリーで国際大会初成功を遂げ、女子では史上7人目、日本女子では伊藤みどりさん、中野友加里さん、浅田真央選手に続く4人目の成功者となりました。また、3アクセルだけではなく3+3や2アクセル+3トゥループなどの難しいコンビネーションジャンプを含め、6種類のトリプルジャンプをバランス良く跳ぶことができ、そういった意味でもジャンプという点においてはロシアの選手たちをも上回る、最強のジャンパーなんじゃないかなと感じますね。
 一方で昨季の世界ジュニア女王である本田選手はSPで苦戦。自分自身のふがいない演技に悔し涙を流す姿も見られました。今季ジュニア2年目の本田選手はにょきにょき身長が伸びていて、日本スケート連盟のプロフィールでは158cmとなっていますが、国際スケート連盟のプロフィールでは160cmとなっていて、そうした急激な成長が多少なりともジャンプのコントロールに影響を与えている可能性は否めないでしょうね。ただ、ショートで出遅れてもフリーで一気に挽回する爆発力、気持ちの強さがあり、ジュニア選手の中では抜きん出て演技構成点の評価が高いという強みもありますから、ファイナルでの優勝争いという点においては、ショートがポイントとなるのかなと思います。
 そして6選手の中では最年長となる坂本選手は、ものすごく大きな武器というのは持っていないですが、JGPは4年目とあって安定感がありますね。ファイナルは初めてなので未知数ですが、この安定感を発揮できれば優勝争いに加わる可能性も十分ありますね。
 ロシア勢は3人とも強力ですが、安定感という観点では3人とも不安があるのかなという感じもします。グバノワ選手は得点源である3+3でミスする場面がしばしば見られ、この3+3の確率が優勝争いをする上でカギとなりそうです。また、昨季のファイナル女王であるツルスカヤ選手はロシア大会のフリーでミスを連発してしまっていて、昨シーズンの圧倒的に強いというイメージとは少し違いますね。ただ、ジュニア2年目でファイナルも2度目という経験値があるので、そうした経験が最大の武器になるのかなとも思います。そして3人目のロシア代表ザギトワ選手は、ファイナル進出が懸かったスロベニア大会のフリーで4位と不安定さを露出した試合もあったのですが、彼女の特徴としては世界でも3アクセル以上に成功例の少ない3ルッツ+3ループが跳べることと、フリーのジャンプを全て後半に跳ぶという信じられないようなチャレンジをしている選手でもあって、その分リスキーでもあるのですが、全てがハマれば得点を荒稼ぎできる可能性もあり、台風の目的なおもしろい存在ですね。
 ファイナルに進めなかったものの強い印象を残した選手としては、2試合とも表彰台に上った山下真瑚選手やドイツ大会で2位に入った昨季のファイナル進出者である白岩選手などの日本勢、惜しくもファイナルには届かなかった補欠1番手のヌグマノワ選手、補欠2番手のコンスタンティノワ選手などのロシア勢など、ランキング7位以下でも日本、ロシアの選手が目立っていて、当分この流れは続くんだろうなという未来予想図を思い描くことができます。
 また、日本、ロシア以外では韓国の選手の名前も10位台に目立ち、韓国といえばキム・ヨナさんの存在があまりにも大きいですが、それ以来の強化が最近になって実ってきているのかなと思いますね。
 一方で強豪国であるにもかかわらず上位に選手がランクインしていないのがアメリカです。最上位の選手でもシリーズ22位という成績で、シニアではアメリカ女子はベテランのアシュリー・ワグナー選手や現全米女王のグレイシー・ゴールド選手、若手のポリーナ・エドマンズ選手など選手層は厚いですが、その下のカテゴリーの選手があまり育っていないというのは大きなお世話かもしれませんが将来的に少し心配な気もしますね。



《男子シングル》

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①アレクサンドル・サマリン(ロシア):30ポイント ロシア大会優勝、エストニア大会優勝
②チャ・ジュンファン(韓国):30ポイント 日本大会優勝、ドイツ大会優勝
③アレクセイ・クラスノジョン(アメリカ):28ポイント チェコ大会2位、スロベニア大会優勝
④ロマン・サヴォシン(ロシア):26ポイント フランス大会優勝、チェコ大会3位
⑤イリヤ・スキルダ(ロシア):26ポイント フランス大会2位、スロベニア大会2位
⑥ドミトリー・アリエフ(ロシア):24ポイント チェコ大会優勝、スロベニア大会4位
―――
補欠⑦ヴィンセント・ゾウ(アメリカ):24ポイント 日本大会2位、エストニア大会3位
補欠⑧アンドリュー・トルガシェフ(アメリカ):22ポイント ロシア大会2位、ドイツ大会4位
補欠⑨ロマン・サドフスキー(カナダ):20ポイント 日本大会5位、エストニア大会2位




 男子はファイナル進出者6名中4名がロシアという近年稀に見るロシア1強状態で、男子でロシア選手が4名以上というのはJGPファイナル進出者が8名だった2002年以来のこととなります。しかも、さらに言うならアメリカのクラスノジョン選手も生まれはロシアであり、事実上6名中5名がロシアといってもいいくらいですね。
 2大会とも優勝でファイナルの切符を掴んだのはサマリン選手とチャ選手の二人で、2大会のスコアの合計もこの二人が図抜けており、優勝争いとしてはやはりこの二人が有力かなという気がします。サマリン選手は1つのプログラムの中で2つ以上のミスを重ねない安定感があり、JGP5年目の18歳の選手だからこその慣れている感じがありますね。一方のチャ選手はジュニアとしては2年目、JGP参戦は1年目のまだ14歳なのですが(10月21日で15歳)、早々と3アクセルや4サルコウを習得していて、すでに韓国の男子選手史上最高レベルの資質を持った選手となっています。14、15歳という幼さが不安定さをもたらすこともあるかと思いますが、調子の波さえうまくコントロール出来れば羽生結弦選手に次ぐ若さでのJGPファイナルチャンピオンとなる可能性も十分ありえますね。
 そしてこのJGPで一つ大きな話題を提供したのがクラスノジョン選手。スロベニア大会のフリーの冒頭で4ループに挑み見事に着氷。惜しくも着氷で手をついたため史上初の成功とは認定されませんでしたが、回転としては回り切っていて史上初めての4ループ認定とはなりました。大技に挑んでいる分リスキーでもありますし、4ループ以外のところでもまだバラつきが散見されますが、4ループを決めた上でほかのエレメンツもクリーンにまとめられれば一気に高得点を稼ぐことも期待できるので、楽しみな存在ではありますね。
 シリーズ成績4位のサヴォシン選手はそこまで大きな武器を持っているタイプではないので、大技を持っている選手たちに勝つためにはエレメンツを全てクリーンにそろえる必要がありそうです。5位のスキルダ選手は6名中最年少で、その分まだジャンプの難易度としては低く4回転も持っていませんが、出場した2大会ともフリーではノーミスでまとめていて、ほかの選手たちがミスを連発するようなことがあれば上位に加わることもあるかもしれません。そして6位のアリエフ選手は昨年のファイナル銀メダリスト。ファイナル進出が懸かったスロベニア大会のフリーで大崩れしてしまったためにファイナル進出ギリギリの6位となりましたが、本来は実力者。演技構成点も高いので実力どおりの力を発揮できれば優勝争いにも食い込めると思います。
 惜しくもファイナルには進めなかった補欠を見ると、アメリカの選手が二人、カナダの選手が一人です。アメリカ勢は今年はロシア勢の後塵を拝す形となりましたが、ゾウ選手もトルガシェフ選手も2000年以降の生まれとまだ若く伸びしろが大いにあり、女子の方とは対照的にアメリカ男子は将来的に楽しみだなと思います。カナダのサドフスキー選手は一昨年、昨年のファイナル進出者という強豪の一人。得点的には今年もパーソナルベストを更新してしっかりレベルアップしているのですが、それを上回る速度で他国の選手たちもレベルアップしていて、今年はファイナルには届きませんでした。
 日本男子は残念ながら今年はファイナルに選手を派遣することはできませんでしたが、シリーズランキングの10位に友野一希選手、11位に島田高志郎選手、12位に須本光希選手が入りました。3選手とも1大会で表彰台に上り、個人的には大健闘という印象です。来季以降が楽しみですね。



《ペア》


①アナスタシア・ミーシナ&ウラジスラフ・ミルゾエフ組(ロシア):30ポイント ロシア大会優勝、ドイツ大会優勝
②アナ・ドゥシュコヴァ&マルティン・ビダジュ組(チェコ):28ポイント チェコ大会優勝、ドイツ大会2位
③アリーナ・ウスティムキナ&ニキータ・ボロディン組(ロシア):24ポイント エストニア大会2位、ドイツ大会3位
④アミナ・アタハノワ&イリヤ・スピリドノフ組(ロシア):22ポイント チェコ大会2位、エストニア大会4位
⑤アレクサンドラ・ボイコワ&ドミトリー・コズロフスキー組(ロシア):22ポイント ロシア大会2位、ドイツ大会4位
⑥エカテリーナ・ボリソワ&ドミトリー・ソポト組(ロシア):22ポイント ロシア大会3位、エストニア大会3位
―――
補欠⑦エカテリーナ・アレクサンドロフスカヤ&ハーレー・ウィンザー組(オーストラリア):18ポイント チェコ大会8位、エストニア大会優勝
補欠⑧チェルシー・リュー&ブライアン・ジョンソン組(アメリカ):18ポイント チェコ大会3位、エストニア大会5位
補欠⑨ロリー=アン・マッテ&ティエリー・フェルラン組(カナダ):14ポイント チェコ大会6位、ロシア大会4位




 ペアは2013年以来の6組中5組がロシアとなり、相変わらずのロシア1強を改めて誇示しました。
 2試合のスコア合計ではシリーズ1位のミーシナ&ミルゾエフ組が抜きん出ています。このペアは昨年はJGPでこそ1試合のみの出場にとどまっていますが、その後のロシアジュニア選手権では優勝、世界ジュニア選手権では銀メダルと実績もあり、今季はミスも非常に少なく、やはり優勝候補筆頭かなと思います。
 シリーズ2位のドゥシュコヴァ&ビダジュ組は昨季の世界ジュニア王者。今季はその世界ジュニアで出したパーソナルベストにはまだ遠く及んでおらず、少し安定感を欠いているかなという印象ですね。ファイナルまでは時間がありますから、まだまだ挽回の余地ありですね。
 3位のウスティムキナ&ボロディン組は自己ベストはそんなに高くないですが、出場した2大会でマークした得点の差があまりなく、わりと安定感があるのかなという感じですね。
 4位のアタハノワ&スピリドノフ組は昨年のファイナル銅メダリスト。ですが、2試合目のエストニア大会ではフリーで失速するなど、今季はまだ昨季ほどの強さは見せつけられていません。
 5位のボイコワ&コズロフスキー組は今季からJGP参戦のペアで、自己ベストはまだ低いですね。ただ、ファイナルとなると混戦になる可能性もあるので、そうなるとメダル獲得のチャンスも大いにあります。
 そして6位でファイナル進出を決めたボリソワ&ソポト組は昨年のファイナル覇者。自己ベストは170点台を持っているのですが、今季はまだ150点台にとどまっていて、初戦よりも2試合目の方が内容が悪くなっているのが気にかかります。調整が上手くいっていないのかもしれませんが、昨年のチャンピオンがどこまでファイナルで巻き返し存在感を取り戻すか、注目したいと思います。



《アイスダンス》


①アッラ・ロボダ&パヴェル・ドロースト組(ロシア):30ポイント ロシア大会優勝、エストニア大会優勝
②レイチェル・パーソンズ&マイケル・パーソンズ組(アメリカ):30ポイント 日本大会優勝、ドイツ大会優勝
③ロレイン・マクナマラ&クイン・カーペンター組(アメリカ):30ポイント チェコ大会優勝、スロベニア大会優勝
④アンジェリク・アバチキナ&ルイ・トーロン組(フランス):26ポイント フランス大会優勝、日本大会3位
⑤クリスティーナ・カレイラ&アンソニー・ポノマレンコ組(アメリカ):26ポイント フランス大会2位、ロシア大会2位
⑥アナスタシア・シュピレワヤ&グリゴリー・スミルノフ組(ロシア)26ポイント 日本大会3位、ドイツ大会3位
―――
補欠⑦アナスタシア・スコプツォワ&キリル・アリョーシン組(ロシア):24ポイント スロベニア大会3位、エストニア大会2位
補欠⑧アナスタシア・ポリシュチュク&アレクサンドル・ヴァクノフ組(ロシア):24ポイント フランス大会3位、スロベニア大会2位
補欠⑨ニコル・クズミチ&アレクサンドル・シニツィン組(チェコ):22ポイント フランス大会4位、チェコ大会2位




 アイスダンスの上位3組は昨年のファイナルの上位3組と同じ顔ぶれで、現在のジュニアアイスダンス界では最も知られた3組ですね。その3組ともが30ポイントという接戦ですが、2大会のスコア合計ではロボダ&ドロースト組、パーソンズ&パーソンズ組の2組が一歩リードしていて、安定感という意味では強いのかもしれません。その一方でパーソナルベストでは上位3組とも160点台とほぼ差はなく、どのカップルが優勝してもおかしくない状況です。
 4、5、6位のカップルはパーソナルベストでは150点台と上位3組より少し劣りますが、若い分不安定にもなりやすいジュニアの戦いなので、メダル有力な3組にミスが出た場合は、その中に割って入る可能性ももちろんあります。特に5位のカレイラ&ポノマレンコ組はパーソナルベストは150点台後半と160点台まであとわずかのスコアを持っているので、大いにチャンスがあるカップルな気がします。



 さて、この記事は以上となりますが、フィギュア界はこれからが本番。いよいよ今週末からシニアのGPが始まります。このブログのメインはシニアなのでこれからしばらくはもっぱらシニアの記事となります。次なるジュニアの記事は12月のJGPファイナルに関する記事になると思います。では。


:記事冒頭の国際スケート連盟のロゴの写真は、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、女子の写真、男子の写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2016-10-19 02:41 | フィギュアスケート(大会関連)