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NHK杯2016・女子&ペア―アンナ・ポゴリラヤ選手、大差でGP4勝目

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 GPファイナルの出場者を決めるGPシリーズの最後を飾るNHK杯が北海道の札幌にて行われました。この記事では女子とペアの結果について書いていきます。
 女子を制したのはロシアのアンナ・ポゴリラヤ選手。ロステレコム杯に続く優勝で、2年ぶりにファイナルの切符を手にしました。2位は日本女子のエース、宮原知子選手、3位はロシアの新星マリア・ソツコワ選手が入り、両者ともファイナル出場を決定させました。
 一方、ペアは世界チャンピオンのメーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組が優勝し、こちらもスケートカナダに続く2連勝でファイナル出場が決まりました。

ISU GP NHK Trophy 2016 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 金メダルを獲得したのは世界選手権2016の銅メダリスト、アンナ・ポゴリラヤ選手です。

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 SP冒頭は得点源の3ルッツ+3トゥループ、これはパーフェクトに跳び切ったかに見えましたがセカンドジャンプがアンダーローテーション(軽度の回転不足)の判定。しかし、後半の3ループ、2アクセルはクリーンに着氷し、ジャンプは最小限の取りこぼしのみで演技を終えました。得点は71.56点で首位発進します。
 フリーもまずは3ルッツ+3トゥループ、今度は完璧に回り切って下り1.3点の加点を獲得。続く3フリップもしっかり着氷しますがこちらは踏み切りのエッジエラーを取られます。ですが、次の2アクセルも含め、前半は全てのジャンプを大きなミスなく成功。後半はまず大技の3ルッツ+1ループ+3サルコウの3連続を成功させると、3+2も問題なし。さらに単独の3ループも下り、最後の2アクセルでは疲労が影響したのか着氷で乱れたものの、ミスらしいミスはそれくらいで、最後まで力強く情熱的なプログラムを演じ切りました。得点は139.30点でフリーも1位、もちろん総合1位でNHK杯初制覇となりました。
 3週間前のロステレコム杯では自己ベストをマークして優勝し、優勝候補筆頭として札幌に乗り込んだポゴリラヤ選手。以前は調子の起伏が大きく、良い時と悪い時が交互に現れるような感じだったのですが、今大会の演技からはそういった危うさは微塵も感じられず、1年前のNHK杯で大崩れし9位に沈んだ姿とはまるで別人でした。時間の経過が彼女を成長させた面もあるでしょうが、やはり世界選手権の銅メダリストという肩書きや実績が、自信を与えより一層強くさせた面もあるのでしょうね。
 これまでファイナルには2度出場して最高4位と、まだ本領を発揮できていませんが、今年こそはやってくれそうなオーラや雰囲気はぷんぷん漂っているように思うので、ぜひ楽しみにしたいですね。NHK杯優勝、おめでとうございました。


 2位となったのは昨年のNHK杯覇者、宮原知子選手です。

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 ショートはまず得意の2アクセルを確実に決めて、続くステップシークエンスはレベル4に加え1.3点の加点。後半に2つのジャンプ要素を組み込み、最初は得点源の3ルッツ+3トゥループでしたが、跳び急いだためか3ルッツの軸が曲がった上に回転不足となり転倒してしまいます。ですが、最後の3ループに2トゥループを付けてしっかりリカバリー。スピン3つも全てレベル4と総合力の高さを見せ、64.20点で3位につけます。

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 フリー冒頭は得意の3ループで良い流れを作ると、次は前日失敗した3ルッツ+3トゥループ、いつもより慎重に入り2つ目はアンダーローテーションとなるものの目立ったミスなく跳び切ります。若干苦手としている3フリップもわずかに回転不足となるもののしっかり着氷し、前半は着実にエレメンツをこなします。中盤は前回のスケートカナダでレベルがつかず0点となったステップシークエンスでしたが、軌道を変えるなど修正を加えしっかりレベル4を獲得。そして後半、3ルッツからの3連続ジャンプはルッツがこちらもアンダーローテーションになったもののきれいに着氷。さらに2アクセル+3トゥループ、3サルコウ、2アクセルと、全てのジャンプをクリーンに着氷し、フィニッシュした宮原選手は納得したように破顔しました。得点は133.80点でフリー2位、トータル2位で銀メダルを手にしました。
 ショートは約1年ぶりとなる珍しい転倒がありましたが、フリーではさすがの挽回、日本のエースの意地を見せてくれましたね。SPの3ルッツの転倒も決して精神的に不安定になったわけではなく、むしろアンダーローテーションを取られまいと力んだ結果があまり無い転倒に繋がったのかなと思いますし、フリーでは逆に大きなミスに繋げてはいけないという意識で慎重に跳んだ結果アンダーローテーションになってしまったのかなと思うのですが、1日でほぼ完璧に修正するという技術力の高さも改めて感じました。あとは宮原選手本人が語っているようにメンタル面の課題のみで、それも精神的に不安定になって乱れるというよりは慎重になりすぎてしまうという感じだと思うので、今後は思い切りの良さと慎重さを兼ね備えたちょうど良いバランスのジャンプを試合でも常に発揮できるように頑張ってほしいなと思いますし、練習の鬼で努力の天才である宮原選手ならまだまだ強くなっていってくれるんじゃないかと思います。
 スケートカナダ2位&今大会3位という結果によって、全体の6位でファイナル進出を決めた宮原選手。今回得た悔しさをバネに、ファイナルでも宮原選手らしい演技を見せてくれることを願っています。


 3位は世界ジュニア選手権2016の銀メダリスト、ロシアのマリア・ソツコワ選手です。

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 ショートはまず得点源の3ルッツ+3トゥループ、若干詰まりながらもクリーンに下ります。さらに後半の3フリップ、2アクセルも丁寧に跳び、ミスらしいミスなく滑り切りました。得点は69.96点と自己ベストを更新し、2位と好発進しました。
 フリーもまずはしっかり3ルッツ+3トゥループを成功させて好スタートを切ると、続く3フリップもパーフェクト。後半に5つのジャンプ要素を固め、まずは3ループをクリーンに着氷します。3フリップ+1ループ+3サルコウは良い流れで跳び切りますが全てのジャンプが回転不足の判定。また、次の3ルッツはダウングレード(大幅な回転不足)で着氷。最後の2アクセルでもアンダーローテーションがあり、演技全体としては流れを切らさず持ち味を発揮したものの後半の回転不足が響き、125.92点でフリー3位、総合3位となりました。
 前回のフランス杯と比べるとフリーは回転不足が目立ってしまいましたが、初のファイナルが懸かるという舞台で大きなミスをしない安定感は素晴らしかったですね。エレガンスさが魅力の選手ですが、今後はさらにメリハリや緩急の付け方がうまくなるともっと滑り自体の見ごたえもアップしそうですし、高身長がより活かされると思うので、楽しみにしたいですね。まずは初めてのファイナルで持てる力を全て発揮してほしいなと思います。


 表彰台まであと一歩の4位だったのは日本の樋口新葉選手です。

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 SPはまず得意の2アクセルで幕を開け、2つのスピンとステップシークエンスを挟んで後半、大技3ルッツ+3トゥループの予定でしたが、3ルッツの着氷でステップアウトし単独に。しかし直後の3フリップに2トゥループを付けてミスを最小限に抑えます。得点は62.58点で5位となります。

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 フリーは得点源の3ルッツ+3トゥループを組み込み、これをきっちりと着氷して1点の加点を得ます。ですが、直後の3ループはパンクして2回転に。前半最後の3サルコウは完璧な出来でこちらも1点の加点を獲得し、すぐに立て直します。後半はまず2アクセルを決めると、続いて序盤に続いて2つ目の3ルッツ+3トゥループ、完璧に跳んだかに見えましたが2つ目がアンダーローテーションとなります。次の3フリップは着氷で若干こらえますが、最後の2アクセルからの3連続は問題なく成功。情感たっぷりに「シェヘラザード」を演じ切り、フィニッシュでは安堵したように微笑みました。得点は122.81点でフリー5位、総合4位となりました。
 表彰台に乗れば初のファイナルの可能性もある試合とあって、前回のフランス杯より全体的に慎重だったかなという印象でしたね。ジャンプもフランス杯ではもっと加点がついていましたし、全体的な動きもフランス杯の方がもっとよく動いていた気がするので、NHK杯特有の緊張感があったのでしょうね。ただ、フランス杯で得たパンクという課題に関しては、今回も3ループが2回転になるというミスはあったものの、3回転が1回転になる形のパンクはなかったので、その点では良かったですね。次戦の全日本選手権ではフランス杯とNHK杯両方で得た収穫、良かった部分を継続してまた樋口選手らしい演技を見せてほしいなと思います。


 5位に入ったのはアメリカのベテラン、長洲未来選手です。

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 SPはショパンの「夜想曲第20番」。まずは得点源となる3フリップ+3トゥループ、これはフリップの踏み切りのエッジの不正確さとセカンドジャンプのアンダーローテーションと二重の減点を受けます。しかし後半に組み込んだ3ループと2アクセルは完璧に成功。大きなミスなくすべてのエレメンツをこなしました。得点は63.49点で4位と好位置につけます。
 フリーは「The Winner Takes It All」。冒頭はショート同様に3フリップ+3トゥループでしたが、両方ともアンダーローテーションと判定されます。ですが、苦手としている3ルッツをしっかり下りると、次の3サルコウもクリーンに決めて上々の内容。後半は2アクセル+3トゥループ+2トゥループからでしたが、こちらはセカンドジャンプが回転不足。その後のジャンプでも軽度の回転不足や着氷ミスなどが重なり、演技を終えた長洲選手は顔を曇らせました。得点はシーズンベストとなる116.84点でフリー8位、総合ではショートから1つ順位を落とし5位となりました。
 ショート、フリーともにアンダーローテーションが散見されたため、演技全体の流れとしては決して悪くないものの、スコアは伸び切らず、長洲選手の心からの笑顔を見ることもできませんでした。ただ、前回のスケートカナダよりは回転不足に関してはかなり改善されていましたし、間違いなく調子は上向きだと思うので、何より重要な全米選手権に向けてますます状態が上向くことを願いたいですね。


 6位となったのは同じくアメリカの若手カレン・チェン選手です。

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 SPは「映画『黄昏』より」。冒頭は大技3ルッツ+3トゥループ、クリーンな着氷に見えましたがセカンドジャンプが回転不足の判定でわずかに減点。後半の3ループも珍しくすっぽ抜けて1回転となり、最後の2アクセルは問題なく決めましたが、2つのジャンプミスが影響して58.76点で7位にとどまります。
 フリーはタンゴの名曲「ジェラシー」。まずはショートで回転不足があった3ルッツ+3トゥループでしたが、再び2つ目がアンダーローテーションとなります。続いて綺麗に着氷した3フリップは踏み切りがエッジエラーの判定。後半に5つのジャンプ要素を集中させ、最初の2アクセル+1ループ+3サルコウはパーフェクトに成功させて加点1。続く3ループ、3+2と細かなミスが相次ぎますが、以降の3ルッツ、2アクセルと成功。終盤のコレオシークエンスとレイバックスピンでは代名詞といえる身体の柔らかさを思う存分発揮して加点を稼ぎ、エネルギッシュにフィニッシュしました。得点は自己ベストに迫る119.69点でフリー5位、総合6位と順位を上げました。
 シニア2年目のシーズンを送っているチェン選手。今季のGPは先週の中国杯が7位、そして今大会が6位と、昨年の5位&5位と比べると順位的には下がっていますが、内容的にはシニアの選手らしさがだいぶ出てきて成長がうかがえます。ショートの「黄昏」もフリーの「ジェラシー」もチェン選手の実年齢以上の大人っぽさが要求されるプログラムだと思うのですが、違和感なくプログラムの世界観に調和しているように感じますし、元々持っているしなやかさに加え、キレのある動きや艶っぽさもプラスされて、ショート、フリーともに今のチェン選手の魅力を十二分に表現できていたように思います。全米選手権でもGPの経験を活かして頑張ってほしいですね。


 7位は日本の松田悠良選手です。

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 ショートはまず繊細なピアノの音色に合わせたステップシークエンスで開幕。続いて2アクセルをクリーンに決めます。後半に大技3ループ+3ループを組み込み、ファーストジャンプが惜しくもアンダーローテーションとなったもののしっかり下ります。最後の3フリップでも回転不足となりますが、目立ったミスはなく、60.98点で6位につけます。

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 フリー冒頭は大技2アクセル+3トゥループ+3ループ、きれいな流れで跳び切りましたが2つ目がアンダーローテーションと判定されてしまいます。続く3ルッツも着氷こそしたものの回転不足。後半はまず3フリップからのコンビネーションジャンプでしたがこれは単独に。しかし、その後はミスらしいミスなくすべてのジャンプをこなし、単独予定のジャンプをコンビネーションに変更する機転も見せ、演技を終えた松田選手は満面に笑みを浮かべました。得点は自己ベストとなる117.28点でフリー7位、総合で7位となりました。
 GPデビューとなったロステレコム杯で6位と本領を発揮した松田選手ですが、今大会も全く物怖じする様子はなく地に足の着いた落ち着きと余裕が感じられましたね。残念ながら代名詞となっている3ループ+3ループ、2アクセル+2トゥループ+3ループはそれぞれ回転不足と判定され、加点の付くものとしては認められませんでしたが、実際には加点を1点以上あげたいくらいどちらも素晴らしい跳躍と回転で、貴重なセカンドループの使い手として、これからも粘って取り組み続けてほしいなと思いますね。表現面でも指先まで意識の行き届いた繊細さが特にSPで際立っていて、今後は苦手だという激しい動きが主体となるフリーの方でもさらなるブラッシュアップを楽しみにしたいですね。全日本選手権でも好演技が見られることを祈っています。



 ここからはペアです。

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 優勝したのは世界選手権2連覇中のメ―ガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組。SPは大技のスロー3アクセルでの転倒があり2位発進。フリーでもジャンプやスロージャンプで乱れるシーンがところどころ見られ、また、最後のリフトでも珍しくバランスを崩すなど本調子ではありませんでしたが、フリー1位で逆転優勝を果たしました。
 本来のデュハメル&ラドフォード組からすると少しジャンプミスが多いかなという印象で、滅多にないリフトのミスもそうですが、歯車がうまくかみ合わない感じの演技だったかなと思います。スケートカナダに続く2連勝で6年連続でのファイナル出場を決めましたが、NHK杯で一旦落ちた調子をどのように上げてくるか、大技を含むリスキーなプログラムをどうまとめるかに注目したいですね。NHK杯3連覇、おめでとうございました。
 2位は中国の彭程(ペン・チェン)&金楊(ジン・ヤン)組。SPは全てのエレメンツを高いレベルでこなし、自己ベストで首位に立ちます。フリーは冒頭2つのジャンプで女性の彭選手が転倒してしまい思いがけない出だしとなりましたが、その後は演技をまとめて2位、総合2位となりました。
 1週間前の中国杯に続き連戦となった彭&金組ですが、その疲れを感じさせない内容でしたね。特にショートは独創的な世界観のプログラムを躍動感たっぷりに演じていて、ペアを結成したばかりと思えないコンビネーションを感じました。お互いにパートナーを交換した于小雨(ユー・シャオユー)&張昊(ジャン・ハオ)組とともに相性の良さを感じさせて、新ペア結成という決断が良い方向に行きそうな期待感を持たせてくれましたね。これで彭&金組は初のファイナル進出も決定となり、楽しみですね。
 3位は同じく中国の王雪涵(ワン・シュエハン)&王磊(ワン・レイ)組。SPはジャンプやスピンで減点があり3位。フリーでもジャンプのミスはありつつもほかをおおむねクリーンにまとめて3位、総合でも3位と2年ぶりにGPの表彰台に立ちました。
 こちらも中国杯に続き2週連続での試合となった王&王組。両大会ともサイドバイサイドのジャンプでのミスが目立ちますが、それ以外に目を向けると安定感は申し分ないので、あとはジャンプの安定感に尽きるのだろうと思います。


 日本の須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組は7位となりました。

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 SPは「さくら」。冒頭のツイストは女性の着氷で若干詰まったため減点。続くソロジャンプの3サルコウは何とかこらえますが、スロー3サルコウは転倒となります。しかしそのほかは大きなミスなくエレメンツを丁寧にこなし、自己ベストに0.05点に迫る得点で6位につけます。
 フリーは「映画『シェルブールの雨傘』より」。まずはショートで細かいミスがあったツイストをクリーンにこなすと、ソロジャンプは須藤選手が2回転となったものの、次のスロー3ループは着氷でこらえて最小限のミスにとどめます。その後はソロジャンプでわずかに回転不足となる場面はありましたが、そのほかのエレメンツは全て加点が付くクリーンな出来を揃え、順位的には7位だったもののスコアは自己ベストを更新。トータルでもパーソナルベストとなりました。
 昨季ペアを結成した須藤&ブードロー=オデ組。二人にとってはこれがGPデビューでしたが、いきなり自己ベストを16点以上も更新する内容で、シーズン後半に向けて良い弾みとなったのではないでしょうか。技術的にも昨季と比べると確実に成長していて、このあとのシーズンがとても楽しみになりましたね。ぜひ今年も全日本で優勝して連覇達成となることを願っています。



 さて、NHK杯2016、女子&ペアの記事は以上ですが、ここで女子とペアのファイナル出場者の顔ぶれをまとめたいと思います。


《女子シングル》

①エフゲニア・メドベデワ(ロシア):30ポイント カナダ大会優勝、フランス大会優勝
②アンナ・ポゴリラヤ(ロシア):30ポイント ロシア大会優勝、日本大会優勝
③エレーナ・ラディオノワ(ロシア):28ポイント ロシア大会2位、中国大会優勝
④ケイトリン・オズモンド(カナダ):26ポイント カナダ大会2位、中国大会2位
⑤マリア・ソツコワ(ロシア):24ポイント フランス大会2位、日本大会3位
⑥宮原知子(日本):24ポイント アメリカ大会3位、日本大会2位
―――
補欠⑦アシュリー・ワグナー(アメリカ):20ポイント アメリカ大会優勝、中国大会6位
補欠⑧エリザヴェータ・トゥクタミシェワ(ロシア):20ポイント カナダ大会4位、中国大会3位
補欠⑨三原舞依(日本):20ポイント アメリカ大会3位、中国大会4位



《ペア》

①メ―ガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組(カナダ):30ポイント カナダ大会優勝、日本大会優勝
②アリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組(ドイツ):30ポイント ロシア大会優勝、フランス大会優勝
③于小雨&張昊組(中国):28ポイント カナダ大会2位、中国大会優勝
④彭程&金楊組(中国):26ポイント 中国大会2位、日本大会2位
⑤エフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組(ロシア):24ポイント アメリカ大会3位、フランス大会2位
⑥ジュリアン・セガン&シャルリ・ビロドー組(カナダ):22ポイント アメリカ大会優勝、ロシア大会5位
―――
補欠⑦ナタリア・ザビアコ&アレクサンドル・エンベルト組(ロシア):22ポイント ロシア大会2位、フランス大会4位
補欠⑧ヘイヴン・デニー&ブランドン・フレイジャー組(アメリカ):22ポイント アメリカ大会2位、カナダ大会4位
補欠⑨リュボーフィ・イリュシェチキナ&ディラン・モスコヴィッチ組(カナダ):22ポイント カナダ大会3位、中国大会3位




 まず、女子は何といっても6名中4名がロシア勢です。2014年以来2年ぶりのこととなりますが、その時は表彰台独占はなりませんでした。しかし、今年はそうなる可能性も十分にあり、女子では史上初の一国がメダルを総取りとなるか注目ですね。
 その中でも優勝候補筆頭はもちろん世界女王のメドベデワ選手。内容もスコアもずば抜けていて、よっぽどの失敗でもない限り、その優位は揺らぎそうにありません。
 メドベデワ選手の対抗馬筆頭に挙げるとしたらポゴリラヤ選手。昨季までの不安定さは鳴りを潜め、この安定感がファイナルでも発揮されると仮定するなら、やはり2試合ともに200点超えを達成しているポゴリラヤ選手は、メドベデワ選手を最もおびやかす選手と言えます。
 一方、ランキング3位のラディオノワ選手は実に4年連続でのファイナル進出という実績と経験があり、安定感という意味でならロシア女子随一でもあるので、こちらも表彰台の可能性は大いにあります。
 ランキング4位のオズモンド選手はスケートカナダでは素晴らしい演技で200点超えを達成していますが、故障明けからまだ2季目とあって安定感抜群というわけにはいきません。ファイナル出場も初めてなので、まとまった演技をすれば演技構成点の高さは証明済みですが、ジャンプの調子の波がファイナルではどう出るかは未知数ですね。
 ランキング4位のソツコワ選手もファイナル初出場ですが、こちらはシニア1年目という怖いもの知らずの勢いもあるので、初出場ということ自体がメンタル面に悪影響を及ぼすということはあんまりなさそうです。あとはNHK杯で見られたような回転不足なく、フランス杯の時のような思い切った演技をし、自己新を叩き出すくらいの勢いで行ければ、シニア1年目にしてファイナル表彰台も期待できると思います。
 そして、宮原選手はランキング6位ということでロシア勢には後れを取ってしまいましたが、何より昨年のファイナル銀メダリストという経験があります。また、USインターナショナルでマークした206.75点は今季のシーズンベストランキング3位という高得点でもあり、その時のように極力回転不足の少ない演技ができれば安定感は誰にも負けないわけなので、今年も表彰台は望めるんじゃないかなと思いますね。


 そしてペア。こちらも優勝候補筆頭はやはり世界王者のデュハメル&ラドフォード組。ですが、昨年のファイナルは自身のミスに加え、優勝したクセニア・ストルボワ&ヒョードル・クリモフ組がショート、フリーともにほぼノーミスだったということもあって、優勝を逃しました。今年もやはりジャンプ、スロージャンプの成否に優勝が懸かってくると思います。
 一方、ポイントランキング2位のサフチェンコ&マッソ組もシーズンベストが210点を超えており、デュハメル&ラドフォード組の最大の敵となりそうです。ただ、サフチェンコ&マッソ組もジャンプの安定感には不安が残るGPの内容だったので、ジャンプの調子次第ということになりそうです。
 そして今季結成したばかりの中国の于&張組、彭&金組は、それぞれ新ペアとは思えない確かなコンビネーションと安定感を見せていて、両ペアとも表彰台に乗る実力は十分と言えます。特に于&張組は2試合通じてジャンプの安定感抜群で、デュハメル&ラドフォード組やサフチェンコ&マッソ組と比べると大技はないものの、その分この安定感を発揮できれば頂点に立てる力もあるのかなと思います。
 そしてロシアのタラソワ&モロゾフ組は初戦のスケートアメリカと2戦目のフランス杯とでスコアに差があり、安定感という点では少し不安な点もあります。ですが、エレメンツのクオリティーの高さ、演技構成点の評価の高さは折り紙つきですし、ショートの安定感は問題ないので、あとはフリーのみが課題となりそうですね。
 ランキング6位となったセガン&ビロドー組はスケートアメリカでは素晴らしい演技でGP初優勝を飾りましたが、2戦目のロステレコム杯では低調な内容で5位に沈みました。まだシニア2年目と経験の浅いペアなので、爆発力もある一方でうまくハマらなかった時に不安定になる場合もあり、ファイナルでどちらが出るかはわかりませんね。



 ということで、この記事はここで終わりますが、NHK杯2016・男子&アイスダンスの記事に続きますので、ぜひそちらもお読みいただければ幸いです。


:記事冒頭の女子メダリスト3選手のスリーショット写真、ポゴリラヤ選手の写真、ソツコワ選手の写真、長洲選手の写真、チェン選手の写真、須藤&ブードロー=オデ組の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、宮原選手の写真、樋口選手のフリーの写真、松田選手の写真、ペアメダリスト3組の写真はマルチメディアサイト「Newscom」から、樋口選手のSPの写真は、デイリースポーツのニュースサイト内の写真特集ページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2016-11-29 15:46 | フィギュアスケート(大会関連)