世界選手権2017・男子SP―ハビエル・フェルナンデス選手、世界歴代2位の高得点で首位発進

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※2017年4月3日、羽生選手の演技について、一部記述を訂正しました。

 3月29日から始まった世界選手権2017。競技が順調に進捗していますが、この記事では男子のショートプログラムを取り上げます。
 1位に立ったのは世界選手権2連覇中のハビエル・フェルナンデス選手。パーソナルベスト更新&世界歴代2位の驚異的なハイスコアで3連覇に向けてこれ以上ない滑り出しとなりました。そして2位につけたのは日本の宇野昌磨選手。こちらも自己ベストを更新し世界歴代3位のスコアです。3位は元世界王者のパトリック・チャン選手でこちらもまた自己ベストを更新しています。

ISU World Figure Skating Championships 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 圧巻の首位発進を果たしたのはスペインのハビエル・フェルナンデス選手です。

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 まずは4トゥループ+3トゥループから、これを完璧に決めて2.86点という極めて高い加点を得ると、続く4サルコウも非の打ちどころのないクリーンさでこちらも2.86の加点。後半の3アクセルも全く危なげなく満点となる加点3を獲得。スピン、ステップシークエンスも全てレベル4というパーフェクトな演技で、世界歴代2位となる109.05点を叩き出し1位となりました。
 とにもかくにも完全無欠としか言いようのない素晴らしい演技でしたね。ジャンプを始めとした技術点はもちろんですが、それ以上に2シーズン滑り込んでいる「マラゲーニャ」だからこその隅々まで計算された過不足のない動きや所作が本当に美しく、まさに芸術の域まで極めたプログラムになったと思います。そして改めて感じたのはこの大舞台にきっちり最高の状態を持ってこられるフェルナンデス選手の強さ。やはり昨年、一昨年と優勝しているという成功体験が圧倒的な自信と余裕に繋がっていて、彼のメンタルを乱すものは何もないという感じがします。フリーもこの調子でやってのけてしまうのではないかと感じますし、今までどおりにやれば大丈夫という自分自身に対する信頼感がフェルナンデス選手の姿からヒシヒシと伝わってきますね。


 2位となったのは全日本王者の宇野昌磨選手です。

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 冒頭は代名詞の4フリップを着氷でこらえながらも大きなミスにはせずきっちり加点も稼ぎます。続く4トゥループ+3トゥループはクリーンに成功。後半の3アクセルも難しい入り方とランディングでパーフェクトにこなして2.29点の加点。スピン、ステップシークエンスも取りこぼしなく丁寧に実施し、フィニッシュした宇野選手は力強く拳を天に突き上げました。得点はパーソナルベストを4点以上更新する104.86点で2位と好発進しました。
 ジャンプに関してはわずかにこらえる場面があり決して非の打ちどころのない出来ではなかったのですが、転倒やパンクといった大きなミスにはしない安定感というのはさすがでしたね。さらに際立っていたのは表現面で、音楽の緩急に合わせた滑りのメリハリだったり、音一つ一つにピッタリと合った動きというのが随所に見られて、宇野選手といえばとかく最近はジャンプが注目されがちですが、それ以上にこの1年での表現面での成長、進化を強く感じました。
 昨年は涙に暮れたフリー。今シーズンは満面の笑みで終われることを心から祈っています。


 3位にはカナダのベテラン、パトリック・チャン選手が入りました。

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 冒頭は得点源となる4トゥループ+3トゥループ、これを無駄な力なくスムーズに跳び切って加点2.43の高評価。続く苦手の3アクセルも問題なく決めて2点の加点と最高の前半にします。そして後半は得意の3ルッツを難なく成功。終盤のスピン1つではチャン選手にしては珍しくレベル4を取り逃しましたが、全体的にはほぼノーミスでまとめ、安堵したように穏やかに破顔しました。得点は自己ベストとなる102.13点で3位と好位置につけました。
 最初から最後まで途切れることのない優雅なスケーティングと洗練された動き、音楽との一体感がいかんなく発揮されたチャン選手らしい演技でしたね。かつて世界選手権を3連覇したチャン選手といえども、ほんの少しのミスでも優勝争いどころかメダル争いから脱落しかねないという現状の中で、そうしたギラギラと燃えたぎるような熾烈な競争というのを忘れさせるようなアーティスティックなプログラムであり演技だったと思います。フリーは4回転の種類や数の少ないチャン選手にとってはショート以上に厳しい戦いとなりますが、チャン選手にしかできない演技を楽しみにしています。


 4位となったのは昨年の銅メダリスト、中国の金博洋(ジン・ボーヤン)選手です。

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 冒頭は代名詞となっている4ルッツ+3トゥループの連続ジャンプ、これを回り切った上で綺麗に着氷して加点2を得ます。スピンを挟んで中盤の3アクセルも問題なし。直後の4トゥループもクリーンに下りると、最後は「スパイダーマン」のアップテンポなリズムに乗せた躍動感たっぷりのステップで観客を大いに沸かせました。得点は自己ベストをわずかに更新し98.64点で4位となりました。
 シーズン序盤は昨季と比べると得意のジャンプに安定感を欠き、バラつきが多かった金選手ですが、シーズンが進むにつれて徐々に調子を取り戻ししっかりとこの大会にピークを合わせてきましたね。今季はジャンプを成功させても出来栄えの面で綺麗ではないジャンプが目立っていたのですが、このSPのジャンプは全て申し分ない出来で、ようやく昨季のイケイケだった時の金選手の姿に戻ったなという感じがしました。昨年はSP5位からフリー3位と追い上げての銅メダルでしたから、今年もほぼ同じ状況ということでフリーは思い切った演技ができるのではないでしょうか。


 5位は昨年の銀メダリスト、日本の羽生結弦選手です。

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 冒頭は大技4ループを完璧な回転と流れで着氷し2.43点の加点。続いて4サルコウからのコンビネーションでしたが、4サルコウの着氷で片膝をつくミス。急遽2トゥループをつけてリカバリーしたものの、膝をついたことによって2トゥループは認められず単独ジャンプの扱いとなります。後半の3アクセルはいつもどおりの安定感で難なく跳び切り、ステップシークエンス、スピンも全てレベル4を揃えましたが、フィニッシュした羽生選手は顔をしかめました。得点は規定となっているコンビネーションジャンプが入らなかったことに加え、演技開始が遅れたことによる減点1もあり、98.39点と伸び切らず5位にとどまりました。
 4ループがあまりにも完璧だった分、4サルコウのミスが残念で惜しまれます。4サルコウ自体は軸も真っすぐでそんなに悪くなかったように思うのですが、微妙に体重の乗っかるところが後ろに偏ったためバランスを崩してしまいましたね。また、演技開始の遅れという珍しいミスに関しては、グループの1番滑走だった羽生選手には名前をコールされてから1分の準備時間が与えられていたわけですが、羽生選手はグループの最初に滑るということがあまりないので、1分という時間をギリギリまで使おうとして余裕を持ちすぎてしまったのかなと想像します。(以前はグループの1番滑走者は1分の準備時間がありましたが、現在は全ての選手が30秒となっています。)
 フリーでの逆転優勝ということを考えると、トップまで約10点という点差は大技の多いジャンプ構成を鑑みると逆転可能な点差と言いたいところですが、追いかける相手がフェルナンデス選手ですから彼がミスを連発するというのは想像しにくいので、さまざまな条件が重ならないとひっくり返すのは難しいのではないかと思います。ただ、追いかける立場になった時の羽生選手の強さは誰もが知るところですので、一体どんな爆発的な演技を見せてくれるのか期待したいですね。


 6位は全米王者のネイサン・チェン選手です。

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 冒頭の大技4ルッツ+3トゥループはファーストジャンプの着氷で若干こらえながらもうまくセカンドジャンプに繋げてクリーンな成功とします。続く4フリップも着氷で踏ん張ってノーミス。後半に入り課題の3アクセルは回転は十分だったものの着氷でこらえきれず転倒。スピンやステップシークエンスも多少取りこぼしがあり、97.33点での6位となりました。
 今季は怖いもの知らずの無敵さで突き進んできたチェン選手ですが、世界選手権というのはやはり今までの大会とは雰囲気が違ったのか、演技冒頭から動きに硬さが目立ちましたね。元々苦手な3アクセルも最近は安定感が増していたのですが、今回は練習からミスが多かったとのことで力んでしまったのかもしれません。しかしチェン選手は世界最高レベルの高難度プログラムを用意していますから、まだまだ表彰台までは挽回可能。ショートからの気持ちの切り替えが鍵になってきそうですね。


 7位はロシアチャンピオンのミハイル・コリヤダ選手です。

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 まずは得点源の4トゥループ+3トゥループ、これをクリーンに下りると、続く3アクセルもきっちりと成功させます。後半の3ルッツも全く問題なく、スピンは全てレベル4とジャンプ以外もコンスタントにまとめ、自己ベストを3点上回る93.28点で7位に入りました。
 最終グループの前の第5グループの1番滑走として登場したコリヤダ選手。彼がノーミスの演技を披露したことでその後のノーミス連発の流れが作り出されたような気がしますね。ジャンプが安定していたことはもちろんですが、そのほかのスピンやステップでもおおむね高いGOE加点がついていて、ジャンプ以外のエレメンツでも点を稼げるのがコリヤダ選手の武器ですね。


 8位はアメリカの実力者ジェイソン・ブラウン選手。

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 上位に入った選手の中では唯一4回転を組み込まず臨んだブラウン選手。まずは得点源の3アクセルをパーフェクトに決めて加点2を獲得します。さらに3フリップ+3トゥループもクリーンに成功。後半の3ルッツも難なく下り、ステップシークエンス、スピンでは全てレベル4で揃え、さらに全て加点1以上というクオリティーの高さを見せつけ、これまでのパーソナルベストを一気に6点以上も更新する93.10点で8位と好位置につけました。
 最終グループの最終滑走者として演技に臨んだブラウン選手。直前に滑った選手たちが皆4回転をバンバン跳んでみせる中、4回転を1本も跳ばずに観客を自分のプログラムの世界に引き込み、90点超えというハイスコアを叩き出した彼もまた、ある意味で異次元さを示しました。4回転が全てではないというのを改めて強く印象づける演技でしたが、一方でジャンプ、スピン、フットワーク、つなぎなど全ての面において高い質を誇るブラウン選手だからこそ、4回転なしでも4回転ジャンパーだらけの猛者たちと同レベルで戦えるのだということも感じさせられましたね。フリーでは4回転に挑むのか挑まないのかはわかりませんが、どちらにしてもこのショート同様、ブラウン選手にしか表現できない世界を見せてほしいと思います。


 日本の田中刑事選手は22位となりました。

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 冒頭は大技の4サルコウからでしたが、わずかに回転が足りず転倒してしまいます。続く3アクセルは確実に成功。レベル4のスピンを2つ挟んだ後半、3+3はセカンドジャンプの着氷でバランスを崩します。2つのジャンプミスが響き、得点は73.45点で22位と出遅れました。
 練習では好調だったという田中選手ですが、演技が始まった瞬間に緊張が襲ってきたとのことで独特の雰囲気に飲まれてしまったのかなと思いますね。上位24名によるフリー進出もギリギリという順位となってしまいましたが、フリー次第でまだまだ順位を上げられますから、フリーは田中選手らしい躍動感あふれる滑りでショートの悔しさを晴らしてほしいと思います。



 さて、男子SPの記事は以上です。それにしても90点以上が9人、100点以上が3人という信じられないようなハイレベルな争いになりましたね。予想されていたことではありますが、実際にその数字を目の前にすると愕然とします。一体フリーでは200点超えが何人、さらにはトータル300点超えが何人になるのか、想像するとちょっと怖くさえなります。男子フリーは4月1日、日本時間の16:50からです。


:男子SP上位3選手のスリーショット写真は、スケート情報サイト「icenetwork」の公式インスタグラムから、フェルナンデス選手の写真、金選手の写真、コリヤダ選手の写真、ブラウン選手の写真、田中選手の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、宇野選手の写真、チャン選手の写真、羽生選手の写真、チェン選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2017-03-31 17:12 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)