世界国別対抗戦2017―日本、3大会ぶり2度目の優勝(男子SP&ペアSP)

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 前記事に引き続き世界国別対抗戦(ワールド・チーム・トロフィー)2017の内容と感想をとりとめもなく綴っていきます。この記事では男子のショートプログラムとペアのショートプログラムについて書いていきます。なお、この大会のルールやシステムについては、こちらの記事をご参考下さい。

ISU World Team Trophy 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 まずは男子SPから。
 男子SPを制して1位となったのは日本の宇野昌磨選手です。

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 まずは新たな代名詞となった4フリップ、これを着氷でこらえながらも最小限のミスに抑えます。続く4トゥループ+3トゥループは、ファーストジャンプの着氷で若干詰まったためセカンドジャンプを2回転に。後半の3アクセルはパーフェクトな流れと着氷で満点となる加点3の高評価を獲得。スピン、ステップシークエンスはいつもどおりのレベル4に加え、加点も全て1点以上という安定ぶりを発揮。国際スケート連盟の公式記録では自身3度目の100点超えとなる103.53点でトップに立ちました。
 冒頭の4フリップこそ完全にきれいな着氷とはなりませんでしたが、それも含めていつもどおりの冷静で落ち着いた演技という印象でしたね。演技後は4+3を4+2にしたことについて、「逃げてしまった」と後悔と反省の言葉を口にしましたが、チーム戦ということを考えれば妥当な判断だったんじゃないかなと個人的には思います。ただ、宇野選手の常に攻める姿勢からすると本人にとっては許せないことなのでしょうし、世界選手権の銀メダリストとなっても以前と何ら変わらず、自分のスタンスを保っている姿には安心感というか頼もしさを覚えますね。


 2位に入ったのはアメリカチャンピオンのネイサン・チェン選手です。

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 足首を痛めている影響で最高難度の4ルッツは外した構成で臨み、まずは4フリップ+3トゥループ、これを完璧に決めて加点2を獲得。続く4トゥループは若干こらえ気味でしたが乱れなく成功。後半に組み込んだ苦手の3アクセルもクリーンに下り、スピン、ステップシークエンスも全てレベル4と、手堅く演技をまとめました。得点は99.28点で2位と好発進しました。
 とても足首を痛めているとは思えない猛烈なジャンプ構成でしたね。4ルッツを回避しているとはいえ相当に難度の高いプログラムであることは変わりませんし、持っている4回転の種類が多い分、いろんなバリエーションで戦えるのがチェン選手の強みだなと改めて感じさせられましたね。シニア1季目ということで世界選手権ではスケート靴の問題も含め、長いシーズンを送ってきたことによる難しさが表れてしまったという感じでしたが、このSPは本来のチェン選手らしい演技だったように思います。


 3位は世界選手権2017の銅メダリスト、中国の金博洋(ジン・ボーヤン)選手です。

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 冒頭は代名詞の大技4ルッツ+3トゥループから、少しフェンスに近づきすぎる着氷とはなりましたが乱れなくしっかり成功させます。中盤の3アクセルは珍しく着氷で若干バランスを崩しましたが、直後の4トゥループは問題なく決め、スピン、ステップシークエンスも全部レベル4と取りこぼしなし。得点は97.98点で3位につけました。
 シーズン序盤から終盤にかけて徐々に調子を上げ、確実に世界選手権にピークを合わせた金選手。今年の世界選手権は優勝候補だったハビエル・フェルナンデス選手のミス連発による棚からぼた餅的なところはありましたが、そうした運の良さも含め、2年連続で世界の表彰台に立つ実力は伊達じゃありません。このSPも変わらぬ安定感で、1つ1つのジャンプの綺麗さという点では宇野選手やチェン選手に劣る部分もあるのですが、大崩れしない安定感というのはシニア2季目を経験してさらに増したように思いますね。


 4位となったのはロシアチャンピオンのミハイル・コリヤダ選手です。

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 冒頭は得点源の4トゥループ+3トゥループ、これをきっちりと成功させて好調な滑り出しを見せます。続く得意の3アクセルは加点2の高評価。後半の3ルッツも危なげのない成功で、さらにステップシークエンス、スピンもレベル4を揃え、自己ベストとなる95.37点をマークしました。
 世界選手権に続き90点台をマークしたコリヤダ選手。まだトップ選手としての経験が浅いためか波がある部分もありますが、2大会連続で90点台というのを見ても、規模の大きな国際試合の場数を踏むことで確実に安定感が備わってきているなと感じます。ジャンプだけではなくスピン、ステップでもしっかりレベルを取って加点を稼げる総合力の高い選手なので、毎試合90点台を出せる実力者だと思いますし、来季は層の厚いロシアのエースとしてそれくらいの安定と活躍を期待したいですね。


 5位にはアメリカのジェイソン・ブラウン選手が入りました。

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 まずは得点源の3アクセルを確実に決めて1.86点の加点を得ます。続く3+3も微塵の乱れもなく成功。後半の3ルッツもクリーンに着氷させます。得意のスピン、ステップシークエンスも全てレベル4に加え、柔軟性を活かした個性的なポジションやどこを切り取っても美しい身のこなしでしっとりとしたプログラムの世界観を存分に表現し、笑顔でフィニッシュしました。得点は94.32点と先日の世界選手権でマークした自己ベストを約1点更新しました。
 全てのエレメンツで1点以上の加点という極めて完成度の高い演技を披露したブラウン選手。4回転を数種類組み込んでいる選手はどうしてもジャンプに集中しなければならない部分がありますが、ブラウン選手は確実に跳べるジャンプのみでプログラムを構成している分、ジャンプとジャンプ以外のエレメンツに対して同じだけの熱量を注ぎ込んでいる印象があり、あれだけの美しさに繋がっているのだろうと思います。


 6位はカナダのベテラン、パトリック・チャン選手です。

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 SPでは初めてとなる2種類の4回転という構成で挑んだチャン選手。まずは得意の4トゥループ+3トゥループを完璧に成功させて好スタート。続いてショートでは初チャレンジの4サルコウでしたが、パンクして3回転となります。さらに後半の3アクセルでは回転不足で転倒となり、得点は85.73点で6位にとどまりました。
 今季からフリーでの4回転2種類に挑戦し始めたチャン選手。その新技である4サルコウも徐々に安定してきたということで、今大会はショートでも4サルコウに挑んできましたが成功とはなりませんでした。ただ、今大会はチーム戦とはいえ失うものが何もない大会ですし、来季を見据える上で良いチャレンジだったのではないかと思います。4サルコウをいかに自分のものにするかは、オフシーズンでの強化にもかかってくるでしょうから、チャン選手がオリンピックで優勝争いをするためにはこの4サルコウと鬼門となっている3アクセルが鍵になってきそうですね。


 世界選手権2017金メダリスト、日本の羽生結弦選手は7位となりました。

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 冒頭は代名詞の4ループでしたが、回転がすっぽ抜けて1回転となったため規定違反により0点となります。続く4サルコウ+3トゥループはファーストジャンプの着氷で乱れコンビネーションにならず。後半の3アクセルは危なげなく決めましたが、序盤のジャンプミスによって83.51点と得点は伸びず、まさかの7位に沈みました。
 今シーズンの中でもワーストと言ってもいい演技となってしまいましたね。公式練習では絶好調そのものでパーソナルベスト更新に期待がかかる中での演技でしたが、責任感の強い羽生選手だからこそチーム戦ということで気合いが入りすぎてしまったのかもしれませんし、今季苦戦を強いられていたショートを最後こそは完璧に決めたいという強い意志が逆に空回りしてしまったような印象を受けました。これでショートは今季1度もノーミスがないという結果になり来季に向けて課題と不安を残しましたが、元々ショートが苦手ということはないので、今までもいろんな壁を乗り越えてきた羽生選手ですから、しっかり自分自身を分析してオフシーズンに課題をクリアするのではないかと思いますね。


 ということで、男子SPの順位は以下のようになりました。

《男子SP》

1位:宇野昌磨(日本)、12ポイント
2位:ネイサン・チェン(アメリカ)、11ポイント
3位:金博洋(中国)、10ポイント
4位:ミハイル・コリヤダ(ロシア)、9ポイント
5位:ジェイソン・ブラウン(アメリカ)、8ポイント
6位:パトリック・チャン(カナダ)、7ポイント
7位:羽生結弦(日本)、6ポイント
8位:シャフィク・ベセギエ(フランス)、5ポイント
9位:ケヴィン・エイモズ(フランス)、4ポイント
10位:李唐続(中国)、3ポイント
11位:マキシム・コフトゥン(ロシア)、2ポイント
12位:ケヴィン・レイノルズ(カナダ)、1ポイント




 ここからはペアのショートプログラムです。
 SP首位となったのはフランスのヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ組。冒頭のツイストリフトは男性が女性をキャッチするところでわずかにミスがありレベル1にとどまりましたが、そのほかはレベル3、4を揃え、さらに多くのエレメンツで加点1以上を積み重ね、自己ベストとなる75.72点をマークしました。
 2位は中国の彭程(ペン・チェン)&金楊(ジン・ヤン)組。目立ったミス、取りこぼしなく、ほとんどのエレメンツで加点1以上という完成度の高い演技を披露し、自己ベストに近いスコアで2位につけました。
 3位はカナダのカーステン・ムーア=タワーズ&マイケル・マリナロ組。冒頭のツイストはレベル2となりましたが、その後のエレメンツは大きな乱れなく堅実にこなし、パーソナルベストに約1点と迫る得点をマークしました。
 4位に入ったのは世界選手権2017の銅メダリスト、ロシアのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組。冒頭の3ツイストはレベル4に加え加点2.1点という極めて高い評価を得て好スタートを切りましたが、続く3トゥループは回転不足で転倒。続くスロー3ループでも乱れがあり、自己ベストから10点以上低い得点で4位にとどまりました。
 5位はアメリカのアシュリー・ケイン&ティモシー・ルデュク組。ツイストリフトではレベル1になった上にGOEでも大幅な減点となりましたが、その後のソロジャンプやスロージャンプでは最小限のミスにとどめて自己ベストに近い得点をマークしました。
 6位となったのは日本の須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組です。

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 冒頭の3ツイストは大きな乱れはなかったもののキャッチの場面で若干流れが滞ったためレベル2になりGOEでも減点対象に。続く3サルコウは須藤選手がダウングレード(大幅な回転不足)で転倒してしまいます。次のスロー3サルコウは着氷でこらえ、その後はクリーンにエレメンツをまとめましたが、54.84点とスコアを伸ばせませんでした。
 世界選手権ではパーソナルベストを更新したものの、SP17位でフリー進出にあと一歩届かなかった須藤&ブードロー=オデ組。そのリベンジとして期待された今回の演技でしたが、ミスが重なり本領発揮とはなりませんでした。今季から取り入れている3ツイストは徐々に安定感を増してきていてちょっとしたミスだったと思うのですが、ソロジャンプが大幅な回転不足で転倒となったのは痛かったですね。


 ペアSPの順位は以下の通りです。

《ペアSP》

1位:ヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ組(フランス)、12ポイント
2位:彭程&金楊組(中国)、11ポイント
3位:カーステン・ムーア=タワーズ&マイケル・マリナロ組(カナダ)、10ポイント
4位:エフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組(ロシア)、9ポイント
5位:アシュリー・ケイン&ティモシー・ルデュク組(アメリカ)、8ポイント
6位:須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組(日本)、7ポイント




 さて、これで男子、女子、ペア、アイスダンス、全てのショートが終了しました。次の記事では男子フリーとアイスダンスフリーについて書いていきます。では。


:メダリスト3チームの集合写真はスケート情報サイト「icenetwork」から、宇野選手の写真、金選手の写真、羽生選手の写真、須藤&ブードロー=オデ組の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、チェン選手の写真、コリヤダ選手の写真、ブラウン選手の写真、チャン選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2017-04-26 17:36 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)