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世界国別対抗戦2017―日本、3大会ぶり2度目の優勝(男子フリー&アイスダンスFD)

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 前記事、前々記事に続き、世界国別対抗戦(ワールド・チーム・トロフィー)2017の内容、結果について書いていきます。今回は男子フリーとアイスダンスフリーダンスです。この大会のルールやシステムについてはこちらの記事をご覧ください。

ISU World Team Trophy 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 まずはさっそく男子から。
 男子フリーで1位となったのは日本の羽生結弦選手です。

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 まずはショートで失敗した4ループ、これを今度は完璧に決めます。続いて4サルコウはパンクして1回転に。続く3フリップは難なく下りてここから後半、鍵となる4サルコウ+3トゥループをクリーンに着氷させると、4トゥループ、3アクセル+3トゥループもきれいに成功。そして初の試みとなる5本目の4回転、4トゥループ+1ループ+3サルコウは最後のジャンプの着氷で若干乱れたものの4トゥループ自体は成功。最後に組み込んだ2本目の3アクセルは珍しく1回転となりますが、初めての構成に挑んだ羽生選手はフィニッシュすると穏やかな笑みを浮かべました。得点は200.49点で1位となり、ショートの7位から挽回しました。
 2月の四大陸選手権では演技途中にプランを変更しての4回転5本というのはありましたが、今回は演技前から5本跳ぶことを決めて臨んだ初めての挑戦。結果的には前半の4サルコウが1回転になったことによって自身初の4回転5本成功はなりませんでしたが、その一方で後半に4回転3本という世界でも史上初の快挙を達成させ、また新たなバリエーションを手にしました。ただ、羽生選手自身は現時点では来季は今季の構成を大きく変えるつもりはないとのことで、現在の4回転4本をベースに完成度を高めて、5本の4回転はあくまでオプションとして考える方向で行くようですね。また、フリー後にはエキシビションの練習で4ルッツを着氷する姿も見せていて新技にも期待がかかりますが、大事なオリンピックシーズンということを考えるとよっぽど自信がない限りプログラムに取り入れることはないのかなと思いますね。個人的には来季の羽生選手にはジャンプを全て完璧に下りるだけではなく、ステップや技と技のあいだのつなぎ、プログラム全体の緻密さや完成度も期待したいですし、そのためには今と同じ構成をさらに極めていくことで体になじんで余裕も生まれてくると思うので、ジャンプはもちろんのこと、それ以外の部分でももっと魅せる演技、プログラムを来季は楽しみにしたいですね。


 2位となったのはSP1位の宇野昌磨選手です。

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 自身初となる4フリップ2本の構成で挑んだ宇野選手。まずは今季後半から組み込んでいる4ループ、これをクリーンに下りて2.29点の加点を得ます。続く4フリップは回転は充分でしたが着氷が乱れ減点となります。直後の3ルッツは回転と着氷は問題なかったものの踏み切りのエッジエラーでこちらも減点。スピンとステップシークエンスを挟んで後半、最初の3アクセル+3トゥループは危なげなく成功で2.86点という極めて高い加点。続いて初挑戦の2本目の4フリップでしたが、ダウングレード(大幅な回転不足)で転倒となり予定していたコンビネーションにはできず。しかしその後は4トゥループ、3アクセル+1ループ+3フリップ、3サルコウと全てのジャンプをクリーンにこなし、しっかり立て直して演技を終えました。得点は198.49点で2位となりました。
 4フリップを2本跳ぶというチャレンジは残念ながら不首尾に終わりましたが、4フリップ自体はすっかり自分のものにしているジャンプなので、オフシーズンの練習次第でこの構成も思ったより早く安定するんじゃないかなという気がしますね。何といっても4フリップにしても4ループにしても武器になったのはこの1年のあいだのことですから、宇野選手の習得と上達の早さを考えると楽しみですね。また4ルッツや4サルコウといった新たな4回転も練習中で、現時点ではまだ確率は低いようですが、“攻める”を常にテーマに掲げている宇野選手なので、オリンピックシーズンといえども守りに入らず新しいことを試していく可能性もあるのかなと想像します。あとは攻めすぎて怪我しないかが心配ですが、そのあたりの冷静さは若いわりにしっかり持ち合わせている選手だと思いますし、今大会中のインタビューでは「世界選手権自体はあまり疲れなかった」とか「もうちょっと試合が多くてもいい」と語っているくらいフィジカル的にも強靭な選手なので、さっそくゴールデンウィークにはアイスショー出演が待ち受けているなどまだまだ過密日程が続きますが、練習と休息のバランスをうまく取って、来シーズンも宇野選手らしく攻め続けてほしいですね。


 3位に入ったのは元世界王者、カナダのパトリック・チャン選手です。

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 まずは得意の4トゥループ+3トゥループをきっちり決めて加点2.71点を獲得。さらに今季からの新技4サルコウもクリーンに着氷させます。続いて鬼門の3アクセルでしたがわずかな乱れにとどめます。そして後半はまず4トゥループ、これも着氷で若干の乱れ。直後の3アクセルからのコンビネーションは1アクセル+2トゥループに。しかしその後のジャンプは全て難なく下り、リズムを大きく崩すことなく演技をまとめ、190.74点をマークしました。
 今季から挑戦している4トゥループ2本、4サルコウ1本、3アクセル2本という構成ですが、シーズン最終戦にしてまとまった形が見えてきたのかなという感じですね。シーズン序盤はなかなか決まらなかった4サルコウも徐々に安定してきましたし、3アクセルも以前よりはミスが少なくなってきている印象があるので、重要な来季に向けてこの構成をベースにさらに完成度が高まっていくと、元々演技構成点はピカイチなので楽しみだなと思います。来シーズンはチャン選手にとってスケート人生の集大成になるでしょうから、演技もプログラムもチャン選手らしい、チャン選手にしかできないフィギュアスケートの魅力を詰め込んだ作品を期待したいですね。


 4位はアメリカの新星ネイサン・チェン選手です。

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 ショート同様に最高難度の4ルッツは回避し、冒頭は4フリップの連続ジャンプから幕を開け、セカンドジャンプは2回転となったものの確実に成功させます。続く2本目の4フリップは着氷で大きくバランスを崩します。さらに4サルコウは2回転にとミスが相次ぎますが、4トゥループからの3連続ジャンプはクリーンに着氷。後半は5本目の4回転となる4トゥループをまず成功させると、苦手の3アクセルもふんばって着氷。残りのジャンプは問題なく予定どおりに下り、最後まで若さ溢れるエネルギッシュな演技を披露しました。得点は185.24点で4位となりました。
 足首を負傷している中での試合となったチェン選手でしたが、そうした不具合をほとんど感じさせない力強いパフォーマンスでした。大きなミスとしては4サルコウのパンクくらいで、4本の4回転を着氷させる安定感はやはりさすがでしたね。不完全燃焼に終わった世界選手権からしっかり切り替えて集中し直せていて、ジュニアとは違うシニアならではの日程だったり、短期間でのメンタルコントロールの仕方だったり、五輪シーズンに向けて貴重な収穫が得られたのではないかと思います。来季チェン選手がどんなジャンプ構成で臨むのかはわかりませんが、何といってもまだまだ若いので攻めてほしいと思いますし、シニアデビューシーズンとなった今季の経緯を見ると昨シーズンの宇野選手の状況と似ているので、シニア2季目に大飛躍した宇野選手同様、今季得たものを来季にさらに昇華させられれば今季以上に強いチェン選手の姿が見られるのではないかという気もしますね。


 5位はロシアのエース、ミハイル・コリヤダ選手です。

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 冒頭は今季からチャレンジしている大技4ルッツ、回転は充分でしたが転倒し初成功はならず。しかし直後の4トゥループはクリーンに跳び切ってすぐに立て直します。さらに3アクセル+2トゥループ、3ルッツ+2トゥループと立て続けに成功させ、上々の前半とします。後半は最初の3アクセルを決めると、得点源となる3+3もクリーンに着氷。その後のジャンプもさらりとこなし、スピン、ステップシークエンスも全てレベル4でまとめ、フィニッシュしたコリヤダ選手は満面に笑みを浮かべました。得点は184.04点で自己ベストを更新し、有終の美でシーズンを締めくくりました。
 ショート、フリーともに自己ベストを更新し、今回出場した男子選手の中でもひときわ輝きを放ったコリヤダ選手。4ルッツの失敗こそありましたが、その後の切り替えは見事で、心身ともに充実していることをうかがわせるパフォーマンスでしたね。現時点で完全に自分のものにしている4回転は4トゥループだけで、羽生選手や宇野選手らトップグループとはまだ基礎点での差がありますが、4ルッツが確実に計算できる武器となれば一気に躍進して台風の目的な存在となる可能性も秘めていると思いますし、スピンやステップもしっかりレベルが取れてしかも加点も稼げるので、今以上に取りこぼしの少ない選手となればおもしろいなと感じますね。ロシアのエースとしてコリヤダ選手が来季どんな活躍を見せるのか、楽しみにしたいですね。


 6位となったのはアメリカの実力者ジェイソン・ブラウン選手です。

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 4回転は外し確実な構成で臨んだブラウン選手。まずは得点源の3アクセル+3トゥループをパーフェクトに決めて2点の加点。続いて2アクセルをこなし、前半のジャンプをきっちりまとめます。後半に6つのジャンプ要素を固め、まずは単独の3アクセルをクリーンに成功。3ルッツ、3+2、2アクセルと危なげなくクリアし、3ループはタイミングが合わなかったのかパンクし1ループになりましたが、最後の3+1+3はスムーズな流れできれいに成功。終始丁寧かつ繊細に演じ切り、自己ベストに迫る179.35点で6位に入りました。
 世界選手権に引き続き、4回転はほぼなしという構成ながらも唯一無二の表現力で観客を引き込んだブラウン選手。今大会あえて4回転に挑まなかったのは、シーズン最終戦だからこそ挑戦してミスを含んだ演技にするよりも自分らしい演技で締めくくりたいと思ったのかもしれませんね。来シーズンのブラウン選手がどこまで上位に食い込んでいくのか、それは4回転次第になりそうですが、4回転があってもなくてもブラウン選手らしい演技で観客を楽しませてほしいなと思います。


 男子フリーは以下のような順位と獲得ポイントになりました。

《男子フリー》

1位:羽生結弦(日本)、12ポイント
2位:宇野昌磨(日本)、11ポイント
3位:パトリック・チャン(カナダ)、10ポイント
4位:ネイサン・チェン(アメリカ)、9ポイント
5位:ミハイル・コリヤダ(ロシア)、8ポイント
6位:ジェイソン・ブラウン(アメリカ)、7ポイント
7位:金博洋(中国)、6ポイント
8位:シャフィク・ベセギエ(フランス)、5ポイント
9位:ケヴィン・レイノルズ(カナダ)、4ポイント
10位:マキシム・コフトゥン(ロシア)、3ポイント
11位:ケヴィン・エイモズ(フランス)、2ポイント
12位:李唐続(中国)、1ポイント




 さて、ここからはアイスダンスのフリーダンスです。
 FDで1位となったのはカナダのケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組です。前半のサーキュラーステップがレベル3となった以外は全てレベル4という極めて質の高いエレメンツを揃えた演技で自己ベストを一気に3点以上更新しました。
 2位はショートで1位だったアメリカのマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組。前半のサーペンタインステップで男性のベイツ選手がバランスを崩す場面があり加点が稼げなかったものの、それ以外のエレメンツはしっかりレベル4でまとめ上げ、2位に食い込みました。
 3位はロシアのエカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組。スピンやステップでのレベルの取りこぼしや思ったほど加点を稼げないエレメンツもいくつかあり100%の演技とはならず3位にとどまりました。
 4位は中国の王詩玥(ワン・シーユエ)&柳鑫宇(リュー・シンユー)組。ステップ以外の要素は全てレベル4というそつのない演技を見せ、パーソナルベストを約1点更新しました。
 5位はフランスのマリー=ジャド・ローリオ&ロマン・ルギャック組。こちらもミスらしいミスなく演技をまとめて自己ベストを更新しました。
 そして6位は日本の村元哉中&クリス・リード組です。

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 序盤のツイズルで若干回転がずれる場面があり、レベルこそ4だったもののGOEではわずかに減点。しかしその後はステップ以外のエレメンツを全てレベル4と目立ったミスなくこなし、自己ベストを約1点上回る92.68点をマークしました。
 ショートではリード選手がガッツポーズを見せるなど達成感と満足感に満ち溢れていた二人。FDはそこまで大きなミスはなかったものの心から満足という表情ではなく、まだまだできる、もっと出せるという感情が滲み出ているように感じました。世界選手権も今大会もツイズルで細かなミスがありもったいないところでしたが、カップルとしての経験を積み重ねるにつれ演技中でもお互いにカバーできる部分も増えてくるでしょうから、結成3季目となる来シーズンは今季得た二人の技術やユニゾンをさらに進化させて、ぜひオリンピックの切符をつかんでほしいと思います。


 ということで、アイスダンスFDは以下のとおりの順位です。

《アイスダンスFD》

1位:ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組(カナダ)、12ポイント
2位:マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組(アメリカ)、11ポイント
3位:エカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組(ロシア)、10ポイント
4位:王詩玥&柳鑫宇組(中国)、9ポイント
5位:マリー=ジャド・ローリオ&ロマン・ルギャック組(フランス)、8ポイント
6位:村元哉中&クリス・リード組(日本)、7ポイント




 男子フリー、アイスダンスフリーの記事は以上です。ショートも含めて振り返ってみると、男子はやはり日本の二人が圧倒的な強さを示しましたね。カナダやロシアが一人は上位に食い込んだけれどももう一人は下位に沈んでしまったという順位のバラつきがあったのと比べると、羽生選手のSP以外は日本は予想どおりの力を発揮できたのかなと思います。一方でアメリカもショート、フリーともに二人ともしっかり上位をキープしていて、オリンピックの団体戦を占う意味でもこの層の厚さは頼もしいなと感じました。
 アイスダンスはアメリカ、カナダ、ロシアのアイスダンス3国が下馬評どおりにトップスリーを独占。ですが、その中でもショートではアメリカのチョック&ベイツ組が1位、フリーではカナダのウィーバー&ポジェ組が1位という結果で、現時点ではアイスダンス界においては北米勢がロシアの先を行っているのかなという印象を受けましたね。
 さて、次の女子フリー&ペアフリーの記事がいよいよ16/17シーズンの最後のフィギュア大会関連記事となります。では。


:メダリスト3チームの集合写真はスケート情報サイト「icenetwork」から、羽生選手の写真、宇野選手の写真、チャン選手の写真、ブラウン選手の写真、村元&リード組の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、チェン選手の写真、コリヤダ選手の写真は、アイスダンス情報サイト「ice-dance.com」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2017-04-27 23:53 | フィギュアスケート(大会関連)