フィギュアスケーター衣装コレクション⑭―織田信成編

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 フィギュアスケーターたちの華麗なるコスチュームの数々をスケーター別に紹介するフィギュアスケーター衣装コレクション。第14弾となる今回は日本の男子フィギュア界の一時代を築いた織田信成さんの衣装を取り上げます。
 織田さんといえば涙もろいことで知られ、その表情の豊かさが強烈に印象に残っているスケーターですが、コスチュームも正統派から個性派まで多彩なデザインのものが使用され、織田さんの山あり谷ありの競技人生に色を添えました。そんな衣装のごく一部ではありますが、個人的に特に印象に残っているものを紹介していきたいと思います。



 まずは織田さんがシニアデビューした05/06シーズンのSP「セビリアの理髪師」、フリー「映画『座頭市』より」です。

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 SPはイタリアを代表する作曲家ロッシーニの代表的なオペラ。ということで衣装もオペラからそのまま抜け出してきたような本格的な作りとなっています。上半身は赤いベルベット風のウェストコートと上着で、絡み合う蔓を模したような細かい金色のデザインが施されて華をプラスしています。そうした重厚な素材感、色づかいの中で、上着の下からのぞく白いスカーフやシャツ、上着の袖口から出たレース風のシャツの袖口が柔らかさや抜け感を加えていて、バランスの取れたコスチュームだなと思いますね。
 フリーは映画『座頭市』のサントラを使用した和風プログラム。ですが、衣装自体は日本らしさを前面に押し出したというよりは、どこか前衛的なアートのようなモダンさを感じさせるデザインです。ベースとなるのは黒い生地ですが、腕や首回りは透け感のある素材でところどころメッシュのような網状の素材も使われています。その上に、ゴールドやシルバーのドットや棒状の模様が全面的にあしらわれていて、それによってどことなく抽象画のような不思議な雰囲気を醸し出しています。“座頭市”らしいかというとそうではありませんが、映画のストーリーやコンセプトよりも、『座頭市』のサントラの和風でありながらモダンでカッコいいイメージを反映させたコスチュームになっていて、工夫の凝らされた個性的な衣装と言えますね。


 次は06/07シーズンのSP「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」です。

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 このシーズンのショートはジャズのスタンダード「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」を使用。織田さんらしくどことなくコミカルで、でもジャズらしいおしゃれさもあって、印象的なプログラムでした。
 コスチュームは白い襟付きの上下繋がった作りで、全身黒です。その上半身全体にシルバーのビジューがふんだんにあしらわれています。ビジューの大きさはまちまちで、小さいものもあれば比較的大ぶりのものもあり、また、ところどころ三角形のスタッズもあって、黒を背景にそうしたさまざまな形、サイズの装飾が散りばめられている様子は、まるで夜空に瞬く無数の星々のようで、まさに「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」の世界観そのものだなと感じます。


 続いては織田さんにとって最初で最後の五輪となったバンクーバー五輪が行われた09/10シーズンのSP「死の舞踏」とフリー「チャップリン・メドレー」です。

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 ショートはフランツ・リストの「死の舞踏」をクロアチアのピアニスト、マキシムが現代的にアレンジしたバージョンを使用。クラシックでありながらスタイリッシュな楽曲で、織田さんはこのプログラムで2種類の衣装を使用しましたが、今回はシーズン後半に着用されたものをピックアップしました。
 衣装は上下一体となった黒いボディスーツタイプで、左肩から右の腰にかけて大胆にシルバーの矢印が3本入った斬新なデザインです。ギザギザとしたシャープなラインが音楽の激しさと合っているなと思いますね。
 一方のフリーは喜劇王チャップリンをテーマにした織田さんらしいコミカルさ満載のプログラム。ということで衣装もチャップリンをイメージしたシンプルな蝶ネクタイにスーツ姿となっています。シンプルでともすれば地味になりかねないコスチュームですが、チャップリンを演じるのにこれ以上ない衣装と言えますね。


 次は10/11シーズンのSP「Storm」です。

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 「Storm」は津軽三味線に現代的な要素を取り入れた楽曲で知られる吉田兄弟の作品で、和風であり現代的という点では、「座頭市」の系譜に繋がるプログラムと言えます。
 そんな世界観を反映させた衣装は、全身黒の中で右肩から右袖にかけてのみ鮮やかな色と模様が入ったインパクトのあるデザイン。右肩から右袖部分の模様は日本の伝統的な文様である青海波にも似ていて、また、衣装の左側にもベースとなる黒の上に同系色で青海波のような、もしくは円を連ねたような模様が描かれていて、色づかいは華やかで洋風ですが、柄は和風というおもしろいデザインとなっています。さらに、コスチュームの形自体も襟ぐりは着物の襟を重ねたような作りになっていて、そういった部分でも「座頭市」より一層和を意識したコスチュームであることがうかがえますね。


 続いて12/13シーズンのフリー「魔法使いの弟子/バレエ「ダフニスとクロエ」より」。

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 ディズニー映画『ファンタジア』に使用されたことでも知られる交響詩「魔法使いの弟子」とバレエ「ダフニスとクロエ」を組み合わせたプログラムですが、コンセプトとしては「魔法使いの弟子」のイメージをプログラム全編に渡って反映させたダイナミックでユーモラスなプログラムです。
 そんなファンタジックなイメージを意識してか、衣装は黒を基調にしながらも素材感で個性を表現しています。トップスは襟元がサテンのような艶やかな生地でスーツの襟風の作りになっていて、服自体はアラベスク模様のレース調の素材で、腰のベルトは赤い布を二重に巻いたようなデザインでアクセント的な色づかいとなっています。衣装自体の形だったり素材感だったり、少し変わったデザインになっていますが、魔法使いを演じるという意味でオーソドックスではない、王道を外したデザインにしたんだろうなと思いますね。


 最後は織田さんのラストシーズンとなった13/14シーズンのSP「映画『コットン・クラブ』より」とフリー「ウィリアム・テル序曲」です。

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 ショートは1920年代のニューヨークを舞台に、実在したナイトクラブ“コットン・クラブ”で繰り広げられる人間模様を描いた映画のサントラを使用。プログラムはジャズっぽい雰囲気も漂わせつつ、軽快で明るく、ユーモラスな動きも多々取り入れた織田さんのキャラクターを活かした作品となっていて、衣装も長袖をまくり上げたようなデザインの七分袖の白いシャツに青い蝶ネクタイをあえてほどいた状態のデザインにすることで、ほどよいゆるさ、ラフさを演出しています。ですが、シャツや蝶ネクタイはラインストーンによって装飾が施されているので華やかさもあり、軽快でシック、ほどよく華やかという絶妙なバランスの衣装だと思います。
 そしてフリーはロッシーニの代表曲「ウィリアム・テル序曲」。スイスの伝説的な英雄ウィリアム・テルを描いた作品ですが、織田さんの衣装も中世の人物であるとされるウィリアム・テルをイメージした中世風の衣装となっています。淡いイエローのシャツの上に深みのあるブラウンのベストを重ね、ボトムスもベストと同じ色で揃えたまとまりのあるコーディネート。こうしたスタイル自体は定番ですが、シャツの胸元を編み上げ風にすることで中世の庶民っぽさを表現していますし、ベストに左肩から腰に連なるようなデザインで植物っぽい刺繍を施すことで効果的に華を添えています。高貴な身分ではないウィリアム・テルを演じるということで、シャツとベストという中世の庶民の男性のオーソドックスなイメージを用い、色もイエローとブラウンという渋い色づかいで統一する一方で、ラインストーンやラメなどを使って装飾性も持たせていて、まさに“ウィリアム・テル”らしい衣装になっていますね。



 織田さんの衣装振り返りは以上ですが、こうして見てみると織田さんの派手なキャラクターのわりにはシックな色づかいが多いのかなと感じますね。もちろんここに挙げなかったコスチュームの中にゴールドだったりブルーだったり比較的派手な色づかいの衣装もあるのですが、個人的に印象に残っている衣装はシックなものが多くて、織田さんに似合っているのもあまり派手すぎない色づかいの方が合っているような気がします。
 そんな織田さんですが、現在はプロスケーター、解説者、タレントとして多方面で大活躍。そして昨年に続いて10月初旬に行われるジャパンオープンに日本チームの一員として参加する予定です。引退してから初めての参加となった昨年は、引退後3年近く経っているにもかかわらず4回転や3アクセルをクリーンに決め、現役時代の自身のパーソナルベストを上回るハイスコアをマークし話題となりました。現在はそのジャパンオープンに向けて練習している頃だと思いますが、今年は一体どんな演技を見せてくれるのか、そしてどんな表情を見せてくれるのか、もちろん新たな衣装も今から楽しみにしています。


:「映画『コットン・クラブ』より」の画像はスポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、それ以外の画像は全て、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2017-08-31 18:25 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)