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グランプリファイナル2017・男子&ペア―ネイサン・チェン選手、ファイナル初制覇

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 グランプリシリーズ全6戦を戦い抜いたトップ6のみが集まるグランプリファイナルが今年も行われました。今年の開催地は日本の名古屋でしたが、オリンピックの前哨戦としても見どころの多い、熱い試合となりました。この記事では男子とペアについてお伝えします。
 男子を制したのはアメリカのネイサン・チェン選手。チェン選手本来の演技とはなりませんでしたが、攻めの演技で接戦をものにしました。2位は日本の宇野昌磨選手。地元名古屋での試合でしたが、わずかな差で惜しくも優勝を逃しました。3位はロシアのミハイル・コリヤダ選手となっています。
 一方、ペアは世界選手権2017銀メダルのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組が完全優勝を果たしました。

ISU Grand Prix Final 2017/18 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 優勝は全米王者のネイサン・チェン選手です。

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 SP冒頭は代名詞の大技4ルッツ+3トゥループ、これはファーストジャンプでバランスを崩しかけながらもセカンドジャンプに繋げます。後半に跳んだ4フリップは若干着氷が乱れ減点。最後の鬼門の3アクセルはノーミスでまとめ、終盤のステップシークエンスではエネルギッシュかつ緻密な滑りで加点2.1点という高評価を得、自己ベストに迫る103.32点で首位発進します。
 フリーもまずは4ルッツ+3トゥループから、これを完璧に軽々と決めて加点2を獲得。しかし続く4フリップはショートに続き着氷が乱れて減点されます。さらに4サルコウは2回転にと、前半はミスが相次ぎます。スピンとステップシークエンスを挟んで後半、最初の4ルッツはアンダーローテーション(軽度の回転不足)で下りてきてしまい着氷も乱れます。次の4トゥループからの3連続ジャンプはクリーンに下りますが、直後の4トゥループはダウングレード(大幅な回転不足)で転倒。最後の3アクセル+2トゥループ、3ルッツは成功させましたが、フィニッシュしたチェン選手は残念そうに肩を落としました。得点は183.19点でフリーは2位でしたが、総合では1位となり、初優勝を遂げました。
 優勝したスケートアメリカから中1週間でのファイナルでしたが、そういった疲れや調整の難しさがあったのか、全体的にジャンプは安定しませんでしたね。フリーでは4回転に6本挑んできれいに決まったのは2本のみと、特定の4回転というよりは全体的に不安定でした。スケートアメリカの時もフリーは似たような演技内容だったので、その時の感覚を引きずっていたのか、約2週間という短期間で調子を上げられなかったのかなという印象です。それだけ4回転というのはチェン選手ほどの選手にとってもデリケートで、難しい技なのだということを改めて感じさせられますね。
 ただ、それでもファイナル優勝と、昨季の四大陸選手権に続きビッグタイトルを獲得し、大舞台での強さを発揮したチェン選手。最重要の大会としては全米選手権に照準を当てているでしょうし、このファイナル制覇も通過点に過ぎないと思うので、全米選手権ではより良い、納得のいく演技をして、オリンピックに繋げてほしいですね。ファイナル初優勝、おめでとうございました。


 銀メダルを獲得したのは日本の宇野昌磨選手です。

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 SPは代名詞の4フリップから、これをクリーンに決めて1点以上の加点を得ると、スピン、ステップシークエンスはレベル4に加えてどちらも1点以上の加点と丁寧にクリア。そして後半の4トゥループ+3トゥループを完璧に着氷し加点2を獲得し、残すは得意の3アクセルのみでしたが、着氷後にエッジが滑る形で転倒するという珍しい失敗となり、演技を終えた宇野選手は舌を出し、悔しさをのぞかせつつも破顔しました。得点は転倒による減点1と、演技時間超過による減点1もあり、101.51点で2位となりました。

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 フリーはまず4ループからでしたが、回転が足りずに転倒します。ですが、自身2度目の挑戦となる4サルコウは回り切って着氷し加点も1点以上獲得。さらに3アクセルは完璧な流れで加点2.86点と極めて高い評価を得て、前半のジャンプを終えます。後半は4フリップから、これを若干耐えながらも成功させると、続いては4トゥループでしたが着氷が大きく乱れます。2本目の4トゥループは空中で回転がほどけダウングレードとなりコンビネーションジャンプにもできず。続く3アクセル+1ループ+3フリップは完璧に下り、最後の3サルコウも難なく成功。最後までスピード感溢れる滑りで観客を魅了しましたが、細かなミス多発の演技にフィニッシュした宇野選手は天を仰いで悔しさを露わにしました。得点は184.50点でフリー1位、しかしトータルではチェン選手に0.5点及ばず、惜しくも逆転優勝はなりませんでした。
 ショートでは3アクセルの着氷後に通常よりエッジが傾き転倒、さらに演技が1秒タイムオーバーで減点1、そしてフリーでは練習で成功率の高い4トゥループで2本ともミス、また、2本目の4トゥループが空中分解したことによって3トゥループの本数を勘違いし、最後の3サルコウにセカンドジャンプをつけられるはずがつけられず結果的にコンビネーションが1つのみにと、宇野選手にしては珍しいシーンが相次いだ今大会。ですが、本人はそこまで優勝を逃したという意識はなさそうであっけらかんとしていて、ファンからして見れば0.5点差の2位は本当に惜しいと思ってしまいますし、もしショートのタイムオーバーがなければ、もしフリーで最後の3サルコウに2トゥループでもいいから付けていたら等々、“タラレバ”を想像してしまうのですが、宇野選手自身がその時々、その場面場面でのベストを尽くした結果の2位ですし、何より本人があれだけすっきりと晴れやかな表情をしているのを見ると、こちらもまあいいかという気がしてしまいますね。
 改めて今回感じたのは宇野選手の試合や演技に対するスタンスの独特さで、順位や点数ではなく、いかに自分がその試合に向けてしっかり練習を積めて、そしてどれだけ演技でベストを尽くせたか=攻めることができたかということが最重要ポイントなんだなというのがヒシヒシと伝わってきました。そして、その姿勢はシニア1季目からほとんど変わっていなくて、これだけシニアでの経験を積み重ねるともっと欲も出てきて、新人の頃の気持ちというのが薄れてもおかしくないと思うのですが、彼に関しては良い意味で全く変わっていなくて、周りの環境がどうであれ常にマイペースを保てていて、周りの自分を見る目やかけられる言葉にも全然翻弄されていないというのは、もの凄いことだなと再認識しました。
 次戦はオリンピック出場権が懸かる全日本選手権ですが、きっとその大舞台もいつもの宇野選手らしく淡々と乗り切ってくれると思いますから、また攻めの演技を楽しみにしています。


 銅メダルを手にしたのはロシア王者のミハイル・コリヤダ選手です。

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 SPは今季習得した大技4ルッツから、スピードや高さは充分でしたがあえなく転倒となります。ですが、直後の4トゥループ+3トゥループは完璧な跳躍で加点2。後半の3アクセルもクリーンに決めて1.86点を獲得し、スピン、ステップシークエンスは全てレベル4とそつなくまとめ、99.22点で3位と好発進します。
 フリーもまずは4ルッツからでしたが、ショート同様に転倒となります。次いで4サルコウも転倒。さらに3アクセルも着氷で乱れ、不穏なスタートに。しかし、後半は4トゥループ+3トゥループを決めると、3アクセル+2トゥループも成功。得点源となる3ルッツ+1ループ+3サルコウもクリーンに下ります。3ループはタイミングが合わなかったのかパンクして1回転となりましたが、最後の3ルッツは軽々と決め、軽快な「エルヴィス・プレスリー・メドレー」を躍動感たっぷりに演じ切りました。得点は182.78点でフリーも3位、総合3位となり、ファイナル初出場にして表彰台に立ちました。
 ショート、フリーともに4ルッツは成功せず、フリーは冒頭の2つのジャンプで転倒ということでどうなることかと少しヒヤッとする滑り出しでもありましたが、その後大崩れしなかったのはコリヤダ選手の最も成長した部分と言えますね。これだけミスがあってもトータル280点台というハイスコアが出ているわけなので、ここにショートもフリーも4ルッツがハマって、些細な凡ミスもなくまとめられれば、まだまだ大幅な上積みができる選手だと思うので、今後のシーズンも楽しみですね。一つ一つのエレメンツの質が高い選手でもあるので、オリンピックでノーミスに近い演技ができればメダル争いに食い込む可能性も大いにあるのではないかと思いますし、ぜひ台風の目のような存在になってほしいですね。もちろんその前にロシア選手権がありますし、そこで出場権を獲得して、さらにはロシアは選手団としての参加が不可能となったので、個人で参加するための資格も認められなければいけませんが、それらがクリアされた際には思いっきり頑張ってほしいと思います。


 4位はロシアの大ベテラン、セルゲイ・ボロノフ選手です。

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 ショート冒頭は得点源の4トゥループ+3トゥループ、これを確実に成功させると、続く3ルッツもクリーンに下りますが、ステップから直ちに跳ばなければいけないところジャンプに入るまでの構えが長かったため減点となります。また、後半の3アクセルも珍しく乱れ、87.77点で5位発進となります。
 フリーもまずは4トゥループ+3トゥループ、これをショートと同じく完璧に決めて加点2を得ると、ショートでミスのあった3アクセルも危なげない跳躍と着氷で加点2.14と上々の出だしとします。しかし2本目の4トゥループは着氷ミス。スピンとコレオシークエンスを挟んで後半、最初の3アクセル+2トゥループ+2ループはしっかり回り切って成功。さらに3ルッツ、3+2,3ループ、そして最後の2アクセルとリズミカルにジャンプを次々と決め、締めくくりのステップシークエンス、スピンも力強くこなし、演技を終えたボロノフ選手は満面に笑みを浮かべました。得点は178.82点でフリー4位、総合4位と順位を一つ上げました。
 細かいミスはところどころありましたが、今季を通じての安定感は今大会も存分に発揮されましたね。特にフリーは今季一番なんじゃないかというくらいボロノフ選手自身も乗っていて、NHK杯やスケートアメリカはフィニッシュは肩で荒い息をして疲れ切ったというような表情を見せていましたが、今回はそこまで息絶え絶えという感じではなく余裕も感じられて、シーズンの中でも進化しているというのがうかがえましたね。
 ボロノフ選手に関しては、ジャンプの基礎もしっかりしていますし、精神面も非常に充実しているというのは間違いなさそうですから、あとはロシア選手権でいつもどおりの実力を発揮さえすれば、おのずと五輪の切符は近づいてくると思いますので、期待したいですね。


 5位はアメリカのベテラン、アダム・リッポン選手です。

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 SP冒頭は3フリップ+3トゥループ、これをクリーンに成功させると、続く3アクセルもパーフェクトで両方とも1点以上の加点を得ます。しかし、後半の3ルッツは回転が足りず減点。スピン、ステップシークエンスは全てレベル4と安定感抜群で、86.19点で6位につけます。
 フリーは冒頭で大技4ルッツに挑戦、しかしスケートアメリカに続きダウングレードで激しく転倒してしまいます。しかし、直後の3フリップ+3ループは回り切って着氷。次いで2アクセルも問題なく下り、挽回します。後半最初は3アクセルからの連続ジャンプ、これを完璧に決めると、単独の3アクセルも軽やかに成功。3+3はファーストジャンプもセカンドジャンプもわずかに回転不足と判定されますが、終盤の3サルコウ、3ルッツはクリーンにまとめ、“鳥”をモチーフにした物語性豊かなプログラムを終始しっとりと演じ切りました。得点は168.14点でフリー5位、総合5位で大会を終えました。
 2週間前のスケートアメリカではフリー冒頭の4ルッツで転倒し激しく右肩を氷に打ちつけ脱臼。しかしすぐに肩をはめ演技を続け観客から拍手喝采を浴びたリッポン選手。今大会もその右肩に痛みは多少残っているとのことでしたが、ショートもフリーもリッポン選手らしさは変わらずでしたね。細かなジャンプミスはありましたが、ささやかなものですし短期間でも修正は充分可能でしょう。あとはフリーで挑み続けている4ルッツを全米選手権でも組み込むのかどうかという点が注目ですが、リッポン選手の唯一無二の完成された表現力、エレメンツのクオリティーの高さを考えると、4ルッツなしでも3位以上には入れるんじゃないかという気もしますし、一方で爆発力のあるジャンプ構成を組める若手選手もアメリカにはいるので、確率が低くとも4ルッツを外せない事情も理解できますね。やはりアメリカ男子はチェン選手以外は実力が拮抗している印象ですので、リッポン選手がその過酷なレースを勝ち抜いてオリンピックにたどり着くためには、まずはショートでミスをしないこと、そしてフリーで4ルッツのミスを最小限に抑え、そのほかのエレメンツを完璧にまとめる必要があるのかなと思います。
 リッポン選手にとって今回がオリンピックへのラストチャンスになる可能性が高いですから、全米選手権で悔いのない演技をして、あの素晴らしい2つのプログラムを五輪の大舞台でも見せてほしいと思います。


 6位はアメリカのジェイソン・ブラウン選手です。

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 SPはまず鍵を握る3アクセルから、これをクリーンに着氷させ1.43点の加点を得ます。続く3+3はセカンドジャンプでステップアウトしますが、後半の3ルッツは余裕を持って成功。ステップシークエンス、スピンでも軒並み高い加点を積み重ね、89.02点で4位と好位置につけます。
 フリーも4回転は回避。冒頭の3アクセルは何とかこらえて成功。次いで2本目の3アクセルはコンビネーションにしなければならないジャンプでしたが、回転不足で転倒してしまいます。次の3フリップは難なく下り、中盤のステップシークエンスも丁寧に、正確なエッジワークでこなしレベル4に加え、加点1.7点を獲得。そして後半はNHK杯から構成を変更しまず2アクセル+3トゥループでしたが、着氷で若干乱れます。続いて3ルッツ、3ループとクリーンに決めますが、3+1+3の3連続ジャンプは3+1+2に。最後の2アクセルは危なげなく決め、繊細かつダイナミックなプログラムの世界観を全身を使って余すことなく表現しました。得点は164.79点でフリー6位、総合6位と順位を落としました。
 中国の金博洋(ジン・ボーヤン)選手の辞退により、約1週間前に初のファイナル出場が決まったブラウン選手。調整としては難しさがあったと思いますし、各ジャンプもブラウン選手本来のゆとりのある跳躍ではなかったかなと感じました。NHK杯の時も3アクセルに苦戦している印象でしたが、3アクセルはブラウン選手の生命線なので、これが決まってこないと点数的には厳しいですね。ただ、いくつジャンプのミスがあっても表現を疎かにしないのがブラウン選手の凄さでもあって、演技構成点はショートで3位、フリーで2位と確固たる高評価は揺るいでいないので、全米選手権に向けてジャンプの調子を取り戻して、うまくピークを合わせてオリンピックの切符を再びつかんでほしいですね。



 ここからはペアです。

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 金メダルを獲得したのはドイツのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組。ショートは全ての要素を高い質で揃え、自己ベストに0.43点と迫るハイスコアで首位に立つと、フリーは冒頭の3ツイストがレベル3だった以外は全てレベル4で、GOEも全て加点を引き出し、フリーの世界歴代最高得点となる157.25点を叩き出し、トータルでも世界歴代2位のスコアをマークし、圧巻の初優勝を成し遂げました。
 ショート、フリーともにとにかく強かったとしか言いようのない演技でしたね。もちろん世界選手権の銀メダリストなので優勝してもおかしくなかったのですが、ここまでの強さを見せつけて優勝するとは想像以上でした。二人の好調さがピタリと今大会にハマったのでしょうが、スケートアメリカから中1週間でさらに一段階も二段階もレベルを上げてきたというのは驚くべきことです。また、結成してからまだ4季目ということを考えても(実戦デビューからは3季目)、ほかのトップペアと比べて日が浅い中でこれだけ年々急激に進化できるというのは、よほど二人の相性が良くないとできないことだと思いますし、そういったパートナーを見つけられたというのはお互いにとって本当に幸運なことだったのだなと今更ながら感じましたね。
 オリンピックの優勝候補としてますます期待を高める演技を見せてくれたサフチェンコ&マッソ組。オリンピックで金メダルを手にするためには再び今回のような演技が求められると思いますが、1シーズン中に二度もこれほどまでの演技をするのは大変だと思います。オリンピック前には欧州選手権もありますから、うまく調整してオリンピックでの最高の演技を楽しみにしたいですね。

 2位となったのは現世界チャンピオン、中国の隋文静(スイ・ウェンジン)&韓聰(ハン・ツォン)組です。SPは冒頭の3トゥループで男性の韓選手が転倒するという滅多にないミスがあり、首位と僅差の3位にとどまります。フリーもサイドバイサイドの3サルコウで韓選手に着氷ミスがあったものの、高難度の大技4ツイストや3+2+2の3連続コンビネーションジャンプ、2つのリフトなど得点源となるエレメンツは完璧に成功させ、NHK杯でマークした自己ベスト(=当時の世界最高得点)に0.03点と迫るハイスコアで2位と追い上げましたが、サフチェンコ&マッソ組には届かず初優勝はなりませんでした。
 ソロジャンプにも安定感のある隋&韓組にしては珍しくショート、フリーともにミスがありましたが、演技自体の完成度はさすがのもの。フリーはしっかり巻き返したのですが、ショートで勢いをつけたサフチェンコ&マッソ組を止めることはできませんでしたね。正直、今回のファイナルは隋&韓組の優勝はほぼ間違いないであろうと思っていたのでこの結果は意外でしたが、ジャンプは水物とよく言われますので、韓選手にとってはその調子の悪い時にあたってしまったのかなという感じですね。根本的な技術面の問題があるわけではないと思うので、長いシーズンの中での小休止ととらえるくらいが良いのかもしれません。とはいっても3試合連続でフリー150点台、トータル230点台ですから、すごいことに変わりはないのですが。
 残念ながらファイナル初制覇はなりませんでしたが、それでもオリンピックの優勝候補筆頭であることは間違いないですから、今大会で得た課題や収穫を活かして、オリンピックではベストな演技ができるよう祈っています。

 3位は世界選手権2015、2016のチャンピオン、カナダのメーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組です。SPはサイドバイサイドの3ルッツでこらえる着氷となり、スロー3ルッツでも氷に手をつくミスを犯し5位にとどまります。フリーは大技のスロー4サルコウは転倒、3+2+2のコンビネーションジャンプが3+2+1となるミスがありましたが、そのほかのエレメンツはおおむねコンスタントにまとめてフリー3位、総合3位と順位を上げました。
 演技としてもスコア的にもデュハメル&ラドフォード組の絶好調だった時にはまだ少し遠いかなという内容でしたが、その中でも接戦の3位争いを制することができたというのはシーズン後半に向けて貴重な財産であることは間違いないでしょう。現在世界をリードしているサフチェンコ&マッソ組、隋&韓組とはエレメンツの精度において差があるように思いますが、デュハメル&ラドフォード組もクリーンにまとめられれば高い加点の付く技を多く持っているペアですし、何といってもトップペアでも稀なサイドバイサイドの3ルッツやスロー4サルコウという武器もありますから、その武器を最大限活かせるフィジカル面とメンタル面のコンディションさえ整えば、オリンピックでも充分優勝争いに絡めるペアだと思いますね。まずはカナダ選手権で納得のいく演技をして、オリンピックに繋がることを願っています。



 GPファイナル2017、男子&ペアの記事は以上です。
 男子は終わってみればシリーズのポイントランキングどおりの順位ということで、順当な結果ではあったのですが、上位3選手はミスが散見される演技となり、4回転多種類複数の時代の弊害も感じさせられました。4回転を3種類以上というのが当たり前になっている中で、ショートはともかくとして、フリーをクリーンにまとめるのは至難の業となっていますが、オリンピックではぜひ極力ミスの少ない演技で優勝争い、メダル争いが繰り広げられることを願いたいですね。
 ペアは私個人の予想とはだいぶ違う方向に行ってしまい、特に世界選手権銅メダリストのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組が5位となったのが最大の予想外ではあったのですが、3位から6位までは約4点差だったので、裏を返せば現時点ではサフチェンコ&マッソ組と隋&韓組の実力が抜きん出ているというのが明確に露わになった試合でもありましたね。となると、オリンピックの銅メダル争いがどうなっていくのか……、今から楽しみです。
 ということで、女子&アイスダンス編に続きます。


:男子メダリスト3選手のスリーショット画像、チェン選手の画像、宇野選手の画像、リッポン選手の画像、ペアメダリスト3組の画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、コリヤダ選手の画像、ボロノフ選手の画像、ブラウン選手の画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2017-12-12 02:44 | フィギュアスケート(大会関連)