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全日本選手権2017・男子&アイスダンス―宇野昌磨選手、2連覇で五輪代表決定(前編)

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 オリンピック代表の座をかけた全日本選手権2017が12月21日から24日にかけて行われました。今回はその男子とアイスダンスの結果についてお伝えします。
 男子は世界王者の羽生結弦選手が怪我のため欠場する中、ディフェンディング・チャンピオンの宇野昌磨選手が2連覇を達成し、五輪代表の切符を手にしました。2位は田中刑事選手、3位は無良崇人選手が入り、昨年と同じ表彰台の顔ぶれとなりました。
 アイスダンスはエースの村元哉中&クリス・リード組が3連覇し、こちらも五輪代表に決定しました。

第86回全日本選手権大会 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 男子を制したのは世界選手権銀メダリストの宇野昌磨選手です!

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 SP冒頭は代名詞の4フリップ、これを若干耐えながらもクリーンに成功させます。続いてスピン、ステップシークエンスをレベル4でまとめると、後半は4トゥループ+3トゥループからでしたが、4トゥループで回りすぎて流れが止まってしまい、1トゥループをつけますが規定違反のため4トゥループの単独に。直後の3アクセルはしっかり決め、終盤の2つのスピンもいつもどおりクリアしましたが、コンビネーションジャンプが入らなかったことによって得点は96.83点と100点に届かず、それでも断トツの首位に立ちます。

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 フリー冒頭は大技4ループ、これをきっちりと着氷すると、続く得意の3アクセルは完璧な流れで決め、加点は満点となる3の高評価がつきます。さらに3ループも難なく下り、前半は最高の出来に。スピン2つ、ステップシークエンスもレベル4と丁寧にこなし、後半最初は4フリップでしたが、回転不足で転倒します。次いで4トゥループは何とかこらえますが、初めて挑戦した2アクセル+4トゥループはセカンドジャンプが2回転に。3アクセル+1ループ+3フリップは、うまくジャンプ同士が繋がらず最後のジャンプが1回転になります。次の3サルコウ+3トゥループは詰まりながらも耐えて成功させましたが、演技を終えた宇野選手は両手を合わせて謝るような仕草を見せました。得点は186.47点でフリーも1位、総合1位となり、2連覇を達成しました。
 昨年に引き続き偉大な先輩である羽生選手が不在の中で、絶対的な優勝候補として今大会を迎えた宇野選手。対等なライバルがいないという難しいシチュエーションで、また、五輪代表も間違いないという状況で、とにかく満足できる演技をするということだけが今回の宇野選手の目標だったと思うのですが、GP2戦目のフランス大会からのいまひとつ演技がハマらない流れを止めることはできなかったですね。かといってボロボロの演技が続いているというわけでもなく、ほんのちょっとしたズレという感じがするのですが、そのズレを修正するために宇野選手が新たにフリーに取り入れたのが2アクセル+4トゥループという世界初のコンビネーションジャンプで、試合になると4トゥループが回りすぎてしまってセカンドジャンプがつけられないというミスが多発していたため、2アクセルに4トゥループをつけることで連続ジャンプが単独になるのを防ごうという戦略だったものの、さすがに付け焼刃という雰囲気で成功はなりませんでしたね。宇野選手の場合、現地入りしてから構成を決めるということも多く、そうした引き出しの多さが彼の強みである一方で、いろんなジャンプにチャレンジすることで何がベストなのか見失ってしまうというか、気持ちがしっかり定まらない感じもあったんじゃないかなと想像します。そんな今大会の演技を受け、宇野選手はフリーで跳ぶ4回転を4フリップ、4ループ、4トゥループの3本に絞る意向を示しました。つまりは昨季の構成に戻すということで、普段の練習から一つの構成を体に染み込ませることで演技の安定を狙うというのは賢明な判断だと思います。ここ数試合の宇野選手の演技は方向性が固定されていない分、余裕のなさが少し気になっていたので、演技の方針を固めることで精神的にも余裕を持たせて、宇野選手らしい細部まで繊細な演技が戻ってくることを期待したいですね。
 四大陸選手権を経て、五輪に向かう宇野選手。まずは四大陸で弾みをつける演技をして、満面の笑みで終われることを願っています。全日本2連覇、おめでとうございました。


 銀メダルを獲得したのは成長株の田中刑事選手です。

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 ショート冒頭は鍵を握る大技4サルコウ、若干耐えながらもしっかり回り切って着氷させます。続いて3+3も成功。後半の3アクセルもクリーンに下りると、ステップシークエンスではブルースの激しい曲調に合わせたパワフルな滑りで会場を沸かせ、フィニッシュでは控えめながらもガッツポーズで手応えを示しました。得点は非公式ながら初めて90点台に乗せる91.34点で2位と好発進します。

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 フリーもまずは得点源の4サルコウから、これを完璧に決めて2.14点の加点を得ます。続けて2本目の4サルコウは着氷が乱れコンビネーションにできず。しかし直後の3アクセルはクリーンに下り、1点以上の加点を積み重ねます。そして後半、キーポイントとなる4トゥループをパーフェクトに着氷し、こちらも2.14点の加点。2本目の3アクセルは着氷ミスで単独になりますが、3+3は何とか下り、3ループ、3ルッツも大きなミスなくまとめ、175.81点でフリーも2位、総合2位で2年連続となる銀メダルを手にしました。
 シーズン開幕前から日本男子3人目として有力候補に挙げられながらも、故障もあってGPでは決め手となるような結果を残せなかった田中選手。そのためほかの候補選手たちとともに、全日本一発勝負という色合いが濃くなりましたが、緊張で演技が小さくなるという感じもなく、非常に田中選手らしいスケールの大きな演技ができていましたね。中国杯後は朝、昼のみならず、深夜練習も加え、血の滲むような練習をしてきたとのことで、その成果をここで発揮するんだという気圧されるような気迫が感じられるショート、フリーでした。ただ、フリーは連続ジャンプが一つしか入らなかったり、ステップがレベル2になったりと、まだまだ取りこぼしは多いなという印象でもあるので、五輪代表に選ばれて明確な目標が定まったからこそ、細部の仕上げ、演技全体のブラッシュアップにはこれから期待したいですね。
 まずは四大陸で納得のいく演技をして、五輪に繋げてほしいと思います。


 3位となったのはベテランの無良崇人選手です。

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 SPは得点源の4トゥループから、回転は充分だったものの着氷で片手をつき減点を受けます。直後の代名詞3アクセルは抜群の高さで2.14点の加点。後半の3+3は詰まり気味の着氷ながらも何とかこらえ、スピンは全てレベル4と取りこぼしなし。85.53点で3位につけます。

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 フリーもまずは4トゥループ、着氷でバランスを崩しかけながらもこらえて加点に繋げます。次いで3+3、3ループと前半のジャンプはほぼノーミスでまとめます。後半は得意の3アクセルに2トゥループをつけて決めると、2本目の3アクセルもクリーンに成功。3+1+2、3サルコウも下り、最後の3ルッツは着氷を乱したものの、最後までエネルギッシュな滑りを披露し、演技を終えた無良選手は力を出し尽くしたように両手を氷につきました。得点は172.88点でフリーも3位、総合3位で3年連続となる銅メダルを獲得しました。
 GPは12位&7位と五輪代表選考に向けてアピールできず、上述した田中選手同様、全日本に全てを託すこととなった無良選手。その気持ちがこれ以上ないというほど凝縮されて、こちらの胸が詰まるほどの感情のこもった演技でした。ただ、フリーは4回転を1本にとどめて演技の完成度を優先させたことによって、もちろん素晴らしいプログラムになったのは間違いないのですが、4回転3本の田中選手に追いつくのはかなり厳しい状況になってしまいましたね。無良選手本人がフリー後におっしゃっているように、4トゥループ2本で攻めてほしかったなという気もしますし、日本を代表して五輪に行くという担うものの大きさを考えても、やはり終始攻める気持ちがないと辿りつけないのが五輪という舞台なのではないかなとも思いました。ですが、その一方で最近まとまった演技がなかなかできていなかった無良選手が、久しぶりに転倒もパンクもなく最後まで演じ切ったというところで間違いなくベストを尽くした演技だったと思いますし、無良選手の五輪への執念がヒシヒシと伝わってきました。
 無良選手が来シーズン以降どういう道を歩むのかはまだ先の判断になるでしょうし、2022年の五輪を目指す気持ちはないということも断言されていますが、未来のことは本人にもわかりません。いろんな可能性を携えて前進していってほしいなと思いますし、もちろん今シーズンが終わったわけでもありませんから、四大陸で無良選手らしい演技が再び見られることを祈りたいですね。


 4位は今季シニアデビューの新星、友野一希選手です。

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 ショートは得点源の4サルコウから、これは着氷が大きく乱れます。直後の3+3はしっかり成功。後半の3アクセルもスムーズに着氷し、スピンは全てレベル4。得点は78.16点で5位発進とします。

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 フリーも冒頭は4サルコウからで、2トゥループをつけてきっちりコンビネーションにします。2本目の4サルコウはパンクして2回転に。3アクセル+3トゥループはセカンドジャンプが回転不足と判定されます。後半最初の3アクセル+2トゥループ+2ループはクリーンに着氷。3ループ、3サルコウも続けて下り、3ルッツは踏み切りのエッジが不正確とされたものの、最後の3フリップは問題なく成功。後半はミスらしいミスなくまとめ、「ウエスト・サイド・ストーリー」の軽快なリズムに乗ってノリノリで滑り切りました。得点は153.05点でフリーも5位、総合では4位と全日本自己最高位で大会を終えました。
 鍵を握る4サルコウが練習からあまり確率が良くなかったようで、クリーンに決まったのはフリー冒頭の1本のみでしたが、ジャンプに頼らずに会場を盛り上げられる演技力、雰囲気の作り方の巧さというのは今回も存分に発揮されましたね。友野選手自身は、「会場(の雰囲気)にのまれないように、精一杯だった」と語ったようですが、とてもそうは思えないのびやかさ、躍動感でしたし、あの空気感の中であれだけ楽しそうに滑れるというのは、友野選手の最大の武器なんじゃないかなと感じました。もちろん本人もおっしゃっているように技術面でのレベルアップは今後の課題で、世界のトップレベルまではまだ差がありますが、何がきっかけでコツをつかんで飛躍するかというのは誰にもわかりませんから、そのきっかけをつかみ損ねないように、いろんなことに挑んだり学んだりしてほしいなと思います。


 5位にはベテランの村上大介選手が入りました。

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 SPは2季前から継続の「彼を帰して ミュージカル『レ・ミゼラブル』より」。冒頭は得点源の4サルコウ、これをこらえながら着氷し最小限の減点にとどめます。続く3アクセルは完璧。後半の3ルッツ+3ループはセカンドジャンプが2回転となってしまい、演技を終えた村上選手は悔しさを滲ませつつも笑顔で観客の歓声に応えました。得点は80.99点で4位と好位置につけます。

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 フリーは「歌劇「道化師」より」。まずは4サルコウ、ショートよりもきれいに決め1点以上の加点を得ます。ですが、2本目の4サルコウは1回転に。3アクセル+2トゥループはクリーンに下ります。後半最初は3ループを難なく着氷しますが、3アクセルはステップアウト。3+1+3は最後のジャンプが2回転に。3フリップは着氷がわずかに乱れますが耐え、最後の3トゥループを確実に成功。ただ、ジャンプミスが響き、149.96点でフリー7位、総合5位と順位を一つ落としました。
 昨季は怪我のためGP2試合、全日本も欠場し、今季も急性肺炎のためNHK杯を辞退するなど不運が続いた村上選手。2年ぶりの全日本の舞台が平昌五輪へのラストチャンスという背水の陣でしたが、ミスがある中でも村上選手らしさが演技の端々から感じられました。ただ、試合勘が不足していた感は否めなく、優勝した2014年のNHK杯だったり表彰台に立った2015年のスケートカナダだったり、今以上に良い時の村上選手を知っているからこそ、さらに切れ味鋭いジャンプや、ダイナミックでありながら流れるようになめらかな滑りをもっともっと見たいなという感じがしました。村上選手はインスタグラムでさっそく、「次に向けてがんばります」「強くなって戻ってくる」と頼もしい言葉を綴っていて、次こそは心からの笑顔が見られることを願いたいですね。



 さて、全日本2017、男子&アイスダンスの前編はとりあえずここまでとさせていただきまして、後編に続けたいと思います。記事アップまでしばらくお待ちください。


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by hitsujigusa | 2017-12-27 15:08 | フィギュアスケート(大会関連)