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世界ジュニア選手権2018―ロシア勢全種目制覇

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 ジュニアの世界一を決める世界ジュニア選手権2018がブルガリアの首都ソフィアにて、3月5日から11日にかけて開催されました。フィギュアスケート史に残る歴史的偉業が達成された記念すべき大会になりましたが、女子、男子、ペア、アイスダンスと順を追って試合の内容をお伝えしていきます。

ISU World Junior Championships 2018 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

《女子シングル》


 女子を制したのはジュニアGPファイナル女王、ロシアのアレクサンドラ・トゥルソワ選手です。ショートは全てのジャンプを後半に組み込み、3フリップ+3ループ、3ルッツ、2アクセルとそつなく成功。自己ベストには1点ほど及びませんでしたが、72.03点というハイスコアで首位に立ちました。そして歴史的な瞬間となったフリー、まず冒頭でシーズン序盤から挑み続けている4サルコウを回り切って下りると、続いて実戦では初挑戦となる4トゥループもこらえながら確実に着氷。女子選手史上初めて2本の4回転を成功させます。さらに後半、3ルッツを下り、3フリップ+1ループ+3サルコウも成功。こちらも大技となる3ルッツ+3ループ、3フリップ+3トゥループを着氷させると、最後の2アクセルも難なくこなし、フィニッシュしたトゥルソワ選手は力強いガッツポーズで喜びを露わにしました。得点はシニアも含めて歴代3位となる153.49点でフリーももちろん1位、総合でも歴代5位の225.52点で圧巻の初優勝を果たしました。
 とにもかくにも凄いとしか言いようのないフリーでしたね。安藤美姫さん以来2人目となる4サルコウ成功、そして女子では初めての4トゥループ成功、また、1つのプログラムで2種類2本の4回転成功という前人未到の快挙を達成したトゥルソワ選手。153.49点という得点だけを見ると驚かされますが、4回転という3回転とは全く別次元のジャンプを2本も跳び切ったことを思えば、妥当な得点と言えるでしょう。また、後半にも難しいコンビネーションを軽々と成功させていて、本当に死角のない類い稀なジャンパーなんだなと感じます。とはいえまだ13歳で、来季以降の身体的な変化というのも考えると、彼女が今のようなジャンプをどれだけ跳び続けられるかはわかりませんし、身体の成長に合わせて新たなジャンプを習得していかなければいけないでしょうから、彼女にとってはこれからが茨の道なのかなという気もします。できることならトゥルソワ選手がこのまま4回転ジャンパーとして、順調に成長していってくれることを願いたいですね。世界ジュニア選手権優勝、おめでとうございました。

 2位は同じくロシアのアリョーナ・コストルナヤ選手。ショートは3+3、3ルッツ、2アクセルと全てのジャンプを後半に跳び切り、トゥルソワ選手と0.4点差の2位と好位置につけます。フリーも全てのジャンプを後半に固め、最初の3ルッツこそステップアウトしたものの、その後は落ち着いて予定どおりにジャンプをクリアし、自己ベストでフリーも2位、総合2位で初めての世界ジュニアを終えました。
 トゥルソワ選手同様、初出場にして実力どおりの演技を披露したコストルナヤ選手。トゥルソワ選手のインパクトがあまりにも凄いのでその陰に隠れがちではありますが、シーズン序盤からコンスタントに好成績を収め続け、シニアのロシア選手権でも3位に食い込んだ申し分ない実力の持ち主です。4回転や3アクセルといった大技は持っていないので、ショート、フリーともに全ジャンプを後半に跳ぶ、かのアリーナ・ザギトワ選手と同じ戦略を取っていますが、後半にジャンプを固める演技構成に批判の声もある中、ルール改正の可能性も取りざたされていて、そうなるとコストルナヤ選手のようなタイプの選手は戦略の練り直しを迫られることになると思うのですが、将来的にどんな選手になっていくのか興味深い存在の一人ですね。

 3位は全日本ジュニア選手権2位、日本の山下真瑚選手です。ショートは冒頭の3+3を決めると、後半の2つのジャンプもクリーンに成功。会心の演技でパーソナルベストとなる66.79点をマークし3位と好発進します。フリーはまず3+3+2をしっかり跳び切ると、次いで3+2も成功。中盤の3サルコウも難なくこなし、鍵を握る後半最初の3+3も着氷。残りのジャンプ3つも軽やかに成功させ、スピン、ステップシークエンスも全てレベル4と丁寧に演じ切り、演技を終えた山下選手は満面の笑み。得点は自己ベストを11点以上上回る128.38点でフリーも3位、総合3位で銅メダルを手にしました。
 今季はシーズン序盤のジュニアGPで2戦とも表彰台に立ち、ファイナルには惜しくも進めなかったものの、全日本ジュニアでは2位、シニアの全日本でも10位とシーズンを通して大崩れしない強さを見せてきた山下選手。その総決算としてシーズン最後の大舞台でも自分らしさを出し切れたのではないかと思います。際立った大技や表現力を持っているわけではありませんが、流れの中で無理なく跳べるダイナミックかつゆったりとしたジャンプや、のびやかで雄大さを感じさせるスケーティングは、さらに磨いていけばシニアに上がっても見栄えのするものだと思いますので、今から楽しみだなと感じますね。

 4位はロシアのスタニスラワ・コンスタンティノワ選手です。SPは3+3のセカンドジャンプがアンダーローテーション(軽度の回転不足)となるミスがあり6位と出遅れ。フリーはミスらしいミスとしては3+1+3の1ループが回転不足と判定された以外はマイナス要素なく滑り切りましたが、思ったほど技術点を伸ばし切れずフリー5位、総合では4位と表彰台には届きませんでした。
 ジュニア女子としては17歳と比較的年齢が高めのコンスタンティノワ選手。表現面では一日の長がある一方、ジャンプではあまり加点を稼げないのが弱点かもしれません。シーズン序盤はジュニアGPの参戦は1試合のみで、ほかはチャレンジャーシリーズの試合にシニアとして出場して研鑽を積んでいて、キャリアとしては派手さはありませんが、ロシア選手権で4位、ロシアジュニア選手権で3位と着実に一歩一歩前進しているという印象ですね。もうすぐ開幕する世界選手権には欠場するエフゲニア・メドベデワ選手の代役として出場することが決まっていて、願ってもないチャンスが巡ってきた形ですから、存分に存在をアピールしてほしいと思います。

 5位は韓国のイム・ウンス選手。ショートは得点源の3+3はクリーンに決めましたが、終盤の2アクセルでわずかなミスがあり、パーソナルベストには及ばず5位。フリーは冒頭に3+3、2アクセル+3トゥループと立て続けに難しいコンビネーションジャンプを成功。単独の3フリップも着氷と最高の滑り出しを見せます。しかし後半は3ループ、3+2+2と細かなミスが重なります。終盤の3サルコウ、2アクセルはクリーンに下り、自己ベストの122.16点でフリー6位、総合5位となりました。
 昨年は初出場で4位と健闘したイム選手。今回も小さなミスはいくつかありましたが、まずまずの安定感は発揮できたのではないでしょうか。基本的な技術力の高さは証明済みの選手だと思うので、来季はさらにプラスアルファの強みを発掘できるともっと魅力的なスケーターになるのかなと思います。

 6位は日本の横井ゆは菜選手です。SPは得点源の3+3を成功させましたが、終盤の3ルッツで転倒する痛いミス。パーソナルベストとなる59.81点をマークしたものの8位にとどまります。フリーは前半は単独ジャンプのみで構成し、その全てで1点以上の加点を獲得。後半に入り最初の3+2を下りると、3ルッツ、3+3も鮮やかに成功。最後のエレメンツである2アクセル+3トゥループ+2トゥループも完璧に着氷し、そのままフィニッシュした横井選手は派手なガッツポーズで喜びを爆発させました。得点は自己ベストを10点以上更新する124.97点でフリー4位、総合6位と順位を上げました。
 ショートは最後のジャンプで思わぬ失敗がありましたが、フリーは本当に横井選手らしいのびやかさ、躍動感に満ち溢れた素晴らしい演技でしたね。ジャンプ技術も高いものを持っていますし、何といっても踊り心のある見ていて楽しいスケーターなので、来季に向けてはさらに身のこなしやスケーティング技術など細かい部分を磨いて洗練させていって、大人の表現を身につけていってほしいなと思いますね。

 7位はアメリカのティン・クイ選手。ショートは全てのジャンプを確実に成功させ自己ベストで7位発進。フリーは3ルッツで着氷が乱れた後に転倒するという珍しい失敗がありましたが、それ以外は落ち着いてエレメンツをこなし、こちらも自己ベストで7位、総合でも7位で初めての世界ジュニアを終えました。
 国際的にはジュニアGPで最高6位とまだあまり目立った成績は残していない選手ですが、軸の細いきれいなジャンプを持っていて今後が楽しみな選手だなと感じましたね。アメリカのジュニア女子はロシア勢、日本勢の後塵を拝す形で近年は苦戦を強いられていますが、技術的に大差があるわけではないと思うので、クイ選手のような有望なスケーターが、まずは第二次性徴の壁も乗り越えて、うまくジュニアからシニアに移行できるよう祈りたいですね。

 8位は全日本ジュニア女王の紀平梨花選手です。SPは全ジャンプを後半に組み込む意欲的な構成でしたが、3+3はセカンドジャンプが回転不足の上に転倒。3ルッツと2アクセルはクリーンに着氷しましたが、自己ベストから3点ほど低いスコアで4位となります。フリーは代名詞の大技3アクセルを2本冒頭に組み込みましたが、2本とも1アクセルに。その後は何とか挽回しましたが、転倒する場面もあり、111.51点でフリー9位、総合8位と振るいませんでした。
 本来の紀平選手の実力を考えると意外な結果に終わってしまいましたが、それほど3アクセルというのは扱いが難しく、ハマれば大きいけれども失敗するとリズムを狂わされてしまう諸刃の剣でもあって、今回はその悪い面が出てしまったのかなという感じですね。1月に左手の薬指を骨折したとのことでその影響もあったかもしれませんが、ショートで4位につけてメダルを意識してしまったというのもあったでしょうね。昨年末の全日本選手権では失うものが何もないからこその思い切りの良い3アクセル、アグレッシブな滑りが見られていただけに今大会は紀平選手らしさがうかがえず残念でしたが、この経験も必ず来季以降に繋がっていくと思いますので、今までどおり3アクセルを始め、いろんな技に磨きをかけて、焦らずじっくりと前進していってほしいと思います。



《男子シングル》


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 優勝はロシアのジュニアチャンピオン、アレクセイ・エロホフ選手です。SPは3ルッツの踏み切りが不正確と判定されわずかに減点された以外は目立ったミスなく演じ切り、パーソナルベストまで2点というスコアで2位につけます。フリーは冒頭の4トゥループ+3トゥループを完璧に成功。4サルコウは着氷で乱れ、3アクセルからの連続ジャンプもクリーンな着氷とはならず。後半に入り最初の3アクセルは着氷でオーバーターン。次いで2本目の4トゥループに挑みますが、パンクして3回転になった上に転倒。その後は大きなミスなく滑り終え、得点は154.98点でフリー1位、総合1位で初出場にして初優勝を遂げました。
 ショートで1位だったアメリカのアレクセイ・クラスノジョン選手がフリーを途中で棄権したことによって優勝のチャンスが回ってきたエロホフ選手。クラスノジョン選手の直後の滑走ということで難しさもあったと思いますが、冒頭の4+3をパーフェクトに決め、その後も危なっかしい場面はありつつも、ガタガタと崩れることはなく耐えましたね。年齢的には18歳と来季にもシニアに参戦してもおかしくないですが、ようやく今シーズン花開いた遅咲きの選手でもあるので、安定感だったり精神面の強化というのはまだまだこれからの課題なのかなと思いますね。とにもかくにも世界ジュニアを制したという経験が彼に自信を与えてくれることは間違いないでしょうから、層の厚いロシア男子の一角として期待ですね。世界ジュニア選手権優勝、おめでとうございました。

 2位は同じくロシアのアルトゥール・ダニエリアン選手です。ショートは3+3が回転不足で転倒、さらには時間超過による減点1もあり、自己ベストながらも8位にとどまります。フリーは冒頭に3アクセル+1ループ+3サルコウを組み込み、完璧に成功させて良い流れを作りだすと、次いで3ルッツもきれいに着氷。後半に6つのジャンプ要素を固め、最初の3アクセルをクリーンに下りると、2アクセル、3+3と相次いで成功。終盤の3つのジャンプもミスらしいミスなくクリアし、フィニッシュではガッツポーズと満面の笑みで手応えを露わにしました。得点はこちらもパーソナルベストの149.61点でフリー2位、総合2位と大きく順位を上げました。
 昨年の12月に14歳になったばかりのダニエリアン選手。国際大会でも際立った実績はまだない選手ですが、才能の片鱗をまざまざと見せつける試合になりましたね。さすがにまだ4回転は持っていないようですが、14歳であれだけ質の高い3アクセルを跳べるというのは驚きですし、何といっても14歳という年齢を考えると、無限の伸びしろが感じられて将来が楽しみだなと思います。ロシアは女子に注目が集まりがちですが、やはり男子も総じて非常にレベルが高く、その一人としてダニエリアン選手には大いに期待したいですね。

 3位はイタリアの新星、マッテオ・リッツォ選手です。SPは3アクセルは決めたものの、3+3が3+2になるミスがあり、自己ベストから8点ほど低い得点で6位発進となります。フリーはまずショートで決められなかった3+3をクリーンに成功。次いで3アクセル+2トゥループ、3ルッツと基礎点の高いジャンプをしっかり決めます。後半はまず単独の3アクセルを成功させますが、3ルッツが2ルッツに。さらに3ループも2ループにと悪い流れが続きます。次のジャンプは予定を変更して3ルッツ+1ループ+3サルコウに挑みましたが、3つ目のジャンプが2回転になります。最後の2アクセルは無難に決め、スピンやステップシークエンスは目立った取りこぼしなくまとめましたが、自己ベストから15点ほど低いスコアでフリーも6位、しかしトータルでは3位となり、5度目の世界ジュニアにして初めて表彰台に立ちました。
 上述したダニエリアン選手とは対照的に、5度目の挑戦にしてようやくメダルを手にした19歳のリッツォ選手。先日の平昌五輪でも団体戦、個人戦ともに大いに活躍し存在感を示しましたが、その時の演技と比べるとうまくピークを合わせられなかったのかなという印象ですね。彼の自己ベストと今回のメンバーを見ると、優勝する実力は充分にあったと思うのですが、五輪とは一味違う難しさがあったのかもしれません。リッツォ選手はシニアの世界選手権にも出場予定で、そちらは母国イタリア開催というまた別の難しさも加わるでしょうが、五輪の時のように思い切りの良い演技でシーズンを笑顔で締めくくってほしいですね。

 4位はカナダのジョセフ・ファン選手。ショートは3+3の3フリップがエッジエラー、さらに3アクセルが回転不足とミスが重なり14位と大幅に出遅れ。フリーは冒頭の4トゥループがステップアウト、3アクセルも着氷でフリーレッグをつくミスと着氷の失敗が続きます。しかし直後の4トゥループ+2トゥループは成功。さらに後半の3+3、2アクセルからの3連続とコンビネーションジャンプをクリーンに決めます。終盤は細々としたジャンプミスが相次ぎましたが、パーソナルベストの145.65点でフリー3位、総合4位と表彰台まであと一歩に迫りました。

 5位はロシアのロマン・サヴォシン選手。ショートは3つのジャンプ全てでミスが相次ぎ12位に沈みます。フリーも全体的に細かなミスはありましたが、大きく減点されるようなミスはなく、4トゥループ2本、3アクセル2本を無難にまとめ5位、総合5位とジャンプアップしました。

 6位はアメリカのカムデン・プルキネン選手。ショートは3アクセルは完璧に決めましたが、3+3は2+2に、3ルッツは回転不足と痛いミスが重なり、まさかの17位に。フリーは冒頭の3+1+3の3連続ジャンプを始め、2本の3アクセルもクリーンに成功。大きなミスなく滑り切り、自己ベストに迫るスコアで4位、総合6位となりました。

 7位もアメリカの樋渡知樹選手です。ショートは冒頭の3アクセルで回転不足の上に転倒し思いがけない出だしとなりますが、その後を何とかまとめて11位。フリーは序盤の4トゥループ、3アクセルともに着氷が乱れ、中盤の3アクセルでもパンクして1回転にとミスは散見されましたが、そのほかはおおむねクリーンなエレメンツを揃え7位、総合も7位となりました。

 8位はウクライナのイワン・パブロフ選手。SPは冒頭の3アクセルでミスを犯しましたが、そのほかのエレメンツは加点が付く出来で揃え4位と好発進。フリーは2本の3アクセルに挑み、1本はクリーンに着氷。全体的に大きなミスなく演じ切り自己ベストで8位、総合8位で初入賞しました。

 全日本ジュニア王者の須本光希選手は9位となり表彰台には届きませんでした。SPは全てのジャンプをミスらしいミスなく跳び切り、3位と好位置につけます。フリーもまずは3アクセル+2トゥループを決め好調な滑り出しを見せましたが、2本目の3アクセルは着氷ミス。さらに3フリップも着氷が乱れます。後半に入っても着氷のミスが続き、最後までリズムを整えることができず、フリー9位、総合9位にとどまりました。
 ショートで良いスタートを切れただけに、フリーはもったいないとしか言えないですね。ただ、須本選手は2月の中旬の練習中に右足首を捻挫していて、今大会も痛み止めを飲んで臨んでいたとのことですから、その影響がジャンプの本数が多いフリーは如実に表れてしまったのでしょうね。彼本来の実力からすればメダルの可能性は十二分にあったと思いますが、SP後のインタビューでも3位という結果に驚きを示し、フリーに向けてもメダルへの意欲というよりは、来年の出場枠3を取ることに集中しているといった感じだったので、須本選手本人も自信が持てない中での試合だったのかなという気がしました。もっと素晴らしい演技ができる選手であるというのを知っているだけに今回は残念でしたが、怪我をしっかり治して、来季に向けてまた頑張ってほしいですね。

 全日本ジュニア2位の三宅星南選手は18位となりました。ショートは冒頭の3アクセルを決め、3+3も成功。後半の3ルッツは踏み切りのエッジが不正確とされわずかに減点を受けますが、大きなミスなく滑り切り、自己ベストの67.98点で10位につけます。フリーもまずは3アクセルでしたが、回転をコントロールできず転倒。続く3ルッツはショート同様に踏み切りが不正確に。さらに2本目の3アクセルはステップアウトとミスが続きます。後半に入り最初の3ルッツは踏み切りがロングエッジとなった上に転倒。3ループ、3フリップも着氷の乱れが重なります。終盤の3サルコウ、2アクセルは何とかこらえますが、ほとんどのジャンプでミスを犯してしまい、演技を終えた三宅選手は残念そうに肩を落としました。得点は106.68点でフリー24位、トータルではパーソナルベストを更新しましたが18位と大幅に順位を落としてしまいました。
 納得の内容となったショートから一転、フリーは転倒やこらえる着氷のジャンプが続き、演技全体の滑りとしても苦しくなってしまいましたね。結果的には自己ベスト更新となりましたが、まだ国際大会で思う存分自分の力を発揮し切れていないと思いますので、今後の伸びしろにぜひ期待したいですね。



《ペア》

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 優勝したのはジュニアGPファイナル銅メダル、ロシアのダリア・パブリュチェンコ&デニス・ホディキン組です。SPは得点源の3ツイスト初め、全ての要素をクリーンにこなしパーソナルベストで首位発進します。フリーは冒頭の3トゥループ+3トゥループのシークエンスジャンプこそミスが出てしまいましたが、続く3ツイストは完璧に成功。その後も全てのエレメンツで加点を引き出し、自己ベストの117.41点でフリーも1位、2位に10点以上の差をつける大差で完全優勝を果たしました。
 シーズン序盤から安定感のある演技でロシアジュニアのペアのエースとして好成績を収めてきたパブリュチェンコ&ホディキン組。今大会もミスは1つのみと初めての世界ジュニアとは思えない落ち着きぶりでしたね。まだ15歳と18歳という若いペアですが、将来のロシアペアのエース候補としてすでにそのポテンシャルの高さは証明済みですから、今後の躍進が今から楽しみです。世界ジュニア選手権優勝、おめでとうございました。

 2位も同じくロシアのポリーナ・コスチュコヴィッチ&ドミトリー・イアリン組。ショートは全てのエレメンツをマイナス要素なく演じ切り、自己ベストで初めて60点台に乗せ2位と好発進。フリーは冒頭で大技の4ツイストに挑みますが失敗。その後も転倒が3度という荒れた演技となりましたが、成功させた技では軒並み高い加点を積み重ね、自己ベストで3位、総合では2位に入りました。
 ショートとフリーの演技の完成度でギャップが出てしまいましたが、ジュニアながら4ツイストに挑戦するなど将来的な大器の予感も匂わせる内容だったのではないでしょうか。シーズン前半はジュニアGPのクロアチア大会で優勝しながらも2戦目のポーランド大会は崩れて6位となり、ファイナル進出は逃したコスチュコヴィッチ&イアリン組。今回もショートとフリーでバラつきがあり、安定感という課題は残りましたが、まだジュニア1季目で経験の浅いペアでもあるので、今季の経験を来季に活かしてほしいですね。

 3位もロシアのアナスタシア・ミーシナ&アレクサンドル・ガリアモフ組。ショートはスロー3ループの着氷で乱れがあり4位。フリーはサイドバイサイドの3サルコウで転倒する場面がありましたが、そのほかのエレメンツは高いレベルとクオリティーでまとめフリー2位、総合3位となりました。
 ショート、フリーともにミスはありましたが、ミスを連発しなかったことが銅メダルに繋がりましたね。昨シーズンまでは女性のミーシナ選手は別のパートナーとのペアでジュニアGPファイナルを制するなど結果を残していましたが、シーズン後にペアを解消、今季からガリアモフ選手と組むことに。そのためにシーズン序盤はジュニアGPへの参戦はありませんでしたが、世界ジュニアを懸けたロシアジュニア選手権でしっかり2位に入って切符を獲得し、この世界ジュニアでも確実に結果を出しました。元々実力のある二人と言えますから、ペア結成1季目でさっそく世界に名前をアピールして、2季目以降にさらなる躍進が期待できそうですね。

 以下、4位は中国の高誉萌(ガオ・ユーメン)&解众(ジー・ジョン)組、5位はアメリカのオードリー・ルー&ミーシャ・ミトロファノフ組、6位はイギリスのイヴリン・ウォルシュ&トレント・ミショー組、7位はドイツのタリサ・トマラ&ロベルト・クンケル組、8位はアメリカのサラ・フェン&トミー=ジョー・ナイマン組となっています。

 日本の三浦璃来&市橋翔哉組は10位となりました。SPは2ツイストで若干減点されましたが、そのほかの要素は全て加点を得て、自己ベストを3点以上更新し9位と健闘。フリーは2ツイストをレベル3で減点なくまとめ、ソロジャンプの3トゥループが2回転になるなどミスがいくつかあったものの、全体的には減点を最小限に抑えて自己ベストを5点以上上回り、フリー11位、総合10位で自己最高位をマークしました。
 細かなミスはありましたが、大崩れすることなく最初から最後まで自分たちのペースを保って演技できたのではないでしょうか。まだ世界のトップペアとの実力差はありますが、着実に進歩、成長しているという印象で、数少ない日本のペアの一角として今後も期待したいですね。



《アイスダンス》

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 アイスダンスを制したのはロシアのアナスタシア・スコプツォワ&キリル・アリョーシン組です。ショートは全てのエレメンツをクリーンに揃え、2位に4点差以上をつけてトップに立つと、フリーもステップ1つ以外は全てのエレメンツでレベル4を取り、自己ベストにはわずかに及ばなかったものの1位、総合1位で初制覇しました。
 今季はジュニアGPファイナルも優勝と順風満帆にシーズンを過ごしてきたスコプツォワ&アリョーシン組。今大会もライバルたちに隙を見せず、いつもどおりの安定した演技で念願の金メダルを射止めました。エレメンツのレベルの取りこぼしも非常に少なく、加点もしっかり取れていて、ほかのカップルとは一段階レベルの違う滑りを見せつけた形となりましたが、ロシアの場合は国内の争いもジュニア、シニアともに世界一厳しいですから、今大会の経験と結果を自信にして頑張ってほしいですね。世界ジュニア選手権優勝、おめでとうございました。

 2位はアメリカのクリスティーナ・カレイラ&アンソニー・ポノマレンコ組。SDはツイズルでまさかのミスがあり6位と出遅れ。しかしFDはほぼノーミスの演技で2位となり、総合2位と一気に追い上げ2年連続でメダルを獲得しました。
 実力者で安定感が持ち味のカレイラ&ポノマレンコ組にしては珍しくショートで大きなミスを犯してしまいましたが、フリーは自分たちらしさを取り戻して挽回しましたね。優勝も狙える力を持っているだけにもったいなかったですが、ショート6位から立て直せたという経験が二人にとって得がたい財産になったのではないでしょうか。

 3位はロシアのアリーナ・ウシャコワ&マキシム・ネクラソフ組。SDは目立ったミスなくそつのない演技でパーソナルベストの3位と好発進。FDはステップが1つレベル2なった以外は全てレベル4を揃え、自己ベストに近いスコアで3位、総合でも3位と初出場にして表彰台に立ちました。
 今シーズンはジュニアGPで初優勝を果たし、ファイナルにも初進出と一歩一歩成長し、成績を伸ばしてきたウシャコワ&ネクラソフ組。今大会もショート、フリーともに3位と危なげない演技で実力どおりの力を発揮したという印象ですね。優勝したスコプツォワ&アリョーシン組とともに、未来のロシアアイスダンス界をリードする存在として今後も注目ですね。

 以下、4位はカナダのマージョリー・ラジョワ&ザカリー・ラガ組、5位はロシアのソフィア・シェフチェンコ&イゴール・エレメンコ組、6位はアメリカのキャロライン・グリーン&ゴードン・グリーン組、7位もアメリカのクロエ・ルイス&ローガン・バイ組、8位はフランスのナターシャ・ラグージュ&コランティン・ライエ組です。

 日本の矢島榛乃&島崎大暉組はSD23位でFD進出はなりませんでした。パターンダンスではいくつか減点を取られる部分があり、ツイズルやリフトではレベル、加点ともに確実に獲得しましたが、23位にとどまりフリーには進めませんでした。
 今季は初めて全日本ジュニア王者となり、その時点では世界ジュニアへの派遣は決定していなかったものの、その後世界ジュニアに出場するために必要な最低技術点の条件をB級国際大会出場でクリアし、世界ジュニア初出場となりました。まだジュニアGPへの派遣もない若いペアですが、初めての大きな国際舞台が世界ジュニアという貴重な経験ができて、来季に向けて大きな財産になったと思いますから、ぜひ来季に活かしていってほしいですね。



 さて、世界ジュニアの記事は以上です。終わってみれば女子、男子、ペア、アイスダンス全てをロシアが制覇。これは1996年以来で、フィギュア大国ロシアの威厳を示した形となりました。とはいえ女子とアイスダンス以外は近年は決して他国に対して優位に立ってきたわけではなく、男子でロシア選手が優勝するのは2004年のアンドレイ・グリアゼフさん以来ですし、ペアも2009年のリュボーフィ・イリュシェチキナ&ノダリー・マイスラーゼ組以来なので、強化、育成の結果が徐々に4種目全体に渡って表れつつあるのかなという感じですね。来季もジュニアではロシア勢の活躍が見込まれますが、こうした育成の成果がシニアにどう繋がっていくのかというのも注目のしどころですね。
 一方、日本勢はメダルとしては女子の山下選手の1個のみとロシアを始めとした海外勢の壁に阻まれた形に。紀平選手や須本選手は本来の力を発揮できればもう少し上位に食い込めたのではないかという印象でしたが、来シーズンにこの悔しさをきっと活かしてくれると思いますから、決して無駄な経験にはならないのではないでしょうか。
 さて、次はシニアの世界選手権です。全選手にとって満足のいく試合となることを願っています。では。


:記事内の画像は全て、フィギュアスケート情報サイト「Golden Skate」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2018-03-19 23:27 | フィギュアスケート(大会関連)