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 「ソチ五輪・女子―アデリナ・ソトニコワ選手、ロシア女子初の五輪金メダル獲得(その1)」に引き続き、女子シングルの結果、内容について感想を書いていきます。

Olympic Winter Games 2014 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 8位となったのは、日本の鈴木明子選手です。

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 ショートはまず、得点源となる3トゥループ+3トゥループからでしたが、1つ目の3トゥループがダウングレード(1/2以上の回転不足)となり、ステップアウト。しかし、次の3ルッツに急遽2トゥループをつけることで連続ジャンプとし、何とかリカバリーしました。その後は安定してスピン、ジャンプをこなし、得意のステップシークエンスでは、全30選手中2人しか認定されなかったレベル4を獲得、鈴木選手らしい情熱的な滑りを見せました。得点は60.97点で8位発進。

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 フリーは3+3を組み込まず、確実なジャンプ構成で挑んだ鈴木選手。冒頭は3ルッツからの3連続ジャンプ、慎重さはありましたがしっかり決めました。続く2アクセル+3トゥループは、2+2になり、3ルッツでもミスが出てしまいました。後半も3フリップでの転倒、3ループでのステップアウトなど、複数ミスはありましたが、その中でも滑りを萎縮させることなく、鈴木選手らしい伸びやかなスケーティング、エモーショナルな表現力を存分に発揮。得点は125.35点、フリー8位で、トータルでも8位入賞となりました。
 年が明けてから左足に靴擦れができ、それを庇っているうちに右足にも同じような症状が出てしまったという鈴木選手。痛みが残り、万全の練習ができない中での五輪。ジャンプにはその影響がダイレクトに表れました。しかし、鈴木選手は「自分は元々ジャンパーじゃない」と割り切り、“音楽を表現する”という自分らしさを出し尽くすことに徹し、見事に笑顔で滑り切りました。
 いろんな紆余曲折がありながらも、ソチ五輪にたどり着き、最後まで自分らしいスケートを貫いた鈴木選手。浅田真央選手もそうでしたが、選手一人一人に自分らしさのかたちがあり、それぞれにとっての正しい道があるのだなと、鈴木選手の演技から改めて教えられました。
 3月の世界選手権の出場に関しては、足の状態を見てということでまだ断言はされていませんが、現役ラストの演技をぜひ日本で見られるといいなと願っています。オリンピック、お疲れさまでした。


 9位はアメリカの新星、ポリーナ・エドマンズ選手。

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 全米選手権で2位となり、一躍五輪代表となったシンデレラガール、エドマンズ選手。ショートプログラムはラテンセレクション。大技3ルッツ+3トゥループは2つ目のジャンプがアンダーローテッド(1/2以内の回転不足)という判定で若干減点されましたが、そのほかは3フリップ、2アクセルといったジャンプ、スピン、ステップでも落ち着いた演技を見せました。得点は61.04点、パーソナルベストで7位につけました。
 フリーはグリーグの「ペール・ギュント」。冒頭はショートでミスとなった3ルッツ+3トゥループでしたが、しっかり修正してクリーンに着氷。続く3フリップ+1ループ+3ループの3連続ジャンプも決めて、上々の滑り出し。足替えコンビネーションスピンがレベル1とはなったものの、2アクセルも難なく成功させて、前半をまとめます。ステップシークエンスを挟んだ後半、最初の3フリップは回転が足りず転倒してしまいましたが、その後は立て直してエレメンツを着実にこなしました。得点は122.21点でこちらも自己ベスト。五輪でショート、フリー、トータル全てで自己ベストを更新し、総合9位となりました。
 今回、私は初めてエドマンズ選手の演技を見たのですが、15歳と若いながらも背が高く手足も長いので、シニアのスケーターのなかでも見劣りしない、とても華のある選手だと感じました。ものすごいジャンパーという感じではありませんが、優雅で洗練された雰囲気を纏っている選手だと思うので、これからも自分らしさを大切に、ゆっくり伸びていってほしいですね。世界選手権も、楽しみにしています。


 10位に入ったのはフランスのマエ=ベレニス・メイテ選手。

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 ショートの冒頭は3トゥループ+3トゥループ、これを豪快かつ完璧に決めましたが、3ループで着氷を乱すミス。次の2アクセルはきっちり降りると、スピンを全てレベル4に揃えるなど、完璧ではない中でも演技をまとめました。得点は58.63点、先月の欧州選手権でマークした自己ベストに0.01点及ばず、メイテ選手も苦笑いでしたが、納得した様子でショート9位となりました。
 フリーはまず簡単な2アクセルから入って自分のリズムを作り、続く3サルコウ+3トゥループをクリーンに成功させて流れを引き寄せました。その後も次々とジャンプを着氷していき、唯一中盤の3ループで転倒がありましたが、それ以外に減点要素は無く、メイテ選手らしいパワフルで楽しい世界を、最後まで繰り広げました。得点は115.90点、自己ベストを更新し、総合10位で初の五輪を終えました。
 初めてのオリンピックで緊張もあったのではないかと想像しますが、そうした影響をほとんど感じさせない生き生きとした滑りができていました。1月の欧州選手権で自己最高の5位となりましたが、その調子の良さをうまく五輪にまで繋げましたね。ここ数シーズンで堅実に力をつけ、徐々にではありますが着実にスコアを上げてきているメイテ選手。ジャンプの安定感も増してきましたし、今後の活躍がますます楽しみになりました。世界選手権でも好演技ができることを祈っています。


 11位となったのはイタリアのヴァレンティーナ・マルケイ選手。

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 ショートは3サルコウ+3トゥループに挑みましたが、セカンドジャンプがダウングレード(1/2以上の回転不足)で大幅に減点。3ルッツでも少し乱れがあり、スピンの1つがレベル1と判定されるなど、エレメンツ的には精彩を欠いたマルケイ選手でしたが、ベテランならではの情感豊かな表現力で魅せました。得点は57.02点で12位発進となりました。
 フリーは3+3は入れず、完成度で勝負するプログラム。冒頭の2アクセル+3トゥループをしっかり着氷し成功させましたが、3ルッツでミス、3フリップはロングエッジ(踏み切り違反)判定。しかしその後はミスを引きずらず、前日レベル1とされたシットスピンも確実に回転しレベル4を獲得。終盤にもちょっとしたミスがあり、フィニッシュしたマルケイ選手は悔しさものぞかせましたが、大きな崩れのない演技でホッとしたような表情。得点は116.31点で、団体戦フリーでマークしたパーソナルベストを上回り、総合11位にアップしました。
 マルケイ選手も団体戦に出場した身とあって、調整には難しさもあったのではないかと思いますが、団体戦からしっかりと調子を上げましたね。順位など関係なく、見惚れてしまうような演技でした。世界選手権も楽しみにしています。


 12位には日本の村上佳菜子選手が入りました。

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 ショートはまず、3トゥループ+3トゥループでしたが、これを完璧に決めて勢いをつけます。スピン2つを挟んで、後半に2つのジャンプを固めましたが、1つ目の3フリップが珍しく1回転にすっぽ抜けるミス。2アクセルは確実に降りましたが、見せ場のステップシークエンスは少し慎重な滑り。演技を終えた村上選手は、悔しさを露わにしました。得点は55.60点となり、15位でフリーを迎えることに。

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 翌日のフリー。3トゥループ+3トゥループはショート同様、パーフェクトに決めて高い加点を得ます。しかし続く3ルッツは着氷でバランスを崩し、大きなマイナス。3ループもダブルとなるなどミスが重なります。ステップシークエンスは大人しめな動きでレベル2の判定。後半はエレメンツを一つ一つ丁寧にこなしていき、うまく演技をまとめましたが、本来の出来とはならず。得点は115.38点、最終的には順位を上げて12位となりました。
 村上選手にとって初めてのオリンピックということで、独特の雰囲気にのまれてしまったようですね。競技後のインタビューでは演技について、「記憶が無い」と話しましたが、ショートもフリーも、良い時より動きにぎこちなさがあり、プログラムに身が入っていないのかなという印象でした。全日本選手権、四大陸選手権では本当にキレキレの迫力ある演技を見せていたので、このままいけば大丈夫そうだなと思ったのですが、オリンピックはやはり全くの別物なのですね。
 インタビューで、4年後の五輪についても問われた村上選手は、「行きたいといえば行きたいけど、出たくないといえば出たくない」と語りました。五輪の怖さというものを体感して恐れが生まれてしまったのかもしれませんが、一方で、「五輪で誰にも負けたくない気持ちが出てきた」とも口にしていて、複雑な感情がうかがえました。以前から競技に対する執着心があまり無さそうな村上選手ですが、とりあえずは1年続けてまた考えたいとのこと。私個人としては、日本女子をリードする存在になってほしい、それができる器の選手と思っていますが、4年という長いスパンで気負ったりせず、1年1年の積み重ねという気持ちで、村上選手らしく歩んでいってほしいですね。
 3月の世界選手権は今シーズン最後の競技会ですが、村上選手を長年指導してきた山田満知子コーチが、今季を持って第一線を退くとのこと。2人で共に臨む最後の試合になるであろう世界選手権ですから、山田コーチのためにも、そこで全てを出し切ってほしいなと思います。


 13位となったのは、カナダのケイトリン・オズモンド選手です。

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 ショートは冒頭に3トゥループ+3トゥループを組み込んでいましたが、セカンドジャンプが2回転になるミス。3フリップは成功させましたが、2アクセルで珍しくステップアウト。最後のスピンがレベル1となる取りこぼしもあり、オズモンド選手らしい元気いっぱいの滑りは見せたものの、ジャンプミスが目立つショートとなりました。得点は56.18点で13位発進に。
 フリーは最初から3+3には挑まず、3フリップ+2トゥループを安全に確実に決めます。続く2アクセル+3トゥループも高さのあるジャンプ。3ルッツ、3サルコウと、前半4つのジャンプ要素は全て予定どおりにこなしました。が、後半1発目の3フリップがダブルになると、3トゥループで転倒。その後は立て直しましたが、後半のジャンプの失敗が響き、得点は112.80点。フリーも13位で、順位を上げることはできませんでした。
 オズモンド選手も団体戦に出場、しかもショートとフリー両方に出場したという選手ですが、得点だけを見ると、団体戦より調子を落としてしまったのかなという印象ですね。ただ、フリーは団体戦よりもスコアは高かったわけなので、一概には言えないですが。演技自体はジャンプのミスが複数あった中で、いつもより動きが大人しいかなと感じた部分もありましたが、オズモンド選手の“色”はうまく出せていたんじゃないかと思います。世界選手権ではもっとのびのびと、良い意味で肩の力の抜けた演技が見られることを願っています。


 14位は中国の李子君(リ・ジジュン)選手。

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 ショートはまず3フリップ+3トゥループからでしたが、2つ目のジャンプがアンダーローテッド(1/2以内の回転不足)という判定。3ルッツもロングエッジ(踏み切り違反)となり、減点が重なってしまいます。演技後半は無難にまとめましたが、得点は57.55点、11位となりました。
 フリーも3フリップ+3トゥループに挑戦したものの、こちらも3トゥループが回転不足となり、クリーンな成功とはならず。しかし、続く2アクセル+3トゥループはしっかり着氷、3ルッツはやはりロングエッジ判定でしたが、最後まで大きなミスなく、プログラムを演じ切りました。得点は110.75点、細かなミスの積み重ねが影響し、総合14位に終わりました。
 得点的には自己ベストに大きく及びませんでしたが、演技の内容からすると、ちょっと厳しめの採点という感じもします。全体的にいつもほどの“生き生き感”はなかったかもしれませんが、破綻のない演技はできていたので、初めてのオリンピックでやるべきことはやれたのだという自信を持って、今後も頑張っていってほしいですね。世界選手権も楽しみにしています。



 ということで、女子シングルについての記事は以上です。そして、これで全てのソチ五輪関連の記事もラストとなりました。女子は、ダークホースのソトニコワ選手の優勝という劇的な結末で幕を閉じましたが、それ以外の選手たちにもさまざまなドラマがあり、見応えのあるオリンピックでした。女子フィギュア界は、来シーズンからはロシア勢が席巻することになるだろうと予想されていますが、果たしてどうなっていくでしょうか。ワクワクドキドキです。もちろん、その前にシーズン最後の大会、世界選手権が待っていますから、まずはそちらに注目ですね。
 選手の皆さん、お疲れさまでした。素敵な演技をありがとうございました。


:女子シングルメダリスト3選手のスリーショット写真は、AFPBB Newsが2014年2月22日の12:52に配信した記事「女子フィギュアスケートのメダル授与式、ソチ五輪」から、鈴木選手のSPの写真、村上選手のSPの写真は、毎日新聞のニュースサイト内の写真特集「ソチ五輪 フィギュアスケート女子」から、鈴木選手のフリーの写真、エドマンズ選手の写真、メイテ選手の写真、マルケイ選手の写真、村上選手のフリーの写真、オズモンド選手の写真、李選手の写真は、エンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から引用させていただきました。


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by hitsujigusa | 2014-02-27 02:31 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)