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 GPシリーズ17/18、2戦目のスケートカナダがカナダのレジャイナにて行われました。前週のロステレコム杯と比べると男女はかなり荒れた試合内容となり、ショートからフリーへの順位の変動の幅も大きく、いろんな意味で驚きや意外性に満ちた大会でしたね。この記事ではまず女子とアイスダンスについてお伝えします。
 女子を制したの地元カナダのケイトリン・オズモンド選手。2位に大差をつけての貫録勝ちでした。その2位はロシアの若手マリア・ソツコワ選手、3位はアメリカのベテラン、アシュリー・ワグナー選手となっています。
 アイスダンスはこちらもカナダのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組が圧勝し、昨季からの連勝記録を9に伸ばしました。

ISU GP Skate Canada International 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 女子のチャンピオンは世界選手権2017銀メダルのケイトリン・オズモンド選手です。

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 SPは昨季から継続の「パリの空の下/ミロール」。まずは3フリップ+3トゥループを見事な流れで成功させ1.7点の高い加点を得ると、続く3ルッツも美しい跳躍とランディングで同じく1.7点の加点を得ます。後半の2アクセルも難なくこなし、スピンは全てレベル4とほぼノーミスの演技で、観客から喝采を浴びました。得点は自己ベストの76.06点で2位に7点以上の差をつけての首位発進となります。
 フリーは「映画『ブラック・スワン』より」。冒頭は前日パーフェクトに決めた3+3からでしたが、勢いあまってステップアウトします。しかし直後の2アクセル+3トゥループは完璧に下りて1.7点の高い加点がつきます。さらに3ルッツも加点1.7点と上々の立ち上がりとしました。レベル4のスピン2つを挟んで後半、最初の3ループをこちらもパーフェクトに着氷しますが、次の3フリップがパンクして2回転に。ですが、3+2+2はまとめます。終盤の2アクセルは疲れが脚に来たのか転倒となりますが、妖艶でダイナミックな黒鳥を躍動感たっぷりに演じ切り、136.85点でフリーも1位、総合1位で、シニアデビューの2012年のスケートカナダで優勝して以来のGP2勝目となりました。
 SPは2季連続とあってさすがの完成度と安定感でしたね。フリーはちょこちょこジャンプミスがあり、全体をまとめるという点において課題は残りましたが、“黒鳥”の妖しい雰囲気とオズモンド選手のどこか影を帯びた魅力がマッチしていて、今から完成が楽しみだなと感じました。
 GP2勝目というのが意外な気もしましたが、大怪我を経て復帰して、すぐには結果が出ず、それでも根気強く地道な練習に取り組み続け、ようやく昨シーズン本来の輝きを取り戻して、そうしてたどり着いた2度目のスケートカナダ優勝というのは、勢いのみで優勝した5年前とは重みも価値も何倍も違うのではないでしょうか。これで今季は出場した3試合全てで総合得点200点を超え、オリンピックのメダルに向けて理想的な形でシーズンを送っているオズモンド選手。次戦は3週間後のフランス大会です。スケートカナダ優勝、おめでとうございました。


 銀メダルを獲得したのはロシアのマリア・ソツコワ選手です。

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 SPは「白鳥の湖」。冒頭の3ルッツ+3トゥループをしっかり回り切って着氷すると、後半に組み込んだ3フリップも成功。最後の2アクセルはアンダーローテーション(軽度の回転不足)となりますが、スピンは全てレベル4とそつなく揃え、66.10点で3位と好位置につけます。
 フリーはドビュッシーの「月の光」。冒頭の3+3は大きなミスなく跳び終えますが、ファーストジャンプがアンダーローテーションと判定されます。続く3フリップは余裕を持った着氷で加点1の高評価。後半に5つのジャンプ要素を固め、最初の3ループは完璧に成功。3+1+3はこちらもファーストジャンプが回転不足に。続いて3ルッツ、2アクセル+2トゥループと回り切って着氷。最後の2アクセルは回転不足となりますが、大きな取りこぼしなく演技をまとめ、126.42点でフリー2位、総合2位と順位を上げました。
 今季は10月初旬のフィンランディアトロフィーでシーズン初戦を迎え、さっそく200点台をマークして上々のスタートを切ったソツコワ選手。今大会はその時よりは10点以上スコアは下がってしまいましたが、大会によって回転不足の判定の傾向というのも変わってくるのであまり気にすることはないのかなと思います。ソツコワ選手の場合、アンダーローテーションが多く、転倒やパンクといった大きなミスは少ないので、向き合う課題としては回転不足の修正が主になるでしょうね。もちろんプログラムのブラッシュアップというのもありますが、シニア1季目だった昨シーズンと比べても表現面は確実に進化しているように見受けられるので、さらなるメリハリだったり目線の使い方だったり、細かい部分も改善されるとさらに一皮も二皮も剥けるのかなと思います。


 3位に入ったのはアメリカのベテラン、アシュリー・ワグナー選手です。

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 SPは2季前に使用したのと同じ「Hip Hip Chin Chin」。冒頭の3フリップ+3トゥループは着氷こそしましたが、セカンドジャンプが回転不足で減点されます。後半最初の2アクセルはクリーンに成功。しかし直後の3ループはこちらも回転不足での着氷となり、61.57点とスコアは伸びず、7位と出遅れます。
 フリーは2季前、3季前に2季連続で使用した「映画『ムーラン・ルージュ』より」。まずは得意の2アクセルを確実に決めると、続いてショートで回転不足と判定された3+3でしたが、再び回転不足となってしまいます。続く2アクセル+2トゥループは難なく着氷。後半は3ループからでしたが、こちらも回転不足に。3フリップはきれいに下りますが、次の3+2はやはり回転が足りず。さらに最後の3ルッツは踏み切りのエッジエラーで減点と、転倒やパンクといった分かりやすい失敗はないものの、全体的に細かいミスが目立ち、122.37点とスコアは伸び切らず。しかしフリー4位、総合3位と表彰台に食い込みました。
 全体的に女子が低調だったというのもあって何とか3位には入れましたが、本来のワグナー選手からするとまだまだ本調子ではないなという印象でしたね。ただ、その中でも今の全力を尽くし、大崩れせずにまとめられるのは経験豊かなワグナー選手ならではだと感じましたし、プログラムに関しては以前のプログラムの再演ということですでに滑り慣れた感はあるので安心して見られ、次戦に期待が持てる内容だったかなと思います。アメリカ女子も五輪代表争いは混戦模様で、世界選手権メダリスト経験者のワグナー選手といえどもどうなるかはわからない状況ですが、危うく代表の切符を逃しかけた4年前と最も違うのはメンタル面だと思うので、あと乗り越えるべきはジャンプの回転不足のみですね。次戦のスケートアメリカでどれだけそのあたりが修正されているかに注目したいと思います。


 惜しくも表彰台まであと一歩の4位だったのはアメリカのコートニー・ヒックス選手です。

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 SPは「ノクターン 映画『ラ・カリファ』より」。冒頭は大技の3フリップ+3ループ、ファーストジャンプとセカンドジャンプのあいだにオーバーターンが入ってしまいますが回転不足なく跳び切ります。後半に組み込んだ3ルッツ、2アクセルはクリーンにこなし、自己ベストに約1点と迫る64.06点で4位と好発進します。
 フリーは「アメイジング・グレイス」。まずはステップシークエンスから幕を開ける変わった構成で、続いて得点源の3フリップ+3ループでしたがセカンドジャンプでステップアウトし減点を受けます。次の2アクセルは回転不足の判定。後半に5つのジャンプ要素を固め、その最初の2アクセル+2トゥループはしっかり着氷。3ルッツ+1ループ+3サルコウはファーストジャンプが2回転になった上、最後の3サルコウはアンダーローテーションに。以降の3つの単独ジャンプは全て減点なく跳び終え、フィニッシュしたヒックス選手は手ごたえを得たように笑みを浮かべました。得点は自己ベストまで0.79点の118.51点でフリー5位、総合4位となりました。
 今まで2度GPの表彰台に立っている実力者のヒックス選手。今大会もその時のような比較的安定した演技で3位のワグナー選手に迫りましたが、約1点差で4位。ヒックス選手はGPのエントリーはこの1試合のみなので、この大会で表彰台に乗れればより大きなアピールになったと思うので惜しかったですね。ただ、ヒックス選手らしさ、強みというのはショート、フリーともによく出ていて、特に3フリップ+3ループというほかの選手が挑まない高難度のコンビネーションジャンプを武器として持っていることは大きいので、このジャンプの安定がオリンピック代表に向けての鍵になるのかなという気がしますね。


 5位は今季シニアデビュー、日本の本田真凛選手です。

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 SPは「The Giving」。冒頭の3ルッツ+3トゥループは3ルッツの着氷で若干バランスを崩し、強引に3トゥループを付けますがアンダーローテーションとなり転倒します。続くコンビネーションスピンは細かなミスでレベル2となった上にGOEでも減点。さらに中盤のフライングキャメルスピンもレベル1と取りこぼしが重なります。後半最初の3ループは完璧に成功させますが、最後の2アクセルはタイミングが合わなかったのか1回転になり規定違反で無得点に。ミス連発で52.60点と自己べストより16点以上も低い得点で10位に沈みます。

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 フリーは「トゥーランドット」。まずは単独の3ルッツをきっちり着氷して良い流れを作ると、続く3フリップ+3トゥループも回り切って成功させます。スピン2つとステップシークエンスを挟んだ後半、2アクセル+3トゥループはクリーンに下りたかに見えましたが、セカンドジャンプがアンダーローテーションの判定。続く3フリップも回転が足りないと判定されます。ですが、3サルコウからの3連続ジャンプ、3ループ、2アクセルと終盤のジャンプはノーミスでクリアし、前日ミスが続いたスピンも全てレベル4とまとめ、125.64点でフリー3位、総合5位と大きく順位を上げました。
 練習から好調と伝えられていた中でショートはまさかの演技。ジャンプミスはともかくとして、普段安定しているスピンでもぽろぽろミスを犯してしまったのは、それだけ演技中に動揺してしまったのかなという印象ですね。ただ、そこから1日で立て直したフリーは見事で、だからこそ余計にショートはもったいなかったと言わざるを得ないですね。本田選手のミスの原因について師事する濱田美栄コーチは練習不足を挙げていて、元々本田選手は地道にコツコツ練習するというよりは気分屋で感覚に頼るタイプの選手として知られていますが、その姿勢ではシニアにおいてはある程度良いところまで行けても、世界の一流を極めるところまでは行けないのではないかなと思います。天才肌で非凡な才能の持ち主であることは間違いないので、今後シニアのトップレベルで戦っていくために、感覚やフィーリングももちろん大切にしつつ、地道な練習というのも重要視してほしいですね。
 本田選手の次戦は翌週の中国杯。2週連続ということで調整は非常に難しいと思いますが、今大会の失敗を活かして本田選手らしい演技ができるよう頑張ってほしいと思います。


 6位は同じく日本の本郷理華選手です。

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 SPは昨季から継続の「カルミナ・ブラーナ」。まずは昨季より難度を上げた3フリップ+3トゥループ、これはセカンドジャンプがアンダーローテーションとなり減点されます。ですが、後半に組み込んだ3ルッツ、2アクセルは両方とも片手を上げた難しい跳び方でクリーンに成功させ、ステップシークエンス、スピンも目立ったミスなくまとめ、61.60点で6位につけます。

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 フリーは「映画『フリーダ』より」。冒頭の3+3はショートと同じくアンダーローテーションになり減点を受けます。続く得意の3サルコウは片手を上げた空中姿勢で加点を引き出します。次いで3ルッツは回転不足の上に着氷も乱れます。後半は得点源の2アクセル+3トゥループ+2トゥループを大きなミスなくスムーズに繋げますが、セカンドジャンプが回転不足。さらに3ループ、3+2とアンダーローテーションのジャンプが続きます。最後の2アクセルは無難に下り、最後までエネルギッシュにスピード感溢れる演技を披露し、滑り終えた本郷選手は納得したようなほっとしたような笑顔を見せましたが、得点は114.74点と伸び悩み、フリーも6位、総合6位で大会を終えました。
 ショート、フリーともに細かいミスが多々あり、スコア的には平凡な数字にとどまりましたが、実際の演技内容は本郷選手らしい躍動感、スケール感に満ちていて、得点以上の好印象を与えるものだったのではないかと思います。ショートは2季連続ということでよく滑り込まれていて音楽と体の動きもマッチしていますし、フリーもメキシコの女性画家フリーダ・カーロの人生を描いた作品を、全身で情熱的に、時に重厚に演じていて、この時期にしては思った以上にプログラムにフィットしている感じでしたね。回転不足を多く取られたことによる悔しさはあると思いますが、9月のオンドレイネペラトロフィー、今大会と好演技を続けているのは間違いないので、今までどおりの本郷選手のペースで調整していってほしいですね。本郷選手の次戦は母国開催のNHK杯です。



 ここからはアイスダンスです。

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 優勝は世界チャンピオン、カナダのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組です。SDは「悪魔を憐れむ歌/ホテル・カリフォルニア/Oye Como Va」。全てのエレメンツがレベル4というGP初戦とは思えない完成度の高さで他を圧倒し、自身が保持していた世界最高得点を更新する82.68点を叩き出し首位に立ちます。フリーは「映画『ムーラン・ルージュ』より」で、こちらはステップ以外はレベル4というやはり高いレベル、高いクオリティーにまとめ上げ、自己ベストまで0.02点と迫るハイスコアで1位、トータルでは世界最高得点をマークし、圧勝しました。
 競技復帰した昨シーズン、出場した全ての大会で優勝と圧巻の快進撃を見せたヴァーチュー&モイア組ですが、今季になってもその流れは変わらず続いているようです。何といってもほかのカップルにつけ入る隙を1ミリも与えない演技で、無敵状態と言っても過言ではないですが、そうしたプレッシャーをも滑る力に変えているような気がしますね。そんなヴァーチュー&モイア組の次戦はNHK杯。世界最高得点の更新も期待できますから、楽しみですね。スケートカナダ優勝、おめでとうございました。
 2位も同じくカナダのケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組です。SDは「Tango/Do You Only Wanna Dance」。ステップ以外はレベル4というまとまった演技でパーソナルベストとなる77.47点をマークし2位発進。FDは「Je Suis Malade」。冒頭のステップ以外全てレベル4という質の高い演技を見せますが、リフトでの時間超過による減点1があり自己ベストには約1点及ばず3位、しかし総合では2位とショートのアドバンテージが活きた形となりました。
 GP初戦からトータル190点台に乗せる理想的なシーズンのスタートと言えますね。シーズン初戦のオータムクラシックでは1位のヴァーチュー&モイア組に大差をつけられての2位でしたから、その時と比べるとしっかり調整をしてピーキングしてきたなというのが伝わる内容でした。オリンピックでメダルを争うためには確実に190点を軽く超えるくらいのスコアでなくてはいけないでしょうから、まずGP初戦でこの得点と評価をもらえたことは良い流れだと思いますね。
 3位はアメリカのマディソン・ハベル&ザカリー・ドノヒュー組。ショートは「Le Serpent/Cuando Calienta/Sambando」で、全てのエレメンツをそつなくこなすほぼノーミスの演技でしたが、わずかに演技時間を超過したことによって1点減点されパーソナルベストに0.45点届かず3位。FDは「Across the Sky/Caught Out in the Rain」。こちらもほぼ完璧な演技で自己ベストをおよそ5点も更新し2位、総合でも自己ベストをマークし3位となりました。
 シングルやペアにおけるジャンプのように、成功不成功が明確に分かる技の少ないアイスダンスにとって、自己ベストを大幅に更新するというのはあまりないことなので、ハベル&ドノヒュー組が一気に5点近くもフリーのパーソナルベストを塗り替えたというのは少し驚きですし、これによってアイスダンス界の勢力図にも多かれ少なかれ影響を与えそうだなという感じがします。目下の関心としてはハベル&ドノヒュー組が今まで5組しか達成していないトータル190点超えに達するかどうかというところで、次戦のNHK杯が非常に楽しみになりましたね。



 これでこの記事は終了ですが、男子&ペアに続きます。しばし記事アップまでお待ちください。


:女子メダリスト3選手のスリーショット画像は、カナダのフィギュアスケート団体「Skate Canada」が2017年10月29日に配信した記事「Triple gold for Canada at Skate Canada International」から、オズモンド選手の画像は、イギリスの通信社ロイターの公式ニュースサイトが2017年10月29日に配信した記事「Figure skating: Osmond overcomes stumbles to take gold at Skate Canada」から、ソツコワ選手、ワグナー選手、ヒックス選手の画像は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、本田選手のSPの画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、本田選手のフリーの画像、本郷選手の画像、アイスダンスメダリスト3組の画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。

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スケートカナダ2017・男子&ペア―宇野昌磨選手、総合300点超えで圧勝 2017年11月3日

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by hitsujigusa | 2017-11-01 00:55 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)