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 グランプリシリーズ第4戦、NHK杯2017が大阪にて行われました。この記事では女子とペアについてお伝えします。
 女子の優勝者は世界女王のエフゲニア・メドベデワ選手。彼女にしては珍しく転倒という大きな失敗があり満足のいく出来とはいきませんでしたが、それでも2位に大差をつけてGP7勝目を上げました(ファイナルを含む)。そして2位には元世界女王、イタリアのカロリーナ・コストナー選手、3位にはロシアの新星ポリーナ・ツルスカヤ選手が入りました。
 一方、ペアはこちらも世界王者の隋文静(スイ・ウェンジン)&韓聰(ハン・ツォン)組がフリーで世界歴代1位の得点をマークし、圧勝しました。

ISU GP NHK Trophy 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 女子の覇者となったのはロシアのエフゲニア・メドベデワ選手です。

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 全てのジャンプを後半に跳ぶSP。まずはスピン、ステップシークエンスをいつもどおり丁寧にこなしてレベル4を獲得すると、得点源の3フリップ+3トゥループも完璧で1.6点の加点。さらに3ループを難なく決め、ロシア大会のフリーで転倒のあった2アクセルは多少慎重に入りましたが確実に成功。最後のスピン2つもしっかりレベル4を揃え、自己ベストに迫る79.99点で断トツの発進となりました。
 フリー冒頭は3フリップ+3トゥループからでしたが、3フリップで転倒するまさかのミス。若干苦手としている3ルッツは着氷が乱れ、思いがけない失敗が相次ぎます。スピンとステップシークエンスはノーミスでクリアし後半、最初の3フリップは急遽3トゥループを付けて冒頭のミスをリカバリー。3ループ、2アクセル+2トゥループ+2トゥループと問題なく着氷し、3サルコウ+3トゥループも成功。最後の2アクセルも下りて後半はメドベデワ選手らしさを存分に見せつけましたが、フィニッシュでは顔をこわばらせました。それでも得点は144.40点でフリー1位、総合1位で、ロシア大会に続きGP2連勝としました。
 今大会はフリーで転倒があったメドベデワ選手。GP初戦のロステレコム杯のフリーでも最後の2アクセルで転倒したのですが、その時は最も簡単な2アクセルでの転倒ということもあって思わず本人が笑みをこぼしてしまうくらい、ミスもご愛嬌といった感じの失敗の形でした。ただ、今回は演技冒頭の3+3での転倒ということで、演技が終わってもメドベデワ選手の表情は硬く、自分に厳しい彼女だからこそ許せないミスだったのではないかなと思います。今大会メドベデワ選手は両ふくらはぎにテーピングをしていて、多少なりとも違和感や痛みがあったことが想像できますが、その影響なのか2大会連続で転倒が続いていることは少し心配ですね。ただ、フリー後半では3フリップに3トゥループを付けることで見事にリカバリーしていて、転んでもただでは起きない姿からは今までとは違う形でメドベデワ選手の強さを改めて感じました。
 昨シーズンとは異なる歩み方でシーズン序盤を送っているメドベデワ選手。完璧主義者の彼女のことですから、今大会の失敗をきっちり分析して修正してくると思いますし、メンタル面での強靭さは相変わらず際立っていますので、次戦のファイナルでは納得のいく演技ができることを願っています。NHK杯優勝、おめでとうございました。


 2位はイタリアの大ベテラン、カロリーナ・コストナー選手です。

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 SP冒頭は得点源の3トゥループ+3トゥループ、セカンドジャンプの着氷でバランスを崩しかけますがこらえます。次いで3ループはクリーンに成功。後半の2アクセルも問題なくこなし、ステップシークエンス、スピンは全てレベル4と質の高いエレメンツを揃え、シーズンベストに極めて近いスコアで2位と好発進します。
 フリーは3+3は回避した構成で臨み、最初は3+2を確実に成功。単独の3フリップ、3ループもしっかり下り、それぞれのジャンプで加点1以上を稼ぎます。後半はまず3トゥループからでしたが、これがパンクして2回転に。2アクセル+1ループ+3サルコウは最後のジャンプまでスムーズに繋げたもののこらえきれず転倒してしまいます。単独の2アクセルはきれいに着氷。最後の3+2も難なく決めましたが、最後に跳んだ2トゥループは3回目だったため無得点扱いに。ステップシークエンス、スピンはショートに続き全てレベル4で、成功させたエレメンツではほとんど1点以上の加点を獲得し、137.67点でフリー3位、総合2位となり、2011年以来となるファイナル進出を引き寄せました。
 フリーでは細々としたミスはあったのですが、それを忘れさせる優雅さ、余裕感はさすがでしたね。今大会も演技構成点は非常に高く、フリーではメドベデワ選手を上回りました。両選手とも1度の転倒という点では共通しているにもかかわらずコストナー選手の方が高い評価を得ているということで、ジャンプ構成の難度は低めとはいえ、やはりオリンピックではいろんな意味で怖い存在になるなと思い知らされました。さまざまな紆余曲折を経て現在に至っているからこその、豊富な経験に裏打ちされた落ち着き、佇まいというのは、若い選手たちにはどうしても真似できないところであり、その長いキャリアが最終的にどういった形で花開くのか、ますますオリンピックでのコストナー選手が楽しみになりましたね。
 もちろんその前にファイナルや欧州選手権がありますから、まずは日本開催のファイナルでまたコストナー選手らしい演技が見られることを楽しみにしています。


 3位は今季シニアデビュー、ロシアのポリーナ・ツルスカヤ選手です。

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 SPは「テレビドラマ「ゲーム・オブ・スローン」より」。冒頭の3ルッツ+3トゥループは高く余裕のある跳躍で1.2点の高い加点。後半に3ループと2アクセルを組み込み、どちらもクリーンに成功。スピンは全てレベル4を獲得し、70.04点で3位と好位置につけます。
 フリーは「ノクターン第1番/Song for the Little Sparrow」。まずはショートで完璧に決めた3ルッツ+3トゥループ、これを再びクリーンに着氷させると、続く3フリップも成功で、両方とも1.4点の加点を得ます。後半に5つのジャンプ要素を固め、2アクセル+3トゥループ+2トゥループの3連続ジャンプをきれいに着氷。さらに3ルッツ、3+2、3ループ、2アクセルと全てのジャンプをクリーンに跳び切り、ステップシークエンス、スピンも全てレベル4でまとめ、今までの自己ベストを約11点更新しフリー2位、総合では3位とシニアデビュー戦にして見事に表彰台を射止めました。
 ショート、フリーともにノーミスというルーキーらしからぬ冷静さと安定感が際立ったツルスカヤ選手。15/16シーズンは出場したジュニアの全試合を制し、世界ジュニア選手権も圧倒的な女王候補として乗り込んだものの、アクシデント的な怪我によってSP直前に棄権。昨シーズンもジュニアグランプリでは2連勝したものの、ファイナルはまたもや怪我で欠場。世界ジュニアには出場したものの振るわず10位と、一時期の絶好調だった時と比べると成績は下降気味で、正直個人的にはロシアのオリンピック代表候補としてはあまり注目していなかったのですが、今大会の演技を見る限り快進撃を見せていた頃の調子は戻っているようですね。シニア初戦で210点というスコアが素晴らしいのはもちろん、内容的にも全体を通してフィジカルもメンタルも緻密にコントロールされている感じで、驚かされました。ショート、フリー、トータルとパーソナルベストだったにもかかわらずキス&クライではニコリともせず、さらなる高みを見ているというような表情が印象に残りました。
 今回のような演技を次戦のアメリカ大会でも見せられれば、オリンピック代表に向けてかなりのアピールとなると思いますから、今大会以上に注目したいですね。


 4位はアメリカのベテラン、長洲未来選手です。

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 SP冒頭は今季から取り入れている大技3アクセル、回転は充分でしたが両足着氷で減点を受けます。続く3フリップ+3トゥループはクリーンに下りたかに見えましたが回転不足の判定。後半の3ルッツも回転がわずかに足りず。柔軟性を活かした回転の速いスピンは全てレベル4かつ高い加点を得ましたが、細かなジャンプミスが響き65.17点と得点は伸び切らず、それでも5位とメダルを狙える位置につけます。
 フリーもまずは3アクセルからでしたが、これはアンダーローテーション(軽度の回転不足)で減点されます。しかし直後の3+3はクリーンに成功。さらに3サルコウも着氷と挽回します。後半も最初の2アクセルからの3連続ジャンプを成功させると、前日ミスがあった3ルッツは踏み切りも着氷もクリーンにまとめ、残り2つのジャンプも予定どおり。3アクセル以外はほぼノーミスの演技で、129.29点でフリー4位、総合4位と順位を一つ上げました。
 今大会も果敢に3アクセルに挑んだ長洲選手。ショートは回り切ったものの両足着氷、フリーは回転不足と完璧な形での成功はありませんでしたが、今シーズンの長洲選手の3アクセルを見ているとパンクや転倒といった失敗はほぼなく、いつも惜しい形でのミスなので本当に安定しているなと思います。また、フリーは3アクセル以外の回転不足は一つもなく、キス&クライで得点が出た瞬間の長洲選手の満面の笑みが物語っているように、常にアンダーローテーションが課題となっている彼女にとっては、前のロステレコム杯と比べると、ある程度達成感のある試合だったのではないでしょうか。
 アメリカ女子の五輪代表争いは混戦模様で、誰と誰と誰が3枠を埋めるのかは現時点でも予想がつかないのですが、その中でほかの選手と差をつけるという意味で3アクセルを持っている長洲選手は強いと思いますね。もちろん3アクセルはもろ刃の剣でリスクの高い技でもありますが、3アクセルを得たことによって今まで以上にタフな選手になっているような気がしますし、自分にしかない武器を持っているという自信が演技全体にも好影響を及ぼしているのは間違いないと思うので、このまま攻めの姿勢で雌雄を決する場となる全米選手権に向かっていってほしいですね。


 5位は全日本女王の宮原知子選手です。

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 SPは「映画『SAYURI』より」。冒頭は得点源の3ルッツ+3トゥループからでしたが、3ルッツが回転不足で高さも足りなかったためセカンドジャンプは2回転にとどめます。続く2つのスピンはしっかりとレベル4を獲得。後半に入り最初の3ループを成功させると、最後の2アクセルも難なく下り、ステップシークエンスはレベル3でしたが、得意のレイバックスピンはレベル4に加え高い加点を得て、65.05点で6位につけます。

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 フリーは「蝶々夫人」。まずは得意の3ループをクリーンに下りて流れを作ると、ショートで跳べなかった3ルッツ+3トゥループはセカンドジャンプが回転不足となったもののしっかり着氷。若干苦手としている3フリップはパンクして2回転となります。スピンとステップシークエンスを挟んで後半、3ルッツからの3連続ジャンプは最後が多少詰まりますが回転不足なく成功。続いて2アクセル+3トゥループの予定でしたが、2アクセルが回転不足となり単独に。さらに3サルコウはパンクして2回転にとミスが相次ぎます。しかし最後の2アクセルに急遽3トゥループを付けて完璧に成功。演技を終えた宮原選手は安堵したように微笑みました。得点は126.75点でフリー6位、総合5位で復帰戦を締めくくりました。
 昨年末の全日本選手権以来の試合となった宮原選手。今年の2月に左股関節の疲労骨折が判明し、出場を目指した世界選手権も欠場。今シーズンに入ってからも体調不良や新たな軽い故障が発生し、復帰戦になる予定だったフィンランディアトロフィーの出場を見送るなど状態が心配されていましたが、個人的には想像よりも本調子に近づいているなという印象でほっとしました。コーチやトレーナーの説明によると本格的なジャンプ練習を始めたのは1か月ほど前で、NHK杯に実際に出場するかどうかも決めかねていたそうですが、直前の血液検査の結果が正常の数値に戻っていたことが決め手となり、出場を決断したようですね。今回の演技はミスこそありましたが、ギリギリまで欠場も視野に入れていたとは思えないほどの完成度で、ジャンプミスの内容もそこまで深刻なものではないので、あとはプログラム全体を通して滑る体力や実戦感覚の問題だけなのかなと感じました。また、表現面も相変わらずの繊細さと優雅さで、久しぶりに見るとやはり日本女子勢では際立って美しいなと思いましたし、演技構成点でもショート、フリーともに全体の3位という評価で、ジャンプが整えばさらに点数アップも見込めるので、今後に向けて期待が増す演技でしたね。
 とはいえ無理をして再発したりほかのところを怪我したりしてしまっては元も子もないですし、そうならないために宮原選手自身も宮原選手を支えるコーチやトレーナーもきめ細かいサポートをしていると思うので、次戦のアメリカ大会では今大会以上の演技を目指して、オリンピック出場に向けて一歩一歩焦らず歩んでいってほしいと思います。


 6位に入ったのはロシアのベテラン、アリョーナ・レオノワ選手です。

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 SPは「Bla Bla Bla Cha Cha Cha」。冒頭は得点源の3トゥループ+3トゥループ、これをきっちり回り切って着氷させると、後半の3フリップ、2アクセルもクリーンに成功。スピンも全てレベル4と丁寧にこなしましたが、全体的に加点は伸びず、63.61点で7位にとどまります。
 フリーは「Tune Maari Entriyaan (Bollywood Selection)」。まずはショートできれいに決めた3トゥループ+3トゥループから、これをショートの時よりもスムーズな流れで成功させて1.4点の加点を得ます。さらに若干苦手としている3ルッツを踏み切りも着氷もクリーンに決めると、2アクセルも問題なく着氷し、上々の前半とします。後半はまず3フリップ+2トゥループ、続けて単独の3フリップを成功。3+2+2の3連続コンビネーションも全て回り切って下り、最後の2アクセルも難なく着氷。最後はエネルギッシュかつダンサブルなステップで華やかに締め、フィニッシュしたレオノワ選手は派手なガッツポーズで喜びを爆発させたのち、涙を流して達成感を露わにしました。得点は自己ベストとなる127.34点でフリー5位、総合6位と順位を一つ上げました。
 近年はジャンプの不調に苦しみ、成績も不安定だったレオノワ選手。毎年のように新たなスターが登場して世界を席巻するロシア女子勢の中で、20代半ばを過ぎたレオノワ選手の存在感は薄くなりつつありましたが、今回の演技はそうした最近のモヤモヤを晴らすような、本当に素晴らしい滑りでした。もちろんジャンプの難度では若い選手たちには及びませんが、全体を魅せるという点においてはまだまだ衰えるどころか唯一無二の個性の持ち主として存分にアピールできる選手だと感じましたし、久しぶりにレオノワ選手の弾けるような笑顔を拝見して、何だか懐かしいような感じもして、心から嬉しくなりましたね。
 世界一過酷なロシア女子の五輪代表レースにおいて、レオノワ選手の立場が厳しいことに変わりはありませんが、次戦のスケートアメリカでもレオノワ選手らしい演技を見せて、少しでも可能性を広げられるよう祈っています。


 7位は日本の本郷理華選手です。

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 SP冒頭は3フリップ+3トゥループ、これを完璧に回り切って下り加点を獲得します。後半に組み込んだ苦手の3ルッツは片手を上げた難しい空中姿勢で臨み、一見きれいに下りたかに見えましたがアンダーローテーションの判定。最後の2アクセルも片手を上げて跳びこちらはクリーンに着氷。終盤のステップシークエンスではレベル4に加えて加点1.4と、高評価を引き出すスピード感と力強さに満ちた滑りで観客を魅了しました。得点は65.83点で4位と好発進します。

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 フリーもまずは得点源の3フリップ+3トゥループから、クリーンな着氷かと思われましたがわずかに回転不足の判定。続く得意の3サルコウは片手を上げて跳びますが珍しく着氷が乱れます。しかしショートで回転不足を取られた3ルッツは目立ったミスなく下ります。後半最初は2アクセル+3トゥループ+2トゥループから、これはセカンドジャンプがアンダーローテーションの判定に。3ループは決め、続いて3フリップは空中で回転がほどけたような形で着氷し大幅に減点されます。最後の2アクセル+2トゥループは成功させ、終始情熱的な滑りを披露しました。得点は122.00点でフリー7位、総合7位で初めてのNHK杯を終えました。
 前回のカナダ大会では細かな回転不足を多々取られて得点が伸び悩んだ本郷選手。その回転不足の修正を課題に挙げて臨んだ今大会、回転不足ゼロとは残念ながらなりませんでしたが、ショートの3+3やフリーの3ルッツなど、前回からの改善点も散見され、演技自体は充実した内容だったのではないでしょうか。何より演技そのものに勢いがあり、躍動感があり、生き生きとした感じがみなぎっているのが画面を通して溢れんばかりに伝わってきて、ミスに振り回されない余裕というのが感じられて頼もしいですね。プログラムもどんどん本郷選手になじんできているので、今後のシーズンがますます楽しみです。全日本選手権では本郷選手の満面の笑みが見られることを願っています。


 8位は今季シニアデビュー、日本の白岩優奈選手です。

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 SPはドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」。まずは得点源の3ルッツ+3トゥループ、ファーストジャンプはきれいに着氷しましたが、セカンドジャンプは途中で回転がほどけてしまいダウングレード(大幅な回転不足)での着氷となります。2アクセルは軸が傾き着氷もオーバーターンに。最後の3フリップは大きなミスなく跳び切りましたが、2つのジャンプミスが響き、57.34点で8位と出遅れます。

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 フリーはムスルグスキーの「展覧会の絵」。まずはショートで決められなかった3+3から、今度はこれをクリーンに下りて加点を得ます。続く2アクセルも難なく着氷し、前半のジャンプ2つをきっちり揃えます。後半に5つのジャンプ要素を固め、最初の3+3はセカンドジャンプの着氷でオーバーターン。3サルコウはクリーンな着氷に見えましたが、アンダーローテーションの判定。終盤の3フリップはきれいに跳び切り、次いで2アクセルからの3連続ジャンプの予定でしたが、ここは2アクセルの着氷が乱れ単独に。さらに最後の3ループはパンクして2回転にとミスが重なり、フィニッシュした白岩選手は苦笑いを浮かべました。得点は114.64点でフリーも8位、総合8位で初めてのGPを終えました。
 ショート、フリーともに複数のジャンプミスが出て本領を発揮できなかった白岩選手。GPデビューが自国開催のNHK杯、しかも普段練習している大阪開催ということで、圧倒的なホームである一方、良い演技をしなければいけないというプレッシャーも感じたのではないかと思います。ただ、白岩選手は昨年末の全日本選手権でSP17位と出遅れながらも、フリー3位で総合5位と追い上げるなど爆発力がある選手でもあるので、今大会もフリーでの一気の追い上げの可能性は充分ありましたし、それができるだけの高難度のジャンプ構成でしたが、やはりシニアのGPの雰囲気に飲まれてしまった部分はあるかもしれません。ですが、一度こうした雰囲気を経験したことで慣れた感じも多少はあると思うので、2週連続の試合でコンディション調整は大変でしょうが、次戦のフランス大会ではレベルアップした姿に期待したいですね。



 ここからはペアです。

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 優勝は世界チャンピオン、中国の隋文静&韓聰組です。ショートはまずサイドバイサイドの3トゥループ、これを二人同時にピタリと合わせてクリーンに跳び切ると、スロー3フリップは抜群の高さとスムーズな流れで決め加点2の高評価を得ます。さらに得意の3ツイストは女性が片手を上げて回転しレベル4。その後はスピンが一つレベル2になる取りこぼしはありましたが、後半のエレメンツは全てレベル4を揃え、79.43点で首位に立ちます。フリーは大技4ツイストから、レベルは2でしたがクリーンに成功させ加点を稼ぎます。3+2+2は全てのジャンプを回り切って着氷。続けて3サルコウも決め、上々の立ち上がりとします。中盤も落ち着いて一つ一つ丁寧にエレメンツをこなし、後半のスロージャンプ2つも危なげなく成功。終盤のエレメンツは全てレベル4でまとめ、演技を終えた二人はガッツポーズで喜びを露わにしました。得点はフリーの世界歴代最高点となる155.10点をマーク、トータルでも自己ベストを更新し、2位に11点差をつける圧勝でGP3勝目を飾りました。
 とにもかくにも圧巻としか言いようのない演技でしたね。特にフリーはエレメンツをこなしていくごとに演技の迫力もどんどん増していって、あまりの気迫に思わず息が止まってしまうというか気圧されてしまうくらいのパワーを感じましたね。それでいて「トゥーランドット」の優雅さ、流麗さも細部に渡って繊細に表現していて、このダイナミックさと繊細さのバランスの良さは、ほかのペアにはない隋&韓組ならではの最大の魅力だなと思いました。ファイナルでは初制覇が懸かりますが、いつもどおりの思い切った演技を期待したいですね。NHK杯優勝、おめでとうございました。

 銀メダルを獲得したのはソチ五輪銀メダリスト、ロシアのクセニア・ストルボワ&ヒョードル・クリモフ組です。SP冒頭の3ツイストはキャッチで男性が女性を抱える形になりレベル1どまりに。しかし続くスロー3フリップは完璧に下りて加点1.5。その後もミスらしいミスなく安定してエレメンツをクリアし、シーズンベストで2位と好発進します。フリーもまずは3ツイストからでしたが、やはりキャッチミスがありレベル1にとどまります。スロー3フリップは安定感抜群の跳躍と着氷。次いで3トゥループ+3トゥループ+2トゥループの高難度コンビネーションジャンプは、セカンドジャンプで二人とも着氷が乱れたためサードジャンプは跳びませんでしたが3+3としては成功。以降は目立ったミスなく確実にエレメンツをこなし、最後のスロー3サルコウもきれいに着氷。フィニッシュでクリモフ選手は氷を叩いて喜びを爆発させ、ストルボワ選手も満面の笑みを見せ、ハグでお互いをたたえ合いました。得点は147.69点でフリーも2位、総合2位となり、ロステレコム杯の2位と合わせて3度目となるファイナル進出を決めました。
 今季はフィンランディア杯、ロステレコム杯となかなかすっきりとしない、消化不良の演技が続いていたのですが、今大会はショート、フリーともに最小限のミスに抑えて、特にフリーは演技後の二人の反応が物語っているように、ようやく今のベストが尽くせたと言える内容だったのかなと思います。今季の課題となっている3ツイストのキャッチミスは次戦への宿題となりましたが、演技中は二人の強い気持ちが伝わってきて、特にフリーは緊張感を漂わせつつ、滑るたびに徐々に伸びやかさと勢いを増していって乗っていく感じにぐいぐい引き込まれて、フィニッシュでは二人の表情に思わずもらい泣きしてしまいそうになりました。若くしてオリンピックの銀メダリストとなって、その肩書きを背負って次のオリンピックへ向かっていく道のりというのは、また他のペアと違う苦労があったのではないかと想像しますが、とはいえ25歳と27歳とまだ若いペアでもあるので、まだまだ伸びしろもあると思いますし、ファイナルでも思い切りの良い演技を楽しみにしています。

 3位に入ったのはロシアのクリスティーナ・アスタホワ&アレクセイ・ロゴノフ組。SPはまずサイドバイサイドの3サルコウを決めると、続く3ツイストもレベル3でまとめ、スロー3フリップもきれいに着氷。後半のエレメンツは全てレベル4とそつのない演技を見せ、自己ベストを約3点更新する70.47点で3位と好位置につけました。フリーはまず鍵を握る3+2+2を成功させると、3ツイストもスムーズに成功させ波に乗ります。3サルコウは2回転となりましたが、その後のエレメンツは全てレベル4という高い完成度でまとめ、自己ベストの133.17点でフリー3位、総合3位でロステレコム杯に続いて銅メダルを手にしました。
 今大会トータル203.64点で初めて大台の200点台に乗せたアスタホワ&ロゴノフ組。ペア結成は4季目で、女性のアスタホワ選手は20歳、男性のロゴノフ選手は29歳でと年齢差、経験の差があるペアですが、徐々にペアとしての熟成が進んできたのかなと思います。ロステレコム杯では今季も含めて3度表彰台に立っている二人ですが、母国以外のGPでのメダルはこれが初めて。そういった意味でもペアとして一皮剥けたと言えるのではないでしょうか。ファイナルに出られるかどうかは微妙なところですが、オリンピックに向けて良いシーズンの序盤を送っているのは間違いないですね。

 日本のチャンピオン、須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組は7位となりました。

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 SPは3ツイストがレベル2になるミスから始まり、3サルコウはパンクして1回転となったため無得点となってしまいます。その後は大きな取りこぼしなくエレメンツをクリアしましたが、序盤の減点が響き、自己ベストより10点ほど低い51.69点で7位にとどまりました。
 フリーも冒頭は3ツイストから、こちらも細かなミスでレベル2となります。ショートでパンクした3サルコウは回り切って着氷しますが、スロー3ループはステップアウトし大幅な減点と序盤はミスが重なります。中盤は2アクセル+2アクセルのシークエンスジャンプで須藤選手のファーストジャンプが回転不足と判定されますが、それ以降はミスらしいミスなく丁寧にエレメンツをこなし、演技を終えた二人は手応えを得たように明るい表情で観客の声援に応えました。得点はシーズンベストとなる104.83点でフリー7位、総合7位で3度目のNHK杯を終えました。
 今季は全体的にミスの多い演技が続き苦戦を強いられていた須藤&ブードロー=オデ組。今大会もショートは50点台前半という低調なスコアでフリーに不安が残りましたが、そのフリーでは演技序盤こそ慎重さ、硬さが目立ちましたが、演技が進むにつれて少しずつ二人らしいのびやかさが戻ってきて、特に終盤のリフトやスピンは安定してレベル4を獲得するなど力強いパフォーマンスが見られ、全日本選手権に向けて良い収穫になったのではないかと思いますね。ここからまた一段階、二段階調子を上げて、全日本3連覇目指してじっくり調整していってほしいですね。

 これがGPデビューとなった須崎海羽&木原龍一組は8位でした。

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 SPは「テレビアニメ「ユーリ!!! on ICE」より」。冒頭は難度の高い3ルッツのサイドバイサイドジャンプから、木原選手はきれいに下りましたが、須崎選手は回転不足で転倒となり大きく減点されます。続く3ツイストはキャッチで男性が女性を抱える形となりレベルが1よりしたのB(ベーシック)の扱いに。スロー3サルコウはステップアウトとなり、得点は44.83点と自己ベストから程遠い点数にとどまりました。
 フリーは「映画『ロミオとジュリエット』より」。冒頭はショートで転倒があった3ルッツ、再び回転不足は取られますが大きな着氷の乱れなくまとめます。3ツイストはレベル1にとどまり、高難度のスロー3ルッツはステップアウト。しかし中盤の3+2+2の3連続ジャンプは二人のタイミングが大きくずれたためわずかに減点こそ受けますが回転不足なく跳び切り、その後も細々としたミスは散見されましたが大崩れすることなく、最後まで力強く演じ切りました。得点は自己ベストとなる95.15点をマークしました。
 初めてのGP、しかもNHK杯とあって(木原選手は高橋成美選手とのペアで出場経験あり)、さすがに緊張感はヒシヒシと伝わってきましたが、その中でも今できるベストは出せたのかなという印象ですね。今季から取り入れた3ツイストや難しい入りのリフトなど、新たな技での細かいミスはありましたが、トップペアでも稀なサイドバイサイドの3ルッツやスローの3ルッツなど、このペアならではの魅力も垣間見えて、こうした技の安定感が増してくればおもしろい存在になるなと感じました。平昌五輪の団体戦メンバーとして現時点で最も有力なのは須崎&木原組だと思いますから(須藤&ブードロー=オデ組はブードロー=オデ選手が日本国籍を保持していないためオリンピックには参加できません)、オリンピックも見据えて、全日本選手権で最高の演技ができるよう頑張ってほしいと思います。



 NHK杯2017、女子&ペアの記事は以上です。男子&アイスダンス編に続きます。


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NHK杯2017・男子&アイスダンス―セルゲイ・ボロノフ選手、パーソナルベストでGP初優勝 2017年11月18日

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by hitsujigusa | 2017-11-15 20:01 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)