カテゴリ:フィギュアスケート(大会関連)( 220 )

c0309082_18163750.jpg


※2017年12月2日、GPファイナルの辞退選手と追加選手について追記しました。


 グランプリシリーズ第6戦、スケートアメリカが11月24日から26日にかけてレークプラシッドにて行われました。今回はその女子とペアについてお伝えします。
 女子は日本のエース、宮原知子選手が優勝。股関節の疲労骨折からの復帰2戦目での劇的な優勝で、オリンピック出場に向けて一歩前進しました。そして2位には同じく日本の新星、坂本花織選手が入り、日本勢のワンツーフィニッシュというこれ以上ない結果となりました。3位はアメリカの伏兵、ブラディー・テネル選手となっています。
 ペアは世界選手権2017銀メダリストのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組が制し、ファイナル進出を決めました。

ISU GP Skate America 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 女子の覇者となったのは昨年のGPファイナル銀メダリスト、宮原知子選手です!

c0309082_18272947.jpg

 SP冒頭は得点源の3ルッツ+3トゥループ、回転は充分だったもののセカンドジャンプで軽くステップアウトします。しかし、その後の2つのスピンで確実にレベル4を取り、加点も稼ぐと、後半の3ループ、2アクセルはきっちり成功。ステップシークエンスではレベル4に加え、1.7点という極めて高い加点を得、最後のレイバックスピンもレベル4かつ1点以上の加点で、ミスを重ねませんでした。得点はシーズンベストとなる70.72点で堂々のトップ発進となりました。

c0309082_19412421.jpg

 フリーはまず3ループから、回転はギリギリになりましたが認定され加点も得ます。そしてショートでミスのあった3+3、今度は着氷もクリーンにまとめ加点を獲得。若干苦手としている3フリップは踏み切りのエッジも着氷も問題なく跳び切り、上々の前半とします。レベル4のスピン2つとステップシークエンスを挟んで後半、3+2+2を完璧に下りると、2アクセル+3トゥループも成功。NHK杯ではパンクした3サルコウもきれいに着氷し、最後の2アクセルもクリアし、最後はほとんどのジャッジが加点3を与えるレイバックスピンでしっとりとプログラムを締めくくり、観客からスタンディングオベーションを受けました。得点は自己ベストに0.38点に迫る143.31点でフリーも1位、総合1位となり、2年ぶりにGPの頂点に立ちました。
 ミスらしいミスはショートの3+3のステップアウトのみと、本当に素晴らしい演技でした。前回のフランス大会の記事の最後にスケートアメリカで宮原選手が優勝争いに絡んでくれたらと書きましたが、願った以上の見事な内容とスコアでした。宮原選手や濱田美栄コーチにとってもこのスコアは意外だったというのが、キス&クライでの驚きぶり、喜びようから伝わってきましたが、特に濱田コーチは宮原選手本人よりも喜んでいるという印象で、股関節の疲労骨折で練習の虫だった教え子が練習ができなくなり、苦悩しながらもリハビリに取り組んでいる姿を横でずっと見守ってきたコーチだからこそ、感情を抑えきれないくらい嬉しかったんだろうなと感じました。
 演技そのものに関しては、NHK杯の時点でも11か月ぶりの実戦とは思えないくらい戻ってきているなと感じましたが、今回はそこからたった2週間でさらに何段もステップアップしたと言える内容で、改めて宮原選手が秘めている底力の底知れなさを思い知らされました。それだけ質の高い練習を2週間で積めたということでもあるでしょうが、怪我をする前に培ってきた技術が今でもしっかり活きているということでもあると思います。そして、何より表現面が1年前よりもさらに上手になっていて、緩急、メリハリの付け方、表情でのジャッジや観客への訴え方、体の使い方の大きさ、スピード感、全ての面において進化しているなと感じました。故障で生じたブランクもただ空白の期間として消化するのではなく、来たるべき勝負の時に備えてプログラムの表現に役立つ勉強をしたり、ジャンプが跳べなくてもスケーティングを強化したりとしっかり成長する時間に変えていて、怪我をする前よりも強くなって帰ってきたということにただただ称賛と脱帽せざるをえません。
 今大会の優勝によってポイントランキング7位となった宮原選手。ファイナル進出を決めているロシアのエフゲニア・メドベデワ選手が疲労骨折しており、ファイナルを辞退するかもしれないという現状でもあり、もしかしたら宮原選手にもファイナルのチャンスが回ってくるかもしれません。ただ、あまり連戦が続くと故障の再発の可能性もないではないので、今後のメドベデワ選手の動向が気になるところなのですが、宮原選手は全日本に向けて頑張りすぎずにじっくりと調整していってほしいですね。スケートアメリカ優勝、おめでとうございました。


 銀メダルを獲得したのは世界ジュニア選手権2017銅メダリスト、日本の坂本花織選手です。

c0309082_00493685.jpg

 SPは全てのジャンプを後半に組み込んだアグレッシブな構成で臨み、まずはスピンとステップシークエンスを丁寧にこなすと、後半に入り最初の3フリップ+3トゥループを目を見張るような高さと幅で決め加点1.4点を獲得。さらに3ループ、2アクセルと続けざまにクリーンなジャンプを続けます。最後のスピンは珍しく途中でバランスを崩しレベルを落とした上に加点を伸ばせず、フィニッシュでは少し悔しそうな表情も滲ませました。それでも得点は69.40点で自己ベストを更新し、2位と好発進しました。

c0309082_00570139.jpg

 フリーも最初のジャンプは得点源の3+3から、これをショート同様に抜群の高さと飛距離で決めて加点1.3を得ると、続く3サルコウも完璧で同じく1.3の加点が付きます。次いでステップシークエンス、スピンとレベル4を揃え、5つのジャンプ要素が集中する後半、まずは若干苦手としている3ルッツをクリーンに成功。さらに3+2を下りると、2アクセル+3トゥループ+2トゥループも着氷。終盤の3ループ、2アクセルも難なく下り、演技を終えた坂本選手はぴょんぴょんと跳びはねガッツポーズで喜びを露わにしました。得点は自己ベストを13点以上更新する141.19点でフリーも2位、総合でももちろん2位でGPデビュー2戦目にして表彰台に立ちました。
 GPデビュー戦のロシア大会から約1か月でしたが、見違えるように素晴らしい演技でした。前回もショートはほぼノーミスで4位と良い滑り出しだった一方、フリーは緊張も手伝ってか終始硬い滑りに終わり、悔しさと課題の残る試合となってしまいましたが、今回のフリーは終盤になっても全く疲れの色が見えず、むしろどんどん元気になっていくような感じさえあって驚かされましたね。元々ジャンプ能力の高い選手で、そのジャンプがことごとくきれいに決まったことによって気持ち的に乗っていったというのはあると思いますが、表現面でも細かい動作がふんだんに盛り込まれた「アメリ」のプログラムを、細部まで疎かにせず丁寧に滑っている感じがうかがえて、1か月でこんなにも成長するものなんだなとビックリしました。
 この結果によってオリンピック代表候補として存在感を強くアピールできた坂本選手。今回演技後に感じたであろう歓喜、達成感というのを大切にして、今大会以上に緊張するかもしれない全日本選手権でも、坂本選手らしいのびやかでダイナミックな演技をして、再びあの弾けんばかりの笑顔とガッツポーズを見せてほしいと思います。


 銅メダルを手にしたのはアメリカの成長株、ブラディー・テネル選手です。

c0309082_01263902.jpg

 SPは「映画『ブラザーフッド』より」。冒頭は得点源の3ルッツ+3トゥループ、これをしっかり回り切って着氷し好スタートを切ると、後半の3ループ、2アクセルも危なげなく成功。スピンも全てレベル4とそつなくまとめ、67.01点と自己ベストをマークし、4位と好位置につけます。
 フリーは「映画『シンデレラ』より/バレエ「シンデレラ」より」。まずはショートでも完璧に決めた3+3を再びクリーンに成功。続いて2アクセル、3フリップと問題なく決めます。後半に入っても勢いは衰えず、2アクセル+3トゥループを成功させ、3+2+2も着氷。残りの3ルッツ、3サルコウもクリーンに下り、終盤の2つのスピンではどちらも加点1以上と最後まで気を緩めずこなし、フィニッシュしたテネル選手は観客から喝采を浴びました。得点は137.09点とショートに続き自己ベスト更新、フリー3位、総合3位でGPデビュー戦にして表彰台を射止めました。
 今季から本格的にシニアに参戦し、9月に行われたチャレンジャーシリーズのロンバルディア杯では200点に迫る高得点で4位と好調さをうかがわせていたテネル選手。とはいえ、まさか彼女がこのスケートアメリカでいきなり表彰台に立つとは予想外でした。ですが、メダルに価する演技だったことは間違いないですし、テネル選手の演技を見るのは初めてだったのですが、ジャンプもスピンも安定していて、総合力の高い選手だなと感じました。課題としてはテレビの解説で織田信成さんもおっしゃっていたように直線的な動きが目立つかなという感じなので、それはこれからの伸びしろとしてさらに良くなることを期待したいですね。
 アメリカ女子は今大会に出場していた全米女王のカレン・チェン選手が下位に沈み、ベテランのアシュリー・ワグナー選手は足の感染症による痛みでフリーを棄権、また、実力者のグレイシー・ゴールド選手は摂食障害とうつ病の治療でオリンピックを断念と、オリンピック出場権争いは混沌とした状況がますます強まっていますが、その中でダークホースのテネル選手は言い方は悪いですが不気味で存在感を漂わせています。4年前のソチ五輪ではシニアでの実績がほぼなかったポリーナ・エドマンズ選手が全米選手権で2位に入り切符を手にしたという過去がありますが、テネル選手もそういったシンデレラガールになれるのか、全米選手権に向けてここからが本当の勝負と言えそうです。五輪を意識しすぎてしまうと、今回のような心の余裕、のびやかさが失われてしまうリスクもありますから、何よりもメンタルの強靭さが求められそうですね。


 4位に入ったのはロシアの新星、ポリーナ・ツルスカヤ選手です。

c0309082_01511974.jpg

 SP冒頭は得意の3ルッツ+3トゥループ、これを余裕を持って成功させると、スピン、ステップシークエンスも目立ったミスなく丁寧にこなします。後半に2つのジャンプを組み込み、その最初は3ループでしたが転倒。さらに焦ったのか2アクセルでもステップアウトと後半にミスが続き、63.20点で8位と出遅れます。
 フリーもまずは3+3からで、しっかり回り切って着氷させ1.2点の加点を獲得。次いで3フリップもクリーンに下ります。中盤に入り2アクセル+3トゥループ+2トゥループは後半に跳ぶ予定でしたが、わずかに時間が早く後半のジャンプとしては認められず、またセカンドジャンプが若干詰まり3連続ではなく2連続にとどめます。次の3ルッツは難なく成功。3サルコウに2つの2トゥループを付け3連続にする冷静なリカバリーも見せ、残りの3ループ、2アクセルもクリーンに着氷。演技後、ツルスカヤ選手は小さくうなずき納得したような表情を見せましたが、得点は132.36点と思ったほど伸びず、フリー4位、総合4位で表彰台には届きませんでした。
 ショートでは思いがけないジャンプミスが2つあって8位スタートとなったツルスカヤ選手。巻き返しを狙ったフリーはミスらしいミスはほとんどなくて安定した技術と心の強さを印象付けるには充分でしたが、一つ一つのジャンプを見るとNHK杯よりは少し余裕がなくて、その部分で加点を稼げなかったですね。ほかにもNHK杯と今大会との違いということで言えば、シニアデビュー戦だったNHK杯は失うものが何もなく思い切ってぶつかっていけたけれども、今回はファイナルの出場が懸かるという点で守りの気持ちや慎重さが生じてしまったのかなと想像します。ただ、際立った才能の持ち主であることはこの2戦で存分に伝わってきましたから、GPで得た経験は良いことも悪いことも全て肥料になると思うので、ロシア選手権で全てをぶつけて今のベストを尽くしてほしいですね。


 5位は同じくロシアの若手、セラフィマ・サハノヴィッチ選手です。

c0309082_02133168.jpg

 SPは「And The Waltz Goes On」。まずは得点源の3フリップ+3トゥループ、若干詰まり気味ながらも回り切って成功させます。後半の3ルッツでは両手を上げて跳び、2アクセルもクリーンに着氷。スピンは全てレベル4とそつなくこなし、パーソナルベストに0.3点と迫る66.28点で5位につけます。
 フリーは「アランフェス協奏曲」。冒頭はショートと同じ3フリップ+3トゥループ、これをショートよりもスムーズな流れで決め1.1点の加点を獲得。さらに3ルッツは両手を上げて跳び切りこちらも1.1点の加点を得、2アクセルも着氷と完璧な前半とします。後半は最初の3サルコウ+3トゥループを決めますが、次の2アクセルはパンクして1回転に。3+2、3ループはクリーンに着氷し、スピンは全てレベル4とまとめ、滑り終えたサハノヴィッチ選手は安堵したように微笑みました。得点は自己ベストに1.91点と迫る123.47点でフリーも5位、総合5位でGP自己最高位をマークしました。
 同じロシアのアンナ・ポゴリラヤ選手が怪我のため辞退し、その代役としてチャンスが巡ってきたサハノヴィッチ選手。フリーは前の滑走者だったワグナー選手が演技中に棄権し、サハノヴィッチ選手は通常とは違う演技前の準備を余儀なくされましたが、その動揺はほとんど見られない落ち着いた演技でしたね。3ルッツや3フリップで両手を上げるなど昨季からの進化、工夫も見られましたし、ジャンプの着氷後の流れや苦手としている2アクセルの克服といった課題はあるかなと思いますが、着実な成長が感じられる演技でした。サハノヴィッチ選手の変化と言えば、今季からあのエフゲニー・プルシェンコさんに師事しているというのも新たな試みで、プルシェンコさんほどの経験豊富な名選手がついているとなれば、サハノヴィッチ選手もこれからどんどん伸びてくるんじゃないかなと楽しみですね。


 6位は世界選手権2017銅メダル、カナダのガブリエル・デールマン選手です。

c0309082_15094415.jpg

 ショート冒頭は得意の3トゥループ+3トゥループ、これを抜群の高さで飛び切り1.9点という極めて高い加点を得ます。しかし、後半の3ルッツ、2アクセルはそれぞれ着氷で乱れがあり、68.08点で3位発進となります。
 フリーもまずは3トゥループ+3トゥループで、ショート同様にクリーンに決めて1.8点の加点を獲得。前日は失敗した3ルッツも1.1点の加点を引き出す出来で成功させ、次いで3フリップも着氷と上々の出だしとします。レベル4のスピンとステップシークエンスを挟んで後半、最初は得意の3ルッツでしたが、着氷が乱れコンビネーションにできず。さらに3ループは1回転にとミスが重なります。2アクセルは決めますが、最後の3サルコウも乱れ、フィニッシュしたデールマン選手は顔を曇らせました。得点は121.06点でフリー8位、総合6位と順位を大きく落としました。
 今季はフィンランディア杯、中国杯ともに6位と、世界選手権のメダリストとしてなかなか本領が発揮できていないデールマン選手。面目躍如を狙った今大会だったと思うのですが、またもや6位と本来のデールマン選手の演技は見られませんでしたね。世界選手権の銅メダリストであるという肩書きが彼女を硬くさせているのか、それともオリンピックシーズンという特別感が余計な緊張感を生み出しているのかはわかりませんが、昨季の終盤に見られた思い切りの良さが鳴りを潜めているような気がします。ジャンプの調子自体がそんなに悪いようには見えないので、気持ち的な問題とスタミナ面の問題なのかなと思いますね。



 ここからはペアの結果です。

c0309082_15383649.jpg


 優勝は世界選手権2017銀メダリスト、ドイツのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組です。SPはサイドバイサイドの3サルコウで転倒、スピンでも取りこぼしがあり72.55点で3位にとどまります。フリーも3+2+2の3連続ジャンプが3+1+1になるミスはあったものの、そのほかは目立ったミスなくまとめ、出来栄え点でも冒頭の3ツイスト以外は全て加点1以上と死角のない演技を披露し、自己ベストの150.58点をマークしフリー1位、総合1位と逆転でGP3勝目を上げました。
 ショートこそ3位でしたが1位との点差は2点もなく、サフチェンコ&マッソ組としては思い切り演技できる良い条件でしたね。シーズン前半のこの時期でフリー150点台というのは素晴らしいというほかないですが、まだまだ細部まで改善できるところは多々あるでしょうから、さらなるレベルアップ、ブラッシュアップに期待したいと思いますし、ファイナルでも好演技を楽しみにしています。スケートアメリカ優勝、おめでとうございました。

 2位は中国の于小雨(ユー・シャオユー)&張昊(ジャン・ハオ)組。ショートは全てのエレメンツで加点を引き出す確実性の高い滑りを見せ、自己ベストに約2点と迫るスコアで2位と好位置につけます。フリーはペアコンビネーションスピンで2人の回転がずれてしまうミスがあり加点が取れない場面はありましたが、それ以外のエレメンツは軒並み高い加点を積み重ね、自己ベストを9点以上更新。トータルでも自己ベストをマークし、2年連続のファイナル進出を決めました。
 ショート、フリーともに安定感抜群だった于&張組。中国杯では鬼門となっているソロジャンプでミスが複数ありましたが、そうした課題も今回はしっかり修正されていて、ペアとして一段階レベルを上げたという感じがしますね。ただ、スピンでのミスはもったいないところで、こういった凡ミスがなくなればオリンピックでもメダルを狙えるペアになるでしょうから、次戦のファイナルでの演技にまずは期待ですね。

 3位は前世界チャンピオン、カナダのメーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組。SPは3ツイストとペアコンビネーションスピンがレベル2にとどまり、サイドバイサイドの3ルッツでもミスがありましたが、全体的に加点は稼いで首位に立ちます。フリーは冒頭の3ツイストが再びレベル2に。さらに3ルッツは回転不足で転倒とミスが相次ぎます。大技のスロー4サルコウは最小限のミスに抑えますが、デススパイラルやスピンがレベル2となる取りこぼしもあり、自己ベストより10点以上低いスコアでフリー3位、総合3位と優勝を逃しました。
 前回のスケートカナダで久しぶりにデュハメル&ラドフォード組らしい演技を見せ優勝しましたが、今大会は細かいミスが散見され完全復活とまではいきませんでしたね。ただ、修正するのにそこまで時間がかかるようなミスではないと思うので、次戦のファイナルではオリンピックにも繋がるような演技をしてほしいと思います。



 ということで、スケートアメリカ2017、女子&ペア編は以上です。女子はファイナル最後の1枠を争うツルスカヤ選手がショートで8位と出遅れ、ワグナー選手がフリーを棄権と、思いがけない形で日本の樋口新葉選手が切符を獲得しました。結果的に日本の2人―宮原選手、坂本選手―が樋口選手をアシストする形となり、ここまでシリーズ全体を通して苦戦を強いられていた日本女子でしたが、最後の最後にドラマチックなハッピーエンディングとなりましたね。
 では、そのファイナルの進出者を一覧にまとめます(敬称略)。


《女子シングル》

①エフゲニア・メドベデワ(ロシア):30ポイント ロシア大会優勝、日本大会優勝
②アリーナ・ザギトワ(ロシア):30ポイント 中国大会優勝、フランス大会優勝
③ケイトリン・オズモンド(カナダ):26ポイント カナダ大会優勝、フランス大会3位
④カロリーナ・コストナー(イタリア):26ポイント ロシア大会2位、日本大会2位
⑤マリア・ソツコワ(ロシア):26ポイント カナダ大会2位、フランス大会2位
⑥樋口新葉(日本):24ポイント ロシア大会3位、中国大会2位
―――
補欠⑦宮原知子(日本):22ポイント 日本大会5位、アメリカ大会優勝
補欠⑧坂本花織(日本):20ポイント カナダ大会5位、アメリカ大会2位
補欠⑨ポリーナ・ツルスカヤ(ロシア):20ポイント 日本大会3位、アメリカ大会4位



《ペア》

①隋文静&韓聰組(中国):30ポイント 中国大会優勝、日本大会優勝
②エフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組(ロシア):30ポイント ロシア大会優勝、フランス大会優勝
③アリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組(ドイツ)28ポイント カナダ大会2位、アメリカ大会優勝
④メーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組(カナダ):26ポイント カナダ大会優勝、アメリカ大会3位
⑤クセニア・ストルボワ&ヒョードル・クリモフ組(ロシア):26ポイント ロシア大会2位、日本大会2位
⑥于小雨&張昊組(中国):26ポイント 中国大会2位、アメリカ大会2位
―――
補欠⑦ヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ組(フランス):24ポイント カナダ大会3位、フランス大会2位
補欠⑧クリスティーナ・アスタホワ&アレクセイ・ロゴノフ組(ロシア):22ポイント ロシア大会3位、日本大会3位
補欠⑨ニコーレ・デラ・モニカ&マッテオ・グアリーゼ組(イタリア):20ポイント 中国大会4位、フランス大会3位




 女子はロシア勢が3名とやはり圧倒的な層の厚さを見せつけました。その中で優勝候補と言えばメドベデワ選手を置いてほかにはいません。ただ、そのメドベデワ選手が足の指を疲労骨折しているという衝撃的なニュースがスケートアメリカの前に飛び込んできて、ファイナルの出場も不透明な状況です。本人は出場に意欲を示しているとのことですが、オリンピックを第一に考えるならばここで無理をすべきではありませんし、オリンピック後のことを考えても今は治療を最優先させた方が良いのではないかと思います。どちらにしろ最終決定はファイナル直前(といっても1週間くらい前?)まで引き延ばされる可能性があるので、メドベデワ選手がどんな決断を下すか、見守りたいですね。
 そのメドベデワ選手を追うのは同じく2連勝でファイナルに駒を進めたザギトワ選手。技術点だけを見ればメドベデワ選手をも上回るポテンシャルの高さがあり、今最も勢いのある選手なのは間違いありません。今季は出場した3試合ともショートで出遅れていますが、出遅れても首位と大差がついていなければ逆転優勝できる可能性は十二分にあるので、この選手のショートの出来、点数がまずは最大の注目ポイントですね。
 そのほかの4選手に関しては誰にでもメダルのチャンスはあり、予想は難しいところですが、樋口選手はランキングこそ6位ではあるものの、安定感という点では4人の中ではいちばんじゃないかなと思います。初めてのファイナルということで、その経験のなさが良い方に出るか悪い方に出るかはわかりませんが、今季の樋口選手は自分の中に確固たる軸を持って試合に臨めているような印象を受けますので、ファイナルも安心感を持って見られるのではないかと思いますね。

 ペアはやはり世界王者の隋&韓組が圧倒的な優勝候補と言えますね。安定感、完成度の高さという点において群を抜いていて、怪我や体調不良などよっぽどの事態が起きない限り、他を寄せつける隙は皆無なのではないでしょうか。
 銀メダル争いということを考えますと、やはり世界選手権銀のサフチェンコ&マッソ組、銅のタラソワ&モロゾフ組の対決が濃厚かなと思います。一方で、シーズンベストだけで見ると、サフチェンコ&マッソ組、タラソワ&モロゾフ組、デュハメル&ラドフォード組、ストルボワ&クリモフ組は全組220点台で、ほとんど力の差はないと言っていいでしょう。その中で安定感という点ではサフチェンコ&マッソ組、タラソワ&モロゾフ組が一歩リードしていますが、ファイナルで4組ともがベストな演技をしたらどのペアが最も上に行くかというのは、正直予想できないですね。また、シーズンベスト(=パーソナルベスト)ではまだ220点台に到達していない于&張組も進化のペースとしてはとても速いので、隋&韓組を除く5組は混戦模様となりそうですね。



 始まったばかりと思っていたGPも6戦全てが終わり、いよいよ来週末はファイナルです。ジュニアも含め、日本の名古屋に集うトップ6たちが全員元気に、今後のシーズンに繋がる演技ができることを祈っています。では。


※以下、2017年12月2日に追記した部分です。


 GPファイナルに関して、辞退選手と追加選手が国際スケート連盟によって発表されましたので追記します。
 辞退が判明したのはロシアのエフゲニア・メドベデワ選手です。先月下旬、右足の骨を疲労骨折していることが報じられたメドベデワ選手ですが、やはり辞退となりましたね。本人はファイナルについて、ドクターストップがかからない限り出場したいとの意思を示していたようですが、オリンピックのことを考えるならばファイナル辞退は妥当な判断だと思います。今後は12月末のロシア選手権を目標に治療、調整することになるのでしょうが、疲労骨折というのはなかなか厄介なものだと思うので、まずはロシア選手権に間に合うのかどうかも心配ですね。もちろん彼女の実績を持ってすれば、ロシア選手権をパスしてもオリンピック代表に選ばれる可能性は高いですが、万全な状態でオリンピックの舞台にたどり着けるのかどうか、今はただ見守るしかないですね。
 そして、メドベデワ選手の辞退を受けて、補欠1番手だった日本の宮原知子選手が繰り上がり出場することが決まりました。この記事にも書きましたように、スケートアメリカで見事な演技を見せてくれた宮原選手ですから、ファイナルではメダル、さらには優勝の可能性も大いにあり楽しみです。ただ、彼女も故障から復帰したばかりなので、スケートアメリカから約2週間という密なスケジュールで怪我をした部分に負荷がかかりすぎないかが少し心配です。そのあたりはコーチやトレーナーとともに緻密な調整を進めていると思いますので、ファイナルでも100%の状態で臨み、良い収穫が得られる試合になることを願っています。


:女子メダリスト3選手のスリーショット画像、デールマン選手の画像、ペアメダリスト3組の画像は、マルチメディアサイト「Zimbio」から、宮原選手の画像、坂本選手の画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、テネル選手の画像、ツルスカヤ選手の画像、サハノヴィッチ選手の画像は、スケート情報サイト「icenetwork」の公式サイトのフォトギャラリーから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
スケートアメリカ2017・男子&アイスダンス―ネイサン・チェン選手、SP自己ベストでGP2勝目 2017年11月28日

[PR]
by hitsujigusa | 2017-11-29 23:38 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_16551394.jpg


※2017年12月1日、GPファイナルの欠場選手と追加選手について追記しました。


 グランプリシリーズ17/18、第6戦のスケートアメリカがレークプラシッドにて行われました。大会直前になっても複数の選手の辞退が伝えられ、大会中も怪我によって男子はダニエル・サモヒン選手とマキシム・コフトゥン選手が、女子はアシュリー・ワグナー選手がフリーを棄権するなどアクシデントが相次ぐ波乱含みの試合となりましたが、その分最後まで読めない見どころの多い内容ともなったのではないでしょうか。
 男子を制したのは全米王者のネイサン・チェン選手。ショートプログラムではパーソナルベストをマークしましたが、フリーでは多々ミスがあり消化不良での優勝となりました。2位は同じくアメリカのアダム・リッポン選手、3位はロシアのセルゲイ・ボロノフ選手となっています。
 アイスダンスは地元アメリカのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組が前評判どおりの安定した演技でGP5勝目を手にしました。

ISU GP Skate America 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 優勝はアメリカのネイサン・チェン選手です。

c0309082_17145257.jpg

 SP冒頭は大技4ルッツ+3トゥループ、これを完璧に着氷させ加点2を得ます。後半は4フリップ、若干こらえながらもクリーンに下りると、最後の苦手としている3アクセルも着氷が乱れましたが最小限のミスに抑え、終盤のステップシークエンスではエネルギッシュな滑りで地元の観客を沸かせ、パーソナルベストかつ世界歴代4位となる104.12点を叩き出し圧巻の首位に立ちます。
 フリーもまずは4ルッツ+3トゥループから、ショート同様にクリーンに決めて加点2.14点を獲得。しかし直後の4フリップは転倒します。さらに4サルコウも2回転にとミスを連発。後半最初に2本目の4ルッツを組み込み、抜群の高さと流れで再びクリーンに着氷します。ですが、4トゥループからの連続ジャンプは2+1+2に。続いて予定を急遽変更して再度4トゥループに挑みましたがあえなく転倒に終わります。鬼門の3アクセルからの連続ジャンプも1+2に。最後の3ルッツは流れの中で余裕を持って決めましたが、フィニッシュしたチェン選手は濃い疲労を漂わせ、残念そうに肩を落としました。それでも得点は171.76点でフリー2位、総合1位でトップの座を守り切りました。
 ほぼノーミスでまとめたショートから一転、フリーはジャンプミスが相次ぎ思いがけない展開になってしまいましたね。2本の4ルッツは素晴らしかったですが、そのほかの4回転は全滅で、途中でジャンプ構成を変更したことも影響してか全体的に余裕のない演技だったかなと思います。今大会のチェン選手はスケート靴の刃のトラブルがあり、そのことによってジャンプの軌道を変えたりといろんな苦労があったようですね。また、本人の弁によると、最初の4ルッツにかなりエネルギーを使ってしまったとのことで、演技中のペース配分というのは今後も課題になってくるんだろうなと感じました。
 今回はショート、フリーを揃えられなかったチェン選手ですが、2連勝でファイナルは決めましたので、ファイナルでは彼らしい演技を期待したいと思います。スケートアメリカ優勝、おめでとうございました。


 2位はアメリカのベテラン、アダム・リッポン選手です。

c0309082_20470596.jpg

 SPは4回転は回避。まず3フリップ+3トゥループをクリーンに決めると、3アクセルは若干着氷で乱れたもののこらえます。後半の3ルッツも問題なく下り、ステップシークエンス、スピンも全てレベル4に加え、3アクセル以外のエレメンツは全て加点1以上とクオリティーの高さを見せつけ、自己ベストとなる89.04点で2位と好発進します。
 フリー冒頭は大技4ルッツに挑戦、しかしダウングレード(大幅な回転不足)での着氷となり、ステップアウトした際に右手を氷に強く突きリッポン選手は右肩を抑えます。ですが、すぐに立ち上がるとこちらも難度の高い3フリップ+3ループを回り切って成功。さらに2アクセルも着氷し巻き返しを見せます。後半は得点源の3アクセルからの3連続ジャンプ、これをクリーンに決めると、単独の3アクセルもきれいに着氷。3フリップ+3トゥループも下り、3サルコウ、3ルッツとクリーンに成功。スピン、ステップシークエンス、コレオシークエンスは全て加点1以上と、ショート同様に細部まで神経の行き渡った表現で観客を魅了しました。得点は177.41点でフリー1位、総合2位となり、2年連続となるファイナル進出を決めました。
 ショート、フリーともに技術面、表現面でも充実した演技で本当に引き込まれましたね。また、フリーではさまざまなアクシデントにおそわれ、まず演技開始前に氷上に虫の死骸が複数落ちているということでリッポン選手とフラワーガールがティッシュで虫を拾い集め、そのために演技開始が通常より遅れました。さらには冒頭の4ルッツで激しく転倒し、右肩を脱臼。しかし腕を振るような仕草を見せて肩をはめ、演技を続行。そのあとはエレメンツを全て予定どおりにこなしました。不運に見舞われたフリーではありましたが、その後の冷静な対応は山あり谷ありの競技人生を歩んできたリッポン選手だからこそで、かつては高い技術力と表現力がありながらも気持ちの面で弱い部分があり、力を発揮し切れない時期がしばらく続きましたが、今の彼のタフな姿を見ていると何とも言えない嬉しさというか感慨を覚えましたね。
 心身ともにベストな状態を維持しているリッポン選手。この調子をうまくキープして、ファイナルでも満面の笑みを見せてほしいと思います。


 3位はロシアのベテラン、セルゲイ・ボロノフ選手です。

c0309082_23313010.jpg

 SP冒頭は得意の4トゥループ+3トゥループ、きっちり決めて1.71点の加点を獲得。続く単独の3ルッツは美しい跳躍を見せましたが、ステップから直ちに跳ばなければいけないという規定に違反したため減点。後半の3アクセルは問題なくこなし、スピンは全てレベル4と隙なし。シーズンベストには及ばなかったものの、87.51点で3位と好位置につけます。
 フリーもまずは4トゥループ+3トゥループから、これを確実に決めます。次いで3アクセルはステップアウトで手をつき大幅に減点。2本目の4トゥループはこらえた着氷となります。後半最初の3アクセル+2トゥループ+2ループは完璧に成功。さらに3ルッツ、3+2、3ループ、2アクセルと全てのジャンプを予定どおりにクリア。終盤のステップシークエンス、スピンでも力強くレベルも落とすことなくこなし、演技を終えたボロノフ選手は控えめながらも破顔しました。得点は169.98点でフリーも3位、総合3位で3年ぶりとなるファイナルの切符を手にしました。
 NHK杯ではパーソナルベストをマークし好調ぶりをアピールしていたボロノフ選手ですが、今大会もその調子の良さは相変わらずでしたね。NHK杯ほどの演技とはなりませんでしたが、上述したリッポン選手同様、心身ともに安定しているというのがうかがえました。ジャンプは水物とよく言われますが、現在のボロノフ選手に関してはジャンプに対して確固たる自信を持って跳べているなというのが伝わってきて、それだけオフシーズンにもしっかりとしたトレーニングを積んできたのでしょうし、ジャンプ以外の部分でも以前より全体的に丁寧さが感じられて、全ての面においてまさに脂がのりきっていると言えますね。
 3年前のファイナルではダークホースながら銅メダルを獲得し存在感を示したボロノフ選手。今年もその再現なるか、期待して見守りたいと思います。


 4位となったのは中国のエース、金博洋(ジン・ボーヤン)選手です。

c0309082_23541279.jpg

 SP冒頭は4トゥループ、これはクリーンに下りて1点以上の加点を得ます。しかし続く3アクセルは珍しくパンクして1回転に。後半の3+3は成功させたもののジャンプの質としてはいまいちで加点は付かず。最後のステップシークエンスはレベル2と取りこぼしもあり、77.97点で7位と出遅れます。
 フリーも冒頭は4トゥループから、これは着氷で若干バランスを崩しかけますが耐えて2トゥループを付けます。続く4サルコウは着氷で大きく乱れ、3アクセル+1ループ+3サルコウは成功させたかに見えましたが、3アクセルが回転不足と判定されます。後半も4トゥループからでこれはきれいに成功。3+3はセカンドジャンプでこらえます。2本目の3アクセル、3フリップはクリーンに着氷したものの、最後の3ループはフリーレッグが氷につくミス。細かなミスはいくつもありましたが、大崩れすることなくまとめ上げ、168.06点でフリー4位、総合4位と順位を上げました。
 今大会の金選手は一度も代名詞の4ルッツに挑むことがなく、中国杯後に足首を捻挫したためという話も聞こえていますが、やはり4ルッツのない金選手というのは物足りないというか、寂しい感じがしました。演技全体にもどことなく覇気がなく、彼らしいバネのあるジャンプ、軽快かつダイナミックな滑りが鳴りを潜めていましたね。
 ファイナルの切符こそ獲得しましたが、怪我からの復調途上ということでしょうし、このあとのシーズンも心配が残ります。オリンピックの頃まで尾を引くことにならなければいいのですが、まだシーズン前半なのであまり無理せず調整していってほしいですね。


 5位は同じく中国の閻涵(ヤン・ハン)選手です。

c0309082_00550458.jpg

 ショート冒頭は代名詞の3アクセル、高さと幅と流れのある跳躍でしっかり下り2.14点の加点を得ます。しかし続く4トゥループは回転は足りていたものの転倒。後半の3+3は確実に決め、ステップシークエンス、スピンも軒並み加点を稼ぎ、シーズンベストとなる85.97点で4位と好発進します。
 フリーもまずは3アクセルからでしたが、空中で軸が傾きステップアウトします。続く4トゥループ+2トゥループはきれいに成功。しかし2本目の3アクセルはパンクして1回転と荒れた前半となります。後半最初は3ルッツ、しかしこれも着氷が乱れます。次いで3ループ、3+2とどちらも着氷が決まらず。3サルコウは回転不足で、最後の3フリップも着氷がクリーンではなく、フィニッシュした閻選手は顔を曇らせました。得点は142.36点でフリー7位、総合5位と順位を一つ落としました。
 今大会は元々出場する予定はなく、韓国のチャ・ジュンファン選手の怪我によって約1週間前に出場が決まった閻選手。そういった意味でも調整の難しさはあったかもしれませんが、さらにはフリーで直前の滑走だったサモヒン選手が演技中に脱臼して棄権するというアクシデントが発生し、次の滑走者だった閻選手はいつもとは違う形で自分の演技を迎えることとなりました。通常であれば6分間練習をして、前の滑走者の演技中にリンクサイドに向かって演技が終わるのを待つという感じですが、閻選手は誰もいない氷上に早めにリンクインして自分の名前がコールされるまで体を動かしながら待つというイレギュラーな演技前になりましたから、それも演技に影響してしまったかもしれませんね。ただ、それを差し置いても閻選手自身の調子があまり良くないというのは感じられて、なかなかジャンプが安定しないというのが気がかりですね。
 オリンピックに向けて技術とフィジカルを立て直して、好い状態で2月を迎えてほしいと思います。


 6位はアメリカの実力者ロス・マイナー選手です。

c0309082_01341000.jpg

 SPは「Cosmic Superhero/Magic Cure/Downtown」。冒頭の3ルッツはスムーズな流れで完璧に決め1.3点の加点と上々のスタートを切ります。しかし続く3アクセルは回転が抜けて1回転になる痛いミス。後半の3+3は下り、ステップシークエンス、スピンも丁寧にこなしましたが、71.59点で8位にとどまります。
 フリーは昨季に続いて「クイーン・メドレー」。冒頭はショートでは外した4サルコウでしたが、パンクして2回転になります。ですが、3アクセル+2トゥループ、3+3はクリーンに着氷しそれぞれ高い加点。さらにステップシークエンス、スピンはレベル4かつ高加点と巻き返します。そして後半最初は3アクセルでしたが、これはステップアウト。3ループは決めますが、3ルッツは着氷が乱れ、3フリップは着氷しますが、2アクセルは1アクセルにとバラつきのある内容に。得点は148.03点でフリー5位、総合6位となりました。
 決してマイナー選手本来のジャンプ、演技とは言えない出来でしたが、演技そのものの勢いは伝わってくる内容だったかなと思います。元々端正なスケーティングが持ち味の選手ですが、ショート、フリーともにカッコいい感じのプログラムで、若手だった時の優しい雰囲気とはまた違った渋みや哀愁も醸し出せるようになってきたように感じますね。表現面というのは26歳という年齢になって円熟味を増してきていますから、あとはジャンプが整ってくるとますます見どころの多いプログラムになると思いますので、全米選手権で悔いのない演技ができるよう頑張ってほしいですね。


 7位は日本のベテラン、無良崇人選手です。

c0309082_02131109.jpg

 SP冒頭は得点源の4トゥループ、回転が足りず下りてきてしまい両足着氷で大幅に減点を受けます。次の3アクセルはいつもどおりの高い跳躍。後半の3+3は若干詰まり、テンポの速いステップシークエンスはレベル2と取りこぼす場面もあり、75.05点で7位にとどまります。

c0309082_13543633.jpg

 フリー冒頭は得意の3アクセルから、これを完璧に成功させて加点2を得ます。続く4トゥループはショートに続き回転不足で着氷も乱れます。直後の3ループはクリーンに成功。中盤の3+2はいつもより若干跳ぶタイミングが早かったためか基礎点が1.1倍になる後半には入らず。そして3アクセルはパンクして1回転になります。ですが、直後のジャンプの予定を変更して3アクセル+3トゥループを跳び切ります。ですが、終盤の3フリップ、3ルッツはそれぞれ1回転、2回転にとパンクが重なり、フィニッシュした無良選手は悔しそうに顔を歪めました。得点は137.22点でフリー8位、総合7位と順位を上げることは叶いませんでした。
 GP初戦のスケートカナダでまさかの最下位に沈み、ジャンプなど一からの立て直しを余儀なくされた無良選手。さすがにスケートカナダより悪くなるということはなかったですが、かといって本来の無良選手の状態に戻っているとも言えず、迷路にはまってしまっているような印象を受けました。特に4トゥループはどうしても失敗したくないという思いが強すぎるのか慎重になりすぎているような気がしますし、その4トゥループに多大なエネルギーを注いでいるためなのか、普通の状態なら簡単に跳べるはずの3回転ジャンプにも悪影響を及ぼしている感じがします。ジャンプが決まらないとなかなかプログラム自体の魅力もアピールできないので、何とか気持ちを切り替えて、全日本選手権では無良選手らしい豪快で、パワフルで、思い切りの良い演技を見せてほしいですね。



 ここからはアイスダンスです。

c0309082_14290100.jpg


 優勝したのは世界選手権2017銅メダル、アメリカのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組です。SDは後半のステップ以外は全てレベル4というハイレベルかつハイクオリティーな演技で、演技構成点でも9点台前半から半ばを揃え、パーソナルベストとなる79.18点をマーク。2位に6点以上の差をつける断トツの首位に立ちます。FDも2つのステップこそレベル3にとどまりましたが、そのほかのエレメンツは全てレベル4で、GOEも全てのジャッジが2もしく3という高い加点を与え、自己ベストに0.19点と迫るハイスコアで1位、トータルでは自己ベストをマークし、完全優勝でGP5勝目に花を添えました。
 圧倒的な優勝候補として迎えた自国開催のスケートアメリカでしたが、まさに期待どおりの素晴らしい演技でした。兄妹ならではの一体感、そして確固たる技術に由来する質の高いエレメンツの数々はほかのカップルの追随を許さないものがありますね。2大会とも優勝で4年連続となるファイナル進出も決めましたので、名古屋でもベストの演技が見られることを願っています。スケートアメリカ優勝、おめでとうございました。

 2位は元世界王者、イタリアのアンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ組です。ツイズルやリフトはレベル4を取りましたが、パターンダンスやステップではレベルの取りこぼしがあり、思ったように技術点は伸ばせず自己ベストから3点ほど低い得点で2位発進となります。FDはステップ2つ、リフト1つがレベル3にとどまり、やはり技術点が伸び悩み、108.93点でフリーも2位となりましたが、総合2位で2年ぶりのファイナル進出は確定させました。
 技術面でいくつかのもったいない綻びがあり、NHK杯のスコアからは下がってしまいました。そういった部分は今後の課題として残りましたが、ファイナルではそのあたりもしっかり修正してくるでしょうから、好演技に期待したいですね。

 3位はロシアのヴィクトリア・シニツィナ&ニキータ・カツァラポフ組。SDは「Agua de beber/Balumukeno/Batacuda Brasileira」。パターンダンス、ステップはそれぞれレベル1、2となり、70点台に乗せることはできず3位にとどまります。FDは「ピアノ協奏曲第2番/ヴォカリーズ」。後半のステップが1つレベル2になる取りこぼしはありましたが軒並み加点はコンスタントに積み重ね、演技構成点でも2項目で9点台をマークし、自己ベストを3点以上更新しフリーも3位。トータルでも3位と順位は変わりませんでしたが、2年ぶりにGPの表彰台に上りました。
 ショート、フリーともに細かなミスはありましたが、おおむね安定した演技で着実に力をつけていることを示した試合になったのではないかと思います。特にフリーの方は技術点、演技構成点ともに上積みできていて、2週間という短い期間ながら改善の跡がうかがえましたね。一方でショートの方での取りこぼしが目立ってしまったので、ショート、フリーともに揃えることがこのあとのシーズンの課題と言えるでしょうか。オリンピック出場の可能性は大いにあるカップルだと思いますから、ぜひ頑張ってほしいですね。

 日本の村元哉中&クリス・リード組は7位となりました。

c0309082_16142949.jpg

c0309082_16185886.jpg

 SDは前半のステップがレベル2、パターンダンスがレベル1とあまり点数を伸ばせず、ただNHK杯よりはスコアは上積みして6位と好位置につけます。
 FDは後半のステップがレベル2と意図したところとは違ってしまいましたが、全体的には加点もまずまず積み重ね、NHK杯からは約1点ほど低い得点でフリー8位、総合7位で大会を終えました。
 ショート60点台、フリー90点台という一定の目標はクリアしていると思うのですが、現在の村元&リード組にとってこのスコアというのは当たり前の最低限のレベルになっていて、まだまだ物足りないのかなと思います。さらにここから一段階も二段階もレベルアップするためには、やはりパターンダンスやステップのレベルを確実に取っていきたいですね。非常に緻密な技術が要求される部分ですから簡単に達成できることではないでしょうが、かつて二人が掲げていた世界のトップ10というのも見据える上では必須条件になってきますから、さらなる進化に期待したいと思います。



 スケートアメリカ2017、男子&アイスダンスは以上です。男子は下馬評どおりチェン選手が優勝したとはいえ大荒れの演技で、ほかの選手たちを見渡しても4回転に苦労して、そのためにプログラムそのものが映えないという姿も多く見られて、少し残念に感じました。その中でNHK杯で輝いたベテラン2人―リッポン選手、ボロノフ選手―が今大会も安定感という点では際立っていて、経験豊かなベテランならではの自分らしい在り方、戦い方というのを熟知していて、どんな状況でも揺らがない軸というのが見える演技で印象に残りました。
 ということで、ここで男子とアイスダンスのファイナル進出者をまとめたいと思います(敬称略)。


《男子シングル》

①ネイサン・チェン(アメリカ):30ポイント ロシア大会優勝、アメリカ大会優勝
②宇野昌磨(日本):28ポイント カナダ大会優勝、フランス大会2位
③ミハイル・コリヤダ(ロシア):26ポイント ロシア大会3位、中国大会優勝
④セルゲイ・ボロノフ(ロシア):26ポイント 日本大会優勝、アメリカ大会3位
⑤アダム・リッポン(アメリカ):26ポイント 日本大会2位、アメリカ大会2位
⑥金博洋(中国):22ポイント 中国大会2位、アメリカ大会4位
―――
補欠⑦ジェイソン・ブラウン(アメリカ):22ポイント カナダ大会2位、日本大会4位
補欠⑧ハビエル・フェルナンデス(スペイン):20ポイント 中国大会6位、フランス大会優勝
補欠⑨ミーシャ・ジー(ウズベキスタン):20ポイント ロシア大会4位、フランス大会3位



《アイスダンス》

①ガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組(フランス):30ポイント 中国大会優勝、フランス大会優勝
②テッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組(カナダ):30ポイント カナダ大会優勝、日本大会優勝
③マイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組(アメリカ):30ポイント ロシア大会優勝、アメリカ大会優勝
④マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組(アメリカ):26ポイント 中国大会2位、フランス大会2位
⑤マディソン・ハベル&ザカリー・ドノヒュー組(アメリカ):24ポイント カナダ大会3位、日本大会2位
⑥アンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ組(イタリア):24ポイント 日本大会3位、アメリカ大会2位
―――
補欠⑦エカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組(ロシア):24ポイント ロシア大会2位、中国大会3位
補欠⑧ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組(カナダ):22ポイント カナダ大会2位、フランス大会4位
補欠⑨アレクサンドラ・ステパノワ&イワン・ブキン組(ロシア):22ポイント ロシア大会3位、フランス大会3位




 男子は昨年までファイナルを4連覇している圧倒的な王者、羽生結弦選手が日本大会を棄権したことによってレースから脱落。さらに前世界王者ハビエル・フェルナンデス選手は中国大会時に体調を崩していた影響で表彰台を逃し、フランス大会では優勝したもののポイントランキング上位6人には入れず。元世界王者のパトリック・チャン選手もカナダ大会で精彩を欠いた演技に終わった後、カナダ選手権に向けて調整を優先するとの理由で日本大会を辞退。という、ファイナルおなじみのメンバーが不在となり、勢力図、様相がシリーズ前の予想からはガラリと変貌しました。
 そうした状況で優勝候補と言えるのは宇野選手とチェン選手でしょう。2人の2大会の合計スコアも競っていますし、ジャンプ構成の難易度ではやはりずば抜けている2人と言えます。また、2人ともGP初戦は好調だったものの、2戦目で調子を落としてという点でも経緯が似通っていて、ファイナルでは2戦目の反省を踏まえてしっかり状態を上げてくると思うので、300点超えの争いというのを期待したいですね。
 一方、銅メダル争いという点においては残り4選手を比べると、過去の実績、今季の成績、現時点での実力を総合して考えると拮抗していて、予想が難しいですね。難度の高い4回転を跳べるということで言えば、4ルッツを持っているコリヤダ選手、金選手は強いですが、コリヤダ選手は4ルッツを跳び始めてから日が浅いのでまだ安定感には疑問符がつきますし、金選手は怪我の影響からアメリカ大会では4ルッツを跳ばなかったので、ファイナルの時点でどれだけ体の調子が戻っているのか、ベストなジャンプ構成を組めるのかによって、場合によっては優勝争いにも加わってきそうです。
 そして、ボロノフ選手、リッポン選手の両ベテラン勢は、ジャンプ構成の難度では劣る分、全てのエレメンツを確実に、さらに高い質でまとめる必要があります。しかし、安定感ではほかの4選手を上回っていると言っても過言ではないですから、シリーズ2戦と同じような演技ができれば表彰台に食い込む可能性も充分ありますね。

 アイスダンスは昨季の世界選手権のメダリスト3組が順当に6試合の優勝を分け合い、4、5、6位の3組も実力者揃いで想定内の顔ぶれかなと思います。
 優勝争いは間違いなくパパダキス&シゼロン組、ヴァーチュー&モイア組の僅差の戦いになると思いますが、世界最高得点の更新も視野に入れて、そしてオリンピックの前哨戦としての意味合いも濃い試合になるでしょうから、ここでどういったスコア、順位になるかがオリンピックを占うこととなりそうですね。
 銅メダルに最も近いのはやはりシブタニ兄妹でしょう。いつもの演技ができれば確実に3位には入ってくると思います。
 4、5、6位のカップルはパーソナルベストも拮抗していますが、ハベル&ドノヒュー組は先日のカナダ大会でパーソナルベストをマークしたばかりなので、勢いとしてはこのカップルが一番ありますね。ただ、チョック&ベイツ組もカッペリーニ&ラノッテ組もシリーズ2戦では実力を出し切れていない印象ですので、ファイナルでさらなる上積みができれば、上位に迫れるのではないでしょうか。



 さて、次の記事はスケートアメリカ2017、女子&ペアです。しばしお待ちください。


※以下、2017年12月1日に追記した部分です。


 GPファイナルに関して、欠場選手と追加選手が国際スケート連盟によって発表されましたので追記します。
 男子はファイナル進出を決めていた中国の金博洋選手が辞退し、補欠1番手だったアメリカのジェイソン・ブラウン選手が繰り上がりで出場することが判明しました。
 金選手はスケートアメリカで得意の4ルッツを1本も跳ばず、足を怪我していることを示唆していましたが、残念ながら辞退となりました。故障の状態がどの程度のものなのかはわかりませんが、オリンピックのことを見据えての判断なのだと思います。オリンピックの頃にはまた元気な姿を見せてくれるのを待ちたいですね。
 一方、ブラウン選手は初めてのファイナル出場。GP初戦のスケートカナダで2位とファイナルのチャンスを引き寄せながら、2戦目のNHK杯では4位となり惜しくもファイナルを逃していましたから、挽回するチャンスが巡ってきたというところですね。個人的にはとても好きな選手の一人なので、ファイナル出場は嬉しいですし、特に親日家として知られるブラウン選手ですから、また日本に来てくれるというのも喜ばしいですね。チャンスを活かして頑張ってほしいと思います。


:男子メダリスト3選手のスリーショット画像、リッポン選手の画像、無良選手の画像、アイスダンスメダリスト3組の画像、村元&リード組のFDの画像は、マルチメディアサイト「Zimbio」から、チェン選手の画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、ボロノフ選手の画像は、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、金選手の画像は、スケート情報サイト「icenetwork」のフォトギャラリーから、閻選手の画像、マイナー選手の画像、村元&リード組のSDの画像は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
スケートアメリカ2017・女子&ペア―宮原知子選手、シーズンベストでGP2勝目 2017年11月29日

[PR]
by hitsujigusa | 2017-11-28 17:54 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_02111234.jpg


 グランプリシリーズ17/18の第5戦目、フランス国際2017の男子とペアの記事です。
 男子は前世界王者、スペインのハビエル・フェルナンデス選手が優勝しました。2位には日本の宇野昌磨選手が入り、3年連続のファイナル進出を決めました。3位はウズベキスタンの実力者ミーシャ・ジー選手で、GP初表彰台となりました。
 ペアは欧州王者、ロシアのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組が制し、GP2連勝でファイナルの切符を手にしています。

ISU GP Internationaux de France 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 優勝はスペインのベテラン、ハビエル・フェルナンデス選手です。

c0309082_02191811.jpg

 SP冒頭は4トゥループ+3トゥループ、これを完璧に決めて2.43点という極めて高い加点を得ます。続く4サルコウもクリーンに下りて加点2.29点。さらに3アクセルも成功させて2.43点の加点とフェルナンデス選手らしいジャンプを連発。ステップシークエンス、スピンも全てレベル4と隙の無い演技を見せ、自己最高に迫る107.86点をマークし、2位に13点以上の差をつけてトップ発進します。
 フリーは単独の4トゥループから、これは着氷でフリーレッグが若干氷に触れてしまい加点は1点どまりに。続く4サルコウからの連続ジャンプは4+3の予定が4+2にこそなりますが成功。続いてイーグルからの3アクセルは軸が傾き着氷も乱れます。後半最初は2本目の4サルコウでしたが、これは軸が斜めになり転倒。次いで3ループは着氷でオーバーターン。さらに2本目の3アクセルは回転不足で転倒とミスが重なります。次の3ルッツはクリーンに下りたものの、最後の3+1+3はステップアウト。しかしステップシークエンス、スピンはショートに続き全部レベル4と取りこぼしなくまとめ、175.85点でフリー2位、総合1位でショートのアドバンテージで逃げ切りました。
 ショートはまさに圧巻で、いつものフェルナンデス選手が戻ってきたかなと思わせられましたが、フリーは後半に2度の転倒を含めミスが相次ぎ、まだ完全復調とは言えない演技でしたね。まさかの6位に終わった中国杯の時は胃痛に苦しめられていたとのことで、その体調不良が今大会も尾を引いていたのかフリーの後半からの崩れ方が極端な感じがしてちょっと気になりますね。
 プログラムはショートもフリーもフェルナンデス選手らしさ溢れた、名作の予感を漂わせる作品になっていますから、ファイナルで彼の姿を見られないのは残念ですが、オリンピックでぜひ完成させてほしいですね。その前に例年どおりのスケジュールで行けば次戦はスペイン選手権になると思いますが、納得のいく演技ができるよう願っています。フランス国際優勝、おめでとうございました。


 2位は世界選手権2017銀メダリスト、日本の宇野昌磨選手です。

c0309082_14265912.jpg

 ショートはまず代名詞の4フリップ、しかし回転不足で転倒します。スピンとステップシークエンスはレベル4。後半に入り得点源の4トゥループ+3トゥループ、これをクリーンに決めて加点を得ると、得意の3アクセルは若干乱れ減点を受けますが最小限のミスにとどめ、残り2つのスピンもレベル4とまとめ、93.92点で2位と好発進します。

c0309082_14334648.jpg

 フリーはスケートカナダからジャンプ構成を変えて臨み、まずは4ループから、これをクリーンに着氷し加点1.86点を獲得すると、得意の3アクセルも成功で2.57点の加点を得ます。3つ目のジャンプは若干苦手としている3ルッツでしたが、着氷でオーバーターンし減点を受けます。後半に3つの4回転を組み込み、最初は4フリップでしたが回転不足で両足着氷に。次いで4トゥループも回転不足で転倒となります。2本目の4トゥループは着氷でこらえ何とか下りますがコンビネーションにする余裕はなく、3アクセル+1ループ+3フリップは転倒。最後の3+2は決め、回転の速いスピンで演技を締めくくりましたが、演技後は疲労の色を濃く漂わせました。得点は179.40点でフリーは1位、トータルでは2位と逆転は叶いませんでした。
 前回のスケートカナダから帰国後、インフルエンザにかかり4日間寝込み、万全な練習ができなかったという宇野選手。また、今大会のリンクの氷の質も宇野選手には合っていなかったようで、そういった部分でもスケーティングの面からも苦労させられたようですね。宇野選手といえば高難度の構成のフリーでも最後までパワー、エネルギッシュさが衰えないスタミナのある選手というイメージなのですが、今回は中盤から疲れがうかがえて、終盤にいくに従って勢いが増していくような宇野選手らしさが見られず、演技のスケールという点でも少し小さくなっていたような気がします。ただ、技術面の問題ではなく、病み上がりで練習が足りなかったことが原因というのは明らかなので、いつもどおりに調整していければ地元開催のファイナルでは好演技が期待できますから、次こそは満面の笑みが見られることを楽しみにしています。


 3位はウズベキスタンのベテラン、ミーシャ・ジー選手です。

c0309082_14594712.jpg

 SP冒頭は得点源の3アクセル、これをしっかり回り切って確実に成功させると、続く3+3もクリーンな着氷。後半の3フリップは余裕のある着氷でしたが、踏み切りが不正確とされ加点は付かず。しかし目立ったミスなくエレメンツを揃え、自己ベストの85.41点で6位につけます。
 フリーはまず3アクセル+1ループ+3サルコウの難しい3連続ジャンプから、これを全てクリーンに回り切って成功させ1.57点の加点を得ます。続く2本目の3アクセルも着氷。3フリップはショート同様に踏み切りが不正確でしたが、わずかに加点が付きます。後半に入り得点源の3+3をクリーンに下りると、3ルッツ、3ループ、2アクセル、2アクセル+2トゥループと全てのジャンプを完璧に着氷。フィニッシュしたジー選手は片手で力強く拳を握り締め、手応えを露わにしました。得点は172.93点でフリー3位、総合3位と順位を上げ、ウズベキスタンに初めてGPのメダルをもたらしました。
 ショート、フリーともにノーミス、そしてまさに魂で演じているというような心に訴えてくる素晴らしい演技でした。一つ一つのエレメンツが丁寧で、かといってエレメンツだけに集中するのではなく、表現そのものに重きを置いて指先まで気を配れる細やかさはやはり唯一無二の魅力ですね。また、自分自身でプログラムを振り付けているからこその音楽に対する理解度、調和というのはほかの選手とはプログラムへの入り込み方が異なっていて、彼ならではだなと改めて感じました。
 こうしたジー選手の演技を競技会で見られるのもあと数えるほどしかないのだと思うと今から寂しくなってきますが、引退のその日まで悔いなく力を出し切ってほしいと思います。


 4位はロシアの新星アレクサンドル・サマリン選手です。

c0309082_15310454.jpg

 SPから新たな武器となった4ルッツを組み込み、その4ルッツからの連続ジャンプを着氷させますが、4ルッツはアンダーローテーション(軽度の回転不足)となります。続く4トゥループは成功。後半の3アクセルもクリーンに決めて加点1.86点を獲得し、スピン3つもレベル4と丁寧にこなし、自己ベストを7点以上上回る81.51点で3位と好位置につけます。
 フリー冒頭は大技4ルッツ、着氷が乱れますが回転は認定されます。しかし4トゥループは転倒。直後の3アクセルは完璧で加点2と高評価を得ます。後半最初は3アクセル+2トゥループ、これを下りると、3ルッツ+2トゥループも成功。さらに単独の3ルッツも着氷しますが、3ループ、2アクセルは疲れの影響か着氷でよろめきます。演技を終えたサマリン選手は肩で息をし、悔しさをのぞかせました。得点は161.62点でフリー4位、総合では自己ベストを更新しましたが4位となり、2戦連続での表彰台は逃しました。
 前回のスケートカナダで4ルッツを完璧に成功させて銅メダルと飛躍したサマリン選手。今大会もおおむねジャンプは安定していましたが、クオリティーの面ではあまり満足できる出来ではなかったのかなと思います。課題としてはショートとフリーを揃えること、また、フリーの後半で勢いが失速してしまうのが演技の見栄えとしてはもったいないという感じがします。現時点では演技序盤の4ルッツや4トゥループにかなりのエネルギーを注ぎ込まざるをえず、その分ほかのエレメンツやつなぎの面がおろそかになってしまう難点はあるかと思いますが、シニア1季目の選手だからこそできるチャレンジも多々あるでしょうから、今後のシーズンも攻めの演技でオリンピック出場目指して頑張ってほしいですね。


 5位はイスラエルの実力者アレクセイ・ビチェンコ選手です。

c0309082_16434366.jpg

 SP冒頭は3アクセル、これをパーフェクトに成功させて加点1.71点を得ると、続く4トゥループは着氷で前のめりになるもののこらえます。後半の3+3はクリーンな回転と着氷で跳び切り、ジャンプは全てミスらしいミスなく終えましたが、ステップシークエンスがレベル2になる取りこぼしがあり、86.79点とわずかに自己ベストには及ばず、5位発進としました。
 フリーは冒頭に2本の4回転を固め、まずは4トゥループ+3トゥループを完璧に成功、さらに単独の4トゥループも成功と好調な滑り出しを見せます。しかし、3ループはパンクして2回転になります。後半は3アクセルから、これはクリーンに着氷し高い加点。ですが3アクセルからの連続ジャンプは2つ目が1回転に。次いで3ルッツは2回転に抜けます。3+1+3は最後のジャンプが2回転になりますが、2アクセルは難なく成功。演技の中でもエレメンツごとにバラつきのある内容となり、フィニッシュしたビチェンコ選手は顔を曇らせました。得点は160.65点でフリー5位、総合5位と2週連続での表彰台には届きませんでした。
 NHK杯から2週連続での試合となったビチェンコ選手。ショートは上々の内容でしたが、フリーはさすがに疲れが影響したのか後半に複数失敗を犯してしまいました。4回転はノーミスだっただけに少しもったいなかったですね。ただ、オリンピックに向けてNHK杯、今大会と自信をつけるには充分な経験ができたと思いますので、GP2試合で得た収穫と課題を活かしてオリンピックでもベストな演技を目指してほしいですし、その前には欧州選手権もありますから、そちらでは表彰台を狙えるのではないでしょうか。


 6位はジョージアの成長株モリス・クヴィテラシヴィリ選手です。

c0309082_18281225.jpg

 SPは3アクセルから、これを抜群の高さで決め加点2。続いて4サルコウ+3トゥループも成功しますが、後半の4トゥループは惜しくも転倒。スピンは全てレベル4ときっちりこなして、自己ベストを6点以上更新し86.98点で5位と好位置につけます。
 フリーもまずは3アクセル、着氷でバランスを崩しかけますが耐えて最小限のミスに抑えます。続く4サルコウは転倒。4トゥループ+3トゥループはクリーンに下ります。後半は2本目の4トゥループからでしたが、パンクして2回転に。3+2は成功させますが、3ループは再びパンクして2回転。3フリップは決め、最後の2アクセル+1ループ+3サルコウも何とか着氷しますが、精彩を欠いた内容となりました。得点は153.52点と自己ベストより10点以上低い得点で8位、総合6位と順位を落としました。
 ロステレコム杯で自己ベストを大幅に更新し5位と健闘し、一躍注目を浴びたクヴィテラシヴィリ選手。今大会はショート、フリーともに4回転の転倒が一つずつあり本調子ではありませんでした。どちらも失敗の原因は回転不足ではなく空中での軸の傾きで、高さだったりスピードは問題ないように見えるので、力が入りすぎてしまうとかちょっとしたズレで傾いてしまうのかもしれませんね。演技自体の勢いは存分に感じられましたので、あとはジャンプの精度が課題でしょうか。細部までより気を配れるようになるともっと良いスケーターになっていく伸びしろがあると思うので、今後のシーズンのさらなる躍進に期待したいですね。



 ここからはペアです。

c0309082_20325487.jpg


 優勝は世界選手権2017銅メダリスト、ロシアのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組。SPは冒頭の3ツイストを完璧に決めて加点2.1を引き出すと、サイドバイサイドの3トゥループ、スロー3ループもクリーンに成功。残り4つのエレメンツは全てレベル4とノーミスにまとめ、演技時間超過による減点1こそあったものの、77.84点で首位発進します。フリー冒頭は大技4ツイスト、レベルこそ2にとどまりましたがしっかり1点以上の加点を獲得。さらに3サルコウ、スロー3サルコウと完璧に成功させます。しかし続く3トゥループからの連続ジャンプは単独の1回転に。その後は大きなミスなくエレメンツをこなし、140.36点でフリー2位、総合1位となり、GP3勝目を上げました(ファイナル含む)。
 今回もいつもどおりの安定感を発揮し、オリンピックに向けて順調に仕上がってきていることをアピールしたタラソワ&モロゾフ組。弱点らしい弱点も見当たらないペアですが、強いてあげるとしたらスピンやリフトなどもう少し加点を上積みできるエレメンツがあるかなと思うので、そのあたりがさらなる強化ポイントと言えそうです。2連覇が懸かるファイナルではすでに出場が決定している世界王者の隋文静(スイ・ウェンジン)&韓聰(ハン・ツォン)組や世界選手権銀メダルのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組といよいよマッチアップとなりますから、オリンピックの前哨戦としても楽しみですね。

 2位はフランスの実力者ヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ組。SPはスロー3ルッツの着氷が若干詰まって加点が伸び悩んだ以外は高い加点を積み重ね、自己ベストに約2点と迫る73.18点で2位と好発進。フリーは冒頭の3ツイストがレベル1より下のB(ベーシック)と判定され得点を伸ばせず。しかし次の3+2+2のコンビネーションジャンプは成功。大技のスロー4サルコウは両足着氷となったものの最小限のミスに抑え、その後のエレメンツは全てクリーンに、安定感を持ってこなし、141.14点でフリー1位、総合では2位とGP自己最高位タイをマークしました。
 細かなミスはありつつも大崩れしないところは1年前の今頃と比べてもかなり進化したと感じさせ、実力的にもトップペアの仲間入りしたことを証明しましたね。ただ、フリーの3ツイストのミスはもったいない部分で、こういった取りこぼしをなくせれば世界選手権のメダリストたちにももっと迫れるペアになるのではないかと思います。ファイナルに進出できるかどうかはスケートアメリカの結果次第ですが、次戦がどの試合になるとしても、またジェームズ&シプレ組らしい演技で観客を沸かせてほしいですね。

 3位はイタリアのニコーレ・デラ・モニカ&マッテオ・グアリーゼ組。ショートの演目は「Magnificat」。3ツイストがレベル3になった以外は全てレベル4を揃え、スロージャンプやソロジャンプもしっかりまとめ、わずかながら自己ベストを更新して3位と好位置につけます。フリーは「Tree of Life Suite」。ショートで取りこぼしのあった3ツイストでレベル4を獲得し、そのほかもミスらしいミスといえばサイドバイサイドの3トゥループが2回転になったくらいで、おおむね予定どおりにエレメンツをこなし、自己ベストに迫るスコアでフリーも3位、総合では自己ベストをマークし3位となり、GP初表彰台を射止めました。
 今季はチャレンジャーシリーズのロンバルディアトロフィーを皮切りに、フィンランディアトロフィー、GPの中国杯と全て190点台をマークし好調さをうかがわせていたデラ・モニカ&グアリーゼ組。今大会は中国杯で露わになった課題を修正し、短期間ながら成長を感じさせる演技で見事に初メダルを手にしました。28歳と29歳のペアで遅咲きと言えば遅咲きですが、まだまだこれから内容も進化させて、得点も大いに伸ばす余地のある楽しみなペアですね。



 フランス国際2017、男子&ペアは以上です。
 ここでそれぞれのファイナル進出者をまとめます。男子は宇野昌磨選手、ミハイル・コリヤダ選手の2人のみが決定。第5戦が終わった時点で2人しか決まっていないというのは異例の少なさですが、例年であれば羽生結弦選手やハビエル・フェルナンデス選手やパトリック・チャン選手といった実力者が順当にファイナルの切符を手にしていく中、今年は彼らが不調や怪我などでドロップアウトという稀なGPとなっていて、最後のスケートアメリカまでファイナリストの席に多めの空席がある状態になっています。そんな中、ファイナルに進出する可能性が有力なのは、スケートアメリカに出場してくるネイサン・チェン選手、セルゲイ・ボロノフ選手、金博洋(ジン・ボーヤン)選手、アダム・リッポン選手といった面々。特にチェン、ボロノフの両選手は初戦で優勝しているため、万一表彰台を逃して4位や5位になったとしても条件的に優位なので、ファイナルに進める確率は高いかなと思います。金選手、リッポン選手は初戦で2位ですから確実に表彰台に乗りたいですが、もし4位であればすでに2試合終えて22ポイント獲得しているジェイソン・ブラウン選手とポイントで並び、スコア合計で争うことになるかもしれません。スケートアメリカの優勝争いとしてはチェン選手が一歩リードしていると思いますが、2、3位争いとしてはほかの3選手がどういう順番になってもおかしくないので、予想するのは難しいですね。そして、仮に金選手やリッポン選手が大崩れすることがあれば、20ポイント獲得しているフェルナンデス選手にもファイナル進出のチャンスが回ってくるかもしれません。
 一方のペア。隋&韓組、タラソワ&モロゾフ組、クセニア・ストルボワ&ヒョードル・クリモフ組の3組がファイナル決定。スケートアメリカにはスケートカナダを制したメーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組、同じくスケートカナダで2位だったサフチェンコ&マッソ組、中国杯で2位だった于小雨(ユー・シャオユー)&張昊(ジャン・ハオ)組、同じく中国杯で3位だったカーステン・ムーア=タワーズ&マイケル・マリナロ組が出場してきますが、すでに2試合を消化して24ポイントのジェームズ&シプレ組と合わせ、この5組によって残りの3枠を争うことになりそうです。やはり初戦で優勝しているデュハメル&ラドフォード組は条件面で強く、たとえ4位でもファイナルに進めそうです。サフチェンコ&マッソ組も最近の状態の良さを見ていると確実に優勝争いをしてくると思いますので、ファイナルの可能性は濃厚です。となると、あと1枠は于&張組、ムーア=タワーズ&マリナロ組、ジェームズ&シプレ組の争いかなと思いますが、ムーア=タワーズ&マリナロ組は必ず2位以上になる必要があるので、なかなか厳しそうです。最終的には于&張組とジェームズ&シプレ組がスコア合計で競ることになるのではないかなと個人的には予想します。
 ということで、今年のGPシリーズもスケートアメリカ、そしてファイナルを残すのみ。やはり五輪シーズンとあって例年よりも各選手の仕上がりが早いように思われますが、スケートアメリカは一体どんな試合展開になるのか楽しみです。では。


:男子メダリスト3組にスリーショット画像、宇野選手のSPの画像、ビチェンコ選手の画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、フェルナンデス選手の画像、宇野選手のフリーの画像、ジー選手の画像、サマリン選手の画像、クヴィテラシヴィリ選手の画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、ペアメダリスト3組の画像は、スケート情報サイト「icenetwork」の公式サイト内のフォトギャラリーから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
フランス国際2017・女子&アイスダンス―アリーナ・ザギトワ選手、フリー歴代2位の高得点でGP2勝目 2017年11月27日

[PR]
by hitsujigusa | 2017-11-22 02:24 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_23563866.jpg


 グランプリシリーズ17/18、第5戦のフランス国際がフランスのグルノーブルにて開催されました。グルノーブルでの開催は初めてで、大会の名称も昨季のフランス杯(Trophee de France)からフランス国際(Internationaux de France)へと変わり、今までとは少し違った雰囲気となりました(名称に関しては今年もフランス杯としているメディアが多いですが、当ブログではフランス国際とします)。
 そんな装いを新たにした今年のフランス大会の女子を制したのは、ロシアの新星アリーナ・ザギトワ選手。フリーでは世界歴代2位のハイスコアを叩き出し、ショート5位から逆転優勝を果たしました。2位に入ったのは同じくロシアのマリア・ソツコワ選手で、こちらもパーソナルベストをマーク。3位は世界選手権2017銀メダリスト、カナダのケイトリン・オズモンド選手となっています。
 アイスダンスは地元フランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組が自身が持つ世界最高得点をまたもや更新し圧勝しました。

ISU GP Internationaux de France 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 圧巻の優勝劇を繰り広げたのは世界ジュニア女王、アリーナ・ザギトワ選手です。

c0309082_00210458.jpg

 SPは前半はスピン、ステップシークエンスのみの構成で、2つともいつもどおり丁寧にこなしてレベル4と高い加点を取ります。後半に入り最初のジャンプは得点源の3ルッツ+3ループ、しかしファーストジャンプが回転不足となった上に転倒してしまいます。続いて単独の予定だった3フリップに3ループを付けますが、こちらも回転が足りずステップアウト。最後の2アクセルは難なく決め、終盤の2つのスピンもまとめましたが、ザギトワ選手は放心したような表情を見せました。得点は62.46点で5位にとどまります。
 フリーもジャンプは全て後半の予定。ゆったりとした曲調の中、コレオシークエンス、スピン、ステップシークエンスをこなし、ようやく後半、最初はショートで失敗した3ルッツ+3ループ、これを今度は完璧に着氷させます。次いで2アクセル+3トゥループも成功。3フリップからの3連続も下り、得点源となるコンビネーションジャンプを全てクリーンに決めます。残り4つの単独ジャンプも小気味よく、「ドン・キホーテ」の軽やかなリズムに合わせるようにポンポンと成功させ、観客から万雷の拍手を送られました。得点は世界歴代2位となる151.34点でもちろん1位、総合1位と一気に追い上げてGP2勝目を上げました。
 SPはまさかのミスの連続で、さすがのザギトワ選手も優勝を意識してプレッシャーがかかってきたのかと思わせられましたが、フリーは一転、圧巻としか言いようのない素晴らしい演技でしたね。そして何といっても151.34点。150点を超えたのは世界最高得点保持者のエフゲニア・メドベデワ選手と、バンクーバー五輪金メダリストのキム・ヨナさんしかいませんから、シニア1年目で、しかもまだシーズン前半のこの時期に偉大なる先輩たちに肩を並べたというのは凄いという言葉しか出てきません。それでもまだ今季は減点のないショートというのは一度もなくて、これでショートを完成させたらどんな高みまで上り詰めてしまうんだろうと、今から次戦のファイナル、さらにはその先のオリンピックが楽しみなような怖いような気がして仕方ないですね。また、フリー150点台というパーソナルベストを叩き出したことによって、世界女王のメドベデワ選手の絶対的な立場にも多少は影響を与えるというか、もし彼女にほんの少しでも乱れがあれば、場合によってはザギトワ選手に足をすくわれる可能性もあるんじゃないかという気もします。技術点では単純に基礎点の合計ではザギトワ選手がメドベデワ選手を上回りますし、さらに加点を稼ぐという点においてもザギトワ選手はメドベデワ選手に引けを取りません。演技構成点でもザギトワ選手は今回のフリーですでに9点台目前まで到達しているので、次戦でまた同じような演技をすれば確実に9点台には乗せてくるでしょうから、そういった意味でもジリジリとメドベデワ選手に迫り、脅威になってきているなと感じますね。
 驚異の大型新人ザギトワ選手が今季中に一体どこまで得点を伸ばしていくのか、オリンピックの優勝争いにも絡んでくるのか等々、興味は尽きませんが、まずは次のファイナルでどんな演技を見せてくれるのか要注目です。フランス国際優勝、おめでとうございました。


 2位はロシアの有望株マリア・ソツコワ選手です。

c0309082_02202769.jpg

 ショート冒頭は3ルッツ+3トゥループ、両方のジャンプで片手を上げて跳びクリーンに着氷させます。後半の3フリップは着氷でオーバーターン。最後の2アクセルは問題なく決め、67.79点で2位と好位置につけます。
 フリーもまずは3ルッツ+3トゥループ、これをパーフェクトに成功させると、次いでショートではミスのあった3フリップもしっかり着氷。レベル4のレイバックスピンとステップシークエンスをこなして後半、まず3ループをスムーズに決めると、3+1+3も着氷。その後も全てのジャンプを予定どおりに決め、自己ベストの140.99点でフリーも2位、総合2位で2年連続となるファイナル進出を決めました。
 ショート、フリーともに大きなミスなくまとめ、安心感を持って見ていられる演技だったなと思います。スケートカナダでも2位でしたがこの時は細かい回転不足がいくつもあったので、同じ2位でもまた意味合いの異なる、価値の違う2位なんじゃないかなと感じますね。また、シニアデビューシーズンだった昨季と比べて今季はぐっと表現力がアップしたなという印象で、元々エレガンスさが持ち味のスケーターですが、今季のSP「白鳥の湖」とフリー「月の光」はそうしたソツコワ選手の魅力をよく引き出せていて、プログラムに体がしっかりなじんでいる感じが見て取れます。
 ファイナルでもソツコワ選手らしい演技を見せて、オリンピック選考にも繋げてほしいですね。


 3位はカナダのケイトリン・オズモンド選手です。

c0309082_14380301.jpg

 SP冒頭は得点源の3フリップ+3トゥループ、これはセカンドジャンプが2回転になり予定どおりとはならず。続いて3ルッツも着氷で軽く手をつき減点。後半の2アクセルは問題なく決め、ステップシークエンス、スピンは全てレベル4とさすがの底力を見せつけ、69.05点で首位発進とします。
 フリーは前日決められなかった3フリップ+3トゥループから、今度はこれを完璧に決めて1.8点という極めて高い加点を獲得します。次の2アクセル+3トゥループは着氷でオーバーターン。直後の3ルッツはパーフェクトに成功させます。後半最初は単独の3ループ、しかしこれは転倒。ですが続く3フリップはクリーンに成功させ、さらに3+2+2のコンビネーションジャンプも決めます。最後の2アクセルは1回転になってしまい、演技を終えたオズモンド選手は複雑そうな表情を浮かべました。得点は137.72点でフリー3位、総合でも3位と順位は落としましたが、ファイナル進出は確定させました。
 昨季から継続しているショートではほとんどミスらしいミスがなく安定感抜群だったのですが、今大会はそのショートから綻びが見えて本来のオズモンド選手の姿ではありませんでしたね。フリーも後半はやはりスタミナの問題なのかミスが複数あり、終盤に向けてどんどん盛り上がっていく「ブラック・スワン」の力強さを表現し切れなかったかなと感じました。ただ、その中でもステップやスピンは丁寧にこなしていて取りこぼすことはなく、ミスがあっても余裕というのはうかがえましたね。
 ファイナルでは納得のいく演技をして、満面の笑みが見られることを願っています。


 4位となったのは日本の三原舞依選手です。

c0309082_15114168.jpg

 ショートはまず得点源の3ルッツ+3トゥループから、ファーストジャンプはクリーンでしたが、セカンドジャンプがフェンスに近づきすぎたためか途中で空中がほどけてダウングレード(大幅な回転不足)で下りてしまいます。動揺を引きずったのか直後のスピンもレベル2と取りこぼし。後半の2アクセルと3フリップはクリーンに成功させ、終盤のステップシークエンスとスピンはレベル4と丁寧にこなし、64.57点で4位につけます。

c0309082_15540045.jpg

 フリーも冒頭は3ルッツ+3トゥループ、これは流れと余裕のあるランディングで1.2点の加点を得ます。続いてコレオシークエンスも柔らかなスケーティングで魅せ加点1.1。2アクセルを難なく決め、前半は予定どおりにクリアします。後半に5つのジャンプ要素を固め、最初は3フリップを完璧に成功。次いで2アクセル+3トゥループでしたが、2アクセルの着氷で若干こらえて単独に。3ループからの3連続ジャンプは最後のジャンプで詰まり加点は伸びず。続く単独の3ルッツに急遽3トゥループを付けてきれいに成功。最後の3サルコウは両手を上げて跳び切り、フィニッシュした三原選手は喜びを露わにしました。しかし得点は137.55点とシーズンベストには及ばず5位、総合4位と表彰台には届きませんでした。
 中国杯、今大会とも4位と表彰台まであと一歩の惜しい試合が続いた三原選手。両大会ともやはりショートでのちょっとした出遅れが最後まで響いていて、フリーは安定感があるだけにもったいないなという印象ですね。昨季の後半からショートで出遅れてフリーで挽回するという試合が多く、三原選手の中でショートに対する苦手意識がないといいのですが、中国杯も今大会も慎重さ、硬さが気になりましたね。そしてもう一つ懸念としてはフリーの点が今ひとつ伸び悩んだことで、目に見えて分かりやすいジャンプの失敗はなかったにもかかわらず思ったほど演技構成点が伸びておらず、演技そのものがまだジャッジから確固たる評価を得られていないのかなという感じがしました。ただ、これはショートからの流れというのもあって、ショートで三原選手らしい演技をすることでフリーにも繋がってくると思うので、やはり鍵はショートと言えますね。
 次戦はオリンピックが懸かる全日本選手権になると思いますが、ショートから思い切りの良い演技で向かっていってほしいと思います。


 5位はカザフスタンのエリザベート・トゥルシンバエワ選手です。

c0309082_16151800.jpg

 SPは「カルメン・ファンタジー」。冒頭は3ルッツ、これは踏み切りのタイミングが合わずパンクして1回転となったため無得点に。しかし後半のサルコウ+3トゥループはセカンドジャンプで両手を上げて加点を稼ぎ、2アクセルもクリーン。スピン、ステップシークエンスもおおむねコンスタントに加点を積み重ねて、62.29点で6位となります。
 フリーは「The Prayer」。まずは得意の3ループから、これをクリーンに決めると、ショートで失敗した3ルッツも完璧に成功。さらに3フリップも着氷と、それぞれのジャンプで1点前後の加点を獲得します。後半に入り最初の3サルコウを下りると、2アクセル+3トゥループ+2トゥループ、2アクセル+3トゥループと続けて成功。3サルコウ+2トゥループも着氷させ、終盤のステップシークエンス、スピンでも高評価を得て、演技を終えたトゥルシンバエワ選手は納得したような笑みを浮かべました。得点は138.69点でフリー3位、総合200.98点と初めて200点台に乗せ5位となりました。
 ショートは3ルッツがパンクで0点とかなり痛いミスがありましたが、その後の切り替えが見事でしたね。今季から手を上げて跳ぶようになった3+3もそうですが、そのほかのスピンやステップシークエンスも非常に細やかで上手になっていて、演技構成点にも反映されていました。そしてフリーは全てのジャンプがクリーンで余裕のある着氷で高めの加点が付いていて、これまでのトゥルシンバエワ選手といえばジャンプは回転不足が多く、成功させてもギリギリの着氷であまり加点が付かない選手というイメージだったのですが、今大会は良い意味でイメージを裏切られました。体はフィギュア界随一と言ってもいいくらい華奢で、ジャンプも回転の速さ、軸の細さで回り切っているという印象ですが、今季はそこに両手を上げて跳ぶという工夫を加えて見栄えの良いジャンプになっていて、さらにスケーティング技術も進化の跡がうかがえて、こういった演技を続けていけば今季は飛躍のシーズンになるかもしれませんね。


 6位は日本の新星、白岩優奈選手です。

c0309082_16573606.jpg

 SP冒頭は3ルッツ+3トゥループから、回り切って着氷し加点を得ます。後半に2つのジャンプを組み込み、2アクセル、3フリップ、それぞれクリーンに成功。スピンは全てレベル4とそつなくまとめ、自己ベストとなる66.05点で3位と好発進します。

c0309082_23012432.jpg

 フリーもまずは3ルッツ+3トゥループ、これをショート同様にきれいに決めると、続く2アクセルも難なく着氷し上々のスタートを切ります。後半は3+3+2という難しい3連続ジャンプからでしたが、全て回り切って成功。さらに3サルコウを下り、3フリップは踏み切りのエッジが不正確と判定され若干減点は受けましたが、次の2アクセル+2トゥループも成功とノーミス。一番最後の要素として3ループを用意していましたが、回転不足となり転倒。フィニッシュした白岩選手は嬉しいような残念なような笑顔を見せました。フリーも自己ベストの127.13点で6位、総合6位となりました。
 フリーの最後の最後に転倒で惜しかったですが、1週間前のNHK杯からは別人のようなのびのびした演技で素晴らしかったですね。元々ジャンプは得意な選手なので、決して驚くべき演技ではないかもしれませんが、NHK杯が終わってじっくり練習する間もなくフランスへ移動で、疲れも時差もある中でのノーミスに近い内容ですから、やはり称賛に値すると思います。また、表現面でもNHK杯では控えめになってしまった白岩選手らしさ、魅力が表れていて、清らかで可憐な雰囲気のショート「亜麻色の髪の乙女」から一転、フリーはところどころもの悲しいようなダークな旋律も入り混じる「展覧会の絵」を緩急をつけて演じていて印象に残りました。
 全日本選手権では今度こそ、最初から最後まで満足いく演技ができるよう、怪我なくマイペースで調整してほしいですね。



 ここからはアイスダンス。

c0309082_23392051.jpg


 アイスダンスを制したのは前世界王者、フランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組。SDはパーシャルステップシークエンス以外は全てレベル4とハイレベル&ハイクオリティーなエレメンツを揃え、81.40点とパーソナルベストを0.1点更新し断トツで首位に立ちます。FDも後半のステップがレベル3になった以外は全てレベル4で、しかも全ての要素でほとんどのジャッジが満点となる加点3を与える完全無欠な演技を披露し、自身が持つ世界最高得点をさらに更新する120.58点をマーク、トータルでも世界最高の201.98点を記録し、2位以下を全く寄せつけることなく圧巻の優勝となりました。
 2週間前の中国杯でアイスダンス史上初めての総合200点超えを達成したパパダキス&シゼロン組ですが、自国フランスでその偉大な記録をさらに塗り替え、オリンピックに向けていよいよ加速してきたなという感じですね。パパダキス&シゼロン組の敵としては現世界王者のテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組しかいませんが、それ以上に怖いのは自分たち自身のメンタルだと思うので、あとはオリンピックでも平常の演技をする精神をどう養うかという段階に足を踏み入れつつあるのかなと思います。少々気がはやってしまいましたが、その前にヴァーチュー&モイア組と直接対決するファイナルが待ち構えていますから、一つ一つ目の前の試合でベストな演技ができることを願っています。フランス国際優勝、おめでとうございました。

 2位に入ったのはアメリカの実力者マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組です。SDは2つのステップがレベル3にとどまり思ったほど技術点を伸ばせず、自己ベストから5点ほど低い得点で2位。FDはツイズルで男性のベイツ選手にミスがありレベル3と取りこぼしがあり、こちらも自己ベストから5点ほど低い得点で2位と、少し不完全燃焼の内容に終わりました。
 中国杯2位の結果と合わせて4年連続となるファイナル進出を決めたチョック&ベイツ組。フリーでのツイズルのミスは、ままあることと言えばままあることなので、次戦ではきっと修正してくるのではないかと思います。ファイナルで表彰台争いに食い込むためには細かなミスも許されないので、ステップのレベルの取りこぼしもより少なくしていきたいですね。

 3位はロシアのアレクサンドラ・ステパノワ&イワン・ブキン組。SDはパターンダンスがレベル2とレベルを取り切れず、自己ベストから2点ほど低い得点で3位となります。フリーはステップ2つとローテーショナルリフトがレベル3となったものの、加点は全てのエレメンツで1点以上稼ぎ、先日のロステレコム杯でマークした自己ベストまで1点もないスコアをマークし4位、総合では3位となり、ロステレコム杯に続き銅メダルを獲得しました。
 細かい取りこぼしはありましたが、GP参戦5季目で初めて2試合ともでメダル獲得ということで、安定感が増してきましたね。ロシアはアイスダンスも層が厚く、どのカップルも絶対安泰とは言えないので、まずGPで安定した結果を残せたというのは大きなアピールになるでしょうね。ファイナル進出の可能性は現時点で皆無ですが、ロシア選手権に向けて良い弾みをつけられたのではないかと思います。



 フランス国際2017、女子&アイスダンスは以上です。
 5戦が終わった現時点でのファイナル進出決定者をまとめますと、まず女子はメドベデワ選手、ザギトワ選手、オズモンド選手、カロリーナ・コストナー選手、ソツコワ選手の5人がすでに決定済み。ということで残り1枠のみとなってしまいました。この1枠に入る可能性があるのは、すでに2試合終えて24ポイントを獲得している樋口新葉選手、第6戦のアメリカ大会に出場予定のポリーナ・ツルスカヤ選手とアシュリー・ワグナー選手の3名。ツルスカヤ選手、もしくはワグナー選手がアメリカ大会を制した時点で樋口選手のファイナル進出の可能性は消え、ツルスカヤ選手、ワグナー選手どちらかが2位となった場合は樋口選手とポイントで並ぶため、2大会のスコアの合計得点が高い方がファイナルに進みます。こうしたいろんな条件を並べてみると、樋口選手がファイナルに進むのは非常に狭き門になったと言わざるをえません。特にツルスカヤ選手はNHK杯で極めて好調な滑りを見せていて、アメリカ大会も優勝候補筆頭と言って差し支えないでしょうから、樋口選手はなかなか厳しい状況ですね。中国杯終了時点では6人目争いがここまでギリギリのせめぎ合いになるとは思わず、樋口選手のファイナル進出は濃厚と記事に書いてしまいましたが、思えば2013年も女子は鈴木明子さんとコストナー選手が24ポイントだったにもかかわらずファイナルには進めなかったわけなので、そういったいろんな可能性を考慮するべきでした。それでも樋口選手に理論上、ファイナル出場のチャンスが残されていることは事実なので、せっかくの日本開催のファイナルですから、ぜひ樋口選手が出場できるよう祈りたいと思います。個人的にはアメリカ大会に出場する世界選手権メダリスト経験者たち―宮原知子選手、ガブリエル・デールマン選手、アンナ・ポゴリラヤ選手―に優勝争いに加わってもらって、言い方は悪いかもしれませんが試合を引っ掻き回して、良い意味で番狂わせを起こしてほしいなと願ってしまいます。
 一方、アイスダンスはパパダキス&シゼロン組、ヴァーチュー&モイア組、チョック&ベイツ組の3組が出場決定。アメリカ大会にロステレコム杯を制したマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組や、NHK杯で3位だったアンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ組が出場してくるため、順当にいけばこの2組がワンツーフィニッシュでシブタニ兄妹はすんなりとファイナル決定。そしてカッペリーニ&ラノッテ組は24ポイントとなって、すでに2試合を消化して24ポイントを獲得しているマディソン・ハベル&ザカリー・ドノヒュー組、エカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組と並ぶのでスコア合計での争いとなり、カッペリーニ&ラノッテ組がハベル&ドノヒュー組のスコア合計を上回るのは難しそうなのでハベル&ドノヒュー組はファイナル有力。カッペリーニ&ラノッテ組はボブロワ&ソロビエフ組を上回ることはできそうなのでカッペリーニ&ラノッテ組が6枠目に滑り込む、という予想が妥当なところかと思うのですがどうでしょうか。
 さて、フランス国際2017の記事は男子&ペアに続きます。


:女子メダリスト3選手のスリーショット画像は、スケート情報サイト「icenetwork」の公式サイトのフォトギャラリーから、ザギトワ選手の画像、ソツコワ選手の画像、オズモンド選手の画像、三原選手の画像、トゥルシンバエワ選手の画像、白岩選手の画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、アイスダンスメダリスト3組の画像は、フィギュアスケート情報サイト「europeonice.com」の公式ツイッターから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
フランス国際2017・男子&ペア―ハビエル・フェルナンデス選手、シーズンベストでGP7勝目 2017年11月22日

[PR]
by hitsujigusa | 2017-11-21 02:00 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_13434466.jpg


 前記事に引き続きNHK杯2017の記事をお送りします。今回は男子とアイスダンスです。
 その男子は圧倒的な優勝候補だった日本の羽生結弦選手がSP前日の公式練習で4ルッツの練習をした際に着氷で失敗、転倒し、右足の靭帯を痛め棄権。このアクシデントによって、男子の勢力図はガラリと変貌しました。
 そんな男子を制したのはロシアのベテラン、セルゲイ・ボロノフ選手。GP参戦12季目、30歳にして初優勝という快挙を成し遂げました。2位はアメリカのアダム・リッポン選手、3位はイスラエルのアレクセイ・ビチェンコ選手と、ベテラン勢が表彰台を独占しました。
 一方、アイスダンスは世界王者のテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組が優勝し、ファイナル進出を確定させました。

ISU GP NHK Trophy 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 金メダルを獲得したのはロシアのセルゲイ・ボロノフ選手です。

c0309082_14092669.jpg

 SPは「アディオス・ノニーノ」。冒頭は得点源の4トゥループ+3トゥループを完璧に決めて加点2の高評価を得ます。単独の3ルッツはジャンプ自体はクリーンに下りましたが、ステップからただちに跳ばなければいけないところ、構えが長くなってしまったためわずかに減点を受けます。後半の3アクセルはこちらも余裕のある跳躍で加点1.86点。スピンは全てレベル4と全てのエレメンツをクリーンに揃え、自己ベストに0.27点と迫る高得点でトップに立ちます。
 フリーは「サラバンド組曲」。まずはショートでパーフェクトに決めた4トゥループ+3トゥループから、これをまたもや驚くべき高さで成功させて2.14点の加点を獲得します。続く3アクセルもクリーンで1.86点の加点。次の4トゥループは回転は充分だったものの両足着氷で減点となります。後半最初の3アクセル+2トゥループ+2ループを決めると、3ルッツ+2トゥループも完璧。残りの単独ジャンプ3本も難なく着氷し、終盤はステップシークエンスとスピン2つで締めくくり、フィニッシュしたボロノフ選手は氷に手をつき、肩で息をしながらも達成感を滲ませました。得点は自己ベストの181.06点でフリーも1位、総合1位で完全優勝を果たしました。
 今季はチャレンジャーシリーズ2試合を消化し、今大会がGP初戦だったボロノフ選手。チャレンジャーシリーズ2試合もまずまず安定した演技を見せていましたが、今大会はほぼノーミス、キャリアベストと言っていい素晴らしい出来でしたね。GPデビューから12季目、30歳での初優勝というのはたぶん最年長記録になるのだろうと思いますが、30歳で自己ベストを更新できるというのは本当に脱帽ですし、それだけ心技体全てが充実しているというのは演技を見てもヒシヒシと伝わってきました。最近の男子フィギュア界は10代の選手たちの勢いも猛烈なものがありますが、かといって必ずしも若さが全ての選手にとって有利に働くとも限らなくて、ボロノフ選手のように年齢を重ねるほどに技術面も表現面もどんどん進化していくタイプの選手もいて、フィギュアスケートの幅広い可能性を感じられる今回のボロノフ選手の優勝には深い感慨を覚えましたね。
 ボロノフ選手の次戦はスケートアメリカ。3年ぶりのファイナル進出となれば、オリンピック代表に向けて強いアピールになると思いますから、アメリカでも好演技に期待したいですね。NHK杯優勝、おめでとうございました。


 2位に入ったのはアメリカのベテラン、アダム・リッポン選手です。

c0309082_15120983.jpg

 SPは昨季から継続の「Let Me Think About It」。まずは3フリップ+3トゥループをきれいに決めると、3アクセルは着氷で若干こらえながらも成功。後半の得意の3ルッツもわずかに詰まり加点はあまり伸びず。しかしステップシークエンス、スピンではいつもどおりの美しい身のこなしを披露。ダンサブルなプログラムでリッポン選手らしさを存分に発揮しました。得点は84.95点で4位につけます。
 フリーも昨季からの持ち越しである「Arrival of the Birds 映画『The Crimson Wing: Mystery of the Flamingos』より/O」。冒頭は大技4ルッツにチャレンジ、大きな乱れなく着氷しましたがアンダーローテーション(軽度の回転不足)の判定となります。続く3+2、3ループは問題なく成功。レべル4のスピンとステップシークエンスを挟んで後半、3アクセルからの3連続ジャンプを決めると、2本目の3アクセルは軸が傾きますが何とか成功。3+3、3サルコウ、3ルッツと全てのジャンプを予定どおりに着氷し、終盤のスピン2つもレベル4。演技を終えた瞬間、リッポン選手は両手で顔を覆い、信じられないといった表情を浮かべました。得点は自己ベストに約1点差の177.04点でフリー2位、総合2位とGP2個目の銀メダルを手にしました。
 今年の1月、練習中に左足首の捻挫と指の骨折という大怪我を負ったリッポン選手。全米選手権も欠場せざるをえず、いよいよ脂の乗ってきたキャリアに水を差すような不慮の出来事でしたが、今回の演技はそうしたフィジカル面の不安を払拭するどころか、怪我をする前よりもさらに強くなったと思わせる見事なカムバックでしたね。フリー冒頭の4ルッツは初成功まであと一歩という本当に惜しい出来でしたが、その後は圧巻の一言。プログラム自体もショート、フリーともに2季連続ということですでに滑り込みは充分で、美しい所作の連続に改めて惚れ惚れしてしまいました。上述したボロノフ選手のところでも言及しましたが、やはり年齢というのは関係なくて、どの段階で開花するかというのは人それぞれで、リッポン選手の場合もまさに今が花盛りと言えますね。
 次戦のスケートアメリカでは2年連続でのファイナル進出が懸かりますが、ぜひ納得のいく演技でファイナルの切符をつかんで、全米選手権に向けて勢いをつけて、オリンピックで花を満開に咲かせてほしいと思います。


 3位はイスラエルの実力者アレクセイ・ビチェンコ選手です。

c0309082_15592560.jpg

 SPは「ハバ・ナギラ」。冒頭は3アクセル、これをクリーンに決めて1点以上の加点を獲得。次いで4トゥループもしっかり下ります。後半の3+3も確実に回り切って着氷させ、最後まで力強い滑りを披露しました。得点は自己ベストまで約1点の85.52点で2位と好スタートを切ります。
 フリーは昨季と同じ「オペラ「道化師」より」。冒頭は4トゥループ+3トゥループ、セカンドジャンプの着氷で詰まりますがしっかり成功させると、2本目の4トゥループはより良い流れで決めて加点1以上。続く3ループは2回転となります。後半最初の3アクセルは着氷でステップアウト。3アクセル+2トゥループは問題なく決めます。次いで3ルッツ、終盤には3+1+3の難しい3連続ジャンプも成功。最後の2アクセルも難なく下り、フィニッシュでは舌を出して悔しさをのぞかせながらも笑顔で観客の声援に応えました。得点は自己ベストに約2点差の166.55点でフリー3位、総合3位でGP2度目の表彰台となりました。
 フリーは細かいミスがありパーソナルベスト、自己最高位の2位を逃しましたが、全体的には安定していてミスがあってもプログラムを破綻させることなく終始集中していたなという印象ですね。10月初旬のジャパンオープンの時はほかの選手の欠場による代役ということもあってかミスを連発し、10月下旬のチャレンジャーシリーズのアイススターという大会でもフリーはミスが多かったのですが、今回はそれらとは別人のような安定感でした。来年の2月で30歳になるビチェンコ選手ですが、10年以上GPに出場しているボロノフ、リッポンの両選手と比べると、14/15シーズンがGPデビューの彼はまた違う道を歩んできたベテランと言えます。まだ伸びしろは多々ありそうですし、演技中の動きも若々しいという印象があり、今後のプログラムのブラッシュアップにも期待ですね。
 次戦は2週連続となるフランス大会。なかなかきつい日程ですが、フランスでもベストなパフォーマンスができることを祈っています。


 惜しくも表彰台まであと一歩の4位だったのはアメリカのジェイソン・ブラウン選手です。

c0309082_16562822.jpg

 SPはまず得点源の3アクセルから、これは着氷でステップアウトし減点を受けます。続く3ルッツはクリーンに成功。しかし後半の3+3は3+2にとジャンプミスが重なります。しかし、その3+2も含め、3アクセル以外では全て加点1以上を積み重ね、85.36点で3位と好位置につけます。
 フリーは4トゥループを回避し、まずは得意の3フリップを確実に決めて良い流れを作ります。しかし直後の3アクセルは転倒。次いで2アクセルは問題なく下ります、後半は序盤で転倒した3アクセル、何とか着氷してコンビネーションにしたいところでしたが、回転不足であえなく転倒します。続く3ルッツもステップアウト、得点源となる3+1+3はクリーンに跳び切り、さらに3+3、2アクセルと終盤のジャンプはミスなくこなしましたが、2度の転倒が響き、自己ベストより20点以上低い160.59点でフリー4位、総合4位と表彰台を逃しました。
 ショート、フリーともに基礎点の高い3アクセルの失敗が痛かったですね。特にフリーの2本とも転倒というのは最近の調子の良さそうなブラウン選手の姿からはあまり想像できない失敗で少し驚きました。フリーは今まで試合で成功させたことのない4トゥループを外して臨んだということで、それだけ練習から成功する気配がなかったということでしょうし、また、4トゥループがなくても全てのジャンプをしっかりまとめれば優勝できるという戦略でもあったでしょうし、実際に賢明な判断だったと言えます。ただ、頼みの綱の3アクセルまでもが不調だと、いくらブラウン選手の素晴らしい表現力を持ってしても補えないですし、上位3選手の調子もかなり良い方だったのでブラウン選手にとっては厳しかったですね。個人的には海外の男子選手ではブラウン選手が最もお気に入りの選手で、羽生選手が不在となりブラウン選手にとってはまたとないチャンスだったので優勝を願っていたのですが、残念ながらNHK杯は2年連続でほろ苦い思い出となってしまいましたね。
 スケートカナダの2位と今回の4位を合わせ、ブラウン選手のポイントは22ポイント。ファイナルに進むには次のフランス大会や最後のアメリカ大会で番狂わせでも起こらない限りかなり難しいですが、次戦ではブラウン選手らしい演技で氷上で満面の笑みを見せてほしいと思います。


 5位はカナダのキーガン・メッシング選手です。

c0309082_02143265.jpg

 SPは「映画『雨に唄えば』より」。冒頭は得点源の4トゥループ+3トゥループ、ファーストジャンプの着氷で膝をぐっと曲げてこらえセカンドジャンプに繋げます。続く3アクセルは空中で軸が傾き転倒。後半の3ルッツはクリーンに決めますが、ステップからただちに踏み切らなかったため加点は得られず。スピン、ステップシークエンスは目立ったミスなくこなし、80.13点で5位につけます。
 フリーは「チャップリン・メドレー」。まずは単独の3ルッツを余裕を持って下りて加点1.3。続く4トゥループは着氷でお尻がつきそうなくらい膝を曲げて何とか耐えます。次の3アクセルからの3連続ジャンプはクリーンに成功させ、前半をまとめます。後半最初は2本目の4トゥループでしたが、これはパンクして3回転に。直後の3+3は成功。さらに2本目の3アクセルも決めたものの、それ以前に3ルッツを2本、3トゥループを2本跳んでいたため、3回転以上のジャンプは2種類2本ずつまでという規定に違反したこととなり2本目の3アクセルは無効扱いで0点に。3ループはクリーンに着氷しますが、最後の3フリップ+2トゥループは3フリップの踏み切り違反のため減点と、惜しいミスが続き、155.67点でフリー6位、総合5位となりました。
 ショートもフリーももったいないミスの仕方が目立ったメッシング選手。特にフリーは2本目の4トゥループが3回転になったために3アクセルが無効となってしまい、計算が狂ってしまいましたね。ただ、ショートで5位につけながらフリーで10位と大崩れしたスケートカナダと比べると、内容的にはかなり改善が見られたのは間違いないので、カナダ選手権に向けて収穫の多い試合になったのではないかなと思います。


 6位はラトビアの成長株デニス・ヴァシリエフス選手。

c0309082_14465605.jpg

 SPは「妙なる調和 オペラ「トスカ」より」。まずは3+3を決め好調なスタートを切りますが、3アクセルは回転は充分だったものの転倒。後半の3フリップはクリーンに下りて1点近い加点を獲得。スピンやステップシークエンスも安定してこなし、76.51点で8位となります。
 フリーは「Put the Blame On Mame/Anyone to Love/Sway」。4回転は回避した構成で臨み、まずは3アクセル+2トゥループを成功。続いて2本目の3アクセルに挑みますがこちらはパンクして1回転に。しかし次の予定を変更して再び3アクセルに挑み、今度はクリーンに下ります。後半は3ループを難なく着氷して幕を開け、次の3+3も成功。2アクセルも着氷して波に乗りますが、3フリップは1回転に。3ルッツ+1ループ+3サルコウはファーストジャンプの着氷でバランスを崩しかけますが、立て直して最後のジャンプまで繋げます。終盤はスピード感のあるコレオシークエンスと独創的なポジションのスピンで観客を沸かせました。得点はシーズンベストの158.29点でフリー5位、総合6位と順位をショートから二つ上げました。
 ショート、フリーともに3アクセルのミスはありましたが、全体を通して滑りの躍動感、勢いは充分すぎるほど感じられましたね。前回のロステレコム杯でもそうでしたが、昨季と比べても見違えるくらい動きが洗練されて上手くなっているなと感じます。プログラムに関しても、定番のオペラを用いたショートは、ヴァシリエフス選手の高貴な雰囲気、端正なスケーティングを活かしていますし、洒落たピアノの旋律で幕を開け、中盤からはマイケル・ブーブレの甘い歌声で曲調が変化、終盤は一気にテンポアップして情熱的に締めくくるフリーは、ヴァシリエフス選手の踊りの巧さを余すことなく引き出していて、本当に見応えのあるものになっていて、コーチで振り付け師のステファン・ランビエールさんの力も大きいのでしょうが、ヴァシリエフス選手自身の地力もぐんぐん上がってきているような気がしますね。


 7位は昨季の全日本ジュニア王者、友野一希選手です。

c0309082_15265974.jpg

 SPは「ツィゴイネルワイゼン」。冒頭は大技4サルコウ、着氷でよろめきますが回転はしっかり回り切ります。続く3+3はクリーンに成功。後半の3アクセルは高さと流れのある跳躍で1.43点の加点を獲得。どんどんテンポアップする曲調に合わせた力強い滑りで観客から喝采を浴びました。得点は自己ベストをちょうど10点更新する79.88点で6位と好位置につけました。

c0309082_15393697.jpg

 フリーは「ウエスト・サイド・ストーリー」。冒頭はショートで決めた4サルコウ、しかしアンダーローテーションで両足着氷となります。続いて2本目の4サルコウも同じく回転が足りず転倒とミスが重なります。しかし直後の3アクセル+3トゥループはスムーズに決めて挽回。後半最初の3アクセル+2トゥループ+2ループは最後が少し詰まりますが成功。3ループ、3サルコウと難なく決めて、3ルッツ+2トゥループは3ルッツの踏み切りが不正確なのとセカンドジャンプの着氷が詰まったのとでわずかに減点。最後の3フリップはクリーンに下り、最後まで勢いの衰えないキレキレの演技を披露。フィニッシュした友野選手は悔しさを滲ませながらも笑顔を見せました。得点は152.05点でフリー7位、総合では自己ベストをマークし7位でGPデビュー戦を終えました。
 当初出場する予定だった村上大介選手が急性肺炎で辞退したため、その代役としてチャンスが巡ってきた友野選手。もちろん初めてのGPでしたが、緊張で硬くなるとか縮こまるとかいった雰囲気は微塵も感じられない実に堂々とした演技でした。4サルコウこそフリーでは2本とも失敗に終わりましたが、そのことによって以降の演技が慎重になったり守りに入ったりすることなく、どんどん攻めて全力を出し切ろうという姿勢がうかがえました。何よりショート、フリーともに踊りの巧さが印象的で、日本のスケーターはわりとシャイだったり大人しめな選手が多いですが、友野選手はオーバーアクションやアピールが自然と身についていて、良い意味で大げさな動きや表情を恥じらいなくできるスケーターというのは日本ではけっこう貴重な存在だと思うので、羽生選手や宇野昌磨選手とはまた違った個性を持ったスケーターが出てきてくれたことは非常に嬉しく感じましたね。
 今大会で得た課題と収穫をぜひ全日本選手権への糧にして、次こそは完璧な演技を見せてほしいと思います。


 日本の佐藤洸彬選手は11位となりました。

c0309082_16530558.jpg
 
 SPは昨季と同じ「トーテム」。冒頭の3アクセルを決めて波に乗ると、続く4トゥループ+2トゥループは1つ目の着氷で詰まったものの、両手を上げて2トゥループを付けます。後半の3ルッツも若干着氷で流れが止まりますが、全体的に最小限のミスで抑え、自己ベストを大幅に更新し10位につけます。

c0309082_17024534.jpg

 フリーも昨季から継続の「セビリアの理髪師」。冒頭の3アクセルは着氷で膝を曲げてぐっとこらえ最小限の減点にとどめます。直後の4トゥループは空中で軸が曲がりステップアウト。2本目の4トゥループはアンダーローテーションで両足着氷となり、コンビネーションにできません。ステップシークエンスとスピンを挟んで後半、3アクセル+2トゥループはファーストジャンプの着氷がオーバーターンとなり減点。続く3フリップは軸が斜めになり転倒。次いで3ルッツもこらえた着氷となり、3サルコウも乱れた着氷に。最後の3ループは1回転にと後半はミス連発となり、演技を終えた佐藤選手は残念そうに顔を曇らせました。得点は123.25点でフリー11位、総合11位と順位を落としました。
 ショートはジャンプもおおむね決まり佐藤選手らしいオリジナリティー溢れる世界観を存分に発揮できたのですが、フリーはジャンプミスが相次ぎせっかくの演技力も印象が薄れてしまったかなという印象ですね。フリーはショートよりも緊張が強まったのか、途中から佐藤選手本来のジャンプのタイミングを見失っているような感じで、負のスパイラルに陥ってしまいましたね。ただ、4トゥループの失敗の仕方はそこまで悪いものではなかったので、確実な感覚をつかめればもっと安定感も増すのかなという気がしました。
 全日本選手権ではショート、フリーともに笑顔で終われることを祈っています。



 ここからはアイスダンスの結果です。

c0309082_17321914.jpg


 優勝したのは世界王者、カナダのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組。SDはツイズルで珍しく少し乱れがありレベル3と取りこぼしてしまいましたが、ほかは目立ったミスなくクリーンなエレメンツを揃え、80.92点で首位に立ちます。FDはツイズルのミスもしっかり修正し、後半のステップがレベル3となった以外は全てレベル4でまとめ、パーソナルベストとなる117.72点でフリー1位、トータルでは2位に10点差をつける圧勝でファイナル進出を決めました。
 ショートでツイズルの細かなミスがあったとはいえ、やはり圧倒的な強さを見せつけたヴァーチュー&モイア組。フリーはパーソナルベストで本当に死角のない演技でしたが、前週の中国杯でガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組がマークした世界最高得点にはまだ1点以上及ばない点数ということで、キス&クライでも喜びは控えめだったのかなと感じました。ファイナルではこの2組の直接対決となるのはほぼ間違いないので、その時に一体どんな熾烈な戦いとなるのか、今から楽しみですね。NHK杯優勝、おめでとうございました。

 2位はアメリカの成長株マディソン・ハベル&ザカリー・ドノヒュー組です。SDは序盤のステップがレベル3となった以外は全てレベル4と質の高いエレメンツを揃え、自己ベストまで0.22点という高得点で2位と好発進。フリーもダイアゴナルステップ以外はレベル4と確実かつ丁寧にエレメンツをこなし、自己ベストまで約1点のスコアで2位、総合でも2位で銀メダルを獲得しました。
 スケートカナダの得点よりは若干下がってしまいましたが、微妙な差なのであまりに気にすることはないでしょう。オリンピック代表争いというのを見据えても、シーズンベストランキングではアメリカ勢ではトップということで、順風満帆なシーズン序盤を送っていると言えます。ファイナルに進めるか否かはこのあとの2試合次第でわかりませんが、まだまだ伸びる可能性のあるカップルなので楽しみですね。

 3位はイタリアのベテラン、アンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ組です。SDは「Kaboom/Skip to the Bip/1008 Samba」。ステップとパターンダンスがレベル3にとどまり技術点を思ったほど伸ばし切れなかったものの演技構成点でカバーし、わずかながら自己ベストを更新し3位につけます。FDは「映画『ライフ・イズ・ビューティフル』より」。ステップが一つレベル3になった以外はミスらしいミスなくさすがの安定感を見せつけ、自己ベストに0.03点と迫るシーズンベストをマークしフリーも3位、総合3位となりました。
 ショート、フリーともにカッペリーニ&ラノッテ組らしい踊り心、遊び心溢れるプログラムで大いに楽しませられましたね。特にフリーはイタリア映画の名作『ライフ・イズ・ビューティフル』をテーマにした作品ということで、イタリアのカップルが演じるのにぴったりな、そしてオリンピックシーズンという集大成のシーズンにふさわしいプログラムと感じました。次戦のスケートアメリカでの順位次第では2年ぶりのファイナル進出も懸かってきますが、次もカッペリーニ&ラノッテ組らしい楽しくてのびやかな演技を期待したいですね。

 全日本チャンピオンの村元哉中&クリス・リード組は9位となりました。

c0309082_18112186.jpg

c0309082_18134269.jpg

 SDは「I Like It Like That/Mondo Bongo/Batucada de Sambrasil」。2つのステップがレベル2となる取りこぼしはあったものの、ツイズルやリフトは丁寧にこなして加点も積み重ね、61.82点で9位につけます。
 FDは「映画『ラスト・エンペラー』より/映画『戦場のメリー・クリスマス』より」。演技前半のステップがレベル2にとどまった以外はミスらしいミスなく演技をまとめ、94.59点でフリー8位、総合9位で大会を終えました。
 ショート、フリーともにちょっとずつ取りこぼしがあって技術点を伸ばし切れなかったのはもったいなかったですが、表現面では昨季以上に進化した姿が見られましたね。ダンサブルなショートは最初から最後まで元気よく、二人の華やかさが存分に活かされていましたし、フリーは一転して坂本龍一さんの音楽に乗せてしっとりと清らかな世界観を繊細に表現していて、ショートとフリーの演じ分けも見事でした。
 次戦は2週間後のスケートアメリカということで、プログラムのブラッシュアップはもちろん、シーズンベスト、ひいてはパーソナルベストの更新も目指して、短い期間ですがうまく調整してまた二人らしい演技を見せてほしいと思います。

 GP初出場の小松原美里&ティモシー・コレト組は10位でした。

c0309082_18305829.jpg

c0309082_18345176.jpg
 
 SDは「Ahora Quien/Samba do Brasil (Radio Remix)」。パターンダンスやパーシャルステップシークエンスはレベル2どまりとなりましたが、リフトやツイズルはレベル4と確実にレベルを取り、パーソナルベストとなる53.83点で10位となります。
 FDは「映画『愛のイエントル』より/映画『サブリナ』より」。2つのステップがレベル2と1にとどまる取りこぼしはありましたが、そのほかのエレメンツは全てレベル4と本領も発揮し、自己ベストをわずかに更新しフリー10位、総合10位でGPデビュー戦を終えました。 
 ショート、フリーともにステップのレベル獲得には苦戦した印象ですが、全体的な流れとしてはこのカップルらしい明るさや優雅さがよく表れていたように思います。特にプライベートでも夫婦とあって、カップルを結成してから日が浅いわりにユニゾンが素晴らしいなと感じましたし、息が合っている様子が見て取れましたね。年齢的にも25歳と26歳でまだ若いので、今後の伸びしろに期待ですね。



 NHK杯2017の記事は以上で全て終了です。全体を振り返るとベテラン勢の躍動が目立ち、表彰台を独占した男子トップスリーや女子の2位となったカロリーナ・コストナー選手のみならず、長洲未来選手、アリョーナ・レオノワ選手らの活躍は、若手の躍進ぶりが際立っている最近の時流とは少し違った風景で、見ていて思わず微笑ましくなりましたね。フィギュアスケートという競技の懐の深さとでも言いましょうか、戦いの中に身を置くにしても人それぞれの戦い方があるのだということを改めて感じさせてくれた大会になりました。
 さて、次戦はフランス。そうこうしているうちにこの記事のアップ時点でもう始まってしまいましたが、日本からは3年連続のファイナル進出が懸かる宇野昌磨選手、優勝すれば初のファイナルの可能性が残る三原舞依選手、NHK杯から連戦となる白岩優奈選手が登場します。では。


:男子メダリスト3選手のスリーショット画像、リッポン選手の画像、ビチェンコ選手の画像、ブラウン選手の画像、メッシング選手の画像、友野選手のフリーの画像、佐藤選手の画像、アイスダンスメダリスト3組の画像、村元&リード組のFDの画像、小松原&コレト組のSDの画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、ボロノフ選手の画像、村元&リード組のSDの画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、ヴァシリエフス選手の画像、友野選手のSPの画像、小松原&コレト組のFDの画像は、フィギュアスケート情報サイト「Absolute Skating」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
NHK杯2017・女子&ペア―エフゲニア・メドベデワ選手、大差でGP7勝目 2017年11月15日
[PR]
by hitsujigusa | 2017-11-18 01:11 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_01024402.jpg


 グランプリシリーズ第4戦、NHK杯2017が大阪にて行われました。この記事では女子とペアについてお伝えします。
 女子の優勝者は世界女王のエフゲニア・メドベデワ選手。彼女にしては珍しく転倒という大きな失敗があり満足のいく出来とはいきませんでしたが、それでも2位に大差をつけてGP7勝目を上げました(ファイナルを含む)。そして2位には元世界女王、イタリアのカロリーナ・コストナー選手、3位にはロシアの新星ポリーナ・ツルスカヤ選手が入りました。
 一方、ペアはこちらも世界王者の隋文静(スイ・ウェンジン)&韓聰(ハン・ツォン)組がフリーで世界歴代1位の得点をマークし、圧勝しました。

ISU GP NHK Trophy 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 女子の覇者となったのはロシアのエフゲニア・メドベデワ選手です。

c0309082_17491527.jpg

 全てのジャンプを後半に跳ぶSP。まずはスピン、ステップシークエンスをいつもどおり丁寧にこなしてレベル4を獲得すると、得点源の3フリップ+3トゥループも完璧で1.6点の加点。さらに3ループを難なく決め、ロシア大会のフリーで転倒のあった2アクセルは多少慎重に入りましたが確実に成功。最後のスピン2つもしっかりレベル4を揃え、自己ベストに迫る79.99点で断トツの発進となりました。
 フリー冒頭は3フリップ+3トゥループからでしたが、3フリップで転倒するまさかのミス。若干苦手としている3ルッツは着氷が乱れ、思いがけない失敗が相次ぎます。スピンとステップシークエンスはノーミスでクリアし後半、最初の3フリップは急遽3トゥループを付けて冒頭のミスをリカバリー。3ループ、2アクセル+2トゥループ+2トゥループと問題なく着氷し、3サルコウ+3トゥループも成功。最後の2アクセルも下りて後半はメドベデワ選手らしさを存分に見せつけましたが、フィニッシュでは顔をこわばらせました。それでも得点は144.40点でフリー1位、総合1位で、ロシア大会に続きGP2連勝としました。
 今大会はフリーで転倒があったメドベデワ選手。GP初戦のロステレコム杯のフリーでも最後の2アクセルで転倒したのですが、その時は最も簡単な2アクセルでの転倒ということもあって思わず本人が笑みをこぼしてしまうくらい、ミスもご愛嬌といった感じの失敗の形でした。ただ、今回は演技冒頭の3+3での転倒ということで、演技が終わってもメドベデワ選手の表情は硬く、自分に厳しい彼女だからこそ許せないミスだったのではないかなと思います。今大会メドベデワ選手は両ふくらはぎにテーピングをしていて、多少なりとも違和感や痛みがあったことが想像できますが、その影響なのか2大会連続で転倒が続いていることは少し心配ですね。ただ、フリー後半では3フリップに3トゥループを付けることで見事にリカバリーしていて、転んでもただでは起きない姿からは今までとは違う形でメドベデワ選手の強さを改めて感じました。
 昨シーズンとは異なる歩み方でシーズン序盤を送っているメドベデワ選手。完璧主義者の彼女のことですから、今大会の失敗をきっちり分析して修正してくると思いますし、メンタル面での強靭さは相変わらず際立っていますので、次戦のファイナルでは納得のいく演技ができることを願っています。NHK杯優勝、おめでとうございました。


 2位はイタリアの大ベテラン、カロリーナ・コストナー選手です。

c0309082_18173758.jpg

 SP冒頭は得点源の3トゥループ+3トゥループ、セカンドジャンプの着氷でバランスを崩しかけますがこらえます。次いで3ループはクリーンに成功。後半の2アクセルも問題なくこなし、ステップシークエンス、スピンは全てレベル4と質の高いエレメンツを揃え、シーズンベストに極めて近いスコアで2位と好発進します。
 フリーは3+3は回避した構成で臨み、最初は3+2を確実に成功。単独の3フリップ、3ループもしっかり下り、それぞれのジャンプで加点1以上を稼ぎます。後半はまず3トゥループからでしたが、これがパンクして2回転に。2アクセル+1ループ+3サルコウは最後のジャンプまでスムーズに繋げたもののこらえきれず転倒してしまいます。単独の2アクセルはきれいに着氷。最後の3+2も難なく決めましたが、最後に跳んだ2トゥループは3回目だったため無得点扱いに。ステップシークエンス、スピンはショートに続き全てレベル4で、成功させたエレメンツではほとんど1点以上の加点を獲得し、137.67点でフリー3位、総合2位となり、2011年以来となるファイナル進出を引き寄せました。
 フリーでは細々としたミスはあったのですが、それを忘れさせる優雅さ、余裕感はさすがでしたね。今大会も演技構成点は非常に高く、フリーではメドベデワ選手を上回りました。両選手とも1度の転倒という点では共通しているにもかかわらずコストナー選手の方が高い評価を得ているということで、ジャンプ構成の難度は低めとはいえ、やはりオリンピックではいろんな意味で怖い存在になるなと思い知らされました。さまざまな紆余曲折を経て現在に至っているからこその、豊富な経験に裏打ちされた落ち着き、佇まいというのは、若い選手たちにはどうしても真似できないところであり、その長いキャリアが最終的にどういった形で花開くのか、ますますオリンピックでのコストナー選手が楽しみになりましたね。
 もちろんその前にファイナルや欧州選手権がありますから、まずは日本開催のファイナルでまたコストナー選手らしい演技が見られることを楽しみにしています。


 3位は今季シニアデビュー、ロシアのポリーナ・ツルスカヤ選手です。

c0309082_01243092.jpg

 SPは「テレビドラマ「ゲーム・オブ・スローン」より」。冒頭の3ルッツ+3トゥループは高く余裕のある跳躍で1.2点の高い加点。後半に3ループと2アクセルを組み込み、どちらもクリーンに成功。スピンは全てレベル4を獲得し、70.04点で3位と好位置につけます。
 フリーは「ノクターン第1番/Song for the Little Sparrow」。まずはショートで完璧に決めた3ルッツ+3トゥループ、これを再びクリーンに着氷させると、続く3フリップも成功で、両方とも1.4点の加点を得ます。後半に5つのジャンプ要素を固め、2アクセル+3トゥループ+2トゥループの3連続ジャンプをきれいに着氷。さらに3ルッツ、3+2、3ループ、2アクセルと全てのジャンプをクリーンに跳び切り、ステップシークエンス、スピンも全てレベル4でまとめ、今までの自己ベストを約11点更新しフリー2位、総合では3位とシニアデビュー戦にして見事に表彰台を射止めました。
 ショート、フリーともにノーミスというルーキーらしからぬ冷静さと安定感が際立ったツルスカヤ選手。15/16シーズンは出場したジュニアの全試合を制し、世界ジュニア選手権も圧倒的な女王候補として乗り込んだものの、アクシデント的な怪我によってSP直前に棄権。昨シーズンもジュニアグランプリでは2連勝したものの、ファイナルはまたもや怪我で欠場。世界ジュニアには出場したものの振るわず10位と、一時期の絶好調だった時と比べると成績は下降気味で、正直個人的にはロシアのオリンピック代表候補としてはあまり注目していなかったのですが、今大会の演技を見る限り快進撃を見せていた頃の調子は戻っているようですね。シニア初戦で210点というスコアが素晴らしいのはもちろん、内容的にも全体を通してフィジカルもメンタルも緻密にコントロールされている感じで、驚かされました。ショート、フリー、トータルとパーソナルベストだったにもかかわらずキス&クライではニコリともせず、さらなる高みを見ているというような表情が印象に残りました。
 今回のような演技を次戦のアメリカ大会でも見せられれば、オリンピック代表に向けてかなりのアピールとなると思いますから、今大会以上に注目したいですね。


 4位はアメリカのベテラン、長洲未来選手です。

c0309082_20570297.jpg

 SP冒頭は今季から取り入れている大技3アクセル、回転は充分でしたが両足着氷で減点を受けます。続く3フリップ+3トゥループはクリーンに下りたかに見えましたが回転不足の判定。後半の3ルッツも回転がわずかに足りず。柔軟性を活かした回転の速いスピンは全てレベル4かつ高い加点を得ましたが、細かなジャンプミスが響き65.17点と得点は伸び切らず、それでも5位とメダルを狙える位置につけます。
 フリーもまずは3アクセルからでしたが、これはアンダーローテーション(軽度の回転不足)で減点されます。しかし直後の3+3はクリーンに成功。さらに3サルコウも着氷と挽回します。後半も最初の2アクセルからの3連続ジャンプを成功させると、前日ミスがあった3ルッツは踏み切りも着氷もクリーンにまとめ、残り2つのジャンプも予定どおり。3アクセル以外はほぼノーミスの演技で、129.29点でフリー4位、総合4位と順位を一つ上げました。
 今大会も果敢に3アクセルに挑んだ長洲選手。ショートは回り切ったものの両足着氷、フリーは回転不足と完璧な形での成功はありませんでしたが、今シーズンの長洲選手の3アクセルを見ているとパンクや転倒といった失敗はほぼなく、いつも惜しい形でのミスなので本当に安定しているなと思います。また、フリーは3アクセル以外の回転不足は一つもなく、キス&クライで得点が出た瞬間の長洲選手の満面の笑みが物語っているように、常にアンダーローテーションが課題となっている彼女にとっては、前のロステレコム杯と比べると、ある程度達成感のある試合だったのではないでしょうか。
 アメリカ女子の五輪代表争いは混戦模様で、誰と誰と誰が3枠を埋めるのかは現時点でも予想がつかないのですが、その中でほかの選手と差をつけるという意味で3アクセルを持っている長洲選手は強いと思いますね。もちろん3アクセルはもろ刃の剣でリスクの高い技でもありますが、3アクセルを得たことによって今まで以上にタフな選手になっているような気がしますし、自分にしかない武器を持っているという自信が演技全体にも好影響を及ぼしているのは間違いないと思うので、このまま攻めの姿勢で雌雄を決する場となる全米選手権に向かっていってほしいですね。


 5位は全日本女王の宮原知子選手です。

c0309082_01341488.jpg

 SPは「映画『SAYURI』より」。冒頭は得点源の3ルッツ+3トゥループからでしたが、3ルッツが回転不足で高さも足りなかったためセカンドジャンプは2回転にとどめます。続く2つのスピンはしっかりとレベル4を獲得。後半に入り最初の3ループを成功させると、最後の2アクセルも難なく下り、ステップシークエンスはレベル3でしたが、得意のレイバックスピンはレベル4に加え高い加点を得て、65.05点で6位につけます。

c0309082_19451006.jpg

 フリーは「蝶々夫人」。まずは得意の3ループをクリーンに下りて流れを作ると、ショートで跳べなかった3ルッツ+3トゥループはセカンドジャンプが回転不足となったもののしっかり着氷。若干苦手としている3フリップはパンクして2回転となります。スピンとステップシークエンスを挟んで後半、3ルッツからの3連続ジャンプは最後が多少詰まりますが回転不足なく成功。続いて2アクセル+3トゥループの予定でしたが、2アクセルが回転不足となり単独に。さらに3サルコウはパンクして2回転にとミスが相次ぎます。しかし最後の2アクセルに急遽3トゥループを付けて完璧に成功。演技を終えた宮原選手は安堵したように微笑みました。得点は126.75点でフリー6位、総合5位で復帰戦を締めくくりました。
 昨年末の全日本選手権以来の試合となった宮原選手。今年の2月に左股関節の疲労骨折が判明し、出場を目指した世界選手権も欠場。今シーズンに入ってからも体調不良や新たな軽い故障が発生し、復帰戦になる予定だったフィンランディアトロフィーの出場を見送るなど状態が心配されていましたが、個人的には想像よりも本調子に近づいているなという印象でほっとしました。コーチやトレーナーの説明によると本格的なジャンプ練習を始めたのは1か月ほど前で、NHK杯に実際に出場するかどうかも決めかねていたそうですが、直前の血液検査の結果が正常の数値に戻っていたことが決め手となり、出場を決断したようですね。今回の演技はミスこそありましたが、ギリギリまで欠場も視野に入れていたとは思えないほどの完成度で、ジャンプミスの内容もそこまで深刻なものではないので、あとはプログラム全体を通して滑る体力や実戦感覚の問題だけなのかなと感じました。また、表現面も相変わらずの繊細さと優雅さで、久しぶりに見るとやはり日本女子勢では際立って美しいなと思いましたし、演技構成点でもショート、フリーともに全体の3位という評価で、ジャンプが整えばさらに点数アップも見込めるので、今後に向けて期待が増す演技でしたね。
 とはいえ無理をして再発したりほかのところを怪我したりしてしまっては元も子もないですし、そうならないために宮原選手自身も宮原選手を支えるコーチやトレーナーもきめ細かいサポートをしていると思うので、次戦のアメリカ大会では今大会以上の演技を目指して、オリンピック出場に向けて一歩一歩焦らず歩んでいってほしいと思います。


 6位に入ったのはロシアのベテラン、アリョーナ・レオノワ選手です。

c0309082_00015093.jpg

 SPは「Bla Bla Bla Cha Cha Cha」。冒頭は得点源の3トゥループ+3トゥループ、これをきっちり回り切って着氷させると、後半の3フリップ、2アクセルもクリーンに成功。スピンも全てレベル4と丁寧にこなしましたが、全体的に加点は伸びず、63.61点で7位にとどまります。
 フリーは「Tune Maari Entriyaan (Bollywood Selection)」。まずはショートできれいに決めた3トゥループ+3トゥループから、これをショートの時よりもスムーズな流れで成功させて1.4点の加点を得ます。さらに若干苦手としている3ルッツを踏み切りも着氷もクリーンに決めると、2アクセルも問題なく着氷し、上々の前半とします。後半はまず3フリップ+2トゥループ、続けて単独の3フリップを成功。3+2+2の3連続コンビネーションも全て回り切って下り、最後の2アクセルも難なく着氷。最後はエネルギッシュかつダンサブルなステップで華やかに締め、フィニッシュしたレオノワ選手は派手なガッツポーズで喜びを爆発させたのち、涙を流して達成感を露わにしました。得点は自己ベストとなる127.34点でフリー5位、総合6位と順位を一つ上げました。
 近年はジャンプの不調に苦しみ、成績も不安定だったレオノワ選手。毎年のように新たなスターが登場して世界を席巻するロシア女子勢の中で、20代半ばを過ぎたレオノワ選手の存在感は薄くなりつつありましたが、今回の演技はそうした最近のモヤモヤを晴らすような、本当に素晴らしい滑りでした。もちろんジャンプの難度では若い選手たちには及びませんが、全体を魅せるという点においてはまだまだ衰えるどころか唯一無二の個性の持ち主として存分にアピールできる選手だと感じましたし、久しぶりにレオノワ選手の弾けるような笑顔を拝見して、何だか懐かしいような感じもして、心から嬉しくなりましたね。
 世界一過酷なロシア女子の五輪代表レースにおいて、レオノワ選手の立場が厳しいことに変わりはありませんが、次戦のスケートアメリカでもレオノワ選手らしい演技を見せて、少しでも可能性を広げられるよう祈っています。


 7位は日本の本郷理華選手です。

c0309082_01403383.jpg

 SP冒頭は3フリップ+3トゥループ、これを完璧に回り切って下り加点を獲得します。後半に組み込んだ苦手の3ルッツは片手を上げた難しい空中姿勢で臨み、一見きれいに下りたかに見えましたがアンダーローテーションの判定。最後の2アクセルも片手を上げて跳びこちらはクリーンに着氷。終盤のステップシークエンスではレベル4に加えて加点1.4と、高評価を引き出すスピード感と力強さに満ちた滑りで観客を魅了しました。得点は65.83点で4位と好発進します。

c0309082_01514308.jpg

 フリーもまずは得点源の3フリップ+3トゥループから、クリーンな着氷かと思われましたがわずかに回転不足の判定。続く得意の3サルコウは片手を上げて跳びますが珍しく着氷が乱れます。しかしショートで回転不足を取られた3ルッツは目立ったミスなく下ります。後半最初は2アクセル+3トゥループ+2トゥループから、これはセカンドジャンプがアンダーローテーションの判定に。3ループは決め、続いて3フリップは空中で回転がほどけたような形で着氷し大幅に減点されます。最後の2アクセル+2トゥループは成功させ、終始情熱的な滑りを披露しました。得点は122.00点でフリー7位、総合7位で初めてのNHK杯を終えました。
 前回のカナダ大会では細かな回転不足を多々取られて得点が伸び悩んだ本郷選手。その回転不足の修正を課題に挙げて臨んだ今大会、回転不足ゼロとは残念ながらなりませんでしたが、ショートの3+3やフリーの3ルッツなど、前回からの改善点も散見され、演技自体は充実した内容だったのではないでしょうか。何より演技そのものに勢いがあり、躍動感があり、生き生きとした感じがみなぎっているのが画面を通して溢れんばかりに伝わってきて、ミスに振り回されない余裕というのが感じられて頼もしいですね。プログラムもどんどん本郷選手になじんできているので、今後のシーズンがますます楽しみです。全日本選手権では本郷選手の満面の笑みが見られることを願っています。


 8位は今季シニアデビュー、日本の白岩優奈選手です。

c0309082_02104666.jpg

 SPはドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」。まずは得点源の3ルッツ+3トゥループ、ファーストジャンプはきれいに着氷しましたが、セカンドジャンプは途中で回転がほどけてしまいダウングレード(大幅な回転不足)での着氷となります。2アクセルは軸が傾き着氷もオーバーターンに。最後の3フリップは大きなミスなく跳び切りましたが、2つのジャンプミスが響き、57.34点で8位と出遅れます。

c0309082_14393904.jpg

 フリーはムスルグスキーの「展覧会の絵」。まずはショートで決められなかった3+3から、今度はこれをクリーンに下りて加点を得ます。続く2アクセルも難なく着氷し、前半のジャンプ2つをきっちり揃えます。後半に5つのジャンプ要素を固め、最初の3+3はセカンドジャンプの着氷でオーバーターン。3サルコウはクリーンな着氷に見えましたが、アンダーローテーションの判定。終盤の3フリップはきれいに跳び切り、次いで2アクセルからの3連続ジャンプの予定でしたが、ここは2アクセルの着氷が乱れ単独に。さらに最後の3ループはパンクして2回転にとミスが重なり、フィニッシュした白岩選手は苦笑いを浮かべました。得点は114.64点でフリーも8位、総合8位で初めてのGPを終えました。
 ショート、フリーともに複数のジャンプミスが出て本領を発揮できなかった白岩選手。GPデビューが自国開催のNHK杯、しかも普段練習している大阪開催ということで、圧倒的なホームである一方、良い演技をしなければいけないというプレッシャーも感じたのではないかと思います。ただ、白岩選手は昨年末の全日本選手権でSP17位と出遅れながらも、フリー3位で総合5位と追い上げるなど爆発力がある選手でもあるので、今大会もフリーでの一気の追い上げの可能性は充分ありましたし、それができるだけの高難度のジャンプ構成でしたが、やはりシニアのGPの雰囲気に飲まれてしまった部分はあるかもしれません。ですが、一度こうした雰囲気を経験したことで慣れた感じも多少はあると思うので、2週連続の試合でコンディション調整は大変でしょうが、次戦のフランス大会ではレベルアップした姿に期待したいですね。



 ここからはペアです。

c0309082_15250375.jpg


 優勝は世界チャンピオン、中国の隋文静&韓聰組です。ショートはまずサイドバイサイドの3トゥループ、これを二人同時にピタリと合わせてクリーンに跳び切ると、スロー3フリップは抜群の高さとスムーズな流れで決め加点2の高評価を得ます。さらに得意の3ツイストは女性が片手を上げて回転しレベル4。その後はスピンが一つレベル2になる取りこぼしはありましたが、後半のエレメンツは全てレベル4を揃え、79.43点で首位に立ちます。フリーは大技4ツイストから、レベルは2でしたがクリーンに成功させ加点を稼ぎます。3+2+2は全てのジャンプを回り切って着氷。続けて3サルコウも決め、上々の立ち上がりとします。中盤も落ち着いて一つ一つ丁寧にエレメンツをこなし、後半のスロージャンプ2つも危なげなく成功。終盤のエレメンツは全てレベル4でまとめ、演技を終えた二人はガッツポーズで喜びを露わにしました。得点はフリーの世界歴代最高点となる155.10点をマーク、トータルでも自己ベストを更新し、2位に11点差をつける圧勝でGP3勝目を飾りました。
 とにもかくにも圧巻としか言いようのない演技でしたね。特にフリーはエレメンツをこなしていくごとに演技の迫力もどんどん増していって、あまりの気迫に思わず息が止まってしまうというか気圧されてしまうくらいのパワーを感じましたね。それでいて「トゥーランドット」の優雅さ、流麗さも細部に渡って繊細に表現していて、このダイナミックさと繊細さのバランスの良さは、ほかのペアにはない隋&韓組ならではの最大の魅力だなと思いました。ファイナルでは初制覇が懸かりますが、いつもどおりの思い切った演技を期待したいですね。NHK杯優勝、おめでとうございました。

 銀メダルを獲得したのはソチ五輪銀メダリスト、ロシアのクセニア・ストルボワ&ヒョードル・クリモフ組です。SP冒頭の3ツイストはキャッチで男性が女性を抱える形になりレベル1どまりに。しかし続くスロー3フリップは完璧に下りて加点1.5。その後もミスらしいミスなく安定してエレメンツをクリアし、シーズンベストで2位と好発進します。フリーもまずは3ツイストからでしたが、やはりキャッチミスがありレベル1にとどまります。スロー3フリップは安定感抜群の跳躍と着氷。次いで3トゥループ+3トゥループ+2トゥループの高難度コンビネーションジャンプは、セカンドジャンプで二人とも着氷が乱れたためサードジャンプは跳びませんでしたが3+3としては成功。以降は目立ったミスなく確実にエレメンツをこなし、最後のスロー3サルコウもきれいに着氷。フィニッシュでクリモフ選手は氷を叩いて喜びを爆発させ、ストルボワ選手も満面の笑みを見せ、ハグでお互いをたたえ合いました。得点は147.69点でフリーも2位、総合2位となり、ロステレコム杯の2位と合わせて3度目となるファイナル進出を決めました。
 今季はフィンランディア杯、ロステレコム杯となかなかすっきりとしない、消化不良の演技が続いていたのですが、今大会はショート、フリーともに最小限のミスに抑えて、特にフリーは演技後の二人の反応が物語っているように、ようやく今のベストが尽くせたと言える内容だったのかなと思います。今季の課題となっている3ツイストのキャッチミスは次戦への宿題となりましたが、演技中は二人の強い気持ちが伝わってきて、特にフリーは緊張感を漂わせつつ、滑るたびに徐々に伸びやかさと勢いを増していって乗っていく感じにぐいぐい引き込まれて、フィニッシュでは二人の表情に思わずもらい泣きしてしまいそうになりました。若くしてオリンピックの銀メダリストとなって、その肩書きを背負って次のオリンピックへ向かっていく道のりというのは、また他のペアと違う苦労があったのではないかと想像しますが、とはいえ25歳と27歳とまだ若いペアでもあるので、まだまだ伸びしろもあると思いますし、ファイナルでも思い切りの良い演技を楽しみにしています。

 3位に入ったのはロシアのクリスティーナ・アスタホワ&アレクセイ・ロゴノフ組。SPはまずサイドバイサイドの3サルコウを決めると、続く3ツイストもレベル3でまとめ、スロー3フリップもきれいに着氷。後半のエレメンツは全てレベル4とそつのない演技を見せ、自己ベストを約3点更新する70.47点で3位と好位置につけました。フリーはまず鍵を握る3+2+2を成功させると、3ツイストもスムーズに成功させ波に乗ります。3サルコウは2回転となりましたが、その後のエレメンツは全てレベル4という高い完成度でまとめ、自己ベストの133.17点でフリー3位、総合3位でロステレコム杯に続いて銅メダルを手にしました。
 今大会トータル203.64点で初めて大台の200点台に乗せたアスタホワ&ロゴノフ組。ペア結成は4季目で、女性のアスタホワ選手は20歳、男性のロゴノフ選手は29歳でと年齢差、経験の差があるペアですが、徐々にペアとしての熟成が進んできたのかなと思います。ロステレコム杯では今季も含めて3度表彰台に立っている二人ですが、母国以外のGPでのメダルはこれが初めて。そういった意味でもペアとして一皮剥けたと言えるのではないでしょうか。ファイナルに出られるかどうかは微妙なところですが、オリンピックに向けて良いシーズンの序盤を送っているのは間違いないですね。

 日本のチャンピオン、須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組は7位となりました。

c0309082_17324696.jpg

c0309082_16593765.jpg

 SPは3ツイストがレベル2になるミスから始まり、3サルコウはパンクして1回転となったため無得点となってしまいます。その後は大きな取りこぼしなくエレメンツをクリアしましたが、序盤の減点が響き、自己ベストより10点ほど低い51.69点で7位にとどまりました。
 フリーも冒頭は3ツイストから、こちらも細かなミスでレベル2となります。ショートでパンクした3サルコウは回り切って着氷しますが、スロー3ループはステップアウトし大幅な減点と序盤はミスが重なります。中盤は2アクセル+2アクセルのシークエンスジャンプで須藤選手のファーストジャンプが回転不足と判定されますが、それ以降はミスらしいミスなく丁寧にエレメンツをこなし、演技を終えた二人は手応えを得たように明るい表情で観客の声援に応えました。得点はシーズンベストとなる104.83点でフリー7位、総合7位で3度目のNHK杯を終えました。
 今季は全体的にミスの多い演技が続き苦戦を強いられていた須藤&ブードロー=オデ組。今大会もショートは50点台前半という低調なスコアでフリーに不安が残りましたが、そのフリーでは演技序盤こそ慎重さ、硬さが目立ちましたが、演技が進むにつれて少しずつ二人らしいのびやかさが戻ってきて、特に終盤のリフトやスピンは安定してレベル4を獲得するなど力強いパフォーマンスが見られ、全日本選手権に向けて良い収穫になったのではないかと思いますね。ここからまた一段階、二段階調子を上げて、全日本3連覇目指してじっくり調整していってほしいですね。

 これがGPデビューとなった須崎海羽&木原龍一組は8位でした。

c0309082_17281784.jpg

c0309082_17333015.jpg

 SPは「テレビアニメ「ユーリ!!! on ICE」より」。冒頭は難度の高い3ルッツのサイドバイサイドジャンプから、木原選手はきれいに下りましたが、須崎選手は回転不足で転倒となり大きく減点されます。続く3ツイストはキャッチで男性が女性を抱える形となりレベルが1よりしたのB(ベーシック)の扱いに。スロー3サルコウはステップアウトとなり、得点は44.83点と自己ベストから程遠い点数にとどまりました。
 フリーは「映画『ロミオとジュリエット』より」。冒頭はショートで転倒があった3ルッツ、再び回転不足は取られますが大きな着氷の乱れなくまとめます。3ツイストはレベル1にとどまり、高難度のスロー3ルッツはステップアウト。しかし中盤の3+2+2の3連続ジャンプは二人のタイミングが大きくずれたためわずかに減点こそ受けますが回転不足なく跳び切り、その後も細々としたミスは散見されましたが大崩れすることなく、最後まで力強く演じ切りました。得点は自己ベストとなる95.15点をマークしました。
 初めてのGP、しかもNHK杯とあって(木原選手は高橋成美選手とのペアで出場経験あり)、さすがに緊張感はヒシヒシと伝わってきましたが、その中でも今できるベストは出せたのかなという印象ですね。今季から取り入れた3ツイストや難しい入りのリフトなど、新たな技での細かいミスはありましたが、トップペアでも稀なサイドバイサイドの3ルッツやスローの3ルッツなど、このペアならではの魅力も垣間見えて、こうした技の安定感が増してくればおもしろい存在になるなと感じました。平昌五輪の団体戦メンバーとして現時点で最も有力なのは須崎&木原組だと思いますから(須藤&ブードロー=オデ組はブードロー=オデ選手が日本国籍を保持していないためオリンピックには参加できません)、オリンピックも見据えて、全日本選手権で最高の演技ができるよう頑張ってほしいと思います。



 NHK杯2017、女子&ペアの記事は以上です。男子&アイスダンス編に続きます。


:女子メダリスト3選手のスリーショット画像、ツルスカヤ選手の画像、長洲選手の画像、宮原選手のフリーの画像、本郷選手のSPの画像、白岩選手の画像、須崎&木原組のフリーの画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、メドベデワ選手の画像、コストナー選手の画像、宮原選手のSPの画像、本郷選手のフリーの画像、ペアメダリスト3組の画像、須藤&ブードロー=オデ組のフリーの画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、レオノワ選手の画像は、フィギュアスケート情報サイト「Absolute Skating」から、須藤&ブードロー=オデ組のSPの画像、須崎&木原組のSPの画像は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
NHK杯2017・男子&アイスダンス―セルゲイ・ボロノフ選手、パーソナルベストでGP初優勝 2017年11月18日

[PR]
by hitsujigusa | 2017-11-15 20:01 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_14332032.jpg


 前記事に引き続き中国杯2017について書いていきます。今回は男子とペアです。
 男子を制したのはロシアチャンピオンのミハイル・コリヤダ選手。ショートプログラムでは男子史上6人目となる100点台、歴代4位となる103.13点をマークし、トータルでもパーソナルベストに近いスコアでGP初優勝を遂げました。2位は地元中国の金博洋(ジン・ボーヤン)選手、3位はアメリカのマックス・アーロン選手となっています。
 ペアは世界王者の隋文静(スイ・ウェンジン)&韓聰(ハン・ツォン)組が貫録を見せつけてGP2勝目を上げました。

ISU GP Audi Cup of China 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 優勝はロシアのミハイル・コリヤダ選手です。

c0309082_14562682.jpg

 SP冒頭は今季初成功させた大技4ルッツ、これを驚異的な高さで決め1.57点の加点を獲得します。続く4トゥループ+3トゥループも完璧で同じく1.57点の加点。さらに後半の3アクセルも難なく下りて2.43点という極めて高い加点を引き出します。スピン、ステップシークエンスもスピンが1つレベル1となった以外はおおむねミスらしいミスなくこなし、全て加点1以上と美しい質のものを揃えました。得点はこれまでの自己ベストを7点以上更新する103.13点で圧巻の首位発進を果たしました。
 フリーもまずは4ルッツから、高さも回転も充分でしたが軸が曲がり転倒してしまいます。さらに4サルコウはパンクして2回転と、序盤は不安な立ち上がりに。しかし続く3アクセル+3トゥループはパーフェクトで1.57点の加点。レベル4のスピンとステップシークエンスを挟んで後半、最初の4トゥループを完璧に成功させ2.29点の加点を獲得。波に乗ってきたかと思いきや、3アクセルはまたもやパンクで1アクセルに。しかし直後の3+1+3は決めると、残りの3ループ、3+2はクリーンに下り、終盤の2つのスピンもレベル4とまとめ、フィニッシュしたコリヤダ選手は複雑そうな表情を浮かべました。得点は176.25点でフリー3位、総合では自己ベストに0.03点と迫る279.38点でトップの座を守り切りました。
 2週間前のロステレコム杯では決められなかった4ルッツを、今回は見事にショートで着氷したコリヤダ選手。高さとインパクトは4ルッツの第一人者である金博洋選手やネイサン・チェン選手をも上回る迫力で、この質の高い4ルッツを安定して跳べるようになればものすごい選手になるなと思い知らされました。また、スピンに関しても回転が速くポジションが明確なので加点が付きやすく、演技構成点もメキメキと高まって9点台目前まで来ていて、総合力のある選手という点でも今後ますます怖い存在になっていきそうですね。一方でショートとフリーを揃えることが課題の選手でもあって、揃えられれば300点台も夢ではないと思うので、まだポテンシャルの6割くらいしか出し切っていない印象さえ受けます。
 GP初優勝によってファイナル一番乗りを決めたコリヤダ選手。ファイナルではショート、フリーともに満足のいく演技が見られることを楽しみにしています。中国杯優勝、おめでとうございました。


 銀メダルを獲得したのは世界選手権2016、2017銅メダル、中国の金博洋選手です。

c0309082_23220491.jpg

 SPは「映画『グリーン・デスティニー』より」。冒頭の代名詞4ルッツ+3トゥループは若干着氷で乱れ減点となります。中盤の3アクセルは完璧に成功。しかし直後の4トゥループはステップアウトとなり、こちらも減点。スピンは全てレベル4と取りこぼしなくまとめ、93.89点で2位と好位置につけます。
 フリーは「火星 組曲「惑星」より/映画『スター・ウォーズ』より」。冒頭の4ルッツは着氷でこらえわずかに減点。次いで4サルコウは大きくバランスを崩し大幅に減点となります。3アクセルからの3連続コンビネーションは決め、後半はまず4トゥループからでしたがこれも着氷でミス。さらに2本目の4トゥループは必ず連続ジャンプにしたいところでしたが、転倒となり大きな得点ロスに。3アクセル、3+3は成功させましたが、最後の3フリップも乱れ、演技を終えた金選手はがっくりと肩を落としました。得点は自己ベストより34点ほど低い170.59点でフリー5位、総合では2位とSPから順位は変わりませんでした。
 最終的には2位となったものの内容的にはまだまだ金選手らしいジャンプが完全にはできあがっておらず、シーズン序盤の難しさが出てしまったかなと思います。特にフリーは優勝を狙える位置につけていたということもあってか、全体的に緊張感が漂っていたように感じました。そういう意味ではショートの方が体も動いて切れ味も良く、中国風のエキゾチックな曲想をうまく表現できていたと思いますね。ただ、失敗したジャンプも回転は全て回り切っていたので、本当にちょっとしたズレなのかもしれません。次戦のスケートアメリカでは笑顔で終われる演技を期待したいですね。


 3位に入ったのはアメリカの実力者マックス・アーロン選手です。

c0309082_00061878.jpg

 SPは「彼を帰して ミュージカル「レ・ミゼラブル」より/ワン・モア・デイ ミュージカル「レ・ミゼラブル」より」。冒頭は4トゥループ+3トゥループの予定でしたが、ファーストジャンプの着氷で詰まったため無理せず2トゥループを付けます。続く4サルコウはクリーンに成功。後半の3アクセルはランディングで軽く片手をついたため減点を受けます。しかし全体的には大きなミスなく流れの途切れない演技を見せ、83.11点で5位発進とします。
 フリーは「オペラ座の怪人」。冒頭は4トゥループからの連続ジャンプをしっかりと着氷。続く4サルコウもスムーズな跳躍で加点1を得ます。3ループは若干よろめく着氷となったためわずかに減点されますが、上々の前半とします。後半の得点源となる4トゥループは着氷でバランスを崩し減点。しかし続く3アクセル+2トゥループ、単独の3アクセルはきれいに下ります。3+1+3、2アクセルと終盤のジャンプも予定どおりにこなし、フィニッシュしたアーロン選手は片手を天に突き上げ喜びを露わにしました。得点は自己ベストの176.58点でフリー1位、総合3位と追い上げ、2季ぶりにGPの表彰台に立ちました。
 ショート、フリー通してジャンプが安定していたアーロン選手。やはり豪快なジャンプを跳ぶ選手なので、次々に決まれば演技全体の見ごたえも増してくるように思います。表現面ではもう少し緩急やメリハリがつけばなお良いかなという感は拭えませんが、まずはジャンプが揃わないと表現も生きてこないので、音楽表現はこれからの課題として、次戦のフランス大会ではよりプログラムの魅力を引き出す演技を楽しみにしたいですね。


 4位となったのは世界ジュニア王者、アメリカのヴィンセント・ジョウ選手です。

c0309082_01242342.jpg

 SPは「Chasing Cars」。冒頭は今季から取り入れた4ルッツ+3トゥループの高難度コンビネーション、これを完璧に、しかもセカンドジャンプで両手を上げて跳び1.86点の高い加点を得ます。しかし続く4フリップは転倒。さらに後半の3アクセルも回転不足で転倒と大きなミスが重なり、80.23点で8位と出遅れます。
 フリーは「映画『ムーラン・ルージュ』より」。冒頭はショートで成功させた4ルッツ+3トゥループをまたもやクリーンに下りて2点の高加点。ショートで失敗した4フリップは着氷でバランスを崩しかけますがこらえ最小限の減点に抑えます。立て続けに3種類目の4回転である4サルコウに挑みますが、こちらは回転が足りず転倒。後半最初は2本目の4ルッツ、これはステップアウトとなります。しかし、3アクセル、4トゥループ+2トゥループと大技を成功。その後も目立ったミスなくエレメンツをまとめ、176.43点でフリー2位、総合4位と大きくジャンプアップしました。
 昨シーズン、ジュニアにして男子史上最高難度の大技4ルッツの成功者となり、今シーズン前から注目の的となっていたジョウ選手。デビュー戦での表彰台も期待された中、ショートはやはり初めてのGPということで緊張があったのか2度転倒してしまいましたが、フリーでは3本の4回転をほぼクリーンな形で着氷させ、ルーキーらしからぬ異才ぶりを存分に発揮してくれました。特に4ルッツ+3トゥループは頑張って跳んでいるという感じが全くなく、3トゥループで両手を上げられるほど余裕しゃくしゃくで、今から末恐ろしくなりました。昨季のネイサン・チェン選手のように滑るたびに進化していくという雰囲気もぷんぷん漂わせていて、次戦のフランス大会で納得のいく演技ができれば、表彰台のチャンスは充分ありそうですね。


 5位は地元中国の実力者、閻涵(ヤン・ハン)選手です。

c0309082_02082046.jpg

 SPは「A Thousand Years」。冒頭は代名詞の3アクセルから、これを完璧に決めて1.86点の加点を獲得します。続く4トゥループは着氷で大きく乱れ、後半の3+3は3+2にとジャンプはミスが相次ぎますが、ステップシークエンス、スピンは全てレベル4と丁寧にこなし、82.22点で6位につけます。
 フリーは昨季のショートをアレンジした「I'll Take Care Of You」。冒頭は得意の3アクセルからのコンビネーションジャンプを圧巻の飛距離で跳び切って加点2。さらにショートでは失敗した4トゥループもクリーンに下りて加点2を得ます。単独の3アクセルもパーフェクトに成功で加点1.43点と前半を理想的な形で終えます。後半も3ルッツ、3ループ、3+2+2とミスらしいミスなくクリア。3サルコウ、3フリップは着氷がこらえ気味になりましたが、大きなミスなく演技を終え、地元の観客の拍手喝采を浴びました。得点は172.39点でフリー4位、総合5位と順位を一つ上げました。
 昨シーズンは肩の骨折のため世界選手権を欠場した閻選手。今大会は怪我からの復帰戦となったわけですが、閻選手らしさがよく表れた演技でしたね。ジャンプに関しては思いっきりというよりも慎重さがうかがえましたが、復帰戦でこれだけの演技ができたというのは自信になるのではないでしょうか。残念ながら閻選手のGP出場はこの1試合のみということで、どういった形で調整をしていくのかはわかりませんが、オリンピックでも閻選手らしい演技ができるようにマイペースで頑張ってほしいと思います。


 6位は前世界王者、スペインのハビエル・フェルナンデス選手です。

c0309082_15183490.jpg

 SPは「映画『モダン・タイムス』より」。冒頭は4トゥループ+3トゥループでしたが、パンクして3+2になってしまいます。続く4サルコウは着氷で膝をぐっと曲げて耐えて成功。しかし後半の3アクセルは着氷で乱れて大幅に減点。ステップシークエンス、スピンは全てレベル4を揃え、90.57点と何とか90点台に乗せて3位発進とします。
 フリーは「ミュージカル「ラ・マンチャの男」より」。冒頭はショートで失敗した4トゥループからでしたが、これもパンクして3回転になります。さらに4サルコウ、3アクセルと着氷の乱れが重なり、精彩を欠いた出だしとなります。後半最初の4サルコウからの連続ジャンプは3+2に。単独の3ループはきれいに下りますが、コンビネーションにしなければならない3アクセルは再び着氷ミスで単独に。その後も3ルッツは決めたものの、3+1+3は2+1+2と最後まで立て直せないままフィニッシュ。得点は自己ベストより50点以上低い162.49点でフリー6位、総合でも6位となり、ファイナルを除いてGPでは4年ぶりに表彰台を逃す結果に終わりました。
 ショート、フリーでクリーンに決まった4回転はショートの1本のみ、得意の3アクセルに至っては1本も成功せずという、フェルナンデス選手らしからぬ信じられないミスの連続でした。もちろんシーズンの中で好不調の波というのは当然あり、フェルナンデス選手ほどの一流選手であれば調子が悪い時もそこそこの演技はできるものだと思うのですが、そうした経験をも超えるメンタル面での難しさ、またはフィジカル面での不調があったのでしょうか。ショートに関して言えば、103.13点を叩き出したコリヤダ選手の直後の滑走だったということで多少影響があったのかなと勝手に想像してしまうのですが、そのショートからフリーでうまく切り替えられなかった、ショートの悪い部分を引きずってしまったというのは、今後に向けて少し心配ですね。
 次戦のフランス大会はさすがに今大会よりも悪くなるということはないでしょうが、短期間でどれだけジャンプの綻びを修正してくるか、オリンピックに向けての試金石にもなると思いますから、注目です。


 日本の田中刑事選手は7位となりました。

c0309082_15524942.jpg

 SPは「Memories」。冒頭は得点源の4サルコウ、これをしっかり回り切って成功させると、さらに3+3も難なく下りて1.2点の加点を獲得。後半の3アクセルもパーフェクトで1.86点の加点を引き出し、表現面でもブルースに乗って色気漂う滑りを見せ、パーソナルベストを6点以上更新する87.19点で4位と好発進しました。

c0309082_15593045.jpg

 フリーは2季連続の「フェデリコ・フェリーニ・メドレー」。まずはショートできれいに決めた4サルコウを再びクリーンに下ります。続いてはショートでは回避した4トゥループでしたが、これは3トゥループに。ですが、3アクセルは完璧に跳び切ってすぐに切り替えます。後半はまず鍵を握る4サルコウからでしたが、パンクして3回転に。3アクセルからの3連続ジャンプは全てクリーンに着氷。3+3も成功と良い流れを作ります。次は3ループというところでしたが、その軌道に入ったところでまさかの転倒。すぐに起き上がった田中選手は最後の3ルッツをしっかり跳び終えましたが、ほかの選手より一つジャンプが少ない状態となり、159.98点でフリー7位、総合7位と大きく順位を落としました。
 GP初戦になる予定だったロステレコム杯を怪我のため辞退し、今大会が復帰戦となった田中選手。SPはブルースという初挑戦のジャンルでしたが、思った以上に田中選手が醸し出す雰囲気とブルースの空気感がマッチしていて良かったですね。特に腕の使い方が以前と比べてとても美しく滑らかになって、ブルース特有の渋さをうまく表現しているように思いました。一方のフリーは予定していた4回転3本のうち1本しか決まらず、また、アクシデント的な転倒によって3ループが入らなかったということで、かなり点数をロスしてしまいました。それでも自己ベストから8点ほどしか変わらなかったというのは、下りたジャンプではしっかり加点が取れているというのも大きいですし、演技構成点もミスが複数あったわりにはまずまず良い評価が与えられていて、プログラムが昨季からの持ち越しということもあって意識せずともナチュラルに動けている感じが見て取れて、そういった点もジャッジに伝わったのかなと思います。
 田中選手にとってはまだまだ納得のいく演技には程遠いでしょうが、今大会で得た課題も糧にして、全日本選手権に向けてうまく調整して、次こそは悔いのない演技をしてほしいですね。



 ここからはペアです。

c0309082_17002843.jpg


 優勝は世界チャンピオンの隋文静&韓聰組。SPは「ハレルヤ」。まずはサイドバイサイドの3トゥループを二人ともクリーンに決めると、高難度のスロー3フリップも成功。3ツイストはレベル4を獲得し、デススパイラルがレベル3と取りこぼした以外は全てレベル4を揃え、自己ベストに約1点と迫る80.14点で断トツの首位に立ちます。フリーは「トゥーランドット」を演じ、冒頭では大技4ツイストをレベル2ながらもGOEでは高い評価を受け成功させると、3+2+2の3連続ジャンプも着氷。3サルコウは乱れますが、後半のスロージャンプ2つはどちらも加点2以上というパーフェクトな出来で、自己ベストを0.1点上回る150.93点をマーク。もちろん1位で、2位に25点差以上つける完全優勝を果たしました。
 世界王者らしい圧巻の演技を披露した隋&韓組ですが、意外にもこれがGP2勝目なんですね。昨シーズンは隋選手の負傷のためGPはパスしたということもありますが、一時は競技復帰さえ危ぶまれるような大怪我をしたということを今では忘れてしまうくらい、圧倒的な安心感を与える演技を見せ続けてくれています。ペア界はトータル230点を超える、もしくは230点に迫ろうかという自己ベストを持つペアが複数いて、どのペアがオリンピックを制するのかその時になってみないとわからない戦国時代ですが、その分見ている側にとっては本当におもしろい状況でもあります。隋&韓組の次戦はNHK杯ということで連戦となり、疲労も溜まっているかと思いますが、また二人らしい安定感抜群の演技が見られることを楽しみにしています。中国杯優勝、おめでとうございました。

 2位は同じく中国の于小雨(ユー・シャオユー)&張昊(ジャン・ハオ)組です。SPは王道の「白鳥の湖」で、冒頭の3トゥループこそ女性の于選手が氷に軽く手をついてしまい若干減点されますが、そのほかのエレメンツは全てレベル4を獲得し、71.37点で2位につけます。フリーは「映画『スター・ウォーズ』より」。演技前半はソロジャンプで細かなミスが相次ぎますが、スロージャンプやリフトなどのエレメンツは確実にこなし、自己ベストに約2点と迫る134.17点でフリーも2位、総合2位となりました。
 昨季からペアを組んでいる于&張組。出場した全ての試合で200点を超えるなど安定感が持ち味のペアですが、ソロジャンプが弱点と言えば弱点ですね。ソロジャンプがより安定してくるとさらに怖い存在になると思うので、次戦のスケートアメリカではその点がどれだけ修正されるかに注目ですね。

 3位はカナダのカーステン・ムーア=タワーズ&マイケル・マリナロ組。SPは「Sweet Dreams」。冒頭の3ツイストがレベル1になったり3トゥループで着氷ミスがあったりとミスが重なり、得点が伸び悩み4位にとどまります。フリーは「Un Ange Passe」。冒頭の3ツイストは再びミスがありレベル2どまり、2アクセルからの3連続ジャンプは二人のタイミングが大きくずれて減点は受けますが、最小限のミスに抑えます。その後は目立ったミスなくエレメンツをこなし、フィニッシュした二人は納得したように破顔しました。得点は自己ベストとなる132.00点をマークしフリー3位、総合3位で銅メダルを獲得しました。
 母国開催のスケートカナダ以外のGPでは初表彰台となったムーア=タワーズ&マリナロ組。細かいミスはさまざまあり、特にショート、フリーともに男性が女性をキャッチする時間が長くなった3ツイストのミスはもったいなかったですが、全体的には大崩れすることなくよくまとめたなという印象ですね。カナダはペアも層が厚く、このペアも昨季のカナダ選手権で3位に入っているとはいえ全く油断はできませんから、ひとまずGP初戦でまずまず安定した演技を見せられたのはオリンピックの代表争いに向けても良いアピールとなりましたね。2戦目のスケートアメリカは今大会以上の強豪揃いとなるので表彰台に乗るのはなかなか厳しそうですが、今回以上の好演技に期待ですね。



 中国杯2017の記事はこれで全て終了です。男女シングルは上位が接戦となった一方、ペア、アイスダンスは優勝した組が頭一つ抜きん出た形となりました。
 今年のGP3戦までを振り返ると、女子に関して言えば、初戦のロステレコム杯は上位にミスが少なく得点も高め、2戦目のスケートカナダは上位にミスが多く低調、そして中国杯はやはり上位にミスが少なめで好調と、試合ごとに好不調がハッキリ分かれているような気がします。たとば今大会の三原舞依選手は200点を超えても4位と表彰台にも上がれず、スコアではなくポイントによってランキングが決まるGPとはいえ、その恩恵を受ける選手と割を食う選手とがいて、出場する大会によってこれだけ運命が左右されるのは今更ながらやっぱり不公平だなーという気もしました。
 そして男子はベテランのハビエル・フェルナンデス選手、パトリック・チャン選手がそれぞれ6位、4位と表彰台を逃すという波乱が発生。チャン選手はNHK杯で優勝すればファイナルの可能性も残るという中でしたが、辞退を発表し、カナダ選手権に向けて調整を優先することに。フェルナンデス選手はまさかフランス大会を辞退するということはないと思いますが、これまで男子フィギュア界を引っ張ってきた二人の絶不調はある意味で衝撃的でしたね。昨季から今季にかけて多種類の4回転を跳ぶ選手が一気に増え、特に最高難度の4ルッツを武器にする選手が急激に増えたということで、トゥループとサルコウという比較的基礎点の低い4回転しか持たないフェルナンデス、チャンの両選手にとっては五輪のメダルがますます困難な状況になってきているのかなと思います。完成度で勝負するベテラン勢が今後どう巻き返しを見せるのか、期待も込めて注視したいですね。
 そしていよいよ次戦はNHK杯。世界チャンピオンの羽生結弦選手の2戦目となりますが、少し前に村上大介選手が肺炎のため辞退という残念なお知らせが飛び込んできました。代役は今季シニアデビューの友野一希選手ということで、友野選手は混沌としている日本男子の3人目に名乗りを上げるまたとないチャンスですから、どんどん攻めてアピールしてほしいと思います。女子は日本のエース、宮原知子選手が満を持して登場。これが今季初戦ということで、あの正確無比なジャンプがどれだけ戻ってきているのか未知数で心配ではありますが、まずは今のベストを尽くして宮原選手らしいエレガンスな演技を見せてほしいですね。では。


:男子メダリスト3選手のスリーショット画像、金選手の画像、アーロン選手の画像、ジョウ選手の画像、閻選手の画像、田中選手の画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、コリヤダ選手の画像、フェルナンデス選手の画像、ペアメダリスト3組の画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
中国杯2017・女子&アイスダンス―アリーナ・ザギトワ選手、GPデビュー戦で初優勝 2017年11月7日

[PR]
by hitsujigusa | 2017-11-08 23:45 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_16460368.jpg


 GPシリーズ17/18も早くも折り返しまで来ました。第3戦は中国の北京開催の中国杯。この記事では女子とアイスダンスの結果についてお伝えします。
 女子の優勝者はロシアの新星アリーナ・ザギトワ選手。GPデビューと思えない驚異の滑りで接戦を制しました。2位は日本の樋口新葉選手で、ショート、フリーともにノーミスの演技で初のファイナル進出に向け一歩前進しました。3位はロシアの実力者エレーナ・ラディオノワ選手となっています。
 アイスダンスは前世界王者、フランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組がアイスダンス史上初めてとなる総合200点超えの快挙を達成しGP4勝目を上げました。

ISU GP Audi Cup of China 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 GP初優勝となったのは世界ジュニア女王のアリーナ・ザギトワ選手です。

c0309082_16462678.jpg

 SPは「映画『ブラック・スワン』より」。まずはフライングキャメルスピンで幕を開ける変則的なプログラムで、続いてステップシークエンスとどちらもレベル4を揃えます。後半に入り最初のジャンプが得点源の3ルッツ+3ループでしたが、セカンドジャンプで転倒。しかし直後の3フリップ、2アクセルは切り替えてクリーンに跳び切り、残りのスピン2つもレベル4と気持ちを切らさず演じました。得点は69.44点で4位と好位置につけます。
 フリーは昨季から継続の「バレエ「ドン・キホーテ」より」。こちらも7つのジャンプ要素を全て後半に固める攻撃的な構成。冒頭はコレオシークエンス、スピン、ステップシークエンスと全て高い質で1点以上の加点。そしてショートでは失敗した3ルッツ+3ループは完璧に着氷し加点1.1の高評価。次いで2アクセル+3トゥループ、3+2+2と難しいコンビネーションジャンプを立て続けに成功。単独の3ルッツは一見きれいに下りたかに見えましたが、アンダーローテーション(軽度の回転不足)の判定。しかし終盤の3フリップ、3サルコウ、2アクセルは難なく下り、最後まで勢いと冷静さを保ったままフィニッシュしました。得点は144.44点でフリー1位、総合1位でGPデビュー戦にして優勝の快挙を達成しました。
 ショートは転倒こそあったものの、ショート、フリー通して15歳らしからぬ落ち着きぶりで終始圧倒されましたね。女子史上最高難度の3ルッツ+3ループを跳べること、全てのジャンプを後半に組める驚異的なスタミナ、多くのジャンプで両手を上げて跳べる高い技術力など、素晴らしい部分を挙げればきりがないですが、表現面もジュニア上がりとは思えない完成度で目を引きつけられます。スケーティング技術やつなぎの部分などの基礎がしっかりしているのはもちろんですが、音とジャンプとの調和のさせ方の巧さも際立っていて、あれだけ難しいジャンプさえも表現の一つとして駆使しているというのが驚かされます。体の動きを音楽に合わせるというのはフィギュアスケートの表現における基礎中の基礎だと思いますが、ジャンプをあそこまで音と合わせられるというのはトップ選手でも難しいことだと思いますし、ジャンプと音がピタリピタリと合わさっていくのを見ると、やはり否が応にも見ている方も気持ちが良くなってきますし、知らぬ間に乗せられていくというか痛快さを感じますね。
 ザギトワ選手の次戦は2週間後のフランス大会。今回のショートに関しては悔しさが残ったでしょうし、同じミスを繰り返さないためにさらに仕上げてくると思うので、パーフェクトな演技を楽しみにしたいですね。中国杯優勝、おめでとうございました。


 約1点差で惜しくも2位となったのは日本の樋口新葉選手です。

c0309082_17153629.jpg

 ショート冒頭は得意の2アクセルをいつもどおり落ち着いて着氷し加点1。後半に2つのジャンプ要素を固め、3ルッツ+3トゥループはきっちり回り切って下ります。直後の3フリップは踏み切りが不正確だったため加点は付かず。しかし前半から後半にかけてテンポの変わる「ジプシーダンス」を体を大きく使って躍動感たっぷりに演じ、70.53点で2位と好発進します。

c0309082_17224023.jpg

 フリーもまずは2アクセルをクリーンに下りて流れを作ると、続く得点源の3ルッツ+3トゥループも高さと流れのある跳躍でショート以上の加点を獲得。レベル4のスピンと全選手中最も高い加点の付いたコレオシークエンスをこなし、GP初戦のロシア大会で2回転になった3サルコウもクリーンに成功。そして後半の鍵を握る3ルッツ+3トゥループはこちらも完璧で加点1.2。さらに3ループ、2アクセル+2トゥループ+2ループと難なく終え、最後の3フリップはショートから踏み切りを修正し正確に跳んで1点近い加点を得ます。終盤のステップシークエンス、スピンも息切れすることなくパワフルに滑り切った樋口選手は、ガッツポーズで喜びと手ごたえを示しました。得点は141.99点でフリーも2位、総合2位でGP自己最高位をマークしました。
 GP初戦のロステレコム杯から2週間、前回も素晴らしい演技でしたが、それ以上に見事なショートとフリーでしたね。前回はショートの3+3で回転不足を取られ思ったほど点を伸ばせなかった反省を活かし、今回はほぼ全てのジャンプがクリーンで文句のつけようのない質の高さでした。そして何といっても表現面では音楽との調和が見るたびに進化していて、「ジプシーダンス」も「007」も振り付けをこなしているというのではなく、自然に体がそう動いてしまうというような、見ていて良い意味で引っかかりのない、何の違和感もなく見られる演技となっていて、ぐいぐい引き込まれました。ただ、それでもまだ伸びしろは大いに残っていて、特にステップはショート、フリーともにレベル3だったので、これがレベル4だったら優勝していた可能性もありますから、本当に細かい部分ですが惜しかったですね。
 ロステレコム杯3位、今大会2位で樋口選手は24ポイント。ファイナル出場の可能性は濃厚ですが、ほかの選手の結果によるので最終戦のスケートアメリカが終わるまで出場決定はお預けですね。もしファイナルに出場できたら樋口選手らしい元気のよい、ダイナミックな滑りをまた見せてほしいと思います。


 3位はロシアのエレーナ・ラディオノワ選手です。

c0309082_16451956.jpg

 SP冒頭は3ルッツ+3トゥループ、回転はギリギリだったものの認められて成功。続く2つのスピンはレベル4。後半の3ループ、2アクセルもクリーンに決めて、終盤のステップシークエンスではコケティッシュな魅力を存分にアピール。最後のスピンもレベル4でまとめて、シーズンベストとなる70.48点で3位発進します。
 フリーもまずは得点源の3+3から、これをショートよりも良い流れで着氷させて加点1.2の高評価。続く3フリップは踏み切りのエッジが不正確とされたもののわずかながら加点を獲得します。後半に5つのジャンプ要素を固め、最初の3+1+3は全てのジャンプをきっちり回り切ってスムーズに跳び切ります。3+2は若干減点されますが、終盤の2アクセル2本、3ループと全て成功させ、スピンはショートに続いて全部レベル4を揃え、演技を終えたラディオノワ選手は両手を握り締め喜びを露わにしました。得点は自己ベストに約3点と迫る136.34点でフリー4位、総合3位でGPデビュー以来5季連続での表彰台を逃しませんでした。
 樋口選手と同じくロステレコム杯とこの中国杯の2試合エントリーだったラディオノワ選手。ロステレコム杯ではショート、フリーともに3+3の回転不足がありましたが、今大会はジャンプの回転不足は一つもなく、見事に修正されていましたね。短期間で修正するのは簡単なことではなかったと思うのですが、さすがGP5季目で経験豊かなラディオノワ選手だからこそですね。演技全体を見ると技に対する加点の付き方は上位2人には及ばないのですが、まずはジャンプを確実に回り切って下りることが前提かつ最重要なので、5年連続でのファイナル進出の可能性はほぼ皆無ですが、ロシア選手権に向けて貴重な収穫を得られたのではないかと思います。


 4位には日本の三原舞依選手が入りました。

c0309082_17173088.jpg

 SPは「リベルタンゴ」。冒頭は得点源の3ルッツ+3トゥループでしたが、ファーストジャンプの着氷で詰まり、思い切って3トゥループを跳んだもののアンダーローテーションで着氷してしまいます。後半の2アクセル、3フリップはきれいに成功。スピンは全てレベル4とそつのなさを見せましたが、66.90点で7位にとどまります。

c0309082_17231540.jpg

 フリーは「ガブリエルのオーボエ 映画『ミッション』より」。前日ミスがあった3+3、今度は完璧に回り切って下り1.2点の加点を得ます。続く2アクセルは珍しく空中で軸が歪んだためわずかに減点。本来後半に跳ぶ予定だった3フリップは、若干早いタイミングで跳んだため基礎点1.1倍にはなりませんでしたが、クリーンな跳躍と着氷で高い加点。さらに2アクセル+3トゥループ、3ループ、3+2+2、3サルコウと予定していたジャンプを全てパーフェクトにこなし、フィニッシュした三原選手は満面に笑みを浮かべました。得点は139.17点でフリー3位、ショートから追い上げましたが、3位のラディオノワ選手とは0.75点差で惜しくも4位となりました。
 ショートは直前の6分間練習でロシアのエリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手とぶつかってしまうアクシデントが発生。多少痛みがあったようで、冒頭の3+3はもしかしたらその影響もあったのかもしれません。それでも致命的な失敗は犯さない安定感はさすがで、新しいチャレンジとなる「リベルタンゴ」もまだ完全に体になじんでいるというところまでは行っていない印象を受けましたが、少しずつ音楽が三原選手の体に染み込んできているのかなという感じがしました。フリーは2アクセルのミス以外はいつもの三原選手の軽やかかつ伸びのあるジャンプで、エレメンツとエレメンツの間の流れも良く、ゆったりとした優雅なプログラムに合っていましたね。さらに壮大さ、スケール感の大きさを今以上に表現できると、演技構成点の評価も上がってくるのかなと思います。
 今大会の女子は上位選手にミスが少なくハイレベルな戦いとなり、三原選手も200点を超えたにもかかわらず4位と不運と言えば不運でした。ファイナルに進むためには次のフランス大会で優勝する必要があり、ザギトワ選手やカナダ大会を制したケイトリン・オズモンド選手を破らなければなりません。厳しい試合となりそうですが、体に気をつけてうまく調整して、また笑顔で終われるように祈っています。


 5位は日本の新星、本田真凛選手です。

c0309082_17493883.jpg

 前週のスケートカナダに続き、初めての連戦となった本田選手。ショートはスケートカナダより難度を落としたジャンプ構成で臨み、冒頭は3フリップ+3トゥループ、クリーンに跳び切ったかに見えましたがセカンドジャンプがアンダーローテーションと判定されます。中盤のスピンとステップシークエンスはレベル4。後半の3ループ、2アクセルもきっちり着氷し、最後のスピンもレベル4と丁寧にこなし、66.90点で三原選手と同点となりますが、技術点で上回った本田選手が6位となります。

c0309082_18240242.jpg

 フリー冒頭は単独の3ルッツ、これをしっかり下りて好スタートを切ります。続く3フリップ+3トゥループは2+3になるミス。後半最初は2アクセル+3トゥループで、パーフェクトに成功させると、3+2+2も全てのジャンプを回り切って下ります。3サルコウ、3ループも難なく着氷し、最後のジャンプは2アクセルの予定でしたが急遽変更し3フリップに挑戦。惜しくも回転不足とはなりましたが、最後まで戦う意志の感じられる内容で、131.42点でフリー5位、総合5位と順位を上げました。
 2週連続での試合ということでフリーは少し疲れていたかなという感じがしましたが、ショート、フリーともに大きな取りこぼしなくまとめたのはスケートカナダでの失敗をさっそく活かしていて良かったですね。この2試合を振り返ってみると、まだ本来の本田選手の良さ、魅力は出し切れていないかなという印象で、ジュニアの時の思い切りの良さ、勢いが雲に隠れているような気がします。作ったばかりのショートは演じた回数自体が少ないので仕方ない面もありますが、フリーも「トゥーランドット」という壮大な音楽の中に本田選手が埋もれてしまっているようで、本当であればスケーターが音楽を引っ張っているように見える演技が理想的だと思うので、全日本選手権ではもっと弾けた演技が見られることを期待したいですね。


 6位は世界選手権2017銅メダル、カナダのガブリエル・デールマン選手です。

c0309082_20062915.jpg

 SPは「ハバネラ オペラ「カルメン」より」。冒頭の3トゥループ+3トゥループは目を見張る高さと飛距離でほとんどのジャッジから加点3の評価を受けます。続くスピンは珍しくバランスを崩し減点。しかし、後半の3ルッツ、2アクセルはクリーンに決めて、終盤のステップシークエンス、スピンはレベル4と安定してエレメンツをこなし、自己ベストに近い70.65点でトップに立ちます。
 フリーは「映画『グラディエーター』より」。冒頭の3トゥループ+3トゥループはショート同様にパーフェクトな出来で加点1.9点。次いで3フリップも着氷しますが、踏み切りのエッジエラーのため大幅に減点。続く得意の3ルッツは確実に決めます。後半は3+2+2からで、若干詰まったため減点。3ループ、2アクセルは問題なく成功させますが、最後の3サルコウはステップアウトで氷に片手をつきます。演技を終えたデールマン選手は少し残念そうに顔を曇らせました。得点は126.18点でフリー7位、総合6位と大きく順位を落としました。
 フィンランディアトロフィーに続き、これが今季2試合目のデールマン選手。フィンランディアはミス連発で6位と振るわず、今大会はその時より20点以上得点は上積みしたもののやはり6位と、低調なシーズンのスタートとなっています。世界選手権のメダリストになったとはいえ、好演技を続けないとジャッジからの評価も下がっていってしまいますし、世界の表彰台の常連になるためには、やはりシーズン序盤から連続で表彰台落ちというのはあまり印象は良くないですね。オリンピックでメダル争いに加わるためには、ここが踏ん張りどころ。今回の演技もそんなに悪い内容ではなかったので、細かいスピンの取りこぼしやジャンプの流れなどを改善して、次戦のフランス大会ではさらにデールマン選手らしい演技を楽しみにしたいと思います。



 ここからは歴史的な試合となったアイスダンスについてです。

c0309082_23531073.jpg


 歴史に残る演技を披露し圧勝したのはフランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組です。SDは「Shape Of You/Thinking Out Loud」のエド・シーランメドレーで、全てのエレメンツを極めて高いクオリティーとレベルでまとめ、自身初、そして史上2組目の80点台となる81.10点をマークし、2位に8点以上もの差をつけて首位発進。FDはベートーベンの「月光ソナタ」。演技前半のサーキュラーステップがレベル3となった以外は全てレベル4という完成度の高い滑りで、自身が保持するフリーの世界最高スコアを更新する119.33点を叩き出し、トータルでも前週のスケートカナダでテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組が記録したばかりの世界最高点を塗り替え、アイスダンス史上初の200点台に乗せ、2位に約15点の大差をつけて、GP4勝目にこれ以上ない花を添えました。
 GP初戦とは思えない隙のない演技でただただ脱帽ですね。それにしても一気に200点を突破するとは予想外でした。スケートカナダでヴァーチュー&モイア組が199.86点という世界最高をマークし、このままヴァーチュー&モイア組の無双状態になっていくのかと思いきや、パパダキス&シゼロン組が次週にはそれを抜いて去るというあまりにも鮮やかなアイスダンス界のトップ争いで、オリンピック金メダルの行方はまた混沌としてきましたね。しかしヴァーチュー&モイア組がNHK杯で完璧な演技をすれば再び世界最高を更新する可能性もあり、最終的に今季のうちにアイスダンスの世界最高得点はどこまで行くのか、天井はないといった感じですね。次戦のフランス大会でもパパダキス&シゼロン組らしい演技を楽しみにしています。中国杯優勝、おめでとうございました。

 2位はアメリカのマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組です。SDは「Aguanile/Que lio/Vivir mi vida」。パターンダンスの加点が伸び悩んだり、ステップが1つレベル2にとどまったりと細かい取りこぼしが目立ち、自己ベストより6点ほど低い得点で2位となります。FDは「イマジン」。ショートから打って変わってステップ以外全てレベル4とそつなくまとめ、自己ベストに約1点と迫るスコアをマークし2位、トータルでも2位となりました。
 GP前の実戦はなく、今大会がシーズン初戦となったチョック&ベイツ組。そういった意味で仕上がり具合としては表彰台に乗ったほかのカップルより遅れているのかもしれませんが、フリーをしっかりまとめてくるところは2度世界選手権の表彰台に乗っている実力者らしい安定感ですね。次戦のフランス大会では今回ミスがあったSDでのレベルアップに注目です。

 3位はロシアのエカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組。SDはこちらもパターンダンスがレベル2になる取りこぼしがあり、ロステレコム杯でマークしたシーズンベストより4点ほど低いスコアで3位にとどまりました。FDはミスらしいミスなくクリーンなプログラムを演じましたが、オンドレイネペラトロフィーでマークしたシーズンベストにはわずかに及ばず3位、総合でも3位となりました。
 前々週のロステレコム杯では2位だったボブロワ&ソロビエフ組。今大会はその時よりスコアが落ちてしまい課題は残ったのかなと思いますが、叶えば通算7度目となるファイナル進出に向けては可能性を大いに残しました。ただ、ファイナルでメダル争いに食い込むためには確実に190点台は必要ですし、欲を言えば190点台後半が望ましいので、自己ベストが180点台後半のボブロワ&ソロビエフ組にとっては厳しいでしょうが、今後のさらなるブラッシュアップに期待ですね。



 女子&アイスダンス編は以上です。男子&ペア編に続きます。


:女子メダリスト3選手のスリーショット画像、樋口選手の画像、三原選手の画像、本田選手のSPの画像、デールマン選手の画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、ザギトワ選手の画像は、共同通信社の英語版ニュースサイト「Kyodo News」が2017年11月4日の22:07に配信した記事「Figure skating: Japan's Higuchi finishes 2nd at Cup of China」から、ラディオノワ選手の画像、本田選手のフリーの画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、アイスダンスメダリスト3組の画像は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
中国杯2017・男子&ペア―ミハイル・コリヤダ選手、シーズンベストでGP初優勝 2017年11月8日

[PR]
by hitsujigusa | 2017-11-07 02:01 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_16201287.jpg


 GPシリーズ2戦目のスケートカナダ2017。女子とアイスダンスについて前記事でお伝えしましたので、今回は男子とペアです。
 男子を制したのは日本の宇野昌磨選手。他の追随を許さない圧倒的な演技でGP3勝目を手にしました。2位にはアメリカの実力者ジェイソン・ブラウン選手、3位にはロシアの新星アレクサンドル・サマリン選手が入りました。
 ペアは前世界王者、地元カナダのメーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組がSP2位から逆転で優勝しました。

ISU GP Skate Canada International 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 男子の覇者は世界選手権2017銀メダルの宇野昌磨選手です!

c0309082_16211273.jpg

 SPはヴィヴァルディの「冬 「四季」より」。まずは代名詞の4フリップをパーフェクトに決めて2.29点という極めて高い加点を得て好スタート。スピンとステップシークエンスを挟んで後半、4トゥループからのコンビネーションジャンプはファーストジャンプの着氷で若干流れが滞ったため、無理せずセカンドジャンプを2トゥループにして加点を狙います。得意の3アクセルはいつもどおり安定感抜群の跳躍とランディングでこちらも2.43点と高い加点。スピンは全てレベル4と取りこぼしなく滑り切り、103.62点と9月のロンバルディアトロフィーでマークしたパーソナルベストに迫るハイスコアで断トツの首位発進となります。

c0309082_15025835.jpg

 フリーは2季前と同じ「トゥーランドット」。まずは昨季習得した4ループ、これを完璧に下りて2.14点の加点を獲得。続くジャンプは今季習得したばかりの4サルコウは回避し3ループにしましたが、4ループの直後とあって感覚が狂ったのか回りすぎで下りてきてしまい着氷を乱します。次いで3アクセルはクリーンに着氷しすぐに立て直します。後半最初のジャンプはこれまた大技の4フリップでしたが、着氷でステップアウトし減点。続く4トゥループはアンダーローテーション(軽度の回転不足)での着氷で再びステップアウトとミスが重なります。ですが、直後の4トゥループ+2トゥループは若干耐えながらも成功。3アクセル+1ループ+3フリップはスムーズな流れで決め加点2。最後の3サルコウは急遽3トゥループを付けてリカバリーし加点に繋げ、フィニッシュした宇野選手はほっとしたような笑顔を見せました。得点は197.48点でもちろんフリー1位、総合1位でGP3勝目を上げました。
 大会が始まる1週間ほど前からカナダ入りし、時差への対応など緻密に調整していた宇野選手。その効果もあってかショートは「体が動きすぎる」「アドレナリンが出すぎていた」と本人が話すくらいキレキレの演技でした。そこから一転、フリーはショートの半分ほどしか体が動かなかったというくらいエネルギーが不足していたようですが、はた目にはそうとは全くわからないくらい、スピード感だったり動作の繊細さだったりの方が印象に残りましたね。調子が悪い時にこそその選手の真価が表れると私は思っていますが、そういった意味で宇野選手は多少不調でもこれだけの演技ができるというのを示し、すでにそのレベルにまで達しているんだなということをつくづく感じさせられました。
 宇野選手の次戦は3週間後のフランス大会。調子が良くても悪くても、宇野選手は軸がしっかりしているスケーターなので全く心配するところはないですから、自分のペースでうまく調整してまた納得のいく演技ができるよう頑張ってほしいですね。スケートカナダ優勝、おめでとうございました。


 2位はアメリカのジェイソン・ブラウン選手です。

c0309082_15400656.jpg

 SPは「The Room Where It Happen ミュージカル「ハミルトン」より」。まずは3アクセルから、着氷がわずかに乱れますが最小限のミスに抑えます。続く3ルッツはクリーンに成功させ、後半の3+3もきれいな着氷。冒頭の3アクセル以外の全てのエレメンツが1点以上の加点という質の高さで、特に終盤のステップシークエンスはほとんどのジャッジが満点となる加点3の高評価を与え、90.71点で3位と好発進します。
 フリーは「Inner Love」。冒頭は未だ公式試合で成功させたことのない4トゥループに果敢に挑戦、しかしアンダーローテーションで下りてきてしまいあえなく転倒します。直後の3アクセルも少し慎重になったのかアンダーローテーションでの着氷で減点。しかし次の3フリップは難なく成功させます。後半最初は3アクセル+3トゥループ、これを完璧に決めて1.29点の加点を獲得。続く3+1+3も全てのジャンプを回り切って着氷します。次いで3ループは珍しくパンクして1回転となりますが、3ルッツ+2トゥループ、2アクセルと残りのジャンプはクリーンにこなし、悲哀漂うプログラムの世界を余すことなく表現し切りました。得点は170.43点でフリー2位、総合でも2位と順位を一つ上げました。
 今回も残念ながら4回転初成功はなりませんでしたが、そんなことはごくごく些末なことと思えるくらい演技自体が素晴らしく美しかったですね。ショートは軽快なミュージカルナンバーでブラウン選手独特のバネのある動きを活かした振り付け、滑りがいかんなく発揮され、かと思うとブラウン選手のために作曲されたオリジナル曲であるというフリーは、センチメンタルで、それでいてダイナミックという相反する世界観を、繊細に、時に大らかに、頭のてっぺんから足のつま先まで気を配りながら表現していて、ショートとフリーでまるで別人のように魅せてくれます。やはりこういった演技を見せられると、これぞフィギュアスケートと言いたくなりますし、点数なんかは度外視して、フィギュアスケートの一つの究極形だなと思いますね。
 ブラウン選手の次戦はNHK杯。日本で見られることを嬉しく思いますし、初めてのファイナル出場も懸かりますが、ブラウン選手らしくのびのびと滑ってほしいですね。


 3位は今大会がGPデビューとなったロシアのアレクサンドル・サマリン選手です。

c0309082_16303784.jpg

 SPは「月光ソナタ/I'm No angel」。冒頭は試合ではまだ成功させたことのない大技4ルッツ+3トゥループ、これをしっかり回り切って下り見事に成功させます。続く4トゥループは若干着氷を乱し、後半の3アクセルはアンダーローテーションでの着氷で大きくバランスを崩します。しかし4+3の成功が効いて84.02点と自己ベストをマーク、4位と表彰台を狙える位置につけます。
 フリーは「La Naissance de Yaha/The Unforgiven III/House of the Rising Sun」。まずは前日初成功させた4ルッツから、これをショートよりもきれいな質で下りて加点2の高評価を得ます。続く4トゥループもクリーンな着氷で加点1.86点。さらに3アクセルも加点2と演技前半は最高の出来となります。後半もまずは3+3を確実に決めて勢いを繋げますが、3アクセル+2トゥループは3アクセルが回転不足に。続く3ルッツ、3ループはクリーンに成功させ、最後の2アクセルは着氷を乱しながらも大崩れはせず、大きなミスなく演技を終えました。得点はショートに続き自己ベストの166.04点でフリー3位、総合3位と、GPデビューにして銅メダルを獲得しました。
 今大会最大のサプライズとなったサマリン選手。何といってもショート、フリーともに成功させた4ルッツはただ成功させただけではなく質も高いもので本当に驚かされました。ショートもフリーも演技後半にミスがあって、疲れてきた時にどれだけ技や表現の細部を疎かにせずまとめられるかは今後の課題ですし、今回の好演技だけではまだ安定感の有無というのは判断できないので何とも言えないのですが、どちらにせよ4回転時代の申し子の一人として楽しみな選手であることは間違いないですね。サマリン選手の次戦はフランス大会。そちらでもパーソナルベスト更新に期待したいですね。


 4位はソチ五輪銀メダル、カナダのパトリック・チャン選手です。

c0309082_17104066.jpg

 SPは「Dust in the Wind」。まずは得点源の4トゥループ+3トゥループを確実に決めると、続く3ルッツも問題なく成功。後半の苦手の3アクセルは着氷が大きく乱れますが、スピンは全てレベル4を揃え、世界屈指のスケーティングで軽やかかつ優雅な演技を披露し、94.43点で2位につけます。
 フリーは「ハレルヤ」。冒頭は前日決めた4トゥループの連続ジャンプからでしたが、4トゥループで転倒し狙い通りとはいかず。続く3ルッツもバランスを崩します。さらに3アクセルからの3連続ジャンプは2+1+2とパンクが続きます。後半最初は2本目の4トゥループでしたが3回転に。次いで2本目の3アクセルは2アクセル、3ループは2ループとパンクを連発。3ルッツは着氷が乱れてコンビネーションにできず、最後の3フリップはクリーンに跳び切りましたが、チャン選手らしからぬ精彩を欠いた内容で自己ベストから52点以上も低いスコアにとどまり、フリー7位、総合4位と表彰台を逃しました。
 ショートは良すぎず悪すぎずの演技でしたが、フリーは近年見たことがないくらい不安定なジャンプが続きましたね。本来得意な4トゥループが始めに決まらなかったところから悪い流れが始まってしまいましたが、良い時であれば次のジャンプですぐに立て直せるのがチャン選手の強みなのが、今回は4トゥループの直後の3ルッツも失敗し、その次に鬼門の3アクセルが待ち受けているということで、どんどん力んで悪循環に陥ってしまったのかもしれません。それでも後半になれば挽回のチャンスはまだまだあったと思うのですが、4トゥループが3回転になったことで経験豊富なチャン選手といえども戸惑いが生まれてしまったのかなと思いますね。
 チャン選手の次戦はNHK杯。ファイナルに進むためには優勝が必須条件かと思いますが、結果以前にチャン選手らしい演技が見られることを願いたいですし、この初戦からどう巻き返すのか注目したいと思います。


 5位はベルギーのヨリク・ヘンドリックス選手です。

c0309082_22594071.jpg

 SPは「Je Suis Malade」。まずは得点源となる3アクセルをクリーンに下りて加点1を獲得すると、後半の3+3はファーストジャンプの着氷で前のめりになり、若干強引に3トゥループを付けたものの回転が足りず減点となります。最後の3ループはきっちり着氷し、ステップシークエンス、スピンは全選手中唯一の全てレベル4という高い質でまとめ、82.08点で6位につけました。
 フリーは「アランフェス協奏曲」。冒頭はショートと同じく3アクセルからで、これに2トゥループを付けた形で成功させます。2本目の3アクセルはステップアウトし減点。3サルコウはクリーンに下ります。後半に入って最初の3ルッツからの2連続3回転は2+3に。しかし、その後のジャンプは全て目立ったミスなくこなし、ステップシークエンス、スピンはショートに続き全てレベル4と丁寧に演じ切り、155.23点でフリー5位、総合でも5位とGP自己最高位をマークしました。
 昨シーズンは初めてGP2試合に出場し両方とも一桁順位、欧州選手権では4位と比較的波の少ないシーズンを送ったヘンドリックス選手。今季は9月のネーベルホルントロフィーでさっそく自己ベストを更新して優勝し、今大会もミスを最小限に抑えた演技で5位と、昨季からの良い流れを継続させているように見受けられます。4回転こそない選手ですが、全体的にバランスの取れたジャンプ構成を組める選手ですし、また、今大会はステップシークエンスに対してのレベル判定がわりと厳しかったにもかかわらず、彼だけがショートもフリーもレベル4を取れていて、すでにベテランの域に達している選手ではありますが、年々成長が感じられますね。次戦のスケートアメリカにも期待です。


 6位はチェコのベテラン、ミハル・ブレジナ選手です。

c0309082_23353409.jpg

 SPは10/11、11/12シーズンにも演じた「鼓童」。まずは得点源の4サルコウ+2トゥループを詰まり気味ながらも回り切って成功させます。続く3アクセルは流れのあるランディングで1点以上の加点。後半の3ルッツはステップアウトしますが、スピンは全てレベル4とそつのなさも見せ、80.34点で7位発進となります。
 フリーは「Human/Stand By Me」。冒頭はショートで決めた4サルコウ、これも若干こらえながらも成功させると、3アクセル+2トゥループ、3フリップ+2トゥループはそれぞれGOEは0点だったもののミスらしいミスなく跳び切ります。勝負の後半、2本目の3アクセルはきれいな着氷で加点1。続く3ループは着氷が乱れ、3+2+2は3本目の2トゥループを跳んでしまったためその分は無得点になりますがノーミスで成功。残りの2つの単独ジャンプもクリーンにこなし、最後まで力強い演技を披露しました。得点は156.70点でフリー4位、総合6位で大会を終えました。
 ここ数年不安定な演技が目立っていたブレジナ選手にしては比較的好演といえる内容だったかなと思いますね。シーズン初戦のUSインターナショナルクラシックはかなり大崩れした演技で、2戦目のフィンランディアトロフィーではまずまず立て直し、そして今大会は細かなミスはありつつも得点源となる重要なジャンプは全て成功させたということで、徐々にではあるものの調子は取り戻しているのかなという印象です。こうした演技を次のNHK杯でも継続できればさらなる自信にも繋がると思うので、うまく調整して日本で良い思い出を作ってほしいなと思います。


 日本の無良崇人選手は最下位の12位にとどまりました。

c0309082_00565507.jpg

 SPは昨季に引き続き「Zapateado」。冒頭は4トゥループでしたが回転不足で下りてきてしまい減点を受けます。直後の代名詞3アクセルは高い跳躍で1点以上の加点を獲得。後半の3+3は微妙に流れが止まりわずかに減点されますがまとめ、74.82点で8位につけます。

c0309082_01364725.jpg

 フリーは「オペラ座の怪人」。冒頭は得意の3アクセルからで、これをショートよりもきれいな質で決めて2点近くの高い加点を稼ぎます。しかし続く4トゥループは抜けて2回転に、3ループも2ループにと同じミスを連発。ステップシークエンスとスピンを挟んだ後半に何とか巻き返したいところでしたが、最初の3ルッツは空中で回転がほどけてダウングレード(大幅な回転不足)で着氷。さらに2本目の3アクセル、2本目の3ルッツは着氷が乱れ、どちらもコンビネーションにできず。終盤の3フリップは2回転に、そして最後に挑んだ3ルッツは3本目の3ルッツだったため規定違反で0点にと、最初の3アクセル以外全てのジャンプでミスを犯してしまい、111.84点でフリー12位、総合12位と順位を落としました。
 ショートも決して好演技とは言えませんが、それ以上にほとんどのジャンプが失敗に終わったフリーは一体何が無良選手に起きたんだろうと思ってしまうほど予想外の演技でした。実は怪我を抱えているのではないかと疑ってしまうほどの不調ぶりで、本人はそういった発言は全くしていないので、それを信じるならばただただ一つのミスが次のミスの呼び水になったような形で負の連鎖にハマってしまったという感じですね。フリーに関してもう一つ気になったのは、プログラムが全体的に重々しいかなということです。無良選手は14/15シーズンのフリーでも「オペラ座の怪人」を演じていて、その時と今回とでは振り付け師が異なるのでプログラムで使用する曲も違っていて、全く別の「オペラ座の怪人」と言えるのですが、今回のプログラムはしっとりとした曲やスローな曲がメインという気がするので、もう少し華やかさや盛り上がり、メリハリが欲しいかなと個人的には感じました。もちろん新しい「オペラ座の怪人」を演じたのはまだ2試合のみで、そのどちらも表現以前にジャンプがあまりにも整わなさすぎたのでプログラム自体を評価するのは難しいのですが、無良選手の魅力と言えばやはりダイナミックさや豪快さだと思うので、アップテンポなパート、壮大なパートがもう少しあってもいいのかなという印象を受けました。
 次のスケートアメリカまでは約1ヵ月間ありますから、まずはジャンプの調子を取り戻して、無良選手らしい演技を見せてほしいと思います。



 次はペアです。

c0309082_00292087.jpg


 優勝したのはカナダのメーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組。SPは「With or Without You」。冒頭の3ツイストはクリーンに決めますが、続くソロジャンプの3ルッツは2回転に。しかしその後のエレメンツは全て完璧でレベル4&加点1以上と質の高さを見せつけ、73.53点で2位と好位置につけます。フリーは14/15シーズンに演じた「Neutron Star Collision/サムソンとデリラ/Uprising」。まずは3ツイストを確実に成功させると、ショートでミスのあった3ルッツも着氷。さらに大技スロー4サルコウを加点1以上のクオリティーで成功させ最高の立ち上がりとします。中盤以降も3+2+2の3連続ジャンプやスロー3ルッツなど難しい技を次々と決め、演技を終えた二人はガッツポーズで喜びを露わに。148.69点でフリー1位、逆転で総合1位となり、ファイナルも含めGP8勝目を上げました。
 昨季はシーズン後半に調子を落とし、世界選手権ではラドフォード選手の怪我の影響もあって7位と表彰台から遠ざかったデュハメル&ラドフォード組。しかし今大会の演技は、無敵状態で快進撃を続けていた時のような迫力と力強さに満ちた、本当に二人らしい滑りでしたね。元々デュハメル&ラドフォード組と言えば、高難度のジャンプを跳べる上に安定感が売りというジャンプ系エレメンツが真骨頂のペアでしたから、その得意技の調子が戻ってきたことは今後に向けて嬉しい収穫ではないでしょうか。次戦のスケートアメリカまでは間が空きますが、うまくピーキングしてまた今回のような元気の良い演技を見せてほしいと思います。
 2位はドイツのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組です。SPは「Ameksa - Fuego」。冒頭の3ツイストはレベル4に加え、加点1.9点という極めて高い評価を受けます。続く大技スロー3アクセルはステップアウト。その後はミスらしいミスなくエレメンツを揃え、自己ベストに約2点と迫るハイスコアで首位に立ちます。フリーは「La Terre vue du ciel」。冒頭はショート同様に3ツイストを完璧に成功。次いでスロー2アクセルもクリーンに着氷と理想的なスタートを切ります。しかし3トゥループ+3トゥループのシークエンスジャンプ、3サルコウは両方とも男性のマッソ選手にミスがあり大きな失点に。以降のエレメンツは全て加点1以上とさすがの実力を示しましたが、自己ベストより12点ほど低い得点でフリー3位、総合2位と優勝は逃しました。
 フリーはソロジャンプが2つとも失敗に終わり、ここで多くの得点ロスをしてしまったのがもったいなかったですね。それでもそのほかのエレメンツにミスを引きずらない安定感は素晴らしかったです。スロー3アクセルという大技にもチャレンジしているペアですが、それ以外のエレメンツでも確実に高い加点が稼げるのが強みで、ソロジャンプが全てハマればもっともっと強くなっていきそうですし、女性のサフチェンコ選手は33歳の超ベテランですが、まだまだ伸びしろもありそうです。
 3位はフランスのヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ組。SPは「Make It Rain」。冒頭の3ツイストはレベル2にとどまりますが、ほかのエレメンツは全てクリーンにこなしパーソナルベストまで2点というスコアで3位と好発進します。フリーは「Say Something/Sense of Freedom」で、冒頭の3ツイストはショートと同じレベル2でしたが、続く3連続ジャンプはパーフェクトに成功。さらに大技スロー4サルコウは両足着氷となり減点されたものの最小限のミスに抑えます。その後も目立ったミスなくレベルの高いエレメンツを繰り広げ、フリー2位、総合3位でGP3度目の表彰台を射止めました。
 昨シーズンは欧州選手権で大台となる200点を大幅に超える自己ベストを叩き出して銅メダルを獲得し飛躍を遂げたジェームズ&シプレ組。今季はその勢いが単なる勢いではなく地力なのか否かが問われる重要なシーズンですが、9月のオータムクラシックインターナショナル、今大会と210点を超えるスコアを続けてマークし、実力が本物であることを証明していますね。次戦のフランス大会の結果次第では初のファイナルも見えてきますが、母国開催のプレッシャーももちろんあると思いますから、手強いライバルはもちろん、自分自身のメンタルにも打ち勝って、ファイナルの切符を自力で引き寄せてほしいですね。



 スケートカナダ2017の記事は以上で全て終了です。次は中国杯。日本からは女子が三原舞依選手、樋口新葉選手、本田真凛選手、男子が田中刑事選手が出場します。女子は日本開催のNHK杯以外では唯一の3選手エントリーで、しかもオリンピック代表権を争う有力な3選手の直接対決とあって非常に楽しみですが、順位、点数というよりも、3人が3人ともベストな演技をしてお互いを刺激し合い、さらに高め合えるような試合になればいいなと思います。一方、男子の田中選手は負傷のためGP初戦のロシア大会を辞退してから初めての実戦。調整の期間としては短い中でどれだけ本来の感覚を取り戻せたかは未知数ですが、あまり結果は気にせずのびのびと滑って、全日本選手権に繋がるような収穫の多い試合になることを願っています。では。


:男子メダリスト3選手のスリーショット画像は、毎日新聞のニュースサイトの英語版が2017年10月30日に配信した記事「Uno earns 1st Grand Prix title of season at Skate Canada」から、宇野選手のSPの画像、チャン選手の画像、ヘンドリックス選手の画像は、スケート情報サイト「icenetwork」から、宇野選手のフリーの画像、ブレジナ選手の画像、無良選手のフリーの画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、ブラウン選手の画像は、ブラウン選手の公式インスタグラムから、サマリン選手の画像は、カナダのフィギュアスケート団体「Skate Canada」の公式ツイッターから、無良選手のSPの画像、ペアメダリスト3組の画像は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
スケートカナダ2017・女子&アイスダンス―ケイトリン・オズモンド選手、5季ぶりのGP優勝 2017年11月1日

[PR]
by hitsujigusa | 2017-11-03 17:27 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_23452361.jpg


 GPシリーズ17/18、2戦目のスケートカナダがカナダのレジャイナにて行われました。前週のロステレコム杯と比べると男女はかなり荒れた試合内容となり、ショートからフリーへの順位の変動の幅も大きく、いろんな意味で驚きや意外性に満ちた大会でしたね。この記事ではまず女子とアイスダンスについてお伝えします。
 女子を制したの地元カナダのケイトリン・オズモンド選手。2位に大差をつけての貫録勝ちでした。その2位はロシアの若手マリア・ソツコワ選手、3位はアメリカのベテラン、アシュリー・ワグナー選手となっています。
 アイスダンスはこちらもカナダのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組が圧勝し、昨季からの連勝記録を9に伸ばしました。

ISU GP Skate Canada International 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 女子のチャンピオンは世界選手権2017銀メダルのケイトリン・オズモンド選手です。

c0309082_18135705.jpg

 SPは昨季から継続の「パリの空の下/ミロール」。まずは3フリップ+3トゥループを見事な流れで成功させ1.7点の高い加点を得ると、続く3ルッツも美しい跳躍とランディングで同じく1.7点の加点を得ます。後半の2アクセルも難なくこなし、スピンは全てレベル4とほぼノーミスの演技で、観客から喝采を浴びました。得点は自己ベストの76.06点で2位に7点以上の差をつけての首位発進となります。
 フリーは「映画『ブラック・スワン』より」。冒頭は前日パーフェクトに決めた3+3からでしたが、勢いあまってステップアウトします。しかし直後の2アクセル+3トゥループは完璧に下りて1.7点の高い加点がつきます。さらに3ルッツも加点1.7点と上々の立ち上がりとしました。レベル4のスピン2つを挟んで後半、最初の3ループをこちらもパーフェクトに着氷しますが、次の3フリップがパンクして2回転に。ですが、3+2+2はまとめます。終盤の2アクセルは疲れが脚に来たのか転倒となりますが、妖艶でダイナミックな黒鳥を躍動感たっぷりに演じ切り、136.85点でフリーも1位、総合1位で、シニアデビューの2012年のスケートカナダで優勝して以来のGP2勝目となりました。
 SPは2季連続とあってさすがの完成度と安定感でしたね。フリーはちょこちょこジャンプミスがあり、全体をまとめるという点において課題は残りましたが、“黒鳥”の妖しい雰囲気とオズモンド選手のどこか影を帯びた魅力がマッチしていて、今から完成が楽しみだなと感じました。
 GP2勝目というのが意外な気もしましたが、大怪我を経て復帰して、すぐには結果が出ず、それでも根気強く地道な練習に取り組み続け、ようやく昨シーズン本来の輝きを取り戻して、そうしてたどり着いた2度目のスケートカナダ優勝というのは、勢いのみで優勝した5年前とは重みも価値も何倍も違うのではないでしょうか。これで今季は出場した3試合全てで総合得点200点を超え、オリンピックのメダルに向けて理想的な形でシーズンを送っているオズモンド選手。次戦は3週間後のフランス大会です。スケートカナダ優勝、おめでとうございました。


 銀メダルを獲得したのはロシアのマリア・ソツコワ選手です。

c0309082_18150258.jpg

 SPは「白鳥の湖」。冒頭の3ルッツ+3トゥループをしっかり回り切って着氷すると、後半に組み込んだ3フリップも成功。最後の2アクセルはアンダーローテーション(軽度の回転不足)となりますが、スピンは全てレベル4とそつなく揃え、66.10点で3位と好位置につけます。
 フリーはドビュッシーの「月の光」。冒頭の3+3は大きなミスなく跳び終えますが、ファーストジャンプがアンダーローテーションと判定されます。続く3フリップは余裕を持った着氷で加点1の高評価。後半に5つのジャンプ要素を固め、最初の3ループは完璧に成功。3+1+3はこちらもファーストジャンプが回転不足に。続いて3ルッツ、2アクセル+2トゥループと回り切って着氷。最後の2アクセルは回転不足となりますが、大きな取りこぼしなく演技をまとめ、126.42点でフリー2位、総合2位と順位を上げました。
 今季は10月初旬のフィンランディアトロフィーでシーズン初戦を迎え、さっそく200点台をマークして上々のスタートを切ったソツコワ選手。今大会はその時よりは10点以上スコアは下がってしまいましたが、大会によって回転不足の判定の傾向というのも変わってくるのであまり気にすることはないのかなと思います。ソツコワ選手の場合、アンダーローテーションが多く、転倒やパンクといった大きなミスは少ないので、向き合う課題としては回転不足の修正が主になるでしょうね。もちろんプログラムのブラッシュアップというのもありますが、シニア1季目だった昨シーズンと比べても表現面は確実に進化しているように見受けられるので、さらなるメリハリだったり目線の使い方だったり、細かい部分も改善されるとさらに一皮も二皮も剥けるのかなと思います。


 3位に入ったのはアメリカのベテラン、アシュリー・ワグナー選手です。

c0309082_01394226.jpg

 SPは2季前に使用したのと同じ「Hip Hip Chin Chin」。冒頭の3フリップ+3トゥループは着氷こそしましたが、セカンドジャンプが回転不足で減点されます。後半最初の2アクセルはクリーンに成功。しかし直後の3ループはこちらも回転不足での着氷となり、61.57点とスコアは伸びず、7位と出遅れます。
 フリーは2季前、3季前に2季連続で使用した「映画『ムーラン・ルージュ』より」。まずは得意の2アクセルを確実に決めると、続いてショートで回転不足と判定された3+3でしたが、再び回転不足となってしまいます。続く2アクセル+2トゥループは難なく着氷。後半は3ループからでしたが、こちらも回転不足に。3フリップはきれいに下りますが、次の3+2はやはり回転が足りず。さらに最後の3ルッツは踏み切りのエッジエラーで減点と、転倒やパンクといった分かりやすい失敗はないものの、全体的に細かいミスが目立ち、122.37点とスコアは伸び切らず。しかしフリー4位、総合3位と表彰台に食い込みました。
 全体的に女子が低調だったというのもあって何とか3位には入れましたが、本来のワグナー選手からするとまだまだ本調子ではないなという印象でしたね。ただ、その中でも今の全力を尽くし、大崩れせずにまとめられるのは経験豊かなワグナー選手ならではだと感じましたし、プログラムに関しては以前のプログラムの再演ということですでに滑り慣れた感はあるので安心して見られ、次戦に期待が持てる内容だったかなと思います。アメリカ女子も五輪代表争いは混戦模様で、世界選手権メダリスト経験者のワグナー選手といえどもどうなるかはわからない状況ですが、危うく代表の切符を逃しかけた4年前と最も違うのはメンタル面だと思うので、あと乗り越えるべきはジャンプの回転不足のみですね。次戦のスケートアメリカでどれだけそのあたりが修正されているかに注目したいと思います。


 惜しくも表彰台まであと一歩の4位だったのはアメリカのコートニー・ヒックス選手です。

c0309082_15003332.jpg

 SPは「ノクターン 映画『ラ・カリファ』より」。冒頭は大技の3フリップ+3ループ、ファーストジャンプとセカンドジャンプのあいだにオーバーターンが入ってしまいますが回転不足なく跳び切ります。後半に組み込んだ3ルッツ、2アクセルはクリーンにこなし、自己ベストに約1点と迫る64.06点で4位と好発進します。
 フリーは「アメイジング・グレイス」。まずはステップシークエンスから幕を開ける変わった構成で、続いて得点源の3フリップ+3ループでしたがセカンドジャンプでステップアウトし減点を受けます。次の2アクセルは回転不足の判定。後半に5つのジャンプ要素を固め、その最初の2アクセル+2トゥループはしっかり着氷。3ルッツ+1ループ+3サルコウはファーストジャンプが2回転になった上、最後の3サルコウはアンダーローテーションに。以降の3つの単独ジャンプは全て減点なく跳び終え、フィニッシュしたヒックス選手は手ごたえを得たように笑みを浮かべました。得点は自己ベストまで0.79点の118.51点でフリー5位、総合4位となりました。
 今まで2度GPの表彰台に立っている実力者のヒックス選手。今大会もその時のような比較的安定した演技で3位のワグナー選手に迫りましたが、約1点差で4位。ヒックス選手はGPのエントリーはこの1試合のみなので、この大会で表彰台に乗れればより大きなアピールになったと思うので惜しかったですね。ただ、ヒックス選手らしさ、強みというのはショート、フリーともによく出ていて、特に3フリップ+3ループというほかの選手が挑まない高難度のコンビネーションジャンプを武器として持っていることは大きいので、このジャンプの安定がオリンピック代表に向けての鍵になるのかなという気がしますね。


 5位は今季シニアデビュー、日本の本田真凛選手です。

c0309082_15365790.jpg

 SPは「The Giving」。冒頭の3ルッツ+3トゥループは3ルッツの着氷で若干バランスを崩し、強引に3トゥループを付けますがアンダーローテーションとなり転倒します。続くコンビネーションスピンは細かなミスでレベル2となった上にGOEでも減点。さらに中盤のフライングキャメルスピンもレベル1と取りこぼしが重なります。後半最初の3ループは完璧に成功させますが、最後の2アクセルはタイミングが合わなかったのか1回転になり規定違反で無得点に。ミス連発で52.60点と自己べストより16点以上も低い得点で10位に沈みます。

c0309082_15521501.jpg

 フリーは「トゥーランドット」。まずは単独の3ルッツをきっちり着氷して良い流れを作ると、続く3フリップ+3トゥループも回り切って成功させます。スピン2つとステップシークエンスを挟んだ後半、2アクセル+3トゥループはクリーンに下りたかに見えましたが、セカンドジャンプがアンダーローテーションの判定。続く3フリップも回転が足りないと判定されます。ですが、3サルコウからの3連続ジャンプ、3ループ、2アクセルと終盤のジャンプはノーミスでクリアし、前日ミスが続いたスピンも全てレベル4とまとめ、125.64点でフリー3位、総合5位と大きく順位を上げました。
 練習から好調と伝えられていた中でショートはまさかの演技。ジャンプミスはともかくとして、普段安定しているスピンでもぽろぽろミスを犯してしまったのは、それだけ演技中に動揺してしまったのかなという印象ですね。ただ、そこから1日で立て直したフリーは見事で、だからこそ余計にショートはもったいなかったと言わざるを得ないですね。本田選手のミスの原因について師事する濱田美栄コーチは練習不足を挙げていて、元々本田選手は地道にコツコツ練習するというよりは気分屋で感覚に頼るタイプの選手として知られていますが、その姿勢ではシニアにおいてはある程度良いところまで行けても、世界の一流を極めるところまでは行けないのではないかなと思います。天才肌で非凡な才能の持ち主であることは間違いないので、今後シニアのトップレベルで戦っていくために、感覚やフィーリングももちろん大切にしつつ、地道な練習というのも重要視してほしいですね。
 本田選手の次戦は翌週の中国杯。2週連続ということで調整は非常に難しいと思いますが、今大会の失敗を活かして本田選手らしい演技ができるよう頑張ってほしいと思います。


 6位は同じく日本の本郷理華選手です。

c0309082_16194526.jpg

 SPは昨季から継続の「カルミナ・ブラーナ」。まずは昨季より難度を上げた3フリップ+3トゥループ、これはセカンドジャンプがアンダーローテーションとなり減点されます。ですが、後半に組み込んだ3ルッツ、2アクセルは両方とも片手を上げた難しい跳び方でクリーンに成功させ、ステップシークエンス、スピンも目立ったミスなくまとめ、61.60点で6位につけます。

c0309082_16461585.jpg

 フリーは「映画『フリーダ』より」。冒頭の3+3はショートと同じくアンダーローテーションになり減点を受けます。続く得意の3サルコウは片手を上げた空中姿勢で加点を引き出します。次いで3ルッツは回転不足の上に着氷も乱れます。後半は得点源の2アクセル+3トゥループ+2トゥループを大きなミスなくスムーズに繋げますが、セカンドジャンプが回転不足。さらに3ループ、3+2とアンダーローテーションのジャンプが続きます。最後の2アクセルは無難に下り、最後までエネルギッシュにスピード感溢れる演技を披露し、滑り終えた本郷選手は納得したようなほっとしたような笑顔を見せましたが、得点は114.74点と伸び悩み、フリーも6位、総合6位で大会を終えました。
 ショート、フリーともに細かいミスが多々あり、スコア的には平凡な数字にとどまりましたが、実際の演技内容は本郷選手らしい躍動感、スケール感に満ちていて、得点以上の好印象を与えるものだったのではないかと思います。ショートは2季連続ということでよく滑り込まれていて音楽と体の動きもマッチしていますし、フリーもメキシコの女性画家フリーダ・カーロの人生を描いた作品を、全身で情熱的に、時に重厚に演じていて、この時期にしては思った以上にプログラムにフィットしている感じでしたね。回転不足を多く取られたことによる悔しさはあると思いますが、9月のオンドレイネペラトロフィー、今大会と好演技を続けているのは間違いないので、今までどおりの本郷選手のペースで調整していってほしいですね。本郷選手の次戦は母国開催のNHK杯です。



 ここからはアイスダンスです。

c0309082_22075151.jpg


 優勝は世界チャンピオン、カナダのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組です。SDは「悪魔を憐れむ歌/ホテル・カリフォルニア/Oye Como Va」。全てのエレメンツがレベル4というGP初戦とは思えない完成度の高さで他を圧倒し、自身が保持していた世界最高得点を更新する82.68点を叩き出し首位に立ちます。フリーは「映画『ムーラン・ルージュ』より」で、こちらはステップ以外はレベル4というやはり高いレベル、高いクオリティーにまとめ上げ、自己ベストまで0.02点と迫るハイスコアで1位、トータルでは世界最高得点をマークし、圧勝しました。
 競技復帰した昨シーズン、出場した全ての大会で優勝と圧巻の快進撃を見せたヴァーチュー&モイア組ですが、今季になってもその流れは変わらず続いているようです。何といってもほかのカップルにつけ入る隙を1ミリも与えない演技で、無敵状態と言っても過言ではないですが、そうしたプレッシャーをも滑る力に変えているような気がしますね。そんなヴァーチュー&モイア組の次戦はNHK杯。世界最高得点の更新も期待できますから、楽しみですね。スケートカナダ優勝、おめでとうございました。
 2位も同じくカナダのケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組です。SDは「Tango/Do You Only Wanna Dance」。ステップ以外はレベル4というまとまった演技でパーソナルベストとなる77.47点をマークし2位発進。FDは「Je Suis Malade」。冒頭のステップ以外全てレベル4という質の高い演技を見せますが、リフトでの時間超過による減点1があり自己ベストには約1点及ばず3位、しかし総合では2位とショートのアドバンテージが活きた形となりました。
 GP初戦からトータル190点台に乗せる理想的なシーズンのスタートと言えますね。シーズン初戦のオータムクラシックでは1位のヴァーチュー&モイア組に大差をつけられての2位でしたから、その時と比べるとしっかり調整をしてピーキングしてきたなというのが伝わる内容でした。オリンピックでメダルを争うためには確実に190点を軽く超えるくらいのスコアでなくてはいけないでしょうから、まずGP初戦でこの得点と評価をもらえたことは良い流れだと思いますね。
 3位はアメリカのマディソン・ハベル&ザカリー・ドノヒュー組。ショートは「Le Serpent/Cuando Calienta/Sambando」で、全てのエレメンツをそつなくこなすほぼノーミスの演技でしたが、わずかに演技時間を超過したことによって1点減点されパーソナルベストに0.45点届かず3位。FDは「Across the Sky/Caught Out in the Rain」。こちらもほぼ完璧な演技で自己ベストをおよそ5点も更新し2位、総合でも自己ベストをマークし3位となりました。
 シングルやペアにおけるジャンプのように、成功不成功が明確に分かる技の少ないアイスダンスにとって、自己ベストを大幅に更新するというのはあまりないことなので、ハベル&ドノヒュー組が一気に5点近くもフリーのパーソナルベストを塗り替えたというのは少し驚きですし、これによってアイスダンス界の勢力図にも多かれ少なかれ影響を与えそうだなという感じがします。目下の関心としてはハベル&ドノヒュー組が今まで5組しか達成していないトータル190点超えに達するかどうかというところで、次戦のNHK杯が非常に楽しみになりましたね。



 これでこの記事は終了ですが、男子&ペアに続きます。しばし記事アップまでお待ちください。


:女子メダリスト3選手のスリーショット画像は、カナダのフィギュアスケート団体「Skate Canada」が2017年10月29日に配信した記事「Triple gold for Canada at Skate Canada International」から、オズモンド選手の画像は、イギリスの通信社ロイターの公式ニュースサイトが2017年10月29日に配信した記事「Figure skating: Osmond overcomes stumbles to take gold at Skate Canada」から、ソツコワ選手、ワグナー選手、ヒックス選手の画像は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、本田選手のSPの画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、本田選手のフリーの画像、本郷選手の画像、アイスダンスメダリスト3組の画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
スケートカナダ2017・男子&ペア―宇野昌磨選手、総合300点超えで圧勝 2017年11月3日

[PR]
by hitsujigusa | 2017-11-01 00:55 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)