カテゴリ:フィギュアスケート(衣装関連)( 41 )

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 前回に引き続き、ベストコスチューム16/17・男子フリーの衣装のベスト10をお送りします。なお、ベスト10を決めるにあたってのルールについては、こちらの記事をご参考下さい。また、男子のショートプログラムの衣装ベスト10は、こちらの記事をご覧ください。

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 男子フリー部門1位は、日本の羽生結弦選手の「Hope & Legacy」です。

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 プログラム名の「Hope & Legancy」は曲名ではなく、久石譲さんの「View Of Silence」と「Asian Dream Song」という2曲を組み合わせた羽生選手オリジナルのタイトルです。“希望と遺産”という壮大な題名にふさわしく、ダイナミックで、それでいて繊細さと優雅さに満ちた世界観のプログラムとなっています。
 そんな重層的なプログラムを表すように、衣装も非常によく考えられた繊細な作りになっています。形としては両袖とも長袖ですが、左肩の方にだけ布が垂れ下がるアシンメトリーなデザイン。そして、上半身全体に左上から右下にかけて流れるような細かいギャザーが入った立体的な作りです。色は肩の辺りは白、胸の辺りは明るいグリーン、そこから絶妙なグラデーションで深い群青色、そして黒へと徐々に変化しており、腕も同じような色づかいで、極めて繊細なカラーコーディネーションと言えますし、また、細かく散りばめられたビジューも派手すぎず控えめな光を放っています。
 比較的曲調の変化の少ないしっとりとした音楽なので、衣装も地味すぎると音楽に埋もれてしまいかねないと思いますが、音楽よりも主張しすぎず、かといって地味すぎもせず、ほどよい華やかさを持った芸術的に美しい衣装だと思います。


 2位はアメリカのネイサン・チェン選手の「韃靼人の踊り 歌劇『イーゴリ公』より」。

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 フィギュア界でも定番の「韃靼人の踊り」。ロシアから北アジア、東ヨーロッパにかけて暮らした“韃靼人(タタール人)”をモチーフにした異国情緒満載の楽曲ということで、チェン選手のコスチュームもそうしたエキゾチックさを前面に押し出していますね。
 衣装は長袖のトップスの上に半袖の上着を重ねたようなコーディネートで、そのどちらも深い赤を基調に襟元や裾、袖が金糸で縁取りされたような作りです。この刺繍風の部分が非常に細やかな意匠となっていて、異国らしさをひしひしと感じさせます。また、腰に巻いたベルト(と、長袖シャツの袖口)も花の周りを円が囲んだようなモチーフをいくつも連ねたデザインで特徴的ですし、胸の中心に配置された勲章のようなメダルのような装飾品も、好いアクセントとなっています。
 異国情緒を表現した衣装は過去にも数多くありますが、どうしてもステレオタイプに陥りがちでもあります。チェン選手の衣装はそうしたオーソドックスさを引き継ぎながらも、オリジナリティーもしっかりある素晴らしい衣装に仕上がっているのではないでしょうか。


 3位は日本の宇野昌磨選手の「ブエノスアイレス午前零時/ロコへのバラード」です。

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 タンゴ界の巨匠アストル・ピアソラの楽曲2曲のメドレープログラムで、衣装はタンゴらしい赤と黒を基調とした色づかいとなっています。
 作りとしては上から下まで繋がったいわゆる“つなぎ”の上に、長袖の上着を着用したスタイル。下に着た衣装はベージュから赤、グレー、黒へとグラデーションになっていて、細かいビジューが縦のラインを描くように施されています。そして上着は立て襟に丈の短いものでジャケットというよりボレロですね。前身頃から裾にかけてと、腕の肘から下の外側全体に曲線的なデザインがあしらわれています。この模様が暑い国の植物っぽくもあり、また、燃え盛る炎のようでもあり、タンゴらしい情熱を明確に伝えていますね。色づかい自体は定番ですが、デザインで個性を表した衣装だと思います。


 4位はウズベキスタンのミーシャ・ジー選手の「バレエ「くるみ割り人形」より」。

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 王道中の王道、チャイコフスキーのバレエ作品「くるみ割り人形」の中でも特に有名な場面「パ・ド・ドゥ」を使用したプログラム。「パ・ド・ドゥ」は金平糖の精と王子の踊りのシーンですが、ジー選手の衣装はまさに王子を演じるバレエダンサーそのものです。
 トップスは立て襟の白い長袖で、縦に金色の模様がシンメトリーにあしらわれています。ボトムスは黒いパンツで、全体的にごくシンプルなスタイルですが、「くるみ割り人形」という誰もが知る名曲だからこそ、あえて衣装で派手派手しく主張する必要はないのかなと思います。また、現役随一の表現力を誇るジー選手だからこそ、これくらいシンプルな衣装でも音楽の壮大さに負けることなく演じ切れるのだろうなとも感じますね。


 5位はアメリカのアダム・リッポン選手の「O/Arrival of the Birds 映画『The Crimson Wing: Mystery of the Flamingos』より」。

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 イギリスのバンド、コールドプレイの「O」という楽曲と、フラミンゴを取材したネイチャードキュメンタリー映画のサウンドトラックを組み合わせたプログラム。リッポン選手は元々その前のシーズンで「O」をエキシビションナンバーとして使用しており、衣装も写真のものを着用していましたが、エキシビションやアイスショーで使用した衣装は「昨季以前にすでに使用された衣装は対象から除外する」というルールには当てはめず、今回選ばせていただきました。
 使用されているそれぞれの楽曲が、「O」は“Fly On”=「飛ぶ」というサブタイトルがついていますし(厳密には「O」のインストゥルメンタルバージョンで、アルバムの隠しトラックとして収録されている曲のタイトルが「Fly On」)、もう一つの楽曲もフラミンゴをフィーチャーした映画のサントラということで、プログラムも全体的に鳥をイメージした世界観となっています。
 ということで衣装も“鳥らしさ”が控えめながら感じられるデザイン。トップスは透け感のある白い素材に、鳥の翼のような異素材が組み合わせられています。この異素材の部分に黒やグレーで羽のようなラインが描かれ、まさに“鳥”を思わせるコスチュームとなっているわけですが、わかりやすく“鳥”というよりは、あえてアシンメトリーに、少し外した感じのデザインになっていて、この控えめさが素敵だなと思いますね。


 6位は韓国のイ・シヒョン選手の「Take Me to Church/From Eden」です。

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 アイルランド出身の歌手ホージアの楽曲2曲のメドレープログラム。バラード調の「Take Me to Church」からアップテンポな「From Eden」へと曲調は変化しますが、基本的にはロックということもあってか、イ選手の衣装は全身デニム生地というカジュアルなものとなっています。
 トップスはデニムの長袖シャツを腕まくりした風の五分袖、ボトムスはジーンズというスタイルですが、トップスは襟の周囲にさまざまなビジューが散りばめられ、また、短めのネクタイにもラインストーンがあしらわれており、カジュアルではありますが華やかさもある衣装となっています。全身デニムだけだとラフすぎる印象になりかねませんが、部分的に装飾品を用いることで効果的なアクセントとなっていて、カジュアルさと華やかさのバランスが取れた衣装になっていると思います。


 7位は日本の田中刑事選手の「フェデリコ・フェリーニ・メドレー」。

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 イタリアの名映画監督フェデリコ・フェリーニ作品のサウンドトラックを組み合わせた軽快かつユーモラスなプログラム。ということで衣装も軽快さを強く意識したデザインと言えます。
 トップスは黒白のストライプ柄シャツで、ボトムスは黒っぽいジーンズ風パンツ。上述したイ選手同様にシャツの袖をまくってボトムスはジーンズ風にすることでカジュアルさ、軽やかさを演出していますが、田中選手の場合はシャツもパンツも黒をベースにしている分、より大人っぽくシックになっているかなと感じます。さらに、シャツは襟の一部分と右側面に濃いめのピンクをあしらい、また、左胸のポケットは赤い生地の上にストライプの生地を斜めに貼りつけ、その上に花のようにも見える赤と白のビジューの装飾を施すという凝ったデザインで、カジュアルな中にもさりげない品を感じさせる考えられたコスチュームだなと思います。


 8位はアメリカのグラント・ホフスタイン選手の「歌劇「道化師」より」。

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 レオンカヴァッロの名作「道化師」。フィギュア界でも近年男子選手の使用が増えてきており、定番になりつつあります。
 冒頭からテノールの迫力に満ちたボーカルで始まるプログラムですが、そんな重厚さにふさわしい気品と大人の華やかさを感じさせるコスチュームは、トップスが深みのある臙脂色。形としてはシンプルな長袖シャツですが、胸元が一部三角形に開いて肌がのぞくような作りとなっています。また、細かなラインストーンによって左肩から右の脇へと流れるようなラインをあしらったり、そのほかの部分ではランダムに散りばめるようにあしらったりとバランス良く装飾品を使っていて、色づかいが重厚で渋い分、装飾品の使い方でうまく華もプラスしていて工夫されているなと感じます。


 9位はカザフスタンのデニス・テン選手の「歌劇「トスカ」より」。

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 大定番のオペラ「トスカ」を使用したプログラムということで、衣装もその重厚さを意識したデザインです。
 上下とも黒をベースにし、トップスは立て襟で胸元が大きく開いた作り。その胸元から肩、腕、背中の中心にかけて赤をあしらってアクセントにしています。ハッキリとした鮮やかな赤というよりは渋みのある赤なので、派手すぎない落ち着いた色づかいと言えますし、一面赤ではなく小さいラインストーンを無数にあしらうことで複雑な色味を作り出していて、「トスカ」のどっしりとした雰囲気にピッタリ合ったカラーコーディネーションだなと思います。


 10位はアメリカのティモシー・ドレンスキー選手の「Sometimes I Dream」です。

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 ギリシャ出身のテノール歌手マリオ・フラングーリスさんの歌う「Sometimes I Dream」。一部「トスカ」の有名なアリア「星は光りぬ」のアレンジバージョンが入っており、いわゆる名曲をサンプリングしたクラシカルオーバー曲と言えます。
 そんなオペラのアリアを用いた重厚なプログラムということもあり、コスチュームもやはりシックに落ち着いた色づかい。透け感のある素材の服の上に、透け感のない黒の長袖トップスを重ね、腰に装飾的なベルトを巻いています。何よりこの衣装のポイントとなっているのはベルトで、実際はもちろん軽い素材を使っていると思うのですが、まるで本物の金属のように見える質感と、赤や緑といったビジューで形作られた模様もエキゾチックで、音楽の世界観に合っているなと思います。トップスやボトムスといった服自体は極めてシンプルですが、ベルトのみを派手めにするという一点豪華主義の良い例と言えますね。



 男子フリー部門のベスト10は以上です。次はペアのショートプログラムに続きますので、またしばしお待ちください。


:記事冒頭の国際スケート連盟のロゴは、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、羽生選手の写真、田中選手の写真、テン選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、チェン選手の写真、リッポン選手の写真、ドレンスキー選手の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、宇野選手の写真は、デイリースポーツのニュースサイト内のフィギュアスケート写真集から、ジー選手の写真はフジテレビの公式サイトのスケートページ「FujiTV Skating Club フジスケ」から、イ選手の写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、ホフスタイン選手の写真はマルチメディアサイト「Zimbio」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2017-06-15 18:55 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

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 16/17シーズンのコスチュームのベスト10を勝手に決めるベストコスチューム16/17。今回は男子のショートプログラムで使用された衣装のベスト10です。なお、この記事を書くにあたってのシステムについては、こちらの記事の冒頭をご覧ください。

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 男子のSP1位は、アメリカのネイサン・チェン選手の「バレエ「海賊」より」です。

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 バレエ「海賊」はギリシャを舞台にした作品。ということで「海賊」を演じる場合、エキゾチックな衣装が使用されることが多く、チェン選手もGP初戦のフランス杯では白いシャツに東洋風の柄の袖なしボレロを重ねたコスチュームだったのですが、NHK杯からは写真の全身黒の衣装を着用しています。
 衣装の形としては襟付きのレース調の黒いトップスに、同じく黒い半袖のボレロを重ねたスタイル。パンツももちろん黒で、その前に来ていた衣装と比べると「海賊」らしいエキゾチックさは鳴りを潜めています。ですが、上半身のレースはところどころペイズリー柄っぽい模様になっており、控えめながらエキゾチックさが表現されていますし、かなり丈の短いボレロも一般的な洋服にはない形ですので、西洋でもなく東洋でもない独特の雰囲気が醸し出されています。また、全身黒にしたことによってチェン選手の体の線の美しさ、身のこなしの美しさがきれいに氷に映えるようになっていて、プログラムに合わせるだけではなく、チェン選手の魅力を存分に引き出すコスチュームだなと感じます。


 2位は日本の宇野昌磨選手の「ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジー 映画『ラヴェンダーの咲く庭で』より」。

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 映画『ラヴェンダーの咲く庭で』の中で演奏されるヴァイオリン協奏曲「ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジー」を使用したプログラム。衣装は2種類あり、シーズン初戦から四大陸選手権まではラベンダー色の衣装、冬季アジア大会から世界国別対抗戦までは写真のブルーの衣装でしたが、個人的により好きな後者を選ばせていただきました。
 衣装はブルーのスタンドカラーのシャツに黒いパンツというスタイル。シャツは上から下に向かって濃くなっていくグラデーションで、全体的に細かなビジューが散りばめられていて華やかです。特に襟や袖口の周辺には集中的にビジューがあしらわれており、襟の周りは曲線状の模様も施されていて、シックさときらびやかさのバランスがうまく取れているコスチュームだと思います。


 3位はウズベキスタンのミーシャ・ジー選手の「黒くぬれ!」です。

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 16/17シーズンのジー選手は2つのショートプログラムを使用し、「黒くぬれ!」はシーズン前半に演じたプログラムです。その「黒くぬれ!」はローリング・ストーンズのヒット曲ですが、ジー選手が使用しているのはアメリカの歌手シアラがカバーしたバージョン。
 「黒くぬれ!」ということで衣装ももちろん黒。上半身は黒をベースに繊細なビジューによって幾何学模様がデザインされていて、非常にスタイリッシュな印象を与えます。こういった模様はともすれば野暮ったい印象を与えかねないと思うのですが、衣装の素材にそのままプリントするのではなく、ビジューによって立体感のある模様になっているので、新鮮味のあるコスチュームになっているなと感じますね。


 4位は韓国のイ・シヒョン選手の「映画『アマデウス』より」。

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 モーツァルトを題材にした映画『アマデウス』のサウンドトラックを使用した華麗なプログラム。ということで衣装もモーツァルトの生きた中世の時代らしさを意識したデザインとなっています。
 下に着た白シャツはシルクのような光沢のある生地で袖口は金色に縁取りされ、形もフリルっぽくなっています。そして首元はダイヤモンド風の装飾で白いタイを締めたようなスタイルで、タイは袖口と同様のデザインに。何よりも目を引くのが鮮やかな赤のベスト。金糸で葉っぱが連なったような模様の刺繍が惜しげもなく施されており、非常にゴージャズな印象を与えます。“モーツァルトらしさ”を前面に押し出した衣装で、プログラムの華やかさとも合っていて良いですね。


 5位はカザフスタンのデニス・テン選手の「幻想序曲「ロメオとジュリエット」」です。

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 チャイコフスキーの代表作の一つ、「ロメオとジュリエット」を一部ヒップホップ調にアレンジした個性的なプログラム。シーズンを通して複数種類の衣装が使用されましたが、今回選んだのはフランス杯で用いられた衣装です。
 コスチュームはレザーっぽい素材を使った硬質感のある作り。黒い長袖トップスの上にジッパー付きのベストを重ねたようなスタイルですが、そのジッパーを境目に左右非対称なデザインとなっています。テン選手から見て左側は縦に複数のラインが入り、右側はビジューが均等に配置されたデザイン。全体的にどことなく日本の戦隊モノのヒーローが着ているスーツのような雰囲気がありますが、色を黒やグレーでまとめ、さまざまな異素材を組み合わせることで、クールでスタイリッシュな雰囲気が醸し出されていますし、何よりヒップホップアレンジがなされたプログラムの世界観にも合っていて、唯一無二のオリジナリティーを表現できていると思いますね。


 6位はロシアのマキシム・コフトゥン選手の「Bahamut」です。

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 アメリカのワールドミュージックバンド“Hazmat Modine”の「Bahamut」という曲を使用した、どこか異国情緒を感じさせるような、それでいて現代的なアレンジも利いた不思議な世界観のプログラムとなっており、それに合わせたコスチュームも個性的です。
 白いTシャツの上に黒いジャケットを重ねたコーディネート自体はシンプルな着こなし。ですが、ジャケットはたくさんのワッペンが貼りつけられたようなデザインになっていて、インパクトがあります。Tシャツ&ジャケットというスタイル自体は現代の若者ならば誰でもするような一般的なコーディネートで、フィギュアスケートの衣装という感じが全くないカジュアルさなのですが、さらにそのジャケットに大量のワッペンがあしらわれていることによって、一般の人が日常生活の中で着る服とは違う、どこかしらステージ衣装のような雰囲気も醸していて、フィギュアスケートの衣装というステレオタイプのイメージを良い意味で裏切るおもしろいコスチュームだと思いますし、ジャンルを特定できない音楽の世界観だからこそ、コスチュームもステレオタイプのイメージにハマっていないのが良いのかなという気がしますね。


 7位は日本の無良崇人選手の「Zepateado」です。

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 無良選手の新境地を示したフラメンコプログラムですが、フラメンコにも関わらずあえていかにもスペイン風といった感じの色づかいをしていないところに新鮮さを感じさせます。
 フラメンコを使用したプログラムは数多くあり、多くの場合、赤や黒、もしくはオレンジ、金色など、スペインらしさを前面に押し出した色づかいが多く見られるのですが、無良選手の衣装は白と黒というフラメンコではあまり見ない色づかい。ですが、素材感や意匠などでフラメンコらしさを表しています。最も特徴的なのはやはり首から胸元にかけて施されたフリンジでしょうか。フリンジ自体は特にスペインらしいというものではありませんが、目を引くアクセントになっていますね。一方、袖はヒラヒラとしたフリルのようになっていて、フラメンコの踊り子が着るドレスに似た作りに。そして、ベースとなる白い生地はよく見るとレース調の花柄になっていて、それが派手すぎず地味すぎない絶妙な模様を浮かび上がらせていて、品のあるフラメンココスチュームになっていて良いなと思いますね。


 8位はアメリカのアダム・リッポン選手の「Let Me Think About It」。

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 ノリノリのダンスミュージックということで、ノースリーブのランニング姿という思いきった大胆なコスチューム。ともすればチープになりかねないタイプの衣装かなとも思うのですが、素材を体の正面は光沢感のある生地、体の側面は透け感のある生地と工夫しているので、野暮ったさを感じさせません。また、体の左側にビジューで施された模様もブルーを基調にシックな色づかいで、シャープさとクールさを感じさせるラインの入れ方がなされていて、シンプルではあるものの考えられているなと感じます。
 実は男子選手のノースリーブのコスチュームが解禁されたのは16/17シーズンからということで(そもそも禁止ということさえ知らなかったのですが)、その第1号(たぶん)としても記念すべき革新的な衣装と言えると思うので、その意味もあって選ばせていただきました。


 9位はイスラエルのアレクセイ・ビチェンコ選手の「Chambermaid Swing」です。

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 “Chambermaid”とはいわゆる召使いとか使用人みたいなことだと思うのですが、そんな音楽の世界観をイメージしてか衣装もどことなく召使いっぽいデザインとなっています。白いシャツにベスト、ジャケット、蝶ネクタイというスタイルだけでは“召使い感”は出ないと思うのですが、ポイントとなるのは色づかいで、ブラウンという比較的カジュアルで庶民的な色をベースにしたことによって、召使いを使う側の主人の方ではなくて、召使いの方を演じているという雰囲気がよく表現できているなと思います。さらにジャケットはチェック柄になっているので、“Swing”らしい軽快さも出ていて良いですね。


 10位はロシアのアレクサンドル・ペトロフ選手の「火祭りの踊り バレエ「恋は魔術師」より」。

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 スペインを代表する作曲家マヌエル・デ・ファリャのバレエ「恋は魔術師」の中でも特に有名な「火祭りの踊り」を使用したプログラム。エキゾチックで怪しげな旋律が印象的な曲ですが、ペトロフ選手の衣装もエキゾチックさを強く意識したデザインになっています。
 何といっても目を引くのは金色のトップス。全体的にプリントされた格子柄のような模様にしても、さらに肩から二の腕を覆う部分の作りにしても、西洋の鎧のような雰囲気を醸し出しています。しかし、ところどころに細かなフリンジがあしらわれていたり赤い宝石風のビジューが施されていたりと装飾性もあり、衣装の形と色、装飾の使い方に良い意味でギャップが感じられます。また、腰に締めた赤いベルトもアクセントになっていて、無良選手のところで上述したようにスペイン風衣装の定番である赤と黒と金色がきっちり揃っています。が、普通ならば赤をメインに用いて、金色をポイントカラーとしてアクセント的に使うことが多いので、それが全く逆になっているこのコスチュームはある意味思い切った、珍しいタイプのスペイン風衣装だなと思います。



 さて、ベストコスチューム16/17・男子SP部門は以上です。男子フリー部門に続きます。


:記事冒頭の国際スケート連盟のロゴは、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、チェン選手の衣装、無良選手の写真、リッポン選手の写真、ビチェンコ選手の写真、ペトロフ選手の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、宇野選手の写真、テン選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、ジー選手の写真、イ選手の写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、コフトゥン選手の写真は、フィギュアスケート情報サイト「Absolute Skating」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2017-06-09 16:59 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

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 前記事に引き続き、ベストコスチューム16/17、アイスダンスのフリーダンス部門を書いていきます。なお、ショートダンスのベスト10についてはこちらをご覧ください。また、衣装を選ぶ上でのルールに関しても、ショートダンスの記事の冒頭に記してありますので、ご参考下さい。

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 フリーダンス部門第1位は、アメリカのケイトリン・ハワイエク&ジャン=リュック・ベイカー組の「愛の夢」です。

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 フィギュア界でも定番のフランツ・リストの「愛の夢」ということで、衣装も優しく柔らかい印象になっています。
 女性のハワイエク選手は胸元がV字になったノースリーブドレス。ラベンダー色が上から下にかけて濃くなるグラデーションとなっています。衣装は薄く柔らかい素材感で、スカートの部分は繊細なタックによって美しい布の表情が出ていて、全体を見ると装飾は控えめでシンプルなのですが、非常に上品でエレガンスな印象を与える衣装だなと感じます。一方男性は白いシャツに黒いパンツというモノトーンスタイル。色を使わないコーディネートにすることで女性の美しさを引き立てていて、両者のバランスで見ても、とても素晴らしい組み合わせだなと思いますね。


 2位はカナダのケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組の「アランフェス協奏曲」です。

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 こちらも大定番の「アランフェス協奏曲」を使ったプログラム。ということで衣装もスペインらしさを感じさせるデザインになっています。
 女性のウィーバー選手はボディ部分がゴールド、スカートが赤というスペイン風衣装のおなじみのカラーコーディネーション。ともすれば平凡な印象になりかねませんが、ボディ部分をペイズリー柄のようなエキゾチックなデザインにすることで個性を表していますし、スカートも右脚を大胆に露出するスリットの深い作りとなっていて、一工夫しています。比較的肌の露出は多い衣装ですが、いやらしさを感じさせない高貴な雰囲気を漂わせるドレスになっていると思います。そして、男性のポジェ選手は対照的にシンプル。白シャツに黒いパンツ、黒いサスペンダーですが、女性の方が華やかな分、男性はこれくらいシンプルなくらいがちょうど良いですね。
 ウィーバー&ポジェ組はこのプログラムでシーズン前半は女性が濃い紫の、男性が全身真っ黒の衣装を着ていましたが、「アランフェス協奏曲」ということを考えると、やはり定番ではあるものの赤やゴールドを使った衣装というのはものすごく合うので、こちらの方を今回は選びました。


 3位はフランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組の「Stillness/Oddudua/Happiness Does Not Wait」。

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 ゆったりとしたピアノの音色から始まって少しずつテンポアップしていき、最後は壮大なオーケストラで幕を閉じる情感たっぷりのプログラム。衣装は男女ともに青を基調としていて音楽の静けさ、壮大さの両方に合っています。
 女性はワンショルダーの独創的なデザインのワンピース。布を体に巻きつけたような作りになっていて、色は上半身は青ですがスカートはグラデーションでピンクと少しギャップのある色づかい。しかしグラデーションの具合が絶妙なのでとても自然な色づかいに見えますし、スカートだけ淡いピンクにすることで軽やかさも感じさせますね。男性はトップスが青、パンツが黒という衣装ですが、トップスは胸元が大きく開いたスタンドカラーのノースリーブというこちらも個性的なデザイン。しかしシゼロン選手が非常にスタイリッシュに着こなしていますし、色も青一色ではなく少しシルバーのような色味が入った美しいグラデーションになっていて、女性の衣装同様に重厚さと軽やかさの両方が相まっていますね。


 4位はチェコのコートニー・マンスール&ミハル・チェスカ組の「映画『ゴッドファーザー』より」。

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 名作『ゴッドファーザー』のサウンドトラックを使用したプログラムですが、『ゴッドファーザー』のストーリーを踏襲したりイメージしたりということはなく、壮大かつドラマチックな音楽を表現したプログラムになっています。
 女性の衣装はライトブルーのレオタードの上に深みのある青のノースリーブワンピースを重ねたようなデザイン。ワンピースは胸元と腰元に細かくビジューが施され、黒いベルトで腰をウェストマークしたデザインがどことなくクラシカルでエレガントな雰囲気を醸し出しています。一方、男性は黒いシャツにストライプ柄の黒いベストとパンツというシックなスーツスタイル。紳士らしい正統派のコーディネートではありますが、全身黒にすることでクラシカルなスタイルとは違うおしゃれ感も出ていて、『ゴッドファーザー』のダークな感じにも合っているように思います。


 5位はカナダのアレクサンドラ・ポール&ミッチェル・イスラム組の「愛の夢第3番/ハンガリー狂詩曲第2番/「リゴレット」による演奏会用パラフレーズ」。

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 上述したハワイエク&ベイカー組も使用した「愛の夢」に始まり、「ハンガリー狂詩曲」と「「リゴレット」による演奏会用パラフレーズ」で軽快かつ熱狂的に締めくくられるフランツ・リストのピアノ曲メドレー。
 その華やかさを示すように、女性の衣装は鮮やかなピンク。上半身は濃いめのピンクで、細かな刺繍とビジューがあしらわれた非常に繊細な作り。そこからグラデーションで淡いピンクとなったスカートは柔らかく優雅な印象を与えます。衣装自体が豪華なのでほかは装飾らしい装飾なくシンプルなコーディネートにしているのが良いなと思います。男性は女性と比べると地味目な色づかい。ブルーグレーの長袖シャツに黒いパンツですが、シャツはデザイン性のある作りなので華やかさもあります。シックな色が女性の衣装のピンク色ともマッチしていてバランスが取れているなと思いますね。


 6位は日本の村元哉中&クリス・リード組の「ポエタ」です。

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 フィギュア界でもたびたび使用されるフラメンコ曲「ポエタ」。村元&リード組の衣装もフラメンコらしさを前面に押し出した色づかい、デザインになっています。
 女性の衣装は上半身が黒のレース調の胸元が大胆に空いたデザイン。そしてスカートは透け感のあるこちらも縁取りがレースになっている黒のチュールスカートに、赤いサテン風素材のスカートを重ねています。男性は黒いトップスに黒いパンツで、トップスの襟元は女性と同じようなレース調のデザイン、腰にはエキゾチックな模様が入った赤いベルトというスタイルで、女性との統一感があります。男女ともに赤と黒というフラメンコらしい色づかいですが、それに加えレースやサテンといった素材感の工夫もあり、定番のスタイルの中にも彼らならではの個性を表した衣装になっていると思います。


 7位はアメリカのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組の「Evolution: Mirror In Mirror」。

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 壮大で重厚なオーケストラプログラムで、シーズン中に使用された衣装は男女ともに2種類。両方ともネイビーを基調にしていることは変わらないのですが、シーズン終盤で使用したものはより装飾が多いデザインとなっており、私が今回選んだのは主にシーズン前半に使用されたものです。
 女性はシンプルな形のワンピースで、上の写真では分かりにくいかもしれませんが、胸元に向けて放射線状にギャザーが寄せられたデザインとなっています。男性もトップスはネイビーの長袖シャツで、うっすらと透け感があります。見た目に分かりやすい華やかさはなく、地味といえば地味なのですが、音楽の重厚で穏やかな世界観にはよく合っていると思いますし、氷の上でもきれいに映える衣装だなと感じました。


 8位は中国の宋林書(ソン・リンシュー)&孫茁鳴(スン・ジュオミン)組の「映画『007 ゴールデンアイ』より/映画『007 スカイフォール』より」。

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 おなじみの「007」のサントラを使用したダイナミックなボーカル入りプログラム。
 女性はボルドー色の個性的な形のドレス。胸元はスーツの襟のようなデザインになっていて、腰のコサージュ風の装飾でその布を留めるような作りに。そこから垂れ下がった布がスカートになっているわけですが、体の前面は覆わず脚が全て見えるようなセクシーなデザインで、素材感や色は品がある一方で露出は大胆にというギャップが魅力的な衣装ですね。男性は白シャツに黒いスーツ、黒い蝶ネクタイというスタンダードなスタイルですが、スーツに細かなビジューが散りばめられていたりと隠れた工夫がなされています。
 「007」のかっこよく、クールで、セクシーなイメージをうまく自分たちらしく個性的に演出した衣装だと思います。


 9位は中国の王詩玥(ワン・シーユエ)&柳鑫宇(リュー・シンユー)組の「ニューヨーク・ニューヨーク」。

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 定番のスタンダードナンバー「ニューヨーク・ニューヨーク」をアレンジした女性ボーカル入りの軽快かつパワフルなプログラム。写真の衣装はシーズン初戦のスケートカナダのみで着用されたもので、シーズンのほとんどは男女ともにピンクを基調とした衣装を着ていたのですが、個人的にはこのプログラムにはピンクじゃない方が合うかなと感じたのでこちらを選びました。
 女性は鮮やかなライトブルーのスカート短めのワンピース。細かなビジューが施されて華やかさもありつつ、色づかいであったりスカートのふわっと広がる感じであったりと全体的に明るさ、軽快さを感じさせるデザインで素敵です。男性は白シャツに蝶ネクタイ、サスペンダーにパンツというオーソドックススタイルですが、一つ一つのアイテム、たとえばシャツはシルバーのラインが入っていたり、パンツは黒と白のストライプ柄にしたりと、アイテムごとに華やかさや軽やかさを印象づける工夫がなされています。男女ともにプログラムの世界観に合ったポップなコスチュームで好いですね。


 10位はイスラエルのイザベラ・トバイアス&イリヤ・トカチェンコ組の「パ・ド・ドゥ バレエ「くるみ割り人形」より」。

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 王道のバレエ「くるみ割り人形」を使用した華麗なプログラム。ということで女性も男性も白の衣装でバレエらしい清らかさ、優雅さを表していますね。
 女性はデコルテや腕をシアー素材で覆った白のワンピース。首元や胸元にふんだんに繊細なビジューをあしらっていて、白一色の中にも控えめなゴージャスさを感じさせます。シーズン前半は同じ白いワンピースでビジューのないものを使用していたのですが、それだとあまりにもシンプルすぎるように感じたので、この写真のようにビジューを施した方がほどよい華やかさがあって良いですね。一方、男性の衣装はシーズンを通して変わらずノーカラーのシンプルな白シャツと黒いパンツの組み合わせ。こちらももう少し装飾性があってもいいかなとも思いますが、逆にこれだけシンプルに徹底しているのを見ると、衣装のインパクトではなくプログラムで勝負、という感じがしますし、「くるみ割り人形」という誰もが知る名曲だからこそ、音楽が持つ力だけで十分アピールできるのかなという気がしますね。



 アイスダンスフリーダンス部門のベストコスチューム16/17は以上です。次は男子のショートプログラム部門を書く予定ですので、またしばしお待ちください。


:記事冒頭の国際スケート連盟のロゴは、国際スケート連盟公式フェイスブックページから、ハワイエク&ベイカー組の写真、シブタニ&シブタニ組の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、ウィーバー&ポジェ組の写真、パパダキス&シゼロン組の写真、ポール&イスラム組の写真、王&柳組の写真、トバイアス&トカチェンコ組の写真は、アイスダンス情報サイト「ice-dance.com」から、マンスール&チェスカ組の写真、宋&孫組の写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、村元&リード組の写真は、デイリースポーツのニュースサイト内の写真特集記事から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2017-06-01 23:41 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

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 16/17シーズンのコスチュームをランキング形式で紹介するベストコスチューム16/17。例年どおり、個人的に良いと思った現役選手たちの衣装を各カテゴリー別に1位から10位まで振り返っていきたいと思います。この記事ではアイスダンスのショートダンスのベスト10を書いていきます。
 その前に、コスチュームを選ぶ上でのルールをまとめると、


●16/17シーズンに着用された衣装が対象。
●グランプリシリーズ、欧州選手権、四大陸選手権、世界選手権、世界国別対抗戦に出場した選手が、該当する試合で着用した衣装のみ対象とする。
●各部門につき、各選手1着のみに限定。1つのプログラムで複数の衣装を使用している場合でも1着しか対象にならない。また、1人の選手が1シーズンで複数のプログラムを演じた場合でも1つの衣装しか対象にならない。
●16/17シーズンに着用している衣装でも、すでに昨シーズン以前に使用されたことのある衣装は対象外とする。



 という感じになります。これらのルールに基づいて、10着の衣装を選びました(アイスダンスやペアの場合は男女で1組なので、衣装ももちろん2着で1つという扱いです)。ではさっそく、アイスダンスショートダンス部門の1位から見ていきます。

*****

 アイスダンスショートダンス部門の1位は、日本の村元哉中&クリス・リード組の「レイ・チャールズ・メドレー」です。

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 ソウルの神様と呼ばれるレイ・チャールズの楽曲を組み合わせたメドレープログラム。明るく軽快なプログラムということで衣装もポップさを前面に押し出したデザインになっています。
 男女ともに基調となっている色はイエローと紫。女性の村元選手はホルターネック風のワンピースで、ボディの部分は濃いめの紫のベルベット風生地。胸元は白襟のようなデザインに小さなボタンが4つ並んでいます。スカートは透け感のある紫のチュールスカートの上にサテンのような艶のある素材の白いスカートを重ねていて、白いスカートは輪っかのような一風変わったイエローのドット模様となっています。ドット以外にもスカートの縁や首にかかったストラップ、腰を囲むベルト(背中側でリボンを結んだデザインになっている)がイエローとなっていて、アクセントをつけています。
 一方、男性のリード選手は白いシャツの上に、紫をベースにイエローの格子柄が入った五分袖のジャケットを着用。ネクタイはイエローにシルバーのラインストーンが施された作りで、ポケットにはイエローのチーフと、こちらもベースは紫ですがイエローをアクセント的に使ったコーディネートとなっています。
 紫とイエローという組み合わせは珍しい色づかいですが、プログラムのポップな雰囲気によく合っていますし、また、女性のワンピース姿も男性のジャケット姿もどこかレトロで古き良き時代を思い起こさせるデザインになっていて、レイ・チャールズというアメリカを代表する往年のスターの音楽にもピッタリ合っていると思いますね。


 2位はアルメニアのティナ・ガラベディアン&シモン・プルー=セネカル組の「Blues/Swing」です。

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 プログラムに関しては今季の課題であった「ブルース」と「スウィング」の表記があるのみで具体的な曲名はわからないのですが、前半はしっとりとした女性ボーカルによる上品な世界観、後半は同じく女性ボーカルですが軽快でリズミカルな曲調という構成のプログラムになっています。
 ということで後半の「スウィング」の軽快さよりも、前半の「ブルース」の落ち着いたイメージを意識したコスチュームになっていますね。男性はシンプルな黒のタキシード姿でクラシカルな紳士を演出。女性はラインストーンやビジューがふんだんにあしらわれた上半身と深いスリットが入った長めの群青色のスカートという個性的でありながらも気品のあるドレス姿。特に上半身はかなりキラキラとした一見派手なデザインですが、使う装飾の色をある程度絞って統一してあるので、そんなにごちゃごちゃした感じはせずゴージャスかつ洗練された印象を与える衣装になっていると思います。プログラムが醸し出すイメージよりは男女ともにクラシックな趣きが強いかなと思いますが、よく工夫された美しい衣装ですね。


 3位はロシアのヴィクトリア・シニツィナ&ニキータ・カツァラポフ組の「Love Creole/It Don't Mean A Thing」。

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 ジャズの大家デューク・エリントンの「Love Creole」とアメリカを代表するエンターテイナー、トニー・ベネットとレディー・ガガのデュエット曲「It Don't Mean A Thing」のメドレープログラム。全体的にしゃれた小気味の良い雰囲気の作品ですが、コスチュームもそれに合わせて比較的カジュアルなデザインになっています。
 男性は五分袖の白シャツに黒いベストというスマートながらも着崩した雰囲気のある着こなし。一方、女性はネイビーのワンピースですが、裾はゴールドなどさまざまな色が入り混じったフリンジっぽい作りになっていて、上半身から腰にかけてはシンプル、スカートはゴージャスというギャップのあるデザインが印象的で良いですね。プログラムの後半はトニー・ベネットの渋い歌声とレディー・ガガの華やかなソプラノのデュエットなので、そういったイメージにも合っている衣装だなと思います。


 4位はイタリアのアンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ組の「Cry For Me/Choo Choo Boogie」です。

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 クリント・イーストウッド監督作品『ジャージー・ボーイズ』の劇中曲「Cry For Me」による前半はしっとりとしながらも軽快さもあるバラード、後半はとにかくノリノリのブギウギというプログラム。
 女性のカッペリーニ選手は全身水玉のモノトーンの半袖ワンピースというポップないでたち。一見シンプルですが、ドットの大きさが部分部分で違いますし、裾の広がり方も絶妙で、よく考えられたコスチュームだと思います。また、男性のラノッテ選手は黒いインナーに黒いパンツ、赤いジャケットというコントラストがきれいなコーディネート。男女であまり共通点のないように見えるコスチュームですが、カッペリーニ選手が赤いイヤリングや赤いマニキュアでラノッテ選手の衣装に合わせているところもしっかり工夫していますし、男女で並んだ時に黒と白と赤というコントラストのハッキリとしたカラーコーディネーションがプログラムの雰囲気にも合っていて素敵ですね。


 5位はアメリカのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組の「That's Life」。

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 プログラムはフランク・シナトラが歌うスタンダードナンバー「That's Life」ですが、後半はそれをヒップホップ風にリミックスしたバージョンになっていて、ゆったりとした前半と急激に激しくなる後半とのギャップが魅力的な作品です。
 コスチュームは男性と女性とで少し趣の異なるものになっていて、男性は白シャツに黒いジャケットとパンツという非常にシンプルなスタイル。一方で女性は胸元が大胆に開いたデザインのノースリーブのトップスで、その下にはランジェリーがのぞくような作りになっており、また、背中側は全てシースルー生地になっているので、さらにセクシーさを感じさせます。しかしトップスの襟元はスーツの襟のような形になっていて男性の衣装との統一感もあり、ボトムスはスカートではなく脚を全て覆うパンツルックということもあり、セクシーだけれども羽目を外し過ぎない品の良さもちゃんとある衣装になっています。女性の衣装は中国杯までは胸元も覆うようなデザインの衣装を着ていてそちらも素敵だったのですが、よりセクシーなこちらを今回は選びました。
 男性のオーソドックスな衣装でプログラム前半のフランク・シナトラのパートを、女性の個性的な衣装でプログラム後半のヒップホップのパートを表しているようにも思えて、プログラムの持つ二つのイメージを男女それぞれが表現するという考えられたコーディネートになっていますね。


 6位はカナダのアレクサンドラ・ポール&ミッチェル・イスラム組の「Big Spender/シング・シング・シング」。

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 ムーディーな女性ボーカルが特徴的なミュージカルナンバー「Big Spender」と、スウィング・ジャズの名曲「シング・シング・シング」を組み合わせたプログラム。
 衣装は男女ともに黒を基調としたシックなのものとなっています。男性は白シャツにグレーのストライプが入った黒いベストとパンツ、白い水玉のネクタイというコーディネートで、シンプルではありますが単に黒一色ではなく、ストライプやドットといった模様の入ったスタイルにすることでより軽快さやポップさも醸し出していて、スウィング・ジャズを使ったノリの良いプログラムの世界観に合わせています。女性は胸元の大きく開いたホルターネック風のワンピース姿で、黒いラインが細かく交差するような素材感が特徴的。スカートの裾はフリンジになっていて、全体的に古き良きアメリカの踊り子が着ていたような衣装を想起させるデザインとなっています。また、シーズン初戦のUSインターナショナルクラシックでは女性のポール選手は髪をポニーテールにしていましたが、写真のスケートカナダでは髪をまとめて、さらにシルバーの髪飾りをつけたことによって、よりオールドアメリカのクラシックな雰囲気が強調されていて、プログラムのイメージをしっかり体現していると思いますね。


 7位はフランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組の「Bittersweet/Diga Diga Doo」。

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 女性ボーカルによるロマンティックな前半と、トランペットの音色が特徴的なリズミカルな後半という構成のプログラム。シーズンを通して男女ともに2着の衣装を使用していましたが、個人的に好きなシーズン後半の衣装を選ばせていただきました。
 女性のパパダキス選手は胸元が大きく開いたワンピースを着氷。ベースとなるネイビーのシースルー生地の上にボタニカル柄っぽい金色の刺繍を施したようなデザインで、スカートは一切模様や装飾のないシンプルなものとなっています。金色の刺繍によってゴージャスな印象もありますが、細めのストラップや透け感のある生地など全体的に華奢な印象もあり、可憐さと華やかさのバランスが取れたコスチュームだと思います。男性はこちらも胸元をはだけた白シャツの上にグレーの五分袖ジャケットとパンツといういでたちですが、ジャケットの襟と袖は女性のワンピースと同じような金色の刺繍がなされていて、地味すぎず派手すぎずというセンスの良さを感じさせますね。


 8位はスペインのオリヴィア・スマート&アドリア・ディアス組の「Proud Mary」。

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 ティナ・ターナーの楽曲を使用したパワフルでソウルフルなプログラム。ということで衣装もわりときらびやかなものになっています。
 女性はシルバーのノースリーブドレス。スカートはフリンジになっていて色づかいも伴ってゴージャスな印象を与えますが、上半身はシルバー一色ではなく肌色に合わせたベージュとの縞模様っぽくなっているので、見た目にも変化がありますね。一方で男性はグレーのシャツに黒いパンツというごくごくスタンダードなスタイルで、女性の引き立て役という感じ。
 カップルとして見ると、色的にはシルバー、グレー、黒というモノトーンに近い組み合わせで必ずしもカラフルではありませんが、ブロンドのボブヘアにシルバーのフリンジワンピースという女性のいでたちがとても華があり、また、プログラムの雰囲気ともよく合っていて、色の印象以上に華やかさを感じさせる衣装だなと思います。


 9位はイギリスのライラ・フィアー&ルイス・ギブソン組の「Save My Soul/Diga Diga Doo」。

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 アメリカのスウィング・バンド“ビッグ・バッド・ヴードゥー・ダディ”の楽曲2曲のメドレープログラム。古き良きアメリカ音楽をリバイバルしたような音楽が特徴的なバンドの楽曲とあって、どこか懐かしい雰囲気も漂わせるプログラムになっています。
 男性のギブソン選手は五分袖の白シャツに黒いベスト、黒いパンツというオーソドックススタイル。一方、女性のフィアー選手は鮮やかなライトブルーのホルターネックワンピース。胸元にふんだんにビジューが施されていてとても華やかな印象を与えます。また、上半身は流れるような曲線が縦に走るデザインともなっていて、シンプルな中にも工夫が感じられます。
 こちらも上述したスマート&ディアス組同様に、男性は地味目に、女性は比較的華やかにという組み合わせで、男性が女性を際立たせる二人のコーディネートですね。


 10位はロシアのエレーナ・イリニフ&ルスラン・ジガンシン組の「Big Bad Love/シング・シング・シング」です。

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 レイ・チャールズとダイアナ・ロスのデュエット曲「Big Bad Love」と超定番の「シング・シング・シング」を組み合わせたプログラムですが、コスチュームはスウィングのノリノリのイメージよりも、前半のブルースのしっとりとした世界観の方をイメージしたデザインになっていますね。
 女性のイリニフ選手はノースリーブのスカート長めのドレス。シックなネイビーですが、上半身を中心に施された細かなビジューや、ネックレス風の装飾、腰のコサージュ風の装飾、頭の髪飾りなど、全体的に装飾多めになっているのでわりと華やかな印象です。男性の方は白いシャツに黒い蝶ネクタイ、黒いスーツという正統派のクラシカルスタイルですが、襟には女性同様にキラキラとしたビジューがあしらわれているのでこちらも華のある雰囲気。ブルース&スウィングというよりはクラシック音楽のプログラムで使用してもおかしくない衣装ですが、あえてこういったプログラムでクラシカルなコスチュームを用いることで、上品さを前面に押し出していて良いですね。



 ベストコスチューム16/17のアイスダンスショートダンス部門は以上です。フリーダンス部門に続きます。


:記事冒頭の国際スケート連盟のロゴは、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、村元&リード組の写真は、デイリースポーツのニュースサイト内の写真特集記事から、ガラベディアン&プルー=セネカル組の写真、シニツィナ&カツァラポフ組の写真、カッペリーニ&ラノッテ組の写真、シブタニ&シブタニ組の写真、ポール&イスラム組の写真、スマート&ディアス組の写真、イリニフ&ジガンシン組の写真は、アイスダンス情報サイト「ice-dance.com」から、パパダキス&シゼロン組の写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、フィアー&ギブソン組の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2017-05-25 17:23 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

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 フィギュアスケーター衣装コレクション第13弾。今回取り上げるのはロシアのベテランスケーター、アリョーナ・レオノワ選手です。
 レオノワ選手は1990年生まれの現在25歳。日本の浅田真央選手やカナダのパトリック・チャン選手、引退された韓国の金妍兒(キム・ヨナ)さんなどと同い年の、いわゆる黄金世代の一人ですね。現在の最強ロシア女子軍団の一角をなす選手ですが、ロシア女子が今のように世界を席巻する前、まだ日本女子やアメリカ女子に押されていた時代からロシア女子を引っ張る存在として活躍し続けてきました。最近は10代の若い選手たちに押され気味で、なかなか以前のように存在感を発揮できてはいませんが、数少ない20代半ば過ぎのベテラン選手として、円熟味を増した演技を披露し続けてくれています。そんな彼女の衣装を、振り返っていきます。

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by hitsujigusa | 2016-09-03 00:32 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

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 フィギュアスケーターのコスチュームを振り返るフィギュアスケーター衣装コレクション。今回で第12弾となります。取り上げるのはアメリカの長洲未来選手。日系アメリカ人であることから日本のフィギュアファンにもおなじみの選手ですが、08/09シーズンのシニアデビュー後、さまざまな怪我やアクシデントに見舞われながらも、困難を乗り越え第一線で活躍し続けています。そんな長洲選手の主な衣装を見ていきたいと思います。

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by hitsujigusa | 2016-08-05 18:27 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

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 フィギュアスケーターの衣装を振り返る、フィギュアスケーター衣装コレクション第11弾。今回取り上げるのは、2016年の3月をもって引退した小塚崇彦さんです。
 日本のフィギュアファンにとってはいまさら説明するまでもなく、小塚さんといえば日本フィギュア界のサラブレッド。正統派のスケーターとして、世界でも類まれなる美しいスケーティングの持ち主として活躍しましたが、惜しまれつつも引退、さらにアイスショーなど全てのスケート活動からも退きました。未だにそのことが淋しくてならないのですが、それはとりあえず脇に置いといて、そんな小塚さんのコスチュームの数々を見ていきたいと思います。

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by hitsujigusa | 2016-07-07 23:46 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

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 ベストコスチューム15/16、いよいよこれがラストとなる女子フリー部門です。なお、衣装を選ぶ際のルールについてはこちらの記事を、女子のショートプログラム部門はこちらの記事をご覧ください。

*****

 女子フリー部門第1位は、日本の宮原知子選手の「ため息」です。

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 フランツ・リストのピアノ曲「ため息」は、「3つの演奏会用練習曲」というピアノ曲集の中の一曲。リストらしいエレガンスで、タイトルのとおりため息をこぼすような優しい旋律が印象的な作品です。
 そんな音楽を用いたプログラムに宮原選手が掲げたテーマは“初恋”。ということで、コスチュームはまさに初恋を思わせる鮮やかなピンク色です。ですが、ひとえにピンク色といっても衣装の場所によって異なるピンク色を配置していて、特にスカートは5枚以上の生地を重ねてグラデーションになるように作られていて、単調なピンクにならない工夫が凝らされています。また、特徴的なのは布づかいで、上半身は3種類の生地を組み合わせたアシンメトリーなデザインになっていて、この異素材感がピンク一色の衣装に効果的に変化を与えているように思いますね。
 プログラムの世界観を余すことなく伝えた、甘美で素晴らしい衣装です。


 2位はアメリカのグレイシー・ゴールド選手の「火の鳥」です。

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 定番の「火の鳥」をゴールド選手らしく優雅に、しかし力強くダイナミックに演じたプログラムですが、衣装にも彼女らしいフェミニンさというのが反映されているように感じます。
 色はまさに“火の鳥”といった感じの赤。衣装の形はストラップレスで、胸部に羽やビジューがあしらわれ、鳥の翼のようなデザインとなっています。首元や腕にも同じ赤でアクセント的に装飾が施されていて、特に腕の装飾があることによってよりいっそう“鳥感”が出て良いですね。
 火の鳥らしい激しさや情熱的なさまを表しながらも、女性的な美しさも表現した見事なコスチュームだと思います。


 3位はフランスのマエ=ベレニス・メイテ選手の「トリスタンとイゾルデ」です。

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 古典作品「トリスタンとイゾルデ」を元にフランスの作曲家マキシム・ロドリゲスが作曲した音楽作品で、壮大でありながら悲哀漂うプログラムとなっています。
 コスチュームは紫を基調としていて、両袖とも長袖ですが、襟ぐりが斜めになっているアシンメトリーなデザインです。そして最も特徴的なのが上半身に大きく描かれた独創的な絵柄。鳥の羽のようにも見えますし、葉っぱっぽくも見えます。この部分が色とりどりのビジューによって描かれていて、まるでアート作品といっても過言ではないような美しさです。
 オリジナリティーを存分に発揮しながらも、奇抜になり過ぎず、ほかにない唯一無二の美しさを表現した素晴らしい衣装ですね。


 4位はアメリカのアシュリー・ワグナー選手の「映画『ムーラン・ルージュ』より」。

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 14/15シーズンからの持ち越しプログラム「映画『ムーラン・ルージュ』より」ですが、コスチュームは14/15シーズンの赤いワンピースから一新しました。
 新しいコスチュームはガラリと変わって白いストラップレスのワンピースで、胸の部分に金糸でさまざまな文様や植物をかたどった少しエキゾチックなデザインな施されています。そして首元も金色やブロンズ色のゴージャスなネックレス風の装飾がなされていて、プログラムの世界観にふさわしい華やかさをいっそう強調しています。白をベースにすることで可憐さも醸し出しつつ、ゴールドを多用することで品の良い豪華さもプラスしていて、14/15シーズンの赤い衣装も素敵でしたが、そこから全く違うコスチュームにすることでプログラムのイメージをも新たにしていて、プログラムと衣装のコンビネーションというのを改めて感じさせてくれましたね。


 5位は日本の浅田真央選手の「蝶々夫人」です。

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 日本を舞台にした王道のオペラ「蝶々夫人」。ということで衣装は着物風となっています。色は淡いラベンダー色を基調とし、うっすら透け感があります。袖はたっぷりと広がっており、腰の帯は繊細な刺繍がなされ、写真では見えませんが背中側は実際の着物で用いられる帯の結び方っぽくなっていて、さらには帯紐もしっかり施されていて、本物の着物の趣きに近い、上質な和服アレンジコスチュームになっています。また、タイトルにかけて上半身には蝶もあしらわれていて、蝶を衣装の中にデザインとして取り入れると、ともすればそこだけ浮いてしまったり子どもっぽっくなったりしかねないと思うのですが、この衣装の蝶は明らかに蝶と分かるデザインを用いながらも、うまく衣装の中に溶け込ませていて、絶妙だなと思いますね。


 6位は日本の本郷理華選手の「リバーダンス」です。

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 アイルランドの伝統音楽や舞踊などを取り入れた舞台作品「リバーダンス」の楽曲を使用したプログラム。本郷選手がこのプログラムで使用した衣装は2パターンあり、シーズン前半から四大陸選手権までは黒地に青や白のビジューを散りばめたもの、世界選手権以降は同じ黒地で胸の部分に大ぶりのビジューをあしらったものでしたが、今回はより華やかな後者を選びました。
 ベースとなる色はシックな黒ですが、胸元を中心にダイヤモンド風のビジューで花がいくつも連なったようなデザインとなっており、腕の部分はシースルー生地に細かなビジューが施されています。全体的に際立って目立つ色は使われていないのですが、贅沢に用いたビジューが放つ輝きがアクセントとなっていて、黒と青の寒色系のコスチュームですがしっかり華やかさもある衣装ですね。


 7位はロシアのアデリナ・ソトニコワ選手の「Je Suis Malade」。

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 「Je Suis Malade」はフランスの歌手ララ・ファビアンが歌う情熱的なラブソングです。ソトニコワ選手が纏う衣装で何より特徴的なのは左胸のハートでしょう。複数の立体的なビジューによってハート形が作られていて、まさにラブソングにぴったりなデザインです。コスチュームのベースとなる素材は黒いシースルー生地で(この写真だと光の効果でかなりスケスケに見えますが、実際に映像などで見るとここまで透けてません)、放射線状の黒いラインがハートに引き寄せられるようなデザインになっています。
 パッと見の華やかさやゴージャスさはないものの、一方で黒地にピンクのハートというインパクト大のデザインによって新鮮な印象を見る者に与える、考えられた衣装だなと思います。


 8位は日本の木原万莉子選手の「映画『ブラック・スワン』より」。

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 バレエ「白鳥の湖」をテーマにした映画『ブラック・スワン』のサントラを使用したプログラム。衣装はまさに“白鳥の湖”らしいもので、上半身は白、腰から下は黒というツートーンで白鳥と黒鳥の両方を表しています。その色づかいも完全に白と黒に分かれているんじゃなくて、絶妙に白と黒が混じり合うようなデザインになっていますし、胸元の羽の部分にもところどころ黒が交じっていて、表裏一体の白鳥と黒鳥の世界観をコスチュームで見事に表現しているなと思いますね。


 9位はアメリカのポリーナ・エドマンズ選手の「映画『風と共に去りぬ』より」。

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 名作『風と共に去りぬ』のサントラを使用した壮大で華麗なプログラム。衣装は白を基調としていて、決して一目で分かる豪華さはないのですが、よく見ると上半身全体に生地と同系色の細かなビジューが施されていて、気品のある華やかさを演出しています。そしてワンポイントとして目を引くのが蝶々結び風のリボンで、この部分が本物のリボンだとより素朴な感じになると思いますが、これは服と一体化したアップリケになっていてリボン自体がキラキラとしたビジューをあしらっているのでやはり華やかです。また、リボンや服の縁取りは深みのあるグリーンで、映画の主人公スカーレット・オハラがアイルランド系で、アイルランドのナショナルカラーがグリーンという点をしっかり踏まえています。
 プログラムの音楽自体がわりと重々しい部分もあるので、衣装の色も濃い色にすると音楽と相まってより重厚さを漂わせる作品になったと思いますが、白という軽やかな色を選択したことで重厚さと軽快さのバランスをうまく取っているように思います。


 10位はアメリカの長洲未来選手の「映画『華麗なる・ギャツビー』より」。

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 1920年代のアメリカの富裕層の人々の姿を描いた映画『華麗なるギャツビー』。長洲選手のコスチュームはその華麗さ、ゴージャスさ、アメリカらしさというのをよく表わしていますね。
 ベースとなる色は落ち着きのあるベージュですが、衣装の装飾や腕のバングルなどきらめくビジューが多用されていて、色の印象以上の華やかさを感じさせます。衣装は体の線を強調する形・デザインでセクシーさが前面に押し出されていますが、色づかいが淡く柔らかさを感じさせる分、いやらしいセクシーさではなくて上品なセクシーさになっていると思います。
 古き良き時代のアメリカの華々しさ、リッチさを伝える素晴らしい衣装ですね。



 ベストコスチューム15/16、女子フリー部門は以上です。そして15/16シーズンのベストコスチュームシリーズもこれで全て終了となります。フィギュアスケートのシーズンも7月1日から新シーズンとなり、今から選手たちの新プログラム、そしてそれに伴う新コスチュームが楽しみでなりません。来季もプログラムとともに、衣装にも大いに注目していきたいと思います。では。


:記事冒頭の写真はフィギュアスケート誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから、宮原選手の写真、浅田選手の写真、本郷選手の写真、長洲選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、ゴールド選手の写真はマルチメディアサイト「Newscom」から、メイテ選手の写真、木原選手の写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、ワグナー選手の写真、エドマンズ選手の写真は、マルチメディアサイト「Zimbio」から、ソトニコワ選手の写真はフィギュアスケートブログ「FS Gossips」内の記事「Adelina Sotnikova: people love me」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2016-06-23 15:26 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(4)

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 ベストコスチューム15/16、女子ショートプログラム部門です。15/16シーズンに使用された女子のSPの衣装のベスト10を1位から見ていきたいと思います。衣装を選ぶ際のルールはこちらの記事をご覧ください。

*****

 女子ショートプログラム部門第1位は、アメリカのポリーナ・エドマンズ選手の「ピアノソナタ第14番」です。

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 ベートーヴェンの「ピアノソナタ第14番」、いわゆる“月光ソナタ”として知られる名曲を使用したプログラムです。
 衣装は青を基調としたものですが、胸の辺りには緑色も交じっており、上から下に向かって緑から青、さらに濃い青へと絶妙なグラデーションになっています。そのグラデーションの作り方もただ色が薄い方から濃い方へ変化するというのではなく、複雑に色を重ねながら全体的に一体感のある色合いになるように計算されていて、工夫が素晴らしいなと思います。また、胸元のネックレス風のビジューや、上半身全体に施した細かなビジューなど、装飾づかいもちょうど良い華やかさです。
 夜空を想起させる深い青、きらめく星々のようなビジューなど、“月光”のイメージを忠実に反映していて、シックさと華やかさのバランスも、重厚であり優雅でもある音楽の世界観にぴったりで、ため息の出るような美しい衣装ですね。


 2位は日本の宮原知子選手の「ファイヤー・ダンス 『リバーダンス』より」です。

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 アイルランド発の舞台作品『リバーダンス』の中の一曲である「ファイヤー・ダンス」を使用し、フラメンコの要素をふんだんに盛り込んだプログラムとなっています。
 ということで、衣装もスペインらしさ、フラメンコらしさを存分に意識したデザインですね。鮮やかな赤を基調とし、スカートや袖口からレース調の黒い生地が少しだけ覗いています。上半身はレースっぽい作りの蔓草模様の生地でちょっぴり透け感がありセクシーさを感じさせますし、スカートも左腰の方できゅっと布を絞るようなデザインになっていて、短めのスカートからのぞく脚がこちらも大胆な印象で、全体的に大人びた雰囲気を醸し出しています。
 一見奇をてらわずオーソドックスなデザインですが、素材のチョイスの仕方だったりスカートの丈のバランスだったり、細部にまでこだわりの感じられる素晴らしいコスチュームだと思います。


 3位はアメリカのアシュリー・ワグナー選手の「Hip Hip Chin Chin」です。

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 「Hip Hip chin Chin」はドイツのクラブ・デ・ベルーガというジャズ・バンドの楽曲で、ジャズをベースにしつつ、サンバのリズムも織り込まれていて、どこの国の音楽と一言で言えないような魅力のある、ノリノリのダンスナンバーとなっています。
 そんな陽気な雰囲気の音楽ですが、ワグナー選手は黒一色の衣装でシックにまとめています。ワグナー選手がこのプログラムで使用した衣装は2種類あり、今回取り上げたのはシーズン前半で使用したものです。黒のホルターネックのミニスカートドレスで色づかいとしては非常にシンプルですが、服の線に沿うようにあしらわれた大ぶりのビジューや、上半身前面に散りばめられた細かなビジューなど、キラキラと光るビジューが黒い生地に映えてとてもゴージャスです。また、スカートの裾もフリンジにすることでほかの衣装にはないオリジナリティーを演出しています。
 明るいプログラムながらあえてクールな黒を使うことで、プログラムに漂う“大人の世界”のイメージをうまく表現し、そこにビジューやフリンジなどで華や個性をプラスしていて、シンプルながら個性的という相反するイメージを見事に両立させた衣装になっていると思います。


 4位は中国の李子君(リ・ジジュン)選手の「月の光」です。

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 ドビュッシーの代表曲「月の光」を使用したプログラムで、まさに夜空のような群青色を基調としたワンピース姿です。両肩のストラップの太さが異なるアシンメトリーな作りで、左側は細いシルバーのストラップ、右側はヌーディーな肌色の生地と群青色のストラップを組み合わせたデザインになっています。このワンピースのデザインの肝となるのはやはり右肩から胸元にかけての部分で、肌色の生地に左肩のストラップと同じシルバーの縁取りをしたり、群青色やシルバーのビジューをあしらったりしていて、この部分をそのまま群青色の生地だけで作ってしまうと、群青色が暗めの色なだけにずっしりと重い印象になりかねないと思うのですが、肌色の生地でパッと見シースルーっぽい感じにすることで軽やかさが生まれています。
 シックさと華やかさ、重厚さと軽やかさのバランスが美しいコスチュームですね。


 5位はカナダのケイトリン・オズモンド選手の「ばら色の人生」です。

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 シャンソンの定番「ばら色の人生」のシンディ・ローパーバージョンを使用したプログラム。普通ならタイトルに合わせてバラっぽいピンクや赤を選びそうなところですが、そこをあえてグレーという無彩色にしてきたところが新鮮ですね。やはりグレーというのは地味な印象を与えやすいカラーなので難しさもあると思うのですが、この衣装はストラップから胸元にかけてビジューでピンクや白の植物をあしらっていて、そのピンクと白がベースとなるグレーにとてもマッチしていて、色合わせの妙というのが感じられます。グレーという色の美しさを存分に活かした素晴らしいコスチュームだと思います。


 6位はアメリカのグレイシー・ゴールド選手の「エル・チョクロ」です。

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 「エル・チョクロ」はタンゴの名曲で、情熱的な部分もありつつ、哀愁漂う大人びた空気感が印象的な音楽。ゴールド選手の衣装もそれに合わせて黒でクールに仕上げています。ワンピースの形は実にシンプルで、正面から見るとほぼ黒一色ですが、ほかの角度から見るとスカートの裏地だったり左腰の赤いバラの装飾だったり、ところどころに赤がのぞくデザインになっていて、その黒と赤のバランスが絶妙だなと思います。全体的には黒の面積が多いのでシックな印象ですが、効果的に使われている赤がアクセントとなって秘めた情熱のようなものをイメージさせて、プログラムの世界観とぴったりだなと思いますね。


 7位は日本の村上佳菜子選手の「ロクサーヌのタンゴ 映画『ムーラン・ルージュ』より」。

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 フィギュア界でもすでに定番になっている「ロクサーヌのタンゴ」。女子スケーター、男子スケーターともに人気の曲ですが、村上選手は男性ボーカル入りで迫力のあるパワフルなプログラムに仕上げています。
 衣装も女子選手にしては珍しいパンツスタイルで、全身黒一色。腕や背中などベースとなる生地は黒のシースルーで、その上に重厚感のある黒いハイネックを重ね、シンプルなミニスカートに、黒いストッキングを履いて、ほぼ全ての肌を覆っています。非常にシンプルな色づかいですが、トップスの前面に細かなビジューで模様を付けたり、何よりコスチュームの形でオリジナリティーを表現していて、ほかの女子選手にはないカッコいい衣装になっていると思います。


 8位はロシアのエフゲニア・メドベデワ選手の「映画『白夜の調べ』より」。

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 日本とロシアを舞台にした日本映画『白夜の調べ』のサントラを使用したプログラム。しっとりとしたエレガンスなピアノ曲ですが、メドベデワ選手の衣装も落ち着いた色合いのワイン色でシックにまとめています。長袖のシンプルな形のワンピースですが、腕や肩部分はシースルー生地で、胴から下は透け感のない生地と変化がつけられています。また、ビジューの使い方が光っていて、胸からお腹にかけて生地を埋め尽くすように施されたビジューがまるで星空のような美しい絵柄を作り出していて、ワイン色一色の衣装にゴージャスさをプラスしています。露出の少ない衣装で少女らしい清楚さを醸し出しながらも、大人っぽい雰囲気もうまく表現していますね。


 9位はラトビアのアンゲリーナ・クチヴァルスカ選手の「星は光りぬ オペラ「トスカ」より」。

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 大定番のオペラ「トスカ」の中でも有名なアリア「星は光りぬ」に乗せた壮大で重厚なプログラム。コスチュームはタイトルにふさわしい、まさにきらめくイメージを前面に押し出した豪華なデザインです。
 ベースとなる色は鮮やかな紫で、衣装のフォルムとしては長袖ワンピースですが、体の中心や腰に布の切れ目のようなラインが入った独創的な作りです。上半身全体にふんだんにビジューがあしらわれ、首元のジュエリーっぽいデザインの装飾もそうですし、ワンピースを縦断するようなシルバーの曲線など、個性的なデザインが印象的です。また、そのシルバーのラインが複数交差することによって、胸元に菱形模様を作り、その菱形の部分にまた別の色のビジューがあしらわれ……という重層的な色の組み合わせになっていて、これだけ色とりどりだとごちゃごちゃしかねないのですが、ベースとなる紫からそんなに離れていない色合いのビジューを使っているので、それぞれの色がうまく溶け合って、一体化していますね。


 10位はロシアのアデリナ・ソトニコワ選手の「ある恋の物語/ラテン・セレクション」。

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 さまざまなラテンの楽曲を組み合わせたメドレー・プログラム。陽気でノリの良いダンスナンバーとあって衣装も派手なピンクでラテンらしさを表現しています。ピンクの色合いも淡いと優雅で大人しいイメージになりますが、ちょっと紫の入った濃いピンクなので良い意味でチープでキッチュな感じが出ています。また、形としてはオーソドックスなワンピースなのですが、スカートはフリンジでしかもイエローとの2色づかいによってさらに明るい雰囲気になっていますし、上半身の方もところどころ肌色の生地を使うことでシースルーっぽくしていたり、水玉模様をあしらったり、左胸にのみワンポイントでフリンジを付けたりと、そこここにアクセントとなるモチーフを用いていて、全体的にとても賑やかで楽しいコスチュームになっていますね。



 さて、女子ショートプログラムの衣装ベスト10は以上です。次はいよいよベストコスチューム15/16の大トリ、女子フリー部門です。またしばらくお待ちください。


:記事冒頭の写真は、フィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから、エドマンズ選手の写真は、マルチメディアサイト「Zimbio」から、宮原選手の写真、ゴールド選手の写真、メドベデワ選手の写真、ソトニコワ選手の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、ワグナー選手の写真は、スケート情報サイト「icenetwork」が2016年1月13日に配信した記事「2016 U.S. Championships Viewer's Guide」から、李選手の写真、オズモンド選手の写真、村上選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、クチヴァルスカ選手の写真は、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから引用させていただきました。


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by hitsujigusa | 2016-06-16 17:41 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

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 ベストコスチューム15/16、アイスダンスのフリーダンスの衣装のベスト10を見ていきます。ショートダンス部門はこちら、また、衣装を選ぶにあたってのルールはこちらの記事をご覧ください。

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 アイスダンスフリーダンス部門第1位は、イタリアのアンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ組の「映画『甘い生活』より/映画『カビリアの夜』より/映画『フェリーニのアマルコルド』より/映画『8 1/2』より」です。

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 プログラムはイタリアを代表する映画監督フェデリコ・フェリーニの作品のサントラを組み合わせたもので、全てこちらもイタリアを代表する作曲家ニーノ・ロータ作曲です。
 プログラムは全体的に明るさや陽気さが印象的なのですが、衣装は男性が主に白、女性が主に黒というモノトーンで統一。明るいプログラムだと衣装も明るい暖色系の赤やオレンジを選びがちだと思うのですが、あえてモノトーンにすることで逆に新鮮味を感じさせます。男性はシンプルな白いシャツ姿で、爽やかな印象。女性はストラップレスの黒いドレスですが、単なる黒一色ではなく細かなビジューを散りばめて華やかさを演出。また、ダイヤモンド風のビジューでベルトマークすることでアクセントを付けていて、いっそうエレガンスな雰囲気を作り出しています。シンプルなデザイン、色づかいながら、目を引く美しさがある素晴らしいコスチュームですね。
 ちなみにカッペリーニ&ラノッテ組はショートダンスでもモノトーンの衣装を使用していて、ショートダンス部門でも第4位として取り上げていますので、ぜひご覧ください。


 2位は中国の王詩玥(ワン・シーユエ)&柳鑫宇(リュー・シンユー)組の「映画『グリーン・デスティニー』より」。

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 中国を舞台にし世界的に大ヒットした映画『グリーン・デスティニー』のサントラを使用したプログラムで、衣装もまさに中国らしい本格的なデザインとなっています。このプログラムで使用された衣装は2種類あり、シーズン前半は女性がチャイナドレス風の濃い青のワンピース、男性がグレーの漢服風の衣装を使用していたのですが、シーズン後半に使用し始めた写真の衣装の方がより現代的に洗練された印象で、素敵だなと思いこちらを選びました。
 女性は前身頃が着物風になっているラベンダー色のワンピースで、お腹の右側に金色や紫色の糸で繊細な刺繍が施されています。他方、男性は鮮やかな青の詰め襟風の上着に黒いパンツといういでたちで、肩は肩パッドっぽい作りとなっていて、この肩部分や腰の帯に施された金色の模様によってゴージャスな雰囲気も醸し出しています。女性も男性も中国らしいデザインや模様を用いながらも、現代のコスチュームとして違和感のないおしゃれさもしっかりあって、トラディショナルかつモダンという素晴らしい衣装だと思います。


 3位はロシアのアレクサンドラ・ステパノワ&イワン・ブキン組の「Rachmaninov's Revenge」です。

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 使用している「Rachmaninov's Revenge」は、イギリスのロックバンド、クイーンのボーカリストとして知られる歌手フレディ・マーキュリーの楽曲です。タイトルのとおりラフマニノフの楽曲をサンプリングしつつ、もちろんボーカルも入っていて、いわゆるクラシカルオーバーといった感じの曲です。
 衣装は男性は黒一色ですが、上半身はシースルー生地で、そこに黒いうねるような曲線が描かれています。女性は淡いピンクのドレスで、胸元が大きく開いてそこだけがベージュ色の異なる生地となっています。スカートは端に行くにつれてピンクが濃くなるグラデーションとなっていて、全体的にフェミニンで清らかな印象を与えています。このプログラムは男性ボーカル入りなので力強さやパワフルさもあるのですが、ベースはラフマニノフなのでラフマニノフらしい優雅さもあり、そういった意味で男性と女性がそれぞれの曲想を表しているように感じますね。


 4位はアメリカのマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組の「ピアノ協奏曲第2番」です。

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 フィギュア界大定番、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」の第2楽章と第3楽章を用いたプログラム。男性は黒を基調とした中に肩から胸にかけて赤い生地が使われている衣装。女性は赤を基調としたワンショルダー型のドレスで、上から下にいくにつれて色が薄くなりスカートの部分はシースルーのピンクとなっています。壮大で激しさもある曲想に赤がよく合っていますし、それでいて女性の衣装は真紅というよりはピンク寄りの赤なので女性的なエレガンスさもあって、プログラムの世界観にぴったりですね。


 5位は日本の平井絵己&マリオン・デ・ラ・アソンション組の「トゥーランドット」です。

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 おなじみの「トゥーランドット」を使用したプログラムで、男女ともにシックな色づかいの衣装で統一しています。男性のデ・ラ・アソンション選手はグレーのトップスに黒のパンツで、トップスは襟ぐりがゆったりとしたドレープ状になっていてエレガンスです。そして女性の平井選手は紫を基調としたオフショルダーのドレス。紫の色合いも一色ではなく濃いめの鮮やかな紫の部分と、にじんだような淡い紫の部分と分かれていることで変化をつけていて、そこから服の端っこに向けて薄くなるグラデーションになっているのが美しいですね。男女ともにシンプルな色づかいではあるのですが、その中にもグラデーションなど繊細な色づかいの工夫がなされているので見た目にも変化があって、音楽にあった深みのある清らかな雰囲気のコスチュームになっていると思います。


 6位はウクライナのアレクサンドラ・ナザロワ&マキシム・ニキーチン組の「幻想曲第3番」です。

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 「幻想曲第3番」はモーツァルト作曲のピアノ曲で、静謐かつ抒情的な旋律が印象的なプログラムとなっています。
 男性は濃いめのグレーのトップスと黒のパンツ姿で、襟ぐりはくしゅっと布を寄せて立体的な作りにしています。女性は淡いブルーのアシンメトリーなデザインのワンピースで、右側が細いストラップ、左側が長袖となっています。長袖も完全に腕を覆うものではなく、布を体に纏わせるようなデザインが軽やかさを演出していて、素材感の柔らかさといい色づかいといい、全体的に軽快さを印象付けます。男性女性ともに、シンプルな音楽にふさわしい華やかさを控えたコスチュームですね。


 7位はフランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組の「Rain In Your Black Eyes/To Build a Home」です。

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 イタリアの作曲家エツィオ・ボッソの楽曲と、イギリスのニュージャズグループ“The Cinematic Orchestra”の楽曲のメドレープログラムで、盛り上がる部分もありますが、激しかったり情熱的だったりというわけではなく、全体的に穏やかな曲想が続くプログラムです。
 なので男女ともに深みのあるネイビーを基調としていて、男性は襟ぐりが丸いトップスで、うっすらと透けるシースルーの向こうに赤がほのかに見えるような作りです。女性はワンショルダー型のワンピースで、上半身はネイビー、スカートは赤という対照的な色づかいが印象的です。上半身はシースルーの生地と透けない生地とが組み合わされていて、一見無造作に生地に穴ぼこが開いたかのようなデザインがモダンな雰囲気を醸し出しています。
 クラシカルな雰囲気もありながら装飾性を極力排し、布地の特性をそのまま生かしたようなデザインの衣装はコンテンポラリーアートのようなイメージも想起させ、クラシックの要素もありつつ現代的な要素も多く含んでいる音楽の世界観にぴったりですね。


 8位はポーランドのナタリア・カリシェク&マクシム・スポディレフ組の「Crystallize」。

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 「Crystallize」はアメリカのヴァイオリニスト、リンジー・スターリングの楽曲です。なのでもちろんヴァイオリン曲で、ヴァイオリンが奏でる硬質な音色が特徴的なプログラムなのですが、ポップスっぽい要素もあって、スタンダードなクラシック曲とは少し趣きが異なります。
 衣装は男女ともにモノトーンで、男性は黒の上下、女性はブルーを帯びたグレーの長袖ワンピースです。どちらの衣装も細かなビジューが散りばめられていて、“クリスタル”という名の音楽のイメージを忠実に反映したデザインとなっています。色づかいは地味ですが、ふんだんに施されたビジューがスケーターの動きに合わせてきらめいて、それがいかにも“クリスタル”らしいですね。音楽自体が静かな曲調だったりオーソドックスなクラシックだったりすると、この衣装は地味過ぎるかもしれませんが、「Crystallize」はかなりアップテンポでノリの良い曲なので、これくらい地味でもいいのかなと思いますね。


 9位はアメリカのマディソン・ハベル&ザカリー・ドノヒュー組の「トロンのためのアダージョ」です。

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 「トロンのためのアダージョ」はフランスのエレクトロ・デュオ“ダフト・パンク”が映画『トロン:レガシー』のサントラとして手がけた楽曲です。ダフト・パンクはジャンルとしてはハウスやエレクトロニックとされますが、この曲は映画音楽なのでクラシックの色合いが濃く、壮大で深遠な曲想です。
 衣装はシーズン中2種類使用され、シーズン序盤から四大陸選手権までは女性のハベル選手は白い衣装を用いていましたが、世界選手権で写真の衣装に変更しました。この写真ではちょっと分かりにくいかもしれませんが、上半身はマットな質感の黒一色で、スカートが前は短く、後ろが膝くらいまであるアシンメトリーな長さとなっています。また、色も黒からグレー、白というようにグラデーションになっていて、光と闇が混じり合うような重層性を感じさせる凝ったデザインです。一方、男性は黒一色でこちらはシーズン序盤から変わらず、“シンプル・イズ・ベスト”で女性を引き立てています。ダークで重厚なプログラムの世界観によく合った衣装だと思います。


 10位はロシアのヴィクトリア・シニツィナ&ニキータ・カツァラポフ組の「これからも僕はいるよ」。

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 イタリアのテノール歌手アンドレア・ボチェッリさんの「これからも僕はいるよ」(原題をそのままカタカナにした「イオ・チ・サロ」という曲名でもおなじみですね)は、15/16シーズンをもって引退した小塚崇彦さんや、14/15シーズンをもって引退したペアの龐清(パン・チン)&佟健(トン・ジャン)組も使用していて、フィギュア界でも徐々に定番化しつつあるクラシカルオーバーのボーカル曲です。
 女性のシニツィナ選手はロイヤルブルーのノースリーブドレスで、胸の下をベルト風の装飾で締めるデザインとなっています。男性のカツァラポフ選手は上下黒の衣装で、トップスには少し薄めの黒でシンメトリーな模様が描かれています。重厚でありソフトでもある男性ボーカル入りのプログラムで、女性がやわらかさを、男性が重厚さを想起させて、男女でうまくバランスを取っているように感じますね。



 アイスダンスフリーダンス部門は以上です。1か月ほど前から始まったベストコスチューム15/16シリーズですが、次の女子でいよいよ最後です。記事アップまでまたしばらくお待ちください。


:記事冒頭の写真は、フィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから、カッペリーニ&ラノッテ組の写真、平井&デ・ラ・アソンション組の写真、シニツィナ&カツァラポフ組の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、王&柳組の写真、ナザロワ&ニキーチン組の写真、カリシェク&スポディレフ組の写真、ハベル&ドノヒュー組の写真は、アイスダンス情報サイト「ice-dance.com」から、ステパノワ&ブキン組の写真は、アメリカのファッションデザイナー、ニック・ヴェレオス氏の公式サイトが2016年4月5日に配信した記事「ICE STYLE.....ISU World Figure Skating Championships 2016: Figure Skating Costumes Recap PAIRS and ICE DANCE!」から、チョック&ベイツ組の写真は、アメリカの新聞「The San Diego Union-Tribune」の公式サイトが2015年11月7日に配信した記事「Asada wins Cup of China in comeback at Grand Prix series」から、パパダキス&シゼロン組の写真は、フィギュアスケート情報サイト「GOLDEN SKATE」が2016年4月1日に配信した記事「Papadakis and Cizeron defend World title」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2016-06-08 20:18 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)