時計坂の家



【あらすじ】
夏休み、普通の女の子フー子はいとこのマリカから手紙で誘われ、母の故郷で今も祖父が住む港町、汀舘を訪れる。祖父の家は、煉瓦造りの時計塔がそびえていることからそう呼ばれる時計坂にあった。独特な雰囲気を持つ祖父とお手伝いさんのリサさんに戸惑う中、ある日フー子は、階段の踊り場の変な位置に設置された窓に目を止める。外には普通の風景が広がる何の変哲もない窓。しかし、フー子が再び目をやると、窓の外には緑あふれる庭が出現していた―。


8月もあと数日……。ということで、夏のうちに読んでほしい作品を、もう1冊。高楼方子さんのファンタジー『時計坂の家』。

この作品の魅力を言葉で表すのは難しい。

物語は下地だけ見れば非常にオーソドックス。主人公はどこにでもいる普通の女の子、古い謎めいた一軒家にまつわる秘密、美少女のいとこ、何かを隠しているような祖父、そして突然現れる美しい庭―。悪く言えばありきたりな話だが、これだけおなじみのモチーフが散りばめられているからこそ、ある種の安心感を持って読み進められる。
しかし、予定調和的に話が進むにつれ、逆に不安が生じてくる。本当にこのまま進んでいくのか? この穏やかさが保たれるのか? 何かが起こりそうな不穏な気配、予感がじわじわと広がっていく。
主人公を始めとする少女少年たちの明るさと謎に包まれた一軒家の暗さとが作り出す不思議な明暗。まさに、この明暗、光と闇の混在がこの物語の最大の特徴と言える。

少し脱線するが、これが夏休みの話だというのも意味深い。子どもが夏に見知らぬ土地へ行き、冒険する話は多いと思うが(たぶん)、なぜ夏なのだろう。夏休みがあるからという物理的な問題は別にして、夏という季節特有の明るさに理由があるのだろうと思う。『スタンド・バイ・ミー』にしても『夏の庭』にしても、燦々と太陽が照りつける光に満ちあふれた雰囲気のなかで、少年たちは暗い現実に直面する。以前、山川方夫の記事を書いた時にも同じようなことを指摘したが、夏という明るい空気の中に暗いものを置くことによって、その暗さがより強調されるのだ。
そういった意味では、この物語の主人公フー子も必然的に、夏の“明”の中で“暗”を発見するのである。

さて、本線に戻ろう。
光と闇の混在が最大の特徴だとして、では最大の魅力は何か。
それは作中に登場する“場”である。

この作品の舞台となるのは架空の港町、汀舘(みぎわだて)である。しかし、作中の風景描写を見ても作者の高楼さんが函館出身であることを鑑みても、汀舘は函館だろう。
汀舘は古くから異国の船を迎え入れた港町とされ、物語全編に渡ってその街並みの美しさが描かれる。

 坂を少しおりただけで、海はぐんと近くなった。左手に見える、赤と白の縞に塗られたドックは、巨大な磁石を海につきたてたようだ。右手には、ずっとずっと遠くの山並みが、海の向こうに青くかすんでいる。そして、色紙をちぎったような鮮やかさで岸に群れる、何叟もの船が、その光景の中心を飾っている。(高楼方子『時計坂の家』リブリオ出版、1992年10月、93頁)

 やがてフー子は、屋根の赤い教会と、緑色の教会とが、ふたつとも視野に入るところまで来た。そのあたりは、汀舘の、いちばん美しい一画かもしれなかった。石畳も街燈も、道に沿った黒い鉄柵からあふれだすたわわな緑葉も、その一画に建つ堅牢な建物とみごとに溶けあい、おだやかな朝に輝いている。(同書、93頁)

この作品に限らず、高楼さんはノスタルジックな風景描写を得意としている。その景色に馴染みのない人間でも、なぜか既視感を覚えノスタルジーを掻き立てられる。そういった場の存在感を見事に描き出すのだ。

その描写力が最大限に生かされているのが、祖父の家に突然現れる不思議な庭である。

 絡あいながら生い繁る、鬱蒼とした緑の垣根にはさまれて、フー子は立っていた。どちらの垣からも、不格好なほどに渦を巻いた茶色の蔓がとびだしていて、今にも頬にふれそうだった。ところどころに、カッと見開くように咲いているのは、やはりあの、時計と同じ花で、コチコチコチと時を刻みながら、おしべとめしべが回っていた。左右の植物はみな、フー子の背よりも遥かに高くのび、空にいたっていたが、その空には、淡い霧がかかっていて、先はかすんでいた。霧は、ほんのり薔薇色に見えた。(同書、54頁)

この庭は踊り場の窓の外に突如として出現し、フー子を誘う。まさに魔法としか言いようのない非現実的、空想的な庭だ。しかし、ただ美しく魅力的なだけではない。実在する場のごとし重厚な存在感があるのだ。
この庭のなかでフー子は美しいものを見る一方、事故死したとされる祖母の死の謎にも迫る。美しい場にひそむ闇、暗い過去。それが真実味を持って迫ってくるのは、実在感のある“場”の力があってこそだろう。

少女の一夏の成長譚『時計坂の家』。どこか懐かしい夏の雰囲気を、ぜひ夏の終わりのいま味わってほしい。


【ブログ内関連記事】
夏に読みたい小説・私的10撰 2014年7月8日  記事内で高楼方子『時計坂の家』を取り上げています。


時計坂の家
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高楼 方子
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by hitsujigusa | 2013-08-30 19:32 | 児童文学 | Trackback | Comments(0)

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5月末に始まった13/14シーズンの新プログラム情報シリーズ?も、はや3か月……。北米やヨーロッパなどでは小さな大会が行われていて、本格的にではないものの、五輪シーズンが始まっているんだなーという感慨があります。

さて、今回は第5弾ですが、まずは羽生結弦選手の新プログラムについて。
ショートプログラムは昨季と同じ「パリの散歩道」、フリーはニーノ・ロータ作曲の「ロミオとジュリエット」だそうです。

◇◇◇◇◇

羽生、五輪は「ロミオとジュリエット」で フィギュアスケート

 フィギュアスケートの羽生結弦(18、ANA)は20日、練習拠点のカナダ・トロントで、2013~14年の五輪シーズンのフリー曲をニノ・ロータ作曲の映画「ロミオとジュリエット」と発表した。ショートプログラム(SP)は昨季と同じ「パリの散歩道」。

 別の作曲家の「ロミオとジュリエット」でフリーを演じ、12年世界選手権で銅メダルを獲得した。「五輪は4年間の集大成。11~12年シーズンは東日本大震災直後で、特別に印象のあるシーズンだったし、物語もつかんでいる。震災も含めた集大成にいい」と話した。

 SPはしっくりする曲が見つからなかったそうで、「昨季の世界選手権でミスして、完成型を見せられなかった。点数は出ていたので、コーチと相談して決めた」。(トロント=原真子)

日本経済新聞 2013年8月21日 10:45

◇◇◇◇◇

SPは引き続き「パリの散歩道」とのことですが、私としては正直新しいものを見たかったので少し残念に思いました。とても素晴らしいプログラムですが、ショートの歴代最高得点を更新したプログラムなわけですし、そういった意味ではほぼ完成に近い形を演じられたのではと思うので、このプログラムで表現できるものとしては出し尽くされてる感が個人的にはあります。確かに最後の試合でミスはしましたが、それでもそれ以前の演技で完璧に近い素晴らしいものを見た!という満足感があるので……。
とは言え、それは一ファンの勝手な感想で、羽生選手本人からしたら納得いかない部分は多くあるでしょうし、それを出し切りたいという強い思いがあるのでしょう。
少し気になるのは、しっくりする曲が見つからなかったため、という理由です。これを五輪の舞台でやりたいんだ!という積極的な選曲なら良いと思うのですが、妥協した結果なのかな?とちょっと感じたので。点数が出ているプログラムだからという理由も、もちろん五輪で結果を求めるのは当然なのですが、せっかく4年に1度しかない大舞台なのだから、羽生選手の、今自分はこれを表現したいんだというのも見たいなあという気もします。
ですが、その分フリーの「ロミオとジュリエット」に羽生選手の数年間の全てが凝縮されるのかもしれないと期待が募ります。
11/12シーズンのフリー、「ロミオ+ジュリエット」はレオナルド・ディカプリオ主演バージョンのサントラでした。しかし、今季はニーノ・ロータ作曲のもの。こちらの方がよりフィギュア界では多用されていて、小塚崇彦選手や宮原知子選手も滑っていますね。
以前に使用した曲をもう1度やるというのはよくあることですが、同じストーリー、テーマのものとはいえ、違う作品、音楽ですので、再挑戦かつ新しい挑戦と言えそうです。2シーズン経って、どう表現が変化しているのか、ぜひ進化したロミジュリを見せてほしいなと思います。

さて、ここからは海外選手。

カロリーナ・コストナー選手は、8月5日、自身の公式サイトでSP、フリー、EXの曲名を発表しています。

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SPはドヴォルザークの「ユーモレスク」、フリーは「シェヘラザード」、EXは「イマジン」です。
コストナー選手のドヴォルザークと言えば、初めて世界選手権でメダルを獲得した「ドゥムキー」がドヴォルザークの曲。代表作の一つとも言えるプログラムだと思うので、再びのドヴォルザーク、楽しみですね。
そしてフリーは大定番曲にしてきました。昨季のフリーも「ボレロ」という王道でしたが、節目となる今季も王道。独特の感性、表現センスを持つコストナー選手ですので、また他のスケーターのものとは一味違う「シェヘラザード」になっているのではないかと想像が膨らんで、今からわくわくします。

そして、現在世界選手権3連覇中のパトリック・チャン選手。

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SPは昨季に引き続き、ラフマニノフの「エレジー」、フリーはヴィヴァルディの「四季」とのことです。
こちらも羽生選手同様、SPは2季続けて同じ曲。以前チャン選手はインタビューで、不器用だから?だったか慣れるのに時間が掛かるから?だったかはうろ覚えで確かでないのですが、そういった理由で同じプログラムを2季続けるのだ、といったことを語っていました。
一概にプログラムを2シーズン続けることが悪いとは言えませんが、チャン選手の場合、ほぼやり切ったと思えるくらい完璧な演技をしても、そのプログラムを次のシーズンに持ち越すことがままあるので、そういった点では疑問を感じます。「エレジー」に関しても、世界選手権でのパーフェクトかつ圧倒的な演技が強烈に印象に残っているので、もう充分なんじゃないかなという感じがします。まあ、ロシア開催の五輪なのでなんとなく予想はしていましたが。
フリーの「四季」は06/07、07/08シーズンのフリープログラムです。
チャン選手は「四季」について、“my greatest hits”であるとインタビューで述べています。トリノ五輪の金メダリスト荒川静香さんもご自身が世界選手権女王になった時のプログラム「トゥーランドット」を五輪で使用しましたし、今季で言えば、浅田真央選手も彼女の代表作と言える「ノクターン」を再び演じます。五輪という最高の舞台でスケーター自身が好きな曲、自信のある曲を演じるというのは、五輪にかける想いの強さの表れとも言えそうです。
ただ、以前チャン選手が滑った「四季」はローリー・二コルさんの振り付け。今回はデヴィッド・ウィルソンさんの振り付けになります。また、6シーズンを経ての彼自身の成長による表現の違いもあるでしょう。
ところで、チャン選手はカナダで開催された大会「ソーンヒルサマースケート」に参加、フリーのみ披露しています。この大会には織田信成選手、中村健人選手も参加していて、それぞれ1位、3位という結果を残しています。
織田選手はSPで4回転ジャンプを失敗したものの、フリーでは4+3のコンビネーションを成功させ、249.65点で優勝。小さな大会ですのでGPシリーズ、世界選手権などの大きな国際大会とは単純に比較できませんが、それでもスタンディングオベーションだったということなので、織田選手にとってはなかなか良い滑り出しだったのではないかと思います。
一方、チャン選手はミスが複数あったようで、良い出だしとはいかず。とは言え、シーズン終盤に合わせてしっかり調子を上げる選手なので、彼が絶好調の時どんな「四季」が見られるのか楽しみです。

さて、次はバンクーバー五輪のチャンピオンの話です。

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バンクーバー五輪以来、競技会には参加していないエヴァン・ライサチェク選手。ですが、ソチ五輪出場の意欲は大いにあるようで、SPは「ブラック・スワン」、フリーはバレエ「ドン・キホーテ」であると明かしています。振り付けはローリー・二コルさん。
今季のプログラムの顔ぶれを見ると、やはりロシア音楽の使用が目立つのですが、ライサチェク選手の「ブラック・スワン」にもその狙いがあると思われます。
そしてフリーは、12/13シーズンに使用する予定で準備されていた「サムソンとデリラ」を引き続き使うのではないかという情報もあったのですが、新たなプログラムとして「ドン・キホーテ」を用意していることがわかりました。ライサチェク選手のエキゾチックな顔立ち、力強いたたずまいと音楽のイメージが合っているように感じますね。選手としてはここ数シーズン活動していないライサチェク選手、かなり未知の部分が多いですが復帰が待ち遠しいですね。

そして、ライサチェク選手の新プログラムについて報じた記事の中に、昨季の世界選手権で銀メダルを獲得したデニス・テン選手のプログラムについても言及がありました。
SPはサン=サーンスの「死の舞踏」、フリーはロシアの作曲家ショスタコーヴィチのバレエ「お嬢さんとならず者」、どちらもライサチェク選手同様二コルさんの振り付けです。
テン選手とライサチェク選手はアメリカの名コーチフランク・キャロルさんの同門。10/11シーズンからキャロルコーチの指導を受けるテン選手、ジャンプの不安定さが目立つ時期もありましたが、昨季の世界選手権ではフリー1位、トータルでも優勝したチャン選手に迫る高得点で、見事に銀メダリストとなりました。
だからこそ今季は、彼の実力は確かなものなのか、安定したものなのか試されるシーズンになるでしょう。メダリストとして見られ、期待されるというのは苦しさもあるでしょうが、自分らしくマイペースに頑張ってほしいと思います。

カナダ女王、ケイトリン・オズモンド選手の新プログラムについても判明しています。
SPはミュージカル『スイート・チャリティー』より、フリーは「クレオパトラ」だそうです。「クレオパトラ」というのが、一つの映画のサントラを使用するということなのか、それともいろんな楽曲を編集してクレオパトラのイメージを作り出すということなのか(安藤美姫選手のように)、詳細はよくわかっていません。
オズモンド選手は昨季彗星のように現れ、一躍注目を浴びることとなりましたが、シーズン後半はミスが目立ち、前半の勢いをキープすることができなかったという印象があります。
シニア2年目となる今季は、(いろんな意味で)さらに難しさがあると思いますが、また昨季とは違うオズモンド選手の進化が見られるといいなと期待しています。

アメリカの男子選手2人の新プログラムについて連続で。
現全米チャンピオンのマックス・アーロン選手は、SPがパスカーレ・カメレンゴさん振り付けの「ある恋の物語」、フリーはローリー・二コルさん振り付けの「カルメン」になるそうです。「カルメン」に関してはクラシックな部分とモダンな部分のある、コンテンポラリーなアレンジのものだとインタビューで語っています。
そして、全米2位のロス・マイナー選手は、SPがバーブラ・ストライサンドさんの「追憶」。フリーは「ボストン・ストロング」、マイケル・W・スミスさんのアルバム『Glory』の複数の収録曲を用いたオリジナル編集になるようです。フリーに関しては、マイナー選手が住むボストンで起きたボストンマラソン爆発事件を受けて作られ、ボストンをトリビュートしたプログラムになっているそうです。彼自身ショックを受けたでしょうが、プログラムという形で故郷に元気を与えたいという試み、元気を与える側になるのだという意気込みは、とても素晴らしいなと感じました。

最後に、アリッサ・シズニー選手。フリーは以前お伝えしたように「風と共に去りぬ」ですが、SPについても、フランツ・リストの「コンソレーション第3曲」であることがわかりました。フィギュア界では馴染みのない曲ですが、しっとりしたピアノ曲ということでシズニー選手の得意分野と言えるでしょうね。

ということで、新プログラム続報・その⑤はとりあえず以上です。
こうしてこの3か月の流れを見てみますと、アメリカ選手の情報が特に多いですね。ヨーロッパの選手はちょっと少ないです。不確かな情報ならいっぱいあるのですが、信頼できる情報元があるかどうか確かめてからでないと怖いので。このブログに掲載している新プログラム情報は、そういった裏付けがあった情報のみとなっています。その分、スピード感には欠けますが……。
まだもうしばらく、このシリーズにお付き合い下されば幸いです。


:この記事内に掲載した写真は全て、International Figure Skatingの公式フェイスブックページから引用させていただきました。

【参考リンク】
icenetwork.com:News:Chan draws on past in effort to win gold in Sochi パトリック・チャン選手の近況、新プログラムについて書かれた記事です。
Lysacek opens third Olympic bid at Champs Camp|icenetwork.com エヴァン・ライサチェク選手、そしてデニス・テン選手の新プログラムに関する言及がある記事です。
Miner pays tribute to Boston with 'Glory'-ous free|icenetwork.com ロス・マイナー選手の新フリープログラムについて書かれた記事です。

【ブログ内関連記事】
浅田真央選手、五輪シーズンのプログラム発表
鈴木明子選手、今シーズンのプログラム発表&各選手の新プログラムについて
高橋大輔選手、今シーズンのプログラム発表&アメリカ女子3選手の新プログラムについて
各選手新プログラム続報&ジャパンオープン出場者追加発表
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by hitsujigusa | 2013-08-25 01:58 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

ともだちは実はひとりだけなんです (Billiken books)



平岡あみさんは1994年生まれの詩人・歌人だ。お母様も詩人で、その影響もあってか子どもの頃から詩を書き始めた。『詩とメルヘン』『MOE』といった雑誌、産経新聞に投稿、掲載されるようになった。

私は『詩とメルヘン』や『MOE』で彼女の詩を見ていたので、この歌集のことを知った時、昔懐かしい人に久しぶりに再会したような気持ちになった。
子どもの頃(小学校低学年くらい)の彼女の詩は、子どもらしさがありつつも子ども離れした冷静な目もあって、すでに完成されているという印象を受けた。たとえば、「こもちししゃも」という詩。


おさかなは
だいすきだけど

こもちししゃもは
たべられません

おかあさんとこども
いっぺんになんて


(『詩とメルヘン』2002年8月号)


『詩とメルヘン』の編集人であるやなせたかしさんは、「唇に真珠を含んだ天性の詩人である」(同誌、2002年8月号)と評した。
それから10年近く経って、少し大人になった彼女の作品を見て、また驚いた。
題材にするもの、作風に変化はあれども、身近な物事をとらえるその目は10代の女の子らしさもあり大人の女性のようなクールさもあり、子どもの頃と変わらない。それどころか想像以上の進化を遂げている。

歌集は、父のこと、母のこと、恋愛のこと、自分自身のこと、と内容ごとに章立てされ、さらに詠んだ年齢順に並べられている。なので彼女の成長、それに伴う心の変化も読み取れておもしろい。
でも一貫して変わらないのは、やはりクールさ、だろうか。と言っても冷たい感じではなく、ぬくもりが伝わってくる。言い換えれば、スパイシーな感じ。


捨てられた妻と捨てられた娘が父親のことでまたけんかする

父と母セットで語ることなどは不可能我が家は複雑なので

家中が母の想いでいっぱいに二段ベッドの上に避難する

暗い部屋で本を読んでる母がいる目が悪くなるよ介護はわたし

彼氏という男が欲しいのとちがうすきっていうその気持ちがいいんだ

雪なのに彼が送ってくれました雪だからとも言い換えられます

垣根あれば乗り越えたくなるものでわたしだってあの薔薇だって

あとどれくらい子供でいられるのかお風呂上りに裸でおもう

寝不足で二重になっただけなのに先生からは整形疑惑

渋谷には誰かいるから出かけますその空気に触れるだけでいい


(平岡あみ・短歌『ともだちは実はひとりだけなんです』ビリケン出版、2011年9月)


奇をてらった歌ではないし、特別新しいことを題材にしているわけでもないが、はっとさせられる。それは、当たり前すぎて気づかないことを描いているからだと思う。
暗い部屋で本を読む母親を見たり、風呂上りに自分の体を眺めたり。日常の中で取り立ててじっくり考えたり見つめたりするほどのものでもないささやかな出来事が、短歌になることによって色を変え、姿を変える。
声高に何かを言うわけじゃない。でもピリリッと刺激がやって来て、ピリピリとした後味を残す。

そんな短歌の魅力をさらに引き立てるのが宇野亜喜良さんの絵。
読み進めていくうちに、大人っぽいまなざしの少女の絵が、平岡あみという少女そのものではないかと思えてくる。彼女の詩世界を体現するような絵だ。

このお二人が初めてコラボした詩集、『ami〈アミ〉』もまた、おすすめ。


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by hitsujigusa | 2013-08-22 01:01 | エッセイ・評論・その他 | Trackback | Comments(0)

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【収録作】
「夏の葬列」
「待っている女」
「お守り」
「十三年」
「朝のヨット」
「他人の夏」
「一人ぼっちのプレゼント」
「煙突」
「海岸公園」


“夏”を感じさせるミュージシャンと言えば、サザンとかTUBEとかいろいろいるわけだが、小説家なら誰を思い浮かべるだろう? 私にとってそれは、山川方夫、その人である。
山川方夫の名を知る人は現代ではそう多くない。芥川賞に4度、直木賞に1度、候補に挙げられ、“万年芥川賞候補作家”と揶揄されることもあったようだが、それでも昭和30年代において評価の高い作家であったのは間違いないだろう。
その生涯についてはこの本の解説、年譜に詳しく書かれているが、穏やかでありながら波乱万丈という不思議な人生を送ったように見える。
生まれは裕福で、父は鏑木清方を師とする日本画家、母は京都の染物問屋の娘。幼稚舎から大学まで慶応というまごうことなきお坊ちゃんである。ところが14歳の時に父が急死し、方夫は突然家長となる。
大学在学中に作品を発表し始め、大学院生時に文芸雑誌『三田文学』の編集者となり、多くの新人を発掘。編集から退いたのち執筆活動を本格化させ、次々と芥川賞候補となる。
しかし、いよいよこれからという時、交通事故によって亡くなる。34歳だった。

そんな彼の人生が、作品には不思議なほどに反映されている。
山川方夫は“一瞬の日のかげり”に敏感な作家であったと、川本三郎氏は鑑賞で評している。

 夏の暑い日盛りに突然日の光がかげることがある。(中略)薄い暗がりの中で周囲の空気が心なしか冷たく感じられてくる。それまで意識していなかった自分の心のなかの暗がりが急に意識されていく。
 しかしその日のかげりは長くは続かない。雲が去ってまた日の光が強く照りつけてくる。ただそのときわれわれが日の光を見る目は前とは少しだけ違っている。明るい日の光もまたかげる瞬間があることをわれわれは考えるようになっている。
 山川方夫は誰よりもこの日のかげりに敏感だった作家に思える。
(山川方夫『夏の葬列』集英社、1991年5月、238頁)

平凡な日常の中の瞬間的にかげるある瞬間を、山川方夫の作品は鋭くとらえ、切り取る。そのかげりは一瞬のささやかなものだが、漂う雰囲気が穏やかであるだけに余計に暗みは濃い。
また、川本氏は山川方夫の作品に“夏”と“海”が多く登場するとした上でこう述べている。

 日ざしがふつうの季節より強く感じられる夏と同じように日ざしがふつうの場所よりも強く感じられる海辺が選ばれることで一瞬の日のかげりがより強く印象づけられる。(同書、241頁)

この『夏の葬列』には、そうした“夏”を描いた短編が多く収録されている。
この中では、「夏の葬列」「十三年」「朝のヨット」「他人の夏」がそれにあたる。どれもいわゆるショートショートである。長くても10ページほどにしかならない。

「夏の葬列」は山川方夫の作品の中でも特に有名なのではないだろうか。国語の教科書に掲載されていたことがあるようだ。(今もだろうか)
物語の出だしはこうだ。ある男が海辺の小さな町を十数年ぶりに訪れる。男は戦時中、疎開児童としてこの地に住んでいたが、ある嫌な思い出があって遠ざけていたのだった。嫌な思い出、それは突然来襲した艦載機から自分を助けようとしてくれた少女を突き飛ばし、殺してしまったという罪の意識だった―。
戦争に関連した内容なので重さはあるが、それでもどこかさらりとした独特の軽さもある。苦いものと優しいものが混在する何とも形容しがたい読後感の作品と言える。

「十三年」は、喫茶店で友人と待ち合わせている男が、因縁のある年上の女性と再会して―という話。
ただそれだけの話といえばそれだけなのだが、ちょっとしたしかけがあり、「夏の葬列」同様ミステリーめいた作品になっていて、おっ、と思わせられる。たった数ページの中に人間の人生の明暗を凝縮していて、書かれていないところまで想像させるような広がりがある。

一方、「朝のヨット」は、ヨット乗りの少年とその恋人の少女の純愛的な小品。初夏の海を舞台にしていて、作者の得意な“海”が魅力的に美しく描写されている、まるで海が主役のような作品。

そして、「他人の夏」。これは私が初めて読んだ山川作品であり、個人的に思い入れのある作品。“夏”、“海”という山川方夫の得意分野が両方いかんなく発揮されている。
主人公はガソリンスタンドでアルバイトする中学生の慎一。彼が住む海辺の町は都会人の避暑地として人気があり、夏は夜の間も騒々しい。慎一はある日、人の少ない深夜の海で久しぶりに泳ぐことにしたのだが―。
ひょんな出会いを描いた作品だが、日常の場面からある瞬間を機に一転する、その書き方が、さりげないものでありながら強烈に印象に残る。

このように山川方夫は“夏”を多く描いたわけだが、そこにはある特徴がある。それは、日本的な湿っぽさが全くないということだ。

 やがて、彼はゆっくりと駅の方角に足を向けた。風がさわぎ、芋の葉の匂いがする。よく晴れた空が青く、太陽は相変わらず眩しかった。海の音が耳にもどってくる。(「夏の葬列」、同書、16頁)

 やはり、海は親しかった。月はなかった。が、頭上にはいくつかの星が輝き、黒い海にはきらきらと夜光虫が淡い緑いろの光の呼吸をしている。
 夜光虫は、泳ぐ彼の全身に瞬きながらもつれ、まつわりつき、波が崩れるとき、一瞬だけ光を強めながら美しく散乱する。
(「他人の夏」、同書、58頁)

日本特有のじめじめとまとわりつくような暑さ、うだるような感じがない。もちろん日本を舞台にしているのだが、からっと乾いていて、爽やかささえある。カリフォルニアのような雰囲気だ。それゆえに、日本でありながら日本でないというどこか浮世離れした風情が漂う。
これは、汗とか蝉時雨とか暑さを連想させるようなものをあえて描いていないという仕掛けのせいもあるだろうが、山川方夫が少年時代を湘南の町で過ごしたというのも大きいように思う。
湘南と言うと、サザン、サーフィン、太陽族、別荘などしゃれたイメージがある。それらは共通して垢抜けていて、旧来の日本的な海辺の光景とはかけ離れている。やはりそこには湿っぽさはない。
山川方夫の原風景としての湘南が、これらの作品には反映されているように感じる。

さらに言えば、彼の作風が元々都会的だというのもある。「他人の夏」には、まさに避暑地=湘南を訪れる都会客たちの“都会人らしさ”が描かれているが、田舎の風景を描いた「夏の葬列」でさえ、田舎独特の野暮ったい感じがない。
余談だが、先に挙げた川本三郎氏は、江國香織さんのショートショート集『つめたいよるに』の解説で、ショートショートの名手といわれた山川方夫の世界を思い出す、と述べている。確かに都会的な洗練された作風、日本なのに日本っぽくない雰囲気はよく似ている。
そういった意味では、村上春樹さんの初期の短編なんかにもちょっと似ているかもしれない。

34歳の時、山川方夫は結婚し、自分がかつて暮らした湘南の町、二宮に居を構える。
しかし、1年もしないうちに方夫は二宮駅前でトラックにはねられその人生を終える。突然父を亡くした二宮で、彼もまた突然死んだわけである。
早逝したことはあまりにも残念でならないが、湘南、そして夏を描いた作品たちには、彼の人生が詰まっているような気がする。

いつ読んでもおもしろいが、特に夏にこそおすすめしたい一冊である。


【参考リンク】
「山川方夫」(2012年8月27日(月)15:53 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』

【ブログ内関連記事】
夏に読みたい小説・私的10撰 2014年7月8日  山川方夫『夏の葬列』を記事内で取り上げています。


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by hitsujigusa | 2013-08-14 02:26 | 小説 | Trackback | Comments(0)

新装版 ムーミン谷の彗星 (講談社文庫)



【あらすじ】
長い雨が降り続いたムーミン谷。雨が上がるといろんなものがどす黒くなっていた。「地球がほろびる」というじゃこうねずみの言葉に、ムーミントロールやスニフはパニック。そんなふたりを落ち着かせるために、ムーミンパパは天文台へ行くことを提案。ムーミントロールとスニフは天文台があるおさびし山へと旅立つが……。

今日、8月9日はムーミンの日。作者のトーベ・ヤンソンさんの誕生日。
ということで、今回はムーミンシリーズの第1作、『ムーミン谷の彗星』です。(

“ムーミン”というと、可愛いキャラクターやファンタジー的なイメージが強いが、この小説版ではかなりシビアなことも描かれている。なにしろ彗星が地球に向かってくるのだ。こんなにシビアなことはない。
しかもこどもだましのシビアさではない。雨が降り続いたり、いろんなものがどす黒くなったり、空気中にりんのにおいがしたり、空が赤くなったり、よくよく考えればものすごくリアルな自然の脅威が描かれている。
この作品に限らず、ムーミンシリーズの魅力のひとつは、こういった自然の描き方だろう。身近な自然や自然現象を美しく描くのはもちろん、彗星や洪水のような恐ろしい自然もきちんと描く。
そうしたところからは、ヤンソンさんの自然に対する敬意が感じられる。
やはり故郷フィンランドの風土が反映されているのだろう。森や湖が点在し、豊かな海にも恵まれたフィンランド。しかし、夏は短く冬は長く、厳しい。自然から与えられるものもあれば、我慢しなければならないこともある。
自然とともに生きるということの大変さ、けれどその幸せが描かれている。
それを最も感じられるのが、彗星が過ぎた後に、干上がった海が戻ってくるシーン。

 ふたりが、だまってすわったまま、まっていると、空の光が、ずんずんつよくなってきました。朝日がのぼりました。しかも、いつもとすこしもかわりのない朝日でした。
 いまは、海がなつかしい海岸にむかっておしよせてきて、日がのぼるにつれて、青く青くなっていきました。波がもとのふかみに流れこみ、底におちつくと、みどり色になりました。
 どろの中にかくれていた、およぐもの、くねるもの、はうもの、すべて海の生きものが、すきとおった水の中へ、おどりあがりました。海草もたちなおり、太陽にむかってのびはじめました。そして、うみつばめが一わ、海の上へとびだして、あたらしい朝がまたやってきたことを、つげました。


いつもの朝や海が見られるということ、いつもの日常が帰ってきたのだという喜びが、ひしひしと感じられる。そこにある自然や日常の風景を慈しむ心を思い出させてくれる場面だ。

日常を大切にするといえば、その精神はまさにキャラクターたちに受け継がれている。
ムーミントロール始めムーミン谷の人びとは、多少あわてはするが、それでもいつもの自分らしさを忘れない。ムーミントロールは彗星なんかパパとママがちゃんとしてくれると言い、スニフは自分が見つけた子ねこを気にかけ、ムーミンママは逃げる時にもデコレーションケーキやバラを持っていく。それどころか、ダンスをしたり、石ころがしをしたり、買い物をしたり、悠長なものである。
でも、それは落ち着いているとかいうのではなく、そうすることしかできないからなんだろうと思う。非常時でも、いつもどおりのことしかできない正直ないきものたち。けれど、正直かつマイペースであることによって、彼らはどんなときでも“自分らしさ”を忘れず、二度と訪れることのないかけがえのない一日一日を、最大限楽しみながら生きている。
なかなか人間には真似できないけれど、ムーミントロールたちは現代人が忘れかけている大切なものを教えてくれるのではないかと思う。


ムーミンシリーズで最初に書かれたのは『小さなトロールと大きな洪水』ですが、この作品はしばしばメインのムーミンシリーズの前日譚として位置づけられることがあり、そのため講談社が出版している日本語版では『ムーミン谷の彗星』が第1作とされています。

:記事内の引用は、トーベ・ヤンソン著『ムーミン谷の彗星』(講談社、2011年4月)からです。

【ブログ内関連記事】
おーなり由子『ひらがな暦 三六六日の絵ことば歳時記』―日常の幸福


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by hitsujigusa | 2013-08-09 00:53 | 児童文学 | Trackback | Comments(0)

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さて、各選手の新プログラムに関する情報がたまってきましたので、整理も兼ねて書いていきます。

まずは、冒頭の写真でお分かりのとおり、リード兄弟の新プログラムについて。
すでにicenetworkでもリード組のプログラムについて言及する記事があったのですが、8月4日、2人の公式ブログで正式に発表がありました。
SPは「踊るリッツの夜」、フリーはゲームの「Shogun」の音楽を使用するそうです。
「Shogun」は昨シーズン、無良崇人選手が使用したことが記憶に新しいですが、この2人がどう表現するのか楽しみですね。同じゲームからといっても、使う部分によって全く印象が異なるでしょうし。
公式ブログでは両プログラムの衣装の写真も掲載されていて、とても美しいものになっています。
日本はアイスダンスの五輪枠を獲得していないので、2人は五輪予選を兼ねたネーベルホルン杯に出場することが決まっています。リード兄弟はすでに今シーズンの初戦を終えていて、まあまあだったとブログで語っています。ネーベルホルンはとても大切な大会になるでしょうが、気負い過ぎずに頑張ってほしいと思います。

そして、同じく日本選手、ペアの高橋&木原組の新プログラムも判明しています。
SPは「サムソンとデリラ」、フリーは「レ・ミゼラブル」。
高橋&木原組は先月行われたアイスショー、「THE ICE」で初めて2人での演技を披露しました。その際にこれらの新プログラムを滑ったということで、「THE ICE」の公式サイトに明記されていました。
今年の1月にペア結成が発表された2人、それから半年ほどでこうして初演技というのは早い仕上がりのように感じます。特に木原選手はペアの経験はないわけですから、相当な猛練習を重ねたのだろうなと思います。
高橋&木原組もリード兄弟同様、ネーベルホルン杯に出場します。これが初戦になるのだろうと思いますが、どのようなデビューになるのか楽しみです。

さて、さらに日本選手の情報です。
今シーズンからシニアに参戦する宮原知子選手も「THE ICE」に出演し、新プログラムを滑っています。
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フリーは「ポエタ」、エキシビションは「マンボ」だそうです。SPについてはまだわかっていません。「ポエタ」といえばステファン・ランビエールさんがかつて滑った曲ですが、そのランビエールさんが「THE ICE」に来ていて宮原選手の演技をじっと見ていたそうです。なので、もしかしたら彼が振り付けたのでは?という情報もあります。
そして、以前当ブログでもフリーの曲名(「序奏とロンド・カプリチオーソ」)についてはお伝えした小塚崇彦選手ですが、こちらも「THE ICE」でSPとEXを披露しました。
SPは「アンスクエアダンス」、EXはウィル・アイ・アムの「Bang Bang」。「アンスクエアダンス」はタイトルのとおり変則的な曲調のジャズナンバー。作曲したのはデイヴ・ブルーベック。以前小塚選手はこのブルーベックがメンバーのデイヴ・ブルーベック・カルテットの代表曲「テイク・ファイブ」を滑っていますので、その流れにある選曲という感じがしますね。私は「テイク・ファイブ」が大好きだったので、この選曲はうれしいです。
さらにさらに、無良崇人選手も同じショーでSPとEXを演技。SPは「Jumpin' jack」、EXは「LOVE NEVER DIE」。SPは村上佳菜子選手のシニアデビューシーズンのSPと同じ曲ですね。フリーの曲名はまだ不明です。

ここまでは日本選手について書きましたが、ここからは外国人選手、主にアメリカのスケーターたちについて。

まず、アシュリー・ワグナー選手は公式サイトなどでSPとフリーの曲目を発表しています。
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SPはピンク・フロイドの「クレイジー・ダイアモンド」、振り付けはシェイ=リン・ボーンさん。フリーはプロコフィエフのバレエ「ロメオとジュリエット」、振り付けはデヴィッド・ウィルソンさんです。
SPがピンク・フロイドということですが、ワグナー選手らしくなくて少しびっくりしました。インタビューではエッジーでセクシーな面を表現したいと話しています。ピンク・フロイドといえばガチンスキー選手が滑ったユニークなプログラムが強烈に印象に残っているのですが……。どんな感じか想像がつきません。
そしてフリー。五輪開催地がロシアですからプロコフィエフという選択には納得がいくのですが、ワグナー選手は最初、この選曲には否定的だったようです。なぜ嫌だったのかはわからないのですが、それでもウィルソンさんが強く勧めたようです。
彼女がブレイクした11/12シーズン、そして昨季と、全て振り付けはフィリップ・ミルズさんでした。そこからガラリと変わるので、新たなワグナー選手が見られるかもしれません。

同じくアメリカの女子選手3人を連続で。
長洲未来選手。SPはガーシュウィン作曲「The Man I Love」、ジャズのスタンダードナンバーですね。フリーは映画『ジェームズ・ボンド』のサントラとのことです。ジェームズ・ボンドのダイナミックさが長洲選手と合っているような気がします。EXは「On Golden Pond」、なんと振り付けはアダム・リッポン選手だそうです。このプログラムは既に「THE ICE」でも披露しています。
クリスティーナ・ガオ選手。SPは昨季と同じ「Close Without Touching」、フリーは映画『天使と悪魔』のサントラです。
グレイシー・ゴールド選手はフリーは5月に発表されていましたが(「眠れる森の美女」)、SPについても、ガーシュウィンの「3つの前奏曲」であることがわかりました。SP、フリー両方、マリナ・ズエワさんの振り付けです(フリーはオレグ・エプスタインさんも携わっています)。SPはアメリカを代表する作曲家ガーシュウィン、フリーはロシアを代表するチャイコフスキーという対比がおもしろいですね。

次は、アメリカの男子選手2人。
ジェレミー・アボット選手は、フリーは以前お伝えしたように「エクソジェネシス交響曲」ですが、新たにわかったSPは「Let Yourself Go」、EXは昨季のフリーをアレンジした「彼を帰して」です。
そして、今シーズンからシニア参戦するジュニアチャンピオン、ジョシュア・ファリス選手は、SPが「リベルタンゴ」、フリーは映画『シンドラーのリスト』です。「リベルタンゴ」は女子選手が使用するのはよく目にしますが、男子選手が滑るのはちょっと珍しいかもですね。

最後は、ロシアのアルトゥール・ガチンスキー選手。
SPは曲名ははっきりと分からないのですが、ジェフリー・バトルさん振り付けの「フラメンコ」、フリーは映画『アンナ・カレーニナ』の音楽を使うようです。
ここ2シーズンは苦しんでいるガチンスキー選手ですが、自国開催の五輪でぜひその姿を見たいなと思います。

まだまだ曲目が判明していない選手は多くいますので、全てのスケーターとはいきませんが、トップスケーターに関しては注目していきたいと思います。


最後に小さな話題を付け加えます。10月に開催されるジャパンオープンについてです。
6月にジャパンオープンの出場者に関する記事を書いた時は、日本チームの女子1名、欧州チームの女子2名が誰になるかまだ決まっていなかったのですが、その後追加発表がありました。
まず、日本の女子1名は、村上佳菜子選手が出場することとなりました。
そして欧州の女子2名のうち、1名はイリーナ・スルツカヤさんに決まりました!スルツカヤさんが日本の大会というかショーに出ること自体が珍しいと思うので、ちょっと驚くと同時にうれしいですね。

ついこの前、国別対抗戦が終わり、シーズンが終了したかと思いきや、あと2か月でジャパンオープン、そしてグランプリシリーズ……。時の流れは速いですね。フィギュア界の節目となる五輪シーズン、始まってほしいような始まってほしくないような不思議な気持ちがします。選手にとってはもうすでに始まっているようなものかもしれませんが。
とにもかくにも、シーズン開幕はそこまで迫っています……。


:冒頭のリード兄弟の写真は、国際スケート連盟の公式Facebookページ「ISU Figure Skating」から、宮原知子選手の写真は、毎日新聞のニュースサイト「毎日jp」で2012年12月23日21:06に配信された記事、「フィギュア:宮原 143センチの体 大きく躍動」から、アシュリー・ワグナー選手の写真は、アメリカオリンピック委員会のオフィシャルウェブサイト「TeamUSA」内のワグナー選手の紹介ページから、それぞれ引用させていただきました。

【参考リンク】
icenetwork.com:News:Wagner hopes to stage triple-triple at Olympics アシュリー・ワグナー選手へのインタビュー記事です。プログラムについての言及があります。
Gachinski gears up for Olympic season with new mindset - Golden Skate アルトゥール・ガチンスキー選手の近況についての記事です。プログラムについても書かれています。

【ブログ内関連記事】
浅田真央選手、五輪シーズンのプログラム発表
ソチ五輪代表選考基準発表&ジャパンオープン、主な出場者発表
鈴木明子選手、今シーズンのプログラム発表&各選手の新プログラムについて
高橋大輔選手、今シーズンのプログラム発表&アメリカ女子3選手の新プログラムについて
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by hitsujigusa | 2013-08-06 01:00 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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フィギュアスケーター衣装コレクション第3回は、2012年世界選手権の女王、5度のヨーロッパチャンピオンに輝いているカロリーナ・コストナー選手です。

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by hitsujigusa | 2013-08-01 17:03 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)