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さて、新プログラム続報シリーズ第7弾ですが、9月も下旬、いよいよ10月ということで、このシリーズは今回で終わりにしようと思います。記事の最後には、このシリーズで言及した13/14シーズンのプログラムをまとめたものを付けますので、ご参考になさって下さい。

まずは、ネーベルホルン杯に出場した安藤美姫選手です。プログラム発表というよりは大会で披露して判明したという感じですが。
SPは「マイ・ウェイ」、フリーは「火の鳥」です。
「マイ・ウェイ」は“わたしの道”ということで、まさに集大成としてふさわしいプログラムだと思います。ネーベルホルン杯での演技を拝見しましたが、ボーカルの入った穏やかな音楽で、今の安藤選手によく合っているなと感じました。
そしてフリーは「火の鳥」。「火の鳥」は安藤選手が初めて世界選手権に出場した03/04シーズンのフリー使用曲です。この音楽で4回転サルコウをぴょんぴょん跳んでいたのが私は強烈に印象に残っているのですが、壮大で情熱的な“火の鳥”のイメージが安藤選手に重なっていて良い選曲ですね。
ネーベルホルン杯では2位、162.86点ということで、良い時と比べればまだまだですが、こうして試合に出場して滑り切ったということが何よりも素晴らしい第一歩だと思います。SPのトリプルルッツ、トリプルループは本来の安藤選手のジャンプに近い見事なものでした。スピンはポジションがシンプルだったり流れたりしていてレベル2~3ばかりでしたが、これからより本来の形に戻っていくでしょう。
何はともあれ、SP、フリーともに、ソチ五輪出場のための最低技術点をクリアし、第一歩を踏み出した安藤選手のこれからがますます楽しみです。


続いて、同じくネーベルホルン杯に出場の織田信成選手。

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フリーとエキシビションについては当ブログでも書いたのですが、SPはまだでした。
SPは「コットン・クラブ」、映画のサントラですね。振り付けはローリー・二コルさんだそうです。確かSPはデヴィッド・ウィルソンさんにお願いしたと言っていたような……。ちょっと謎です。
プログラムはジャズ系ですかね。“コットン・クラブ”自体がジャズで有名なナイトクラブですし。演技はまだ見ていないのですが、織田選手らしい明るい軽快な音楽のようですね。
織田選手は8月にソーンヒルサマースケート、そして今回のネーベルホルン杯とすでに2大会に出場していますが、それぞれ手応えを得た演技内容と言えそうです。
今まで日本フィギュア界を引っ張ってきた選手たちが引退を表明する中、織田選手も今シーズン限りで引退。寂しいですが、織田選手の最後のシーズンが完全燃焼で終わるよう祈っています。


さて、ここからは海外選手5人です。


昨シーズン、大ブレイクを果たしたケヴィン・レイノルズ選手。
SPはAC/DCの「バック・イン・ブラック」「サンダーストラック」、フリーは『Excelsius』より「Excerpts」だそうです。
レイノルズ選手はこれまでのプログラムを見ても、あまり定番曲、メジャーな曲を用いず、マニアックな選曲をしています。その中で自分の世界を作っていて、昨季のフリーはそれが見事に結実した形となりました。
今季のプログラムも有名な楽曲ではありませんが、レイノルズ選手特有の世界を見せてくれるのではないかと期待しています。


昨季の欧州選手権銀メダリスト、フローラン・アモディオ選手はSPがステファン・ランビエールさん振り付けの「ラ・クンパルシータ」、フリーは「マック・ザ・ナイフ」「ラ・ヴィ・アン・ローズ」、フランスのDJグループC2Cの楽曲を使用するようです。
ところで、この夏アモディオ選手はニコライ・モロゾフコーチとの師弟関係を解消し、練習拠点を母国フランスに変更しました。新たなコーチは、ブライアン・ジュベール選手やマエ=ベレニス・メイテ選手などフランスのトップスケーターたちを指導するカティア・クリエコーチ、そして以前浅田真央選手のアシスタントコーチをしていたシャネッタ・フォレコーチとなりました。
3シーズンに渡ってモロゾフコーチに師事してきたアモディオ選手ですが、いまいち殻を破れていない、本当の意味でのブレイクが出来ていないという印象を持っていました。ですので、この決断は良い判断だと思います。モロゾフコーチ自体がここ2、3年は落ち目と言ったらあれですが、かつての輝きを失っているように思えるので。
五輪シーズンのコーチ変更はリスクもあるでしょうが、母国に戻ることで良い効果も得られそうですね。また、振り付け師も変わりますから、今までとは違ったアモディオ選手が見られるかもしれません。

同じくフランスのブライアン・ジュベール選手。
SPのみになりますが、ピアソラの「オブリビオン」「五重奏のためのコンチェルト」だということです。ジュベール選手のタンゴというのはなかなかないので、どういう感じなのかわかりませんが楽しみですね。
ジュベール選手も今年で29歳、今季で引退ということになるでしょうが、織田選手同様、満足のいく終わり方をしてほしいなと思います。


そしてグルジアのエレーネ・ゲデヴァニシヴィリ選手もネーベルホルン杯に出場し、新プログラムを披露しています。
SPはロシア映画『吹雪』より「ロマンス」、フリーはバレエ『ジゼル』です。
ゲデヴァニシヴィリ選手は今シーズン、これまで師事していたブライアン・オーサーコーチから、コンスタンティン・コスティンコーチ、エドゥアール・プリナーコーチにコーチを変更、練習拠点もカナダからアメリカに移っています。理由としては、より家族に近いところに住みたかったからだそうです。
昨季は欧州選手権で14位、世界選手権はSP29位で初めてフリー進出を逃しました。成績の上で良い結果が出なかったことも、コーチ変更の理由のひとつにはなっているんじゃないかと想像します。
ネーベルホルン杯では総合6位、144.80点でした。採点表を見る限り、複数ミスをしてしまったようで彼女本来の出来ではなかったみたいですね。ですが6位という成績によって、グルジアの女子シングル五輪出場枠を獲得しています。ゲデヴァニシヴィリ選手が五輪後、どういった道に進むのかは分かりませんが、彼女らしい演技ができることを願っています。


最後に、同じくネーベルホルン杯に出場し、見事シニアの国際大会初優勝を飾ったロシアのエレーナ・ラディオノワ選手。
SPは映画『アンナ・カレーニナ』、フリーは映画『フリーダ』です。
ネーベルホルンでは総合188・21点で優勝し、演技内容もほぼミスのないもの、上々のシニアデビューとなりました。まだ14歳のラディオノワ選手、さすがに若いだけあってポンポン跳びまくりますね。浅田真央選手にしても、同じロシアのソトニコワ選手やトゥクタミシェワ選手にしてもかつてはそうでした。表現力やスケーティング技術に未熟さがあるとはいえ、この勢いで来られるとベテラン選手にとっても強敵となりそうです。浅田選手もトリノ五輪に出場できていたら優勝してたんじゃないかと言われるくらいですからね。若さというのは侮れません。
GPシリーズ、ラディオノワ選手はアメリカ大会と日本大会にエントリー、浅田選手との競演となります。いろんな意味で楽しみですね。


ということで、このシリーズは以上となります。ここまでお付き合い下さってありがとうございました。10月5日にはジャパンオープンもありますし、それ以降もちょこちょこ試合内容や各選手の演技について書いていくつもりですので、お暇な時にぜひのぞいてみて下さい。

では最後に、新プログラム続報シリーズで紹介した各選手のプログラムの一覧を掲載いたします。なお、エキシビションは一人の選手で複数ある場合もありますので除外させていただきます。(敬称略)


≪日本≫
浅田真央:SP「ノクターン第2番」ショパン フリー「ピアノ協奏曲第2番」ラフマニノフ
高橋大輔:SP「バイオリンのためのソナチネ」佐村河内守 フリー「ビートルズ・メドレー」
安藤美姫:SP「マイ・ウェイ」 フリー「火の鳥」
鈴木明子:SP「愛の讃歌」 フリー「オペラ座の怪人」
小塚崇彦:SP「アンスクエアダンス」 フリー「序奏とロンド・カプリチオーソ」
羽生結弦:SP「パリの散歩道」 フリー「ロミオとジュリエット」ニーノ・ロータ
織田信成:SP「コットン・クラブ」 フリー「ウィリアム・テル序曲」
村上佳菜子:SP「スイング・メドレー」 フリー「愛のイエントル」
町田樹:フリー「火の鳥」
無良崇人:SP「ジャンピン・ジャック」
宮原知子:フリー「ポエタ」
キャシー・リード、クリス・リード組:SP「踊るリッツの夜」 フリー「Shogun」
高橋成美、木原龍一組:SP「サムソンとデリラ」 フリー「レ・ミゼラブル」

≪アメリカ≫
エヴァン・ライサチェク:SP「ブラック・スワン」 フリー「ドン・キホーテ」レオン・ミンクス
アシュリー・ワグナー:SP「クレイジー・ダイアモンド」ピンク・フロイド フリー「ロメオとジュリエット」プロコフィエフ
ジェレミー・アボット:SP「Let Yourself Go」 フリー「エクソジェネシス交響曲第3部」
アリッサ・シズニー:SP「コンソレーション第3曲」リスト フリー「風と共に去りぬ」
マックス・アーロン:SP「ある恋の物語」 フリー「カルメン」
グレイシー・ゴールド:SP「3つの前奏曲」ガーシュウィン フリー「眠れる森の美女」チャイコフスキー
長洲未来:SP「The Man I Love」ガーシュウィン フリー「ジェームズ・ボンド」
アグネス・ザワツキー:SP「セックス・アンド・ザ・シティ2」 フリー「ラ・クンパルシータ/ジェラシー」
アダム・リッポン:SP「カルメン組曲」 フリー「牧神の午後への前奏曲」
ロス・マイナー:SP「追憶」 フリー「ボストン・ストロング」
クリスティーナ・ガオ:SP「Close Without Touching」 フリー「天使と悪魔」
ジョシュア・ファリス:SP「リベルタンゴ」 フリー「シンドラーのリスト」

≪カナダ≫
パトリック・チャン:SP「エレジー」ラフマニノフ フリー「四季」ヴィヴァルディ
ケヴィン・レイノルズ:SP「バック・イン・ブラック/サンダーストラック」AC/DC フリー「Excerpts『Excelsius』より」
ケイトリン・オズモンド:SP「スイート・チャリティー」 フリー「クレオパトラ」

≪ロシア≫
エフゲニー・プルシェンコ:SP「Taka jak ty」オケアン・エリズィ フリー「ゴッドファーザー/アルビノーニのアダージョ/トスカ/タンゴ・アモーレ」
アルトゥール・ガチンスキー:SP「フラメンコ」 フリー「アンナ・カレーニナ」
アデリーナ・ソトニコワ:SP「カルメン」 フリー「序奏とロンド・カプリチオーソ」
エレーナ・ラディオノワ:SP「アンナ・カレーニナ」 フリー「フリーダ」
アリョーナ・レオノワ:SP「オブリビオン/Mr.&Mrs.スミス」 フリー「カルメン」

≪フランス≫
ブライアン・ジュベール:SP「オブリビオン/五重奏のためのコンチェルト」ピアソラ
フローラン・アモディオ:SP「ラ・クンパルシータ」 フリー「マック・ザ・ナイフ/ラ・ヴィ・アン・ローズ/C2C」

≪その他≫
キム・ヨナ:SP「悲しみのクラウン」 フリー「アディオス・ノニーノ」
カロリーナ・コストナー:SP「ユーモレスク」 フリー「シェヘラザード」
ハビエル・フェルナンデス:SP「Satan Takes A Holiday」 フリー「ピーター・ガン/ハーレム・ノクターン」
デニス・テン:SP「死の舞踏」サン=サーンス フリー「お嬢さんとならず者」
キーラ・コルピ:SP「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」ビートルズ フリー「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」
トマシュ・ベルネル:SP「Dueling Banjos『脱出』より」 フリー「オブリビオン/アディオス・ノニーノ/リベルタンゴ/ラ・クンパルシータ」
エレーネ・ゲデヴァニシヴィリ:SP「ロマンス『吹雪』より」 フリー「ジゼル」


:安藤美姫選手の写真は、毎日新聞のニュースサイト「毎日jp」内の記事「フィギュアスケート:安藤美姫が会見…娘が生まれて感謝」から、織田信成選手の写真はInternational Figure Skatingの公式フェイスブックページから引用させていただきました。

【参考サイト】
Folle steps in as Amodio's new coach at Bercy | icenetwork.com フローラン・アモディオ選手の近況、プログラムについて言及した記事です。
On skater's road to Sochi Games, a flight of tears - Olympics - ESPN フローラン・アモディオ選手の近況、フリープログラムについて報じた記事です。

【ブログ内関連記事】
浅田真央選手、五輪シーズンのプログラム発表 2013年5月31日
鈴木明子選手、今シーズンのプログラム発表&各選手の新プログラムについて 2013年7月1日
高橋大輔選手、今シーズンのプログラム発表&アメリカ女子3選手の新プログラムについて 2013年7月12日
各選手新プログラム続報&ジャパンオープン出場者追加発表 2013年8月6日
羽生結弦選手、今シーズンのプログラム発表&新プログラム続報・その⑤ 2013年8月25日
村上佳菜子選手、今シーズンのプログラム発表&新プログラム続報・その⑥ 2013年9月15日
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by hitsujigusa | 2013-09-29 02:54 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

もりのかくれんぼう (日本の絵本)



9月も下旬、秋が徐々に深まってくる頃合いです。ということで、秋にぴったりの絵本10冊をご紹介。私的10撰なので、メジャーなものからマイナーなものまで私の独断と偏見で選んだ秋の絵本です。絵本選びのご参考に。


まずは、こちら。


14ひきのおつきみ (14ひきのシリーズ)

14ひきのおつきみ (14ひきのシリーズ)
【あらすじ】
十五夜の日。14ひきたちは夜にそなえて、木の上にお月見台を作り、おだんごやごちそうを用意。そうして、日が暮れて、月が出るのを待ちます。

いわむらかずおさんの『14ひきのおつきみ』は、森にすむねずみの大家族の日常を描いた“14ひきシリーズ”の1冊。秋絵本の定番と言えるでしょう。
14ひきシリーズはねずみの一家を主人公とすることで、豊かな自然の姿を壮大なものではなく、身近なものとして描いています。一家にとって木や花や虫たちは特別なものではないし、“自然”という感じではない。ご近所さんみたいな感じですね。うまく木や草など森の恵みを利用して、楽しい日常を送っています。こういう自然との接し方はいいなあと思いますし、人間として学べる部分も多くあって、温かな気持ちになれる絵本です。
このシリーズにはほかにも、『やまいも』や『あきまつり』といった秋を舞台にしたものがありますが、私は特に『おつきみ』が印象深いのでこれにしました。もちろん、これ以外も全部良いです。


次は、記事冒頭にも載せたこちら。


もりのかくれんぼう (日本の絵本)

もりのかくれんぼう (日本の絵本)

【あらすじ】
帰宅途中の女の子ケイコは、ひょんなことから不思議な森に迷い込みます。そこにはたくさんの動物たちが隠れていて……。

末吉暁子さんの『もりのかくれんぼう』。これも秋の定番(たぶん)。
秋が深まった黄金色の森の中にたくさんの動物たちが隠れているという内容です。いわゆる“隠し絵”というんでしょうか、黄金色の背景の中に同色の動物たちが紛れ込んでいて、それを発見していくのが楽しい絵本です。見事に森の色と溶け合っているので、子どもはもちろん、大人でも存分に楽しめると思います。
絵は林明子さん。『はじめてのおつかい』『こんとあき』など、ありのままの子どもの姿を描いた名作を生み出している林さんの描写力が、この絵本でも最大限に発揮されています。余談ですが、宮崎駿監督はかつて『はじめてのおつかい』の女の子の描き方を見て感動したそうです。幼い子ども特有の歩き方―まっすぐ立って歩けず、前のめりか後ろのめりになる―がリアルに表現されているから、とのこと。林さんの描く子どもは最も“子どもらしい子ども”と言えるのかもしれません。


秋と言えば月。十五夜はもう終わってしまいましたが、月気分に浸る絵本を2冊。


どこへいったの、お月さま (児童図書館・絵本の部屋)

どこへいったの、お月さま (児童図書館・絵本の部屋)
【あらすじ】
クマくんはお月さまとかくれんぼを始めます。クマくんが木に隠れると、お月さまも雲に隠れて……。

アメリカの絵本作家、フランク・アッシュさんの『どこへいったの、お月さま』。ストーリー自体はシンプルで、主人公のクマくんが月とかくれんぼをするという他愛ないものですが、クマくんが隠れると、ちょうどそれに合わせて月も雲に隠れるので、本当にかくれんぼをしているみたいになるという微笑ましい絵本です。
でも、こういうのは絵本の中だけのお話ではなく、実際に子どもって自然物に対してもこういうふうに接してしまうものなんですね。私自身、子どもの頃はどうして月はどこへ行っても追いかけてくるのかと不思議に思っていました。子どもの何気ない姿、遊びを描いた絵本ではありますが、子どもの特徴を細かく的確にとらえた絵本だと思います。
ちなみに、この絵本もシリーズの1冊で、クマくんを主人公にした絵本がいくつもあります。『かじってみたいな、お月さま』『ぼく、お月さまとはなしたよ』といった月のお話もあるので、そちらも良いでしょう。


月世界探険 (タンタンの冒険)

月世界探険 (タンタンの冒険)
【あらすじ】
ロケットに乗って地球を旅立ったルポライターのタンタン、ムーランサール城の城主のハドック船長、ロケットの開発者のビーカー教授、タンタンの愛犬スノーウィたちは、宇宙飛行の末、とうとう月に降り立ちます。未知の世界を、タンタンたちは探検しますが……。

『月世界探検』は、“タンタンの冒険シリーズ”の1つ。スピルバーグ監督が手掛けて映画化しているくらいなので、それなりに有名なシリーズなのだろうと思います。そのわりに日本ではいまいちヒットしなかったようですが……。
“タンタンの冒険”は、ベルギーの漫画家エルジェさんのバンド・デシネ。バンド・デシネとはベルギー、フランスで親しまれている漫画のことです。なので、厳密には絵本でないのですが、私はほかの絵本と同じ感覚で読んでいたので、あえて含めました。
話としては主人公タンタンたちが月を探検するというもの。でもファンタジーではなく、緻密な科学に基づいたリアルな月旅行です。これが出版されたのが1954年、実際にアポロが月へ行ったのが1969年。15年も前にこんなにリアルな月旅行を描いていたのかと思うと驚かされます。
内容的は子どもには難しいと思います。専門的な知識満載なので。でも、私は子ども時代読んでいて、分からないなりに絵のカラーの鮮やかさとか、キャラクターたちの変人ぶりとか、かなりおもしろがりながら読んでました。
眺める月でなく、サイエンティフィックな月を味わえる本です。この話の前日譚となる『めざすは月』を合わせて読むと、さらに気分が高まります。


5、6冊目は、味覚の秋。ということで、りんごを題材にした絵本。


アップルパイをつくりましょ―りょこうもいっしょにしちゃいましょ

アップルパイをつくりましょ―りょこうもいっしょにしちゃいましょ
【あらすじ】
ある日、主人公の女の子はアップルパイを作ろうと思い立ちます。必要な材料は、りんご、小麦粉、砂糖、シナモン、塩、バター、卵。ところがマーケットはお休み。そこで女の子は材料を求めて、世界へと旅立ちます。まずは小麦粉を求めて、イタリアの麦農場に行きますが……。

アメリカの絵本作家、マージョリー・プライスマンさんの『アップルパイをつくりましょ りょこうもいっしょにしちゃいましょ』。
なんと、アップルパイを作るために世界中を旅してしまうという壮大なお話。どこへ行ったかは、読んだ時のお楽しみなので書きませんが、ヨーロッパからアジア、中南米まで、本当に世界中です。そこまでしなくてもほかのお店に行けばいいのに……と思っちゃいますが、なにはともあれ、発想がおもしろい絵本ですね。
でも、その材料の本場?にわざわざ行くわけですから、こんなに美味しいアップルパイはないだろうと思います。まさに、味覚の秋にふさわしい絵本です。


1こでも100このりんご (えほん・ワンダーランド)

1こでも100このりんご (えほん・ワンダーランド)
【あらすじ】
ある町のくだものやさんに1個のりんごが飾られています。くだものやさんの前をいろんな人が通りかかっては、りんごを見ていろんなことを考えます。

井上正治さんの『1こでも100このりんご』。
ひとつのりんごを巡って、さまざまな人々の多様性みたいなものがうかがえる、ちょっと哲学的なにおいもする絵本です。
たとえば、りんごを見て、良い畑でないと育たないりんごだ、と言う農家の人たち。良い色だという言う絵描きさん。ビタミンがいっぱいありそうだなあと言うお医者さん。みんなこんなきれいなりんごを見て歌を作ったのかなと言う作曲家の女性。
たったひとつのりんごを見ても、見た人が感じることはこんなにも違う。100人いれば100通りのりんごがあるのだという、視点がユニークな絵本。
子どもが読んでも、あんまりおもしろがるタイプの絵本ではないかもしれないけど、シンプルでありながら考えさせられもする良作です。


次の2冊は、ハロウィーンにまつわる絵本。


パンプキン・ムーンシャイン (ターシャ・テューダークラシックコレクション)

パンプキン・ムーンシャイン (ターシャ・テューダークラシックコレクション)
【あらすじ】
小さな女の子シルヴィー・アンは、ハロウィーンで使うかぼちゃちょうちんのためのかぼちゃを採りに畑へ行きます。シルヴィー・アンは大きなかぼちゃを運ぼうとしますが……。

2008年に92歳で亡くなった、アメリカを代表する絵本作家ターシャ・テューダーさんのデビュー作、『パンプキン・ムーンシャイン』。
ハロウィーンというアメリカの文化、風習がありありと伝わってくる絵本です。日本ではハロウィーンというとクリスマス同様にイベント的な扱われ方をしていますが、本場のハロウィーンというのはこういうものなんだというのがよく分かります。アメリカの風土を学ぶという意味でもおもしろい絵本ですね。
ターシャさんの絵は、緻密ではありますが緻密過ぎないというか、どこかふわっとした雰囲気のある絵で、優しさに溢れています。奇抜なストーリーではなく、かつて存在した古き良き田舎の生活、風土というものを大切にする人々のライフスタイルが描かれていて、温かい気持ちになれます。


魔女たちのあさ (えほんライブラリー)

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【あらすじ】
ある森に住んでいる魔女たちは、夜になると起き出します。そうして、こうもりのシチューを食べると、ほうきに乗って夜空へと飛び出して……。

これまたアメリカの絵本作家エドリアン・アダムズさんの『魔女たちのあさ』。
夜起きて朝眠る魔女たちの一日を描いています。なので絵本は全体的に暗めなのですが、魔女たちがとても明るい魔女たちなので、怖い感じはなく、読んでいてこんな魔女なら自分もなってみたいなあと思わせる魔女です。ほうきで曲芸飛行をしたり、月の上で一休みしたり。また、絵的にも青、緑、紫、黒など、いろんな色づかいで夜が魅力的に描かれていて、雰囲気たっぷりです。秋の夜長とよく言いますが、まさにこの季節にぴったりですね。
ところで、『魔女たちのあさ』の作者アダムズさんは、1906年生まれ。この本がアメリカで出版されたのが1971年、当時65歳です。ご存命であれば2013年で107歳ですが……。どうなのでしょう。


最後に、宮沢賢治の絵本を2冊、ご紹介します。


狼(オイノ)森と笊森、盗森 (日本の童話名作選)

狼(オイノ)森と笊森、盗森 (日本の童話名作選)
【あらすじ】
ある秋の日、4つの森に囲まれた野原に、農民たちがやってきます。農民たちが畑を作ること、家を建てること、火を使うこと、少し木をもらうことをしてもいいかと森に訪ねると、森は「いいぞお」と答えてくれました。そうして農民たちはそこに暮らすようになりますが……。

宮沢賢治の『狼森と笊森、盗森』(おいのもりとざるもり、ぬすともり)。
農業に従事していた宮沢賢治らしい童話です。人間たちが自然に対して許可を求め、その上で開拓し生活する。しかし、そうたやすくは話は進まず、人間たちに慢心が生まれ、事件が起こるわけです。自然に対する敬意の気持ちをテーマにした作品ですが、説教臭くなく、それよりは岩手の農民の風土がよくわかる絵本として純粋におもしろいです。
この作品に限らず賢治の童話は、独特の世界を持っていて深いがゆえに、深読みしたくなります。でも、そこまでせずとも、自然の描き方のユニークさやオノマトペの豊かさなど楽しめるポイントがいくつもあるので、それだけでも十分おなかいっぱい、読み応えがありますね。とは言え、やはり読めば読むほど新たな味がにじみ出てきて、いろいろ裏に隠されたものを読んでしまいたくなるんですが。
絵の村上勉さんは、デフォルメされた曲線的かつ細かい絵柄が特徴的な絵本画家・イラストレーターさんです。佐藤さとるさんの「コロボックル」とか、最近では有川浩さんの『旅猫リポート』が有名でしょうか。賢治とのコラボレーションは良い相乗効果を生み出していて、ちょっぴり不気味な感じ、おどろおどろしさが醸し出されています。


どんぐりと山猫 (ミキハウスの絵本)

どんぐりと山猫 (ミキハウスの絵本)
【あらすじ】
ある秋の土曜日、一郎の元にへたくそな字で書かれたはがきが届きます。はがきには、明日面倒な裁判をするからおいでくださいというようなことが書かれ、差出人は山ねことなっていました。翌日、一郎は谷川に沿った道を上へと歩いていきますが……。

『どんぐりと山猫』は、どんぐりたちの裁判に人間の男の子が招かれて行くというもの。人間とそれ以外のものの交流を描いた童話は、先ほどの『狼森と笊森、盗森』もそうですし、『注文の多い料理店』とか『雪渡り』がありますね。そのなかでもこの『どんぐりと山猫』はユーモアあふれる作品となっています。
“どんぐりのせいくらべ”という言葉がありますが、まさにこの作品はどんぐりたちの争い(=誰がいちばん偉いか)を描いています。どんぐり同士ということでおかしみが生まれるわけですが、よく考えたら人間もこれと同じことをやっているわけです。そしてそこには裁判長として君臨する山猫もおり、まさに人間界の縮図となっています。
この作品もまた、他者との比較とか競争意識とか様々な問題をはらんでいると見ることもできるのですが、絵本ですから、まずは秋の雰囲気とか森の不思議さを味わって、それから文章とかセリフ、場面の意味を考えてみるとおもしろいと思います。とは言っても、読んでいるうちに自然と疑問が湧いてきちゃうんですよね、賢治童話は。ちなみに、宮崎駿監督がいちばん好きな宮沢賢治作品はこれだそうです。
ところで、実は私はこの作品を絵本で読んだことはありません。ですので、とりあえず数ある『どんぐりと山猫』の絵本の中で最新のものを挙げましたが、他のどれでも良いと思います。


というわけで、長々と書き連ねてまいりました。ここまで読んで下さった方、ありがとうございます。
秋の絵本10撰、ご参考になれば幸いです。


:記事内の宮崎駿監督に関する部分は、スタジオジブリ、文春文庫編『ジブリの教科書3 となりのトトロ』(文藝春秋、2013年6月)を参考にいたしました。以下にリンクを張ります。


【ブログ内関連記事】
冬に読みたい絵本・私的10撰 2013年12月15日
宮沢賢治の絵本・私的10撰 2014年9月20日  記事内で『狼森と笊森、盗森』を取り上げています。


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by hitsujigusa | 2013-09-21 03:17 | 絵本 | Trackback | Comments(0)

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新プログラム続報シリーズ第6弾です。9月も半ば、日本の選手始め、多くのトップスケーターがすでに新プログラムを発表していますが、まだ公式に明かしていない選手も多いですね。
ですが、もうジュニアのGPシリーズも開幕し、ネーベルホルン杯などの中規模の大会も近づいてきておりますので、このシリーズもそろそろ終わりかなと考えております。
それはともかく、現在の時点で判明している新たな新プログラム情報をお届けしていきたいと思います。

まずは、村上佳菜子選手です。
ショートプログラムは「スイング・メドレー」、フリーは「愛のイエントル」だそうです。

◇◇◇◇◇

フィギュアの村上が練習を公開 今季のプログラム披露

 フィギュアスケート女子の村上佳菜子(中京大)が13日、愛知県の中京大アイスアリーナで練習を公開し、ソチ冬季五輪出場を目指す今季のショートプログラム(SP)とフリーの音楽を流し、2連続3回転ジャンプやステップを披露した。

 SPに選んだのはテンポのいいスイング・メドレーで、18歳の村上は「元気で自分らしい曲。見ている人に楽しんでもらえたら」と笑顔で話した。フリーは映画「愛のイエントル」の作中に使われた曲で、弦楽器の奏でるメロディーに乗って滑る。

 初出場を目指す五輪が控えるシーズンに「目標は五輪に出ること。悔いのないよう努力したい」ときっぱりと言い切った。

共同通信 2013年9月13日 18:59

◇◇◇◇◇

SPの「スイング・メドレー」は、いろんな楽曲を編集して元気の良いプログラムに仕上げたということだと思いますが、具体的に使用した曲名は分かっていません。ですが、テレビで練習の様子を見た限り、ノリノリな感じの振り付けだったので、村上選手が最も得意とするジャンルだなという印象を受けます。
とはいえ、こういう雰囲気の音楽を試合で滑るのはシニアデビューシーズンのSP「ジャンピン・ジャック」以来だと思うので、経験を重ねて表現の幅を広げた今の村上選手がどのようにそうしたプログラムを演じるのか、楽しみです。
そして、フリーは映画音楽。「愛のイエントル」は以前にも誰か使っていたことがあるような気がするのですが、あまり思い出せません。映画自体観たことがないのでどういう音楽かも全く知らないのですが、作曲がミシェル・ルグランさんですから、全体的に優しい曲調でしょうか。
ともかくも、「ヴァイオリン・ミューズ」や「プレイヤー・フォー・テイラー」など、しっとりした音楽も見事に表現できるようになった村上選手ですので、今から期待が募ります。

続けて、日本人選手、町田樹選手です。

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町田選手は複数の取材、インタビューなどでフリーとエキシビションの演目について明かしています。発表がだいぶ前なので今更ですが……。
フリーは昨季に引き続き「火の鳥」、EXはテレビドラマ『白夜行』より「白夜を行く」です。
町田選手は昨季のGPシリーズのアメリカ大会で3位となり、初めて表彰台に登りました。続く中国大会ではその勢いを加速させてGP初優勝、そしてGPファイナルに出場しました。ですが、全日本選手権では本来の力を発揮できず9位。GPシリーズをピークに失速する形となり、世界選手権出場はなりませんでした。
そういった意味で、昨シーズン完成させられなかった「火の鳥」をもう一度、というのは頷けます。また、ロシア音楽でもあるので、あの町田選手の「火の鳥」をロシアの観客たちが見つめるソチで、というのは想像するだけでわくわくします。もちろんその前に厳しい競争が待っているわけですが。
内容的にも、ただ継続するだけではなく変化を意識しているようで、インタビューでは昨季の「火の鳥」は女性的だったので、今季はより力強く男性的にしたいと語っています。
EXの「白夜を行く」は、町田選手本人の振り付けだそうです。昔から『白夜行』が好きで、ドラマの中の曲を気に入り、主人公の心情を存分に表すために自分で振り付けることになったのだとか。元々“パフォーマー”、“アーティスト”として素晴らしい才能を持った町田選手。表現することに対しての強い意気込みが感じられます。将来的にはクリエイターになることを考えているようなので、このプログラムはクリエイターとしての第一歩になるのかもしれませんね。
SPについては公式的な発表はありません。ただインタビューによると、「演じるというより自分『町田樹』の表現」、「町田樹が町田樹を表現してる」「最高傑作」ということなので、否が応でも期待が高まります。
町田選手はすでに8月に行われたアジアントロフィーで今シーズン初戦を終えています。次戦はGP初戦のスケートアメリカ、日本男子勢の争いは厳しいですが、見ているこちらとしては世界レベルのスケーターが多くて嬉しいし楽しいですね。

次はオリンピックチャンピオン2人について。

まずは、トリノ五輪金メダリスト、エフゲニー・プルシェンコ選手。

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SPはウクライナのバンド、オケアン・エルジィの「Taka jak ty」、フリーは「ゴッドファーザー」「アルビノーニのアダージョ」「トスカ」「タンゴ・アモーレ」のメドレーになるそうです。
フリーはこれまでのプルシェンコ選手のプログラムを合体させたメドレー、特に好きなプログラムを選んだようですね。でも、ちょっと盛りだくさんというか、こんなにいろいろ編集してどんな感じになるのだろうと余計な心配もしてしまいますが……。本当の意味での、集大成になるのでしょうね。
昨季の欧州選手権のフリーを棄権して、元々患っていた腰の手術をしたプルシェンコ選手。腰の状態がどのようなものなのか、どれだけ元のレベルに近付いてきているのかはわかりませんが、少しずつゆっくりとトレーニングを進めているようです。
日本勢にとっても強力なライバルになると思うので、これからも注目の存在です。

そして、こちらはバンクーバー五輪の女王キム・ヨナ選手。

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SPはミュージカル『リトル・ナイト・ミュージック』の劇中曲「悲しみのクラウン」、フリーはピアソラのタンゴ「アディオス・ノニーノ」、EXは「イマジン」です。
キム選手のタンゴというのはかなり久しぶりな気がしますね。シニアデビューシーズンの「ロクサーヌのタンゴ」以来でしょうか。あのプログラムを見た時は、年齢にそぐわぬ大人びた雰囲気に驚かされました。それ以来のタンゴということで、どんなタンゴを見せてくれるのか楽しみですね。
ただ、ここ数シーズンのキム選手の演技は、私にはどうもこなしているだけのように見えてしまうのです。何かを伝えたい、表現したいというより、プログラムの要素をそつなくクリアしよう、という……。もちろん主観に過ぎないので、彼女の演技に心から感動する方もいらっしゃるでしょう。
私個人としては、今シーズンこそキム選手の心の底からのもの、心の叫び、みたいなものが見たいなあと思います。

さて、次はロシアの女子選手2人を連続で。
2012年世界選手権の銀メダリスト、アリョーナ・レオノワ選手は、SPが「タンゴ」、フリーが「カルメン」であると明かしています。
「タンゴ」は、前半パートはピアソラの「オブリビオン」、後半パートは映画『Mr.&Mrs.スミス』中のタンゴを合わせたタンゴプログラムになるようです。
そしてフリーは王道中の王道「カルメン」。
これに関連するのですが、ロシアの後輩アデリーナ・ソトニコワ選手はSPが「カルメン」、フリーは「序奏とロンド・カプリチオーソ」なのだそうです。
2人とも「カルメン」を滑るということになりますが、ソトニコワ選手の場合はモダンアレンジ、レオノワ選手はクラシカルなバージョンのようなので、2人の「カルメン」を比べながら見るのもまた楽しいかもしれません。
そしてソトニコワ選手のフリーは、ジュニアチャンピオンになったシーズンのフリーの再登場です。数シーズン経て、ジュニア時代に演じた曲をどのように表現するのか、これも興味深いですね。

最後に、ヨーロッパの男子選手2人を。
現世界選手権銅メダリストであるスペインのハビエル・フェルナンデス選手は、SPが「Satan Takes a Holiday」、フリーがアメリカのテレビドラマ「ピーター・ガン」の音楽とジャズ「ハーレム・ノクターン」を編集したものということです。
SPについてはどういう雰囲気のものかよくわからないのですが、フリーはブルースとジャズだそうです。五輪シーズンではありますが、正統派のクラシックなどではない個性的な選曲には、“挑戦”を感じます。でも、王道のクラシックからコミカルなナンバーまで様々な表現ができるフェルナンデス選手ですので、きっとクオリティーの高いものを見せてくれるんじゃないかなと期待します。
そして、チェコのトマシュ・ベルネル選手。
SPは映画『脱出』より「Dueling Banjos」、フリーは「オブリビオン」「アディオス・ノニーノ」「リベルタンゴ」「ラ・クンパルシータ」の「タンゴ・メドレー」です。キム選手といい、ソトニコワ選手といい、このベルネル選手といい、タンゴ使う人多いですね。例年並みかな?
ここ2シーズンは低迷している感のあるベルネル選手ですが、良い時の演技は本当に印象深いものがあるので、ぜひ復活して最高の演技を五輪の舞台で見せてほしいと思います。

以上の8人の新プログラム情報をお伝えしました。
ロシアの選手とか中国の選手の確かな情報があまりないんですよねー。私が調査下手なだけかもしれませんが……。
では、⑦でまた。


:町田樹選手の写真は朝日新聞のニュースサイト「朝日新聞デジタル」から、エフゲニー・プルシェンコ選手の写真は国際スケート連盟の公式フェイスブックページ「ISU Figure Skating」から、それ以外の写真は「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから引用させていただきました。

【参考リンク】
[Pigeon Post Interview] Tatsuki MACHIDA 町田樹選手 
一意専心 町田樹 (3) [フィギュアスケート企画] - 大阪日日新聞
一意専心 町田樹 (4) [フィギュアスケート企画] - 大阪日日新聞
Plushenko reveals new short program for 2014 - Golden Skate プルシェンコ選手の近況、新ショートプログラムについて報じた記事です。

【ブログ内関連記事】
浅田真央選手、五輪シーズンのプログラム発表 2013年5月31日
鈴木明子選手、今シーズンのプログラム発表&各選手の新プログラムについて 2013年7月1日
高橋大輔選手、今シーズンのプログラム発表&アメリカ女子3選手の新プログラムについて 2013年7月12日
各選手新プログラム続報&ジャパンオープン出場者追加発表  2013年8月6日
羽生結弦選手、今シーズンのプログラム発表&新プログラム続報・その⑤ 2013年8月25日
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by hitsujigusa | 2013-09-15 02:40 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

風の谷のナウシカ 1 (アニメージュコミックスワイド判)



【あらすじ】
“火の7日間”と呼ばれる戦争から1000年経った世界。有毒物質がまき散らされ文明が失われた世界において、地表は不毛の地と化し、瘴気が充満する森“腐海”が拡大を続ける中、人類は腐海の恐怖に怯えながらひっそりと暮らしていた。
辺境の小国“風の谷”の族長の娘ナウシカは、腐海に生息する“蟲”と心を通わせる少女。自治権を保証する代わりに戦の際には戦列に参加せねばならないという大国トルメキアとの盟約のため、身体が不自由な父に代わってナウシカは出陣することが決まっていた。
そんなある日、隣国ペジテの船が風の谷の近くに墜落。ナウシカは救助に向かうが……。


宮崎駿監督が引退した。
それを記念してというわけじゃないが、ちょうど良い機会なので、『風の谷のナウシカ』を取り上げようと思う。

『風の谷のナウシカ』は1982年に『アニメージュ』で連載が始まり、中断を挟みながら1994年に完結した。
連載途中の1984年、作者の宮崎駿氏本人の監督によって映画化され、ヒットし、高評価を得た。
映画は映画でもちろんとても素晴らしいものなのだが、連載中の映画化なので漫画の最初の方のエピソードをシンプルにまとめた内容となっている。そのため映画と漫画は別物と言っていいくらい異なる展開を見せる。
映画のラスト、ナウシカは風の谷に向かって暴走する“王蟲”の大集団に身を投じて暴走を止める。つまり自らを犠牲にして故郷を救うのである。しかし王蟲の力によって、死んだはずのナウシカは奇跡的に蘇る。
この結末に対してプロデューサーを務めた高畑勲氏は、現代を照射する作品になっていないというふうに評している。つまり、映画が現代に対する批評になっていないということだろう。元々はナウシカが王蟲の前に降り立つところで幕を閉じる予定だったのを、死んで蘇るというわかりやすいラストに変更したらしい。哲学的側面に娯楽的側面が勝ったわけである。だが、その分ある種のリアリズムは失われた。

一方、漫画は娯楽性からはかけ離れている。内容はとにかく難しい。全7巻を一度読み通しただけでは全く理解できないし、二、三回でもだめ。十回読み返してようやく一端が理解できるような難しさである。
でも、そういった難解さを考慮しても、この漫画はおもしろい。
何がおもしろいか、何が魅力か、私的意見ながら述べさせてもらう。

1つ目。世界観の緻密さ、リアリティ、生々しさ。
この魅力を言葉で伝えるのは非常に難しい。“腐海”とか“蟲”とか描かれる世界とか、とにかく登場する全てのものにまるで実在しているかのような生々しさがあるとしか言いようがない。こんな世界を見たことがある人などいるはずがないし、頭ではフィクションと了解した上で読んでいるのだが、それでも何か身体に沁みるようなリアリティがあり、単なる作り話と思えない。
描かれている世界は、私たちが生きるこの現代世界から見ればあまりに突飛な世界である。しかしこれは異世界ファンタジーではなく、あくまで産業文明の崩壊から1000年経った世界、つまり近未来ファンタジーとも取れるのだ。この前提があるために、どうしても現在の地球の延長線上にこの世界を見てしまうし、毒ガスをまき散らす“腐海”もリアリティを持って迫ってくる。

2つ目。移動する物語としてのリアリティ。
映画でもナウシカは風の谷から腐海、ペジテへと移動するが、漫画ではそれ以上に遥々移動する。そこには単なる目的地から目的地へと飛ぶような旅とは違う、移動する間の過程が事細かに描かれている。移動には疲労と苦痛が伴う。コルベットや大型船のなかにも生活はある。移動する人間たちの体感が、観念ではなく、身体的な感覚を伴って、読んでいるこちらにも伝わってくる。
そして、地図が付いていることも大きい。こちらが『ナウシカ』の世界地図。

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ハイ・ファンタジーの名作には地図が存在するものが多い。『指輪物語』『ナルニア国ものがたり』『ゲド戦記』の世界三大ファンタジーはもちろん、『ムーミン』『十二国記』『守り人』『西の善き魔女』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』などなど。
どんな突拍子もない設定の世界でも、大地があり、海があり、森、山脈、砂漠、街々があるという地理が示されることによって、私たちが暮らす世界と基盤・条件を共有しているのだという親近感が生まれ、リアリティを感じる。それと同時に、そこに生きるキャラクターたちに対しても生きた人間のような実在感を覚えるのだ。

3つ目。サイエンス・フィクションとしての魅力。
宮崎監督が軍事マニアであることは知られていると思うが、その趣味はこの作品でもいかんなく発揮されている。戦闘機、飛行機、銃などの造形は細密で、あっという間に流れ去っていく映像以上に圧倒されるものがある。
でも、それ以上に私が凄いと思ったのは植物の描き方。作品の重要なモチーフとなるのが“腐海”、その腐海に植生する植物は主に菌類の植物である。胞子が地上に舞い降り、地中に菌糸を広げ、地表に発芽し、巨大に育ち、再び胞子を放出する。そうした植物の生命の仕組みが子どもだましではなく、一つの生命の営みとしてきちんと描かれている。人類の世界とは全く異なる生態系、それが人類にとって救いともなるし脅威ともなる。この作品はただ単に人間を描いたものではなく、人類も含めた多種多様な生命体の生のかたち、在り方を問うたものになっている。

4つ目は絵。
宮崎監督は元々漫画家を目指していたというから、当然画力は尋常でないものがあるのだけれど、いわゆる普通の漫画家の絵とは違うから、普段見ている漫画と同じ感覚で読み始めると最初は少し見にくく感じる。
白い画面はほとんどなく、背景の隅々まで細かく描き込まれている。タッチを重ねた陰影部分は深く、白い箇所とのコントラストが、美しい明暗となっている。
宮崎監督は引退会見でも児童文学に影響を受けたと語っていたが、絵も欧米の児童文学作品の挿し絵のような雰囲気を漂わせている。ご自身の著書の中でも好きな本として挙げていたが、エドワード・アーディゾーニの絵に似ている。
一コマ一コマがひとつの挿し絵のように贅沢で、見応えがあって、美しい漫画だ。

以上が、私が感じた『ナウシカ』の魅力だ。本当はもっといっぱいあるが、言葉にできないしまとまらないのでまとめられることだけ書いた。
哲学的で難解なストーリーだけに、理解には時間が掛かる。『ジブリの教科書』という実に参考になる本もあるが、やはり最初は先入観なしにまっさらな状態で読んでほしい。

最後に。
アニメーションから離れられるというのはあまりにも惜しいが、今までコンスタントに新作を発表し続けてくれただけでもありがたいことだし、同じ時代に生きていて良かったなと思う。
ゆっくり休んでいただきたい気持ちもあるし、いつでもカムバックしてもらいたい気持ちもある。でも、一度決めたことはそう簡単には覆さないだろう。
新作を拝見することは(たぶん)もうできないが、幸いなことに、これまで監督が世に送り出してくれた作品の数々があり、それらを繰り返し見ることができる環境に私はいる。こんなに幸福なことはない。


:記事内の地図の写真は、宮崎駿著『風の谷のナウシカ3』(徳間書店、2008年1月)から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
小川洋子『アンネ・フランクの記憶』―アウシュヴィッツと零戦 2013年7月25日




ジブリの教科書1 風の谷のナウシカ (文春ジブリ文庫)

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by hitsujigusa | 2013-09-10 01:57 | 漫画 | Trackback | Comments(0)

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さて、フィギュアスケーター衣装コレクションも第4弾となりました。
今回はフィンランドのキーラ・コルピ選手を取り上げます。

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by hitsujigusa | 2013-09-05 01:26 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)