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※2015年1月2日、競技結果、採点表のリンクを更新しました。

 全日本選手権2013、女子&ペア&アイスダンス編です。
 女子シングルを制したのは鈴木明子選手。何と13度目の全日本出場で初優勝です。2位には村上佳菜子選手、3位には浅田真央選手が入りました。
 ペアは唯一エントリーした高橋成美、木原龍一組が初優勝、アイスダンスではキャシー・リード、クリス・リード組が昨年に続き2連覇、6度目の全日本制覇となりました。

第82回全日本フィギュアスケート選手権大会 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 初の全日本女王に輝いたのは、今シーズン限りでの引退を表明している鈴木明子選手です。

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 ショートは見事というしかない、素晴らしい出来でした。冒頭の3トゥループ+3トゥループは2つ目のジャンプがアンダーローテッド(1/4以内の回転不足)と判定されますが、流れのある美しいコンビネーションジャンプ。その後の3フリップ、2アクセルも落ち着いて決め、「愛の讃歌」のクライマックスにピタリと合わせたステップシークエンスはまさに圧巻。観客の盛り上がりは、最終滑走で最高潮に達しました。得点は70.19点で2位、上々の滑り出しとなりました。

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 そしてフリー、3+2+2をまずクリーンに決めると、続く大技2アクセル+3トゥループも成功。その後も次々とジャンプを降り、最後の3サルコウもきれいに着氷すると鈴木選手は片手で軽く拳を握り締め、最後までスピードに乗った演技で観客を魅了。地鳴りのようなスタンディングオベーションの中、フィニッシュでは感極まった表情を見せ、力強いガッツポーズで喜びを爆発させました。
 得点は驚異の144.99点、ショートとの合計は何と215.18点で、全日本女子史上最高スコアをマーク。最後と決めた全日本選手権で、最初で最後のタイトルを獲得しました。
 まさかこんな凄い結末が待っているとは想像もできませんでした。事実は小説より奇なりとよく言いますが、あまりに出来過ぎであまりに劇的、そしてあまりにも素敵すぎるフィナーレ。大会前の予想はやはり浅田真央選手の圧倒的有利、3連覇だったと思います。その優勝候補浅田選手の不調もあったとはいえ、鈴木選手も大会の1週間ほど前まで絶不調で長久保コーチが棄権を考えるほどだったそうですから、ファンよりも鈴木選手やコーチ、関係者がいちばん驚いたでしょうし、その歓喜は如何ほどのものかと思います。
 長久保コーチが大好きな曲をプログラムにした「愛の讃歌」、そして、自身をヒロインのクリスティーヌに、長久保コーチをクリスティーヌの歌の師匠、ファントムに見立てた「オペラ座の怪人」。フィギュアスケートはスケーターの生き様が表れる競技だと思いますが、これほどまでに投影されたプログラム、演技はなかなか無いんじゃないでしょうか。人間・鈴木明子の人生が、見えたような気がしました。
 本当に本当に、素晴らしい初優勝おめでとうございました! そして、ソチ五輪出場決定おめでとうございます。ソチの舞台でも鈴木選手らしい演技が見られることを、楽しみにしています。


 2年連続の銀メダルを獲得したのは、村上佳菜子選手です。

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 GPシリーズではSPでなかなかうまく行かず、プログラム変更を決断した村上選手。曲は2シーズン前のショート「ヴァイオリン・ミューズ」。ジャンプ構成も変え、冒頭に組み込んだ3トゥループ+3トゥループは高さ、幅、流れともに充分でパーフェクトに成功。後半の2つのジャンプも決めると、あとは村上選手の世界。慣れ親しんだ音楽で、しかし確実に2シーズン前よりも進化した姿、演技を披露しました。
 フィニッシュポーズを解いた村上選手は、顔をくしゃくしゃに歪めて大粒の涙をこぼしました。スケート人生初のうれし泣きだったそうですが、それだけ頑張ってきたのだろうなということがうかがえました。得点が出ると歓喜の声を上げ、再びの涙。山田満智子コーチ、樋口美穂子コーチと抱き合って喜びを分かち合いました。

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 フリーはショート同様、冒頭に3トゥループ+3トゥループを跳び成功。続く3ルッツはロングエッジ(踏み切り違反)で小さなマイナスこそ取られますが、最後までミスらしいミスはなく、キレのある動きと穏やかな表情で情感豊かに「愛のイエントル」を滑り切りました。
 フィニッシュを迎えると、前日の号泣から一転、笑みを爆発させ、ガッツポーズを何度も繰り返しました。得点は135.10点、トータルでも初めて200点を超え、最終順位2位でソチ五輪代表の切符を勝ち取りました。
 それにしても、ショートもフリーも物凄い感情の爆発のさせ方で、思わず笑ってしまいましたが、良い意味でジュニア時代から変わらない村上選手の明るさ、真っ直ぐさに元気付けられました。山田コーチは「3歳児くらいの感覚」「喜びも3歳児のよう」と独特な表現(笑)で村上選手を評し、この自然体が彼女の弱さでもあり良さでもあると語りましたが、こういうキャラクターの選手が一人いてくれると一フィギュアファンとしては安心しますし、何より見ていて楽しいです。先日引退を発表した織田信成さんとも通じるところがありますね。これからもこの個性を大切にしていって欲しいです。
 ソチ五輪が決まり、初めてのオリンピックということでまたこれからが大変になってくるでしょうが、1月の四大陸選手権とも併せて、村上選手らしく笑顔で頑張って欲しいと思います。


 銅メダルを獲得したのは浅田真央選手です。

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 ショートはこれまでの試合同様、冒頭でトリプルアクセルに挑みましたが、小さな回転不足で両足着氷気味に。しかしその他のジャンプはしっかりとまとめ、「ノクターン」の優雅で軽やかな世界観を表現。会心の滑りとまではいかないものの、いつもどおりの安定感ある演技を見せました。得点は73.01点で首位に立ちました。

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 グランプリファイナルではフリーに2本、トリプルアクセルを組み込んだ浅田選手。今大会ではどうするかが注目されましたが、まずは1本目のトリプルアクセル。ショート同様、回転不足で降りてきてしまい似たような形での失敗に。続く2つ目のジャンプ、アクセルの軌道に入ると思い切って跳び上がりましたが、空中で回転を開きシングルに。その後は切り換えて、3フリップ、2アクセル+3トゥループなどエレメンツをこなしていき、トリプルアクセル以外でのミスらしいミスは、後半の3+2+2が3+1になったくらい。全体的に慎重さが目立ち、スピンでも珍しくレベルの取りこぼしがありましたが、大崩れはせず演技をまとめました。
 ただ、得点は伸びず126.49点、総合でも199.50点に留まり、全日本3連覇を逃しました。
 今大会はショートの前の練習からほとんどトリプルアクセルが決まらなかったそうで、いつもであれば演技直前の6分間練習でもきちんとトリプルアクセルを跳んでいるのに、それが明らかな失敗ばかりになっていて、本調子ではないんだなというのがうかがえました。競技終了後に佐藤信夫コーチが明かしたところによると、GPファイナル前に再発した持病の腰痛の治りが遅く、本格的な練習は全日本の会場に入ってからだったとのこと。その影響がもろに出てしまったんですね。
 今回は万全な状態で臨めなかったので不本意な演技、結果とはなりましたが、長いシーズンの中で1試合くらいはこういう落とし穴があるもの。張り詰めていた糸が一時的に緩んだという感じでしょうか。でも緩んだ糸はまた張り直すことができるわけですから、ソチに向けて、焦らずマイペースに、オリンピックまでの日々を過ごしていってほしいと思います。


 表彰台に迫る4位となったのは、今シーズン本格的なシニアデビューを果たした宮原知子選手。

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 ショート最初の要素はステップシークエンス。慎重にも見えましたがエッジを細かく使い分けた丁寧なステップはレベル4を獲得。続く難易度の高い3ルッツ+3トゥループのコンビネーションジャンプも綺麗に成功させて波に乗り、その他のジャンプ、スピンといったエレメンツも完璧にこなし、66.52点で4位発進となりました。

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 一夜明けたフリー。冒頭の3ルッツ+3トゥループは一見クリーンに着氷しますが、慎重に跳んだためか2つ目が回転不足の判定。ですが、その後ミスといえるミスはほとんど無く、次から次へとジャンプを降り、宮原選手らしい細部まで神経の行き届いた繊細かつ勢いのある演技を見せてくれました。
 今季シニアのGPシリーズに参戦し、本格的なシニアデビューとなった宮原選手ですが、技術力、表現力の高さ以上に、精神力の強さが印象に残りましたね。ここまでのシーズンで転倒やトリプルがシングルになるといった大きな失敗はほぼゼロで、本当にジャンプが安定していました。まだ回転不足を取られるところはちょこちょこありますが、オフシーズンの練習の成果か、その点もだいぶ改善されてきたように思います。何よりも初のシニアGP参戦&五輪が懸かった全日本で緊張もあるはずなのに、それを演技に反映させない落ち着き、冷静さは15歳離れしていて、強靭なメンタルには毎試合驚かされました。
 残念ながら目指していたソチ五輪出場はなりませんでしたが、全日本の一種異様ともいえる雰囲気、独特の緊張感の中で滑った経験は4年後に活きてくるでしょうし、貴重な財産となったのではないかと思います。1月の四大陸選手権、3月の世界ジュニアともに、また宮原選手らしい演技を楽しみにしています。


 5位には20歳の今井遥選手が入りました。

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 GPシリーズでは盲腸の影響もあって思うような成績を残せなかった今井選手。まずは2アクセルを流れに乗ってクリーンに決めると、3サルコウ+3トゥループも着氷。3トゥループは回転不足と判定されますが、しっかり3+3を跳びました。その後もスピード感のある滑りで今井選手らしく、伸びやかかつ柔らかな滑りを披露。演技後は満足そうな表情で、得点も60.63点と納得のスコアを得ました。

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 フリーも出だしからのびのびと滑り、次々とジャンプを決めます。後半に入っても勢いは衰えるどころか更に力強さを増して、大技2アクセル+3トゥループのコンビネーションジャンプも見事に着氷。最後の2アクセルで珍しく着氷が乱れるミスがあったものの、会心の演技で満面に笑みを浮かべました。得点は125.53点で初のフリー120点超え、総合順位5位となりました。
 10月初旬のオンドレイネペラトロフィーで優勝し帰国した後、盲腸で入院し手術を迫られた今井選手。ですが、手術をすれば全日本に間に合わないということで手術を回避し、投薬治療でGPシリーズを迎えました。その影響はやはり払拭できず、演技内容、結果としては悔しいものとなりましたが、手術を回避してまで今シーズンに懸ける彼女の強い意志、覚悟が見えて、何とか全日本ではうまく行くようにと願っていました。なので、全日本でのこの演技、結果は本当に良かったなあと思いますし、心から感動しました。
 四大陸選手権の代表にも決まりましたから、次は国際大会でこのような演技が出来ることを祈っています。


 6位に入ったのは全日本ジュニアチャンピオン、本郷理華選手です。

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 ショートはバレエ「ドン・キホーテ」。まずは冒頭の3トゥループ+3トゥループをパーフェクトに決め、その他のジャンプも高さ、幅のある大きなもの。ノーミスの演技で観客のスタンディングオベーションを受け、ショート7位で折り返しました。
 フリーの「ミス・サイゴン」は3+3を組み込まず、確実に着実にジャンプを跳んでいきます。回転不足を取られるといった小さな取りこぼしはありましたが、最初から最後までスピードと流れのあるダイナミックな演技で、本郷選手らしさを充分に発揮。SPから順位を上げ、6位で大会を終えました。
 ジュニアの女子選手は身体的な変化も大きいですし、一度大きな成績を残した選手でもそれを持続させるのは難しいものです。その中で、全日本ジュニア女王となり、シニアの全日本でも2年連続の入賞というのは素晴らしいですね。背が高く、ダイナミックなジャンプを持ち味とする本郷選手は、日本女子フィギュア界でも稀有なタイプですし、誰にも真似できない際立った魅力があるスケーターだと思います。
 世界ジュニアでも全日本のような、もしくはそれ以上の演技を期待しています。


 7位となったのは3季ぶりに競技復帰した安藤美姫選手です。

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 強化選手ではないため、国内の地方大会から勝ち上がって全日本までたどり着いた安藤選手。11月から12月にかけてヨーロッパのB級大会で調整し、着実に力を取り戻しつつはありましたが、日本での試合は久しぶりになるので少し心配な目で見てしまいました。しかし、全くの杞憂でしたね。冒頭の3トゥループ+3トゥループのコンビネーションはブランクを感じさせない高さ、飛距離、流れのある大きなジャンプ。3ルッツ、2アクセルもクリーンに決め、ステップシークエンスでも安藤選手らしく全身を使いしなやかに舞いました。得点は64.87点でショート5位につけます。

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 そしてフリー。難易度を下げてまとめることも考えられましたが、安藤選手は自身が今できる最高のレベルで挑むことを選びました。冒頭は3ルッツ+2ループ。続くコンビネーションで3サルコウからの3ループに挑戦しましたが、3サルコウがシングルに。次の2アクセル+3トゥループは見事に決めます。その後はチラホラとミスが出て、ステップシークエンスではスピードが落ちてしまいましたが、最後まで力を振り絞って、気持ちのこもった「火の鳥」を演じ切りました。得点は106.25点でフリー9位、総合順位は7位となりました。
 ここまでのシーズン、そして今大会の安藤選手に対しては、出産を経ているということに注目が集まりましたが、そういった事実は関係なしに、単純にやはり凄いスケーターだなと思いました。特にジャンプに関しては、高さ、大きさだったり、背中に羽が生えているんじゃないかというふわっと浮き上がるような跳び上がりだったりと、休息に入る前と変わらないくらい、もしくはそれ以上のジャンプで、ジャンパーとしての類まれなる才能、魅力を改めて認識させられました。(女子で歴史上唯一4回転を成功させた人なので、当たり前といえば当たり前なんですが)
 フリーの競技終了後、安藤選手は現役引退を表明しました。安藤選手は精神的な揺れがストレートに演技に表れてしまうタイプだった分、調子の波も激しい選手でした。しかし元々持っているポテンシャル、フィギュアスケーターとしてのセンスは世界でも抜群で、浅田真央選手をも凌ぐレベルでした。メンタル面さえすんなり行けば、より安定した成績を残し続けられたのかなと思うと少し残念な気もしますが、こういう安藤選手だからこそ、あれだけの心を揺さぶる演技ができたのだろうと思います。
 演技後のインタビューで安藤選手は、フリーで難度の高い3サルコウ+3ループに挑んだ理由について、「“ジャンプの安藤美姫”と言われていた頃の演技をやりたかった」と話しました。最後の最後まで、“安藤美姫”らしさを貫く姿には感動しました。今後はアイスショーにも関わりつつ、指導者を目指していくということです。現役生活、お疲れ様でした。そして、美しく力強い演技の数々をありがとうございました!


 8位入賞となったのは、全日本ジュニア4位の木原万莉子選手です。

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 ショートの冒頭は大技3トゥループ+3トゥループ。クリーンに着氷し、上々のスタート。その他の3ループ、2アクセルでもミスはなく、スピンでは全てでレベル4を獲得。納得の演技で8位発進となりました。
 フリー1発目のジャンプは単独の3ルッツでしたが、ロングエッジ(踏み切り違反)で着氷も乱れます。続く3フリップも回転不足で転倒。乱調の出だしとなりましたが、その後は大きなミスなく、大技2アクセル+3トゥループを含め、ジャンプをしっかり立て直しました。フリー順位は10位とショートからは下げましたが、トータルでは8位入賞で新人賞にも輝きました。
 木原選手は現在高校1年生、中学時代は股関節の難病で長くスケートが出来なかったそうです。ですが、ショート、フリー通じて、ほとんどそのブランクや影響を感じさせない演技をしていましたね。表現面でも繊細さが感じられ、ショートの「コットン・クラブ」、フリーの「真夏の夜の夢」と、全く色味の違う音楽をそれぞれ演じ分けていて、印象に残りました。これからも、技術、表現ともに、ゆっくり磨いていって欲しいですね。


 さて、ここまで女子シングル入賞者について書きましたが、ここからはペア&アイスダンス。まずはペア。
 ペアの優勝者は唯一エントリーした高橋成美、木原龍一組。もちろん、初制覇です。

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 ショートはサイドバイサイドのジャンプではミスが出ましたが最小限のもの。その後はダブルツイスト、リフト、スロージャンプなど、大きなミスなくエレメンツをこなし、実力発揮の演技となりました。得点は目標としていた50点を超える54.62点。国内大会なので非公式ながらも、シーズンベストのスコアを得ました。
 フリーは冒頭の3トゥループからのコンビネーションで、高橋選手のセカンドジャンプがシングルに。その後もジャンプやスロージャンプでちょこちょこミスが出てしまい、ショートほどの出来とはいきませんでした。得点は94.86点、トータルでは149.48点で、150点にあと少しと迫りました。
 1年前、高橋選手はまだ負傷中で、全日本からペア競技が消えました。それが翌年には復活、しかも日本人同士でなんていうことは、1年前は想像だに出来ませんでした。毎試合ごとに成長を見せてくれる高橋、木原組には本当に毎回楽しませてもらっていますし、驚かされ続けてもいます。まだまだ技術的には未熟かもしれませんが、ペアとしての一体感は見るたびに増しているように感じます。
 ソチ五輪の団体戦に日本チームが出場ということで、高橋&木原組は団体戦要員として初の五輪が決定しました。ぜひ、そちらでも自己ベストが更新できるように、頑張って欲しいと思います。


 アイスダンスを制したのは、キャシー・リード、クリス・リード組です。

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 ショートはツイズルをうまく合わせ加点を得ますが、ステップで同調が乱れるところが少しあり、マイナス評価を受けてしまいました。
 しかしフリーでは終始エネルギッシュかつ滑らかな演技を見せ、全てのエレメンツで加点を獲得。2年連続、通算6度目の全日本優勝となりました。
 クリス選手は相変わらず負傷を抱えていますが、それと長く付き合う中でうまく折り合いをつけているようで、試合ではその影響をほとんど感じませんね。昨シーズンと比べてもずっと安定した演技が出来ているので、安心感を持って見ていられるようになりました。ソチ五輪では個人戦に、団体戦にと、フル稼働となるのでその点はちょっと心配ですが、最高の演技が出来るよう願っています。


 では、男子シングル同様にソチ五輪、世界選手権などの代表選手を以下にまとめますが(敬称略)、その前に選考方法について。


《オリンピック代表選考方法(男女シングル)》

①1人目は全日本選手権優勝者を選考する。
②2人目は、全日本2位、3位の選手とグランプリ・ファイナルの日本人表彰台最上位者の中から選考を行う。
③3人目は、②の選考から漏れた選手と、全日本選手権終了時点でのワールド・ランキング日本人上位3名、ISUシーズンベストスコアの日本人上位3名選手の中から選考を行う。

《オリンピック代表選考方法(ペア、アイスダンス)》

全日本優勝者と全日本選手権終了時点でのワールド・ランキング日本人最上位組、全日本選手権終了時点でのISU シーズンベストスコアの日本人最上位組の中から選考を行う。


《ソチオリンピック》

女子シングル代表:鈴木明子、浅田真央、村上佳菜子

アイスダンス代表:キャシー・リード、クリス・リード組

ペア代表(団体戦のみ):高橋成美、木原龍一組



 全日本初優勝という最高の結果で、まっさきにソチ五輪代表を射止めた鈴木選手。そして、②にも③も該当する浅田選手に、こちらも②③に当てはまる村上選手と、終わってみれば予想どおりの3選手が選ばれました。間違いなく、現在日本女子でいちばん強い3人、文句なしの3人だと思います。
 アイスダンスの方も、圧倒的な力を持つ全日本チャンピオンであり、実績的にも図抜けているリード兄弟が代表となりました。
 また、世界選手権、四大陸選手権、世界ジュニア選手権の代表もそれぞれ以下のように発表されています。


《世界選手権》

女子シングル代表:鈴木明子、浅田真央、村上佳菜子

ペア代表:高橋成美、木原龍一組

アイスダンス代表:キャシー・リード、クリス・リード組

《四大陸選手権》

女子シングル代表:村上佳菜子、宮原知子、今井遥

アイスダンス代表:平井絵己、マリオン・デラアソンシオン組

《世界ジュニア選手権》

女子シングル代表:本郷理華、宮原知子



 熱狂的な雰囲気の中、幕を閉じた全日本選手権2013。男子も女子も、表彰台に上った選手を含め、今年が最後の全日本となるトップスケーターも多くいて、これまでにない特別な全日本選手権となりました。来年は表彰台の顔ぶれもガラッと変わるでしょうし、会場に流れる空気も今までとはまた少し違ったものになるんじゃないかと何となく想像します。そんなことに思いを馳せると、今から寂しさが込み上げてきてしまうんですが……。
 とにもかくにも、出場した選手の皆さん、お疲れ様でした。楽しいスケートをありがとうございました。


:女子シングルメダリスト3選手のスリーショット写真、鈴木選手のフリーの写真、村上選手のSPの写真、浅田選手のSPの写真、高橋&木原組の写真、リード&リード組のショートの写真は、毎日新聞のニュースサイト内の写真特集「フィギュア全日本選手権」から、鈴木選手のSPの写真、村上選手のフリーの写真、浅田選手のフリーの写真、宮原選手の写真、今井選手の写真、本郷選手の写真、安藤選手のSPの写真、木原万莉子選手の写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、安藤選手のフリーの写真、リード&リード組のフリーの写真は、朝日新聞のニュースサイト「朝日新聞デジタル」内のフォトギャラリーの「フィギュアスケート全日本選手権」から引用させていただきました。


【ブログ内関連記事】
全日本選手権2013・男子―羽生結弦選手、圧巻の演技で断トツの2連覇 2013年12月26日
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by hitsujigusa | 2013-12-28 05:03 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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※2015年1月2日、競技結果、採点表のリンクを更新しました。

 全日本フィギュアスケート選手権2013、全競技が終了しました。ソチ五輪の最終選考会でもある今大会は、史上まれに見る激戦、凄まじい試合となりました。まずは男子の結果からお伝えします。
 男子シングルを制したのは、19歳の羽生結弦選手。昨年に続いての2連覇で、ソチ五輪の切符をつかみ取りました。銀メダルを獲得したのは町田樹選手、3位は小塚崇彦選手となりました。

第82回全日本フィギュアスケート選手権大会 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 見事、優勝でソチ五輪出場を決めたのは羽生結弦選手です!

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 ショートプログラムはGPファイナルの再現かと思うような圧巻の出来。安定感を増した4トゥループ、難しい入りの3アクセルとパーフェクトに決め、最後の3+3は珍しく最初の3ルッツで軸が曲がりましたが、空中で修正してまとめました。得点は驚異の103.10点。全日本史上初めての100点超え、かつ全日本史上最高得点で首位発進となりました。

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 迎えたフリー、ここまでのシーズンでほとんど成功させられていない4サルコウは転倒。しかし今季の羽生選手の強さはここからで、続く4トゥループをこらえると、後半に組み込んだ2本の3アクセルからのコンビネーションなど、ジャンプを次々と成功。いつもどおり大崩れせず、GPファイナルの王者らしい安定した演技を見せました。得点は194.70点、総合得点も297.80点と、ショート、フリー、トータル全てで全日本男子史上最高得点を更新、2位以下に圧倒的な大差を付けての優勝となりました。
 演技内容としては4サルコウの失敗があったので完璧とはいかず、練習では出来ていることが出来ない悔しさが羽生選手自身あったと思いますが、それをほかのジャンプに影響させない強さが今大会も目立ちました。ただ、2シーズン前の「ロミオとジュリエット」からは感じられた感動や心を揺さ振る衝撃みたいなものは、まだ感じられなかったですね。4サルコウが成功すればそう感じられるのか、それともジャンプの成否とはまた別のところに原因があるのかは分かりませんが、ぜひ、五輪でこのプログラムを完成させてほしいなと思います。
 全日本2連覇&ソチ五輪出場、おめでとうございます!


 2位となったのは町田樹選手です。

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 ショートは冒頭の4+3を完璧に決めると、3アクセル、3ルッツもクリーンに成功。相当な緊張はあったと思いますが、それを感じさせないのびのびとした最高の「エデンの東」を披露してくれました。得点は93.22点で、2位につけました。

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 1本目の4トゥループは前のめりの着氷となりますが成功。続く2本目の4トゥループは2トゥループを付けてしっかりコンビネーションにしました。その後も2本の3アクセル、3+2+2など、次々とジャンプを降り、美しく力強く羽ばたきました。得点は183.82点の高得点、ショート、フリーともにほぼ完璧な演技で五輪の切符を勝ち取りました。
 昨シーズン、GPシリーズで大きく飛躍し一躍五輪代表候補に名乗りを上げた町田選手でしたが、GPファイナルでは最下位、全日本では9位と本当の意味でのブレイクは果たせませんでした。しかし、その飛躍からの屈辱を無駄にせず、今シーズン、真の飛躍を遂げ、見事にオリンピック代表の座を手に入れました。記者会見では「選手層が厚い中で出せていただくならメダルを狙うことが義務」と話し、五輪が決まっても気を緩めることなく、町田選手らしく自分を奮い立たせている姿が印象に残りました。ロシアの地で、「火の鳥」が飛翔するのを楽しみにしたいと思います。


 そして、3位には小塚崇彦選手が入りました。

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 ショートは冒頭の4トゥループの着氷が乱れますが、回転は認定されました。3アクセルはクリーンに成功しましたが、3ルッツ+3トゥループも着氷に乱れがあり、大きな失敗はなかったものの、完璧な演技とはいきませんでした。しかし得点は90.70点という高得点で、会場からも驚きの声が上がり、小塚選手自身も表情とジェスチャーで素直に驚きを表しました。私もあそこまで出るとは予想していなかったので少しびっくりしましたが、元々技術力の高い選手なのでジャンプ以外でも得点が稼げますし、大きなミスがなかったことで演技構成点も気前よく出たのだろうと思います。

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 翌日のフリー、こちらも4トゥループは回り切ったものの着氷でオーバーターンしてしまいます。しかしその後は小塚選手らしい滑らかな流れるようなスケーティングの中でポンポンとジャンプを決めていき、終盤で珍しく3ルッツでの転倒がありましたが、全体的にまとまった演技を見せ、表彰台を確保しました。
 昨シーズンから股関節痛があり、なかなか思うような滑りができなかった小塚選手。手術をするとソチ五輪に間に合わないということで、毎日のケアで自らの身体と折り合いを付け、この大会にしっかりと合わせてきました。小塚選手らしい美しいスケーティングやジャンプ、スピンなど、GPシリーズと比べてもだいぶ戻ってきているように感じました。小塚選手がオリンピック代表に選ばれるためには表彰台しかないというプレッシャーの中で、よくぞここまでという素晴らしい演技でした。
 しかし、この後も言及しますが、高橋大輔選手との3枠目の争いで一歩及ばず、残念ながら五輪代表からは外れてしまいました。GPシリーズは悪かったけれども全日本で調子を上げてきた小塚選手と、GPシリーズでは結果を残したものの直前の怪我で全日本に合わせられなかった高橋選手と、どちらを選ぶかは素人目に見ても難しいものでした。今回の選考は小塚選手にとっては非常に悔しい、厳しいものとなりましたが、“小塚崇彦ここにあり”という存在感は充分に感じられました。小塚選手が今後どうするかはまだ不明ですが、来シーズンも現役を続けて欲しい、競技者としての小塚選手のスケートもっと見たいと一ファンとして思います。


 惜しくも表彰台に及ばず、4位となったのは織田信成選手です。

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 ショートの冒頭、4トゥループがすっぽ抜け3トゥループに。ですがその後は冷静で、3アクセルや、3+2など着実にジャンプをこなしました。序盤にミスが出たことで全体的に勢いと元気がなくなり、その分ステップシークエンスがレベル2になったり最後のスピンがレベル2になったりしてしまったのがもったいなかったですね。

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 そしてフリー。4トゥループ+3トゥループは織田選手らしい柔らかな着氷で見事に成功。続く4トゥループはトリプルになってしまいましたが、3アクセル+2トゥループ、3アクセル、3ルッツ+1ループ+3サルコウと次々とジャンプを決めていきます。終盤に向かうにつれさらに勢いを増して、最後のコレオグラフィックシークエンスは笑顔が溢れ、前日の控えめになってしまった演技から一転、織田選手の魅力が爆発したフリーとなりました。得点は織田選手史上、全日本での最高スコアとなり、最後の全日本で最高の演技を見せてくれました。
 4位という結果により、五輪代表選考の条件から外れてしまった織田選手は、エキシビションの全選手の演技終了後、一人マイクを持ってリンクに現れ、この日(12月24日)を持って現役生活から引退することを表明、観客に向かって伝えました。
 来年の1月に台北で開催される四大陸選手権の代表に決定していましたが、以前から今シーズン限りでの引退を表明していた織田選手ですから、その後の試合が何もない中で四大陸に出場してもモチベーションを上げるのは難しいでしょう。なのでどうするかなと思っていましたが、やはり辞退、全日本が競技者としてのラストとなりました。引退発表に際して、浅田真央選手、村上佳菜子選手から花束が贈られ、高橋大輔選手、鈴木明子選手、羽生結弦選手、小塚崇彦選手、町田樹選手など、ともに戦ってきた仲間もリンクに登場、エキシビション出演スケーターたちと満員の観客に見送られての感涙の引退となりました。

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 織田選手ほど“愛される”キャラクター性を持ったスケーターは他にいなかったんじゃないでしょうか。好不調の波が激しく、大きな怪我もあり、ここぞという大きな舞台でのつまずきも多くありましたが、それでもなぜか憎めない、応援したくなってしまう不思議な選手でした。喜ぶ時は大げさなくらい喜び、悔しい時は隠すことなく泣き、感情をそのまま表わしてくれる織田選手はフィギュア界にとって貴重で、かけがえのない存在だったと思います。
 織田選手は引退発表の記者会見で、「鳴かぬなら 泣きに泣きます ホトトギス」と先祖織田信長の名言に引っ掛け、また、「涙が印象的なスケート人生だったと思うので」と語りました。ですが、涙と同じくらい、笑顔も深く印象に残るスケーターでした。今後は指導者を目指すそうですが、アイスショーでもどんなオファーでも全力でやりたいと茶目っ気たっぷりに話しました。これからも織田選手らしく、笑顔いっぱいで頑張って欲しいですね。現役生活、お疲れ様でした! そして、素晴らしい演技の数々をありがとうございました!


 5位となったのは、高橋大輔選手です。

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 11月末に右足の脛骨を負傷し、GPファイナルを欠場した高橋選手。まだ完全には傷が癒えない中での復帰戦となりましたが、ショート冒頭の4トゥループは回転不足で両足着氷。次の3アクセルはきれいに着氷したかに見えましたが、ランディングでこらえきれず転倒。3+3も2つ目が回転不足となるなど、怪我の影響がそのまま表れた演技となりました。
 得点は82.57点で4位発進。キス&クライでの高橋選手は今までに見たことのないような顔面蒼白で、高橋選手自身のショックを物語っていました。

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 一夜明けたフリーで挽回を期しましたが、1発目の4トゥループは転倒。ここで何かの拍子に右手を切ってしまったようで、見る見るうちに血が溢れ出しましたが演技を続行。続く2本目の4トゥループは大幅な回転不足で両足着氷となり、後半も3アクセルでのお手つき、3ループでのパンクなど、ミスが相次ぎ、フィニッシュでは笑顔を見せたものの、どこか淋しげな、何かを覚悟したような静かな笑みで、観客の声援に応えました。
 フリーの得点は170.24点、トータルで252.81点で、あと2人の滑走者を残して暫定3位となりました。そして、23番滑走の町田選手、24番滑走の小塚選手が高橋選手を上回ったことで、高橋選手の最終順位は5位、五輪代表選考の重要な条件の一つである表彰台を逃す結果となりました。
 しかし、日本スケート連盟は協議の結果、全日本の表彰台に登った小塚選手ではなく、世界ランキングやシーズンベストスコアで結果を残している高橋選手を男子シングル五輪代表の3人目に選びました。
 この選考結果にはいろんな意見があるでしょうが、私は正直にうれしく思いました。やはり、日本フィギュア界に多大なる貢献をし、フィギュアファンに喜びと夢を与え続けてくれた大エースのラストがこんな痛ましいものでは悲しすぎますし、普段感情を露わにすることの少ない高橋選手の号泣を見てしまっては、このままで終わって欲しくないと願わざるを得なかったですからね。
 でも、その分小塚選手には辛い決着となってしまいました……。高橋選手は「崇彦の思い、いろんな人の思い、すべてを受け止め、100%、120%の演技を五輪でするのが僕の使命」として、五輪へ向けての新たな覚悟を口にしました。
 まずは怪我をしっかり治して、万全な状態でソチに入り、最高の演技を見せて欲しいと思います。


 6位となったのは無良崇人選手です。

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 ショートは4トゥループ、そして3ルッツでもミスがあり、コンビネーションが入らなかったことで得点を稼ぐことが出来ず、大きく出遅れる8位となった無良選手。
 フリーでも代名詞の3アクセルがシングルに、3ループもシングルになるなど、チラホラとミスが散見され、何とか大崩れせずまとめたものの会心の演技とはいきませんでした。
 今大会の無良選手はショートもフリーも本来の豪快さ、ダイナミズムが見られず、やはり五輪選考会という特別な緊張感に飲まれてしまったのかなという感じでしたね。
 目指していたオリンピックという舞台を逃した無良選手ですが、演技後のインタビューではすでに来シーズンを見据えた発言をしていて、もう前を向いているんだなという強さを感じさせました。無良選手もここ1、2年で大きく成長した選手の一人、そしてまだまだ伸びしろのある選手だと思います。オリンピック選考会というスケート人生最大の節目を経験した無良選手が、これからどのように更なる成長を見せてくれるのか、今からとても楽しみです。なお、全日本での引退により四大陸選手権出場を辞退した織田選手に代わり、無良選手が出場することが決定しました。そちらでの彼らしい滑りを期待しています。


 7位に入ったのは全日本ジュニア2位の宇野昌磨選手です。

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 ショートは3+3を完璧に成功させると、2アクセル、3ループとそのほかのジャンプもまとめ、スピンでは全てレベル4を獲得。全日本ジュニア銀メダリストらしい、堂々とした演技で6位発進となりました。
 フリーは五輪代表争いを繰り広げる最終グループでの滑走。冒頭に組み込んだ3アクセルは残念ながら転倒しましたが、その後は次々とジャンプをクリーンに決め、ショート同様全スピンでレベル4を獲得、最初から最後まで流れのある大きな演技で見事、7位入賞となりました。
 以前から表現力に定評のある宇野選手ですが、今大会はフリーの3アクセルの失敗以外、ほぼパーフェクトといって良い素晴らしい出来で、技術力の高さ、そして精神力の強さが目立ちました。ジュニア男子のフリーの演技時間は4分、全日本はシニアの大会なのでいつもより30秒長い演技だったわけですが、その中でも8つのジャンプ要素の内、5つを後半に固め、しかも3つのコンビネーションジャンプを全て後半に持ってくるという難易度の高い演技構成。それをこのシーズン一の大舞台できっちりこなしたわけですから、度胸があるなあと思います。全日本の結果によって、3年連続での世界ジュニア代表に決定した宇野選手。そちらでも満足いく演技が出来ることを願っています。
 余談ですが、宇野選手大きくなりましたね! といっても公式プロフィールによると150センチなのですが、それでも昨シーズンより10センチほど伸びたんですよね。身長がこれだけ急激に伸びると大変なんじゃないかと思いますが、また新たな魅力も生まれてくるでしょうからますます楽しみです。


 8位には全日本ジュニアチャンピオン、田中刑事選手が入りました。

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 ショートは転倒やパンクといった大きなミスこそありませんでしたが、予定していた3+3が3+2になったり、スピンでも取りこぼしが多くあったりと、不本意な演技となりました。それでも7位と、上位につけます。
 フリーは4トゥループに挑みますが、ダウングレード(大幅な回転不足)で失敗。しかし、その後は大きなミスなく演技をまとめました。
 4回転に関しては失敗は織り込み済みということで、その他のところで大きく乱れなかったところに全日本ジュニア王者の強さを感じました。シニアに上がれば必然的に4回転は必要になってくるので、そのためにも今から果敢に挑戦するのは、たとえ失敗の公算が大きかったとしても、意義のあることだと思います。
 今大会の結果によって、四大陸選手権の代表に選ばれた田中選手。ISU主催のシニアのチャンピオンシップに出場するのは初めてだと思いますが、シニアの国際大会でどこまで通用するのか、その力を存分に試してほしいですね。そしてシーズンの集大成となる世界ジュニア。昨季の世界ジュニアは、出場が決まっていたものの太腿の怪我により欠場となってしまいました。2年ぶり、かつ最後の世界ジュニア、全力を出し切れるよう祈っています。


 さて、ここまで男子シングル入賞者8選手について、とりとめもなく感想を書きました。今年の全日本はソチ五輪最終選考会でもありますので、今大会の結果により選ばれた選手を以下にまとめます(敬称略)。その前に、改めましてソチ五輪代表選考のルールを……。


《オリンピック代表選考方法(男女シングル)》

①1人目は全日本選手権優勝者を選考する。
②2人目は、全日本2位、3位の選手とグランプリ・ファイナルの日本人表彰台最上位者の中から選考を行う。
③3人目は、②の選考から漏れた選手と、全日本選手権終了時点でのワールド・ランキング日本人上位3名、ISUシーズンベストスコアの日本人上位3名選手の中から選考を行う。


《ソチオリンピック男子シングル代表》

羽生結弦、町田樹、高橋大輔



 羽生選手は全日本優勝者で申し分なし。町田選手は全日本2位で②に該当し、③のワールドランキング日本人上位3名、シーズンベストスコア日本人上位3名にも入っているということでこちらも文句なし。高橋選手は②からは漏れましたが、③に当てはまっているということで、②に該当する小塚選手をかわしての代表入りとなりました。高橋選手、小塚選手のどちらを選んでも苦しいことになっていたと思います。選ばれた3選手は皆、選ばれた責任というものをよく分かっていることでしょう。
 こうして代表選手が決定したことで、本当にソチ五輪がすぐそこまで来ているんだなという実感がさらに強まりました。今から楽しみなような、怖いような……ですね。
 また、世界選手権、四大陸選手権、世界ジュニア選手権の代表も以下のように発表されています。


《世界選手権男子シングル代表》

羽生結弦、町田樹、高橋大輔

《四大陸選手権男子シングル代表》

小塚崇彦、田中刑事、無良崇人(※無良選手は、出場を辞退した織田選手に代わっての出場)

《世界ジュニア選手権男子シングル代表》

田中刑事、宇野昌磨



 五輪だけでなく、もちろんこちらも注目ですね。
 全日本記事は、女子&ペア&アイスダンスに続きます。


:男子シングルメダリスト3選手のスリーショット写真、エキシビションでの織田選手の引退発表時の写真は、朝日新聞のニュースサイト「朝日新聞デジタル」内のフォトギャラリー「フィギュアスケート全日本選手権」から、羽生選手のSPの写真、小塚選手のSPの写真、高橋選手の写真は、毎日新聞のニュースサイト内の写真特集「フィギュア全日本選手権」から、そのほかの写真はスポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。


【ブログ内関連記事】
全日本選手権2013・女子&ペア&アイスダンス―鈴木明子選手、ラストシーズンでの全日本初優勝 2013年12月28日
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by hitsujigusa | 2013-12-26 04:02 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

聖夜 (文春文庫)


【あらすじ】
 1980年、キリスト教系の高校に通う鳴海一哉は、牧師で敬虔なクリスチャンの父と祖母と暮らしている。ピアニストでありオルガニストだった母は、一哉が小学5年の時、父と離婚してドイツ人のオルガニストと家を出て行った。物心がつく前からオルガンやピアノに触れてきた一哉は、メシアンなどのクラシック音楽やエマーソン・レイク・アンド・パーマーといったロック音楽など、日常的に音楽に親しんでいた。そんな中、所属するオルガン部が文化祭でコンサートを行うことになり――。


 そろそろクリスマスということで、その名も『聖夜』をご紹介します。佐藤多佳子さんの長編小説『聖夜』は、“学校と音楽”をテーマにした「School and Music」シリーズの1冊。もう1冊の『第二音楽室』は短編・中編集、こちらも良質な青春小説となっている。
 
 主人公の一哉は、幼い自分を捨てて男とともに家を出て行った母への複雑な感情と、感情を表に出さず聖職者として常に正しくあり続ける父への反発とで、屈折した日々を送っている。そんな一哉が唯一、心を許し、自分を解放できるのが“オルガン”である。
 しかし、オルガンは一哉にとって単純に演奏して楽しい楽器ではなく、複雑な意味を持つ楽器である。オルガン奏者であった母が愛した楽器、母に演奏を教えてもらった楽器。そういった母と繋がるモチーフである一方、母と父が離婚するきっかけとなった楽器でもある。
 オルガンを弾くということは、必然的に母を思い出すことであり、過去の傷をえぐるような行為である。オルガンを弾かないという選択肢もある中、一哉はオルガンを弾く道を選んだ。オルガンと向き合うことは、自身のトラウマや運命と向き合うこと。一哉はオルガンを弾くことによって、自問自答し、時に自分自身を苦しめ、時にオルガンから逃げもする。が、オルガンを弾くことによってしか得られない喜び、答え、救いも確かに存在するのである。光も闇も、喜びも悲しみも象徴する“オルガン”に、苦悩しながらも向き合う一哉の姿は、痛々しく、そして清々しい。

 物語の主な舞台となるのは、一哉が通うミッションスクールである。単なる学校、教育施設とはまた違う、“ミッションスクール”特有の神秘的で静謐な雰囲気が物語全体を覆う。ミッションスクールといってもすべての生徒がクリスチャンというわけではないし、信仰心があるというわけでもない。一哉も信仰心は全く無いが、聖書研究会とオルガン部に所属する。信仰していない宗教のど真ん中に身を置くことで、逆に宗教的な正しさに逆らうわけだが、そういった部活のありようもまた独特で、ミッション特有の学生生活の一端がところどころに垣間見え、作品の魅力の一つとなっている。
 もう一つの大きな魅力は、作中に登場するさまざまな音楽である。メシアン、バッハ、ムソルグスキー、エマーソン・レイク・アンド・パーマー、スティーリー・ダン、ラリー・カールトン……。クラシックからロックまで、いろんな音楽が物語に彩りを添えるが、これらの音楽は一哉の心情を表すモチーフともなっている。オルガンコンサートのために選んだメシアンは、母が最も愛好した作曲家。難解かつ母を想起させるメシアンに取り組むことで、何かを得ようとする一哉だが、一方で母が去ったあとに親しむようになったロック、特にエマーソン・レイク・アンド・パーマー(ELP)に傾倒する。宗教的で神聖な匂いを漂わせるメシアンとは反対に、オルガンにナイフを突き立てる破壊的なパフォーマンスを見せ、クラシックを大胆にアレンジした音楽性を特徴とするELP。宗教的なものへの反発と愛着という複雑な感情が、音楽に相対する一哉の姿にも投影され、描かれている。

 何かひとつの“もの”に向き合うということは、辛く苦しい。そうした苦悩を、佐藤多佳子さんはこれまでの著作でも描いてきた。『しゃべれどもしゃべれども』の落語、『黄色い目の魚』の絵、『一瞬の風になれ』の陸上。ひとつのものに向き合い続けるということは、それだけ熱中できるということで、夢中になれるものがあるのは幸せなことである。だが、夢中になるということは、それに伴う苦しみも引き受けなければならないということでもある。好きだから夢中になる、夢中になるから必死になる、必死になるから苦しくもなる。その難しさを、佐藤多佳子という作家は繊細に描く。
 『聖夜』の主人公一哉もまた、オルガンに苦悩する。物語自体もほぼ最初から最後まで苦悩する小説だと言ってもいいが、一哉の姿から悲愴感は感じられない。一哉は決してオルガンをないがしろにはしないし、常に真剣に接する。“真剣”に苦悩するのだ。だからこそ、苦悩する姿さえも清々しい。

 物語は初夏に始まり、冬、クリスマスへと向かう。ミッションスクールにとって最も重要なイベントといってもよい聖なる夜、クリスマスにおいて、オルガン部もコンサートを行う。一哉はどのようにオルガンと向き合い、自らを表現し、演奏するのか。
 少年の心の揺れ、成長を“オルガン”を通して描いた『聖夜』。ぜひ、ご一読を。


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by hitsujigusa | 2013-12-20 01:20 | 小説 | Trackback | Comments(0)

ビロードのうさぎ



 12月も半ばに差し掛かり、いよいよ冬めいてきました。ということで、この季節にふさわしい、独断と偏見で選んだ冬に読みたい絵本・私的10撰をご紹介したいと思います。


 まずは、間近に迫ってきたクリスマスをテーマにした絵本6冊を。


急行「北極号」

急行「北極号」
【あらすじ】
 あるクリスマスイブの夜、サンタクロースを待つ“僕”の家の前に急行「北極号」が現れます。「北極号」に乗り込んだ僕を待ち受けていたのは、たくさんの子どもたち。心をときめかせる子どもたちを乗せて、「北極号」は森を抜け、山を越え、何と北極点に到着して――。

 ハリウッドでアニメーション化もされたクリスマスの大定番絵本、『急行「北極号」』。作者のクリス・ヴァン・オールズバーグさんはアメリカを代表する絵本作家で、日本語訳は日本を代表する小説家、村上春樹さんです。
 この絵本の最大の魅力は、オールズバーグさん特有の色鮮やかさと陰影が混在する芸術的な絵。この絵本のイラストには多くの色彩が使われていて、クリスマスイブの楽しい雰囲気、子どもたちのワクワクドキドキとした気持ちが臨場感たっぷりに描かれています。その一方で、色彩の彩度は抑えられていて、冬の夜に漂う暗闇、影、冷え冷えとした空気が、まるで自分がその場に居て体験しているかのように、ありありと伝わってきます。
 この作品は子どもにとっては楽しいクリスマス絵本ですが、大人が読むとまた違った感覚に陥るのではないかと思います。一見すると子どもたちの不思議な楽しい冒険を描いたファンタジー絵本という風情で、もちろんそれが物語の軸ではあるのですが、それと同時に“いつか去ってゆく子ども時代”を描いた作品でもあります。なぜ、「北極号」には子どもしか乗っていないのか、また、乗れないのか。その意味を考えた時、ふっと淋しさがよぎり、切なさが込み上げます。だからこそ、「北極号」に乗れる無邪気で純粋な子どもたちの姿、そして、「北極号」という存在がとてもまぶしく、かけがえのない愛おしいものに感じられます。
 絵が醸し出す雰囲気と物語が伝えるメッセージが見事にマッチした、老若男女楽しめるクリスマス絵本ですね。


すずの兵隊さん (児童図書館・絵本の部屋)

すずの兵隊さん (児童図書館・絵本の部屋)
【あらすじ】
 ある男の子への誕生日プレゼントとしておもちゃの兵隊のセットが贈られました。これらの兵隊は25人で同じ古いスプーンから作られたものでしたが、1人の兵隊だけは材料が足りず、1本足でした。いつしか1本足の兵隊は、紙で出来たお城の入り口に立つ、紙製のバレリーナの人形に想いを寄せるようになり――。

 言わずと知れた童話作家、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの名作『すずの兵隊さん』。絵はアメリカのイラストレーター・絵本画家のフレッド・マルチェリーノさんです。
 アンデルセン童話の特徴は大げさでない静かなもの哀しさや切なさですが、その中でもこの作品はアンデルセン童話の魅力が凝縮された物語ではないかと思います。人間の都合によって1本足で生まれてきたおもちゃの兵隊は自らの意思でバレリーナに恋をしますが、それさえも運命のいたずらによって、また、人間の手によって邪魔されてしまいます。それでもバレリーナを想い続ける1本足の兵隊……。おもちゃを擬人化した童話やアニメは多くありますが、この作品の兵隊やバレリーナは自分の足で動いたり歩いたりするわけではなく、あくまで普通のちっぽけなおもちゃです。しかし、アンデルセンはおもちゃに心を与え、物語に“偶然の奇跡”を付与することによって、美しいラブストーリーに仕立て上げました。その結果、擬人化された物語とはまた一味違う、儚くささやかな作品となっています。
 『すずの兵隊さん』の絵本は他にも多くありますが、このフレッド・マルチェリーノさんが描いた絵は良い意味でクセが無く、誰にでも親しみやすい絵柄でおすすめです。


ビロードのうさぎ

ビロードのうさぎ
【あらすじ】
 クリスマスプレゼントとしてある男の子の元にやってきたビロードのうさぎ。男の子はうさぎを気に入り、大切にしてくれました。が、ある日うさぎに悲劇が訪れて――。

 こちらも古典的名作といわれるマージェリィ・W・ビアンコ作の『ビロードのうさぎ』。絵は人気絵本作家、酒井駒子さんです。
 人形=おもちゃを題材にしているということで、『すずの兵隊さん』とも共通しますが、『ビロードのうさぎ』はまた少し着目点が違って、子どもに愛されるということはおもちゃにとってどういうことかという、おもちゃと子どもの関係性を描いた作品となっています。
 おもちゃを大切に、モノを大事に、というのは全ての親が子どもに言う当たり前の教えだと思いますが、この作品にはなぜ大切にしなければいけないのか、という本質が描かれているような気がします。また、物語がうさぎ目線で描かれているので教訓的にならず、押しつけがましくもなく、優しくじんわりと心に染み込んできます。モノが溢れる現代、ついつい使い捨てしたり粗末にしたりしがちですが、モノを大切にする心の尊さを改めて教えてくれる、大人にとっても読みごたえのある絵本ではないかと思います。
 そして、物語の雰囲気を見事に表現しているのが酒井駒子さんの美しい絵。風格・重厚さと可愛らしさが同居する不思議な魅力を持つ絵です。


子うさぎましろのお話 (おはなし名作絵本 3)

子うさぎましろのお話 (おはなし名作絵本 3)
【あらすじ】
 クリスマスの日、子うさぎのましろは、サンタクロースのおじいさんからプレゼントをもらいました。しかし、もうひとつプレゼントが欲しくなったましろは体に炭をこすりつけて、黒いうさぎに。別のうさぎになりすましたましろがサンタクロースのおじいさんに会いに行くと、おじいさんは小さな種をくれて――。

 こちらは日本を代表するクリスマス絵本、『子うさぎましろのお話』。文は佐々木たづさん、絵は三好碩也さんです。
 物語は子どものうさぎが欲張って、プレゼントを余計にもらおうとするというシンプルなものですが、この作品も『ビロードのうさぎ』同様、単なる教訓話に終わらない深い作品となっています。
 子どもが嘘をついたとき大人はどうすればいいのか、そして子どもの心はどういう状態になるのか、そういった心理描写的な部分が絶妙だと思うのですが、それを人間同士の話でなく、うさぎとサンタのおじいさんの話にすることによって、物語の世界に入り込みやすく、また共感しやすくなっていますね。ましろというキャラクターも秀逸で、悪い事をしてしまうのですが憎めない可愛らしさが前面に出ていて、子どもの特徴をうまく具現化したキャラクターだと思います。
 もちろん絵も素晴らしいです。ベースは白で、そこにパステルのような線画でちょこちょこ色が付けられています。描き込みすぎないことで白さが目立って、雪の降り積もった冬の雰囲気がよく表わされています。


羊男のクリスマス (講談社文庫)

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【あらすじ】
 クリスマスソングを作曲するよう依頼された羊男。ところが、クリスマスが近づいてもなぜか作曲が進みません。羊男が羊博士に相談すると、羊にとって神聖な日である聖羊祭日には穴の開いた食べ物は食べてはいけないのに、羊男がドーナツを食べてしまったせいで呪いがかかったのが、作曲が進まない理由だと言われます。困った羊男は穴の開いていないドーナツを手に旅に出て――。

 小説家村上春樹さんと漫画家であり絵本画家でもある佐々木マキさんがタッグを組んだ絵本『羊男のクリスマス』。
 あらすじを読んで分かるように何だかわけの分からないめちゃくちゃな話で、ストーリーもあるようでないような不思議な物語です。直接クリスマスとはあまり関係ない感じなのですが、羊男や羊博士、ねじけや双子の女の子など、謎めいたキャラクターが次々と登場して、よく分からないけれどほのぼのとしてクスッと笑えて、ホッとできる絵本となっています。
 村上春樹さんはこういった独特の世界観の短編、ショートショートを多く書いている方ですが、この絵本は村上さんのお話だけでは完成しなくて、やはり佐々木マキさんのイラストが大きな役割を担っているように感じます。元々前衛的な作風で人気を得た漫画家だっただけあって、ポップさがありながらもどこか抜けていて、軽みのある絵なんですね。その抜け感と村上さんの文章の抜け感とがうまい具合にハマっていて、見事な相乗効果を生み出している絵本です。
 ここでは手に入りやすい講談社文庫版を提示しましたが、絵本なので単行本で読んだ方が絵も存分に楽しめて、より絵本感も味わえるのではないかと思います。
 ちなみに“羊男”というのは村上さんの長編小説『羊をめぐる冒険』で初登場し、その後の作品でもチラホラ登場する謎のキャラクターです。同じく村上さんと佐々木さんがコラボし、羊男が登場する『ふしぎな図書館』も良いです。


アンナの赤いオーバー (児童図書館・絵本の部屋)

アンナの赤いオーバー (児童図書館・絵本の部屋)
【あらすじ】
 去年の冬、アンナのオーバーは小さくなっていたので、戦争が終わったら新しいのを買ってもらうことをお母さんと約束していました。そして戦争は終わりましたが、家にお金はなく、お店にも物はありませんでした。お母さんは一からオーバーを作ることを考え――。

 実話を基にした絵本『アンナの赤いオーバー』。作者はハリエット・ジィーフェルトさん、絵はアニタ・ローベルさんです。
 この絵本の最大の魅力は、何もないところから一つのオーバーが出来上がっていく詳しい過程が描かれていることです。金時計と引き換えに羊毛をもらって、ランプと引き換えに羊毛を紡いでもらって、紡いだ毛糸を赤く染めるためにコケモモを摘みます。今はお金さえ払えば簡単にモノが手に入る時代ですが、そうではない時代があり、オーバーひとつ作るということがどれだけ大変なことなのかということが、理屈ではなく実感としてよく分かります。
 モノがないからこそ、モノを大切にする人々の心の豊かさに、温かくなれる絵本です。


 続いて、宮沢賢治の冬の絵本2冊です。


氷河ねずみの毛皮 (日本の童話名作選)

氷河ねずみの毛皮 (日本の童話名作選)
【あらすじ】
 ひどい吹雪に見舞われた12月26日のイーハトヴの停車場、ベーリング行きの急行列車が午後8時に発車します。列車には顔の赤い肥った紳士や痩せた赤ひげの男、船乗りの青年などが乗っていました。列車は一路ベーリングへ向けて、吹雪の中を走りますが――。

 宮沢賢治作『氷河ねずみの毛皮』は、宮沢賢治の童話の中でもさほど知名度が高い作品とは言えませんが、賢治らしさがところどころに読み取れる隠れた名作です。
 宮沢賢治という人は季節の空気や雰囲気を見事に書き表す童話作家ですが、中でも私は冬を描いた童話が好きです。冬特有のピリピリした空気、凍てつくような風、陰影の深い空や大地、そうした冬の雰囲気が肌に伝わるような生々しさを持って描かれています。
 この『氷河ねずみの毛皮』もそうした“冬感”満載の作品ですが、それと同時に自然VS人間という賢治童話の特徴がよく表れた作品でもあります。さりげなくではありますが、動物を殺してその毛皮を利用する人間への警鐘が鳴らされていて、考えさせられるところもありますね。
 絵を描いているのは絵本画家でイラストレーターの木内達朗さん。『急行「北極号」』のクリス・ヴァン・オールズバーグさんの絵とも似ていますが、より重厚かつ陰影が深くて、怪しげでどこか不気味な雰囲気が漂う『氷河ねずみの毛皮』の世界を見事にビジュアル化しています。


雪わたり (ミキハウスの絵本)

雪わたり (ミキハウスの絵本)
【あらすじ】
 雪がすっかり凍ったある日、四郎とかん子の兄妹が雪靴を履いて森の近くまで出かけると、森から白い狐の子がやって来ました。黍団子をあげようと言う狐の紺三郎に、思わずかん子は偽物だろうと言ってしまいます。気を悪くした紺三郎でしたが、狐が嘘つきじゃないことを証明するために二人を幻燈会に招待すると言います。幻燈会の入場券をもらった四郎とかん子は十五夜の夜、森を訪れますが――。

 こちらも宮沢賢治の冬の名作『雪わたり』です。
 大人の世界を描いた『氷河ねずみの毛皮』とは対照的に、『雪わたり』は子どもの世界を描いています。また、前者は人間と自然が対立するさまを主題としていましたが、後者では人間の子どもである四郎とかん子の兄妹と狐の子どもである紺三郎とは、人間と動物という枠を超えて仲を深めます。自然や動物と対立せざるを得ない大人と違い、友達になれる子ども。こういう子どもの描き方も賢治は上手く、子どもというものの本質を突いているように感じます。
 絵を担当するのは方緒良さん。黒と白とグレーのみのモノトーンで描かれた世界からは、まさに空気も凍てつく真冬の感じがヒシヒシと伝わってきますし、この世のものでないようなきつねの世界の幻想的な雰囲気も表現されています。


 続いては、雪をテーマにしたこちらの絵本。


ゆきがやんだら (学研おはなし絵本)

ゆきがやんだら (学研おはなし絵本)
【あらすじ】
 ある朝、“ぼく”が起きたら外は雪が降り積もっていました。雪のせいで保育園はお休み、帰ってくるはずだったお父さんが乗った飛行機も止まってしまって、“ぼく”はママと家に二人きり。“ぼく”はほとんど見たことのない雪にワクワクしますが――。

 酒井駒子さんの絵本『ゆきがやんだら』。
 見慣れない雪を見て喜ぶ子どもを描いたシンプルな作品ですが、“雪”という非日常的なものに敏感に反応し、些細なことにも心をときめかせる子どもの特徴を絶妙にとらえています。また、主人公のうさぎの子は団地のようなところ、つまり普通の町に住んでいるのですが、滅多に雪が降らない地域に雪が降るとこういう感じになるよなぁという感じもうまく描き表わされていて、キャラクターは“うさぎ”ですが、リアリティが感じられます。
 良いなと思うのは、描かれている親子の在り方。雪が降って困ったな、予定が狂って嫌だなというのではなく、いつもとは違うからこそ、この特別な時間を親子水入らずで楽しもうというお話になっていて、子どもを包むお母さんの温かさ、優しさというのが伝わってきます。
 雪というのは不思議なもので、単なる自然現象に過ぎないのですが、雪が降るとまるで別世界のような、日常から切り離されたかのような感覚になります。酒井さんの絵は雪の降る日特有の沈んだ色合いで、そうした閉鎖的で非日常的な暗さをもきちんと描いています。


 最後は日本の冬の童話の名作です。


手ぶくろを買いに (日本の童話名作選)

手ぶくろを買いに (日本の童話名作選)
【あらすじ】
 きつねの親子が棲んでいる森に冬がやって来ました。きつねの子は雪に驚きながらも洞穴を出て、雪の中で遊び回りますが、その手は雪にかじかんで牡丹色になってしまいました。子ぎつねに手袋を買ってやろうと考えた母さんぎつねは、子ぎつねの片方の手を人間の手に変えて、子ぎつね一人で人間の町に行かせますが――。

 童話作家、新美南吉の名作『手ぶくろを買いに』。
 あまりにも有名なので、あえて私が書くこともないのですが……。子どもの頃読んだ時は単純に、子どもに手袋を買ってやりたいと思う母親の愛情、子ぎつねの手を見ても何も言わなかった帽子屋さんの優しさが印象に残り、ハートウォーミングな童話だなと感じました。ですが大人になって読むと、、黙って子ぎつねに手袋を売ってくれた帽子屋の気持ち、人間は恐くないと言う子ぎつねの純粋さ、その言葉を聞いた母さんぎつねの複雑な心情など、考えさせられたり想像させられたりするところも多くて、それだけ重層的で深みのある作品なんだなと改めて思いました。
 この絵本は黒井健さんが絵を描いたバージョンで、黒井さんらしい柔らかくて温かみのある絵が物語の雰囲気とよく合っていて、おすすめです。


 以上が、冬に読みたい絵本・私的10撰です。どれもわりと有名というか、冬の絵本としては定番のものばかりになってしまったような気がしますが、ぜひ、ご参考になさって下さい。


【ブログ内関連記事】
秋に読みたい絵本・私的10撰 2013年9月21日
宮沢賢治の絵本・私的10撰 2014年9月20日  記事内で『雪わたり』『氷河ねずみの毛皮』を取り上げています。
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by hitsujigusa | 2013-12-15 02:45 | 絵本 | Trackback | Comments(0)

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 グランプリファイナル2013、全ての競技が終了しました。この記事では、女子フリー、ペア、アイスダンスについて書いていきます。
 女子シングルを制したのは浅田真央選手です。昨年に引き続き2連覇、通算4度目の優勝となりました。2位にはロシアのユリア・リプニツカヤ選手、3位にはアメリカのアシュリー・ワグナー選手が入りました。
 ペアの優勝者はドイツのベテラン、アリオナ・サフチェンコ、ロビン・ゾルコビー組で、こちらも4度目のファイナル制覇です。
 そして、アイスダンスではアメリカのメリル・デイビス、チャーリー・ホワイト組が5連覇という快挙を成し遂げました。

ISU Grand Prix Final 2013/14 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 女子シングルで金メダルを獲得したのは浅田真央選手です!

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 今大会ではフリーで挑むトリプルアクセルの数を2本に増やし、より挑戦的な演技構成に変更してきた浅田選手。1本目の3アクセルは回転は認定される出来だったものの、転倒してしまいます。続く2本目の3アクセルは回転不足で両足着氷となり、コンビネーションにすることは出来ませんでした。しかし、次の3フリップをしっかり降りると、後半の2アクセル+3トゥループも見事に成功。終盤のステップシークエンスもスピードのある滑りで、最後まで迫力ある演技を見せました。
 3アクセルの失敗は残念でしたが、2本の3アクセルを入れるという構成はNHK杯後に練習をやり始めたばかりだそうなので、今後の課題としてまた楽しみがひとつ増えたなという感じですね。
 今回の演技で最も良かったのは、3アクセル2本の失敗を後に引きずらなかったことですね。ダブルになってしまうことが多かった3サルコウや、スケートアメリカで3アクセルの転倒があった際は回避した2アクセル+3トゥループなど、予定どおりのジャンプをきちんと跳べていたのが素晴らしかったです。また、スケートアメリカでは冒頭の転倒によってエネルギーを消耗し、後半はスピードが落ちてしまったのですが、今回は同じように転倒があってもラストまでしっかり滑れていましたし、身体もよく動いていました。これも浅田選手にとって、ひとつの成長、前進だと思います。
 ファイナルでの優勝によってオリンピックに大きく近づいた浅田選手ですが、そういったことは意識せず、自分が目指す高みへ向けて淡々と取り組んでいる姿が印象に残りました。全日本選手権では、今大会同様に完璧なショートプログラムが演じられるように、そして、今大会では悔いの残ったフリーの挽回が出来るように祈っています。
 グランプリファイナル2連覇&4度目の優勝、おめでとうございます!


 銀メダルを獲得したのは、ロシアのユリア・リプニツカヤ選手です。

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 冒頭の3ルッツ+3トゥループを決めると、次の2アクセル+3トゥループ+2トゥループの3連続ジャンプも成功。その後のジャンプも次々と決め、前日は取りこぼしがあったスピンも全てレベル4を獲得しました。ルッツのロングエッジ(エッジ違反)や小さな回転不足はあったもののほぼパーフェクトな演技で、ショート4位から総合2位に順位を上げました。
 2週間前のロステレコム杯では優勝こそしましたが、フリーではミスを連発してしまったリプニツカヤ選手。あれから短期間でまた別人のように安定感あるジャンプを取り戻し、2戦2勝の強さを見せてくれましたね。ロシアの五輪代表選考は欧州選手権まで続くそうなので、まだまだ予断を許しませんが、次戦も頑張って欲しいと思います。


 3位となったのはアメリカのエース、アシュリー・ワグナー選手。

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 3フリップ+3トゥループはショート同様、きれいに降りたかのように見えましたがアンダーローテッド(1/4以内の回転不足)。以降のジャンプはクリーンに決めますが、後半の3ルッツで転倒すると、3ループ、3フリップからのコンビネーションで回転が足りず両足着氷気味に。終盤は疲労も見え、勢いがなくなってしまいましたが、最後は力を振り絞って滑り切りました。
 いつもは最後まで余裕とスピードのある演技が持ち味のワグナー選手なのですが、今回は後半のジャンプの転倒に体力を奪われたのでしょうね。グランプリファイナルという精神的な重圧もあったかもしれません。
 フリーの「ロミオとジュリエット」も、最初はワグナー選手っぽくない選曲だなという印象でしたが、シーズンを追うごとに音楽表現という意味でも馴染んできているように感じました。
 アメリカの五輪代表選考は全米選手権での一発勝負だそうですが、今のワグナー選手なら大丈夫だろうと思います。ソチ五輪でワグナー選手の演技が見られることを、楽しみにしています。


 表彰台まであと一歩、4位となったのは現ジュニア女王、エレーナ・ラディオノワ選手です。

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 ショートに続き、大技3ルッツ+3トゥループをクリーンに決めると、3フリップ、3ループ+1ループ+3サルコウのコンビネーションも成功。波に乗ったかに見えましたが、3ルッツで珍しく転倒してしまいます。しかしそこからはきっちり立て直し、終盤のステップシークエンスでは全身を大きく使ってノリノリの演技を披露。フィニッシュまでラディオノワ選手らしく元気いっぱいに演じ切りました。
 ジャンプの転倒があって完璧なフリーとはいきませんでしたが、そのなかでもエネルギッシュさや明るさを失わず、笑顔で滑っていたのが印象的でした。
 ラディオノワ選手は年齢制限のため、欧州選手権やオリンピック、世界選手権には出場できないので、今シーズン、彼女の演技を見るのは最後になるかもしれないですが(世界ジュニアに出る可能性はあるのかな?)、楽しみながら滑っている姿には元気をもらいましたね。来シーズンも期待しています。


 5位となったのはロシアのアデリーナ・ソトニコワ選手。

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 演技冒頭、ショートでは外した大技3ルッツ+3ループに挑み、見事に成功。ルッツでロングエッジを取られたものの回転は認定され、上々のスタートとなりました。しかし苦手としている3フリップで着氷を乱すと、続く3ループがまさかの1回転に。後半一発目の2アクセル+3トゥループはしっかり降り、何とか演技を立て直そうとしますが、その後も3フリップと3サルコウで転倒、単独の2アクセルも着氷が乱れるなど、ほとんどのジャンプでミスが出てしまいました。
 ショートで最高の滑り出しとなっただけに、フリーでの大崩れは予想外でした。五輪代表争いから一歩抜け出すために、このファイナルでの表彰台というのは大きなポイントだったのだろうと思いますが、それが逆にプレッシャーとなってしまったのかもしれませんね。
 ですが、3ルッツ+3ループは素晴らしい出来でしたし、物凄いポテンシャルを秘めた選手だというのが改めて感じられました。次のロシア選手権では良い演技が出来ることを願っています。


 6位に終わったのはロシアのアンナ・ポゴリラヤ選手です。

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 大技3ルッツ+3トゥループはいつもどおりの安定感で見事に成功。その後もポンポンとジャンプを決めていき、ショートでは跳べなかった2アクセルもクリーンにとはいかなかったものの何とかまとめます。しかし終盤の方はスタミナが切れたのかスピードが落ち、最後の3フリップで転倒。最後は動きにキレがなくなり、タイムオーバーとなってしまいました。
 途中まではとても良い感じだったのですが、苦手としている2アクセルにかなり神経をすり減らしてしまったのかなという印象でした。苦さの残る初GPファイナルとはなりましたが、ここでの失敗が今後の五輪選考に向けて良い経験になったのではないかと思います。ロシア選手権も頑張って欲しいですね。



 続いてペアについて。
 ペアを制したのはドイツの実力者、アリオナ・サフチェンコ、ロビン・ゾルコビー組です! ショートではほぼ完璧な演技でパーソナルベストを叩き出しましたが、世界チャンピオンのボロソジャー、トランコフ組に甘んじて2位。しかし、フリーでも好演技で自己ベスト、見事な逆転優勝となりました。昨シーズンはサフチェンコ選手の体調不良の影響でGP1試合のみの出場、欧州選手権でも世界選手権でも2位と、満足いくシーズンとはなりませんでした。ですが、今シーズンはGP2戦2勝でファイナル進出、そして2年ぶりの優勝。総合得点でも10点近く自己ベストを更新し、オリンピックに向けて弾みがついた形となりました。正直、昨季からのボロソジャー、トランコフ組の勢いがすさまじかったので、ほかのペアはかなわないんじゃないかと思っていましたが、元世界王者の意地、強さを見せましたね。通算4度目のファイナル制覇、おめでとうございます。
 そして、2位となったのがロシアのタチアナ・ボロソジャー、マキシム・トランコフ組です。ショートは2位におよそ3点差をつけるチャンピオンらしい貫録の演技で首位に立ち、このままフリーまで行きそうな雰囲気があったのですが、フリーでは2度のジャンプミス、スピンでもレベルの取りこぼしがあり、総合2位に沈みました。GP2戦で抜群の安定感を誇っていたので、ミスを連発してしまったというのはびっくりしました。ただ、それでもボロソジャー、トランコフ組は断トツの世界歴代最高得点を持っていますから、このペアの圧倒的な強さに変わりはありませんね。次戦では、完璧なフリーができると良いですね。
 3位となったのは中国の龐清(パン・チン)、佟健(トン・ジャン)組です。ショートではトリプルツイストでのレベルの取りこぼしがありましたが、ミスらしいミスはなく3位。フリーでも細かなミスはあったものの、減点要素のない安定した演技で、2年連続の銅メダル獲得となりました。


 アイスダンスの優勝者は、アメリカのメリル・デイビス、チャーリー・ホワイト組です。ショート、フリーともに非の打ちどころのない演技でパーソナルベスト(=世界歴代最高得点)を更新。グランプリファイナル5連覇という快挙を成し遂げました。もちろん、この記録はアイスダンス以外の種目でも成し遂げられていない驚異的な優勝回数&連覇回数です。デイビス、ホワイト組がオリンピックに出場してくることは間違いないでしょうが、バンクーバー五輪は惜しくも2位でしたからね、ソチ五輪にかける想いは相当なものだろうと思います。ぜひ、ソチでもこのような、もしくはこれ以上の演技を見せて欲しいですね。ファイナル優勝、おめでとうございました。
 僅差の2位となったのは、カナダのテッサ・ヴァーチュー、スコット・モイヤー組です。ショートはデイビス、ホワイト組に0.07点差の2位、フリーでも1.28点差の2位と、惜しくも及ばなかったものの、ほとんど差のないパーフェクトな演技を披露。こちらも自己ベストを更新しました。デイビス&ホワイトとヴァーチュー&モイヤー、他のカップルとは全くの別次元を行くこの2組が、五輪の金メダルを争うことは必至ですね。
 銅メダルを獲得したのは、フランスのナタリー・ペシャラ、ファビアン・ブルザ組。ツイズルでレベルの取りこぼしがあり、点を伸ばすことができず5位発進となります。しかしフリーではショートのミスを挽回し、本来の演技でフリー3位、総合でも3位に滑り込みました。



 4年ぶりの日本開催となったグランプリファイナル2013。昨年に引き続き、日本勢の男女ダブル優勝という嬉しい結果となりました。また、4種目全体を見渡してみると、女子シングルの浅田選手は4度目の優勝、ペアのサフチェンコ、ゾルコビー組も4度目の優勝、アイスダンスのデイビス、ホワイト組に至っては5連覇という、複数回のファイナル優勝経験者の強さが目立った大会となりました。その中で唯一、優勝無経験者である男子シングルの羽生結弦選手の初優勝は、新しい世代の台頭を象徴する、また、ソチ五輪後の世代交代を予感させる優勝となったのではないかと思います。
 ソチオリンピックを2か月後に控え、実に見応えのあるグランプリファイナルでした。選手の皆さん、素晴らしい演技をありがとうございました。そして、お疲れ様でした。オリンピック出場に向けて、次の大会でもまた良い演技を楽しみにしています。


:女子シングルメダリスト3選手のスリーショット写真、リプニツカヤ選手の写真、ワグナー選手の写真、ラディオノワ選手の写真、ポゴリラヤ選手の写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、浅田選手の写真は、毎日新聞のニュースサイト内の写真特集「フィギュア:浅田真央が連覇 GPファイナル女子」から、ソトニコワ選手の写真は、朝日新聞のニュースサイト「朝日新聞デジタル」内のフォトギャラリー「フィギュアスケート グランプリファイナル」から引用させていただきました。


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by hitsujigusa | 2013-12-08 22:01 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 グランプリファイナル2013、男子の競技が終了しました。男子シングルを制したのは羽生結弦選手です!ミスもありましたが、その中でも安定したジャンプを次々と成功させ、ファイナル初優勝となりました。銀メダルを獲得したのはパトリック・チャン選手、3位は織田信成選手となっています。

ISU Grand Prix Final 2013/14 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 見事、ファイナル初制覇を成し遂げたのは羽生結弦選手です!

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 冒頭の4サルコウは回転し切っていたものの転倒、しかし次の4トゥループでは前日のショート同様、美しく流れのあるジャンプを跳び演技を立て直します。その後のジャンプも質の良い、クリーンなものを次々と成功させました。後半は疲れも見え、最後のスピンではよろけもしましたが、全力を出し切って力一杯「ロミオとジュリエット」を演じました。
 得点は193.41点、これまでの自己ベストを15点以上更新、総合得点でも30点近く上回る得点で、断トツの優勝を決めました。
 練習では成功させていた4サルコウで転倒してしまったのは残念でしたが、そのすぐあとに4トゥループをクリーンに決めたり、後半の2本の3アクセルをしっかり決めたりと、失敗を最小限に抑える強さ、ジャンプの安定感は素晴らしかったですね。4サルコウの転倒による体力の消耗もあったのか、後半はやはりガクンとスピードが落ち、スケートも小さくなってしまいましたが、それは羽生選手の以前からの課題なので、これからも地道に取り組み続けていくのみでしょうね。
 ただ、得点に関しては出過ぎ感が否めないですね。高難度のジャンプ構成を組んでいるので技術点が他選手と比べても高くなるのは分かるのですが、9点台がずらりと並んだ演技構成点はさすがに高過ぎかなと感じます。
 羽生選手自身は得点について、このように話しています。

◆◆◆◆◆

羽生、高得点も「正直ちょっと違う」ギャップに戸惑い=フィギュア

(高い演技構成点について)僕の中では良い部分がないなと感じています。いつもよりはジャッジの方向を向いていたと思いますし、ジャッジにも訴えかけようという気持ちはあったと思います。ただ僕の中では気持ちのほうが前に行っていて、スケートがついてきていないなとか、トランジションのステップが前だとか、けっこうあったと思うので、この点数がこの試合だけではなく、ほかの試合でもコンスタントに出していくことが課題かなと思います。

(ファイナルで勝ったというのは?)勝ち負けよりも自分がどれだけ成長できるかを重視していましたし、どんな経験をできるかを重点に置いて今回の試合に臨んでいました。今回の勝ちは、たまたまかなと思います。そう僕の中では思っています。SPが良かったからFSでも点数が出たのかなと。この大会はこの大会、ソチ五輪はソチ五輪、全日本選手権は全日本選手権。そのときで全然違ってくると思っています。

(点数が出たときに勝ったときの表情ではなかったが)僕の中ではあの点数が出るとは思っていなくて、正直ちょっと違うかなと。ただそれだけ評価をいただけたので、自分としては期待点と受け取って、またその点数をいろいろな試合で出せるようにしたいと思っています。


スポーツナビ 2013年12月6日 22:45 一部抜粋

◆◆◆◆◆

 フィギュアスケートの得点というものは大会によって変わってきますし、ジャッジによっても違います。今回は日本開催のGPファイナルということもありますし、ショートで素晴らしい演技をしてワールドレコードを出した流れが、そのままフリーに引き継がれたというのもあると思います。
 フィギュアの得点は非常に曖昧なものです。もちろん得点によって順位が決まるわけですから重要なものであることに違いないのですが、だからといって得点に振り回されてはいけないのだろうと思います。羽生選手は今大会でフリー歴代2位、トータル歴代2位の高得点を獲得しましたが、それが実際の演技に見合ったスコアでないことは羽生選手自身よく分かっているのだということが、上記の言葉から感じられました。これからも得点に左右されず、自分の中で納得、満足いく演技を追求し続けていって欲しいですね。
 得点のことばかり語ってしまいましたが、それは別としてショートとフリー合わせて優勝にふさわしい演技は出来ていたと思います。おめでとうございます。
 この結果によって、ソチ五輪の代表も大きく引き寄せた羽生選手。2週間後の全日本選手権も楽しみにしています!


 惜しくも2位となったのは、カナダのパトリック・チャン選手です。

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 序盤に組み込んだ2本の4トゥループをそつなく決めると、前日に失敗した3アクセルも成功。後半のジャンプもしっかりとまとめ、ほぼ完璧といって良い世界王者らしい演技を見せました。
 ただ、最後のスピンで珍しく体勢を崩して減点されるといったらしくないところもあり、今大会はやはり本調子ではなかったのかなという印象でした。演技全体のスピードや流れもいつもよりは若干劣っていたように見えましたし、4回転もこらえ気味な着氷が目立ったので。
 それでも、散々だったショートから1日でここまで立て直せるというのは、さすがパトリック・チャンと思わせられましたし、本当に強い選手の証だと思いますね。
 まだ正式にオリンピック代表と決定はしていませんが、彼が五輪に出場するのは確実でしょう。オリンピックの舞台でチャン選手がどのような演技を見せるか、今から戦々恐々&楽しみですね。


 銅メダルを獲得したのは織田信成選手です。

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 冒頭の4トゥループはスピードや高さが足りず転倒してしまいましたが、2本目の4トゥループ+3トゥループは見事に成功。その後も2本の3アクセル、今大会から取り入れた3ルッツ+1ループ+3サルコウの新しいコンビネーションと、NHK杯同様に次々とジャンプを決め、笑顔で滑り切りました。
 織田選手は演技後、ファイナル出場が決まる前日にスケート靴が壊れてしまい、新調していたことを明かしました。また、靴が新品なため硬くて膝をいつものように使えなかったとも。フィニッシュ後は右足を引きずるようにもしていて、新しい靴で滑る難しさは相当なものだったろうと想像します。その影響か、フリーはスピンでのレベルの取りこぼしが目立ってしまいましたが、その中であれだけのジャンプを跳べたのは凄いことですし、高橋大輔選手の欠場による繰り上がり出場ということを忘れさせてくれる素晴らしい演技でしたね。
 オリンピック出場のためには全日本選手権という大きな関門が残っていますが、このファイナルの勢いを繋げて、織田選手らしい笑顔溢れる演技をまた見せて欲しいと思います。


 町田樹選手はショート6位から挽回し、最終的に4位となりました。

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 町田選手は冒頭の4トゥループを決めると、続く4トゥループに2トゥループを付けコンビネーションにします。その後のジャンプもしっかりまとめ、壮大な旋律に乗って力強く“火の鳥”を演じました。フィニッシュポーズを解くと町田選手は両手で顔を覆い、感極まった表情で涙を拭いました。
 今大会の町田選手は必ずしも好調という感じではなく、ジャンプもこらえる着氷が所々で見受けられました。得点的にもグランプリ2戦を下回ってしまいました。ですが、個人的にはこのファイナルの「火の鳥」は今シーズン最高の「火の鳥」だったと思います。ショートで大きく出遅れ昨年のファイナルの二の舞になり兼ねない状況で、1年前とは明らかに違う、町田選手の成長が如実に表れていました。演技内容的には満足いくものではないでしょうが、何よりこのフリーに全てをぶつけようという“気持ち”、“魂”が見える演技、そして、人間・町田樹の生き様が凝縮された演技でした。
 まだまだオリンピック代表に向けた正念場は続きますが、全日本ではショート、フリーともに笑顔で終われるよう祈っています。


 5位はロシアのマキシム・コフトゥン選手です。

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 ここまでのシーズンでは3本の4回転をフリーに組み込んでいたコフトゥン選手でしたが、今回は2本に減らしました。1本目の4サルコウは着氷が乱れ不完全なものとなりますが、2本目の4トゥループはきっちりと着氷をまとめました。その後のジャンプは詰まり気味の着氷が散見されましたがミスらしいミスはなく、自己ベストを更新する164.32点をマークしました。
 アピールポイントの4回転でミスが相次いでしまった今大会でしたが、一流選手が集まるハイレベルな大会でこうした経験を積めたのは、これからのコフトゥン選手にとって大きな財産となるのではないでしょうか。
 自国開催のオリンピックに向けてはあまりにも手強い先輩が立ちはだかっていますが、頑張って五輪の切符を勝ち取って欲しいと思います。


 6位となったのは中国の閻涵(ヤン・ハン)選手です。

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 演技冒頭、ショートではクリーンに決めた3アクセルは転倒。しかし4トゥループ+3トゥループはしっかりと降り、そのほかのジャンプも単独の3ルッツで少々減点された以外はほぼ予定どおりにこなしました。スコアも中国杯で出したパーソナルベストに迫る得点で、コフトゥン選手同様、ショートでのミスを挽回した形となりました。
 今大会、閻選手のフリー演技で注目していたのは冒頭の3アクセル。GP2戦ともショートでは見事な3アクセルを見せてくれたのですが、フリーではあえなく失敗。ショートで跳ぶのとフリーで跳ぶのとでは精神的な重圧が違うのかもしれませんが、ショートではあんなに綺麗に成功させるのにと思うと、もったいないなーと勝手に悔しい感じさえしていました。残念ながら今回も失敗に終わりましたが、まだ17歳。これからの成長が楽しみな選手だと、改めて感じました。
 オリンピック代表目指して頑張って欲しいと思います。



 グランプリファイナル2012の高橋大輔選手の初優勝に続き、日本勢の2連覇となった男子シングル。日本勢VS世界王者パトリック・チャンという構図が注目されましたが、今回は羽生選手の圧勝という形で幕を閉じました。しかしチャン選手の存在感もさすがのもので、オリンピックがますます予想のつかないものになりましたね。2014年2月14日、ソチの表彰台でいちばん高いところに立っているのは誰か……。今から楽しみです!


:男子シングルメダリスト3選手の写真、コフトゥン選手の写真、閻選手の写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、羽生選手の写真、チャン選手の写真、織田選手の写真、町田選手の写真は、毎日新聞のニュースサイト内の写真特集「フィギュアGPファイナル2013」から引用させていただきました。


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by hitsujigusa | 2013-12-07 17:21 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 グランプリファイナル2013in福岡、女子ショートプログラム編です。
 ショート首位に立ったのは浅田真央選手です。ほぼ完璧な演技で唯一の70点超えとなりました。僅差の2位となったのはロシアのアデリーナ・ソトニコワ選手、3位はアメリカのアシュリー・ワグナー選手となっています。

ISU Grand Prix of Figure Skating Final この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 素晴らしい演技で1位となったのは浅田真央選手です!

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 冒頭の大技、トリプルアクセルはジャンプに入るスピード、高さ、着氷後の流れともにパーフェクト。続く3フリップ、後半の3ループ+2ループもしっかりと決めると、流れるような軽やかなステップシークエンスを披露、最後まで流れの途切れることのない演技を見せました。
 フィニッシュを迎えた浅田選手は満面の笑みを浮かべ、控えめながらも何度も力強く拳を握り締めました。パーソナルベストもあり得るかなというくらいの完璧な出来でしたが、得点は72.36点。スケートアメリカで出したシーズンベストに次ぐ得点となりました。
 トリプルアクセルはスロー映像で見ても回転し切っているように見えましたが、残念ながらアンダーローテッド(1/4以内の回転不足)を取られてしまいました。どこをどう見たら回転不足になるんだ?と思うくらいの見事なトリプルアクセルだったので、回転が認定されなかったのはがっかりですが、判定がどうのこうのよりも浅田選手自身の笑顔が全てを物語っていましたね。
 フリーでは2本のトリプルアクセルに挑む予定という浅田選手。NHK杯後にはフリーの手直しもしていますので、さらに磨きがかかった「ピアノ協奏曲第2番」になっているのではないかと思います。
 フリーでも再び、最高の演技、笑顔が見られることを楽しみにしています。


 2位となったのは2013年欧州選手権銀メダリストのアデリーナ・ソトニコワ選手です。

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 グランプリ2戦では3ルッツ+3ループという女子では最高難度のコンビネーションジャンプを構成に組み込んでいましたが、今回は安全策を取って3トゥループ+3トゥループに変え、そつなく成功。そのほかの3フリップ、2アクセルもソトニコワ選手らしいダイナミックなジャンプで、ステップ、スピンでは全てレベル4を獲得。演技後は大きく手を叩き、満足した表情を見せました。得点は68.38点でパーソナルベスト、技術点は全選手中トップをマークしました。
 シニアに上がってからは相当ジャンプに苦労していたソトニコワ選手でしたが、ここに来てようやく彼女本来のジャンプが戻ってきたなという印象ですね。シーズン初戦の中国杯はまだ取りこぼしもチラホラありましたが、シーズンを追うごとに完成度は高まっているように感じます。ソトニコワ選手のジャンプは決まるととにかく高さがあって、パワフルでありながらもふわっと浮き上がるような軽やかさもあって見栄えがします。ステップ、スピンでも年々安定感が増してきて、見ていて安心感がありますね。
 フリーは3週間前のエリック・ボンパール杯で自己ベストを更新したばかり。このファイナルでもまたあのような演技を期待しています。


 3位はアメリカ女王、アシュリー・ワグナー選手。

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 冒頭の3フリップ+3トゥループはGP2戦同様にきっちり決め、3ループ、2アクセルも問題なし。ピンク・フロイドの「クレイジー・ダイアモンド」に乗せた、力強さと女性的な柔らかさのある滑りで貫録たっぷりの演技を披露しました。
 昨シーズンは3+3を入れず3+2で“守って”いたワグナー選手でしたが、今季はシーズン最初から3+3を跳んでいて、しかもほとんどミスらしいミスがありません。アメリカのエースとして相応しい演技をしよう、そしてそれが出来るという自信に満ち溢れているように感じますね。
 スケートアメリカでのシーズンベストには及びませんでしたが、高得点の68.14点。ステップシークエンスがレベル3になるという取りこぼしで3位発進とはなりましたが、2位のソトニコワ選手とは0.24点の小差、まだまだ逆転優勝可能な状況です。ワグナー選手らしい演技をフリーでも見せて欲しいですね。


 4位となったのはロシアのユリア・リプニツカヤ選手です。

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 大技3ルッツ+3トゥループはいつもどおり完璧に成功させたかに見えましたが、ルッツがロングエッジで微小の減点を受けます。その後のジャンプは加点のもらえる質の良いものを跳びましたが、ステップシークエンスでレベル3、得意としているレイバックスピンでもレベル3となりました。しかし、演技全体の流れ、エレメンツ一つ一つのクオリティーは素晴らしいもので、リプニツカヤ選手自身も演技後は満足したような笑みを浮かべました。ロステレコム杯で出した自己ベスト(=72.24点)に迫るスコアが期待されましたが、細かな取りこぼしが響いてグランプリ2戦よりも低い得点となってしまいました。
 リプニツカヤ選手に限ったことではないのですが、このファイナルの女子ショートは全体的に点が厳しめでしたね。ほとんどの選手がほぼ完璧な演技内容で、それぞれ自己ベストが出てもおかしくないくらいの素晴らしい演技が続いたのですが、採点表を見るといつもはレベル4を得ているステップやスピンがレベル3になっていたりと、厳しい判定が目立ちました。
 キス&クライで得点を見たリプニツカヤ選手の表情は硬く、予想と違っていたのだろうということがうかがえました。フリーでは気を取り直して、頑張って欲しいと思います。


 5位に立ったのはロシアのエレーナ・ラディオノワ選手です。

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 トップバッターで登場したラディオノワ選手。初出場で緊張してるかな?と思いましたが、3ルッツ+3トゥループ、3ループ、2アクセルと次々にジャンプを決め、ステップ、スピンでも全てレベル4を獲得、ファイナル初出場とは思えない堂々としたスケートを見せてくれました。
 今大会、女子はロシア勢が4人出場していますが、ラディオノワ選手は唯一オリンピックの選考と無関係ということで、その分ほかのロシアの選手と違ってのびのびと演技できるのではないかと思います。8年前の浅田選手の姿とも重なりますね。
 ショート5位とはなりましたが、首位の浅田選手までは約8点差、表彰台までも約3点差。かなり詰まっていますので、フリー次第で大きく順位が変動する可能性も高いです。若さ溢れるはつらつとした演技を、フリーでも期待しています。


 6位発進となったのはロシアのアンナ・ポゴリラヤ選手。

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 3ルッツ+3トゥループのコンビネーション、単独の3ループと序盤はスムーズにエレメンツをこなしていきましたが、2アクセルがすっぽ抜け0点となる大きな失敗、59.81点の最下位となってしまいました。
 ポゴリラヤ選手はアクセルジャンプを苦手にしているようで、ここまでの大会でも失敗が目立っています。大きな得点源となるようなジャンプではありませんが、ショートでもフリーでも必ず跳ばなければいけないジャンプです。多くの選手が普通に難なく跳ぶ中、このジャンプで毎回のように失敗してしまうと、その分ほかの選手に後れを取ってしまうこととなります。せっかく高難度のジャンプを安定的に跳べても、簡単なジャンプでロスしてしまうのはもったいないですからね。ポゴリラヤ選手にとってアクセルが泣き所とならなければよいのですが……。
 フリーではぜひ、挽回できることを願っています。


 大きな失敗が相次いだ男子ショートプログラムとは対照的に、好演技が続いた女子ショート。フリースケーティングは7日です!


:女子ショートプログラム上位3選手のスリーショット写真は、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、浅田選手の写真、ソトニコワ選手の写真は、毎日新聞のニュースサイト内の写真特集「フィギュア:女子SP 真央も1位 声を弾ませ「よし!」」から、ワグナー選手の写真、リプニツカヤ選手の写真、ラディオノワ選手の写真、ポゴリラヤ選手の写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。


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グランプリファイナル2013・男子ショートプログラム―羽生結弦選手、世界歴代最高得点で首位発進 2013年12月6日
グランプリファイナル2013・男子フリー―羽生結弦選手、パーソナルベストでGPファイナル初優勝 2013年12月7日
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by hitsujigusa | 2013-12-06 19:11 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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※12月8日、一部追記しました。

 グランプリファイナル2013が福岡にて開幕しました。グランプリファイナルはグランプリシリーズ全6戦の合計ポイント上位6名で争われる国際大会。オリンピックの前哨戦とも言われる大会で、出場する各選手にとってはオリンピック代表入りに向けた重要な試合ともなります。
 まずは男子のショートプログラムの結果、内容についてこの記事で書いていきます。男子ショートプログラム、1位となったのは日本の羽生結弦選手。何と世界歴代最高得点を更新しての首位です。2位には現世界チャンピオン、パトリック・チャン選手、3位には織田信成選手が入りました。

ISU Grand Prix of Figure Skating Final この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 ショート1位は羽生結弦選手です!

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 圧巻!としか言いようのない演技でしたね。冒頭の4トゥループ、3アクセル、3ルッツ+3トゥループと、ジャンプは全て完璧。特に3アクセルは後ろ向きに滑ってきてターンして前向きになってすぐに跳ぶという、難しい入り方。どのジャンプも高さ、飛距離、流れの全てが見事なもので、圧倒されました。
 ステップシークエンスは今までの振り付けに加えて、さらに動き、仕草がプラスされていて、これまでに増してエネルギッシュかつ、見栄えのするステップになっていましたね。やはり3つのジャンプ要素をパーフェクトに決めたということで気持ち的にも乗っていたのか、いつもよりも迫力やスピードがあって、ノリ過ぎて転んだらどうしようとヒヤヒヤするくらいの勢いでした。
 最後のコンビネーションスピンは少しよろける場面があり、そこはご愛嬌でしたが、最初から最後まで羽生選手らしい演技を見せてくれましたね。
 観客の歓声、リンクに投げ込まれる大量のプレゼントが演技の素晴らしさを物語っていましたが、出た得点はそれに呼応するような高得点、99.84点。もちろん自己ベスト、そしてパトリック・チャン選手が数週間前のエリック・ボンパール杯でマークした世界歴代最高得点を更新する驚異のスコアでした。
 得点が出た瞬間こそ、羽生選手は呆気に取られたような驚きの表情で喜びを隠しませんでしたが、その後の会見の様子を見ると、浮かれたような表情は見せず、落ち着いた口調で淡々と演技を振り返っていました。2位以下に大差を付ける1位となったことで精神的な余裕も生まれてくるでしょうが、逆に良すぎたショートがプレッシャーになる可能性もあるので、フリーはフリーで新しい気持ちで臨んでくれたらなと思います。
 グランプリファイナル初制覇目指して、頑張って下さい!


 2位でショートを折り返すこととなったのは、カナダのパトリック・チャン選手。

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 冒頭の4トゥループ+3トゥループのコンビネーションジャンプはそつなく成功。4回転の着氷で少し詰まり気味になり、いつもほどの流れのあるジャンプとはなりませんでしたが、それでも王者らしい風格のあるジャンプを見せました。ただ、3アクセルの着氷でステップアウトすると、後半の3ルッツがダブルになるまさかのミス。ステップ、スピンではいつもどおりレベル4を獲得しましたが、3週間前のエリック・ボンパール杯のような本来のチャン選手の姿は見られず、得点は87.47点で2位発進となりました。
 つい先日のショートがとても良かったので、この内容は予想外でした。3アクセルは元々苦手にしているので失敗する可能性もあるかなと思っていましたが、ルッツでのミスは意外でしたね。
 チャン選手は羽生選手の次の次の滑走ということで、羽生選手が世界最高得点を叩き出したことは知らないで自分の演技に臨んだそうです。ただ、それまで滑った5選手のうち、良い演技をしたのは羽生選手だけで他の選手はそれぞれ失敗があったので、その流れにチャン選手も飲み込まれた感がありますね。
 スコア的にはまだまだ逆転可能な数字なので、果たしてフリーでチャン選手がどんな演技をするか、逆襲となるのか、楽しみにしたいと思います。


 3位となったのは織田信成選手です。

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 冒頭の4回転はスピードと高さが足りず、回転不足で転倒してしまいます。しかし、次の3アクセルは織田選手らしい飛距離も流れもある美しいジャンプを成功させると、後半の3ルッツ+3トゥループもルッツがロングエッジ(エッジの違反)を取られはしたものの、きっちりと決め、4回転の失敗をほかのジャンプでカバーしました。
 かなり緊張があって足が震えていたということで、織田選手の弾けるような元気は少し鳴りを潜めていたかなという感じでしたが、大崩れせず立て直したところはベテランらしい冷静さで良かったですね。
 高橋大輔選手の欠場によって回ってきたチャンスでしたが、全日本選手権に照準を合わせていたのを急にグランプリファイナルに変更しなければいけないのは大変だったのではないかと思います。ミスはありましたが、その中でもまずまずの演技は出来ていましたし、この勢いでフリーでも頑張って欲しいですね。


 4位は中国の新星、閻涵(ヤン・ハン)選手。

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 最初の3アクセルはやはり高さも飛距離も着氷後の流れもあるお手本のような3アクセル。気のせいかいつもよりはスピードは抑えられていたかなという印象もありましたが、良い出だしでした。しかし、次の4トゥループは回転は足りていたものの転倒、3ルッツからのコンビネーションジャンプも3+2になり、3+3にすることができませんでした。
 初出場のグランプリファイナルですから、尋常ならざる緊張があったのではないかと想像します。今までの大会にはない雰囲気に飲まれてしまった感じですが、ぜひフリーではのびのびとした演技が見られることを期待しています。


 5位はこちらもファイナル初出場の若手、ロシアのマキシム・コフトゥン選手です。

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 2本の4回転を予定していたコフトゥン選手。4サルコウは回り切って降りたもののステップアウトし、大きく減点される出来となります。次の4トゥループはこちらも回転はしていましたが転倒、3アクセルもシングルとなり、不本意な演技内容となってしまいました。
 グランプリ2戦であれほどの確率で成功させていた4回転が2つともああなってしまうというのは、やっぱりファイナルは別物なんだなと改めて感じました。ですが、ファイナルはあくまでファイナル、失うものはない大会だと思いますので、フリーでは思いっきり若さ溢れる演技を見せてほしいですね。


 最下位発進となってしまったのは、日本の町田樹選手です。

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 冒頭の4トゥループはすっぽ抜けて2回転になりましたが、次の3アクセルは高さのある見事なジャンプで立ち直ったように見えました。が、後半の3ルッツからの3+3が3+2に。ステップやスピンでもレベルの取りこぼしがあり、町田選手本来の演技とはなりませんでした。
 得点は65.66点という信じられないくらい低いもので、会場の観客からも「エーッ」という声が漏れました。私もそこまで低くしなくても……と思ったのですが、採点表を見ると、3+2のコンビネーションジャンプがノーカウント、つまり0点になっているんですね。ショートプログラムの規定では、同じジャンプを2度跳んではいけないことになっています。たとえば、3ループを跳んで2ループを跳ぶのはいいけれど、2ループを跳んで再び2ループを跳ぶのは規定違反ということになります(追記:言葉足らずなところがあったので付け加えますと、それぞれのジャンプ要素で同一のジャンプを跳んではいけないということです。たとえば、コンビネーションジャンプで3トゥループ+3トゥループを跳ぶことは許されていますが、3アクセル+3トゥループを跳んだ上で、さらに別のジャンプ要素で3トゥループを跳ぶのは違反になります)。今回の町田選手の場合、4トゥループが2トゥループになったので、もう1つ2トゥループを跳ぶことは出来なくなったのですが、3ルッツの着氷が詰まったために3トゥループを付けることができず、2トゥループを跳んだのがノーカウントを招いてしまいました。
 今シーズンの町田選手は精神的に強くなって、先々週のロステレコム杯でも調子の悪い中でジャンプを確実に決めて優勝するだけの強さを見せていたので、ファイナルも大丈夫だろうと思っていたんですが、なかなかうまく行かないものですね……。昨年のファイナルではショート最下位となり、フリーも挽回できないまま終わってしまったという苦い事実があるので、今年はそうならずに、フリーで立て直せると良いなと心から思います。
 町田選手らしい演技を楽しみにしています。


 男子ショートプログラムについての記事はとりあえずここまで。
 男子フリーはショートの翌日、6日に行われます。オリンピックにも繋がるこの試合がどのような決着を見るのか、目が離せませんね。


:男子ショートプログラム上位3選手のスリーショット写真は、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、羽生選手、織田選手、町田選手の写真は、毎日新聞のニュースサイト内の写真特集「フィギュア:男子SP 羽生が最高点99.84点で首位に」から、チャン選手、閻選手、コフトゥン選手の写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。


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by hitsujigusa | 2013-12-06 02:22 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)