欧州選手権2014について

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※1月23日、ロシアのソチ五輪代表について追記しました。

 ヨーロッパ王者を決める欧州選手権2014が1月13日から19日にかけて行われました。この大会の結果によってソチ五輪代表が決定する国もあるということで、例年以上に注目される、白熱した大会となりました。この記事では男子、女子、ペア、アイスダンスの結果を簡潔にまとめたいと思います。

European Figure Skating Championships 2014 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 男子シングルを制したのはスペインのハビエル・フェルナンデス選手。昨年に引き続き2連覇を達成しました。2位に入ったのはロシアのセルゲイ・ボロノフ選手、3位は同じくロシアのコンスタンティン・メンショフ選手となっています。

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 フェルナンデス選手はショートで完璧に4サルコウを決めると、3アクセル、3+3もしっかりまとめ、自身の持つパーソナルベストを更新、91.56点で首位に立ちました。
 フリーでは3本の4回転いずれも減点される出来となりましたが、転倒のような大きなミスはなし。ほかのジャンプでは3ルッツがダブルになるミスはあったものの、その他は予定どおりにこなし、首位の座を守り切りました。
 ここまでのシーズンではショート、フリーともに不本意な演技が多く、代名詞の4回転での失敗が目立ったフェルナンデス選手ですが、それと比べれば今大会は全体的にまとまった演技だったかなと思います。まだ4回転のミスは多く、絶好調の時のフェルナンデス選手には及んでいませんが、オリンピックに向けて良いイメージ作りができたのではないでしょうか。
 欧州選手権の男子シングルでの連覇は、2005、2006年のエフゲニー・プルシェンコ選手以来の快挙です。まだまだ若い選手ですので、これからの活躍にも期待大ですね。欧州選手権2連覇、おめでとうございます。そして、ソチ五輪も楽しみにしています。


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 銀メダルを獲得したボロノフ選手は、ショートで4+3をパーフェクトに成功。他のジャンプ、エレメンツでも大きな取りこぼしはなく、会心の演技。これまでの自己ベストを上回る85.51点で2位となりました。
 フリーでは2本の4トゥループに挑みましたが、残念ながらクリーンな成功とはならず。しかしそのほかのジャンプではミスといえるミスは無く、フリー2位。トータルでも2位となり、欧州選手権初めてのメダルを勝ち取りました。
 今季はGPシリーズのエントリーは1試合のみで、そこでは9位と振るいませんでした。ですがそれ以外の大会では全て表彰台に上り、12月に行われたロシア選手権でも3位とコンスタントに成績を残しています。とはいえ、ボロノフ選手がロシア男子3人の中で最上位、しかも表彰台というのはちょっと予想できなかった結果ですね。このあとまた言及しますが、このダークホースの活躍によってロシア男子の五輪代表選考はさらなる混迷を極めた感があります。


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 一方、3位に入ったベテラン、メンショフ選手はショートの冒頭、4サルコウがトリプルになると、続く4トゥループも転倒。得点は伸びず11位発進となります。
 しかしフリーでは1本目の4トゥループ+3トゥループを完璧に成功させ、2本目の4トゥループもクリーンに着氷。その後も大きなミスはなく、素晴らしい演技でフリーの自己ベストを更新。トータルでも自己新で、30歳にして欧州選手権初表彰台、ISU主催の国際大会でも初メダルとなりました。
 ボロノフ選手にも驚かされましたが、11位から一気に表彰台へと勝ち上がったメンショフ選手にもビックリ。ほかの選手がフリーで振るわなかったというのもあるでしょうが、それにしてもメンショフ選手がここまでやるとはという感じです。メンショフ選手の演技を見て毎回驚かされるのはやはり4回転の安定感でしょうか。20歳そこそこの若い選手でさえ苦労するのに、年齢的には全盛期を過ぎているはずのベテランの選手が、あれだけコンスタントに跳び続けられるというのは本当に凄いなーと思います。
 ロシア選手権で4位、今大会でもロシア選手中2位なので、五輪代表1枠からは外れてしまいますが、欧州選手権銅メダリストという功績は色褪せませんね。おめでとうございました。


 続いて女子シングル。欧州女王となったのは弱冠15歳のユリア・リプニツカヤ選手。2位はロシア女王のアデリーナ・ソトニコワ選手、3位はイタリアの実力者カロリーナ・コストナー選手です。

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 リプニツカヤ選手はショートで3ルッツ+3トゥループの大技を決めますが、ルッツのロングエッジ(踏み切り違反)を取られて微少の減点。しかしミスらしいミスはなく、70点に迫る高得点で2位発進となります。
 圧巻だったのはフリー。3ルッツ+3トゥループはショート同様ロングエッジ判定となり、続く2アクセルはこらえたような着氷に。しかし後半に固めた5つのジャンプはほぼクリーンな出来。得意のスピンも全てレベル4で揃えました。スコアは驚異の139.75点、総合得点でも何と209.72点。それぞれ女子の世界歴代2位となる高得点での逆転優勝、しかも欧州選手権女子史上最年少優勝の快挙を成し遂げました。
 シニア2年目の今季、特に安定感が目立っていたリプニツカヤ選手ですが、このハイスコアには正直びっくりしました。ルッツでの踏み切り違反がよくあるので、必ずしも完璧ではないのですが、それでも6種類のジャンプをコンスタントに跳べて、スピンでも高得点を稼げるので、技術点が安定して高いですね。演技構成点も、昨季より幅の広がった表現力や高いスケーティング技術のおかげでぐんと伸びています。それにしてもちょっと急激に上がり過ぎかなという感もありますが、やはりロシアでの五輪を控えているというのが影響しているのかもしれません。
 この結果や得点によって一気に五輪の有力メダル候補に躍り出たリプニツカヤ選手。ロシア五輪代表の正式な発表は、今の時点(1月22日)ではまだですが、ほぼ確実といって良いでしょう。自国ソチの地で、この新星がどんな演技を見せてくれるのか今から楽しみです。優勝、おめでとうございます。


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 2年連続の2位となったソトニコワ選手はショートで3トゥループ+3トゥループをきっちり決めるなど、ほぼ完璧な演技を披露。パーソナルベストを更新する70.73点で首位に立ちました。
 フリーは冒頭で難度を上げた3ルッツ+3ループのコンビネーションジャンプに挑みますが、着氷で乱れ単独の3ルッツに。続く3フリップは成功させますが、3ループはアンダーローテッド(1/4位以内の回転不足)判定にと上々の滑り出しとはならず。しかし後半は2アクセル+3トゥループを着氷すると、3+2+2などジャンプを次々と成功させます。スピンでは取りこぼしもありましたが、全体的にまとまった演技でこちらも自己ベストを更新。総合2位となりました。
 欧州女王の座を目の前にして届かなかった悔しさはあるでしょうが、ソトニコワ選手らしさは充分出せた演技だったのではないかと思います。スコア的にも国際大会で初めて200点を超えましたし、五輪のメダリスト候補として強力なアピールとなりましたね。


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 一方、欧州選手権3連覇を狙ったコストナー選手は3位に。ショートは曲をモーツァルトの「アヴェ・マリア」に変更。3トゥループ+3トゥループを確実に決め、珍しくスピンでのレベルの取りこぼしもありましたが、安定感のある滑りで3位発進となります。
 フリーもプログラムを昨季の「ボレロ」に戻し臨みました。序盤は予定どおりにジャンプをこなし波に乗ったかに見えましたが、後半1発目の3ループがダブルに、続く3トゥループがアンダーローテッドで転倒にとミスが相次ぎました。演技構成点は全選手中トップとなりましたが、技術点で点を稼ぐことが出来ずフリー3位、総合3位で大会を終えました。
 今季のコストナー選手はなかなか本来の実力が発揮できず、GPファイナルにも進出できませんでした。そのためか今大会は思い切ってショート、フリーともにプログラムを変更して挑んだわけですが、GP2大会と似たようなミスの仕方になってしまいましたね。
 ソチ五輪メダル有力との呼び声高いコストナー選手ですが、ロシアの若手選手―特にリプニツカヤ選手、ソトニコワ選手―が急速に力をつけてきており、しかも今大会では2人ともトータルスコアが200点を超えたということで、コストナー選手にとってはかなり怖い存在、脅かす存在となっているのではないかと思います(もちろん日本選手にとってもですが)。
 だからこそコストナー選手がメダルを取るためには、出来るだけ完璧に近い演技をする必要がありそうですね。ロシアの若手の勢い、難易度の高いジャンプ構成、技術点の高さには戦々恐々としますが、経験が浅いぶん五輪でどうなるかは未知数です。コストナー選手には若い選手には無い経験があるわけですから、ジャンプの安定感さえ戻ってくればという感じがします。
 ベテランの経験か、若手の勢いか、そちらにも注目ですね。


 ペアでは現世界選手権チャンピオン、欧州選手権2連覇中のロシアのタチアナ・ボロソジャー、マキシム・トランコフ組が3連覇を達成しました。ショートでは唯一80点を超える高得点で断トツの1位となったボロソジャー&トランコフでしたが、フリーでは2つのジャンプ要素で転倒があり、2位となってしまいました。しかしトータルでは逃げ切って3年連続で金メダルを手にしました。
 ボロソジャー&トランコフ組は、GPシリーズでは他を寄せつけない圧倒的な安定した演技を見せていましたが、GPファイナルからは少し調子を落としているかなという印象ですね。得点的にもGP2戦ではトータルで230点を超えていましたが、ここ2大会は220点台ですし(ロシア選手権は欠場)。
 オリンピックにはしっかりピークを合わせてくるでしょうから、その時にどんな演技を見せてくれるか今から楽しみです。
 銀メダリストとなったのは同じくロシアのクセニア・ストルボワ、ヒョードル・クリモフ組。ショートはツイストリフトでのレベルの取りこぼしがあり4位発進となりますが、ISU主催の国際大会で初めて70点を超え自己ベスト。フリーでもほとんどミスのない演技を披露し、ボロソジャー&トランコフ組を超える高得点で1位、総合順位でも2位、2年ぶりに欧州選手権の表彰台に上りました。
 そして3位となったのもロシアのべラ・バザロワ、ユーリ・ラリオノフ組。ショートは安定してエレメンツをこなし3位、フリーは2つのジャンプ要素でミスがありましたが、表彰台を守り切りました。


 アイスダンスを制したのはイタリアのアンナ・カッペリーニ、ルカ・ラノッテ組。欧州選手権初制覇です。ショートダンスは好演技で自己ベストに0.3点と迫るハイスコアで首位発進。フリーもパーフェクトな演技で昨季の世界選手権でマークしたパーソナルベストを更新、欧州王者に輝きました。
 2位はロシアのエレーナ・イリニフ、ニキータ・カツァラポフ組。ショートはほぼ完璧で1位のカッペリーニ&ラノッテ組に0.04点差の2位につけます。しかしフリーではツイズルで転倒するという珍しいミスがあり、僅差での2位に甘んじることとなりました。
 銅メダルを獲得したのはイギリスのペニー・クームズ、ニコラス・バックランド組。ショート、フリーともにマイナス要素の無い演技を見せ、全てでパーソナルベスト更新。欧州選手権初のメダルを手にしました。また、ISU主催の国際大会でも初めての表彰台で、ダークホースが存在感を示した形となりました。


 こうして全種目を見ると、本当にロシア勢の活躍が目立ちますね。女子の1、2フィニッシュ、男子の2位、3位、ペアの表彰台独占、アイスダンスので銀メダル獲得と、フィギュアスケート大国ロシアの復活を印象付ける大会となりました。まあ、男子の場合は特に期待されていた若手のコフトゥン選手でなく、ベテラン勢の活躍だったので、そういった意味では意外な展開ではあったわけですが……。

 それに関連して言いますと、ロシアのソチ五輪代表選手がこの大会の結果を受けて正式決定されることとなっています。正式発表は1月23日ということなので、発表されましたら改めてこの記事内に追記したいと思います。


以下、追記部分です。

 1月22日、ロシアフィギュアスケート連盟によってソチオリンピックに派遣する代表選手の名前が発表されました。以下に列記します。(敬称略)


男子:エフゲニー・プルシェンコ
女子:ユリア・リプニツカヤ、アデリーナ・ソトニコワ
ペア:べラ・バザロワ、ユーリ・ラリオノフ組、タチアナ・ボロソジャー、マキシム・トランコフ組、クセニア・ストルボワ、ヒョードル・クリモフ組
アイスダンス:エカテリーナ・ボブロワ、ドミトリー・ソロビエフ組、エレーナ・イリニフ、ニキータ・カツァラポフ組、ビクトリア・シニツィナ、ルスラン・ジガンシン組



 女子、ペア、アイスダンスはロシア選手権2013、欧州選手権2014の結果がそのまま反映された形となりましたが、問題となったのは男子シングルです。
 ソチ五輪ロシア代表として選ばれたのは、ロシア選手権で優勝したマキシム・コフトゥン選手でもなく、欧州選手権でロシア勢トップでメダルを獲得したセルゲイ・ボロノフ選手でもなく、トリノ五輪金メダリスト、バンクーバー五輪銀メダリストの実力者エフゲニー・プルシェンコ選手でした。
 プルシェンコ選手が強い選手であるのは誰もが認めるところですし、五輪のメダルというのを考えた時に経験豊かな選手が出場した方が良いのかもしれません。ですが、やはりこの選出には疑問が付きまといます。
 そもそもロシアの五輪代表選出基準がどういうものか知らないので何とも言えないのですが、ロシア選手権、欧州選手権の結果が重要なカギを握っていたことは間違いなさそうです。まず、ロシア選手権でコフトゥン選手が優勝し最有力候補になったわけですが、欧州選手権では5位でメダルを逃し、出場したロシア勢の中でも最下位。ロシア勢トップだったのはボロノフ選手ですが、そこまで大きな実績は無し。ということで、五輪で何度もメダルを獲得しているプルシェンコ選手が最有力として一気に再浮上しました。
 そして、1月21日にプルシェンコ選手の現状を見るためのテスト演技が、ロシアフィギュアスケート連盟の関係者に向けて非公式で行われました。そこでプルシェンコ選手は完成度の高い演技を披露し、五輪代表選出となったわけです。
 しかし、テスト演技は非公開。実際にどんな演技だったのかはその場で見ていた関係者にしか分かりません。本当に素晴らしい演技だったかもしれないし、複数ミスがあったかもしれない。一般の人々は知ることが出来ない、不透明なテストなのです。
 また、非公開で観客のいない中で行う演技と、大勢の観客に見られる中で行う演技とを同レベルで扱うことにも無理があるでしょう。コフトゥン選手やボロノフ選手は、大きな注目を浴びる大会で、大勢の観客に見つめられる中で演技をしました。一方、プルシェンコ選手は、関係者しかいない、期待に輝く観客の眼もない中での演技。どちらのプレッシャーが大きいかは言うまでもないですし、比較できるような同質のものでもありません。また、当然オリンピックでは前者のような環境で戦わなければいけないわけです。
 さらに言えば、テスト演技において、果たしてショートプログラムとフリーの両方が行われたのかという点も気になります。フィギュアスケートはショートとフリー両方をこなして初めて成り立つものです。が、プルシェンコ選手の場合、テスト演技を21日に行ったという発表のみですから、1日でショートとフリー2つをこなしたというのは考えにくいですね。
 …などとプルシェンコ選手が代表選出された疑問について書き連ねましたが、彼を批判しているわけではないのです。ただ、不透明かつフェアでない選考が行われたことに疑問を感じたというだけです。まあ、ロシアらしいといえばらしいですけど。
 何にせよ、こうしてオリンピック開催国の代表選手たちが決まりました。彼らが自国の期待とプレッシャーの中で、どのような演技を見せてくれるのか要注目ですね。


:記事内の写真は、全て欧州選手権2014の公式ウェブサイトから引用させていただきました。
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by hitsujigusa | 2014-01-22 18:28 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 先日、同時期に全米選手権2014、そしてカナダ選手権2014が行われました。これらの大会はそれぞれの国のソチ五輪代表を最終決定する重要な大会ということで、注目が集まりました。その内容、結果について簡単にではありますが書いていきたいと思います。
 まずは上の写真でも示しましたように、全米選手権について。

2014 Prudential U.S. Figure Skating Championships 全米選手権2014の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 全米選手権2014男子シングルはベテラン、ジェレミー・アボット選手が4度目の全米王者となりました。そして2位には今季本格的なシニアデビューを果たしたジェイソン・ブラウン選手、3位には昨年の全米チャンピオン、マックス・アーロン選手、4位には昨季のジュニア王者、ジョシュア・ファリス選手が入りました。(全米選手権は4位の選手までが表彰台に上がります。)

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 優勝したアボット選手はSPでパーフェクトに4+3を決め、そのほかのジャンプも成功、スピン、ステップも全てレベル4で揃え、99.86点という驚異的な高得点で首位に立ちました。フリーも冒頭の4回転を見事に成功、その後も大きなミスのない演技を披露。フリーは2位でしたが、ショートのアドバンテージで逃げ切り、2年ぶりに全米チャンピオンの座を勝ち取りました。
 銀メダルを獲得したブラウン選手はショート、フリーともに4回転を組み込まず、その分完成度で勝負。ショートで3位につけると、フリーもミスらしいミスのない演技で1位、総合順位で2位に上がりました。
 3位のアーロン選手はショートで4サルコウに成功。フリーでも4サルコウを2本跳び、1本を確実に決めると、ほかのジャンプもしっかりこなしましたが、惜しくも及ばず3位となりました。
 4位のファリス選手はショートで4回転を入れない安全策を取り、ジャンプを堅実に成功させましたが、スピンやステップで取りこぼしが目立ちました。フリーでは4トゥループに挑みましたが、転倒。しかしそのほかでは安定した演技を見せ、2年連続の4位となりました。

 意外な結果となったのは女子シングル。優勝したのはグレイシー・ゴールド選手。もちろん初Vです。2位に入ったのは今季のジュニアGPファイナル4位、昨季の全米ジュニア女王であるポリーナ・エドマンズ選手。3位は実力者、長洲未来(ミライ・ナガス)選手。そして、3連覇を狙ったアシュリー・ワグナー選手は4位に終わりました。

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 ゴールド選手はSPを完璧に演じ1位で折り返すと、フリーでも前日の勢いのまま波に乗り、中盤のジャンプで1つミスがあったものの、その他はほぼパーフェクト。歓喜の初優勝となりました。
 2位のエドマンズ選手もゴールド選手同様、完璧なショートで強力なシニア勢を押しのけて2位につけました。フリーはこちらも中盤のジャンプで失敗、転倒してしまいましたが、ほかに大きなミスはなく、初の全米選手権で見事に銀メダルを獲得しました。
 3シーズンぶりの表彰台となった長洲選手は、確実なジャンプに加え、スピン、ステップは全てレベル4、3位発進となります。フリーは冒頭の3+2のトリプルジャンプが回転不足と判定されますが、その後は全てのエレメンツを予定どおりにこなし、満足のいく演技となりました。
 一方、4位となったワグナー選手はショートで3+3が3+2になるというミスがあり、4位と出遅れます。翌日のフリーでも3+3が回転不足で転倒。その後は立て直したように見えましたが、後半のジャンプでも次々とミスを連発し、フリー5位、総合4位に沈みました。

 そして、ペアではマリッサ・カステリ、サイモン・シュナピアー組が前年に続いての2連覇。ショート1位で折り返し、フリーは3位でしたが、逃げ切ってチャンピオンとなりました。2位にはフェリシア・ザン、ネイサン・バーソロメイ組が入り、昨年の3位から1つ順位をアップさせました。銅メダルを獲得したのはケイディー・デニー、ジョン・コフリン組。2シーズンぶりの全米選手権出場でショートは4位と出遅れましたが、フリーは1位と挽回しました。4位はアレクサ・シメカ、クリス・クリーニム組で、前年の2位から順位を下げる結果となりました。

 また、アイスダンスでは世界チャンピオン、メリル・デイビス、チャーリー・ホワイト組が圧倒的な演技と点差で6連覇を達成しました。以下、2位のマディソン・チョック、エヴァン・ベイツ組、3位のマイア・シブタニ、アレックス・シブタニ組、4位のマディソン・ハベル、ザカリー・ダナヒュー組と、前年と全く同じ顔ぶれの表彰台となりました。

 という最終結果となったわけですが、何といっても最大のサプライズは女子シングル。特に、1.伏兵ポリーナ・エドマンズ選手の銀メダル獲得と、2.アシュリー・ワグナー選手のまさかの4位でしょう。
 エドマンズ選手は正直言って全くマークしていなかったので、名前を見ても、誰?と思ってしまいました。アメリカ国内、また、ジュニアの世界ではある程度名の知れたスケーターなのだろうとは思いますが、シニアではほぼ無名ですから。だからこそ五輪へのプレッシャーもなく、のびのびと自分らしい演技が出来たのでしょうね。初めての全米選手権という緊張感もあったのではないかと想像しますが、失うもののない、怖いもの知らずの勢いが彼女を表彰台まで導いたのかもしれません。それにしても、いくらミスが少なかったとはいえ、ジュニアの選手があの強豪たちを抑えて2位となったわけですから、やはり元々持っているポテンシャルが高い選手なのだろうと思います。
 そして、ワグナー選手。一体彼女に何があったのだろうとビックリしました。怪我があったわけではないようですが、ここ数シーズン、全米女王として貫録さえ漂う圧倒的な強さを誇っていたように見えたワグナー選手が、ここに来て大崩れしてしまうとは、まさかまさかでした。アメリカ女子の五輪枠が3という中で、そこから外れる4位。“Almost Girl”(もうちょっとの女の子)と呼ばれていた頃に逆戻りしたかのような演技内容、そして結果となってしまいました。2連覇していた今までの全米選手権、世界選手権やGPファイナルなどの大きな国際大会とはまた違った、比較にならないほどの異質の重圧があったのだろうと思います。ましてやアメリカのエースとして優勝するのが当たり前と期待されての五輪選考会ですからね。でも、やはりスポーツに絶対は無いので、分からないものです……。

 全競技終了後、アメリカフィギュアスケート協会はソチオリンピックの代表を発表しました。(敬称略)


男子:ジェレミー・アボット、ジェイソン・ブラウン (補欠:マックス・アーロン、ジョシュア・ファリス、リチャード・ドーンブッシュ)
女子:ポリーナ・エドマンズ、グレイシー・ゴールド、アシュリー・ワグナー (補欠:長洲未来、サマンサ・シザリオ、コートニー・ヒックス)
ペア:マリッサ・カステリ、サイモン・シュナピアー組、フェリシア・ザン、ネイサン・バーソロメイ組 (補欠:ケイディー・デニー、ジョン・コフリン組、アレクサ・シメカ、クリス・クリーニム組、ヘイブン・デニー、ブランドン・フレイジャー組)
アイスダンス:マディソン・チョック、エヴァン・ベイツ組、メリル・デイビス、チャーリー・ホワイト組、マイア・シブタニ、アレックス・シブタニ組 (補欠:マディソン・ハベル、ザカリー・ダナヒュー組、アレクサンドラ・オルドリッジ、ダニエル・イートン組、リン・クリーンクライルート、ローガン・ジュリエッティ=シュミット組)



 男子、ペア、アイスダンスは順当に、全米選手権の結果がそのまま反映された形となりました。
 ただ、女子は3位に入った長洲選手が代表から外れ、4位のワグナー選手が選出というサプライズを含んだ代表発表となりました。
 私はてっきりアメリカは全米選手権一発勝負だと思っていたので、エースといえども4位では厳しいのかな、代表落ちかなと予想していたのですが、必ずしも全米選手権の結果にのみ縛られるということではなかったようです。その結果、ここ数シーズンの実績があり、今季もGPシリーズで成績を残しているワグナー選手が選ばれることとなりました。
 しかし、この決定は後に遺恨を残しそうな気もします。アメリカのフィギュアファンのネット上でのコメントを見ても、長洲選手を選ばず、ワグナー選手を選んだことに対し批判が目立っていました。
 この事があって、日本の男子シングル代表選考に改めて思いが及びました。全日本3位の小塚選手が外れ、5位の高橋選手が代表入りした状況と、アメリカ女子の状況とが似通っているからです。ただ、日本の場合は明確に文章で代表選考基準が示されていましたし、その基準に則れば、高橋選手の選出も妥当なもので頷けるものだったので納得がいきました。高橋選手が直前に脚を負傷していたという特別な考慮事実もありましたし。
 アメリカにはそういった公に発表された選考基準の文章があるのか、私は見たことがなく読んでいないので分からないのですが、あったとすればそのルールに従えばいいだけのことで、そんなに論争にもならないと思うのですが……。どうなんでしょう。
 長洲選手は残念でした……。個人的にはアメリカのスケーターの中でも特に好きな選手だったので、心から残念に思います。今季はNHK杯こそ8位でしたが、アクシデントがあった中でしたし、続くロステレコム杯は好演技で表彰台に上って、そしてこの全米での見事な演技と、彼女らしさが復活してきているところだったので。相当悔しさはあるでしょうが、四大陸選手権の代表に選ばれていますので、何とか切り替えてそちらでも長洲選手らしい演技が出来ることを祈っています。
 一方、ワグナー選手は救済された形で五輪代表に滑り込みました。今大会の演技のみを見ると、代表入りに対しては厳しい目が向けられざるを得ないと思いますが、この2~3年のワグナー選手のアメリカフィギュア界への貢献は多大ですし、国際大会での評価も他のアメリカの選手の追随を許さないほど高く安定しているので、協会が彼女を選んだのも理解できます。オリンピックのプレッシャーも尋常じゃないものがあるでしょうから、その点では少し心配も出てきましたが、ぜひ長洲選手の分もソチでは頑張って欲しいですね。

 ソチ五輪代表発表に合わせて、世界選手権、四大陸選手権の代表も以下のように発表されています。(敬称略)


《世界選手権》

男子:マックス・アーロン、ジェレミー・アボット (補欠:ジェイソン・ブラウン、ジョシュア・ファリス、リチャード・ドーンブッシュ)
女子:ポリーナ・エドマンズ、グレイシー・ゴールド、アシュリー・ワグナー (補欠:長洲未来、サマンサ・シザリオ、コートニー・ヒックス)
ペア:マリッサ・カステリ、サイモン・シュナピアー組、ケイディー・デニー、ジョン・コフリン組 (補欠:フェリシア・ザン、ネイサン・バーソロメイ組、アレクサ・シメカ、クリス・クリーニム組、ヘイブン・デニー、ブランドン・フレイジャー組)
アイスダンス:マディソン・チョック、エヴァン・ベイツ組、メリル・デイビス、チャーリー・ホワイト組、マイア・シブタニ、アレックス・シブタニ組 (補欠:マディソン・ハベル、ザカリー・ダナヒュー組、アレクサンドラ・オルドリッジ、ダニエル・イートン組、リン・クリーンクライルート、ローガン・ジュリエッティ=シュミット組)

《四大陸選手権》

男子:リチャード・ドーンブッシュ、ジョシュア・ファリス、アダム・リッポン (補欠:ダグラス・ラザノ、ロス・マイナー、ブランドン・ムロズ)
女子:サマンサ・シザリオ、コートニー・ヒックス、長洲未来 (補欠:バービー・ロング、クリスティーナ・ガオ、アグネス・ザワツキー)
ペア:ヘイブン・デニー、ブランドン・フレイジャー組、タラ・ケイン、ダニエル・オシェア組、アレクサ・シメカ、クリス・クリーニム組 (補欠:ケイディー・デニー、ジョン・コフリン組、グレッチェン・ドンラン、アンドリュー・スぺロフ組、ディーディー・レン、ティモシー・ルダック組)
アイスダンス:アレクサンドラ・オルドリッジ、ダニエル・イートン組、マディソン・ハベル、ザカリー・ダナヒュー組、リン・クリーンクライルート、ローガン・ジュリエッティ=シュミット組 (補欠:アナスタシア・カヌーシオ、コリン・マクマヌス組)



 
 さて、ここからはカナダ選手権2014について書いていきます。

2014 Canadian Tire National Skating Championships カナダ選手権2014の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 男子シングルを制したのは現世界王者パトリック・チャン選手。驚異の7連覇です。2位は世界選手権5位の実力者ケヴィン・レイノルズ選手。こちらは3年連続の2位となります。3位に入ったのはリアム・フィラス選手で、カナダ選手権では初の表彰台となりました。

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 チャン選手はショートで4+3をパーフェクトに決めますが、3アクセルがダブルに、3ルッツがダブルになるなどらしくないミスが相次ぎ、得点はあまり伸びず。しかし貫録の首位発進となります。フリーも冒頭の4+3をしっかりまとめると、2つ目の4トゥループはダブルになりましたが、その他のジャンプ、エレメンツでミスらしいミスはなく、さすがの演技。2位に圧倒的な大差を付けて優勝を飾りました。
 2位のレイノルズ選手は今大会が怪我からの復帰戦。ショートは2本の4回転を含め3つのジャンプ要素全てでミスがあり、3位。フリーも3本の4回転に挑みますが、クリーンな成功は残念ながらゼロ。ですが後半は何とか立て直し、ショートから1つ順位を上げました。
 3位となったフィラス選手はショートで3アクセルの転倒があったものの、その他はまとめて2位スタート。フリーも4回転は組み込まない構成で臨み、冒頭の3アクセルで前日同様転倒してしまいますが、その後は次々にジャンプを成功させ、初のメダルを手にしました。

 女子シングルは前年の女王ケイトリン・オズモンド選手がこちらも大差をつけての優勝で、連覇を果たしました。銀メダルを獲得したのはジュニアのガブリエル・デールマン選手で、昨年に引き続き2位となりました。3位にはベテラン、アメリー・ラコステ選手が入っています。

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 オズモンド選手は昨年10月のGPシリーズカナダ大会に出場しましたが、古傷の再発でフリーを棄権。以後は試合を欠場しており、今大会が復帰戦でした。ショートは大技3+3を含め、ジャンプをすべて成功。全スピン、ステップでレベル4を獲得し、70点超の高得点で首位に立ちました。フリーは3+3こそ跳びませんでしたが、ほぼミスのない安定した演技で130点を超え、トータル200点超えで優勝しました。
 デールマン選手はショートで3ルッツ+3トゥループの難しいコンビネーションを成功させましたが、3フリップがダブルになるミスがあり、3位発進となります。フリーもショートの勢いそのままに3ルッツ+3トゥループを決め、続く2アクセル+3トゥループも成功させましたが、3フリップでミス。その後も小さなミスはありましたが、全体的にまとまった演技でフリー2位、総合でも2位となりました。
 銅メダルを獲得したラコステ選手はショートで安定感ある演技を見せ2位につけますが、フリーはジャンプがすっぽ抜けるなど複数ミスがあり5位、トータルでも3位に順位を落としました。

 ペアでは昨季の世界選手権銅メダリストのメーガン・デュアメル、エリック・ラドフォード組が実力を発揮し3連覇。フリーのジャンプでミスがあった以外は安定した演技で、ショート、フリーともに1位、貫録の優勝となりました。2位は世界選手権4位のカーステン・ムーア=タワーズ、ディラン・モスコビッチ組。こちらもミスを最小限に抑えた実力者らしい演技でデュアメル&ラドフォード組にピタリとくっつき、僅差での銀メダル獲得となりました。3位はペイジ・ローレンス、ルディ・スウィガース組で、ショート、フリーともにジャンプでのミスが目立ちましたが、銅メダルを獲得しました。

 一方、アイスダンスではバンクーバー五輪覇者のテッサ・ヴァーチュー、スコット・モイヤー組がショート、フリーともに圧巻の滑りで3連覇を果たしました。2位は世界選手権上位常連のケイトリン・ウィーバー、アンドリュー・ポジェ組がこちらもまとまった演技を見せ、2年ぶりの2位。銅メダルを獲得したアレクサンドラ・ポール、ミッチェル・イスラム組は安定した演技で3年ぶりの表彰台となりました。

 サプライズがあった全米選手権とは対照的に、実力者が打倒に力を発揮したという感じですね。
 目下、ソチ五輪金メダル最有力のパトリック・チャン選手は、良くも悪くもないという印象。ショートでもフリーでも1本ずつ4回転をきっちりと決める安定感はさすがのものですが、3アクセルでミスしてしまうところなどもチャン選手らしさといえばらしさです。これから五輪に向けてどんどん調子を上げていくと考えると、1月半ばの時点ではこれくらいがちょうど良いのかもしれません。
 女子のケイトリン・オズモンド選手は久しぶりの試合ということで心配がありましたが、内容的にはかなり良い仕上がり。得点も気前よくハイスコアが出て、良いイメージでオリンピックに向かえそうですね。
 
 この結果を受けて、以下のようにカナダのソチ五輪代表が発表されました。(敬称略)


男子:パトリック・チャン、ケヴィン・レイノルズ、リアム・フィラス
女子:ケイトリン・オズモンド、ガブリエル・デールマン
ペア:メーガン・デュアメル、エリック・ラドフォード組、カーステン・ムーア=タワーズ、ディラン・モスコビッチ組、ペイジ・ローレンス、ルディ・スウィガース組
アイスダンス:テッサ・ヴァーチュー、スコット・モイヤー組、ケイトリン・ウィーバー、アンドリュー・ポジェ組、アレクサンドラ・ポール、ミッチェル・イスラム組



 
 3週間後に迫るソチオリンピック。日本勢の強力なライバルとなるアメリカ勢、カナダ勢も揃い、また、欧州選手権も現在行われているということで、いよいよ実感が高まってきました。欧州選手権についてもお伝えできればと思います。


注:アメリカ五輪代表チームの写真は、アメリカフィギュアスケート協会の公式フェイスブックページから、全米選手権男子シングルメダリスト4選手の写真は、全米選手権2014の公式フェイスブックページから、全米選手権女子シングルメダリスト4選手の写真は、「CBC Boston」が2014年1月12日の8:50に配信した記事「Gracie Gold Wins US Figure Skating Title; Wagner 4th」から、カナダ選手権男子シングルメダリスト3選手の写真、カナダ選手権女子シングルメダリスト3選手の写真は、カナダのフィギュアスケート組織「Skate Canada」の公式フェイスブックページから引用させていただきました。
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by hitsujigusa | 2014-01-17 17:20 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 本日(1月10日)、うれしいニュースが飛び込んできました!
 ペアの日本代表である高橋成美、木原龍一組がソチオリンピックの個人種目の出場権を獲得したことが分かりました。

◆◆◆◆◆

五輪フィギュア:ペアの高橋、木原組が個人種目でも出場へ

 日本スケート連盟は10日、ソチ冬季五輪のフィギュアの団体要員で日本代表に選ばれたペアの高橋成美、木原龍一組(木下ク)が個人種目でも出場すると発表した。エストニアが昨年9月の五輪予選で獲得した出場枠を返上したため、補欠1番手の日本が繰り上がったと国際スケート連盟からの連絡が入った。21日の理事会で正式決定する。

 2人はともに21歳で、コンビ結成約1年で個人種目での五輪出場がかなった。高橋は「チャンスをもらうことができたので、自分たちのできることをしっかりやりたい」、木原は「後悔のないように頑張りたい」とマネジメント会社を通じてコメントした。(共同)

毎日新聞 2014年1月10日 13:33

◆◆◆◆◆

 昨年の9月、高橋、木原組はソチ五輪最終予選会を兼ねたネーベルホルン杯に出場、個人種目での五輪出場権獲得を目指しました。
 ネーベルホルン杯の時点でのペアの出場枠は残り4か国。予選の対象となる13か国中、上位4位に入ることが高橋、木原組が個人戦でソチ五輪に出場するための条件でした。ショートプログラムでは8位、予選対象国の中では2位に付け、ソチ五輪出場に向け良い滑り出しとなった高橋、木原組でしたが、フリーで順位を落とし、総合11位、予選対象国中5位となり、あと一歩で出場権を逃してしまいました。
 しかし、同じくネーベルホルン杯に出場したアイスダンスのキャシー・リード、クリス・リード組がソチ五輪個人種目の出場権を獲得したため、団体戦での日本の出場が確実となり、高橋、木原組も団体戦要員としてソチ五輪に参加できることとなりました。

 そして今回、ネーベルホルン杯で9位、予選対象国の中では3位で五輪出場権を獲得していたエストニアのペアが出場枠を返上したため、補欠1番手であった高橋、木原組が繰り上がり、思いがけず個人戦での出場が舞い込んできました。
 エストニアのペアが出場枠を返上した理由は、男性のアレクサンドル・ザボエフ選手がロシア出身のためエストニア国籍への変更を目指していたものの、国籍変更がかなわず、エストニア国内にほかのペアもいないため、返上となったのだそうです。
 こういうこともあるんだなあという感じですが、何にせよ高橋、木原組の個人戦出場が叶って本当に良かったです。他国の棄権による繰り上がりではありますが、それも高橋、木原組がネーベルホルンで全力を尽くして頑張った結果ですからね。補欠1番手でなければ、たとえエストニアが出場枠を返上してもその枠は回って来なかったわけですから、やはり2人の努力の賜物だと思います。

 個人戦、そして団体戦ともに、ぜひ2人のベストの演技が出来るよう願っています。


:高橋、木原組の写真はスポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
ジャパンオープン2013&その他の国際大会について 2013年10月11日
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by hitsujigusa | 2014-01-10 15:45 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

吉屋信子集 生霊―文豪怪談傑作選 (ちくま文庫)


【収録作】
「生霊」
「生死」
「誰かが私に似ている」
「茶碗」
「宴会」
「井戸の底」
「黄梅院様」
「憑かれる」
「かくれんぼ」
「鶴」
「夏鶯」
「冬雁」
「海潮音」
「私の泉鏡花」
「梅雨」
「霊魂」
「鍾乳洞のなか」


 吉屋信子といえば、何といってもまず挙げられるのは少女小説の先駆け的作品『花物語』だろう。『花物語』は全54編から成る連作小説集で、それぞれのタイトルが花の名となっている。そこに描かれた少女たちの友情を超越した一種独特な関係は、現代の感覚からしても不変的で、妙なリアリティを持っている。戦後、晩年には『安宅家の人々』『徳川の夫人たち』など、女性の生き方を描いた小説で活躍、1973年7月11日に満77歳で没した。
 そんな吉屋信子の多々ある作品群の中でも、マイナーな怪談、怪異譚を集めたのがこの『吉屋信子集 生霊』である。吉屋信子の誕生日、1月12日を前にこの短編集を取り上げたい。

 この本に収録されているのは一応怪談ということになっているが、いわゆる幽霊譚みたいなのとは少し趣が違う。人間の心が生む怪奇、人間の心の恐ろしさ、である。そのリアリティのなかでふわっとあちら側に迷い込むような不気味さもあり、独特の味を出している。
 エッセイも含まれた全17編の収録作から、特に印象に残ったものをご紹介。

 「生霊」「誰かが私に似ている」はいわゆるドッペルゲンガー現象を扱った作品だが、2作の雰囲気はだいぶ違っている。
 「生霊」は第2次世界大戦後、シベリアから復員してきた男がある高原の空き別荘に住みつくが、管理人のおじいさんに“坊ちゃん”と人違いされ、男は“坊ちゃん”のふりをするという話。怪談とは言えないが、人違いをされる不気味さ、不思議なめぐり逢いを描いている。
 一方、「誰かが私に似ている」も人違いをモチーフとしているが、“私”が誰かに似ているのではなく、“誰か”が私に似ているという気味の悪さが作品全体に漂う。誰か知らない他人が自分によく似ているということで、主人公の女はさまざまなラッキーに出会うが、由来の分からないラッキーほど怖いものはない。何かが起こりそうな怪しげなムードが怪談っぽさを醸している。

 「宴会」「井戸の底」はそれぞれ幽霊が登場する話だが、幽霊らしい怖さのない幻想譚である。人間味があり、生きたぬくもりさえ感じられそうな実在感のある幽霊。そんな霊との奇妙な交流が描かれ、どこかほのぼのとした風情が漂う。

 「夏鶯」は戦時中の混乱に紛れて出会った老婆の昔語りで進む。登場する怪しげな家、独りぼっちの老婆、老婆が語るある美しい女、そして鶯というモチーフが何とも言えない絶妙というか妖しい雰囲気を醸し出す。主人公が老婆の話を聞くのは戦時中という設定だが、老婆が語るのは戦前の悲話。戦時、戦前という現在から遠い時代の出来事は、同じ日本でも異世界のことのような感じがする。
 「冬雁」「夏鶯」に共通して、ある1人の美しい女性の人生を描いている。主人公の女は美しいがゆえに歪み、数奇な運命をたどる。それでも不思議と憎めない愛嬌のようなものもあり、不気味でありながらコミカルさもある作品となっている。

 「海潮音」は裕福で容姿にも恵まれた青年の話。青年は子どもの頃から本当に欲しいと思ったモノは盗んででも手に入れようとする習癖を持つ。何もかもに恵まれているにもかかわらず、何事にも頓着せず“生”を感じさせない青年が、欲する“モノ”に執着する時だけ“生”を感じさせる。異常なまでの“モノ”への固執は青年を破滅へしか導かない。極端でショッキングとも言えるその姿は、しかしそれでも美しい。

 「私の泉鏡花」「梅雨」「霊魂」「鍾乳洞のなか」はエッセイ。中でも、「梅雨」で怪談を例に挙げ、“日本の女は浮気をした男ではなく、男の浮気相手である女を恨む、それが日本の女というものなのだ”と述べる部分は、日本の伝統文学である怪談の真理の一つを突いていて、印象に残る。

 吉屋信子の怪談は恐怖を前面に押し出すものでなく、読んでいるうちに気づいたらぬかるみにハマっていたという不思議な魅力がある。
 『花物語』や『徳川の夫人たち』といった吉屋信子しか知らなかった人、そして今まで吉屋信子を読んだことのない人にも、おすすめしたい1冊である。


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室生犀星『室生犀星集 童子』―生と死の生々しさ


吉屋信子集 生霊―文豪怪談傑作選 (ちくま文庫)
吉屋 信子
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by hitsujigusa | 2014-01-09 16:13 | 小説 | Trackback | Comments(0)