c0309082_20282544.jpg


 引き続きベストコスチューム13/14をお送りします。今回は女子ショートプログラム部門です。このベストコスチュームシリーズのルールについては、こちらの記事の冒頭をご参考下さい。
 まずは第1位からです。

*****

 第1位は日本の浅田真央選手の「ノクターン」です。

c0309082_14144611.jpg

 浅田選手の代表作ともいえる「ノクターン」ですが、今シーズンは2着の衣装を使用しました。1つは写真のラベンダー色のもの、もう1つはラベンダー色と赤紫のグラデーションになっているもの。どちらも素敵なのですが、一色ですっきりとまとめたラベンダー色の方を今回は選びました。
 胸元はハート形っぽいデザインで胸を覆い、ラメなどが施された枠で縁取りされています。首元にもキラキラとした装飾がなされ、何枚も重ねられたスカートはラベンダーからピンクへとグラデーションになっています。写真ではちょっと分かりにくいかもしれませんが、衣装は胸部と腰から下の部分とがセパレートになっており、また、胸と胸のあいだも肌色となっています。背中もほとんど覆いのないデザインで、全体的に露出の多いコスチュームなのですが、浅田選手が着ると不思議と変ないやらしさがなく、とてもエレガントで清楚に見えます。色づかいが清純な雰囲気漂うラベンダー色ということもあるでしょうが、浅田真央というスケーターの為せる業、特有の魅力の効果かなとも思います。
 プログラムのテーマのひとつとして“初恋”を挙げていた浅田選手。そのイメージにピッタリな華と清らかさを合わせ持つ素晴らしい衣装ですね。


 第2位はイタリアのカロリーナ・コストナー選手の「アヴェ・マリア」です。

c0309082_1452331.jpg

 シーズン当初はドヴォルザークの「ユーモレスク」をショートプログラムに使用していたコストナー選手ですが、シーズン後半からシューベルトの「アヴェ・マリア」に変更。もちろん衣装も変更されました。
 全体的に淡いブルーで統一されていますが、胸から胴の部分だけ微妙に色合いが違っていて、その上から半透明の透ける素材を重ねたようなデザイン。スカートの下にうっすらとレオタードが見えて、その透け具合が美しいです。デザイン自体は実にシンプルですが、上半身に散りばめられたスパンコールの華やかさや、素材をそのまま生かしたようなナチュラルさが印象に残りました。「アヴェ・マリア」という宗教的かつ神聖なプログラムだからこそ、凝った派手な衣装ではなくシンプルなコスチュームで、コストナー選手の身体の線の美しさや身のこなしの美しさ、そして音楽そのものの魅力を引き立てているなと思います。シンプルながら考えられた素敵な衣装ですね。


 第3位は中国の李子君(リ・ジジュン)選手の「タンゴ」。

c0309082_15292582.jpg

 可愛らしくガーリーな雰囲気が印象的な「タンゴ」。ということで、衣装も女の子らしい色づかいになっています。全体としては黒の面積が大きいですが、その下にショッキングピンクを重ねています。タンゴだと黒に赤系を合わせることが多いですが、赤ではなくピンク、しかも派手めなピンクを使うことで現代的な印象を与え、ガーリーな衣装にしています。また、黒の中にもシルバーや濃いピンクで花のようなデザインをあしらっていて、さらに女の子らしさをプラスしています。使用している音楽の特徴、魅力を見事に反映した衣装だと思います。


 第4位は日本の今井遥選手の「無言歌」。

c0309082_15473757.jpg

 11/12シーズンにも使用し、今井選手の代表作となったメンデルスゾーンの「無言歌」。今季は3種類の衣装を着用していて、グランプリシリーズでは紫色、全日本選手権では淡いピンク、四大陸選手権ではスカートの裾が濃いめのピンクになっているものでした。デザインはどれもほぼ同じなのですが、今回ピックアップしたのは四大陸で使用した衣装です。
 上半身は白に近い薄いピンクで、下にいくに連れてグラデーションで徐々に色濃くなっています。首元、胸元、手首には色とりどりの装飾があしらわれていて、繊細なデザインが優雅です。スカートは比較的長めで、裾がジグザグな感じなので表情に変化が出ておもしろいですね。風になびくとまたきれいです。下に重ねられたスカートの一部分だけが濃いピンクになっていて、全体の淡い色づかいの中でアクセントになっています。
 しっとりとしたヴァイオリンの調べが柔らかく女性的な「無言歌」。今井選手の雰囲気にも、音楽の雰囲気にもピッタリなコスチュームですね。


 第5位はアメリカのアシュリー・ワグナー選手の「クレイジー・ダイアモンド」。

c0309082_1632498.jpg

 イギリスのロックバンド、ピンク・フロイドの「クレイジー・ダイアモンド」はギターの激しい旋律が印象的なプログラム。衣装もそれに合わせてクールでカッコいいデザインとなっています。
 コスチュームは全体が黒で、胸部とスカート以外は透け感のある素材。胸を覆う部分はシャープなデザインとなっていて力強さを感じさせます。また、シルバーの装飾もメタリックでインパクトを与えます。ロック音楽ではあるのですが、衣装がシンメトリーな分きちんとした感じもありますね。色はシックですがきらびやかさもあり、男性的な雰囲気のなかに女性的なエレガンスさも含まれた衣装だと思います。


 第6位はイギリスのジェナ・マコーケル選手の「幻想の海」。

c0309082_17853.jpg

 カール・ジェンキンスさんの「幻想の海」は、“月の海”をテーマにした幻想的な音楽。どこの国の音楽とも言えない不思議なメロディ・音色が特徴的ですが、衣装は音楽の世界観を邪魔しないようなシックかつ落ち着いたデザインとなっています。
 コスチュームは全体的に深みのあるブルー。胸部はレースで唐草模様っぽく、縁取りは輝くシルバーの装飾。スカートは左の方に向かって長くなるデザインで、そのスリットの下からは胸部と同じレース素材がのぞいています。また、肩にも唐草模様があしらわれ、デザインの統一が見られます。「幻想の海」は王道な西洋風でもなく、アジアンでもなく、ラテン系でもない音楽ですが、ケルト音楽っぽい部分もあります(作曲者のカール・ジェンキンスさんはイギリスのウェールズ出身なのでウェールズ風なのかもしれませんが)。唐草模様は伝統的・古典的な柄ですから、民族音楽の色濃いプログラムのイメージを反映しているなと思いますね。


 第7位は日本の鈴木明子選手の「愛の讃歌」です。

c0309082_180773.jpg

 エモーショナルかつ情熱的な旋律が魅力の「愛の讃歌」。衣装は2タイプ着用され、ほとんどの試合では写真の紫色のものが使用されましたが、ソチ五輪では鮮やかな赤の衣装を使用しました。赤の衣装も素敵だったのですが、今回は多くの大会で使用された紫のものを選びました。
 濃い紫のワンピースに、肩から首元にかけてと腰部分にお花の装飾があしらわれています。お花は宝石のような大ぶりのラインストーンで出来ていて目を引きますね。また、衣装全体に細かなラインストーンなどが施されていて、華やかな印象を与えます。コスチュームの形自体はシンプルですが、首元を蔓草が這うようなデザインだったり、腰に大きな花が咲いたデザインだったりと細部にまで工夫が凝らされていて、衣装にこだわる鈴木選手らしいコスチュームだなと思います。


 第8位は韓国の朴小宴(パク・ソヨン)選手の「白鳥」。

c0309082_15585168.jpg

 「白鳥」はフランスの音楽家、サン=サーンスが作曲した組曲「動物の謝肉祭」の一曲。衣装も白鳥らしさを存分に意識したものになっていますね。全身純白の中、胸元や腰、手首にブルーやシルバーで装飾が施されています。特に胸元のデザインは白鳥が翼を広げたようになっていて、まさに“白鳥”という感じです。決して華美な衣装ではないですが、繊細な作りでプログラムの静かな世界観を表現した素敵な衣装だと思いますね。


 第9位はアメリカのポリーナ・エドマンズ選手の「Pink Cherries Cha Cha Cha/Besame Mucho/Another Cha Cha」。

c0309082_16144427.jpg

 メキシコの名曲「ベサメ・ムーチョ」やキューバ発祥の音楽チャチャなど、ラテン音楽をメドレーにしたプログラムですが、衣装も鮮やかなイエローに個性的なデザインでラテン特有の陽気なイメージを作り出しています。ワンピースはレーサーバック風で活発な印象、上半身は斜めにボーダーが入ったようなデザインで現代的。また、スカートはいくつもラッフル(フリル?)が重なっていて動きがあって、やはり若々しさを感じさせますね。
 黄色を基調としたコスチュームというのはフィギュアスケート界ではそう多くはなくて、選手の年齢にもよるでしょうがうまく着こなすのが難しい色なんじゃないかなと思います。このエドマンズの選手の衣装も真っ黄色ですが、ラテン音楽の明るさ、陽気さによく合っていますし、15歳と若さ溢れるエドマンズ選手にピッタリな色ですね。
 余談ですが、エドマンズ選手は髪型にも工夫があり、このプログラムに限らずフリーでも三つ編みをぐるりと巻いて、しかも三つ編みに飾りをあしらっています。ここまで細かく髪飾りをあしらってというのはあまり見ないので印象に残りましたね。


 第10位はウクライナのナタリア・ポポワ選手の「アランフェス協奏曲」です。

c0309082_1719659.jpg

 「アランフェス協奏曲」といえば異国情緒漂う調べが有名なスペインの名曲。フィギュアスケート界でも大定番です。衣装もスペインらしさを意識して赤やオレンジなど暖色系が使われることが多いですが、ポポワ選手の衣装は珍しく黒一色。素材はレースのように透け感のあるもので、ゼブラ柄っぽい独創的なデザインとなっています。その中にも写真では見えづらいですが、細かな水色の装飾が散りばめられていて、深い黒に映えます。いかにも「アランフェス協奏曲」らしいコスチュームではありませんが、大人びた黒が哀愁を醸し出していて、この音楽特有のムーディーな雰囲気に合っていると思います。



 ベストコスチューム13/14・女子ショートプログラム部門はここまで。フリー部門に続きます!


:記事冒頭のアイスリンクの写真は、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、浅田選手の写真は毎日新聞のニュースサイト内の写真特集「世界フィギュア2014」から、コストナー選手の写真は、アメリカのケーブルテレビ「TLC」の公式ウェブサイト内の記事「The 26 Best Blinged Skating Costumes from Sochi」から、李選手の写真は四大陸選手権2014の公式フェイスブックページから、今井選手の写真、ワグナー選手の写真、マコーケル選手の写真、エドマンズ選手の写真はエンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、鈴木選手の写真はスポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、朴選手の写真は写真共有ウェブサイト「Pinterest」内のピンボード「Skating dresses」から、ポポワ選手の写真は、まとめサイト「NAVERまとめ」内のページ「【ソチ五輪】【フィギュア団体】女子SP滑走順&データまとめ」から引用させていただきました。


【ブログ内関連記事】
ベストコスチューム13/14・男子ショートプログラム部門 2014年4月9日
ベストコスチューム13/14・男子フリー部門 2014年4月13日
ベストコスチューム13/14・ペアショートプログラム部門 2014年4月19日
ベストコスチューム13/14・ペアフリー部門 2014年4月22日
ベストコスチューム13/14・女子フリー部門 2014年5月2日
ベストコスチューム13/14・アイスダンスショートダンス部門 2014年5月12日
ベストコスチューム13/14・アイスダンスフリーダンス部門 2014年5月21日
[PR]
by hitsujigusa | 2014-04-28 18:23 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_14385100.jpg


 ベストコスチューム13/14・ペアフリー部門です。個人的に素敵だなーと感じた衣装のベスト10を発表していきたいと思います。なお、衣装を選ぶ際のルールに関しては、こちらの記事の冒頭に書いてありますのでご参考下さい。
 さっそく第1位からです。

*****

 第1位はフランスのヴァネッサ・ジェームズ、モルガン・シプレ組の「映画『天使と悪魔』より/天国と地獄/レクイエム・フォー・ドリーム」。

c0309082_1456925.jpg

 「天使と悪魔」、「天国と地獄」というプログラムにふさわしく、女性は白、男性は黒という組み合わせの衣装を着用。女性のジェームズ選手は片袖のみのタイプのワンピース。右腕は単なる袖というよりもシルバーの装飾が巻き付いたような独創的なデザインになっています。男性のシプレ選手は対比的な黒の衣装で、こちらもラインストーンなどの装飾が細かくなされ、まばゆい印象を与えます。さらに、どちらの衣装も胸からお腹にかけて流れるようなラインが入っていて、デザインに共通性を持たせています。
 プログラムから連想した白と黒というシンプルな色づかいですが、ラインストーンで模様を付け衣装の表情に変化を加えることで、オリジナリティー溢れるコスチュームにしています。また、それぞれの肌の色に映えるカラーのチョイスになっているので、ペアとして見ても一体感があって美しいですね。


 第2位はアメリカのヘイヴン・デニー、ブランドン・フレイジャー組の「ノートルダム・ド・パリ」です。

c0309082_1122883.jpg

 「ノートルダム・ド・パリ」は15世紀のパリを舞台にしたミュージカルですが、コスチュームも作品のクラシカルな雰囲気にピッタリなデザインとなっています。2人とも紫がかった青を基調にした衣装で、女性のデニー選手は透ける素材と胴部分を覆うワンピースとを組み合わせたデザイン。男性のフレイジャー選手もほぼ同じカラーのトップスで、ペアで衣装を統一しています。
 なんといっても素敵だなーと思うのは、キラキラした装飾の使い方ですね。女性は首や胸元、袖口、男性は(写真では分かりにくいですが)、襟元や腕、腰のベルトといったところにラインストーンなどがあしらわれているわけですが、この使い方が多すぎず少なすぎず絶妙な分量で施されていて、見事に優雅で高貴な雰囲気を作り出してるなと思います。このキラキラ加減が多すぎると派手になりかねないですが、この衣装はちょうど良い分量と使い方で気品溢れる華やかさを醸し出していますね。


 第3位はアメリカのタラ・ケイン、ダニエル・オシェア組の「ドン・キホーテ」。

c0309082_1524186.jpg

 フィギュアスケート界では定番のバレエ「ドン・キホーテ」。スペインを舞台にした作品ということで衣装にもスペインらしさが存分に盛り込まれています。男性のオシェア選手は闘牛士が着るようなボレロ、鮮やかなサッシュ、金糸の刺繍で、女性のケイン選手もアラベスク模様のような刺繍の施された衣装でスペインっぽさを表しています。
 その一方で色は赤やオレンジといった暖色系ではなく、青という寒色をアクセントにしているのが独創的ですね。暖色系を使えばよりスパニッシュな感じにはなるでしょうが、青を使うことで他のスペイン風、ラテン系の衣装との差別化に成功していると思います。華美というよりはシックで上品な雰囲気が個性的で素敵ですね。


 第4位は中国の彭程(ペン・チェン)、張昊(ジャン・ハオ)組の「黄河協奏曲」。

c0309082_15304775.jpg

 「黄河協奏曲」は中国の選手がよく使用する定番曲。彭&張組の衣装もその情緒を表現するコスチュームとなっています。女性の彭選手は黄色や黄緑、オレンジを細かくミックスさせたワンピース。スカートは色違いのものが数枚重なったデザインで、下にいくほど濃くなるグラデーションになっています。また、肩紐や装飾などところどころに輝く銀色が散りばめられていて、スカートの形状とも併せて軽やかさを感じさせます。一方男性の張選手は深みのあるブルー。明るく可愛らしい印象の彭選手の衣装とは対照的に、大人の落ち着きを思わせる色づかいでバランスが取れていますね。
 カラーという点では雰囲気の異なる色を使っている両者ですが、衣装に施されている模様は流れるような線が銀色で描かれていて、タイトルにあるような“河”を想起させます。プログラムの世界観を繊細に表わしたコスチュームだと思います。


 第5位はドイツのアリオナ・サフチェンコ、ロビン・ゾルコビー組の「くるみ割り人形」。

c0309082_161334.jpg

 こちらもバレエの定番「くるみ割り人形」。クラシックの大王道ともいえる楽曲に合わせ衣装もクラシカルかつエレガントです。
 女性のサフチェンコ選手は淡いピンク。花がいくつも重なったようなレース刺繍が胸から腰にかけて施されていてフェミニンな印象。スカートは前部が短く後ろが垂れ下がるように長めになっていて、風になびいて優雅です。男性のゾルコビー選手はこちらも淡いピンクのトップスで、その上に濃い赤のベストといういでたち。ちょっと中国風な感じですが、「くるみ割り人形」の舞台はドイツなのでドイツっぽいといえばドイツっぽいかも……。
 それはともかくとして、プログラムの高貴で壮大な雰囲気にあったノーブルなコスチュームだなと思います。


 第6位はアメリカのマリッサ・カステリ、サイモン・シュナピアー組の「映画『007 スカイフォール』より」。

c0309082_1745180.jpg

 スパイであるジェームズ・ボンドを主人公とした『007』シリーズの1作、『スカイフォール』。衣装はダークでクールな世界観にピッタリの黒とグレーでまとめています。
 女性のカステリ選手は全身レース仕立てのシックなワンピース。その中でも黒一色ではなく、アクセントとなる装飾がバランス良く散りばめられていて華をプラスしています。男性のシュナピアー選手はグレーのシャツとそれよりワントーン濃いネクタイに、ショルダーホルスターで、まさにジェームズ・ボンド。
 このプログラムはもちろんアップテンポな部分もありますが、全体的にクールな大人の魅力をアピールするようなプログラムになっているので、これくらい色が無い方がスマートでカッコよくて音楽に合ってるなと思いますね。


 第7位はドイツのマイリン・ヴェンデ、ダニエル・ヴェンデ組の「映画『ロード・オブ・クエスト ドラゴンとユニコーンの剣』より」。

c0309082_17464060.jpg

 プログラムは『ロード・オブ・クエスト ドラゴンとユニコーンの剣』という映画のサントラを使用。作品を見たことがないので内容は分からないのですが、ファンタジー映画のようです。ということで、衣装もまさにファンタジー映画に出てきそうなリアルなものになっています。
 女性のマイリン選手はモスグリーンのワンピースの上に、ダークブラウンの革製っぽいベストを着用。ベストには留め具風の装飾でアクセントが付けられ、また、髪は髪飾りを付けずにシンプルな三つ編みで素朴な雰囲気を醸し出しています。男性のダニエル選手の方は白い長袖シャツに、肩から茶色のサム・ブラウン・ベルトを掛けて昔風に。シャツには汚れがつけられていて、ファンタジー映画の登場人物といった演出が徹底してなされていますね。


 第8位はドイツのアナベル・プローレス、ルーベン・ブロマールト組の「映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』より」。

c0309082_1839484.jpg

 『パイレーツ・オブ・カリビアン』は海賊が活躍するファンタジー映画。フィギュアスケート界でもおなじみとなっています。このプローレス&ブロマールト組の衣装にも映画の世界観がしっかり反映されています。
 女性のプローレス選手は胸部が白、胴部が革っぽい黒、スカートが臙脂色というシックな色づかい。男性は白い長袖シャツに濃いブルーのベスト、臙脂色のパンツに革風のブーツを履いています。女性の衣装の革(っぽい)素材の使い方だったりマニッシュな色づかいだったりは、女性らしさを残しながらも海賊映画特有の男性的な雰囲気にうまく合わせていますね。男性の開けっぴろげなシャツやゴツゴツしたデザインのベルト、履き口が折り返されたブーツなどは、まさにTHE海賊といったデザイン。プログラムの世界にピッタリです。また、プローレス選手のコスチュームはドイツの民族衣装であるディアンドルにも似ていて、その点も素敵だなと思います。
 男女でカラーも統一されていて、ペアとしての一体感も感じられる衣装です。


 第9位はカナダのナターシャ・ピュリッチ、マーヴィン・トラン組の「映画『ライフ・イズ・ビューティフル』より」。

c0309082_0263986.jpg

 女性のピュリッチ選手はロイヤルブルーのワンピース。肩や腰のあたりに花のような細かい刺繍がなされていて、青一色の衣装の中にアクセントをプラスしています。一方男性のトラン選手は白いシャツに白いベスト。女性と同じブルーのポケットチーフで女性との統一感を持たせています。
 ペアとして見てもシンプルなコスチュームですが、リフトやコンビネーションスピンをするとロイヤルブルーと純白が重なり合い、色がよく映えてきれいですね。


 第10位はカナダのメーガン・デュアメル、エリック・ラドフォード組の「映画『アリス・イン・ワンダーランド』より」。

c0309082_18202751.jpg

 『不思議の国のアリス』を元にした映画『アリス・イン・ワンダーランド』。衣装も映画の世界に合わせたファンタジックで華やかなものとなっています。
 女性のデュアメル選手は紫のホルタ―ネックワンピースで、白いラインが縦に何本も入ったデザイン。キラキラとしたラメがいくつもあしらわれていて、きらびやかです。男性のラドフォード選手は紫のストライプシャツに紫のジャケット。パンツは黒地に紫のチェックという、全身パープル。ただ、同じ紫でも微妙に色を変えたり、効果的に黒を入れたりしているので、さほど違和感なくおしゃれに感じます。縞やチェックといったおなじみの模様を入れたコスチュームというのはそう多くないですが、このデュアメル&ラドフォード組のようにファンタジックなプログラムで使うと、キュートな印象を与えるので良いと思いますね。



 ということで、ベストコスチューム13/14・ペアフリー部門は以上です。今後も、女子、アイスダンスと続きます。


:記事冒頭のアイスリンクの写真は、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、ジェームス&シプレ組の写真は、アメリカのケーブルテレビ「TLC」の公式ウェブサイト内の記事「The 26 Best Blinged Skating Costumes from Sochi」から、デニー&フレイジャー組の写真、ケイン&オシェア組の写真、彭&張組の写真、サフチェンコ&ゾルコビー組の写真、ピュリッチ&トラン組の写真は、エンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、カステリ&シュナピア組の写真は、カナダ情報ウェブサイト「canada.com」が2014年2月8日の13:57に配信した記事「Gallery: Figure skating’s kiss, cry and tumbles」から、ヴェンデ&ヴェンデ組の写真は、ドイツの新聞「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング」の公式ウェブサイトが2013年9月29日に配信した記事「Deutsches Paarlauf-Hoch in Oberstdorf」から、プローレス&ブロマールト組の写真は、アナベル・プローレス&ルーベン&ブロマールト組の公式ウェブサイトから、デュアメル&ラドフォード組の写真は、フィギュアスケート情報ウェブサイト「Absolute Skating」から引用させていただきました。


【ブログ内関連記事】
ベストコスチューム13/14・男子ショートプログラム部門 2014年4月9日
ベストコスチューム13/14・男子フリー部門 2014年4月13日
ベストコスチューム13/14・ペアショートプログラム部門 2014年4月19日
ベストコスチューム13/14・女子ショートプログラム部門 2014年4月28日
ベストコスチューム13/14・女子フリー部門 2014年5月2日
ベストコスチューム13/14・アイスダンスショートダンス部門 2014年5月12日
ベストコスチューム13/14・アイスダンスフリーダンス部門 2014年5月21日
[PR]
by hitsujigusa | 2014-04-22 20:19 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_242369.jpg


 13/14シーズンに使用された衣装のベスト10を決めるベストコスチューム13/14。今回はペアのショートプログラムで使用された衣装のベスト10です。なお、衣装を選ぶ際のルールについては、こちらの記事の冒頭をご参考下さい。また、ペア競技の場合はペアを組む2人の衣装を総合的に見てベスト10を選びました。
 では、さっそく第1位からです。

*****

 第1位はロシアのタチアナ・ボロソジャー、マキシム・トランコフ組の「仮面舞踏会」です。

c0309082_15312722.jpg

 ハチャトゥリアンの「仮面舞踏会」は浅田真央選手、織田信成選手、閻涵(ヤン・ハン)選手など、多くのスケーターが使用した定番曲ですが、ボロソジャー&トランコフ組はペアという特性を生かして、本当に仮面舞踏会で貴公子と淑女が踊っているかのような雰囲気を作り出しています。
 2人が着用している衣装も、そうしたムードを生み出すのに一役買っていると思います。男性のトランコフ選手はネイビーのダブルスーツに赤と金色の肩章という軍服風のデザイン。金色のボタンや飾緒など細部に渡るこだわりがうかがえ、フィギュアスケートの衣装とは思えない本格的なコスチュームとなっています。女性のボロソジャー選手はレースを多用した水色のドレス。肩を出したデザインとなっていますが、肩紐を肌色にすることで違和感なく自然な形で肩出しドレス風に見せています。
 男性の衣装がかなりかっちりと重厚な分、女性の衣装を柔らかくエレガントにすることで、うまくバランスを取っていますね。「仮面舞踏会」という貴族的なプログラムを見事に表現した衣装だと思います。


 第2位は中国の彭程(ペン・チェン)、張昊(ジャン・ハオ)組の「グリーン・デスティニー」。

c0309082_17204226.jpg

 『グリーン・デスティニー』は中国を舞台にした武侠映画。そのタイトルのとおり、衣装もグリーンを基調にした素敵なデザインとなっています。
 女性の彭選手のワンピースは身体の中心を横切るような青い布を境として、左側は緑がかった水色、右側はグリーンというデザイン。男性の張選手は青い上着の下にグリーンの服を着ているというデザイン。2人ともグリーンと青をベースにしたコスチュームで、同様に金色の模様をあしらっています。
 「グリーン・デスティニー」なので緑一色にしても良さそうですが、あえてそうせず同色系の色を複数使うことで、シンプルではありますが華やかさも感じさせる衣装に仕上がっています。また、2人のバランスで見た時に、女性は主にグリーン、男性は主にブルーでまとめられているので、色づかいのコンビネーションがきれいに見えます。ペアならではの調和が美しい衣装ですね。


 第3位はロシアのべラ・バザロワ、ユーリ・ラリオノフ組の「ティティナ 映画『モダン・タイムス』より/Paris by Night」。

c0309082_17184938.jpg

 チャップリンの映画『モダン・タイムス』の楽曲などを使用したレトロモダンな雰囲気漂うプログラムですが、衣装もそれに合わせた風情のあるものです。
 女性のバザロワ選手はモノトーンのワンピースで、黒白ストライプの布を身体に巻きつけたようなデザイン。色づかいはとてもシンプルですが、デザインが個性的なのでコンテンポラリーな感じもします。男性のラリオノフ選手は上の写真だと分かりにくいですが、タートルネック風の黒い服の上にストライプの入った黒いベストを着用しています。ベストの下に着るなら普通は白いワイシャツとか、白でなくてもワイシャツで紳士風にまとめるのがスタンダードなところでしょうが、あえて半袖のタートルネック風にすることで王道を外しています。バザロワ選手の独創的なワンピースと合わせても、レトロかつモダンなプログラムの雰囲気によく合っていて印象的ですね。


 第4位はフランスのヴァネッサ・ジェームズ、モルガン・シプレ組の「ミニー・ザ・ムーチャー/ジャンピン・ジャック」。

c0309082_1761671.jpg

 「ミニー・ザ・ムーチャー/ジャンピン・ジャック」は大人の色気を感じさせる前半部とノリの良い陽気な後半部が印象的な楽しいプログラム。衣装はシーズンで2タイプ使用されていて、世界選手権では女性は赤いホルターネックワンピース、男性は黒い長袖の衣装。ソチオリンピックまでは今回取り上げた衣装を着用しています。世界選手権のものも素敵なのですが、セクシュアルな魅力を前面に押し出したプログラムなので、より大人っぽさを感じさせるソチ五輪までの衣装の方が私は好きですね。
 女性のジェームズ選手は大人っぽいパープルにキラキラ輝くシルバーが縁取りに施されたデザイン。男性のシプレ選手は白いシャツに黒いベストですが、ジェームズ選手同様にシルバーがあしわれていて、ペアの一体感があります。両者ともシンプルな衣装ではありますが、ジェームズ選手が衣装に使われているのと同じ銀色のピアスや指輪を付けて全体を統一していたり、シプレ選手のシャツを長袖ではなく五分袖にすることで、上品にし過ぎず軽快さを醸し出していたりと細部に工夫が凝らされていて、華のあるコスチュームになっていると思います。


 第5位はアメリカのアレクサ・シメカ、クリス・クニーリム組の「パパ、見守ってください 映画『愛のイエントル』より」です。

c0309082_18293923.jpg

 しっとりとした旋律が印象深い「パパ、見守ってください」。シメカ、クニーリム両選手のコスチュームもグレーと黒を基調にしたシックな色づかいで、宗教的な厳かさえ漂うプログラムの世界観を表現しています。
 女性のシメカ選手の衣装はストラップレスのワンピースで、右肩から左腰にかけて蔓草のようなデザインがなされています。そして、男性のクニーリム選手も胸元の大きく開いたグレーの衣装で雰囲気を統一しています。グレーと黒という地味な色彩なので渋くなり過ぎる危険もあると思うのですが、同じグレーでも何色かのグラデーションにしていたり、ラインストーンなどの装飾できらびやかさを与えたりすることで、シックさの中にも華を感じるコスチュームになっていますね。


 第6位はドイツのマイリン・ヴェンデ、ダニエル・ヴェンデ組の「ノヴェンバー・レイン」。

c0309082_1515798.jpg

 「ノヴェンバー・レイン」はロックバンド、ガンズ・アンド・ローゼズの楽曲を、ドイツ出身のヴァイオリニストであるデイヴィッド・ギャレットさんが演奏しているもの。2人の衣装も“ノヴェンバー・レイン”=11月の雨というタイトルを想起させるようなグレーがかったブルーで揃えられています。
 男性のダニエル選手の方がシンプルなブルーのシャツに黒いパンツといういでたちの一方、女性のマイリン選手は凝ったデザインとなっています。ちょっと魚のうろこっぽいレース生地でうっすら透け感があり、ところどころにお花の模様もあしらわれています。遠目から見ると普通のワンピースなのかなという印象を受けますが、じっくり見ると細かい模様の違いがあったりと繊細な作りになっているんですね。上半身を凝ったデザインにした分、スカートは装飾のない同色系でバランスを取っています。
 女性と男性のバランスという点で見ても、男性を簡素にして女性を引き立たせるという感じで良いなと思います。


 第7位はカナダのナターシャ・ピュリッチ、マーヴィン・トラン組の「タイニー・ダンサー」。

c0309082_2424167.jpg

 女性のピュリッチ選手、男性のトラン選手ともにターコイズ色の衣装で統一。トラン選手は装飾の全くないトップスで、ピュリッチ選手は布が胸の下でクロスして腰に巻きつけられたデザインのワンピース。その周囲に花のような模様がスパンコールなどで施され、エレガンスな印象を与えます。
 どちらの衣装もそうですが、あまり装飾だったりデザインだったりでゴテゴテさせ過ぎずに、布の質感をそのまま生かしたようなコスチュームにしているのが良いですね。トラン選手のトップスの首元をたるませてドレープにしたり、ピュリッチ選手のワンピースの布をクロスさせてくしゅっとさせたり、そういったシンプルな生地の使い方が自然な感じを生み出していて、フィギュアスケートのコスチュームというよりも本当にパーティーに着ていけそうな衣装という感じで素敵だなと思います。


 第8位は中国の隋文静(スイ・ウェンジン)、韓聰(ハン・コン)組の「映画『道』より」。

c0309082_1115691.jpg

 第7位のピュリッチ&トラン組は男女の衣装の雰囲気を統一させることでペアの融合を図っていましたが、こちらの隋&韓組はそれぞれ全く異なるコスチュームを着用。男性の韓選手は白いシャツに黒いベストという定番ですが、ベストの中央部分をブルーにし、さらにラメなどで装飾をプラスすることでアクセントを付けています。女性の隋選手は全体的にベージュ系。色づかいはニュートラルですが、上半身だけでも胸の部分とお腹の部分で違う生地を使っていますし、スカートも長さの異なるものを何枚も重ねて変化をつけています。また、腰にリボンをあしらったり、左胸に赤いハートを飾ったりと、ところどころにガーリーで遊び心のあるデザインがなされていて、10代の若いスケーターならではのコスチュームだなという感じもします。2人の組み合わせで見るとちょっと雰囲気が合ってないかなという気もしないではないのですが、韓選手のベストのブルーの部分と、隋選手の胸のブルー部分には統一性も感じられます。
 貧しい道化師を描いた映画だからこそ、派手でない地味めな色を選んだというのがナイスチョイスだと思いますね。


 第9位はイタリアのステファニア・ベルトン、オンドレイ・ホタレク組の「映画『マスク』より」。

c0309082_1461132.jpg

 コメディ映画『マスク』のサントラを使用したプログラムということで、その世界観にぴったりのイエローを基調にした衣装を両選手とも使用しています。男性のホタレク選手は白いシャツに真っ黄色のパンツ。そこに白黒の市松模様のサスペンダー(パンツに固定するボタン部分がまたキッチュな感じで良いですね)を加えてコミカルさを表しています。一方女性のベルトン選手も派手なゴールドのワンピースで、しかもワンピース全体を渦巻き模様にし、スカートの裾をギザギザにしてイエローのフリンジをあしらうなど、徹底的にデコレートしてコミカルさを醸し出しています。そのようにあえて“デコる”ことで、華やかを通り越して派手派手しさを演出していて、コメディ映画特有の仰々しい感じだったりバカバカしい感じだったりがコスチュームで表現されているなと思います。


 第10位はイギリスのステイシー・ケンプ、デヴィッド・キング組の「ピアノ協奏曲第1番」。

c0309082_2125990.jpg

 ケンプ&キング組が使用している「ピアノ協奏曲第1番」はロシアの作曲家チャイコフスキーのもの。壮大で重厚な旋律が有名ですが、そこにピンクを合わせてくるとはなかなか凄いですね。
 女性のケンプ選手はホルタ―ネック風のワンピースで、胸元が色とりどりのスパンコールで彩られています。男性のキング選手はピンクの長袖シャツに薔薇柄のグレーのベストを着ています。ピンクを大々的に使った衣装というのは下手すると安っぽくなったり下品になったりしかねないと思うのですが、デザインを品の良いものにすることでその危険を回避しています。ケンプ選手のワンピースは全身鮮やかなピンクなので、エレガンスというよりはかなり女の子らしいものになっています。が、その分キング選手がシックな色合いのベスト、しかも襟付きかつボタンが縦2列という風格あるベストを着用することで、大人っぽさをプラスしていますね。また、ネクタイもアスコットタイというフォーマルなネクタイなので、上品な印象を受けます。
 一方が女の子らしく、もう一方が大人の男性らしくという組み合わせによって、うまくペアのバランスを取った衣装だなと思いますね。



 以上がベストコスチューム13/14・ペアショートプログラム部門のベスト10でした。こうやってじっくりペアの衣装を見ますと、彭&張組、バザロワ&ラリオノフ組、シメカ&クニーリム組などのように、男女の衣装の色づかいを統一して2人の一体感を前面に押し出したタイプのペアもいれば、ボロソジャー&トランコフ組や隋&韓組のように全く違う衣装を組み合わせたペアもいて、改めておもしろいなーと感じましたね。こういった見方はペアやアイスダンスといったカップル競技ならではですから、今後の記事でもそのあたりに注目していきたいと思います。
 ということで、ペアフリー部門に続きます。


:記事冒頭のアイスリンクの写真は国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、ボロソジャー&トランコフ組の写真は、AFPBB Newsが2014年1月18日の12:02に配信した記事「ボロソジャー/トランコフ組がペアSP首位、フィギュア欧州選手権」から、彭&張組の写真は、世界選手権2014の公式ウェブサイトから、バザロワ&ラリオノフ組の写真は、フィギュアスケート情報ウェブサイト「Absolute Skating」から、ジェームズ&シプレ組の写真は、ヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ組の公式フェイスブックページから、シメカ&クニーリム組の写真、隋&韓組の写真は、アイスダンス情報ウェブサイト「Ice-dance.com」から、ヴェンデ&ヴェンデ組の写真、ケンプ&キング組の写真は、エンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、ピュリッチ&トラン組の写真は写真画像代理店「ゲッティイメージズ」のエディトリアルイメージサイトから、ベルトン&ホタレク組の写真は、エンターテインメント情報ウェブサイト「For The Win」が2014年2月12日の7:41に配信した記事「AP SOCHI OLYMPICS FIGURE SKATING S OLY FIG RUS」から引用させていただきました。


【ブログ内関連記事】
ベストコスチューム13/14・男子ショートプログラム部門 2014年4月9日
ベストコスチューム13/14・男子フリー部門 2014年4月13日
ベストコスチューム13/14・ペアフリー部門 2014年4月22日
ベストコスチューム13/14・女子ショートプログラム部門 2014年4月28日
ベストコスチューム13/14・女子フリー部門 2014年5月2日
ベストコスチューム13/14・アイスダンスショートダンス部門 2014年5月12日
ベストコスチューム13/14・アイスダンスフリーダンス部門 2014年5月21日
[PR]
by hitsujigusa | 2014-04-19 04:07 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_18455291.jpg


 男子ショートプログラム部門に引き続き、ベストコスチューム13/14をお送りします。今回は男子フリー部門のベスト10です。なお、衣装を選ぶにあたってのルールやこの記事の趣旨に関しては、こちらの記事の冒頭をご参考下さい。
 それではさっそく第1位からの発表です。

*****

 第1位はアメリカのジェイソン・ブラウン選手の『リバーダンス』から「太陽を巡るリール」。

c0309082_22361061.jpg

 「太陽を巡るリール」はアイルランド音楽やアイリッシュダンスを中心にしたショー『リバーダンス』の中の1つ。ブラウン選手のプログラムにもそのショーの要素が多分に取り入れられていて、上半身を動かさず足だけで踊るアイリッシュダンス風のステップなど、見どころ満載の素敵なプログラムです。
 そして衣装にも『リバーダンス』らしさが存分に表れています。最大の特徴はなんといってもコスチュームの緑色。緑はアイルランドのナショナルカラーですから、まさにこのプログラムに最も相応しい色を選んだと言えます。また、襟元や腰のあたり、脚にはトラディショナルな雰囲気を感じさせる紋様・柄があしらわれていて、伝統的なアイルランド音楽を用いたプログラムの世界によく合っていますね。全体的な形はシンプルな衣装ですが、ところどころに施された模様や飾り、襟元のクロスさせた紐など、細かな装飾によって華やかでありながら気品を漂わせるコスチュームになっていると思います。


 第2位は日本の織田信成選手の「ウィリアム・テル序曲」。

c0309082_0401098.jpg

 シーズン当初は裾がギザギザになった白いトップスに金色のベルトを巻いた衣装を使用していた織田選手。こちらも素敵だったのですが、写真の衣装に変えたことで、よりプログラムに風格が加わったような気がします。
 「ウィリアム・テル序曲」はスイスの英雄ウィリアム・テルをモチーフにした作品ですが、シーズン当初に使用していた白い衣装も、後に使用することになったイエローの衣装も、“ウィリアム・テル”らしさが表現されています。白い衣装ですと、裾のギザギザや古典的なデザインのベルト、イエローの方ですと、ベストの肩からお腹にかけて施されたクラシカルな模様やイエローのシャツの胸元のクロス紐。そういった部分でウィリアム・テルが存在していたとされる中世の時代の衣服っぽさを表わしていますね。この2つのコスチュームの違いという点で言えば、白い衣装は装飾らしい装飾がベルトくらいだったのでカジュアルというか、普通の村人っぽい感じだったのですが、イエローの衣装はシャツの上にベストを着ているというデザインであるため、より男らしさ、英雄らしさを印象付けます。
 やはり衣装でもプログラムのイメージは変わってくると思うので、英雄の凛々しさが表れたイエローの衣装の方が私は好きですし、プログラムの世界観にもピッタリだと思いますね。


 第3位はアメリカのアダム・リッポン選手の「牧神の午後への前奏曲」です。

c0309082_1202991.jpg

 わりと装飾的だった上の2つに比べて、このリッポン選手の衣装は非常にシンプルです。オレンジと明るいブラウンの中間のような鮮やかな生地に、流れるようなギャザー。装飾らしいものと言えば全体に散りばめられたラメくらいでしょうか。ですがこれくらいシンプルだからこそ、「牧神の午後への前奏曲」という音楽の世界―のどかでゆったりとして牧歌的―の邪魔をすることなく、うまく溶け合っているんですね。ギリシア神話をモチーフにした「牧神の午後への前奏曲」は、タイトルのとおり午後に昼寝をする牧神がまどろんでいるさまを描いていますから、華やか過ぎるコスチュームはこの独特の“ぼんやり感”にはそぐわないだろうと想像します。
 また、このプログラムにはコンテンポラリーなダンス、振り付けがところどころで見られるのですが、衣装が身体にぴったり密着していることによって、リッポン選手の美しい身体の線、しなやかな身のこなしが白い氷に映え、強調されます。動きを存分に魅せるという意味でも、考えられた衣装だなと思います。


 第4位はアメリカのジェレミー・アボット選手の「エクソジェネシス交響曲第3部」。

c0309082_14393933.jpg

 「エクソジェネシス交響曲第3部」はイギリスのロックバンド、ミューズの楽曲。アボット選手は11/12シーズンにもこの曲を使用していて、アボット選手の代表作といえる名プログラムです。
 壮大で神秘的な調べが印象的なプログラムですが、コスチュームもそのような曲想をイメージさせるデザインとなっています。ブラウンのベースに青や黒が混じり、その中に無数の星のごとくいろんな色が散りばめられていて、宇宙を想起させます。エクソジェネシス(=脱出創世記)の名のごとく荘厳な曲にふさわしい深みのある衣装だと思います。また、上述したリッポン選手もそうでしたが、音楽自体が装飾的ではなく、どちらかというと渋い味わいのあるものなので、やはりシンプルなデザインの方がこういった音楽にはしっくりきますね。


 第5位は日本の高橋大輔選手の「ビートルズ・メドレー」。

c0309082_15481843.jpg

 「ビートルズ・メドレー」はビートルズ(とビートルズに関連する)の楽曲5曲を繋ぎ合わせたプログラム。曲が変わるたびに当然雰囲気も変わり、中にはタンゴアレンジの曲もあるので、どの曲にも合った衣装である必要があります。高橋選手はこのプログラムにおいて、4つの衣装を使用しました。ジャパンオープンとスケートアメリカではオフホワイトで胸から布が垂れ下がっているもの、NHK杯ではオフホワイトで全体にシャーリングが入ったもの、全日本選手権では濃い紫のもの、そしてオリンピックでは濃い紫にキラキラが施されたものです。ほかの3つは今回取り上げたもの以上にシンプルでそれも良かったのですが、ちょっと地味かなという感じが個人的にはあったので、オリンピックで使用した衣装くらい華がプラスされたものが好きですね。
 また、紫の下から首元に少し白がのぞいているのも素敵だと思います。「ビートルズ・メドレー」は単にビートルズの名曲を繋げたプログラムというだけでなく、高橋選手のスケート人生を表現したような面もあります。ショートプログラムの「バイオリンのためのソナチネ」もそうでしたが、絶望からの希望、暗闇の中の光といったテーマが、濃い紫と控えめな白という衣装にも表されているなと感じますね。


 第6位は日本の小塚崇彦選手の「序奏とロンド・カプリチオーソ」。

c0309082_17531084.jpg

 高橋選手の「ビートルズ・メドレー」同様、この「序奏とロンド・カプリチオーソ」でも複数の衣装が使用されました。最初にジャパンオープンで使用された赤と黒の衣装はあまり評判がよろしくなく、GPシリーズではグレーっぽいブルーの衣装に変更。そして全日本選手権、世界選手権では赤紫の衣装を着用しました。
 「序奏とロンド・カプリチオーソ」は昨シーズンも用いたプログラムで、その時は王子さま風の黒い衣装を着ていましたが、この赤紫の衣装の方がゴージャス感があるかなと思います。さらに、肩から胸にかけてと腰の部分にスパンコール(ラインストーン?)がバランス良くあしらわれていて、華やかさを感じさせます。また、上の写真ではちょっと分かりにくいですが小ぶりな襟が付いているので、フォーマルなシャツを着ているような“きちんと感”も醸し出されていますね。


 第7位はロシアのアルトゥール・ガチンスキー選手の「アンナ・カレーニナ」です。

c0309082_18294748.jpg

 イギリス映画『アンナ・カレーニナ』のサウンドトラックを使用したプログラムということで、まさに映画に登場しそうな人物っぽいコスチュームとなっています。
 衣装の形自体はスタンダードなシャツ+ベスト。衣装というよりも本当にパーティーなんかに着ていけそうなエレガンスなデザインです。トップスの色はパステルグリーンといった感じで柔らかなイメージを与えますし、この写真では分かりにくいかもしれませんが、首にピンクのアスコットタイを巻きつけたようなデザインにもなっていて、上半身全体がパステルカラーでまとめられているので、スタンダードな形の衣装でも新鮮味を感じますね。また、ベストとシャツの色が同色系というのも珍しく、合わせ方も上手だなと思います。


 第8位は日本の羽生結弦選手の「ロミオとジュリエット」。

c0309082_125888.jpg

 11/12シーズンにも“ロミオとジュリエット”を演じている羽生選手ですが、以前のものと13/14シーズンのものとでは使用している楽曲が違うのはもちろんのこととして、それぞれのプログラムの趣にもだいぶ違いがあります。11/12シーズンの「ロミジュリ」は現代に舞台を置き換えた映画のサントラということもあって、音楽自体もポップ性・ロック性のある現代的なイメージでした。ですが、13/14シーズンで使用したのは1968年に公開された映画のサントラで、クラシカルで優雅な印象の音楽でしたから、羽生選手が演じるにあたってもそういった色が演技全体に表れていたと思います。
 そういった観点から見ると衣装も、今季の衣装の方がよりフェミニンに感じられます。胸のあたりは肩から白いフリルが垂れ下がるようなデザイン、お腹のところは花がいくつも重ねられたような模様のレースで、下にいくにつれグレー、黒とグラデーションとなっています。そして胸、肩、左腕には宝石箱のように色とりどりのラインストーンが施されています。もし衣装だけを見て、しかも上半身のみを一見したならば、女子選手のコスチュームだと思ってもおかしくないくらい、かわいらしくガーリーな衣装だと思います。この衣装をほかの男子選手が着たら相当違和感のあるものになるのではないかと想像しますが、羽生選手が着るとそうは全く感じないから不思議です。
 これはこの衣装に限ったことではありませんが、羽生選手の衣装はあまり男子選手が使わないような色も普通に使いますし、フリルやカラフルなラインストーンといった装飾も満載です。これがほかの男子選手だったら奇抜なコスチュームとなってしまうところでしょうが、羽生選手が着ると個性的・独創的なデザインだなとは思っても、奇抜だなとは感じないのですね。それどころかピンクだったりフリルだったりが見事に似合っていて、毎シーズン新しい衣装を見るたびに見惚れてしまいます。羽生選手の衣装をデザインしているジョニー・ウィアーさんの力ももちろん大きいのでしょうが(全てかどうかは不明ですが)、これだけ斬新な衣装をさらりと着こなせる羽生選手の天性的な性質というか魅力というのは、またフィギュアスケートの技術や表現力といったところとは別の、彼の凄さだと思いますね。


 第9位はチェコのミハル・ブレジナ選手の「シャーロック・ホームズ」。

c0309082_2223044.jpg

 映画『シャーロック・ホームズ』のサントラを使用したこのプログラム。こちらも衣装は2種類あり、1つはシーズン前半に使用していたもので、青いベストのボタンが留められているタイプ、そしてシーズン後半からはボタンを開けたデザインの衣装を使用しました。デザイン的には白いシャツに青いベストというよく似たものなのですが、なぜボタンを開けた方を選んだかというと何となくです。何となくこっちの方が好きというだけで、ボタンを留めた方も同じくらい素敵だなと思います。
 どちらもシックなブルーのベストで、その右側だけ金色のドットがあしらわれたデザインですが、ボタンを開けた方はベストに銀色の縁取りがなされ、下に着たシャツの金色のボタンが見えている分、アクセントとなっているような気がします。また、ベルトも派手めな金色のバックルで印象的ですね。ボタンを留めている方がしゃんとした感じはありますが、サントラを使用した映画に登場するシャーロック・ホームズも従来のイメージのホームズではなく、反紳士的なホームズだそうなので、前を開けたラフな感じも良いかなと思います。


 第10位はフランスのフローラン・アモディオ選手の「Under the moon/Happy/La vie en rose/Quand je vois tes yeux」。

c0309082_0161713.jpg

 フランスのシャンソンの名曲「La vie en rose(バラ色の人生)」を始め、フランスのエッセンスを凝縮したポップで楽しいプログラム。ということで衣装も遊び心を感じさせるとても素敵なものです。
 こちらも2種類の衣装があって(たぶん)、1つは写真のもの。もう1つは欧州選手権で使用した色違いのもので、グリーンがかったブルーのシャツに群青の蝶ネクタイとサスペンダーという色づかいで、シックな雰囲気。ですが、今回選んだ方は水色のシャツに赤い小物というポップさが印象的なコスチューム。コミカルさもあるプログラムに似合っているのはもちろん、陽気なアモディオ選手のキャラクターともぴったりな衣装で、男性をこういう言葉で評するのはどうかとは思うのですが、とてもキュートでした。
 また、一見シンプルなデザインですが細かい部分へのこだわりが感じられました。袖をロールアップする紐を蝶ネクタイ・サスペンダーと同色にしているところや、手袋をズボンと同色にして、手袋を固定するベルトのボタンを赤にしているところなど、ちょっとしたことではありますがおしゃれだなと感じさせるグッドデザインですね。



 ベストコスチューム13/14・男子フリー部門の記事は以上です。余談ですが、ランクインした衣装をタイプ別にまとめるとするなら、ブラウン選手や織田選手の衣装はクラシカルなデザインをモチーフにしたタイプ、リッポン選手や高橋選手、小塚選手の衣装はシンプルに一色でまとめ、そこにキラキラをプラスしたタイプ、ガチンスキー選手やブレジナ選手は男性らしいシャツ+ベストの定番タイプですね。アボット選手の衣装は形自体はシンプルですが、プリントされた絵柄の複雑さが独創的です。羽生選手はある意味タイプ分けできない唯一無二の衣装ですね。アモディオ選手の衣装はシャツ+何か、という意味でガチンスキー選手、ブレジナ選手と同じグループに入れてもいいかもしれません。
 とりとめのないことを書き連ねましたが、女子、ペア、アイスダンスもゆるゆると続けていきたいと思いますので、ご興味のある方は是非ご覧くださると幸いです。


:記事冒頭のアイスリンクの写真は国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、ブラウン選手の写真、リッポン選手の写真、アボット選手の写真、高橋選手の写真、羽生選手の写真、ブレジナ選手の写真、アモディオ選手の写真は、エンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、織田選手の写真は毎日新聞のニューサイト内の写真特集「フィギュアGPファイナル2013」から、小塚選手の写真は世界選手権2014の公式ウェブサイトから、ガチンスキー選手の写真はアイスダンス情報ウェブサイト「Ice-dance.com」から引用させていただきました。


【ブログ内関連記事】
ベストコスチューム13/14・男子ショートプログラム部門 2014年4月9日
ベストコスチューム13/14・ペアショートプログラム部門 2014年4月19日
ベストコスチューム13/14・ペアフリー部門 2014年4月22日
ベストコスチューム13/14・女子ショートプログラム部門 2014年4月28日
ベストコスチューム13/14・女子フリー部門 2014年5月2日
ベストコスチューム13/14・アイスダンスショートダンス部門 2014年5月12日
ベストコスチューム13/14・アイスダンスフリーダンス部門 2014年5月21日
[PR]
by hitsujigusa | 2014-04-13 01:36 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_15454858.jpg


 シーズン最後の大舞台、世界選手権も幕を閉じ、フィギュアスケート界はひとまずの13/14シーズン終了となりました。
 そこで、ベストコスチューム13/14と題しまして、フィギュアスケーターたちが今シーズン使用・着用した衣装・コスチュームのベスト10を、独断と偏見で選定したいと思います。男子、女子、ペア、アイスダンスの4種目を、それぞれショートプログラム(ショートダンス)とフリーに分けて、10着ずつ選びました。この記事では男子ショートプログラムで使用された衣装をランキング形式で発表します。なんであの衣装が入ってないんだーとか、ちょっと違うなーとかあるかもしれませんが、あくまでも個人的な好みによるベスト10なので、その点はご了承ください。
 さらに、衣装を選ぶにあたって、以下のようにルールを定めました。


●13/14シーズンに使用・着用された衣装が対象。
●全ての選手が対象では範囲が広すぎるので、グランプリシリーズ、欧州選手権、四大陸選手権、ソチオリンピック、世界選手権に出場した選手のみに対象を限定。
●1選手1着のみに限定。1つのプログラムで複数の衣装が使用されている場合、選ぶのは1着のみ。また、1人の選手が複数のプログラムを使用している場合も、1着のみとする。
●13/14シーズンに使用された衣装でも、それ以前のシーズンにも大会で使用されたことのある衣装は対象外とする。



 このルールに基づいて、今季の男子ショートプログラムにて使用された衣装のベスト10を、発表していきたいと思います。

*****

 まずはさっそく第1位から。1位はロシアのマキシム・コフトゥン選手の「ファルカス」。

c0309082_23305934.jpg

 「ファルカス」はスペインのクラシックギター奏者、ペペ・ロメロさんのフラメンコ作品。ということで、衣装も赤と黒を基調にしたいかにもフラメンコらしさ、スペインらしさを醸し出すコスチュームとなっています。赤と黒の色づかいがはっきりと二色に分かれているわけじゃなくて、上半身から下半身にかけて赤が黒になっていくグラデーションの感じがきれいです。コスチュームのデザイン的にも、ボレロ風になっているため、さらにフラメンコの風情を高めています。
 また、このプログラムはどちらかというと陽気というよりも、クールさが印象的なフラメンコです。衣装も全体的に黒の割合が多い分、赤の情熱的な雰囲気よりも黒の落ち着きが前面に出ている上、赤の色合い自体も赤々し過ぎず落ち着いた赤なので、プログラムの雰囲気によく合っています。プログラムと見事に融合した、素晴らしい衣装でしたね。


 第2位は中国の閻涵(ヤン・ハン)選手の「マイナー・ワルツ/ヴァイパーズ・ドラッグ」です。

c0309082_053226.jpg

 この「マイナー・ワルツ/ヴァイパーズ・ドラッグ」は、コミカルでありながらジャジーなカッコよさも漂う、ちょっと独特な雰囲気のプログラムです。なので、こういったプログラムにどんな衣装が合うのかというのは難しいところで、コフトゥン選手のように衣装とプログラムの融合がどうとかいうことは言えないのですが、プログラムの何とも言えない雰囲気によく合っていますね。
 この衣装は一見すると、上半身の左半分は黒、右半分は渋めの茶色(グレー?)という地味な印象ですが、その二色の中心をゴールドの模様が走っていて、よくよく見るとなかなか凝ったデザインだなと思います。黒と茶色だけだとかなり渋いコスチュームになってしまう危険がありそうですが、黒の部分にラインストーンが縫いつけられていたり、衣装の中心、肩、袖口と、ところどころに金色があしらわれていたりして、地味過ぎず派手過ぎず、うまくバランスを取っています。プログラムの世界観に合っているのもそうですが、閻選手の顔立ち・雰囲気にも合った良い衣装だと思います。


 第3位は日本の高橋大輔選手の「バイオリンのためのソナチネ」です。

c0309082_0343448.jpg

 思いがけない形でいわくつきのプログラムとなってしまった「バイオリンのためのソナチネ」ですが、宮本賢二さんの振り付けと高橋選手の滑りが見事に融合した、素晴らしく美しい、大好きなプログラムです。
 このプログラムのテーマについては、絶望からの希望、暗闇からの光、といったことが言われていましたが、コスチュームもシックな黒をベースに、胸のあたりと袖口が淡いパープルでキラキラしていて、プログラムの世界観を忠実に表現しています。特に、黒の向こうに輝くパープルが覗く胸のあたりのデザインは、暗闇の向こうの光、絶望の中の希望をイメージさせて、印象に残りました。シンプルながらも、細かいところまで考えられた素敵な衣装ですね。


 第4位はドイツのペーター・リーバース選手の「クロックス」。

c0309082_20122062.jpg

 「クロックス」はイギリスのロックバンド、コールドプレイの楽曲を、チェロデュオである2CELLOSがピアニストのラン・ランとともにカバーしたもの。“クロックス”=時計のタイトルに合わせ、リーバース選手の衣装もシーズン当初は上半身に大きく時計の歯車がデザインされたものでしたが、シーズン途中から水色の衣装に変わりました。
 最初の衣装はいかにも“クロックス”らしくておもしろかったのですが、変更後の衣装の方が美しい音楽に合っていて好きです。水色のシャツが半透明のベールのようになっていて、下に着ている黒が透けて見えます。この透け具合がきれいで、意外にこういった衣装というのは少ないので印象的でしたね。また、スピンなどをするとシャツが風になびくのですが、この“布感”とでも言うのでしょうか、柔らかそうなしなやかそうな生地の感じが素敵でした。


 第5位は日本の織田信成選手の「コットン・クラブ」。

c0309082_274325.jpg

 「コットン・クラブ」は1984年に公開されたアメリカ映画のサウンドトラック。映画はニューヨークに実在した高級クラブ、“コットン・クラブ”を舞台にしているそうです。その時代設定は1920年代とのことですが、織田選手の衣装も白いシャツに青いタイという、時代・舞台を意識したおしゃれなデザインとなっています。
 同じような衣装を着た選手が他にもいたのですが、織田選手の衣装はシャツ全体にキラキラが施されていたり、タイもスパンコール(?)できらめくようになっていたりするので、見た目のシンプルさ以上に華やかさも感じさせます。一方で、タイが解かれた状態であったり、シャツが長袖ではなく七分袖であったりという部分でマジメになり過ぎるのを外しています。これもプログラムのコミカルさを表すグッドデザインですね。


 第6位はロシアのエフゲニー・プルシェンコ選手の「ロクサーヌのタンゴ」。

c0309082_14434459.jpg

 「ロクサーヌのタンゴ」は映画『ムーラン・ルージュ』からの楽曲ですが、フィギュアスケート界ではしばしば使用される、定番となりつつあるタンゴですね。
 上述したコフトゥン選手もそうでしたが、このプルシェンコ選手のコスチュームもタンゴということで、タンゴらしく黒と赤が基調となっています。その上で、黒がほとんどで赤は胸元・腰にチラホラあるのみというデザインによって、重厚かつ大人びた雰囲気漂う「ロクサーヌのタンゴ」の世界観を表現しています。また、大きく胸が開き肌が覗くデザインも大人の男性の色気を醸し出しています。その一方で胸元・袖口には白があしらわれているため、スーツっぽくなっていて紳士的な感じもあり、黒の中の純白という対比がスタンダードな色づかいの衣装に新鮮味を与えていますね。


 第7位はアメリカのリチャード・ドーンブッシュ選手の「サンズ・オブ・イタリー」。

c0309082_15372272.jpg

 陽気で明るい雰囲気が印象的なプログラム「サンズ・オブ・イタリー」ですが、衣装は風格のある貴族的なデザインとなっています。音楽自体はポップでコミカルさもあって、もっとカジュアルな感じの衣装でも似合うかなと思うのですが、気品を感じさせる紫のベルベットに金色のボタン、クリームがかった白のフリル付きシャツという、あえてかっちりした衣装にすることによって、陽気になり過ぎずバランスを整えているような気がしますね。また、明るさの中にもクラシカルな情緒のある音楽を、衣装によって表現しているようにも感じます。


 第8位はアメリカのジェイソン・ブラウン選手の「クエスチョン・オブ・ユー」。

c0309082_16141936.jpg

 「クエスチョン・オブ・ユー」はアメリカのミュージシャン、プリンスの楽曲。ロックでありながらも、クールさも感じさせるカッコいいプログラムですが、その独特な感じを衣装でも見事に表しています。
 遠目から見るとさほど派手な感じは受けない衣装ですが、じっくり見ると凝ったデザインがなされていることが分かります。茶色のシャツの上に青紫のベストを重ねたようなデザイン、お花のようなボタン、ベストの右肩はラインストーンで彩られ、腰から脚にかけても飾りがいくつも付いています。これだけいろんな要素が詰め込まれているとごちゃごちゃしかねないと思うのですが、全体的に落ち着いた色づかいでまとめられている分、デザインほどには奇抜さを感じさせません。ですが、ところどころにラインストーンといった飾りをあしらったり、背中に模様を入れたりすることでアクセントを作っていて、斬新で個性的なコスチュームに仕上がっていますね。まさに「クエスチョン・オブ・ユー」特有の音楽世界を表現した衣装だなと思います。


 第9位はロシアのアルトゥール・ガチンスキー選手の「フラメンコ」。

c0309082_1741685.jpg

 コフトゥン選手、プルシェンコ選手と同じロシアのガチンスキー選手ですが、プログラムもまたコフトゥン選手同様のフラメンコ、プルシェンコ選手も含めるとラテン系の楽曲ということで、衣装もやはり黒と赤になっています。全体は黒でクールな印象の中、鮮やかな赤がベルトのように腰にあることで引き締まった印象を与えています。それだけだと地味ですが、首から胸元にかけてさまざまな色のキラキラしたラインストーンかスパンコールのようなものが施されているので、華やかさもプラスされています。また、これはプルシェンコ選手の衣装とも共通しますが、胸を大きく開けて肌を見せることで色気を漂わせるデザインとなっていますね。


 第10位はスウェーデンのアレクサンデル・マヨロフ選手の「コロブチカ」。

c0309082_17455947.jpg

 ロシア民謡である「コロブチカ」ということで、マヨロフ選手の衣装もロシアらしいというか異国情緒漂う模様が印象的なデザインとなっていますね。何柄と言ったらいいのか分かりませんが、円やお花のような模様を細かく用いてロシア民謡の伝統的な雰囲気を醸し出しています。また、柄そのものは華やかですが、衣装全体を左右対称のデザインとすることで端正なイメージを作り出しているとともに、色彩をブラウン系統で統一することによって、派手過ぎず地味過ぎずの素敵なコスチュームになっていると思います。



 ベストコスチューム13/14・男子ショートプログラム部門のベスト10は以上です。こんな感じで男子フリー、そのほかの3種目も続けていきたいと思います。


:記事冒頭のアイスリンクの写真、コフトゥン選手の写真、マヨロフ選手の写真は、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、閻選手の写真は世界選手権2014の公式ウェブサイトから、高橋選手の写真は毎日新聞のニュースサイトが2013年12月21日配信した記事「フィギュア:高橋、五輪3大会連続出場に黄信号」から、リーバース選手の写真、ドーンブッシュ選手の写真、ブラウン選手の写真は、エンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、織田選手の写真はスポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、プルシェンコ選手の写真はAFPBB Newsが2014年2月7日の08:41に配信した記事「フィギュア団体戦・男子SPで2位のプルシェンコ、ソチ五輪」から、ガチンスキー選手の写真はアイスダンス情報ウェブサイト「Ice-dance.com」から引用させていただきました。


【ブログ内関連記事】
ベストコスチューム13/14・男子フリー部門 2014年4月13日
ベストコスチューム13/14・ペアショートプログラム部門 2014年4月19日
ベストコスチューム13/14・ペアフリー部門 2014年4月22日
ベストコスチューム13/14・女子ショートプログラム部門 2014年4月28日
ベストコスチューム13/14・女子フリー部門 2014年5月2日
ベストコスチューム13/14・アイスダンスショートダンス部門 2014年5月12日
ベストコスチューム13/14・アイスダンスフリーダンス部門 2014年5月21日
[PR]
by hitsujigusa | 2014-04-09 18:31 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_23372719.jpg


 さいたまで行われておりました世界選手権2014。熱狂のうちに幕を閉じました。この記事では女子フリーとアイスダンスについて書いていきます。
 女子シングルの優勝者は浅田真央選手。トータルで自己ベストを更新しての素晴らしい優勝でした。2位にはソチ五輪5位のユリア・リプニツカヤ選手、3位にはソチ五輪銅メダリストのカロリーナ・コストナー選手が入りました。
 一方、アイスダンスではイタリアのアンナ・カッペリーニ、ルカ・ラノッテ組が初優勝を果たしました。

ISU World Championships 2014 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 金メダルを獲得したのは、浅田真央選手です!

c0309082_012575.jpg

 まずは大技トリプルアクセル。完璧に着氷したかに見えましたが、わずかに回転不足の判定。続く3フリップ+3ループの難しい連続ジャンプも3フリップが回転不足判定となりますが、しっかりとまとめます。後半最初の2アクセル+3トゥループは、2アクセルがいつもより高く跳び過ぎて着氷が乱れ、単独ジャンプに。しかしその後は崩れることなくほぼクリーンなジャンプを次々と成功。クライマックスのステップシークエンスではソチ五輪同様、力強く情熱的にリンクを駆け抜けました。演技を終えた浅田選手は多少悔しそうな色をうかがわせつつも、納得の笑みを浮かべました。フリーの得点は138.03点、総合得点では216.69点で自己ベストをマークし、金メダルを手にしました。
 完璧な演技とはなりませんでしたが、気迫あふれる圧倒的な滑りを見せてくれましたね。3アクセルは浅田選手本人もおっしゃっていましたが、ショートプログラムのものほどパーフェクトではなかったかもしれません。それでもソチ五輪のフリーのものと変わらないくらいの美しいトリプルアクセルでした。また、後半の2アクセルでの珍しいミスも、いつも以上にスピードが出ていて勢いが良すぎたために微妙に狂ったという、調子が良いからこそのミスの仕方でしたね。
 競技後、浅田選手はインタビューで今後の進退について聞かれ、“ハーフハーフ”と、オリンピック時と同じ返答をしました。個人的には、オリンピック前は、浅田選手が充分にやり切った、満足したと感じたら引退してもいいんじゃないかと思っていましたが、今はまだ続けてほしいなという気持ちが強いです。
 浅田選手はバンクーバー五輪後、新たに佐藤信夫コーチと師弟関係を結び、一から技術を見直してきました。最初の2シーズンはそれがなかなか形にならず、12/13シーズンにようやく形が定まってきて、そして今季ようやく完成形になりました。佐藤コーチも「これからという時に終わりになった」と話しましたが、今やっと佐藤コーチと積み上げてきたものが完成して、この完成されたものをさらに磨いていったらどうなるんだろう、どう進化していくんだろうという興味があります。また、せっかく完成したものをここで終幕にしてしまったらもったいないという思いもあります。もちろん最終的に決めるのは浅田選手自身なので、他人がとやかくということではありませんが、“完成形”から再スタートしたら、また新たな“浅田真央”が見られるのではないかという気がします。
 どんな決断をするにせよ、まずはゆっくり休んでほしいですね。明確に答えを出さないまま1シーズン、2シーズン休養するという手だってありますし、それくらい長いスパンでじっくり考えてほしいなと思います。
 3度目の世界選手権優勝、おめでとうございました! そして、長いシーズン、お疲れさまでした。


 銀メダルを獲得したのは、ロシアのユリア・リプニツカヤ選手。

c0309082_0582727.jpg

 冒頭の3ルッツ+3トゥループはいつもながらの安定感。ただ、3ルッツがロングエッジ(踏み切り違反)と判定され、若干のマイナス。次の2アクセル+3トゥループ+2トゥループのコンビネーションジャンプも3トゥループがダブルに。しかし後半の2アクセルに急遽3トゥループを付ける機転を利かせ、冷静にリカバリー。ですが、直後の3サルコウが大幅な回転不足で転倒となってしまいました。それでも終盤のスピンでは観客を沸かせ、リプニツカヤ選手らしさを発揮しました。得点は132.96点でフリー2位、総合2位に順位を上げました。
 後半に大きなミスが出てしまい悔しそうでしたが、ミスをしてもそこで気持ちを切らさない、演技をまとめる落ち着きぶりは15歳らしからぬ強さですね。3サルコウはソチ五輪でも転倒してしまったジャンプですが、跳び方がループっぽくなってるので元々苦手なのかもしれません。
 それにしてもシーズンが進むごとに進化を見せ、それどころかどっしりとした風格させ漂わせ始めるリプニツカヤ選手には常に楽しませてもらいました。今季は結局、オリンピックの個人戦以外、全ての大会で1位もしくは2位になるという大躍進。今後は成長に伴って身体つきも変わってくるでしょうから、それにうまく対応していけるかどうかが鍵になると思うのですが、女子フィギュア界の主役の一人として、来季も活躍してくれるといいなと思います。銀メダル獲得、おめでとうございました。


 3位はソチ五輪銅メダリスト、かつ、昨年の世界選手権銅メダリストのカロリーナ・コストナー選手です。

c0309082_127069.jpg

 冒頭はまず3ルッツから始まり、これをクリーンに決めます。次の2アクセル+3トゥループはセカンドジャンプがダブルに。続くジャンプはソチ五輪では組み込まなかった3フリップ+3トゥループ。果敢に挑戦しましたが、惜しくも転倒となります。後半に入っても3ループ、3フリップがそれぞれ1回転になるなどミスが相次ぎましたが、ステップシークエンスではさすがの滑りを披露。「ボレロ」の単調な音ひとつひとつをうまくとらえ、複雑なステップを刻んでいきました。得点は126.59点。フリー6位、総合3位で大会を終えました。
 ここ数年は安定感のある演技を見せてきたコストナー選手にしては珍しく、大乱調でしたね。1つタイミングが狂ったことによって、それが連鎖反応を起こしてしまったのでしょう。ですが、どれだけミスを連発しても集中し直して、最後まで音楽を表現することに徹する姿勢が、このフリーのコストナー選手からは見られました。特にステップは圧巻でしたね。
 来季以降の進退に関しては、はっきりとした意思を現時点では示していないコストナー選手。どんな道を選ぶかはまだ分かりませんが、バンクーバー五輪以後、ずっと女子フィギュア界を引っ張ってきてくれたことに、まずはありがとうと言いたいですね。
 銅メダル獲得、おめでとうございました。


 表彰台まであと一歩、4位となったのはロシアのアンナ・ポゴリラヤ選手。

c0309082_215518.jpg

 最初の3ルッツ+3トゥループは完璧な回転とランディングで成功。続く3ループ+1ループ+3サルコウの難しい3連続ジャンプもしっかりこなします。その後も相次いでジャンプを決めていき、後半の3フリップがロングエッジ(踏み切り違反)で減点となった以外は、全エレメンツに加点が付く会心の演技。フィニッシュしたポゴリラヤ選手はガッツポーズで喜びを表しました。得点は131.24点、ショート同様にパーソナルベストを更新、総合4位となりました。
 フリーはパーフェクトといってよい出来で、最後まで勢いもパワーも衰えなかったですね。経験が少ないからこその無心さ、怖いもの知らずさが良い方に転んだのだと思います。ショートの演技と合わせて、この大舞台でショートとフリー両方を揃えられたというのは、これからの彼女にとって大きな財産になるでしょうし、ぜひ生かしていってほしいですね。
 今季以上にロシア女子勢の飛躍が見込まれる来シーズン。その中で国内の争いを勝ち抜いていくのは大変でしょうが、ポゴリラヤ選手の活躍を楽しみにしています。


 5位はアメリカチャンピオン、グレイシー・ゴールド選手。

c0309082_1664992.jpg

 冒頭の3ルッツ+3トゥループは高く幅のある跳躍を見せ、1.4点の高い加点が付く完璧なジャンプ。上々の滑り出しかと思いきや、続く2アクセルは珍しくシングルにすっぽ抜けるミス。直後の3ループでもミスを犯してしまいます。後半は何とか立て直して予定どおりのジャンプ要素を続けましたが、最後の2アクセルもダウングレード(1/2以上の回転不足)で転倒。ミスの目立ったフリーとなりました。得点は124.27点でフリー7位、総合5位でフィニッシュしました。
 今大会を締めくくる大トリとして登場したゴールド選手。その緊張もあったのではないかと想像しますし、練習から2アクセルに苦労していたということで、そのへんがいつもより慎重でしたね。演技全体にもちょっぴり余裕の無さが見られました。
 ですが、今季は全米選手権で優勝し、オリンピックでも4位入賞するなど大躍進のシーズンでした。来季も女子フィギュア界の中心で活躍してくれるのではないかなと思います。またゴールド選手らしい演技、笑顔が見られることを期待しています。


 6位となったのは、今大会限りで現役引退となる鈴木明子選手。

c0309082_16222542.jpg

 冒頭は3ルッツからの3連続ジャンプでしたが、3ルッツがダブルになるミス。しかしあとのジャンプをしっかりつけてコンビネーションとします。次の2アクセル+3トゥループも3トゥループがダウングレード判定とはなったものの、こらえてまとめました。優雅な旋律にのったステップシークエンスは、ゆったりとした動きの中にも複雑なエッジワーク、ステップワークが入り、音の緩急を滑りで見事に表現。後半は3フリップでのミスがありましたが、そのほかは流れのあるクリーンなジャンプを降り、大観衆のスタンディングオベーションの中、穏やかな笑みで演技を終えました。得点は122.70点でフリー8位、トータル6位入賞となりました。
 最後にベストの演技とならなかった鈴木選手は、「最高で終わるのは難しい」と悔しさものぞかせましたが、ところどころでこらえつつ、それでも終始流れの途切れないスケーティングで音楽表現に徹した演技は、まさに鈴木選手らしいものだったなと感じます。この唯一無二のスケートが競技会ではもう二度と見られないのかと思うと、とても寂しいですが、これからもプロスケーターとして鈴木選手らしいスケートで、フィギュアスケートの素晴らしさを伝え続けていってくれるでしょうね。
 本当に本当に長い間、お疲れさまでした。そして、素敵な演技の数々をありがとうございました。


 7位はアメリカの実力者、アシュリー・ワグナー選手です。

c0309082_16585526.jpg

 まずは3フリップから入り、これをクリーンに着氷して勢いをつけます。続く2アクセル+3トゥループは2つ目のジャンプがアンダーローテーション(1/2以内の回転不足)となりますが確実にまとめ、流れを保ったまま3サルコウも成功させました。後半も細かなミスはあったものの、軽やかかつ躍動感のあるジャンプを流れの中で次々と跳び、曲調が力強く激しくなるにつれ、動きもどんどん切れ味を増していきました。演技を終えたワグナー選手は歓喜を爆発させ破顔しました。得点は129.52点でパーソナルベストを更新。フリー4位で、総合7位に順位を上げました。
 フリーの「サムソンとデリラ」は昨シーズンと同じプログラムですが、内容は変化していてスローパートが新たに追加されたりしています。そんな代表作ともいえるプログラムだけあって、ハマった時の気迫、迫力は鬼気迫るものがありましたね。さすが“強い女”を演じさせたらピカイチだなと思いました。
 10代の力ある選手がアメリカからもロシアからもどんどん出てきて、ワグナー選手にとっては来季も苦しい戦いが続くのではないかと思います。ただ、この凄まじいまでに圧倒するような力強さというのは、ベテラン選手にしか出せない味ですから、来シーズンもワグナー選手らしく頑張ってほしいですね。


 8位に入ったのはアメリカの新星、ポリーナ・エドマンズ選手。

c0309082_17325684.jpg

 まずは大技3ルッツ+3トゥループ、これを軽快に成功。次の3フリップ+1ループ+3サルコウは1ループがアンダーローテーションを取られますが、きっちり着氷。その後もポンポンとジャンプを決め、さわやかでエレガンスな演技を披露してくれました。得点は126.91点でパーソナルベストをマークし、ショート12位から大幅に順位を上げました。
 こちらもポゴリラヤ選手同様、怖いもの知らずで思い切りの良さが印象に残りましたね。また、ルッツとフリップの跳び分けが正確にできるようなので、そちらも大きな武器かなと思います。
 今シーズン、初めての全米選手権出場でいきなり2位。オリンピック、世界選手権でも一桁台の順位と大健闘を見せたシンデレラガール、エドマンズ選手。まだ15歳なので来季どうなるかは分かりませんが、ぜひ再びこの舞台に戻って来られるように頑張ってほしいですね。


 村上佳菜子選手は、ショートから変わらず10位となりました。

c0309082_17524514.jpg

 冒頭は得点源となる3トゥループ+3トゥループのコンビネーションジャンプ。勢いよく跳び上がったかに見えましたが、セカンドジャンプが回転不足の判定。続く3ルッツは慎重な入りでしたがステップアウト。その後のジャンプも一見クリーンに着氷していきましたが、ほとんどがアンダーローテーション判定に。表現面ではしっとりとした音楽を丁寧に表現し、最後は笑顔でフィニッシュしました。しかし、得点は細かなミスの積み重ねが影響して伸びず、111.58点。ショート、フリーともに10位、総合10位となりました。
 決して動き自体が悪いわけではないので、内容と結果が伴わず残念でしたね。練習での状態は良かったそうですが、本番となると考え込んでしまうのだとか。全日本選手権、四大陸選手権ではそういう不安を振り切って演技できていたと思うので、オリンピックをきっかけに再び怖さが蘇ってきたのかもしれません。
 競技後、村上選手は「この試合も良かったら終わろうと思っていた」と、今季限りでの引退も考えていたことを明かしました。その上で今後に関しては、「今の時点はとりあえず1年、来シーズンだけという気持ちでやろうと思っています」と語りました。
 村上選手は以前から、山田満知子コーチのようなコーチになることが夢と話していて、競技に対する執着心があまり無い選手なんですね。彼女の口から世界選手権でメダルを取りたい、オリンピックでメダルを取りたいといった言葉を聞いたことはないですし、オリンピックに出場したいと思ったのも、バンクーバー五輪での浅田真央選手の演技を見て感動してからと、五輪への思い入れもそんなに無いように見えます。五輪に出場するという目標を達成した今、彼女の中で現役を続ける意味はさほど無く、自分が満足するかしないかという点にのみ集約されているのでしょう。
 私個人としては、村上選手のポテンシャルの高さ、類い稀な表現力を見てきているだけに、もったいないなと思わずにはいられません。もっと高みを目指せる実力、もっと伸びる可能性を秘めているのに、村上選手本人が自分の持っているものに気付いていないんじゃないかという気がします。山田コーチも村上選手について「欲がない」と評していましたが、その“欲のなさ”ゆえに自分で自分の可能性を狭め、限界を決めてしまっているように感じます。
 また、同郷の先輩である浅田真央選手、ともに世界ジュニアでダブル優勝した同い年の羽生結弦選手を始め、多くの選手が皆それぞれに理想のスケートを追い求め、野心・向上心を持って戦っていると思うのですが、村上選手はそれよりも、その瞬間その瞬間の満足・喜びに重きを置いて競技していて、ガツガツしたものが足りないのかなという印象も受けました。それは、コーチになることを大前提としていることが原因のような感じもします。
 もちろんコーチを目指すことは素晴らしい夢だと思いますが、コーチは20代半ばになってからでも、30歳を過ぎてからでもできます。でも、選手は若いうちにしかできません。そして、あれだけ人々を魅了できる才能、世界の第一線で活躍できる技術を持っているのに、彼女自身がその価値に気付いていないというのが、一ファンとしてもどかしいですし残念だなと思いますね。
 何にせよ、とりあえずは来シーズン1年、現役を続けてくれるという村上選手。彼女の人生は彼女のものなので勝手な事は言えませんが、できればもっと競技に対して野心を抱いてくれたらなとも期待してしまいます。とにもかくにも、長いシーズンお疲れさまでした。



 続いて、アイスダンスの結果についてです。
 優勝はイタリアのアンナ・カッペリーニ、ルカ・ラノッテ組。ショートダンスはフィンステップの第2セクションとステップ以外でレベル4を揃える好演技。得点も自己ベストに迫るハイスコアで首位発進となります。フリーダンスもほぼノーミスの完璧な出来で、これまでの自己ベストを3点以上更新。フリー順位は4位でしたが、ショートとの合計で初の栄冠を手にしました。
 今まで7度世界選手権に出場し、着実に順位を上げてきたものの表彰台には届かなかったカッペリーニ&ラノッテ組。8度目の出場にして、ようやくのメダル。しかもいちばん輝く金メダルでした。今大会のアイスダンスは、1位から4位までが1.05点差という近年まれに見る大接戦。2位との差はなんと0.02点でした。フリーは4位で危なかったのですが、何とかショートのアドバンテージを守って頂点に立ちました。金メダル獲得、本当におめでとうございます。
 2位はカナダのケイトリン・ウィーバー、アンドリュー・ポジェ組。ショートはこちらもパーソナルベストまでわずかの演技で2位。フリーでは自己ベストをマークしてフリー3位。惜しくも1位には届きませんでしたが、6度目の出場で初めてメダルを獲得しました。まだまだ若いカップルですので、来季の活躍も楽しみですね。
 3位となったのはフランスのナタリー・ペシャラ、ファビアン・ブルザ組。ショートはフィンステップの1つがレベル2と判定された以外は安定してエレメンツをこなし、3位スタート。フリーもパーフェクトな演技でパーソナルベストを叩き出しましたが、総合得点でわずかに及ばず、3位となりました。
 競技後、ペシャラ&ブルザ組の今後について改めてコメントがなされ、男性のブルザ選手は来季も現役を続けたいとの意向を示しました。一方、女性のペシャラ選手は現役引退の意思を表明。今大会のアイスダンスの表彰式の写真を見るとペシャラ選手の表情は曇っていて、悔しさが手に取るように伝わってきます。今シーズン、何よりも欲しいのはオリンピックのメダルだったでしょう。ですが、ソチ五輪の金メダリスト、銀メダリストが欠場した今大会は、優勝を狙える千載一遇のチャンス。しかし結果は2年前と同じ銅メダルでした。ラストシーズンと覚悟して臨んだシーズンだったからこそ、どうしてもまだ見ぬ頂に立ちたかったのではないかと想像します。最後だからこそ、叶わなかった悔しさはひとしおでしょう。世界チャンピオンになることはできませんでしたが、上位3組の点差は無いに等しく、ペシャラ選手、ブルザ選手にも金メダルをあげてほしいなと思わずにはいられません。ペシャラ選手、長い間お疲れさまでした。
 日本のキャシー・リード、クリス・リード組は18位で大会を終えました。

c0309082_1321388.jpg

c0309082_1375878.jpg

 ショートはフィンステップが2つともレベル2と判定されたものの、ミスらしいミスはなくスピード感溢れる滑りを披露。得点は55.18点でシーズンベストをマークし、ショート14位でフリーに進出しました。フリーもツイズルでわずかなミスはあったものの、和の世界を表現したプログラムを感情豊かに演じ切りました。得点は80.95点でフリー18位、総合18位となりました。
 フリーで少しミスは出てしまいましたが、ソチ五輪では叶わなかったフリー進出を日本開催の世界選手権で達成。オリンピックの悔しさを多少は挽回できたのではないかなと思います。
 2度目のオリンピックシーズンを終えたキャシー選手とクリス選手。来季については、クリス選手の膝の状態を見て、医師の先生に相談してから考えることになるそうです。ただ、キャシー選手はまだまだ現役生活に対する意欲満々で、「白タオルを投げるつもりはない」とのこと。もっと2人のダンスを見たいですから、戻ってきてくれることを願っています。まずは、ゆっくり身体を休めてほしいと思います。大変なシーズン、お疲れさまでした。



 女子シングル、アイスダンスに関する記事は以上ですが、来年の世界選手権の各国の出場枠をここでまとめます。

《女子》
3枠:日本、ロシア、アメリカ
2枠:イタリア、韓国、カナダ

《アイスダンス》
3枠:カナダ、ロシア、アメリカ
2枠:イタリア、フランス、イギリス



 女子では日本、アメリカが変わらず3枠を確保し、ロシアは2013年大会以来の3枠奪取となりました。韓国は元々3枠獲得していましたが、ソチ五輪銀メダリストの金妍兒(キム・ヨナ)選手が欠場し、2選手のみの出場。枠を減らすこととなりました。イタリア、カナダの2枠は変わりません。
 アイスダンスでは3枠のカナダ、ロシア、アメリカ、2枠のイタリア、フランスが今年と同じですが、イギリスは唯一の出場であったペニー・クームズ、ニコラス・バックランド組が9位となったため、2011年大会以来の2枠を獲得しました。



 大差をつけての優勝で、女子では歴代4位タイとなる3度目の女王に輝いた浅田真央選手。一方で、ロシア、アメリカもそれぞれ出場した全選手が入賞を果たし、層の厚さを改めて顕示しました。来シーズンもロシア、アメリカの選手が女子フィギュア界をリードしていくことは間違いないでしょう。
 他方、アイスダンスは甲乙つけがたい僅差の戦いとなりました。圧倒的な力を誇り、タイトルを独占してきたソチ五輪金メダリストのメリル・デイビス、チャーリー・ホワイト組、銀メダリストのテッサ・ヴァーチュー、スコット・モイヤー組が不在の中の拮抗したメダル争いでしたが、来季もこの不在が続くのであれば、やはり互角の戦いが続いていくのだろうと思います。
 世界選手権に出場した選手も、出場できなかった選手も、皆さんお疲れさまでした。素晴らしい演技と至高の時間をありがとうございました。
 来年、世界選手権2015は中国、上海での開催です!



:女子シングルメダリスト3選手のスリーショット写真、村上選手の写真は、毎日新聞のニュースサイト内の写真特集「世界フィギュア2014」から、浅田選手の写真、コストナー選手の写真、リード&リード組のショートダンスの写真は、エンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、リプニツカヤ選手の写真、ワグナー選手の写真、エドマンズ選手の写真、リード&リード組のフリーダンスの写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、ポゴリラヤ選手の写真、ゴールド選手の写真、鈴木選手の写真は、世界選手権2014の公式ウェブサイトから引用させていただきました。


【ブログ内関連記事】
世界選手権2014、出場選手&欠場選手について 2014年3月9日
世界選手権2014・男子ショート―町田樹選手、パーソナルベストで首位 2014年3月27日
世界選手権2014・女子ショート―浅田真央選手、世界歴代最高得点で首位 2014年3月28日
世界選手権2014・男子フリー&ペア―羽生結弦選手、日本男子2人目の金メダル獲得 2014年3月30日
[PR]
by hitsujigusa | 2014-04-02 00:10 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)