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 フィギュアスケーター衣装コレクション第7弾です。今回取り上げるのはアメリカの元フィギュアスケート選手、アリッサ・シズニーさんです。
 シズニーさんは05/06シーズンに初めてグランプリシリーズの表彰台に立ち、GPファイナルにも初出場。2010年には初めてのファイナル優勝を果たしました。2009年、2011年と二度の全米女王に輝き、四度出場した世界選手権では最高5位という素晴らしい結果を残しました。12/13シーズン以降は怪我に悩まされ、2014年に現役引退を表明しました。
 決して順風満帆な競技人生ではなく、どちらかというと波のある選手でしたが、彼女の美しいスケーティングとエレガントな演技は唯一無二のものだったと思いますし、万人に愛されるタイプの選手だったのではないでしょうか。
 そんなシズニーさんの現役時代の衣装の数々を早速見ていきましょう。

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by hitsujigusa | 2014-08-30 16:11 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

真夏の航海


【あらすじ】
 グレイディ・マクニール、17歳。彼女の両親は夏休みのバカンスとしてフランスに旅立った。一人、夏のニューヨークに残されたグレイディは、両親には内緒にしている恋人クライドとの休日を楽しむのだった。そしてふたりの恋は日に日に深まり、とうとう自分たちだけで結婚することを決めて――。


 アメリカの小説家トルーマン・カポーティ。『ティファニーで朝食を』『冷血』といった名作を著し、さまざまなスキャンダルを巻き起こした末に、1984年の8月25日に59歳で死去しました。そんなカポーティの命日に合わせて、今回は彼の処女作ともいえる長編小説『真夏の航海』をピックアップ。

 『真夏の航海』は少し変わった形で世に出た小説だ。2004年、ニューヨークであるノートが発見される。その中には若きカポーティが書いたと思われる小説の草稿が記されていた。『冷血』の成功によってブルックリンのアパートを引き払ったカポーティがゴミとして捨てていったものが残されていたのだ。ノートはオークションにかけられ、その後カポーティの弁護士とも相談された上で、2005年にアメリカで出版。それが『真夏の航海』という小説の辿ってきた経緯である。
 物語の舞台はカポーティが暮らしたのと同じニューヨーク、時は1945年。話のメインとなるのはグレイディとクライドの恋模様だ。夏の初め、まだ子どもの恋愛ごっこのような甘さを感じさせる二人の恋は、夏の深まりとともに徐々に真剣味を帯びていく。ただしそれはどこか退廃的で滅びの気配を漂わせる、底なし沼にハマってしまったかのような恋だ。二人が勢いで結婚するとその予感は決定的なものとなる。行き着く先のない恋に強引に結婚という形で終着点を与えたことで、二人の関係に綻びが生じる……。話の内容自体には重々しさもあるが、クールな文体と軽快なストーリー運びによって疾走感に満ちた物語となっている。
 タイトルには“真夏”とあるが、物語はそこまで夏らしさに満ち満ちているという感じではなく、特に夏の風物詩が描かれるわけでもない。しかし、その“夏らしさのない夏”というのが不穏な雰囲気を醸し出し、二人の行方を暗示しているようにも思える。当然のごとく空に在って燦々と輝いているべき太陽の存在感の無さが、物語全体に夏らしからぬ冷やかさ・暗さを付与しているのだ。

 もう一つ、印象的なのはアメリカの階級社会の一端が描かれていることである。主人公のグレイディは典型的なマンハッタンのアッパークラスの家庭育ち。一方、恋人のクライドはブルックリンに住むユダヤ人の中流家庭。マンハッタンの華やかな生活に慣れ親しんでいるグレイディとパーキングの警備を仕事にしているクライドとのギャップは、特にマンハッタンとブルックリンという設定に見て取れる。クライドとの結婚を決めたグレイディは初めて訪れたブルックリンの彼の実家で、自分の家庭と彼の家庭とのあいだの文化的格差を目の当たりにする。それはプロテスタントであるマクニール家とユダヤ人であるクライドの家との宗教の違いもあるし、社会的地位や生活レベルの違いもある。恋の甘さに浸っていたグレイディはここでようやくシビアな現実に直面するのだ。
 マンハッタンとブルックリンという舞台設定は単に同じニューヨークでもこれだけの差異があるということを示す意味だけでなく、グレイディとクライドのあいだの心理的な距離・遠さ、乗り越えられない溝をも象徴しているように思える。

 ここで全く話は変わるが、この小説を読んでふと思ったのはこれが1945年の夏の物語だということだ。1945年の夏といえば日本ではもちろん戦争末期、そして終戦の夏。しかし、この物語には戦争の影は欠片も感じられないし、戦争の“せ”の字もない。同じ時代、同じ夏、戦争をしていたという事実は一緒でも、こんなに違うのだなとふと感じた。

 『真夏の航海』の原題は「Summer Crossing」。“Crossing”にはいろんな意味がある。横断、交差点、踏み切り、過渡。17歳の少女の人生の“交差点”、少女と少年の運命が“交差”する一瞬を描いた『真夏の航海』。カポーティ作品に親しんではいるがこの作品は未だ読んだことがないという人も、カポーティを読んだことがないという人も、一度手に取ってみてほしい作品です。


【ブログ内関連記事】
山川方夫『夏の葬列』―非日本的な夏の風景 2013年8月14日
夏に読みたい小説・私的10撰 2014年7月8日


真夏の航海
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by hitsujigusa | 2014-08-24 01:20 | 小説 | Trackback | Comments(0)

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※2014年9月6日、新たな出場選手について追記しました。
※2014年9月30日、欠場選手と新たな出場選手について追記しました。


 10月4日にさいたまスーパーアリーナで開催されるジャパンオープン2014の出場選手が8月16日に発表されました。ジャパンオープンは日本、北米、欧州の3地域対抗で行われる団体戦で、1チーム男女2名ずつで構成されます。また、ショートプログラムは実施されずフリーのみで競い、その合計得点で順位を決めます。
 今のところ発表されている各チームの出場選手は以下のとおりです。(敬称略)


≪日本≫村上佳菜子、宮原知子、小塚崇彦、無良崇人
≪北米≫アシュリー・ワグナー、パトリック・チャン、ジェフリー・バトル
≪欧州≫ユリア・リプニツカヤ、エレーナ・ラディオノワ、ハビエル・フェルナンデス



 このうち村上選手、小塚選手、ワグナー選手、バトルさん、フェルナンデス選手は昨年に引き続きの出場、中でも小塚選手、バトルさんは2009年から6年連続での出場となります。チャン選手は2年ぶりの出場、宮原選手、無良選手、リプニツカヤ選手、ラディオノワ選手の4名は初めてのジャパンオープンですね。
 どのスケーターも楽しみですが、個人的にはリプニツカヤ選手とラディオノワ選手に注目です。これから女子フィギュアスケート界を引っ張っていく存在になるであろう2人が、オリンピック直後のシーズンにどんなスタートを切るのか、どんな演技を見せてくれるのか楽しみですし、早い時期に日本で新プログラムを披露してくれることも嬉しいですね。
 出場選手はこれで全てではなく北米は残り1名、欧州も残り1名、出場枠が空いています。新たな出場選手が発表され次第、この記事内に追記していきます。


※以下、2014年9月6日に追記した部分です。

 未定だった北米の残り1名、欧州の残り1名の出場選手が発表されましたので、追記したいと思います。
 新たな出場選手は、北米がアメリカの長洲未来選手、欧州がチェコのトマシュ・ベルネルさんです。長洲選手は2008年にジャパンオープン出場経験がありますが、それ以来なので実に6年ぶりということになります。ベルネルさんは初出場。13/14シーズンをもって現役引退されたのでプロスケーターとしての出場になるのでしょうが、さすがにまだまだ現役感ありまくりですね。
 ということで、ジャパンオープン2014の出場メンバーが揃いました。どんな演技合戦が繰り広げられるのか、今から楽しみです。


※以下、2014年9月30日に追記した部分です。

 いよいよ4日後に迫ってきたジャパンオープン2014。ですが、ここに来て少し残念なニュースが入ってきました。
 欧州チームの一員として出場を予定していたロシアのユリア・リプニツカヤ選手が、コンディション不良を理由に欠場することとなりました。コンディション不良というのが具体的にどういうことを意味するのか不明なのですが(怪我とか体調不良とか……)、今後に大きく影響することでなければと願います。
 そのリプニツカヤ選手の代役として、新たに同じくロシアのアンナ・ポゴリラヤ選手が出場する運びとなりました。急遽の出場ですが、うまくコンディションを整えてほしいなと思います。


:ジャパンオープン2014のロゴは、ジャパンオープン2014の公式ウェブサイトから引用させていただきました。
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by hitsujigusa | 2014-08-18 15:22 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 今回取り上げるのはイギリスの児童文学作家ダイアナ・ウィン・ジョーンズさん。魔法をテーマにしたファンタジー作品を数多く手がけ、ガーディアン賞、世界幻想文学大賞、フェニックス賞など国際的な文学賞をいくつも受賞し、2011年3月26日に76歳で亡くなりました。日本ではスタジオジブリの宮崎駿監督作品『ハウルの動く城』の原作を書かれた方として最も知られているのではないかと思います。
 そんなジョーンズさんの誕生日が8月16日。それを記念しまして、ジョーンズさんの代表作ともいえる『大魔法使いクレストマンシーシリーズ』の全7作を一気にご紹介します。


 『大魔法使いクレストマンシー』は異世界を舞台にしたファンタジーシリーズ。といっても登場する世界も、主人公も、各作品ごとに異なっている。
 シリーズの世界観はパラレルワールド。同時に複数の世界が存在し、それが12の系列に分けられ、各々の系列の中に9つの世界が含まれていて、同じ系列に属する世界同士は地理や地形がよく似ているという設定。そして、全ての世界のあらゆる魔法に関する事柄を監督するのが、“クレストマンシー”。クレストマンシーは個人名ではなく、その職に就いた者の称号なのである。そのクレストマンシーが普段暮らしているのは第12系列の世界Aで、私たちの世界(つまりこの現実世界)は第12系列の世界Bとされている。
 そんな世界観の下で繰り広げられるのが、魔法によって引き起こされる数々の事件・出来事。そういったトラブルを解決するために、キーパーソンとしてクレストマンシーが毎作登場するのである。
 では、シリーズ全7作を簡単に紹介していこう。


魔法使いはだれだ ― 大魔法使いクレストマンシー

魔法使いはだれだ ― 大魔法使いクレストマンシー

【あらすじ】
 魔法が固く禁じられた世界の寄宿学校のクラスで、ある日「このクラスに魔法使いがいる」というメモが発見される。誰が書いたのか分からない謎のメモに学校中が大混乱。しかも魔法の仕業としか思えない不思議な出来事が次々に起こる。魔法使いの血を引くことから犯人だと疑われた少女ナンは、仲間たちと一緒に古くから伝わる助けの呪文を叫ぶ。「クレストマンシー」! すると現われたのは――。

 魔法が禁止された世界での魔法事件を描いた作品。12の系列世界(日本語訳では“関連世界”とされている)の成り立ち、パラレルワールドの構成など、クレストマンシーシリーズの世界観全体についても分かるようになっている。
 寄宿学校、禁じられた魔法といった実にイギリスらしいモチーフで彩られていて、一見オーソドックスな魔法物語のように思えるのだが、登場する少年少女たちが一筋縄ではいかない個性の持ち主ばかりで、子どもたちの群像劇としても楽しめる。果たしてメモを書いたのは誰なのか……。この作品に限らないが、ミステリーとしての面もおもしろい物語だと思う。


クリストファーの魔法の旅―大魔法使いクレストマンシー

クリストファーの魔法の旅―大魔法使いクレストマンシー

【あらすじ】
 クリストファーは幼い頃から自分がいろんな谷を旅する不思議な夢を見ていた。クリストファーの能力に気づいた伯父の魔術師ラルフはその力を使って悪事を働こうとする。そんな時、クリストファーが9つの命を持つ強力な魔力の持ち主であることが判明し、クリストファーは次代のクレストマンシーとして魔法の城に引き取られる。しかし、孤独なままのクリストファーは別世界で出会った少女“女神”にのみ心を開き――。

 主人公はのちにクレストマンシーになる少年クリストファー・チャント。シリーズ中に登場する“クレストマンシー”の役職に就いている人物はふたり、通称“老クレストマンシー”のゲイブリエル・ド・ウィット、そして現クレストマンシーであるクリストファー。上述した『魔法使いはだれだ』に出てくるのは現クレストマンシーの方で、この『クリストファーの魔法の旅』はクリストファーがクレストマンシーになる前の少年時代を描いている。
 この作品の魅力は何といってもさまざまな世界が登場すること。特別な力を持つがゆえに時空を超えて“関連世界”を行き来できるクリストファーはいろんな世界を旅するわけだが、そうした異世界の数々の描写がとても楽しい。パラレルワールドという世界観の醍醐味を味わえる物語と言える。


魔女と暮らせば―大魔法使いクレストマンシー

魔女と暮らせば―大魔法使いクレストマンシー

【あらすじ】
 グウェンドリンとキャットの姉弟は両親を亡くし、近所の人々に助けてもらいながら暮らしていた。グウェンドリンは強い魔法の力を持っていて、気弱なキャットはそんなグウェンドリンの言いなりだった。ところがふたりは親戚であるクレストマンシーの城に引き取られることに。城では自由に魔法を使ってはならず、きちんとした生活を強いられるが、女王さま気質のグウェンドリンはそれに我慢がならずとうとう城を飛び出して――。

 今作に登場する“クレストマンシー”はクリストファー。そのクレストマンシーのところに親戚の子どもであるグウェンドリンとキャットの姉弟がやってきて、さまざまなトラブルが起こって……という話。物語で最も印象に残るのは姉グウェンドリンの強烈な存在感。これはダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品の定番とも言えることなのだが、とにかく強い女の子というのがよく登場する。性格的にきつめで、相手が男の子だろうが大人だろうが一歩も引かない少女。そういう女の子を書かせたら児童文学界でジョーンズさんの右に出る者はいないんじゃないかと思えるくらいユニークで魅力的。
 一方、男の子はそれと比例するように大人しめというパターンが多い。そういった少女と少年のコンビネーション、組み合わせがこの作品でも面白味のひとつとなっている。


トニーノの歌う魔法―大魔法使いクレストマンシー

トニーノの歌う魔法―大魔法使いクレストマンシー

【あらすじ】
 イタリアの小国カプローナでは魔法の呪文づくりの名家であるモンターナ家とペトロッキ家が長年反目し合っていた。ところが両家の魔法の力がなぜか弱まり、他国からの侵略という危機が訪れる。クレストマンシーが両家に忠告するも、互いに相手方を非難するばかりで進展はない。そんな中、モンターナ家の少年トニーノとペトロッキ家の少女アンジェリカが突然行方不明になって――。

 この作品の舞台はイタリア。そのため主にイギリスが舞台になっているほかのシリーズとは少し色合いが違い、とにかくイタリアらしい陽気さ、華やかさが印象に残る。また、イタリアでいがみ合うふたつの名家と言えば「ロミオとジュリエット」を思わせるが、そういったドラマティックさも魅力となっている。
 ちなみにこの作品のクレストマンシーはクリストファーである。


魔法がいっぱい―大魔法使いクレストマンシー外伝

魔法がいっぱい―大魔法使いクレストマンシー外伝

 この作品は長編ではなく、クレストマンシーに関係する人々の活躍を描いた短編集。「妖術使いの運命の車」「キャットとトニーノの魂泥棒」「キャロル・オニールの百番目の夢」「見えないドラゴンにきけ」の4編が収録されている。中でも「キャットとトニーノの魂泥棒」はタイトルで分かるとおり、『魔女と暮らせば』の主人公キャットと『トニーノの歌う魔法』の主人公トニーノのふたりが同時に登場する話で、違う作品の主人公同士が出会うとこんな感じになるのか……という見どころ・お得感たっぷりの作品となっている。


魔法の館にやとわれて―大魔法使いクレストマンシー

魔法の館にやとわれて―大魔法使いクレストマンシー

【あらすじ】
 12歳の少年コンラッドは魔術師である伯父から、「高地の貴族の館にいるある人物を倒さない限り、お前の命は長くない」と言われ、その人物を探すため館に奉公に行くことにする。そこで出会ったのは同じく従僕として雇われた年上の少年クリストファー。どうやらクリストファーも何かしらの目的を持って館に来ているらしい。そんな時、ふたりは館の屋根裏で異世界に続く扉を見つけ――。

 あらすじでお分かりかもしれないが、今作もクレストマンシーになる以前のクリストファーが登場する。このクリストファーは『クリストファーの魔法の旅』から数年経っていて、りりしい少年となった姿が見られる。
 とはいえ主人公はコンラッド。自分の運命を打開するために魔法の館に入り込んだコンラッドが、さまざまな不思議な出来事に遭遇し冒険するさまが実に楽しく、クリストファーとの友情や、また恋愛模様も描かれ、青春物語としても読める。


大魔法使いクレストマンシー キャットと魔法の卵

大魔法使いクレストマンシー キャットと魔法の卵

【あらすじ】
 クレストマンシーの城で暮らすキャットは、ある日近くの村でマリアンという少女と出会う。マリアンの一族は代々続く魔女の家系で、一族の頭であるマリアンの祖母は最近別の一族と対立しているらしい。そんなマリアンの祖母の屋根裏に長年置かれていた謎の卵をキャットは譲り受けることとなり――。

 『魔女と暮らせば』の主人公キャットの1年後を描いた作品。前作でいろんなことを経験したキャットの成長した姿が微笑ましい。が、またもや魔法のトラブルに巻き込まれてしまうところが、キャットの宿命というか相変わらずな部分でおもしろい。アイテムとして魔法の生き物や機械も登場し、マジックファンタジーらしさに溢れた内容となっている。


 
 というのがシリーズの概要だが、上に並べた順番は日本で出版された順番で、本国イギリスでの出版順とは違う。最初に出版されたのは1977年の『魔女と暮らせば』、次に1980年の『トニーノの歌う魔法』、1982年『魔法使いはだれだ』、1988年『クリストファーの魔法の旅』、2000年『魔法がいっぱい』、2005年『魔法の館にやとわれて』、2006年『キャットと魔法の卵』という順になっている。
 また、時系列順に読むという方法もあって、その場合は『クリストファーの魔法の旅』『魔法の館にやとわれて』『魔女と暮らせば』『魔法使いはだれだ』『トニーノの歌う魔法』『キャットと魔法の卵』という順番に読むと、クリストファーの成長や時間の流れがわかるようになっている。
 ただ、シリーズはあくまでも連作という形で1冊1冊が独立しているので、どれから読んでも変わらずシリーズの世界を楽しむことができると思う(外伝である短編集は別として)。


 『大魔法使いクレストマンシーシリーズ』の魅力はさまざまあるが、まず一つを提示するならば世界観の巧みさが挙げられる。
 シリーズは1作ずつ別の話で、ひとつひとつの物語の中で魔法にまつわる事件が起こり、善と悪が戦ったりするわけだが、それらは基本的にはとても小さな物語と言える。たとえば同じイギリスの名作ファンタジー『指輪物語』や『ナルニア国ものがたり』のように大勢の人間同士が戦争をしたり命がけの冒険をしたりするわけではなく、日本の名ファンタジー『守り人シリーズ』や『十二国記シリーズ』のように国の存亡をかけた政治的な争いが起こるわけでもない。あくまで、ある場所、もしくはある人物を中心に魔法に関連したトラブル・事件が起きるというだけで、物語の規模としては決して大きくない。もちろんそんな中でもキャラクターたちの危機や人生をかけた冒険というのは書かれるわけだが、あくまでも個人的なものだし、ほのぼのとした雰囲気もある。
 しかし、そういった複数の人々の人生の積み重ね、出来事の重なりによって、シリーズ全体を見渡した時に不思議な壮大さが生まれる。それはやはり、描かれている世界の多様さ、豊かさというのが理由なのではないかと思う。12ある世界の中にさらにそれぞれ9つの世界が含まれ、異なる文明・文化を持ち、魔法が盛んな世界もそうでない世界もある。人間も生き物も多種多様、魔法も機械も何でもアリ。そういった世界の在りようが子どもだましではなく、私たちの住む世界のほかにも地球にはいくつもの世界が同時に存在しているのではないか、そう思わせる空気感と臨場感を持って描写されている。そうした魅力的かつよく考えられた世界観が、このシリーズにある種の壮大さを与え、よりいっそうおもしろい物語にしている。


 ただ残念なことに、ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品(以下、DWJ作品)は好き嫌いが分かれやすい小説だとしばしば言われる。その原因となっているのはDWJ作品特有の“しっちゃかめっちゃか感”だろう。
 とにかくどの作品にしても賑やかな小説である。次から次へとキャラクターたちが登場し、次から次へとトラブルを引き起こす。物語が進行するスピードも速く、コロコロコロコロと展開が変わる。そうしているうちに話の筋道が分からなくなり、うっかりすると今ストーリーがどういう方向へ向かっているのか、何が起ころうとしているのか読めなくなってくる。起承転結もあるような無いようなで、まるで迷路に迷い込んだかのような不思議な感覚に陥ってしまう、それがDWJ作品の特徴なのである。
 人によってはそのために話がよく分からないという人もいるだろうし、逆にその特殊な感覚を何とも言えない快感として感じる人もいる。その点を楽しめるかどうかで、好き嫌いが決まるのだろうと思う。
 が、その独特な“しっちゃかめっちゃか感”がDWJをDWJたらしめていることは間違いない。“しっちゃかめっちゃか”であるということはプロットやストーリーがテキトーであるということとは違う。事細かに練られ、計算された上での“しっちゃかめっちゃか”なのだ。
 ジョーンズさんはかつてオックスフォード大学に在籍し、『指輪物語』を著したトールキンや『ナルニア国ものがたり』を著したルイスに師事している。至極正統なイギリスファンタジーの後継者と言える人物だ。当然ファンタジーのセオリーや“約束事”を知り尽くしている。それを充分に学んでいない人間がファンタジーらしい設定やモチーフを用いてファンタジーを書こうとしても単なるエセファンタジーにしかならないが、確かなファンタジー創作の地盤を持つジョーンズさんはファンタジーの定型を踏襲し巧みに利用しながら、そこに自分の色を加え独自の解釈を与えることで、読者の想像を裏切る独創的なファンタジーを創り上げたのだ。だからこそどんなにストーリー展開やキャラクターが“しっちゃかめっちゃか”でも、“テキトー”な物語にはなりえないのである。


 ほかにもDWJ作品の魅力は数多くあって(うまく張り巡らされた伏線とか、あっと言わせるどんでん返しとか意外なオチとかetc……)、しかしそれを一つ一つ取り上げると大変なことになるし、それ以上にどれだけ言葉で伝えようとしても言葉で言い表すことのできない不思議な感じがDWJ作品の最大の魅力なので、ぜひ試しに手に取って読んでみてほしいと思う。
 ジョーンズさんの著作ならどれもおすすめなのだが、やはり『大魔法使いクレストマンシーシリーズ』にDWJ作品のおもしろさ・醍醐味が凝縮されているように思う。まずは外伝以外の長編1冊を選んでいただいて、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの世界にどっぷり浸ってほしい。


:ジョーンズさんのポートレート写真は、子ども向け書籍の出版社「Greenwillow Books」の公式ブログが2011年3月28日の10:32に配信した記事「Diana Wynne Jones 1934–2011」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
幽霊を描いた小説・私的10撰 2015年7月24日  記事内でダイアナ・ウィン・ジョーンズ氏の『わたしが幽霊だった時』を取り上げています。


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by hitsujigusa | 2014-08-15 02:30 | 児童文学 | Trackback | Comments(0)

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 新プログラム続報シリーズ第3弾です。今回はタイトルでもお分かりのとおり、羽生結弦選手を中心に書いていきますが、その後には前記事の予告どおり、アメリカの男子選手のプログラム情報についてもまとめていきます。


 ということで、まずは羽生結弦選手です。8月7日に練習拠点のカナダ・トロントで練習をメディアに公開し、その際フリープログラムの演目を発表しました。フリーは「オペラ座の怪人」、ショートプログラムはすでに発表されているとおり、ショパンの「バラード第1番」です。

◆◆◆◆◆

羽生「オペラ座の怪人」で初の4回転3つ

 フィギュアスケート男子でソチ五輪金メダルの羽生結弦(19=ANA)が、新シーズンのフリープログラム「オペラ座の怪人」で、自身初となる3つの4回転ジャンプを跳ぶ高難度の構成に挑むことを明らかにした。7日にカナダのトロントで初めて披露。「大変なことだが、昨季と同じ自分ではいたくない」と進化は止まらない。

 昨季同様に演技前半にサルコーとトーループの4回転を入れ、得点が1・1倍になる後半には2度の3回転半ジャンプや4回転トーループのコンビネーションを組み込む。限界に近いスタミナが要求される構成は自らの決断で「トーループの手応えがあったから」と理由を説明した。コーチのブライアン・オーサー氏も「五輪王者になっても前を見続けるユヅルらしい大きな挑戦だ」と背中を押す。

 国際大会で成功すれば史上初めての4回転ループは、今季は封印する方針だ。この日は3週間ぶりに挑んで感覚を試したが「ループはご褒美みたいなもの。こだわりはない」と言う。

 ボーカル入りの曲が可能になった今季は「オペラ座の怪人」を選んだ。中学生の時から「1度は滑ってみたかった」という定番。数々のスケーターが演じてきた怪人ファントムをどう演じるか。羽生は「これまでと違ったファントムを見せたい」と意欲をのぞかせた。


日刊スポーツ 2014年8月9日 8:56

◆◆◆◆◆

 このニュースを聞いて何より驚いたのは、羽生選手が「オペラ座の怪人」を使用するということ。作品自体は大定番中の大定番なので珍しくも何ともないですが、すでに無良崇人選手、村上佳菜子選手、そしてアメリカのグレイシー・ゴールド選手がフリーに「オペラ座の怪人」を使用することを発表しています。それに加えて羽生選手までもが!ということで、ものすごくビックリしてしまったわけです。
 前記事でも「オペラ座の怪人」に人気が集中することについて驚きの気持ちを書いたばかりだったので、それから幾日も経たないうちに4人目の使用者が現われて更に驚いてしまいました。
 また、海外の選手、もしくは異なるカテゴリーの選手とプログラムが被るというのはわりとあると思うのですが、同じ日本の男子選手同士で同じプログラムというのは珍しいですね。以前、安藤美姫さんと中野友加里さんが同じシーズンのフリーに「ジゼル」を使用して被ってしまったということがありました。その時は安藤さんがシーズン途中でプログラムを変更したのですが、同じ国の選手同士で全く同じ作品というのはやりにくさがあるものなのでしょうかね。
 ですが、羽生選手と無良選手、それぞれ全くタイプ、カラーの異なるスケーターなので、雰囲気の違うファントムを見比べるのも一ファンとしては楽しみに思います。
 そして、ジャンプ構成についても話が出ています。フリーは3つの4回転を組み込み、そのうち4サルコウと4トゥループを前半に、4トゥループ+2トゥループを後半に跳ぶ予定とのこと。
 4回転を3つ取り入れることによって演技全体のバランスを崩してしまう選手の姿もこれまで見てきているので、いらぬ心配をしてしまうのですが、羽生選手の場合4トゥループはお手のものだと思うので、4トゥループを2つ跳ぶこと自体は問題ないでしょうね。心配点は疲れている後半に跳ばなければいけないというスタミナ面と昨シーズン確率の良くなかった4サルコウでしょうか。そのあたりの課題さえクリアできれば、器用な選手なので順調かつスムーズにシーズンを過ごしていけそうな気がします。
 現在の自分に甘んじることなく、貪欲にレベルアップを目指す羽生選手。彼の新シーズンがどんなものになるのか、さらにワクワクが高まります。


 さて、ここからはアメリカ男子勢についてです。

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 全米選手権2014の銀メダリスト、ジェイソン・ブラウン選手はSPがリトル・ウォルターの「Juke」、フリーが「トリスタンとイゾルデ」だそうです。
 ショートはブルースハーモニカ奏者のリトル・ウォルターさんの楽曲。ブルース界ではスタンダードになっている名曲とのこと。ブルース、しかもハーモニカ曲という、個性的なブラウン選手らしい選曲ですね。ブルースといえば高橋大輔選手の「ブルース・フォー・クルック」が印象深いですが、独特のリズムと渋さ漂う雰囲気をブラウン選手がどう表現するのか、今から期待が募ります。
 そしてフリーは「トリスタンとイゾルデ」。フィギュアスケートではしばしば使われる作品ですが、このプログラムについて報じた記事やアメリカフィギュアスケート協会のプロフィールを見ると、「“Tristan and Iseult” by Maxime Rodriguez」という表記になっているので、ワーグナーが作曲したものをそのまま使ったプログラムというわけでもなさそうです。マキシム・ロドリゲスさんはフランスの作曲家で、これまでもフィリップ・キャンデロロさんの「ダルタニアン」やジョニー・ウィアーさんの「ナザレの子」などフィギュアスケーターの作品を手がけたことがあります。今回の「トリスタンとイゾルデ」はどういった形でロドリゲスさんが制作に関わっているのかは分からないのですが、新鮮な「トリスタンとイゾルデ」になっているのではないかと思います。


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 全米3位のマックス・アーロン選手はショートが「映画『フットルース』より」、フリーが「映画『グラディエーター』より」
 どちらも男らしくエネルギッシュなアーロン選手らしいプログラムだなという印象ですね。『フットルース』は軽快で明るい青春映画、『グラディエーター』は古代ローマを舞台にした剣闘士の物語。両方とも男性が主人公の映画ですし、男性的なカッコいいイメージが強いです。アーロン選手は軽くポップな感じもパワフルで力強い感じもうまく表現できるスケーターですから、楽しみですね。


 全米8位のアダム・リッポン選手はSPがクインシー・ジョーンズの「Tuxedo Junction」、フリーがフランツ・リストの「ピアノ協奏曲第1番」です。
 SPはジャズの名曲。それをクインシー・ジョーンズさんが歌った(アレンジした?)ものを使用するようです。今までクラシック音楽が多かったリッポン選手には珍しい選曲ですが、また新たな一面が見られると思うと期待大ですね。
 フリーは王道のクラシックでリッポン選手らしいと言えます。リストの「ピアノ協奏曲第1番」は小塚崇彦選手が世界選手権でメダルを獲得した時のフリー使用曲。派手さ・華やかさはありませんが、端正で重厚な曲想が魅力です。正統派の美しいスケートが特徴的なリッポン選手ですから、この曲はピッタリでしょうね。


 全米4位のジョシュア・ファリス選手はSPがエド・シーランの「Give Me Love」、フリーは昨季に引き続き「映画『シンドラーのリスト』より」です。
 ショートはポップス、フォークになるんですかね。エド・シーランはアコースティックなシンガーソングライターなので、この「Give Me Love」という楽曲もたぶんそういった雰囲気になってるんじゃないかと思います。それとやはり歌詞もそのまま入ったものを使うんでしょうね。フリーは昨シーズンと同じプログラム。ファリス選手に関しては、昨季はシーズン中に怪我をしたこともあってあまり実力を発揮できていなかったなという印象があります。プログラムを完成させられなかったという思いがファリス選手自身にもあるのかもしれません。昨季以上に素晴らしいプログラムとなることを願っています。


 全米5位のリチャード・ドーンブッシュ選手はショートは昨季と同じ「Sons of Italy」、フリーはコールドプレイの「イエロー/美しき生命」になるそうです。
 SPは昨シーズンからの持ち越し。このプログラムはタイトルでも分かるようにとても明るくポップな曲調です。その弾けっぷりがドーンブッシュ選手によく合っていて、個人的にも印象に残りました。そういったプログラムを2季続けることによって選手自身が自信や安心感を持って試合に臨めるので、演技の安定に繋がるのではないかと想像します。昨シーズンの羽生選手のショートプログラムが良い例ですね。また、演技が安定することで余裕が出てきて、表現面にも良い影響を及ぼすのだろうと思います。などというのは私の勝手な憶測ですが、プログラムを持ち越すことがドーンブッシュ選手にとって良い方向に働けばいいですね。
 フリーはイギリスのロックバンド、コールドプレイのメドレー。たぶんこちらも歌詞入りなのでしょう。歌詞入りプログラムが解禁されたことによって、こういった現代の歌手やミュージシャンの楽曲使用がこれから増えてくるでしょうし、クラシック音楽と変わらないくらい一般的になっていくのかもしれませんね。



 とりあえず、この記事はこれで以上です。が、このシリーズはまだまだ続きます。日本の選手、ヨーロッパの選手の新プログラムについても次はもっとお届けできたらいいなと思います。では。


:羽生選手の写真は、フィギュアスケート雑誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから、ブラウン選手の写真は、アメリカの新聞「USAトゥデイ」の公式ニュースサイトが2014年2月12日の11:44に配信した記事「No quad, no problem for USA's Jason Brown?」から、アーロン選手の写真は、アメリカの新聞「アリゾナ・リパブリック」の公式ニュースサイトが2013年9月30日の21:14に配信した記事「Scottsdale figure skater Max Aaron continues ‘grinding away’」から引用させていただきました。


【参考リンク】
The Inside Edge: Skaters debut new programs | Icenetwork.com 記事内にジェイソン・ブラウン選手の新プログラムについての言及があります。
Aaron prepares for battle by returning to his roots | Icenetwork.com マックス・アーロン選手の新プログラム、近況について報じた記事です。

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by hitsujigusa | 2014-08-10 02:10 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 前記事に引き続き、選手たちの14/15シーズンの新プログラムについてお伝えしていきたいと思います。
 今回取り上げるのはアメリカの女子選手たち。グランプリシリーズに参加するアメリカのシングル選手たちのほとんどが新プログラムを発表していますが、一度に記事にするとごちゃごちゃしてしまいそうなので、この記事では女子スケーターたちのみピックアップします。


 まずは、現全米女王であるグレイシー・ゴールド選手。
 ショートプログラムは昨シーズンと同じ、グリーグの「ピアノ協奏曲」。フリーは「オペラ座の怪人」だということです。
 ショートは昨季からの持ち越しですが、昨季の後半から演じ始めたプログラムなのでまだ新鮮味があるのかなという感じですね。エレガントで繊細な曲想がゴールド選手の雰囲気に合っていて、持ち越しも納得です。さらに洗練されて進化したプログラムになるでしょうね。
 フリーは王道の「オペラ座の怪人」! すでに村上佳菜子選手、無良崇人選手もこの作品をフリーに使用することを発表しています。おなじみの作品なのでこれを使用すること自体に驚きはないですが、これだけ「オペラ座の怪人」に使用が集中するのにはちょっとビックリですね。でも、村上選手、無良選手、ゴールド選手とそれぞれ全く違った個性を持ったスケーターなので、同じ「オペラ座の怪人」でも全然違った作品になるだろうと思いますし、各作品を比較しながら見る楽しみもありますね。


 続いては前全米女王であるアシュリー・ワグナー選手。

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 ショートは「アダージョ 『スパルタクス』より」、フリーは「映画『ムーラン・ルージュ』より」です。
 SPはハチャトゥリアンのバレエ作品『スパルタクス』からの抜粋ということですが、ワグナー選手は以前もフリーで『スパルタクス』を使用したことがありますね。それに、「だったん人の踊り」や「サムソンとデリラ」などエキゾチックな作品を得意としているワグナー選手ですから、この新ショートの選曲もなるほどなという印象です。
 一方、フリーはミュージカル映画『ムーラン・ルージュ』のサントラを使用したプログラム。映画音楽を使用したことは何度もありますが、『ムーラン・ルージュ』はこれまでとは少し違ったタイプの作品かなと思います。美と退廃が入り混じった大人の世界というのが私のイメージですが、これまでも劇中曲の「ロクサーヌのタンゴ」を高橋大輔選手や韓国の金妍兒(キム・ヨナ)さんが使用したことがあり、独特の大人っぽい風情が印象的でした。また、今季から歌詞入りプログラム解禁ということで、もしかしたら歌声も入っているかもしれません。ワグナー選手のフリープログラムはどんな雰囲気になるのでしょうか、楽しみです。


 次は昨シーズン大飛躍を遂げた全米選手権2014の銀メダリスト、ポリーナ・エドマンズ選手。

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 ショートは「フラメンコメドレー アルバム『フラメンコファンタジー』より」、フリーは「フェアリーダンス 映画『ピーター・パン』より」
 SPはフラメンコとのこと。エドマンズ選手は一見華奢で大人しめという印象があるのですが、昨季のSPもラテン系でしたし、意外に踊れるタイプの選手なんですね。同じラテン系でもフラメンコなのでより大人びたエドマンズ選手が見られるかもしれません。
 フリーは映画『ピーター・パン』。小顔でスレンダーでふわっとした雰囲気を持つエドマンズ選手ですから、ファンタジー作品にはピッタリ合いそうな気がします。ティンカー・ベルっぽさもありますしね。エドマンズ選手のさらなる活躍に期待しています。


 続いて全米選手権2014で3位だった長洲未来選手です。

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 SPはラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」、フリーは「蝶々夫人」です。両方とも振り付けはなんとアダム・リッポン選手。昨季のエキシビションを振り付けているのでそれに引き続きということになりますが、ショー用ではなく試合用ですから、はたしてどんな感じになっているのか注目です。
 曲目はショートもフリーも正統派のクラシック音楽。「パガニーニの主題による狂詩曲」はよく使われる楽曲で、しとやかなピアノの旋律と壮大な曲想が印象的です。「蝶々夫人」はいわずもがなのオペラ作品。有名なアリアも多くあり定番のチョイスと言えますが、日本が舞台の作品でもあり、日本にルーツを持つ長洲選手がどう演じるのか楽しみです。
 これまでもクラシック音楽の使用は幾度もある長洲選手ですが、ショート、フリー揃ってクラシックというのは珍しいですね。どちらかが映画音楽だったりジャズやタンゴだったりということが多かったのですが、思いっきりクラシックの世界に浸る長洲選手というのも新鮮かもしれません。


 全米5位のサマンサ・シザーリオ選手は、SPが「Danza Mora」、フリーが昨季と同じ「カルメン組曲」とのこと。
 ショートについては、アラビアンっぽいアーティストの楽曲ということしか今のところ分かりませんね。フリーは昨シーズンからの持ち越しとなる「カルメン組曲」ですが、シザーリオ選手はジュニア時代から数えると相当長くこの「カルメン組曲」を使用し続けているんですね。確かにエキゾチックな雰囲気を漂わせる彼女によく合った選曲だとは思うのですが、印象が固定化されてしまう恐れがあるので、そろそろ新ジャンルに挑戦してもいいんじゃないかなという気もしますね。ですが、今までとは違ったプログラムに進化しているかもしれないので、そこらへんに注目したいなと思います。


 全米6位のコートニー・ヒックス選手は、SPが「Code Name Vivaldi」、フリーは「映画『アンナ・カレーニナ』より」だそうです。
 ショートはアメリカの音楽グループ、The Piano Guysの楽曲を使用したプログラム。The Piano Guysは私は知らなかったのですが、ピアノやチェロなどで現代的にアレンジしたクラシック音楽を演奏するユニットみたいですね。ジャンル的にはクラシカルクロスオーバーになるのでしょうか。「Code Name Vivaldi」というからにはたぶんヴィヴァルディの楽曲をアレンジしたものなのかなと思います。
 フリーはイギリス映画『アンナ・カレーニナ』のサントラ。「アンナ・カレーニナ」はロシアのアルトゥール・ガチンスキー選手も昨シーズン使用していますね。重厚かつクラシカルなプログラムになりそうです。


 全米8位のクリスティーナ・ガオ選手は、ショートがイギリスの歌手エミリー・サンデーさんの楽曲「River」、フリーが昨季に引き続き「映画『天使と悪魔』より」になるそうです。
 SPはエミリー・サンデーさんの歌ということで、インストゥルメンタルではなくそのまま歌詞が入ったものになるのでしょうか。サンデーさんはロンドン五輪の開会式や閉会式でもパフォーマンスした歌手で、現代のイギリスを代表するシンガーの一人。今までのガオ選手には見られなかったタイプの選曲ですね。
 フリーは昨シーズンと同じプログラムですが、ガオ選手にとって昨季は本領発揮できたシーズンとは言い難いので、プログラムを作品として完成させるために持ち越すことにしたのかなとも思いますね。


 全米12位でグランプリシリーズ初参戦となるアシュリー・ケイン選手は、SPが「ミッション・インポッシブル」、フリーが「映画『エビ―タ』より」
 ショートは映画のサントラをそのまま用いたものではなく、上述したThe Piano Guysがアレンジ、演奏したものを使うようです。私はThe Piano Guysについて全く知らなかったのですが、こうして複数の選手がプログラムに使用するくらいアメリカではポピュラーな存在なのかもしれません。
 フリーは映画音楽。こちらは昨季、ヒックス選手がフリーで使用していましたね。



 この記事はとりあえずここまで。昨シーズンにも増してGPシリーズに参戦する選手の人数が多いアメリカ女子勢。彼女たちがどんな快進撃を見せるのか、戦々恐々とするとともに今から楽しみです。
 次の記事ではアメリカ男子の新プログラムについて書ければと思います。では。


:ゴールド選手の写真は、アメリカのニュース番組「TODAY」の公式ウェブサイトが2014年2月17日の8:40に配信した記事「Figure skater Gracie Gold: I'm not such a dark horse」から、ワグナー選手の写真はエンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、エドマンズ選手の写真は、アメリカの新聞「USAトゥデイ」の公式ウェブサイトが2014年2月15日の14:05に配信した記事「Skater Polina Edmunds marched in her own way with Team USA」から、長洲選手の写真はフィギュアスケート雑誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2014-08-07 17:19 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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※2014年8月3日、小塚崇彦選手の新プログラムについて追記しました。

 
 8月となり、14/15シーズンの本格的な開幕も近づいてきました。それに合わせて選手たちも続々と新プログラムを発表し始めています。
 そんな中、8月1日に中京大学において全日本代表の強化合宿が行われ、その模様がメディアにも公開されました。その際に複数の日本選手の新プログラム情報、近況が明かされました。


 まずは、上の写真でもお分かりのとおり、無良崇人選手の新プログラムについて。
 ショートプログラムはフェリックス・メンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲」、フリーは「オペラ座の怪人」になるそうです。
 ショートの「ヴァイオリン協奏曲」は安藤美姫さん、村上佳菜子選手も以前使用していますので、定番といってもよい選曲ですね。こういった正統派のクラシック音楽は無良選手にしては珍しいというか、かなり久しぶりなので、どんな雰囲気・表現になるのか、ちょっと未知な感じもあって楽しみです。
 フリーは大定番「オペラ座の怪人」。13/14シーズンの鈴木明子さんの「オペラ座の怪人」も記憶に新しいところですが、男らしい荒々しさ、豪快さが魅力の無良選手がこの作品をどう演じるのか、こちらも大いにワクワクです。また、フリーはボーカル入りということで、新しい試みにも注目です。
 ショート、フリーともに無良選手の新たな面を見ることができそうですね。
 さらに、無良選手は次の五輪シーズンに向けて、すでに新たな種類の4回転ジャンプ会得に取り組んでいることも明かしました。14/15シーズンはショートで1本、フリーで2本の4トゥループを組み込む予定とのことですが、そのほかに4サルコウ、4ルッツも練習しているそうです。このことについて無良選手は、「五輪シーズンまでに4回転の種類が増えてくると思う。2種類跳ばないと勝てない。早いうちからやった方がいい」と話していますが、ソチ五輪チャンピオンの羽生結弦選手を始め、ハビエル・フェルナンデス選手やマキシム・コフトゥン選手など2種類以上の4回転を跳ぶ選手がある意味普通になってきたことを思えば、数種類の4回転会得は世界のトップを争う上では当然のことと言えるでしょうね。
 見栄えのするジャンプのクオリティーを持つ無良選手。新たな4回転が見られる日を楽しみにしたいと思います。


 続いてはシニア2年目となる宮原知子選手。
 ショートプログラムはモーツァルトのオペラ「魔笛」、フリーはミュージカル「ミス・サイゴン」だそうです。
 ショートの振り付けはローリー・ニコルさん。宮原選手は二コルさんとは初タッグですね。「魔笛」と言えば誰もが知る代表的なオペラ作品ですが、フィギュアスケートではそれほどよく使用される作品というわけではありません。有名なアリアも多くある作品ですが、ショートプログラムという短い演技の中で、どのように宮原選手が「魔笛」という難しい作品の世界観を表現するのか、楽しみですね。
 フリーの振り付けはこれまでも宮原選手のプログラムを多く手掛けてきたトム・ディクソンさん。「ミス・サイゴン」は定番というほど頻繁に使われているわけではありませんが、しばしば使用されるミュージカル作品です。明るさもあり、クラシカルな繊細さもある音楽は宮原選手にぴったりだなという印象です。
 合宿のインタビューで14/15シーズンの目標について、グランプリファイナルと世界選手権に出たいと話した宮原選手。女子シングルはロシア、アメリカ勢が昨シーズン以上に席巻するであろう中で、グランプリファイナルに出場するためには熾烈な戦いをくぐり抜けなければなりません。宮原選手が充実したシーズンを送って、その先に目標達成があればと心から祈っています。


 同じく合宿に参加した村上佳菜子選手もフリーの曲目を発表しています。

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 フリーは無良選手と同じ、「オペラ座の怪人」、ショートはまだ明かされていません。
 どういった理由で「オペラ座の怪人」を選曲したのかという具体的なことはわからないのですが、やはり昨季の鈴木明子さんのフリーが影響を与えているのかな?という気もしますね。
 ですが、村上選手がこのプログラムで演じるのはヒロイン・クリスティーヌではなく、怪人ファントムとのこと。女子選手が男性を作品の中で演じるというのは珍しいですが、村上選手は以前にも「マスク・オブ・ゾロ」で剣士を演じたことがありますし、力強くエネルギッシュな演技はお手のものという感じですからね。また、男性の歌声もプログラムに入っているということで、より“男らしい”プログラムになっていそうです。自信に満ち溢れた状態で演じることさえできれば、躍動感たっぷりの素晴らしい「オペラ座の怪人」が見られるのではないかなと思います。
 今までの女性スケーターのものとは一味違った「オペラ座の怪人」が見られるかもしれませんね。待ち遠しいです。


 そして、小塚崇彦選手は曲名こそは発表していませんが、フリーについてボーカル入りであること、悲しい中で楽しかった記憶を思い出すことがテーマのプログラムであることを明かしています。振り付けはローリー・ニコルさんで、意外にも初タッグなんですね。プログラムについて小塚選手は、「伸びのある歌声が自分の滑りに合う」とも話していて、どんな歌手の曲なのか、初めてのニコル作品を小塚選手がどう表現するのか、いろいろ興味が尽きませんね。
 (右記追記部分です)フリープログラムについてですが、イタリアのテノール歌手アンドレア・ボチェッリさんの楽曲を使用とのこと。ボチェッリさんは現代のイタリアを代表するテノール歌手ですが、小塚選手の滑りとボチェッリさんの歌声がどんなコラボレーションを見せるのか、期待大です。


 さらに、この合宿には参加していませんが、現世界王者である羽生結弦選手もプログラムを一部発表していて、ショートプログラムはショパンの「バラード第1番」であることが現時点(8月1日)でわかっています。このプログラムをアイスショーでお披露目したのはだいぶ前なので、何を今更という感じですが……。
 振り付けは昨季に引き続きジェフリー・バトルさんですが、2シーズン滑った「パリの散歩道」から一転、正統派のクラシック音楽ということで、ここ最近の羽生選手とは全く違ったカラーのプログラムになるでしょうね。純粋なクラシックという意味では11/12シーズンのSP「悲愴」以来になりますが、私はわりとこういう系統の羽生選手の方が好きなので、楽しみです。
 とはいえ、「バラード第1番」はこれまでの羽生選手には全くなかったと言ってよいタイプの音楽。浅田真央選手がエキシビションでこの曲を使用していますが、とにかく静謐で、繊細で、装飾というもののほとんどないシンプルな音楽です。それだけに滑る人の力量が試される曲、という感じもします。ピアノの音のみで大きな盛り上がりや明確なメリハリがない分、スケーターが身一つでそれを表現しなければいけないという難しい曲であるようにも思います。
 だからこそ、羽生選手がオリンピック直後のシーズンにこの曲を選んだというのが興味深く、おもしろいなと感じます。羽生選手の新境地が見られるかもしれないと思うとワクワクもしますね。


 
 こう見てみると、歌詞入りのプログラムに挑戦する選手が多くいて、やはり皆さん歌詞入りというものをやりたい気持ちが結構あるものなのだなと思ったりもしました。エキシビションナンバーでしかなかった歌詞入りプログラムを、各選手がどのように演じるのか楽しみですね。そうはいっても音楽をスケートで表現するという基本に変わりはないのですが。
 まだまだ海外選手の新プログラム情報も多くありますが、とりあえずこの記事はここまで。続きは次の記事でお伝えしたいと思います。では。


:無良選手の写真、村上選手の写真は、エンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2014-08-02 02:36 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)