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 さて、前記事に引き続きスケートアメリカについてお伝えします。今回は女子とペアです。
 女子を制したのはロシアのエレーナ・ラディオノワ選手。自己ベストでGPシリーズ初優勝となりました。2位に入ったのは同じくロシアのエリザベータ・トゥクタミシェワ選手で、こちらは2シーズンぶりのGP表彰台。3位はアメリカのエース、グレイシー・ゴールド選手です。
 ペアで優勝したのはロシアの川口悠子、アレクサンドル・スミルノフ組。2季ぶりのGP復帰でしたが、ブランクを感じさせない演技で久しぶりの優勝となりました。

ISU GP Hilton HHonors Skate America 2014 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 女子のチャンピオンとなったのはシニア2年目のエレーナ・ラディオノワ選手です。

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 ショートの演目は「De mi vera te fuistes (Seguiriyas)/Ain't It Funny」。冒頭は大技の3ルッツ+3トゥループからでしたがルッツの着氷で若干乱れがあり、それでもうまくセカンドジャンプに繋げたもののGOEでは小さな減点を受けました。しかしその後はきちんと立て直し、全体にまとまった演技を見せました。得点は65.57点で2位につけます。
 フリーはラフマニノフの曲を組み合わせた「ピアノ協奏曲第3番/悲しみの三重奏曲第2番」。前日ミスがあった3ルッツ+3トゥループでは同じようなミスがあり完璧とはいかず。次の3フリップ、単独の3ルッツでもGOEではマイナス判定されるジャンプとなりますが、後半の3+1+3の難しいコンビネーションジャンプも含めミスらしいミスは無く、最後まで勢いのあるのびのびとした演技を披露しました。得点は129.90点で自己ベスト、ショートと合わせたトータルでも自己新で、2位からの逆転優勝となりました。
 上述したようにジャンプの細かいミスはありましたが、ミスと言うのも厳しいほど小さなミスで、全体を見れば素晴らしい内容でした。少しルッツに苦労している節はあって、そこがショートから着氷ミスという形で出てしまったのですが、それを大きなミスに繋げない本番強さというのを感じましたし、10月上旬のジャパンオープンから好調を維持していますね。
 また、余談ですが、テレビでパッと見する感じ、ラディオノワ選手は1年前と比べて身長がぐっと伸びているように見えますね。国際スケート連盟の公式プロフィールでは155センチということになっているのですが、上の写真では身長157センチ(ロシアフィギュアスケート連盟のプロフィールでは159センチとなってますが)のトゥクタミシェワ選手よりちょっと高いくらいですから、実際には160センチ近くあるのでしょう。1年前は150センチ前半くらいの身長だったと思うので、1年で急激に背が伸びている状況だとジャンプを跳ぶ感覚も変わったりコントロールも難しくなったりということがフィギュア界ではよく言われるのですが、ラディオノワ選手の姿からはあまりそういったことが感じられないですね。今のところは自分の身体の変化にうまく対応して、ジャンプを操れているのかなという印象です。
 2年連続のGPファイナル進出に向け大きく一歩前進したラディオノワ選手、次戦はフランス大会です。GP初優勝、おめでとうございました。


 銀メダリストはロシアのエリザベータ・トゥクタミシェワ選手です。

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 ショートは大定番の「ボレロ」。冒頭は3トゥループ+3トゥループ、余裕を持って完璧に着氷します。続く3ルッツ、後半の2アクセルも難なく決め、その他のエレメンツも全てのスピンでレベル4を獲得するなどそつのない演技を見せ、得点は67.41点でパーソナルベスト、首位発進となります。
 フリーはアラビアンな雰囲気漂う「Batwannis Beek/Sandstorm」。まずは3ルッツからの3連続コンビネーションジャンプでしたが、最後のジャンプがシングルとなる小さなミス。その後も3トゥループ+3トゥループのセカンドジャンプが2回転になったり、3サルコウ+2アクセルのシークエンスジャンプのサルコウがダブルになったりと、細かなミスが重なりました。しかし、最後まで集中を切らすことなく、演技をまとめてフィニッシュしました。得点は122.21点、フリー2位で総合でも2位となりました。
 フリーで小さなミスが重なってしまったのはもったいなかったですが、成功したジャンプに関しては彼女らしい軽やかで余裕のある跳躍でしたし、安心して見ていられましたね。「ジャパンオープン2014&その他の国際大会について」という記事でもトゥクタミシェワ選手について言及したのですが、今シーズン彼女はネーベルホルン杯、フィンランディア杯、ニース杯と、GPシリーズの前に3つの国際大会に出場し、しかもその全てで優勝を飾っていて、昨シーズンの不調からほぼ完全に立ち直り復活を予感させる姿を見せてきました。そうして満を持して迎えたスケートアメリカで、2位という結果は目標としていた結果ではなかったかもしれませんが、内容的にも得点的にも悲観する必要のない素晴らしい演技だったと思います。GPの前に3大会をこなしているわけなのでさすがに疲れはあったんじゃないかと想像しますが、それでもこうして試合に合わせてくるんですから脱帽です。不安があるとすればその疲労という点だけで、後になって悪い影響が出なければいいなとか、シーズン前半がピークにならなければいいなというのがちょっと心配ではありますね。
 トゥクタミシェワ選手の次戦は2週間後の中国杯。立て続けの競技会となりますが、こちらもうまく体調をコントロールして臨んでほしいなと思います。


 銅メダルを獲得したのは地元アメリカのグレイシー・ゴールド選手。

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 ショートは昨季と同じグリーグの「ピアノ協奏曲」。冒頭の大技3ルッツ+3トゥループはセカンドジャンプの着氷で大きく乱れ、大幅な減点を受けます。しかしその後のエレメンツは予定どおりにこなし、最後の要素である足替えコンビネーションスピンに入りましたが、足を替える際に珍しくバランスが崩れ体勢を悪くし、ほとんどちゃんとしたスピンにならず無得点になるという大きなミス。コンビネーションジャンプとコンビネーションスピンのミスが響き、得点は60.81点で不本意な3位発進となりました。
 フリーは「オペラ座の怪人」。ショートでは失敗した3ルッツ+3トゥループをまずはしっかり成功させます。ですが、次の2アクセル+3トゥループはセカンドジャンプがダブルに。後半に入ってもジャンプのミスがいくつかあり、得点は118.57点でフリーも3位、総合3位に留まりました。
 今大会のゴールド選手はSPで得意のスピンでの大きなミスがあり、何かそこから調子が狂ってしまったような印象で、フリーでもその流れを堰き止めることができませんでしたね。特に大きかったのが、フリーでのジャンプの繰り返しミス。前半の2アクセル+3トゥループが2アクセル+2トゥループになり、ここで2トゥループをひとつ跳んでいるにもかかわらず、後半で2サルコウ+2トゥループ+2トゥループの3連続コンビネーションを跳んでしまい、同じ種類の2回転ジャンプは2つまでという今季からの新ルールに引っ掛かり、3連続コンビネーションが全くの無得点になってしまいました。3連続を2連続にすれば問題は無かったのですが、ミスが相次いでいたこともあって焦っていたのか、冷静な判断ができず当初の予定どおりに跳んでしまったんですね。
 ゴールド選手はコンビネーションの2つ目や3つ目にループジャンプを付けるのが苦手ということで、コンビネーションのセカンド、サードジャンプは必ずトゥループなんですね。なので2アクセル+3トゥループが2+2になると必然的に苦しい状況になってしまうので、今後も同じようなシチュエーションになった時にうまく機転を利かせて対応できるかどうか、彼女にとっての新たな課題と言えるのかもしれません。
 次の大会はGP最終戦のNHK杯。1か月以上あいだが空きますが、その間に調整がうまくいくことを願っています。


 表彰台まであと一歩、4位だったのはアメリカのサマンサ・シザリオ選手です。

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 SPは「Danza Mora」。冒頭は大技の3フリップ+3ループ、成功したかに見えましたがループの回転が若干足りず、減点されます。しかしその後もミスらしいミスは無く、得点は58.96点で今までの自己ベストを1点以上更新し、4位につけました。
 フリーは昨季からの持ち越しである「カルメン組曲」。冒頭の3ループ+1ループ+3サルコウはサルコウが回転不足になりますが、その他のジャンプはほぼノーミスでエレメンツをこなし、フィニッシュしたシザリオ選手は納得の表情。115.62点でパーソナルベストには惜しくも届きませんでしたが、SPと合わせたトータルでは自己新となり、4位で大会を終えました。
 全体的にジャンプが安定していて良かったですね。得点源となるコンビネーションジャンプでは後ろのジャンプが回転不足になってしまいましたが、もう少しというところでしたし、特に3フリップ+3ループはシザリオ選手以外では浅田真央選手が跳ぶくらいで、プログラムに組み込んでいる選手がほとんどいない難しいコンビネーションなので、挑戦すること自体に意義があると思います。
 シザリオ選手の次戦はフランス大会。今大会の経験を活かして、また頑張ってほしいですね。


 5位に入ったのは韓国の朴小宴(パク・ソヨン)選手です。

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 ショートはサン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」。1つ目の要素、3サルコウ+3トゥループは完璧に成功させましたが、続く3ルッツは大きく乱れます。後半の2アクセルやスピンはきちんとこなし、得点は55.74点、自己ベストに近いスコアを得ました。
 フリーは「映画『ロミオとジュリエット』より」。冒頭は前日失敗した単独の3ルッツでしたが、しっかり着氷。続いて3サルコウ+3トゥループもスムーズに決めます。その後、前半は順調に演技を進めましたが、後半の3ループが大幅な回転不足で着氷し転倒。しかし、直後の2アクセル+3トゥループですぐに立て直し、演技後は安堵と悔しさが入り混じったような複雑そうな笑顔を見せました。得点は114.69点、総合5位となりました。
 17歳の朴選手、これが初めてのGPでしたが、とても良かったところと少しもったいなかったところと両方あり、でも初のGPデビューとしてはまずまずだったのではないでしょうか。ショート、フリーともに目玉となる3+3を成功させている一方で、単独の3ルッツや3ループが失敗となっていて、そのジャンプ自体に苦手意識があるのかどうか分からないのですが、大技を無事に成功させたことで油断が生まれたのか、もしくは逆に慎重になり過ぎたのかもしれませんね。
 次戦のロシア大会は物凄い強豪という選手が少ないので、自己ベストくらいの得点を出せれば表彰台のチャンスもありうるかもしれません。楽しみにしたいと思います。


 6位となったのはアメリカの長洲未来選手。

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 ショートの演目は「パガニーニの主題による狂詩曲」。冒頭は得点源となる3フリップ+3トゥループでしたが、1つ目のジャンプで転倒しコンビネーションにならず。1つのスピンを挟んで後半に入り、急遽単独の3ループをコンビネーションにしようとしますが、2つ目のジャンプがシングルに。2アクセルは決めましたが、ジャンプのミスが影響して得点は49.29点、まさかの10位発進となります。
 フリーはオペラ「蝶々夫人」。前日は失敗した3フリップ+3トゥループに挑み、きれいに着氷したかに見えましたがセカンドジャンプが回転不足の判定。さらに2アクセル+3トゥループも跳びますが、こちらもトゥループが回転不足に。その後のジャンプも一見クリーンに成功させているような感じでしたが、細かくアンダーローテーション(軽微な回転不足)を取られ、得点は108.92点と伸びず、総合6位に終わりました。
 SPに関しては3フリップでの転倒という明確なミスがあったわけですが、もうひとつ、3ループをコンビネーションにしようとして3ループ+1トゥループになったのが、致命的とも言えるミスとなりました。今季からSPでは、回転が2回転に満たないジャンプ(つまり1回転や1回転半)は跳んでも必ずGOEでマイナス3の評価となる新ルールができたので(誤解がある言い方だったので言い換えますと)既定の回転数に満たないジャンプ(つまり、3+3もしくは3+2を跳ばなければいけないのに3+1になった場合とか、単独の3回転を跳ばなければいけないところが2回転以下になった場合)は跳んでもGOEでマイナス3の評価となったり、全くの無得点になったりする新ルールができたので、長洲選手も大きな損をする結果となってしまいました。
 フリーは何とか挽回したかなと思うのですが、先日のジャパンオープン同様にアンダーローテーション判定のジャンプが多く、まとまりのある演技の印象と実際の得点がなかなか重ならないという状況が続いていますね。コンビネーションジャンプの入り方や跳び方自体はそんな悪くなさそうなのですが、セカンドジャンプに高さが足りないのか、片足で着氷してから足首がぐりっと回るような感じに見えるので、回転不足が癖みたいになってしまうと心配だなと思いますね。
 次のロシア大会では長洲選手らしい笑顔が見られることを祈っています。


 7位はグルジアのエレーネ・ゲデヴァニシヴィリ選手。

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 ショートは「タイスの瞑想曲」。冒頭は3ルッツ+2トゥループで安全な滑り出し。続く3トゥループは若干のミスがありましたが、2アクセルは問題なく成功させます。得点は55.39点で6位発進。
 フリーは「映画『バーレスク』より」、ボーカル入りのノリノリ系プログラムです。まずは前日成功させた3ルッツ+2トゥループを無難にまとめましたが、次の3サルコウはダウングレード(大幅な回転不足)。その後も後半のジャンプで細かなミスが相次いだり、スピンでもレベルの取りこぼしが散見されたりして、満足な演技とはいかず。得点は102.71点でフリー9位、総合7位となりました。
 あえて3+3を跳ばず、安定した演技を目指したと思うのですが、SPでもフリーでもコンビネーションジャンプではないところでミスが重なったのが残念でしたね。フリーはミュージカル映画のサントラで、今季から解禁された歌詞入りプログラムということもあって、華やかさがゲデヴァニシヴィリ選手に合っていると思うのですが、ミスが影響してなかなかその良さ、魅力が表現されていなかったかなと感じました。
 今季のGP出場は残念ながらこのスケートアメリカ1大会のみのゲデヴァニシヴィリ選手。次はどの大会に出場するのかは分かりませんが、次こそゲデヴァニシヴィリ選手らしい演技ができることを願っています。


 8位となったのは日本の今井遥選手です。

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 ショートはボーカル入りの「マラゲーニャ」。前半、2アクセル、そして得点源の3サルコウ+3トゥループをきれいに成功させたものの、後半の得意な3ループで大幅に回転不足のまま降りてきてしまい、転倒。演技を終えた今井選手は悔しそうな表情を浮かべました。得点は53.79点、8位につけます。
 課題としていた3+3が決まったので、やった!と思ったのですが、3ループでの転倒はまさかでしたね。前半が完璧にできたからこそ、3ループも考えて跳んでしまったのかもしれません。うまくいけば60点近く、もしくは自己ベスト近くいったかもなので、ちょっともったいなかったですね。
 ですが、プログラムは素晴らしいものだなと感じました。「マラゲーニャ」は無良崇人選手も使用したことのあるスパニッシュ系の音楽ですが、今井選手の「マラゲーニャ」はボーカル入りで、ギリシャ人歌手のナナ・ムスクーリさんが歌っているものだそうなので、エネルギッシュでもあり女性的な艶やかさもありで、無良選手の「マラゲーニャ」とは全く違う雰囲気でしたね。
 また、プログラム全体に渡って歌が入っていましたが、違和感無くすんなりとプログラムの世界観に入っていけました。今季からボーカル入りがOKになり、既に多くのスケーターがボーカル入りを使用していますが、個人的にはその中でも歌声が入ってて良いな、というのと、これはあんまり良くないなというのがあります。本来プログラムを表現するのは氷上のスケーターただ一人なわけですが、そこに歌声があることによってもう一人そこに表現者がいるかのような、そのもう一人の表現者が選手の演技を邪魔しているかのような感覚に陥ることがあるんですね。演技をしている人の表現と、歌を歌っている人の表現とがうまく一体化すれば良いのですが、そこが何となく合ってないと、スケーターが歌い手の強さに負けてしまうというか、歌の方が強烈になってしまってスケートと音楽が乖離してしまうというか、ここまでのシーズンの試合でボーカル入りプログラムを見ていて、そう感じるプログラムがありました。インストゥルメンタルの曲だと音は楽器の音のみなので、表現者がもう一人いるという感覚になることは無いのですが、やっぱり人の歌声ってどんな歌声でも唯一無二の個性があって、その歌手なりの表現や意思が伝わってくるものなので、それがうまくスケーターの表現と一体にならないと難しいのかなと思います。
 かなり道を外れてしまいましたが、今井選手の「マラゲーニャ」はそういった意味で今井選手の表現と歌声とがちゃんと一体化していて良かったですね。ナナ・ムスクーリさんの歌声は強烈と言えば強烈ですが、歌声そのものが楽曲のメロディやリズムやテンポを生み出している感じで、ボーカル入りプログラムという特別感を忘れるくらい今井選手にしっくり来ていましたね。

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 一方、フリーは正統派バレエの「ジゼル」。3+3は組み込まず、2アクセル+3トゥループから。ほぼ完璧な跳躍でしたが、セカンドジャンプが軽微の回転不足に。ですが、続く3フリップや3サルコウ+2トゥループは無事に成功。後半に入っても大きく崩れることは無く、アンダーローテーションやちょっとした着氷の乱れなどはありましたが、落ち着いた演技を披露しました。得点は104.18点、フリーは7位で総合8位となりました。
 全て予定どおりのジャンプが跳べたかというとそうではないと思うのですが、10月上旬のオンドレイネペラ杯ではショートで41点、フリーでも93点という不本意な内容で悔しい思いをしたでしょうから、このスケートアメリカでひとまず嫌な感じを吹っ切って、拭い去って、次の大会に進めるのではないでしょうか。
 次戦はフランス大会、1か月ほど間が空くので、その時間をうまく利用して調子を上げていってほしいなと思いますね。



 ここからはペアについてです。

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 ペアの優勝者はロシアの川口悠子、アレクサンドル・スミルノフ組。ショート、フリーともにほぼパーフェクトと言ってよい素晴らしい内容で、久しぶりのGPとは思えない高いレベルで優勝を飾りました。これで川口&スミルノフ組は、GPシリーズ全6戦で優勝を経験するという快挙を達成しました。
 ショートとフリー合わせても減点要素がひとつしかないというハイクオリティの演技でしたね。特にフリーはスロー4サルコウを成功させ、フリーのパーソナルベストをマークしました。スミルノフ選手の怪我によって1年間競技会に出られず、2シーズンぶりに復帰するというだけでも大変なことでしょうに、それに加えてスロー4サルコウというペアでも最高レベルの大技に挑み、成功させ、休養する前の自分たち以上のものを見せるというのは、本当に凄いなとただただ感嘆するばかりです。ここからもう一度、川口&スミルノフ組の新たなストーリーが始まるのだなという感じですね。次の大会は川口選手の出身国でもある日本のNHK杯、楽しみにしています。
 2位がアメリカのヘイヴン・デニー、ブランドン・フレイジャー組。ショートで自己ベストを2点以上更新して3位につけると、フリーでは小さなミスはあったもののこちらも自己ベストを大幅に更新して、総合2位に順位を上げました。これが初めてのGP表彰台ですね。
 3位は中国の彭程(ペン・チェン)、張昊(ジャン・ハオ)組。ショートでもフリーでもジャンプでの転倒があり、得点を伸ばし切ることはできませんでしたが、何とか表彰台を守り切った形になりましたね。



 女子、ペア、そして男子、アイスダンスと全体を見渡しても、4種目全てでアメリカ勢が表彰台に上り、やはり自国の選手が強さを発揮する形となりました。その一方でロシア勢も男子シングル以外の全てでメダルを獲得していて、層の厚さを見せつけました。
 GPシリーズ14/15、次は10月31日から11月2日にかけて行われる、スケートカナダです。


:女子シングルメダリスト3選手のスリーショット写真は、AFPBB Newsが2014年10月27日の13:48に配信した記事「ラディオノワが女子シングル逆転優勝、スケート・アメリカ」から、ラディオノワ選手の写真、トゥクタミシェワ選手の写真、ゴールド選手の写真、シザリオ選手の写真、長洲選手の写真、今井選手のフリーの写真、ペアメダリスト3組の写真は、エンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、朴選手の写真、ゲデヴァニシヴィリ選手の写真は国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、今井選手のSPの写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
スケートアメリカ2014・男子&アイスダンス―町田樹選手、圧巻の2連覇 2014年10月29日
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by hitsujigusa | 2014-10-31 17:06 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 14/15シーズンのGPシリーズ初戦、スケートアメリカが現地時間の10月24日から26日にかけてシカゴで行われました。
 男子シングルの優勝者は日本の町田樹選手。自己ベストには及びませんでしたが、2位を大きく引き離す圧倒的な大差をつけて、昨年に引き続きこの大会を制しました。銀メダルを獲得したのは地元アメリカのジェイソン・ブラウン選手、3位はカナダの新星ナム・グエン選手です。
 アイスダンスではアメリカのマディソン・チョック、エヴァン・ベイツ組が金メダルを獲得しています。

ISU GP Hilton HHonors Skate America 2014 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 優勝したのは町田樹選手です!

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 温めてきた新プログラム初お披露目となった町田選手でしたが、初演とは思えぬ完成度の高さで観客を魅了しました。
 SPは「ヴァイオリンと管弦楽のための幻想曲」。07/08シーズンに浅田真央選手がSPに使用したことでも知られている名曲です。冒頭は大技4トゥループ+3トゥループ、一つ目の着氷で若干詰まったのですが、2つ目にうまく繋げて完璧に決めます。3アクセルは空中で軸が微妙に歪みましたが、これも問題なく着氷。2つのスピンとステップシークエンスを挟み、ラスト近くの3ルッツも成功させ、ほぼノーミスのSPとなりました。得点は93.39点、初戦でいきなりの90点超え、首位に立ちました。
 今回初めてこのプログラムを見せていただきましたが、とにかく素晴らしいの一言。町田選手自身は反省点ばかりと話していましたが、ただただ美しい演技で見惚れてしまいました。この「ヴァイオリンと管弦楽のための幻想曲」は映画『ラヴェンダーの咲く庭で』の劇中曲ですが、タイトルのとおりヴァイオリンの繊細かつ切ない音色と壮大な管弦楽が一体となった音楽で、イメージとしては女性的な印象です。なので、男性がこれを演じるのはそう容易いことではないと思うのですが、町田選手は見事に音楽の世界観を表現していましたね。町田選手はもちろん男性的な力強さもあるスケーターですが、それ以上に女性的とも言えるしなやかさを持ったスケーターだと私は思っています。指先や腕、背中といった身体の使い方は他の男子選手には無い柔らかさとエレガンスさを持っていて、それがこの曲の雰囲気にぴったり合っていて、男性ではあるけれども何の違和感もなくしっくり来るんだなと思います。これから町田選手が出場する毎試合、この作品を見られるのだと思うと嬉しいですね。

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 フリーはベートーヴェンの「交響曲第9番」、数多ある交響曲の中でも最も偉大かつ著名な交響曲と言ってよいでしょう。
 冒頭はまず4トゥループをしっかり成功させると、続く4トゥループ+2トゥループは少し体勢を崩しつつも着氷します。次の3アクセル+3トゥループも完璧で高い加点を得、後半に向かいます。後半は3アクセルを2アクセルにしたり、3フリップからの3連続コンビネーションジャンプが単独になったりと、疲れからミスは出たものの、プログラムの世界観を壊すことなく最後まで滑り切り、スタンディングオベーションを受けました。得点は175.70点、こちらも高得点でフリー1位。ショートと合わせて269.09点、2位に35点近い差をつけての優勝となりました。
 小さなミスはありましたが、プログラムの世界観を存分に魅せてくれる演技で本当に素晴らしかったですね。まず、驚かされたのは演技冒頭。音楽が流れ始めてからおよそ20秒間はポーズを決めたままじっとして動かず、20秒経って静から動へ勢いよく動きだすという斬新なスタート。重厚なオーケストラの音を全身でとらえ、まるで町田選手の身体から音楽が生まれ出ているかのような一体感のある演技。合唱「歓喜の歌」が入る後半はオーケストラと歌声によって最高潮の盛り上がりを見せ、町田選手の動きも一気に激しさを増し、その勢いが萎むことのないまま壮大なフィナーレを迎えます。
 交響曲は元々フィギュアでは使われる頻度は少なく、ましてやベートーヴェンとなるとほとんどないのではないかと思います。まず、交響曲はストーリーがなく、純粋に音のみで表現しなければならないというところに難しさがあるでしょうが、それに加えてやはりフィギュアは“ダンス”、“踊り”なので、リズミカルにテンポよく演技するためには難易度の高い音楽なのだろうなと思います。特にそれがベートーヴェンともなれば、重厚さ、荘厳さというのはピカイチですし、交響曲の迫力に負けないくらいの力強さやエネルギーに溢れた演技をするというのは相当大変なことだと思います。
 ですが、町田選手ならこの難しいプログラムをきっと完成させてくれるだろうと、今回の演技を見て確信しましたし、完成したらフィギュア史に残るような凄いプログラムになるだろうなとも感じました。
 町田選手の次戦はフランス大会。町田選手がフランス大会に出場するのは初めてですが、芸術の国フランスで彼の演技、プログラムがどう観客に受け止められるかというのも楽しみですね。スケートアメリカ2連覇、おめでとうございました。


 2位となったのはアメリカのジェイソン・ブラウン選手です。

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 SPは「Juke」、軽快かつコミカルなプログラムです。冒頭は得点源となる3アクセルからでしたが、回転は足りていたものの着氷がうまくいかず転倒。しかし、次の3フリップ+3トゥループ、後半の3ルッツは完璧にこなし、スピン、ステップでもブラウン選手らしさを発揮。プログラムの世界観を存分に見せてくれました。得点は79.75点で3位発進となりました。
 フリーは「トリスタンとイゾルデ」。冒頭は前日失敗した3アクセルを完璧に成功させると、続く2アクセル、3+1+3など、前半はほぼノーミスで波に乗ります。しかし、後半一発目の3アクセルは転倒でコンビネーションに繋げられず、その後も3+3、3ルッツなど、ミスが目立つ後半となりましたが、最後までスピードのある演技を見せました。得点は154.42点でフリーは3位、トータルで2位となりました。
 ショート、フリーともに3アクセルでミスがあり、本来の出来ではなかったのですが、その中でもブラウン選手らしい表現力は発揮されていて、この人の魅せる力というのは凄いなと改めて思いました。ジャンプ構成的にはまだ4回転が入っておらず、今大会は町田選手以外の有力選手にミスが多かったということもあって、4回転の無いブラウン選手にチャンスが回ってきた形になりましたが、トップ選手のほとんどが4回転を跳ぶ中で4回転を持たない彼がどう対抗していくのか、どれだけ上位に食い込んでいくのか、今後も大注目ですね。次戦はロシア大会です。


 銅メダルを獲得したのは今大会でGPデビューを果たしたカナダのナム・グエン選手。

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 SPは「Sinnerman」、ボーカル入りプログラムです。冒頭の3アクセルをパーフェクトに決めますが、3ルッツ+3トゥループはルッツの踏み切りがフラット気味で若干の減点、単独の3フリップは難なく成功させます。得点は73.71点でパーソナルベスト、7位につけます。
 フリーは「映画『道』より」。ショートでは入れなかった4サルコウは完璧な回転と着氷で、高い加点を得ます。続く3アクセルからのコンビネーションジャンプ、単独の3アクセルも成功させ、後半も減点のひとつもないほぼノーミスの演技。溌剌と滑り切り、演技を終えると満面に笑みを浮かべました。得点は158.53点で先日行われたスケートカナダオータムクラシックでマークした自己ベストにはわずかに及ばなかったものの、フリー2位で、総合3位となりました。
 ショートもフリーも大きなミスのない演技で素晴らしかったですね。GPデビューですから緊張がなかったことはないと思うのですが、表情も明るくてのびのびと滑っていて大物感を感じました。ショート、フリーともに軽快さや明るさの印象的なプログラムですが、ショートの「Sinnerman」は“罪人”という意味。フリーの「道」も映画自体は重さ、暗さのある映画ですし、しかも高橋大輔さんの「道」があまりにも強烈に印象深いプログラムなので、比較しては申し訳ないと思いつつも多少物足りなさは感じてしまうのですが、ショートにしてもフリーにしてもグエン選手特有の若々しさ、さわやかな明るさが前面に押し出されていて、本格的なシニアデビューということを考えると、あえて大人びた雰囲気を出すよりも等身大の明るさやコミカルさを強調する方がイメージ戦略的には正解なのかなとも思いましたね。
 グエン選手の次戦は中国杯。羽生結弦選手、若手の閻涵(ヤン・ハン)選手やマキシム・コフトゥン選手と表彰台を争うことになり、ファイナル進出には大きな壁が立ちはだかることになりますが、今大会のような演技を中国杯でも見せてほしいですね。


 4位に入ったのはソチ五輪銅メダリストのカザフスタンのデニス・テン選手。

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 ショートはイタリアのポピュラーソング「Caruso」。まずは単独の4トゥループからでしたが、これは転倒。次の3アクセルも着氷で大きく乱れ減点を受けます。後半の3+3は決めますが、スピンでも取りこぼしが目立ち、得点は77.18点で4位発進となります。
 フリーは「アルバム『New Impossibilties』より」。冒頭はショートと同じく4トゥループからでしたが、前日同様に転倒。2本目の4トゥループも2回転となってしまいます。その後、2本の3アクセルは完璧に成功させて立ち直るかと思われましたが、3+3+1が3+1+2になったり単独の3ループでも小さなミスが出るなどし、全体的に精彩を欠いたフリーとなりました。得点は147.56点でフリー4位、総合4位で大会を終えました。
 今大会のテン選手は4回転に悩まされているような感じでしたね。ショートもでフリーでもミスの仕方があんまり良くないミスの仕方で、噛み合っていないのかなと思いました。ミスが多かったためにプログラムの魅力を発揮するまでには至らなかったのですが、どちらもこれまでのテン選手とは違う魅力を引き出してくれるような作品のように感じましたし、特にフリーはアジアらしさ、ユーラシアの雄大さを想起させるプログラムでおもしろいなと思いました。
 それにしてもテン選手はGPではなかなかうまくいかないですね。スロースターターということもあるのでしょうが、表彰台に立てる実力は充分に備えているのにまだGPでの最高順位は4位で、メダルは一つも獲得していないんですよね。その一方で世界選手権ではすでにメダリストになっていますし、オリンピックのメダリストでもある。そういう星の下に生まれたのだと言えるのでしょうが、これまでのキャリアを見れば必ずしも一流大会での優勝経験やメダリスト経験が多いとは言えないのに、ここぞという大きな大会でチャンスをものにしてしまうというのは不思議な選手だなと思いますね。
 次の大会はエリック・ボンパール杯。次こそ初めてのメダル獲得が叶うことを願っています。


 5位はアメリカの大ベテラン、ジェレミー・アボット選手です。

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 ショートはボーカル入りプログラムの「Lay Me Down」。4回転は入れず、冒頭は3フリップ+3トゥループで無難な出だし。続く3ルッツも難なく決めましたが、後半に入れた3アクセルが大きく乱れてしまいます。それでもアボット選手らしいスケーティングの美しさ、音楽との一体感を見せてくれました。得点は81.82点で2位の好発進となります。
 フリーは「弦楽のためのアダージョ」。ショートでは回避した4トゥループに挑みましたが、すっぽ抜けて2トゥループに。それが影響したのか次の3フリップ+3トゥループも2フリップ+3トゥループになってしまいます。後半も3+1+3のファーストジャンプがシングルになったり、3アクセルがシングルになったりするなどミスが相次ぎ、得点は137.51点でフリー6位、総合でも5位とSPから順位を下げる結果となりました。
 なかなかジャンプがうまくいかず残念でしたが、プログラムの素晴らしさは随所にうかがえて、アボット選手によく合っているなと感じました。特にフリーは悲哀の印象が濃い重厚なプログラムで、端正なスケーティングと美しい身体づかいを持つアボット選手だからこそ表現できる作品だと思いますし、大人の男性の渋い魅力を醸し出していて、アボット選手の真骨頂だなと感じました。
 次戦はNHK杯なのでかなりあいだが長く空いてしまいますが、うまくその時間を活かしてジャンプの調子を取り戻せればいいなと思いますね。


 6位は世界ジュニア2014銀メダリストのロシアのアディアン・ピトキーエフ選手。

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 ショートはモダンアレンジされたラフマニノフの名曲「パガニーニの主題による狂詩曲」。冒頭の4トゥループは回転し切って降りたものの着氷でステップアウトしてしまいます。しかし、後半の3アクセル、3ルッツ+3トゥループは完璧で、フィニッシュしたピトキーエフ選手は小さくガッツポーズを見せました。得点は76.13点でこれまでのパーソナルベストを大きく更新して5位につけました。
 フリーはミューズの「エキソジェネシス交響曲第3部」。まずは4トゥループでしたが、転倒となります。その後は2本の2アクセルを決めるなど前半はまずまずの出来でしたが、後半は複数ミスがあり、満足のいく演技とはなりませんでした。得点は135.94点でフリー7位、総合6位でGPデビューの大会を終えました。
 ショートは小さなミスはあったものの良い内容で、フリーの出来次第で表彰台の可能性もあったと思うので残念でしたが、次のフランス大会で今大会の悔しさを晴らしてほしいなと思いますね。


 7位は昨季の世界選手権に初出場し9位と躍進した、フランスのシャフィク・ベセギエ選手。

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 ショートは「Heat/Clozee Mountain Legend」。冒頭の4トゥループ+3トゥループを成功させると、続く3アクセルも着氷させ、勢いに乗るかと思われましたが、後半は3ルッツやスピンでミスがあり、少しもったいない内容でしたね。得点は73.57点でフリー8位スタートとなります。
 フリーは「Road Game/You and Me 」。冒頭は前日同様、4トゥループからでしたがこれが3回転になり、続く4トゥループからの3連続コンビネーションでもミスが出てしまいます。その後も大きなミスではないもののチラホラ綻びが散見され、得点は135.13点でフリー10位、総合8位に順位を落としてしまいました。
 べセギエ選手は豪快なジャンプ力のある選手なのですが、今回は成功した4回転や3アクセルでもランディングがあまりきれいに流れなかったりして、GOEの加点を稼げなかったですね。あと、これは今大会に限ったことはないですが、スピンが苦手なのかレベルを取りこぼしたりGOEで減点を受けたりすることが多くて、そのあたりの細かいところでもより安定してくると、もっと成績も安定してくるでしょうね。次のGPは母国のフランス大会です。



 ここからはアイスダンスについてです。

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 アイスダンスで優勝したのは地元アメリカのマディソン・チョック、エヴァン・ベイツ組です。ショート、フリーともに安定した演技で、フリーのステップでレベルを取りこぼしたところはありましたが、全体的に良い内容で、ショート、フリー、総合の全てで自己ベストをマークしました。意外だったのはチョック&ベイツ組はスケートアメリカの出場は5年ぶりで、しかもこれがGP初優勝なんですね。スケートアメリカは今シーズン休養しているアメリカのエース、メリル・デイヴィス、チャーリー・ホワイト組が4連覇していて、なので久しぶりのスケートアメリカの新チャンピオン誕生ということになります。初めてのGPファイナル出場に向け、これ以上ない好スタートを切ったチョック&ベイツ組。次戦はロシア大会です。
 銀メダルを獲得したのは同じくアメリカのマイア・シブタニ、アレックス・シブタニ組。ショートでもフリーでもスピンだったりステップだったりで少しレベルを取りこぼすところがあり、その分得点を伸ばし切ることができなかったのかなという印象ですね。ですが、3年ぶりのファイナル進出に向けては好発進となったのではないかと思います。
 3位はロシアのアレクサンドラ・ステパノワ、イワン・ブキン組。昨季からGPシリーズに参戦していますが、今回が初めての表彰台です。自己ベストには遠い得点だったのですが、元世界ジュニアのチャンピオンカップルとしての実力を発揮してメダル獲得となりました。



 実力者が実力どおりの力を発揮して自ら優勝を勝ち取った男子とアイスダンスでした。女子&ペアについては次の記事で書こうと思いますので、少々お待ちください。


:男子シングルメダリスト3選手のスリーショット写真は、フィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから、町田選手の写真、ブラウン選手の写真、テン選手の写真、アボット選手の写真、ピトキーエフ選手の写真、べセギエ選手の写真はエンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、グエン選手の写真は国際スケート連盟のフィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、アイスダンスメダリスト3組のスリーショット写真は、AFPBB Newsが2014年10月26日の16:15に配信した記事「チョーク/ベイツ組がアイスダンス制す、スケート・アメリカ」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
スケートアメリカ2014・女子&ペア―エレーナ・ラディオノワ選手、パーソナルベストでGP初優勝 2014年10月31日
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by hitsujigusa | 2014-10-29 23:31 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 とうとう待ちに待った14/15シーズンのグランプリシリーズが開幕しました。シニアフィギュア界の勢力図の変貌も楽しみですが、その前にすでに終了しているジュニアグランプリシリーズ(以下、JGP)のまとめをこの記事では書いていきます。
 昨シーズンはソチ五輪シーズンということもあって、なかなかジュニアの動向にまで目を向ける余裕が私自身なかったのですが、今季はジュニアの方もおもしろいことになっているので、注目して当ブログでもジュニアに関連する記事を書いていけたらと思っています。
 まずは、JGPシリーズについて、男子、女子、ペア、アイスダンスのそれぞれのファイナル進出者の顔ぶれを見渡してのざっくりとした感想です。また、JGPシリーズのスタンディング(ポイントランキング)のリンクも張っておきますので、ご参考に。上から男子、女子、ペア、アイスダンスです。

Junior Grand Prix Standings Men
Junior Grand Prix Standings Ladies
Junior Grand Prix Standings Pairs
Junior Grand Prix Standings Ice Dance

*****

《男子シングル》


①金博洋(中国):30ポイント スロベニア大会優勝、日本大会優勝
②宇野昌磨(日本):28ポイント 日本大会2位、クロアチア大会優勝
③アレクサンドル・ペトロフ(ロシア):28ポイント スロベニア大会2位、エストニア大会優勝
④イ・ジュンヒョン(韓国):26ポイント フランス大会優勝、クロアチア大会3位
⑤山本草太(日本):26ポイント フランス大会2位、エストニア大会2位
⑥ローマン・サドフスキー(カナダ):24ポイント チェコ大会優勝、ドイツ大会4位
―――――
補欠⑦張鶴(中国):24ポイント エストニア大会3位、ドイツ大会2位
補欠⑧アレクサンドル・サマリン(ロシア):24ポイント フランス大会3位、チェコ大会2位
補欠⑨ドミトリー・アリエフ(ロシア):22ポイント スロベニア大会3位、日本大会3位




 男子のファイナル進出者の顔ぶれを見てまず思うのは、何といっても6人中4人がアジアの選手だということですね。3人というのは最近でも何度もありましたが、4人という多さはJGPの男子史上初めてです。
 なぜこうした史上初の状況が生まれたかと考えると、ひとつにはアメリカ勢が振るわなかったことが挙げられます。アメリカ勢は近年でもジュニア男子界を引っ張る存在でしたが、昨シーズンはかろうじてネイサン・チェン選手一人がファイナル進出、補欠の3人を含めてもアメリカ勢はチェン選手のみでした。
 そして、今季はそのチェン選手が1大会のみの出場ということ、ほかのアメリカの選手がなかなか成績を残せなかったということも相まって、6人中4人がアジア勢という結果に繋がったのかなと思います。また、アメリカ男子の層の厚さが落ちてきているということも言えるでしょうね。

 本題に戻ってファイナリストに注目しますと、やはり日本の選手がふたり進出しているというのが嬉しいですね。
 特に宇野昌磨選手は全体の2位、そして2大会で獲得した得点の合計だけで言えば、全体1位の金博洋選手を上回っています。JGPに参戦するのはこれで4シーズン目となる宇野選手ですが、意外にもファイナル進出は初めてなんですね。また、クロアチア大会では自身初となるJGPでの優勝も果たしていて、勢いに乗っています。
 その要因はやはりジャンプの安定感でしょうか。トリプルアクセルは2大会とも失敗してしまっているのですが、今季から取り入れている4トゥループは2大会で1本ずつ成功させていて、また他のジャンプに関しても転倒やパンクといった大きなミスがほとんど無く、昨季と比べても安定感をぐっと増しています。それに加えてほぼ全てのスピン、ステップでレベル4をきっちり取っていますし、表現力についても元々評価が高く、その上でミスの少ない演技を見せているので自然と演技構成点もアップしていて、全てが良い方向に動いているのだなあという印象を受けます。ファイナルまではまだ時間がありますが、この好調さをうまくファイナルに繋げてほしいなと思いますね。
 そして、もうひとりの日本選手、山本草太選手も初めてのファイナル進出、昨シーズンから一気にステップアップしています。山本選手に関してもやはり宇野選手と同じで、トリプルアクセルの成功率は低いのですが、ほかのジャンプをしっかり予定通り跳んでいるので、安定して成績を残すことができ、それがファイナルに繋がったのですね。彼は昨季のGPは1大会のみの出場なので、今季が初めての2大会参戦となったわけですが、それでこうして早速ファイナル進出とは凄いですね。宇野選手同様、楽しみにしています。

 全体の1位でファイナル進出を決めたのは中国の金博洋(ジン・ボヤン)選手。ファイナリストとなるのは実にこれで3度目で、昨年の覇者でもあるので、現在の男子ジュニア界をリードする存在として誰もが認める選手かと思います。特記すべきはやはりジャンプ能力の高さで、フリーでは4回転を3本組み込んでいます。ジャンプ構成の難しさだけで言うならシニア並みなわけで、驚異的な選手だなと思います。ただ、スピンではちょこちょこ取りこぼしもあったりして、採点表だけを見ると粗さのある選手なのかなという感じもしますね。ですが、当然ファイナル2連覇を狙ってくるでしょうから、日本勢の最大のライバル、壁となることは間違いなさそうです。
 もうひとりのアジア勢は韓国のイ・ジュンヒョン選手。韓国の男子選手として初めてのJGPファイナル進出という歴史を作りました。イ選手も上述した宇野選手同様にJGP参戦4シーズン目で、これまではなかなか表彰台に上がれず苦労していたようですが、それがようやくここで花開いたのかなという印象です。4回転は持っておらず3アクセルが最大の得点源ですが、これをそれなりにコンスタントに決めていて、ルッツは苦手なのかミスが多いものの、ほかのジャンプはある程度成功させているのがファイナルという形で結実したのだと思います。
 全体の3位はロシアのアレクサンドル・ペトロフ選手。まだ15歳ですが、すでに昨季のJGPファイナルに進出、世界ジュニア選手権でも4位という実力者です。そして、記憶に新しいのがJGP後に出場したフィンランディア杯とニース杯。どちらもシニアとして出場していますが、その中でそれぞれ銅メダル、優勝と結果を残していて、さらに勢いを増しているんじゃないかという気がしますね。
 全体の6位、ポイント的にもギリギリで進出となったのがカナダのローマン・サドフスキー選手。ドイツ大会で4位となってポイントでは中国の張鶴(ジャン・ヘ)選手やロシアのアレクサンドル・サマリン選手と並びましたが、チェコ大会の優勝が利いた形でファイナル進出をたぐり寄せました。

 というアジア勢の躍進が目立ちますが、補欠を見ても中国の選手が一人いて、日本だけでなくアジア全体でフィギュアがレベルアップしていくのは良い事だなと思いますし、楽しみですね。
 また、その下にはロシアの選手二人がいて、女子でのロシア旋風というのがよく言われますが、男子でも強化、育成の結果が如実に表れてきていますね。シニアの方ではロシアチャンピオンのマキシム・コフトゥン選手や世界ジュニア銀メダリストで今季からシニア参戦するアディアン・ピトキーエフ選手といった10代のスケーターが活躍を見込まれていますし、ロシアは女子だけでなく男子もどんどん層が厚くなりつつあるように思います。



《女子シングル》


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①セラフィマ・サハノヴィッチ(ロシア):30ポイント スロベニア大会優勝、日本大会優勝
②エフゲニア・メドベデワ(ロシア):30ポイント フランス大会優勝、チェコ大会優勝
③樋口新葉(日本):28ポイント チェコ大会2位、ドイツ大会優勝
④マリア・ソツコワ(ロシア):28ポイント エストニア大会2位、クロアチア大会優勝
⑤永井優香(日本):26ポイント スロベニア大会2位、日本大会2位
⑥中塩美悠(日本):24ポイント フランス大会4位、エストニア大会優勝
―――――
補欠⑦カレン・チェン(アメリカ):24ポイント チェコ大会3位、クロアチア大会2位
補欠⑧エリザヴェート・トゥルシンバエワ(カザフスタン):24ポイント 日本大会3位、ドイツ大会2位
補欠⑨新田谷凛(日本):22ポイント フランス大会2位、エストニア大会4位




 女子はロシア選手3人、日本選手3人という楽しみな面々となりました。特に日本選手が複数ファイナルに進出するのは08/09シーズンの村上佳菜子選手、藤澤亮子選手以来、そして3人進出というのはさらにさかのぼって、05/06シーズンの浅田舞さん、澤田亜紀さん、北村明子さんの時以来ですから(この時はファイナル進出者8人制です)、本当に久しぶりの快挙と言えます。
 女子シングルはシニア、ジュニア含め、ロシアの一強みたいな状況になりつつあるという印象で、日本女子は大きく後れを取っていると思っていましたが、こうして3選手がファイナルに進出というのを見ると、ちゃんとロシアに食らい付いているなという感じもしますね。現在シニア女子ではロシア勢の強さが群を抜いていますが、2018年の平昌五輪、その次の2022年というのを考えれば、今の日本のジュニア女子選手たちの頑張りがいずれはそこに繋がっていくんじゃないかと思います。

 ファイナリストとなった日本選手は、樋口新葉選手、永井優香選手、中塩美悠選手の3名。
 樋口選手は今シーズンからジュニアに移行し、JGPに参戦。2大会で2位、優勝とさっそく実力を発揮していますね。樋口選手が得意としているのは3ルッツ+3トゥループのコンビネーションジャンプですが、ほかに3フリップ+3トゥループも跳んでいます。フリップはエッジエラーになることが多く、その点でよくマイナスを取られていますが、他のジャンプはとても安定感があり、新人とは思えぬ落ち着きぶりですね。すでに日本女子ジュニアをリードする存在と言えるのではないでしょうか。
 永井選手はJGP参戦は3シーズン目。今までのJGPでは最高でも8位でしたが、3+3を始めとしたジャンプの安定感が高く、2大会とも2位となりました。永井選手も樋口選手同様、3ルッツ+3トゥループに加え、3トゥループ+3トゥループのコンビネーションも組み込んでいます。これまでの日本の女子選手はルッツが苦手な選手が多いという印象だったのですが、永井選手も樋口選手もルッツはきっちりとしたエッジで跳んでいて、どちらかというとフリップの方が苦手なんですね。それでも二人ともバランス良く5種類のトリプルジャンプをプログラムに組み込んでいて、ジャンプ技術がしっかりしているんですね。
 中塩選手はここ2シーズンはシニアの全日本選手権に出場するなどシニアとして活躍していましたが、今シーズン初めてJGPに参戦、フランス大会では4位でしたが、エストニア大会での優勝が活きて最後の枠に滑り込みました。中塩選手の持っている3+3のコンビネーションは3トゥループ+3トゥループで、ファイナルに進出した他の選手と比べると難易度は低いですが、安定感があって確実に跳んでいますね。また、スピンやステップでも大きく取りこぼすことがないので、その積み重ねがファイナルという好結果に繋がったのだと思いますね。

 日本勢と表彰台を争うことになるのがロシアの3選手、セラフィマ・サハノヴィッチ選手、エフゲニア・メドベデワ選手、マリア・ソツコワ選手です。
 中でも特に得点が図抜けているのがサハノヴィッチ選手。昨季のJGPファイナルと世界ジュニア選手権の銀メダリストです。自己ベストも190点台をマークしていて、ジュニアとしてもうすでに実力充分といった感じですすね。
 全体2位のエフゲニア・メドベデワ選手もサハノヴィッチ選手同様、昨季からJGPに参戦していて、ファイナルで銅メダル、世界ジュニアでも銅メダルを獲得しています。
 この二人の選手に特徴的なのが、ジャンプ構成の難度の高さ。何とふたりともフリーでは3+3を2つ組み込んでいます。その際の組み合わせも似ていて、サハノヴィッチ選手は3フリップ+3トゥループ、3サルコウ+3トゥループ+2トゥループ、メドベデワ選手は3フリップ+3トゥループ、3サルコウ+3トゥループという構成。旧採点法時代はフリーに3+3を2つ組み込む女子のトップ選手も複数いましたが、現在の採点方法になってからは一つ一つのジャンプが厳しくチェックされるため、なかなかそこまでリスクの高い構成に挑む選手はほぼ皆無になり、3+3と2アクセル+3トゥループとか、3+3と3+1+3とか、そういった工夫をする選手が多いですね。なので、サハノヴィッチ選手にしてもメドベデワ選手にしてもただただ凄いなと感嘆するばかりですし、レベルの高いことに挑戦する若い選手がいることは喜ばしいことだと思います。身体の軽いジュニアだからこそというのはあるでしょうが、できればシニアに上がってからも続けていってほしいなと願ってしまいますね。
 そして全体4位のマリア・ソツコワ選手は、JGPファイナル2013の金メダリスト。ですが、怪我の影響で世界ジュニア2014には出場できませんでした。ソツコワ選手はサハノヴィッチ選手、メドベデワ選手ほど難しいジャンプ構成ではありませんが、ルッツとフリップの跳び分けがきっちり出来ているのが良いですね。まだ回転不足のミスが結構あり、ファイナルで優勝、また表彰台を争うにあたっては、ちょっとの回転不足が鍵になるかもしれないのでその点が課題と言えそうです。

 日本VSロシアという構図がとても楽しみですが、選手たちにはのびのびと自分らしい演技を見せてほしいのであまりプレッシャーをかけるようなことを言ってはいけませんね。とはいえ、昨年のJGPファイナル女子はロシア勢が表彰台を独占しましたから、日本の選手がその中に割って入るようなことがあればいいなと少し期待もしてしまいます。なにはともあれ、これだけJGPファイナルで日本選手が見られるのは久しぶりなので、その事実だけでも嬉しく、楽しみが増しますね。



《ペア》


①ジュリアン・セガン、シャルリ・ビロドー組(カナダ):30ポイント チェコ大会優勝、ドイツ大会優勝
②マリア・ヴィガロワ、エゴール・ザクロエフ組(ロシア):30ポイント エストニア大会優勝、クロアチア大会優勝
③リーナ・フェードロワ、マキシム・ミロシキン組(ロシア):26ポイント チェコ大会2位、ドイツ大会2位
④カミラ・ガイネトディノワ、セルゲイ・アレクセーエフ(ロシア):24ポイント チェコ大会3位、エストニア大会2位
⑤ダリア・ベクレミシェワ、マキシム・ボブロフ組(ロシア):22ポイント ドイツ大会4位、クロアチア大会2位
⑥チェルシー・リュー、ブライアン・ジョンソン組(アメリカ):20ポイント ドイツ大会3位、クロアチア大会4位
―――――
補欠⑦アナスタシヤ・グバノワ、アレクセイ・シンツォフ(ロシア):20ポイント チェコ大会4位、エストニア大会3位
補欠⑧レナタ・オガネシアン、マーク・バーデイ(ウクライナ):18ポイント エストニア大会5位、クロアチア大会3位
補欠⑨古賀亜美、フランシス・ブードロー=オデ(日本):14ポイント エストニア大会4位、クロアチア大会6位




 ペアは見てお分かりのとおり、ファイナル進出6組のうち、4組がロシアです。昨年は6組中5組がロシアのペアでしたからそれよりは減りましたが、相変わらず凄いですね。
 ただ、北米勢もロシアに一人勝ちさせまいと頑張っていて、全体の1位で進出を決めたのはカナダのペアです。私はペアに疎いので知らなかったのですが、このセガン&ビロドー組の女性のジュリアン・セガン選手は女子シングルの選手としても活動しているんですね。女子シングルとしてはカナダ選手権でも最高で6位に入っていて、力のあるスケーターなようです。ペアは昨季から始めたばかりのようですが、着実に結果を出しているので、ペア選手としても適性があるんですね。
 全体2位のヴィガロワ&ザクロエフ組は昨季のJGPファイナルの銀メダリスト、世界ジュニア選手権の銅メダリストです。昨シーズンのロシア選手権ではすでに表彰台に上っていて、実力のあるペアです。
 全体3位のフェードロワ&ミロシキン組はJGPファイナル2013の銅メダリストですが、ロシア選手権で6位、ロシアジュニア選手権で4位と他のジュニアペアに後れを取ってしまい、世界ジュニアの代表になることはできませんでした。全体4位のガイネトディノワ&アレクセーエフ組もJGPファイナル2013で6位でしたが、現在のジュニアペア界の強豪はほぼロシアなわけですから、国内での競争がハード過ぎです。こういった点でも、ロシアのペアの層の厚さ、レベルの高さがうかがい知れますね。一方、全体5位のベクレミシェワ&ボブロフ組は今シーズン結成したばかりのペア。といってもほかのパートナーとのペア経験があるので、全くの新人というわけではないですね。
 アメリカのリュー&ジョンソン組も今季からのペアで、これからが期待されるペアですね。
 日本の古賀&ブードロー=オデ組は全体の9位で補欠となりました。順位的にはエストニア大会の方が上ですが、得点的にはクロアチア大会の方が10点近く積み上げているので、シーズンを追うごとに調子を上げているのでしょうね。



《アイスダンス》


①アンナ・ヤノフスカヤ、セルゲイ・モズゴフ組(ロシア):30ポイント エストニア大会優勝、クロアチア大会優勝
②マッケンジー・ベント、ギャレット・マッキーン組(カナダ):チェコ大会優勝、エストニア大会2位
③ベティナ・ポポワ、ユーリ・ブラセンコ組(ロシア):28ポイント チェコ大会2位、ドイツ大会優勝
④アッラ・ロボダ、パヴェル・ドロースト組(ロシア):28ポイント フランス大会優勝、日本大会2位
⑤マドレーヌ・エドワーズ、ジャオ・カイ・パン組(カナダ):28ポイント フランス大会2位、日本大会優勝
⑥ダリア・モロゾワ、ミハイル・ジルノフ組(ロシア):24ポイント スロベニア大会優勝、クロアチア大会4位
―――――
補欠⑦レイチェル・パーソンズ、マイケル・パーソンズ組(アメリカ):24ポイント 日本大会3位、クロアチア大会2位
補欠⑧ロレーヌ・マクナマラ、クイン・カーペンター組(アメリカ):24ポイント チェコ大会3位、ドイツ大会2位
補欠⑨ブリアナ・デルマエストロ、ティモシー・ラム組(カナダ):24ポイント スロベニア大会2位、ドイツ大会3位



 アイスダンスでもロシア勢の強さは目立っていて、6組中4組がロシアのカップルです。そこにカナダのカップル2組が割って入る構図ですね。
 全体1位のヤノフスカヤ&モズゴフ組はJGPファイナル2013の覇者であり、世界ジュニア2014の銀メダリスト。JGPには11/12シーズンから参戦していて、表彰台経験も豊富なのでジュニア界のベテランと言えます。ポポワ&ブラセンコ組は昨季のJGPファイナルで4位、ロボダ&ドロースト組とモロゾワ&ジルノフ組は両カップルとも昨季のJGPで2大会とも表彰台に上っています。もちろんパーソナルベストなどレベルの差はある程度ありますが、ロシアのジュニアアイスダンス界全体の充実ぶりというのを感じさせます。
 一方、カナダのベント&マッキーン組はこれまでJGPでの優勝経験はあったものの、世界ジュニア2014では12位となるなど、多少成績に波がありました。しかし、今季はJGPで優勝&2位と安定して結果を出していて、今までとは違う活躍を見せています。全体5位のエドワーズ&パン組はJGPファイナルの出場経験こそないものの、昨季の世界ジュニアでは銅メダルを獲得しています。ロシアも層が厚いですが、カナダもそれに負けないくらいの実力者揃いと言えますね。



 さて、ここまでJGPシリーズ14/15について、男子、女子、ペア、アイスダンス別に見てきましたが、どこを見てもやはり目につくのはロシア勢ですね。4種目全てで存在感を発揮しています。昨年のJGPファイナルでは全種目合わせてロシア勢が計7個のメダルを獲得しました。今年も昨年の再現となるのか、それとも北米勢、また日本勢、アジア勢がロシアの勢いを押し留めるのか、注目です。
 JGPファイナルはシニアのGPファイナルと同時開催、12月にスペインのバルセロナで行われます。


:記事冒頭のジュニア男子の写真は、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、ジュニア女子の写真は、フィギュアスケート情報ウェブサイト「icenetwork」が2014年9月6日に配信した記事「Dazzling free skate propels Medvedeva to gold」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
ジュニアグランプリファイナル2014について 2014年12月26日
世界ジュニア選手権2015について 2015年3月23日
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by hitsujigusa | 2014-10-27 00:28 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 2014年10月14日、高橋大輔選手が現役引退を発表、それに伴う記者会見を行いました。

◆◆◆◆◆

フィギュア:新たな「夢」追う…引退の高橋

 飾らない人柄が言葉の端々ににじみ、温かな雰囲気に包まれた「引退会見」となった。フィギュアスケート男子の高橋大輔(関大大学院)が14日、出身地の岡山県内で出席した地元財団の表彰式で引退を表明し、その後に開いた記者会見で理由を語った。休養を宣言してから半年。唐突にも映るこの時期での引退表明には、新たな「夢」を追う決意が込められていた。

 集大成にするはずだった2月のソチ五輪はケガの影響で6位。日本で開かれた3月の世界選手権も欠場し、「自分の中の区切りが付いていなかった」と引退を先送り。休養という熟考に入った。

 だが、2018年平昌冬季五輪を目指す4年間を、精神的に相当厳しいと判断した。「悩んでいてもモヤモヤする自分がいるだけ。線を引きたい」。決断したのは9月中旬。現役か引退かで揺れていた心のてんびんは、大きく引退へと傾いた。

 スケート漬けの日々から、20年間の競技生活を、「強引に自分の思いを通すのではなく、(多くを)受け入れて流れのままに生きていこうというスタンス。目標が次から次に出てきたので、(自分で)目標を定めようと考えたこともなかった」と振り返った。今後の人生のかじ取りを自らに委ねられ、「戸惑っている」と打ち明ける。「今、一番欲しいものは『夢』」。今後はダンスなどにも取り組み、将来スケートに関わっていくかどうかも考えながら過ごしたいと言う。引退は、新たな人生の旅立ちにもなった。

 競技生活で最も印象的な場面として、日本男子のフィギュア選手で初めて立ったバンクーバー五輪の表彰台を挙げた。「旗が揚がっていく表彰台の景色は鮮明に覚えている」。ケガとも闘いながら、頂点に挑み続けた日々。卓越した演技力で数々の金字塔を打ち立てた日本のエースは、人々に鮮烈な記憶を残しながら勝負の銀盤を去った。


毎日新聞 2014年10月14日 21:50

◆◆◆◆◆

 2月のソチ五輪の後、負傷の影響もあって出場予定だった3月の世界選手権を欠場、その後は休養して今後のことを考えると表明していた高橋選手。しかし、本格的にフィギュアスケートシーズンが始まる前の10月中旬、急遽の引退発表となりました。
 最初にこのニュースを聞いた時、現役引退という決断自体に驚きは無かったものの、ゆっくり考えるとしていたにもかかわらず、この時期に発表することにしたのは何故なんだろうという疑問をまず感じました。
 その理由について高橋選手はこう心境を打ち明けました。


 一番の理由は、気持ちとしてはソチ五輪でひとつの区切りだというふうに思っていたんですけれど、世界選手権までは決まったら出ようと思っていたので、自分の中でも区切りがついていなかったんです。今、自分の中でも次に目標ができたわけでもないですし、これから先、考えていきたいなと思っていますし。ただ、性格的なことなのかも分からないですが、自分の中で少しすっきりしたいなと。そうしないと少し休養ということで、少しでも気持ちを残しておくと、どうも次に進みにくいなというのを常々感じていた自分がいるなと。1年考えてそれで言おうと思っていたんですけれど、シニアの試合が始まる前にやっぱり言おうと。

 自分の中で決めたのは早かったので、大きな理由というのは、今後のことをしゃべっていくうちに自分の中で「あ、やっぱり引退しよう」というのが大きくて。決めたのは9月の半ばなので、すごく最近です。多分、どっかに(引退という気持ちが)あったのかなとは思います。ただ、8月までは何だかんだ、アイスショーがあったりすごく忙しい中で生活していて、それがふとなくなった時に、その気持ちが大きくなったのかなと思います。
(スポーツナビ「「いいことも悪いこともいい思い出」高橋大輔 引退会見一問一答」 2014年10月14日 21:55)


 フィギュアスケート界ではオリンピックや世界選手権など、大きな大会を終えた後に休養に入り、そのまま1、2シーズン進退を保留にして休養し続ける選手も多くいます。そうしてじっくり時間をかけて判断するという手もあるわけです。でも、結論を先延ばしにすることで前に進めない、きっぱり引退という形を取ることで区切りをつけよう、というのがとても高橋選手らしいなと感じました。
 その一方で、現役に未練がある、チャンスが全くなくなったわけではない、とも話していて、一度引退とした上で今後のことを考えていくようです。本当は高橋選手自身、こんなふうに大々的な引退発表をする予定はなくて、先に報道が出てしまったがために華々しい記者会見を開くことになりましたが、引退について「サラッと言いたかった」ともおっしゃっていて、ここまで大々的に「引退」となってしまうともし現役復帰したいとなってもしにくくなってしまうのかなとも思います。ですが、高橋選手の気持ちのままに、復帰したくなったら誰に遠慮もなくいつでも復帰してほしいですね。

 そんな復帰の可能性も残ってはいるので、高橋選手の競技者としてのキャリアがこれで全て終了したかのように書いてしまっていいものなのかどうか分からないのですが、それでもここでひとつの区切りをつけたということで、ひとつの時代が終わったんだなという感慨も感じます。
 高橋大輔という選手の姿を思い浮かべる時、最も印象に残るのは自信なさげな表情や言葉です。日本フィギュアスケート界を引っ張るエースであると誰もが認める存在にもかかわらず、高橋選手自身はそういった雰囲気はおくびにも出さず、卑下し過ぎなんじゃないかとこちらが感じるくらいいつも謙虚でした。そしてそれは、単に表面的にそう取り繕っているというのではなく、性格的に自信満々にはなれないタイプの人なのだろうなと思います。
 たとえば、ロシアのエフゲニー・プルシェンコ選手やカナダのパトリック・チャン選手、そして羽生結弦選手などは、エースとして自信をみなぎらせているタイプの選手です。実際に心の内も自信満々かどうかはさておき、自信を匂わせる発言、振る舞いをすることによって自らを奮い立たせているように思います。
 でも、高橋選手はそうしたことはほとんど無く、いつもどことなく自信なさげで、“エース”という言葉から想像される自信に満ち溢れたイメージとは重ならない選手でした。もちろん実力も実績もエースと呼んで申し分なく、女子と比べてマイナーだった男子の道を切り開き、日本男子全体のレベルを上げた功労者と言えますが、高橋選手本人はそんな他者の評価などどこ吹く風、ある意味エースらしからぬ“高橋大輔らしさ”というのを、日本のエースになってからの10年近く、ずっと変わらず持ち続けてきたような気がします。
 また、アスリートとしても高橋選手は決して器用な選手ではなかったのではないかとも感じます。高橋選手に関して、こんなエピソードがあります。


 スケート人気を高橋がけん引するかたわら、次世代の羽生結弦(ANA)もめきめきと力を伸ばしてきた。12年全日本選手権では、羽生に越されての2位。若手の勢いに、気持ちで押された。
「僕もあれくらい鼻息が荒かったらなあ。“勝ってやる”とか思えたら若いころから成績を出していたのかも」。悔しさよりも、苦笑いが先に漏れた。
(スポーツナビ「最後まで心優しかった天性のスケーター高橋大輔、“3人の母”と迎えた引退」2014年10月15日 11:36)


 アスリートというのは直接的であれ間接的であれ、他人と競い合う宿命にあるわけですから、時には誰にも負けない、自分が世界で一番だという気の強さが必要とされるでしょう。ですが、高橋選手の言動を思い返してみても、やはり勝利に執着する、燃えたぎるという印象は少なく、もちろん負けず嫌いさはあったと思いますが、そんな気の強さよりも気の優しさの方が心に残ります。
 上述した高橋選手の言葉にもあるように、気の強い性格ならばより早く成績は出ていたかもしれませんし、その方がアスリートとしては器用でただただ上を見て一気に勝ち進めたかもしれません。でも、そうじゃない高橋選手だからこそ、表現者として唯一無二の“高橋大輔”が生まれたんじゃないかとも思います。
 高橋選手よりそつなく、一分の隙もなく、演技を完璧にこなせるスケーターは他にもいます。ですが、高橋選手以上に心や魂を感じさせてくれるスケーターはいません。誰よりも人間くさく、熱や匂いまでも伝わってきそうな演技。それができたのは、高橋選手の心の優しさゆえだったと思いますし、スケーターである以前に、人間“高橋大輔”の心が表れた演技の数々だったように感じます。

 高橋選手がこれからどんな道を歩むのか分かりませんが、どんな道を歩んだとしても、それが高橋選手にとって幸福に繋がる道であるよう、祈っています。高橋大輔選手、今まで長い間お疲れさまでした。そして、素晴らしい演技をたくさん見せて頂き、ありがとうございました。


:記事冒頭の写真は、スポーツナビが2014年10月15日の11:36に配信した記事「最後まで心優しかった天性のスケーター高橋大輔、“3人の母”と迎えた引退」から引用させていただきました。
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by hitsujigusa | 2014-10-20 17:50 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 去る10月4日、さいたまにてジャパンオープン2014が開催されました。この記事ではそのジャパンオープンについて取り上げるとともに、グランプリシリーズの行方を占う前哨戦となる9月から10月にかけて行われた国際大会についても書いていきたいと思います。


《ジャパンオープン2014》

 10月4日に行われたジャパンオープンは日本、北米、欧州の3チームに分かれて順位を争う団体戦。各チーム男女2名ずつによって構成され、フリー演技のみを行い、各選手のスコアの総計で順位を決します。
 その結果、551.95点で欧州チームが優勝、2位が522.09点の北米チーム、日本チームは512.24点で3位となりました。

Kinoshita Group Cup Japan Open 2014 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 ここからは各チームごとにざっくりと感想を書いていきます。


●日本チーム

 日本チームは残念ながら3連覇を逃す結果となりました。出場したのは小塚崇彦選手、無良崇人選手、村上佳菜子選手、宮原知子選手の4人。良い滑り出しとなった選手、そうでない選手と、はっきりと明暗が分かれてしまいましたね。
 最も良かったのは、チーム最年少の宮原知子選手。女子選手6人中、2位で、また、公式スコアでないものの、131.94点という自己ベストをマークしました。全てのエレメンツで加点が付き、ひとつもミスといえるミスが無いというのが素晴らしかったですね。特にジャンプは安定感抜群で、大技の3ルッツ+3トゥループ、後半に組み込んだ2アクセル+3トゥループなど、難しいコンビネーションジャンプも完璧でした。プログラムは「ミス・サイゴン」ということで、アジアンな雰囲気漂う音楽の世界観を繊細に、丁寧に演じていましたね。これくらいの演技がグランプリシリーズの2大会でもできれば、宮原選手が目標として掲げるファイナル進出も見えてくるでしょうし、さらにその先にも大きく道が開けてくるのではないかと思います。でも、まだシーズンは始まったばかりですから、ゆっくりじっくりと、気持ちを高めていってほしいですね。
 村上佳菜子選手は114.38点で4位でした。プログラムの前半は好調な滑り出しで、苦手としている2アクセルからのコンビネーションジャンプも見事に決まり、安定していました。ただ、後半は3フリップがシングルになったり、軽微な回転不足を取られたりと、少し失速気味になりましたね。その分、満足のいく演技とはなりませんでしたが、村上選手自身も大会後のコメントでおっしゃっていたように、昨季のジャパンオープンと比べればだいぶ良かったですし、初戦としてはまずまずの出来だったと思います。焦らずマイペースに、課題を修正していってほしいですね。
 無良崇人選手は、男子の3位、146.41点でした。フリーには2本の4トゥループを組み込んでいて、1本目は完璧に決まりましたが、2本目は乱れ、コンビネーションにできませんでした。後半にも小さなミスがありましたが、得意としている3アクセルは2本とも素晴らしく、ジャンプ全体を見れば安定している方だったと思います。プログラムは「オペラ座の怪人」でしたが、正統派のファントムという感じでしたね。まだ、演技全体としては迫力に欠けるかなとも感じましたが、これからどんどん磨かれていくとより力強いファントムになっていくでしょうし、楽しみです。
 小塚崇彦選手は、本人いわく“スケート人生最悪の出来”で、得点は119.51点で6位。2本の4回転、3アクセルを含め、ほとんどのジャンプが何か噛み合っていない感じで、大崩れしてしまいましたね。シーズン初戦とはいえここまで崩れてしまうのはとても珍しいことなので、ちょっと心配もあるのですが、逆にこれがGPシリーズじゃなくて良かったという見方もできると思うので、気持ちを切り替えて次戦に臨めるといいなと願っています。


●欧州チーム

 欧州チームで最も良い演技をしたと言えるのは、やはり女子で1位、136.46点の高得点を叩き出したロシアのエレーナ・ラディオノワ選手ですね。3ルッツ+3トゥループ、3+1+3などを含む難しいジャンプ構成を難なくこなし、また、柔軟性を生かしたスピンでもきっちり全てレベル4を取っていて、隙のない演技を披露しました。プログラムもラフマニノフを使ったもので、昨季と比べるとぐっと大人っぽいプログラムになったわけですが、変に違和感も無く彼女によく合っていましたね。
 同じくロシアのアンナ・ポゴリラヤ選手は、出場を取りやめたユリア・リプニツカヤ選手に代わっての急遽の出場となりました。が、122.52点で3位と、安定した演技を見せてくれました。3フリップでエッジエラーを取られたり、2アクセルがシングルになったりと、細かなミスはありましたが、全体的には落ち着いて見ていられましたね。
 スペインのハビエル・フェルナンデス選手は155.47点で男子の2位。本来は4回転を3つ入れる構成でしたが、実際に成功させたのは1本。また、ほかのジャンプでもちょこちょこミスが散見され、同じ種類のジャンプの繰り返しで1つがノーカウントになるなど、精彩を欠きました。スピンでも取りこぼしが多くあり、まだ少し仕上がりには時間がかかるのかなと感じました。
 昨季をもって引退したチェコのトマシュ・ベルネルさんはプロスケーターとして参加、137.50点で4位でした。引退したとはいってもついこのあいだまで現役だったので、しかも大会の会場が現役最後の試合となった世界選手権2014が行われたのと同じさいたまスーパーアリーナとあって、なんだか不思議な感じがしましたね。


●北米チーム

 チームをリードしたのは今シーズンの休養を表明しているカナダのパトリック・チャン選手。178.17点という他選手を圧倒するスコアで1位となりました。ジャンプ的には休養中ということもあってか、4回転は1本のみという難度を抑えた構成でしたが、その分全体のバランスに優れていて、プログラムの世界に浸れましたね。もちろん、本気の競技会のピリピリした緊張感や結果を求められる場面ではないので、そういった場での演技とは比べるべくもないのですが、良い意味で力が抜けていてナチュラルな演技だなと感じました。音楽はショパンセレクションで、このために作ったんですかね。この大会だけだともったいないような、真剣な試合でも見てみたいなと思いますね。
 ジャパンオープンではおなじみとなっているカナダのジェフリー・バトルさんは、136.08点で5位。ジャンプでは複数ミスが出てしまいましたが、決まったジャンプは現役時代と変わらず美しく、スケーティングも現役選手を凌駕するものがあって、素敵でした。
 アメリカの長洲未来選手は、106.85点で5位となりました。ジャンプ構成は久しぶりに3+3を組み込み、2アクセル+3トゥループも跳ぶなど、意欲的な内容。そのほかにも、転倒してしまったものの長らく構成から外していた3サルコウも取り入れていて、攻めていましたね。大きなミスといえるのは3サルコウくらいで、全体的にまとまった演技となり、長洲選手自身も小さくガッツポーズをするなど手ごたえを得ていたようでした。ただ、得点はあまり伸びず、長洲選手はキス&クライで何度も「Why?」と口にしていました。確かに、演技の印象と実際の得点が乖離していて、もう少し得点が出ても良かったのではないかと感じました。3サルコウはともかく、きれいに決まったように見えたコンビネーションジャンプでも細かな回転不足を取られていて、あとはスピンのレベルの取りこぼしなどが響いた形ですね。ただ、演技そのものの完成度はこの時期としては高いですし、ジャッジの評価にはがっかりさせられたでしょうが、こういった取り組みを続けていけば評価もちゃんと高まっていくと思うので、気持ちを取り直して頑張ってほしいですね。
 アメリカのアシュリー・ワグナー選手は、100.99点で6人中最下位となってしまいました。転倒を連発するとかジャンプが抜けまくるとか、分かりやすい失敗が重なったわけではないのですが、アンダーローテーションが多く、スピンもレベル2ばかりということで、ワグナー選手らしくない演技でしたね。彼女らしいエネルギッシュさや勢いもあまり感じられず、集中しきれなかったのかなという感じもしました。ですが、ベテランですからGPシリーズにはきっちり合わせてくるだろうと思います。



《ネーベルホルン杯》

 9月24日から27日にかけてドイツのオーベルストドルフにて行われたネーベルホルン杯。グランプリシリーズに出場する選手も多く参加しました。

Nebelhorn Trophy 2014 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 男子を制したのは昨季ブレイクしたアメリカのジェイソン・ブラウン選手。パーソナルベストに近いスコアでの優勝となりましたが、フリーでは細かなミスが複数あったようですね。2位に入ったチェコのミハル・ブレジナ選手は、ショート、フリーともに4回転でのミスがあり、あまり点が伸びませんでした。3位のロシアのベテラン、コンスタンティン・メンショフ選手は、ショートでもフリーでも4回転を1本ずつ成功させましたが、そのほかのジャンプでミスが見られ、得点を積み重ねることができませんでした。
 日本勢で唯一出場した日野龍樹選手は10位となりました。ショートは2度の転倒があり、12位発進。フリーは冒頭の4回転で転倒し、その後は立て直したものの、終盤の3フリップやスピンのレベルの取りこぼしなどミスが響き、大きく順位を上げることはできませんでした。本来はもっとポテンシャルの高い選手だと思うので、それが出せなかったのは残念ですが、シーズンは始まったばかりですから、この経験を次の試合の糧にしていってほしいなと思います。


 女子ではロシアのエリザベータ・トゥクタミシェワ選手が優勝。得点も190点台とさることながら、内容的にも大きなミスはなく、好調なスタートでしたね。2位は同じくロシアのアリョーナ・レオノワ選手で、こちらも全体的にまとまりのある演技でトータル186.71点を獲得。2012年の世界選手権の時にマークした自己ベストを上回る、新自己ベストとなりました。3位はアメリカ女王、グレイシー・ゴールド選手。実力を発揮できれば優勝に最も近いと思われましたが、ショート、フリーともに本来持っている3+3を成功させることができず、3位となりました。


 ペアでは2シーズンぶりの実戦復帰となったロシアの川口悠子、アレクサンドル・スミルノフ組が優勝。ショートはマイナス要素の無いほぼ完璧な演技、フリーではジャンプでミスが複数ありましたが、それでも2位を大きく引き離す高得点でショート、フリー両方で1位の、完全優勝を果たしました。久しぶりの競技会でしたが、こうしてちゃんと合わせてくるところはさすが経験豊富なベテランペアらしいなと感じましたし、グランプリシリーズがさらに楽しみになりましたね。2位は同じくロシアのエフゲニア・タラソワ、ウラジミール・モロゾフ組。こちらもショートで予定どおりの演技をこなし2位発進、フリーではいくつかミスがあったものの、ショートのアドバンテージを守り切りました。3位のアメリカのアレクサ・シメカ、クリス・クニーリム組は、ショートから複数ミスが出てしまい、自己ベストからは遠い得点となりました。
 ペア結成2シーズン目となる日本の高橋成美、木原龍一組は、134.59点で7位となりました。ショートでもフリーでもジャンプにミスがあり、得点を伸ばせませんでしたが、フリーでは2本のスロージャンプが2本とも決まっていて、良いところも表れたのかなと思います。次はスケートカナダオータムクラシックに出場する2人。1戦1戦、じっくりと取り組んでいってほしいですね。


 アイスダンスは、世界選手権2014の銀メダリストであるカナダのケイトリン・ウィーバー、アンドリュー・ポジェ組が優勝。優勝はしましたが、スコア的にはパーソナルベストまでまだ10点ほどあるので、これからに期待ですね。2位はこちらも実力者のアメリカのマディソン・チョック、エヴァン・ベイツ組。ショートはレベルの取りこぼしがあり2位に甘んじましたが、フリーは盛り返して自己ベストとなる100.93点をマーク。僅差での2位となりました。3位はドイツのネッリ・ジガンシナ、アレクサンダー・ガジー組。フリーではツイズルでのミスがありましたが、ショートからの点差を活かして表彰台を守りました。



《フィンランディア杯》

 フィンランディア杯は10月9日から12日にかけて行われました。当初のエントリーでは羽生結弦選手も出場する予定となっていましたが、腰痛のため欠場することとなりました。

Finlandia Trophy Espoo 2014 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 男子はロシアのセルゲイ・ボロノフ選手が優勝。SPでは4回転が入らなかったものの、フリーでは1本をきっちりと成功させ、ミスの少ない演技を見せました。ただ、今季から導入された、同種類のダブルジャンプは3回以上跳んではならないという新しいルールに引っ掛かり、3連続コンビネーションジャンプが丸々ノーカウントになってしまったため、思った以上に点が伸びなかったのはもったいないところでした。新ルールの怖さを思い知らされましたね。2位となったアメリカのアダム・リッポン選手は、ショートで大きなミスが2つあり出遅れましたが、フリーでは挽回し、演技直後は納得の表情。ただ、フリーは4回転が入っていなかったので、今後そのあたりをどうしていくかという戦略的部分が気になりますね。3位はロシアのアレクサンドル・ペトロフ選手。現在は主にジュニア選手として活躍していて、今季もジュニアGPファイナルへの進出がすでに決まっています。そのため、ジュニアより演技時間が長くなるフリーの後半はさすがに疲労の度合いが濃く、ジュニアらしさが所々に見られましたが、それでもショート、フリーともに大きなミスなく終えていて、自己ベストにきわめて近い得点をマーク。ジュニア界のトップスケーターとしての実力を見せつけました。


 女子では、ネーベルホルン杯に続きエリザベータ・トゥクタミシェワ選手が大差をつけて優勝。得点は193.31点で、高得点だったネーベルホルン杯からまた上げてきたというのが凄いところですが、演技内容を見てもやはり安定していて圧倒させられる滑りでした。11/12シーズンにシニアデビューし、GP2大会優勝という華々しいデビューを飾ったトゥクタミシェワ選手ですが、その後はシーズンを追うごとに成績が下降、ジャンプも安定感を欠くように。その主な原因と考えられるのが身体の成長ですが、身長が伸び、華奢だった体型も徐々に女性らしくふくよかなものになっていったことが大きく影響したものと思われます。しかし、現在の彼女はぐっと身体が締まり、シニアデビューした頃に近くなっています。そのおかげか、演技中の動きも昨季と比べてずっとキレキレで、ジャンプにもシャープさが戻ってきています。トゥクタミシェワ選手が彼女らしい輝きを取り戻し、力が拮抗している女子フィギュア界を掻き回す存在になってくれれば、14/15シーズンの女子フィギュアがさらにおもしろいことになるんじゃないかという気がします。ただでさえロシア勢が中心となることが予想されている中で、トゥクタミシェワ選手が復活すれば日本勢にとっては更なる脅威ですが、誰が今季の主役に躍り出るのか、先の読めなさは楽しみでもありますね。
 2位はアメリカのサマンサ・シザリオ選手。SPはジャンプとスピンでミスが出て5位と出遅れましたが、フリーではミスを最小限に抑えた演技で立て直し、表彰台に上がりました。気になったのはスピンで、レベル2とか3ばかりなので、その点は今後の課題になってくるでしょうね。
 3位に入ったのは日本の本郷理華選手。ショート、フリーともに致命的なミスというのはなく、ある程度まとまっていたのが良かったですね。細かなミスは複数ありましたが、さほど深刻なものではないと思うので、次に向けてまた頑張ってほしいです。そんな本郷選手、当初はGPシリーズ1大会のみの出場でしたが、ほかの選手の出場取りやめなどによって、ロステレコム杯の出場も追加されました。2大会も本郷選手が見られるというのは嬉しいですし、チャンスが回ってきたわけなのでぜひ活かしてほしいとは思いますが、あまりGPということは意識せず、これまでの大会と同じように臨めることを祈っています。


 アイスダンスを制したのはロシアのアレクサンドラ・ステパノワ、イワン・ブキン組。シニア2年目となる若いカップルですが、フリーとトータルで自己ベストを更新しました。2位はドイツのネッリ・ジガンシナ、アレクサンダー・ガジー組で、ネーベルホルン杯に続いての表彰台。ツイズルやステップでミスがあり、得点的にはネーベルホルン杯より下げる結果となりました。3位となったのはアメリカのアナスタシア・カヌーシオ、コリン・マクマヌス組。こちらもフリーとトータルでパーソナルベストをマークしています。



 さて、いよいよGPシリーズ初戦、スケートアメリカが来週末に迫り、カウントダウンが始まっているような感覚ですね。ジャパンオープン、そしてその他の国際大会もどんどん消化されていき、出場した選手たちはそれぞれのスタートを切っています。それがどのようにGPシリーズ、ひいてはその先に繋がっていくのか……。シーズン始めの国際大会には、GPとはまた違った見方、楽しみがあるなと改めて感じました。では、また。


:記事冒頭の写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
ISUグランプリシリーズ14/15、エントリー発表 2014年6月30日
ジャパンオープン2014、出場選手を発表 2014年8月18日
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by hitsujigusa | 2014-10-16 03:12 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 新プログラム続報シリーズ、その⑥です。今回はタイトルにもあるように、町田樹選手の新プログラム情報に始まり、ほかの日本選手、そして海外選手の情報についてもざっくりとですがまとめていきたいと思います。
 そして、主だったトップスケーターの新プログラム情報もこれまでのシリーズ記事で大方紹介し終え、10月にも入ってGPシリーズの開幕も迫っているということで、14/15シーズンの新プログラム続報シリーズは今回のその⑥で終了とさせていただきたいと思います。記事のラストには、シリーズ記事で取り上げたスケーターの新プログラムをまとめた一覧表を付けますので、ぜひご参考になさって下さい。


 10月5日、東京都内でグランプリシリーズに出場する日本選手たちの記者会見が行われ、その際に町田樹選手の今季のプログラムについても発表がありました。ショートプログラムは「ヴァイオリンと管弦楽のための幻想曲」、フリーはベートーヴェンの「交響曲第9番」だそうです。

◆◆◆◆◆

 ショートプログラム(SP)の楽曲はナイジェル・ヘス作曲の「ヴァイオリンと管弦楽のための幻想曲」、フリースケーティング(FS)にはベートーベン作曲の「第九交響曲」をそれぞれ選曲した。

 町田の今季のテーマは「極北」。一般的には「北の果て」や「極限」などを意味する言葉だが、「たくさんの解釈ができると思うんですけど、僕がここで具体的に述べることはしません」と真意は語らなかった。しかし、「SPが“悲恋の極北”、FSが“シンフォニックスケーティングの極北”と銘打って今シーズン頑張っていきたいと思います」と、演技でその思いを表現するつもりだ。


スポーツナビ 2014年10月5日 15:32 抜粋

◆◆◆◆◆

 SPは「ヴァイオリンと管弦楽のための幻想曲」とのことですが、これは以前浅田真央選手が演じた「ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジア」と同じ曲ですね。イギリス映画『ラヴェンダーの咲く庭で』の劇中曲で、ヴァイオリンの優雅かつ繊細な旋律が切なく、印象深い楽曲です。昨シーズン、ショートで演じた「エデンの東」とはまた違い、ストーリーがないぶん、より音そのものをとらえて表現するタイプのプログラムになるでしょうが、多彩な表現力を持つ町田選手なら、この音楽もしっかり自分のものにして見事に演じてくれることと思います。
 フリーはベートーヴェンの「交響曲第9番」、いわゆる「第9」です。この選曲は意外というかかなりビックリでした。ベートーヴェン自体がフィギュア界ではあまり使われることのない作曲家ですが、その中でも「第9」となるとこれをどうスケートで表現するのだろうと想像がつきませんね。フィギュアというのは基本的にはダンス、舞踏という感じですから、交響曲である「第9」で滑るのはそう容易いことではないと思いますが、あえてそういう音楽に挑戦するのが町田選手らしいですね。
 昨季とはガラッとイメージの変わったプログラム。町田選手のさらなる進化、成長が見られるのだと思うと、今からワクワクします。初お披露目はGPシリーズ初戦、スケートアメリカです。


 また、この会見の前日に行われたジャパンオープンでは、小塚崇彦選手がフリープログラムを初披露。SPはアイスショー「THE ICE」ですでにお披露目ずみの「A Evaristo Carriego」、フリーは「Io Ci Saro」です。
 ショートはエドゥアルド・ロビーラ作曲のタンゴ。タンゴというのは小塚選手史上初めてですかね。そう考えると意外な気もしますし、確かにタンゴのイメージは小塚選手には無いなとも思います。どちらかというとクールで飄々とした印象の濃いスケーターなので、シンプルなクラシックだったりジャズだったり、熱量の低い感じの音楽が合うのですね。そんな小塚選手が演じるタンゴ、新たな化学反応に期待です。
 フリーはイタリアのテノール歌手、アンドレア・ボチェッリさんの楽曲。歌詞入りが初めてというのはもちろんですが、雰囲気的にもこういった音楽は今までの小塚選手にない選曲だと思うので、とても楽しみです。ジャパンオープンは残念な内容、結果になってしまいましたが、GPシリーズではまた新しい気持ちで臨んでほしいですね。


 一方、同じくジャパンオープンに出場した村上佳菜子選手も、これまで発表されていなかったSPも含め、今季のプログラムの包括的なテーマを記者会見にて発表。フリーはすでに発表されていたとおり「オペラ座の怪人」でしたが、今回ショートも「オペラ座の怪人」であることが判明しました。
 会見で村上選手が掲げたテーマは「SP+FS=Phantom of the opera」。ショートとフリーふたつでひとつの「オペラ座の怪人」を完成させるという意味合いのようですね。このようにSPとフリーで同じ音楽やサントラを使用するというのは珍しいですが、カザフスタンのデニス・テン選手が12/13シーズンにSP、フリーともに映画『アーティスト』のサントラを使用した例があります。同じ映画の音楽を使うわけですから、似たような印象になってしまうリスクもありますが、テン選手は映画のイメージを用いながらも巧くそれをショートとフリーで演じ分けていて、それまでにない斬新なプログラムの在り方というのを示しました。
 村上選手の場合も同様にSP、フリーでの印象の違いを目指すことになるのだと思いますが、ショートではヒロインであるクリスティーヌ、フリーではファントムを演じるということで、その点では演じ分けやすいかもしれませんね。いかに全然違うキャラクターの雰囲気、イメージを表現するかというところがポイントになりそうです。村上選手の思い切ったチャレンジを楽しみにしたいと思います。


 ここからは海外選手です。
 まずは上でも言及したカザフスタンのデニス・テン選手。

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 SPは「Caruso」、フリーは「アルバム『New Impossibilties』より」です。
 ショートはイタリアのポピュラーソング。1986年にイタリアの歌手ルーチョ・ダッラさんが発表し、その後も多くの歌手によってカバーされてきた名曲です。イタリアのポップスという選曲はテン選手らしからぬと言ったらあれですけど、新鮮な感じがしますね。テン選手は比較的オーソドックスというか、正統派な雰囲気が魅力のスケーターだったので、そういった点からはちょっと外れた新しい試みだなという気がします。
 一方のフリーはチェロ奏者のヨーヨー・マさんがザ・シルクロード・アンサンブルというグループと組んで作ったアルバムを使用。ザ・シルクロード・アンサンブルはさまざまな国出身のミュージシャンが参加していて、ピアノやヴィオラといったおなじみの楽器の奏者だけではなく、尺八や笙、カヤグム、タール、タブラ、ウードなどの民族的な楽器も含め、多種多様な楽器によって構成されるワールドミュージックグループです。私はこのアルバムを聴いたことはないのですが、どういうグループかというのを調べるだけでもとてもユーラシア的、大陸的な印象で、カザフスタン出身のテン選手によく合いそうだなと感じますね。テン選手だからこそ、表現できるものがありそうだなと思います。


 フィンランドのキーラ・コルピ選手に関してもプログラム情報が入ってきています。

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 SPはビートルズの「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」、フリーはシベリウスの「ヴァイオリン協奏曲」とのこと。
 ショートはビートルズの名曲。歌詞入りになるのかどうかまでは分からないのですが、オリジナルそのままというよりは何かしらのアレンジはしているものと思われます。その方がコルピ選手のクラシカルな雰囲気に会いそうですし。
 フリーは母国フィンランドを代表する作曲家の楽曲。数あるヴァイオリン協奏曲の中でも特に有名というわけではありませんが、シベリウス唯一の協奏曲として知られています。まさにフィンランド人であるコルピ選手が演じるに相応しい音楽と言えるでしょうね。
 そのコルピ選手、2012年12月のフィンランド選手権を最後に、怪我の影響で競技会からは遠ざかっています。昨シーズンもソチ五輪の最終予選であるネーベルホルン杯に出場を予定していたものの、アキレス腱の断裂によって欠場。残念なことにオリンピックシーズン1年間を怪我の治療と休養に当てることとなってしまいました。しかもそれが通常のシーズンではなく、4年に一度のオリンピックシーズンだったわけですから、なおのことコルピ選手自身にとっても悔しかったのではないかと思います。
 その後、2014年の4月に手術、現在は練習を再開しているそうです。まだどの大会に出場するといった具体的な復帰は分からないのですが、復活への道を歩み始めたとのことでホッとしました。大きな怪我をして1シーズン、しかも五輪シーズンを棒に振って、そこからもう一度競技の世界に戻ろうというのは並大抵でない勇気が要ったと思います。ゆっくり焦らずに進んでいってほしいですね。


 昨季は怪我に苦しんだカナダのケヴィン・レイノルズ選手は、SPが昨季からの持ち越しである「バック・イン・ブラック/サンダーストラック」、フリーは「ゼルダの伝説」です。
 SPは昨シーズンと同じものですが、昨季は怪我の影響で国際大会には2大会しか出場していないので、あまり持ち越しという感じがしませんね。ジャッジにしろフィギュアファンにしろ、見慣れていない人が多いでしょうから、まだまだ新鮮味がありますし、芸術作品として完成させるという意味でも意義のある持ち越しだと思います。
 フリーの「ゼルダの伝説」は日本のテレビゲーム。日本のアニメやゲーム好きとして知られるレイノルズ選手らしい選曲です。ゲームの音楽だけを用いるのか、それともゲームの世界観も反映させたプログラムにするのか、いろんな意味で楽しみなプログラムになりそうですね。


 イタリアのヴァレンティーナ・マルケイ選手は、昨季のプログラムをショート、フリーともに持ち越すことをすでに表明しています。SPは「帰れソレントヘ」、フリーは「Nyah 映画『ミッション:インポッシブル2』より」ですね。
 マルケイ選手といえば、当ブログでも以前お伝えしましたが、今季からペアスケーターとして活動すること、その上でシングル選手も続けていくことを発表しています。とはいえ、やはり当面はペアに順応していくことに集中しなければならないでしょうから、シングルの方は昨季と同じプログラムにすることで負担を軽減する狙いがあるのだろうと想像します。どちらのプログラムも本当にマルケイ選手にぴったりな、魅力を最大限引き出しているプログラムですから、良い選択だと思います。


 世界ジュニアチャンピオンであるカナダのナム・グエン選手は、SPが「Sinnerman」、フリーが「映画『道』より」です。
 ショートはアフリカ系アメリカ人のあいだで親しまれてきた伝統的なスピリチュアルソング。多くのシンガーによって歌われていますが、今回グエン選手が使用するのは特に有名なニーナ・シモンが歌っているバージョンで、これは多くの映画やテレビドラマでも劇中曲として使われています。タイトルの「Sinnerman」は“罪人”という意味。歌詞の内容もとても重く深いものです。大人にとっても難解なこの曲を、まだ16歳のグエン選手が表現するというのは非常にチャレンジングな試みだと思うのですが、しっくり来るか来ないかということよりも、本格的にシニアに移行するにあたって中途半端に子どもらしくするのではなく、思い切って大人の世界に飛び込む、背伸びする、ということなのでしょうね。
 その意味ではフリーの「映画『道』より」も、人生の光や闇を掘り下げた映画ですから、決して若いスケーターが演じるのに簡単な音楽ではないと思いますが、これもあえて大人びたものに挑もうとしている表れなのかなとも感じます。
 ともあれ、グエン選手は並々ならぬ才能とポテンシャルを秘めたスケーターですから、きっとおもしろいプログラムを見せてくれるでしょうし、新しい風を男子フィギュア界に吹き込んでくれるのではないかと楽しみにしています。


 アメリカのロス・マイナー選手は、ショートは昨季と同じ「追憶」、フリーは「Romanza」です。
 SPは昨シーズンからの持ち越しということになりますが、上述したレイノルズ選手同様、マイナー選手も怪我の影響があり昨季は思うような成績が残せず、不本意なシーズンとなりました。なので、その心残りを挽回するという意味でも同じプログラムを引き続き使用するのは納得ですね。
 フリーはイタリアのテノール歌手アンドレア・ボチェッリさんの楽曲。ボチェッリさんと言えば小塚崇彦選手も今季フリーでボチェッリさんの曲を使用しています。こういうふうに重なったのはもちろんたまたまだとは思いますが、それだけフィギュアスケートにしっくりくるボーカルということなのでしょうね。小塚選手のプログラム共々、マイナー選手のフリーもとても楽しみにしています。


 スウェーデンのヴィクトリア・ヘルゲソン選手はショートがケイト・ブッシュさんの「This Woman's Work」、フリーが以前にも使用したことのあるミュージカル「サンセット大通り」です。
 SPはイギリスの歌手ケイト・ブッシュさんの楽曲。ケイト・ブッシュといえば自由自在の歌唱力を持ち、唯一無二の世界観を築いたイギリスを代表する女性シンガーです。ベテランのヴィクトリア選手がそのケイト・ブッシュの世界をどう自分のものにし、ヴィクトリア選手らしい個性を表現するのか、注目です。
 フリーの「サンセット大通り」は11/12シーズンに使用したことがあり、その際はグランプリシリーズで初めてのメダル獲得、欧州選手権でも自己最高の5位に入るなど、活躍が目立ったシーズンでした。エレガントでありながら壮大さもあり彼女のスケートによく合っていて、個人的にはヴィクトリア選手のプログラムの中でいちばん印象に残っています。そのプログラムの再演ということで、今から楽しみですね。


 同じくスウェーデン、ヴィクトリア選手の妹であるヨシ・ヘルゲソン選手は、SPが「ブラックバード」、フリーは「映画『スノーホワイト』より」です。
 SPの「ブラックバード」はビートルズの楽曲。ビートルズの歌の中ではものすごく有名というほどではないものの、コア的な人気がある曲のような気がします。独特の世界観がある曲ですから、歌詞の意味も含めどのように表現するのか楽しみです。
 フリーは映画『スノーホワイト』のサントラ。『スノーホワイト』は「白雪姫」をモチーフにしていますから、やはりヨシ選手もそういったイメージを用いるのでしょうね。


 さて、新プログラムに関する情報は以上で全てです。冒頭で予告しましたとおり、新プログラムの一覧表を掲載いたします。なお、併記した左側がショートプログラム、右側がフリープログラムとなっています(無良崇人選手のみ、SPが二つとなっています)。


≪日本≫
羽生結弦:「バラード第1番」ショパン 「オペラ座の怪人」
町田樹:「ヴァイオリンと管弦楽のための幻想曲」 「交響曲第9番」ベートーヴェン
小塚崇彦:「A Evaristo Carriego」 「Io Ci Saro」
村上佳菜子:「オペラ座の怪人」 「オペラ座の怪人」
無良崇人:「ヴァイオリン協奏曲」メンデルスゾーン/「カルメン」 「オペラ座の怪人」
宮原知子:「魔笛」 「ミス・サイゴン」
今井遥:「マラゲーニャ」 「ジゼル」
村上大介:「映画『風とライオン』より』 「ピアノ協奏曲第2番」ラフマニノフ
本郷理華:「海賊」 「カルメン」
加藤利緒菜:「花の二重唱 歌劇『ラクメ』より」 「ピアノ協奏曲第3番」ラフマニノフ
高橋成美、木原龍一組:「Bossa Nova Baby」 「That's Entertainment/Love is Here to Stay/I'll Build a Stairway to Paradise」

≪アメリカ≫
ジェレミー・アボット:「Lay Me Down」 「弦楽のためのアダージョ」
グレイシー・ゴールド:「ピアノ協奏曲」グリーグ 「オペラ座の怪人」
アシュリー・ワグナー:「アダージョ 『スパルタクス』より」 「映画『ムーラン・ルージュ』より」
ジェイソン・ブラウン:「Juke」リトル・ウォルター 「トリスタンとイゾルデ」
マックス・アーロン:「映画『フットルース』より」 「映画『グラディエーター』より」
ポリーナ・エドマンズ:「アルバム『フラメンコファンタジー』より」 「映画『ピーター・パン』より」
長洲未来:「パガニーニの主題による狂詩曲」 「蝶々夫人」
アダム・リッポン:「Tuxedo Junction」 「ピアノ協奏曲第1番」リスト
クリスティーナ・ガオ:「River」エミリー・サンデー 「映画『天使と悪魔』より」
ロス・マイナー:「追憶」 「Romanza」
ジョシュア・ファリス:「Give Me Love」エド・シーラン 「映画『シンドラーのリスト』より」
リチャード・ドーンブッシュ:「Sons of Italy」 「イエロー/美しき生命」コールドプレイ
サマンサ・シザーリオ:「Danza Mora」 「カルメン組曲」
コートニー・ヒックス:「Code Name Vivaldi」 「映画『アンナ・カレーニナ』より」
アシュリー・ケイン:「映画『ミッション:インポッシブル』より」 「映画『エビ―タ』より」

≪ロシア≫
アデリナ・ソトニコワ:「白鳥の湖」 「Je Suis Malade」
ユリア・リプニツカヤ:「メガポリス」 「ロミオとジュリエット」
マキシム・コフトゥン:「ボレロ」 「エキソジェネシス交響曲」
エレーナ・ラディオノワ:「De mi vera te fuistes (Seguiriyas)/Ain't It Funny」 「ピアノ協奏曲第3番/悲しみの三重奏曲第2番」ラフマニノフ
アリョーナ・レオノワ:「スマイル/序曲 彫像の除幕 映画『街の灯』より/テリーのテーマ 映画『ライムライト』より」 「Asi Se Baila El Tango 映画『レッスン!』より/ブエノスアイレスの秋」
エリザベータ・トゥクタミシェワ:「ボレロ」 「Batwannis Beek/Sandstorm」
アルトゥール・ガチンスキー:「クライ・ミー・ア・リヴァー」 「パガニーニの主題による狂詩曲」
アンナ・ポゴリラヤ:「アルビノーニのアダージョ」 「火の鳥」
セルゲイ・ボロノフ:「死の舞踏」サン=サーンス 「Caruso/Come Together/At Last/Big Time Boppin’ (Go Man Go)」
コンスタンティン・メンショフ:「Rotting Romance」 「Tango en Silencio」
アディアン・ピトキーエフ:「パガニーニの主題による狂詩曲」 「エキソジェネシス交響曲第3部」

≪カナダ≫
ケイトリン・オズモンド:「ラ・ヴィ・アン・ローズ」 「ダンサリン/オブリヴィオン/タンゲーラ」
ケヴィン・レイノルズ:「バック・イン・ブラック/サンダーストラック」 「ゼルダの伝説」
ナム・グエン:「Sinnerman」 「映画『道』より」

≪スウェーデン≫
ヴィクトリア・ヘルゲソン:「This Woman's Work」 「サンセット大通り」
ヨシ・ヘルゲソン:「ブラックバード」 「映画『スノーホワイト』より」

≪その他≫
デニス・テン:「Caruso」 「アルバム『New Impossibilities』より」
キーラ・コルピ:「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」 「ヴァイオリン協奏曲」シベリウス
ミハル・ブレジナ:「テレビドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』より」 「フィガロの結婚」
フローラン・アモディオ:「映画『オーケストラ!』より」 「映画『ブラッド・ダイヤモンド』より/映画『ライオン・キング』より」
ヴァレンティーナ・マルケイ:「帰れソレントヘ」 「Nyah 映画『ミッション:インポッシブル2』より」



 オリンピックのネクストシーズンですでにいろいろな事が変わりつつあるフィギュアスケート界。フィギュア界をリードし続けるベテラン、五輪シーズンに飛躍した若手、そして今季から本格シニアデビューする新星……。どの選手も皆、輝けますように祈っております。では、また。


:町田選手の写真は、スポーツナビが2014年10月5日の19:05に配信した記事「小塚崇彦「フィギュアを深く追求したい」GPシリーズ出場5選手が意気込み」から、テン選手の写真は、エンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、コルピ選手の写真は、フィギュアスケート雑誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから引用させていただきました。

【参考リンク】
Korpi ready to return following surgery on Achilles | Icenetwork.com コルピ選手の近況について報じた記事です。

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by hitsujigusa | 2014-10-08 03:38 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)