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 12月26日から28日にかけて、世界選手権2015、四大陸選手権2015、世界ジュニア選手権2015の選考会を兼ねた全日本選手権2014が長野市にて開催されました。その全日本選手権の最後に行われた世界選手権代表選手の発表の場で、代表に選出された町田樹選手が今大会をもっての現役引退を発表しました。
 当初の予定では全日本選手権の競技内容に関する記事を書こうと思っていたのですが、あまりこの出来事から間が空かないうちに書きたかったため、町田選手の引退についての記事を先にアップさせて頂こうと思います。全日本選手権についての記事は後回しになってしまいますが、ご了承ください。

◆◆◆◆◆

愛すべき町田樹の“らしい”去り際 引退発表も作品にした唯一無二の存在

 12月28日午後9時過ぎ。全日本選手権(26〜28日、長野・ビックハット)が終了したばかりのリンクでは、来年3月に開催される世界選手権(中国・上海)に出場するメンバー発表が行われていた。一番最後に名前を呼ばれた町田は大歓声とともに、青の衣装に身を包み颯爽(さっそう)とリンク中央に現れた。あいさつを求められると、神妙な面持ちで「皆さん、こんばんは。今回をはじめ、いつもわたくしのことを温かく応援してくださり、本当にありがとうございます。今日は世界選手権大会の代表発表の場に立つことができたことを光栄に思うと同時に、これまでわたくしを支えてくださった多くの方々に、感謝の思いでいっぱいです」と話し始めた。あまりに丁寧な物言いに会場内では笑いも漏れたほどだ。しかし次の瞬間、町田の口から予想外の言葉が発せられた。

「突然ではありますが、ここで皆さまにご報告したいことがございます。わたくしはこの全日本選手権大会をもちまして、現役のフィギュアスケート選手を引退することを決意いたしました。この場をお借りして、正式に発表いたします。つきましては、このたびの世界選手権大会への出場権を辞退したく思います」

 予期せぬ発表に会場は騒然となり、泣き出すファンもいた。選手たちもこのとき初めて知ったようで、隣にいた小塚崇彦(トヨタ自動車)は「僕たちもびっくりしている」と驚きを隠さなかった。あいさつを終えると町田は、別れを惜しむように右手で氷をなで、リンクを降りていった。


スポーツナビ 2014年12月29日 10:50 一部抜粋

◆◆◆◆◆

 町田選手の突然の引退発表がなされたのは世界選手権の代表発表の場でのこと。テレビでは代表発表の場面が一部生中継され、代表に選ばれた小塚崇彦選手、そして町田樹選手が名前を呼ばれてリンクに登場したところでテレビ放送は終わりました。しかしその後、代表選手の挨拶でマイクが回ってきたところで、上述したように町田選手が引退を発表しました。
 私はテレビ放送終了から2時間ほど経ってネットを見て、「町田樹選手が引退」というネットニュースの見出しを目にして事の次第を知ったのですが、正直あまりに唐突すぎて思考がついていかず、1~2時間呆然としてしまいました。
 リンク上での引退発表の後、町田選手はメディアの取材に応じ、自ら用意した文書を読み上げ引退の理由を説明しました。



 この度、私は今シーズン限りをもちまして、現役の選手を引退することを決断致しました。  
 近年では、スポーツ選手のセカンドキャリア問題が社会問題となるに至っており、JOCも問題解決に向け、アスリートセカンドキャリアサポート事業などに取り組んでいるほどです。私も、自分自身の選手引退後のキャリアデザインに苦労した一人です。しかしながら、周囲の方々のご指導のもと、自分自身でセカンドキャリアへの一歩を踏み出せるよう、競技を続ける傍らで、文武両道を旨に、ここまで準備をして参りました。
 
 実は、今シーズン序盤、スケートアメリカに出場するためにシカゴへと出発する直前に、私は早稲田大学大学院スポーツ科学研究科・修士課程2年制の一般入試を受験致しました。その合格が発表されたのは、スケートアメリカのショートプログラムが行われる日のことで、文字通り万感の思いで演技を致しました。
 その後もシーズンを通して、私は文武両道を志し、今シーズンのプログラムである「ヴァイオリンと管弦楽のための幻想曲」と「第九交響曲」の作品としての完成を目指して、周囲の方々の心強いご指導のもと、初志貫徹で精進して参りました。そして今大会(全日本)での自分の演技を終えた結果、私は自分の引退を、本当に晴れやかな気持ちで本日(12月28日)の朝、決断することができました。ご指導頂いている大西勝敬コーチにも、本日その意志をお伝えしたところです。約21年間の競技人生でしたが、何も思い残すこと無く、誇りを胸に、堂々と競技人生に終止符を打てます。

(中略)

 2015年4月、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科・修士課程2年制に入学後は、博士課程進学を視野に入れ、将来的には研究者を目指し、一大学院生として精進して参りたいと強く思っております。フィギュアスケートをスポーツマネジメントの領域で考察する研究者として、社会から真に必要とされる人材になるべく、真摯に新たな道を歩んでいく所存です。

 なお機会を与えて頂ければのお話ではありますが、今後とも研究活動の一環として、アイスショー等での演技や創作活動を、必要最小限の数の舞台において経験させて頂きたいと考えておりますので、宜しくお願い申し上げます。

 皆さまには今後とも、静かに見守って下さいますなら幸いです。重ねて心よりお願い申し上げます。




 町田選手がいつ、どのタイミングで14/15シーズンで引退すると決断したのか、また、全日本選手権を最後の舞台にすると考え始めたのか、具体的なことは分かりませんが、ずっと前から引退後の自分についてしっかり考えて、計画的にセカンドキャリアデザインをしていたのだろうなということが文章からうかがえます。
 引退発表の前日、4位となり表彰台を逃したフリーの後、町田選手はインタビューで「ここまでこれた自分を誇りに思う」「悔いはない」「晴れやかな気持ち」「スケートから多くのことを学んだ」「次に向けて頑張りたい」といったことを話していて、まるで引退の言葉のようだとネット上ではちょっとした話題になっていました。元々町田選手はソチ五輪を「最初で最後の五輪」と言っていましたし、競技者としてキャリアを長く続けることへのこだわりの無さをところどころでうかがわせていて、今年度で関西大学を卒業するということもあり、もしかしたら今季で引退することを決めているのかなとは感じました。ただ、まさか世界選手権代表を辞退して、全日本選手権をラストにするとは露ほども想像していなくて、大きなショックを受けました。
 今はただ、自分が決めた道を一心に進もうとしている町田選手を見送ることしかできないのですが、単なるファンのわがままを言うならば、せめて世界選手権まで待ってほしかった、引退を引き延ばしてほしかったと願わざるをえません。今シーズン限りでの引退は仕方ないにしても、今季まだ完璧な演技ができていないフリーの「交響曲第9番」を完成させてほしかったという気持ちが強くありますし、プログラムを芸術作品として大切にする町田選手だからこそ、世界選手権まで現役を続けて「第9」の完成に挑戦してほしかったです。
 ですが、その一方で全日本選手権で引退という選択からは、“町田樹らしさ”もヒシヒシと感じました。これまで町田選手は競技と学業の二足のわらじを履いてきたわけですが、他の選手と比較しても人並み以上に学業に対しても重きを置いていて、学問に真剣に取り組みながらアスリートとしても結果を追求するという日々は大変だったと思いますし、文と武、どちらも同じくらい大切にする町田選手だからこそどちらも中途半端にするということはできなくて、ふたつの道の狭間に身を置き続けるということは苦しいことだったのではないかと想像します。
 また、世界選手権に出場するということは次の年の世界選手権の枠取りが懸かるということでもあり、必然的に結果が求められます。町田選手はソチ五輪の代表に選ばれた際、「ソチに行く人間はメダルを狙うのが義務だと思う。入賞狙いなら(代表の権利を)誰かに譲渡すべき」(スポニチ 2013年12月25日 05:30)と、大きな国際大会に出るだけで満足するのではなく、ちゃんと結果も追求しなければならない、日本代表になるということの責任というのを重要視した発言をしていて、“アーティスト”“表現者”としての色合いが濃い町田選手ではありますが、競技者としてどうあるべきかというポリシーもしっかり持っていました。もし町田選手が予定どおり世界選手権に出場するならば、やはり町田選手は結果や順位を意識した上で大会に臨むでしょう。ですが、現在の町田選手はすでに学業に心が傾いていて競技に専念できない状態で、その心理状況で世界選手権に出場するということは、町田選手の信念にそぐわないこととなります。そう考えると、学業を優先させた今回の決断も自然なものに思えますし、一貫して自分の考えを貫き通した姿は見事なまでに町田選手らしいなと感じます。

 私が数多いる日本男子の4、5番手争いをしている選手たちの中で、町田選手をほかのスケーターとはちょっと違うなと意識し始めたのは10/11シーズンでした。そのシーズンはショートプログラムが宮本賢二さん振り付けのロシア民謡「黒い瞳」で、独特なリズムと女性的な艶やかさのある音楽を美しく表現していたのが印象的でしたが、それ以上にインパクト大だったのがエキシビションの「ドント・ストップ・ミー・ナウ」で、それまで見たことのないタイプのプログラムで一気に町田ワールドに引き込まれました。町田選手が憧れとして挙げている高橋大輔選手と表現力の豊かさという点では共通しているけれども、高橋選手とは明らかに何かが違う、全く異質の表現力を持ったスケーターだと、私の中で町田選手の存在がぐっと大きくなりました。
 その後もステファン・ランビエールさん振り付けの「ドン・キホーテ」や「F・U・Y・A」、フィリップ・ミルズさんとタッグを組んだ「エデンの東」「火の鳥」など、どんどん表現の幅を広げ、それとともに以前はなかなか安定しなかったジャンプも伴ってきたことによって成績も上がり、町田選手の独特な言葉や人となりが紹介されるようになり、私はその人間性にも引き付けられていきました。
 そしてソチ五輪5位、世界選手権銀メダルという実績を引っ提げて迎えた今季、町田選手はSPに自身の最高傑作と認める「エデンの東」をベースにさらに進化させた「ヴァイオリンと管弦楽のための幻想曲」を、フリーには今シーズン解禁された歌詞入りを用いたベートーヴェンの「交響曲第9番」を作ってきました。GPシリーズ前、町田選手はこの二つのプログラムについて“極北”というテーマを掲げました。「物事が極限まで達したところ」という意味を持つ“極北”という言葉を、私は最初は単にプログラムのコンセプトなのだと思っていましたが、今思い返してみると“町田選手の競技人生が極限まで達する”という意味合いもあったのかなと感じます。
 大学院の合格発表がなされたのは町田選手のシーズン初戦、スケートアメリカの男子SPが行われた日。初お披露目された「ヴァイオリンと管弦楽のための幻想曲」、「交響曲第9番」はどちらも、自他ともに認める町田選手の最高傑作「エデンの東」「火の鳥」にも匹敵する、もしくは超越するのではないかというほどの美しさ、壮大さを湛えていて、初見した私はこれがシーズン最後に完成した時はどんな物凄いものができあがるのだろうと衝撃を受けました。
 しかしその後、GPフランス大会、GPファイナルと町田選手は調子を落としていき、ファイナルで6位に終わった際には全日本選手権について「僕に残されたチャンスはあと一度」と語り、全日本のSPの前には「人事を尽くして天命を待つ」とも話しました。そして臨んだショート、ほぼ完璧な演技を見せた町田選手はフィニッシュすると感極まった様子で、珍しく目を潤ませました。最後の競技となったフリーではショートほど完璧とはいかなかったものの、ステップシークエンスの場面ではこれまでの3試合の時には見せなかったような穏やかな笑顔で滑っていて、ソチ五輪のフリーのステップシークエンスで高橋大輔選手が、それまで見たこともないような朗らかな笑みを浮かべて演技していたのが今でも鮮烈に印象に残っているのですが、どことなくその姿と今回の町田選手の姿が重なって見えました。もちろん、その時はそれが最後の町田選手の「第9」になるとは微塵も考えていなかったわけですが……。
 こうして今季の町田選手の姿や言葉を振り返ってみると、今更ですがシーズン当初から引退を匂わせていたのかなという気もします。

 正直このように記事を書きながらも、まだ町田選手が引退したという実感は全く感じられず、町田選手本人がとてもあっさりと清々しいほど潔く引退を表明してしまったので、逆にファンとしては未練たっぷりなのですが、町田選手にとって本当に競技者として最後の演技となった29日のエキシビション、町田選手は代表作である「エデンの東」を演じました。今まで演じたどの「エデンの東」よりも、この日の町田選手の滑りは何か大きなものから解放されたような、重い荷物を降ろしたような爽やかさに溢れていて、ある意味史上最高の「エデンの東」だったと思います。そんな彼の表情を見て、町田選手は本当にもう未練なく、すっぱりと競技者としての自分というものを断ち切って、確実に次に向けて歩み始めてるんだなと思い知らされましたし、それが淋しくも、嬉しくも感じました。
 町田選手の選手としてのキャリアを一覧すると、決してそれは華々しいものではありません。世界のトップレベルで活躍したと言えるのは最後の3季だけで、全日本選手権で表彰台に立ったのも2013年の1度きり、世界選手権の出場も1回のみ、成績的にはひときわ目立つというほどのものではありません。ですが、この最後の3シーズンに町田選手がフィギュア界に残したもの、演技やプログラムの数々はあまりにも強烈で、それらのプログラムや物事の全てが3シーズンという短い間の出来事だとは信じられないくらい濃く、“町田樹”というフィギュアスケーターの全てがぎゅっと凝縮され、そして花開いた3シーズンだったのだと思います。
 29日のエキシビション、「エデンの東」を滑り終えると、町田選手は観客に向かって「何も思い残すことなく、堂々と、誇らかに引退することができます」と語りました。自らの足で新たな道を切り拓こうとしているその佇まいは本当にかっこよく、美しく、こちらこそ町田選手と同じ時代に生きて、町田選手のスケートを見られたことを誇らしく感じました。
 今後は早稲田大学大学院でスポーツマネジメントを究める研究者を目指すという町田選手。オファーがあればアイスショーにも出演するとのことですし、将来的にはフィギュアスケートに携わっていきたいということなので、今はその時を楽しみに待っていたいと思います。
 町田樹選手、21年間の競技生活お疲れさまでした。そして、たくさんの美しい演技の数々を届けて頂き、本当に本当にありがとうございました。


注:町田選手の写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、町田選手の引退発表文は、町田選手の公式ウェブサイトから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2014-12-31 02:01 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 12月11日から12日にかけて、スペインのバルセロナにおいてジュニアグランプリ(以下、JGP)ファイナルがシニアのグランプリファイナルと同時開催されました。この記事ではJGPファイナルについてざっくり結果と感想を書いていきたいと思います。

ISU Grand Prix of Figure Skating Final 2014/15 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

《男子シングル》


 ジュニア男子は日本勢がワンツーフィニッシュするという史上初めての快挙を成し遂げました。
 優勝したのは宇野昌磨選手。SPは3アクセルと3ルッツでミスが出てしまいその分の点をロスしてしまいましたが、ステップシークエンス、スピンを全てレベル4で揃えるなど実力者らしい安定感も見せて3位につけました。そしてフリーは圧巻の内容。冒頭の4トゥループ、3アクセル始め、非の打ちどころのない素晴らしい演技で163.06点というジュニア男子の歴代世界最高得点をマーク、トータルでも238.27点で同じく歴代世界最高得点となり、2位に約25点差を付ける、終わってみれば圧勝となりました。日本男子のJGPファイナル制覇は小塚崇彦選手、羽生結弦選手に続いて3人目です。
 とにかくフリーはものすごい演技だったのですが、得点的にもジュニア男子で初めての160点台を突破して、シニアのGPでも表彰台に乗れるようなハイスコアで驚きましたが、表現面で見てもシニアに見劣りのしない力強さ、身体づかいの巧さがあって、文句なしの得点、優勝ですね。
 今シーズンは序盤から安定して4回転や3アクセルといった高難度のジャンプを跳べるようになり、一気に飛躍した宇野選手ですが、11月下旬の全日本ジュニア選手権ではショートで断トツのロケットスタートを切ったものの、珍しくフリーで4度転倒と大崩れしてしまい、優勝は死守したとはいえ悔しい内容となっていました。ですが、今大会はそこからしっかり立て直してJGPの時以上のベストを発揮する演技を見せてくれましたね。技術的にだけではなく、精神的な成長を改めて感じました。
 そして、2位となったのは山本草太選手。SPは大技の3アクセルを決めるなど完璧な演技で、ジュニア男子のショートの歴代世界最高得点となる76.14点をマークして首位に立ちました。フリーは冒頭の3アクセルがすっぽ抜けて1回転になるミスはあったものの、そこからは全くのノーミスで見事に巻き返し、フリーでもトータルでも自己ベストをマークして銀メダルを獲得しました。
 SPが素晴らしかったのはもちろんですが、フリーは冒頭でいちばんの目玉となるジャンプが完全な失敗となったところからの挽回が凄かったですね。ジュニアだとそのまま連鎖して崩れてしまってもおかしくないと思うのですが、失敗したあとの切り替えが14歳らしからぬ冷静さでその点に最も驚かされました。
 山本選手はJGPのポイントランキングでは全体の5位でしたが、これだけの大舞台で、しかも初出場で本領発揮できてしまう堂々ぶりは、もちろん怖いもの知らずというのもあるでしょうが、ただ者ではない大物感さえ感じますね。とはいえまだ中学3年生なので、今後ゆっくりじっくりと成長してくれればなと思います。
 3位に入ったのはロシアのアレクサンドル・ペトロフ選手。ショート、フリーともにミスはありましたが、他選手のミスにも助けられ、銅メダルを手にしました。ペトロフ選手はJGP以外にもチャレンジャーシリーズなどシニアの国際大会にも多く出場していて、そういった大会では210点台後半から230点台もマークしているので、今大会でもそれくらいの演技ができていれば銀メダルの可能性も充分あったので少し惜しかったなという気もするのですが、15歳にして既にジュニアではなくシニアの国際大会の経験豊富という感じで、楽しみな選手だなと思いますね。

 4位は昨年のJGPファイナル覇者で、今季もJGPポイントランキング1位の中国の金博洋(ジン・ボヤン)選手。ショートはほぼノーミスの演技で2位と好発進しましたが、フリーは4回転での3度の転倒を含めミスを連発してしまい、フリー5位、総合4位と沈んでしまいました。フリーで4回転を3本組み込むというシニアでも難しいジャンプ構成で臨んだ金選手ですが、それが裏目に出た格好となりました。ジャンパーとしての才能はジュニア界で抜きん出たものがあるのですが、いまひとつ安定度としては物足りなさもあり、それでも4回転が一つも決まらないというのは彼にしては珍しかったですね。
 5位はカナダのローマン・サドフスキー選手、6位は韓国のイ・ジュンヒョン選手となりました。


《女子シングル》


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 男子の日本勢ワンツーフィニッシュの一方、女子はロシア勢のワンツーフィニッシュとなりました。
 金メダルを獲得したのはエフゲニア・メドベデワ選手。ショートは完璧な演技でパーソナルベストを更新して首位発進すると、フリーでは3サルコウでわずかに減点されるミスがあった以外はノーミスで、大技の3+3と2アクセル+3トゥループを含む演技を披露し、120点台の高得点をマークしてフリー1位。シニアにも劣らぬ内容とスコアで完全優勝を果たしました。
 2位はセラフィマ・サハノヴィッチ選手。メドベデワ選手と同じくショートでパーフェクトに近い演技を見せて逆転可能な1点差の2位につけ、フリーでもGOEで減点の一つもないベストに迫る内容でしたが、惜しくもメドベデワ選手に及ばず銀メダリストとなりました。
 メドベデワ選手とサハノヴィッチ選手が今回ショートとフリーで跳んだ全てのジャンプの基礎点を足すと、メドベデワ選手が66.66点、サハノヴィッチ選手は66.73点とほとんど差がありませんが、それでも2位だったサハノヴィッチ選手の方が若干上回っています。サハノヴィッチ選手も優勝していても何らおかしくない素晴らしいジャンプを跳んだと言えますが、ではなぜ最終的には総合得点で4点ほどの差がついてしまったのかと考えると、技術面で言えばひとつにはステップシークエンスやスピンのレベルの問題が挙げられます。メドベデワ選手はSPとフリー、全てのステップシークエンスとスピンでレベル4を獲得していますが、サハノヴィッチ選手はレベルの取りこぼしがチラホラあり、それら一つ一つの積み重ねが最終的には大きく響いたのかなと思いますね。
 昨年のJGPファイナル金メダリスト、同じくロシアのマリア・ソツコワ選手は4位に終わっています。

 そして、日本からも3選手が出場し、樋口新葉選手、永井優香選手、中塩美悠選手は、それぞれ3位、5位、6位となりました。
 樋口選手はショートで3+3のミスがあったもののパーソナルベストで5位発進し、フリーでも終盤の3+2が3+1になる細かなミス以外はほぼ完璧な会心の出来で自己ベスト、総合3位に上がり、日本女子では村上佳菜子選手以来となるJGPファイナルの表彰台に立ちました。
 私は樋口選手の演技をじっくり見るのは今大会が初めてだったのですが、やはり何といってもジャンプの質の素晴らしさがインパクト大ですね。トップスピードからほとんど速度を落とすことなくそのまま勢いよく跳ぶジャンプの高さと幅、着氷後の途切れない流れのスムーズさ、まさに天性のジャンパーといった感じがします。そのジャンプの前後の流れの美しさがプログラム全体の一貫性と流れを作り出していて、作品としても見応えのあるものになっていました。演技構成点ではまだメドベデワ選手、サハノヴィッチ選手には及びませんが、フリーのジャンプのGOEを合計すると、メドベデワ選手が4.01点、サハノヴィッチ選手が4.27点、そして樋口選手が5.5点と前者の二人以上に加点を稼いでいて、高難度のジャンプと質の高さで世界の女子フィギュア界を席巻しているロシア女子をも凌ぐジャンプ能力の高さには圧倒されるとともに、今後がますます楽しみになりました。
 そして永井選手はSPで全てのジャンプをクリーンに決める会心の演技、62.99点というハイスコアで3位につけました。フリーはいくつかミスがあり順位は落としたものの、こちらでもパーソナルベストをマークして初めてのファイナルを5位で終えました。
 永井選手に関しても今回初めて演技を拝見したのですが、樋口選手とはまた違った優雅さが印象に残りましたね。それでいて身長の高さも相まってジャンプに迫力があって、年齢以上の大人っぽさが魅力的だなと感じました。
 中塩選手はショート、フリーともに複数ミスがあり本来の演技とはいきませんでしたが、他の5選手より頭一つ抜けた18歳という年齢もあって、身のこなしの洗練された美しさや艶やかさが印象的でしたし、以前よりもさらに表現的に上手になっているなと思いましたね。


《ペア》


 ペアはロシア勢4組にカナダ勢とアメリカ勢がそれぞれ1組ずつという顔ぶれとなりましたが、JGPポイントランキング1位のカナダのジュリアン・セガン、シャルリ・ビロドー組が2位に大差をつけて優勝。ポイントランキング3位のロシアのリーナ・フェードロワ、マキシム・ミロシキン組が銀メダル、同じくロシアのポイントランキング2位であるマリア・ヴィガロワ、エゴール・ザクロエフ組が銅メダルという、ポイントランキングの上位者が実力を発揮した形となりました。
 セガン&ビロドー組は昨季からJGPに参戦していますが、今季はここまで3戦を全勝していて他を寄せ付けない強さを見せつけていますね。ただ年齢的には女性が18歳、男性が21歳ともうシニアに近いので、遅咲きのペアと言えます。
 他方、2位のフェードロワ&ミロシキン組、3位のヴィガロワ&ザクロエフ組はそれぞれJGP参戦4年目、3年目のジュニア界におけるベテランの部類に入ると思いますが、ファイナルでのメダルも両組ともこれが3つ目で、着実に力をつけつつあるなという印象ですね。
 4位はロシアのダリア・ベクレミシェワ、マキシム・ボブロフ組、5位もロシアのカミラ・ガイネトディノワ、セルゲイ・アレクセーエフ組、6位はアメリカのチェルシー・リュー、ブライアン・ジョンソン組となっています。


《アイスダンス》


 アイスダンスはロシア勢が圧倒的な層の厚さを見せつけ、表彰台独占となりました。
 優勝したのはアンナ・ヤノフスカヤ、セルゲイ・モズコフ組。2位に10点差以上をつける圧巻の演技内容でJGPファイナル2連覇を果たしました。JGPファイナルでの連覇は2009年、2010年に連覇したロシアのクセニア・モンコ、キリル・ハリャービン組以来2組目となりますが、唯一2連勝でファイナルに進出した実力どおりの結果で、GOE加点の付き方や演技構成点を見ても断トツの優勝といった感じがします。
 2位はアッラ・ロボダ、パヴェル・ドロースト組。こちらはJGPポイントランキングでは全体の4位でしたが、フリーでパーソナルベストを更新する安定した演技で銀メダルを獲得しました。
 3位はベティナ・ポポワ、ユーリ・ブラセンコ組。こちらも大きなミスこそ無かったもののSD、FDともにレベルを取りこぼす場面が複数あり、パーソナルベストからは遠い得点となってしまい、銅メダルに留まりました。
 4位はJGPポイントランキング2位だったカナダのマッケンジー・ベント、ギャレット・マッキーン組、5位もカナダのマデリーン・エドワーズ、ジャオ・カイ・パン組、6位はロシアのダリア・モロゾワ、ミハイル・ジルノフ組です。



 シニア同様、ロシア勢の活躍が目立ったJGPファイナルですが、その中でも日本勢が男女で3つのメダルを獲得して、シングルでの層の厚さを若い選手たちが受け継いでくれているなと感じましたね。今大会で活躍した日本の新星たちが全日本選手権でシニアの先輩たちに交じってどれだけ上位を荒らすか、さらには表彰台に食い込んでいけるか、ある意味シニアの選手たち以上に注目ですね。
 ということで次は全日本選手権。世界選手権や四大陸選手権の派遣メンバーが決まるシーズン前半のクライマックスとなります。どんな顔ぶれとなるのか、男子では羽生結弦選手の3連覇なるか、誰が優勝しても初優勝となる女子は誰が新女王となるのか……楽しみです! では。


注:ジュニア男子メダリスト3選手のスリーショット写真は、エンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、ジュニア女子メダリスト3選手のスリーショット写真は、フィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
ジュニアグランプリシリーズ14/15について 2014年10月27日
世界ジュニア選手権2015について 2015年3月23日
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by hitsujigusa | 2014-12-26 15:41 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 グランプリファイナル2014、前記事の(前編)に引き続き、男子フリー&ペア&アイスダンスについて書いていきたいと思います。

ISU Grand Prix of Figure Skating Final 2014/15 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 5位は日本の無良崇人選手です。

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 冒頭は前日転倒した4トゥループ、これをしっかり降りると3トゥループを付けて確実に連続ジャンプにし、次の単独の4トゥループも無良選手らしい豪快なジャンプを決めます。続く3アクセルはさらに完璧で加点2の高評価。前半は申し分のない滑り出しとなりますが、後半一発目の3ループが珍しくすっぽ抜けて1回転に。次の3アクセル+2トゥループはしっかり成功させますが、その後もミスが出てしまい、フィニッシュした無良選手は複雑そうな表情を浮かべました。得点は157.02点でフリー4位でしたが、ショートから順位を上げることはできず、5位で初のファイナルを終えることとなりました。
 前半の4回転2本、そして代名詞の3アクセル2本は素晴らしく、それだけに3ループ、3サルコウからの3連続ジャンプといった比較的基礎点の低いジャンプでのミスが非常にもったいなかったですね。また、無良選手自身が全体的にスピードが無かったとおっしゃっていたように、無良選手本来の躍動感や生き生きとした感じは薄かったかなと感じました。もっと良い時は男らしい力強さやこちらが気圧されるようなパワフルさに溢れた演技をするので、今回は少し大人しめだったかなと思いますね。
 ですが、得点源となる大技はしっかり成功させて、昨季からの成長を今大会でも充分に見せてくれた無良選手。世界選手権代表が懸かった全日本選手権は身体的にも精神的にもさらにシビアな試合になると思いますが、ファイナルの経験が無良選手にとって大きな強みとなるのではないでしょうか。無良選手らしい演技が見られることを楽しみにしています。


 日本の町田樹選手はSP2位から順位を大きく下げて、6位となりました。

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 冒頭は大技4トゥループでしたが、回転不足で降りてきてしまい転倒となります。さらに2本目の4トゥループもステップアウトで失敗。3アクセルも1回転になってしまうなど、ミスを連鎖させてしまいます。後半に入っても調子を取り戻すことはできず、3ループと3アクセルで転倒するなどミスが相次ぎ、演技を終えた町田選手は呆然とした表情を見せました。得点は128.31点でフリー6位、総合でも6位に留まりました。
 目を疑ってしまうようなミスの連続でまさかの演技でした。4回転のミスはともかく、得意の3アクセルが2本とも決まらなかったり滅多に失敗することのない3ループで転倒したりと、町田選手らしからぬ内容で彼に何が起こったのだろうとさえ思ってしまいました。フリー後のインタビューで町田選手はコンディションは心身ともに良かったと話していて、実際のところどうだったのかは本人しか分からないのですが、ショート前の公式練習に関しては“絶望的なコンディション”だったということもあり、やはり何かしら調整がうまくいっていない部分はあったのかなと想像します。メンタル面ではもう3度目のファイナルで多くの経験を積んでいますし、ファイナルだからという特別な心理状態などはなかったんじゃないかなと思うのですが……。
 ただ、気になったのはいつもの町田選手とは微妙に発言の温度が違ったかなという点で、たとえSPで失敗があったとしても自分を鼓舞するように強気な言葉を発することが町田選手は多かったように思うのですが、今回のSPの後はどことなくいつもより覇気が感じられないなという印象で、コンディションが悪くてもSPで2位になれたということをあまり大きな自信に結びつけられていないような、そんな雰囲気を感じました。そこまで考えるのは私の思い上がりなのかもしれませんが、ちょっとそのあたりで町田選手らしくなさが気になりましたね。
 もちろん精神面とは別に、フリーの「交響曲第9番」があまりにも難度の高いプログラムだからという理由もあると思います。コンディションが万全の状態でも滑り切るのは難しいと町田選手本人がおっしゃっているくらいですし、フリー後のインタビューでも「プログラムの壁に跳ね返された」と言っていて、改めてこれは本当に大変なチャレンジなんだなと思い知らされましたね。素人目に見ていても音楽に遅れずついていくだけで大変そうですし、しかもジャンプとジャンプのあいだにつなぎがたっぷり盛り込まれていて、一つジャンプミスをしてしまうと次のジャンプまでに立て直す余裕もないような密度の濃さなので、ミスが次のミスを呼び込むかのように負のスパイラルに陥ってしまったのかなと思いますね。
 あと、全くの余談なのですが、今回3度目のファイナルでまたもや表彰台に届かなかった町田選手を見て、つくづく町田選手はファイナルとの相性が良くないんだなと考えてしまいました。1度目の時はともかくとして、2度目だった昨年も充分メダルは狙える実力がありましたし、もちろん今年も言わずもがなです。にもかかわらずなかなかメダルに縁がないというのは、こんな安易な言葉で片付けてしまってはいけないとは思うのですが、“相性の悪さ”というワードが頭に浮かんでしまいました。町田選手のみならず、幾度もファイナルには出場しているのにそこでの良いイメージがあまり無い選手というのはいるもので、たとえば安藤美姫さんは世界選手権では2度も優勝しているのに、ファイナルには6度出場して銀メダルを一つ獲得しただけという相性の悪さです。反対にファイナルでの活躍がひときわ目立つ選手もいて、女子では今大会も銅メダルを獲得したアシュリー・ワグナー選手はファイナルでは既にこれで3つ目のメダルですが、その一方で世界選手権ではまだ表彰台経験はありませんし、男子では織田信成さんがファイナルに5度出場して4つのメダルを手にしていますが、世界選手権ではこちらもメダルには手が届きませんでした。なので町田選手も、ファイナルにトラウマがあるわけではないでしょうが、どうも相性的に合わないのかななどということを感じてしまいました。
 話を元に戻しますと、今回のフリー演技は残念でしたが、それだけのリスクをはらみながらも挑戦する町田選手の姿勢が私は好きですし、羽生選手がジャンプの限界に挑戦することでフィギュアスケートの可能性を広げているのだとすれば、町田選手は表現の限界に挑戦することでフィギュアスケートの可能性を広げてくれる存在なのだと言えると思います。この「交響曲第9番」はまさに表現の限界を押し上げる素晴らしいプログラムですし、完成した時には間違いなく後々語り継がれるような傑作になるだろうという形は見えているので、全日本選手権で今回のリベンジを果たせること、そして世界選手権に繋がることを心から願っています。



 さて、ここからはペアについてです。

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 優勝したのはカナダのメーガン・デュアメル、エリック・ラドフォード組です。SPは全てのエレメンツに高い加点が付くほぼノーミスの演技で首位発進すると、フリーはサイドバイサイドの3ルッツでミスがあったものの、大技のスロー4サルコウを成功させるなどハイレベルな演技を見せ、自己ベストを大きく更新する得点をマークし、4度目のファイナルで初の頂点に立ちました。
 すでに世界選手権では2つの銅メダルを獲得しているデュアメル&ラドフォード組ですが、意外なことにGPシリーズでの優勝経験は昨季まで無く、今年のスケートカナダで初めてGPの金メダルを獲得すると、NHK杯でも優勝して2連勝、そして堂々の優勝候補として乗り込んだファイナルで初表彰台が初優勝という素晴らしいシーズンを送っています。これで今季は出場したすべての大会で優勝していることになりますが、この連勝がどこまで続くのか、全試合で優勝となるのか、注目して見ていきたいと思います。GPファイナル優勝、おめでとうございました。
 2位となったのはソチ五輪銀メダリストのロシアのクセニア・ストルボワ、ヒョードル・クリモフ組。SPは完璧に近い内容で僅差の2位につけると、フリーでもほとんどミスのない演技を披露し、GOEでもデュアメル&ラドフォード組以上に加点を稼ぎましたが、サイドバイサイドのコンビネーションジャンプのミスがあり、また、デュアメル&ラドフォード組の方が高難度のジャンプをこなしたということもあって技術点では後塵を拝し、逆転優勝とはなりませんでした。
 ストルボワ&クリモフ組も優勝してもおかしくないくらいのレベルと質の高い演技でしたが、デュアメル&ラドフォード組は何といってもペアでは珍しい3ルッツや4サルコウを取り入れていますから、それを成功させられてしまうと彼らを上回るのは難しいのかなという感じですね。ですが、ストルボワ&クリモフ組も称賛に値する滑りを見せたことに変わりはなく、このあとのシーズンもこの2組がペアフィギュア界を引っ張っていくことになるでしょうし、世界選手権で再び対戦した時はどんな結果になるのか、今から楽しみですね。
 3位は中国の若手ペア、隋文静(スイ・ウェンジン)、韓聰(ハン・コン)組。ショートはサイドバイサイドジャンプでのミスがあったものの、その他では安定してエレメンツをこなし3位発進。しかし、フリーではツイストがレベル2になったり、コンビネーションジャンプのファーストジャンプが1回転になった上に単独ジャンプになったりという大きなミスもあり、フリー順位は5位となりました。が、SPのアドバンテージが活き、4位のペアと3点差ない中でギリギリ表彰台を守り切りました。
 4年前に1度ファイナルに出場している隋&韓組ですが、まだ19歳と22歳と若いペアですから、安定度という点ではこれからなのかなと思います。それでもファイナルに2度出場してその2度ともでメダルを獲得するというのは、上述した町田選手とは逆に相性の良さを感じます。より安定してエレメンツをこなせるようになれば、世界選手権でもおもしろい存在になってくるかもしれませんね。



 ここからはアイスダンス。

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 優勝者はカナダのケイトリン・ウィーバー、アンドリュー・ポジェ組です。ショート、フリーともにほぼパーフェクトな演技内容で、2位以下を寄せ付けることなく大差をつけての初優勝となりました。こちらもペアのデュアメル&ラドフォード組と同様に4度目のファイナルで初表彰台&初金メダルですが、ここまで出場した全ての大会を制覇していて死角がありませんね。
 また、カナダのカップルのファイナル優勝は13年ぶりとのことでアレっと思ったのですが、あのテッサ・ヴァーチュー、スコット・モイアー組は最高2位で1度もファイナルを制したことはないんですね。世界選手権でもオリンピックでも優勝経験のあるカップルなのでとても驚いたのですが、この5年間ずっとアメリカのメリル・デイヴィス、チャーリー・ホワイト組がファイナルに関しては勝ち続けていて、ヴァーチュー&モイアーという五輪金のカップルでさえファイナルの頂には立てずにいたわけですね。ということで、新たなファイナルのチャンピオンが誕生するのも実に6年ぶりということになります。このあとのシーズンもウィーバー&ポジェ組がどんな活躍を見せてくれるのか期待大ですね。ファイナル優勝、おめでとうございました。
 銀メダルを獲得したのはアメリカのマディソン・チョック、エヴァン・ベイツ組。ショートでは珍しく転倒する場面があり、また、パターンダンスでレベルを取りこぼす部分もあり、首位のウィーバー&ポジェ組に約6点差をつけられての2位となります。フリーは大きなミスこそありませんでしたがフリー2位、総合でも2位でフィニッシュしました。
 GPシリーズのポイントランキングでは1位でファイナル進出を決めたチョック&ベイツ組ですが、SDでは思いがけないミスもあり出遅れてしまいましたね。ですが、FDではしっかり挽回してチョック&ベイツ組らしさを見せてくれたのではないでしょうか。また、金メダルには届かなかったといってもこれが初めてのファイナルですから、初出場で銀メダルというのは本当に素晴らしい結果だと思います。次戦は全米選手権になるでしょうが、初のアメリカチャンピオンに向け好調なシーズンを過ごしているチョック&ベイツ組、シーズン後半も楽しみにしています。
 3位はフランスのガブリエラ・パパダキス、ギヨーム・シゼロン組。SDはツイズルでのミスや他のエレメンツでもレベルの取りこぼしがあり予想外の5位発進となりますが、FDでは本来の力を発揮して3位、総合3位に順位を上げました。
 シニア2年目となる今季はGP中国杯でいきなりGP初優勝を遂げると、続く母国のエリック・ボンパール杯でも優勝と、2連勝で初のファイナルに進んだパパダキス&シゼロン組。このファイナルではSDでらしからぬミスもありその点では経験の少なさを露呈してしまいましたが、FDではしっかり立て直しましたね。これでフランスのカップルはファイナルの連続表彰台記録を8年連続に伸ばすこととなり、フランスにおけるアイスダンスのレベルの高さを改めて示しました。パパダキス&シゼロン組がフランス選手権、そして欧州選手権とどこまで飛躍を遂げるのか、要注目ですね。



 これで全てのGPファイナルに関する記事は終了です。
 4種目全体を見渡して見ると、アイスダンス以外の3種目でロシア勢がメダルを獲得していて、始まる前から分かっていたことではありますが改めて強かったなーという印象ですね。
 この大会でメダルを手にした選手たちがこのあとのシーズンも順調に活躍するのか、それとも思いがけないダークホースが出現するのか。シーズン後半に向けて、今からドキドキワクワクします。
 次の大きな大会は全日本選手権ですが、その前にジュニアGPファイナルについての記事もアップしようかなと考えておりますので、しばしお待ちくだされば幸いです。では。


:男子メダリスト3選手のスリーショット写真は、AFPBB Newsが2014年12月14日の8:31に配信した記事「羽生が連覇達成、GPファイナル」から、無良選手の写真、町田選手の写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」から、ペアメダリスト3組の写真は、AFPBB Newsが2014年12月14日の9:40に配信した記事「デュアメル/ラドフォード組がペア初制覇、GPファイナル」から、アイスダンスメダリスト3組の写真は、AFPBB Newsが2014年12月14日の10:08に配信した記事「ウィーバー/ポジェ組がアイスダンス初優勝、GPファイナル」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2014-12-20 01:11 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 グランプリファイナル2014、この記事では男子のフリーとペア、アイスダンスの内容と結果をまとめます。
 男子のチャンピオンは日本の羽生結弦選手です。2位に圧倒的大差をつける得点で、日本男子勢では初めてとなるファイナルの連覇を達成しました。銀メダリストとなったのは地元スペインのハビエル・フェルナンデス選手、3位はロシアの実力者、セルゲイ・ボロノフ選手です。
 一方、ペアではカナダのメーガン・デュアメル、エリック・ラドフォード組が4度目のファイナルで初の表彰台、しかもその頂点に立ちました。
 そして、アイスダンスでもカナダのケイトリン・ウィーバー、アンドリュー・ポジェ組が初のファイナルの金メダルを手にしています。

ISU Grand Prix of Figure Skating Final 2014/15 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 金メダルを獲得したのはディフェンディングチャンピオン、日本の羽生結弦選手です!

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 冒頭は試合での完璧な成功の少ない4サルコウでしたが、これをあっさりとクリーンに成功させます。続く得意の4トゥループも全く問題なく着氷。3フリップも難なく降りて、圧巻の前半となります。後半に入っても勢いを持続させ、3ルッツ+2トゥループ、3アクセル+3トゥループ、3アクセル+1ループ+3サルコウと難しいコンビネーションジャンプを次々とパーフェクトに決めていき、最後の3ルッツでは気が緩んだのか回転不足で転倒となってしまいましたが、それ以外はマイナスする部分のないほぼノーミスの演技で、フィニッシュした羽生選手は満足そうに破顔しました。得点は194.08点、昨年のファイナルでマークした自己ベストを上回り、トータルでもパーソナルベストに迫るハイスコアで断トツの優勝、日本男子としては初めてとなるファイナルの連覇を果たしました。
 予想を超える素晴らしい演技で圧倒されましたね。NHK杯では本来の姿からはほど遠かったとはいえ、元々ポテンシャルの高い選手なのである程度ファイナルでは調子を上げてくるだろうとは思っていましたが、まさか自己ベストとまでは想像してなかったです。羽生選手のGP2大会の経緯を知らない人が見れば、ファイナルまで順風満帆に何の問題もなく進んできたのだと思ってしまうような会心の滑りで、あれだけの異常事態を経験してもそれをネガティブな出来事のままで終わらせず、しっかりプラスに変えて自分を成長させる肥やしにしてしまうメンタリティーの特殊さというのを改めて思い知らされましたね。
 特に出色だったのは冒頭の4サルコウ。昨シーズンからプログラムに取り入れているジャンプですが、成功させたのは2013年のフィンランディア杯と2014年の世界選手権の時の2本だけ、しかも加点が付くような出来となるとフィンランディア杯の時のみとなります。ですが、今回跳んだ4サルコウは2.43点の加点が付く申し分のないジャンプ。教科書のお手本のようなため息の出る美しさで、昨シーズンずっと苦労してきたとは思えない完成度の高さには脱帽するしかないですね。
 ただ、プログラムの完成度としてはやはりまだこれからかなという印象で、羽生選手のジャンプや滑りには圧倒させられましたが、「オペラ座の怪人」という作品としての芸術性だったりエンターテインメント性といった点においてはいまひとつかなと感じました。もちろんプログラムの構成や振り付けに関しては魅力的な箇所は多々ありますし、良いプログラムだなと思うのですが、「オペラ座の怪人」のテーマやストーリーを想起させるような表現だったり、“ファントム”らしさを感じさせる表現だったりというのは物足りないかなと思いました。また、羽生選手の動きや仕草に丁寧さが無いわけではないのですが、見ていると何か全体的に大味な印象を受けるというか、プログラムの序盤から終盤まで同じようなテンポ、リズムだなと感じるので、ダイナミックなところ、スローなところ、それぞれの演じ分けや表現の緩急、メリハリがより際立ってくると、さらに奥行きのある「オペラ座の怪人」になるのではないかと思いますね。
 幸い全日本選手権では現在のジャンプ構成を継続し、プログラムの完成度を高める方針で臨むそうなので、表現的にも進化した「オペラ座の怪人」が見られればいいなと思いますし、羽生選手特有の繊細さも伝わるような作品を期待したいですね。GPファイナル2連覇、おめでとうございました。


 2位となったのはスペインのハビエル・フェルナンデス選手です。

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 フリーの演目は母国スペインを舞台にしたオペラ「セビリアの理髪師」。冒頭はまず1本目の4回転である4トゥループ、これをきれいに決めて好スタートを切りますが、続く4サルコウからの連続ジャンプは3サルコウ+2トゥループに。ですが、直後の3アクセルはしっかりまとめます。後半に入って一発目は前半失敗した4サルコウで、理想的な着氷とはならなかったものの確実に成功。さらに3+1+3の難しいコンビネーションジャンプも決め、3ルッツからの連続ジャンプが1+2になるミスはありましたが、ステップシークエンスとスピン全てでレベル4を獲得するなどそつのない演技を披露し、フェルナンデス選手は笑みを浮かべました。得点は174.72点でフリー2位となり、総合でもSP5位からステップアップし銀メダルを手にしました。
 いくつかミスはありましたが、崩れてしまったショートから1日で見事に立て直しましたね。前半の4サルコウは3回転になったとはいえ、ジャンプそのものには加点が付く出来でそこまでのミスとは言えないですし、ほかにミスらしいミスは後半の3ルッツがパンクしたところのみで、全体的には躍動感とスピード感に溢れた流れのある演技で素晴らしかったと思います。
 ただ、音楽との調和という意味ではエネルギッシュな男性ボーカルのインパクトがかなり強く、フェルナンデス選手の演技が歌声に負けているかなと感じる部分もあり、また、単にメロディに乗って歌うだけではないオペラ独特の芝居がかったボーカルもあるので、そういった場面の表現にもう少し工夫があるとよりそのパートが魅力的になるのかなという気がしますね。
 ですが、何よりスペインの地で、スペイン人初のトップスケーターであるフェルナンデス選手が表彰台に立つという歴史的な快挙が成し遂げられて心から良かったなと思いますし、このあとのシーズンも今回の経験を励みに頑張ってほしいですね。
 欧州選手権ではソ連のアレクサンドル・ファデーエフさん以来となる3連覇に挑むフェルナンデス選手。次はSPとフリー揃って笑顔が見られることを楽しみにしています。


 3位はロシアのベテラン、セルゲイ・ボロノフ選手です。

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 冒頭はSPでもしっかり決めた4トゥループ、着氷で若干ミスはあったものの何とか成功させます。続く3アクセル+2トゥループも決めますが、4トゥループからの連続ジャンプは3トゥループ+3トゥループとなります。ですが、その後も大きなミスはなく、3アクセルや3+2+2など、予定どおりのジャンプを次々と降りて加点もしっかり稼ぎ、安定した演技を見せました。得点は160.05点、フリー3位で初めてのファイナルのメダルを獲得しました。
 ミスといえるミスは冒頭の4トゥループと4+3が3+3になったところくらいで、それも前者はさほど大きなマイナスにはなっていないですし、後者は質の良い3+3として0.9点の加点が付いているほどなので、全体を通して非常によくまとまった演技だったと言えますね。
 少し気になったのは演技構成点(プログラムコンポーネンツ)で、5項目あるうち、「スケーティング技術」「振り付け/構成」「曲の解釈」は7点台、「動作/身のこなし」は8点台にもかかわらず、「要素のつなぎ」だけは6点台というバラバラな評価になっているんですね。「要素のつなぎ」が極端に低い6点台になっているのは、この項目で4.75点というまるでジュニアのような評価をしたジャッジがいるためで、2週間前のNHK杯と比べてもギャップのある点数になっていて、NHK杯と今回とでつなぎの面でそこまでの大きな違いがあったようには見えなかったので不思議な採点だなと感じました。
 ファイナリスト6人の中では注目度は低めで、メダル候補としても下位の方だったボロノフ選手ですが、ショートもフリーもGPの時と変わらない平常心を保って楽しみながら滑っているように見えましたね。それが初めてのファイナルで表彰台という素晴らしい結果をもたらしたのかなと思います。ですが、ある意味ボロノフ選手はこの6人の中では最も安定してGP2大会をこなした選手と言え、ほかの選手が2大会のうち一方で崩れてしまっているのと比べると、ボロノフ選手は2大会とも自分のベストから極端に劣ることのない平均的な演技を続けていて、そういったある一定以上の水準で演技できる強みというのがこのファイナルでも生きたんだなという気がしますね。
 次の大舞台はロシア選手権になると思いますが、強力なライバルたちが大勢いる中でここ3年は表彰台を守り続けているボロノフ選手。今年も良い演技、結果となることを願っています。


 4位となったのはロシアのマキシム・コフトゥン選手です。

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 冒頭はまず得点源となる4サルコウでしたが、すっぽ抜けて2回転となる大きなミス。直後の4トゥループはきれいに決めて高い加点を獲得し、次の3アクセル+3トゥループも成功。その後もさほど致命的なミスはなくジャンプをこなしていき、序盤の失敗をしっかり挽回しました。しかし、得点は思ったほどには伸びず155.25点でフリー5位、総合4位で惜しくもメダルには手が届きませんでした。
 演技全体では冒頭の4サルコウが2回転になったところ以外に破綻もなく、4トゥループも3アクセル2本も決めていて安定した内容だったと思うのですが、ジャンプであまり加点が稼げなかったのが響きましたね。ジャンプで1点以上の加点が付いたのは4トゥループのみで、ほかは着氷がスムーズに流れなかったりこらえ気味になったりして加点が伸びず、それら一つ一つの積み重ねが最終的には大きな点のロスに繋がってしまったかなという印象です。
 さらにもったいなかったのが、最後の足換えコンビネーションスピンが「CCoSp2p2V1」となってしまったことです。「CCoSp」は“チェンジフットコンビネーションスピン”であることを示しますが、その次の「2p」は“2ポジション”、つまりスピンの3つの基本姿勢(キャメル、シット、アップライト)のうち2つしか含まれておらず、しかも「2」=レベル2で、その上「V1」=左右の脚の一方でしか基本姿勢を行っていないということになり、しっかり足換えコンビネーションスピンをこなした時よりも基礎点がぐっと低くなってしまいました。コフトゥン選手は3位のボロノフ選手と総合得点で約2点差しかありませんでしたから、このスピンの出来次第で3位になっていた可能性も考えられるので、もったいない取りこぼしだったなと思いますね。
 僅差でファイナルの表彰台を逃してしまったコフトゥン選手ですが、次は2連覇が懸かるロシア選手権が待っていますので、悔いなく笑顔で終われることを祈っています。



 申し訳ないのですが文字数制限の事情もあり、この記事はここで一旦終わりとさせていただきます。更新が非常に遅い上に前編と後編に分かれてしまって本当に申し訳ないのですが、この続きは(後編)をお読みいただければと思います。


:男子メダリスト3選手のスリーショット写真は、AFPBB Newsが2014年12月14日の8:31に配信した記事「羽生が連覇達成、GPファイナル」から、羽生選手の写真、フェルナンデス選手の写真はエンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、ボロノフ選手の写真、コフトゥン選手の写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2014-12-19 17:44 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 スペインのバルセロナで12月11日から14日にかけて行われていたグランプリファイナル2014が無事幕を閉じました。この記事では女子フリーについてお伝えします。女子ショートプログラムについては、こちらの記事をご覧ください。
 女子を制したのは、SPで首位に立ったロシアのエリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手です。完璧な演技でパーソナルベストをマークし、3度目のファイナルで初の栄冠に輝きました。銀メダルを獲得したのは同じくロシアのエレーナ・ラディオノワ選手。こちらも自己ベストに迫るほぼノーミスの演技を披露しましたが、惜しくも2位となりました。3位はアメリカのアシュリー・ワグナー選手で、3年連続の表彰台に上りました。

ISU Grand Prix of Figure Skating Final 2014/15 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 優勝したのはロシアのエリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手です。

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 冒頭は3ルッツからの3連続コンビネーションジャンプ、スピードに乗った跳躍で高く跳び上がり、パーフェクトに成功させます。さらに単独の3ルッツ、3フリップと次々と決め、前半のジャンプ全てで1点以上の高い加点を稼ぎます。後半に入っても勢いは衰えず、疲れ始める中盤の3トゥループ+3トゥループもクリーンに着氷。その後も質の高いジャンプを立て続けに降り、また、ステップシークエンスとスピンでもしっかりレベル4を揃えるなど、全ての面においてハイレベルな演技を見せました。得点は136.06点で自己ベストを更新、総合得点でも初めて200点を突破し、ファイナルを初制覇しました。
 全くマイナスする部分のない圧倒される演技でしたね。SPでは珍しく3ルッツでのミスがありましたが、それも2日で完璧に修正して、些細なほころびもない本当にパーフェクトな演技でした。ジャンプ構成的には2位のラディオノワ選手に劣るのですが、6種類のジャンプ全てをまんべんなくかつ美しく跳べる能力は他選手を凌駕するものがありますし、演技全体の流れはひときわ完成度の高さを感じさせました。それも、GP前からコツコツと小さな国際大会に出続ける戦略が功を奏したのだと言えますね。
 3年前のGPデビューでは初戦でいきなり優勝、2戦目でも優勝で、デビューシーズンに2連勝してファイナル進出という華々しいシーズンを送ったトゥクタミシェワ選手ですが、その後は成長期による体形の変化に苦しみ、昨季はロシア選手権で10位、母国のソチ五輪出場を逃す結果に終わり、競技人生最大の挫折を味わったのではないかと思います。それでもそこで気持ちを折らすことなく、シーズンオフに身体を絞って万全の準備を行い、シーズンの早い時期からヨーロッパのB級大会を複数こなして地力をつけ、その結果がこのファイナル優勝ですから、まさに彼女の練習と努力が実を結んだ素晴らしい優勝だと思います。
 ですが、シーズンはこれからさらに過酷を極めます。特にロシアの女子選手は、世界でいちばん熾烈とも言えるロシア選手権が待っていますから、トゥクタミシェワ選手といえども油断はできないでしょう。うまく調整して、ロシア選手権でも満足のいく演技ができることを願っています。GPファイナル初優勝、おめでとうございました。


 惜しくも2位となったのはロシアのエレーナ・ラディオノワ選手です。

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 冒頭は大技3ルッツ+3トゥループ、GP2大会と同様に相変わらずの安定感でしっかり決めます。続く3フリップも正確な踏み切りと回転、着氷で高い加点を得ますが、次の3ルッツは着氷で若干こらえ気味になります。しかし、ミスといえるほどのミスはなく、後半の3+1+3の難しい3連続ジャンプ含め、確実にすべてのジャンプを成功。ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第3番/悲しみの三重奏曲第2番」の旋律に乗った壮大な滑りを披露し、フィニッシュしたラディオノワ選手は感極まった表情を見せました。得点は134.85点、先日のエリック・ボンパール杯でマークした自己ベストに1.79点と迫るハイスコアで、ショートから順位を上げて初のファイナルのメダルを手にしました。
 こちらもトゥクタミシェワ選手と変わらないくらいパーフェクトな演技で、優勝してもおかしくないくらいの素晴らしい出来だったと思います。ほころびがあったとすれば、単独の3ルッツで微妙に着氷が前のめりになったところくらいで、それも重箱の隅をつつくレベルのことですから、本当に高いレベルでの優勝争いだったと言えます。
 大会中のラディオノワ選手はあまり体調が良くなく、100%のコンディションとは言えない状況だったそうですが、その中でこれだけの演技ができる彼女の強靭ぶりというのは改めて凄いなと思いましたね。ショートでは3ループで転倒があったのですが、フリーではそういった不安は微塵も感じさせないジャンプを取り戻していて、まるでベテランのような試合運びの巧さでした。
 フリーの後の記者会見でラディオノワ選手は、「私はもう若くないんです。私はもうすぐ16歳になりますし、ほかにも多くの女の子たちがもっと若い年齢で同じような難しいジャンプを跳んでいます」と話していて、実際に今回同時開催されたジュニアのファイナルの女子では、ロシア勢がシニア並みの得点をマークしてワンツーフィニッシュしていて、ラディオノワ選手でさえいつ追い抜かれてもおかしくない、うかうかできないという実感のこもった言葉だなと感じましたね。
 ロシア選手権でも、ラディオノワ選手の心からの笑顔が見られることを楽しみにしています。


 3位に入ったのはアメリカのベテラン、アシュリー・ワグナー選手です。

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 序盤はまず得意の2アクセルから入り、これを難なく着氷します。続く3フリップ+3トゥループは今季はまだ完璧な成功がないジャンプでしたが、しっかり回り切って降りGOEでも加点1の高評価を獲得。その後も細かいミスはあったものの、大きく乱れることはなく精度の高いジャンプを相次いで成功させ、加点も多く稼ぐ会心の滑りを見せ、演技を終えたワグナー選手は破顔しました。得点は129.26点でフリー3位、惜しくも自己ベストには0.26点及びませんでしたが、SPから大きく順位を上げて銅メダルを獲得しました。
 ここまでのシーズンの鬱憤を晴らすような、ワグナー選手らしさに満ち溢れた演技でしたね。3+3含め、ジャンプの回転不足がワグナー選手の最重要課題でしたが、今回のフリーはそれも一つだけでほとんどノーミスでしたし、一つ一つのジャンプに勢いがあって美しかったですね。少しもったいなかったのはスピンで、2つのスピンでレベルを取りこぼしているので、それがなければパーソナルベストは間違いなかったと思うので、ちょっとしたことではあるのですが惜しいロスでした。
 また、今回はジャンプが決まったことによって表現的にも乗っていて、プログラムの女性ボーカルとワグナー選手の身体の動き、スケートがよく調和しているように感じました。正直、最初にジャパンオープンでこのプログラムを見た時は、まだ競技でのボーカル入りを見慣れていないということもありましたが、歌声の力強さとワグナー選手の演技とが乖離してるなと感じたのですが、今大会の演技ではそういった違和感は覚えませんでした。
 今シーズンのワグナー選手はここまで好調に進んできたわけではなく、また、ロシア女子の勢いの凄まじさもあって、ファイナリスト6名の顔ぶれの中で存在感では押され気味だったのですが、最終的にはこうして調子を上げて3年連続でメダルをつかみ取り、変わらぬ存在感を顕示し続けるベテランの底力、意地はさすがだなと思わせられました。
 ですが、ロシア勢同様、ワグナー選手も全米選手権がシーズン最大の難関となりますから、昨季の4位という借りを返して笑顔で終われるよう祈っています。


 4位となったのはロシアのアンナ・ポゴリラヤ選手です。

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 冒頭はまず難度の高い3ルッツ+3トゥループ、これをきっちり成功させて上々のスタートを切りますが、続く3+1+3では流れが止まってしまい最後のジャンプで転倒します。後半に固めた5つのジャンプ要素は大きなミスなく慎重にまとめましたが、終盤のスピンでよろめく場面が複数見られ、フィニッシュしたポゴリラヤ選手はがっくりと肩を落としました。得点は118.95点でフリー4位、トータルでも4位となりました。
 序盤の3+1+3で激しく転倒した際に痛めたのか、フィニッシュ直後には腕をおさえる場面も見られたポゴリラヤ選手でしたが、全体的に大人しめな「火の鳥」になってしまったかなという印象ですね。
 今季のポゴリラヤ選手は初戦のジャパンオープン、GP初戦のスケートカナダでは安定感のあるジャンプを見せて、シーズン序盤としては好調な滑り出しだったと思うのですが、ロステレコム杯で調子を崩してからコンディションを上げることができなかったのかなという感じですね。昨季もポゴリラヤ選手はシーズン前半から後半に向けて調子を落としてしまっているので、今季は昨季との違いを見せることができるかどうか、ロシア選手権はポゴリラヤ選手の実力が試される場になりそうですね。ぜひ、うまく調整して欧州選手権代表、世界選手権代表の切符を勝ち取ってほしいと思います。


 5位はロシアのユリア・リプニツカヤ選手です。

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 冒頭は得点源となる3ルッツ+3トゥループ、これをSPと同じようにクリーンに決めて加点1.5の高評価を得ます。さらに次も成功すれば高得点を稼げるコンビネーションジャンプでしたが、ファーストジャンプの2アクセルの回転が足りず転倒。後半に入り、3ループ、そして予定では単独の2アクセルに急遽3トゥループと2トゥループを付けて前半のミスをリカバリーし、立て直したかに見えましたが、3フリップが1回転になると、続く2本目の3フリップも2回転になって転倒、さらに3サルコウも2回転にとミスを連発してしまいました。最後は代名詞のキャンドルスピンで会場を沸かせましたが、複数のジャンプミスが響き、得点は111.55点でフリー6位、総合5位に順位を落としました。
 最初の3+3は素晴らしかったのですが、その直後の2アクセルは空中で軸が曲がってしまいましたね。終盤は一つ目の3フリップがパンクしたところから、ジャンプの踏み切りのタイミングや感覚が狂ってしまったような印象を受けました。
 今大会のリプニツカヤ選手は今季初めての3ルッツ+3トゥループをプログラムに組み込んで、そのコンビネーションジャンプに関してはほぼ完璧なものだったので、ジャンプそのものの調子は良いのかなと思ったのですが、プログラムをこなす中でのジャンプの成功率というのに課題があるのかなと感じました。中国杯とエリック・ボンパール杯でも終盤3つのジャンプで立て続けにミスを犯してしまっているので、体力面の問題もあるのかもしれないですが、ひとつの失敗を連鎖させてしまうというのが現在の彼女の大きな課題ですね。
 成長期による体の変化の影響もあり、昨季よりも演技をまとめることに難しさはあると思いますが、ロシア選手権でうまく課題を修正して、その先の大会に進めることを願っています。


 6位となったのは日本の本郷理華選手です。

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 冒頭はSPより難度を上げて臨んだ3フリップ+3トゥループ、着氷はしっかり決めましたがセカンドジャンプが回転不足となります。続く3ルッツはエッジエラーでマイナス1の減点。ですが、その後は後半の2アクセル+1ループ+3サルコウ含め次々とジャンプを成功させ、最後の2アクセルからの連続ジャンプがシングルアクセルになる小さなミスはあったものの、ラストまでスピード感溢れる本郷選手らしい演技を披露しました。得点は115.03点、パーソナルベストに近い得点でフリー5位、総合6位で初めてのファイナルを終えました。
 順位的には6人中6位でしたが、内容的には実に堂々とした初出場とは思えない演技だったと思います。ロステレコム杯のような会心の出来ではありませんでしたが、ジャンプのミスとは別に、パフォーマンス的には小さく縮こまることなく迫力たっぷりのスケートでしたし、「カルメン」も試合を重ねるたびにどんどん美しくなっていっていますね。
 また、終盤の2アクセルが1回転になった場面で、本来ならここは2アクセル+2トゥループなのですが、ファーストジャンプが1アクセルになった後に2トゥループを付けるのではなく、とっさにもう一度2アクセルを跳んで1アクセル+2アクセルのシークエンスジャンプにしたのが印象に残りました。2トゥループよりも2アクセルを跳んだ方がより点を稼げますから、機転の利いた素晴らしいリカバリーだったと思いますし、情熱的に“カルメン”を演じながら、同時に冷静さも忘れないどっしり感というのも、初出場らしからぬ点でしたね。
 それでもフィニッシュした本郷選手は全身から悔しさを滲ませていて、第三者の私なんかからすると初出場でこれだけ実力を発揮するというのは充分に凄いなと思うのですが、本郷選手の言葉や表情からはまだまだできたはずという不満が垣間見えて、それだけ自信もあるからこそなんだろうなと感じました。また、ファイナルに出場するという成績だけで満足することなく、自分自身に対してさらなる高みを要求する向上心の強さもうかがえましたね。
 次の大きな舞台は全日本選手権。現在の本郷選手の実力を持ってすれば、世界選手権代表も十二分にありえますから、このGPシリーズで得た経験を活かして、全日本でも思い切った演技をしてほしいなと思います。



 女子については以上で全て終わりです。前記事の末尾に女子&ペア、男子&アイスダンスの順番に記事をアップすると書いたのですが、ペアについては予定変更して男子&ペア&アイスダンスというふうに書きたいと思いますので、少々お待ちください。


:女子メダリスト3選手のスリーショット写真は、AFPBB Newsが2014年12月14日の9:11に配信した記事「トゥクタミシェワが女子シングル制す、ロシア勢がワンツー GPファイナル」から、トゥクタミシェワ選手の写真、ワグナー選手の写真、ポゴリラヤ選手の写真、リプニツカヤ選手の写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、ラディオノワ選手の写真、本郷選手の写真は、毎日新聞のニュースサイトが2014年12月13日に配信した記事「写真特集:2014フィギュアGPファイナル 華麗なる戦い」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2014-12-16 00:12 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 GPファイナル2014、女子に続き男子も始まりました。この記事では男子SPの結果についてお伝えします。
 首位発進となったのは日本の羽生結弦選手。今シーズンのSPの世界最高得点をマークしました。2位につけたのは同じく日本の町田樹選手、3位はロシアのマキシム・コフトゥン選手です。

ISU Grand Prix of Figure Skating Final 2014/15 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 1位でフリーを迎えることとなったのは日本の羽生結弦選手です。

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 冒頭は今シーズンまだ一度も成功していない4トゥループ、これをパーフェクトに決めて2点という非常に高い加点を得ます。続く2つのスピンもきっちりレベル4を揃え、後半に入って一発目の3アクセルも完璧。続いて最後の3+3に挑みましたが、ファーストジャンプの軸が曲がってしまい、強引にセカンドジャンプに繋げましたが転倒となります。しかし、羽生選手らしい滑らかなスケーティング、巧みなエッジワークを存分に発揮し、悔しさまじりではあるものの弾けるような笑顔を見せました。得点は94.08点でシーズンベスト、また、今季の世界最高点をマークして堂々の首位に立ちました。
 中国杯のアクシデントの影響もあって今季は一度も決まっていなかった4トゥループでしたが、今回成功させたものは非の打ちどころのない本来の羽生選手の4トゥループでしたね。ただ、3ルッツ+3トゥループは練習からあまりうまくいっていなかったようで、試行錯誤しているのかなという感じのジャンプでした。
 今回ようやく4回転がクリーンに成功したことによって、やっとプログラムの形が見えてきたかなと思うのですが、変則的なピアノの難しいリズム、テンポをうまくとらえていて、音楽自体も羽生選手の醸し出す雰囲気によく合っていると思います。ただ、欲を言えばまだ細部にわたる繊細さというのが物足りないかなと個人的には感じます。プログラム自体はほとんど休むところのない複雑なつなぎや動作がたっぷり盛り込まれていて、スピード感もあり激しい動きもありという作品なのですが、曲そのものはピアノの音のみの静かな曲なので、激しく動きながら静寂を表現しなければいけないという難しいプログラムになっています。その点で、今回の羽生選手の演技は静けさというよりも快活さ・元気の良さという感じが印象に残ったので、もう一つ二つ細かい仕草だったりスローパートの表現だったりに繊細さが欲しいかなと感じますね。
 今シーズンの羽生選手はGP前には腰痛があったり、初戦では6分間練習での衝突事故があったりと予期せぬ出来事が続いたので、ジャンプなどの技術面に集中を傾けなければならず、表現面にまで細やかに気を配れない状況だったと思います。ですが、ジャンプの不安に関しては一つ壁を乗り越えたかなと思うので、これからようやくプログラムの完成度を高める作業に入っていけるのかなという気がしますね。
 演技時間が長くなるフリーは体力面の心配もあるのですが、気負いすぎることなく心から楽しんで滑ってほしいなと思います。


 2位発進となったのは日本の町田樹選手です。

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 冒頭は大技4トゥループ+3トゥループ、ファーストジャンプはきれいに着氷しますがセカンドジャンプの着氷でステップアウトしてしまいます。しかし、続く3アクセルはクリーンに成功させてすぐ立て直します。スピンやステップシークエンスも大きな取りこぼしなく情感豊かに演じ、スタミナが切れてくる終盤の3ルッツも完璧に成功。小さなミスはあったものの、崩れることなくしっかりと演技をまとめました。得点は87.82点、2位で羽生選手を追いかける格好となりました。
 当日の朝の練習で相当調子が悪かったようで、その影響が冒頭の4+3にも表れてしまいましたが、それを引きずらない冷静さはさすがでしたね。エリック・ボンパール杯では疲労で失敗してしまった終盤の3ルッツもきっちり修正していて、同じミスを繰り返さないところにすっかり強豪の一員となった町田選手の強さを見ることができましたね。
 残念ながら作品としては完成しませんでしたが、滑るたびにどんどん洗練されて美しさを増していっていますので、完成は今後にお預けということで楽しみにしたいですね。フリーはベートーヴェンの「交響曲第9番」、フランスで得た悔しさの借りをバルセロナの地で返してほしいなと思います。


 3位はロシアチャンピオン、マキシム・コフトゥン選手。

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 6人の中で唯一、2本の4回転を組み込むアグレッシブな構成で挑んだコフトゥン選手。まずは4サルコウからの連続ジャンプ、4サルコウはきれいに決まったもののセカンドジャンプの着氷で乱れてしまいます。続く4トゥループ、さらに3アクセルと、着氷で細かなミスが相次いでしまいます。ステップシークエンスやスピンは丁寧にこなして加点もしっかり稼ぎ、得点は87.02点でシーズンベストを更新、僅差の3位につけました。
 誰よりも技術点を稼げる高難度のジャンプ構成で演技したコフトゥン選手でしたが、全てのジャンプの着氷で少しずつミスがあって、思ったほどには技術点を伸ばせませんでしたね。ですが、やはりSPからこれだけ難しいことに挑戦するということ自体が凄いことですし、細かな着氷ミスはあっても4回転2本とも確実に回り切っているというのが素晴らしいなと思います。
 フリーでも最高レベルの難しいジャンプ構成で臨むコフトゥン選手。満足のいく演技ができることを祈っています。


 4位はロシアのベテラン、セルゲイ・ボロノフ選手です。

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 冒頭は得点源となる4トゥループ+3トゥループ、若干着氷で詰まる感じがあったものの大きく乱れることはなく成功。後半に2つのジャンプ要素を固め、3アクセル、3ループと問題なく決め、フィニッシュしたボロノフ選手は納得の笑みを浮かべました。しかし、得点は84.48点とあまり伸びず、順位も4位に留まりました。
 演技は全体的にとても良くて、技術面ではステップシークエンスがレベル2と判定されたところはあったものの、スピンは全てレベル4を揃え、ジャンプもミスらしいミスはなくて、全エレメンツで加点が付く素晴らしい出来だったのですが、予想以上に低い得点になり、得点が表示されると会場からはブーイングが飛び交いました。
 今シーズン、ボロノフ選手はロステレコム杯で90.33点というパーソナルベストをマークしていますが、その時と比べると4+3や3アクセルのランディングがあまりきれいではなく、その分の加点が抑えられたために思ったようにスコアが伸びなかったというのはあるでしょう。ですが、気になるのは演技構成点(プログラムコンポーネンツ)の方で、ロステレコム杯では40点台だったのが、今回は38点台ということでちょっと厳しめだなと感じますね。細かなミスがあったとはいえ演技全体の流れは良かったですから、ロステレコム杯の時に迫るくらいの点が出てもおかしくないのになと思うのですが……。ロステレコム杯は地元のロシアだから気前良く点が出たという面もあるでしょうが、今回はボロノフ選手の好演が報われなかった感じがして少し残念でしたね。
 フリーでもボロノフ選手らしい演技、そして心からの笑顔が見られることを願っています。


 5位は地元スペインのハビエル・フェルナンデス選手です。

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 冒頭は大技4サルコウから、回転は充分だったものの着氷でこらえきれず転倒してしまいます。さらに、3ルッツ+3トゥループはルッツが2回転に抜けてしまい、こちらもミス。後半の3アクセルも危なっかしさがありましたが何とか成功させ、ステップシークエンスとスピンでは全てレベル4を獲得する実力も発揮しましたが、ジャンプミスが響き、得点は79.18点で5位となりました。
 得意の4サルコウで完全に転倒となるのはフェルナンデス選手にしては珍しかったですが、微妙な力みみたいなものがあったのかなと感じます。3ルッツも普段の彼にとっては何でもないジャンプですが、些細な狂いが大きな違いを生むんだなと感じさせられましたね。
 母国でのファイナル、そして出場者唯一のスペイン選手ですから、期待を一身に背負ってかなりのプレッシャーがあったでしょうし、また、つなぎの部分でエッジが氷に引っ掛かったのか思わぬ転倒をする場面もあり、ロステレコム杯と比べると多少動きに硬さが見られ、精神的なものが影響したのだろうと思います。
 ただ、一度この空気を体感したことでフリーは緊張の度合いも変わってくるでしょうから、よりフェルナンデス選手らしい勢いのある演技が見られることを楽しみにしています。


 6位は日本の無良崇人選手です。

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 冒頭は単独の4トゥループでしたが、いつもより高さが足りず転倒。続く得意の3アクセルは完璧な回転と跳躍で成功させましたが、後半の3+3はセカンドジャンプの着氷で詰まり、GOEで減点を受けます。スピンやステップシークエンスでのレベルの取りこぼしもチラホラあり、本来の躍動感が影をひそめた演技となりました。得点は78.35点で6位発進となります。
 初めてのファイナルということでやはりいつも以上の緊張があったのか、ジャンプでも滑りでも少し硬さがあったような気がしました。ですが、今シーズンほとんど失敗のない3アクセルの安定感はさすがで、それだけに最後の3+3のわずかなミスがもったいなかったかなと思いますね。
 ただ、ジャンプの調子自体は悪くなさそうなので、あとは平常心さえ整えば無良選手らしい演技がフリーでは見られるのではないかと思うので、あまり気負わずに頑張ってほしいですね。



 さて、男子SPの結果については以上です。GPファイナルについては、女子&ペア、男子&アイスダンスという順番で今後書いていきたいと思います。また、その後にはジュニアGPファイナルに関する記事も書いていきますので、しばらくお待ちください。


:男子ショートプログラム上位3選手のスリーショット写真は、フィギュアスケート情報ウェブサイト「Absolute Skating」から、羽生選手の写真は、スポーツ情報ウェブサイト「web Sportiva」が2014年12月13日に配信した記事「羽生結弦が取り戻した笑顔と自信。「滑っていて幸せでした」」から、それ以外の写真は全て、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2014-12-15 01:52 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 グランプリファイナル2014が開幕しました。今年の舞台はスペイン・バルセロナ、スペインでGPファイナルが開催されるのは初めてのこととなります。この記事ではまず、女子シングルのショートプログラムの結果についてお伝えしたいと思います。
 首位に立ったのはロシアのエリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手です。小さなミスはあったものの、安定感のある演技で自己ベストに迫る高得点をマークしました。2位は同じくロシアのユリア・リプニツカヤ選手、3位もロシアのエレーナ・ラディオノワ選手です。

ISU Grand Prix of Figure Skating Final 2014/15 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 トップに立ったのはロシアのエリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手です。

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 ショートの演目はスペインともゆかりのある「ボレロ」。冒頭の3トゥループ+3トゥループの連続ジャンプを完璧に決め、1.9点という高い加点を得ます。続く3ルッツは得意なジャンプでしたが、着氷で珍しくオーバーターンしてしまいます。しかし、その後のスピンとステップシークエンスはどちらも最高難度のレベル4。後半の2アクセルも難なく成功させると、どんどんエネルギッシュさを増す曲調に負けないダイナミックな演技を見せ、情熱的にフィニッシュしました。得点は67.52点、中国杯でマークした自己ベストにはわずかに及ばなかったものの、完成度の高いプログラムを披露して1位発進となりました。
 ひとつ細かなミスはありましたが、今季ずっと調子の良さを保ち続けているトゥクタミシェワ選手らしいスピード感溢れる滑り、ハイレベルなエレメンツで、今回もたっぷり「ボレロ」を楽しませてくれましたね。今シーズン、SPの3ルッツがGOEでマイナスになるようなミスは皆無だったので、そのルッツでミスというのは少々驚きましたが、やはりファイナルはこれまでの試合とは多少なりとも違う心情があるのではないかと思うので、そういった微妙な心理状態が影響したのかもしれません。
 とはいえ、相も変わらずの安定感で、フリーに向けてもそんなに心配する要素もなさそうですし、現地入り前に少し体調を崩していたようですが、演技からはその影響もほとんど感じられませんでした。今季のトゥクタミシェワ選手はここまでGP2大会を含め、何とすでに6つの試合をこなしていて、11月上旬の中国杯の後にもチャレンジャーシリーズのワルシャワ杯に出場しているんですね。トップレベルの選手でこれだけ国際大会に出まくるというのは近年では例を見ない多忙ぶりですが、あえて試合と試合の感覚を空けすぎずコンスタントに実戦をこなすことで調整していて、実際に今のところはそれが見事にうまくいって高いレベルでコンディションを保ち続けているなという印象を受けますね。
 フリーではどんな演技を見せてくれるのか、楽しみです。


 僅差の2位につけたのはこちらもロシアのユリア・リプニツカヤ選手。

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 冒頭はこれまでのGP2大会より難度を上げた3ルッツ+3トゥループ、これをパーフェクトに成功させます。後半に2つのジャンプ要素を固める構成で、その1つ目、2アクセルは問題なく着氷。さらに続く3フリップもきれいに決めたように見えましたが、エッジエラーと判定されて減点されてしまいます。しかし、ミスらしいミスは無く、最初から最後までリプニツカヤ選手らしい伸びやかかつ溌剌とした演技を披露し、フィニッシュしたリプニツカヤ選手は嬉しそうにガッツポーズを見せました。ですが、得点は思ったほど伸びず66.24点で2位となりました。
 リプニツカヤ選手の喜びようからしても間違いなく今季最も良い演技で、しかも3+3の難度も上げているわけなので、スコア的にも充分シーズンベストは望める出来のように思えたのですが、クリーンに成功したかに見えた3フリップで大幅に減点という意外な落とし穴がありましたね。テレビ解説の織田信成さんは冒頭の3ルッツ+3トゥループのルッツのエッジエラーがあるのではないかという指摘をしていて、私もスロー映像で見る限りはクリーンにアウトサイドで踏み切っていたように見えなかったので、そちらの方が気になったのですが、実際にはその3+3は減点はされていません。その一方で3フリップが大きくマイナスになるというのはちょっと予想外でしたね。
 演技直後は満面に笑みを浮かべたものの、一転キス&クライでの得点表示直後は顔を曇らせたリプニツカヤ選手。フリーではキス&クライでも笑顔が見られることを願っています。


 3位はロシアのエレーナ・ラディオノワ選手。

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 SPはスペインの伝統舞踊、フラメンコ。冒頭の3ルッツ+3トゥループはいつもどおりの安定感で加点1の高評価。しかし、スピンとステップシークエンスを挟んだ後半、3ループで転倒してしまいます。次の2アクセルも若干着氷が詰まったもののこらえてミスにはせず。いくつかほころびはありましたが、終始アップテンポで激しいプログラムをパワフルに演じ切りました。得点はジャンプミスが響いて63.89点と伸び切りませんでしたが、3位の好位置につけました。
 今大会のラディオノワ選手は現地入りしてから風邪をひいたということですが、全体の動きやキレからはいつもと違った印象は受けませんでしたね。ただ、珍しく3ループで転倒があり、ラディオノワ選手自身もショート後の記者会見で、3ループの失敗について疲れを理由に挙げているので、やはり風邪が影響を及ぼしているのかもしれません。体調が思わしくないのだとすると、フリーは演技時間が長くなるので体力面が心配になってくるのですが、フリーまでは中1日ありますから、その時間をうまく利用してコンディションを整えてフリーに臨めることを祈っています。


 4位となったのはロシアのアンナ・ポゴリラヤ選手。

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 冒頭は大技の3ルッツ+3トゥループでしたが、3ルッツの着氷でこらえ気味になったため単独ジャンプにします。後半に入り、単独の3ループに3トゥループを付けて急遽連続ジャンプにしましたが、セカンドジャンプの回転が足りず転倒。続く2アクセルはしっかり決めましたが、2つのジャンプ要素でミスがあり、得点は伸びず61.34点、4位に留まりました。
 ミスがあった冒頭の3ルッツは回転不足というわけでもなく、そんなに悪い感じのジャンプには見えなかったのですが、いつも以上にスピードが出ていたような気がしました。無理にコンビネーションにしなかったのは好判断だったと思うのですが、その分3ループのところで多少強引に3トゥループを跳んで転倒に繋がってしまったのはもったいなかったですね。
 ですが、上位まではまだまだ小差ですので、ポゴリラヤ選手らしい演技で挽回してほしいなと思います。


 5位は日本の本郷理華選手です。

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 まずは得点源となる3トゥループ+3トゥループから、これをパーフェクトに決めて1点の高い加点を獲得、上々の滑り出しを見せます。レベル4のスピンを2つ挟んだ後半、3フリップもクリーンに着氷、最後の2アクセルも難なく成功させると、バレエ「海賊」の華やかな曲想に乗って軽快に踊り、笑顔で演技を終えました。得点は61.10点で目標としていた60点台&自己ベストを達成し、5位につけました。
 スケートカナダ、ロステレコム杯と試合を重ねるたびにどんどん成長していく本郷選手ですが、今回もさらに階段を上がったなと感じさせてくれる演技でした。ファイナリスト6人の中では唯一の初出場、もの凄いメンバーの中に入って演技前は緊張していたそうですが、とてもそうは見えない堂々ぶりで、ほかの選手たちと比べても全く見劣りしない演技だったと思います。
 思えば今季の本郷選手は当初の予定ではGP1大会のみの出場で、それが他選手の欠場によってロステレコム杯の出場が回ってきて、そこで予想外の優勝を手にしました。そして、今回のファイナルもアメリカのグレイシー・ゴールド選手の欠場による繰り上がりということで、まるでドラマのような不思議な巡り合わせと幸運が付いてきているんですね。正直、GP前には想像もつかなかった展開であれよあれよという間にファイナルまでやって来た本郷選手ですが、今の本郷選手の姿を見ているとそういった状況に振り回されたり浮き足立ったりすることなく、しっかり地に足が付いているなという印象を受けます。それだけ彼女の中に揺らぐことのない軸があって、さまざまな経験や困難を自分の支えとして確固たるものにしているからこそ、何ものにも翻弄されることのない“自分”というのを保ち続けられるんだろうなと思います。
 フリーでも楽しくのびのびと滑って、本郷選手の満面の笑みが見られることを願っています。


 6位となったのはアメリカのベテラン、アシュリー・ワグナー選手。

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 冒頭は3フリップからの連続ジャンプでしたが、着氷で大きくバランスを崩し単独になります。後半に入ってまずは2アクセルを決め、続く3ループに2トゥループを付けてリカバリーしますが、ここでもわずかにGOEで減点されます。しかし、スピンでは全てレベル4を取り、演技全体でもベテランらしい風格ある壮大な滑りでワグナー選手らしさを発揮。得点は60.24点で6位となりました。
 今シーズンここまでのワグナー選手はジャンプで細かく回転不足を取られることが多く、そういったジャンプをできるだけ正確にクリーンに降りることが彼女の課題だと思うのですが、冒頭の3フリップはその課題に神経を尖らせるあまりミスに繋がってしまったのかなという感じがしました。
 ですが、ジャンプはジャンプとして、表現面ではワグナー選手にしか出せない重厚な味わいというものがあって、ロシアの10代の選手たちとは全く異なるベテランならではの魅力を改めて感じましたね。
 フリーではワグナー選手の納得のいく演技ができるといいなと思います。



 女子ショートプログラムについてはここまで。全体的にミスが目立ち、完璧だったのは本郷選手だけとなりましたが、それでも全員60点台に乗せるファイナルらしいハイレベルな戦い。1位から6位まで約7点差と詰まっていますから、フリー次第で大幅に順位が入れ替わることもありうるでしょうし、誰が金メダルを手にするのか今の段階では全然予想がつきません……。女子フリーは現地時間の13日、日本時間の14日深夜に行われます。
 次の記事では男子ショートプログラムについて書きます。


注:女子ショートプログラム上位3選手のスリーショット写真は、フィギュアスケート情報ウェブサイト「Absolute Skating」の公式フェイスブックページから、その他の写真は全てスポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2014-12-13 15:59 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 前の記事に続き、NHK杯2014の男子とアイスダンスについてお伝えしていきます。

ISU GP NHK Trophy 2014 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 6位にはカナダのエラッジ・バルデ選手が入りました。

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 SPは「This is a Man's Man's Man's World/I Got You (I Feel Good)」のジェームス・ブラウンメドレー。冒頭は4トゥループでしたが、アンダーローテーション(軽度の回転不足)で降りてきてしまい着氷でバランスを崩します。続く3アクセルと後半の3ルッツ+2トゥループはしっかり決め、演技をまとめました。得点は67.50点で7位発進となります。
 フリーは「Barrie San Miguel/Galicia Flamenca」のフラメンコ作品。まずは前日失敗した4トゥループ、これをクリーンに成功させます。さらに3ルッツ+3トゥループも完璧。3アクセルはGOEで若干減点を受ける出来となりますが、後半は3フリップがダブルになった以外はミスらしいミスなく、演技を終えたバルデ選手は納得したような表情を見せました。得点は145.00点でパーソナルベスト、トータルでも自己ベストをマークし、SPから一つ順位を上げて6位となりました。
 細かなミスはありましたが、全体的には安定していてバルデ選手特有の表現力というのも存分に見せてくれましたね。ショートはソウルシンガーの大御所、ジェームス・ブラウンの楽曲を使用して、プログラム序盤では握り拳をマイクに見立てて歌う独創的なパフォーマンスも取り入れるなど、ジェームス・ブラウンになり切ったオリジナリティー溢れる楽しいプログラムでしたし、フリーは一転、真面目かつ男性の色気を漂わせるフラメンコで、一つ一つの音を丁寧にとらえた全身の動きでフラメンコ特有のリズムや雰囲気をしっかり表現していて、バルデ選手の新たな一面を見ることができました。
 次の大舞台はカナダ選手権になると思いますが、3年連続で4位となっているバルデ選手。今季こそ表彰台に立てることを願っています。


 7位はアメリカのロス・マイナー選手です。

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 ショートは「追憶」。冒頭はステップシークエンスから入る独創的な構成で、その後に4サルコウでしたが、すっぽ抜けて2回転となってしまいます。さらに3アクセルも回転は認定されたものの着氷でミス、後半の3ルッツ+2トゥループも細かなミスがあり、全てのジャンプ要素でミスという苦しい演技内容となりました。得点は63.36点、10位と出遅れます。
 フリーはイタリアの歌手、アンドレア・ボチェッリさんが歌う「Romanza」。冒頭はSPと同じ4サルコウでしたが、3回転となった上に回転不足となります。続く3アクセルでも着氷ミスが出てしまいますが、次の3+3はクリーンな回転と着氷。後半に入ると本来の調子を取り戻し、3アクセル+2トゥループなど大きなミスなくジャンプをこなし、大崩れすることなく演技を終えました。得点は142.00点、フリー7位でショートから大きく順位を上げ、総合7位でフィニッシュしました。
 昨シーズンは足の怪我があり、思ったようなシーズンを過ごせなかったマイナー選手。今大会もジャンプは不安定さが目立ちましたが、フリーはSPの分をしっかり挽回していたと思いますし、両プログラムともマイナー選手の繊細なスケート、表現によく合っていて、完成したものを見たいなと思わせられましたね。
 全米選手権ではショートとフリー、両方マイナー選手らしい演技が揃うよう、祈っています。



 男子シングルについてはここまで。ここからはアイスダンスの結果についてです。

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 優勝したのはカナダのケイトリン・ウィーバー、アンドリュー・ポジェ組です。SDはステップでレベル2となる部分はありましたが、全てのエレメンツにおいてハイレベルな技を披露し、断トツの首位発進。フリーも取りこぼしの無いほぼノーミスの演技で2位に大差をつけ、圧倒的な力の差を見せて優勝を飾りました。
 これでウィーバー&ポジェ組はスケートカナダに続いて2連勝となり、2年連続、4回目のファイナル進出を決めました。すでに世界選手権ではメダルを獲得しているカップルですが、意外にもファイナルの表彰台は一度もないんですね。今度こそメダル獲得となることを楽しみにしています。NHK杯優勝、おめでとうございました。
 2位はロシアのクセニア・モンコ、キリル・ハリャービン組。SDは大きなミスこそなかったものの、パーシャルステップシークエンスで加点を稼ぐことができず、3位に留まりました。しかし、フリーでは取りこぼしなく全エレメンツで加点を獲得し自己ベストで2位、総合でも2位に上がり、GP初のメダルを手にしました。
 モンコ&ハリャービン組はカナダ大会4位の結果と合わせて22ポイントとなり、同じロシアのエレーナ・イリニフ、ルスラン・ジガンシン組とポイントでは並びましたが、総合得点の2大会合計でイリニフ&ジガンシン組を下回り、惜しくも7位でファイナル進出を逃しました。ですが、GP参戦3年目での大きな飛躍を果たし、充分な存在感を示したのではないでしょうか。
 3位はアメリカのケイトリン・ハワイエク、ジャン=リュック・ベイカー組。ショート、フリーともにレベルを取りこぼす部分がありましたが、大きなミスのない安定した演技を見せ、こちらもGP初めての表彰台に立ちました。
 

 6位となったのは日本のキャシー・リード、クリス・リード組です。

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 SDは「El Cid - Farruca/Gato Montes」。ツイズルやパーシャルステップシークエンスではGOEでわずかに減点される部分もありましたが、大きなミスなく演技を終え、得点は50.55点、目安となる50点台にしっかり乗せ7位につけました。
 FDは映画『ティファニーで朝食を』の世界観を表現した「Moon River/Mr. Lucky/The Big Blow Out」。こちらもツイズルで若干マイナスされましたが、その他のエレメンツでは全て加点が付き、目立ったレベルの取りこぼしのない丁寧な演技を見せました。得点は80.33点でフリーのみだと5位、トータルでも6位と順位を上げてフィニッシュしました。
 さいたまで開催された世界選手権後の今年4月にクリス選手が膝の手術を行い、10月のスケートアメリカはエントリーしたもののクリス選手の膝の状態が良くなく欠場、今大会は世界選手権以来の実戦となりました。クリス選手の膝の具合は毎日変わるそうで、今の段階で試合に出場するのは身体的にも技術的にも難しいことだったと思いますが、現在のベストを尽くした素晴らしい演技でした。
 次の試合は年末の全日本選手権になるキャシー選手とクリス選手。練習の分量だったり程度だったりもいろいろ考えながらの作業で大変でしょうが、全日本選手権でもふたりらしい演技と笑顔が見られることを楽しみにしています。


 GP初出場となった日本の平井絵巳、マリオン・デ・ラ・アソンション組は8位となりました。

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 SDは「Garcia Lorca/Farrucas」。緊張していたためか細かなミスがありましたが、パーソナルベストに迫る得点をマーク。
 FDはブルース・ブラザーズの楽曲をメドレーにした「Peter Gunn theme performed/Riot in the cell block No. 9/Shake Your Tail Feather」。こちらもいくつか小さなミスはあったものの、ツイズルやスピンでレベル4を獲得するなど実力も見せ、ショートよりのびのびとした滑りを披露しました。得点は67.66点でパーソナルベスト、フリー7位で総合8位で初めてのGPを終えました。
 GPデビューとなった平井&デ・ラ・アソンション組。初めての大舞台でうまくいかなかった部分もあったでしょうが、フリーではしっかり一つ一つのエレメンツをこなして自己ベストをマークして、上々のGPデビューだったのではないでしょうか。まだ結成4年目のカップルなので、ふたりのユニゾンといった点はこれからもっと磨かれていくでしょうし、何よりこういった大きな大会を経験することが技術的にも表現的にもレベルアップに繋がっていくと思うので、今大会で得たものを糧に頑張っていってほしいなと思いますね。



 さて、NHK杯2014、男子とアイスダンスについてはこれで以上です。GPシリーズ最終戦なので、記事の最後に男子とアイスダンスのファイナル進出者一覧をまとめ、ちょっとした感想も書きたいと思います。(敬称略)


《男子シングル》

①マキシム・コフトゥン(ロシア):30ポイント 中国大会優勝、フランス大会優勝
②ハビエル・フェルナンデス(スペイン):28ポイント カナダ大会2位、ロシア大会優勝
③町田樹(日本):28ポイント アメリカ大会優勝、フランス大会2位
④無良崇人(日本):26ポイント カナダ大会優勝、日本大会3位
⑤セルゲイ・ボロノフ(ロシア):26ポイント ロシア大会2位、日本大会2位
⑥羽生結弦(日本):22ポイント 中国大会2位、日本大会4位
―――――
補欠⑦ジェイソン・ブラウン(アメリカ):20ポイント アメリカ大会2位、ロシア大会5位
補欠⑧デニス・テン(カザフスタン):20ポイント アメリカ大会4位、フランス大会3位
補欠⑨ナム・グエン(カナダ):20ポイント アメリカ大会3位、中国大会4位


《アイスダンス》

①マディソン・チョック、エヴァン・ベイツ組(アメリカ):30ポイント アメリカ大会優勝、ロシア大会優勝
②ケイトリン・ウィーバー、アンドリュー・ポジェ組(カナダ):30ポイント カナダ大会優勝、日本大会優勝
③ガブリエラ・パパダキス、ギヨーム・シゼロン組(フランス):30ポイント 中国大会優勝、フランス大会優勝
④マイア・シブタニ、アレックス・シブタニ(アメリカ):26ポイント アメリカ大会2位、中国大会2位
⑤パイパー・ギレス、ポール・ポワリエ組(カナダ):26ポイント カナダ大会2位、フランス大会2位
⑥エレーナ・イリニフ、ルスラン・ジガンシン組(ロシア):22ポイント 中国大会4位、ロシア大会2位
―――――
補欠⑦クセニア・モンコ、キリル・ハリャービン組(ロシア):22ポイント カナダ大会4位、日本大会2位
補欠⑧マディソン・ハベル、ザカリー・ダナヒュー組(アメリカ):22ポイント カナダ大会3位、フランス大会3位
補欠⑨ペニー・クームズ、ニコラス・バックランド組(イギリス):18ポイント ロシア大会3位、日本大会5位




 男子シングルは日本勢3名、ロシア勢2名、スペイン勢1名という顔ぶれとなりました。日本男子が3人以上出場するのは一昨年から3年連続、ロシア男子が複数出場するのは2002年にエフゲニー・プルシェンコ選手、イリヤ・クリムキンさん、アレクサンドル・アブトさんの3名が出場して以来とのことですから、何と12年ぶりということになります。
 やはり層の厚さという点では日本男子が一歩リードしているのかなという感じですが、優勝争い、メダル争いとなると混沌としていますね。羽生選手が完全に復調してファイナルに臨めれば、スコア的にも実績的にも抜きん出ているわけですから断トツの優勝候補になるのですが、NHK杯から短い期間でどこまで本来の調子が戻ってくるかというのは分からないので、今のところ圧倒的な優勝候補とまでは言えませんね。
 ポイントランキング1位でファイナルに進出したのはコフトゥン選手ですが、いかんせん若い選手なので、まだ安定感には欠けるところがあるかなという気がします。でも、すでにファイナルの経験はありますし、もの凄いジャンプ構成を組んでくる選手なので、調子が良ければ優勝できるくらいの高得点を稼ぐ可能性は充分にありそうですね。
 そのほかを見渡しても2大会ともで本領を発揮した選手というのはいなくて、一方では良くて、一方では調子を崩してという感じの選手が多いのですが、その中でも2大会のスコア合計で頭一つ抜けているのが、フェルナンデス選手と町田選手。フェルナンデス選手も町田選手も2大会の合計が500点を超えているので、表彰台争いではかなり強力な二人かなと思います。
 初出場の無良選手、ボロノフ選手はファイナル独特の雰囲気に飲まれることなく、自分らしい演技をできるかがポイントになりそうですが、自分のペースを保てれば、やはりこの二人も十二分にメダル争いに絡んでくるでしょうね。


 そしてアイスダンス。こちらはアメリカ勢とカナダ勢がそれぞれ2組ずつ進出と、やはり北米勢が相変わらずの層の厚さ、強さを見せつけましたね。圧倒的な力を誇ったアメリカのメリル・デイヴィス、チャーリー・ホワイト組とカナダのテッサ・ヴァーチュー、スコット・モイアー組が休養中で不在なわけですが、その分若手カップルがその穴をしっかり埋めているという感じで、ナショナルチームとしての安定感をアメリカやカナダからは感じます。
 ポイントランキングで30ポイント、つまり2大会とも優勝というカップルが3組いて、この3組で6大会の優勝を2つずつ分け合うような格好になりましたが、2大会の合計スコアではチョック&ベイツ組とウィーバー&ポジェ組が他カップルに差をつけています。アイスダンスの場合、GPシリーズの合計スコアが上位のカップルがそのままファイナルでもメダルを獲得するというパターンが近年は多いので、上述した2組は大きなミスがない限り、1、2位は堅いのかなという気がします。
 3位争いとなるとまた少し違って、合計スコアでは4位、5位というカップルでもファイナルでは表彰台ということは今までもあるので、合計スコアではパパダキス&シゼロン組が全体の3位ですが、パーソナルベストではシブタニ&シブタニ組と同じくらいですし、経験という意味でもパパダキス&シゼロン組は初めてのファイナルなので、その若さがどう出るかという感じですね。
 5位のギレス&ポワリエ組、6位のイリニフ&ジガンシン組もファイナル初出場で、こうした若いカップルの多さはオリンピックの次のシーズンということを感じさせますが、ポワリエ選手は他のパートナーと組んでファイナルに二度出場したことがありますし、イリニフ選手も昨季まで他のパートナーと組んでソチ五輪で銅メダルを獲得したことは記憶に新しいところ。それぞれ若いカップルといっても経験は豊富なので、そういった点にも注目していきたいですね。



 GPファイナルをかけた全6戦が終了、残りはファイナルのみとなりましたが、全ての種目のファイナル進出者を見渡して目立つのはロシア勢。男子、女子、ペア、アイスダンス全てに選手を送り込んでいて、ソチ五輪が終わってもやっぱり強いなーという印象です。ソチ五輪がゴールなのではなくて、ソチ五輪をスタートとしてフィギュアスケート大国ロシアの黄金時代が再び始まったんだなと思い知らされますね。
 日本勢は男子の3名に加え、女子では補欠1番手だった本郷選手が繰り上がりでファイナルに初出場することが決定。どの選手もバルセロナの舞台で思う存分実力を発揮して、楽しく演技できることを祈っています。
 では、またファイナルの記事で。


:男子シングルメダリスト3選手のスリーショット写真、バルデ選手の写真、リード&リード組のFDの写真、平井&デ・ラ・アソンション組のSDの写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、マイナー選手の写真、アイスダンスメダリスト3組の写真は、エンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、リード&リード組のSDの写真は、AFPBB Newsが2014年11月30日の7:52に配信した記事「ウィーバー/ポジェ組がアイスダンス首位発進、リード組は7位 NHK杯」から、平井&デ・ラ・アソンション組のFDの写真は、AFPBB Newsが2014年11月30日の15:15に配信した記事「カナダペアがアイスダンス優勝、リード組は6位 NHK杯」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2014-12-06 02:23 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 グランプリシリーズ14/15、最終戦のNHK杯について、前回の女子とペアの記事に続いて男子とアイスダンスについてお届けします。
 男子シングルの優勝者は日本の村上大介選手です。初めてのGP表彰台が何と優勝というビッグサプライズを起こしました。2位はロシアのセルゲイ・ボロノフ選手、この結果により自身初のファイナル進出を決めています。3位は日本の無良崇人選手、こちらも初めてのファイナル進出が決定しました。
 アイスダンスを制したのはカナダのケイトリン・ウィーバー、アンドリュー・ポジェ組。GP2連勝で4度目となるファイナルへの切符を手にしています。

ISU GP NHK Trophy 2014 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 金メダルを獲得したのは日本の村上大介選手です!

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 SPは「ロクサーヌのタンゴ 映画『ムーラン・ルージュ』より」。冒頭は4サルコウ+2トゥループから、これを非の打ちどころなくパーフェクトに決めて高い加点を得ます。さらに3アクセルも完璧でさらに高い加点が付く出来。後半の3フリップも難なく着氷し、ステップシークエンス、スピンでも取りこぼしなくエレメンツをこなすと、「ロクサーヌのタンゴ」の重厚なリズムを全身で情熱的に表現。フィニッシュした村上選手は両手を空中に突き上げ、喜びを爆発させました。得点は79.68点、自己ベストを9点以上更新する会心の演技で3位発進となりました。
 本当にマイナスの全くない完璧な演技で圧倒されましたね。正直失礼ながらこれがあの村上選手かと思ってしまうほどの安定感と堂々とした存在感のある演技で見違えました。
 何といっても素晴らしかったのが4サルコウ。トゥループと違って爪先をつかない分跳び上がるのがより難しいジャンプですが、冒頭にさらりとお手本のようにクリーンに跳んでしまって、そこから一気に村上選手の世界が広がっていった感じでしたね。元々サルコウが得意な選手ですが、それにしてもこんなに綺麗に!と驚かされました。
 プログラムは「ロクサーヌのタンゴ」ということで、かつて高橋大輔さんが演じたことでも知られている楽曲ですが、村上選手はシーズン当初は映画『風とライオン』のサントラを使用したプログラムを滑っていたものの、しっくりこなかったのか東日本選手権から「ロクサーヌのタンゴ」に変更。それから1か月ない中での演技とは思えないほど見事に仕上げてきたなと思いますし、音楽との調和も素晴らしかったですね。

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 フリーはラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」。序盤は難度の高い大技の連続。まずは4サルコウを前日同様きれいに着氷すると、続く4サルコウ+2トゥループも完璧に成功。さらに3アクセル+2トゥループ、単独の3アクセルもクリーンに決めます。後半に入るとますます勢いは増し、それぞれ単独ジャンプを4つ立て続けに成功、スピンでも全てレベル4を揃えるなどそつのない滑りを見せ、演技を終えた村上選手は前日以上に歓喜を露わにしました。得点は166.39点、これまでのパーソナルベストを30点以上上回るハイスコアでフリー1位、総合でも1位に輝きました。
 前日のSPの上位3選手による記者会見で村上選手は、「僕は絶対に順位は落ちるので」と話していましたが、それくらい本人も、そして周囲の関係者の方や日本のフィギュアファンもなかなか想像できなかった劇的な結末でしたね。SPのジャンプが安定していたので表彰台は充分にありうると思っていましたが、それでも優勝までは予想できなかったです。でも、SPとフリー合わせてノーミスだったのは彼だけですから、優勝するのは当然といえば当然、逆に優勝しなかったらおかしいくらいの申し分のない演技でした。
 ジャンプは本当に失敗する気配の微塵もない安定感でしたね。練習から絶好調だったそうですが、練習が良くても本番で崩れるというのはよくあることですから、練習が良かったから本番も良かったというそんな単純なことではないと思うのですが、でもやはり練習の好調さ、そして実際にショートで練習どおりに出来たというのが、フリーにも良い影響を与えたのでしょうね。
 また、村上選手は「ノープレッシャーだった」ともおっしゃっていて、実際にそういった心の軽さがSPでの好演に繋がったのだろうと思います。ですが、SPで思いがけず3位という好位置に立ったことによって、心境の変化というのは間違いなく生まれたでしょうし、表彰台を守りたいという意識があったかどうかは分かりませんが、フリーは“ノープレッシャー”ということはなかったのではないかと想像します。その中であれだけ落ち着いて演技できたということは、村上選手の地力がついてきたことの証なのだと思います。
 NHK杯のチャンピオンという華々しい肩書きを背負って全日本選手権に挑むことになる村上選手。一躍注目される存在になったのでノープレッシャーで臨むことはできないかもしれませんが、村上選手のペースでまた全日本に向けて歩みを進めていってほしいなと思いますね。NHK杯優勝、おめでとうございました。


 銀メダリストとなったのはロシアのベテラン、セルゲイ・ボロノフ選手です。

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 SPはまず4トゥループ+2トゥループの連続ジャンプをクリーンに降り、好スタートを切りますが、後半の3アクセルは着氷で大きく乱れます。最後の3ループは問題なく成功させ、スピンでも全てレベル4を獲得するなど、実力者らしい安定ぶりを見せましたが、3アクセルのミスと全体的にGOE加点が伸びなかったこともあり、得点は78.93点とシーズンベストから10点以上低い得点となり、4位に留まります。
 フリーは4回転を2本組み込んだ構成で挑み、まずは4トゥループ+3トゥループをSPよりもきれいに決め、1点以上の高い加点を獲得。さらに前日失敗に終わった3アクセルからの連続ジャンプも完璧に成功させます。続く単独の4トゥループは3回転になり、3ルッツも2回転になりますが、その後は全てのジャンプ要素を予定どおりにクリアし、ボロノフ選手らしい男性的な色気を漂わせたプログラムを最後まで丁寧に演じ切りました。得点は157.72点でフリー順位は2位、総合2位に順位を上げました。
 ショートは3アクセルの大きなミスがあったとはいえ、それ以外はまずまずの内容だったので80点台を割り込んだのは意外でしたが、フリーは大崩れすることなくきっちり挽回してきて、欧州選手権銀メダリストの実力を見せつけてくれましたね。
 ボロノフ選手はこれまでのGPではなかなか2大会が揃わなかったのですが、大崩れしないという点では確実性が出てきて、トップスケーターとしての風格も感じられるようになってきたなと思います。
 これで2大会を終えて26ポイント、全体の5位で初のファイナル進出を決めたボロノフ選手。27歳なのでファイナリストの中では最年長となりますが、初出場なのであまり気負わずボロノフ選手らしい演技を見せてほしいですね。


 3位は日本の無良崇人選手です。

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 SPはまず4トゥループ+3トゥループをクリーンに決めると、代名詞の3アクセルは見事な高さと幅で加点2という高評価。後半の3ルッツも難なく着氷すると、ステップシークエンスでは「カルメン」の“闘牛士の歌”の軽快かつアップテンポな曲調にピタリと合った華やかなステップを披露、熱狂的にフィニッシュしました。得点は86.28点、自己ベストを2点ほど更新しトップに立ちました。
 スケートカナダで優勝し、プレッシャーがかかる状態でショートに臨んだ無良選手。そのせいかスケートカナダよりも最初は硬さがあるかなと感じましたが、ジャンプを降りるたびに少しずつ演技に柔らかさが出てきて、生き生きと「カルメン」の世界を表現していましたね。スケートカナダの記事でも書いたのですが、「カルメン」というと私は女子スケーターが妖艶に力強く“カルメン”を演じるという印象が強かったのですが、無良選手のような武骨な男らしさが魅力的な男子スケーターが演じると全く違った雰囲気になって、こういう表現のアプローチの仕方もあるんだな、こういう「カルメン」もありなんだなと、良い意味で「カルメン」のイメージを裏切られるような形で楽しく演技を見させてもらってますね。

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 フリーは最終滑走者として演技に臨んだ無良選手。前日はクリーンに決めた4トゥループが回転不足となり着氷で乱れます。ですが、2本目の4トゥループはしっかりと着氷してコンビネーションジャンプに繋げます。次は得意の3アクセルでしたが、力みが入ったのか珍しく1回転に。ミスの多い前半となりましたが、後半は細かなミスもあったものの3アクセル+2トゥループを含めジャンプをしっかりこなしました。演技を終えた無良選手は悔しそうに顔をしかめました。得点は148.16点、フリーは4位でしたが、ショートのアドバンテージを活かして何とか表彰台を守りました。
 SPから別人のように打って変わった演技になってしまいましたね。無良選手はフリーで最終滑走は初めてだったそうで、経験したことのない立場や空気というものがプレッシャーになってしまったのでしょう。無良選手がこれまで優勝した試合を見るとSP1位を守り切った優勝というのは何度もありますが、ただ順位として1位というのと、1位の上にさらに最後に滑るというとでは全然違うものなのですね。でも、ご本人がおっしゃっているように大きな舞台でこういった経験ができたのは良いことだと思いますし、ファイナルや世界選手権といったさらに大きな試合でも今回の失敗が糧になるのではないかと思います。
 演技内容的には点数が思った以上に抑えられたなという感じが私はしたのですが、ダウングレード含め回転不足が複数ありましたし、ジャンプに余裕がなかったというのもGOEに影響したのだろうと思います。ただ、その中でも4回転1本、3アクセル1本は確実に決めているので、その点では無良選手が長年掛けて積み重ねてきた底力を垣間見ることができましたね。
 2大会合計26ポイントで初のファイナル進出を決めた無良選手。ファイナルでは今大会よりものびのびとした演技を見られることを楽しみにしています。


 4位は日本の羽生結弦選手です。

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 中国杯の6分間練習で他選手と衝突するアクシデントに見舞われてから約3週間後の試合となった羽生選手。当初のジャンプ構成からはジャンプの順番を変更して臨みました。冒頭は大技の4トゥループでしたが、アンダーローテーション(軽度の回転不足)で降りてきてしまい転倒。後半の3アクセルは完璧に着氷し高い加点を得ましたが、3ルッツ+3トゥループの連続ジャンプはファーストジャンプの着氷で乱れてしまい、セカンドジャンプが1回転となるミス。ステップシークエンスやスピンでは本領を発揮したものの、ジャンプミスが響き、得点は78.01点、5位発進となりました。
 直前の6分間練習では4トゥループもきれいに着氷していたので、これはいけるのではないかという雰囲気を漂わせていましたが、本番は負傷による練習不足の影響がもろに表れた内容となってしまいました。万全な状態ならば4トゥループが回転不足になることなどほとんどないので、ある程度予想できたことではありますが、改めてあの中国杯での出来事がもたらしたものの大きさを思い知らされた気がしましたね。
 ただ、その中でもステップシークエンスとスピンでは全てレベル4を獲得していて、ジャンプにミスが相次いだとしても他をおろそかにしないいつもの羽生選手らしさも感じることができました。

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 フリーもジャンプ構成を変更し、今季の目玉だった4回転3本を2本に減らしました。まずは1本目の4サルコウでしたが、すっぽ抜けて2回転になります。さらに続く4トゥループも3回転となり転倒。しかし、次の3フリップはきっちりと着氷します。後半に入り、3ルッツ+2トゥループ、3アクセル+3トゥループを立て続けに成功させ波に乗るかと思われましたが、3アクセルからの3連続ジャンプは1+1+3に。その後は演技が進むにつれ明らかにスピードが落ちましたが、最後まで気持ちを切らすことなく懸命に滑り切りました。得点は151.79点、フリー3位でショートから1つ順位を上げて大会を終えました。
 ショートの演技後は悔しさを露わにし、悔しい感情はプラスになるとしてフリーに挑んだ羽生選手でしたが、やはりあれだけのアクシデントに遭ったのですから、その影響を完全に払拭することはいくら羽生選手と言えども難しかったでしょうし、今回の演技内容は致し方ないことだと思います。
 羽生選手は競技後のインタビューで今大会思ったような演技が出来なかったことに関して、怪我の影響ではなく精神的な問題を主な理由に挙げました。実際のところ脚の負傷がどれほど回復しているのか、痛みの程度はどれくらいかといったことは本人にしか分からないのですが、そういった身体的なことはさておいて、確かに今大会の羽生選手の演技はエレメンツの成否やクオリティーなどとは別の面で、羽生選手らしくない部分があったかなと感じました。
 これまでも羽生選手が負傷しながら試合に出場したことは何度かあって、初出場した2012年の世界選手権の時は大会期間中に右足首を捻挫するというアクシデントを負いながらも、SP7位からフリー2位と挽回して銅メダルを獲得しました。2013年の世界選手権の時は1か月前にインフルエンザを患い満足に練習ができず、練習再開後は左膝、大会期間中は右足首と相次いで脚を痛め、満身創痍の中でSP9位から総合4位と巻き返しました。今回のNHK杯にも似た状況というのは過去にもあったわけですが、そういった時の羽生選手の演技というのはまさに“鬼気迫る”という形容詞に相応しい、怖いくらいの気迫や気力に満ち満ちていて、見ているこちらが羽生選手の身体から溢れるエネルギーに飲み込まれるかのような、そんな圧倒される何かがありました。それはジャンプの成功不成功とは関係がなくて、それこそ先日の中国杯のフリー演技の時は5度転倒し滑るのがやっとやっとというボロボロな状態だったわけですが、羽生選手の姿からは普通に演技している時以上の気力の猛烈さというのを感じました。
 ですが、今大会の羽生選手の演技からはそこまでの気迫や覇気が感じられませんでした。諦めの気持ちがあったとは思いませんが、かつて負傷を抱えながら演技をした時とは違う心情が羽生選手の中にあったのだろうと思います。
 今大会と中国杯の違いについて羽生選手は、「焦っていたか、そうでなかったかだけ」と話しました。また、SP後のインタビューではファイナルのことを意識しすぎていたとも言い、「僕ずっと『ファイナル行きたい、ファイナル行きたい』って言っているんですよ。『ファイナルじゃねえよ、ここ。NHK杯だよ』とすごく思ったんですね。ファイナルに行くためにこの試合をやる。そうじゃないんですよ。今は今だし、この大会はこの大会だからもっとこの試合に集中しなければいけないと思います」と自己分析しました。
 過去に身体的なトラブルを負いながら演技した時―2012年、2013年の世界選手権、そして先日の中国杯の時の羽生選手というのは、ただただ最後まで滑り切るということだけに没頭して、それ以外の何ものにもとらわれることなく演技のみに集中できていたのだと思います。ですが、今大会はファイナル進出が懸かる試合で、しかも中国杯のフリーに強行出場して2位になり、それによって手にしたファイナル進出のチャンスですから、あれだけ必死にやった演技を無駄にしたくない、せっかく頑張って勝ち取ったチャンスを生かさなければならないという意識が働いたのではないでしょうか。羽生選手と同じシチュエーションになれば誰だってそういう心境になるのは当たり前だと思いますが、そうした感情が雑念となって演技への集中を妨げ、羽生選手らしい気迫溢れる演技、ひいては本来のジャンプを失わせる要因の一つになったのかなと思います。
 また、中国杯のアクシデントによって羽生選手を見るメディアやファンの目は普段と違うものとなり、ブライアン・オーサーコーチや日本スケート連盟に対する批判の声も上がりました。SP前の記者会見で羽生選手は、強行出場を認めたコーチや連盟への感謝を口にし、自身のコンディションについても「あまり深刻に受け止めないでいただければ」と話しましたが、そういった羽生選手の発言から考えても、自分がしっかり演技することでコーチ・連盟に対する批判や自身に対する心配の目を一掃したい、そういう目で見られるのはこれで終わりにしたいという思いもあったのではないかと想像します。
 そんな諸々のことが羽生選手を難しい状況に追い込んだのかなと思いますが、中国杯2位、NHK杯4位でギリギリではあるもののひとまずファイナルの切符は獲得して、ひとつ試合を無事に終えたわけですから、ファイナルではNHK杯とは全く違ったフレッシュな気持ちで演技できるのではないでしょうか。NHK杯後はカナダに戻らず日本で調整を続けるとのことですが、NHK杯のあいだにも自らのジャンプの問題点を見つけていた羽生選手ですから十二分に修正可能だと思いますし、あとは無理しすぎず、これ以上ほかの部位を痛めないよう身体に気を付けて練習に取り組んでほしいですね。


 5位に入ったのはアメリカのベテラン、ジェレミー・アボット選手です。

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 SPは4回転を外したジャンプ構成にし、まずは3フリップ+3トゥループの連続ジャンプを確実に決めると、3ルッツも完璧。スケートアメリカではミスがあった3アクセルもクリーンに降ります。終盤のステップシークエンスではアボット選手の高度なスケーティング技術を存分に発揮、観客を魅了しました。得点は81.51点で2位につけます。
 フリーは冒頭に4回転を組み込んだ構成で臨みましたが、パンクして3トゥループになってしまいます。しかし、その影響を以降に及ぼすことなく、3フリップ+2トゥループ、3アクセルと着実にジャンプをクリア。後半は3アクセルからの連続ジャンプが単独になったり3ルッツが2回転になったりと、点をロスする部分はあったものの、静謐かつ重厚な音楽の世界観を見事に創り上げ、観客からは大きな拍手が送られました。得点は148.14点でフリー5位、トータルでも5位でフィニッシュしました。
 結果としては5位となったものの、SP、フリーともにアボット選手らしさは充分に発揮した演技だったと思います。特にフリーの「弦楽のためのアダージョ」は素晴らしく、テレビで解説をされていた本田武史さんは「この曲はアボット選手にしかできない」といったことをおっしゃっていましたが私も同感ですね。
 「弦楽のためのアダージョ」は映画やドラマの悲劇的な場面や葬送の場面で使われることが多く、悲哀を強く感じさせる重々しくゆったりとした旋律が印象的ですが、全体的に起伏が少なく、アップテンポな部分とスローな部分というパート分けがない上に、徐々にゆっくりとテンポが上がっていくという明確なメリハリのない楽曲です。だからこそ、フィギュアスケートのようにオーバーアクションな振り付けで演技し、緩急をつけながら滑るシチュエーションでは演じにくい音楽なのですが、アボット選手は抑制的な動作や仕草の中で見事にこの音楽を表現し、自分のものにしていました。それができるのは現役随一とも言えるアボット選手のスケーティング技術―ひと蹴りですっと伸び、最小限の足さばきでトップスピードを出し、途切れることのない流れをつくることのできるスケート技術の質の高さゆえでしょうし、この楽曲とこれほど一体化できるスケーターはアボット選手しかいないでしょう。
 今回は残念ながらジャンプミスやスピンのレベルの取りこぼしが複数あり、技術点が伸び悩んだためにさほど良い得点は与えられませんでしたが、とても心に響く演技でしたし、アボット選手の代表作にもなりうる秀逸なプログラムだと思います。次戦は全米選手権になると思いますが、アボット選手にとって納得いく演技・結果となることを祈っています。



 さて、申し訳ないのですが記事が長めになりましたので、この記事はここで一旦終了とさせていただきます。この続きは(その2)に書いていこうと思いますので、ぜひそちらもお読みいただければ幸いです。


:男子シングルメダリスト3選手のスリーショット写真、村上選手のSPの写真、無良選手のフリーの写真、羽生選手のフリーの写真、アボット選手の写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、村上選手のフリーの写真、ボロノフ選手の写真、無良選手のSPの写真、羽生選手のSPの写真は、エンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2014-12-05 00:56 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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※2014年12月5日、グレイシー・ゴールド選手のファイナル欠場、本郷理華選手のファイナル繰り上げ出場について追記しました。

 前記事のNHK杯2014・女子&ペア―グレイシー・ゴールド選手、GP初の金メダル獲得(その1)に続きまして、NHK杯2014の女子とペアの結果と内容について書いていきます。

ISU GP NHK Trophy 2014 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 6位となったのはカナダのガブリエル・デールマン選手です。

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 ショートは冒頭に得点源となる3トゥループ+3トゥループを組み込みましたが、ファーストジャンプとセカンドジャンプのあいだにターンが入った上、セカンドジャンプの着氷でも大きく乱れてしまいます。2つのスピンを挟んだ後半、3ルッツでもステップアウト、2アクセルはこらえた着氷と、3つのジャンプ要素全てにミスがあり、得点は53.46点と伸びず、7位に留まりました。
 フリーは後半に5つのジャンプ要素を固めるアグレッシブな構成。冒頭の3ルッツからの3連続ジャンプはファーストジャンプとセカンドジャンプの間にターンが入ったものの、何とか繋げて3連続にします。さらに2アクセル+3トゥループ、単独の3ルッツなど難度の高いジャンプも相次いで着氷し、演技を終えたデールマン選手は嬉しそうに顔をほころばせました。得点は111.28点でパーソナルベストを更新、最終順位を一つ上げて6位となりました。
 ショートはジャンプに苦労し、フリーでも同じように着氷で乱れる部分は多少あったのですが、それでも演技を崩壊させることなく、特に後半はどんどん持ち直して本来のデールマン選手らしいダイナミックなジャンプを次々と成功させていて素晴らしかったですね。ただ、決まったように見えた2アクセル+3トゥループのセカンドジャンプがダウングレード(大幅な回転不足)と判定されたりもして、キス&クライで得点が表示されると望んでいたスコアとは違うのかなというようなデールマン選手の表情もありました。
 そういった細かいミスがあったのは残念でしたが、ジャンプそのものに関しては高さとスピードのある加点の付きやすいタイプのものを持っていて、実際に今回も成功したジャンプはおおむね高い加点が付いていて、安定感が出てくると怖い選手になるんじゃないかなと感じましたね。表現的にも16歳とは思えないどっしりとした存在感と大人びた迫力があり、さらに洗練されてくると楽しみだなと思います。
 初めてのGPを5位と6位で終えたデールマン選手。カナダ国内の競争もシビアで、ここ2年は連続でカナダ選手権銀メダリストになっているとはいえ、同世代のライバルも台頭してきていてうかうかできない状況だと思います。デールマン選手らしい演技で、その競争を勝ち抜けることを願っています。


 7位は中国のエース、李子君(リ・ジジュン)選手です。

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 ショートはまず3フリップ+3トゥループに挑みましたが、セカンドジャンプの回転が足りず転倒してしまいます。しかし、後半は3ループと2アクセルを確実に決めて、最後まで丁寧に演じ切りました。得点は56.44点、まずまずの得点で5位発進となります。
 フリーはまず、前日失敗に終わった3フリップ+3トゥループから、回転不足ではなかったものの着氷でステップアウトとなります。続く2アクセル+3トゥループはクリーンに降りて高い加点を得ますが、次の3ルッツはこらえた着氷。その後のジャンプでも複数着氷でこらえる部分があり、また、スピンでも取りこぼしがあり、大崩れこそしなかったものの悔しさの残る演技となりました。得点は106.46点、フリー8位で総合7位に留まりました。
 身体の成長が著しく、ジャンプコントロールに苦労している現在の李選手。今大会もなかなか決まらずもどかしい思いをしているのではないかと想像しますが、中国杯よりは全体的に良くなっていましたし、まだまだシーズンは始まったばかりなので、焦らず根気よく今やっている取り組みを続けてほしいなと思いますね。シーズン後半では李選手の満面の笑みが見られることを楽しみにしています。



 ここからはペアです。

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 優勝したのはカナダの実力者ペア、メーガン・デュアメル、エリック・ラドフォード組です。SPでは全てのエレメンツにおいてハイレベルな技をこなし、難しい3ルッツのサイドバイサイドジャンプやスロージャンプもクリーンに決めるなど、圧巻の演技を見せ首位発進。フリーはその3ルッツのスロージャンプやさらに上を行く大技4サルコウのスロージャンプにも挑みましたが、どちらも残念ながら成功とはならず。しかし、演技をしっかりとまとめ、トップの座を守り切り、NHK杯初制覇を果たしました。
 これでデュアメル&ラドフォード組はスケートカナダから2連勝、全体の2位でファイナル進出を決めました。ファイナルは実に4度目となりますが、これまではまだメダルはありません。“4度目の正直”で良い結果が付いてくることを祈っています。NHK杯優勝、おめでとうございました。
 銀メダルを手にしたのは、今季復帰したロシアの川口悠子、アレクサンドル・スミルノフ組です。ショートは3トゥループで若干減点されたものの、ベテランらしい安定した演技を終始披露し、2位につけます。フリーでも同じく3トゥループにミスがあり、また、大技のスロー4サルコウにチャレンジしたものの転倒となるなど大きなミスが続き、得点は伸びずフリー3位でしたが、トータルでは2位となりました。
 川口&スミルノフ組もこれでアメリカ大会の優勝と合わせてファイナル進出が決定。今大会の川口&スミルノフ組は彼らにしか表現できないプログラムの世界観や味わいを存分に魅せてくれた一方で、彼ららしくないミスというのもいくつか見られて、表彰台でも川口選手が複雑そうな表情をしていたのが印象的でしたね。前回のスケートアメリカはフリーでパーソナルベストを更新するくらいの素晴らしい出来だったのですが、それから1か月以上空いているわけですから調整という点で難しさもあったのではないかと思います。2年ぶりとなるファイナルでは納得のいく演技ができることを願っています。
 3位は2014年世界ジュニアチャンピオン、中国の于小雨(ユー・シャオユー)、金揚(ジン・ヤン)組です。SPはスロー3ループでミスする場面があったものの、最小限のミスにまとめて3位の好位置につけると、フリーは大きなミスのない会心の演技で自己ベストを更新。約1点差で惜しくも銀メダルには届きませんでしたが、それでも中国杯に続いて表彰台に立ち、本格的なシニアデビュー1年目でのファイナル進出を決めました。
 そして、日本の高橋成美、木原龍一組は7位となりました。

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 SPはサイドバイサイドの3サルコウでの転倒やスロー3サルコウでのステップアウトなど複数ミスがありましたが、プレスリーの「Bossa Nove Baby」の軽快な曲調に乗ってノリノリな滑りを見せました。得点は45.35点、7位となりました。
 フリーでもサイドバイサイドジャンプやスロージャンプでミスがありましたが、スピンやリフトでは確実にレベルを取り、また、演技全体のユニゾンでも昨季より成長した姿を披露し、最後まで丁寧に滑り切りました。得点は85.91点、7位でフィニッシュしました。
 なかなかジャンプ系のエレメンツがうまく決まらなかったですね。ですが、スピンやデススパイラル、リフトは着実に昨季よりレベルアップしていて、あとはジャンプさえ安定してくればというところかなと思います。
 競技後は高橋選手も木原選手も悔しさを露わにしていて、練習ではできていることが本番ではできない歯がゆさというのを感じているのかなという印象を受けます。去年の点数を上回れないことに対するもどかしさというのも口にしていて、レベルアップはしているのにそれが得点や結果として表れないのは苦しいだろうなと思います。でも、二人の努力が実る時は必ず訪れると思いますから、自信を持ってというのは難しいかもしれませんが、自分たちを信じて取り組んでほしいなと思います。
 全日本選手権では二人の心からの笑顔が見られることを祈っています。



 さて、女子とペアについては以上です。これで女子とペアのファイナル進出者がすべて決定しましたので、以下にざっくりまとめます。(敬称略)


《女子シングル》

①エレーナ・ラディオノワ(ロシア):30ポイント アメリカ大会優勝、フランス大会優勝
②エリザヴェータ・トゥクタミシェワ(ロシア):28ポイント アメリカ大会2位、中国大会優勝
③アンナ・ポゴリラヤ(ロシア):28ポイント カナダ大会優勝、ロシア大会2位
④グレイシー・ゴールド(アメリカ):26ポイント アメリカ大会3位、日本大会優勝
⑤ユリア・リプニツカヤ(ロシア):26ポイント 中国大会2位、フランス大会2位
⑥アシュリー・ワグナー(アメリカ):24ポイント カナダ大会2位、フランス大会3位
―――――
補欠⑦本郷理華(日本):22ポイント カナダ大会5位、ロシア大会優勝
補欠⑧宮原知子(日本):22ポイント カナダ大会3位、日本大会3位、
補欠⑨村上佳菜子(日本):20ポイント 中国大会3位、日本大会4位


《ペア》

①クセニア・ストルボワ、ヒョードル・クリモフ組(ロシア):30ポイント ロシア大会優勝、フランス大会優勝
②メーガン・デュアメル、エリック・ラドフォード組(カナダ):30ポイント カナダ大会優勝、日本大会優勝
③川口悠子、アレクサンドル・スミルノフ組(ロシア):28ポイント アメリカ大会優勝、日本大会2位
④彭程、張昊組(中国):26ポイント アメリカ大会3位、中国大会優勝
⑤隋文静、韓聰組(中国):26ポイント カナダ大会2位、フランス大会2位
⑥于小雨、金揚組 (中国):24ポイント 中国大会2位、日本大会3位
―――――
補欠⑦エフゲニア・タラソワ、ウラジミール・モロゾフ組(ロシア):24ポイント カナダ大会2位、ロシア大会3位
補欠⑧ヘイヴン・デニー、ブランドン・フレイジャー組(アメリカ):22ポイント アメリカ大会2位、ロシア大会4位
補欠⑨王雪涵、王磊組(中国):22ポイント 中国大会3位、フランス大会3位




 女子シングルのファイナリストはロシア勢4名、アメリカ勢2名という顔ぶれとなりました。ロシア勢4名出場は昨季に続き2年連続、アメリカ勢2名出場は2010年のアリッサ・シズニーさん、レイチェル・フラットさん以来の4年ぶりです。
 進出した6選手の中ではラディオノワ選手が今季唯一の総合得点200点超えをしていて、シーズンベスト的には一歩先を行ってる感があるのですが、全体の6位でファイナルに進出した昨季とは状況が違うので、それがプレッシャーや緊張に繋がらなければいいなと思いますね。
 ただ、ほかの面々もゴールド選手以外は皆ファイナル経験者なので、実力的には拮抗していて誰が優勝してもおかしくないと思います。ひとつのミスが順位を大きく左右することになるかもしれませんね。
 一方、さまざまなメディアでニュースにもなっているように、日本女子勢はファイナル進出を逃し、2001年以来13年続いていた連続出場記録が途切れることとなりました。もちろんファイナリストの中に日本の選手がいないということに対して、さみしさや残念な気持ちが全くないかと言えば嘘になるのですが、でも記録というのはいつかは途切れるもの。単にそれが2014年だったというだけですし、逆に言えば、それだけ今までが凄すぎたということだと思います。
 トリノ五輪の前からソチ五輪シーズンまでの約10年間、日本の女子勢は常に世界の女子フィギュア界をリードし、圧倒的な選手層の厚さを誇ってきました。三度ファイナルに進出した恩田美栄さん、日本女子として初のファイナル優勝を果たした村主章枝さん、世界選手権とオリンピックの両方でチャンピオンとなった荒川静香さん、二度世界チャンピオンになった安藤美姫さん、ファイナルで銅メダルを獲得した中野友加里さん、オリンピック銀メダリストであり三度の世界チャンピオンに輝いた浅田真央選手、ファイナルで三度の表彰台に加え世界選手権でも銀メダルを獲得した鈴木明子さん、ファイナル銅メダリストとなった村上佳菜子選手……。これだけの選手が次から次へとひっきりなしに世界の舞台に登場しブレイクし、ベテランの選手が引退しても途切れることなくすぐにそれに代わるトップスケーターが現われる、そういった奇跡のような物凄い状況が10年間も続いていたということ自体が稀有なことですし、だからこそ“黄金時代”だったのだと思います。
 そんな黄金時代が永遠に続けばいいのですが、なかなかそれは難しいですしどんなものにでも終わりはあります。現在の日本女子の状況というのは、黄金時代が終わってまた新しい時代を創ろうとしている途中の過渡期なのだと言えます。なので、これまでの10年間のように毎年ファイナルや世界選手権でメダルを取るのが当たり前というのはしばらくないかもしれませんが、決して将来を悲観する必要はないと思います。
 たとえばロシア女子も、トリノ五輪をもってイリーナ・スルツカヤさんが引退してからしばらくはトップレベルで活躍する選手が出てきませんでしたが、ソチ五輪が近づくにつれて強化・育成の成果が表れ10代の若い選手が次々と台頭し、選手層の厚さが戻ってきました。今まさにロシア女子は黄金時代を迎えていますが、そうなるまでにはしばしの過渡期があったわけで、その停滞があったからこそ現在の強さがあるのだとも言えます。
 日本女子も今は将来的に飛躍するために力を蓄える時期なのだと考えることができますし、ファイナル出場連続記録が途切れてしまったことについて村上選手は「胸が痛む」と話していましたが、あまり気にしないでほしいなと思いますね。実際にすでに新たな時代の兆しは見えていて、2大会で表彰台に上った宮原選手はもちろん、ロシア大会で優勝した本郷理華選手、同じくロシア大会で6位だった大庭雅選手、NHK杯で5位となった加藤利緒菜選手は、GPデビューシーズンにもかかわらず堂々と実力を発揮して全員パーソナルベストをマークしていますし、ジュニアGPファイナルでは6人中3人が日本選手と層の厚さを示しています。若い芽は間違いなく育ってきているので、ネガティブに考えることなくそうした選手たちが花開くのを長い目で応援していきたいなと感じますね。


 長々と女子について書きましたが、ここからはペアについて。
 ペアのファイナリストはロシア勢が2組、中国勢が2組とやはりペア大国が変わらぬ層の厚さを顕示しましたね。
 6組の顔ぶれを見るとどの1組がずば抜けているということはないですが、シーズンベスト的にはストルボワ&クリモフ組、デュアメル&ラドフォード組、川口&スミルノフ組が210点前後まで達していて、優勝争いという点ではこの3組が有力なのかなという気もします。ただ、隋&韓組も自己ベストは既に210点超えに到達しているので、表彰台の顔ぶれはなかなか予想がつきにくいですね。特にペアはそれひとつで高得点を稼ぐ大技も多いので、そうした技の成否によって表彰台の顔ぶれや位置が変わってくるのかもしれません。
 余談ですが、日本女子の連続出場記録が途切れたということから話題を転ずると、ペアのロシア勢はGPシリーズがまだチャンピオンシリーズだった頃の1995年から今回の2014年まで20年間ずっとファイナル出場記録が続いていますし、中国勢も1997年から18年連続で出場し続けています。そう考えるとこの2国のペアにおける強豪ぶりというのは並大抵のものではなくて、ペアの普及度合いがシングルより低いといっても、こんなに長い間強さを保ち続けている事実には圧倒される思いがしますね。



 (その1)、(その2)と2回に渡って女子とペアについて書いてきましたが、ようやくこれで終了です。次の記事では男子とアイスダンスについて書きたいと思います。


※以下、2014年12月5日に追記した部分です。

 現地時間の12月4日、アメリカフィギュアスケート協会はGPファイナルに出場予定だったグレイシー・ゴールド選手が左足を疲労骨折したため、ファイナル出場を辞退すると発表しました。
 ゴールド選手は先日のNHK杯に出場、優勝し、自身初のファイナル進出を決めていました。NHK杯の時は特に足に大きな問題を抱えているようには見えなかったのですが、ゴールド選手自身は負傷を把握しながら出場していたものの、どの程度の怪我かということについてはその時点ではわかっていなかったとのことで、アメリカに帰国して検査して詳細が判明したのでしょうね。疲労骨折ですから、痛みも感じながら滑っていたのかなと思うと、頭が下がる思いです。
 協会のプレスリリースの中でゴールド選手は、今季の最終的な目標は全米選手権で優勝すること、世界選手権で表彰台に立つことだとした上で、そのためにファイナル辞退という難しい決断を下したのだと述べています。ファイナルでゴールド選手の姿が見られないことはとても残念ですが、まずは全米選手権に万全な状態で出場して世界選手権の出場権を獲得しなければいけませんから、辞退は的確な判断だと思います。ゆっくり休んで全米選手権ではまたゴールド選手らしい演技を見せてほしいですね。
 そして、ゴールド選手が辞退したことによって、ポイントランキング7位で補欠1番手となっていた日本の本郷理華選手が繰り上がりでファイナルに出場することが決まりました。また、本郷選手の出場により、2001年から続く日本女子のファイナル連続出場記録もさらに伸びることとなりました。
 思いがけない形で初めてのファイナルというチャンスが回ってきた本郷選手。ファイナルまで1週間ほどで準備期間も短く大変だと思いますが、順位や結果などはあまり気にせず、のびのびと演技してほしいですね。あと、フリープログラムはスペインが舞台の「カルメン」ですから、バルセロナで本郷選手の「カルメン」が披露されるというのも楽しみですね。
 

:女子シングルメダリスト3選手のスリーショット写真、高橋&木原組のSPの写真は、エンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、デールマン選手の写真、李選手の写真、高橋&木原組のフリーの写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、ペアメダリスト3組の写真は、フィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから引用させていただきました。

【参考リンク】
GOLD WITHDRAWS FROM GRAND PRIX FINAL | Welcome to U.S. Figure Skating ゴールド選手のファイナル辞退について伝えたアメリカフィギュアスケート協会のプレスリリースです。

【ブログ内関連記事】
NHK杯2014・女子&ペア―グレイシー・ゴールド選手、GP初の金メダル獲得(その1) 2014年12月2日
NHK杯2014・男子&アイスダンス―村上大介選手、パーソナルベストでGP初優勝(その1) 2014年12月5日
NHK杯2014・男子&アイスダンス―村上大介選手、パーソナルベストでGP初優勝(その2) 2014年12月6日
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by hitsujigusa | 2014-12-03 01:12 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)