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 四大陸選手権2015、女子とペアの後編です。前編はこちらをご覧ください。また、男子とアイスダンスの結果についてはこちらの記事をご参考下さい。

ISU Four Continents Figure Skating Championships 2015 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 6位は今大会がシニアの国際大会デビューとなった日本の永井優香選手です。

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 SPは「エデンの東」。まずは得点源の3トゥループ+3トゥループからでしたが、セカンドジャンプの着氷でバランスを崩し、マイナスとなります。しかし、次の3ルッツを成功させると、後半の2アクセルもきっちりこなして、序盤のミスを引きずることなく演技を立て直しました。得点は56.94点で7位発進となります。

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 フリーはサン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」。冒頭はショートより難度を上げた3ルッツ+3トゥループでしたが、セカンドジャンプがすっぽ抜けて1回転になってしまいます。しかし、続く3ルッツ+2トゥループのセカンドジャンプを急遽3トゥループに変えて見事に成功させ、最初のジャンプのミスを取り返します。後半に入ると2アクセル+3トゥループ+2トゥループの難しい3連続ジャンプをクリーンに決め、次の3ループは1回転になったものの、その後は冷静な切り替えを見せてエレメンツを着実にこなし、フィニッシュまでエネルギッシュに演じ切りました。得点は111.15点でパーソナルベスト、総合6位に順位を上げました。
 ショート、フリーともにいくつかミスがありベストを出し切ることはできなかったかもしれませんが、初めてのシニアの国際大会ということを考えると、とても落ち着いて地に足のついた演技ができていて素晴らしかったと思いますね。緊張が強いと一つのミスが連鎖してしまうこともままありますが、今大会の永井選手はミスを犯した直後にすぐにリカバリーしていたので、シニアの国際大会という慣れない環境に惑わされることなく、きちんと自分自身をコントロール出来ていたのでしょうね。
 この経験は3月の世界ジュニア選手権でも大いに活きてくると思いますから、初めての世界ジュニアでも永井選手らしくリラックスして臨んで、満足のいく演技をしてほしいですね。


 7位にはカナダ女王のガブリエル・デールマン選手が入りました。

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 SPは冒頭の3トゥループ+3トゥループを完璧に決め、1.3点の高い加点を得ますが、単独の3ルッツが2回転となり、規定の回転数を満たしていないため無得点となる痛いミス。最後の2アクセルはきれいに成功させたものの、3ルッツのパンクが響いて得点は55.25点、8位に留まります。
 フリーはまず3ルッツ+2トゥループ+2ループの3連続ジャンプから、ファーストジャンプの着氷でこらえる部分はありましたが、これをしっかり3連続に繋げて好スタートを切ると、続く2アクセル+3トゥループもクリーンに成功。単独の3ルッツがSP同様に2回転になるミスはあったものの、それ以外は予定どおりにジャンプを跳び、最後までスピード感溢れる力強い滑りを見せ、演技を終えたデールマン選手はガッツポーズで喜びを表しました。得点は111.84点でパーソナルベスト、トータルでも自己新となりました。
 フリーが良い演技だっただけに、ショートの出遅れが少しもったいなかったですが、その分フリーで開き直ってデールマン選手らしい思い切りのよいアグレッシブな演技ができたのでしょうね。特に持ち味のダイナミックなジャンプは見ていて痛快なほど見応えのあるジャンプなので、そのバネのあるジャンプとしなやかな身体づかいが相まって、デールマン選手特有の迫力と優雅さという魅力が存分に表現されていたと思います。
 世界選手権ではショートとフリーを両方揃えて、今大会より納得のいく演技となることを願っています。


 8位はアメリカのサマンサ・シザリオ選手です。

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 ショートは冒頭に大技の3ループ+3ループに挑み着氷しますが、セカンドジャンプがアンダーローテーション(軽度の回転不足)となり減点を受けます。後半に入り最初の2アクセルは問題なく決めましたが、続く3フリップはこちらもアンダーローテーションでマイナス。致命傷となるようなミスこそなかったものの、細かいミスが複数重なり、得点は54.95点と伸びず、9位と出遅れます。
 フリーは3+3を外し、まずは3ループ+1ループ+3サルコウのコンビネーションジャンプでしたが、3サルコウがアンダーローテーションとなります。しかし、続く3トゥループ、3フリップは確実に回り切って着氷し、中盤の3ルッツがロングエッジ(不正確なエッジでの踏み切り)で大幅に減点された以外は全てのジャンプをクリーンに成功。実力者らしいまとまりのある演技を披露しました。得点は111.81点でフリー7位、総合8位で大会を終えました。
 3+3の2つ目に3ループを持ってくることで知られているシザリオ選手ですが、今大会は2連続3ループという難しい組み合わせにチャレンジしてきましたね。全米選手権2015のSPでは同じジャンプを跳んで2つ目がダウングレード(大幅な回転不足)となり大きく出遅れてしまったのですが、この四大陸は失うものがなく思い切った挑戦がしやすい大会なので、同じ3ループ+3ループに再び挑んだわけですね。惜しくも回転は認定されませんでしたが、そこよりももったいなかったのは単独の3フリップの回転不足で、ショートで良い流れを作ることができればフリーもさらに勢いが増すでしょうし、総合得点では6位の永井選手と1点差ほどしかなかったので、細かなジャンプミスが惜しかったなと感じますね。
 今シーズンは目立った成績を収めることはできなかったシザリオ選手ですが、全体的に見て波の少ない、ミスがある中でも一定以上のレベルでまとめられる安定感が印象に残りました。この安定感を来季はさらなる飛躍に繋げてほしいなと思います。



 ここからはペアの競技内容についてです。

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 優勝はカナダのメーガン・デュアメル、エリック・ラドフォード組。SPは難しい3ルッツのサイドバイサイドジャンプや3ルッツのスロージャンプを完璧に決めると、そのほかのエレメンツもツイスト以外は全てレベル4に揃える貫録の演技。パーソナルベストに迫る高得点をマークし、断トツの首位に立ちました。フリーはサイドバイサイドの3ルッツの着氷が乱れるミスはありましたが、高難度のスロー4サルコウを成功させるなどショートに引き続き圧巻の滑り。下位をさらに引き離す圧倒的な大差をつけ、2年ぶりの四大陸優勝となりました。
 正直、あまりの強さに言葉が出ないという感じですね。毎回毎回もの凄い演技を見せられているのですが、これだけ毎回だと慣れてしまってこれが当たり前のような気さえしてきますね。もちろん全く当たり前などではなく、ものすごく難しいことをサラッとやってしまっているからそう見えるだけなのですが。これでデュアメル&ラドフォード組は今シーズン出場した大会をすべて制し、チャンピオンロードを突き進んでいます。最後までこの破竹の勢いが持続されるのか、さらに楽しみが増しましたね。四大陸選手権優勝、おめでとうございました。
 2位は中国の彭程(ペン・チェン)、張昊(ジャン・ハオ)組です。ショートは全てのジャンプを確実に決めましたが、最後のスピンで珍しく小さなミスがあり、2位発進となります。フリーは冒頭で高難度の4回転ツイストを成功させ、2.57点という高い加点を得て上々の滑り出しを見せたものの、続く2つのサイドバイサイドジャンプでミスを連発。しかし、後半は実力者らしく立て直しパーソナルベストをマーク、トータルでも自己ベストで銀メダルを獲得しました。
 3位は中国の龐清(パン・チン)、佟健(トン・ジャン)組。ショートはサイドバイサイドジャンプとスピンでミスがあり得点を伸ばすことができず4位。フリーも同じくソロジャンプで複数ミスを犯したものの、スロージャンプやリフトなど高難度の技を確実にこなしフリー2位、SPから順位を上げて四大陸では9個目となるメダルを手にしました。
 ソチ五輪で4位となった後、一度は引退していたベテランの龐&佟組ですが、3月に地元中国で行われる世界選手権に出場するため、今回約1年ぶりに現役復帰を果たしました。久しぶりの実戦とあってジャンプなど細かいミスは散見されましたが、それでも一つ一つのエレメンツの完成度やクオリティーの高さはさすがのベテランらしさが表れていましたね。ほかのペアと比較すると今季はこの四大陸以外は試合を経験していないわけなので、この実戦感覚の薄さが世界選手権でどう出るかは未知数なのですが、この二人にしか出せない表現、世界観を楽しみにしたいですね。


 以下、4位は中国の隋文静(スイ・ウェンジン)、韓聰(ハン・コン)組、5位はアメリカのアレクサ・シメカ、クリス・クニーリム組、6位はカナダのリュボーフ・イリュシェチキナ、ディラン・モスコヴィッチ組、7位はアメリカのヘイヴン・デニー、ブランドン・フレイジャー組、8位はアメリカのタラ・ケイン、ダニエル・オシェア組となっています。


 日本の高橋成美、木原龍一組は10位となりました。

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 SPは冒頭の3サルコウで高橋選手が転倒してしまいますが、その後はスロー3サルコウなどエレメンツを丁寧にこなし、滑り切りました。フリーも冒頭で3サルコウに挑みましたが、回転不足で転倒。その後、ツイストやリフトにも細かなミスがあり序盤は粗さが目立ちましたが、以降はスロー3ループ、スロー3サルコウと得点源となるスロージャンプを確実に決め、序盤のミスを挽回しました。
 内容的にはシーズンベストを更新することはできませんでしたが、スロージャンプに関してはだいぶ安定感が出てきて、安心して見られるというところまではまだいかないですが、精度が高まってきたのかなという感じがします。3月には2度目となる世界選手権が待っていますが、フリー進出目指して二人らしい溌剌とした演技を期待したいですね。



 四大陸選手権2015の記事はこれで全て終了となります。
 女子はほとんどが10代の若手選手となり、全体的に実力の拮抗した争いとなりましたね。その中でダークホースのエドマンズ選手が他選手の隙を突いてまたとないチャンスをもぎ取りました。それだけに日本の宮原選手、本郷選手は惜しかったなという印象もありますが、世界選手権に向けて収穫も課題も価値あるものを得られたのではないかと思います。
 ペアはデュアメル&ラドフォード組の他を寄せ付けぬ強さが光りましたが、2、3、4位と中国勢が続いて、ペア大国中国の層の厚さを改めて思い知らされました。層の厚さではロシア勢も負けていないので世界選手権ではどんな表彰台の顔ぶれになるかは全く想像がつきませんが、中国で行われる大会ですから、地元の後押しを受けて中国勢がどれだけ活躍するか、注目ですね。
 シーズンのフィナーレを飾る世界選手権は3月の23日から29日にかけて中国の上海で開催される予定ですが、その前に3月2日からはエストニアのタリンにて世界ジュニア選手権が行われます。この大会についても当ブログで取り上げたいと思います。では。


:女子メダリスト3選手のスリーショット写真は、毎日新聞のニュースサイトが2015年2月13日に配信した記事「写真特集:4大陸フィギュア2015 華麗なる戦い」から、永井選手のSPの写真、デールマン選手の写真、シザリオ選手の写真、高橋&木原組のSPの写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、永井選手のフリーの写真、ペアメダリスト3組の写真、高橋&木原組のフリーの写真は、エンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2015-02-23 20:29 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 ヨーロッパ以外の4大陸の選手が参加する四大陸選手権2015が、韓国のソウルにて2015年2月9日から15日にかけて行われました。この記事では女子とペアの競技内容、結果についてお伝えします。男子とアイスダンスについてはこちらの記事をお読みください。
 女子はアメリカの若手、ポリーナ・エドマンズ選手が接戦を制し女王となりました。そして、2位には日本の宮原知子選手、3位にも同じく日本の本郷理華選手が入りました。
 ペアは世界選手権銅メダリストのカナダのメーガン・デュアメル、エリック・ラドフォード組が2度目の優勝を果たしています。

ISU Four Continents Figure Skating Championships 2015 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 優勝はアメリカのポリーナ・エドマンズ選手です。

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 SPはまず3ルッツ+3トゥループの難しい連続ジャンプを確実に成功させますが、続く3フリップはエッジが不正確と判定され減点。しかし、最後の2アクセルは問題なく決めて、大きなミスなく演技をまとめました。得点は61.03点で上位と僅差の4位につけます。
 フリーもまずは3ルッツ+3トゥループからで、これを完璧な跳躍と着氷でショートよりも高い加点を得ます。続く高難度の3フリップ+1ループ+3サルコウは3フリップのエッジエラー(踏み切り違反)でマイナス1の減点となりますが、その後は目立ったミスなく次々とジャンプを成功。パーソナルベストに迫る122.99点をマークし、SP4位からの逆転優勝を成し遂げました。
 正直エドマンズ選手の優勝はとても意外な、予想していなかった結果でしたね。もちろん可能性だけで考えればエドマンズ選手も無名な選手ではありませんし、パーソナルベストも高いものを持っているので実力を100%発揮できれば優勝する可能性も大いにあったわけですが、今シーズンの演技内容を他の有力選手と比べると、優勝候補というには少し弱いかなと思っていたのですが……見事に裏切られましたね。
 決して今回もパーフェクトな演技だったわけではありませんが、減点されたジャンプは今シーズン頻繁にロングエッジ(踏み切り違反)を取られている3フリップだけなので、その癖をもう少し修正できるとさらに安定してきそうだなと思います。昨シーズンは今季ほど3フリップのロングエッジは取られていないので、今季になって身体が成長してジャンプのコントロールに苦闘する中で、元々持っていた悪い癖が再発してしまった感じなのかもしれません。でも、本来は比較的ルッツとフリップの跳び分けがしっかりできるタイプの選手だと思うので、世界選手権でもそのあたりがポイントになってくるでしょうね。
 世界選手権でもエドマンズ選手らしい若々しさあふれる演技が見られることを楽しみにしています。四大陸選手権初優勝、おめでとうございました。


 銀メダリストとなったのは日本の宮原知子選手です。

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 SPは得点源となる3ルッツ+3トゥループから、着氷が若干ギリギリになりますが、回転は認定され加点も付きます。2つのスピンを挟んで後半、3フリップは正確なエッジできっちり成功、最後の2アクセルもクリーンに降りてジャンプは全て完璧に決めます。得意のスピンもレベル4を揃え、オペラ「魔笛」の華麗で優雅な世界観を繊細に、細部まで丁寧に表現しました。得点は64.84点でパーソナルベスト、上々の首位発進となりました。

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 フリーは3+3を外し、基礎点が1.1倍になる後半に難しいコンビネーションジャンプを固める構成で臨んだ宮原選手。まずは3+2+2の3連続ジャンプからでしたが、最後のジャンプでわずかに着氷が乱れ減点されます。さらに続く3フリップでは跳び急いだのか、着氷でステップアウト。序盤に珍しくミスを連発します。次の3ループは成功させ、そして勝負の後半に入りますが、3ルッツは回転不足となり転倒。ですが、続く2アクセル+3トゥループはパーフェクトに成功。続いて3サルコウ、最終盤に組み込んだもうひとつの2アクセル+3トゥループもしっかり決めて巻き返しを見せましたが、前半から中盤にかけてのミスが響き、得点は116.75点とあまり伸びず、トータル181.59点、惜しくも初の頂点には届きませんでした。
 ショートはいつもの宮原選手らしい落ち着きぶりで、特別な緊張の色などはうかがえなかったのですが、フリーは安定感が持ち味の宮原選手にしては稀なミスの多さで、特に転倒には驚きましたね。シニアに上がってからの宮原選手は本当にミスらしいミスというものがほとんどない選手で、細かい回転不足を取られることはよくあるのですが、転倒に関しては2014年3月のガルデナスプリング杯という小さな大会のフリーで珍しく2度転倒した以外は皆無で、宮原選手が転倒する姿を目にするのは私は今回が初めてでした。
 何が宮原選手を平常心でいられなくさせたのかと考えると、今大会の宮原選手は当初から優勝を目標に掲げて試合に臨み、その中でSP首位というこれ以上ない優勝まで最短距離のベストポジションに立ったわけですが、優勝がすぐ目の前に見えているからこそ、逆に完璧にやらなければいけないと意識しすぎてしまったのでしょうね。宮原選手がシニアに移行してからSPで首位発進するというのは今大会で4度目ですが、ISU主催の大きな大会では初めてということで、今までにない緊張感、プレッシャーを実感したのではないかと思います。ですが、今大会も通過点に過ぎませんし、今後同じようなシチュエーションになった時に今回の経験が活きてくるでしょうから、その際はショート首位になってノーミスを意識するのではなく、ショート首位だから多少ミスしても大丈夫くらいの余裕を持てるようになると良いかもしれませんね。
 3月には初の世界選手権に挑む宮原選手。全日本女王ではありますが、あくまで一スケーターとして順位や結果を意識せず、思いっきりぶつかっていってほしいなと思います。


 3位は日本の本郷理華選手が入りました。

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 ショートの冒頭は今季ノーミスの3トゥループ+3トゥループ、これを今回も完璧に成功させて加点1の高評価を得ます。さらに後半に固めた3フリップ、2アクセルも難なく決めて、普段どおりの安定感抜群の演技を披露しました。得点は61.28点、パーソナルベストを更新して3位につけました。

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 フリーはショートより難度を上げた3フリップ+3トゥループ、きれいに着氷したかに見えましたが、セカンドジャンプがわずかに回転不足と判定されます。ですが、続く3ルッツは今季初めて正確なエッジで踏み切ったと認定されて加点が付きます。さらに3ループも確実に決めて前半は安定した内容。後半も2アクセル+1ループ+3サルコウで回転不足を取られる場面がありましたが、ミスといえるミスはなく、情熱的な「カルメン」の世界を表情豊かに演じ切りました。得点はパーソナルベストに迫る116.16点、総合177.44点で銅メダルを獲得しました。
 初めての四大陸となった本郷選手ですが、特別な緊張も見られず、いつもどおりの伸びやかな演技でしたね。本郷選手自身はトータル180点台を目指していたそうなので、あともう少しというところで惜しかったですが、内容的には今回もさすがの安定感で、見ていて本当に何も心配のない、どっしりとした存在感さえ感じられる演技だったと思います。スピンやステップシークエンスで多少レベルの取りこぼしがあったり、コンビネーションジャンプの回転不足があったりしましたが、細部の改善点を改めて確認できたという意味でも意義深い試合になったのではないでしょうか。
 今シーズンはGPファイナル、そして四大陸と大きな国際大会を経験して、その度にどんどん頼もしくなっていく本郷選手。シーズンの集大成となる世界選手権で今季積み重ねてきたものを全て出し切ってほしいなと思います。


 4位はアメリカのグレイシー・ゴールド選手です。

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 SPの冒頭は得意の3ルッツ+3トゥループから、ジャンプ自体はクリーンに決めますが、フェンスに近づきすぎ着氷が乱れてしまう珍しいミスを犯します。後半に入り、3ループはしっかりこなしたものの、2アクセルはすっぽ抜けて1回転に。スピン、ステップシークエンスは全てレベル4に揃え実力者らしくまとめましたが、2つのジャンプミスが響き、得点は62.67点と本来のゴールド選手からすると低い得点に留まり、2位発進となりました。
 挽回を狙ったフリー、まずはSPで予想外のミスとなった3ルッツ+3トゥループでしたが、タイミングが合わなかったのかファーストジャンプが1回転となり、1+2の連続ジャンプとなってしまいます。さらに、続く2アクセル+3トゥループも2+2となり、序盤にミスが重なります。その後は大崩れすることなく盛り返しを見せましたが、本領発揮はならず、演技を終えたゴールド選手は顔を曇らせました。得点は113.91点でフリー5位、トータルでも4位と表彰台を逃しました。
 NHK杯の後に疲労骨折が発覚し、GPファイナルを欠場、1月下旬の全米選手権で競技復帰を果たしたゴールド選手ですが、今大会の演技を見る限り、まだ負傷の影響は拭いきれていないのかなという印象を受けましたね。負傷部位に痛みが残っているということはないと思いますが、本来の自分のベストなジャンプの感覚だったり、演技を通しでやる感覚だったりが、完全には取り戻せていないのかなと感じました。メンタル的にも100%の自信を持って試合に臨めなかったのかもしれません。ですが、世界選手権まではまだ1か月以上ありますから、焦らずじっくりと課題に取り組んで、世界選手権ではゴールド選手らしい演技を見せてほしいですね。


 5位は中国の李子君(リ・ジジュン)選手です。

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 SPはまず得点源の3フリップ+3トゥループでしたが、ファーストジャンプの着氷で詰まり気味になったため、無理に3回転を跳ぶことなく抑えて2トゥループに変更します。そのあとの3ループ、2アクセルは問題なくクリーンに成功させて、スピンも全てレベル4。完璧ではありませんでしたが、とっさの判断で失敗を成功に変える機転を利かせ、演技をしっかりまとめました。得点は60.28点、およそ1年ぶりに60点台をマークし、5位の好位置につけました。
 フリーはSPで跳べなかった3フリップ+3トゥループから、これを今度は完璧に成功させて加点を獲得。直後の2アクセル+3トゥループもクリーンな回転と着氷となり、上々の滑り出しを見せます。続く3ルッツはエッジエラーで大幅に減点を受けますが、それ以外に目立ったミスはなく、一つ一つのエレメンツを丁寧にクリア。フィニッシュした李選手は満面に笑みを浮かべました。ただ、得点は115.64点と思ったほど伸びず、フリー4位、トータル5位となりました。
 昨シーズンから身体の成長によってジャンプのコントロールに苦労している李選手ですが、今大会の演技は久しぶりに李選手らしさがよく表れた演技だったと思います。フリーの得点が予想したほど伸びなかった要因としては、一つはコンビネーションジャンプが2つしか入らなかったこと、もう一つはジャンプの加点があまり稼げなかったことでしょうか。後者に関しては、ジャンプそのものはきれいに決まっているのですが、ジャンプ前の準備動作だったり着氷後の流れだったり、そういった細かいところでスムーズさに欠けているかなと感じるので、それがGOEにも影響したのだと思います。ただ、まずは一つ一つジャンプを確実に降りるということが現在の李選手にとっては何より良薬になるでしょうし、出来栄えの課題は追い追い取り組んでいけばよいことなので、ひとまずは李選手のベストを充分に発揮した演技と言えるのではないかと思いますね。
 世界選手権は地元の中国で行われますから、その大舞台で悔いのない演技ができることを願っています。



 女子&ペア(前編)の記事はとりあえずここで終わりと致しまして、続きは(後編)に持ち越そうと思います。この続きはぜひ(後編)でお読みください。


:女子メダリスト3選手のスリーショット写真は、毎日新聞のニュースサイトが2015年2月13日に配信した記事「写真特集:4大陸フィギュア2015 華麗なる戦い」から、エドマンズ選手の写真はエンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、それ以外の写真は全てスポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2015-02-22 16:48 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 四大陸選手権2015、男子とアイスダンスに関する記事の後編です。前編はこちらからご覧ください。

ISU Four Continents Figure Skating Championships 2015 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 6位に入ったのはアメリカチャンピオンのジェイソン・ブラウン選手です。

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 SPはまず、今まで構成に入れていなかった4トゥループに初めて挑戦しましたが、ダウングレード(大幅な回転不足)でステップアウトとなります。続く3アクセルは一見きれいに成功したかに見えましたが、アンダーローテーション(軽度の回転不足)で減点。後半の3+3、ステップシークエンス、スピンはどれも高い加点が付く出来となりましたが、得点は75.86点と伸び切らず、9位に留まります。
 フリーは4回転を外したいつもの構成で臨んだブラウン選手。冒頭の3アクセル+2トゥループは回転も着氷もしっかり決め、良いスタートを切ります。その後も、3ルッツ、3ループ、単独の3アクセル、3+3と相次いでジャンプをクリーンに降り、3ルッツ+1ループ+3サルコウでファーストジャンプがアンダーローテーションと判定され減点を受けた以外は、ミスらしいミスのない安定した内容。フィニッシュしたブラウン選手は感極まったような表情を見せ、喜びを露わにしました。得点は167.35点でパーソナルベストを8点以上更新、トータルでも自己新となり、ショートから大きく挽回しました。
 今回試合では始めて4回転に挑んだブラウン選手ですが、残念ながらその試みは成功に至らず、順位という観点から見ると裏目に出てしまったと言えます。ただ、この四大陸は失うものが何もない大会ですから、順位を重視しないのであればここでチャレンジするというのは的確な判断だったと思います。次の世界選手権でも4回転を構成に組み込むのかどうかは分かりませんが、将来的にはやはり跳んでいかなければならないジャンプですから、果敢に挑戦していってほしいですね。その一方で、4回転を跳ぶことによってブラウン選手らしい独創的なプログラムの世界観、隙のない完成度に綻びが生じる可能性もあり、4回転を跳びながらプログラムの完成度も失わないというように、うまくバランスを取っていってほしいなと思います。


 7位は日本の無良崇人選手です。

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 SPの冒頭は4トゥループ+3トゥループ、セカンドジャンプの着氷がクリーンに流れず減点となりますが、回転は問題なく確実に成功させます。続く3アクセルは無良選手らしい豪快かつダイナミックな跳躍で高い加点。後半の3ルッツも難なく決めて、得点は84.88点で自己ベストに迫る高得点をマークし、4位の好位置につけました。

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 フリーもまずは4トゥループから、最初は単独の4トゥループを着氷で詰まりながらも耐えて成功。2本目の4トゥループからの連続ジャンプは4トゥループがアンダーローテーションとなってしまい、踏ん張って2トゥループを付けたものの大幅な減点を受けます。次の3アクセルはさすがの安定感。後半最初の3ループも決めて、流れを取り戻したかに見えましたが、続く3アクセルが珍しく1回転となり、1+2のコンビネーションジャンプに。その後のジャンプも少しずつ着氷で乱れが生じ、演技を終えた無良選手は不本意そうに肩を落としました。得点は150.87点とパーソナルベストから20点以上低い得点となり、総合7位に順位を下げました。
 今大会は表彰台を目標に掲げていた無良選手でしたが、なかなか最後までジャンプの調子が上がらなかったのかなという印象ですね。ショートとフリー合わせて大きなミスと言えるのはフリーで3アクセルがパンクしたところくらいですが、そのほかにも着氷がクリーンに決まらないジャンプが多々あり、練習からのちょっとした感覚のズレが演技にそのまま響いてしまったのかなという感じがします。
 今季の無良選手はGP初戦のスケートカナダで自身最高の演技をし、シーズン序盤は良いスタートを切ったわけですが、その後に出場した大会の総合得点は全て235点前後と自己ベストの255.81点から20点ほど低い得点ばかりで、昨季のような大崩れこそ無くなったものの、停滞した状況から抜け出せない試合が続いています。男子選手は4回転や3アクセルなど基礎点の高いジャンプが多く、それ一つの成否だけで大きく得点が左右され、たとえば今回フリーで3アクセル+2トゥループが1+2となり、結局このエレメンツでは2.73点しか稼げませんでしたが、成功させたGPファイナルでは12.07点となっており、およそ10点差がついてしまっています。ひとえにミスと言っても、1回転になるのと3回転半回った上で着氷が乱れるのとでは全く得点も印象も違ってくるので、ミスの仕方も最小限の形に抑えられるようになると、パーソナルベストとの開きの少ない得点がコンスタントに出せるようになるのではないかなと思いますね。
 世界選手権ではぜひ、無良選手の全てを出し切るような、爆発力のある演技が見られることを楽しみにしています。


 8位となったのはウズベキスタンのミーシャ・ジー選手です。

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 ショートの演目は「アヴェ・マリア」。まずは今シーズン成功率を上げた3アクセルをきっちり成功させると、続く3+3もパーフェクトな出来。後半の3フリップも危なげなく決めます。スピン、ステップシークエンスはどれもレベル4で、表現面でも荘厳な雰囲気漂う「アヴェ・マリア」を神秘的に、かつ情熱的に演じ、フィニッシュしたジー選手は派手なガッツポーズで歓喜を露わにしました。得点はパーソナルベストとなる82.25点、初めて80点台に乗せ、7位発進となりました。
 フリーは「映画『シェルブールの雨傘』より」。冒頭の3アクセルはショート同様の安定感でしっかり着氷しましたが、2つ目の3アクセルは回転不足で着氷が不完全なものとなり、コンビネーションジャンプに繋げられず。ですが、直後の3ルッツ、後半の3+3と立て続けにジャンプを成功させて冷静な切り替えを見せます。しかし、続く3フリップ+1ループ+3サルコウの3連続ジャンプは最後のジャンプがこちらも回転不足で着氷ミス。ちょこちょこと細かいミスは犯してしまいましたが、ロマンティックな音楽の世界観・物語を全身で情感たっぷりに表現し、観客を沸かせました。得点は143.95点、トータルでは8位となり、四大陸における自己最高位を記録しました。
 GP2大会で5位、4位と予想以上の好成績を収め、今季大きな飛躍を遂げているジー選手。ジャンプで崩れなくなったことがその最大の要因ですが、スピンやステップシークエンスでも確実にレベルを取れるようになり、つなぎの部分でもさまざまな工夫がなされていて、総合力がアップしたんだなということを今回改めて感じさせられました。フリーではいくつかミスがあり残念でしたが、ジャンプの失敗を忘れさせるようなプログラムとしての面白味、些細なミスでは損なわれることがない作品の魅力があるので、とても楽しませてもらいましたね。ジャンプの調子自体はそんなに悪くなさそうなので、うまくコンディショニングをして、世界選手権での自己最高位更新を狙ってほしいですね。



 男子については以上です。ここからはアイスダンスです。

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 優勝したのはカナダチャンピオンのケイトリン・ウィーバー、アンドリュー・ポジェ組です。SDでは珍しくツイズルとステップでレベルを取りこぼすところがあり、演技構成点ではトップだったものの、技術点を伸ばし切ることができず3位発進となります。しかし、フリーではきっちり修正してエレメンツを確実にこなし、技術点でも演技構成点でもトップ、3位からの逆転優勝となりました。
 これでウィーバー&ポジェ組は今シーズン出場した全試合で優勝となり、初の世界チャンピオンに向かって王者街道まっしぐらという感じですね。ここまでの流れを見るとウィーバー&ポジェ組が世界選手権で優勝することはほぼ間違いないといってもよいと思いますし、今回はショートで滅多にないような形のミスがありましたが、良い意味で厄落としになったでしょうから、世界選手権でも死角なしと言えそうです。四大陸選手権優勝、おめでとうございました。
 2位となったのはアメリカチャンピオンのマディソン・チョック、エヴァン・ベイツ組。SDはリフトとツイズルでレベル4、それ以外のエレメンツでもレベル3を揃え、国際大会で初めて70点台をマークして自己ベスト、トップに立ちました。フリーでは1位の座こそウィーバー&ポジェ組に譲ったものの、こちらも負けず劣らずハイレベルな演技を見せパーソナルベストでフリー2位、1位とわずか1点差で銀メダルとなりました。
 チョック&ベイツ組も今季出場した全ての大会で1位もしくは2位となっていて、ウィーバー&ポジェ組に続く強さを誇っていますね。現時点では世界選手権の優勝候補筆頭はやはりウィーバー&ポジェ組と言わざるを得ないですが、万が一ウィーバー&ポジェ組に隙があった場合、その隙を突いて上回る可能性のある最大のライバルはチョック&ベイツ組だと私は思います。シーズンベスト的には欧州選手権2015で優勝したフランスのガブリエラ・パパダキス、ギヨーム・シゼロン組がウィーバー&ポジェ組に続いて2位となっていますが、まだ若さゆえの不安定さがしばしば見られ、それと比べるとチョック&ベイツ組の方が安定感の面では優れていると感じます。ここらへんのメダル争いの行方がどうなるか、要注目ですね。
 3位は同じくアメリカのマイア・シブタニ、アレックス・シブタニ組。SDは5つのエレメンツのうち、3つでレベル4を獲得して技術点トップ、演技構成点と合計してパーソナルベストを更新し、チョック&ベイツ組に続く0.73点差の2位につけます。フリーでもレベル、クオリティーともに高い演技を披露し自己ベストをマークして3位、総合3位で銅メダルを手にしました。


 以下、4位はカナダのパイパー・ギレス、ポール・ポワリエ組、5位はアメリカのケイトリン・ハワイエク、ジャン=リュック・ベイカー組、6位はカナダのアレクサンドラ・ポール、ミッチェル・イスラム組、7位は中国の王詩玥(ワン・シーユエ)、柳鑫宇(リュー・シンユー)組、8位は日本の平井絵巳、マリオン・デ・ラ・アソンション組となっています。


 8位に入った平井絵巳、マリオン・デ・ラ・アソンション組はパーソナルベストを更新する素晴らしい演技となりました。

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 SDは「Garcia Lorca/Farrucas」。演技序盤のパソドブレとパーシャルステップシークエンスでは目指したレベルに達しなかったものの、ツイズルとリフトではレベル4を確実に取り、また加点も付くクリーンな出来となり、得点は47.80点でパーソナルベスト、8位につけました。
 FDは「Peter Gunn theme/Riot in the cell block No. 9/Shake Your Tail Feather」のブルース・ブラザーズメドレー。冒頭のツイズルはショート同様にしっかりレベル4を獲得し、続くサーキュラーステップはレベル1となりましたが、その後のエレメンツは大きな取りこぼしなくこなし、特に見どころとなるコンビネーションリフトでは1点以上の高い加点を得ました。得点は74.87点でこちらも自己ベスト、トータルでももちろんパーソナルベストとなり、四大陸での自己最高順位となる8位で大会を終えました。
 今大会は出場を予定していたキャシー・リード、クリス・リード組がクリス選手の膝の具合が良くないために欠場し、唯一の日本代表となった平井&デ・ラ・アソンション組ですが、見事に実力を発揮してくれましたね。スコア的にも総合得点で10点以上パーソナルベストを更新し、四大陸のようなトップスケーターも集まる国際大会でこうした演技ができ、シーズンを良い形で締めくくれたことは、来季に向けても大きな自信に繋がるのではないでしょうか。来シーズンもまた二人らしい演技を楽しみにしています。



 さて、男子&アイスダンスの記事はこれで終了となります。
 アイスダンスは世界のアイスダンス界をリードするアメリカ、カナダのチャンピオンが揃い、想像したとおりのレベルの高い戦いが繰り広げられましたね。
 想像以上だったのは男子。層の厚い日本勢を始め、将来有望な北米の若手、そして何といってもソチ五輪の銅メダリストが出場するとあっておもしろい試合になるだろうなと予想はしていましたが、これほどクオリティーの高いところで競われることになるとは予想以上でしたね。優勝したテン選手のトータルスコア世界歴代3位となるハイスコアを皮切りに、銀メダルのファリス選手は歴代9位、銅メダルの閻選手は歴代10位、さらに4位の村上選手は歴代13位、5位の宇野選手は歴代14位と、歴代のトップ20の中に今大会行われた演技が5つもランクインするという高得点続出、そして“神演技”続出の試合となりました。
 日本勢は残念ながら表彰台を逃しましたが、2位から5位の得点差は3.56点と本当に僅差で、一つのミスやちょっとした綻びの差によるところが大きく、ラッキーアンラッキーに左右された部分も結構あると思いますね。メダルに届かなかったからといって日本勢のレベルが決して低かったわけではなく、たとえば今回7位だった無良選手の235.75点という得点は、先日行われた欧州選手権2015の2位のコフトゥン選手の得点とほぼ同じですから、それだけ今年の四大陸は上位の選手に本当にミスが少なく、ほかの一流の国際大会と比べても近年稀に見るハイレベルぶりだったのだと言えます。四大陸の表彰台というのは日本男子にとっては指定席のような印象がありましたから、メダリストの中に日本の選手が一人もいないことに多少寂しさはなくはなかったですが、それ以上にパーソナルベスト連発の充実した演技がたくさん見られたことがうれしかったですね。また、フィギュア界における四大陸の存在感という点においても、格式では欧州選手権に劣るかもしれませんが、大会のレベル面では欧州選手権と変わらないくらい内容の濃いものとなり、大会としての魅力も増してきているというのはアジアのフィギュアファンとして喜ばしい限りですね。
 次の記事では女子とペアについてお伝えします。


:男子メダリスト3選手のスリーショット写真、ブラウン選手の写真、無良選手の写真、平井&デ・ラ・アソンション組の写真はスポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、ジー選手の写真、アイスダンスメダリスト3組の写真はエンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2015-02-19 18:57 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 アジア、アメリカ、オセアニア、アフリカの4大陸の選手が参加する四大陸選手権2015が韓国のソウルにて行われました。この記事では男子とアイスダンスについて書いていきます。
 男子は次々とパーソナルベストが続出する史上まれに見るハイレベルかつ壮絶な戦いとなりました。その中で圧倒的な大差をつけて優勝したのは、ソチ五輪銅メダリストのデニス・テン選手。世界歴代3位となる驚異的な高得点で初の栄冠に輝きました。2位はアメリカのジョシュア・ファリス選手、3位は中国の閻涵(ヤン・ハン)選手が、それぞれ自己ベストを更新してメダルを獲得しました。
 一方、アイスダンスではカナダのケイトリン・ウィーバー、アンドリュー・ポジェ組が5年ぶりの優勝を果たしています。

ISU Four Continents Figure Skating Championships 2015 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 チャンピオンとなったのは、カザフスタンのデニス・テン選手です。

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 SPはまず単独の4トゥループから、これを完璧に決めると、さらに3アクセルもパーフェクトな跳躍。後半の3+3も難なく成功させ、ステップシークエンス、スピンも全てレベル4という非の打ちどころのない完成度の高い演技を披露しました。得点は97.61点、世界歴代4位となる高得点で首位に立ちました。
 フリーも序盤に2本の4トゥループを組み込み、まずは単独の4トゥループをきれいに着氷。続いて4トゥループ+3トゥループの難しいコンビネーションもクリーンに降り、この2つのジャンプでそれぞれ2点、2.29点という高い加点を得ます。その後も次々と精度の高いジャンプを決めていき、中盤の3アクセルの着氷でバランスを崩す場面があった以外はノーミス。芸術面でもシルクロードをイメージした異国情緒漂う壮大な曲想を全身で表現し、圧巻だったのはクライマックスのステップシークエンス。アップテンポかつリズムの取りにくい独特の曲調を一音一音的確にとらえたリズミカルなダンスで観客を大いに盛り上げると、フィナーレに向かってどんどんスピードアップ。熱狂的にフィニッシュしたテン選手は、全力を使い果たしたように氷上に大の字に倒れ込みました。得点は世界歴代3位となる191.85点、トータルでも289.46点と世界歴代3位の圧倒的なハイスコアを叩き出し、文句なしの初優勝を果たしました。
 2年前に世界選手権で銀メダルを獲得、1年前にはオリンピックの銅メダリストにと、今までも実力者として揺るぎない地位を築いていたテン選手ですが、その一方でどこか不安定さもあり、確固たるトップスケーターとしてはもうひとつ物足りなさも感じさせる選手でした。ですが、今回の優勝によって何か一つ別の次元に達したような、一つ上のステージに上がったような印象を受けます。得点的にもSPで90点台後半、フリーで190点台、トータルで290点に迫り、総合得点で290点台をマークしているパトリック・チャン選手、羽生結弦選手と本当の意味で肩を並べる存在になったような感じがします。もちろん得点のことだけではなく、リンク上での佇まい、演技から感じられる雰囲気を見ても、チャン選手や羽生選手の姿から感じるのと同じような迫力、空気感、まさに王者の風格といっても過言ではないオーラを纏っていて、ソチ五輪の時と比べても格段に進化したなと感じさせられました。
 ソチ五輪銅メダリスト、四大陸チャンピオンという肩書きだけではなく、その肩書きに相応しい実力を身につけたテン選手。世界選手権ではさらに真価が問われることになると思いますが、今大会のように満足のいく演技ができることを祈っています。四大陸選手権優勝、おめでとうございました。


 銀メダルを手にしたのはアメリカのジョシュア・ファリス選手です。

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 SPはイギリスのシンガー、エド・シーランの楽曲「Give Me Love」。4回転を入れない構成で臨み、冒頭の3アクセルをまずきっちりと成功させてスタート。2つのスピンを挟み後半、3+3はクリーンな成功に見えたものの、ファーストジャンプの3フリップのエッジが不正確とされ加点はつかず。しかし、最終盤に跳んだ3ルッツは完璧に決めて、目立ったミスなく滑り切りました。得点は84.29点とパーソナルベスト、僅差の5位につけます。
 フリーは「映画『シンドラーのリスト』より」。冒頭の3アクセルはショート同様のクリーンな跳躍と着氷で加点2の高評価。続いてショートでは回避した4トゥループに挑みましたが、ステップアウトとなります。ですが、その影響を波及させることなく3+3をきれいに成功させると、後半も2つのコンビネーションジャンプなどほとんどのジャンプをクリーンに成功。演技を終えたファリス選手は満足そうに笑顔を見せました。得点は175.72点、2年前の世界ジュニア選手権でマークした自己ベストを23点以上更新、トータルでも30点以上更新する会心の試合となりました。
 ファリス選手の本領が存分に発揮されたショートとフリーの演技でしたね。12/13シーズンはジュニア選手としてジュニアGPファイナルで2位、世界ジュニアで優勝と結果を残し、13/14シーズンは満を持してシニアに移行したファリス選手ですが、以降は怪我も多くあり、なかなか実力どおりの演技ができない時期が長く続きました。今季も国際大会で唯一出場したNHK杯で総合11位と振るわず、内容的にも全てのジャンプを失敗するというショッキングとも言える演技でした。ですので、今大会のファリス選手の姿はそうしたシーズン序盤からは想像もつかず、この数か月での劇的な変化には本当に驚かされるばかりですね。全米選手権2015の記事にも書きましたが、これこそがファリス選手の本来の姿であり、ようやく本来の姿を出せるまでにフィジカル的にもメンタル的にも条件が整ってきたんだろうなと思います。
 来月には初出場となる世界選手権も待っているファリス選手。この好調さを保ってシーズン最後の大舞台でもファリス選手らしい演技が見られることを楽しみにしています。


 3位は中国のエース、閻涵(ヤン・ハン)選手。

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 SPの冒頭は代名詞の3アクセル、閻選手らしい猛烈なスピードと飛距離、そして踏み切りからランディングまでの流れも抜群で2.43点の高い加点を獲得します。続く4トゥループは回転充分だったものの着氷が乱れ、減点。しかし、後半の3+3は確実に決めて、ミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」の劇中曲を使用したコミカルなプログラムを飄々と、また、溌剌と演じ切りました。得点は87.34点とパーソナルベストに迫る高得点で3位と好発進しました。
 フリーも幕開けは得意の3アクセルから、ファーストジャンプを完璧に降りると、3トゥループを付けてコンビネーションにし、この連続ジャンプには驚異的とも言える2.86点の加点が付きます。直後の4トゥループはSP同様に着氷が乱れて若干の減点を受けますが、続く単独の3アクセルはこちらも完璧で2.57点の加点。後半もほとんどジャンプにミスはなく、ジャズの名曲「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」の軽快なリズムに乗ってユーモアたっぷりに演技、フィニッシュ後は満面に笑みを浮かべました。得点は172.13点とソチ五輪でマークした自己ベストを10点以上更新、トータルでも自己ベストとなり、四大陸では2度目となる表彰台に上りました。
 4トゥループのクリーンな成功は一度もありませんでしたが、その代わりというとおかしいかもしれませんが、3アクセルの完成度が非常に高く、このジャンプでほかの選手以上に得点を稼ぎましたね。たとえば、ショートとフリー合わせて3本の3アクセルを閻選手と同じように全て完璧に跳んだ宇野昌磨選手と比較すると、閻選手が3アクセルの加点で得た得点の合計は7.86点、一方宇野選手の3アクセルの加点の合計は6.15点となっていて、宇野選手もかなり加点を稼いだ部類に入りますが、閻選手はそれ以上の驚くべき稼ぎぶりとなっています。元々3アクセルの名手であった閻選手ですが、3アクセルをフリーで2本組み込むようになったのは世界選手権2014からとわりと最近で、しかも今季はシーズン初戦の中国杯での羽生選手との衝突事故もあり、3アクセルを3本きれいに揃えるということは皆無でした。ですが、今大会のように全部クリーンに跳べると4回転にも匹敵する高得点になりますから、世界選手権でもこのように3アクセルが完璧に揃ってくると、やはり手強い存在になりますね。
 世界選手権は地元の中国での開催となりますから、その地元の観客の前でベストな演技ができることを願っています。


 惜しくも表彰台まであと一歩、4位となったのは日本の村上大介選手です。

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 SPはいつもどおり得点源となる4サルコウ+2トゥループの連続ジャンプから、これをパーフェクトに決めて良い波を作ると、続く3アクセルも問題なくこなし、後半の3フリップも確実に成功。ステップシークエンス、スピンも自身初の全てレベル4というハイクオリティーな演技を見せました。得点は自己ベストとなる82.86点で6位となりました。

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 逆転表彰台を狙ったフリー、まずは今季成功率の高い4サルコウをクリーンに成功させると、続く2本目の4サルコウ+2トゥループも完璧。さらに2本の3アクセルをきれいに決め、後半に入っても勢いを落とすことなく次々とジャンプを成功。また、ショート同様にステップシークエンス、スピンは全てレベル4を揃え、演技を終えた村上選手は満足そうに破顔しました。得点は173.61点、先日のNHK杯でマークした自己ベストを7点以上上回りましたが、総合得点では3位の閻選手にわずか3点及ばず、しかし堂々の4位で大会を終えました。
 ショート、フリーともに細かなミスさえ一つもない会心の演技、申し分のない演技でした。村上選手自身もベストを尽くした、やり切った演技だったということが演技後の笑顔から伝わってきました。だからこそ、メダルに届かなかったというのはとても悔しく辛いものでしょうし、キス&クライで表彰台に届かなかったという事実を知った村上選手の悔しさ、やりきれなさをこらえるような表情は心に残りました。
 惜しむらくはフリーで実施した3回転以上のジャンプが8本だったことと、フリーで3つ跳んでよいコンビネーションジャンプが2つしか入らなかったことでしょうか。前者については、村上選手より総合順位で上位のテン選手、ファリス選手、閻選手は、完全不完全は別として3回転以上のジャンプを9本跳んでいますが、村上選手は本来予定していた3アクセル+3トゥループが3アクセル+2トゥループとなったため、3回転ジャンプが一つ減って8本になりました。その分予定していた基礎点を取れなかったのが少しもったいなかったかなと感じます。また、後者については、村上選手はたぶん連続ジャンプの後ろに2ループを付けるのがあまり得意ではないのだと思うのですが、前半に2トゥループを2つ跳んでしまったために、同じ種類の2回転ジャンプは3本以上跳んではならないというルールに引っ掛かり、後半に連続ジャンプを跳ぶことができなくなってしまいました。この点は今後の村上選手にとって重要な課題になってくるでしょうが、村上選手はジャンプ能力の高い選手なのでさまざまなジャンプの組み合わせ、工夫ができるのではないかと思いますね。
 メダルという分かりやすい形で結果が表れなかったことは残念でしたが、村上選手はすでに今後の目標としてフリーに4回転を3本入れたいというようなことも話していて、来季に向けての強い意志が感じられました。今シーズンの飛躍をスタートとして、来季さらに進化した村上選手の姿が見られることを楽しみにしています。


 5位はシニア国際大会デビューとなった日本の宇野昌磨選手です。

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 SPはベートーヴェンの「ヴァイオリンソナタ第9番」。序盤は立て続けに高難度のジャンプを跳ぶ構成。まずは4トゥループ、これを若干着氷でこらえつつもうまくまとめると、続く3アクセルは完璧なランディングで加点2の高評価。後半の3+3も難なく成功させると、見どころとなるステップシークエンスではヴァイオリンの優雅かつアップテンポな旋律を全身でダイナミックに、そして指先で繊細に表現し、レベル4を獲得。得意のスピンも全てレベル4となり、演技をノーミスで終えた宇野選手は驚きまじりの笑顔を見せました。得点は88.90点、先日のジュニアGPファイナルでマークした自己ベストを一気に13点以上も更新し、2位と好発進しました。

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 フリーは「映画『ドンファン』より」。冒頭はSPで成功させた4トゥループからでしたが、着氷でバランスが崩れてしまい大幅に減点されます。ですが、直後の3アクセルは見事に切り換えてパーフェクトに成功。続く3アクセル+2トゥループもクリーンに決め、冷静に立て直します。2つのスピンを挟み後半、最初のジャンプは今季全ての試合でクリーンに成功させている2アクセル+1ループ+3フリップでしたが、最後のジャンプで転倒してしまいます。しかし、そのミスを引きずることなく再びジャンプを立て直し、いつもより疲労を漂わせながらも終盤のエレメンツを丁寧にこなし、滑り切りました。得点は167.55点でこちらもパーソナルベスト、シニアの国際大会デビューを5位という好成績で飾りました。
 ジュニアGPファイナル2014で優勝、年末の全日本選手権で2位となり、一躍注目される存在となった宇野選手。今大会もメダル候補の一角として取り上げられ、宇野選手自身は「緊張する要素はない」と大会前は話していましたが、実際の演技はJGPファイナルや全日本と比べるとやはり微妙に勢いに欠けていて、特にフリーは伸びやかさだったりキレだったりがどことなく普段より大人しいように感じました。現地入りしてからどんどん調子が落ちていってしまったとのことですが、これは宇野選手のみならずどの選手にも当てはまる普遍的な課題でしょうね。いかに調子を落とさないようにするか、ということよりも、調子が落ちた中でいかにある程度納得できるレベルのパフォーマンスをするか、ということなのでしょうが、その点で言えば今回の宇野選手の演技は本人が言うほど悪いものではなかったと思いますし、むしろ調子が良くない中でうまくまとめていて、及第点と言えるのではないでしょうか。それでも宇野選手本人が全然納得していないというのは、それだけ自分のパフォーマンスに自信があり、この大会に向けてやるべきことをやって来たという自負があったからこそなのだろうと思いますし、それが思ったように発揮できなかったことが、キス&クライでの涙に繋がったのでしょうね。
 3月上旬には早々に世界ジュニア選手権があり、まだまだ気の休まる暇はないでしょうが、焦らずじっくりと準備をして、ジュニアの集大成となる世界ジュニアに臨んでほしいですね。



 さて、ここまで男子の1~5位の選手について言及してきましたが、とりあえずこの記事は一旦終了とさせていただき、続きは(後編)の方で書こうと思います。(後編)では、男子の6~8位の選手、そしてアイスダンスを取り上げます。またしばしお待ちください。


:男子メダリスト3選手のスリーショット写真はエンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、それ以外の写真は全てスポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2015-02-18 00:08 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 2015年1月26日から2月1日にかけて、スウェーデンの首都ストックホルムにおいて欧州選手権が行われました。実に1891年から開催されている伝統の大会ですが、スウェーデンでの開催は2003年のマルメ大会以来12年ぶり、さらにストックホルムでは1912年以来の103年ぶりの開催となりました。
 その中で活躍が目立ったのはロシア勢、女子とペアで表彰台独占の快挙を成し遂げ、記憶にも記録にも残る記念的な大会となりました。この記事では女子、男子、ペア、アイスダンスの結果と内容について、お伝えしていきます。

ISU European Figure Skating Championships 2015 この大会の結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 まずは女子の結果から。上述したように、女子はロシア勢がワンツースリーを独占しました。
 その厳しい争いを勝ち抜いて優勝したのは、今シーズン絶好調を保ち続けているエリザベータ・トゥクタミシェワ選手です。

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 SPはまず得点源の3トゥループ+3トゥループをパーフェクトに決めると、3ルッツ、2アクセルと難なく成功。これまでの大会と何ら変わらぬ抜群の安定感でパーソナルベストとなる69.02点をマークし、1位と僅差の2位発進しました。
 フリーも勢いは衰えることなく、冒頭の3ルッツからの3連続ジャンプをクリーンに降りて1.3点という高い加点を得ると、続く単独の3ルッツ、3フリップはそれぞれ1.8点、1.3点の加点で、序盤のジャンプだけで合計4.4点と加点を稼ぎまくります。そして後半最初に組み込んだ3トゥループ+3トゥループも完璧に成功。その後も目立った取りこぼしなく滑り切りました。得点は驚異的な141.38点、こちらも自己ベストで圧巻の初優勝を果たしました。
 マイナスを付けたくても付けようがない演技で本当にお見事としか言えないですね。しかも今大会だけではなくてこういった演技を数か月間に渡ってずっと続けていられるというのは、一体どんなメンタリティーとフィジカルの強さなんだろうと不思議なくらいです。挫折を乗り越えた人間の強靭さというのはやはり凄いですね。
 これでトゥクタミシェワ選手はGPファイナル、欧州選手権と重要な大会を二つ制して2冠となりました。ロシア選手権こそは女王の座をラディオノワ選手に譲りましたが、今回はその悔しさをまたうまくバネに変えて、自らのさらなる飛躍の原動力にしたという印象を受けます。ここまで来れば世界選手権でも1位もしくは2位になるのは間違いないと思いますが、逆に順調すぎるがゆえの怖さもあるので、トゥクタミシェワ選手がこの快進撃を最後まで保てるかどうかは、今までの大会と同じ平常心で臨めるか否かという点にかかってきそうです。ぜひ、この勢いのまま突き進んでいってほしいですね。欧州選手権初優勝、おめでとうございました。


 銀メダルを手にしたのはエレーナ・ラディオノワ選手です。

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 ショートはまず3ルッツ+3トゥループをきれいに成功させると、後半の3ループ、2アクセルも問題なく降ります。スピンも全てレベル4に揃えるなど隙のなさを見せ、パーソナルベストとなる70.48点で首位発進となりました。
 フリーも冒頭は3ルッツ+3トゥループを完璧に跳んで幕を開け、続く3フリップもパーフェクト。後半には3+1+3もクリーンに決めて最後までハイレベル&ハイクオリティーの演技を披露しました。得点は自己ベストの139.08点、もう少しで140点台というハイスコアでしたが、1位のトゥクタミシェワ選手にはわずかに及ばず、総合得点でも0.86点という超僅差で惜しくも優勝は逃しました。ですが、欧州選手権初出場にして素晴らしい銀メダルを獲得しました。
 こちらも今季絶好調でトゥクタミシェワ選手とともに今シーズンの女子フィギュア界の主役となっているラディオノワ選手。2位となったGPファイナルではSPでミスがあり、優勝したトゥクタミシェワ選手とは約4点差ありましたが、ロシア選手権では反対にトゥクタミシェワ選手にミスがあり、約5点差をつけてラディオノワ選手が女王となりました。そして今回は2位に甘んじたものの点差は1点もなく、シーズンを追うごとに二人の対決はますます激しさを増していっています。
 これまでの直接対決では必ず両方もしくは片方にミスがあったのですが、今大会は二人ともミスらしいミスなくほとんど全力を出し切った演技内容で、その結果これだけの互角の戦いとなったんですね。二人を比較してみると実力は本当に勝るとも劣らぬ拮抗ぶりなのですが、演技構成点ではトゥクタミシェワ選手の方がより評価が高く、フリーでは1点ほど上回っています。その一方、技術的にはラディオノワ選手の方が難しいジャンプ構成を組んでいて、フリーの基礎点の合計ではラディオノワ選手は61.48点、トゥクタミシェワ選手は59.76点となっています。ですが、GOEの点数と合わせた総得点ではラディオノワ選手は71.86点、トゥクタミシェワ選手は73.15点と基礎点の合計から立場が逆転しています。なぜこうした逆転が起きたのかというと、トゥクタミシェワ選手が7つのジャンプ要素のうち6つで1点以上の加点を得ている一方、ラディオノワ選手は7つのうち3つとなっているんですね。これはラディオノワ選手がどうこうというよりトゥクタミシェワ選手が凄すぎるということに尽きるのですが、ラディオノワ選手は着氷後の流れが充分ではないジャンプがいくつかあり、その部分で差が生じてしまったのだと思われます。そうは言っても重箱の隅をつつくような些細なことで、この二人にしかできない、この二人だからこその究極的にハイクオリティーな争いですね。
 世界選手権でもラディオノワ選手らしい演技が見られることを楽しみにしています。


 そして3位となったのもロシアのアンナ・ポゴリラヤ選手。

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 SPはこちらも高難度の3ルッツ+3トゥループから、これをしっかり決めて好スタートを切ると、3ループ、さらに苦手の2アクセルも確実に成功させます。スピンでは一部レベルを取りこぼしたものもありましたが、全体的にまとまった演技で自己ベストに迫る66.10点の高得点をマーク、3位につけました。
 フリーは序盤に3+3と3+1+3の得点源となるジャンプを2つ固め、きっちり成功させて波に乗ったかに見えましたが、後半最初の3フリップ、さらに直後の3ルッツとミスを連発してしまいます。しかし、その後の3つのジャンプは落ち着いて跳び、冷静に演技を立て直しました。得点は125.71点、総合3位となりました。
 フリーで複数ミスが出てしまい完璧とはなりませんでしたが、GPロシア大会、GPファイナルと少々不調気味だったところから巻き返してきたなという印象があります。また、元々苦手としている2アクセルも徐々に成功率が高くなってきていて、ポゴリラヤ選手の成長が感じられますね。
 今季はトゥクタミシェワ選手とラディオノワ選手がとにかく物凄いので、どうしてもポゴリラヤ選手はその陰に隠れがちになってしまっているのですが、スレンダーな体躯を活かしたしなやかな身体づかいだったりエレガントな動きだったりというのは二人にはない魅力があって、表現面でも昨シーズンから着実に進化しているなと思いますね。
 昨年は4位と好成績を残した世界選手権、今年も良い演技となることを願っています。


 以下、4位はスウェーデンのヨシ・ヘルゲソン選手、5位は同じくスウェーデンのヴィクトリア・ヘルゲソン選手、6位はフランスの実力者マエ=ベレニス・メイテ選手、7位はラトビアの新星アンゲリーナ・クチヴァルスカ選手、8位はイタリアのロベルタ・ロデギエーロ選手という順位になっています。
 特筆すべきは4位、5位の地元スウェーデンのヘルゲソン姉妹。妹のヨシ選手は欧州選手権での自己最高位を更新、姉のヴィクトリア選手は自己最高位タイと母国で素晴らしい成績を収めました。正直ヘルゲソン姉妹がどこまで上位に食い込めるかは未知数だったのですが、やはり母国での開催ということで与えられるパワーは大きかったのでしょうね。その分期待やプレッシャーもあって大変だったのではないかと想像しますが、それを見事に飛躍の原動力に変えましたね。
 そして、今大会の注目選手の一人であったフィンランドのベテラン、キーラ・コルピ選手はSPで4位と好発進したものの、その後腹痛と発熱によりフリーを棄権しました。SPでは3+3のような難しいジャンプこそありませんでしたが、実力者らしく演技を手堅くまとめて2012年以来となる欧州選手権で健在ぶりを示しました。フリーの演技が見られなかったのは残念ですが、久しぶりの大きな国際大会にもかかわらずショートで60点台をマークし、若い10代の選手たちとも張り合える力があることを見せてくれました。ゆっくり休んで身体を治して、また元気な姿を見せてほしいですね。



 ここからは男子です。

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 チャンピオンとなったのはスペインのハビエル・フェルナンデス選手。ソビエト連邦のアレクサンドル・ファデーエフ選手以来となる欧州選手権3連覇の偉業を達成しました。

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 SPは冒頭の4サルコウ、3+3とミスが相次ぎ波乱の出だしとなりましたが、後半の3アクセルは完璧。ステップシークエンスやスピンは全てレベル4で揃え、ジャンプだけではなく他のエレメンツでも着実に点数を積み重ね、序盤のジャンプミスを挽回しました。得点は89.24点と90点台に迫る高得点をマークし、首位に立ちます。
 3連覇をかけて臨んだフリー、冒頭はまず4トゥループから、これをクリーンに成功させます。続く4サルコウからのコンビネーションジャンプは3サルコウになりますが、セカンドジャンプを3回転にしてロスを最小限にします。そして後半に再び4サルコウに挑みますが、回転不足ではなかったものの転倒してしまいます。その後も小さなミスはいくつかありましたが大崩れはせず、実力者らしく演技をしっかりまとめました。得点は173.25点で1位、総合優勝となりました。
 今シーズンのフェルナンデス選手はバリバリ絶好調かというとそういう印象でもなく、どことなく取りこぼしながらここまで来ているなという感じが個人的にはするのですが(元々比較的ムラのあるタイプの選手ではありますが)、それでも出場した全ての大会で1位、もしくは2位となっているので、成績的には過去最高のシーズンを送っているんですね。いまいち4回転の確率が良くないのが気にはなりますが、シーズンのクライマックスとなる世界選手権でこそフェルナンデス選手の本領発揮となることを願っています。欧州選手権3連覇、おめでとうございました。


 2位はロシアチャンピオンのマキシム・コフトゥン選手です。

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 SPは2本の4回転を組み込むアグレッシブな構成で臨みましたが、4サルコウ、4トゥループともに失敗に終わり、その他の3アクセルやステップシークエンス、スピンは取りこぼしなくこなしたものの、冒頭の2つのジャンプミスが響いて得点は78.21点と伸びず、4位発進となります。
 逆転での表彰台を狙ったフリー、こちらも冒頭にまず4サルコウと4トゥループを入れましたが、両方とも失敗となります。さらに続く3アクセルもミスがあり、前半は不本意な内容。ですが、後半になると立て直し、3アクセルからの連続ジャンプ、3+3など、全て完璧にクリーンとは言えないものの確実に着氷し、どうなることかと思われた前半から何とか挽回しました。得点は157.47点でフリー2位、総合でも2位となり欧州選手権初のメダルを獲得しました。
 フェルナンデス選手同様、4回転ジャンパーとして知られるコフトゥン選手ですが、今回は1本も決まらず本来持っているものを存分に発揮することはできませんでした。ただ、フリーに関しては演技前半であれだけミスの多い内容だったにもかかわらず、そこで気持ちを折らすことなく集中力を保って後半の巻き返しに繋げたというのは、今シーズンのコフトゥン選手が何度も見せているパターンで、彼が成長しているということの一つの証なのだろうと思います。また、昨年はロシア選手権で優勝したものの欧州選手権で5位と振るわなかったためにオリンピック代表から外れ、この欧州選手権はそういった点で因縁ある大会だったと思うのですが、その意識がコフトゥン選手自身にどれだけあったかは分かりませんが、ロシアチャンピオンらしい演技が欧州選手権でもできたという意味でも確かな成長が見られた大会だったのではないでしょうか。
 世界選手権では4回転も含めて、コフトゥン選手らしい、満足のいく演技ができることを祈っています。


 3位は同じくロシアのベテラン、セルゲイ・ボロノフ選手です。

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 ショートは冒頭の4トゥループ+3トゥループをパーフェクトに決めて好スタートを切りましたが、後半の3アクセルが2アクセルになるミス。しかし、次の3ループはきっちり跳んで、ミスを最小限に抑えます。スピンも全てレベル4を獲得し、総合力の高さを見せました。得点は81.06点で2位につけます。
 フリーもまずは4+3からでしたが、細かなミスがあり完全にクリーンとはならず。しかし、直後の3アクセルからのコンビネーションジャンプはしっかり着氷。さらに続く2本のジャンプも成功させて前半は上々の出来となります。ですが、後半に入ると3アクセルは着氷で大きく乱れ3サルコウも1回転にとミスが相次ぎ、後半は少しもったいない内容となりました。得点は151.99点でフリー3位、総合3位でショートから順位は落としましたが、2年連続の表彰台を守りました。
 ショートもフリーもボロノフ選手のパーソナルベストが90.33点、167.04点であることを考えると決してハイスコアとは言えませんが、今シーズンほとんどの大会で表彰台に立ち続けているボロノフ選手の大崩れしない強さがここでも発揮されましたね。コフトゥン選手とは総合得点でおよそ2点の差だったので、後半のミスがなければ銀メダルも十二分にありえたことを思うと惜しいなという印象もありますが、世界選手権で今回取りこぼした分も含めて、全てぶつけてほしいですね。世界選手権でもボロノフ選手のさらなる活躍を楽しみにしています。


 以下、4位にイスラエルのアレクセイ・ビチェンコ選手、5位にチェコのミハル・ブレジナ選手、6位にドイツのペーター・リーバース選手、7位にロシアのアディアン・ピトキーエフ選手、8位にイタリアのイヴァン・リギーニ選手が入りました。



 続いではペアです。こちらも女子同様、ロシア勢の表彰台独占となりました。

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 優勝者はベテランの川口悠子、アレクサンドル・スミルノフ組。ショートは3トゥループのサイドバイサイドジャンプ、3ループのスロージャンプを始め、全エレメンツをハイレベル、ハイクオリティーにこなし、1位と1.52点差の2位と好発進します。フリーも冒頭に3トゥループ+3トゥループの難しいシークエンスジャンプをまずクリーンに決めて上々の滑り出しを見せると、ペアで最高レベルのスロー4サルコウを完璧に着氷。終盤のリフトでわずかなミスはありましたが、それを忘れさせるような圧巻の演技を披露。自己ベストに迫る高得点をマークしフリー1位、逆転で欧州選手権の金メダルを手にしました。
 今シーズンはGPのスケートアメリカで絶好のスタートを切ったものの、その後はジャンプがあまり安定せず調子を落とし気味だった川口&スミルノフ組ですが、ロシア選手権で大技のスロー4サルコウを決めるなど復調の兆しを見せ、見事にこの欧州選手権に合わせてきました。4サルコウという最高難度のスロージャンプを持ち技にしているのはもちろん、芸術面においても彼らにしかできない表現の在り方を示していて、フィギュアスケートのおもしろさ、魅力を体現するようなペアですね。世界選手権でもぜひ二人らしい演技ができることを願っています。欧州選手権優勝、おめでとうございました。
 2位はロシア王者のクセニア・ストルボワ、ヒョードル・クリモフ組。SPはツイストでレベルを取りこぼす珍しい場面もありましたが、その他は世界選手権銀メダリストらしい安定感で質の高いエレメンツをこなし、首位に立ちます。フリーは前半の大技スロー3ルッツが着氷で乱れマイナスを受けましたが、その後は落ち着いて3連続ジャンプや高難度のリフト、スピンなど次々と成功。しかし、プログラム最後のエレメンツであるスロー3サルコウに向かう軌道の途中でクリモフ選手がまさかの転倒。エレメンツを実施することができず、他のペアより一つ技が少ない状態でフィニッシュしました。それでもフリー2位、総合2位で2年連続となる銀メダルを獲得しました。
 あまりにも思いがけない形で優勝を逃すこととなってしまい、上の写真でも分かるようにストルボワ選手、クリモフ選手に笑顔は見られませんでしたが、これはミスというよりアクシデントに近いものなので気に病むことなく次に進んでいってほしいですね。もちろん欧州選手権では優勝を最大の目標にしていたでしょうし、この悔しさを取り戻すことはできないかもしれませんが、この経験をバネにして世界選手権でまたストルボワ&クリモフ組らしい演技をして、満面の笑みを見せてほしいですね。
 3位はロシア選手権2位のエフゲニア・タラソワ、ウラジミール・モロゾフ組。SPはサイドバイサイドジャンプ、スロージャンプの両方でミスがあり5位と出遅れてしまいます。しかし、フリーでは見事にショートのミスを修正し、全てのジャンプ系エレメンツをクリーンに成功。終盤のリフトでミスがあったものの、それ以外はほぼノーミスと言ってよいまとまった内容で、今までの自己ベストを12点以上更新。トータルでもパーソナルベストを大きく上回り、ショートの5位から素晴らしい追い上げで初表彰台となりました。
 欧州選手権初出場ということで、さすがにショートはその独特の空気に飲み込まれてしまった部分があったかもしれませんが、そこからの切り替え力は今季GPでも経験を積んで結果を出してきたという部分が活かされたのでしょうね。


 以下、4位はイタリアのヴァレンティーナ・マルケイ、オンドレイ・ホタレク組、5位がフランスのヴァネッサ・ジェームズ、モルガン・シプレ組、6位がニコール・デラ・モニカ、マッテオ・グアリーゼ組、7位がドイツのマリ・ヴァルトマン、アーロン・バンクリーブ組、8位がオーストリアのミリアム・ツィーグラー、セヴェリン・キーファー組となっています。



 最後はアイスダンスです。

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 優勝はフランスのガブリエラ・パパダキス、ギヨーム・シゼロン組です。ショートはこれまでのパーソナルベストを7点更新して首位に立つと、フリーも全エレメンツでレベル3、4を獲得し、GOEの加点も存分に稼ぎ、こちらもパーソナルベスト。トータルも合わせ全てで自己ベストをマークして、一度も首位の座を明け渡すことなく完全優勝を果たしました。
 シニア2年目の今季、GP中国杯でいきなり優勝すると、GPファイナルにも進出し銅メダルを獲得、そしてこの欧州選手権でも前年の15位から一気にジャンプアップして初めてのヨーロッパ王者となったパパダキス&シゼロン組。私はアイスダンスに関してはシングルほど詳しくないので、ほとんど実績らしい実績のなかったカップルが1年でここまで急激にスコアやジャッジの評価を上げるというのはどういうことなんだろう?何が要因なんだろう?とまだ理解が追い付いていないのが正直なところです。今までトップレベルで活躍してきた同じフランスのナタリー・ペシャラ、ファビアン・ブルザ組が昨季をもって引退したことと全くの無関係ではないんだろうなという気もしますし。もちろんジュニア時代はジュニアGPファイナルや世界ジュニアで好成績を収めたカップルなので、その下地がある上での今シーズンの飛躍なのだと思いますが。とにもかくにも欧州選手権初優勝、おめでとうございました。
 2位となったのは前年のチャンピオンだったイタリアのアンナ・カッペリーニ、ルカ・ラノッテ組。SDは実力者らしいそつのない演技で1位とおよそ1点差の3位につけると、FDも技術の高さと質の高さを見せつけフリー2位、総合2位となりました。
 2連覇こそならなかったものの、シーズン序盤のらしくない不調ぶりからしっかり修正・改善をした姿を披露してくれましたね。GP初戦の中国杯ではレベルの取りこぼしや転倒など珍しいミスがあり、その後はGP2戦目を欠場して立て直しに努めてきたカッペリーニ&ラノッテ組ですが、その分フルで試合に出続けてきたほかのカップルには後れを取ってしまいました。ですが、あえてリスクのある戦略を選択したことが今後の彼らにとって良い方向に働くのではないかと思いますし、その片鱗を今大会で見られたような気がしますね。
 3位に入ったのはロシアのアレクサンドラ・ステパノワ、イワン・ブキン組。SDで自己ベストを更新して4位となると、フリーはリフトの規定違反で減点を受ける部分もありましたが、レベルが付く7つのエレメンツのうち5つでレベル4を獲得する好演を見せ、ショートから順位を一つ上げてフィニッシュしました。
 3位争いはステパノワ&ブキン組と同じロシアのエレーナ・イリニフ、ルスラン・ジガンシン組とのあいだで繰り広げられることとなりましたが、最終的な点差は1.12点という激しい競り合いに。SDはイリニフ&ジガンシン組がステパノワ&ブキン組に約5点差をつけて2位発進しましたが、フリーではリフトが一つ無得点になるという大きなミスを犯しまさかのフリー8位。まとまりのある演技を見せたステパノワ&ブキン組が超僅差でかわして銅メダルを勝ち取りました。


 以下、4位は上述したようにエレーナ・イリニフ、ルスラン・ジガンシン組、5位はスペインのサラ・ウルタド、アドリア・ディアス組、6位はイタリアのシャルレーヌ・ギニャール、マルコ・ファブリ組、7位はドイツのネッリ・ジガンシナ、アレクサンダー・ガジー組、8位はスロバキアのフェデリカ・テスタ、ルカーシュ・チェーレイ組という最終順位となっています。



 さて、こうして終了した欧州選手権ですが、終わってみれば全12個のメダルのうち、9個をロシア勢が独占するという記録に残る歴史的な大会となりました。ロシア勢の活躍はすでに数年前から始まっていましたが、今シーズンはその黄金時代の中でも記念碑的なシーズンとなっているのかもしれません。
 一方、現在韓国のソウルではヨーロッパ以外の選手が集まる四大陸選手権が行われています。すでにこの記事を書いている最中に開幕してしまったのですが、こちらも欧州選手権に負けず劣らずハイレベルな戦いとなっています。全ての競技が終了次第、記事をアップしようと思いますので、しばらくお待ちください。では。


注:女子メダリスト3選手のスリーショット写真、ポゴリラヤ選手の写真、男子メダリスト3選手のスリーショット写真、アイスダンスメダリスト3組の写真は、フィギュアスケート情報ウェブサイト「Absolute Skating」の公式フェイスブックページから、トゥクタミシェワ選手の写真、ラディオノワ選手の写真、フェルナンデス選手の写真、コフトゥン選手の写真、ボロノフ選手の写真は「Absolute Skating」から、ペアメダリスト3組の写真は、AFPBB Newsが2015年2月2日の8:29に配信した記事「川口組がペア制覇、ロシア勢が表彰台独占 フィギュア欧州選手権」から引用させていただきました。
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by hitsujigusa | 2015-02-13 17:07 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 カナダ選手権2015が2015年1月19日から25日にかけて、オンタリオ州のキングストンにおいて行われました。この記事ではカナダ選手権の内容や結果、また、大会の結果によって選ばれた世界選手権、四大陸選手権の代表メンバーについてお伝えします。なお、全米選手権2015についての記事の末尾に、次の記事は欧州選手権2015の記事というような予告をしたのですが、欧州選手権の記事はこのカナダ選手権の記事の次に書きますので、しばしお待ちください。

2015 Canadian Tire National Skating Championships この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 まずは上の写真でもお分かりかと思いますが、女子の結果から。
 チャンピオンとなったのは今季GPシリーズデビューを果たしたガブリエル・デールマン選手。SPは冒頭の3トゥループ+3トゥループを完璧に成功させて好スタートを切りましたが、後半に組み込んだ3ルッツで転倒してしまいます。しかし、その他のエレメンツでは取りこぼしなく加点もしっかり積み重ね、62.91点で首位発進しました。フリーでは3+3を外した構成で臨み、その分後半にジャンプ要素を固めて得点を稼ぐ作戦。その後半のジャンプで細かなミスがちょこちょこ出てしまったものの、手堅く演技をまとめてフリー2位。SPのアドバンテージを活かした形で逃げ切り、初めてのカナダ女王に輝きました。
 銀メダルを獲得したのは今季GPのロシア大会で3位に入り存在感を示したアレーヌ・シャルトラン選手(これまで当ブログではシャルトラン選手の名前を、アレイン・チャートランドと表記していましたが、今後はより本当の音に近いアレーヌ・シャルトランに表記を変更します)。ショートは3+3のセカンドジャンプの回転不足、3ルッツの転倒とミスが重なり、僅差の3位となります。フリーでもいくつかミスはありましたが、得点源となるジャンプは確実に成功させ、また、ステップシークエンスやスピンも取りこぼしなくレベル4を揃えてフリー1位、総合2位となりました。
 3位はヴェロニク・マレー選手。SPは3+3こそ跳ばなかったものの、ミスなくエレメンツをこなして加点を稼ぎ2位。フリーは転倒やジャンプが一つ無得点になるなどミスが相次ぎ順位を落としてしまいました。しかし、4位の選手とは25点の差をつけて堂々の3位でフィニッシュ、初めて表彰台に立ちました。
 今シーズンのカナダ女子勢はカナダ選手権2連覇中のエース、ケイトリン・オズモンド選手が怪我のため休養し、このカナダ選手権の出場も見送られました。そうした状況で、誰が新女王になるのか、オズモンド選手以外は実力の拮抗しているカナダ女子の中で誰が一歩抜け出すのかが注目のポイントとなっていました。その結果、デールマン選手が優勝したわけですが、デールマン選手は2013年、2014年と2年連続で2位になっていましたから、今回の優勝も実力、実績相応の順当なものだと言えますね。そして、2位となったシャルトラン選手も今季GPでメダルを獲得している有望な選手なのでやはり順当ですが、国際大会でのパーソナルベストだけを見るならシャルトラン選手の方がデールマン選手より8点近く上ですから、ショートでの出遅れがなければ初優勝の可能性も充分にあったので、その点は少しもったいなかったかなという気もしますね。


 続いて男子。

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 男子は今シーズンシニアデビューしたばかりの16歳のナム・グエン選手が初優勝。SPは冒頭の3アクセルが完全にクリーンとはならなかったものの、後半の2つのジャンプ要素ではきっちり加点も稼ぎ、80点超えの高得点で首位に立ちます。フリーでは4サルコウに挑みパーフェクトに決めると、続く3アクセル+3トゥループも成功。その後も全てのジャンプをクリーンに次々と降り、175.10点、総合256.88点と他を寄せ付けぬ圧倒的な実力の差を示し、堂々の金メダルを手にしました。
 2位はベテランのジェレミー・テン選手。SPでは3+3と3フリップでミスを犯しますが冷静にまとめて2位。フリーは序盤に2度転倒するという厳しい出だしとなりましたが、その後はベテランらしく見事に巻き返して3位。総合得点では3位の選手を0.18点差でギリギリかわして銀メダルを死守しました。
 3位は前年も3位のリアム・フィラス選手。ショートは3アクセルのステップアウト、また、3+3が2+3になった上に転倒という大きな失敗が2つあり4位と出遅れます。フリーでも3アクセルが1回転になるなど複数ミスはあったものの、成功させたジャンプでは高い評価を得て挽回して2位、トータルで3位に順位を上げました。
 女子同様、絶対的なエースであるパトリック・チャン選手の不在によって誰が新王者の栄光を掴むのかに注目が集まりましたが、こちらも有力視されていたグエン選手が下馬評どおりの優勝となりました。2位に35点以上の点差をつけての優勝で、まだ16歳という幼さを感じさせない安定感と落ち着きぶりには脱帽ですね。2位になったテン選手はGPシリーズでは成績こそ芳しくなかったですが、プログラムの内容の充実度や美しさには目を見張るものがあり、技術点で伸びなかった分を演技構成点で補っていますね。3位のフィラス選手も技術点はそこまで高いわけではありませんが、演技構成点の評価はショート、フリーともに全体の1位となっていて、さらにジャンプが伴ってくればという期待を感じさせる選手だと思います。
 4位以下の選手の中で個人的に気になっていたのは、独創的な表現力を持ち味とするエラッジ・バルデ選手。残念ながらショートで大きなミスが2つあり7位と出遅れてしまい、そしてフリーも2度転倒があり、ショートから一つ順位を上げたものの6位に終わりました。バルデ選手は前年まで3年連続でカナダ選手権4位となっていて、今年はチャン選手がいないということもあってバルデ選手にとっては初表彰台を狙える大きなチャンスだったと思うのですが、それゆえのプレッシャーもあったのかもしれませんね。
 また、もう一つ残念だったのは、2013年の世界選手権5位の実力者ケビン・レイノルズ選手がSPの競技後に左臀部の負傷によってフリーを棄権したことです。今季のレイノルズ選手は怪我とスケート靴の問題でGPシリーズを欠場し、このカナダ選手権は久しぶりの試合だったのですが、SPで2本の4回転に挑んだものの3度の転倒で12位に留まり、棄権に至ってしまいました。本当に見事な4回転を跳ぶ稀有なジャンパーであり、表現面でも魅力溢れるスケーターなので、今ぶつかっている壁を乗り越えて、また元気に復活してほしいなと心から思いますね。


 一方、ペアは世界選手権で2年連続の銅メダリストとなっているメーガン・デュアメル、エリック・ラドフォード組が圧倒的な大差をつけて4連覇を達成しました。フリーの3連続コンビネーションジャンプのミス以外は非の打ちどころがない完璧な内容で貫録を見せつけました。これでデュアメル&ラドフォード組は今シーズン出場した全ての大会で優勝となり、この快進撃が最後まで続くのかどうか楽しみです。
 2位は今季結成したばかりのリュボーフ・イリュシェチキナ、ディラン・モスコヴィッチ組。ショート、フリーともに細かなミスが複数ありましたが、転倒など大きなミスなく演技をまとめ、初出場で銀メダルという素晴らしい結果となりました。
 3位はジュニアのジュリアン・セガン、シャルリ・ビロドー組。こちらも大きなミスなく手堅い演技を披露しましたが、レベルの取りこぼしやGOE加点があまり伸びなかったことが響き、3位に留まりました。ジュニアのGPシリーズでは今季負けなしの実力者ペアで、さらに上の順位も狙えたと思うのですが、パーソナルベストをマークしたジュニアGPファイナル2014の時と比べると、本領を出し尽くすことはできなかったのかなという印象ですね。


 そして、アイスダンスでも世界選手権2014の銀メダリストであるケイトリン・ウィーバー、アンドリュー・ポジェ組が実力を発揮して、念願の初優勝を果たしました。SD、FDともにさすがの演技内容で、ペアのデュアメル&ラドフォード組同様、まさに貫録優勝ですね。
 2位は今季GP2大会で表彰台に立ち、ファイナルにも進出するなど飛躍を遂げたパイパー・ギレス、ポール・ポワリエ組。その実力どおりの活躍を今大会でも示しましたね。
 3位はアレクサンドラ・ポール、ミッチェル・イスラム組。SDで3位と好位置につけると、FDでは5位に留まったもののSDのアドバンテージが活きて、2年連続で銅メダルを獲得しました。



 さて、これらの結果、世界選手権2015、四大陸選手権2015に派遣される代表選手は以下のように決まりました。(敬称略)


《世界選手権》

女子:ガブリエル・デールマン、アレーヌ・シャルトラン
男子:ナム・グエン、ジェレミー・テン
ペア:メーガン・デュアメル&エリック・ラドフォード組、リュボーフ・イリュシェチキナ&ディラン・モスコヴィッチ組、ジュリアン・セガン&シャルリ・ビロドー組
アイスダンス:ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組、パイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組、アレクサンドラ・ポール&ミッチェル・イスラム組


《四大陸選手権》

女子:ガブリエル・デールマン、アレーヌ・シャルトラン、ヴェロニク・マレー
男子:ナム・グエン、ジェレミー・テン、リアム・フィラス
ペア:メーガン・デュアメル&エリック・ラドフォード組、リュボーフ・イリュシェチキナ&ディラン・モスコヴィッチ組、カーステン・ムーア=タワーズ&マイケル・マリナロ組
アイスダンス:ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組、パイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組、アレクサンドラ・ポール&ミッチェル・イスラム組



 アメリカ代表同様、カナダも世界選手権と四大陸選手権の代表はほぼ同じ顔ぶれとなりました。唯一異なるのはペアで、世界選手権に派遣されるセガン&ビロドー組が四大陸には派遣されず、代わりにカナダ選手権4位のムーア=タワーズ&マリナロ組が代表メンバーとなりました。カナダ選手権でのセガン&ビロドー組とムーア=タワーズ&マリナロ組の総合得点の差はたった1点差でしたので、チャンスを与えるという意味で妥当な選出だと思います。
 四大陸選手権はこの記事アップの4日後、2月9日に韓国のソウルで幕を開けます。


:記事内の写真は全て、カナダのフィギュアスケート連盟「スケートカナダ」の公式ウェブサイトから引用させていただきました。
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by hitsujigusa | 2015-02-05 18:05 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 2015年の1月18日から25日にかけて、アメリカ・ノースカロライナ州のグリーンズボロにおいて全米選手権2015が開催されました。この記事では大会の結果、内容について、また、大会の結果を受けて選出された世界選手権や四大陸選手権の代表メンバーについてざっくりとお伝えしていきます。

2015 Prudential U.S. Figure Skating Championships 全米選手権2015の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 まずは女子からです。女子は記事冒頭の写真の選手たちが、表彰台の顔ぶれとなりました(全米選手権は4位の選手にもメダル(ピューターメダル)が与えられるので、メダリストも4人となります)。

 優勝したのはベテランのアシュリー・ワグナー選手。SPはまず高難度の3ルッツ+3トゥループに挑んだものの、セカンドジャンプが両足着氷となりGOEではマイナス評価。しかし、後半に組み込んだ2アクセル、3フリップは完璧な跳躍で、ステップシークエンス、スピンも全てレベル4というハイクオリティーな演技を披露。ショートで初めて70点台をマークし、首位に立ちました。そして圧巻だったのはフリー。SPでミスがあった3ルッツ+3トゥループをパーフェクトに成功させると、その後も次々とジャンプをクリーンに着氷。後半に入れた3+1+3も確実に決め、会心の演技となりました。得点はなんと148.98点という驚異的なハイスコアで、フリーとトータルで全米選手権の女子における最高得点をマークして3度目の優勝を飾りました。
 今大会のワグナー選手に関して驚かされた点はさまざまあり、演技全体の内容や得点が予想以上に素晴らしいものだったのはもちろんですが、その中でもジャンプの難度を上げてきたことに最もビックリしました。近年のワグナー選手は基本的には3フリップ+3トゥループを持ち技としていましたが、成功率としては決して高いわけではなく、今季も回転不足を取られることが多々ありました。にもかかわらず、今回3フリップ+3トゥループをより難しい3ルッツからの2連続3回転に変更し、しかもフリーではエッジエラーを取られることも回転不足を取られることもなく成功させたというのは、昨年の借りを返すという意味でチャレンジャーとして思い切りぶつかっていったというのもあるのかもしれませんが、挽回してやる、自分を批判した人たちを見返してやるという元全米女王としての意地もあったのかなと思いますね。

 2位は昨年の女王、グレイシー・ゴールド選手。SPは冒頭の3+3が3+2となってしまうミスがありましたが、その他のエレメンツは大きな取りこぼしなくしっかりこなし、僅差の2位につけます。逆転を狙ったフリー、ショートで跳べなかった3+3をクリーンに決めると、続く大技2アクセル+3トゥループも成功。上々の滑り出しとなりましたが、後半の3フリップがエッジエラーとなった上、転倒となってしまいます。ですが、その後は実力者らしく落ち着いて立て直し、2年連続の頂点には届かなかったものの、見事に銀メダルを手にしました。
 NHK杯後に右足の疲労骨折が発覚し、出場が決まっていたGPファイナルを辞退したゴールド選手。それ以来の試合ということで回復具合が心配されましたが、ショート、フリー合わせての演技内容を見る限り、そこまで大きな影響はないのかなという感じがします。残念ながらワグナー選手には及びませんでしたが、そうはいっても合計得点で200点超えと怪我明けというのを感じさせないレベルの高さで、このあとのシーズンでさらに磨かれていくことを考えると、世界選手権では今以上に手ごわい存在となるでしょうね。

 3位に入ったのはジュニアのカレン・チェン選手。SPは得点源となる3ルッツ+3トゥループでミスがあり6位と出遅れたものの、フリーではその3+3で小さなミスがあった以外は全てのジャンプをきっちり成功させ、また、スピンやステップシークエンスもレベル4を揃え、なんと135.13点という高得点を獲得。総合得点でも200点に迫り、初めての全米選手権にして初メダルを勝ち取りました。
 オリンピック出場が懸かった2014年の大会はポリーナ・エドマンズ選手が銀メダルを獲得し代表入りするというビッグサプライズがあったわけですが、今年同じような存在となったのがチェン選手でした。ジュニアの世界では実績のある選手なので上位に来る可能性は充分あったでしょうが、いきなり表彰台というのは想像してなかったですね。日本でも中学生の樋口新葉選手が全日本選手権で3位に入るなどジュニア勢の活躍が目立ちましたが、どこの国でも女子における下からの追い上げの凄さというのは共通していますね。年齢制限のため世界選手権や四大陸選手権に出場することはまだできませんが、今後注目の存在です。

 4位は前年2位だったポリーナ・エドマンズ選手。ショートは一つのジャンプでわずかにミスがあったのみで、3+3を確実に成功させ、スピン、ステップシークエンスも取りこぼしなくクリーンにこなして3位と好発進。ですが、フリーでは後半のジャンプに転倒を含むミスが複数あり、順位を下げてしまいました。
 1年前はシニアデビューとなった全米選手権でいきなり準優勝し、一躍シンデレラガールとなったエドマンズ選手ですが、今季はいまいち本来の実力を発揮できていないような印象があります。昨季はあれよあれよという間にソチ五輪や世界選手権に出場して、シニアでは実績のない新星ということもあってさほどプレッシャーもなく、怖いもの知らずで行けたのかなと思うのですが、今シーズンはさらなる躍進を期待される中で試合に臨まなければいけませんから、その期待されるものの違い、立場の違いが少し彼女を硬くさせているのかもしれません。ですが、それでも2年連続で表彰台は確保して、大舞台で大崩れしない強さを見せて、昨年の2位とはまた違った価値のある4位なんじゃないかなと思いますね。

 以下、5位はサマンサ・シザリオ選手、6位はマライア・ベル選手、7位はジュニアのタイラー・ピアース選手、8位はコートニー・ヒックス選手となっています。
 前年3位の実力者、長洲未来選手は10位となりました。ショートは3+3が回転不足になった以外はほぼノーミスで、長洲選手らしい演技を見せて4位の好位置につけました。しかし、フリーでは序盤の2つのコンビネーションジャンプを跳び終えた後、つなぎの部分で転倒し右膝を負傷。転倒の影響からその後のジャンプのほとんどでミスが出てしまいましたが、それでも痛みをこらえて最後まで滑り切りました。演技中の怪我で不本意な演技となってしまったのは長洲選手自身がいちばん辛く悔しいでしょうが、右膝は骨折など大怪我ではなく打撲とのことですし、今季の長洲選手はGPシリーズでもところどころにらしさが垣間見えて力が戻ってきているなと感じられたので、怪我をしっかり治して、自信を持って今行っている取り組みを続けてほしいですね。



 続いでは男子の結果についてです。

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 全米王者となったのはジェイソン・ブラウン選手。ショートで全てのジャンプをきれいに着氷し、ステップシークエンス、スピンでもレベル4を揃え、全エレメンツで1点以上の高い加点を得るというパーフェクトな演技を見せ、93.36点という高得点で首位に立ちます。フリーでも安定感のあるジャンプを相次いで成功させ、中盤の3アクセルで一つミスがあったものの、それを他のジャンプに波及させることなく滑り切り、181.62点でフリー2位、SPのアドバンテージを活かして1位の座を守り切りました。
 フリーでは一つミスが出てしまい完璧とはなりませんでしたが、SP、フリーともに実力を存分に発揮して初めての全米のタイトルを獲得したブラウン選手。世界的に見ても男子はショートとフリー合わせて3本以上4回転を跳ぶのが当たり前の潮流になっている中、それとは真逆の戦略でゴーイングマイウェイを突っ走っていますが、今大会ではそれがしっかりハマって吉と出ました。このあとのシーズンの国際大会では、この戦略でどれだけ日本や欧州の強豪たちのあいだに割って入れるかがポイントとなると思いますが、ジャンプの難度や順位とは別に、演技・プログラムそのものでこれだけ楽しませてくれるスケーターはそうそういないですから、我流を貫いてほしいなとも感じますね。

 2位となったのはベテランのアダム・リッポン選手。ショートでは何と4回転の中でも最高難度の4ルッツに挑みましたが、回転不足であえなく転倒となってしまいます。しかし、その後はきっちり立て直してジャンプをクリーンに決め、上位と僅差の5位につけます。そして翌々日のフリー、冒頭で再び4ルッツに果敢に挑戦し、ダウングレードとはなったものの転倒は免れます。以降は2本の3アクセルや後半の3+3、3+1+3など全てのジャンプをきれいに成功させる圧巻の滑り。演技を終えたリッポン選手は力強いガッツポーズで歓喜を爆発させました。得点は187.77点でフリー1位となりましたが、トータルではおよそ2点差でわずかにブラウン選手に及ばず。ですが、本当に素晴らしい価値ある銀メダルを手にしました。
 今大会のリッポン選手の演技は、実力者が実力を充分に出し尽くした結果の妥当な演技とも言えますが、その一方で良いところまでは行くんだけれども今一つ殻を破り切れずにいた彼が予想以上の演技をしたという意味で、今大会における最大のサプライズだったとも言えます。また、今まで実戦で取り入れたことのなかった4ルッツに関しても、難しいジャンプに挑戦することは他のジャンプにも影響を与えかねないのでリスクがあると思いますが、それにあえて挑んだというのはそれだけ自分のコンディションに自信があったからなのでしょうし、実際に4ルッツ自体は失敗に終わったものの、それ以外のジャンプには全くミスを波及させていないので、4ルッツ含めアグレッシブなジャンプ構成が実を結んだ結果と言えそうですね。今までにないチャレンジを見せ、そして自分史上最高の演技をしたリッポン選手が、今大会を良い分岐点として国際大会でもさらなる飛躍を遂げることを願っています。

 3位はジョシュア・ファリス選手。SPは3+3で若干ミスがあったものの最小限に抑えて2位と好発進します。フリーでは4回転を含む複数のジャンプミスや同じ種類の2回転ジャンプの跳び過ぎによる点のロスもありましたが、成功させたジャンプでしっかりGOEを稼ぐなどそつのなさも見せ、また、演技構成点でも気前よく高評価を得て、銅メダルを獲得しました。
 上述したリッポン選手もサプライズでしたが、このファリス選手の3位も私にとってはサプライズでした。ジュニア時代は世界ジュニア選手権を制したファリス選手ですが、昨季シニアに上がってからはほとんど実力を発揮できておらず、今季もエントリーしていた中国杯を右足首の負傷によって欠場し、復帰したNHK杯では本人が呆然としてしまうような演技で最下位となりました。その印象が強かったので、全米選手権でのメダルというのは正直言って全く予想していなかったのですが、見事に予想を裏切られましたね。ほかの実力者のミスに助けられた部分もあるでしょうが、元々ジュニアでは実績のある選手なので、今大会のファリス選手が彼本来の姿で、それがここに来てようやく出せたということなのかなと思います。今大会をリスタートとして、このあとのシーズンではさらにファリス選手らしい演技を見せてほしいですね。

 4位はマックス・アーロン選手。ショートでは4サルコウと3アクセルで細かなミスがありましたが、大崩れすることはなく踏みとどまって4位発進します。フリーでは4サルコウ2本を組み込み、1本はクリーンに決めたものの、もう1本はミスとなり、その後のジャンプでも小さなジャンプミスが重なり、SPから順位を上げることは叶いませんでした。
 アーロン選手は4サルコウという世界でも数少ない選手しか跳べないジャンプを持っているだけに、そのほかのところでちょこちょこ綻びを生じさせてしまうのがもったいないですね。表彰台に立ったとはいえ、世界選手権や四大陸選手権の代表枠は3枠なので、3位のファリス選手との点差も大差ではないだけに、技術点という面ではもう少し積み重ねられたんじゃないかなという気がします。さらに気になるのは演技構成点で、上位3人のみならず5位、6位の選手にも水をあけられてしまっているので、やはりその点が今後のアーロン選手の大きな課題なのかなと思いますね。

 以下、5位はベテランのジェレミー・アボット選手、6位はロス・マイナー選手、7位はダグラス・ラザノ選手、8位はジュニアのネイサン・チェン選手となりました。
 個人的に残念だったのは5位のジェレミー・アボット選手。SPでは3アクセルの小さなミスがあっただけでまずまずの滑り出しを見せましたが、フリーは2度の転倒があり、全米選手権で初めてメダルを逃すこととなりました。アボット選手は1月上旬に父のダニーさんを亡くし、この全米選手権はその直後の大会で、複雑な心境だったのではないかと想像します。惜しくも表彰台には届きませんでしたが、アボット選手はエキシビションでダニーさんに捧げるプログラム「Dear Lord」を滑り、父親に対する気持ちをスケートで表現しました。このあとのシーズン、アボット選手の演技が見られないのは本当に残念ですし、今後の進退のことも気になりますが、しばらくはゆっくり休んでほしいなと思いますね。



 ここからはペアです。
 優勝したのはアレクサ・シメカ、クリス・クニーリム組。SPで全てのエレメンツに加点が付く素晴らしい出来で首位に立つと、フリーではいくつかミスがあったものの、高難度の4回転ツイストリフトを成功させるなど全体的にまとまりのある演技を披露。最終的には2位のペアに10点以上の差をつけて初優勝を果たしました。
 2位はヘイヴン・デニー、ブランドン・フレイジャー組。SPではほぼ完璧に近い滑りで2位発進し、フリーもまとまった演技を見せましたが、ソロジャンプやスロージャンプで複数ミスが出てしまい、シメカ&クニーリム組には及びませんでした。しかし、見事に初メダルを獲得しました。
 3位はタラ・ケイン、ダニエル・オシェア組。ショートでは転倒のような大きなミスこそありませんでしたが、ツイストリフトがレベル1と判定されるなど取りこぼしもあり、4位に留まります。ですが、フリーではスロージャンプで一つ転倒があった以外はほぼノーミスで、ショートからジャンプアップして初めての銅メダルを獲得しました。
 4位はマデリーン・アーロン、マックス・セットレージ組。SPは複数ミスを犯し7位と出遅れましたが、フリーは中盤のスロージャンプで転倒したのみで、その他のエレメンツはレベル3や4を揃えるなど質の高い演技で挽回し、初出場初メダルとなりました。



 最後はアイスダンス。
 優勝は前年2位のマディソン・チョック、エヴァン・ベイツ組。SDはパーフェクトな演技で2位と僅差の1位、そしてフリーも勢いを保ったまま会心の滑りを見せ、首位の座を譲ることなく完全優勝を遂げました。
 2位はマイア・シブタニ、アレックス・シブタニ組。SDは1位のチョック&ベイツ組の73.95点に対し73.84点と、逆転優勝も射程圏内の2位となりました。そしてフリーでもチョック&ベイツ組に負けるとも劣らない好演で優勝に迫りましたが、惜しくも銀メダルとなり、悲願の初優勝には届きませんでした。
 3位はマディソン・ハベル、ザカリー・ダナヒュー組。ショートは大きな失敗こそなかったものの、レベルを取りこぼす部分がいくつかあり得点を伸ばし切れず、2位に大差をつけられての3位発進となります。しかし、FDでは取りこぼしなく演技をまとめ、銅メダルを手にしました。
 4位はケイトリン・ハワイエク、ジャン=リュック・ベイカー組。ハワイエク&ベイカー組は昨季までジュニアだったため、シニアの全米選手権は初出場となりましたが、実力を発揮して表彰台に上がりました。



 さて、全米選手権の主な結果は以上ですが、この結果を受けて以下のように世界選手権2015、四大陸選手権2015の代表選手が全米フィギュアスケート協会によって発表されました。(敬称略)


《世界選手権》

女子:ポリーナ・エドマンズ、グレイシー・ゴールド、アシュリー・ワグナー(第1補欠:サマンサ・シザリオ、第2補欠:コートニー・ヒックス、第3補欠:長洲未来)
男子:ジェイソン・ブラウン、ジョシュア・ファリス、アダム・リッポン(第1補欠:マックス・アーロン、第2補欠:ジェレミー・アボット、第3補欠:ロス・マイナー)
ペア:ヘイヴン・デニー&ブランドン・フレイジャー組、アレクサ・シメカ&クリス・クニーリム組(第1補欠:タラ・ケイン&ダニエル・オシェア組、第2補欠:マデリーン・アーロン&マックス・セットレージ組、第3補欠:ジェシカ=ノエル・カララグ&ザック・シドゥー組)
アイスダンス:マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組、マディソン・ハベル&ザカリー・ダナヒュー組、マイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組(第1補欠:ケイトリン・ハワイエク&ジャン=リュック・ベイカー組、第2補欠:アナスタシア・カヌーシオ&コリン・マクマヌス組、第3補欠:アレクサンドラ・オルドリッジ&ダニエル・イートン組)


《四大陸選手権》

女子:サマンサ・シザリオ、ポリーナ・エドマンズ、グレイシー・ゴールド(第1補欠:マライア・ベル、第2補欠:コートニー・ヒックス、第3補欠:ハンナ・ミラー)
男子:ジェイソン・ブラウン、ジョシュア・ファリス、アダム・リッポン(第1補欠:マックス・アーロン、第2補欠:ロス・マイナー、第3補欠:ジェレミー・アボット)
ペア:ヘイヴン・デニー&ブランドン・フレイジャー組、タラ・ケイン&ダニエル・オシェア組、アレクサ・シメカ&クリス・クニーリム組(第1補欠:マデリーン・アーロン&マックス・セットレージ組、第2補欠:ジェシカ=ノエル・カララグ&ザック・シドゥー組、第3補欠:ディーディー・レン&サイモン・シュナピアー組)
アイスダンス:マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組、ケイトリン・ハワイエク&ジャン=リュック・ベイカー組、マイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組(第1補欠:マディソン・ハベル&ザカリー・ダナヒュー組、第2補欠:アナスタシア・カヌーシオ&コリン・マクマヌス組、第3補欠:アレクサンドラ・オルドリッジ&ダニエル・イートン組)



 世界選手権は全米選手権のワンツースリーの選手がそのまま代表入りということで(女子で3位に入ったカレン・チェン選手は年齢制限でそもそも出場資格を保持していないので別として)、疑問を挟む余地のない順当な代表メンバーとなったのではないでしょうか。
 一方、四大陸も世界選手権の代表選手をほぼそのまま持ってきたという感じで、アメリカのベストメンバーが四大陸でもそろい踏みということになりそうですね。その中で一部入れ替わりもあり、女子のチャンピオンのワグナー選手は世界選手権に集中するためとのことで四大陸の代表からは外れ、代わりにシザリオ選手にチャンスが与えられました。また、アイスダンスでもハワイエク&ベイカー組が世界選手権代表のハベル&ダナヒュー組に代わってメンバー入りしていて、こちらはハベル&ダナヒュー組とほとんど点差がなかったという部分が評価されての選出なのかなと思いますね。
 2014年はオリンピック直前ということで基本的にオリンピック代表を逃した選手のための舞台となった四大陸ですが、今年は強豪選手も多く出場し、華やかな大会となりそうで楽しみです。
 四大陸選手権は2月9日に韓国のソウルにて、世界選手権は3月23日に中国の上海にて開幕します。どちらもアジアでの開催ですから、そういった意味でもとてもワクワクが増しますね。次の記事では欧州選手権2015について書こうと思いますので、またしばらくお待ちください。では。


注:女子メダリスト4選手の写真は、スケート情報ウェブサイト「Icenetwork」が2015年1月25日に配信した記事「U.S. Figure Skating announces international teams」から、男子メダリスト4選手の写真は、AFPBB Newsが2015年1月26日の11:15に配信した記事「ジェイソン・ブラウン、フィギュア全米選手権で初優勝」から引用させていただきました。
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by hitsujigusa | 2015-02-02 02:27 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)