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 女子SPに引き続き、男子ショートプログラムの結果をお伝えします。
 トップに立ったのは日本の羽生結弦選手。ミスはありましたが現チャンピオンとしての貫録を見せつけ、堂々の1位となりました。2位はスペインのハビエル・フェルナンデス選手、3位はカザフスタンのデニス・テン選手となっています。

ISU World Figure Skating Championships 2015 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 首位となったのはディフェンディング・チャンピオン、羽生結弦選手です!

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 1発目のジャンプは得意の4トゥループ、回転は充分でしたが着氷でバランスを崩しステップアウトに。しかし、後半は3アクセルをクリーンに決めて2.43点という高い加点を得ると、今シーズン失敗の多かった3ルッツ+3トゥループの連続ジャンプをしっかりクリア。スピン、ステップシークエンスも全てレベル4で揃え、演技を終えた羽生選手は安堵したように微笑みました。得点はシーズンベストとなる95.20点、そつのない演技で1位で折り返すこととなりました。
 年末の全日本選手権のあと腹痛を訴えて入院、尿膜管遺残症という病気で手術を行い、その後練習を再開したものの再び右足首のねんざという怪我があり、本格的な練習再開は3月に入ってからという羽生選手でしたが、またもや驚かされるような演技を見せてくれました。演技直前の6分間練習では4回転がうまくいっていない感じもあり、実際に本番でもミスにはなってしまったのですが、それ以外のジャンプやエレメンツの完成度、プログラムとしてのまとまり具合など、時間がない中でここまで仕上げてくる調整の巧さというか、ピーキングの巧さはやはり凄いとしか言いようがないですね。“驚かされるような演技”と上述しましたが、よくよく考えてみれば今までの世界選手権も身体が万全ではない状態というのがほとんどでしたから、驚く要素などどこにもない、まさにこれが羽生結弦というスケーターなのだなと思いますね。
 ただ、フリーは演技時間が長い分、どれだけ体力が持つかというのが不安ではありますね。でも、まとめる力は世界一なので、ショート同様に大崩れしない演技を見せてくれるでしょうし、楽しみです。


 2位は欧州王者、スペインのハビエル・フェルナンデス選手です。

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 冒頭は得点源の4サルコウから、これを完璧に決めて上々の滑り出しを見せます。さらに続く3ルッツ+3トゥループも申し分ない連続ジャンプ。後半の3アクセルもきっちり着氷して、終盤のステップシークエンスではギターのリズムに乗ってノリノリにリンクを滑走し、観客を大いに盛り上げました。得点はシーズンベストに迫る92.74点で羽生選手と僅差の2位となりました。
 なにかしらミスする選手が多い中で数少ないほぼノーミスでしたね。最初の4サルコウが決まったことによって良い流れを作り、後半の3アクセルは若干危なげがないこともなかったですが、最後までフェルナンデス選手らしい弾けるような情熱的な演技でした。
 これまで世界選手権では2年連続で銅メダリストのポジションに留まってきたフェルナンデス選手ですが、現時点で1位の羽生選手とは2.46点差、後述する3位のデニス・テン選手は少し得点に開きがあって6.85点差ですから、銀メダル、さらには金メダルを手にするチャンスが巡ってきたと言えます。スペイン人として初めての世界王者誕生となるのか、良い演技を期待しています。


 3位は四大陸選手権2015を制したカザフスタンのデニス・テン選手です。

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 まずは大技の4トゥループからでしたが、回転は充分だったものの転倒となります。しかし、直後の3アクセルはすぐに立て直して完璧に成功。後半の3+3は着氷が乱れましたが、スピン、ステップシークエンスは全てレベル4を獲得し、四大陸王者らしい風格ある滑りを披露しました。ですが、得点はジャンプミスが響き85.89点と伸び切らず、3位発進となりました。
 四大陸、そして今大会の公式練習と、4回転が好調だったテン選手にしては珍しい大きなミスがありましたが、演技冒頭でテン選手がポーズを取りスタートの構えをしたものの、音楽が途中から流れるという滅多にないアクシデントが起こりました。すぐにテン選手はジャッジに申し出て演技をやり直しましたが、集中を乱すようなアクシデントだったので、4回転の失敗は不運でしたね。ただ、こういったことはもちろん不運で済ませてはいけないことですし、選手の演技の出来を左右してしまいかねないですから、大会を運営する側も細心の注意を払ってほしいですね。
 そんな思いがけない出来事の後でも、最低限の演技は出来ていたように思うので、フリーではSPの悔しさもぶつけて、四大陸の再現となるような演技を見せてほしいですね。


 4位はロシアのベテラン、セルゲイ・ボロノフ選手です。

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 冒頭は今季高い成功率を誇る4トゥループ+3トゥループのコンビネーションジャンプで、ファーストジャンプとセカンドジャンプのあいだにターンが入ったものの、回転に問題はなく確実に基礎点を稼ぎます。後半の3アクセル、3ループもしっかりこなし、大きなミスなくフィニッシュしました。得点は84.70点と思ったほど伸びませんでしたが、4位の好位置につけました。
 4回転でミスする選手が続出する中、ボロノフ選手は最小限のミスに抑えて良いポジションを勝ち取りましたね。そのわりに今季のロステレコム杯でマークした90.33点という自己ベストからは離れた得点となりましたが、4+3のミスだけではなく、ステップシークエンスのレベルが2と取りこぼしもあり、細かいところでもう少し点を積み重ねられたかなという印象です。ですが、3位のテン選手とはさほど点差がありませんし、今シーズンほぼすべての試合で表彰台に上っているという実績もあります。ものすごい強い、という感じはしないのですが、気づけば表彰台に立っているというのが今季のボロノフ選手の特徴で、その不気味な安定感が今大会でも発揮されるか注目ですね。


 5位は地元中国のエース、閻涵(ヤン・ハン)選手。

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 演技冒頭、まずは代名詞の3アクセル、これを惚れ惚れするような飛距離と速度でパーフェクトに決め、2.43点の高い加点を得ます。続く4トゥループは着氷でステップアウトしマイナスとなりますが、後半の3+3は丁寧にまとめてプラス評価。ミュージカル『屋根の上のバイオリン弾き』のユーモア溢れる世界観を全身で表現し、フィニッシュした閻選手は満足そうに破顔しました。得点は84.45点で5位となりました。
 満員の母国の観客の声援を浴びる中での演技でしたが、緊張感漂いつつも生き生きと演じていたのが印象に残りましたね。韓国での四大陸、そして母国での世界選手権と比較的プレッシャーを感じやすい環境での試合が続いていますが、それをうまくメンタルコントロールに繋げて、見事に結果で示しています。上位選手の演技によってはメダルの可能性も充分にあるので、フリーものびのびと演技してほしいなと思います。


 6位はアメリカチャンピオンのジェイソン・ブラウン選手です。

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 冒頭は得点源となる3アクセルから入り、これをクリーンに決めて好スタートを切ると、続く3+3も成功。後半の3ルッツも難なく着氷し、得意のスピンやステップシークエンスでは1点以上の加点を獲得。コミカルかつ勢いたっぷりにプログラムを演じ切りました。得点はシーズンベストとなる84.32点をマークしました。
 2月の四大陸選手権のSPでは初めて試合で4回転に挑んだものの失敗して大幅に出遅れたブラウン選手。今大会はその4回転を外し、いつもどおりのジャンプ構成で臨み、しっかりまとめて結果を出しました。いつかは再び4回転にチャレンジしなければいけない時が訪れるでしょうが、この世界選手権は自国の枠取りも懸かっていますから、今の段階では妥当な選択だったと思います。もちろん4回転がないからといって決して簡単なことをやっているというわけではなくて、4回転がないからこそ細かなジャンプミスも許されませんし、スピンやステップシークエンスのレベルも取りこぼせませんし、プログラム全体に工夫を凝らして演技構成点でより良いスコアを得るための努力をしているんですね。そういった意味で、4回転を跳ぶほかの選手たちとはまた違った見応えのあるスケーターと言えます。フリーもブラウン選手らしい演技となることを祈っています。


 19位となったのは日本の小塚崇彦選手です。

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 鍵となる冒頭の4トゥループは回転こそ足りていたものの両足着氷となり、減点を受けます。続く3アクセルも着氷でミス。連続ジャンプにしなければいけない後半の3ルッツも転倒で単独ジャンプとなり、フィニッシュした小塚選手は肩を落としました。得点は70.15点とかろうじて70点台に乗せましたが、大きく出遅れる悔しいショートとなりました。
 4回転のミスはいつものことなので予想範囲内かなと思うのですが、最後の3ルッツでの転倒はかなり痛かったですね。やはりコンビネーションジャンプが入らないというのはエレメンツの少ないSPでは致命傷となりますので、フリーに向けては苦しいですね。ただ、小塚選手は年末の全日本選手権でも似たような形のミスで出遅れ、しかしフリーで見事に挽回して逆転表彰台となっていますから、その時の経験を今回も生かして、納得のいく演技をしてほしいですね。また、来季以降の進退を明確にしていない小塚選手にとって、これが選手として最後の演技となる可能性もあるので(そんな悲しいことは考えたくないですが)、あの素晴らしいフリープログラムをぜひ完成させてほしいと思います。


 3人目の日本代表、無良崇人選手は23位でギリギリのフリー進出となりました。

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 まずは大技4トゥループからでしたが、回転不足となった上にステップアウトで大幅な減点となります。さらに代名詞の3アクセルもパンクしてシングルになる致命的なミス。後半の3+3はこらえながらもなんとか着氷しますが、スピンでも取りこぼしがあり、得点は64.93点で23位というまさかの順位となりました。
 演技を終えた瞬間、無良選手は唖然とした表情を浮かべましたが、見ているこちらも予想だにしなかった演技内容でしたね。特に3アクセルがすっぽ抜けた場面は何が起きたのだろうと思うような形の失敗で、SPでのこういうミスの仕方はあまりなかったので驚きました。
 無良選手は先月の四大陸選手権の後に両足をねんざしたとのことで、それが影響しているのかどうかは分かりませんが、上位進出に向けてはかなり厳しい得点、順位となりました。ただ、これ以上悪くなりようがない順位になったのは確かなので、そのことを前向きにとらえて、フリーの演技に臨んでほしいですね。



 ということで、終わってみればショートのワンツースリーは予想されたとおりのメダル最有力候補の3人となりました。ただ、それ以外の部分では実力者が下位に沈むという波乱も多々あって、改めて世界選手権の魔物の怖さを思い知らされました。
 そして、日本男子勢は日本女子勢とは対照的な結果となってしまいました。大会前は日本女子の出場枠3がピンチだなどとニュース記事では言われていたわけですが、それが一転、ほとんどそういった懸念がなされていなかった男子の方が、出場枠3の確保が厳しい状況になりました。羽生選手が優勝すると仮定しても、それに続く日本選手は最低でも12位でなければいけないので、小塚選手もしくは無良選手になんとか一気にジャンプアップしてもらいたいですね。でも、枠取りのことを意識しすぎるとそれでまた演技に悪影響を及ぼしかねないので、あんまり深刻に考えすぎないで、完璧にやろうとかまとめようとかも思わないで、気軽な気持ちで演じてほしいなと個人的には望みます。もちろん、それがいちばん難しいのですが……。普通ならば羽生選手の2連覇の行方やメダル争いに最も目が向くはずなのですが、今回はそれ以上に日本男子の出場枠がどうなるのかという方が気になってしまっています……。
 次は女子のフリーの記事です。では。


注:記事冒頭の男子SP上位3選手のスリーショット写真、テン選手の写真は、フィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから、羽生選手の写真はAP通信の画像サイトから、それ以外の写真は全て、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2015-03-28 04:51 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 シーズンの最後を締めくくる最高峰、世界選手権2015が始まりました。今年は初めて、中国の上海での開催となります。この記事ではおおまかな女子のショートプログラムの結果と内容をお伝えします。
 SP首位に立ったのはロシアのエリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手。なんと女子では今までISU主催大会で5人しか成功させたことのない大技トリプルアクセルを成功させ、女子史上6人目の成功者としてフィギュアスケートの歴史に名を刻みました。2位は同じくロシアのエレーナ・ラディオノワ選手。こちらもノーミスの演技で実力を示しました。3位は日本の宮原知子選手で、パーソナルベストを更新する会心の演技を見せました。

ISU World Figure Skating Championships 2015 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 トップはエリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手です。

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 プログラムはすでにトゥクタミシェワ選手の代表作といっても過言ではない「ボレロ」。冒頭は大注目の3アクセル。これを完璧に、あっさりと決めて好スタートを切ると、続く得意の3ルッツもクリーンなエッジで踏み切り、高い加点。そして後半に入り、身体が疲れてくる時間帯に組み込んだ3トゥループ+3トゥループもパーフェクトに着氷。終盤のステップシークエンスでは曲の盛り上がりに合わせどんどん加速していく圧巻の滑りを見せ、フィニッシュしたトゥクタミシェワ選手は豪快なガッツポーズで歓喜を爆発させました。得点は77.62点で、浅田真央選手、キム・ヨナさんに続く世界歴代3位の驚異的なハイスコア。2位に大差をつけてフリーに向かうこととなりました。
 とにかく圧倒されたとしか言いようのない素晴らしい演技でした。なんといってもまず特筆すべきは3アクセルですが、あまりにも簡単に跳んだように見えて、浅田選手が初めて国際大会で成功させた2004年以来、10シーズンぶりの新たなトリプルアクセルジャンパー誕生となったわけですが、まるで今までも普通に跳んでいた人のような、そんな余裕があって鳥肌が立ちましたね。そしてもちろん3アクセルだけではなく、後半に3+3を入れているということも決して容易いことではないですから、全ての面において圧巻でしたね。私は普段は日本選手びいきで応援しているのでトゥクタミシェワ選手もライバルとして見ているわけですが、今大会の女子に関しては歴史的瞬間・歴史的演技が見られ、フィギュアの新たな歴史が作られているシーンを目の当たりにしているので、他国の選手であるなどということは度外視して、彼女のことを応援してしまいますね。やはり日本のフィギュア選手のファンであるという以前にフィギュアスケートという競技自体のファンなので、そのフィギュアの進化の一場面が見られるというのは、嬉しさ、感慨、興奮で胸がいっぱいです。
 大きなリードを持ってフリーを迎えることとなったトゥクタミシェワ選手ですが、キス&クライでは得点が出た瞬間も淡々としていて、まだスコア的には満足していないのかなと思わせるくらいでしたし、もちろんフリーが残っているので意識的に自分をセーブして、気を引き締めているのかなという印象でした。それだけ歴史的快挙にも浮かれることなく、しっかり地に足をつけているということなのだと思います。フリーではどんな演技で怒濤の14/15シーズンのラストを飾るのか、楽しみです。


 2位につけたのはエレーナ・ラディオノワ選手。

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 まずは得点源となる3ルッツ+3トゥループ、これをいつもどおりきっちりと成功させます。残りのジャンプはスピンとステップシークエンスを挟んだ後半に跳ぶアグレッシブな構成で、そのうちの一つ3ループを難なく決めると、最後の2アクセルもクリーンに着氷。非の打ちどころのない演技で演技後はほっとしたような笑みを浮かべました。得点は69.51点で、1月の欧州選手権でマークした自己ベストにはわずかに及ばず。しかし、文句なしのハイスコアで上々の2位発進となりました。
 ジャンプは全て成功、スピン、ステップシークエンスも全てレベル4に揃え、今シーズンの快進撃そのままの演技を見せてくれましたね。ただ、得点はシーズンベストを更新することはできず、キス&クライでは少し残念そうな表情でした。技術点の方を見ると、欧州選手権の時ほどには加点が付いていないんですね。そしてプログラム全体を評価する演技構成点もちょっと低くなっています。演技前からいつになく緊張した面持ちで、演技中も普段よりほんの少しだけ硬さがあるかなという感じだったので、それが演技構成点やエレメンツの加点の付き方に影響したのかもしれません。とはいえじっくり見ないと分からないくらいの差異で、充分称賛に値する演技でしたから、フリーではさらにのびのびとしたラディオノワ選手が見られることを願っています。


 3位に入ったのは日本の宮原知子選手です。

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 冒頭は大技の3ルッツ+3トゥループ、これをしっかり回り切って着氷し高い加点を得ます。続く2つのスピンはどちらもレベル4。後半に入って最初の3フリップを成功させると、ラストの2アクセルもきれいな跳躍とランディング。終盤の細やかかつ壮大なステップシークエンス、柔軟性を生かした美しいレイバックスピンは両方とも1点の高い加点が付き、フィニッシュした宮原選手は控えめに微笑みました。得点は67.02点で先月の四大陸選手権でマークした自己ベストを2点以上上回る高得点。2位とも僅差の3位という好位置につけました。
 初出場とは思えない落ち着きのある、堂々とした演技でしたね。身体のキレや全体のスピード感も充分で、緊張を感じさせないのびやかさでした。高さに課題のあるジャンプも、クリーンに回り切っていて回転不足も取られなかったですから、縮こまることなく思い切り良く跳んだのが功を奏したのでしょうね。2月の四大陸選手権の時は脚の靭帯に炎症があったとのことですが、今回の演技からはほとんどその影響は感じられませんでした。メダルも期待される順位となってプレッシャーも感じるかもしれませんが、順位は意識せずいつもの宮原選手のペースで臨んでほしいなと祈っています。


 4位も日本の村上佳菜子選手です。

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 冒頭は今シーズン回転不足を取られることの多い3トゥループ+3トゥループからでしたが、パーフェクトに回り切って降り、加点1の高評価を獲得。続く3フリップはどこかしら問題があったのか若干の減点を受けてしまいますが、後半の2アクセルはきれいに決めます。得意のスピン、そして終盤のステップシークエンスは曲想とぴったりユニゾンした身のこなしとエッジワークでレベル4。演技を終えた瞬間、“佳菜子スマイル”とらしさ溢れる派手なガッツポーズで喜びを露わにしました。得点はシーズンベストとなる65.48点、自己ベストにも迫るハイスコアで4位につけました。
 上の写真が全てを物語っていると思うのですが、本当に全てを出し尽くした素晴らしい演技でした。3フリップにマイナスは付いていますけれども、そんなことは関係なしに、これ以上ない最高の演技だったと思います。ただ、年末の全日本選手権では同じように良い感触の演技をして、でも得点は57.55点という予想外の低得点という嫌な記憶がありますので、今回の得点を待つキス&クライでは村上選手は得点が表示されるモニターの方をこわごわ見ているという感じでしたね。そして、65.48点というスコアが表示された途端、100%の笑顔となり、隣の山田満知子コーチと抱き合い、感極まったように涙をこぼしました。全日本からの3か月間、ずいぶん練習して自信を持って上海に乗り込んで、それでも実際に得点が出てみるまでは分からないですから、そのあいだの不安、恐怖感、そこからの解放というのがこの笑顔と涙からひしひしと伝わってきて、見ているこちらももらい泣きしてしまいました。
 ですが、村上選手の今季の鬼門はフリー。まだプログラムとしてちゃんとした形になっていないと思うので、この大舞台でぜひ「オペラ座の怪人」をショートと合わせて完成させてほしいなと思います。


 5位は同じく日本の本郷理華選手です。

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 まずは今季全て成功させている3トゥループ+3トゥループを完璧に降りて、1.1点の高い加点を得ます。後半の3フリップ、2アクセルも問題なく着氷。スピン、ステップシークエンスも全て最高難度のレベル4を揃え、演技を終えた本郷選手は嬉しそうに小さく拳を握り締めました。得点は62.17点でパーソナルベスト、5位と好発進しました。
 日本勢で最初に滑走した本郷選手ですが、素晴らしい演技で良い流れを作ってくれましたね。緊張していたと話していましたが、それをほとんど感じさせないダイナミックで優雅な演技でした。今シーズンは演じるたびに自己ベストを更新していくこのSPですが、今回も四大陸から0.89点上積みしました。小数点刻みというのがジャッジももっと気前良く上げてくれてもいいのになともどかしさを感じないでもないですが、シーズンを通して更新し続けるというのはやはり凄いですね。
 トータルで180点を突破するというのを目標に掲げている本郷選手。パーソナルベストに近い得点を出せればそれも充分可能なので、頑張ってほしいなと思います。


 6位には地元中国の李子君(リ・ジジュン)選手が入りました。

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 冒頭は得点源の3フリップ+3トゥループでしたが、1つ目のジャンプで少し勢いが止まったため、セカンドジャンプがわずかに回転不足となります。しかし、その後は3ループ、2アクセルとクリーンに決め、スピン、ステップシークエンスは全てレベル4。見た目には大きなミスのないまとまりのある演技を披露し、母国の観客の前で破顔しました。得点は自己ベストに迫る61.83点で6位と、フリーの最終グループ入りを果たしました。
 ここ1、2年は身体の成長に伴ってジャンプのバランスを崩し苦しんでいた李選手ですが、先月の四大陸、そしてこのSPと徐々に本来のジャンプが戻ってきていますね。また、ジャンプが安定してきたことによってプログラムそのものの魅力もより引き立って、スケーティングの滑らかさだったり流れの途切れない美しさだったり、李選手らしさがよく表れていたと思います。フリーではさらに地元のプレッシャーを感じることになるかもしれませんが、ショートのようにうまくメンタルをコントロールして演じられることを願っています。


 7位はアメリカの若手ポリーナ・エドマンズ選手です。

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 まずは大技の3ルッツ+3トゥループをしっかり決め良い出だしとなりましたが、3フリップは踏み切りのエッジが不正確と判定され若干のマイナス。後半の2アクセルはしっかりこなし、目立ったミスなく演技を終えました。得点は61.71点で7位となりました。
 先月の四大陸を制して波に乗っているエドマンズ選手ですが、今回はその時よりは慎重さがあったかなと感じました。冒頭の3+3も成功は成功なのですがいつもより加点が低めで、やはり緊張による硬さがあったように思いますね。ですが、シーズン前半の絶不調から全米選手権以降はしっかりとジャンプを立て直してきて、若さゆえの勢いだけではなく地力がついてきているような印象があります。四大陸ではSPで少し出遅れたところからの逆転優勝だったので、今大会もフリーで順位を上げてくるのではないでしょうか。要注目です。


 8位となったのは同じくアメリカのグレイシー・ゴールド選手です。

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 冒頭はプログラムの鍵となる3ルッツ+3トゥループからでしたが、ファーストジャンプでステップアウトとなってしまいコンビネーションに繋げられません。続く2つのスピンはいつもどおり丁寧にこなし後半に向かいましたが、3ループの着氷でもミス。2アクセルはクリーンに降りたものの、連続ジャンプなしという痛いミスが響き、得点は60.73点と伸びず、8位に留まりました。
 昨年の秋に左足を疲労骨折したゴールド選手ですが、それが現在でも影響しているのか、精彩を欠いた内容でしたね。また、テレビ解説でも指摘されていましたが、四大陸の時と比べるとだいぶ身体が絞られていて頬も少しこけているような感じだったので、シェイプアップもジャンプのバランスや感覚に影響を及ぼしているのかもしれません。それでもまだまだ上位とは僅差ですので、中1日で修正して、フリーではゴールド選手らしい華やかな笑顔が見られることを楽しみにしています。



 ということで、ワンツーはロシア、スリーフォーファイブを日本が独占するというSPとなりました。ワンツーは予想どおりですが、3、4、5位に日本勢が並ぶのは正直予想していなかったですね。フリーの最終グループに日本選手全員が入るのは難しいだろうと思っていたので、この結果に喜ぶとともに3選手に申し訳ない気持ちです。フリーでも順位や結果にとらわれることなく、それぞれのベストの演技ができることを祈っています。


注:記事冒頭の女子SP上位3選手のスリーショット写真は、フィギュアスケート情報ウェブサイト「Absolute Skating」から、トゥクタミシェワ選手の写真は、フィギュアスケート情報ウェブサイト「Icenetwork」が2015年3月26日に配信した記事「Tuktamisheva hits triple Axel to win ladies short」から、ラディオノワ選手の写真、宮原選手の写真、村上選手の写真、本郷選手の写真、李選手の写真、ゴールド選手の写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、エドマンズ選手の写真は、エンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2015-03-27 16:26 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 2015年3月2日から8日にかけて、エストニアの首都タリンにおいて世界ジュニア選手権2015が開催されました。この記事では遅ればせながら、その世界ジュニアの内容をざっとおさらいし、結果をまとめたいと思います。

ISU World Junior Figure Skating Championships 2015 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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《女子シングル》


 まずは女子からですが、女子はシニア、ジュニアともに隆盛を誇っているロシア勢が予想どおりワンツーフィニッシュ。そして、日本の樋口新葉選手が3位に入り、ジュニアGPファイナル2014と全く同じ表彰台の顔ぶれ、順位となりました。
 優勝したのはエフゲニア・メドベデワ選手。これでジュニアGPファイナルとの2冠、そして出場したジュニアの大会全てで優勝するという快挙を達成しました。SPは苦手としている3ルッツの踏み切りのエッジが不正確とされ若干のマイナスを受けたものの、そのほかのエレメンツではレベル、質ともに高い演技を見せ、ジュニア女子における歴代最高得点となる68.48点をマークし、断トツの首位発進となります。フリーでも3ルッツでショートと同じミスで減点はありましたが、それ以外は3+3を2つ組み込むという驚異的なジャンプ構成をクリーンにこなし、パーソナルベストを更新。首位のポジションを譲ることなく完全優勝を遂げました。
 銀メダルは今季メドベデワ選手とともにジュニア女子界を引っ張ってきたセラフィマ・サハノヴィッチ選手。SPは踏み切りでエッジエラーを取られることの多い3ルッツだけでなく、冒頭の3+3でも小さなミスがあり、メドベデワ選手に約5点の後れを取って2位となってしまいます。しかし、フリーではこちらも3+3を2つパーフェクトに成功させるなどハイレベルな演技を披露。フリー3位でトータル2位、2年連続の銀メダルとなりました。
 3位となったのは日本の樋口新葉選手。ショートは3フリップ+3トゥループの着氷で若干ターンが入り減点されましたが、そのほかのジャンプは確実にクリアし、スピンとステップシークエンスでもレベル4を揃え、自己ベストを更新。3位の好位置につけました。そしてフリーではショートから難度を上げた3ルッツ+3トゥループをまず完璧に決めると、その後のジャンプも次々と成功。樋口選手らしいスピード感溢れる圧巻の滑りで、フィニッシュではガッツポーズも飛び出す会心の演技。自己ベストを6点以上更新しフリー2位、総合3位で銅メダルを獲得。日本の女子選手としては2010年に優勝した村上佳菜子選手以来の表彰台となりました。
 メドベデワ選手、サハノヴィッチ選手はさすがとしか言いようがないですね。昨シーズンからジュニア女子界のトップを突っ走ってきた二人の集大成として、二人の力を出し切った、二人らしい演技内容だったのではないかと思います。でも、この二人の力が圧倒的に抜きん出ていたかというとそうではなく、樋口選手が全く引けを取らぬどころか二人をおびやかすくらいの存在感を示していたんじゃないかなと感じますね。実際にフリーの技術点を見ても、メドベデワ選手、サハノヴィッチ選手がともに65.28点なのに対して樋口選手は69.50点と4点以上の差をつけて上回っています。現在の女子ではシニアも含めてロシアの選手を技術点で凌駕できる選手というのはなかなかいないので、やはり凄い逸材だなと改めて思います。来シーズンもジュニアが主戦場となる樋口選手ですが、このまま順調に、かつ、のびのびと育っていってほしいですね。

 以下、4位はカザフスタンのエリザヴェート・トゥルシンバエワ選手、5位はロシアのマリア・ソツコワ選手、6位は日本の坂本花織選手、7位は同じく日本の永井優香選手、8位はアメリカのカレン・チェン選手となりました。
 トゥルシンバエワ選手はSPこそ2つのジャンプにミスがあって7位と出遅れましたが、フリーは高難度のプログラムをほぼノーミスで終えて順位を上げてフィニッシュ。2014年の11位から大きく飛躍しました。5位のソツコワ選手はショートで転倒という大きなミスがあって10位発進となりましたが、フリーはミスを最小限に抑えてジャンプアップしました。ソツコワ選手はメドベデワ、サハノヴィッチの両選手の陰に隠れているような印象がありますが、元々2013年のジュニアGPファイナルでは優勝するなど実績もある選手ですし、ポテンシャルは高いので、来シーズンまた伸びてくるんじゃないかなと思いますね。
 坂本選手はSPでパーソナルベストを更新して4位と好発進し、フリーは前半で転倒という動揺してもおかしくないミスがあった中で、その後も冷静にノーミスに近い演技ができていて、メンタルの強さが印象に残りました。昨季、今季とジュニアGPの出場は1試合に留まりましたが、今大会の成績によって来季は確実に2大会に出場できるでしょうから、また楽しみが広がりましたね。
 永井選手はショート、フリーともにジャンプミスがあり、フリーの演技後の表情を見ても納得いかなかったのかなという感じでしたね。ショートでもフリーでも冒頭の3+3でミスしてしまっているのですが、演技が進むにつれて伸びやかになっていっているので、最初は力みがあるのでしょうね。3+3の安定感が来季も鍵になりそうです。
 8位のチェン選手はショートでコンビネーションジャンプが入らないという痛いミスがあり12位、フリーも演技終盤で2度の転倒があり、順位は上げたものの本来の力を発揮できませんでした。1月の全米選手権では並みいるシニア選手を押しのけて3位と一躍脚光を浴びたチェン選手ですが、まだ試合によって安定感にばらつきがあるのかなという感じがします。ですが、そういった課題を克服できれば、来シーズンはさらなる飛躍が望めるのではないかと思いますね。



《男子シングル》


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 男子は日本の宇野昌磨選手が4度目の出場にして初表彰台、初優勝を果たしました。日本男子としては2010年の羽生結弦選手以来の金メダリストとなりました。
 宇野選手はショートでほぼパーフェクトな演技で唯一の80点台をマーク、圧巻の首位発進となります。しかし、フリーでは冒頭の大技4トゥループが3トゥループとなった上にダウングレード(大幅な回転不足)という珍しい形のミスで波乱の滑り出し。ですが、その後は2本の3アクセル、後半の2アクセル+1ループ+3フリップなど、得点源となるジャンプをしっかり成功させフリー2位、総合1位でフィニッシュしました。フリーの4回転のミスはちょっと想定外のものでしたが、その後の立て直しはさすがでしたね。しかも4回転が3回転となったことによって以降のジャンプ構成にも気を配らなければいけない普段あまりないシチュエーションになったわけですが、最後の3フリップ+3トゥループを3フリップ+2トゥループに変更して3回転ジャンプの跳び過ぎ違反を防ぐという冷静な対応を見せ、こういった場面からも宇野選手の強さ、頼もしさを感じました。最終的に2位の選手とは3点差もなかったわけなので、点差だけを見るとギリギリ感もあるのですが、試合運びだったり演技内容だったりからはそういった危うさはほとんど感じられなくて、点差以上に宇野選手の貫録優勝という印象を受けましたね。来季は鳴り物入りでシニアに移行する宇野選手ですが、今シーズンの宇野選手と変わらず、マイペースで歩んでいってほしいなと願っています。

 2位は中国の金博洋(ジン・ボーヤン)選手。SPは目立ったミスなく演技を終えましたが、予定していた3+3が3+2になったため得点は伸び切らず5位。ですが、フリーでは3本の4回転を含むシニア並みの超高難度プログラムに挑み、そのうち2本は着氷に乱れがあり減点とはなったものの、回転不足や転倒なく確実に3本の4回転を着氷。そのほかも3アクセルや3+1+3を決めるなどジャンパーとしての本領を発揮しフリー1位。総合2位で銀メダルを手にしました。年末のジュニアGPファイナルでは大崩れして4位に終わった金選手ですが、今大会は金選手らしさが存分に表れた演技でしたね。プログラム全体として見るとまだまだ粗さはあって演技構成点も低いのですが、技術点はシニア男子でも出すのが難しい90点台をマークしていて、やはりジャンプを揃えた時の爆発力は凄いですね。宇野選手と比べると安定感には欠けるので手強さというのはあまり感じないのですが、身体の成長が落ち着いてより洗練されてくると、次世代を担う存在として、そして宇野選手の良きライバルとしてさらに魅力的なスケーターになってきそうですね。
 3位は日本の山本草太選手。ショートは3アクセルの着氷で大きく乱れ、また、3+3でも細かなミスがあり7位と出遅れてしまいます。しかし、フリーでは今大会から取り入れた2本の3アクセルを2本とも見事に成功。その後もミスらしいミスなくほぼクリーンにプログラムを演じ切り、パーソナルベストでトータル3位。初出場で銅メダルという素晴らしい成績を収めました。フリーで山本選手の後に滑ったSP上位の選手たちが次々と崩れ、思いがけず飛び込んできたメダルという感じでしたが、もちろん幸運だったというだけではなく、3アクセル2本という攻めた構成をしっかりこなしたからこその、実力を持っているからこその表彰台だと思います。来シーズンはジュニアのトップ選手として臨むことになりますから、今季とはまた違ったプレッシャーを感じる場面も出てくるかもしれませんが、チャレンジャーとして思いっきりぶつかっていってほしいですね。

 4位のアメリカのネイサン・チェン選手はショートで転倒があってこちらも9位と大きく出遅れましたが、フリーは2本の4回転を含むプログラムをミスがありながらも何とかまとめ、SPから挽回しました。2014年の世界ジュニアは銅メダルと実力者のチェン選手ですが、最近は成長痛の影響があってなかなか思ったようなジャンプは跳べていないようですね。ただ、その中でもスケーティングや表現力には定評があり、今回も演技構成点は高かったです。身体的なトラブルがある中でもこれだけの演技ができる選手なので、その壁を乗り越えた時には、さらに強く凄い選手になりそうですね。
 5位、6位は、ロシアのアディアン・ピトキーエフ選手、アレクサンドル・ペトロフ選手となりました。それぞれショートでは2位、3位と好発進したのですが、フリーは二人ともミス連発で予想外の順位に沈んでしまいました。ショートで好位置につけたことが、逆にプレッシャーに繋がってしまったのかもしれませんね。
 7位に入ったラトビアのデニス・ヴァシリエフス選手はショート、フリーともに3アクセルのない比較的難度の低いジャンプ構成でしたが、まとまりのあるプログラムとなったことによって演技構成点では高評価を獲得。高難度ジャンプの習得は今後の課題でしょうが、“魅せる”という点において楽しみな選手ですね。
 8位のイスラエルのダニエル・サモヒン選手はフリーで2本の4回転を組み込むなどアグレッシブなジャンプ構成で挑み、かなりミスの多い内容でしたが、他の選手のミスにも救われた形で初入賞となりました。

 一方、日本の佐藤洸彬選手は14位で大会を終えました。ショート、フリーともにジャンプミスは目立ちましたが、ぞれぞれで挑戦した3アクセルはしっかり着氷し、また、フリーのステップシークエンスではレベル4を獲得するなどところどころで佐藤選手らしさを発揮しました。



《ペア》


 優勝したのは昨年のチャンピオン、中国の于小雨(ユー・シャオユー)、金揚(ジン・ヤン)組。ショート、フリーともに大きなミスのない実力者らしい演技を見せ、2連覇を達成しました。今季からはシニアに移行してさっそくGPファイナルにも進出するなど活躍した于&金組ですが、シニアの世界選手権には久しぶりに復帰した龐清(パン・チン)、佟健(トン・ジャン)組が派遣されるということで、若手の于&金組は世界ジュニアに回ることとなりました。今シーズン実績を残しているペアなので残念ですが、これも中国のペアの層の厚さゆえですね。
 2位はジュニアGPファイナル2014を制したカナダのジュリアン・セガン、シャルリ・ビロドー組。こちらもミスの少ない演技で于&金組に約2点差と迫りましたが、惜しくも銀メダルでジュニアGPファイナルとの2冠はなりませんでした。
 3位はジュニアGPファイナル2014銀メダルのロシアのリーナ・フェードロワ、マキシム・ミロシキン組。ショートとフリー両方で複数ミスがありましたが、ジャンプ以外のエレメンツではおおむね安定感を見せ、来季にも期待を感じさせる内容でしたね。
 初出場となった日本の古賀亜美、フランシス・ブードロー=オデ組は6位と好成績を収めました。いくつかミスはあり満足のいく内容ではなかったようですが、成功させたエレメンツでは加点もしっかり得るなど成長を見せ、ショートとトータルで自己ベストを更新しました。



《アイスダンス》


 金メダルはジュニアGPファイナル2014覇者のロシアのアンナ・ヤノフスカヤ、セルゲイ・モズコフ組。SD、FDともに安定してハイレベル、ハイクオリティーな演技を披露、2位に約9点の大差をつけ、圧勝しました。これでヤノフスカヤ&モズコフ組は出場した全ての試合を制覇。来シーズンはシニアに上がるのかどうか分かりませんが、ジュニア王者としてまた楽しみなカップルですね。
 2位はアメリカのロレイン・マクナマラ、クイン・カーペンター組。年末のジュニアGPファイナルには出場していないカップルですが、今大会では全米ジュニアチャンピオンとしての実力を発揮、パーソナルベストを大きく更新して接戦の表彰台争いを勝ち抜きました。
 3位はウクライナのアレクサンドラ・ナザロワ、マキシム・ニキーチン組。こちらもジュニアGPファイナル2014には出場していないのですが、シニアのチャレンジャーシリーズに積極的に参加するなど実力を磨き、1月末に行われた欧州選手権では総合11位と健闘。そうした経験が今大会でも活きたのでしょうね。



 さて、こうして世界ジュニア2015を振り返ってみますと、やはり全体的にはロシア勢の活躍がシニア同様目立ったなという印象ですね。一方で強豪国であるアメリカ、カナダの北米勢は少し苦戦でしたね。日本勢は男子で初めて二人が表彰台に乗るなど、変わらぬシングルでの存在感を示しました。今大会で光った選手たちが来季シニアやジュニアでどんな輝きを見せてくれるのか、今からワクワクします。
 そして、フィギュアスケートシーズンもいよいよ大詰め。今週の水曜日から中国の上海にて、世界選手権の競技が始まります。当ブログでももちろん取り上げていきますので、ぜひそちらもご覧下さい。


:記事冒頭の女子メダリスト3選手のスリーショット写真は、国際スケート連盟の公式ウェブサイトが2015年3月6日に配信した記事「Medvedeva (RUS) strikes Ladies gold, Uno leads Men at ISU World Junior Championships」、男子メダリスト3選手のスリーショット写真は、同ウェブサイトが2015年3月7日に配信した記事「Uno (JPN), Yanovskaya/Mozgov (RUS) golden at World Junior Championships」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
ジュニアグランプリシリーズ14/15について 2014年10月27日
ジュニアグランプリファイナル2014について 2014年12月26日
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by hitsujigusa | 2015-03-23 16:43 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

あさきゆめみし 1 完全版 (KCデラックス)


 フィギュアスケートシーズン真っ只中ですが、久しぶりのフィギュア以外の記事となります。今回取り上げるのは漫画家・大和和紀さんの代表作である『あさきゆめみし』。大和さんの誕生日が3月13日ということで、それに合わせてこの名作をフィーチャーしたいと思います。

 『あさきゆめみし』は紫式部が書いた古典の名作「源氏物語」を漫画化したもの。平安の貴族世界を舞台に繰り広げられる主人公・光源氏のめくるめく恋愛遍歴を華麗かつ圧倒的な画力で見事に描き切っています。「源氏物語」について光源氏という男が主人公の恋愛小説だと知っている人は多くいると思いますが、改めて手に取って読もうという人はそうそういないでしょう。なんといっても超大作の古典だし、現代語訳もいろいろあるけれどどれがいちばん読みやすいのか分からないし、長さからいってもハードルが高いことに変わりはない。そんな“源氏物語ビギナー”にとって、『あさきゆめみし』はかっこうの取っ掛かり。漫画ということで原作と比べても取っつきやすく、「源氏物語」へのハードルをぐっと引き下げてくれる。かくいう私も「源氏物語」に興味はありつつもなかなか手が出せず、『あさきゆめみし』から入ってのちに現代語訳へと広がっていきました。
 ただし、『あさきゆめみし』は「源氏物語」の単なるコミカライズかというとそうではないし、原作の代役とか入門書とかいう見方だけで読んでしまってはもったいない、漫画ならではの表現方法が存分に生かされたオリジナリティー溢れる「源氏物語」となっています。

 ここで話はちょっと逸れますが、「源氏物語」を分析した評論に、2007年に亡くなった日本を代表する心理学者・河合隼雄さんが著した『源氏物語と日本人 紫マンダラ』という本があります(単行本で出版された当初の題名は『紫マンダラ 源氏物語の構図』)。この中で河合さんは、「源氏物語」において主人公であるはずの光源氏の存在感が希薄であると前置きした上で、「源氏物語」は光源氏を描いているのではなく、紫式部が自らの分身としてさまざまな女性を登場させることで、女性の内的世界の多様性を描いたのだ、というおもしろい指摘をしています。

 『源氏物語』を読んでいるうちに筆者が感じたのは、源氏の周りに現われてくる女性たちが、すべて作者、紫式部の分身である、ということであった。彼女は自分の人生経験をふり返り、自己の内面を見つめているうちに、自分の内界に住む実に多様で、変化に富む女性の群像を見出した。(中略)この多様で豊かな「世界」を描くにあたって、彼女は一人の男性を必要とした。その男性との関係においてのみ、内界の女性たちを生きた姿で描くことができた。内界の女性は無数に近かった。しかし、それは紫式部という一人の女性のものであるという意味で、彼女たちは何らかの意味でひとつにまとまる必要があった。そのため、彼女たちすべての相手を務めるのは、一人の男性でなくてはならなかった。それが光源氏である。(河合隼雄『源氏物語と日本人 紫マンダラ』講談社、2003年10月)

 確かに源氏の行動を見ると当時の貴族の男性は一夫多妻が常とはいえ、尋常でないくらい次から次へといろんな身分の女性に手を出す一貫性のない姿は一人の男性のそれというよりも、各々の女性に対するごとに人間が変わっているとさえ感じられるほど。そんな源氏と比べると登場する女性たちは皆血が通った人間としてのリアリティを漂わせています。
 そういった源氏を巡る女性たちを河合さんは母、妻、娼、娘の4つに分類し、それらを以下のような世界観を統合的に形にした“女性マンダラ”として図形化。「源氏物語」における女性の在り方の多様さを示しました。

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 もちろん女性を4つのタイプに分類しているからといって女性を類型化・ステレオタイプ化しているわけではなく、男性との関係性に依って生きていかざるを得ない「源氏物語」の女性たち=平安の女性の実情を的確に反映していると思うのですが、振り返って考えてみると本質的なものは紫式部の時代もこの21世紀もそんなに変わっていないんじゃないかという気がします。昔と比べれば日本の女性もだいぶ社会進出は進んで、男性と同じように働く女性も、結婚しない女性も増えて生き方は多様になっていますが、男性との関係性で女性を位置づけるという点では未だに根本的な変化はないように思います。母であれ妻であれ娘であれ娼(恋人or愛人)であれ何かしらの役割を求められるという意味で、現代の女性が母でも妻でも娘でも娼でもない“個”の自分として生きていくには、まだまだ生き辛さがあるのかなという感じがしますね。

 そうして紫式部は自らの分身=男性との関係性の中で生きる女性たちの姿を鮮やかに描き切ったわけですが、さらに発展して“個”として生きようとする女性も描いていて、タイトルこそ「源氏物語」ですが、中身は徹底的に女性に迫った“女性のドラマ”と言えそうです。
 ですが、ビギナーが「源氏物語」を読む場合、女性たちそれぞれの心情だったり人間性だったり細かい部分を読み取るのはなかなか難しく、それ以前に古典文学という高いハードルが目の前にあり、“ドラマ”という感覚で楽しめるようになるまでには数回読み通すことが必要でしょう。
 そんなハードルを軽々と乗り越え、女性ドラマとしてのおもしろさを存分に堪能させてくれるのが『あさきゆめみし』です。
 特筆すべきはなんといってもそれぞれ異なる魅力を持った女性キャラクター。原作では情報が少なく、各女性キャラの個性を思い浮かべながら読み進めるのは困難ですが、漫画では全員黒髪&床まで伸びる長髪&十二単という制約の中で微妙な髪型の違いや目の大きさの違いなど姿かたちを絶妙に描き分け、個性を強調しています。
 感情表現、心理描写ももちろん原作より事細か。漫画ならではのセリフ、モノローグ、表情を巧みに駆使して描かれる女性たちは、源氏に翻弄されて泣いたり、怒ったり、嫉妬したり、喜んだり。その姿は現代の女性と何ら変わらない自分の周りにも普通に居そうなリアルさに満ちていて、これが1000年以上前に書かれた物語であることをすっかり忘れてしまうのです。

 そんなふうに『あさきゆめみし』は原作に書かれていることから想像したり、書かれていないことを補ったりして世界観が作り上げられていて、紫式部の「源氏物語」とはまた別の一つの作品と言えるかもしれません。でも、「源氏物語」の本質が壊されているかというとそんなことは決してなく、それどころか女性ドラマとして見ると、『あさきゆめみし』は紫式部が提示した女性の在り方の多様性をより鮮明にし、原作以上に女性という存在の本質を際立たせていると、個人的には思います。
 それが最もよく表れているキャラクターが源氏の最愛の人・紫の上です。上の女性マンダラを見て気付かれた方もいるかもしれませんが、女性マンダラの中に紫の上の名前はありません。なぜなら紫の上は、幼くして源氏に見初められて引き取られる=娘、源氏と結ばれて正妻格となる=妻、明石の御方の娘を引き取って育てる=母、源氏が新たな正妻を迎える=娼と、唯一4つの役割を全て経験する女性だからです。
 理想の女性になるよう源氏に育てられ、成長してからは理想の妻、養女の明石の姫君にとっては理想の母と、女性として最高の人生を歩む紫の上は、途中までは完全に源氏=男性との関係性の中でのみ生きる女性と言えます。しかし、源氏が内親王である女三の宮を正妻に迎えたことによって紫の上の自信は揺らぎ、それまでの紫の上の成長―少女からレディへ、レディからマダムへ―を紙上でずっと見守り続けてきた気分のこちらにも、紫の上の受けた衝撃の大きさがヒシヒシと伝わってきます。そんな事件をきっかけに紫の上は源氏に身をゆだねてきたことに疑問を抱きはじめるわけですが、彼女のそうした変化はのちに登場する個として生きようとする女性の嚆矢、前兆となっていきます。
 そして、紫の上以外の女性たちに関しても、原作よりもずっと“個”として生きているような印象があります。もちろん源氏との関係性においてのみ語られるという点には変わりないので、本来の“個”の意味とは違うのですが。でも、どの女性もしっかりキャラ立ちしていて、人間臭くて、源氏の母、妻、娼、娘であるという位置付けを超越して、源氏のいないところで生きる姿もちゃんと想像できるような、そんな女性たちばかりなのです。
 よく、キャラクターが勝手に動きだすと言いますが、『あさきゆめみし』は原文、現代語訳以上に、女性たちが自由に生き生きと、自分自身の意思で動いているように感じられる、女性ドラマとしてのおもしろさを最もよく伝える「源氏物語」だと思います。

 ここまで女性キャラのことしか書かなかったので、主人公である光源氏についても最後にちょっと付け加えておきますと、『あさきゆめみし』は女性たちが生き生きする漫画であると同時に、光源氏が生き生きする漫画でもあります。「源氏物語」で描かれた人間であって人間でないような源氏の薄っぺらさに『あさきゆめみし』では血や肉が加わり、“個”の人間・光源氏として立ち上がっているような感じがします。だからこそ、『あさきゆめみし』の源氏はマザコンで女たらしですが、女性たちがほっとけなくなるのも分かるような、ちゃんと魅力ある主人公と感じられます。源氏の人間臭さを楽しむという観点でも、『あさきゆめみし』は優れたドラマになっていますね。


注:記事内の女性マンダラの写真は、河合隼雄著『源氏物語と日本人 紫マンダラ』(講談社、2003年10月)から引用させていただきました。


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by hitsujigusa | 2015-03-12 16:59 | 漫画 | Trackback | Comments(2)