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 ベストコスチューム14/15、女子、ペアに続いてアイスダンスの衣装のベスト10を取り上げます。まずはショートダンスです。なお、衣装を選ぶにあたってのルールはこちらの記事に書きましたので、ご参考下さい。

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 アイスダンスSD部門、1位はカナダのケイトリン・ウィーバー、アンドリュー・ポジェ組の「La Virgen de la Macarena」です。

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 14/15シーズンのショートダンスの課題は、パターンダンスがスペインの闘牛をイメージしたダンスである“パソドブレ”、クリエイティブパートが“スパニッシュダンスリズム”ということで、多くのカップルがスペイン風の衣装を使用したわけですが、その中でも最も印象深かったのがウィーバー&ポジェ組の衣装です。
 使用しているのは「La Virgen de la Macarena」(マカレナの乙女)という古い楽曲ですが、さまざまあるパソドブレミュージックの中でも有名なものの一つのようですね。まさに闘牛の光景が目に浮かぶような勇ましい曲想で、ウィーバー&ポジェ組のコスチュームもそれを見事に忠実に反映しています。
 男性のポジェ選手は闘牛士をイメージした衣装で、ワイシャツに赤いネクタイ、黒いベスト、金糸の刺繍を施した華やかな上着とパンツという、本物の闘牛士さながらの本格ぶり。そして女性のウィーバー選手はシルクのような光沢を持つ真っ赤なドレスで上半身部分は男性同様に金色の刺繍が施されています。赤といえば闘牛では牛を興奮させる時に使う布(ムレータ)の色としておなじみですが、実際の演技でもウィーバー選手が長いスカートを大きくひらめかせる振り付けがあり、闘牛士が闘う様子を巧みに衣装で表現していて印象に残りました。
 THE王道というべき定番のデザインですが、これに勝るものはないと思える風格と雰囲気が感じられる素晴らしい衣装ですね。


 2位は中国の王詩玥(ワン・シーユエ)、柳鑫宇(リュー・シンユー)組の「A Bad Kitty/Farewell to San Ricardo/Diablo Rojo」。

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 イギリスの作曲家ヘンリー・ジャックマン作曲の2曲とメキシコ出身のギターデュオ、ロドリーゴ・イ・ガブリエーラ作曲の1曲を組み合わせた、こちらも激しく勇ましさに溢れたプログラムです。
 男性の柳選手はやはり闘牛士っぽいコスチュームですが、上記のポジェ選手よりは装飾が控えめなので派手派手しさはさほどなく使う色も黒と金でほぼ統一しています。女性の王選手も黒と金のドレスで、上半身の右側が金色、左側が黒という色づかいです。この部分をただ金色の布と黒の布を縫い合わせたような感じにしてしまうとチープになりかねないと思うのですが、金の糸と黒の糸を刺繍したような作りになっていますし、黒の中に絶妙に金色が混じっていて単なる黒一色、金一色でなく美しいグラデーションになっているので繊細さが感じられます。また、ところどころ小さなビジューをあしらっているので、キラキラと高級感のある輝きが作り出されていて良いですね。
 赤やオレンジといったいかにもスペインらしい色を使わず、黒と金のみにしたことでゴージャスでありながらクールさもあり、独創的な衣装になっているなと思います。


 3位はイタリアのシャルレーヌ・ギニャール、マルコ・ファブリ組の「Farrucas/Gato Montes」です。

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 14/15シーズンのクリエイティブパートの課題はスパニッシュダンスリズムということで、そのうちの一つであるフラメンコも多く見られました。このギニャール&ファブリ組のプログラムも闘牛というよりはフラメンコのイメージが強く、衣装にもそれが反映されていますね。
 男性のファブリ選手はフロント部分にヒラヒラとしたフリルが付いた白シャツに短めの黒いベスト姿で、フラメンコのギタリストを想起させます。そして女性のギニャール選手は胸が大きく開いた黒のドレスで、濃いピンクの生地と重なったスカートは大きく広がっていて、いかにもフラメンコの踊り手らしい服装です。また、上の写真では分かりにくいのですが、肩には細かな刺繍が施されたショールがかけられていて、背中側から見ても美しく見えるような工夫がなされています。男女ともにフラメンコの雰囲気を本格的に再現したコスチュームですね。


 4位はアメリカのアナスタシア・カヌーシオ、コリン・マクマヌス組の「Hora Zero/Ameksa」。

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 こちらも“闘牛系”というよりは“フラメンコ系”のプログラムを演じたカヌーシオ&マクマヌス組。ただ、3位のギニャール&ファブリ組と比べると伝統的なフラメンコを現代的にアレンジしたプログラムという感じで、衣装もモダンなデザインとなっています。
 男女ともに黒をベースにオレンジをアクセントにした衣装で、女性のカヌーシオ選手は胸元とスカートからオレンジがのぞき、上半身部分はオレンジの細いラインが複数入り、ストライプ柄っぽくなっています。一方、男性のマクマヌス選手はほぼ黒一色ですが、黒いシャツの上に同じ黒のベストを重ねています。ベストは赤いスパンコールなどで装飾がなされ、裏地は光沢のあるオレンジで、ベストが翻るたびに鮮やかなオレンジがのぞくのが印象的で、効果的なデザインですね。
 フラメンコらしさを活かしながらも、モダンなデザインを取り入れることで新鮮味を作り出していて良いコスチュームだなと思います。


 5位はイタリアのアンナ・カッペリーニ、ルカ・ラノッテ組の「スペイン奇想曲」です。

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 アイスダンスに限らず、シングルでもしばしば使用されるロシアの作曲家リムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」。その名のとおりスペイン情緒漂う音楽ですが、必ずしも闘牛、フラメンコに直接イメージが結びつく楽曲ではありません。
 カッペリーニ&ラノッテ組の衣装も闘牛やフラメンコを強く意識したものではなくて、シンプルにスペインらしさを感じさせるデザインとなっています。男性は白いシャツに黒いベスト、黒い上着を重ねた装飾のないいでたちですが、上着の裏地が赤色になっていて、女性の衣装との統一性があります。女性は上半身が黒、スカートが赤といったデザインですが、上半身は赤や白の細かなビジューをあしらっているので、黒一色とは違う複雑かつ絶妙な色合いになっていて良いですね。また、首元のネックレス風の赤い飾りもアクセントになっていて素敵です。
 スペイン風でありながら、ロシアの音楽家が作曲した管弦楽曲特有のクラシカルかつ高貴な雰囲気もうまく表現した衣装と言えますね。


 6位はフランスのガブリエラ・パパダキス、ギヨーム・シゼロン組の「Escobilla/Farruca」。

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 男性ボーカル入りのフラメンコ曲を使ったプログラムですが、二人の衣装は非常に現代的な洗練された雰囲気です。男性のシゼロン選手は白いシャツに白いサスペンダー、ボトムは黒いパンツで腰の部分はレザー風の素材というシンプルかつモダンな衣装となっています。女性のパパダキス選手は全身黒で首元に控えめに赤い装飾が施されています。上半身はレースっぽいところどころ透け感のある素材ですが、バツ印のようにクロスしたラインが横切っていて、そのバツ印の部分とスカートが光沢のあるレザー風の素材で作られています。普通はフラメンコであまり使用しないレザー(っぽい)生地を用いたりよく使われるフリルを排除したりすることで、伝統的なフラメンコとは一味違う都会的な趣きを醸し出していて、フラメンコというイメージにとらわれない意外性のあるコスチュームになっていますね。


 7位はアメリカのマイア・シブタニ、アレックス・シブタニ組の「Asturias Variations/The Last Corrida」です。

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 こちらはフラメンコ系、闘牛系といったイメージはさほどなく、それよりもざっくりとしたスペインらしさを色濃く漂わせるプログラムです。女性のマイア選手は黒地に花火のようなゴールドの装飾がふんだんにあしらわれたワンピース。シックでありながら華やかさもあります。男性のアレックス選手はワイン色のワイシャツの上に黒地にゴールドの刺繍が施されたジャケットを重ねたシンプルな衣装。女性の方はシーズンを通してこの1着のみでしたが、男性の方はシーズン当初は1位のポジェ選手のような派手めな闘牛士風コスチュームを着ていて、シーズン途中から華美さを抑えた衣装に変更しました。華やかな衣装も良かったのですが、プログラムの雰囲気や女性との組み合わせで見て、何となくシンプルな方が良いなと思ったので、こちらを選びました。


 8位はロシアのエレーナ・イリニフ、ルスラン・ジガンシン組の「カルメン」です。

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 フィギュア界の大定番『カルメン』の「アラゴネーズ」と「闘牛士の歌」を使用したプログラムで、全体的に激しく、情熱的で勇ましさに満ちています。女性の方は上半身がマットな質感の赤、スカートは黒というコスチュームで、ビジューやラインストーンといった装飾はなく、色づかいのみで音楽の華やかさ、情熱を表しています。胸元は下着がチラリとのぞくようなデザインでセクシーさを感じさせて、まさに魔性の女カルメンを思わせますね。一方、男性の方は白い立て襟のシャツにループタイ(ポーラータイ)を巻き、黒いベスト、真紅のジャケットという正装風コスチュームとなっています。男性の衣装はシーズン初戦の中国杯では黒いシャツに赤いネクタイ、黒地に独特の赤い模様のベストといういでたちだったのですが、それよりもこちらの衣装の方がノーブルさがありますし、女性の方も模様など一切ないシンプルなコスチュームなので、男性も複雑な模様などない方がすっきりして見えて良いと思いますね。


 9位はカナダのパイパー・ギルズ、ポール・ポワリエ組の「El Gato Montes/スペイン奇想曲」。

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 14/15シーズンのアイスダンスコスチュームの中でも特に目を引きインパクト大だったのが、このギルズ&ポワリエ組のSDです。男性のポワリエ選手は白いワイシャツに黒いネクタイ、ベストも上着も全て白黒のみの色づかいで構成されているシックな闘牛士姿。個性的なのは女性のギルズ選手の方で、ホルターネック風の白と黒のトップスはシンプルで、色づかいも男性の衣装と統一させていますが、スカートは腰から広がった布がそのまま手首にくくり付けられているという斬新な作りになっています。両手を広げることで布が大きく開き、まさに闘牛士が牛に向かって広げる布のようです。こういった独特なコスチュームは好き嫌いも分かれやすいのかなと思ったりもしますが、闘牛のイメージをシンボリックに衣装に盛り込み再現したという点が素晴らしいなと感じますし、印象に残るという意味では大成功ですね。


 10位はカナダのアレクサンドラ・ポール、ミッチェル・イスラム組の「Nocturno/Farruca y Rumba」です。

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 哀愁漂うスローなメロディで始まるスパニッシュプログラムということで、衣装も比較的華美な装飾の少ないデザインになっています。男性は黒一色ですが、肩から胸にかけてあしらった大ぶりのビジューがボレロっぽいデザインを形作っていて衣装に変化をつけています。女性はベルベット風の光沢のある赤いドレスで、肩から腕を覆っている分、胸元にスリットを入れて肌をのぞかせることでセクシーさを醸し出しています。そしてスカートはフリルとひだがたっぷりと施されていて、本格的なフラメンコダンサー風となっています。正統派のひねりの少ない衣装ではあるのですが、スカートの丁寧な布づかいだったり、フリルのあいだからのぞく黒いレースだったり、細かな工夫がさまざま散りばめられているので、大味でなくとても繊細な印象を受けますね。



 アイスダンスショートダンスのベスト10はこれで以上です。14/15シーズンはSDの課題がパソドブレ&スパニッシュダンスリズムということで、衣装も雰囲気の似通ったものが多かったですが、その中でもそれぞれのカップルごとの個性、オリジナリティーが光っていて、同じパソドブレ&スパニッシュダンスリズムでも多様性があって、ベスト10を選んでいてもおもしろかったですね。
 次はアイスダンスフリーダンス部門に続きます。


:記事冒頭の写真はフィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから、ウィーバー&ポジェ組の写真はフィギュアスケート情報ウェブサイト「Absolute Skating」から、王&柳組の写真、ギニャール&ファブリ組の写真、カッペリーニ&ラノッテ組の写真、パパダキス&シゼロン組の写真、イリニフ&ジガンシン組の写真はアイスダンス情報ウェブサイト「Ice-dance.com」から、カヌーシオ&マクマヌス組の写真はアメリカの新聞「USAトゥデイ」の公式ウェブサイトが2015年1月24日の18:03に配信した記事「Brennan: U.S. men's skating content with not being the best」から、シブタニ&シブタニ組の写真はマイクロブログサービス「Tumblr」から、ギルズ&ポワリエ組の写真はエンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、ポール&イスラム組の写真は四大陸選手権2015の公式ウェブサイトから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2015-05-30 01:12 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

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 ベストコスチューム14/15、ペアのフリー部門です。ペアフリーで使用された衣装のベスト10を選んでいきます。選ぶ際のルールについては、こちらの記事をご覧ください。

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 さっそく、1位はアメリカのマデリーン・アーロン、マックス・セットレージ組の「映画『王様と私』より」です。

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 映画『王様と私』は1860年代のタイを舞台に、タイの王様とイギリス人の女性家庭教師との交流を描いたミュージカル作品ですが、その特有のシチュエーションをアーロン&セットレージ組がうまく活かしていますね。女性のアーロン選手は白人、男性のセットレージ選手はベトナム出身のアジア系ということで、まさに映画の世界そのままの雰囲気を醸し出していて、素晴らしいプログラムのチョイスになっています。
 そして衣装もそれぞれのキャラクターらしさをしっかり反映しています。女性は淡いピンクで身体の中央部分がレース仕立てになっている正統派の英国風ドレス。男性は臙脂色に金色の刺繍が施された立て襟の衣装で、『王様と私』のDVDのジャケットで王様を演じるユル・ブリンナーが着ている衣装を思わせるデザイン。自分たちの特徴を活かし、映画の中から飛び出してきたような世界観を見事に表現したコスチュームですね。


 2位はイタリアのアレッサンドラ・チェルヌースキ、フィリッポ・アンブロジーニ組の「トスカ」です。

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 14/15シーズンからシニアに参戦したものの、今シーズンをもってペア解消に加え、女性の方は引退となったチェルヌースキ&アンブロジーニ組。そんな二人にとって最後のフリーとなったのが母国を代表するオペラ「トスカ」という華麗なる名作です。
 女性は光沢のある質感の真っ赤なワンピースで、襟元がゴールド系の装飾で彩られたゴージャスなデザインとなっています。一方の男性は襟付きの白いシャツ姿で、襟元が編み上げ風というシンプルなもの。「トスカ」は歌姫の“トスカ”がヒロインですから、チェルヌースキ選手の衣装もその歌姫の華やかなイメージを忠実に再現していますね。女性が豪華な分、男性は服の形も色も控えめで、女性を引き立てているような感じがあります。男女のバランスが取れた衣装だなと思います。


 3位はアメリカのヘイヴン・デニー、ブランドン・フレイジャー組の「映画『ライオン・キング』より」。

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 アフリカを舞台にした『ライオン・キング』のサントラを使用したプログラムということで、衣装も洗練されたエレガンスがありつつも、アフリカっぽさを効果的に取り入れたデザインになっています。
 男女ともに淡いイエローを基調とし、その襟元を中心にビジューで目立つ装飾がなされています。そのビジューもただきれいに見えるように配置するだけではなく、オレンジやゴールドといった装飾をベースにしつつ、そこにターコイズやルビーっぽい大ぶりのビジューがポイントカラーとしてあしらわれていて、こういった色合いを統一させない色づかい、多彩な色の使い方がどことなくアフリカの民族衣装っぽくて、独特な雰囲気を醸し出していて良いなと思いますね。


 4位はイタリアのニコーレ・デラ・モニカ、マッテオ・グアリーゼ組の「映画『マスク・オブ・ゾロ』より」。

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 『マスク・オブ・ゾロ』は剣士ゾロを主人公にした作品で、日本のフィギュアファンには村上佳菜子選手がシニアデビューシーズンのフリーに使用したことで最もよく知られているのではないかと思います。その村上選手はとても男性的なコスチュームを着用して印象に残りましたが、このデラ・モニカ&グアリーゼ組も独創的なデザインで映画の世界観を表しています。
 女性のデラ・モニカ選手は深みのある赤(臙脂)と黒を組み合わせたシックな色づかいや襟元のデザインなど、ハードな印象を与えるデザインとなっていて、ダークな雰囲気を漂わせるヒーローを主人公にしたアクション映画らしさをコスチュームでも表現しています。その一方でフリルの付いたスカートなど女性的な部分もあり、マニッシュでありながらエレガンスさも感じられますね。男性のグアリーゼ選手は黒一色で女性ほどの装飾はありませんが、背中側に赤いラインストーンを施すなど女性の衣装との統一感もあり、男女一対で見た時に美しく見えますね。『マスク・オブ・ゾロ』はスペイン領だった時代のアメリカのカリフォルニアが舞台の話なので、赤と黒というスペイン風衣装の定番カラーがやはりよく合っているなと思います。


 5位はロシアのエフゲニア・タラソワ、ウラジミール・モロゾフ組の「Hello」です。

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 「Hello」はアメリカの歌手、ライオネル・リッチーの全米1位となったヒット曲ですが、タラソワ&モロゾフ組はオーケストラ演奏のインストゥルメンタルバージョンを使用、プログラム全体に渡ってゆったりと優しい空気が流れる作品に作り上げています。
 そんな音楽のイメージに合わせ、衣装も装飾の少ない落ち着いたものにしています。女性のタラソワ選手は淡いピンクの長袖ワンピースで、袖とスカートがレース生地になっています。シンプルなデザインではありますが、上半身部分のラインストーン(スパンコール?)や首のチョーカーなど、派手でない程度に装飾が施されていて、地味になり過ぎない工夫がなされていますね。一方、男性のモロゾフ選手は全身黒で、女性の明るい色の衣装とは対照的な色づかいで、明と暗、光と闇ではないですが、二人の組み合わせで見ると画面がぐっと引き締まるような気がします。派手さはないものの、しみじみとした美しさがあるプログラムにぴったりの衣装ですね。


 6位は中国の隋文静(スイ・ウェンジン)、韓聰(ハン・ツォン)組の「フランチェスカ・ダ・リミニ」です。

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 ダンテの「神曲」をモチーフにしたチャイコフスキーの管弦楽曲を使ったダイナミックかつ壮麗なプログラム。華々しいというよりも重厚な魅力にあふれた作品なので、衣装も華美過ぎないものになっていますね。男女ともに淡いブルーをベースにしていて、女性の隋選手は肩紐の細いエレガントなワンピース。胸元と背中が大きく開いたデザインなのですが、薄いピンク色の花のアップリケが胸元にも背中にもふんだんに施されているので、肌を見せている面積の多さはあまり気にならず、それよりも可愛らしさ、可憐さの方が印象に残りますね。男性の韓選手は襟付きのシンプルなシャツで、男女ともに音楽の世界の中に自らの存在を溶け込ませるような、音楽を引き立てるような衣装になっていると思います。


 7位はベラルーシのマリア・パリアコワ、ニキータ・ボチュコフ組の「セル・ブロック・タンゴ 映画『シカゴ』より/シング・シングシング」。

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 前半は「セル・ブロック・タンゴ」、後半はジャズの名曲「シング・シング・シング」を組み合わせたプログラム。全体的に溌剌とした印象のあるアップテンポな作品です。
 そんなイメージに合わせて、二人の衣装も鮮やかな色づかいで華やかさを感じさせるデザインとなっています。女性のパリアコワ選手は赤紫を基調とした長袖ワンピースで、袖や胸元がうっすら透ける生地、腰からスカートにかけては赤紫から深い紫に濃くなるグラデーションと、同色系の中でも色合いに絶妙な変化をつけていますね。男性のボチュコフ選手はピンクのシャツにグレーのネクタイ、黒のベストというシンプルながらポップな印象を与えるコスチューム。このプログラムはタンゴを使用しているのでところどころタンゴらしい振り付け、動きというのも取り入れられていますが、いわゆるアルゼンチンタンゴなどとは違って、よりモダンにアレンジされたタンゴという感じなので、衣装もいかにもタンゴらしいという色づかい、雰囲気にはなっていません。また、演技後半はジャズですから、ジャズのクールさとタンゴの情熱感を融合させたコスチュームだなと思いますね。


 8位は中国の于小雨(ユー・シャオユー)、金揚(ジン・ヤン)組の「Humility And Love 映画『クリエーション』より」。

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 進化論で知られるダーウィンを描いた映画のサントラを使用していて、全体的に穏やかで静かな旋律が印象的なプログラムです。他方でコスチュームは音楽のイメージと一味違うデザイン、色づかいとなっています。男性の金選手はドレープが美しい青一色の衣装でシックですが、女性の于選手は光沢のある素材の鮮やかなブルーで、襟元から胸元にかけて青みがかった緑や濃いピンクでアクセントを付けていて、男性よりも装飾を多用しています。音楽がわりと地味な分、衣装の方を音楽よりも華やかにすることでバランスを取っているのかなと思いますが、ただ、二人とも同じように華やかなのではなくて、女性は明るいブルーの生地に独創的な装飾、男性は深みのあるブルーで装飾は少なめと、男女それぞれで色づかいや装飾づかいに変化を付けているので、さほど派手になりすぎず、音楽とのバランスも、ペアとしてのバランスも取れたコスチュームになっているんじゃないかなと思いますね。


 9位はロシアの川口悠子、アレクサンドル・スミルノフ組の「マンフレッド交響曲」です。

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 チャイコフスキー作曲の壮大かつ重厚な「マンフレッド交響曲」。これはバイロンの劇詩「マンフレッド」に基づいた楽曲ですが、「マンフレッド」は“死”や“喪失”がテーマとなっているそうです。ということで、二人のコスチュームもそういった暗さや闇を想起させるものとなっています。
 パッと見では黒っぽく見えますが、じっくり見ると黒に近い青だったり紫だったりグレーだったりが渾然一体となっている感じで、具体的に何色と断言できないような深い色合いとなっていますね。女性の川口選手は透け感のあるベースの生地に、胸の部分は青っぽい素材のアップリケで覆ったり、ベース生地自体にも刺繍で模様を施したりするなど細かく工夫がなされていて、一色でなく複数の同色系の色を繊細に使っているからこその独特な雰囲気が醸し出されていますね。一方、男性のスミルノフ選手はこちらも透け感のある素材のシャツで、特徴的なのは首から胸、お腹にかけてリボンを巻いたような布づかいです。ベースの服の色とほぼ同じ色なのでパッと見では目立ちませんが、布の先っぽが風になびいたり布につけられたビジューがきらめいたりと衣装に変化を持たせるアクセントになっています。プログラムの物語の世界観を反映した素晴らしい衣装ですね。


 10位はアメリカのディーディー・レン、サイモン・シュナピア組の「ミス・サイゴン」です。

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 14/15シーズンは日本の宮原知子選手がフリーで使用したことで記憶にも鮮明な「ミス・サイゴン」。ベトナムを舞台に、ベトナム人女性とアメリカ人兵士の恋を描いたミュージカルです。1位のアーロン&セットレージ組が白人とアジア系という男女の組み合わせを巧く用いたように、このレン&シュナピア組も女性がアジア系で男性が白人というペアの特徴を効果的に活かしましたね。
 そして衣装もまさに作品の世界観そのまま。女性はベトナムの民族衣装アオザイ風の立て襟のワンピース、男性はアメリカ兵の軍服風です。どちらも「ミス・サイゴン」ならこれしかないと思えるようなスタンダードな衣装ですが、女性の衣装の方はたとえば宮原選手が着たような赤や、または青や紫などの有彩色の場合、男性の衣装が存在感のあるグリーンなだけに、男女の組み合わせで見た際に色がごちゃごちゃしかねないですが、無彩色の白としたことでとてもすっきりとして見えて、ベストな選択だったと思いますね。



 さて、ペアフリーのベストコスチューム14/15はこれで終了です。次はアイスダンスのSD、もしくは男子のSPの衣装のベスト10になりますが、どちらになるかは記事アップまでもうしばらくお待ちください。


:記事冒頭の写真はフィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから、アーロン&セットレージ組の写真、デニー&フレイジャー組の写真、デラ・モニカ&グアリーゼ組の写真、于&金組の写真、レン&シュナピア組の写真は、エンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、チェルヌースキ&アンブロジーニ組の写真はイタリアのウィンタースポーツ情報ウェブサイト「neveitalia」が2015年4月28日に配信した記事「Fine della carriera in coppia per Alessandra Cernuschi e Filippo Ambrosini」から、タラソワ&モロゾフ組の写真は国際スケート連盟の公式ウェブサイトが2015年2月1日に配信した記事「Yuko Kavaguti/Alexander Smirnov (RUS) strike gold」から、隋&韓組の写真、パリアコワ&ボチュコフ組の写真は国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、川口&スミルノフ組の写真はフィギュアスケート情報ウェブサイト「Inside Skating」が2015年2月19日に配信した記事「2015 Europeans in Stockholm: gold for a program like no other in the pairs event this season」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2015-05-23 02:19 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

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 2015年5月18日、14/15シーズンを休養した浅田真央選手が自身の公式サイトで現役続行を正式に発表し、その後自身がホストを務めるアイスショー「THE ICE」の記者会見に臨み、その場で改めて自らの口で現役続行について説明しました。

◆◆◆◆◆

ハーフハーフから1年 真央が現役続行を正式表明「責任をもって」

 14―15年シーズンを休養したフィギュアスケート女子の浅田真央(24=中京大出)が18日、東京都内で行われたアイスショー「THE ICE」の会見に出席、あらためて現役続行の意思を表明した。浅田はこの日午前、自身のブログで続行の意思を示していた。

 浅田は「1年間休養して自然と試合が恋しくなり、試合でいい演技ができたときの達成感を感じたいなと思ったのが1つの理由」と説明。「ソチ五輪や世界選手権が終わった後は“最後の1年にしよう”と頑張ってきたので、スケートしたいと思うことはあまりなかった」というが、やはり「スケートが自分には欠かせないものと思うようになった」と心境の変化を明かした。

 現時点では18年平昌五輪については「考えていない」といい、「最低でも去年の世界選手権のレベルまで戻さないと試合には出られないと思っている。そこまで戻すのが今の目標」という浅田。「自分が決めたことなので、責任をもってやっていきたい」と決意を語った。


スポニチアネックス 2015年5月18日 15:10 一部抜粋

◆◆◆◆◆

 18日の「THE ICE」の記者会見に先立って、浅田選手は当日の午前中に公式サイトで現役続行を文章で発表していて、そこでは以下のように自らの心情を述べています。


 休養中に、まだできると思い始め、自然と、試合の時に最高の演技をした時の達成感や喜びの感覚が恋しくなり、試合に戻りたいと思うようになりました。上手く行けば試合に出られるかもしれないですし、上手く行かなければ試合に出られない事もあるとコーチから言われています。

 今は道半ばなので、試合に出ますと断言する事は出来ません。試合に出られるレベルまで戻り、コーチと話し合い、決定しましたら自分から報告させて頂きますので、その時までお待ち頂ければと思います。



 「ハーフハーフ」の発言から1年あまり、一ファンとしては今回の現役続行はとても嬉しいですね。その一方で、「THE ICE」の会見も拝見しましたが、公式サイトでの文章も含め、決して容易な現役続行発表ではなかったのだろうなということが言葉の端々からうかがえました。ただ復帰するだけならそう難しいことではないでしょうが、浅田選手は「最低でも去年(2014年)の世界選手権のレベルまで戻さないと試合には出られない」「上手く行かなければ試合に出られない事もある」と語っていて、世界のトップレベルで戦ってきた浅田選手だからこその、中途半端な姿、演技は見せられないという覚悟が感じられました。もちろん現役続行は前向きは選択だと思いますが、会見での浅田選手は慎重に言葉を選びながら発言しているなという印象で、単純にスケートが好きだから復帰するのは楽しみというような楽観視とは全く異なっていて、緊張感さえ感じるほどの決意が浅田選手の表情、口調からひしひし伝わってきましたね。
 また、具体的な復帰の時期、大会については明言を避け、グランプリシリーズに参戦するかどうかも明かしませんでした。師事する佐藤信夫コーチとの練習は5月11日から始めたばかりということですし、休養以前とは事情が全く違うので、最初からシビアな国際大会に出場することなく、比較的調整しやすい国内大会をメインに出場しながらうまく調整していくという方法もあるでしょうね。どちらにしろ9月に行われる中部選手権が復帰戦になるのではないかと報道では言われています。

 浅田選手が現役続行を発表したことによってメディアはさっそく盛り上がり、多くの人々が浅田選手に期待を寄せていることと思いますが、個人的にはやはり今までとは違うスタンスで見守りたいなと感じますね。これまでは浅田選手自身、バンクーバー五輪、ソチ五輪という明確な目標があり、そこに向かってまっしぐらという感じだったわけですが、現時点で浅田選手に2018年の平昌五輪を目指す意思はなく、今の目標は以前のレベルまで戻すことと言葉を控えめにしています。13/14シーズンをもって引退した鈴木明子さんがそうだったように、1年単位、1シーズン単位で考えるということになるのではないかと思いますし、20代半ばを迎えた女子選手が現役を続けるということは、10代、20代前半の選手が現役を続けるというのとは全く違った意味合いを持ってきますから、応援する方もこれまでとは異なる見方をしなければいけないでしょうね。浅田選手自身も再び以前のような期待やプレッシャーを感じる場面も出てくるでしょうが、実際に競技に復帰してみて気持ちに変化があれば、誰に遠慮することなく浅田選手の心のままに動いてほしいなと思います。

 何はともあれ、長い休養を経て復帰する浅田選手がこれからどんな道を歩むのか、どんな演技を見せてくれるのか、とても楽しみに陰ながら応援したいと思います。


:記事冒頭の写真はスポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」が2015年5月18日の16:50に配信した記事「浅田真央が現役続行「達成感を感じたい」 「THE ICE」記者会見 一問一答」から、記事中の浅田選手の発表文章は浅田選手の公式ウェブサイトから引用させていただきました。
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by hitsujigusa | 2015-05-19 18:19 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 ベストコスチューム14/15、女子に続いてペアのショートプログラムの衣装のベスト10をお届けします。衣装を選ぶ上でのルールについてはこちらの記事に書きましたので、ご参考下さい。

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 第1位は、ロシアのべラ・バザロワ、アンドレイ・デプタト組の「マイ・ウェイ」です。

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 おなじみのポピュラーソングを使用したプログラムですが、プログラム前半はノンボーカルでヴァイオリンの音色がメインのエレガンスな雰囲気、後半はボーカルとオーケストラによってどんどん壮大さを増していきます。
 そんな音楽の重厚さ、重層さを表すように衣装は男女ともに深みのある紫が共通の色として使われています。男性のデプタト選手は襟付きで胸が大きく開いたデザインのシャツ、アクセントとして金色の縁取りがあしらわれています。そして、女性のバザロワ選手はワンショルダー型のワンピースで、胸の部分はさまざまな色が混じったマーブル柄っぽいデザインとなっています。胸の下からは紫となっていますが、一部ピンクがグラデーションになっていたり、また、スカートも紫一色ではなくてピンクの生地が混じっていたりと、ピンクと紫が絶妙なバランスで合わさっています。
 男性と女性とのバランスで考えても、男性はできるだけシンプルに、女性の方を比較的華やかにというスタンダードかつ最もバランスの取れた組み合わせになっていると思いますね。


 2位はロシアのクリスティーナ・アスタホワ、アレクセイ・ロゴノフ組の「Be Italian 映画『NINE』より」。

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 「Be Italian」は2009年公開(日本公開は2010年)のミュージカル映画『NINE』の劇中曲で、日本のフィギュアファンには村上佳菜子選手がかつてエキシビションで使用したことでおなじみの曲だと思いますが、アスタホワ&ロゴノフ組はこの曲のセクシーなイメージ、大人の世界観を前面に押し出して演じました。
 衣装は上述したバザロワ&デプタト組とは対照的に、男性と女性とで衣装の雰囲気を全く異なるものにしています。男性のロゴノフ選手は白のシャツにベストというオーソドックスな衣装ですが、白シャツは金ボタン付き、ベストは黒地に金色の柄という派手めのもの。女性のアスタホワ選手はシックなネイビーの長袖ワンピースですが、袖やスカートのレース生地、首のチョーカーや太もものガーターなど、ところどころにセクシーさを感じさせるデザイン、アイテムが用いられています。二人の衣装の組み合わせに統一感はありませんが、それぞれが映画の中のキャラクターを演じているような個性があり、音楽の華やかさに二人ともよく合っていますね。


 3位はロシアの川口悠子、アレクサンドル・スミルノフ組の「タイスの瞑想曲」です。

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 ゆったりとした曲調が特徴のマスネの「タイスの瞑想曲」。それに合わせて二人の衣装も落ち着いた色調の華美でないものになっています。女性の川口選手は淡いブルーの長袖ドレスで、写真では見切れてますがスカートも長めで、露出の少ない清楚なデザインです。一方、男性のスミルノフ選手も、上から下まで黒一色で色味を抑えています。男女ともにオーソドックスな形に加え、色の少ないコスチュームなわけですが、その中で女性の方は上半身に細かな刺繍が施されていたり、男性の方はビジューっぽいボタンやシャツのフロントの両サイドに女性の衣装の刺繍と似たような柄があしらわれていたりと、悪目立ちしないデザインがなされていて、音楽の世界観に溶け込むような工夫がしっかり考えられている衣装だなと思いますね。


 4位はアメリカのマデリーン・アーロン、マックス・セットレージ組の「コッペリア」です。

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 「コッペリア」はその名も“コッペリア”という人形をモチーフにしたバレエ作品。二人の衣装にもその世界観が存分に活かされていますね。
 女性のアーロン選手は鮮やかなライトブルーのバレリーナ風ドレス。スカートは短めのチュチュっぽい作りでフリルやレースを多用、上半身は印象的な装飾がなされていて、全体的に可愛らしい雰囲気でプログラムのイメージを反映しています。そして男性のセットレージ選手は白いシャツに格子柄っぽいベストを重ねたようなデザイン。「コッペリア」は華やかな世界のお話ではなく村を舞台にした作品なので、男性の衣装も地味でできるだけ華やかさを排しているように見えますね。一方で女性の方は人形役なので比較的華やかです。プログラムのストーリーを忠実に再現した衣装と言えますね。


 5位はオーストリアのミリアム・ツィーグラー、セヴェリン・キーファー組の「C'est pas l'amour/Zydeko」。

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 ツィーグラー&キーファー組が使用しているのは、アメリカを拠点にするグローバルオルタナティブミュージックのグループ、Rupa&the April fishesの楽曲と、カナダの作曲家でシルク・ドゥ・ソレイユの音楽を担当してきたブノワ・ジュトラさんの楽曲を組み合わせたプログラム。前者はフランス語の歌詞入りの歌で、シャンソンの色合いが濃く、後者はインストゥルメンタルでやはりこちらもフレンチっぽさがあり、2曲合わせてフレンチポップな印象の強いプログラムとなっています。
 ということでコスチュームもポップで可愛らしいカラー&デザイン。二人とも赤と白のボーダー柄がメインに使われていて、男性のキーファー選手はシンプルなTシャツに黒いサスペンダーでアクセントを付けています。女性のツィーグラー選手はストラップレス型のワンピースですが、衣装の縁取りの黒のレースや蝶々結びのリボンなどのデザインによってコルセット風になっています。男女ともに明るく、楽しいイメージの衣装で、音楽のポップさにピッタリ合っていますね。


 6位はアメリカのヘイヴン・デニー、ブランドン・フレイジャー組の「Speak Softly My Love」。

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 「Speak Softly My Love」は映画『ゴッドファーザー』の「愛のテーマ」に歌詞を付けた楽曲です。インストゥルメンタルバージョン同様、情熱的な旋律が印象的ですが、デニー&フレイジャー組の衣装もそのイメージをオーソドックスに表していますね。
 女性のデニー選手は深みのある赤のワンピースで、上半身全体に細かな刺繍がなされることで立体感のあるものになっています。男性のフレイジャー選手はクラシカルかつスタンダードなシャツ+ベストスタイルですが、黒いシャツに光沢のあるグレーのベストとすることで、白のシャツに黒のベストといった色づかいよりも、さらに男性の色気、ダンディさが醸し出されているような気がします。パッと見では実にシンプルな衣装ですが、色づかいという点でよく工夫されたコスチュームだなと思います。


 7位はイタリアのヴァレンティーナ・マルケイ、オンドレイ・ホタレク組の「マラゲーニャ」。

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 「マラゲーニャ」はスペイン風楽曲としてフィギュア界ではおなじみで、12/13シーズンには無良崇人選手がSPで使用していますし、14/15シーズンは「ベストコスチューム14/15・女子ショートプログラム部門」でも取り上げた今井遥選手が女性ボーカル入りのものを演じたことでも記憶に新しい作品だと思います。
 そんな「マラゲーニャ」ですが、マルケイ&ホタレク組は力強い男性ボーカルが入った曲を使用し、今までの「マラゲーニャ」とは一味違うプログラムを作り上げました。衣装の面でも赤やオレンジなどいかにもスペインという感じのカラーではなくて、深みのあるグリーンという「マラゲーニャ」にしては珍しい色づかいをしています。女性のマルケイ選手はところどころに花の刺繍が施されたストラップレスドレスで、スカートは短めで大ぶりのフリルを重ねたようなデザイン。男性のホタレク選手はグリーンのシャツの上に黒いベストを着用していて、ベストにはシャツと同色系のグリーンでこちらも花柄っぽい刺繍があしらわれていて、女性の衣装と統一感を持たせています。色づかいでは「マラゲーニャ」らしくない衣装となっていますが、プログラム自体がスパニッシュな雰囲気を漂わせつつ、それ以上に男性のボーカルが強く、よくある「マラゲーニャ」より比較的クールさが濃いかなと思うので、もちろん赤いコスチュームでも合うでしょうが、グリーンの方がより音楽のイメージに合っていて良いでしょうね。


 8位は中国の隋文静(スイ・ウェンジン)、韓聰(ハン・ツォン)組の「Stray Cat Strut」。

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 アップテンポで激しいリズムが特徴のプログラムということで、二人の衣装もわりと華やかなものになっています。女性の隋選手はセパレートっぽく見えるデザインのワンピースで、肩と腰を大胆に露出してコケティッシュな女性を演じています。男性の韓選手はシャツの上にジャケットを重ねたように見えるデザインの衣装で、女性よりも落ち着いた感じにしています。どちらも鮮やかな紫を共通の色として使っている上に、金色を衣装の縁取りにふんだんにあしらっていて、シックな紫で大人っぽさ表現しつつ、目立つ金色を効果的に使うことで音楽に合った派手さも作り出していて、バランスが取れていて良いなと思います。


 9位はカナダのナターシャ・ピュリッチ、アンドリュー・ウルフ組の「Three Hours Past Midnight」。

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 「Three Hours Past Midnight」はカナダのミュージシャン、コリン・ジェームズの楽曲で、ギターが奏でるスローなメロディと一部に男性ボーカルの入ったプログラムです。タイトルに“Midnight=真夜中”と入っていますが、ピュリッチ&ウルフ組の衣装も夜を思わせる黒系で統一されています。ただ黒一色かというとそうではなく、男性は黒いシャツにグレーのラインとラインストーンがあしらわれ、女性は黒とグレー、シルバーがバランス良く配置されています。特に女性の方は黒、グレー、シルバーが絶妙なグラデーションとなっていて、“Three Hours Past Midnight=3時間前の真夜中”という風景、情景を想起させるような色づかいになっていて良いですね。


 10位はフランスのヴァネッサ・ジェームズ、モルガン・シプレ組の「ロクサーヌのタンゴ 映画『ムーラン・ルージュ』より」。

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 14/15シーズンも村上大介選手のSP、アシュリー・ワグナー選手のフリーに使われるなど相変わらずの人気を誇る「ムーラン・ルージュ」。その中でも特に人気の「ロクサーヌのタンゴ」を使用したプログラムです。タンゴということで定番の赤と黒を使った衣装ですが、女性は赤をメインに、男性は黒をメインにすることで、男女の組み合わせで見た時にバランスが取れていて良いですね。また、赤一色、黒一色ではなくて、ほとんど赤、ほとんど黒にしながらも部分的に黒をのぞかせたり赤をあしらったりしてアクセントにしていて、色の使い方、それぞれの色の分量、配置にセンスを感じるコスチュームです。



 ベストコスチューム14/15、ペアショートプログラム部門はこれで以上です。ペアフリー部門に続きます。


:記事冒頭の写真はフィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから、バザロワ&デプタト組の写真、アーロン&セットレージ組の写真は国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、アスタホワ&ロゴノフ組の写真、マルケイ&ホタレク組の写真はウェブサイト「フィギュアスケート・コスチューム図鑑」から、川口&スミルノフ組の写真は川口&スミルノフ組のフェイスブックページから、ツィーグラー&キーファー組の写真はオーストリアの新聞「Burgenländische Volkszeitung」のニュースサイトが2015年4月1日の8:59に配信した記事「"Dreifach-Salchow" ließ die Kür platzen」から、デニー&フレイジャー組の写真はフィギュアスケート情報ウェブサイト「Icenetwork」が2015年5月1日に配信した記事「Denney goes under the knife to repair knee injury」から、隋&韓組の写真は写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、ピュリッチ&ウルフ組の写真はエンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、ジェームズ&シプレ組の写真はフィギュアスケート情報ウェブサイト「Absolute Skating」から引用させて頂きました。

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by hitsujigusa | 2015-05-16 18:20 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

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 ベストコスチューム14/15、女子フリー部門の記事です。女子フリーの衣装のベスト10を選んでいきます。衣装を選ぶにあたってのルールについてはこちらの記事をご覧ください。

*****

 1位はアメリカの長洲未来選手の「蝶々夫人」です。

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 フィギュア界では定番となっているオペラ「蝶々夫人」を使用したプログラム。日本にルーツを持つ長洲選手が日本を舞台にした作品を演じるという意味でも印象的なプログラムでしたが、衣装の素晴らしさが目に焼き付いて離れませんでした。
 上半身はまさに蝶をモチーフにしたデザイン。蝶の翅が胸を覆い、そこにスパンコールやラインストーンで細かなデザインが施され、蝶の翅の独特な模様が見事に表現されています。また、胸元から首元に伸びるラインも触角のようで、自然に蝶がデザインされています。それでいていかにも蝶という生々しさはなくて、デフォルメされているけれども一目見て蝶と分かるというふうにデザインとして成立しています。色づかいもデザインが比較的凝っている上に華やかなビジューを多用している分、派手な色を使わずにシックな黒やブルーを基調にすることでプログラムの雰囲気に合った大人っぽさ、落ち着きを作り出していて良いなと思いますね。


 2位は日本の永井優香選手の「序奏とロンド・カプリチオーソ」。

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 こちらもフィギュア界ではおなじみのサン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」。ヴァイオリンが奏でる旋律が優雅かつ情熱的な音楽です。
 衣装は赤をベースとしてプログラムの情熱的なさまを表現しています。しかし、単に赤一色ではなく上半身部分に多様な色のビジューを使うことで複雑さを作り出しています。黄色や緑、青など本当にいろんな色を使っていて、一つの衣装の中でこれだけ様々な色を多用するとごちゃごちゃした印象になりかねないと思うのですが、巧くそれらの色をベースの赤の中に溶け込ませています。その上、うねるようなラインが特徴的な模様となってまるで抽象画のような雰囲気を漂わせていて、複数のカラーを使いながらも一幅の絵画のように統一感を持たせているなと感じますね。


 3位はロシアのエリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手の「Batwannis Beek/Sandstorm」。

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 アラビアンミュージックを組み合わせたエキゾチックなプログラムで、SPの「ボレロ」同様にゆったりとしたコスチュームを着用したトゥクタミシェワ選手。色は深みのある紫で、身体にぴったりと密着するレオタード型の衣装の上に、ふんわりとしたシースルー生地を重ねています。袖はドルマンスリーブ風で、袖というより一枚の布を身体に巻きつけているようなシンプルさですね。そしてスカートもスカートというより布の余りが垂れ下がっているようなデザインで、身体の右側の生地は短く、身体の左後ろ側の生地は長めで風になびくようになっています。演技をスタートする時のポーズはこのスカートのスリットから左脚の太ももをのぞかせるという印象的な始まり方で、衣装の特徴を演技にも巧く活かしていますね。装飾は中東っぽい金色のビジューを首元から胸元にかけてと、ワンポイントで左の腰の部分にとゴテゴテしすぎない程度にバランス良くあしらっていて、装飾の数としては控えめながらも効果的なアクセントとなっています。
 アラブの民族衣装のたっぷりとした布づかいを用いつつ、妖艶な魅力も十二分に引き出す、オリジナリティー溢れる素晴らしい衣装ですね。


 4位は日本の宮原知子選手の「ミス・サイゴン」です。

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 ベトナムを舞台にしたミュージカル『ミス・サイゴン』のサントラを使用したプログラムということで、コスチュームはベトナムの民族衣装アオザイをイメージ。立て襟に長袖、身体にぴったり沿ったフォルムで、アオザイの形をあまり変えることなくほぼそのままという感じですね。そこに白い花と花からのびる蔓のような曲線のラインが刺繍されていて、素朴な絵柄がプログラムの雰囲気、空気感に合っていると思います。衣装が全身真っ赤なので、装飾はこれくらい控えめな方がバランスも取れて、過剰な派手さもなくて良いですね。


 5位は韓国の朴小宴(パク・ソヨン)選手の「映画『ロミオとジュリエット』より」。

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 「ロミオとジュリエット」は多くのスケーターが使用している定番中の定番プログラムですが、朴選手が使用したのは2013年に公開された映画のサントラで、最も有名な1968年公開の映画やバレエ、クラシックの“ロミジュリ”とは一味違った趣きになっています。
 それを表してか衣装も“ロミジュリ”にしては珍しく黒一色。ただ、デザイン的にはコスチュームの形も上半身部分の模様も左右対称でヨーロッパらしさ満載で、中世の高貴な女性が着用するドレスのような雰囲気を漂わせています。また、上の写真では分かりませんが、背中は紐をクロスさせた編み上げ風のデザインになっていて、細部まで本格的な作りになっています。


 6位は日本の今井遥選手の「ジゼル」。

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 「ジゼル」は“バレエ・ブラン=白のバレエ”ともいわれるロマンティック・バレエ作品の一つで、その名のとおり白い衣装が特徴となっています。それに見習って今井選手もバレエ風の白いドレスを着氷しています。衣装の形としてはバレエでも多く使用されるストラップレス型で、写真では見切れてますがスカートはロマンティック・バレエらしくふんわりとした長めのもの。二の腕部分には控えめにフリルの飾りがつけられていて、これもバレエっぽいですね。そして、白一色でも素敵なところですが、お腹の部分を淡いブルーの花柄にすることでオリジナリティーを生み出しています。また、花柄とはいっても小花柄ですので華美過ぎず、村娘ジゼルの雰囲気にピッタリ合ったほどよい華やかさになっていると思います。


 7位はアメリカのグレイシー・ゴールド選手の「オペラ座の怪人」。

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 14/15シーズン、日本の選手を中心にブームとなった「オペラ座の怪人」。ゴールド選手は女性ボーカルが歌うバージョンを使用し、ヒロインのクリスティーヌを演じました。
 衣装はシーズンを通して4パターンを着用。一つ目はGPシリーズと全米選手権で使用した写真のもの、二つ目は写真のものと酷似しているもののネックラインがUネックになっている四大陸選手権で着た衣装、三つ目は世界選手権で着たもの、四つ目は世界国別対抗戦で着たものです。その中で私が最も好きなのがシーズン前半に使用した衣装です。色は大人びたパープルで、上半身はスパンコールやビジューなどでデザインした花柄になっています。布ではなく細かな装飾で花柄を形作ることで、遠目から見るとレース生地のように見えます。シックな色合いに加え大ぶりな花柄ではあるのですが、レースっぽいデザインになっていることで軽やかさが生まれていて、重厚さもありつつもすっきりとした衣装になっているなと思います。


 8位は日本の本郷理華選手の「カルメン」。

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 王道の「カルメン」を使用したプログラムですが、コスチュームも比較的オーソドックスなデザインとなっています。色は黒と赤で、スペインを舞台にした作品のイメージを最もよく表わす定番の色づかいですね。そして、襟元や胸元の模様は唐草模様っぽいエスニックなデザインで、そのあたりでも異国情緒漂うスペインの雰囲気を反映させています。そうした中で特徴的なのが衣装の素材で、光沢のあるつるっとした感じの生地を使っています。もちろんこれは普通の柔らかい感じの生地でも良いのでしょうが、あえてこうしたハードな印象を与える生地を使うことで、「カルメン」という重厚感たっぷりのプログラムにふさわしい重々しさが衣装からも感じられて良いと思いますね。


 9位はアメリカのアシュリー・ワグナー選手の「映画『ムーラン・ルージュ』より」。

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 『ムーラン・ルージュ』のサントラはフィギュア界でも頻繁に使用されますが、ワグナー選手は女性ボーカルの入ったものを使用。ダイナミックでありながらも女性的なエレガンスさ、ロマンティックさもあるプログラムです。
 衣装は身体にぴったり沿ったノースリーブのワンピースで、生地はほどよい光沢のある質感の真紅です。その中に刺繍で細いラインが描かれていたり小さなビジューが施されていたりと繊細な工夫がなされていて、単なる赤一色ではないよく考えられた衣装になっていると思います。映画の中でヒロインを演じるニコール・キッドマンが似たようなドレスを着ていて、それをモデルにしたのかどうかは分かりませんが、映画の世界から飛び出してきたような雰囲気がありますね。また、首元のネックレス風の装飾も映画の中に似たものが登場していますが、ドレスのみよりもさらに華やかさが増すので良いですね。


 10位はフランスのマエ=ベレニス・メイテ選手の「Conquest of Spaces/Shadows/Run Boy Run」。

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 フランスのミュージシャン、Woodkidの楽曲を使ったプログラムで、ジャンル的にはバロック・ポップなどとウィキペディアでは書かれています。バロック・ポップはクラシックの要素をロックミュージックに取り入れた音楽のことをいうのだそうですが、メイテ選手のこのプログラムもクラシカルな部分もありつつも、一部にボーカルも入り、良い意味でとらえどころのない不思議な世界観の作品となっています。
 衣装は優雅な印象を与えるロイヤルブルーで、その胸元から腹部にかけて大きく逆三角形のシルバーの装飾が施されています。この装飾がどことなく神秘的な印象を与えて、ミステリアスなプログラムのイメージをより高めています。また、写真では見えませんが背中にもシルバーで菱形を二つ連ねたような独創的なデザインがなされていて、基本的にはシックな青でエレガントさを醸しつつも、メタリックな銀色を効果的に使って現代的なイメージも想起させる衣装にしていますね。



 さて、女子フリー部門のベスト10はこれで以上です。続いてはペアのSPの衣装のベスト10を取り上げたいと思いますので、またしばらくお待ちください。


:記事冒頭の写真はフィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから、長洲選手の写真はエンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、永井選手の写真はフィギュアスケート情報ウェブサイト「Absolute Skating」から、トゥクタミシェワ選手の写真は毎日新聞のニュースサイトが2015年3月26日に配信した記事「世界フィギュア2015 羽生は銀 女子は10年連続メダル」から、宮原選手の写真、今井選手の写真、本郷選手の写真はスポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、朴選手の写真は韓国の新聞「東亜日報」のニュースサイトの英語版が2015年2月16日の7:37に配信した記事「Park So-youn ranks in 9th at ISU figure skating competition」から、ゴールド選手の写真はアメリカの新聞「シカゴ・トリビューン」のニュースサイトが2014年12月4日の11:36に配信した記事「Gracie Gold withdraws from Grand Prix finals with injury」から、ワグナー選手の写真はAFPBB Newsが2015年1月25日の17:30に配信した記事「ワグナーが文句なしの優勝、ベテランの貫禄みせる フィギュア全米選手権」から、メイテ選手の写真は写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2015-05-11 16:21 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

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 14/15シーズンも終わり、フィギュアスケート界はシーズンオフに入っています。ということで、前年同様、14/15シーズンの選手たちが使用した衣装をランキング形式で振り返るベストコスチュームシリーズをお送りしたいと思います。男女シングル、ペア、アイスダンスの4種目のショート、フリーそれぞれのベスト10を選びました。あくまで、独断と偏見による個人的趣味の好きな衣装ベスト10ですので、軽い感じで見て頂ければと思います。なお、衣装を選ぶにあたって以下のようなルールを、昨年同様に設けました。


●14/15シーズンに着用された衣装が対象。
●グランプリシリーズ、欧州選手権、四大陸選手権、世界選手権、世界国別対抗戦に出場した選手の、該当する大会で使用された衣装のみが対象。
●1選手1着のみに限定。1つのプログラムで複数の衣装が使用されている場合も、選ぶのは1着のみ。1人の選手が複数のプログラムを使用している場合も、1着のみとする。
●14/15シーズンに使用された衣装でも、それ以前のシーズンに試合で使用されたことのある衣装は除外する。



 こんな感じで進めていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
 ということでベストコスチューム14/15、一つ目の記事は女子のショートプログラム部門です。

*****

 まず1位は、フランスのマエ=ベレニス・メイテ選手の「Hosanna/The Groove You Liked (Mala Dub)/Freedom」。

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 プログラムは3つの楽曲を組み合わせていて、冒頭は穏やかな女性ボーカルによるゴスペル、最初のジャンプを跳んでからはオリエンタルな雰囲気漂うインストゥルメンタル曲、終盤のステップシークエンスのパートは、国際スケート連盟の公式プロフィールでは“Freedom”となっていますが、正式名は「Think」で、アメリカを代表するシンガー、アレサ・フランクリンの楽曲です。
 一見バラバラな印象のある複数の曲を繋ぎ合わせているのですが、コスチュームはどの曲にもしっくりくるバランスの取れたデザインになっています。色はクリーム色でところどころに流線型のラインが入り、スカートは薄い素材かつ裾がお花のように象られたデザインで、軽やかでエレガンスな印象を与えます。その一方で肩の部分や上半身には生地と同系色の装飾がたくさん散りばめられており、しっかり華やかさもあります。ラインを縁取るような金色のビジューはプログラム中盤のアジアっぽさを思わせるような色づかい、装飾づかいですし、同系色でまとめた上で装飾的という“シックな派手さ”は、プログラム終盤のアレサ・フランクリンのボーカルのソウルフルなイメージともぴったり合っていますね。


 2位はアメリカの長洲未来選手の「パガニーニの主題による狂詩曲」です。

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 楽曲はラフマニノフの代表曲ということで正統派のクラシカルプログラムです。それに合わせて衣装も比較的シックで落ち着いたものとなっています。カラーは紫で片腕だけ長袖というデザイン。そこに胸からお腹にかけて縦断するように流線型のラインが走っています。そのラインに沿ってラインストーンで細い線がいくつも描かれていて、ラインから火花がほとばしるような、そんなデザインにも見えます。上の写真では見えにくいですが、両腕にも同じようなデザインが施されていて、全体を見ればとてもシンプルなコスチュームなのですが、この火花のようなデザインがうまくアクセントになっていて、派手派手しさはないけれど非常に綺麗で印象に残る、「パガニーニの主題による狂詩曲」というしっとりとしながらも情熱的な部分もある曲のイメージを見事に表現したコスチュームだなと思いますね。


 3位は日本の今井遥選手の「マラゲーニャ」。

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 「マラゲーニャ」はキューバ出身の音楽家、エルネスト・レクオーナ作曲のスペイン風楽曲で、フィギュア界ではしばしば使用される定番の曲ですが、今井選手はギリシャ出身の世界的歌手、ナナ・ムスクーリが歌う歌詞付きのものを使用しました。
 ということで衣装も赤と黒をベースに用いたいかにもスパニッシュな色づかいとなっています。コスチュームの形としてはシンプルな長袖、左右対称の作りですが、首元からお腹にかけていくつか真っ赤なバラがあしらわれていて、それがこのワンピースのポイントとなっていますね。単にぽつぽつとバラを配置するだけだとバラが悪目立ちしてしまいそうですが、バラの花びら風に赤い刺繍がところどころ散りばめられていたり、白(シルバー?)の刺繍もバランス良く織り込まれていたりと、バラがデザインの中に絶妙に溶け込むような感じになっています。バラを巧く生かして華やかさを醸し出しつつも、全体的には黒をベースにしているのでシック、というバランスが素晴らしい衣装だと思います。


 4位はスウェーデンのヨシ・ヘルゲソン選手の「ブラックバード」です。

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 「ブラックバード」はビートルズの名曲ですが、ヘルゲソン選手が使用しているのは女性が歌っているバージョンで、ウィキペディア日本語版によればアメリカの女性歌手、ディオンヌ・ファリスが歌っているのだそうです。タイトルのとおり鳥がモチーフになっていて、ヘルゲソン選手のプログラムでも鳥っぽい振り付けを多用していて、独特な印象深い作品となっています。
 そんなプログラムに負けず劣らずインパクト抜群なのがコスチューム。「ブラックバード」の名のとおり黒を基調として、脇腹、腕の部分を肌色がのぞくボーダー柄にするという独創的なデザインです。こういった普通の服っぽい柄を用いると、ともすればチープだったりキッチュだったりになり兼ねないのですが、ボーダーを部分的な使用にしたり、色も黒と白などではなく黒とシースルー風のヌーディー生地のボーダーにして色味を抑えたりしたおかげか、全然そういった安っぽさはなく、むしろコンテンポラリーな雰囲気のおしゃれなドレスとなっています。また、ボーダーもただ縞々にするだけではなく縁取りにシルバーをあしらうという繊細な工夫がなされていますし、胸元の控えめな3個のビジューもちょっとしたアクセントではあるのですが、あるのと無いのとでは印象が全く違うと思います。そういったパッと見では分からないような作りの細かさが、この衣装の垢抜けた雰囲気、モダンなイメージを生み出しているのかなと思います。


 5位はカナダのガブリエル・デールマン選手の「冬 『四季』より/アート・オン・アイス』。

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 ヴィヴァルディの『四季』の「冬」をメインに使用したプログラム。衣装もまさに“冬”といった感じとなっています。雪を思わせる白一色で、その中にビジューでアクセントを付けたり、ラインストーンで細かな模様を付けたりしています。特にこの模様は、見ようによっては凍った湖や池などの表面に割れ目が入ったときのようなデザインに見えなくもなく、このシルバーがかった幾筋ものラインによって、シンプルな白一色の中に変化をつけていますね。また、さらにこの衣装において特徴的なのが襟元で、立ち襟でそこにファーっぽい生地をあしらっていて、それがより冬っぽさを漂わせているなと思います。そしてワンピースだけでなく、お団子のところにちょこんと乗せた小ぶりなティアラも可愛らしくて印象に残りました。


 6位は日本の本郷理華選手の「海賊」。

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 使用曲の「海賊」はバレエ。作品の舞台はギリシャ近辺なので実際のバレエではエキゾチックなコスチュームが使われることも多いようですが、本郷選手がプログラムで使用している部分はそこまで異国情緒漂うという雰囲気でもないので、衣装もいかにもギリシャっぽいとかエスニックという感じではありません。ただ、じっくり見ると胸元や腰の辺りに施されている刺繍がイスラムのアラベスク模様っぽくて、ワンピースの形や色ではなく、細かい模様でエキゾチックさを醸し出していますね。また、上の写真では見にくいですが、頭に二重三重に巻きつけたようなシルバーのヘアアクセサリーをつけていて、これもエキゾチックなイメージを作り出すのに重要な役割を果たしていると思います。


 7位は中国の李子君(リ・ジジュン)選手の「花のワルツ バレエ『くるみ割り人形』より」。

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 13/14シーズンのベストコスチューム記事でもショート、フリーともにピンクを使った衣装でランクインした李選手ですが、14/15シーズンもショート、フリー両方ともピンクのコスチュームでプログラムを演じ切りました。
 このSPはバレエの大定番『くるみ割り人形』の、その中でも特に知られた名曲「花のワルツ」ということで、前面に可愛らしさ、華やかさを押し出した衣装ですね。色は濃いめのピンクで派手めで少し光沢があります。こういった生地・色のものだと着る人によってはキッチュになり過ぎたりしそうですが、李選手が漂わせる気品のなせる業か、とても上品に着こなしています。また、遠目から見るとよくわからないのですが、じっくり見ると胸、お腹、スカート部分と、下にいくにつれ微妙なグラデーションになっていて、全く同じピンク一色になっていないのがへたにキッチュにならない秘密なのかもしれません。そして胸部はシルバーのラインがざっくりと入ることでアクセントとなり、さらに襟ぐり、袖にシルバーのキラキラが散りばめられていてお姫さまっぽい高級感が加えられているのも良いですね。


 8位はロシアのエリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手の「ボレロ」。

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 14/15シーズンの顔となったトゥクタミシェワ選手ですが、衣装の面でもSP、フリーともに女子スケーターでは珍しいタイプのコスチュームを使用し個性を発揮しました。
 ショートの衣装は黒一色。ですが、透け感のない生地の上に同色のシースルーの生地を重ねたように見える一工夫あるデザインとなっています。普通女子選手は身体にぴったりとフィットした衣装を着ることがほとんどですが、トゥクタミシェワ選手の場合はゆったりとした生地で身体のラインを隠しています。その一方で生地はうっすら透けるので、ちょっとドキッとするようなセクシーさもあります。こうしたデザインにどういう意図があってというのは分かりませんが、「ボレロ」というフィギュア界の王道プログラムに対し、音楽を邪魔しないというのがこの黒一色という色づかいからは推測できます。この点では12/13シーズン、13/14シーズンとフリーで「ボレロ」を滑ったイタリアのカロリーナ・コストナー選手の衣装と共通します。ただ、そこで単なる黒い衣装とせず、衣装のフォルム、生地の使い方で一捻りしたことが、シンプルでありながら個性的というところに繋がっていますね。


 9位はアメリカのポリーナ・エドマンズ選手の「Buleria/Tango Serenata/Introduction to Buleria」。

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 3曲を編集したアップテンポなラテンプログラム。曲の中にはタンゴも含まれていますが、プログラム全体の統一イメージとしてはフラメンコがコンセプトだと思われます。
 カラーはフラメンコのステレオタイプなイメージとは異なる寒色の青。上半身は編み編みのレース風でそこに花があしらわれています。花は単発でチラホラというより上半身全体にたっぷりと施されていますが、同系色で衣装の中に花が溶け込むようにデザインされているので、変にうるさくもなく、花柄を巧く工夫しているなと思います。そしてスカートも上にレース生地を重ねたデザインで、こちらも王道のフラメンコらしさをあえて外しています。そんな中でいかにもフラメンコらしいのは袖口の広がった2段フリル。これがあることによってフラメンコらしさがぐっと増していますね。
 ブルー一色にレース生地という一見フラメンコっぽくないこのコスチュームですが、このプログラムはフラメンコではあるものの情熱的というよりは哀愁の印象が強く、たとえば14/15シーズンの同じフラメンコプログラムでいうとロシアのエレーナ・ラディオノワ選手のSPはよりダンサブルかつ熱狂的で、それと比べるとエドマンズ選手のものは比較的クールで、青い衣装がしっくりきますね。また、ピアノがメインのプログラムでもあるので、そういった意味でも正統派のフラメンコとは一味違っていて、衣装もそれに合わせて工夫しているんだなというのを感じました。


 10位はフィンランドのキーラ・コルピ選手の「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」。

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 12/13シーズン以来の競技復帰を果たしたコルピ選手。ショートはビートルズの名曲をアレンジしたインストゥルメンタル曲で、ギターの音色が主となっています。
 ロック音楽ということでコスチュームも黒をベースにしたマニッシュ&クールなデザイン。左側だけが長袖で、そのキラキラとラメが施された生地をリボンのように上半身からスカートにあしらっています。ハードな印象の強いデザインですが、ベースの生地自体は柔らかい素材のものを使っていること、同じ黒一色ではなくて黒とグレーをバランス良く配置していることで、ハードになり過ぎない工夫がなされています。また、異素材を合わせることでほぼ一色だけという色づかいの中にも変化が生まれていて、よく練られた素晴らしい衣装だと思いますね。



 女子ショートプログラム部門は以上です。女子フリー部門に続きます。


:記事冒頭の写真はフィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから、メイテ選手の写真、本郷選手の写真、エドマンズ選手の写真はエンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、長洲選手の写真はAFPBB Newsが2015年10月26日の16:33に配信した記事「トゥクタミシェワが女子SP首位、スケート・アメリカ」から、今井選手の写真はフィギュアスケート情報ウェブサイト「Absolute Skating」から、ヘルゲソン選手の写真はヘルゲソン選手の公式ウェブサイトから、デールマン選手の写真は写真共有ウェブサイト「Pinterest」から、李選手の写真はスポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、トゥクタミシェワ選手の写真は、AFPBB Newsが2015年4月17日の8:48に配信した記事「羽生が男子SP首位、日本は総合2位発進 フィギュア国別対抗戦」から、コルピ選手の写真はフィンランドのテレビ局「MTV3」の公式ウェブサイトが2015年1月31日に配信した記事「Kiira Korpi vetäytyi EM-kisojen vapaaohjelmasta」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2015-05-07 18:43 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)