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※2015年11月1日、今井選手のフリーの写真を変更しました。

 15/16シーズンの本格的な開幕を告げるグランプリシリーズがいよいよ始まりました。第1戦はアメリカ大会です。
 女子を制したのは今季からシニアに本格参戦する昨季のジュニア女王、ロシアのエフゲニア・メドベデワ選手です。GPデビューにしていきなりの優勝という快挙を成し遂げました。2位に入ったのは地元アメリカのグレイシー・ゴールド選手。そして、3位に世界選手権銀メダリスト、日本の宮原知子選手が入りました。
 ペアでは中国の隋文静&韓聰組が2位に大差をつけてGP初優勝を果たしました。

ISU GP 2015 Progressive Skate America この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 金メダルを手にしたのはこれがGPデビューのエフゲニア・メドベデワ選手です。

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 SPは「映画『白夜の調べ』より」。冒頭はまずスピンから入る斬新な構成。続いて細かなターンやステップを織り込んだステップシークエンスをこなし、後半に入ったところでようやく初めてのジャンプ。1つ目の3フリップ+3トゥループをクリーンに決め、次の2アクセル、3ループも確実に着氷。最後まで勢いのある演技で、パーソナルベストとなる70.92点をマークしました。
 フリーは「Dance For Me Wallis 映画『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』より/Allegro/Charms 映画『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』より」。冒頭は得点源となる3フリップ+3トゥループ、これをショート同様パーフェクトに決めると、多少苦手としている3ルッツも成功。スピンとステップを挟んだ後半に5つのジャンプ要素を固める難構成で、3フリップ、3ループと続けて着氷。2アクセルは転倒となりますが、3サルコウ+3トゥループ+2トゥループの難しい連続ジャンプを完璧に降り、最後の2アクセル+2トゥループも難なく跳ぶと、若干悔しさをにじませながらも笑顔でフィニッシュしました。得点はこちらも自己ベストの135.09点、トータルでも自己新となり、金メダルを獲得しました。
 昨季のジュニア界を席巻し、鳴り物入りでシニアに参戦したメドベデワ選手ですが、期待にたがわぬ演技を見せてくれましたね。メドベデワ選手の演技をショート、フリー通してしっかり見るのは初めてだったのですが、どちらもしっとりとした曲調のプログラムで、エレガンスで柔らかな表現に品格があり印象的でした。フリーは最終滑走、しかも大歓声に包まれたゴールド選手の直後の滑走でさすがに緊張感が伝わってきましたが、それでもしっかり演技をまとめていて、ハートの強さを感じましたね。ジャンプ構成もフリーに2つの3+3を組み込む意欲的な構成で、現在の若さならではの強みを生かしていましたね。また、元々アウトエッジで踏み切るルッツをインサイドで踏み切る癖があったのが今季は改善されていて、シニア参戦に向けてレベルアップしてきたのがうかがえました。
 いきなりの優勝と輝かしいデビューを飾ったメドベデワ選手。次戦は地元のロシア大会。今大会以上に注目が集まるでしょうが、またのびのびとした演技を見せてほしいなと思います。


 銀メダルを獲得したのはアメリカのグレイシー・ゴールド選手です。

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 ショートはタンゴの名曲「エル・チョクロ」。まずは大技の3ルッツ+3トゥループを完璧に決めると、2つのスピンも高い加点が付く美しい出来栄え。後半に2つのジャンプ要素を固め、まずは3フリップからでしたが、回転が抜けて2回転に。続く2アクセルは問題なく降りましたが、3フリップのミスが響いて65.39点の2位に留まりました。
 フリーはフィギュア界王道の「火の鳥」。冒頭は前日鮮やかに決めた3ルッツ+3トゥループ、これを再びクリーンに成功させ、続く3ループ、2アクセルも確実に着氷。後半に入っても2アクセル+3トゥループ+2トゥループの3連続コンビネーション、3フリップ+2トゥループなど次々とジャンプを成功させ、最後の3サルコウが2回転になる思いがけないミスはあったものの、フィニッシュまでスピード感溢れる力強い「火の鳥」を演じ切り、満足そうな笑みを浮かべました。得点は137・41点でフリー1位、総合2位となりました。
 10月上旬のジャパンオープンでは時期が早すぎて本調子でない演技でしたが、ここに来てやはりきっちり合わせてきましたね。また、SPもフリーもこれまでのイメージに新たな魅力を加える内容になっていて、ゴールド選手らしいお姫様のような華やかな雰囲気を活かしつつも、より力強さや激しさを強調していて、さらに滑り慣れてくる今後が楽しみだなと感じました。


 銅メダルを手にしたのは日本の宮原知子選手です。

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 SPは「ファイヤーダンス 『リバーダンス』より」。冒頭は3ルッツ+3トゥループの難しい2連続3回転、これをきっちり回り切って降ります。2つのスピンとステップシークエンスを挟んだ後半、比較的不得意な3フリップは一見きれいに着氷したかに見えましたが、踏み切り時のエッジのミスと回転不足により減点となります。最後の2アクセルは難なく成功させ、情熱的な演技を披露しました。ただ、得点は細かなジャンプミスが影響し65.12点と伸び切りませんでした。

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 フリーはフランツ・リストのピアノ曲「ため息」。3+3を入れない構成で臨み、冒頭は3+2+2の3連続ジャンプを堅実に成功させます。続く3ループは難なく降りましたが、前日ミスがあった3フリップは再び回転不足と判定されます。後半に入って最初の3ルッツも回転不足で珍しく転倒してしまい暗雲が漂いますが、直後の2アクセル+3トゥループをクリーンに着氷。その後も3サルコウ、2つ目の2アクセル+3トゥループと相次いで完璧に降り、立て直して演技を終えました。得点は122.95点、トータルでは188.07点でGP3度目の表彰台となりました。
 ショート、フリーともにジャンプミスがあり、宮原選手本人は納得いかない内容だったと思いますが、その中でも宮原選手の新たな魅力が伝わってきました。SPはタイトルのとおり情熱的で激しさが特徴的なプログラムで、宮原選手がこれまで演じた中ではシニア1年目のフリー「ポエタ」に近いイメージかなと思うのですが、その時と比べると明らかに表現が力強くなっていて印象に残りました。元々目が大きくて印象的な選手ですが、さらに目力が際立っていたというか、ジャッジへの目線の送り方だったりぐっと見つめるところだったり、以前の控えめなイメージからするとだいぶ表現が積極的になったなと思いましたね。こんな言い方をすると語弊があるかもしれませんが、想像した以上にこのダンサブルなプログラムがさまになっていましたし自分のものにしていたので、この後さらに滑り慣れてきてもっともっと良くなると思うと楽しみですね。
 フリーの方はジャパンオープンの再演とならず残念でした。特に中盤の3ルッツの転倒はめったに転ぶことのない宮原選手にしては珍しい形のミスでとても意外でしたが、選手自身が言うように慎重さが見て取れましたね。ただ、宮原選手の凄さは1つのミスをその後に引きずらないということで、ジャンプやスピンなどエレメンツもそうですが、滑りや表現の面でも決して雑になったり疎かになったりしないところが、素晴らしいなと今回改めて思いました。
 宮原選手の次戦は約1か月後のNHK杯。かなり間が開いてしまいますが、うまく調整して今大会での悔しさを晴らしてほしいですね。


 4位に入ったのはカザフスタンの新星エリザヴェート・トゥルシンバエワ選手。

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 SPの演目は「悲しみのクラウン」。冒頭は得意の3ルッツ+3トゥループでしたが、ルッツの着氷で乱れてしまい単独に。そのため後半の3フリップに急遽3トゥループを付けて挽回しようとしますが、2つ目のジャンプが回転不足となります。最後の2アクセル、スピンは綺麗にこなしましたが、ジャンプミスが響き59.26点で7位発進となりました。
 フリーは昨季からの持ち越しとなる「パパ、見守ってください 映画『愛のイエントル』より」。冒頭の3+2+2を丁寧に決めると、続く3ルッツも成功。しかし、続く3フリップは回転はしていたものの転倒していまいます。ですが、後半は3サルコウ+3トゥループ、2アクセル+3トゥループを含む難しい構成をしっかり滑り切り、パーソナルベストとなる119.30点をマーク、上々のGPデビュー戦となりました。
 メドベデワ選手同様に今季からシニアに移行したトゥルシンバエワ選手。ショート、フリーともに多少ミスはありましたが、そのまま崩れることなくすぐに切り換えて演技していたのが印象に残りました。さらに印象深かったのが滑りのスピード感で、141センチという小柄な身体と今にも折れそうな華奢な脚のどこにあれほどのパワーが秘められてるんだろうと不思議なくらいです。外見だけ見るとノービスの選手といわれても分からないくらいですが、表情だったりリンク上での佇まいだったりはとても大人びていて、まずまずの好演技だったにもかかわらず全く表情を緩めることもなく、自分に厳しいんだなという印象を受けましたし、さすがオーサーコーチの門下生だけあってただ者ではない感が漂ってましたね。
 トゥルシンバエワ選手の次戦は今週末のカナダ大会。今大会からほとんど間がないですが、練習拠点としているカナダでの大会ですから、彼女にとってはホームでの戦いでやりやすいんじゃないかなと思いますね。


 5位はこちらも今回がGPデビューのアメリカのカレン・チェン選手です。

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 ショートプログラムは「誰も寝てはならぬ オペラ『トゥーランドット』より」。まずは得点源の3ルッツ+3トゥループからでしたが、2つ目のジャンプがわずかに回転不足となり減点を受けます。しかし、後半の3ループ、2アクセルはクリーンに着氷。スピンは全てレベル4を獲得するなど本領を発揮し、自己ベストに迫る64.28点で4位と好発進しました。
 フリーは「レ・ミゼラブル」。冒頭は3+3の予定でしたが、1つ目の3ルッツの着氷で乱れてしまいセカンドジャンプに繋げられません。続く3フリップ、中盤の2アクセル+1ループ+3サルコウは決めましたが、後半に入って1発目の3ループと終盤の3ルッツで転倒してしまい、ほろ苦い演技内容となりました。得点は110.26点でフリー6位、総合5位でGPデビュー戦を終えました。
 ショートは緊張の中でものびやかに演技できていたと思うのですが、フリーでは3つのジャンプミスがあり緊張の方が勝ってしまったのかもしれません。まだ今季は武器となる大技の3+3を完璧に決めていないので、その大技の確実性も今後重要になってくるでしょうが、シニアに上がってフリーの演技時間が長くなった分の後半のスタミナも課題かなと思います。ただ、決まったジャンプの流れやスピンの巧さ、身のこなしの美しさなどは申し分なく、ジャンプが決まってくるともっと良くなるんだろうなというのがうかがえたので、次の中国杯に期待したいですね。


 6位は2014年世界選手権銀メダリスト、ロシアのユリア・リプニツカヤ選手です。

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 SPはエルヴィス・プレスリーの「好きにならずにいられない/悲しき悪魔」。演技冒頭は3トゥループ+3トゥループを丁寧に決め上々のスタートを切りましたが、続く3フリップはアンダーローテーション(軽度の回転不足)で減点。2アクセルは問題なく降りミスを最小限に抑えたものの、得点は62.24点とあまり伸びず5位となりました。
 フリーは「Leningrad」。まずはショートでミスのあった3フリップからでしたが、前日に引き続きこちらも回転不足となります。続く3ルッツが1回転となると、その後も2つ目の3フリップや2アクセルなどでミスが散見され、精彩を欠いた内容で本来の出来とはならず、得点は108.39点でフリー7位、総合6位に順位を落としました。
 昨シーズンは身体の成長によるジャンプの不調に陥っていたリプニツカヤ選手ですが、今大会の演技を見る限りまだその霧の中から脱出できていないのかなという感じでしたね。昨季以上に顔も体つきもふっくらとして、急激な成長になかなかジャンプ技術が追いついていかない状況なのでしょう。その分ジャンプ構成もレベルを落として臨んでいましたが、まだ少し時間がかかりそうだなと感じました。そんな中でプログラム的には新しい表現にも挑戦しようとしていて、特にSPのプレスリー・メドレーはクールなイメージの強いリプニツカヤ選手にしては珍しいポップな曲調、ポップな衣装で新鮮でしたが、ちょっとまだしっくり来てない感じがしましたし、リプニツカヤ選手が本来持っている良さを活かし切れてない気もして、かわいいんだけれども個人的にはう~んという感想を抱きました。ただ、滑り続けていくうちに印象も変わってくるでしょうし、ジャンプが伴ってくれば選手自身のノリも良くなってくると思うので、そういった部分に期待したいですね。


 日本の今井遥選手は10位となりました。

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 SPは昨季と同じ「マラゲーニャ」。まずは得意の2アクセルをクリーンに決めて流れを作ると、続いて得点源となる3サルコウ+3トゥループも完璧に成功。上々の前半となりましたが、後半の3フリップは回転不足で着氷が大幅に乱れます。そのほかのステップシークエンスやスピンなど大きな取りこぼしなく演技をまとめましたが、ジャンプミスが影響して得点は56.52点で9位発進となりました。

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 フリーは2シーズン前のフリーと同じ楽曲「ピアノ・コンチェルト」。演技序盤に得点源の連続ジャンプを固めた構成で、2アクセル+3トゥループ、3+2+2を確実に降り好スタートを切りましたが、続く3ルッツはエッジエラーとなり減点。後半に組み込んだ2つ目の2アクセル+3トゥループはセカンドジャンプが回転不足となると、その後の3つのジャンプも全て減点される出来となってしまい、フィニッシュした今井選手は顔を曇らせました。得点は102.13点でフリー10位、総合10位で大会を終えました。
 今シーズンの今井選手はショートは昨季からの持ち越し、フリーは2季前のプログラムのアレンジで、滑り慣れたプログラムにすることでより安定を追求しようという考えがうかがえます。SPの3+3、フリーの1つ目の2アクセル+3トゥループはとてもきれいに決まっていて、ジャンプ一つ一つを成功させることに関しては問題ないのだと思いますが、プログラムの流れの中で連続してジャンプを跳ぶ時の立て直し方だったり切り換えだったりが課題になってくるのかなと思います。今回は演技序盤のジャンプが決まっていただけにその後に崩れてしまったのがもったいなかったですね。でも、さすがにプログラムにはこなれ感があって今井選手らしさがよく出ていたので、次戦のフランス大会では今井選手の笑顔が見られることを願っています。


 GPデビューとなった中塩美悠選手は11位となりました。

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 ショートは「Gopher Mambo/Taki Rari」。冒頭の3トゥループ+3トゥループは高さと流れのあるパーフェクトなジャンプで高い加点を得ます。続く3フリップも目立ったミスはありませんでしたが、着氷が微妙に詰まり減点に。また、後半のフライングキャメルスピンでもぐらつきがあり、完璧な演技とはならず。ですが、得点は57.01点でパーソナルベスト、8位につけます。

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 フリーは大定番の「シェヘラザード」。まずはショートより難度を上げた3+3にチャレンジしましたが、ファーストジャンプの着氷で乱れ単独に。続く3+2の連続ジャンプは成功させましたが、直後の3ループは転倒となります。その後もジャンプ、スピンでもらしくないミスが続き、演技を終えた中塩選手は悔しそうに顔を歪めました。得点は96.28点でフリー11位、総合11位とほろ苦いGPデビューとなりました。
 初めてのGPということで多少硬さが見られ、また、足を痛めているということでスピンでもところどころぐらつく場面があるなど実力を出し切った演技とはならなかったのですが、その中でもダンサブルな中塩選手らしいノリや動きの良さが垣間見え、プログラムも中塩選手にぴったり合っていて、今後が楽しみになりました。中塩選手のGPはこの1試合のみですが、今大会での経験を糧にこの後のシーズンも頑張ってほしいと思います。


 ここからはペアです。

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 優勝は中国の隋文静(スイ・ウェンジン)&韓聰(ハン・コン)組。SPはソロジャンプやスロージャンプなど難しい技はしっかりと決めましたが、ペアスピンで珍しく回転が乱れ無得点になるミス。得点は68.28点と自己ベストに遠く及びませんでしたが、それでも1位と僅差の2位につけます。フリーでは4ツイストや難度の高いスロージャンプなど、ハイレベルな演技できっちり挽回しフリー1位、逆転優勝となりました。
 シーズン初戦とあってらしからぬミスもチラホラありましたが、このペアのことですからシーズンを追うごとににレベルも精度もどんどん上がっていくでしょうね。そして、意外なことに今回がGP初優勝。とっくに優勝は経験しているものと思っていましたが、これまでは2位や3位ばかりだったんですね。昨シーズン念願の世界選手権メダリストとなって一回りも二回りも大きくなった隋&韓組。世界の頂点を目指す今季は表現面でも新たなことにチャレンジしていて、楽しみです。
 2位は地元アメリカのアレクサ・シメカ&クリス・クニーリム組。ショートではソロジャンプで小さなミスがあったものの大きく自己ベストを更新し首位発進、フリーはソロジャンプやスロージャンプでのミスが目立ちフリーのみの順位では4位でしたが、ショートのアドバンテージを活かし、自身GP初となるメダルを獲得しました。
 昨シーズン初めて全米王者となり、世界選手権でも初入賞するなどステップアップしたシメカ&クニーリム組。今大会の結果によって初めてGPの表彰台に上がり、昨季以上の飛躍を予感させるスタートとなりました。フリーは表彰台への意識があったのかミスが多かったですが、銀メダルという結果が彼らにとって今シーズン戦っていく上で大きな自信、財産になっていくのではないかと思います。
 3位は今季が本格的なシニア参戦となるカナダのジュリアン・セガン&シャルリ・ビロドー組。SPは全てのエレメンツで加点を得る安定した内容で自己ベストを大きく更新し上位と僅差の4位につけると、フリーではソロジャンプとスロージャンプで細かなミスはあったものの全体的に取りこぼしの少ない演技でこちらも自己ベストのフリー3位、ショートから順位を上げて銅メダルを手にしました。
 シニアのGPデビューでさっそく表彰台に乗り、ジュニアで実績を残したペアとしての底力を発揮したセガン&ビロドー組。失うものがない若いペアだからこその勢いがあるとはいえデビュー戦とは思えない安定ぶりで、この後のシーズンがさらに楽しみになりましたね。


:記事冒頭の女子シングルメダリスト3選手のスリーショット写真はスポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、メドベデワ選手の写真はスケート情報ウェブサイト「icenetwork」が2015年10月23日に配信した記事「Clean, efficient short propels Medvedeva to first」から、ゴールド選手の写真、中塩選手のSPの写真は写真画像ウェブサイト「ゲッティイメージズ」から、宮原選手のSPの写真は朝日新聞のニュースサイトが2015年10月24日の20:22に配信した記事「宮原知子、女子SP3位 スケートアメリカ開幕」から、宮原選手のフリーの写真はフィギュアスケートブログ「Europe On Ice」が2015年10月27日に配信した記事「That Was The Week That Was In Figure Skating (19-25 October 2015)」から、トゥルシンバエワ選手の写真、中塩選手のフリーの写真は国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、チェン選手の写真はフォトニュースサイト「AVAX NEWS」が2015年10月27日に配信した記事「Skate America Figure Skating Competition」から、リプニツカヤ選手の写真はソーシャルネットワークサービス「Tumblr」から、今井選手のSPの写真はインドネシアのニュース番組「Liputan 6」の公式ウェブサイトが2015年10月24日の17:01に配信した記事「Mengintip Para Wanita Cantik Berlomba Diatas Es」から、今井選手のフリーの写真は写真画像ウェブサイト「Newscom」から、ペアのメダリスト3組の写真はフィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
スケートアメリカ2015・男子&アイスダンス―マックス・アーロン選手、パーソナルベストでGP初優勝 2015年11月1日
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by hitsujigusa | 2015-10-29 16:26 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 8月下旬から10月上旬にかけて、12月に行われるジュニアグランプリファイナル(以下、JGPF)のチケットを懸けたジュニアグランプリシリーズ(以下、JGP)全7戦が7か国に渡って繰り広げられました。今回はファイナリストの顔ぶれを見渡してJGPを振り返りつつ、JGPFの行方をざっくりと展望したいと思います。

Junior Grand Prix Standings Men 男子のスタンディング(全成績)が見られます。
Junior Grand Prix Standings Ladies 女子のスタンディングが見られます。
Junior Grand Prix Standings Pairs ペアのスタンディングが見られます。
Junior Grand Prix Standings Ice Dance アイスダンスのスタンディングが見られます。

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《女子シングル》


①ポリーナ・ツルスカヤ(ロシア):30ポイント スロバキア大会優勝、ポーランド大会優勝
②マリア・ソツコワ(ロシア):30ポイント ラトビア大会優勝、オーストリア大会優勝
③白岩優奈(日本):30ポイント アメリカ大会優勝、スペイン大会優勝
④本田真凛(日本):28ポイント アメリカ大会2位、クロアチア大会優勝
⑤三原舞依(日本):26ポイント スロバキア大会2位、オーストリア大会2位
⑥アリサ・フェデチキナ(ロシア):22ポイント ラトビア大会4位、スペイン大会2位
―――
補欠⑦坂本花織(日本):22ポイント ラトビア大会2位、ポーランド大会4位
補欠⑧チェ・ダビン(韓国):22ポイント ラトビア大会3位、オーストリア大会3位
補欠⑨ヴィヴィアン・リー(アメリカ):22ポイント スロバキア大会3位、アメリカ大会3位




 女子は昨年同様、ロシア勢3名、日本勢3名という顔ぶれとなり、改めてロシアと日本、ジュニア女子2強を示す結果となりました。
 しかし、ファイナルでのことを考えると、やはり1位通過のツルスカヤ選手、2位通過のソツコワ選手が戦いの軸になってくるのではないかと思いますね。今季がJPG初参戦の14歳のツルスカヤ選手ですが、2大会ともトータルスコアは190点に迫る高得点、また168センチという高身長も相まって、ジュニアデビューとは思えない貫録さえ感じさせます。こんな選手がロシアにはまだごろごろいるのかと思うと、一体どうなってるんだろうと恐れさえ覚えますね。対照的に2位通過のソツコワ選手はJGP3年目、ジュニア界ではもうおなじみの、言い方は変ですがジュニアのベテランですね。2大会のトータルスコアではツルスカヤ選手が図抜けていますが、ソツコワ選手も2大会とも180点台超というハイレベルぶりですし、何より彼女には過去2度のJGPFの経験がありますから、確実に優勝争いに絡んでくるでしょう。また、6位通過のフェデチキナ選手も7位以下の選手をギリギリでかわしてのファイナル進出ではありますが、パーソナルベストは上述の2選手と同じくらいのスコアを持っており、やはり力のある選手と言えますね。
 一方、日本勢は白岩、本田、三原という全員JGPF初出場のフレッシュなメンバーとなりました。中でも白岩選手はJGP初参戦でいきなり2大会連続優勝という素晴らしい成績で見事な3位通過。白岩選手は昨季は全日本ノービスAで4位、全日本ジュニアで27位と決して際立って目立った成績を残したわけではなく、なので今シーズンのこの大活躍ぶりは正直意外な感じもして、まさに彗星のごとくという印象なのですが、フリーに2つの3+3を組み込む難構成をしっかりこなしていて、その確実性がこの結果に繋がっているのですね。
 こちらもJGP初参戦の本田選手。昨季の全日本ノービスA2位、全日本ジュニア4位と日本国内では実力者としてすでに知られた存在ですね。表現力に優れた選手としても評価が高く、ジャンプ的にはものすごい難しい構成を組んでいるわけではないですが、プログラムコンポーネンツ(演技構成点)はJGPに出場した全選手中4番目となる高い得点をマークしていて(1位はフェデチキナ選手、2位はツルスカヤ選手、3位は白岩選手)、自分の長所をうまく活かしていますね。
 三原選手はJGP参戦3年目にして初のファイナル出場。5位通過ではありますがトータルスコアの2大会合計では全体の3位となっていて、両大会とも大きなミスをしない安定感が目立ちますね。爆発力のある大きな武器を持っているタイプではないかもしれませんが、この安定感がファイナルでも重要な武器になるのではないかなと思います。
 補欠となったのは日本の坂本選手、韓国のチェ選手、アメリカのリー選手。3人とも22ポイントで、特に7位の坂本選手は6位通過したフェデチキナ選手と良い勝負でしたが、トータルスコアの差で惜しくも初のファイナルを逃しました。
 他方、成績上位を有望視されながらも意外な結果に終わったのが、昨季のファイナルのメダリスト、日本の樋口新葉選手とロシアのセラフィマ・サハノヴィッチ選手です。樋口選手はオーストリア大会5位、クロアチア大会2位で20ポイントとなり、2年連続のファイナル進出は残念ながら叶いませんでした。樋口選手は夏に故障をし、そのために満足な練習時間が得られなかったそうです。ただ、その中でもフリーで3ルッツ+3ループと3ルッツ+3トゥループという2つの最高レベルの3+3を組み込んだ至難のプログラムにチャレンジしていて、さらなる進化を目指す姿には頼もしさを感じますね。樋口選手のJGPはこれで終わってしまいましたが、シーズン終盤には最も重要な大会である世界ジュニア選手権もありますし、このあとのシーズンでJGPのリベンジを果たしてほしいですね。
 同様にファイナル進出を逃したサハノヴィッチ選手は2大会にエントリーしていましたが、結果的にはスペイン大会のみに出場。というのも、スペイン大会で7位という思いがけない順位になった後に急遽コーチを変更し、その調整のためにクロアチア大会を欠場したからなんですね。詳しい事情はよく分かりませんが、JGPの期間中にコーチを変更するというのは一般的なことではないので、ちょっと気になりますね。ただ、サハノヴィッチ選手も今後のシーズンでリベンジのチャンスはあるでしょうから、シーズン後半は実力者の本領発揮に期待したいですね。



《男子シングル》


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①ネイサン・チェン(アメリカ):30ポイント アメリカ大会優勝、スペイン大会優勝
②ドミトリー・アリエフ(ロシア):30ポイント ラトビア大会優勝、オーストリア大会優勝
③山本草太(日本):26ポイント アメリカ大会3位、ポーランド大会優勝
④ローマン・サドフスキー(カナダ):26ポイント スロバキア大会優勝、ポーランド大会3位
⑤ダニエル・サモヒン(イスラエル):26ポイント アメリカ大会2位、スペイン大会2位
⑥ヴィンセント・ゾウ(アメリカ):26ポイント スロバキア大会2位、オーストリア大会2位
―――
補欠⑦デニス・ヴァシリエフス(ラトビア):26ポイント ラトビア大会2位、ポーランド大会2位
補欠⑧アレクサンドル・サマリン(ロシア):24ポイント スロバキア大会4位、クロアチア大会優勝
補欠⑨ニコラ・ナドゥー(カナダ):20ポイント ラトビア大会5位、クロアチア大会2位




 男子は北米勢も含め、昨年同様にアジア系の活躍が目立つ結果となりました。ポイント的には1位通過のチェン選手と2位通過のアリエフ選手が同じ30ポイントで並んでいるのですが、トータルスコアの2大会合計ではチェン選手がずば抜けていて、圧倒的な優勝候補筆頭と言えますね。チェン選手はすでにJGP参戦4年目で、1年目は1戦目で優勝したものの2戦目を棄権、2年目は2大会連続優勝でファイナルは3位で世界ジュニアも3位、3年目の昨シーズンは成長痛の影響であまり試合に出られず世界ジュニアは4位。紛れもなくエリート街道を歩んできた実力者なのですが、とんとん拍子に来たかというと必ずしもそうではなく、それなりの苦労人でもあります。元々表現力豊かな選手として知られていましたが、今季は国際大会で初めて4回転を成功させるなどジャンプもレベルアップしていて、ジュニアの集大成としていよいよ大開花しそうな予感がしますね。
 2位通過のアリエフ選手は昨季もJGPで2大会とも表彰台に立っていますが、今季はぐんとパーソナルベストもアップして、4回転や3アクセルといった高難度ジャンプも確実に成功させていて、今後も楽しみな選手ですね。
 そして、昨季のファイナル銀メダリスト、日本の山本選手は1戦目のアメリカ大会で3位となり、2戦目にプレッシャーが掛かる展開になりましたが、その2戦目のポーランド大会で見事優勝し、2年連続でのファイナルのチケットを獲得しました。1戦目は3アクセルやコンビネーションジャンプでミスを連発してしまい、本来の力が発揮できませんでしたが、3週間後の2戦目ではきっちりと前大会の課題を修正して演技をまとめました。まだ3アクセルに苦労している部分はあるのかなという感じですが、4回転に関しては2大会とも成功させていて、全てのジャンプが揃えばチェン選手とも互角の戦いができると思うので、ファイナルでの直接対決が楽しみですね。
 4位通過のサドフスキー選手も2年連続のファイナル進出。こちらもチェン選手と同じくJGP参戦は4季目で、徐々に成績を上げつつあります。5位通過のサモヒン選手もJGP3年目でジュニア界ではおなじみの選手。ファイナル出場は初めてとなりますが、すでにシニアの国際大会にも多く出場していて経験豊かな選手ですので、ファイナルでの表彰台の可能性も充分にありますね。6位通過のゾウ選手は今季がJGPデビューでまだ14歳(10月25日で15歳)。アメリカ国内では2013年の全米選手権ジュニアクラスで史上最年少優勝という経歴を残していますが、ここ2シーズンは故障や手術の影響で長く休養。今季は久しぶりの競技復帰でさっそく好成績を収めているわけですね。チェン選手に次ぐアメリカ期待の新星と言えます。



《ペア》


①アミナ・アタハノワ&イリヤ・スピリドノフ組(ロシア):28ポイント オーストリア大会優勝、ポーランド大会2位
②レナータ・オガネシアン&マルク・バルデイ組(ウクライナ):26ポイント ラトビア大会優勝、オーストリア大会3位
③エカテリーナ・ボリソワ&ドミトリー・ソポト組(ロシア):26ポイント ラトビア大会3位、ポーランド大会優勝
④アナスタシア・グバノワ&アレクセイ・シンツォフ組(ロシア):26ポイント アメリカ大会優勝、ポーランド大会3位
⑤アナ・ドゥシュコヴァ&マルティン・ビダジュ組(チェコ):22ポイント ラトビア大会4位、オーストリア大会2位
⑥アナスタシア・ポルヤノワ&ステパン・コロトコフ組(ロシア):22ポイント ラトビア大会2位、オーストリア大会4位
―――
補欠⑦ブリン・ホフマン&ブライス・チュダク組(カナダ):18ポイント アメリカ大会4位、ポーランド大会4位
補欠⑧ジョイ・ワインバーグ&マキシミリアノ・フェルナンデス組(アメリカ):17ポイント アメリカ大会2位、ポーランド大会7位
補欠⑨エレーナ・イワノワ&タギル・ハキモフ組(ロシア):16ポイント アメリカ大会3位、オーストリア大会6位




 ペアは3年連続でロシアのペアが4組以上ファイナルに進出する結果となり、相変わらずのペア大国ロシアの強さを見せつけました。しかも、昨年のファイナルに出場したロシアペア4組が全てシニアに移行ということで、今年ファイナルに進出したロシアペアは全くの新しい顔ぶれ、総入れ替えという感じになっているんですね。ただ、これだけの層の厚さを誇っていてもシニアでのロシア枠は限られていますし、トップレベルで活躍できるのも一握りということで、数年で姿を消してしまうことが多く、世界でというよりも、ロシア国内での競争の方が厳しそうで大変だなと思います。
 2大会合計ポイントやパーソナルベストで頭一つ抜けているのは1位通過のアタハノワ&スピリドノフ組。ただ、昨年のファイナリストと比べると全体的に実力もスコアも拮抗している気がしますし、ジュニアのペアはまだまだ不安定な部分も多いので、ファイナルは一発勝負でどうなるかは予想がつかないですね。



《アイスダンス》


①ロレイン・マクナマラ&クイン・カーペンター組(アメリカ):30ポイント アメリカ大会優勝、ポーランド大会優勝
②レイチェル・パーソンズ&マイケル・パーソンズ組(アメリカ):30ポイント スロバキア大会優勝、クロアチア大会優勝
③アッラ・ロボダ&パヴェル・ドロースト組(ロシア):28ポイント スロバキア大会2位、オーストリア大会優勝
④ベティナ・ポポワ&ユーリ・ブラセンコ組(ロシア):28ポイント ラトビア大会優勝、スペイン大会2位
⑤マリー=ジャド・ローリオ&ロマン・ルギャック組(フランス):28ポイント オーストリア大会2位、スペイン大会優勝
⑥アナスタシア・スコプツォワ&キリル・アリョーシン組(ロシア):24ポイント ポーランド大会3位、クロアチア大会2位
―――
補欠⑦アンジェリーク・アバチキナ&ルイ・トーロン組(フランス):22ポイント ラトビア大会2位、クロアチア大会4位
補欠⑧クリスティーナ・カレイラ&アンソニー・ポノマレンコ組(アメリカ):22ポイント ラトビア大会4位、ポーランド大会2位
補欠⑨ソフィア・シェフチェンコ&イゴール・エレメンコ組(ロシア):22ポイント スロバキア大会3位、クロアチア大会3位




 アイスダンスはアメリカVSロシアの一騎打ちの様相。昨季はファイナリストにアメリカのカップルが1組もおらずロシア対カナダという感じだったのですが、今年は昨年補欠だったマクナマラ&カーペンター組、パーソンズ&パーソンズ組がそれぞれ30ポイントでファイナル進出を決めました。この2組はスコア的にもほかのカップルの先を行ってる感じがするのですが、特にマクナマラ&カーペンター組はフリーとトータルでジュニアの歴代最高得点を持っていて、間違いなく最も優勝に近いカップルと言えますね。ただ、パーソンズ&パーソンズ組もマクナマラ&カーペンター組に迫るパーソナルベストをマークしている実力者なので、アメリカの2組による接戦の優勝争いになるのかなと思います。
 一方で3位通過のロボダ&ドロースト組、4位通過のポポワ&ブラセンコ組も昨年のファイナルのメダリストですので、怖い存在になりそうですね。



 さて、JGPはファイナリストが全員決まりましたが、シニアのGPはこれから開幕です。そして、JGPのファイナルはシニアのファイナルと一緒に12月にスペインのバルセロナで行われます。今後もシニアとともにジュニアにも注目していきたいなと思います。では。


注:記事冒頭の写真はフィギュアスケート情報ウェブサイト「icenetwork」2015年9月11日配信した記事「Sotskova, Mihara book tickets to JGP Final」から、ジュニア男子の写真は国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
ジュニアグランプリファイナル2015について 2015年12月18日
世界ジュニア選手権2016について 2016年3月23日
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by hitsujigusa | 2015-10-23 14:13 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

はんなちゃんがめをさましたら


 すっかり秋らしくなり、それどころか冬の足音さえ聞こえ始めている今日この頃ですが、ますます昼が短く夜が長くなってきました。ということで、秋の夜長に合わせて今回は夜に読みたい絵本を特集します。以前、夜に読みたい小説・私的10撰という記事を書いたのですが、その絵本バージョンです。


 まずは夜に目覚めた子どもを描いた絵本2冊です。


まよなかのだいどころ

まよなかのだいどころ

【あらすじ】
 真夜中、何だか騒がしい音がするのでベッドの中のミッキーが目を覚ますと、裸になって暗闇へ落っこちてしまいます。落ちたところは“まよなかのだいどころ”。そこには3人の太ったおじさんがいて、朝食用のケーキを焼いていて――。

 世界的に有名なアメリカの絵本作家、モーリス・センダックの代表作『まよなかのだいどころ』。真夜中に目覚めた男の子がまよなかのだいどころを冒険する不思議なお話です。
 ストーリー的にははだかんぼの男の子がケーキ生地の中に入ってこねられたり、ミルクの中に飛び込んだりと、大人からしたら眉をひそめるような場面もあるかもしれませんが、大人の知らないところで思う存分自由に動き回る子どもの生き生きとした姿が気持ち良く、痛快です。大人が思う“良い子”ではなくて、等身大のありのままの子ども像という感じがします。それとともに“まよなかのだいどころ”の世界観も魅力的で、子ども向けだからといって単に楽しく陽気ばかりではなく、夜ならではの怪しさ、不気味さもちゃんとあり、アメコミチックな独特の絵柄も相まって、ちょっぴり怖いような、でも引き込まれてしまう絵本だと思います。


はんなちゃんがめをさましたら

はんなちゃんがめをさましたら

【あらすじ】
 ある日、はんなちゃんが目を覚ますと、まだ夜でした。隣りのベッドのお姉さんも、お母さんもお父さんもみんな眠っています。静かにベッドを抜け出したはんなちゃんは、猫のチロにミルクをあげたりこっそりさくらんぼを食べたり、初めての夜をひそやかに満喫して――。

 人気絵本作家・酒井駒子さんの『はんなちゃんがめをさましたら』。小さな女の子が初めて体験する夜の世界を鮮やかに描いています。
 とはいってもその体験はどれもとてもささやかなもので、上述した『まよなかのだいどころ』とは対極にあります。『まよなかのだいどころ』はおもしろおかしいファンタジーでしたが、こちらはシンプルに夜に目覚めた子どもの姿を取り上げています。もちろん家の外に出ることもなく、非現実的な出来事が起こるわけでもなく、はんなちゃんがひっそりと家の中で過ごす様子を描いているだけなのですが、紛れもなくそれははんなちゃんにとっては大いなる冒険。大人からすれば夜に起きているのは当たり前すぎて気づきませんが、幼い子どもにとっての“夜”は“昼”とは全く別物の未知の世界で、この絵本が何でもないことを描いているにもかかわらずこんなにもキラキラとして見えるのは、子どもの目線で、子どもの気持ちになって、夜の風景、空気感を描き出しているからなのだと思います。そして、子どもの心を忘れてしまった(もしくは忘れかけている)大人にとって、この絵本に登場する夜の闇に包まれた部屋、皆が眠りに落ちた家の中の静謐な空気、窓の外に輝く満月、何よりなにげないことにも目をキラキラさせるはんなちゃんの姿は、かつて子どもだった頃の自分を思い出させてくれて懐かしいようでもあり、知らなかった景色を教えてくれるようで新鮮でもあり、大人も存分に楽しめる絵本となっています。


 続いては、子どもの目から見た夜の街の風景を描いた絵本2冊をご紹介します。


夜になると

夜になると

【あらすじ】
 今日はおうちでパーティーをする日。でも夜のパーティーは大人のものだから子どもの“わたし”は仲間に入れてもらえない。でも、おむかえからおうちに着くまでの暮れなずむパリの風景はとてもきれいで――。

 「リサとガスパール」でおなじみ、アン・グットマンさん、ゲオルグ・ハレンスレーベンさんコンビが手がけた『夜になると』。パリに住むお二人が、夜のパリの風景を鮮やかに描写しています。
 主人公は幼稚園くらいの女の子で、おむかえから眠りにつくまでの時間経過をゆったりと描いています。物語の軸となるのは女の子の自宅でホーム・パーティーが行われるということ。ただし、パーティーは大人だけのものなので、女の子は先に一人で晩ご飯を食べたりお風呂に入ったり寝かしつけられたりと、ある意味とてもパリらしいお話です。大人の世界に対する憧れ、仲間に入れない寂しさなども描きつつ、我が子に対するパパとママの愛情、温かい目も丁寧に描き、日本とは一味違うフランスの家庭のあり方にほっこりします。そして、何より魅力的なのでが絵を担当するハレンスレーベンさんの油彩画。重厚な趣きのある油彩によって描かれるパリの街は、写真や映像で見るパリよりもパリらしさに満ちていて、夜のとばりが下りた街の大人びた雰囲気、青い闇に光る街灯やお店のショーウィンドウなど、夜のパリというのはまさにこんな感じなんだろうなと思わせるムードたっぷりの絵で、ロマンとノスタルジーに溢れています。「リサとガスパール」と比べると少し上の年齢、もしくは大人向けで、パリの雰囲気に浸りたい人にはもってこいの絵本だと思います。


よるのかえりみち

よるのかえりみち

【あらすじ】
 ある夜、うさぎの男の子がおかあさんに抱っこされて家路についています。男の子はうとうとしながらも夜の街の風景を眺めます。明かりの灯った家々の窓の向こうには、いろんな人々の暮らしが見えて――。

 みやこしあきこさんの『よるのかえりみち』。子どもの目から見た夜の街を描くという点で上の『夜になると』とシチュエーションは少し似ていますが、絵柄やストーリー展開の仕方など、印象はだいぶ違います。
 まず、絵が『夜になると』はわりとカラフルだったのに対し、この『よるのかえりみち』は画面を黒が占めている比率が高く、夜の闇、暗さ、濃厚さを前面に押し出しています。男の子を取り囲む圧倒的な暗闇、ひんやりとした臨場感が絵からひしひしと伝わってきます。その一方で家々の窓の明かり、窓の中の景色は明るい色で鮮やかに描かれることによって、家庭のぬくもり、人々の暮らしの温かさが滲み出ていて、外の暗さとの対比が効果的な演出となっています。そして、おかあさんにずっと抱っこされている男の子の気持ちの温かさ、おかあさんの愛情も伝わる作りとなっていて、“夜”と“親子の絆”というのを見事に表現した絵本だなと思います。


 次は夜を幻想的に描いた絵本4冊です。


よるのむこう

よるのむこう

【あらすじ】
 夜の中を走る夜行列車。明かりがきらめく華やかな街や、青く静かな闇の中を通り過ぎていきます。そうして列車が向かっているのは――。

 絵本作家でありイラストレーターであるnakabanさんの『よるのむこう』。起承転結あるストーリー構成ではなく、夜の風景を抽象画のような独特の絵で写し取っています。
 文章はごく少なく、その分画面いっぱいに描かれた絵が言葉以上のものを伝えています。物語としては夜行列車に乗って故郷に帰る様子を描いているのですが、語り手の姿やそのほかのキャラクターが登場することはなく、車窓に映る風景の連続となっていて、1ページ1ページがどれも一枚の絵画のように美しく、個性的な色づかいや筆づかいにうっとりさせられます。“夜”というモチーフを写実的な絵でビジュアル化するのではなくあえて抽象的にすることで、逆に夜の豊かさをより鮮やかに浮かび上がらせている絵本です。


ムーン・ジャンパー

ムーン・ジャンパー

【あらすじ】
 満月が美しい夜、子どもたちは裸足で家を飛び出します。大人たちは家の中。子どもたちだけが輝く月の光を浴びて踊り出して――。

 アメリカの絵本作家ジャニス・メイ・ユードリー作、巨匠モーリス・センダック絵、日本を代表する詩人・谷川俊太郎さんが翻訳を手がけた『ムーン・ジャンパー』。アメリカの著名な絵本賞、コルデコット賞のオナー賞(次点賞)を受賞した名作です。
 明確なストーリーらしいストーリーがあるわけではなく、月夜に自由に遊び、踊り、駆けまわる子どもたちの生き生きとした姿を描いた絵本です。何ものにもとらわれることなくただただ思うがままに夜を満喫するさまが見ていて本当に気持ちよく、清々しい気分になります。何よりもセンダックの絵が美しく、センダック自身が文章も書いた『まよなかのだいどころ』や『かいじゅうたちのいるところ』とは全く異なる繊細な絵柄で、夜の涼やかな風や虫の声、木々のざわめき、まばゆい月の光など、まるでその場にいるかのように夜の空気感をリアルに体感させてくれます。“ムーン・ジャンパー”というタイトルのとおり、月めがけてジャンプし跳ね躍るということの自由さは、単に夜に遊ぶという意味を超えて生命の自由さにも繋がっていて、自由の象徴である子どもが心の向くままに遊び回る光景からはシンプルでありながら深いメッセージを感じますね。


銀河鉄道の夜

銀河鉄道の夜

【あらすじ】
 遠くへ行った父の帰りを待ち、母とふたりで慎ましく暮らす少年ジョバンニは、学校でも同級生たちとなじめずからかわれたりしています。そんな中、父親同士が友人であるカムパネルラだけはジョバンニに優しく接してくれるのでした。星祭りの夜も同級生たちにからかわれたジョバンニはひとり町はずれの丘へ向かいましたが、星空を眺めていると突然どこからともなく駅のアナウンスが聞こえてきて――。

 日本を代表する童話作家、宮沢賢治の代表作『銀河鉄道の夜』。あまりにも知られている定番作品にアーティストの清川あさみさんが絵を付けた絵本です。ただ、絵といっても清川さんが制作するのは写真に直接糸やビーズなどで刺繍を施した独特なアート作品。紙やキャンバスに絵の具やペンで人物や風景を描いていく普通の絵のような写実性はないのですが、色とりどりの糸やビーズを組み合わせることで作られる画面は、絵では生み出せない色合い、質感となっていて、『銀河鉄道の夜』の世界観にぴったりの情緒あふれる作品に仕上がっています。この絵本に関しては、宮沢賢治の絵本・私的10撰という記事でも取り上げていますので、ご参考下さい。


月夜のバス

月夜のバス

【あらすじ】
 ある海沿いの国道。その道を一台のバスが走っていました。横断歩道を渡ろうとする少年の前にバスがさしかかり、少年がバス車内をふと見ると、そこは青い水で満たされた海のようになっていて――。

 児童文学作家・杉みき子さんの短編作品に絵本作家・黒井健さんが絵を付けた『月夜のバス』。文学の薫り高い詩情豊かな文章と、柔らかな雰囲気が魅力的な黒井さんの絵が見事にマッチして、あるバスで起こったちょっぴり不思議な出来事を描いた物語の幻想性をさらに高めています。この絵本については、こちらの記事の中でも取り上げていますので、ぜひご参考下さい。


 最後に絵が印象的な絵本2冊をご紹介します。


よあけ (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)

よあけ (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)

【あらすじ】
 静寂に包まれた夜の湖。おじいさんと孫の少年が夜明けを待って毛布にくるまっています。薄ぼんやりとした闇に覆われた湖畔ですが、少しずつ少しずつ夜明けの気配が漂い始め――。

 ポーランド出身の絵本作家ユリー・シュルヴィッツの『よあけ』。夜というよりも夜明けをフィーチャーした作品ですが、夜の風景を描いた絵本としては定番中の定番と言えます。
 文章は必要最低限、絵画のように品格ある絵をたっぷりと見せる作りで、心地よい夜の空気にどっぷりと浸らせてくれます。絵柄はとてもシンプルな水彩画で、誇張もデフォルメも一切なし。かといって写実的というのとはまた違い、最小限の線と色で余計なものを排除しています。特に夜明けが訪れる前の夜の場面は青やグレー、グリーンといったほぼ同じ色合いで構成されたページが続き、夜の闇、真っ暗ではない自然の闇の色を絶妙に表現しています。そして、クライマックスの夜明けの場面。絵本の特性を最大限に生かし、自然が生み出す魔法を紙の上に見事に再現していて、絵本の醍醐味を存分に味わわせてくれます。


フローリアとおじさん

フローリアとおじさん

【あらすじ】
 花が咲き乱れる美しい庭のある家で一人ぼっちで暮らすおじさんのところに、ある日突然見知らぬ女の子がやって来ます。フローリアと名のった女の子をおじさんは家に住まわせることにし、毎晩花に囲まれた庭でレコードを聴かせるように。するとフローリアもいつしか歌うようになり、しかもその歌声は並外れた美しさを持っていて――。

 絵本作家であり漫画家でもある工藤ノリコさんの『フローリアとおじさん』。ひとりぼっちのおじさんと孤独な少女との音楽を介した心の交流を可愛らしい絵で描いています。
 夜をメインテーマに据えた絵本ではありませんが、月夜に花園で歌う場面がとても印象的に描かれている絵本です。漫画家でもある工藤さんの絵は独特のデフォルメがなされていて、特に人物はまるで大福のようなフォルムの顔に、ぽってりとしたたらこくちびる、首のない寸胴体形というコミカルな造形で、パッと見笑いを誘うような感じなのですが、一方で物語は孤独なおじさんと孤児の少女が出会い、いつしか家族のようになっていくというシリアスさなので、切なさもありつつ、でもほのぼのとした温かさもあって、ふっと心がほどけるような絵本になっていると思います。そして、いちばんの見どころはやはりフローリアが月夜の庭で歌うシーン。絵柄はこんなにもアンリアルなのに、今にも歌声が聞こえてきそうな臨場感に溢れていて、思わずうっとりとしてしまいます。音楽、花、夜、一つ一つのモチーフが丁寧に美しく描かれている絵本です。



 夜に読みたい絵本・私的10撰はこれで以上です。どれも有名な絵本ばかりなので、私がいまさら紹介しなくても知られているものばかりだと思いますが、今の季節にぴったりですので、ぜひ手に取ってみてください。


【ブログ内関連記事】
夜に読みたい小説・私的10撰 2014年9月16日
宮沢賢治の絵本・私的10撰 2014年9月20日  記事内で宮沢賢治作、清川あさみ絵『銀河鉄道の夜』を取り上げています。
海を描いた絵本・私的10撰 2015年7月17日  記事内で杉みき子作、黒井健絵『月夜のバス』を取り上げています。
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by hitsujigusa | 2015-10-19 16:45 | 絵本 | Trackback | Comments(0)

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 フィギュアスケーター衣装コレクション第10弾は13/14シーズンをもって引退された鈴木明子さんです。世界随一の表現力を持つスケーターとして活躍された鈴木さん。プログラムの表現、選曲はもちろん、プログラムの世界観を表す衣装からも常にこだわりを感じさせる選手でした。そんな鈴木さんのコスチュームを今回は取り上げます。

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by hitsujigusa | 2015-10-12 01:31 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

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 10月3日にさいたまにて地域別団体戦のジャパンオープン2015が行われました。団体戦形式のジャパンオープンとしては今年で10周年ということですが、浅田真央選手の久しぶりの競技復帰戦ということもあり、例年以上の盛り上がりを見せました。この記事ではその模様を、ざっくりとお伝えしていきます。

Kinoshita Group Cup Japan Open 2015 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 まず、ジャパンオープンのシステムについて改めて記しますと、形式は日本、欧州、北米の地域別の団体戦です。ショートプログラムは行わず、フリーのみで順位を決定します。選手は各チーム女子二人、男子二人の4人で、各選手のフリーの得点をシンプルに足していって、その得点の合計でチームの順位も決まります。
 ということで、2015年のジャパンオープンのチーム順位は、1位は日本で607・62点、2位は北米チームで545・23点、3位は欧州チームで528・90点となりました。
 ここからはチーム別に各選手の演技、結果について書いていきます。


●日本チーム


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 まず何といっても最大の注目は復帰初戦となった浅田真央選手。初お披露目となった「蝶々夫人」でしたが、この時期にしてこの完成度!と驚かされる内容でした。ジャンプ構成は6位となったソチ五輪、優勝した世界選手権と同じ構成で、初戦から自分のベストの構成で臨めるということもすごいですが、実際に大技3アクセルを成功、3+3は入りませんでしたが、もう一つの得点源コンビネーションである2アクセル+3トゥループは完璧に決め、文句なしの仕上がりでした。ジャンプに関しては練習風景を見ていてもかなり調子が良いんだなということはうかがえましたが、練習と本番は違うので、練習の好調をそのまま演技に反映させたというのが素晴らしいと思いますね。そしてジャンプ以上に素晴らしかったのがプログラムの表現。解説の元選手の方々も多くのフィギュアファンの方々もおっしゃっていますが、ほどよく力が抜けて休養前以上に表現が深まったなと感じました。元々多彩な表現力を持つ選手ですが、今まではやはりどうしてもジャンプの安定に集中せざるを得ない場面が多く、そのため独特の緊張感が漂っていたように思うのですが、今回の演技からはそういった空気がほとんど感じられず、本当に自然体で滑っているように見えましたし、ジャンプ含めプログラムの端々から余裕が見て取れました。シニア参戦以降の浅田選手は、バンクーバー五輪、ソチ五輪といった明確な目標があり、その舞台に向けて一直線に走り続けてきたわけですが、現在はそういった形での目標というのはなく、ただシンプルにスケートが好き、試合が恋しいという想いで戻ってきているので、変に気負うものや背負うものもなく、純粋にスケートを楽しんでいる気持ちが演技から伝わってきましたね。浅田選手が今後いつまで現役を続けるかは分かりませんが、現役を続ける限り、責任感やプレッシャーなど背負うことなく、スケートを楽しむ気持ちだけを大切にして浅田選手らしいスケート人生を歩んでいってほしいですね。
 浅田選手同様に申し分のない演技を見せたのが全日本女王・宮原知子選手。冒頭の3+3を始め、後半の2アクセル+3トゥループなど全てのジャンプを確実に着氷。GOEで一つもマイナスの付かない完璧な内容で、非公認ながら134・67点とパーソナルベストを上回る得点をマーク。世界選手権銀メダリストとしての力を見せつけました。宮原選手は先月行われたUSインターナショナルクラシックで上々のシーズンスタートを切り、そして今大会も前大会以上の演技で相変わらずの安定感。また、ジャンプはシニア1年目の頃よりも確実に高さが出てきており、今回は一つも回転不足を取られませんでした。図抜けたものを持っている選手ではありませんが、地道な努力の積み重ねによってゆっくりではあるものの、しかし着実かつ想像以上の飛躍と進化を遂げている選手と言えますね。今シーズンは大エース浅田選手が復帰するわけですが、現在の全日本女王として浅田選手にも負けない存在感を見せていたと思いますし、ダブルエースと言われるくらい浅田選手と競っていってほしいなと個人的には願っています。
 そして、全男子選手の中で最も輝いたのが今季からシニアに本格参戦する宇野昌磨選手。冒頭の4トゥループはこらえ気味の着氷となったものの成功に繋げ、続く2本の3アクセル、後半の4トゥループからのコンビネーションと、次々と難度の高いジャンプを着氷。表現面でも重厚な「トゥーランドット」を見事に自分のものにしていて、圧巻の演技に会場は演技が終わる前からスタンディングオベーション。得点も非公認ながらパーソナルベストを上回るスコアをマークし、宇野選手自身も満足そうな表情を浮かべました。宮原選手同様、先月のUSインターナショナルクラシックに出場した宇野選手ですが、その時はSPで大きく出遅れ9位、フリーで1位と挽回したものの総合5位という意外な結果に終わりました。ジュニアからシニアへ主戦場を移すということで、体力的な部分の課題が表れた形となったのですが、今大会ではそれから2週間という短期間で課題を修正してみせ、世界ジュニア王者らしい非凡さを発揮しました。ジュニアで輝かしい成績を収めた選手であっても、男子選手がシニア1年目からジュニア時代並みにバリバリ大活躍するというのはそうそうなく、なのでGPシリーズ前にまずこれほどまでの演技を披露したということが本当に凄いなと思うのですが、宇野選手も焦らずじっくりとシニアに慣れていってほしいですね。
 昨季ブレイクした村上大介選手もジャパンオープンに初出場。冒頭の単独の4サルコウ、4サルコウからの連続ジャンプは成功させたものの、2本の3アクセルや3連続ジャンプなどにミスが出てしまい、納得の演技とはなりませんでした。ただ、4サルコウの安定感はさすがのもので、世界でも1、2を争うくらい確実性があると思うので、あとは他のジャンプも含め全体的な安定性を維持していくことで、演技構成点の方も上がっていくでしょうからそちらを期待したいですね。また、村上選手はフリーで4回転を3本入れることも示唆していて、将来を見据えた戦略もうかがえて、ますます楽しみだなと思います。


●北米チーム


 北米チームの最大の注目選手は、浅田選手と同じく1季ぶりに競技復帰するパトリック・チャン選手です。プログラムは1年前のジャパンオープンで披露した「ショパン・メドレー」をアレンジして再構成したもの。冒頭は得意の4トゥループでしたが、回転が抜けて3回転に。続いて苦手の3アクセルも着氷で乱れてしまいます。その後の得意なジャンプでもチャン選手らしからぬミスがちょこちょこ出てしまい、演技を終えたチャン選手は苦い笑みを浮かべました。残念ながらジャンプはうまく揃わなかったですが、相変わらずスケーティングは有無を言わさぬ凄さがあって圧倒されましたね。他の選手と格段に違うスピード、驚異的な一蹴りの伸び、特にステップシークエンスでは複雑な全身の動き、足さばきをしながらもずっと同じスピードでリンクを縦横無尽に駆け抜けていて、やはりこういった部分では唯一無二の選手だなと感じましたね。ただ、ジャンプは男子全体がどんどんレベルアップしていますし、チャン選手といえども簡単なシーズンにはならないでしょうから、現王者のフェルナンデス選手始め、羽生結弦選手、デニス・テン選手らと競って、男子フィギュア界のさらなる進化に繋がればいいなと思いますね。
 チャン選手とは逆に、今シーズンの休養を発表しているジェレミー・アボット選手も2年ぶりにジャパンオープンに出場。4回転こそ入れませんでしたが、2つの3アクセルを両方完璧に決めるなど上々の演技内容で、昨季のフリー「弦楽のためのアダージョ」を存分に演じ切りました。休養に入るアボット選手が今後どういう道を歩むのかは分かりませんが、表現力、スケーティング技術は現役でも一流中の一流だなと改めて思いました。特にこの「弦楽のためのアダージョ」は本当に美しいプログラムなので、機会があればまた試合で見たいなと感じましたね。
 女子ではアメリカのダブルエースがふたりとも出場。現全米女王のアシュリー・ワグナー選手は昨季からの持ち越しとなる「映画『ムーラン・ルージュ』より」で、滑り慣れているプログラムということでさすがにこなれ感がありましたね。ジャンプは2連続3回転や3連続ジャンプなど得点源となるジャンプで回転不足が見られたので、そこはやはり今後も課題になるでしょうが、そのあたりさえクリアできれば世界選手権の表彰台にもかなり近づけるのではないかなと思いますね。
 もう一人のアメリカのエース、グレイシー・ゴールド選手は3+3や2アクセル+3トゥループといった大技が不発に終わり、女子の最下位となりました。体の動きなどもまだ本来のものではないように感じましたが、まだこの時期ですので、これからGPに入ってシーズンが進むごとにさらにキレも増してくるんじゃないかなと思いますし、新プログラムの「火の鳥」は定番の音楽ながらもゴールド選手らしいエレガンスが強調され、それでいて今までの彼女のイメージとは少し違う力強さもあって、とても素敵なプログラムでしたので、今後の仕上がりが楽しみですね。


●欧州チーム


 欧州チームは現世界チャンピオン二人とソチ五輪チャンピオンが揃う豪華な顔ぶれとなりました。女子のワールドチャンピオンであるロシアのエリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手は昨季習得した大技3アクセルに挑みましたが、惜しくも転倒。その後も中盤に予定していた3+3が3+2になるなど細かなミスはありましたが、グリーグの「ペール・ギュント」に乗せたチャンピオンらしい迫力ある演技を見せ、女子の3位となりました。3アクセルは成功しませんでしたが、回り切ってはいたのであと少しの着氷のタイミングなどのズレなのかもしれませんね。そしてステファン・ランビエールさん振り付けのプログラムもトゥクタミシェワ選手の大人びた雰囲気によく合って、それでいて新鮮味もあって、より滑り慣れてくるとさらに良いプログラムになるでしょうから楽しみだなと思います。
 同じくロシアのソチ五輪女王、アデリナ・ソトニコワ選手はソチ五輪以来の競技復帰となりました。ジャンプの回転が抜けるところがいくつかあり本領発揮とはいきませんでしたが、跳ねるような高さのあるジャンプ、柔軟性を生かした独特のポジションのスピンなど、ソトニコワ選手らしさを端々にのぞかせました。層の厚いロシア女子の中で、オリンピックチャンピオンとはいえ必ずしもソトニコワ選手もポジションを確固たるものにしているとは言えないと思うのですが、今のところGPには1試合しかエントリーしていないので、ロシア選手権に向けてシーズン後半勝負になるのでしょうね。
 男子の現世界王者、スペインのハビエル・フェルナンデス選手は3回目のジャパンオープン出場。冒頭の4トゥループ、4サルコウからの連続ジャンプは3回転かと見間違うほどのシャープな回転。3アクセルと2本目の4サルコウは失敗したものの、さすが世界チャンピオンという演技を披露しました。プログラムはミュージカル映画音楽で、以前のフェルナンデス選手のプログラムともところどころイメージがかぶるところがあるので、今後いかにこれまでのプログラムと差別化していくか、個性的なプログラムにしていくかに注目したいと思います。
 ソチ五輪以来、競技会から離れているフランスのブライアン・ジュベール選手は代名詞の4回転は跳ばず、難度の低いジャンプで固めた構成。残念ながらミスが多く本来の演技とはなりませんでしたが、かつて演じた「映画『マトリックス・リローデッド』より/映画『レクイエム・フォー・ドリーム』より」の再演で観客を沸かせました。現在のジュベール選手は明確な引退宣言こそしていませんが、実質的には競技からは距離を置いてコーチなどの方向にシフトしています。なので現役バリバリの選手たちが集まる今大会は彼にとってモチベーションの持っていき方が難しかったのではないかなと思いますが、その中でもらしさを発揮してくれましたね。



 例年以上の華やかなメンバーが集まったジャパンオープン2015。ますます今シーズンが楽しみになりました。10月末からはGPシリーズも開幕し、いよいよシーズンの本格的な幕開けとなります。遠くから選手たちの活躍を見守りたいと思います。では。


:記事内の写真は全て、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」から引用させていただきました。
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by hitsujigusa | 2015-10-07 15:47 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)