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 全日本選手権2015、女子とペアについてです。男子&アイスダンスについてはこちらの記事をご覧ください。
 女子を制したのはディフェンディングチャンピオン、宮原知子選手です。いつもどおりのほぼノーミスの演技で連覇を果たしました。2位は全日本ジュニア女王の樋口新葉選手で2年連続のメダル獲得、3位はベテランの浅田真央選手で、こちらは2年ぶりの表彰台となりました。
 ペアは今季新たに結成した須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組が初優勝となっています。

第84回全日本フィギュアスケート選手権大会 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 優勝は宮原知子選手です!

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 SPの冒頭は3ルッツ+3トゥループ、これを完璧に成功させて高い加点を得ます。続く2つのスピンとステップシークエンスはどれもレベル4で1点以上の加点。後半に組み込んだ3フリップは踏み切り時のエッジが不正確だったため加点は伸びませんでしたが、次の2アクセルはクリーンに決めて、最後のコンビネーションスピンもレベル4。いつもどおりの安定した演技で女王の風格を見せました。得点は73.24点で非公式ながら初めて70点台に乗せ、断トツの首位発進となりました。

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 フリーはまず3ルッツからの3連続ジャンプ、3つ目の2ループの高さが足りずダウングレード(大幅な回転不足)となります。ですが、直後の3ループ、ステップシークエンスを挟んで3フリップときっちり着氷します。後半に入って最初の3ルッツを成功させると、2アクセル+3トゥループ、3サルコウ、ラストの2アクセル+3トゥループと全てクリーンに着氷。豊かな表現力でテーマに掲げた“初恋”を演じ切り、会場は大歓声に包まれました。得点は139.59点でフリーも断トツの1位、完全優勝で2連覇を達成しました。
 とにもかくにも本当に強かったですね。1年前はSPで2位につけ競った中での逆転優勝でしたが、今回は圧倒的な強さで揺るぎない勝利でした。過剰な緊張や気負いといったものも見られず、ある意味国際大会以上に異様な緊張感漂う全日本という舞台でも平常心を保っていて、逆にどんな場面だったら彼女の平常心は乱れるんだろうというくらい、その姿が想像できないですね。
 このあとのシーズンもこのままの宮原選手で突き進んでくれると思いますから、四大陸選手権、世界選手権といつもどおりの演技を見せてほしいと思います。2連覇、おめでとうございました。


 2位に入ったのは全日本ジュニアチャンピオン、樋口新葉選手です。

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 ショートは「マンボ・ファンタジー」。ジャンプを全て後半に固めるアグレッシブな構成。まずはステップシークエンスとスピンから入り、後半最初は3ルッツ+3トゥループ、これをパーフェクトに決めます。続く3フリップは着氷でオーバーターンしてしまいますが、最後の2アクセルは難なく成功。細かなミスはあったものの、終始スピード感に溢れたパワフルな演技を披露しました。得点は67.48点で3位と好発進します。

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 フリーは「映画『マスク・オブ・ゾロ』より」。こちらも7つのジャンプのうち5つを後半に組み込んだタフな構成。冒頭の3ルッツ+3トゥループを前日同様完璧に下りると、続く3サルコウもクリーンに成功。上々の滑り出しを見せると、後半最初の3ルッツ+3トゥループはセカンドジャンプの着氷で若干乱れたものの、その後の全てのジャンプを着氷。スピンは全てレベル4を揃え、演技を終えた樋口選手は力強いガッツポーズで喜びを表しました。得点は127.82点でフリー3位、総合では2位と昨年より順位を上げてフィニッシュしました。
 ショート、フリーともに細かいミスはあったのですが、何といってもものすごいスピード感、アップテンポな音楽にも遅れないスケーティング技術は圧巻でしたね。今シーズンの樋口選手は夏に腰を痛め、その影響でJGPでは苦戦を強いられましたが、全日本ジュニア、そして今大会と見事に立て直して存在感を示しました。これで2年連続での表彰台となったわけですが、中学生という変化の幅の大きい年頃で2年続けて台乗りするというのはやはり並外れた才能だと思いますし、少し気が早いですが来年の全日本が今から楽しみになりますね。
 2度目となる世界ジュニアでは頂点目指して頑張ってほしいと思います。


 3位となったのは今季競技復帰した浅田真央選手です。

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 ショートはまず代名詞の3アクセルから、これはアンダーローテーション(軽度の回転不足)でステップアウトとなります。続いては3フリップ+2ループのコンビネーションジャンプでしたが、ファーストジャンプが回転不足で下りてきてしまい氷に片手を付き、何とか2ループに繋げたものの大きくマイナスとなります。後半の3ループは完璧に成功させ、終盤は得意のステップシークエンスで浅田選手らしさを垣間見せたものの、納得のいかない演技に顔を曇らせました。得点は62.03点で5位に留まります。

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 フリーも冒頭は大技3アクセル、回転はほぼ回り切っていたものの着氷でこらえきれず転倒となります。さらに続く3+3もファーストジャンプの着氷で乱れ単独になり、暗雲が漂います。しかし、次の3ルッツを完璧に成功させると、後半に入って2アクセル+3トゥループは2つ目が回転不足と判定されたもののしっかり着氷。その後の3サルコウ、3フリップ+2ループ+2ループ、3ループは全てクリーンに決め、終盤は感情のこもった滑りで「蝶々夫人」の世界観を氷上に再現しました。得点は131.72点でフリー2位、総合3位に順位を上げました。
 SPはジャンプ構成を変更し、成功率の低かった3+3と3ルッツを外して挑みましたが、それによって気持ちが攻めの姿勢で演技できなかった面もあるかなと思いますね。ですが一夜明けたフリーは一転、3アクセルと3+3は決まらなかったものの、全体的によくまとまった思い切った滑りができていたと思います。演技前の表情を見てもショートよりは吹っ切ったような表情をしていて、ソチ五輪の時のように佐藤信夫コーチと話し合ったことが浅田選手を引っ張り上げてくれたのでしょうね。
 まだ今大会の演技で確固たる自信が浅田選手の心に根付いたとまでは言えないでしょうが、次に向けて明るい材料になったことは間違いありません。元々今季初戦から技術的な不安というのはほとんどうかがえませんでしたし、心配材料があるとすれば試合感覚やそれに伴う精神面だけでしたが、思った以上に浅田選手自身が気落ちしてしまい、自信を失ってしまったかなというのがありますね。ですが、競技復帰したばかりでピーク時のような状態に持っていくというのは酷なことですし、今大会をきっかけに多少なりとも気持ち的にリラックスして滑れるようになるといいなと思います。何といっても技術面では問題はないわけですし、特にルッツは今回パーフェクトに成功させているので、自分が今まで積み重ねてきた技術、経験、キャリアを信じて、シーズン後半も一歩一歩進んでいってほしいですね。


 惜しくも4位となったのは、前年2位の本郷理華選手です。

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 SPはGPから構成を変更し、冒頭は単独の3フリップを確実に着氷します。2つのスピンを挟んで後半、3トゥループ+3トゥループをパーフェクトに成功。最後の2アクセルも決めると、「キダム」の妖しげな世界観を全身で躍動感たっぷりに表現、情熱的に演じ切りました。得点は68.39点で2位と好発進します。

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 フリー冒頭はショートから難度を上げた3フリップ+3トゥループ、これを完璧に成功させ、続く3サルコウは片手を上げた跳躍でこちらも高い加点で好スタートを切ります。しかし、次の苦手としている3ルッツは転倒。しかし、後半は2アクセル+3トゥループ+2トゥループを始め、全てのジャンプを予定どおりにこなし、最後まで勢いを保ったままフィニッシュしました。得点は124.89点でフリー4位、総合4位となり2年連続のメダル獲得はなりませんでした。
 SPは確実性の高いジャンプ構成にすることで自信を持って生き生きと滑れていましたが、フリーは鍵となる課題の3ルッツの失敗が演技全体にも影響を及ぼしてしまったような印象を受けました。ステップシークエンスやつなぎの部分なども「リバーダンス」らしい振り付けでとても素晴らしいのですが、パーソナルベストをマークした中国杯の演技と比べると、少し動きの激しさだったり元気の良さだったりが大人しめかなと感じました。ジャンプがことごとく決まってくればさらに動きがキレキレになる選手だと思うので、シーズン後半ではシーズン前半で出し切れなかった部分を全て出し尽くしてほしいですね。


 5位は全日本ジュニア銀メダリストの白岩優奈選手です。

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 SPは「虹の彼方に」。冒頭の3フリップは踏み切りが不正確とされますが高さ、幅ともに充分で高い加点が付きます。さらに大技3ルッツ+3トゥループは完璧に成功。後半の2アクセルもクリーンに下り、スピンは全てレベル4を揃えました。得点は61.92点で6位と、全日本初出場にしてフリー最終グループ入りとなります。

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 フリーは「ナイト・ワルツ/悲しみのクラウン」。まずは得点源となる3ルッツ+3トゥループ、これをショート同様完璧に決めて上々の滑り出しを見せると、続く3サルコウ、3フリップ、2アクセルと次々にジャンプを綺麗に着氷。後半には高難度の3ルッツ+3トゥループ+2ループをクリーンに成功させ、全てのエレメンツで加点が付く会心の演技となりました。得点は124.41点でフリー5位、総合5位と見事初入賞を果たしました。
 今シーズンJGPで2連勝しブレイクした白岩選手。昨季は全日本ノービスAで4位、推薦枠で出場した全日本ジュニアでは27位でフリーに進めずと、決して際だって良い成績を残した選手ではありませんでしたが、今季はジャンプが安定して一気にジュニアのトップレベルへと駆け上がりましたね。JGPファイナルでこそ5位と表彰台には届きませんでしたが、どの大会でも安定して180点台前後をマークしていて、また、今大会のように否応にも緊張を強いられるような試合でものびのびと演技していて、度胸のある選手だなと感じます。
 それにしても今大会、濱田美栄コーチのチームは宮原選手、白岩選手、9位の本田真凛選手、10位の木原万莉子選手と、トップ10の中に4選手がランクインするという充実ぶりで、現在日本で最も勢いのあるチームと言っても過言ではありません。これだけの将来性豊かな若い選手たちが集まっているというのは、お互いに良い刺激になるでしょうから最高の環境ですね。



 さて、この記事はここで一旦終了と致しまして、続きは(後編)となります。では。


:記事冒頭の女子メダリスト3選手のスリーショット写真、宮原選手のSPの写真、樋口選手のSPの写真、浅田選手のSPの写真、本郷選手のSPの写真、白岩選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、宮原選手のフリーの写真、樋口選手のフリーの写真、浅田選手のフリーの写真は、写真画像サイト「Newscom」から、本郷選手のフリーの写真は、エンターテインメント情報サイト「Zimbio」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2015-12-30 17:41 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 全日本選手権2015、男子とアイスダンスの内容、結果についてお伝えする記事の後編です。前編はこちらをクリックしてご覧ください。

第84回全日本フィギュアスケート選手権大会 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 男子の6位となったのは全日本ジュニア王者、山本草太選手です。

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 SPの演目はフラメンコ「ポエタ」。まずは大技3アクセルでしたが、回転は十分だったものの転倒してしまいます。さらに後半に4トゥループを組み込みましたが、こちらは2回転となり規定により無得点に。最後の3+3もセカンドジャンプが回転不足で減点となり、全てのジャンプでミスが出てしまいました。得点は62.92点で11位に留まります。
 フリーはチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」。まずは前日失敗した3アクセル、今度も回り切ってはいましたが転倒で大きくマイナスとなります。続く4トゥループも転倒で厳しい序盤となりますが、前半最後の3ルッツはクリーンに決めて後半に向かいます。後半最初の3アクセルからの連続ジャンプは着氷ミスがありつつも最小限のミス。その後は3+3、3+1+3を含む難構成をしっかりこなし、全日本ジュニア王者の底力を見せつけました。得点は152.23点でフリー5位、前年と同じ総合6位でフィニッシュしました。
 今シーズンは大技の4トゥループ、3アクセルの安定に苦しみ、なかなか思ったような演技ができていない山本選手。ですが、フリーではそのほかのエレメンツをしっかりと揃えて、やはり並のジュニア選手ではない気持ちの強さ、大物感を感じさせられましたね。表現面でもシニア選手のような迫力、魅せる力が備わってきて、このあとのシーズンがますます楽しみになりました。世界ジュニア選手権では思い切った演技で、納得してシーズンを終えられるよう願っています。


 7位に入ったのは村上大介選手です。

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 ショートはまず得点源となる4サルコウをきっちり決め、しっかり加点も稼ぎます。さらに3アクセルも問題なくクリーンに下りて完璧な前半。後半は3ルッツ+3ループの高難度2連続3回転の予定でしたが、ファーストジャンプの着氷で詰まったためセカンドジャンプを2トゥループに。全て予定どおりとはいきませんでしたが、村上選手らしい安定したジャンプと美しい滑りを披露しました。得点は83.49点で4位につけます。
 フリーもまずは4サルコウからでしたが、これがすっぽ抜けて2回転となるミス。ですが、続く2本目の4サルコウはアンダーローテーション(軽度の回転不足)を取られながらも何とか着氷し2トゥループを付けて連続ジャンプとします。しかし、次の3アクセルで転倒すると、後半の3アクセル、3フリップなど、ほとんどのジャンプでミスが出てしまい、ステップシークエンスでも村上選手本来の滑らかな身のこなしが見られず、演技を終えた村上選手は肩を落としました。得点は131.07点でフリー8位、総合7位に順位を落としました。
 ショートでは実力を発揮し好位置につけた村上選手ですが、フリー当日の午前の公式練習で滑走中に羽生選手と接触。激しい衝突ではなかったためお互いすぐに立ち上がって大きな問題は無いように思われましたが、フリー後のインタビューで左膝を痛めていたことを明かしました。村上選手は公式練習のどの段階で痛めたとは明かしませんでしたが、演技では最初は普通にジャンプが跳べていたのが、途中から明らかに顔をしかめ片足をかばうような滑りに変わりました。村上選手自身は3アクセルの転倒で痛みが再発しパニックになったと話しましたが、以前も演技中に肩を脱臼している村上選手ですから、なぜこんなにも彼に不運が重なるんだろうと辛くなりますね。とにかく今はこの負傷が重傷でないことを祈るばかりです。


 8位には西日本選手権2位の日野龍樹選手が入りました。

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 SPは「アルメニアン・ラプソディ」。冒頭は3サルコウ+3トゥループを確実に決めると、3アクセルも丁寧に着氷。後半の3ルッツも成功させ、全てのエレメンツで加点を得る会心の滑りとなり、フィニッシュした日野選手は力強く拳を握り喜びを噛みしめました。得点は非公認ながらも自己ベストを上回る74.03点で7位と好発進します。
 フリーは「映画『キング・アーサー』より」。まずはショートでは入れなかった大技4トゥループ、これは回転不足で転倒となってしまいます。ですが、続く3アクセル+3トゥループ、3ルッツ+2トゥループと基礎点の高い得点源となる連続ジャンプ2つを完璧に成功させて立て直します。後半にも3アクセルを組み込み、こちらは着氷後にエッジが氷に引っかかり転倒というアンラッキーな形となったものの、その後は大きなミスなく演技をまとめました。得点は139.14点でフリーも7位、総合では8位となりました。
 昨シーズンから本格的にシニアに移行した日野選手。シニアに上がってからはなかなか思ったような演技ができず苦戦続きでしたが、今大会は多少なりとも消化不良を解消する演技になったんじゃないかなと思いますね。4トゥループはまだ習得中という感じですが、3アクセルはかなり質も良くなっているように見えますし、今回の経験を自信にしてこれからも焦らずじっくり実力をつけていってほしいですね。



 ここからはアイスダンスについて。

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 優勝したのは今季新たにカップルを結成した村元哉中&クリス・リード組です。

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 SDは全てのエレメンツを確実にこなし、レベルの取りこぼしもGOEの減点もなく演じ切り、58.36点で首位発進。フリーはツイズルがレベル2となる部分はあったものの、そのほかでは目立ったミスなく演技をまとめ、トップの座を守り切り、初優勝を飾りました。
 1年前はそれぞれ別のパートナーとのカップルで金メダル、銅メダルを獲得したリード選手、村元選手が、今はこうして息の合ったカップルとして全日本チャンピオンになるとは、時の経つのは早いものだと思います。6月に結成してから半年、まだ経験の浅い二人ではありますが、何か以前からこの二人で滑っていたかのような錯覚さえ覚える、カップルとしての違和感のなさ、ナチュラルさがあって素晴らしいユニゾンだと思います。技術的にも表現的にもこれからさらに伸びていく余地のあるカップルなので、四大陸選手権、そしてその先を楽しみに見守りたいですね。初優勝、おめでとうございました。
 2位は平井絵己&マリオン・デ・ラ・アソンション組。ショートでは少しミスがあり2位発進。フリーでは全てのエレメンツがプラス評価で技術点では村元&リード組を上回る出来。初の頂点には届かなかったものの、5年連続での2位となりました(平井選手は別のパートナーとのカップルで7年連続)。
 3位は森衣吹&鈴木健太郎組。こちらも今季結成したばかりのカップルですが、SD、FDともに3位で初めての表彰台に立ちました。



 ということで、全日本の男子とアイスダンスの大まかな結果については以上です。ここで、男子とアイスダンスの世界選手権、四大陸選手権、世界ジュニア選手権の代表選手を一覧でまとめます。その前に代表選考の基準、条件についてもおさらいしておきます。


《世界選手権代表選考方法(男子シングル)》

① 1人目は全日本選手権優勝者を選考する。
② 2人目は、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して決定する。
 A) 全日本選手権2位、3位の選手
 B) グランプリ・ファイナル出場者
 C) 全日本選手権終了時点での ISU ワールド・スタンディングの日本人上位3名
 D) 全日本選手権終了時点での ISU シーズンベストスコアの日本人上位3名


《四大陸選手権代表選考方法(男女シングル)》

全日本選手権終了時に、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
① 全日本選手権10位以内
② 全日本選手権終了時点での ISU ワールド・スタンディング日本人上位6名
③ 全日本選手権終了時点での ISU シーズンワールドランキング日本人上位6名
④ 全日本選手権終了時点での ISU シーズンベストスコア日本人上位6名


《世界ジュニア選手権代表選考方法(男女シングル)》

① 1人目は全日本ジュニア選手権優勝者を選考する。
② 2人目及び3人目はジュニア対象年齢で派遣希望のある選手の中で、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
 A) 全日本ジュニア選手権3位以内の選手
 B) ジュニア・グランプリ・ファイナル出場者
 C) 全日本選手権参加者のうち上位3名
 D) 全日本選手権終了時点での ISU シーズンワールドランキング日本人上位3名
 E) 全日本選手権終了時点での ISU シーズンベストスコア日本人上位3名



《世界選手権代表》

男子シングル:羽生結弦、宇野昌磨


《四大陸選手権代表》

男子シングル:宇野昌磨、無良崇人、田中刑事
アイスダンス:村元哉中&クリス・リード組、平井絵己&マリオン・デ・ラ・アソンション組


《世界ジュニア選手権代表》

男子シングル:山本草太、中村優、宮田大地
アイスダンス:深瀬理香子&立野在組




 まずは世界選手権から。今季の世界選手権の男子の代表枠は2枠。条件の①②両方に当てはまる羽生選手は大会前からほぼ確定と言われていたのでいわずもがなでしょう。
 そして羽生選手を除いて条件の②に当てはまるのは、全日本2位かつGPファイナル出場者かつワールドスタンディング日本人2位かつシーズンベスト日本人2位の宇野選手、全日本3位かつワールドスタンディング日本人3位の無良選手、GPファイナル出場者かつシーズンベスト日本人3位の村上選手の3名。となると、やはりより多くの条件に合致する宇野選手が必然的に代表選出ということになりますね。
 それにしても今季は男子の枠が2つしかないということで、3枠でも足りないと思うほど層が厚いのに2枠というのはやはり苦しいですね。羽生選手と宇野選手の実力を考えれば、すぐに3枠に戻してくれることは間違いないと思うので、3月の世界選手権は2選手の演技はもちろんのこと、枠取りにも注目したいと思います。
 アイスダンスに関してはどの大会においても国際的な競技力を考慮して選考するという文言になっています。が、世界選手権に出場するためのミニマムスコア(最低技術点)をSD、FDともにクリアしているカップルがいないため、現時点での代表決定は見送られました。ですが、年明け以降の国際大会でミニマムスコアを獲得すればカップルを1組派遣できますので、その際は全日本チャンピオンの村元&リード組が選ばれるものと思います。村元&リード組はNHK杯でFDのミニマムスコアはクリアしているので、あとはSDのみとなります。1月6日からポーランドで開幕するトルンカップにさっそく出場する予定ですので、そこで派遣条件クリアとなることを願っています。

 そして、四大陸選手権に関してですが、全日本の2、3、4位がそのまま派遣される形となりました。今回選ばれた3選手のほかにも、今大会は振るわなかったもののGPで好成績を収めファイナルに進出、ISUの種々のランキングでも上位に入っている村上選手を選出するという選択肢もあったと思うのですが、四大陸の代表選出の場合はファイナル出場者という条件があるわけではないので、その点で村上選手にとっては有利に働かなかったと言えます。また、全日本4位の田中選手もワールドスタンディング、シーズンワールドランク、シーズンベストと全てで日本人上位6位に入っていますから、そのあたりが評価されたのではないかと思います。

 最後に、世界ジュニア選手権は全日本ジュニア王者の山本選手が第一に選ばれました。残りの2枠の条件に山本選手を除外した上で当てはまるのは、②のA)は友野一希選手、宮田選手、B)は該当者なし、C)は中村選手と宮田選手、D)はシニア選手を除くという意味合いで考えて、島田高志郎選手と宮田選手、E)も同様に島田選手と宮田選手となります。ここに挙げた多くの条件に該当する宮田選手はかなり優位に立てますが、中村選手は全日本ジュニアでも5位と表彰台に上がれず、今季は国際大会でも目立った成績は残せていません。が、全日本という大舞台での9位という好成績が効いて、逆転で世界ジュニアの切符を掴みましたね。



 男子&アイスダンス編はここで終了。次は女子&ペア編に続きます。


:男子メダリスト3選手のスリーショット写真は、写真画像サイト「Newscom」から、山本選手の写真、村上選手の写真、日野選手の写真、村元&リード組のSDの写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、アイスダンスメダリスト3組の写真、村元&リード組のFDの写真は、エンターテインメント情報サイト「Zimbio」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
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全日本選手権2015・女子&ペア―宮原知子選手、圧巻の2連覇(後編) 2016年1月6日
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by hitsujigusa | 2015-12-29 03:13 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 日本の精鋭たちが一堂に会する全日本選手権2015。世界選手権、四大陸選手権、世界ジュニア選手権の代表を決定する最終選考会でもあり、独特の緊張感に包まれた大会となりました。この記事ではまず、男子とアイスダンスの結果についてお伝えします。
 男子を制したのはもちろん、昨年まで全日本3連覇中のエース、羽生結弦選手。ミスがありながらも他を寄せ付けぬ圧倒的な実力を持って4連覇の偉業を達成しました。2位は昨年に引き続き宇野昌磨選手、3位は無良崇人選手で、3年ぶりの表彰台となりました。
 アイスダンスは今シーズン新たに結成した村元哉中&クリス・リード組が初優勝を果たしています。

第84回全日本フィギュアスケート選手権大会 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 全日本王者となったのは羽生結弦選手です!

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 ショートの冒頭は大技4サルコウ、回転は十分でしたが転倒となります。しかし、直後の4トゥループ+3トゥループは完璧に成功させて全てのジャッジが加点3をつけます。後半の3アクセルはいつもの着氷と比べると若干ランディングに詰まりが見られたもののクリーンに決め、スピン、ステップシークエンスは全てレベル4。思いがけない序盤のミスから確実に挽回し、得点は102.63点で断トツの首位に立ちました。

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 フリーも冒頭は4サルコウ、ショートで失敗したジャンプでしたが今度はパーフェクトに下りて高い加点を得ます。さらに単独の4トゥループもクリーンな跳躍と着氷でこちらも加点3の高評価。続く3フリップも難なく着氷して上々の前半となります。後半1発目は4トゥループ+3トゥループの高難度連続ジャンプでしたが、4トゥループが回転不足で下りてきてしまい転倒、さらに直後の3アクセルも回転不足で転倒と大きなミスが相次ぎます。その後の3アクセル+1ループ+3サルコウ、3ループも着氷こそしたものの細かなミスがあり本来の出来とはならず。最後の3ルッツはクリーンに決め、エネルギッシュなコレオシークエンスで観客を沸かせ力強く演技を締めくくったものの、精彩を欠いた内容に羽生選手は悔しそうに顔を歪めました。それでも得点は183.73点と十分に高得点をマークし、4度目の栄冠に輝きました。
 ショート、フリーともに羽生選手らしからぬミスがあり、やはり連戦の疲労というのが色濃くうかがえましたね。11月下旬のNHK杯、12月上旬のGPファイナル、そして今大会と、約1か月のあいだに3つ試合をこなしているわけですから疲れないはずがないですし、ましてやNHK杯、ファイナルと連続して世界最高得点を記録するという驚異的な滑りを見せ続けていたので、その2試合にかなりの集中、全力を注いでいて、今大会でさらに同じレベルの演技を見せるというのはさすがの羽生選手といえども難しかったでしょうね。
 ただ、アスリートは数か月ある1シーズンの中で好不調というよりも、ピークの波の高低があるのが普通ですから、ここで一旦落として世界選手権で再び上げると考えれば、今大会も通過点としては決して悪くないと思います。それにしても、こうして羽生選手がいくつかミスを犯して、それでようやく羽生選手が普通の人の子であることを確認できるという気がして、不思議な感じがします。
 今大会は納得のいかない演技で悔しい思いをしたと思いますが、この経験をも間違いなくプラス要素に変えるでしょうから、世界選手権では羽生選手らしい演技を楽しみにしています。4連覇、おめでとうございました。


 銀メダリストは宇野昌磨選手です。

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 SP冒頭は3アクセル、これを完璧に決めて加点3を得ると、続く2つのスピンはきっちりとレベル4を獲得。後半に2つのジャンプ要素を組み込むアグレッシブな構成で、1つ目は得点源となる4トゥループ、これを着氷でこらえながらも確実に下ります。そして3+3もクリーンに成功させ、終盤のステップシークエンス、スピンもレベル4。全てのエレメンツを予定どおりに揃えた安定した演技で、得点は97.94点と非公認ながらも初めて90点台に乗せ、2位と好発進しました。

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 フリーはまず4トゥループでしたが、パンクして2回転となります。ですが、続く3アクセルをクリーンに下りると、次の3アクセル+3トゥループも完璧に成功。後半に入り、3ループ、3サルコウ、そして大技の4トゥループ、3ルッツと次々にジャンプを着氷。最後のジャンプは2アクセルからの3連続コンビネーションの予定を変更して4トゥループに再トライしましたが、残念ながらこちらも2トゥループとなります。しかし、フィニッシュした宇野選手は清々しい表情で充実感を漂わせました。得点は169.21点でフリー3位、2年連続で総合2位となりました。
 フリーは冒頭で思いがけないミスがありましたが、その後の立て直しは見事で、トップ選手の貫録を感じましたね。その一方で驚かされたのがフリーラストの4トゥループの再挑戦。フリーはそこまでの時点で3アクセルも2本完璧に成功させ、後半に4トゥループ1本を決めていたことを考えると、あえてもう一度4トゥループを跳ぶ必要性は全くなく、むしろ予定どおり2アクセル+1ループ+3フリップを跳んだ方が確実性は高かったわけですが、宇野選手はこのパターンになった時にもう一度4トゥループに挑む練習をしていたといいます。現時点での目先の勝利や好成績を追っかけるだけではなく、将来的にいろんなシチュエーションに対応できるようにするために今からリスキーなチャレンジをしておくというのが宇野選手らしいなと思いますね。
 また、成績的には昨年と同じ2位ですが、ジュニアとして楽しみながらのびのびと滑っていた昨年とは違い、今年はシニアのトップ選手として追いかけられる立場で臨んだわけで、インタビューなどの受け答えを見ても昨年の控えめな姿勢から今年は基本的な謙虚さは変わらないものの、自信が表情や言葉の端々から滲み出ていて、立場が人を変えるとはよく言ったものですが、1年でここまで頼もしくなるものかと感慨深くなりましたね。
 年明けは四大陸選手権、そして初めての世界選手権を控える宇野選手。まずは昨シーズン悔しさを味わった四大陸選手権で実力を発揮できるよう祈っています。


 3位に入ったのは無良崇人選手です。

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 SP冒頭は得点源の4トゥループ+3トゥループ、これをパーフェクトに決めて2点の高い加点を得ます。さらに代名詞の3アクセルは高い跳躍と滑らかなランディングで2.14点の高評価。後半の3ルッツも難なく下りて、今シーズン新たに強化したステップシークエンスでは細かな身体づかいと小刻みな足さばきで観客を引き込み、演技を終えた無良選手はガッツポーズで喜びを露わにしました。得点は93.26点で非公式ながら初めて90点台をマークし、3位の好位置につけました。

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 フリーも冒頭は4トゥループから、これを着氷で片手を付きながらも何とかこらえ最小限のミスに抑えます。そして2つ目の4トゥループはしっかりと2トゥループを付けて成功。続いては得意の3アクセルでしたが、踏み切りのタイミングが合わずすっぽ抜けて1回転になる大きなミス。ですが、直後の3サルコウを3アクセルに急遽変更して挑み、クリーンに成功させすぐに挽回します。そしてスピンとステップシークエンスを挟んだ後半、1つ目は3アクセル+2トゥループの予定でしたが、ファーストジャンプの3アクセルを綺麗に下りると2つ目を3トゥループに変えて跳び、ステップアウトしたものの高い得点を稼ぎます。その後も3+1+2の3連続ジャンプの3つ目を3回転にするなど演技中に構成を変えつつ冷静にプログラムをこなし、最後まで躍動的に滑り切りました。得点は170.20点で全日本での自己最高点をマークしフリー2位、総合3位で3年ぶりとなる銅メダルを獲得しました。
 ショート、フリーともに無良選手らしい勢い、エネルギーを感じる演技でしたね。特にショートはジャンプが揃ったことで演技全体が生き生きとして、ソチ五輪アイスダンス王者のチャーリー・ホワイトさん振り付けの「黒い瞳」を見事に自分のものにしていたと思います。そしてフリーは演技序盤で得点源の3アクセルがパンクするというドキッとするようなミスがありましたが、そこからの巻き返し、構成変更のスムーズさが素晴らしかったです。また、無良選手の場合、4回転や3アクセルといった大技に集中を注ぎ込みすぎて、その後の難度の低いジャンプに綻びが出てしまうパターンがしばしばあったのですが、今回はその課題もしっかり改善されていて良かったです。今後の課題としてはジャンプの安定は無論のこと、今回はスピンの取りこぼしも目立ったので、より丁寧に細部まで神経を行き渡らせることができると、プログラムとしてももっと美しく洗練されたものになると思うので、四大陸選手権ではそのあたりに注目して楽しみにしたいですね。


 4位となったのは田中刑事選手です。

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 ショートの冒頭は大技の4サルコウに挑みましたが、パンクして2回転となり、ステップからの単独ジャンプは3回転以上でなければいけないというルールによってキックアウト、無得点となります。ですが、直後の3アクセルは確実に着氷して加点を得ると、後半の3+3もきっちり跳び、巻き返して演技を終えました。得点は非公認ながらも自己ベストを上回る74.19点で6位発進となりました。

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 フリーも冒頭は4サルコウ、これを回り切って下りたものの着氷でこらえきれずステップアウトしてしまいます。ですが、続く3アクセルをパーフェクトに決めると、3+3も完璧に着氷。後半に入っても1つ目の3アクセル+2トゥループを確実に成功させ、その後の全てのジャンプを予定どおりにクリアしていき、終わってみれば最初の4サルコウの失敗以外はノーミスで全て加点が付く会心の演技で、フィニッシュした田中選手はガッツポーズで歓喜を表現しました。得点は167.86点でフリー4位、総合でも4位で全日本自己最高位となりました。
 ショート、フリーともに田中選手の特長、魅力がよく凝縮された素晴らしい演技だったと思います。大技の4サルコウは成功しませんでしたがその他はパーフェクトで、ジャンプ一つ一つの質も高く、スピンやステップシークエンスでも目立った取りこぼしなく、長年期待されながらもあともう一歩というところで留まっていた芽がようやく芽吹いたなという感じがしました。体格にも恵まれていますし、総合力という点でもバランスの取れた選手ですので、これからまだまだ伸びていくと思うと本当に楽しみです。まずは1月の四大陸選手権でベストな演技を見せて、さらに世界に向けて“田中刑事”という存在をアピールしてほしいと思います。


 5位はベテランの小塚崇彦選手です。

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 ショートはまず4トゥループから、これをアンダーローテーション(軽度の回転不足)ながらも何とか着氷。続く3アクセルはクリーンに下ります。後半は3+3のコンビネーションジャンプの予定でしたが、ファーストジャンプで乱れがありセカンドジャンプは2回転に。ですが、得意のステップシークエンス、スピンでは小塚選手らしい滑らかさ、しなやかさ、クオリティーを存分に発揮し、ミスがある中でも演技を手堅くまとめました。得点は78.19点で5位につけます。

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 フリーもまずは4トゥループからでしたが、こちらも回転不足で転倒してしまいます。さらに続く2本目の4トゥループはパンクして2回転に、3アクセルは転倒にとミスの多い前半となります。しかし、後半最初の3アクセル+2トゥループ+2ループを決めると、3+3も回転不足ながら着氷。その後の3つのジャンプも大きなミスなくまとめ、最後は小塚選手らしい美しい流れるようなスケーティングで演技を締めくくりました。得点は150.63点でフリー6位、総合5位で自身12度目となる全日本を終えました。
 今シーズンはGP中国杯前に怪我があり、調整が遅れた小塚選手。今大会も決してベストな状態ではありませんでしたが、その中でも今出来る精一杯のことをできたんじゃないかなと感じました。フリーに関しては演技直前の練習中に靴紐がホックから抜けるアクシデントがあり、名前をコールされてから30秒以内にスタート位置につかなければいけないという制限時間ギリギリになってしまったので、演技前半はその影響がやはりあったのだろうと思いますが、中盤以降は落ち着いて本来の動きを取り戻して、さすがベテランという心の強さを見せましたね。
 今後小塚選手が競技者としてどういう判断を下すのか分かりませんが、今大会中は「体は戻ってきた」「体は動いている」と前向きな言葉も発しているので、個人的にはまだやれるというところを見せてほしいなと思いますね。



 さて、この記事はここで一旦終了と致しまして、男子の6位以下の選手について、アイスダンスの結果について、男子とアイスダンスの国際大会代表選手については(後編)で書いていきますので、引き続きそちらもお読み頂ければ幸いです。


:記事冒頭の男子メダリスト3選手のスリーショット写真は、写真画像サイト「Newscom」から、羽生選手のSPの写真、羽生選手のSPの写真、無良選手のフリーの写真、田中選手の写真、小塚選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、羽生選手のフリーの写真、宇野選手のフリーの写真、無良選手のSPの写真は、エンターテインメント情報サイト「Zimbio」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2015-12-28 18:51 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 スペインのパルセロナにて行われたグランプリファイナル2015。同時進行で開催されたのがジュニアのグランプリファイナル2015です。この記事ではざっくりとジュニアグランプリファイナル(JGPF)について結果をまとめたいと思います。

ISU Junior Grand Prix Final 2015/16 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

《女子シングル》


 まずは女子ジュニアからです。上の写真でもお分かりのとおり、ロシア勢のワンツーフィニッシュとなりました。
 優勝したのはポリーナ・ツルスカヤ選手。シリーズ1位通過の勢いそのままに、ファイナルでもショート、フリー合わせてマイナス要素の一つもない圧倒的な完成度でパーソナルベストを更新、195.28点というシニアにも匹敵するハイスコアで堂々の初優勝を果たしました。ツルスカヤ選手は現在14歳ですが国際スケート連盟のプロフィールによると168cmと高身長で、今季のフリーでは7つのジャンプのうち6つを後半に跳ぶという驚異的な構成を組んでいます。本当に末恐ろしい選手ですが、今後はロシア選手権で強力なシニアの選手たちと直接対決することになるのも興味深いですし、何といっても3月の世界ジュニア選手権が楽しみですね。
 2位は同じくロシアのマリア・ソツコワ選手。ショートでは細かなミスがあって僅差の4位となったのですが、フリーでは全てのエレメンツで加点を積み重ね挽回して銀メダルを獲得しました。ソツコワ選手はツルスカヤ選手同様に身長が高く、公式プロフィールでは170cmと記載されており、これだけ身長が伸びるとジャンプのバランスを保つのも難しい面があると思うのですが、そのせいかジャンプの加点はそんなにもらえていないものの、確実にまとめる力があってさすが2度のJGPF経験者だなと感じました。
 もう一人のロシア勢、アリサ・フェデチキナ選手は4位となりました。

 そして、3位には日本の本田真凛選手が入り、昨年の樋口新葉選手に続いて2年連続での日本女子表彰台確保となりました。SPで完璧な演技を披露して自己ベストで3位と好発進すると、フリーでは3+3や3フリップのミスこそあったものの大崩れすることなく演技をまとめ、見事銅メダルを手にしました。ジャンプで大きなミスが少なかったのはもちろんですが、表現面を評価する演技構成点でSP2位、フリー3位と点数を稼いでいて、今後さらにジャンプが安定してくればますます楽しみだなと思います。
 白岩優奈選手、三原舞依選手はそれぞれ5位、6位となりました。白岩選手はショート、フリー通してミスらしいミスが一つしかなく(フリーの3+3の転倒)、ジャンプ構成だけ見ると十分表彰台に手が届いてもおかしくなかったのかなと思うのですが、演技構成点で上位の選手とは少し差があるので、そのあたりがこれからの伸びしろですね。三原選手もそんなにミスが多かったわけではないですが、得点源となる連続ジャンプのパンクやダウングレード(大幅な回転不足)といったミスが響いたかなという感じですね。


《男子シングル》


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 表彰台の顔ぶれは、ファイナル進出順位そのままの結果となりました。
 優勝者となったのはアメリカのネイサン・チェン選手。SPでパーソナルベストを更新する演技で首位に立つと、フリーでは3本の4回転に挑み、そのうちの1本を連続ジャンプで成功。複数ミスがありつつも他を寄せ付けず大差で初優勝を勝ち取りました。
 2位はロシアのドミトリー・アリエフ選手。こちらもショートで自己ベストをマークして2位と好発進しましたが、フリーでは4回転や3アクセルなどミスを連発。ただ、ショートのアドバンテージを活かして逃げ切っての銀メダル獲得となりました。

 そして、日本の山本草太選手は3位となり、2年連続で表彰台に立ちました。ショートでは3アクセル、足替えキャメルスピンでミスがありながらも3位につけ、フリーは4トゥループ2本、3アクセル2本を組み込んだ難しいジャンプ構成で臨んだものの1本もクリーンに決まらず、4位と0.75点差という超僅差で銅メダルを手にしました。2年連続で表彰台に上がったとはいえ、今回の得点、内容は山本選手のベストからすると程遠いものなので納得はいかないでしょうね。ただ、フリーは終盤に3+3と3+1+3をクリーンに決めてミスした分を取り返し、昨年の銀メダリストとしての意地を見せました。成長期の真っただ中で調整の難しさもあるでしょうが、苦しい中でもメダルを取れたことを自信にして、次の全日本に向かっていってほしいですね。

 以下、4位はアメリカのヴィンセント・ゾウ選手、5位はイスラエルのダニエル・サモヒン選手、6位はカナダのローマン・サドフスキー選手となっています。
 今大会のジュニア男子はショートこそ6人中3人がパーソナルベストを更新する内容でまずまずでしたが、フリーは全ての選手が4回転に挑みながらもなかなか決まらず苦しめられ、全体的にジャンプミスが多い低調な展開となりました。現在のシニア男子のハイレベルな戦いを目にしてしまうと、ジュニアも成功率が低くても今から4回転を入れていかなければと考えるのは当然のことですね。ジュニアでさえ4回転を複数、数種類を跳ぶのは当たり前という、男子フィギュア界の劇的な進化に時代の移り変わりを感じますね。


《ペア》


 ペアは6組中4組がロシア勢となりましたが、表彰台は1位、3位がロシア勢、2位がチェコのペアという結果となりました。
 優勝したエカテリーナ・ボリソワ&ドミトリー・ソポト組はシリーズ成績では全体の3位でしたが、ショート、フリーともに大きなミスのない演技でパーソナルベストを大幅に更新し、初の栄冠に輝きました。
 2位に入ったチェコのアナ・ドゥシュコヴァ&マルティン・ビタジュ組も、シリーズ成績では5位だったものの、こちらも自己ベストを更新してロシア勢の中に割って入りました。
 そして、シリーズ成績1位のアミナ・アタハノワ&イリヤ・スピリドノフ組は得点的にはパーソナルベストとほぼ同じでしたが、フリーでジャンプミスやツイストのレベルの取りこぼしがあったため技術点で最下位となり、総合3位となりました。
 4位はロシアのアナスタシア・グバノワ&アレクセイ・シンツォフ組、5位はウクライナのレナータ・オガネシアン&マルク・バルデイ組、6位はロシアのアナスタシア・ポルヤノワ&ステパン・コロトコフ組となっています。


《アイスダンス》


 アイスダンスはシリーズ成績トップでファイナルに進出したロレイン・マクナマラ&クイン・カーペンター組が実力どおりの優勝を果たしました。
 2位はシリーズ成績3位、ロシアのアッラ・ロボダ&パヴェル・ドロースト組。SDで自己ベストをマークして3位と好位置につけると、FDでは目立ったミスなく演技を手堅くまとめて2位、総合でも順位を上げて銀メダルを獲得しました。
 3位はシリーズ成績2位のアメリカのレイチェル・パーソンズ&マイケル・パーソンズ組。ショートはノーミスの演技で首位と僅差の2位と好発進しましたが、フリーはツイズルでのミスやステップでのレベルの取りこぼしがあり5位、総合3位とショートから順位を落としました。
 以下、4位はロシアのベティナ・ポポワ&ユーリ・ブラセンコ組、5位はフランスのマリー=ジャド・ローリオ&ロマン・ルギャック組、6位はロシアのアナスタシア・スコプツォワ&キリル・アリョーシン組となりました。



 ジュニアの選手たちはこのあとそれぞれの国内選手権などを経て、シーズン終盤の世界ジュニア選手権に臨むこととなります。シニア同様にハイレベルかつ熱い戦いに今後も注目していきたいと思います。


注:記事冒頭の女子メダリスト3選手のスリーショット写真は写真画像サイト「Newscom」から、男子メダリスト3組のスリーショット写真はスポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2015-12-18 18:18 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 スペインのバルセロナで行われたグランプリファイナル2015、男子とアイスダンスの結果についてお伝えします。
 男子は日本の羽生結弦選手が330点を超える驚異的な得点で優勝し、一昨年、昨年に続く3連覇を成し遂げました。銀メダリストはスペインのハビエル・フェルナンデス選手で、こちらは2年連続となる2位となりました。3位には日本の宇野昌磨選手が入り、GPデビューシーズンで表彰台という史上初の快挙を達成しました。
 アイスダンスを制したのはカナダのケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組。昨年に続く2連覇となりました。

ISU Grand Prix Final 2015/16 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 男子の金メダリストとなったのは日本の羽生結弦選手です!

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 ショートの冒頭は大技4サルコウ、これを入り方から着氷後のランディングまで完璧に下り、加点3を得ます。さらに続く4トゥループ+3トゥループもパーフェクトで加点3。後半に組み込んだ3アクセルも難なく決め、安定感抜群の演技を披露しました。得点は先月のNHK杯でマークした自身が持つ世界最高得点をまたもや更新する110.95点。圧倒的な大差で首位発進しました。

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 フリーもまずは4サルコウから、これをショート同様の美しさで決めると、続く4トゥループも成功。3フリップもクリーンに着氷し、非の打ちどころのない前半となります。後半も4トゥループ+3トゥループで幕を開けると、3アクセルからの高難度連続ジャンプ2つもあっさりと成功。残りの3ループ、3ルッツも確実に下り、減点するべきところがない圧巻の演技で会場を熱気で包みました。得点はパーソナルベストを更新する219.48点、総合で330.43点と世界最高得点を2大会連続で塗り替え、男子では史上初の大会3連覇を果たしました。
 2週間前のNHK杯で歴史的な演技を見せてくれた羽生選手。あの時はこの演技、記録をファイナルですぐに超えるのは難しいだろうと思ったのですが、何てことなかったですね。正直フリーの演技に関してはNHK杯の時の方がカナダ大会で2位に終わった悔しさがもたらす気迫に満ちていたように感じるのですが、今回は“NHK杯の自分との戦い”という中でそれに負けまいという気持ちが演技からも、リンク外の姿からもひしひしと感じられました。羽生選手のインタビューで、「(ミスをすれば)こんなもんで優勝するのかと思われる」といった感じの言葉があったのですが、スコアがずば抜けている羽生選手なら一つや二つのミスくらいでは普通に優勝できてしまうでしょう。だからこそミスできない、ミスしても勝てるからこそ、そんな勝ち方はできないという、ノーミスが当たり前になっている羽生選手ならではの苦しみというのが伝わってきましたね。前人未到の領域に足を踏み入れるということは、誰も味わったことのない精神の領域にも足を踏み入れるということでもあり、改めて彼が現在置かれている立場の異次元さ、というか異常さを思い知らされた気がしました。
 羽生選手の次戦は4連覇が懸かるNHK杯。羽生選手が普通に演技すれば問題なく優勝するでしょうが、世界最高得点保持者としての期待、プレッシャーも背負っての演技になります。羽生選手がどんな演技を見せてくれるのか、楽しみにしたいと思います。ファイナル3連覇、おめでとうございました。


 2位となったのは地元スペインのハビエル・フェルナンデス選手です。

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 SPの冒頭は得意の4サルコウでしたが、着氷で大幅に乱れてしまいます。続く3+3はセカンドジャンプが2回転に。ですが、後半の3アクセルは完璧に決め、また、ほかのエレメンツでも取りこぼしなくしっかり加点を稼ぎ、91.52点で2位につけました。
 フリーはまず単独の4トゥループからでしたが、こちらも着氷でステップアウトし減点となります。しかし、直後の4サルコウ+3トゥループの高難度連続ジャンプはパーフェクトに成功。さらに3アクセルもクリーンに決めて見事に立て直します。後半に入っても単独の4サルコウ、3+1+3などジャンプを全て予定どおりに着氷。母国の観客の熱狂の中、ノーミスに近い演技を披露しました。得点は自身初の200点超えとなる201.43点、トータルでも初めて290点を超え、2年連続で銀メダルを獲得しました。
 チラホラとミスはありましたが、地元のプレッシャーの中、崩れることなくフェルナンデス選手らしい演技を見せてくれましたね。やはりスペイン開催ということもあっていつも以上にGOEの加点や演技構成点は高めだったかなという印象ですが、現世界王者の貫録ある演技だったと思います。フリーで200点を超えたことによって、ここからさらに選手として一段格を上げることも可能だと思うので、4連覇が懸かる欧州選手権、そして連覇が懸かる世界選手権では演技内容と得点の両方で期待大ですね。


 3位に入ったのはファイナル初出場、日本の宇野昌磨選手です。

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 ショートはまず3アクセルから、これを完璧に成功させて2.43点の高い加点を獲得。そして後半に2つのジャンプ要素を組み込み、その1つ目は4トゥループでしたが、こちらはアンダーローテーション(軽度の回転不足)で転倒してしまいます。しかし、続く3フリップ+3トゥループですぐに立て直し、スピン、ステップシークエンスでは全てレベル4を揃えるなど細部まで神経の行き届いた演技を見せました。得点は86.47点で4位の好位置につけました。

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 フリーの冒頭は4トゥループ+2トゥループの連続ジャンプ、これをクリーンに着氷すると、続く3アクセル+3トゥループ、単独の3アクセルも申し分ない出来で、この前半の3つのジャンプ全てで2点以上の高い加点を積み重ねます。後半も3ループ、3サルコウと得意のジャンプをさらりとこなし、終盤のカギとなる単独4トゥループをしっかり着氷。3ルッツの不正エッジによって減点を取られる場面はあったものの、最後の2アクセル+1ループ+3フリップの高難度3連続コンビネーションも決め、演技を終えた宇野選手は満面の笑みでガッツポーズを見せました。得点は自己ベストを10点以上上回る190.32点をマークし、見事に銅メダルを手にしました。
 ショートでは4トゥループの転倒こそありましたが、技術面でも表現面でも引きつけられる滑りができていました。フリーで2本の4トゥループ、2本の3アクセルを含む高難度のプログラムをほぼクリーンに滑り切ったのはもちろんのこと、プログラムの芸術面においても今季がシニア本格参戦1年目と思えない、シニアの実力者たち相手にも全く劣らぬ風格さえ感じさせるような演技で、特にフリーの「トゥーランドット」は宇野選手が作り出す世界観に会場中が飲み込まれていくもの凄いヒートアップぶりがテレビ画面からも伝わってきました。男子選手がGPシリーズデビューシーズンにファイナルの表彰台に立つのは史上初の快挙で、得点的にもフリーで歴代5位、トータルでも歴代6位となって一気に世界のトップ中のトップの仲間入りをしたわけですが、得点のこと以上に演技・表現のインパクトが凄まじく、世界のフィギュアファンの脳裏にも強烈な印象を深く植えつけたんじゃないかなと思いますね。
 次戦の全日本選手権は2年連続の表彰台、そして初の世界選手権のチケットが懸かる試合になりますが、これまでどおり順位や結果にとらわれることなく、宇野選手らしくのびのびと滑ってほしいなと願っています。


 4位は元世界王者、カナダのパトリック・チャン選手です。

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 SPはまず得点源の4トゥループ+3トゥループでしたが、ファーストジャンプが3回転になったため単独とします。ですが、続く苦手の3アクセルは確実に着氷してミスを連発はさせません。しかし、後半に3ルッツ+3トゥループを跳び、3トゥループを2本跳んでしまったため規定違反となり、3+3が丸ごと無得点に。さらに直後の足替えキャメルスピンでも足を替えたところで珍しくバランスを崩し規定の回転数を満たせず無得点となり、フィニッシュしたチャン選手は顔を曇らせました。得点は70.61点で6位と出遅れました。
 フリー冒頭はショートで成功させられなかった4+3、これを今度は完璧に下りて2.71点の高い加点を得ます。さらに続く3アクセル、単独の3トゥループもクリーンに決め、上々の滑り出しを見せます。後半も3+2、3+2+2など、全てのジャンプを予定どおりに着氷し、演技を終えたチャン選手はホッとしたように微笑みました。得点はシーズンベストとなる192.84点でフリー3位、総合4位に順位を上げました。
 1年の休養から復帰したばかりのチャン選手ですが、さすが元世界チャンピオンという部分も垣間見せつつ、復帰直後の苦労もここまでのシーズンで見せていますね。女子の浅田真央選手やアデリナ・ソトニコワ選手もそうですが、試合から遠のいていたことによって失われた試合勘は実戦を重ねることでしか取り戻せないので、チャン選手もいろんなことを確かめながら競技に取り組んでいるという感じがします。チャン選手の場合、フリーはまだ4回転1本で休養前からレベルを落として臨んでいますが、だからといって楽に滑っているかというと全くそんなことはなく、今大会の演技を見てもむしろ余裕なく、かなり慎重かつ神経質になっているなという雰囲気がヒシヒシと感じられました。
 また、もう一つ気になったのは演技構成点です。以前であればチャン選手が今大会のフリーのように減点が一つもない演技をすれば演技構成点でトップに立つのが普通だったと思うのですが、今回はチャン選手が96.08点、フェルナンデス選手が96.78点、羽生選手が98.56点で、チャン選手は全体の3番手なんですね。羽生選手は本当にクリーンプログラムでしたから彼に負けるのは致し方ないとしても、フェルナンデス選手は1つジャンプミスがあった中でこの得点ですから、スペイン開催ということを考慮してもこの順位は意外な気がしました。チャン選手のフリーの自己ベストの時(エリック・ボンパール杯2013)の演技構成点は96.50点なのでチャン選手の評価自体はさほど変わっていないですし、今後ジャンプ構成がさらに難しいものになれば演技構成点もさらにアップするでしょうが、一つ言えることはかつてのようにチャン選手が演技構成点で圧倒的な優位に立てる時代ではなくなったということですね。今更ですが、チャン時代の終焉を改めて感じました。
 チャン選手の次戦はカナダ選手権。今のチャン選手の実力を持ってすればカナダ王者に返り咲くことはそう困難なことではないと思いますが、シーズン後半の国際大会を占う意味でもチャン選手がどんな演技を見せるのか、要注目です。


 5位は中国の新星、金博洋(ジン・ボーヤン)選手です。

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 SPの冒頭は代名詞の大技4ルッツからの連続ジャンプ、ファーストジャンプはパーフェクトに着氷しましたが、2つ目の3トゥループがアンダーローテーションで詰まり気味のランディングとなります。続く3アクセルはクリーンに着氷。しかし、後半の4トゥループは着氷で大幅に乱れ、全体的にジャンプの着氷ミスが目立つ演技となりました。得点は86.95点と先月のNHK杯でマークした自己ベストから9点ほど低い得点になりましたが、順位的には3位と好位置につけました。
 フリーもまずは得意の4ルッツからで、着氷でオーバーターンしながらも踏みとどまって大きなミスにはしません。ですが、続く4サルコウでステップアウト、3アクセルで転倒し、前半はらしからぬミスが相次ぎます。後半も細かなミスがいくつかありましたが、2本の4トゥループは完璧に決めるなどミスを最小限に抑え、演技をしっかりまとめあげました。得点は176.50点でパーソナルベストを更新しフリー5位、総合得点ではチャン選手と同じ263.45点となりましたがフリーの得点が高い方が上位となるため、金選手は5位となりました。
 ショート、フリーともにジャンプの着氷での乱れというのが散見されましたが、回転不足やパンクといった大きな得点ロスに繋がるミスはさほどなく、何よりミスがある中でも大崩れせず立て直したのは素晴らしかったですね。ただ、収穫の一方で課題も多々見え、一つはスケーティング、表現面で、シニアの実力者たちの演技と比べてしまうとどうしてもステップやエレメンツの間のつなぎで粗さが目に付くので、それは今後の伸びしろの部分ですね。また、高難度のジャンプを跳ぶだけではなく、いかに美しく跳んで加点をより稼ぐかというところもこれからどんどん強化されていく部分だと思いますから、楽しみにしています。


 6位となったのは日本の村上大介選手です。

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 ショートはまず大技4サルコウ、これをパーフェクトに着氷して好スタートを切ります。さらに3アクセルも問題なく下りてしっかり点数を積み重ねますが、後半の3ルッツ+3ループはファーストジャンプの着氷で詰まったためセカンドジャンプを2トゥループに変更して何とかコンビネーションにします。その後は目立った取りこぼしなく演技をまとめ、得点は自己ベストとなる83.47点で5位発進となりました。

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 フリーも冒頭は4サルコウ、回転は十分でしたが着氷でステップアウトしてしまいます。続いても4サルコウからの連続ジャンプでしたが、こちらはダウングレード(大幅な回転不足)であえなく転倒。その後も3アクセルの着氷ミスや3ルッツのエッジミスなどはありましたが、後半はほとんどのジャンプをクリーンに着氷させ、巻き返して演技を終えました。得点は152.02点でフリー6位、総合6位となりました。
 ショートはミスがありながらもパーソナルベストをマークしてまずまずのスタートでしたが、フリーは今季高い成功率を誇る4サルコウが2本とも決まらなかったのはやはり痛かったですね。初めてのファイナルなので緊張感もあったと思いますが、そんなに悪い形でのミスではなく元々4サルコウを得意としている選手なので全日本までにはうまく修正してくるのではないでしょうか。また、SPの3ルッツ+3ループも今季はクリーンな成功は一度もありませんが、これは男子でも現在ほとんど見られない組み合わせの超高難度の連続ジャンプなので、挑戦してくること自体が素晴らしいと思います。全日本では村上選手らしい溌剌とした演技が見られることを願っています。



 ここからはアイスダンスです。

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 優勝したのは昨年のチャンピオン、カナダのケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組。SDでパーソナルベストに極めて近いハイスコアで首位発進すると、フリーでもほぼノーミスの演技で自己ベストを更新し完全優勝を果たしました。ファイナルのアイスダンスにおける連覇は2009年から2013年まで5連覇したアメリカのメリル・デイヴィス&チャーリー・ホワイト組以来、史上3組目。トータルでは2位のカップルに約5点差をつけての優勝で、アイスダンスにおいては大差といえる圧勝です。ウィーバー&ポジェ組がこのまま突っ走って、今シーズンこそ念願の世界制覇なるのか、シーズン後半が今から楽しみです。ファイナル2連覇、おめでとうございました。
 2位となったのは昨年の銀メダリスト、アメリカのマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組。ショートでミスらしいミスなく首位と僅差の2位につけると、フリーではチョック選手が珍しくツイズルでバランスを崩す場面があり、この取りこぼしが響いて3位となったものの、総合では2位で大会を終えました。
 3位は2014年世界選手権チャンピオン、イタリアのアンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ組。ショートでは安定した演技できっちり70点台に乗せ3位発進。フリーでも完璧な演技で自己ベストまで0.68点に迫る得点で2位、総合3位となりファイナルでは初めてのメダルを獲得しました。



 さて、これでグランプリファイナル2015関連の記事は全て終了です。男子、女子、ペア、アイスダンス全てのカテゴリーを見渡してみると、ロシア勢が4つのメダルを獲得して前評判どおり強かったですね。日本勢も男子で2つ、女子で1つとシングル競技での変わらぬ強さを発揮しました。
 日本選手にとってはすぐに年内最後の大舞台である全日本選手権が控えていて忙しいですが、体調をうまく整えて100%の力を発揮できるよう頑張ってほしいですね。また、このファイナルと同時進行で行われたジュニアのファイナルについてもどこかのタイミングで記事にできればと思いますので、しばらくお待ちください。では。


:記事冒頭の男子メダリスト3選手のスリーショット写真、羽生選手のフリーの写真、宇野選手の写真、金選手の写真、村上選手のSPの写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、羽生選手のSPの写真、フェルナンデス選手の写真、チャン選手の写真、村上選手のフリーの写真、アイスダンスメダリスト3組の写真は、写真画像サイト「Newscom」から引用させていただきました。

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グランプリファイナル2015・女子&ペア―エフゲニア・メドベデワ選手、パーソナルベストで初優勝 2015年12月16日
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by hitsujigusa | 2015-12-18 01:40 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 グランプリファイナル2015がスペインのバルセロナで開催されました。この記事では女子とペアの結果についてお伝えします。
 女子はロシアの新星エフゲニア・メドベデワ選手が優勝し、シニアデビューシーズンでのファイナル制覇という快挙を達成しました。銀メダルを獲得したのは日本の宮原知子選手。初出場での初表彰台となりました。3位にはロシアのエレーナ・ラディオノワ選手が入り、2年連続でメダルを手にしました。
 ペアを制したのはロシアのクセニア・ストルボワ&フョードル・クリモフ組。自己ベストを更新する会心の演技でファイナル初制覇となりました。

ISU Grand Prix Final 2015/16 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 女子のチャンピオンとなったのはロシアのエフゲニア・メドベデワ選手です。

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 ショートは全てのジャンプを後半に入れる意欲的な構成で臨んでいるメドベデワ選手。演技序盤はまずスピンとステップシークエンスでしっとりとしたプログラムの世界観を作り出します。そして後半、まずは3フリップ+3トゥループ、これをパーフェクトに成功させると、続く2アクセル、3ループも難なく着氷。柔軟性を活かしたスピンでフィニッシュすると、ガッツポーズで達成感を爆発させました。得点は74.58点でパーソナルベストをマークし、断トツで首位に立ちました。
 フリーも7つのジャンプ要素のうち5つを後半に組み込み、冒頭は得点源となる3フリップ+3トゥループをショート同様確実に成功させて好スタートを切ると、若干苦手としている3ルッツもしっかり着氷。上々の前半となります。後半に入り最初は3フリップ、3ループと得意のジャンプを相次いで下りると、2アクセルからの3連続ジャンプ、そして後半の得点源となる大技3サルコウ+3トゥループを完璧に成功。最後の2アクセルもクリーンにこなすと、勢いを保ったままフィナーレを迎え、観客のスタンディングオベーションを浴びました。得点は女子フリーの世界歴代3位となる147.96点をマーク、トータルでも歴代3位となり圧倒的な大差でファイナル初優勝を果たしました。
 とにもかくにも隙の無い圧巻の演技でしたね。唯一フリーの3ルッツでちょっぴり危ないかなという場面がありましたが、それ以外は全く危なげなく安心して見ていられました。また、ジャンプ構成を考えるとショートでは3つのジャンプを後半に固め、フリーでは前半と後半に1つずつ3+3を入れるというハイレベルぶりなのですが、無理をして跳んでいるという感じが皆無で、スピード、スタミナ面も最後まで変化がなく、見た目の華奢さからは想像もつかないほどのタフさを見せつけれました。表現面も演技構成点の高騰ぶりはいくらなんでも急激に上がり過ぎ感は否めませんが、いろんな表情を見せられる選手で今後さらに滑りこなれてくることを思うと楽しみですね。
 シニアデビューシーズンでのファイナル優勝という浅田真央選手、キム・ヨナさんに並ぶ快挙を達成し、一躍世界の覇権争いの一番手に名乗りを上げたメドベデワ選手。次の大舞台はロシア選手権になると思いますが、現在の勢いを考えるとそのままロシア女王になる可能性も十二分にあるでしょう。シーズン後半もこの快進撃が続くのか注目ですね。ファイナル初優勝、おめでとうございました。


 2位となったのは日本の宮原知子選手です。

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 SPはまず3ルッツ+3トゥループを確実に着氷。レイバックスピン、フライングキャメルスピン、ステップシークエンスでレベル4を獲得すると、後半に組み込んだ3フリップは踏み切り違反と判定され減点されるも、最後の2アクセルはクリーンに成功。コンビネーションスピンで演技を締めくくると、会場は歓声に包まれました。得点はNHK杯でマークした自己ベストに迫る68.76点で4位につけました。

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 フリーの冒頭は3ルッツからの3連続コンビネーションをクリーンに成功させると、3ループ、そして前日エッジのミスがあった3フリップも完璧に下ります。後半も勢いは衰えず、3ルッツ、2アクセル+3トゥループ、3サルコウ、2アクセル+3トゥループと次々に着氷。スピン、ステップシークエンスも全てレベル4を揃え、ノーミスの演技を披露しました。得点は140.09点で大台となる140点台に乗せパーソナルベスト。フリー2位、総合でも2位と表彰台に上がりました。
 NHK杯で完璧な演技を披露してGP初優勝を遂げた宮原選手ですが、そこから短い期間でさらに一段階段を上ったような感じがしましたね。得点的にもフリーで140点台とトップ選手の中でも一握りの一流選手の仲間入りを果たしたわけですが、失敗する気配のないジャンプの安定感はもちろん、演技自体も自信と確信に満ち溢れていて、控えめに滑っていた以前とはまるで別人といっても過言ではないくらい、ぐいぐい引き込まれる演技になったなと改めて思いました。
 宮原選手の次戦は2連覇が懸かる全日本選手権。NHK杯、今大会の再現ができれば連覇の可能性は高いと思うので、今までどおりのペースを保って宮原選手らしい演技を見せてほしいですね。


 3位はロシアのエレーナ・ラディオノワ選手です。

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 ショートはまず3ルッツ+3トゥループの高難度コンビネーションでしたが、ファーストジャンプの着氷で前のめりとなったため単独となります。しかし、後半の3ループに急遽3トゥループを付けしっかりコンビネーションにすると、最後の2アクセルも確実に決めて、ミスを最小限に抑えました。得点は69.43点で2位と好発進しました。
 フリーも冒頭は3ルッツ+3トゥループでしたが、こちらも3ルッツの着氷で若干こらえ気味となりセカンドジャンプに繋げられません。ですが、続く3フリップをこなすと、次の3ルッツに3トゥループをつけてコンビネーションに変更、冒頭のミスを取り返します。後半は3ループの転倒がありましたが、3+1+3などほとんどのジャンプを予定どおりに下り、演技を終えたラディオノワ選手は安堵したように微笑みました。得点は131.70点でフリー4位、総合では3位で2年連続でメダルを獲得しました。
 急激な身体の成長の真っただ中にいるラディオノワ選手。GP初戦の中国杯ではジャンプのコントロールにかなり苦しんだものの、パーソナルベストを更新したロステレコム杯、そして今大会とうまくジャンプを整えてきていますね。今回はロステレコム杯ほどの完璧さはありませんでしたが、ミスがありながらもミスした分を取り返すだけの余裕や落ち着きがあって、表現面でもしっかり入り込めていて良かったと思います。
 欧州選手権、世界選手権の切符が懸かるロシア選手権は、ある意味どの国際大会よりも厳しい争いとなるでしょうが、今のラディオノワ選手の実力を100%発揮できれば確実に代表枠3に入れると思いますので、ぜひ頑張ってほしいですね。


 4位はアメリカのベテラン、アシュリー・ワグナー選手です。

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 ショートはまず3フリップ+3トゥループの2連続3回転でしたが、ファーストジャンプの着氷で乱れてしまい単独に。後半に入り2アクセルをクリーンに着氷し、続く3ループに3トゥループを付けましたが、ダウングレード(大幅な回転不足)で減点となります。スピンは全てレベル4で揃えましたが、ステップシークエンスがレベル2になる取りこぼしも響き、得点は60.04点で6位に留まりました。
 フリーはまず2アクセルを難なく跳んでプログラムをスタートさせると、次はショートで失敗した3フリップ+3トゥループ、これを今度はパーフェクトに成功させ、続く2アクセル+2トゥループも着氷し、ノーミスの前半となります。後半は得点源となる3+1+3の3つ目がアンダーローテーション(軽度の回転不足)と判定されたものの、ミスらしいミスはほぼなく、フィニッシュしたワグナー選手は感極まったような表情を浮かべました。得点はパーソナルベストとなる139.77点でフリー3位、総合4位に順位を上げました。
 ショートではほかの5選手と点差に開きがついてしまい出遅れましたが、フリーではさすがファイナル表彰台経験者というところを見せてくれましたね。3位のラディオノワ選手とはトータルで1.32点差で、あわや4年連続の表彰台に迫りましたが、惜しくもメダルは逃しました。ですが、ショートから一夜であれだけ立て直したのは素晴らしかったですし、NHK杯で表彰台落ちしたことやフリーの演技後の涙ぐむような表情を見ても、精神的に苦しい中での演技だったんだろうなと思います。そんな難しい時間を乗り越えられたことは全米選手権に向けて大きな自信と希望に繋がると思いますので、2連覇を楽しみにしています。


 5位となったのはアメリカのグレイシー・ゴールド選手です。

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 SPは得点源の3ルッツ+3トゥループでしたが、セカンドジャンプの着氷で若干詰まってしまい減点。ですが、続く2つのスピンはレベル4に加え、どちらも1点の高い加点が付きます。後半に2つのジャンプを固め、まずは3フリップでしたが2回転となり、規定の回転数を満たしていないため無得点となります。次の2アクセルは問題なく決めましたが、3+3と3フリップのミスが影響し、66.52点で5位発進となりました。
 フリーも冒頭は3ルッツ+3トゥループでしたが、ショート同様にセカンドジャンプの着氷で乱れます。ですが、直後の3ループ、2アクセルは完璧に成功させてすぐに立て直します。後半に入り最初のジャンプは2アクセル+3トゥループでしたが、こちらもセカンドジャンプの着氷で乱れ、さらに前日ミスした3フリップがパンクして1回転に、3ルッツでステップアウトとミスが相次ぎます。最後の3+2+2はクリーンに決めたものの、得点は128.27点でフリー5位、総合でも5位に留まりました。
 初めてのファイナルとなったゴールド選手ですが、ショート、フリーともに同じジャンプでのミスが目立ちましたね。まずは得意の3ルッツ+3トゥループが2つとも着氷がクリーンではありませんでした。そして、少し苦手としている3フリップが2つともパンクしてしまい、最後までタイミングを修正できなかったかなという感じですね。GP初戦のスケートアメリカではパーソナルベストを更新する素晴らしいフリーを見せ、2戦目のエリック・ボンパール杯のSPでも自己ベストをマークするなど順調にシーズンを送っているように見えましたが、初めてのファイナルということもあってここに調子を合わせてくるのは難しかったかもしれません。ですが、ゴールド選手にとっての大一番は世界選手権の出場権が懸かる全米選手権ですから、1月下旬にはうまくピークを持ってくるんじゃないかなと思いますね。


 6位は日本の浅田真央選手です。

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 ショートはまず代名詞の3アクセル、これをパーフェクトに成功させて1.71点の高い加点を得ます。続く3フリップ+3ループは両ジャンプともアンダーローテーションを取られたものの確実に着氷。上々の滑り出しを見せます。そして後半は課題としている3ルッツでしたが、踏み切りや跳び上がりのタイミングが合わず1回転に。しかし、終盤の得意のステップシークエンスではスピードアップするボーカルにぴったり合った細かな身体づかい、エッジワークを披露し、エネルギッシュにフィニッシュしました。得点は69.13点で3位につけました。

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 フリーも冒頭は大技3アクセルでしたが、回転不足で下りてきてしまいステップアウトとなります。続く高難度の3フリップ+3ループは3フリップが2回転となり単独に。ですが、ショートでパンクした3ルッツは両足着氷となったものの正しいエッジで踏み切り、回り切って着氷します。後半も2アクセル+3トゥループの2つ目が2トゥループになるミスはありましたが、その後のジャンプは全て予定どおりに決め、演技を立て直しました。得点は125.19点でフリー6位、総合でも6位となりました。
 NHK杯で納得のいかない演技内容に終わり、満足のいく演技を目指して今大会に臨んだ浅田選手ですが、残念ながらショート、フリーともにクリーンなプログラムとはなりませんでした。フリーの後、体調不良によりチームドクターの診察を受けた浅田選手は胃腸炎であることが判明。フリーの演技前から体調が悪かったそうで、フリーはその影響もあったことと思います。ですが、それ以上に気がかりなのは浅田選手の気持ちですね。練習では必ずしも試合ほどジャンプが不調なわけではなく、超大技の3アクセルにしても踏み切り時のエッジの矯正中であるルッツにしても徐々に良いものになってきているようですが、GPシリーズ以降、なかなか実戦で思ったような演技ができていないことによって確固たる自信を持てず、不安にさいなまれたまま演技に臨んでいる精神状態が体を硬くさせているのかなという印象を受けます。ただ、今季は1季ぶりの競技復帰のシーズンなわけですし、試合の感覚を取り戻すのに時間がかかるのは当然なのですから、シーズン前半の今の時期で焦る必要は全くないと思います。また、もし2018年の平昌五輪を念頭に置くのであれば、今シーズンはその準備段階の1シーズン目ととらえることもできます。オリンピックまで時間があるこの時期だからこそ演技内容や成績にとらわれずにいろんなチャレンジができるんじゃないかなとも思いますし、浅田選手同様に1年ぶりに復帰したパトリック・チャン選手やアデリナ・ソトニコワ選手のように「復帰直後だから」と割り切ってしまってもいいのではないでしょうか。浅田選手は自分に厳しい選手なので自らを甘やかすようなことは嫌うかもしれませんが、「できなくてもいいんだ」くらいの姿勢が今の浅田選手にはちょうど良いんじゃないかなと思います。私がいま浅田選手に対して願うことは、ただただ頑張りすぎないでということですね。3アクセルはこの時期にしては完成度・成功率が高いことは言うまでもないですし、3ルッツも今大会のフリーでは正確なエッジで跳べていますし、技術的に良い方向に向かっていることは間違いないわけですから、現段階でのミスをあまり深刻に考えず、悲観的にならず、今の自分自身の状態を前向きにとらえてあげてほしいですね。あと、浅田選手とは関係ないことですが、メディアもやたら浅田選手の不調を煽るのではなく、まだ復帰1季目であることや、にもかかわらずちゃんとファイナルまで進んでいることなど事実を鑑みて、もう少し普通に客観的な報道をしてほしいなと望みますね。
 浅田選手の次戦は全日本選手権。まずは疲れた体をじっくりと癒やして、気負わずに目標に向かっていってほしいと思います。



 さて、ここからはペアについてです。

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 優勝したのはソチ五輪銀メダリスト、ロシアのクセニア・ストルボワ&フョードル・クリモフ組です。SPでパーソナルベストに迫る得点をマークして首位発進すると、フリーでも全てのエレメンツに加点が付くほぼ完璧な演技を披露し世界歴代2位となるスコアでファイナル初制覇となりました。GP初戦こそミスを連発し4位に沈みましたが、ロステレコム杯で優勝、そして今大会としっかり調子を上げてきましたね。しかもものすごいハイスコアをマークしてですから、このあとのシーズンが楽しみです。ファイナル初優勝、おめでとうございました。
 2位は昨年のチャンピオン、カナダのメ―ガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組です。ショートで得点源となるソロジャンプやスロージャンプでミスがあり3位と出遅れると、フリーでもジャンプのミスが目立ち、ショートから順位を上げたものの頂点には届きませんでした。2週間前のNHK杯でも本来得意なジャンプ系エレメンツで苦労していましたが、短い期間で完全に修正するまでには至らなかったのでしょうね。ただ、レベルの高い演技をしていることに変わりはないので、今後はたっぷりある調整期間を存分に使って、シーズン最後の大舞台に向けてきっちりピークを合わせてくるんじゃないかなと思います。
 3位はロシアの川口悠子&アレクサンドル・スミルノフ組。ショートではレベルを取りこぼすエレメンツもありましたが演技をまとめて2位の好位置につけると、フリーでは序盤のジャンプにミスが相次いでしまったもののしっかり立て直し、実に4年ぶりとなるファイナルの表彰台に立ちました。フリーはジャンプのミスが複数ありましたが、大崩れしないベテランの底力はさすがのもの。年齢を重ねても衰えるどころかますます進化を遂げていて、シーズンラストの大舞台での表彰台も期待したいですね。



 女子&ペアは終了ですが、男子&アイスダンス編に続きますので、ぜひそちらもご覧ください。


:記事冒頭の女子メダリスト3選手のスリーショット写真、メドベデワ選手の写真、宮原選手の写真、ラディオノワ選手の写真、浅田選手のフリーの写真、ペアメダリスト3組の写真は、写真画像サイト「Newscom」から、ワグナー選手の写真、ゴールド選手の写真、浅田選手のSPの写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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グランプリファイナル2015・男子&アイスダンス―羽生結弦選手、世界最高得点で3連覇 2015年12月18日
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by hitsujigusa | 2015-12-16 03:15 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 NHK杯2015、女子&アイスダンス編の(その2)です。(その1)をお読みでない方はこちらからご覧ください。

ISU GP NHK Trophy 2015 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 6位はカナダのケイトリン・オズモンド選手です。

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 SPは「ラ・ヴィ・アン・ローズ」。まずは大技の3+3からでしたが、ファーストジャンプの着氷がクリーンでなかったためセカンドジャンプは2回転に変更します。続く3ルッツは回転は十分だったものの転倒。最後の2アクセルはしっかり下り、スピンを全てレベル4で揃えるなど本領も垣間見せましたが、納得のいく演技とはなりませんでした。得点は57.07点で8位に留まります。
 フリーは「Danzarin/Oblivion/Tanguera」のタンゴプログラム。冒頭のジャンプは3+3の予定でしたが、ファーストジャンプの着氷で若干勢いが滞ったため2つ目は2回転として確実に加点を稼ぎます。さらに次の2アクセル+3トゥループは完璧に成功させて1.4点の高い加点を獲得。上々の滑り出しと思われましたが、3ルッツが2回転になると、3ループは転倒となり、ミスが相次ぎます。後半も3サルコウでの転倒など複数ミスがあり、演技を終えたオズモンド選手は顔を曇らせました。得点は111.41点でフリー7位、総合6位で大会を終えました。
 大怪我からの復帰のシーズンを送っているオズモンド選手。復帰初戦のネーベルホルン杯ではパーソナルベストをマークしての優勝と華々しいスタートでしたが、スケートカナダではフリーでミスを連発し11位となり、ブランクゆえの波を感じさせるシーズン序盤となっています。今大会もショート、フリーともになかなかジャンプが安定しなかったですね。ただ、フリーは2度転倒があったわりにはまずまずのスコアとなっていて、これはクリーンに成功させたエレメンツに対する加点の高さ、演技構成点での評価の高さによるもので、こういった部分はやはりオズモンド選手の大きな武器だなと思います。うまくジャンプの調子を取り戻して、シーズン後半は世界の大舞台で再び輝いてほしいですね。


 これがGPデビューとなる日本の木原万莉子選手は10位となりました。

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 SPは「さくらさくら」。まず冒頭は得点源の3トゥループ+3トゥループでしたが、セカンドジャンプが回転不足となり転倒してしまいます。ですが、直後の3ループを決めると、後半の2アクセルも成功。スピンは全てレベル4を揃え、序盤のミスを取り返しました。得点は54.96点でパーソナルベストをマークし、10位発進しました。

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 フリーは「映画『ブラック・スワン』より」。まずは3ループからの3連続ジャンプを確実に決めます。続いて単独の3ルッツでしたが、すっぽ抜けて2回転になり、さらにその次の3フリップは回転不足で転倒とミスが相次ぎます。しかし、中盤の2アクセル+3トゥループは何とか着氷。その後のジャンプはミスらしいミスなく予定どおりに下り、演技を丁寧にまとめました。得点は108.23点でパーソナルベスト。フリー8位、総合10位で初めてのGPを終えました。
 シニアのGPデビューということでさすがに緊張もうかがえ、ところどころミスやもったいない取りこぼしもありましたが、その中でも木原選手らしい表現が垣間見えました。ショートは日本的なプログラムで凛としたしなやかな美しさを醸し、フリーは柔らかさの中にも力強さを感じさせて、今後さらに洗練されてくると思うとシーズン後半が楽しみですね。今大会は順位的には10位と下位でしたが、得点は割と拮抗していましたし(6位のオズモンド選手から木原選手まで約5点差)全体的にハイレベルな戦いだったと思うので、その中でパーソナルベストを出せたということを自信に、全日本選手権でも木原選手らしい演技を見せてほしいですね。



 ここからはアイスダンスです。

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 優勝したのはアメリカのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組。SDでパーソナルベストに迫るハイスコアで首位に立つと、フリーでも死角のない演技で自己ベストを3点以上更新し、他を寄せ付けず金メダルを手にしました。抜群の安定感が持ち味のシブタニ&シブタニ組ですが、意外にもGPのタイトルはこれが2011年のNHK杯以来の2つ目。常に表彰台を争いはするものの、なかなか優勝というところまでは近いようで届かなかった二人ですが、今大会をきっかけに今シーズンさらなる飛躍ができると良いですね。2年連続出場となるファイナルでも二人らしい演技を期待しています。
 2位はロシアのエカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組。ショートで大きな取りこぼしなく3位発進すると、フリーでは自己ベストを更新する会心の演技で順位を上げ銀メダルを獲得しました。これでボブロワ&ソロビエフ組もファイナル進出が決定。昨季はソロビエフ選手の負傷によってフル休養しましたが、演技を見る限り、全く問題なくボブロワ&ソロビエフ組らしさが戻ってきていますね。
 3位はアメリカのマディソン・ハベル&ザカリー・ダナヒュー組。SDで自己ベストを更新して2位と好発進すると、フリーでも取りこぼしなくエレメンツを揃え自己ベスト。順位こそ落としましたが、確実に表彰台を確保しました。この結果によってハベル&ダナヒュー組も初のファイナル進出が決まりました。伸び盛りの新鋭がファイナルでどこまでファイナル経験者たちに食らいつくか楽しみです。
 

 そして、今大会がGPデビューとなった日本の村元哉中&クリス・リード組は7位となりました。

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 SDは「Wiener Cafe/Olympiamarsch/UNO March」。ラベンスバーガーワルツやツイズルでマイナスされる部分はあったものの、大きなミスなく確実にレベルも取り7位発進。フリーはサイレント映画をテーマにした「Pennies from Heaven/Jubilee Stomp/The Reel Chaplin: A Symphonic Adventure/映画『ライムライト』より」。ツイズルで二人の同調が乱れたり演技中盤でリード選手が転倒したりするなどミスはありましたが、プログラムの世界観を存分に表現し、このカップルとして初めてのGPを7位で終えました。
 長年日本のアイスダンス界をリードしてきたキャシー・リード&クリス・リード組が、姉のキャシーさんの引退によってカップル解消。新たにクリス選手のパートナーとなったアイスダンス転向2シーズン目の村元選手とともに、日本の観客の前で初めての大きな国際大会となりましたが、ミスもありつつも印象的な演技を見せてくれましたね。特にフリーは演技前からのコミカルな表情や雰囲気づくりが素晴らしく、二人のユニゾンも6月にカップルを結成したばかりとは思えない一体感があり、短期間にしてすでに二人の個性、世界観というのが形作られているなと感じました。このカップルがこれからどんな成長を見せてくれるか、まずは今月の全日本選手権を楽しみにしたいと思います。


 もう1組の日本のカップル、平井絵己&マリオン・デ・ラ・アソンション組は8位となっています。

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 ショートの「Il Terzo Fuochista/オデッサ 映画『僕の大事なコレクション』より」では、ラベンスバーガーワルツやパーシャルステップシークエンスで細かなミスがあり得点を伸ばすことができませんでしたが、フリーの「トゥーランドット」では減点されるエレメンツもありつつも、8つのエレメンツのうち5つで最高難度のレベル4を獲得し、感情のこもった演技を見せてくれました。
 今大会の前、デ・ラ・アソンション選手が練習中に腰を強く打ち付け満足な準備ができず、それどころか激しい痛みがあって歩くのも辛いほどだったそうですが、そうした難しいシチュエーションの中でできる精一杯の演技、表現を出し切ってくれたんじゃないかなと思います。幸いにもデ・ラ・アソンション選手の負傷は重傷ではなかったようで、今大会の直後にはクロアチアのザグレブで開催されたゴールデンスピンに予定どおり出場し、見事ショート、フリー、トータルでパーソナルベストを更新しました。これから全日本選手権まで1か月もないですが、順調に普段のリズムを取り戻して、全日本ではベストな演技ができることを願っています。



 さて、男子とペアに続き、女子とアイスダンスもファイナル進出者が決定しましたのでざっくりと取りまとめたいと思います。(敬称略)


《女子》

①グレイシー・ゴールド(アメリカ):28ポイント アメリカ大会2位、フランス大会優勝
②エフゲニア・メドベデワ(ロシア):28ポイント アメリカ大会優勝、ロシア大会2位
③宮原知子(日本):26ポイント アメリカ大会3位、日本大会優勝
④浅田真央(日本):26ポイント 中国大会優勝、日本大会3位
⑤エレーナ・ラディオノワ(ロシア):26ポイント 中国大会3位、ロシア大会優勝
⑥アシュリー・ワグナー(アメリカ):24ポイント カナダ大会優勝、日本大会4位
―――
補欠⑦本郷理華(日本):20ポイント 中国大会2位、ロシア大会5位
補欠⑧エリザヴェータ・トゥクタミシェワ(ロシア):20ポイント カナダ大会2位、フランス大会5位
補欠⑨コートニー・ヒックス(アメリカ):18ポイント 中国大会6位、日本大会2位


《アイスダンス》

①ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組(カナダ):30ポイント カナダ大会優勝、ロシア大会優勝
②マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組(アメリカ):28ポイント アメリカ大会優勝、中国大会2位
③アンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ組(イタリア):28ポイント 中国大会優勝、ロシア大会2位
④マイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組(アメリカ):28ポイント カナダ大会2位、日本大会優勝
⑤マディソン・ハベル&ザカリー・ダナヒュー組(アメリカ):26ポイント フランス大会優勝、日本大会3位
⑥エカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組(ロシア):24ポイント カナダ大会3位、日本大会2位
―――
補欠⑦ヴィクトリア・シニツィナ&ニキータ・カツァラポフ組(ロシア):24ポイント アメリカ大会2位、ロシア大会3位
補欠⑧パイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組(カナダ):24ポイント アメリカ大会3位、フランス大会2位
補欠⑨アレクサンドラ・ステパノワ&イワン・ブキン組(ロシア):20ポイント フランス大会3位、日本大会4位




 まず、女子は日本勢2名、ロシア勢2名、アメリカ勢2名と、現在の女子フィギュア界の勢力図を如実に表すメンバー構成となりました。また、2大会とも優勝した選手というのはいなくて、6大会のそれぞれの優勝者6人が揃うというおもしろい顔ぶれともなっています。
 優勝争いという点で考えると、浅田選手以外の5人は全員シーズンベストが200点を超えていて、その時の調子によって誰が優勝してもおかしくないという気がします。もちろん200点を超えていない浅田選手も実力、経験はピカイチなので、ここで200点超えをしてくる可能性も十分あり、メダリストを予測するのでさえ難しいですね。安定感という点で挙げるなら、ジャンプの跳び盛りで勢いに乗りまくっているルーキーのメドベデワ選手もそうですし、宮原選手も大崩れすることなく確実に点数を取れる選手です。ゴールド選手も昨シーズンから一皮剥けた印象があり、フリーが中止となったフランス大会ではSPで73.32点という高得点を叩き出しているということもあって、演技構成点の高評価ぶりを鑑みてもジャンプの調子が普通に良ければかなり怖いなという感じがします。あとは3選手ともファイナル初出場という未経験の部分が良い方に出るか、悪い方に出るかというところがポイントでしょうね。浅田、ラディオノワ、ワグナーの3選手は1戦目と2戦目で演技内容に少し差があるので、その“波”という部分がファイナルではどう出るかというところですが、やはりファイナルの経験豊富というのがアドバンテージになるんじゃないかなと思います。


 他方、アイスダンスはウィーバー&ポジェ組が唯一の2連勝で余裕のファイナル進出。ただ、シーズンベストという点で見ると、シブタニ&シブタニ組が174点台、ウィーバー&ポジェ組、カッペリーニ&ラノッテ組、チョック&ベイツ組が173点台と非常に拮抗していて、表彰台争いとしてはこの4組が有力なのかなと思いますが、エレメンツのレベルやGOE加点の微妙な差で順位が変わってきそうな感じがしますね。



 NHK杯2015、女子とアイスダンスについては以上です。この記事をアップする時点でもうファイナルまでは1週間を切っていますが、どの選手も力を出し切れるよう祈っています。


:記事冒頭の女子メダリスト3選手のスリーショット写真、オズモンド選手の写真、木原選手のフリーの写真、村元&リード組の写真、平井&デ・ラ・アソンション組のSDの写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、木原選手のSPの写真、平井&デ・ラ・アソンション組のFDの写真は、写真画像サイト「Newscom」から、アイスダンスメダリスト3組の写真は写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2015-12-07 15:32 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 グランプリシリーズ15/16、最終戦の日本大会、NHK杯2015です。男子&ペア編に続き、女子&アイスダンスについてお届けします。
 女子の優勝者は日本の宮原知子選手。ショート、フリーともにほぼノーミスの演技でパーソナルベストをマークし、GP初優勝を果たしました。2位に入ったのはアメリカのコートニー・ヒックス選手で、こちらはGP初表彰台となりました。3位は日本の浅田真央選手となっています。
 アイスダンスを制したのはアメリカのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組で、2011年以来となるGP2勝目となりました。

ISU GP NHK Trophy 2015 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 チャンピオンとなったのは日本の宮原知子選手です!

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 SPはまず高難度の3ルッツ+3トゥループをしっかり回り切って下り加点を得ます。続いて2つのスピン、ステップシークエンスの後、プログラム終盤に2つのジャンプを組み込み、3フリップは踏み切り時のエッジが不正確とされ若干減点を受けますが、最後の2アクセルはきっちり成功させ、情熱的な「ファイヤーダンス」を最後までエネルギッシュに演じ切りました。得点は69.53点でパーソナルベストを更新し、2位に3点差以上をつけて首位発進しました。

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 フリーは3+3を入れない構成で臨み、まずは3+2+2の3連続ジャンプでしたが、最後のジャンプで着氷がやや乱れます。しかし、続く3ループを確実に決めると、次のステップシークエンスは複雑なターンとエッジワークでレベル4を獲得し、直後の3フリップも正確なエッジで跳び加点を得ます。後半に入っても勢いは衰えず、2つの2アクセル+3トゥループを含め全てのジャンプを予定どおりに着氷し、演技を終えた宮原選手は満員の観客のスタンディングオベーションを受けました。得点は133.58点でショートに続きパーソナルベスト更新でフリー1位、もちろん総合も1位でGP参戦3年目にして念願の初優勝となりました。
 ショート、フリーともにとにかく素晴らしい演技でした。GP初戦のスケートアメリカから約1か月ぶりの試合でしたが、前回ミスがあったジャンプの修正はもちろんのこと、表現面もさらに磨かれていて、優勝するべくして優勝したと言っても過言ではない演技でした。正直、今大会は浅田選手とワグナー選手の優勝争いで宮原選手は3位かなと予想していたので、宮原選手に謝らなければいけません。得点的にもフリーで130点台、トータルでも大台の200点超えと想像以上の飛躍で驚かされました。宮原選手というスケーターの特徴を考えると、身体は小さくスケーティングスピードもさほど速いわけではなく、ジャンプも決して高さや飛距離があるわけではありません。スピード感に溢れた演技、ダイナミックなジャンプがもてはやされる現在のフィギュア界の潮流とは真逆の選手と言ってもいいと思うのですが、その中でこれだけ欧米の選手たちと互角に戦い、それどころか時に凌駕さえするというのは、体格で欧米の選手に劣る日本の女子選手に勇気や希望を与えると思いますし、ジャンプやスピードを武器とする選手とは一味違うスケーター像を提示しているようにも感じますね。
 これで宮原選手はアメリカ大会の3位と合わせて26ポイントとなり、目標としていた初のファイナル進出を決めました。ファイナルでも今大会のように思いっきり弾けてほしいですね。NHK杯初優勝、おめでとうございました。


 2位となったのはアメリカのコートニー・ヒックス選手です。

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 SP冒頭は3フリップ+3トゥループの2連続3回転でしたが、コントロールし切れず着氷で乱れてしまいます。しかし、後半の3ルッツ、2アクセルはクリーンにこなし、また、ステップシークエンス、スピンも全てレベル4で、序盤のミスからしっかり盛り返しました。得点は自己ベストとなる65.60点で2位と好発進しました。
 フリーも冒頭は3フリップ+3トゥループで、ファーストジャンプは高さ抜群でしたがやはり2つ目で乱れがあり減点となります。さらに、続く3ルッツでもミスがあり、暗雲漂う前半となります。しかし後半は1つミスはあったものの、大崩れすることなく予定どおりのエレメンツをこなし、フィニッシュしたヒックス選手は嬉しそうに破顔しました。得点は117.52点でパーソナルベストに迫るスコアをマークしフリー3位、総合2位でGP初表彰台となりました。
 大きなポテンシャルを秘めながらもなかなかその実力を発揮できなかったヒックス選手ですが、今大会は100%とまではいかないものの、よく持ち味が反映された演技でしたね。何といってもヒックス選手の最大の魅力は3フリップや3ルッツの目を見張るほどの高さ。ですが、あまりにも高すぎて回転や着氷のタイミングがコントロールできずに下りてきてしまう場面が今まで多々見られました。今回のショート、フリーもその課題が完全に改善されたわけではないですが、転倒やパンクといった大きなミスにしなかったのと、そのほかの難度の低いジャンプを確実にまとめられたのが2位というGP自己最高位に繋がったのだと思います。ルッツとフリップを正確に跳び分けられること、しかもものすごい高さを持っていることを考えても、現時点でも大きな可能性を感じさせる選手ですが、これでさらにジャンプの精度が高まってくればどんどん加点を稼げるタイプの、手のつけられないジャンパーになるのではないでしょうか。そういった意味でまだまだ得点を伸ばす余地がありますから、このあとのシーズンも頑張ってほしいですね。


 銅メダルを獲得したのは日本の浅田真央選手です。

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 ショートの冒頭は代名詞の大技3アクセルでしたが、アンダーローテーション(軽度の回転不足)で下りてきてしまい転倒となります。ですが、続く高難度の3フリップ+3ループは完璧に回り切って成功。立て直しを見せましたが、後半の3ルッツはパンクして1回転となり、規定の回転数を満たしていないため無得点に。その他のスピン、ステップシークエンスは全てレベル4を揃え、複雑でありながら軽快な滑りで観客を沸かせましたが、演技を終えた浅田選手は残念そうな表情を浮かべました。得点は62.50点で4位となりました。

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 フリーも冒頭は3アクセルでしたが、空中で回転がほどけてしまい2アクセルとなります。続いてショートではきれいに決めた3フリップ+3ループでしたが、ファーストジャンプが回転不足で勢いが止まってしまったためセカンドジャンプは2回転に抑えます。さらに次は課題の3ルッツでしたが、こちらは踏み切り時のエッジこそ不明確とされたものの回り切ってしっかり着氷します。後半の最初は2アクセル+3トゥループ、これをクリーンに成功させると、続く3サルコウも着氷。良い流れを作りましたが、3連続ジャンプの1つ目の3フリップが回転不足でやや乱れた着氷となり、コンビネーションにできません。最後の3ループは問題なく下りて、「蝶々夫人」を情感たっぷりに演じましたが、フィニッシュした浅田選手はがっくりと肩を落としました。得点は120.49点でフリー2位、総合3位に順位を上げました。
 改めて浅田選手のチャレンジしていることの難しさ、厳しさを感じさせるショート、フリーでしたね。ジャパンオープン、中国杯と3度試みて3度とも成功していた3アクセルは今大会の練習でも良い感触なのかなという感じでしたが、やはり並大抵でない至難の技なので決まっても決まらなくても紙一重の違いなのかなと思いますね。それよりも気になったのは、演技後の浅田選手が心から落ち込んでいる風だったことです。思ったような演技ができなかったわけなので気を落とすのは当然だと思うのですが、落ち込み方が思い詰めすぎているような印象を受けました。演技自体も、ジャパンオープンは復帰初戦ということで演技内容やジャンプの成否にとらわれることなく楽しんで滑っているのがひしひしと伝わってきたのですが、GPシリーズに入ってからは本格的な国際大会で結果と内容が求められる場ということもあって、浅田選手自身が自分に課題を課しすぎているのかなという気がしました。もちろん質の高い演技を追求するのは競技者として自然なことですし、生粋のアスリートである浅田選手らしいなと思うのですが、せっかく1シーズン休養してリフレッシュして戻ってきたからこそ、休養前に背負っていた重い荷物を降ろして、少し肩の力を抜いて、復帰を決めた時の最初の感情のままに楽しんで滑ってほしいなと心から思います。フリーから一夜明けたエキシビションの際のインタビューでは、「いろいろ考えた結果、考えるのをやめた」と言っていたので切り替えは大丈夫だと思いますが、復帰してからまだ間もないのでスムーズにいかない部分があるのは当然ですし、特に技術的な課題や見直す部分があるわけではなく、あとは確実性や気持ちの持ち方次第でしょうから、ファイナルでは考えすぎずにスケートを楽しんでほしいですね。


 4位はアメリカ女王のアシュリー・ワグナー選手です。

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 SPはまず得点源となる3フリップ+3トゥループでしたが、ファーストジャンプの着氷がクリーンではなくセカンドジャンプに繋げられません。後半に固めた2つのジャンプは、2アクセルは難なく跳びましたが、最後の3ループは2トゥループを付けてしっかりコンビネーションにしたもののやはり着氷に乱れが生じ、細かなミスが重なりました。得点は63.71点で3位につけました。
 フリーの冒頭は得意の2アクセルを問題なく下り、続いて前日成功させられなかった3+3でしたが、再びファーストジャンプで乱れてしまい単独に。さらに直後の2アクセルからの連続ジャンプでもミスがありこちらも単独となってしまいます。後半に入り1つ目は3+1+3の難度の高い3連続ジャンプ、これを着氷こそしましたが1つ目がアンダーローテーション、3つ目がダウングレード(大幅な回転不足)判定となり、大きくマイナスされます。続く3フリップは急遽3トゥループを付けて序盤のミスを挽回しようとしましたが、2つ目が大きく回転不足。その後もミスがあり、ほとんどのジャンプにミスが出る内容となりました。得点は115.62点でフリー5位、総合4位と表彰台を逃しました。
 安定感が持ち味のここ数年のワグナー選手にしては珍しく、かなりジャンプミスが多かったですね。見た目に分かりやすい転倒やパンクはショート、フリー通じて一度もありませんでしたが、着氷ミス、回転不足が散見され、それに影響されてか演技全体でもワグナー選手らしい動きのキレが少し影をひそめていたように感じます。ただ、今回ほどではないにしても時々回転不足を連発してしまうのが以前からのワグナー選手の課題でもあり、今大会はその傾向がいつも以上に明確に表れてしまいましたね。先日のスケートカナダがパーソナルベスト連発の素晴らしい演技だっただけに落差はありますが、調整力や修正力に長けたベテランですので、次のファイナルでは再びワグナー選手らしいパワフルで躍動感に満ちた滑りを見せてくれるんじゃないかなと思います。


 5位には同じくアメリカの長洲未来選手が入りました。

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 SPの演目は「デーモンズ」。まずは得点源の3フリップ+3トゥループ、これを確実に着氷しますがセカンドジャンプが回転不足で若干の減点となります。しかし、そのあとの2つのジャンプはクリーンに決め、スピンやステップシークエンスでも大きな取りこぼしはなし。エモーショナルなボーカルに合わせて伸びやかな演技を披露しました。得点は61.10点でシーズンベストをマークし、5位と好発進します。
 フリーは「映画『華麗なるギャツビー』より」。冒頭の3+3はショート同様に2つ目が回転不足となり、完全にクリーンとはならず。続く2アクセル+3トゥループも大きな乱れなく着氷はしたものの、セカンドジャンプがダウングレード判定となり大幅に減点されます。後半も2つの回転不足があり少しもったいないところもありましたが、演技全体としては溌剌とした流れのある演技を見せ、フィニッシュした長洲選手は満面に笑みを浮かべました。得点は114.54点でこちらもシーズンベスト。フリー6位で総合5位となりました。
 上述したワグナー選手同様、ちょこちょこと回転不足が見られ少しずつ取りこぼした部分はありましたが、演技そのものはショートもフリーも長洲選手らしいスケーティングの勢いや美しさが端々まで行き渡っていてとても良かったですね。これでクリーンなジャンプが揃ってくると、技術点も演技構成点も大幅なステップアップが望めると思うので、代表選考会となる全米選手権に向けて頑張ってほしいですね。



 突然ですが、この記事はここで終了しまして、続きは(その2)に書きたいと思いますので、ぜひ続けてそちらもご覧ください。


注:記事冒頭の女子メダリスト3選手のスリーショット写真、宮原選手の写真、ヒックス選手の写真、浅田選手のフリーの写真、長洲選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、浅田選手のSPの写真は、写真画像サイト「Newscom」から、ワグナー選手の写真はフィギュアスケート情報サイト「Absolute Skating」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
NHK杯2015・男子&ペア―羽生結弦選手、世界最高得点で優勝 2015年12月2日
NHK杯2015・女子&アイスダンス―宮原知子選手、パーソナルベストでGP初優勝(その2) 2015年12月7日
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by hitsujigusa | 2015-12-07 02:22 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 グランプリファイナルの出場権を懸けたGP最終戦、NHK杯。波乱あり歴史的瞬間あり、中身の詰まった濃厚な大会となりました。
 男子を制したのは日本の羽生結弦選手。圧倒的な世界最高得点を叩き出しての圧巻の優勝となりました。2位は中国の金博洋(ジン・ボーヤン)選手。こちらも自己ベストを更新しての素晴らしい銀メダルとなりました。3位には日本の無良崇人選手が入り、2年連続で銅メダルを獲得しています。
 ペアは現世界チャンピオンであるカナダのメーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組が2連覇を達成しました。

ISU GP NHK Trophy 2015 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 金メダルを獲得したのは羽生結弦選手です!

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 ショートは前回のスケートカナダから大幅にジャンプ構成を変更して臨んだ羽生選手。まずは大技4サルコウ、これを着氷で若干こらえ気味ながらもしっかり成功させると、続く4トゥループ+3トゥループも完璧に降りて初成功させます。さらに後半の得意の3アクセルは難しい入り方ながらさらりと成功。終盤のステップシークエンスでは激しいピアノの音色に合わせ小刻みかつメリハリのある滑りを見せ、鬼気迫る表情でフィニッシュしました。得点は自身が持つ世界最高得点を更新する驚異の106.33点、もちろん断トツの首位に立ちました。

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 フリーも冒頭は4サルコウ、これをショートよりもきれいに着氷して、9人のジャッジのうち7人が加点3を付ける完璧なジャンプとします。続く4トゥループも非の打ちどころがないパーフェクトさ。続けて跳んだ3フリップも難なく降ります。後半に入って1発目は4トゥループ+2トゥループの予定でしたが、セカンドジャンプを3トゥループに変えてクリーンに成功。さらに、3アクセル+2トゥループ、3アクセル+1ループ+3サルコウと難しい連続ジャンプ2つも相次いで着氷。そのあとの3ループ、3ルッツも全く問題なく降りると、情熱的なコレオシークエンスと美しいスピンで締めくくり、満面の笑みで演技を終えた羽生選手を満員の観客の歓声が包み込みました。得点はこちらも世界最高得点となる216.07点、トータルでもこれまでパトリック・チャン選手が持っていた世界最高得点を塗り替える322.40点を記録し、フリー初の200点超え、総合得点初の300点超えと新記録ずくめの演技となりました。
 正直、なんもいえねぇ状態ですね。凄すぎてどう感想を言えばいいのかもわからないですが、得点や採点表を見るだけで凄さは十分伝わると思うので、あえて言うことは何もないくらいですね。ただ、あえて注文をつけるとしたら、羽生選手の演技が素晴らしいのは言うまでもないですが、ジャンプ偏重になり過ぎているかなという感じはします。プログラム自体の魅力や美しさで感動させられるというよりも、ジャンプ構成と完成度の高さで有無を言わさず圧倒させられるという感じで、プログラムそのものの印象よりもやはりジャンプの印象の方がかなり強いので、芸術作品としてもさらに魅力的なものになるとなお良いかなと思います。
 ただ、それは一フィギュアファンの無い物ねだりというやつで、すでにもの凄いことを成し遂げている羽生選手に対して期待をかけすぎているのかもしれないですし、こなしているジャンプ構成の難しさを思えばなかなかエレメンツ以外の部分にまで気を遣うゆとりはないかもしれないですが、別次元を往く羽生選手だからこそ、表現面でも唯一無二の選手になってほしいなと思いますね。
 この優勝によって羽生選手は5年連続でのファイナル進出が決定。男子では初めてのファイナル3連覇も懸かります。前人未到の領域に足を踏み入れた羽生選手が次にどんな演技を見せてくれるのか、楽しみにしています。NHK杯優勝、おめでとうございました。


 2位は中国の新星、金博洋(ジン・ボーヤン)選手です。

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 ショートの冒頭は代名詞の大技4ルッツ、これを完璧に決め後ろに3トゥループを付けて予定どおりのコンビネーションにします。さらに3アクセルもあっさりと成功。後半に組み込んだ4トゥループもしっかり降りると、キレのある動きとエネルギッシュな滑りでタンゴを演じ切りました。得点は中国杯に続きパーソナルベストを更新する95.64点、堂々の2位発進となりました。
 フリーも冒頭は4ルッツからで、ショート同様にパーフェクトに決めます。続く4サルコウは多少苦手としているジャンプで、着氷で若干乱れつつも確実に降ります。続いて3アクセル+1ループ+3サルコウも着氷でのミスはありましたが、大きな綻びなく成功させ、まずまずの前半。後半はまず4トゥループからの連続ジャンプで、これをクリーンに降りましたが、続く2本目の4トゥループはすっぽ抜けて2回転に。残念ながら史上初の1つのプログラムで4度の4回転成功はなりませんでしたが、その後は大きな乱れなく演技をまとめ、得点は中国杯でマークした自己ベストに迫る170.79点のハイスコアで2位のポジションを確実なものにしました。
 中国杯で衝撃のGPデビューを飾り、羽生選手に次ぐ注目度の中で演技した金選手。ちょこちょこミスはありましたが、何といっても4ルッツの安定感はまるで3回転を跳んでいるのと変わらず、むしろ4回転の方がスムーズに見えるくらいですね。ステップシークエンスやスピン、つなぎの面での粗さなどはありますが、それはこれからいくらでも洗練される伸びしろがありますし、シーズンの中でも成長していくでしょうから楽しみです。
 これで金選手もファイナル進出が決定。今度こそフリー史上初の4度の4回転なるか、期待したいと思います。


 3位は日本の無良崇人選手です。

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 SPはまず4トゥループからの連続ジャンプ、ファーストジャンプの着氷で若干詰まったためコンビネーションは回避しましたが確実に成功させます。続く代名詞の3アクセルは高さ、スピードともに完璧な跳躍で加点2の高い評価を獲得。後半の3ルッツに前半で付けられなかった3トゥループを付けてしっかりコンビネーションとすると、終盤のステップシークエンスではロシア民謡「黒い瞳」のアップテンポな曲調に乗せたダイナミックかつリズミカルな滑りを披露し、熱狂の中フィニッシュしました。得点は昨年のNHK杯でマークした自己ベストを更新する88.29点で3位の好位置につけました。

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 フリーもまずは4トゥループ、これをショート以上にクリーンに降りて加点をしっかり稼ぐと、2つ目の4トゥループも2トゥループを付けて連続ジャンプとします。さらに得意の3アクセルは完璧に成功させますが、直後の3サルコウはパンクして2回転となります。後半は最初の3アクセル+2トゥループをきっちり着氷しましたが、3ループ、3フリップは着氷ミス。終盤に向かって多少尻すぼみにはなりましたが、大崩れすることなく最後まで滑り切りました。得点は153.92点でフリー5位、総合3位で銅メダルを手にしました。
 1か月前のGP初戦スケートアメリカでは怪我の影響もあって不本意な10位に終わった無良選手。それ以来の試合で果たしてどれだけ立て直してきただろうと未知数の部分も大きかったですが、素晴らしい演技を見せてくれましたね。SPの「黒い瞳」はアイスダンス五輪王者のチャーリー・ホワイト選手の振り付けですが、艶やかで女性的な曲想と無良選手の力強い演技とが相まって新鮮で良かったです。ただ力強いだけではなく腕の使い方にはちゃんとしなやかさもあって、特にステップシークエンスは今までの無良選手のイメージと異なる細かな腕づかい、足さばきが多く盛り込まれていて、無良選手にしか表現できない「黒い瞳」になっていたと思います。
 一方フリーの「O」は壮大で神秘的なプログラムで、今回は盛り上がる後半にジャンプミスがぼろぼろ出てしまったということもあって最大限魅力を発揮できなかったと思うのですが、今後に期待が持てる内容でした。無良選手のフリーの課題としては、4回転、3アクセル以外のジャンプということになるのでしょう。前半に多く組み込んだ難度の高いジャンプに全力を注ぎこむあまりに、後半に力が残っていない場面というのがしばしば見られるので、次の全日本選手権でそのあたりの課題がクリアされるかどうか、注目ですね。


 4位はアメリカのグラント・ホフスタイン選手です。

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 ショートはまず4トゥループでしたが、着氷で大きく乱れ減点となります。しかし、直後の3アクセルはクリーンに跳んですぐに立て直し。後半の連続ジャンプは3+3の予定が3+2になってしまいますが、しっとりとしたプログラムを終始情感たっぷりに演じ切りました。得点は74.30点で先日の中国杯でマークした自己ベストを0.03点更新し、8位につけました。
 フリーも冒頭は4トゥループ、これをパーフェクトに降り、国際大会で初めて4回転を成功させます。続く3アクセル+2トゥループ、3ルッツもクリーンに着氷し、上々の前半。後半は小さなミスこそありましたが、プログラムの流れを壊すことなく、ほぼノーミスに近い演技を披露しました。得点はパーソナルベストを10点以上更新する161.33点でフリー3位、総合でも4位と一気に順位を上げました。
 5季ぶりのGP出場となったホフスタイン選手ですが、その久しぶりの大舞台で実力をいかんなく発揮しましたね。中国杯での演技も素晴らしかったですが、今大会は初めて4回転もクリーンに入って、技術面でも表現面でも申し分ない演技でした。決して難度の高いジャンプ構成ではありませんが、一つ一つのジャンプのクリーンさ、見栄えの良さはトップレベルの選手にも劣るものではなく、端正なスケーティングと合わせ、これぞフィギュアスケートと言いたくなるような演技でした。
 ホフスタイン選手はこれでGP2大会とも4位という好成績となり、全米選手権に向けても良いアピールとなったのではないでしょうか。GPでの経験を自信に変えて、このあとのシーズンも頑張ってほしいですね。


 5位は日本の田中刑事選手です。

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 SPはピアソラのタンゴ「ブエノスアイレスの春」。冒頭は大技4サルコウ、これをほぼ完璧に着氷させます。続く3アクセルもパーフェクトに成功。好スタートを切り勝負の後半でしたが、3+3の1つ目が2回転となりもったいない取りこぼしをしてしまいます。しかし、そのほかのエレメンツでは目立ったミスなくまとめ、演技を終えた田中選手は悔しさの入り混じる複雑そうな表情を浮かべました。それでも得点は自己ベストを更新する73.74点をマークし、9位発進しました。

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 フリーは昨季と同じ「椿姫」。まずは前日若干減点された4サルコウを今度は完璧に成功させて加点を得ると、続く3アクセル、3+3もクリーンな跳躍と着氷で問題なく成功。後半1つ目の3アクセルは2回転となりましたが、ミスらしいミスは一つもなく予定どおりのジャンプをクリアし、フィニッシュした田中選手は満足そうに破顔しました。得点は自己ベストを15点以上も更新する161.16点でフリー4位、総合5位とGP自身最高位で大会を終えました。
 昨シーズンGPデビューを果たし、今回初めてのNHK杯出場となった田中選手。ショートこそ緊張もあったのか珍しいミスがありましたが、フリーは全てのエレメンツに加点が付く素晴らしい演技でした。一つ一つのジャンプに余裕があり、途中からはミスする気配も感じられないくらい安定していて、今までの田中選手の姿から見違えましたね。元々の構成ではフリーは2本の3アクセルを跳ぶ予定でしたから、そこは次戦にお預けとなりましたが、この大きな財産を得て全日本選手権でどんな滑りを見せてくれるのか、楽しみにしたいと思います。


 6位はロシアのベテラン、コンスタンティン・メンショフ選手。

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 ショートはまず4トゥループ+3トゥループからでしたが、ファーストジャンプが3回転となります。しかし、続く4サルコウは確実に成功。後半の3アクセルも完璧にクリーンな出来ではないものの着氷させ、ミスがありつつも無難にまとめました。得点は79.79点で6位発進となりました。
 フリー冒頭はショートで失敗した4+3、これをきちんと成功させ加点も稼ぎます。続いてショートで成功させた4サルコウでしたが、こちらはパンクして3回転に。さらに3アクセル、2本目の4トゥループと、前半は着氷ミスが相次いでしまいます。後半は立て直しほぼ予定どおりのジャンプをこなしましたが、前半のミスが響き得点は153.79点に留まりました。それでもシーズンベストをマークしフリー6位、総合も6位でフィニッシュしました。
 メンショフ選手は1か月前のスケートアメリカの後、イタリアで開催されたメラーノ杯という国際大会に出場、優勝しています。ただ、そこでも今大会と同じようなジャンプミスがあり、4回転をショートで2本、フリーで3本組み込む難度の高いジャンプ構成を組んでいるのですが、なかなかまだ形になっていない感じかなという印象です。32歳という年齢でこのジャンプ構成を組めていること自体が凄いと思うのですが、欧州選手権や世界選手権の代表選考の場となるロシア選手権に向けては、もう少し確実性が必要となってくるでしょうね。ある程度演技をまとめることはできるのですが、さらにその先へと突き破ることが出来るかどうか、メンショフ選手が代表争いを勝ち抜けるかどうか、注目したいと思います。



 7位はチェコのミハル・ブレジナ選手です。

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 ショートの冒頭は得意の3アクセル、これをパーフェクトに決めて2点の高い加点を得ます。次は大技4サルコウでしたが、こちらは着氷で大幅に乱れ大きく減点されます。後半も3+3が3+2になるミスがあり、スピンでの取りこぼしなどもあり、得点は81.64点で5位に留まります。
 フリーもまずは3アクセルを完璧に成功させて流れを作り、続いて4トゥループでしたが回転が抜けて3回転に。直後の4サルコウも同様に2回転となり前半はミスが続きます。後半に入っても4サルコウ、3アクセル、3ループなどほとんどのジャンプでミスを犯してしまい、精彩を欠いた内容となりました。得点は140.85点でフリー9位、総合7位と順位を落としました。
 こちらも2種類の4回転をプログラムに組み込んだブレジナ選手ですが、その4回転がなかなか決まらなかったですね。また、4回転の失敗によって演技全体のリズムが狂ってしまってほかの難度の低いジャンプやスピンにもミスが連鎖してしまったのがもったいなかったです。近年のブレジナ選手はこういったパターンがしばしば見られるので、4回転の確率を上げるのはもちろんですが、4回転は4回転としてほかのエレメンツは確実にこなせるようになると良いですね。



 ここからはペアです。

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 金メダルに輝いたのはカナダのメーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組。SPは3ルッツのソロジャンプで若干ミスがありましたが、難度の高いスロー3ルッツなど着実にエレメンツをクリアし、唯一の70点台で首位発進しました。フリーは大技のスロー4サルコウで転倒、また、3トゥループからの3連続コンビネーションが単独ジャンプになるなど、いくつかミスが出てしまい納得のいかない内容ではありましたが、断トツの1位でスケートカナダに続き2連勝となりました。これでデュハメル&ラドフォード組は堂々の1位通過でファイナル進出が決定。ファイナル連覇なるか、楽しみにしたいと思います。NHK杯優勝、おめでとうございました。
 銀メダルを獲得したのは中国の于小雨(ユー・シャオユー)&金楊(ジン・ヤン)組です。ショートで全てのエレメンツに加点が付く安定した演技で3位につけると、フリーではソロジャンプや大技のスロー4サルコウでミスがあったものの、そのほかのエレメンツで確実に基礎点、加点を積み重ね、ショートから順位を上げてフィニッシュしました。これで于&金組は中国杯の3位と合わせてシリーズ成績全体の6位でファイナル進出を決めました。着実に力をつけている若手ペアが2度目のファイナルで初のメダル獲得なるか、注目ですね。
 3位に入ったのはアメリカのアレクサ・シメカ&クリス・クニーリム組。ショートではソロジャンプの3サルコウで小さなミスがあったもののその他をしっかりまとめて自己ベストに迫る得点で2位発進。フリーは大技の4ツイストやソロジャンプ、スピンで複数ミスがあり得点を伸ばし切れず総合3位となりました。ただ、アメリカ大会の2位と合わせてシリーズランキング5位となり、初めてのファイナル出場を決めました。



 ということで、NHK杯2015、男子とペアについては以上です。シリーズ最終戦でファイナル進出者も決定しましたので、ここでファイナリスト一覧をまとめたいと思います。(敬称略)



《男子シングル》

①ハビエル・フェルナンデス(スペイン):30ポイント 中国大会優勝、ロシア大会優勝
②羽生結弦(日本):28ポイント カナダ大会2位、日本大会優勝
③宇野昌磨(日本):28ポイント アメリカ大会2位、フランス大会優勝
④金博洋(中国):26ポイント 中国大会2位、日本大会2位
⑤パトリック・チャン(カナダ):22ポイント カナダ大会優勝、フランス大会5位
⑥村上大介(日本):22ポイント アメリカ大会3位、フランス大会3位
―――
補欠⑦閻涵(中国):20ポイント アメリカ大会4位、中国大会3位
補欠⑧マックス・アーロン(アメリカ):19ポイント アメリカ大会優勝、フランス大会7位
補欠⑨アディアン・ピトキーエフ(ロシア):18ポイント アメリカ大会6位、ロシア大会2位


《ペア》

①メーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組(カナダ):30ポイント カナダ大会優勝、日本大会優勝
②川口悠子&アレクサンドル・スミルノフ組(ロシア):28ポイント 中国大会優勝、ロシア大会2位
隋文静&韓聰組(中国):28ポイント アメリカ大会優勝、中国大会2位
④クセニア・ストルボワ&フョードル・クリモフ組(ロシア):24ポイント アメリカ大会4位、ロシア大会優勝
⑤アレクサ・シメカ&クリス・クニーリム組(アメリカ):24ポイント アメリカ大会3位、日本大会2位
⑥于小雨&金楊(中国):24ポイント 中国大会3位、日本大会2位
⑦ジュリアン・セガン&シャルリ・ビロドー組(カナダ):22ポイント アメリカ大会3位、フランス大会3位
⑧彭程&張昊組(中国):20ポイント フランス大会4位、ロシア大会3位
―――
補欠⑨ヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ組(フランス):フランス大会2位、日本大会6位




 まず、男子は日本勢3名がファイナル出場ということで、2012年から続く3人以上出場の記録をさらに伸ばしました(2012年は4名)。4年も3人以上を送り続けているというのは本当にすごいことだと思いますし、しかも当然同じメンバーではなく新たな選手も加わり顔ぶれが常に変わり続けているわけですから、日本男子の層の厚さを改めて感じますね。
 優勝争いという点で考えると、とんでもない世界最高得点をNHK杯で叩き出した羽生選手がやはり頭一つ抜けているでしょうか。羽生選手が普通にまとまった演技をすれば、ほかの選手が完璧に近い演技をしても負けることはないという感じさえします。対抗馬としては世界チャンピオンのフェルナンデス選手、ソチ五輪銀メダリストのチャン選手が実力、実績ともに有力かなと思います。ただ、宇野、金、村上の3選手も難度の高いプログラムを大きなミスなくこなせれば表彰台に立つ可能性は十分あり、ミスの仕方、数によって表彰台争いは混沌としてきそうな気もします。特に台風の目となりそうなのは金選手で、ショートで2度、フリーで4度の4回転を全て着氷してくると驚異的な技術点を稼げるだけに、この選手の演技内容によってメダルの行方も大きく変わってくるんじゃないかなと思いますね。


 一方、ペアはフランス大会のフリーが中止されたことによるルール変更で、史上初の7組出場となりました。これはシリーズ成績7位となった選手(組)がフランス大会の出場者だった場合、救済措置によってファイナルへの出場を認めるというもので、7位のセガン&ビロドー組はフランス大会に出場していましたので、特例でのファイナル進出が決まりました。通常6組出場で演技直前の6分間練習の際もグループ分けせずに1グループのみで競技を行うファイナルですが、7組がリンクで一斉に練習を行うことは難しいと思うので、3組、4組に分けて練習、競技を実施することになるでしょうね。
 さらに話は変わりますが、シリーズランク3位の隋&韓組が女性の隋選手の右足のアキレス腱の負傷によってファイナルを出場辞退することが判明しました。隋&韓組はGP2戦目の中国杯にも予定どおり出場していましたが、実はその直前の11月3日に隋選手が右足のアキレス腱を痛めたことが報じられていました。ただ、その時点では中国杯にも出場し、ファイナルに出場する意欲もあったと思うのですが、NHK杯が終了しファイナル進出者が確定した現在になっても怪我の回復状態が思わしくないということなのでしょうね。とても残念ではありますが、ファイナル以降も重要な大会が続きますから、シーズン後半に向けてじっくり怪我を治してほしいと思います。ということで、出場を辞退した隋&韓組に代わり、シリーズ成績8位で補欠1番手の彭&張組が繰り上がり、ファイナルに出場することとなります。なので、ファイナル7組出場という点は変わりません。同じ中国のペアですから、隋&韓組の分も頑張ってほしいですね。
 そして、優勝争いについて考えると、シリーズの成績で言えばデュハメル&ラドフォード組が唯一の2連勝で強いのかなと思ってしまいますが、シーズンベストで考えると、デュハメル&ラドフォード組と川口&スミルノフ組が216点台、ストルボワ&クリモフ組が214点台と拮抗していて、どのペアが優勝してもおかしくないように思えます。ただ、デュハメル&ラドフォード組は超高難度の4サルコウや4ルッツのスロージャンプを持っていますし、ソロジャンプでもほかのペアより難度の高いものを跳べます。今シーズンはまだその本領を100%は発揮していないので、それらが揃ってくるとやはり圧倒的な力で優勝を勝ち取るのではないかと思います。
 メダル争いという点では、前述した3組以外の4組はシーズンベストが180点台後半から190点台後半で少し劣りますが、1つの技の成否で大きく点数が変わってくるのがペア競技ですので、どういった表彰台の顔ぶれになるかは全く読めませんね。



 この記事はこれで終了ですが、次は女子&アイスダンス編に続きます。


:記事冒頭の男子メダリスト3選手のスリーショット写真、羽生選手の写真、金選手の写真、無良選手の写真、田中選手の写真、メンショフ選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、ホフスタイン選手の写真、ブレジナ選手の写真は、写真画像サイト「Newscom」から、ペアメダリスト3組の写真は、AFPBB Newsが2015年11月29日の10:30に配信した記事「世界王者のデュアメル/ラドフォード組がペア優勝、NHK杯」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2015-12-02 17:22 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)