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※2016年2月18日、四大陸選手権の出場選手変更について追記しました。
※2016年3月25日、世界選手権の出場選手変更について追記しました。


 アメリカの王者を決める全米選手権2016が1月15日から24日にかけて、シニア、ジュニア、ノービスなど全カテゴリーまとめて一挙に行われました。この記事ではシニアの結果について書いていきます。

2016 Prudential U.S. Figure Skating Championships この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 まずは女子から。
 優勝者は前年2位、一昨年1位のグレイシー・ゴールド選手です。SPは冒頭の3ルッツ+3トゥループが単独の2ルッツになり無得点となる大きなミスを犯し、首位と約7点差の2位に留まります。しかしフリーはショートでミスした3+3始め、全てのエレメンツを完璧にこなす会心の演技で、大差を逆転しての自身2度目のタイトル獲得となりました。
 フリーは、ほぼノーミスの演技で優勝が確実視されたエドマンズ選手の後という難しいシチュエーションでの滑走でしたが、持てる力の全てを出し尽くしての大逆転を成し遂げました。今季のゴールド選手は昨季までのお嬢さん的なイメージを良い意味で裏切る力強さ、アグレッシブさというのを漂わせていて、そのベストな形がこの大舞台で表れましたね。この演技が母国開催の世界選手権でもできれば悲願の初表彰台も夢ではないと思うので、今からとても楽しみです。

 そして惜しくも2位となったのは若手のホープ、ポリーナ・エドマンズ選手です。SPはパーフェクトな出来で2位以下に大差をつける首位に立ち、フリーも後半の3ループがアンダーローテーション(軽度の回転不足)を取られただけでほぼ完璧に近い演技でしたが、ゴールド選手と約2点差で初優勝を逃しました。
 しかし、昨シーズンから多々ジャンプの回転不足を取られ、フラストレーションの溜まる試合の多かったエドマンズ選手にとって、今大会の演技は久しぶりに満足感に満ちた内容だったのではないでしょうか。また、上述したゴールド選手同様、今季のエドマンズ選手は表現面で可愛らしい女の子から大人の女性へと見違えるように脱皮していて、あとは国際大会でも今回のようにコンスタントにジャンプが跳べれば自然と結果もついてくるんじゃないかなと思いますね。

 3位は前年のチャンピオン、アシュリー・ワグナー選手。SPは3+3のセカンドジャンプがダウングレード(大幅な回転不足)となり、2、3位と僅差の4位発進。しかしフリーは苦手の3ルッツが1回転になった以外は目立った取りこぼしなく演技をまとめて、総合3位に順位を上げました。
 残念ながら2連覇はなりませんでしたが、ショートのミスをフリーでは挽回して、さすがベテランという貫録の演技だったと思います。世界選手権でメダル争いに加わるためには今回のSPのようなミスは許されないでしょうから、この経験を活かしてさらにレベルアップしてきてくれると思います。

 4位でピューター(錫)メダルを獲得したのは長洲未来選手です。ショートは3フリップ+3トゥループが3+2になり5位に留まりましたが、フリーでは3+3を含め大きな取りこぼしなくエレメンツをクリアし、2年ぶりに表彰台に上りました。
 昨年のこの大会ではフリーの演技中に負傷してしまい10位と悔しい結果に終わった長洲選手。今大会もSPの演技中にスケート靴が裂けるアクシデントがありましたが、フリーでは急遽修理した靴で臨み素晴らしい演技を披露しました。長洲選手はかつて2013年のNHK杯で採点システムの故障によって氷上で長い間待たされるなど、なにかとアクシデントに見舞われることの多い印象がありますが、年齢を重ねるたびにどんどん風格を増して、強い選手になっていっているようにも感じます。ジャンプの安定感も戻りつつあり、今後がますます楽しみになりましたね。

 以下、5位は今季シニアデビューのタイラー・ピアース選手、6位はジュニアのブレイディ・テネル選手、7位は今季GPデビューのハンナ・ミラー選手、8位は前年3位の実力者カレン・チェン選手となりました。
 今シーズンGPで上位に入ったチェン選手が8位、NHK杯で銀メダルを獲得したコートニー・ヒックス選手が9位に沈むなど、改めて全米選手権の難しさを感じましたね。GPで活躍している選手が必ずしも順当に上位に入るわけではなく、全日本もそうですが、やはり毎年何かしらの波乱や嵐が起こります。
 その中で世界選手権の代表を射止めた上位3人は安定して強く、ボストンで行われる世界選手権に向けて、これ以上ない最強の布陣と言えますね。


 続いては男子です。

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 初優勝となったのはベテランのアダム・リッポン選手。SPは大技4ルッツを回避しましたが、逆に守りに入ってしまったのか得意の3ルッツからの連続ジャンプでミスが出てしまい3位発進となります。しかしフリーでは4ルッツに挑み、クリーンな成功とはならなかったもののアンダーローテーション(軽度の回転不足)での転倒にとどめると、その後は全てのジャンプを予定どおりに着氷し、初めての全米王者の座を勝ち取りました。
 実に8度目の全米にしての初優勝。初出場から常に上位には食い込んでいましたが、一方でジャンプの不安定さが課題でもありました。しかし、ここ1、2年はミスがあっても始終自分らしさを貫ける強さを手に入れたように感じますし、どんなシチュエーションでも自信を持って臨んでいるなというのがうかがえます。少しずつ少しずつ積み重ねてきたことが、ここにきて花開き、実を結びつつありますね。

 銀メダリストとなったのはマックス・アーロン選手です。ショートは4サルコウ+3トゥループ、3アクセル含む高難度のプログラムをパーフェクトに演じ、91.83点のハイスコアで首位に立ちました。フリーでも2つの4サルコウ、2つの3アクセルを含んだ構成で、全てのエレメンツで加点を獲得するほぼノーミスの演技。惜しくも1.2点差でリッポン選手には及びませんでしたが、堂々の2位となりました。
 トータルでは2位だったとはいえ、ショート、フリーともに唯一GOEの減点がなく、優勝しても全くおかしくない内容だったと思います。ただ、フリーでは3+1+3を予定していたところが3+1+2になったのと、4サルコウや3アクセルは別にして、3ルッツや3フリップといった難度の高いトリプルジャンプの数が少ないといったところで、思ったほど技術点を伸ばせなかったのかなと思います。ですが、4サルコウ、3アクセルの成功率は高まっていますし、表現面でもシーズンオフに取り組んできたことが確実に得点にも結果にも表れていますから、この調子のまま頑張ってほしいですね。

 3位に入ったのはジュニアのネイサン・チェン選手です。ショートは4回転を2本組み込んだ難構成に挑み、そのうちの1本はコンビネーションで成功させましたが、ほかの3アクセルやスピンでミスを犯し、4位となります。しかしフリーでは4回転4本という驚異的なプログラムにチャレンジし、3アクセルでの転倒はあったものの、4回転は全て着氷。世界初の快挙を成し遂げ、初めてメダルを獲得しました。
 今季は出場したジュニアの大会すべてを制し、とうとうシニアの全米でも表彰台と順風満帆なシーズンを送っているチェン選手。……と言いたいところですが、歴史的なフリーの歓喜もつかの間、エキシビションの演技中にジャンプの着氷で左股関節を痛め、1月27日に手術を行ったものの、8週間から10週間ほどの休養が必要なため、代表に選出された世界選手権、世界ジュニア選手権を辞退することが発表されました。
 順調に歩んできたシーズンの真っただ中のエキシビションでの負傷というまさかの事態、とても残念ですしショッキングですね。特に世界ジュニアは、今季がジュニアの集大成のシーズンであるチェン選手にとって、ジュニア時代を締めくくる重要な大会だったと思うので、そこで彼の演技が見られないというのは悲しいです。また、金メダルの大本命であるチェン選手が不在の世界ジュニアというのはやはりどこか物足りなく、寂しい感じがしますね。
 そして、チェン選手は今回エキシビションで4トゥループを跳ぼうとして失敗して負傷したとのことで、改めて若い選手が高難度のジャンプに挑むことの危うさについても考えさせられました。4回転時代真っ盛りの現在、シニアに負けず劣らずジュニアの選手も次々と4回転に挑戦しています。ただ、身体の出来上がっていない10代の選手が身体に負担のかかる4回転を一つのプログラムの中で何本も跳ぶというのは怪我のリスクも増えます。競争を勝ち抜くためには4回転は必須ですが、ジュニアの場合、メリット、デメリットの両方を考え合わせながらの慎重さも必要かなと思います。

 4位はベテランのグラント・ホフスタイン選手です。SPは4トゥループに挑んだものの転倒となり、6位と出遅れます。しかしフリーでは4トゥループのミスを最小限に抑え、3アクセル2本をクリーンに成功させるなど、おおむね予定どおりに滑り切り、順位を上げてフィニッシュしました。
 今季のホフスタイン選手は5シーズンぶりにGPシリーズに参戦し2大会とも4位と安定感が際立っていましたが、今大会でも4回転以外はさほど大きなミスなく、シーズン前半の好調をしっかりと繋げましたね。そして、チェン選手の負傷によって、初の世界選手権代表のチャンスが回ってきました。決してものすごい派手さがあるスケーターではありませんが、時間をかけて積み重ねてきた美しいスケーティング、表現、技術を世界の大舞台でも思いっきり発揮してほしいですね。

 以下、5位はロステレコム杯銅メダリストのロス・マイナー選手、6位はベテランのアレクサンダー・ジョンソン選手、7位は今季GPデビューのティモシー・ドレンスキー選手、8位はジュニアのヴィンセント・ゾウ選手となっています。


 次はペアです。
 優勝は若手のタラ・ケイン&ダニエル・オシェア組。ショートではデススパイラルで大きくレベルを取りこぼす場面もありましたが、ツイストリフトやスロージャンプなど高得点を望めるエレメンツをクリーンにまとめて首位に立ちます。全てのエレメンツに加点が付く会心の演技で、首位の座を明け渡すことなく、完全優勝で初の全米王者のタイトルを手にしました。
 優勝候補筆頭と目されていたのはディフェンディング・チャンピオンであるシメカ&クニーリム組でしたが、こちらがジャンプ系のエレメンツでミスが相次いだのとは対照的に、ケイン&オシェア組は全ての要素を確実にこなしたことが優勝に結び付きましたね。
 一方、前年1位のアレクサ・シメカ&クリス・クニーリム組は上述したようにジャンプやスロージャンプでミスが複数あり、技術点を伸ばすことができず2位となりました。
 3位は昨シーズン新たにペアを結成した、マリッサ・カステリ&マーヴィン・トラン組です。ショート、フリーともにレベルの取りこぼしやジャンプミスがありましたが、リフトやステップシークエンスで高い評価を獲得し、このペアとして初めて表彰台に乗りました。
 4位は新進のマデリーン・アーロン&マックス・セットレージ組。SPで自己ベストに迫るスコアで4位につけると、フリーでは多々ミスがあり得点は抑えられたものの、ショートのアドバンテージを活かしてピューターメダルを獲得しました。


 ラストはアイスダンスです。
 初の頂点に立ったのはマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組です。SDは2位ではあったものの、技術点では首位のチョック&ベイツ組を上回り0.47点差に迫ると、FDでは全エレメンツで最高難度のレベル4を揃え(レベルがつかないコレオリフト以外)、逆転でのドラマチックな初優勝を果たしました。
 アメリカのアイスダンス界はチョック&ベイツ組にシブタニ&シブタニ組が続くという格付けがここ数年おなじみの光景となっていました。ですので、この逆転現象は正直とても驚きましたし、序列を覆すのが難しいといわれるアイスダンスでもこういうことはあるんだなと感じました。採点表を見ると、演技構成点はショートもフリーもチョック&ベイツ組が上なのですが、技術点ではどちらもシブタニ兄妹が優位に立っています。チョック&ベイツ組がフリーで珍しいミスを犯したというのもありますが、それを考慮に入れても、やはりシブタニ兄妹の技術力の高さ、どんなシチュエーションでも絶対に乱れず揺るがない安定感というのが、この勝利を生んだのだなと思います。
 2位となったマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組は、フリーでスピンがレベル2になるロスがあり、全て完璧に実施したシブタニ兄妹に及びませんでした。
 3位はマディソン・ハベル&ザカリー・ダナヒュー組。こちらはショート、フリーともに目立ったミスなく、非公式ながらパーソナルベストを上回るハイスコアで前年に続き銅メダルを獲得しました。
 4位はアナスタシア・カヌーシオ&コリン・マクマヌス組。FDではステップでレベルの取りこぼしがありましたが、そのほかをきっちりとまとめ、自己最高位をマークしました。



 さて、最後に世界選手権、四大陸選手権の代表選手をまとめたいと思います(敬称略)。


《世界選手権代表》

男子シングル:マックス・アーロン、アダム・リッポン、グラント・ホフスタイン
女子シングル:ポリーナ・エドマンズ、グレイシー・ゴールド、アシュリー・ワグナー
ペア:タラ・ケイン&ダニエル・オシェア組、アレクサ・シメカ&クリス・クニーリム組
アイスダンス:マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組、マディソン・ハベル&ザカリー・ダナヒュー組、マイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組

《四大陸選手権代表》

男子シングル:マックス・アーロン、アダム・リッポン、グラント・ホフスタイン
女子シングル:ポリーナ・エドマンズ、グレイシー・ゴールド、長洲未来
ペア:マリッサ・カステリ&マーヴィン・トラン組、タラ・ケイン&ダニエル・オシェア組、アレクサ・シメカ&クリス・クニーリム組
アイスダンス:マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ、マディソン・ハベル&ザカリー・ダナヒュー組、マイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組



 世界選手権代表はもちろん全米選手権の上位3選手(ペアは2組)が選出されました。ただ、男子は前述したようにネイサン・チェン選手が負傷で辞退したため、代わりに全米4位のホフスタイン選手が繰り上がりとなりました。
 四大陸選手権に関しては、現時点では世界選手権とほぼ同じメンバーとなっていますが、女子はワグナー選手が外れて長洲選手が代表となっています。当初の代表発表ではワグナー選手も四大陸代表に選出となっていたのですが、すぐに長洲選手へと変更されました。これはやはりワグナー選手が四大陸出場を希望しなかったためと思われます。ワグナー選手は2012年を最後に四大陸にはしばらく出場していませんから、今季もいつもどおりのスケジュールで世界選手権に向かうということなのでしょうね。
 ですが、そのほかの顔ぶれを見てもアメリカのトップ選手が勢ぞろいしており、日本やカナダ勢などとのマッチアップが今から楽しみです。では。


※以下、2016年2月18日に追記した部分です。


 四大陸選手権に出場するアメリカ代表選手に関して変更がありましたので追記します。
 女子のポリーナ・エドマンズ選手は新しいスケート靴に慣れるのに時間が必要なため、四大陸選手権は出場辞退すると発表しました。そのため補欠1番手だった全米選手権8位のカレン・チェン選手が繰り上がりで出場することとなりました。
 一方、男子は全米王者のアダム・リッポン選手が出場を辞退しました。詳細な辞退理由についてはまだ分かりませんが、あまり大々的に報じられていないようなので大きな怪我などではないのだと思います。四大陸選手権はリッポン選手の代わりに全米選手権5位のロス・マイナー選手が出場する運びとなっています。


※以下、2016年3月25日に追記した部分です。


 3月23日、全米フィギュアスケート協会によって、全米選手権2位のポリーナ・エドマンズ選手が右足の骨挫傷で世界選手権を出場辞退することが発表されました。代わりに、全米選手権4位で補欠1番手の長洲未来選手が繰り上がりで世界選手権に出場することが決まりました。
 エドマンズ選手は2月の四大陸選手権の際はスケート靴の問題によって出場を取りやめたわけですが、今回の怪我ももしかしたらそこに関連するものなのかもしれません。母国開催の世界選手権に出られないことは悔しいと思いますが、しっかり怪我を治して来シーズンまた頑張ってほしいですね。
 そして、エドマンズ選手の代役として長洲選手が派遣されるということで、エドマンズ選手には申し訳ないですがとても嬉しいですね。今季の長洲選手はシーズンを通して安定した演技を見せ続けていて、特に2月の四大陸では久々にパーソナルベストを更新する会心の演技を見せていました。そのシーズンにこうして大きなチャンスが巡ってくるというのは、負傷やアクシデント続きだった近年の彼女の苦労を思うと、フィギュアの神様からのご褒美なのかなと思いますね。実に2010年以来6年ぶり2度目となる世界選手権ですが、特別に意識せず、これまでどおりの長洲選手で臨んでほしいですね。


:記事冒頭の女子メダリスト4選手の写真は、アメリカのフィギュアスケート組織「Pasadena Figure Skating Club」の公式サイトが2016年1月23日に配信した記事「Success at U.S. Championships!」から、男子メダリスト4選手の写真はフィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから引用させていただきました。
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by hitsujigusa | 2016-01-31 00:16 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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※2016年2月18日、四大陸選手権の派遣選手変更について追記しました。


 1月18日から24日にかけて、カナダのチャンピオンを決めるカナダ選手権が行われました。同時期にアメリカでは全米選手権も開催されましたが、まずはカナダ選手権についてお伝えします。

2016 Canadian Tire National Skating Championships この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 最初は男子の結果からです。
 優勝は今季休養から復帰した元世界王者、パトリック・チャン選手です。チャン選手はSPでパーフェクトな演技で103・58点のハイスコアをマークして首位に立つと、フリーでは細かなミスが多少あったものの、シーズン前半からレベルを上げた構成をしっかりとまとめ、自身8度目となるタイトルを獲得しました。
 2007年から2013年にかけて7連覇し、カナダ王者として他を寄せつけず君臨し続けていたチャン選手ですが、今回も2位に50点以上の差をつける断トツぶり。シーズン前半の低調から見事にピークを合わせ、“パトリック・チャンここにあり”という姿を見せてくれました。ジャンプ構成もシーズン前半は4回転1本でしたが、今大会は2本挑んでクリーンに成功させ、また、今回は実現しなかったものの苦手な3アクセルを2本組み込む構成も計画しているそうで、急激な進化を遂げている現在の男子フィギュア界において、これからチャン選手がどんな道を歩んでいくのか、ますます楽しみになりましたね。
 銀メダリストとなったのはリアム・フィラス選手。ショートでは3つのジャンプ要素全てでミスがあったものの致命的な大失敗にはせず2位と好発進。フリーも4回転でミスがありましたが、そのほかのジャンプを確実に下り、ショートの順位を守り切りました。
 フィラス選手は昨年、一昨年と2年連続で3位。ものすごい大きな武器は持っていませんが、チャン選手の元コーチであるクリスティ・クラールコーチに師事しているということもあってチャン選手と比較されることの多い選手ですが、3年連続できっちりこの大舞台にピークを持ってくるというのは立派ですね。持ち味のスケーティングに加え、ジャンプの安定感が増してくればさらにおもしろい存在になりそうだなと思います。
 3位は怪我から復帰した実力者、ケビン・レイノルズ選手。SPは4回転と3アクセルでミスがあり、フリーでも複数ジャンプミスが散見されたものの、難度の低いジャンプを確実に着氷させて2年ぶりの表彰台に返り咲きました。
 昨年はSPを行ったあとに負傷により大会を棄権したレイノルズ選手。その後手術も行い今大会に向けてトレーニングしてきましたが、見事に戻ってきましたね。もちろんまだまだ本来のレイノルズ選手のジャンプには程遠いと思いますが、まずは第一線への第一歩として、今後また大きな国際大会でレイノルズ選手の演技が見られることを嬉しく思います。

 昨年は絶対王者チャン選手が不在とあって誰が優勝してもおかしくない混戦でしたが、さすがの絶対王者、譲らなかったですね。そして昨年はSP後に棄権したレイノルズ選手も元気に戻ってきてくれて、実力者の復活というのが印象に残りました。
 一方で昨年のチャンピオン、若手のホープであるナム・グエン選手は4位に沈み、世界選手権、四大陸選手権のチャンスをつかむことができませんでした。身長も伸び盛りで変化の時期の真っ最中にいるグエン選手なので、今はフィジカル面でもメンタル面でも苦しい時期かなと思うのですが、間違いなく稀有な実力を持った選手ですので、壁を乗り越えてまた強くなるんじゃないかなと思いますね。


 次は女子です。

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 初の栄冠に輝いたのは前年2位のアレーヌ・シャルトラン選手。SPで高難度の3ルッツ+3トゥループを含むプログラムを完璧に演じ2位につけると、フリーでは3フリップのエッジが不正確と判定されて減点を受けた以外はほぼノーミスで滑り切り、総合200点超え、初のカナダ女王となりました。
 今シーズンのシャルトラン選手はGP初戦のスケートアメリカで最下位、2戦目のロステレコム杯で6位とジャンプが不安定でしたが、ここに来てシーズン最高の演技を見せましたね。この演技が国際大会でもできれば十分トップ選手として安定して活躍できるようになるのではないでしょうか。
 2位となったのは前年のチャンピオン、ガブリエル・デールマン選手です。ショートで3ルッツの転倒があり出遅れましたが、フリーは3+3で細かなミスがあった以外はコンスタントにエレメンツを揃えてフリー1位。しかし、惜しくも総合では2位で連覇はなりませんでした。
 優勝に届かなかったとはいえ、こちらもレベルの高い内容、出来でしたね。特にジャンプに関しては高いGOEがついていて、ジャンパーとしての存在感を十分に発揮したのではないでしょうか。シャルトラン選手同様、この演技が国際大会でもできれば爆発的な飛躍が期待できる選手だと思いますね。
 3位に入ったのは2季ぶりに競技復帰したケイトリン・オズモンド選手。ショートは3+3こそ跳ばなかったものの、確実性の高いジャンプをまとめて首位発進。フリーはいくつか細かいミスがあり順位を落としてしまいましたが、それでも2年ぶりのカナダ選手権で見事に銅メダルを獲得しました。
 今大会は上位の2人に技術点で後れを取ったオズモンド選手ですが、表現面を評価する演技構成点では断トツの高評価でした。今季は怪我からの復帰シーズンとあってまだ本調子ではないですが、次のオリンピックまでと考えると立て直す時間はたっぷりありますから、今季はまず技術や体力面を整えるシーズンとして、来季に向けての良いステップアップのシーズンになったのではないかと思います。

 試合前からシャルトラン、デールマン、オズモンドの3選手の三つ巴の争いが予想されていましたが、そのとおりの展開になりましたね。1位のシャルトラン選手から3位のオズモンド選手まで約4点の超僅差で、これからもこの3人が切磋琢磨していくことでカナダ女子のレベルもどんどん上がるでしょうから、楽しみですね。


 続いてはペア。

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 1位になったのはメ―ガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組。ショート、フリーともにソロジャンプやスロージャンプで細かなミスがあり完璧とはいきませんでしたが、レベルの高いエレメンツをこなして、ペアとしては史上4組目となる5連覇を達成しました。
 今シーズンは得意のジャンプでミスが出る場面もチラホラあり完全無欠というわけではないのですが、やはり構成の難度だったりエレメンツの完成度だったり、揺るぎない強さを誇るペアですね。シーズン後半に向けてさらに集中度を増してブラッシュアップしてくるでしょうから、海外の強豪勢との対決が今から楽しみですね。
 2位は今季本格的なシニアデビューとなったジュリアン・セガン&シャルリ・ビロドー組。ショートでは大技のスロージャンプで小さなミスがありつつもまとめて2位発進。そしてフリーでは全てのエレメンツに加点が付く会心の演技で、前年の3位から順位を上げて銀メダルを獲得しました。
 19歳のセガン選手と22歳のビロドー選手との若いペアですが、無敵を誇ったジュニア時代からシニアに上がった今季にかけてぐんぐん進化を遂げ、パーソナルベストも次々に更新していて、今はデュハメル&ラドフォード組に次ぐ存在ですが、いつかデュハメル&ラドフォード組をもおびやかす存在になるのではないかという気がしますね。まだまだ伸びしろの多いペアですから、今後が本当に楽しみです。
 3位はリュボーフィ・イリュシェチキナ&ディラン・モスコヴィッチ組。SPはスロージャンプやツイストなどで取りこぼしがあり3位。ですが、フリーではコンビネーションジャンプでの細かなミス以外は大きなミスなく演技をまとめ、昨年の2位に続いてこのペアとしては2個目のメダルを獲得しました。


 最後はアイスダンスです。

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 金メダルを獲得したのはケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組。SD、FDともに目立ったミスなくエレメンツをクリアし、前年に続く2連覇を達成しました。
 2位はパイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組。こちらはSDのラベンスバーガーワルツでレベルを取りこぼす場面はありましたが、FDでは高いレベルでエレメンツを揃え、前年に続き2位となりました。
 3位はエリザベット・パラディ&フランソワ=グザヴィエ・ウェレット組。ショートダンスはラベンスバーガーワルツで取りこぼしがあり4位に留まりましたが、フリーダンスは技術点だけだとウィーバー&ポジェ組に次ぐ高得点をマークし、ショートから順位を上げて初めて表彰台に乗りました。



 さて、これらの結果、世界選手権、四大陸選手権のカナダ代表はこうなりました(敬称略)。


《世界選手権代表》

男子シングル:パトリック・チャン、リアム・フィラス
女子シングル:アレーヌ・シャルトラン、ガブリエル・デールマン
ペア:メ―ガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組、ジュリアン・セガン&シャルリ・ビロドー組、リュボーフィ・イリュシェチキナ&ディラン・モスコヴィッチ組
アイスダンス:ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組、パイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組、エリザベット・パラディ&フランソワ=グザヴィエ・ウェレット組


《四大陸選手権代表》

男子シングル:パトリック・チャン、リアム・フィラス、ケビン・レイノルズ
女子シングル:アレーヌ・シャルトラン、ガブリエル・デールマン、ケイトリン・オズモンド
ペア:メ―ガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組、ジュリアン・セガン&シャルリ・ビロドー組、リュボーフィ・イリュシェチキナ&ディラン・モスコヴィッチ組
アイスダンス:ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組、パイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組、エリザベット・パラディ&フランソワ=グザヴィエ・ウェレット組



 カナダ選手権での順位がそのまま当てはめられた、実に明快で誰もが納得する選考だと思います。個人的な注目点としてはチャン選手が四大陸選手権に出場することで、直前での辞退などがなければ2012年以来、4年ぶりとなります。同じく今シーズン休養明けとなった浅田真央選手は一度は四大陸出場を希望しながらも辞退しましたが、チャン選手があえて四大陸に出場する意図、メリットとしてどんなことを考えているのか気になりますね。
 欧州以外のスケーターにとって最も直近の大きな国際試合となる四大陸選手権は2月16日に台湾の台北にて開幕します。


※以下、2016年2月18日に追記した部分です。


 2月11日、カナダのフィギュアスケート組織「スケートカナダ」は、女子のガブリエル・デールマン選手、ペアのジュリアン・セガン&シャルリ・ビロドー組がそれぞれ怪我のため四大陸選手権を出場辞退することを発表しました。
 デールマン選手、そしてセガン&ビロドー組のセガン選手は練習中に負傷したそうですが、軽傷とのことで3月末から行われる世界選手権には予定どおり出場できるようです。四大陸選手権はデールマン選手の代わりにカナダ選手権4位のヴェロニク・マレ選手が、セガン&ビロドー組の代わりに同大会5位のヴァネッサ・グレニエ&マキシム・デシャン組が出場することとなっています。


:記事内の写真は全て、カナダのフィギュアスケート組織「スケートカナダ」の公式フェイスブックページから引用させていただきました。
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by hitsujigusa | 2016-01-27 23:52 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

ドミトリーともきんす


【収録作】
「球面世界」
「ドミトリーともきんす」
「Tさん(東京在住)は、この夏、盆踊りが、おどりたい。」


 今回取り上げるのは漫画家・高野文子さんの『ドミトリーともきんす』。なぜ今この作品かというと、この作品に取り上げられている科学者・湯川秀樹氏の誕生日が1月23日なので、多少強引ですがそれに絡めてこの漫画を紹介しようという魂胆です。
 この本には3つの作品が収録されていますが、その核をなすのが表題作「ドミトリーともきんす」です。この漫画では湯川氏始め、朝永振一郎氏、牧野富太郎氏、中谷宇吉郎氏という著名な科学者4人が取り上げられています。といっても堅苦しい専門書ではありません。とも子ときん子の母娘が営む学生寮“ドミトリーともきんす”に4人の寮生―若き湯川氏、朝永氏、牧野氏、中谷氏―が暮らしているという設定の下、彼らが一般向けに残した随筆を紹介する、読書案内漫画です。

 「ドミトリーともきんす」はプロローグと11の短編の連なりで成り立っています。短編1作ごとに1人の科学者がフィーチャーされ、その科学者の著作の内容に沿った形でお話が繰り広げられます。お話は明確なストーリー性があるものではなく、それぞれの科学者の言葉を通して、科学の世界をのぞき見できるような漫画になっています。
 作者の高野さんは「ドミトリーともきんす」を書こうと思った理由について、「実用に向く、そういう仕事はできないのかな。」と述べ、その時に気を付けたこととして「まずは、絵を、気持ちを込めずに描くけいこをしました。(中略)自分のことから離れて描く、そういう描き方をしてみようと思いました。道具は、製図ペンを使いました。頭からしっぽまで、同じ太さが引けるペンは、じつに静かな絵が描けます。」と語っています。
 実際、「ドミトリーともきんす」の絵は無駄が削ぎ落とされた非常にシンプルな絵になっています。凹凸感や奥行き感のない絵は、四角や三角などの幾何学模様で構成されたグラフィックデザインのようにも見え、まさに“静かな絵”と言えます。
 そして、涼しい風が、作中には吹いています。この“涼しい風”という表現は、高野さんが自然科学の本を読んだ時の読後感としてあとがきに記した言葉ですが、本の帯では「科学の本ってヒンヤリして気持ちがいい」とも表わされています。涼しさもヒンヤリも、この漫画の空気感を表現するのにぴったりだと思います。でも、それは科学に相対する時にイメージする理系のクールな感じとは、全然違うものなのです。
 たとえば、雪と氷の研究の第一人者として知られる中谷宇吉郎氏の「天地創造の話」を取り上げた「5 ナカヤ君 コタツです」では、昭和新山の誕生を目にした中谷氏の心からの感動の言葉が紹介されています。

 今眼の前に見るこの山の姿は、まことに美と力との象徴である。その美は人界にない妖しい光につつまれている。その力にも闘争や苦悩の色が微塵もなく、それはただ純粋なる力の顕現である。

 計算や思惑など入り込む余地なく、ただただそうあるべくしてそうあるだけの自然現象がなせる美。中谷氏はそれを科学の目でというよりも、おもしろいものを発見した子どものような目で見、素直な感想を書き記しています。
 このエピソードに限らず、ほかの湯川氏、朝永氏、牧野氏をフィーチャーした話でも同じく素直な感動や興味関心を持って世界を見つめる科学者たちの姿が漫画化されています。著名な科学者をかわいらしくデフォルメした学生のキャラクターにするというのは一見突飛なことにも思えますが、そうして描かれた科学者たちの姿や言葉を見ると、優れた科学者というのは一様にして目の前で起きている事象や日常のなにげないワンシーンにさえも不思議を見出し、素直に受け止める人々なんだなというのが伝わってきて、それは物事をありのままに受け止める子どもととてもよく似ていて、最も子どもの心を持ち続けている大人が、科学者というものなんだなと感じさせられます。
 ですが、全ての科学者がそうというわけではないでしょう。中にはお金儲けだったり名誉だったりが先立ってしまう科学者もいるでしょう。そういう人たちは子どもの心の持ち主とは言えません。一方で、「ドミトリーともきんす」に登場する4人は紛れもなく子どもの心を持ち続けた科学者です。作中で紹介されている彼らの文章を読んでも、そのことがありありとわかります。子どもは自分の心のおもむくままに動きます。ゆえにその行動には計算や思惑がなく、その姿はなんのてらいもなく清々しいものです。
 そして、自らの好奇心のままに動き、学問を究めた4人の科学者たちもまた、同じように清々しさに満ちています。その清々しさは子どもの心を持っているからというのと同時に、数字や空間、自然現象といった人間の力ではどうしようもない、動かしがたい世界の真理と対峙する人間ならではの謙虚さが根底に流れているからではないかと思います。自然が作り出したものの前では人間は敬服するしかない。そんな謙虚な姿勢を保ちつつ、心では燃えたぎるような熱を持って世界の真理と向き合い続ける――。そうした彼らの在り方こそが、熱すぎず冷たすぎない、高野さんいうところの“涼しい風”、“ヒンヤリ”の正体なのではないでしょうか。

 「ドミトリーともきんす」は湯川氏の「詩と科学―子どもたちのために―」という短文をフィーチャーした「11 詩の朗読」で締めくくられます。

詩と科学遠いようで近い。近いようで遠い。(中略)しかしなんだか近いようにも思われる。どうしてだろうか。出発点が同じだからだ。どちらも自然を見ること聞くことからはじまる。バラの花の香をかぎ、その美しさをたたえる気持ちと、花の形状をしらべようとする気持ちのあいだには、大きなへだたりはない。しかしバラの詩をつくるのと、顕微鏡をもちだすのとではもう方向がちがっている。科学はどんどん進歩して、たくさんの専門にわかれてしまった。いろんな器械がごちゃごちゃにならんでいる実験室、わけのわからぬ数式がどこまでもつづく書物。もうそこには詩の影も形も見えない。科学者とはつまり詩をわすれた人である。詩を失った人である。そんなら一度失った詩は、もはや科学の世界にはもどってこないのだろうか。詩というものは気まぐれなものである。(中略)ごみごみした実験室の片隅で、科学者はときどき思いがけない詩を発見するのである。しろうと目にはちっともおもしろくない数式の中に、専門家は目に見える花よりもずっとずっと美しい自然の姿をありありとみとめるのである。

 科学という学問の真理を最も正確に伝える秀逸な文章だと思います。正直私は勉強としての理科や数学は大っ嫌いな人間ですが、科学の中に潜む詩というのはなんとなくわかる気がします。そして、湯川、朝永、牧野、中谷の4氏は、まさにその詩にたどり着いた科学界の詩人であり、彼らが残したいくつもの言葉たちは、その一つひとつが唯一無二の詩なのだといえます。
 遠い存在のように思える科学、そして科学者を身近に感じさせてくれる『ドミトリーともきんす』。科学の本を手に取るきっかけとしてはもちろんのこと、この本自体も、一回読んで強烈なインパクトを与える本ではありませんが、手元に置き何度も読むうちに、読み手の体と心に染み込んで、ささやかながらも毎日の助けになってくれる良作だと思います。


:記事内の青字の部分は高野文子著『ドミトリーともきんす』(中央公論新社、2014年9月)から引用させていただきました。


ドミトリーともきんす
高野 文子
中央公論新社
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by hitsujigusa | 2016-01-21 16:28 | 漫画 | Trackback | Comments(0)

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 全日本選手権より一足先に行われたロシア選手権2016。国際大会も含め、世界一熾烈といっても過言ではない大会ですが、見どころの多い凄い試合(特に女子)となりました。大会が行われてからかなり時間が経ってしまいましたが、改めてロシア選手権を振り返り、ざっくりと感想を書いていきたいと思います。

Онлайн-табло соревнований この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます(ただしロシア語です)。

*****

 まずは世界一層の厚い女子から。
 優勝したのは今シーズン、GPファイナルを制覇するなど快進撃を続けているシニア1年目のエフゲニア・メドベデワ選手。SP、フリーともに1位、一つの綻びもない完璧な演技で初のロシア女王となりました。また、得点は234.88点と非公式ながら韓国のキム・ヨナさんが保持する世界最高得点を上回り、シニアデビューシーズンとは思えない圧倒的な強さを再び発揮しました。シニア1年目での優勝というのは、昨季のエレーナ・ラディオノワ選手もそうですし(GPデビュー自体は13/14シーズン)、エリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手もそうだったので珍しいことではないですが、やはりここまで一気にスコア、評価が上がって優勝するというのは、ソチ五輪シーズンのユリア・リプニツカヤ選手以上の急激ぶりですね。もちろんメドベデワ選手はフリーに2度の3+3を組み込むなどレベルの高い選手であることは間違いないですが、3アクセルや4回転を跳んでいるわけではなく、抜きん出てレベルが高いというわけではありません。その中での国際大会、国内大会でのこの得点傾向というのは疑問符も付きますね。ただ、メドベデワ選手が素晴らしい選手であることに疑問の余地はなく、あとはこの勢いがどこまで続くのか、今季はこのまま突っ走れるでしょうが、来季以降はどうなのか、今から気になるところですね。

 銀メダルを獲得したのは昨季のチャンピオン、エレーナ・ラディオノワ選手。今季序盤はジャンプの不調に苦しんだラディオノワ選手ですが、徐々に調子を取り戻し見事に今大会に合わせてきましたね。スコアではメドベデワ選手に大差をつけられてしまいましたが、ショート、フリーともに2位で文句なしの内容でしたし、この厳しいロシア女子の中でジュニア時代からずっと表彰台に乗り続けているという安定感は間違いなくピカイチだと思います。
 3位はアンナ・ポゴリラヤ選手。意外な気もしますがこれがロシア選手権初表彰台。今シーズンはGPで苦戦し、特にNHK杯ではSPで3度転倒するというまさかの演技で悔しい思いをしたと思いますが、そこから約1か月でしっかり気持ちもジャンプも立て直してきましたね。

 4位、5位はジュニアGPファイナルで金銀のポリーナ・ツルスカヤ選手、マリア・ソツコワ選手が実力を発揮して、シニア勢に迫る200点台をマーク。
 そして6位は今季競技復帰したソチ五輪女王、アデリナ・ソトニコワ選手。ショートで1度、フリーで2度の転倒があり、それでも高い演技構成点をマークしたものの、表彰台に迫ることはできませんでした。浅田真央選手もそうですが、やはり復帰したばかりのシーズンというのは難しいもの。ソチ五輪女王といえども今の状態では、群雄割拠のロシア女子の中で勝ち抜くことは厳しかったですね。
 7位のユリア・リプニツカヤ選手はショートでノーミスの演技を見せて3位と好発進しましたが、フリーでは細かなミスが重なった上、コンビネーションジャンプが1つしか入らず10位、総合7位と崩れてしまいました。身体的な変化の真っただ中にいるリプニツカヤ選手。少しずつ良くはなっていると思うのですが、まだ本当の安定を得るまでには時間がかかりそうです。GP後にコーチを変更してすぐの今大会だったので、新たなコーチとともに技術を見直して積み上げていくのは、これからですね。

 そして、昨シーズン圧倒的な強さを誇り世界女王となったエリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手は8位に終わりました。ショート、フリーともに3アクセルを組み込み、全選手中最もハイレベルなジャンプ構成で挑んだトゥクタミシェワ選手ですが、残念ながらその試みは成功しませんでした。今季はシーズン序盤からなかなかジャンプが揃わず、特に代名詞の3アクセルは減点の付かない成功というのが1度しかなく、その3アクセルのミスがほかのエレメンツにも影響しているなというのがうかがえたのですが、3アクセルを跳ばないという選択肢もある中、それでもショートとフリー両方でチャレンジしたという心意気は素晴らしいなと思います。今シーズンの勝負だけではなく、将来的なことも見据えた上で、3アクセルに粘り強く挑み続けているのだと思いますが、以前も大きな挫折から這い上がったトゥクタミシェワ選手ですから、今季の苦い経験もきっと糧にしてまた彼女らしい演技を見せてほしいですね。


 続いては男子です。

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 優勝はディフェンディングチャンピオンのマキシム・コフトゥン選手。ショート、フリーともにミスがあり断トツでとはいきませんでしたが、しっかり演技をまとめ3連覇を達成しました。今までもエフゲニー・プルシェンコ選手を始め3連覇以上を成し遂げた選手はいますが、コフトゥン選手は必ずしもそこまで安定感抜群とか王者として君臨しているというようなイメージはないのですが、それでもこの一番大事な試合にしっかり調子を上げてくるピーキングというのはさすがだなと思いますね。
 そして2位に入ったのは20歳の新星ミハイル・コリヤダ選手。SPで完璧な演技を披露してコフトゥン選手と僅差の2位につけると、フリーも最小限のミスに抑えてそのまま初めての表彰台となりました。今季はチャレンジャーシリーズの2試合でメダルを獲得し、GPのロステレコム杯でも会心の演技で5位に入るなど急成長を見せていたコリヤダ選手ですが、今大会で一気に階段を駆け上がりましたね。技術面では何といってもジャンプの質が素晴らしく、ロシア男子の中でも際立って美しいジャンプを跳べる人だと思いますし、表現面でも明確な個性を持っていて見応えのある選手です。ダークホースから一躍ロシア男子のトップレベルにのし上がったコリヤダ選手の今後がますます楽しみですね。
 3位はシニア1年目のアレクサンドル・ペトロフ選手。4回転こそまだ入れていないペトロフ選手ですが、自分が跳べるジャンプを確実に跳ぶ戦略が今大会でも実を結び、見事に初めて表彰台に上りました。

 以下、4位は若手のゴルジェイ・ゴルシュコフ選手、5位は昨季まで4年連続で表彰台を確保し続けていた実力者セルゲイ・ボロノフ選手、6位はジュニアのドミトリー・アリエフ選手、7位は大ベテランのコンスタンティン・メンショフ選手、8位はジュニアのアレクサンドル・サマリン選手となり、ボロノフ選手やメンショフ選手といったベテランが若手の後塵を拝する試合結果となりました。


 次はペア。

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 ロシア王者に返り咲いたのは1年間の休養から復帰したタチアナ・ボロソジャー&マキシム・トランコフ組。ノーミスの演技でショート首位に立つと、フリーは複数ミスがあったものの総合得点では2位に10点差以上の差をつけて、他を寄せ付けることなく2年ぶりの優勝を果たしました。今シーズンは復帰したばかりとあって試合をこなしている数は少ないですが、大一番に合わせてくる実力はさすがのソチ五輪チャンピオンですね。シーズン後半、海外強豪勢との対決が楽しみです。
 2位はベテランの川口悠子&アレクサンドル・スミルノフ組。SPは安定感のある演技で2位発進し、フリーはミスが散見されボロソジャー&トランコフ組に差をつけられてしまいましたが、しっかりと3年連続となるメダルを確保しました。
 3位は伸び盛りの若手ペア、エフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組。ショート、フリーともに大きなミスなくエレメンツをきっちり揃え、昨季の銀メダルに続いて2度目の表彰台となりました。


 最後はアイスダンスです。

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 優勝はこちらも1年ぶりに競技復帰したエカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組。SDで首位と僅差の2位発進すると、FDでもそつのない演技で逆転優勝を果たしました。昨シーズンはソロビエフ選手の怪我の影響でこの大会も欠場しましたが、それまでは4連覇していた圧倒的なロシアチャンピオンですから、僅差とはいえ貫録の優勝ですね。
 2位は昨季新たにカップルを結成したヴィクトリア・シニツィナ&ニキータ・カツァラポフ組。ショートは全てのエレメンツでレベル4を揃える完璧な演技で首位に立ちましたが、フリーではツイズルで取りこぼしがあり順位を下げてしまいました。しかし結成2年目での銀メダル、1年目はまだカップルとして未熟だったところから確実に成長を見せているのではないかと思います。
 3位はアレクサンドラ・ステパノワ&イワン・ブキン組。SD、FDともに目立ったミスなく演技を堅実にまとめ、2年連続となる銅メダルを獲得しました。



 さて、ここですでに発表されている欧州選手権、世界選手権の代表をまとめたいと思います(敬称略)。


《欧州選手権代表》

男子シングル:マキシム・コフトゥン、ミハイル・コリヤダ、アレクサンドル・ペトロフ
女子シングル:エフゲニア・メドベデワ、エレーナ・ラディオノワ、アンナ・ポゴリラヤ
ペア:タチアナ・ボロソジャー&マキシム・トランコフ組、川口悠子&アレクサンドル・スミルノフ組、クセニア・ストルボワ&フョードル・クリモフ組
アイスダンス:エカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組、ヴィクトリア・シニツィナ&ニキータ・カツァラポフ組、アレクサンドラ・ステパノワ&イワン・ブキン組


《世界選手権代表》

男子シングル:マキシム・コフトゥン、ミハイル・コリヤダ
女子シングル:エフゲニア・メドベデワ、エレーナ・ラディオノワ
ペア:タチアナ・ボロソジャー&マキシム・トランコフ組、川口悠子&アレクサンドル・スミルノフ組
アイスダンス:エカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組、ヴィクトリア・シニツィナ&ニキータ・カツァラポフ組




 欧州選手権代表はほとんど今大会のメダリストがそのまま当てはめられた形になりましたが、ペアだけは今回クリモフ選手の体調不良を理由に欠場したストルボワ&クリモフ組が代表選出されました。やはりストルボワ&クリモフ組は先月のGPファイナルを制していますし、実力を鑑みた上でそこまでの重症ではないということで選ばれたのだと思います。
 そして世界選手権代表に関しては女子、ペアはそれぞれ3枠ありますが、現時点では今大会の1、2位の選出のみが決定し、3人目については欧州選手権の結果を受けた上で最終決定がなされるそうです。欧州選手権で3人目候補の選手がもし振るわないようなことがあれば世界選手権代表になれない可能性もあり、欧州選手権も緊張感に満ちた試合となりそうですね。



 どのカテゴリーにおいてもレベルの高いロシア。特に女子は国内大会ゆえ得点が高めに出やすいとはいえ1位から5位までが全員200点台となり、どんどんスコアがうなぎ上りしています。シーズン後半を占う意味でも非常に興味深い内容、結果となりました。では。


:記事内の写真は全て、写真画像サイト「Newscom」から引用させていただきました。
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by hitsujigusa | 2016-01-14 17:09 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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※2016年1月16日、浅田真央選手の四大陸選手権出場辞退について追記しました。

 全日本選手権2015、女子とペアの競技結果について、前編に引き続きお伝えしていきます。

第84回全日本フィギュアスケート選手権大会 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 6位となったのは村上佳菜子選手です。

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 SPはまず3フリップを確実に決めて良い流れを作り出すと、後半に組み込んだ3トゥループ+3トゥループは2つ目がアンダーローテーション(軽度の回転不足)となったものの大きな乱れなく着氷。そして、今シーズン苦心していた2アクセルもきっちり成功させ、スピン、ステップシークエンスも目立った取りこぼしなく演技を終えた村上選手は、満面に笑みを浮かべました。得点は66.02点で4位と好発進します。
 フリーは3+3を入れない手堅い構成。まずは3ループをクリーンに下りると、続く2アクセル+3トゥループは2つ目が回転不足とはなりましたが着氷。上々の滑り出しに見えましたが、次の3フリップが回転不足で転倒となってしまいます。しかし後半は単独の3サルコウ、3サルコウからの3連続コンビネーション、3トゥループと相次いでジャンプを決め、最後の2アクセルはパンクして1回転となったものの、大崩れすることなく演技をまとめました。得点は115.56点でフリー8位、総合6位で大会を終えました。
 SPは細かなミスこそあったものの全体的に村上選手らしいスピード感、シャープさに溢れていて良かったですね。一転してフリーは少し硬さがあったかなという印象で、後半では一度3フリップの軌道に入りながらも跳ばずにスルーしてしまうという場面もあり、後にリカバリーしたものの、村上選手自身混乱しながらの演技になってしまったのが残念でした。ただ、村上選手がそこまで気落ちしていない感じだったのが救いかなとも思いますね。次の試合がどうなるのかはまだ分かりませんが、今大会の演技自体は決して悪いものではなかったので、次も村上選手らしく笑顔で頑張ってほしいですね。


 7位は前年4位の永井優香選手です。

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 ショート冒頭は高難度の3ルッツ+3トゥループ、これを完璧に成功させます。しかし、後半の3ループで転倒。直後の2アクセルはきれいに決めてすぐに立て直し、スピン、ステップシークエンスは全てレベル4を揃えジャンプの転倒をカバーし、60.42点で7位につけました。
 フリーもまずは3ルッツ+3トゥループの2連続3回転でしたが、ファーストジャンプの着氷で乱れ単独になります。続く3フリップも着氷はしましたが不正エッジで減点となり、プログラム序盤はミスが続きます。ですが、次の3ループを成功させると、後半も2アクセル+3トゥループ、3+2+2など全てのジャンプをクリーンに着氷。GP表彰台経験者の実力を見せつけ、118.44点でフリー6位、総合7位でフィニッシュしました。
 今シーズンはスケートカナダで3位、ロステレコム杯で8位と試合によってばらつきが見えている永井選手。今大会もショートで綺麗に決めた得点源の3+3をフリーではミスし、3+3の安定が課題かなという印象を受けましたが、後半では見事に巻き返しましたね。だからこそ得意のジャンプを確実に決めて安定感を得ることでさらに一皮剥けるんじゃないかなと思うので、今後はその点に注目したいですね。


 8位は全日本ジュニア4位の新田谷凛選手です。

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 SPは「レッド・ヴァイオリン」。冒頭の3フリップはエッジが不正確とされ若干のマイナスを受けますが、後半に組み込んだ3トゥループ+3トゥループ、2アクセルはパーフェクトに成功。スピンも全てレベル4を獲得するなど大きな取りこぼしなく演技をまとめ、60.10点と上位の目安となる60点台に乗せて8位の好位置につけました。
 フリーは「映画『ロミオとジュリエット』より」。こちらは3+3を組み込まず確実性を狙った構成。まずは3+2+2をきっちり成功させましたが、続く3フリップで転倒してしまいます。ですが、直後の3サルコウは完璧に決めてミスを連鎖させません。後半も着氷でこらえたりステップアウトしたりと細かなミスはありましたが、2つの2アクセル+3トゥループ含め致命的なミスなく演技を終えました。得点は118.38点でフリー7位、総合8位で初の入賞となりました。
 来シーズンからシニアに移行する予定という現在18歳の新田谷選手。今季は際立った成績を収めているわけではありませんが、JGPでは4位&3位としっかり上位を確保、全日本ジュニアでも4位と安定感が印象的ですね。今大会も1つ転倒はあったものの、ショート、フリーともにミスをすぐに断ち切れるというのが素晴らしいなと感じました。このあとのシーズンはシニアに向けての準備段階に入るでしょうから、これからも今までどおりの新田谷選手の良さを活かし続けてほしいなと思います。



 さて、ここからはペアについてです。

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 優勝は須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組です。

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 SPはスロー3サルコウでミスがありましたが、そのほかのエレメンツでは減点なく確実に点数を積み重ね首位発進。フリーもスロージャンプやソロジャンプでミスはあったものの、大崩れすることなく演技をまとめ、トップの座を譲ることなく初優勝を勝ち取りました。
 今季から新たにペアを結成しシニアに初参戦した須藤&ブードロー=オデ組。JGPなどジュニアでの経験はそれぞれありますが、シニアとしては未知数の部分も多いかなと思います。まだまだ若く将来の長いペアですので、長い目で見守っていきたいですね。
 2位は小野眞琳&ウェスリー・キリング組、3位は須崎海羽&木原龍一組となっています。
 まだ世界レベルには遠い日本のペア競技事情ではありますが、今大会は何と1996年以来となる3組以上が出場。現在も日本のペア選手にとっては厳しい状況だとは思いますが、今大会をきっかけに日本のペアがもっと活発になって広まっていけばいいなと思いますね。



 では、ここで女子とペアの世界選手権、四大陸選手権、世界ジュニア選手権の代表選手をまとめ、選考条件のおさらいもしていきます。


《世界選手権代表選考方法(女子シングル)》

① 1人目は全日本選手権優勝者を選考する。
② 2人目は、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
 A) 全日本選手権2位、3位の選手
 B) グランプリ・ファイナル出場者(①の選手を除く)日本人上位2名
③ 3人目は、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
 A) ②の A)又は B)に該当し、②の選考から漏れた選手と全日本選手権4位~6位の選手
 B) 全日本選手権終了時点での ISU ワールド・スタンディングの日本人上位3名
 C) 全日本選手権終了時点での ISU シーズンベストスコアの日本人上位3名


《四大陸選手権代表選考方法(男女シングル)》

全日本選手権終了時に、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
① 全日本選手権10位以内
② 全日本選手権終了時点での ISU ワールド・スタンディング日本人上位6名
③ 全日本選手権終了時点での ISU シーズンワールドランキング日本人上位6名
④ 全日本選手権終了時点での ISU シーズンベストスコア日本人上位6名


《世界ジュニア選手権代表選考方法(男女シングル)》

① 1人目は全日本ジュニア選手権優勝者を選考する。
② 2人目及び3人目はジュニア対象年齢で派遣希望のある選手の中で、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
 A) 全日本ジュニア選手権3位以内の選手
 B) ジュニア・グランプリ・ファイナル出場者
 C) 全日本選手権参加者のうち上位3名
 D) 全日本選手権終了時点での ISU シーズンワールドランキング日本人上位3名
 E) 全日本選手権終了時点での ISU シーズンベストスコア日本人上位3名



《世界選手権代表》

女子シングル:宮原知子、浅田真央、本郷理華
ペア:須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組


《四大陸選手権》

女子シングル:宮原知子、浅田真央、本郷理華
ペア:須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組


《世界ジュニア選手権》

女子シングル:樋口新葉、白岩優奈、本田真凛



 まずは世界選手権女子代表から見ていきましょう。何といっても全日本チャンピオンとなった宮原選手は文句なしでの選出ですね。
 そして宮原選手を除いて②③に当てはまる選手を考えると、まず②は全日本2位の樋口選手、全日本3位でGPファイナル日本人上位2位に入る浅田選手が該当しますが、樋口選手はそもそも年齢制限で世界選手権の代表要件を満たしていないので除外され、浅田選手のみが該当者で2人目の代表となります。
 ③に該当するのは、全日本4位かつワールドスタンディング日本人2位かつシーズンベストスコア日本人3位の本郷選手、全日本5位の白岩選手、全日本6位でワールドスタンディング日本人3位の村上選手となりますが、白岩選手も年齢制限のため除外され、本郷選手と村上選手の2人が3人目の条件に当てはまります。こうなると、全日本でも上位でワールドスタンディング、シーズンベストスコアでも上位の本郷選手が選ばれるのは必然と言えますね。
 一方、ペアの代表選出については具体的な条件というのはなく、アイスダンス同様に国際的な競技力を考慮するとされているので、今回断トツで優勝した須藤&ブードロー=オデ組が順当に選出されました。

 四大陸選手権の女子は世界選手権の代表3人がそのまま派遣される運びとなりました。3人が派遣を希望した上で、もちろん四大陸の選出条件にも当てはまりますので、ベストな布陣で表彰台独占も狙えるメンバーになりますね。

 そして世界ジュニアは全日本ジュニア女王の樋口選手が1人目の選出者となります。残りの2枠に該当するのは、②のAは白岩選手、横井ゆは菜選手、Bは白岩選手、本田真凛選手、Cは白岩選手、新田谷選手、Dはシニア選手を除いた上で、本田選手、白岩選手、Eもシニア選手を除き、白岩選手、本田選手となります(三原舞依選手はB、D、Eに当てはまりますが、必須である今回の全日本に参加していないため除外されます)。こうして見ると、5項目全てに該当する白岩選手はやはり2人目として最も相応しいですね。そして、3項目に該当する本田選手が3人目となるのもやはり妥当だなと思います。



 これでこの記事は終了です。年をまたいでしまいましたが、全日本2015を振り返って改めて、日本フィギュア界の未来が楽しみになりましたね。では。


※以下、1月16日に追記した部分です。


 1月15日、日本スケート連盟は四大陸選手権への派遣が決まっていた浅田真央選手が大会の出場を辞退したことを発表しました。辞退理由としては世界選手権に向けてのトレーニングにより集中するため、とのことです。
 浅田選手が当初四大陸出場を希望した理由としては、試合感覚を取り戻すため、世界選手権に向けて世界ランキングを上げるためというのがあったのですが、世界ランキングに関しては現時点で世界12位で決して試合で不利になるほど低い順位ではないので大丈夫でしょう。あと、試合感覚に関しては実戦を重ねることでしか得られない手応えだったり自信だったりもあるとは思うのですが、すでにシーズン前半をフルで戦い抜いた浅田選手にとっては、あとは練習で確実性を得て、気持ちを整えられさえすれば四大陸の出場不出場関係なく、世界選手権は問題ないということなのでしょうね。個人的には大好きな浅田選手のプログラムを見られる機会が減るので淋しい気持ちもあるのですが、浅田選手のペースでじっくり練習を積み重ねて、確固たる自信を掴んでほしいなと思います。
 そして、辞退した浅田選手に代わり、補欠だった村上佳菜子選手が繰り上がりで四大陸に出場することが決まりました。シーズン後半も大きな大会で村上選手の演技が見られることは嬉しいですし、回ってきたチャンスですからぜひ村上選手らしく頑張ってほしいですね。


:記事冒頭の女子メダリスト3選手のスリーショット写真、村上選手の写真、永井選手の写真、ペアメダリスト3組の写真、須藤&ブードロー=オデ組のSPの写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、新田谷選手の写真、須藤&ブードロー=オデ組のフリーの写真は、エンターテインメント情報サイト「Zimbio」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2016-01-06 00:40 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)