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 前回の前編に引き続き、この記事では四大陸選手権2016の女子の6位~8位の選手とアイスダンスのメダリスト、日本選手の結果について書いていきます。前編はこちらからお読みください。

ISU Four Continents Championships 2016 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 6位となったのはカナダのケイトリン・オズモンド選手です。

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 SPはまず得点源の3フリップ+3トゥループに挑みましたが、ファーストジャンプとセカンドジャンプのあいだにターンが入ってしまい減点を受けます。直後の3ルッツはしっかり成功させますが、後半の2アクセルが1回転となり、規定の回転数に満たなかったため無得点に。ジャンプミスが影響し、得点は56.14点で11位に留まりました。
 フリーはまず3フリップ+2トゥループを確実に決めます。続く2アクセル+3トゥループはセカンドジャンプが2回転になりましたが、クリーンに着氷。その後も3ルッツの不正エッジなどのミスはあったものの、大幅に点を失うようなミスなく演技をまとめ、フィニッシュしたオズモンド選手は安堵したように笑みを浮かべました。得点はパーソナルベストにあとわずかと迫る119.49点でフリー4位、総合6位となりました。
 腓骨骨折から1季ぶりに競技復帰した今シーズンのオズモンド選手。シーズン前半はなかなかジャンプが安定せず波が激しかったですが、シーズンを追うごとに徐々にオズモンド選手らしさを取り戻してきたんじゃないかなと思いますね。特に表現面では以前は元気いっぱいに踊りまくる女の子というイメージが強かったのが、今シーズンは愁いを帯びた大人の女性の表現というのを手に入れていて、その点では休養前よりもぐっと進化しているように感じましたね。
 オズモンド選手の今季はこれで終了となると思いますが、復帰2季目となる来季はさらなる活躍を楽しみにしています。


 7位となったのは日本の村上佳菜子選手です。

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 SPはまず単独の3フリップをクリーンに成功させて好スタートを切ると、続く2つのスピンはどちらもレベル4。後半に入り鍵となる3トゥループ+3トゥループはパーフェクトに下りて1・3点の高い加点を獲得。そして鬼門となっている2アクセルは着氷時に身体が傾きながらも踏ん張って何とか成功に繋げ、終盤のステップシークエンスではスピード感溢れる鬼気迫る滑りを披露。フィニッシュした村上選手は派手なガッツポーズで歓喜を爆発させました。得点は68.51点で3季ぶりに自己ベストを更新し、2位と好発進しました。

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 フリーはまず若干苦手としている3ループからでしたが、アンダーローテーション(軽度の回転不足)で下りてきてしまい減点されます。続く2アクセル+3トゥループもセカンドジャンプが回転不足。次の3フリップは回転不足こそ取られませんでしたが、着氷で乱れます。後半も3ループが1回転になったり3フリップが回転不足になったりする場面があり、消化不良の演技に終わりました。得点は106.61点と伸びずフリー13位、総合7位で大会を終えました。
 ショートはまさに会心の演技といった感じで、全て出し尽くした晴れ晴れとした痛快感の残る演技だったのですが、フリーにその勢いを繋げることができませんでしたね。今シーズンに限ったことではありませんが、村上選手はショートで好演技を見せながらもフリーで崩れてしまうというパターンがしばしばあります。フリーはジャンプの数も増えますし、苦手なジャンプも複数含まれていますので、ショートと比べると全体的に慎重さが目立って彼女らしい思い切りの良さが影をひそめてしまうのが残念ですね。来シーズンはそのあたりの課題を克服して、ショート、フリー両方で弾けた演技が見られることを願っています。


 8位は韓国のチェ・ダビン選手です。

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 SPの演目は「Mama, I'm a Big Girl Now 映画『ヘアスプレー』より」。冒頭は3ルッツ+3トゥループを完璧に決め上々の滑り出しを見せます。後半も3フリップ、2アクセルを問題なく成功させましたが、スピンでのミスやステップシークエンスでのレベルの取りこぼし、全体的にGOEが伸びなかったこともあり、56.79点での10位発進となりました。
 フリーは「ミュージカル『レ・ミゼラブル』より」。まずはショートでもきれいに決めた3ルッツ+3トゥループを再びパーフェクトに下りると、3フリップ、3ループと続けてクリーンに着氷。中盤の2アクセル+3トゥループはセカンドジャンプがアンダーローテーションとなったものの、それ以外は全てのジャンプを加点が付く出来で成功させ、納得の演技となりました。
 2シーズン前からジュニアグランプリに参戦し、今季は2大会とも表彰台に乗るなどジュニア界ではおなじみのチェ選手。今大会がシニアの国際大会デビューとなりましたが、物怖じしない勢いのある演技で存分に存在感を示したのではないかと思います。さすがにシニアの選手たちに交じると、スケーティングや表現面でジュニアらしさが目立ったかなとは思いますが、まだ16歳なので、これからが楽しみですね。



 女子はここまで。ここからはアイスダンスについてです。


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 優勝はアメリカのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組。SDで全てのエレメンツをレベル4で揃え2位のカップルを超僅差でかわして首位に立つと、FDはステップが一つレベル3となったものの、圧倒的な技術力でトップの座を守り切り、パーソナルベストで完全優勝を果たしました。
 1月の全米選手権では、ここ数年後塵を拝し続けてきたチョック&ベイツ組を破り初の全米チャンピオンとなったシブタニ兄妹。その勢いのままに、今大会もチョック&ベイツ組、カナダのウィーバー&ポジェ組という強豪を突き放しての圧勝でしたね。シブタニ兄妹はシニアデビューシーズンでいきなり世界選手権のメダリストになって以降、常にトップレベルで活躍はしてきましたが、世界の表彰台にはあと一歩及ばないというシーズンが続いてきました。ですが、今シーズンはいよいよ久しぶりの世界選手権表彰台、また頂点に向けて、これ以上ない良い風が吹いているように思います。世界一の技術力を武器に、アレックス選手の生まれたボストンで、最高の結果をつかんでほしいですね。四大陸選手権初優勝、おめでとうございました。
 2位は同じくアメリカのマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組です。SDはツイズルでレベル2になるなど、ところどころで取りこぼしが散見され、4位に留まります。ですが、フリーでは目立ったミスなく巻き返し、2年連続となる銀メダルを獲得しました。
 3位はカナダのケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組。SDは自己ベストに迫る高得点かつ演技構成点トップで2位につけましたが、FDはツイズルとスピンがレベル2、リフトがレベル1になったため技術点を伸ばせず、ショートから順位を落としてしまいました。


 今大会がチャンピオンシップデビューの日本の村元哉中&クリス・リード組は7位となりました。

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 SDは一つ目のラベンスバーガーワルツとツイズル、リフトでレベル4を獲得。まとまりのある演技でNHK杯でマークした自己ベストを3点以上更新して7位につけます。
 FDは序盤のステップがレベル2となったものの、それ以降はステップ以外のエレメンツ全てでレベル4を獲得し、ショートに続きパーソナルベスト更新で6位、総合では7位で初めての四大陸を終えました。
 ISU公認の試合としては2試合目、大きな国際大会としては初出場だった村元&リード組ですが、ショート、フリーともに目立ったミスなく、ジャッジの評価もぐんぐん上げていて、ますますこれからが楽しみになりましたね。ですが、二人のコンビはまだ始まったばかり。今大会も一つのステップアップのための踏み台として、世界選手権ではさらなる飛躍を期待したいと思います。


 日本の平井絵己&マリオン・デ・ラ・アソンション組は12位となりました。

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 SDはツイズルやステップなどで減点される部分があり、シーズンベストには及ばず12位発進となります。
 FDはツイズルやスピン、リフトなど複数のエレメンツでレベル4を獲得しましたが、減点を受けるエレメンツも多々あり、ショートから順位を上げることはできませんでした。
 今シーズンの平井&デ・ラ・アソンション組はデ・ラ・アソンション選手の怪我もあり、実力を最大限発揮することが困難なシーズンだったと思うのですが、その中でもパーソナルベストを更新する試合もあり、まだまだ発展途上のカップルなのだなと感じました。来季は怪我などトラブルなく、安定してシーズンが送れるよう祈っています。



 さて、女子&アイスダンスの記事は以上です。
 今大会は台湾の台北で開催されたわけですが、フィギュアスケートの大会運営に慣れていない土地柄ということもあってか、リンクの氷のコンディションがあまり良くなかったようです。途中からは男子のパトリック・チャン選手が氷を作る責任者と話し合うなどしたことによって改善されたようですが、アイスダンスに関してはその改善が行われる前に競技が終わってしまったので、その影響もところどころにあったかもしれません。
 それはともかくとして、女子もアイスダンスも優勝者がパーソナルベストをマークするという素晴らしい演技で大会を盛り上げてくれましたね。この結果、実績を持って強力なヨーロッパ勢と対峙した時、どんなドラマが生まれるのか、今から楽しみでなりません。
 男子とペアについては、次の記事で取り上げますので、またしばしお待ちください。


:記事冒頭の女子メダリスト3選手のスリーショット写真は、AFPBB Newsが2016年2月21日の7:48に配信した記事「宮原、SPからの首位守り圧勝V フィギュア四大陸選手権」から、オズモンド選手の写真、村上選手の写真、チェ選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、アイスダンスメダリスト3選手の写真、村元&リード組のFDの写真、平井&デ・ラ・アソンション組の写真は、マルティメディアサイト「Newscom」から、村元&リード組のSDの写真は、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2016-02-26 02:17 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 ヨーロッパを除く、アジア、アメリカ、アフリカ、オセアニアの4地域の王者を決める四大陸選手権2016。今年は2年ぶりとなる台湾の台北で行われましたが、白熱したハイレベルな試合となりました。この記事では女子とアイスダンスについて感想を書いていきます。
 まず、女子を制したのは日本の女王、宮原知子選手。いつもどおりの安定感抜群の演技で他の追随を許さず、圧倒的な大差で初優勝を果たしました。2位にはアメリカの長洲未来選手が入り、実に5年ぶりの表彰台となりました。3位は日本の本郷理華選手で、こちらは2年連続で銅メダルを獲得しました。
 一方、アイスダンスはアメリカのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組が自己ベストで初優勝を果たしました。

ISU Four Continents Championships 2016 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 優勝したのは日本の宮原知子選手です!

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 SPはまず得点源となる3ルッツ+3トゥループを確実に下りて加点を得ると、続く2つのスピン、ステップシークエンスは全てレベル4。後半の3フリップ、2アクセルも完璧に着氷させ、最後のコンビネーションスピンでもレベル4を獲得して微塵の隙もなく演技を締めくくりました。得点は72.48点で国際大会では自身初の70点台に乗せ、断トツの首位発進となりました。

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 フリーの冒頭は3ルッツからの3連続ジャンプ、最後の2ループで両手を上げて跳ぶなど工夫も凝らし、クリーンに跳び切ります。さらに3ループ、3フリップも難なく着氷すると、後半も3ルッツ、3サルコウ、2つの2アクセル+3トゥループと全てパーフェクトに成功。スピン、ステップシークエンスもレベル4で揃え、またもや完璧な演技を披露しました。得点は142.43点で12月のGPファイナルでマークした自己ベストを塗り替え、圧勝で金メダルを獲得しました。
 もう圧巻としか言いようのない演技でしたね。今季はNHK杯からずっとほぼノーミスの演技を見せつけられ続けているので、驚かないといえば驚かないのですが、でもやはりこれだけのクオリティーの演技を続けることは並大抵のことではないので、圧倒させられます。最も驚かされるのはやっぱり正確無比なジャンプで、失礼な言い方かもしれませんがまるでプログラミングされた機械のように、常に同じスピード、高さ、飛距離、回転で跳ぶことができていて、空中で軸が斜めになったり回転がゆるんだりということが全く無いので、完全に体に跳び方が染みついているんでしょうね。それでも人間なので感覚が狂ったり鈍ったりする時もあると思うのですが、本番にきっちり合わせられる、修正できる能力というのが凄いなと思います。そして、それを可能にしているのが周囲の環境や状況に影響されない強い精神力で、その揺るぎないメンタルこそが何より彼女の武器なんだなと今回改めて思い知らされましたね。
 初めてISU主催のチャンピオンシップを制して、名実ともに日本のエースとして世界選手権に臨む宮原選手。最強のロシア勢と相対することになりますが、今の宮原選手ならば十分に互角に戦えると思いますし、彼女自身が世界の頂点への良い意味での欲を持っているように感じるので、欲を持ちつつ、でも普段の宮原選手らしさも保ちつつ、ぜひ狙っていってほしいなと思いますね。四大陸選手権初優勝、おめでとうございました。


 銀メダルを獲得したのはアメリカの実力者、長洲未来選手です。

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 SPは冒頭の3フリップ+3トゥループを完璧に決め、1・3点の高い加点を得ます。続く3ループは着氷で若干こらえ気味になってしまい減点されますが、最後の2アクセルはクリーンに下り、ミスを最小限に抑えた安定感のある演技を披露しました。得点は66.06点で3位の好位置につけます。
 フリーもまず冒頭の3+3を決めると、続く3ルッツは踏み切り時の不正エッジによりマイナスとなったものの確実に着氷。続く3サルコウは難なく下り、前半は申し分ない出来となります。後半も最初の2アクセル+3トゥループ+2トゥループを成功させると、3ループ、3ループ+2トゥループ、2アクセルと全てのジャンプをクリーンに着氷。得意のスピンもレベル4を揃え、フィニッシュした長洲選手は万雷の拍手を浴びました。得点は127.80点、総合で193.86点と実に6年ぶりの自己ベスト更新となり、総合2位に順位を上げました。
 SP、フリーともにほぼノーミスの本当に素晴らしい演技でしたね。長洲選手は近年はジャンプでアンダーローテーション(軽度の回転不足)を取られることが多く、そのため見た目には好演技でも得点が伸びないということがあり、今大会のフリー演技の直後もほぼ完璧な内容だったにもかかわらず硬い表情を崩さなかったのですが、キス&クライで得点が表示されてようやく満面に笑みを浮かべて喜びを爆発させていて、見ているこちらにも長洲選手の心情というのが手に取るように伝わってきました。バンクーバー五輪以降は怪我やアクシデントに見舞われ、長らく本来の輝きを失ってしまっていた長洲選手ですが、今シーズンはシーズン前半からジャンプの安定感が目立ち、好調ぶりがうかがえました。あとはアンダーローテーションの問題のみというところでしたが、1月の全米選手権、そして今大会と2試合連続でアンダーローテーションはゼロで、かなり良い感覚を掴んだんじゃないかなと思いますね。また、表現面でも彼女が歩んできた山あり谷ありのスケート人生というのが演技に滲み出ている気がして、大変な辛苦を味わってきたと思いますが、その経験が今の彼女の演技に若手にはない深みや重厚さを与えているように感じ、ぐっと心に迫ってきました。
 長洲選手の15/16シーズンは(世界選手権での繰り上がりがない限り)これで閉幕となると思いますが、今大会で得たものを活かして、来季も長洲選手らしい笑顔がたくさん見られることを祈っています。


 3位は日本の本郷理華選手です。

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 ショートは全日本選手権から難度を上げたジャンプ構成で挑み、まずは3フリップ+3トゥループを着氷しますが、セカンドジャンプがアンダーローテーションと判定されます。しかし後半の3ルッツ、2アクセルはクリーンに決め、演技をまとめ上げました。得点は64.27点で4位につけます。

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 フリーも冒頭は3フリップ+3トゥループからでしたが、こちらはセカンドジャンプがダウングレード(大幅な回転不足)で転倒となってしまいます。しかし、続く3サルコウをしっかり着氷すると、3ルッツも不正エッジとはなったものの確実に着氷。後半も2アクセル+3トゥループ+2トゥループ始め、全てのジャンプをほぼノーミスで下り、巻き返しを見せました。得点は117.51点でフリー5位でしたが、総合では3位に上がり、2年連続の銅メダルを手にしました。
 ショート、フリーともに3+3が決まらず、本来の力を出し切れなかった印象ですが、長いシーズンの中で落ち気味になる時期は必ずあるものなので、世界選手権の前にこういった経験をしておいてむしろ良かったんじゃないかなと思いますね。何より冒頭に大きな失敗があっても折れない強い心だったり、崩れない確かな技術力だったりは変わらず本郷選手の武器だと思うので、うまく調整して世界選手権では悔いなく演技できるように頑張ってほしいですね。


 4位は韓国の朴小宴(パク・ソヨン)選手です。

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 SPは「映画『黒いオルフェ』より」。まず単独の3ルッツをクリーンに成功させると、続く得点源の3サルコウ+3トゥループもしっかり回り切って下ります。終盤の2アクセルも問題なく決め、パーフェクトな演技で観客を沸かせました。得点は62.49点で国際大会自身初の60点台をマークし、5位と好発進しました。
 フリーは昨季と同じ「映画『ロミオとジュリエット』より」。冒頭はSPでクリーンに決めた3ルッツでしたが、着氷で大きく乱れます。直後の2アクセル+3トゥループはきれいに着氷させたものの、3フリップでは転倒し、精彩を欠いた前半となります。しかし、後半は回転不足など細かなミスはありましたが、大きく減点されるようなミスなく演技を終えました。得点は116.43点でフリー7位、総合4位で四大陸自己最高位で大会を終えました。
 SPは躍動感に満ちていて、大人びた「黒いオルフェ」の世界観を艶やかに表現していて良かったですね。フリーは複数ミスがあったのですが、得点を稼げる後半に大きなミスをしなかったことと、スピン、ステップシークエンスを丁寧にこなしたことが、僅差の争いの中で4位という好成績に繋がったのだと思います。今シーズンの朴選手はジャンプが安定せず苦労し、1月の韓国選手権でも年下のジュニア、ノービス勢に押されて5位に沈んでしまいました。上位に入った選手の年齢制限もあり、世界選手権の切符はつかみましたが、少し存在感が薄れつつある感じだったと思うので、ここで実力をアピールできたのは大きな収穫でしょうね。この良い感触を世界選手権にも繋げてほしいですね。


 5位は全米王者、グレイシー・ゴールド選手です。

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 ショートはまず大技の3ルッツ+3トゥループからでしたが、ファーストジャンプで転倒してしまい単独になります。後半に入り最初の3フリップを連続ジャンプにしなければいけませんでしたが、こちらも転倒。最後の2アクセルは着氷させたものの、2つの転倒が響き、57.26点で9位に留まります。
 挽回を狙ったフリー、冒頭の3ルッツ+3トゥループは3ルッツの着氷で若干こらえ気味になったため単独にします。続く3ループ、2アクセルはきっちり下りて確実にエレメンツをこなします。後半も2アクセル+3トゥループ+2トゥループが2+2+2になるなど細かな取りこぼしがありましたが、致命的なミスなく滑り切り、121.13点でフリー3位、総合5位でフィニッシュしました。
 ショートではまさかという内容で、フリーもショートよりは修正してきたものの精彩を欠いた内容に終わったゴールド選手。彼女は今大会含めこれまで3度四大陸に出場していますが、毎回あまり振るわないんですね。やはりこれは1月下旬の全米選手権にピークを合わせていて、そこからさほど間のない四大陸でもう一度好演技をする難しさというのがあるでしょうから、致し方ないことなのかなとも思います。何より重要なのは世界選手権にもう一度ピークを持ってくることですが、ゴールド選手の場合、今までそれがうまくハマっていない印象があります。たぶんピーキングの技術うんぬんというよりも、実戦における精神面の問題だと思うので、母国開催の今年こそ課題を乗り越えてとうとう表彰台にたどり着くのか、注目ですね。



 さて、突然ですがこの記事はここで一旦終了とさせていただき、後編に続けたいと思います。ご面倒をおかけしますが、続きは後編をお待ちください。


:記事冒頭の女子メダリスト3選手のスリーショット写真は、AFPBB Newsが2016年2月21日の7:48に配信した記事「宮原、SPからの首位守り圧勝V フィギュア四大陸選手権」から、宮原選手のSPの写真、本郷選手の写真、朴選手の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、宮原選手のフリーの写真、長洲選手の写真、ゴールド選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2016-02-25 00:27 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

猫の絵本・私的10撰

せかいいちのねこ (MOEのえほん)



 さて、今回のテーマは猫の絵本・私的10撰です。なぜ今猫かというと、数日後に迫った2月22日はニャンニャンニャンで猫の日なんですねー。ということで、個人的に好きな猫の絵本を10冊取り上げたいと思います。


 まずは定番の猫絵本2冊です。


11ぴきのねことあほうどり

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【あらすじ】
 あるところにおなかぺこぺこの11ぴきのねこがいました。11ぴきはコロッケのお店を始めますがコロッケは毎日売れ残り、11ぴきは毎日コロッケを食べ続けるはめに。コロッケにうんざりし、鳥の丸焼きを食べることを夢見る11ぴきのまえに、ある日あほうどりが現われて――。

 言わずと知れた馬場のぼるさんの名作ベストセラー「11ぴきのねこ」シリーズ。今回はその2作目『11ぴきのねことあほうどり』を取り上げます。
 シリーズの第1作目が出版されたのは1967年。そしてこの2作目が発表されたのは1972年。私が生まれるずっと前なのですが、独特の少しスパイスの効いたユーモア、ねこたちのユニークさはいつの時代の子どもたちにも受け入れられるおもしろさなのではないかと思います。その中でも『11ぴきのねことあほうどり』は私の中で最も強烈に印象に残っていて、あほうどりを目の前にして鳥の丸焼きを思い浮かべたり、最後の思いがけないオチなど、決して良い子(良い猫?)ではなく悪だくみをしたりズルいことを考えたりもするけれど、でもなんだか憎めない11ぴきの魅力が存分に発揮されている作品と言えます。
 作者の馬場さんは実は漫画家なんですね。かの手塚治虫氏とも並び称される方だそうで、子どもの頃はそんなことは全く知らずにこの絵本を読んでいましたが、“漫画”という視点を加えて見てみると、たしかにシンプルな線や色づかいや絵柄、単純明快ながら何度読んでもクスリと笑えるストーリー展開は大人になってから思うと漫画家ならではという感じがします。
 繊細で凝った絵や、複雑でメッセージ性の高いストーリーで素晴らしい現代の絵本ももちろん多くありますが、ある意味それとは真逆を行く「11ぴきのねこ」は、子どもに支持され続ける、本当の名作だと思いますね。


猫の事務所 (日本の童話名作選)

猫の事務所 (日本の童話名作選)

【あらすじ】
 軽便鉄道の停車場の近くにある猫の第六事務所には、事務長の黒猫、一番書記の白猫、二番書記の虎猫、三番書記の三毛猫、そして四番書記のかま猫がいました。かま猫はほかの書記たちから見下されいじめられながらも、懸命に仕事を続けていましたが――。

 宮沢賢治の名作『猫の事務所』。絵本としてもいくつかのバージョンが出ていますが、今回取り上げたのは絵本画家・黒井健さんが絵を手がけたものです。
 以前も、宮沢賢治の絵本・私的10撰という記事でこの絵本をピックアップしてますのでそちらもぜひご参考いただきたいのですが、猫の世界における優劣や差別をシビアに描写していて、ストーリー的には大人向けかなと思うのですが、黒井さんの温かみのある絵がうまくそこを補って、子どもにも読みやすい絵本になっていると思います。


 次は一風変わった猫絵本4冊です。


せかいいちのねこ (MOEのえほん)

せかいいちのねこ (MOEのえほん)

【あらすじ】
 幼い男の子のぬいぐるみであるねこのニャンコ。男の子に大切にされているニャンコですが、もうすぐ7歳になる男の子がぬいぐるみで遊ばなくなるのではないかと心配に。これからも男の子と仲良しでいるために、ニャンコは本物のねこになる旅に出ますが――。

 画家のヒグチユウコさんがお話も絵も手がけた『せかいいちのねこ』。ねこのぬいぐるみが本物のねこになるという夢を追いかけて旅する姿を描いた絵本ですが、その旅の途上でさまざまな本物のねこに出会う中で自分にとって大切なものは何かを見つけていく物語は、普遍的でありながら独創性豊かな世界観となっています。
 ですが、何より魅力的なのは他に類を見ないオリジナリティー溢れる絵でしょう。ヒグチさんの絵は動物や植物など、物の質感を写真のようにリアルなタッチで描くのが特徴で、この絵本でも猫たちの毛並みだったり手足の形状だったり、ある意味生々しささえ感じるインパクトのある絵となっています。その一方でリアルな質感の猫たちが人間よろしくおしゃれな着こなしをしていたり、人間味溢れる仕草をしていたりというギャップが絶妙なアクセントとなっていて、リアルな絵とファンタジーな物語の交ざり具合が唯一無二の世界観を作り出している素敵な絵本だと思います。


チャーちゃん (福音館の単行本)

チャーちゃん (福音館の単行本)

【あらすじ】
 ねこのチャーちゃんは今死んでいます。ですが、決して悲しくも寂しくもありません。チャーちゃんが今いる場所は色に溢れ、とても自由で楽しくて――。

 小説家・保坂和志さんが手がけた異色の猫絵本『チャーちゃん』。のっけから語り手である猫のチャーちゃんが死んでいることを独白するところから物語が幕を開け、死後の世界と思われる場所にいるチャーちゃんが不思議な世界観の中で自由自在に(死んではいるけれども)生を謳歌する姿が描かれます。
 作者の保坂さんは芥川賞や谷崎潤一郎賞受賞経験のある小説家ですが、猫好きとしても知られ、猫が登場する小説も多く書いています。なのでこの絵本も猫愛に溢れていて、物語としては死後の世界という一見重そうに感じられるかもしれませんが、実際に読んでみると明るくユーモアにも満ちていて、“死”について問いかけながらも、強引に教訓的にしたり考えさせたりということなく、可愛らしいチャーちゃんの姿を通して死ってどういうことなんだろうと自然と興味を持たせてくれる作品となっています。また、画家で、近年絵本や児童書の挿絵も手がける小沢さかえさんの絵がやわらかく美しい色彩で、独特の空気感を見事に表現しています。


うきわねこ

うきわねこ

【あらすじ】
 ある日ねこのえびおのもとにおじいちゃんから誕生日のプレゼントが届きます。箱を開けるとプレゼントはなぜかうきわでした。箱の中には手紙も入っていて、そこには「つぎのまんげつのよるをたのしみにしていてください」と書かれていました。そして待ちに待った満月の夜。えびおがうきわを膨らませて体に通すと、突然うきわが浮いて――。

 詩人・作家の蜂飼耳さん作、牧野千穂さん絵の『うきわねこ』。空を飛べるうきわで飛ぶ猫というファンタジックな内容ですが、子猫が真夜中にこっそり秘密の体験をするという冒険の物語でもあり、明るさだけではない秘密めいた暗さも描かれている絵本です。
 ストーリーや道具立てもかわいらしく魅力的ですが、牧野さんのパステル画がやはりこの物語の世界観を大きく支えています。パステル画なのでふんわりとした輪郭が明確でない絵が特徴的なのですが、その絵の良い意味でのぼんやり感が、うきわに導かれて旅をするという非日常感にぴったりで、物語と絵の組み合わせがベストマッチな作品だと思います。


くつやのねこ

くつやのねこ

【あらすじ】
 あるところに貧しい靴屋と一匹の猫が暮らしていました。靴屋は腕の良い職人でしたが、靴はさっぱり売れず、店を閉めることを考えていました。ですが、猫は諦めず、自分が革の長靴を履いて注文をとってくると言い、森の奥の魔物が住むというお城に行きますが――。

 昔話「長靴をはいた猫」をモチーフに、新たなエッセンスを加えたいまいあやのさんの『くつやのねこ』。「長靴をはいた猫」の中のエピソードを用いつつ、猫を靴屋の猫に変更することで一味違う物語に仕上げていておもしろいですね。原話は昔ながらの民話とあって主人公の猫がずる賢かったりするのですが、この絵本の方はずる賢さや昔話特有の毒を残しつつもまろやかになっていて、子どもにも親しみやすいのではないかと思います。
 また、作者のいまいさんはロンドン生まれで欧米育ちということで、絵にも西洋の絵画の香りが色濃く漂っているような気がします。その絵柄がヨーロッパを舞台にした物語とよく合っていて、お話とともに見応えのあるものとなっています。



 続いてはほのぼのとした雰囲気が素敵な猫絵本2冊。


ハーニャの庭で

ハーニャの庭で

【あらすじ】
 山の途中にある小さな家。ねこのハーニャはその庭で暮らしています。庭には家に住む家族以外にも、いろんな動物や虫たちが訪れてとてもにぎやかです。そんなある日、ハーニャの庭に迷い猫がやって来て――。

 「チリとチリリ」シリーズなどで知られる人気絵本作家・どいかやさんの『ハーニャの庭で』。どいさんは実際に自然豊かな土地で多くの猫たちとともに生活していて、この絵本のほかにも猫が登場する作品を多く手がけていますが、『ハーニャの庭で』はまさにどいさんの暮らしを反映させたものではないかと思います。
 とはいえ、あくまで主体となるのは猫のハーニャ。物語の中には人間も出てきますが、人間たちがハーニャを飼っているという感じではなく、ハーニャの庭にほかの生きものたちが一緒に暮らしているという描き方が印象的で、素敵だなと思います。そして、そんな猫目線で描かれる里山の自然描写が美しく、おおむね見開き2ページに対してひと月ずつ、1月から12月の季節の移り変わりが、優しく温かい色鉛筆画によって描き出されています。猫好きな人にはもちろん、美しい自然を描いた絵本やイラストが好きな人にもおすすめの絵本です。


ねこのシジミ (イメージの森)

ねこのシジミ (イメージの森)

【あらすじ】
 公園に捨てられていたたれ目で目やにが汚い子猫は、ショウちゃんという男の子に拾われてシジミと名付けられました。シジミの毎日は何事も起きず平凡だけれども、それがシジミにとっては幸せな日々で――。

 日本を代表するイラストレーター・和田誠さんの『ねこのシジミ』。ただただ平凡で何でもない日常を淡々と綴っていて、特にドラマチックな話でもないのですが、なのになぜかふしぎと心があったまる、心に残る絵本です。
 こちらも上記の『ハーニャの庭』同様に猫目線の物語なのですが、前者が人間があまり登場しなかったのとは対照的に、この作品は人間に飼われる飼い猫の、人間と密接に結びついた暮らしを描いています。でも、シジミが飼い主である家族たちに束縛されたりしつけられたりということはなく、シジミと家族の人々が全く同等で、むしろペットだからといってやたら愛情を注がれたり特別扱いされたりしない、猫と人間のほどよい距離感が読んでいてほのぼのさせられます。絵は銅版画で、柔らかな線とセピア色で統一された絵が醸し出す雰囲気が日常の風景描写にマッチしていて、飼い猫の日常を描いた猫絵本の中でもベストの作品だと思います。


 最後は海外の猫絵本2冊です。


ズーム、海をゆめみて

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【あらすじ】
 猫のズームは冒険が大好き。ある日、ロイおじさんの日記帳を見つけ、そこに書いてあった海へ行く道をたどります。ところが着いた場所は友だちのマリアさんのお家。もちろんどこにも海なんてありません。マリアさんに事情を話すと、マリアさんは家の壁の大きなしかけを回して――。

 カナダの絵本作家、ティム・ウィン・ジョーンズさん作、エリック・ベドウズさん絵の『ズーム、海をゆめみて』。『ズーム、北極をゆめみて』、『ズーム、エジプトをゆめみて』に続く「ズームシリーズ」の第1作目です。
 日本で出版されたのは1995年(本国では1983年)で現在は絶版になっており(中古のみで入手可)、正直あまり知られている絵本ではないと思うのですが、ミステリアスな作風が素晴らしく個人的に大好きな作品で、海を描いた絵本・私的10撰という記事でも取り上げています。詳しくはリンク先をご覧いただきたいのですが、日常からふっと非日常に入り込んでしまう不思議な世界観と、神秘的な雰囲気を高める鉛筆画が魅力的な絵本です。その一方で猫のズームが大冒険を繰り広げる姿がかわいらしく、クリス・ヴァン・オールズバーグやモーリス・センダックなど幻想的な絵本が好きな方にはもちろんのこと、猫好きの方にもおすすめです。


ポテト・スープが大好きな猫

ポテト・スープが大好きな猫

【あらすじ】
 おじいさんはアメリカのテキサスの田舎に一匹の猫と暮らしています。猫は今まで一度もねずみをつかまえたことがなく全くの役立たずでしたが、おじいさんの作るポテトスープが好物で、おじいさんは猫のそんなところが気に入っていました。おじいさんと猫は二人でよく湖に魚釣りに行くのでしたが、ある朝、いつも魚釣りに行く時間に猫は起きてこず――。

 ヤングアダルト小説家のテリー・ファリッシュさん作、絵本画家のバリー・ルートさん絵、そして村上春樹さん翻訳の『ポテト・スープが大好きな猫』。あるおじいさんと猫とのそっけないながらも温かい友情を描いた絵本です。
 内容的には非常にアメリカらしい風土というのが描かれていて、舞台もテキサスの田舎というアメリカらしさ満載の土地ですし、そこで魚釣りをしながら孤独に暮らすおじいさんと猫という風景は、ある意味オーソドックスでさほど目新しさがあるわけではありません。ですが、おじいさんと猫のキャラクター描写が秀逸で、お互いぶっきらぼうな者同士が適度に距離を置きながらもお互いを気にし合っている姿が微笑ましく、こういう人(と猫)いそうだなと思わせられます。二人の関係性は決してベタベタしたものではないのですが、でも完全に突き放しているわけでもなく、こういうのが古き良きアメリカらしい人情味なのかなとも感じますね。作者がヤングアダルト作家なので、この絵本も絵本というより短編小説を読んでいるような味わいを感じられると思います。


 以上が私が選んだ猫絵本・ベスト10です。猫好きの方もそうでない方も、ぜひこの猫の日を良い機会に、手に取ってみてください。


:馬場のぼる著『11ぴきのねことあほうどり』(こぐま社、1972年)の書影はこぐま社の公式サイトから、ティム・ウィン・ジョーンズ著、エリック・ベドウズ絵『ズーム、海をゆめみて』(ブックローン出版、1995年9月)の書影はショッピングサイト「アマゾン」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
宮沢賢治の絵本・私的10撰 2014年9月20日  記事内で『猫の事務所』を取り上げています。
海を描いた絵本・私的10撰 2015年7月17日  記事内で『ズーム、海をゆめみて』を取り上げています。
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by hitsujigusa | 2016-02-18 16:52 | 絵本 | Trackback | Comments(0)

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 1月25日から31日にかけて、スロバキアのブラチスラヴァにおいて欧州選手権2016が行われました。この記事ではその結果について感想等をざっくりと書いていきます。

2016 European Figure Skating Championships この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 まずは上の写真でお分かりのとおり、男子の結果からです。
 優勝したのはスペインのハビエル・フェルナンデス選手。1970年代のオンドレイ・ネペラさん以来となる4連覇の偉業を成し遂げました。

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 SPは国際大会で初めて2本の4回転を組み込み、4トゥループ+3トゥループは着氷でステップアウトしてしまい若干のマイナスを受けますが、その後の4サルコウ、3アクセルは完璧にクリア。ステップシークエンス、スピンも全てレベル4で揃え、102.54点という国際大会自身初の100点超えを達成し、断トツのトップに立ちます。
 フリーは4回転3本は変わらないものの、3アクセルを1本から2本に増やした構成で臨み、4回転は全てクリーンに成功。3アクセルは2本目が転倒となりましたが、それ以外は大きなミスなくまとめ、12月のGPファイナルに続き200点台をマーク。トータルでは初めて300点を超え、圧倒的な大差で金メダルを獲得しました。
 いくつかミスはありましたが、そのミスを補って余りある完成度の高いエレメンツ、演技でしたね。そして得点的には羽生選手に続き2人目となる300点突破と、なにか今シーズンは男子フィギュア界にとって節目となる劇的な変わり目のシーズンになっているなと感じます。また、フェルナンデス選手が300点を超えたことによって、もちろん羽生選手の保持する330.43点という世界レコードが図抜けていることは変わりませんが、その羽生選手でさえ少しミスが重なればフェルナンデス選手に負ける可能性もあり、世界選手権は今までにないハイレベルな、かつ、おもしろい勝負が期待できそうで今から楽しみですね。欧州選手権4連覇、おめでとうございました。


 銀メダルを手にしたのはイスラエルのアレクセイ・ビチェンコ選手です。

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 ショートは3アクセル、4トゥループ、3+3と全てのジャンプ要素をクリーンに成功させ、自己ベストを大幅に更新して4位につけます。
 フリーは4回転2本を組み込み、1本は転倒となったものの、そのほかのジャンプはほぼ予定どおりに着氷。クリーンプログラムに極めて近い内容で、フリー順位では4位でしたが、総合ではほかの選手のミスにも助けられて2位となりました。
 昨シーズンGPデビューを果たし、欧州選手権でも堂々の4位と存在感を示し始めたビチェンコ選手ですが、今年はとうとう表彰台に乗り、イスラエル選手として初めて欧州選手権のメダルを獲得するという快挙を達成しました。今大会はショートもフリーも4位で決してものすごいすば抜けた出来だったわけではないと思うのですが、ほかの有力選手がショート、もしくはフリーで崩れる中、両方をコンスタントにこなせたことが、銀メダルに繋がりましたね。世界選手権ではどこまで上位に食い込めるか、台風の目的な存在になってくれることを期待します。


 3位はロシア王者のマキシム・コフトゥン選手です。

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 ショートは4サルコウ、4トゥループ+3トゥループをパーフェクトに決め、3アクセルは転倒したものの、4回転で多く点を稼ぎ2位の好位置につけます。
 しかし、フリーでは3度挑んだ4回転がすべて失敗に終わり、後半のジャンプは全て着氷させましたが、技術点を伸ばし切れずフリー6位に留まり、総合では3位となりました。
 SPでは美しく決まった4回転がフリーでは一転、一本も決まらず、精神面の課題が如実に表れてしまったかなと思います。ポテンシャルとしては羽生選手やフェルナンデス選手にも匹敵する選手だと思うのですが、ロシア選手権を3連覇している現在でもまだ実力を出し切れていないし、能力を活かし切れていないなと感じますね。もしかしたら国内にライバルらしいライバルがいないことがこの状況を生んでいるのかなとも思うので、今大会5位に入ったコリヤダ選手がコフトゥン選手をおびやかす存在になって良い競争関係が生まれれば、双方にとって、そしてロシアの男子フィギュア界にとって、効果的な強化に繋がるのではないでしょうか。


 以下、4位は今大会をもって引退したフランスのフローラン・アモディオ選手、5位はロシアの成長株ミハイル・コリヤダ選手、6位はイタリアのベテラン、イヴァン・リギーニ選手、7位はイスラエルの新星ダニエル・サモヒン選手、8位はロシアの若手アレクサンドル・ペトロフ選手です。
 この中で何より特記しなければならないのは、アモディオ選手でしょう。アモディオ選手はGPシリーズ後の11月に欧州選手権を最後に現役を引退することを発表。コーチを以前師事していたニコライ・モロゾフコーチに変更し、挑んだ今大会。ショートは4回転が入らず、3+3でも細かなミスがあり8位と出遅れましたが、フリーは4サルコウ、3アクセル2本含め、全てのジャンプをクリーンに着氷。フリー2位という最高の演技で有終の美を飾り、モロゾフコーチとともに涙を流し、キス&クライではフランス語、日本語、ロシア語、英語の4か国後で「ありがとう」と書かれたボードを手にファンへの感謝を伝え、競技人生に幕を閉じました。
 ここ数年のアモディオ選手はジャンプの不調に苦しむことが多く、なかなか国際大会で上位に入ることができなくなっていました。ましてや男子フィギュア界は4回転が隆盛の時代ですから、ジャンパーというよりも表現者として個性を発揮してきたアモディオ選手にはやりにくい状況だったのではないかと想像します。それでも唯一無二の世界観を築き上げたアモディオ選手の素晴らしさは色褪せないですし、今回の演技を見るとまだできるのではないかという感じもしますが、引退を決意して臨んだからこそ、選手として区切りをつけたからこその、未練や迷いを振り切った演技でもあるでしょう。そんなアモディオ選手は今後、ジャーナリズムを学ぶとしています。また、テレビの仕事にも興味を持っていると話していますが、これまでどおりエキシビションでのスケーター活動も続けていくそうです。アモディオ選手の活躍を心から願っています。長い間、お疲れさまでした。そして、素敵でハッピーな演技の数々をありがとうございました。


 続いては女子。

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 女子は昨年同様、ロシア勢が表彰台を独占しましたが、その頂点に立ったのは今季快進撃を続けているシニア1年目のエフゲニア・メドベデワ選手です。

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 ショートは3+3と3ループは問題なく成功させましたが、2アクセルでミスがあったためパーソナルベストにはわずかに及ばず。しかし、72.55点という十分なハイスコアで首位発進します。
 フリーも2アクセルで珍しく転倒があり完璧な演技とはならなかったものの、それ以外は2つの3+3含め高難度なプログラムをしっかりまとめ、総合215.45点で初優勝を果たしました。
 今回は若干苦手にしているように見える2アクセルでミスがありましたが、今シーズン全体の快進撃を考えると、そのうちのほんの些細なもの。相変わらずの安定感、完成度で、ジャンプの跳び盛りの年齢ということを考慮しても驚くべき強さだなと脱帽します。また、初出場での優勝は1947年のバーバラ・アン・スコットさん以来ということで、こうした記録を見てもメドベデワ選手の驚異ぶりを改めて思い知らされます。そして、GPファイナル、欧州選手権を制して、世界選手権まで制することになれば、シニア1年目の選手としては前人未到の快挙になります。優勝候補最有力で臨むことになる世界選手権では4サルコウに挑む可能性もほのめかしていて、実際に優勝が懸かる大舞台でチャレンジするかどうかは微妙ですが、注目ですね。初優勝、おめでとうございました。


 2位は同じくロシアのエレーナ・ラディオノワ選手です。

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 SPは多少苦手としている3フリップ、2アクセルで加点が伸びなかったものの、確実に全てのジャンプを下りてメドベデワ選手と僅差の2位につけます。
 フリーは2アクセルで細かなミスがあっただけで、ほぼノーミスに近い会心の演技を披露し、自己ベストに迫る高得点で前年と同じ銀メダルを獲得しました。
 こちらも素晴らしい演技で2年連続となる表彰台に立ったラディオノワ選手。209.99点という得点を見る限り優勝しても全くおかしくはないですが、昨年国内のライバルであるエリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手に阻まれたのと同じ展開となりました。ラディオノワ選手はシニアに上がってからは世界の大きなタイトルこそ手にしていませんが、常に世界の表彰台に立ち続け、常に優勝候補であり続け、常に存在感を示し続けている選手と言えます。ただ、必ずその前にはラディオノワ選手以上に好調な同じロシアの選手が立ちはだかっていて、かつてアメリカのサーシャ・コーエン選手が“シルバー・コレクター”と呼ばれましたが、ラディオノワ選手は状況が違うものの、“無冠の女王”的な印象を受けます。ですが、わりと起伏の激しい選手生活を送ることが多い最近のロシア女子選手の中で、唯一といってもいい天才的な安定感を誇るのがラディオノワ選手です。そんな彼女が2度目となる世界選手権でどんなパフォーマンスを見せてくれるのか、いよいよ頂点に到達するのか、楽しみにしたいと思います。


 2年連続の3位となったのはアンナ・ポゴリラヤ選手です。

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 SPは大技の3ルッツ+3トゥループを決めたものの、3ループが2回転になり無得点となったため、63.81点での3位に留まります。
 フリーは得点源となる3+3、3+1+3は完璧に成功させましたが、単独の3ルッツと3ループで転倒があり、順位的には3位と表彰台を確保したものの、不本意な内容に終わりました。
 今シーズンのポゴリラヤ選手はシーズン序盤のB級国際大会で当時世界歴代5位(現在は歴代6位)となるハイスコアをマークして上々のスタートを切りましたが、GPでは表彰台に乗ることができず、しかし代表を懸けたロシア選手権では初表彰台と、良い時と悪い時がかなりはっきりしているなという感じですね。今大会はそれが悪い方に出ましたが、世界選手権ではどちらのポゴリラヤ選手が現れるのか、テクニカル面でもメンタル面でもコントロールして臨めるかがカギになりそうですね。


 以下、4位はラトビアのアンゲリーナ・クチヴァルスカ選手、5位はイタリアのベテラン、ロベルタ・ロデギエーロ選手、6位はフランスのマエ=ベレニス・メイテ選手、7位はドイツのナタリー・ヴァインツィアール選手、8位はフィンランドのヴィヴェカ・リンドフォース選手となっています。


 続いてはペアです。

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 優勝はロシアのタチアナ・ボロソジャー&マキシム・トランコフ組。SPは全てのエレメンツをクリーンにこなし2位に4点差以上をつけて首位発進すると、フリーもソロジャンプで1つミスがあった以外はほぼノーミスの演技を披露し、他を寄せつけず、2位と20点以上の圧倒的な大差で断トツの優勝を果たしました。
 今季1季ぶりに競技復帰したボロソジャー&トランコフ組ですが、ブランクをほとんど感じさせない演技を続けていますね。これでボロソジャー&トランコフ組は4度目の欧州王者となったわけですが、改めてこのペアの実績を見ると、今まで出場した試合で3位以下になったことがないんですね。つまり常に金メダルか銀メダルを取り続けているという偉業を継続中なわけで、世界選手権でもその記録が続くかどうか、楽しみです。4度目の優勝、おめでとうございました。
 2位はドイツのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組。ショートではソロジャンプで細かなミスがあったものの、大きな取りこぼしなく演技をまとめパーソナルベストに近い得点で2位につけます。フリーはコンビネーションジャンプでミスがあった上に、2つのリフトで技が実施できず無得点になる大きなロスがあり得点を伸ばせませんでしたが、SPのアドバンテージを活かして2位の座を守り切りました。
 2014年に新たにペアを結成したものの、男性のマッソ選手のフランス所属からドイツ所属への移籍を巡る諸々のルールによって競技会に出場できなかったサフチェンコ&マッソ組。今シーズン満を持して競技会デビューとなったわけですが、デビューしたばかりとは思えないレベルの高さですでにトップレベルに到達しています。元々女性のサフチェンコ選手はロビン・ゾルコビー選手とのペアで何度も世界チャンピオンになった実力者ですし、マッソ選手もそのサフチェンコ選手にパートナーとして選ばれたということはそれだけ実力のある選手ということなのでしょう。ただ、今大会のフリーでは大きなミスが2つあり、そういった部分ではこの2人としての経験の浅さが出てしまったかなと思うので、世界選手権までにどう修正して立て直してくるかに注目ですね。
 3位はロシアの若手、エフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組です。ショートは目立ったミスなくエレメンツを揃え70点超えで3位の好位置につけると、フリーでも細かなジャンプミス以外は致命的なミスなく演じ切り、前年と同じ銅メダルを獲得しました。
 ロシアのペア代表は当初、ロシア選手権1位のボロソジャー&トランコフ組、ロシア選手権2位の川口悠子&アレクサンドル・スミルノフ組、ロシア選手権は欠場したものの実績を考慮されて選ばれたクセニア・ストルボワ&ヒョードル・クリモフ組の3組でした。しかし、川口&スミルノフ組は川口選手が練習中に脚の腱を断裂したため辞退、ストルボワ&クリモフ組はクリモフ選手の肩の負傷によって辞退と、2組が辞退し、代わりにロシア選手権3位のタラソワ&モロゾフ組と同大会4位のクリスティーナ・アスタホワ&アレクセイ・ロゴノフ組が繰り上がりで出場する運びとなりました。そんな中での演技でしたが、タラソワ&モロゾフ組は昨年も出場して表彰台に立っているということもあって、安定した内容でしたね。世界選手権の代表に関しては現時点で正式な発表は出ていませんが、川口&スミルノフ組は残りのシーズンは全休とのことですので、タラソワ&モロゾフ組が世界選手権代表になる可能性は高いものと思われます。与えられたチャンスを活かして頑張ってほしいですね。


 以下、4位はフランスのヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ組、5位はイタリアのヴァレンティーナ・マルケイ&オンドレイ・ホタレク組、6位はイタリアのニコーレ・デラ・モニカ&マッテオ・グアリーゼ組、7位はロシアのアスタホワ&ロゴノフ組、8位はドイツのマリ・ヴァルトマン&ルーベン・ブロマールト組です。


 最後はアイスダンス。

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 アイスダンスを制したのは現世界王者、フランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組。SDで首位と僅差の2位につけると、FDでもほぼ完璧な演技で2位以下を突き放し、逆転での2連覇を達成しました。
 今シーズンのパパダキス&シゼロン組は、8月にパパダキス選手が練習中に転倒し脳振とうを起こしたためシーズン前半を休養に当てていました。12月のフランス選手権で復帰し、今大会が久しぶりの国際試合になったわけですが、得点的にも内容的にもベストな状態にしっかり整えてきましたね。負傷からの復帰直後の大舞台で未知数な部分も大きかったですが、さすがの世界チャンピオン。今後はこちらも2連覇が懸かる世界選手権に向けてさらなるブラッシュアップをしてくると思いますが、脳振とうは怖いものなのであまり無理せず取り組んでほしいですね。2連覇、おめでとうございました。
 2位はイタリアのアンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ組。ショートダンスはパーソナルベストまであと0.08点という高得点で首位発進。フリーダンスはレベルが最高難度の4ではなく3に留まるエレメンツが複数あり、パパダキス&シゼロン組に逆転を許しました。しかし総合得点では自己ベストをマークし、前年と同じ堂々の銀メダルを獲得しました。
 3位はロシアのエカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組。SDで3位発進すると、フリーは自己ベストを4点以上更新するクリーンな出来で2位、総合では3位となり、3年ぶりに表彰台に立ちました。


 以下、4位はロシアのヴィクトリア・シニツィナ&ニキータ・カツァラポフ組、5位もロシアのアレクサンドラ・ステパノワ&イワン・ブキン組、6位はイギリスのペニー・クームズ&ニコラス・バックランド組、7位はイタリアのシャルレーヌ・ギニャール&マルコ・ファブリ組、8位は地元スロバキアのフェデリカ・テスタ&ルカーシュ・チェーレイ組となりました。



 さて、欧州選手権2016の結果は以上です。やはり全体的にロシア勢の活躍が目立ちましたが、男子ではイスラエルの2選手が上位に入るなどフィギュアスケート後進国の躍進もあり、どんどん多様性豊かな大会になっているなと感じます。この大会の結果が世界選手権にどんなふうに繋がっていくのか、楽しみです。


:記事冒頭の男子メダリスト3選手のスリーショット写真は、AFPBB Newsが2016年1月29日の7:52に配信した記事「涙のフェルナンデス、フィギュア欧州選手権で4連覇達成!」から、フェルナンデス選手の写真、ビチェンコ選手の写真、コフトゥン選手の写真、ペアメダリスト3組の写真は、写真画像サイト「Newscom」から、女子メダリスト3選手のスリーショット写真は、スケート情報サイト「icenetwork」が2016年1月29日に配信した記事「Medvedeva fends off Radionova to win Europeans」から、メドベデワ選手の写真は「icenetwork」が2016年1月30日に配信した記事「Medvedeva's message: 'Love saves the world'」から、ラディオノワ選手の写真は写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、ポゴリラヤ選手の写真は国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、アイスダンスメダリスト3組の写真はAFPBB Newsが2016年1月31日の9:52に配信した記事「パパダキス/シゼロン組、アイスダンスで連覇 フィギュア欧州選手権」から引用させていただきました。

【関連リンク】
Amodio wants to say goodbye the best way he can アモディオ選手の引退に関するインタビュー記事です。
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by hitsujigusa | 2016-02-04 16:44 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)