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 ベストコスチューム15/16、ペアフリー部門です。ペアショートプログラム部門はこちら、衣装のベスト10を選ぶにあたってのルールについてはこちらをご覧ください。

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 ペアフリー部門第1位は、カナダのリュボーフィ・イリュシェチキナ&ディラン・モスコヴィッチ組の「交響曲第2番」です。

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 ラフマニノフの「交響曲第2番」を使用した甘美かつダイナミックなプログラム。ラフマニノフの作曲した数多い旋律の中でも最も有名なうちの一つである甘美なメロディから始まり、徐々にオーケストラが力強さを増し壮大に幕を閉じますが、女性の方が甘美な面、男性の方が壮大な面を表しているように思えます。男性は襟ぐりの深いネイビーのシャツ。シャツの右肩から背中にかけてと、右腕にのみビジューがあしらわれています。女性は白いワンピースで、胸部分は白というよりもベージュに近いピンク色のようになっていて、色とりどりのビジューが散りばめられています。男女ともにシンプルな形ながらも、派手過ぎず地味過ぎず音楽の世界観に合ったエレガンスなデザインになっていて、素晴らしいですね。


 2位はフランスのヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ組の「映画『ロミオ+ジュリエット』より/映画『Romeo & Juliet』より」です。

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 ひとえに“ロミオとジュリエット”といってもさまざまありますが、ジェームズ&シプレ組が使用したのは1996年に公開されたレオナルド・ディカプリオ主演の「ロミオ+ジュリエット」と2013年公開の「Romeo & Juliet」のサントラの組み合わせです。
 フィギュア界でも定番中の定番である“ロミジュリ”ですが、ジェームズ&シプレ組は奇をてらうのではなく、シンプルな衣装で“ロミジュリ”感を出していますね。男性は襟部分が黒く縁取られた白いシャツ姿。腰は黒いベルトで締めてアクセントとしています。女性は清楚な印象の白いワンピース。下に着た淡いピンクのレオタードの上にシースルーの白いワンピースを重ね、露出は割と多いのですが、素材感の柔らかさや色づかいの美しさによって、ジュリエットらしい清らかさを醸し出しています。最終盤を除いてプログラム自体が全体的に甘美でしっとりとした感じなので、男女ともにソフトな印象のコスチュームで世界観にぴったりだと思いますね。


 3位は中国の隋文静(スイ・ウェンジン)&韓聰(ハン・ツォン)組の「あなたの声で心は開く 歌劇『サムソンとデリラ』より」。

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 サン=サーンスの「サムソンとデリラ」を使用したプログラム。前半はゆったりと優雅に、終盤は激しく熱狂的に幕を閉じる構成です。衣装は華やかな作りでエレガンスさを醸しながらも音楽の曲想に合ったエスニックさも感じさせます。
 男性の韓選手は袖部分がブラウン、ボディ部分が濃い青という変わった色合わせとなっています。ところどころに金色の装飾があしらわれていて、全体的にエキゾチックな雰囲気です。女性の隋選手は鮮やかな水色のワンピースで、ダイヤモンドを模した小ぶりのビジューがふんだんにあしらわれています。こちらはあまりエキゾチックさというのはなく、女性的な優雅さを表しているように感じます。男性と女性で全く違うデザインの衣装ですが、それぞれプログラムの異なる面を表現しているような感じで、よく工夫された衣装だなと思います。


 4位はロシアのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組の「夜想曲第2番/前奏曲第4番/革命のエチュード」です。

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 ショパンのメドレープログラムで、コスチュームはクラシック音楽の正統を表現しているように感じます。男性は白いシャツに黒いスーツというシンプルかつスタンダードないでたち。一方、女性は淡いピンク色の片袖が長袖タイプのスカートが長いワンピース。この写真では少しわかりにくいかもしれませんが、胸元からお腹にかけて大きなト音記号がデザインされています。ショパンというクラシックの中でも正統派中の正統派だからこそ、このデザインなのかなと思いますし、ワンピースと違和感なく溶け合っていて素敵ですね。男女の組み合わせで見ても、とてもクラシカルな雰囲気を漂わせていて、ショパンにぴったりだと思います。


 5位は中国の彭程(ペン・チェン)&張昊(ジャン・ハオ)組の「真珠採り」です。

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 オペラ「真珠採り」は「カルメン」で有名なビゼーの作品。物語の舞台はセイロン、現在のスリランカです。ということで衣装もアジアっぽさを意識したエキゾチックなデザインになっています。
 男性の張選手は濃い紫の七分袖の上着に同色のパンツ姿。スリランカの民族衣装については全く詳しくないのですが、上着の形はスリランカにも似たような民族衣装があるようですね。そして色づかいは胸元のポケットや袖口に鮮やかなピンクをあしらっていて、シンプルな中にも遊び心が感じられます。一方、女性の彭選手は胸元はピンク、スカートは白、首元などはゴールドと、多彩な色づかいのワンピース姿。ゴールドの部分は襟が立て襟っぽくなっていたり、アジアの建築や装飾、美術品などによく見られるデザインになっていたりと、アジアらしさを前面に押し出しています。男女ともにスリランカらしさというよりも、大まかなアジアらしさというのをイメージしているように感じますね。


 6位はカナダのカーステン・ムーア=タワーズ&マイケル・マリナロ組の「映画『ロミオ+ジュリエット』より」。

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 1996年公開の『ロミオ+ジュリエット』のサントラを使用したプログラム。上述したジェームズ&シプレ組と同じ物語ですが、コスチュームの様相はかなり違います。
 男女ともに淡い紫を基調とした衣装。男性は襟付きの長袖シャツで、白から紫のグラデーションになっています。女性は片方の肩だけにストラップのあるアシンメトリーなワンピースで、首や肩のシルバーの装飾に加え頭の髪飾りなど、全体的にデコラティブな印象ですが、色味を統一しているのでそこまでごちゃごちゃ感はなく、まとまりのある衣装になっていると思います。
 同じ“ロミジュリ”でもジェームズ&シプレ組とは違い、華やかさを前面に押し出し、プログラムのドラマチックな雰囲気をより強調しているように感じますね。


 7位はロシアのタチアナ・ボロソジャー&マキシム・トランコフ組の「映画『ドラキュラ』より/映画『ヴァン・ヘルシング』より」。

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 “ドラキュラ”をテーマにした映画2作品のサントラを組み合わせたプログラムで、おどろおどろしさだったり不気味さ、ダークさというのが前面に押し出されています。
 男性は白いシャツに光沢のある臙脂色のベスト、黒いパンツといういでたちで、シンプルながら高級感のあるコスチュームです。女性は同じ臙脂色の長袖ワンピースで、ほとんど装飾らしい装飾はありません。ですが、首元やボディ部分に入ったライン、後ろ側だけ長くなったスカートなど、細部に渡って繊細な工夫がなされていて、そういった細かな意匠によって簡素ではあるけれども素朴ではなく、気品のある衣装になっていると思います。中世のヨーロッパを舞台にした作品の世界観が忠実に反映されたコスチュームですね。


 8位はアメリカのアレクサ・シメカ&クリス・クニーリム組の「映画『エリザベス:ゴールデン・エイジ』より」。

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 イギリスの女王エリザベス1世を描いた映画のサントラを使用したプログラム。ということで衣装も中世のイギリスの高貴なイメージを反映したものになっています。
 男性は襟付きの白いシャツにブラウンの上着。上着には金属っぽいブロンズ色の細かな装飾が施されています。女性はクリーム色のワンピースで、胸からお腹にかけて金色やブロンズ色で三角形の装飾がデザインされています。映画のタイトルに“ゴールデン”とあるように金色が象徴的に使われていて、ワンピースの形自体はシンプルですが、この装飾があることによってプログラムの世界観にふさわしいゴージャスさがプラスされています。エリザベス1世が主人公の映画なので、男性の方はあくまでも控えめに、女性の方を引き立てるような男女の衣装のバランスになっていて良いと思います。


 9位はイタリアのニコーレ・デラ・モニカ&マッテオ・グアリーゼ組の「映画『Romeo & Juliet』より」。

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 2013年公開の映画『Romeo & Juliet』のサントラを使用していて、上述したジェームズ&シプレ組、ムーア=タワーズ&マリナロ組とは少し趣きの異なるプログラムになっています。
 衣装は二人とも臙脂色を基調とし、男性は体の中心が大きく開き、その左側が臙脂色、右側が黒という2色づかいとなっています、女性は右側だけが長袖というアシンメトリーな作りのワンピースで、左側は布地で覆うのではなく、アップリケで花を重ねたようなデザインとなっています。男性と女性で同じ色づかい、同じ雰囲気の衣装ですが、男性は臙脂色一色にするのではなく黒も取り入れたり、女性は片袖のみを長袖にするなどそれぞれ変化をつけていて、ペアルックだけれども少し違うという絶妙な差異の付け方が、ちょうど良いバランスになっている気がしますね。


 10位はカナダのヘイリー・ベル&ルディ・スウィガース組の「映画『ハウルの動く城』より」。

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 宮崎駿監督のアニメ映画『ハウルの動く城』のサントラを使用したプログラム。映画の内容のイメージからすると明るさや陽気さなどが想起されますが、ベル&スウィガース組の衣装は映画の内容というよりも音楽そのもののイメージを表現した衣装という感じでしょうか。
 男性は白いシャツに深みのある青のベスト姿。ベストは縁取りがグレー(シルバー?)になっています。一方、女性は臙脂色のノースリーブワンピース。上半身前面に立体的な模様が施されています。どちらもシックかつシンプルなデザインで、一見『ハウルの動く城』のイメージと合わないような気がしますが、音楽そのものはワルツのリズムを用いた非常にクラシカルなものなので、そのイメージから考えるとこれくらいシックな方が音楽の邪魔をせずむしろ良いのかなと思いますね。



 さて、ペアフリー部門のベストコスチューム15/16は以上です。ここで選んだだけでも“ロミジュリ”が3組もいて、同じ作品を比べるのもフィギュア衣装鑑賞のおもしろさかなと思います。では。


注:記事冒頭の写真はフィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから、イリュシェチキナ&モスコヴィッチ組の写真は、カナダのフィギュアスケート組織「スケートカナダ」の公式サイトが2016年2月20日に配信した記事「Lubov Ilyushechkina and Dylan Moscovitch fifth at ISU Four Continents」から、ジェームズ&シプレ組の写真、タラソワ&モロゾフ組の写真、彭&張組の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、隋&韓組の写真は、フィギュアスケート情報サイト「Golden Skate」が2016年2月20日に配信した記事「China’s Sui and Han take third Four Continents title」から、ムーア=タワーズ&マリナロ組の写真は、カナダの新聞「Sarnia Observer」の公式サイトが2016年4月3日に配信した記事「Sarnia's Michael Marinaro finishes eighth with partner at world championships 」から、ボロソジャー&トランコフ組の写真は、「Golden Skate」が2016年1月30日に配信した記事「Volosozhar and Trankov golden in Bratislava」から、そのほかの写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2016-05-27 17:19 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

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 ベストコスチューム15/16、男子に続き、今回はペアのショートプログラムのコスチュームをベスト10形式で振り返っていきたいと思います。ベスト10を選ぶにあたってのルールについては、こちらの記事の冒頭をご覧ください。

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 ペアショートプログラム部門1位は、イタリアのヴァレンティーナ・マルケイ&オンドレイ・ホタレク組の「Morir D'amor」です。

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 ベートーヴェンの「ピアノソナタ第14番」、いわゆる“月光ソナタ”を女性ボーカル付きでアレンジした「Morir D'amor」。しっとりと大人っぽく、艶やかな曲で、二人の衣装も黒を基調としたシックなものとなっています。男性の衣装は黒いシャツに黒いパンツと装飾の一切ない潔さ。一方、女性の方は透け感のある黒い生地で、胸の部分だけビキニのように覆う形でセクシーさを感じさせます。そして最大のポイントとなるのはダイヤモンドのように輝くビジューで、体の中心を貫くようにライン状に配置されたところから散らばるように上半身全体にビジューが広がり、まるで夜空を走る天の川とその周囲を埋め尽くす無数の星々のようで、まさに“月光”のイメージにぴったりなコスチュームだと思います。


 第2位はカナダのリュボーフィ・イリュシェチキナ&ディラン・モスコヴィッチ組の「Since I've Been Loving You」です。

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 レッド・ツェッペリンの「Since I've Been Loving You」、日本での曲名は「貴方を愛しつづけて」。激しいギターソロが印象的ですが、ドラマチックな抒情性もあるプログラムとなっています。男性は上の写真では分かりにくいかもしれませんが、ベースとなるワイン色の生地の上を革っぽい素材のライン状の生地がぐるぐる巻きのような形でデザインされており、ウエストにはロックっぽいごついデザインのベルト、パンツは光沢のある革風と、全体的にロックの激しさ、男らしさというのを感じさせます。対照的に女性の方はエレガンスな赤みがかったオレンジ色のワンピース姿で、胸の部分は細かなビジューをふんだんに施したデザイン。ワンピースの形自体はシンプルで、華やかなオレンジ色ではありますが派手すぎず、美しいですね。男女のバランスがうまく取れている衣装だと思います。


 3位はフランスのヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ組の「I Put A Spell On You」。

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 使用曲の「I Put A Spell On You」は元々1956年に発表されたジェイ・ホーキンスの楽曲ですが、2015年に公開されて話題になった映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』のサントラにカバーバージョンが使用され、フィギュア界でも複数のスケーターが用いました。
 ジェームズ&シプレ組が使用したのはイギリスの歌手ジョス・ストーンが歌うバージョン。女性ボーカルの力強さ、パワフルさが印象的なプログラムですが、二人のコスチュームも黒一色で強さを前面に押し出していますね。黒一色なのでとても見にくくパッと見では分かりにくいのですが、男性の衣装はベースとなる黒いシースルー生地の上に黒いジャケットを重ねたようなコーディネートになっています。しかもそのジャケットもシンプルなものではなくて、部分部分によってレザー風の素材が使われていたりベルトっぽい装飾がなされていたりと、いろんな素材を組み合わせたモダンなデザインです。女性の方は全身を覆うレオタード風で、首元と太ももの一部分にのみ大ぶりなビジューが三角形にあしらわれています。そして肩はレザー風の素材で肩パッドのようなデザインがなされ、ウエスト部分も同じレザー風素材でベルトのようなデザイン。全体的に色も素材感もかっちりした作りですが、体の中心部分のみシースルーになっていて、女性らしいセクシーさも漂わせています。ロック音楽のクールなイメージを見事に表現した、ただただ“カッコいい”コスチュームですね。


 4位は中国の隋文静(スイ・ウェンジン)&韓聰(ハン・ツォン)組の「愛のロマンス」です。

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 「愛のロマンス」は映画『禁じられた遊び』のテーマソングとして知られるギター曲ですが、隋&韓組のプログラムではこの曲のアレンジバージョンと「Faruccas」というフラメンコ曲を組み合わせたスパニッシュプログラムに仕上げています。
 ということでコスチュームもスペインらしさがうかがえますね。女性の隋選手は濃いピンクのストラップレスドレス。ドレス全体に細かなビジューがあしらわれていて、非常に華やかです。男性の韓選手は白いシャツに黒いジャケットで、ジャケットの形は襟ぐりが大きく開いたもので少し闘牛士の上着と似ていますね。また、写真では見えにくいですが、シャツの襟にはピンクのリボンとビジューが施されていますし、ジャケットの肩には色とりどりのビジューでスペインらしい複雑な模様がデザインされていて、一見シンプルながら、女性の衣装とペアルックっぽい感じにもなっています。
 スパニッシュな雰囲気を醸しながら、オリジナリティーも感じさせる素敵な衣装だと思います。


 5位は中国の彭程(ペン・チェン)&張昊(ジャン・ハオ)組の「カム・トゥゲザー」です。

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 タンゴアレンジされたビートルズの「カム・トゥゲザー」を使用したプログラムということで、衣装もタンゴをイメージした赤と黒を基調としています。男性は黒いトップスに赤いボトム。トップスの方にはビジューで独特な模様が施されています。女性の方は左側だけが長袖になったアシンメトリーな赤いワンピース。体の中心に深い切り込みが入っていて、その周囲を細かなビジューが埋め尽くしています。タンゴプログラムでタンゴを意識した振り付けもありますが、元々がビートルズの楽曲とあってモダンな雰囲気が特徴的で、なのでコスチュームもトラディショナルなタンゴらしさというよりも、タンゴっぽさを残しつつモダンなデザインに仕上がっていますね。


 6位はロシアのタチアナ・ボロソジャー&マキシム・トランコフ組の「Nagada Sang Dhol」です。

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 インドの映画音楽を組み合わせた異国情緒満載のプログラム。コスチュームもまさにインド感を前面に押し出しています。男性のトランコフ選手はインドの男性の民族衣装“クルタパジャマ”姿。インド男性の民族衣装の中でも最もカジュアルなものだそうですが、裾の長い長袖シャツに、だぼっとしたズボンを合わせています。一方女性の方は対照的なゴージャスさで、インドの女性の民族衣装で有名なのは一枚の布を体に巻きつけたサリーですが、ボロソジャー選手が着ているのはトップスとスカートが分かれたものなので、レベンガという民族衣装に近いかなと思います。深みのあるグリーンをベースとして、トップスには繊細な刺繍やアップリケが施されています。右肩から細長い布を垂らし、スカートはグリーンのスカートの上にさらにベール風のブラウンっぽいスカートを重ねています。インドの民族衣装を現代的にアレンジしながら、ファッションとしての美しさも追求した素晴らしい衣装ですね。


 7位はアメリカのジェシカ・カララン&ザック・シドゥー組の「It's a Man's Man's Man's World」。

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 「It's a Man's Man's Man's World」はジェームズ・ブラウンが1966年に発表したR&Bの名曲ですが、カララン&シドゥー組はイギリスのソウル歌手、シールがカバーしたものを使っています。
 R&Bということでコスチュームもそういったカッコよさやクールさを感じさせるデザインとなっていて、男性の方は青いシャツに黒いパンツというシンプルなスタイル。女性は胸元が大きく開いたセクシーなワンピースで、首元やワンピース全体にビジューが多々あしらわれていてゴージャスです。さほど奇抜さはありませんが、“男の世界”を歌った大人のプログラムにふさわしいシックかつ華やかな衣装だと思います。


 8位はカナダのカーステン・ムーア=タワーズ&マイケル・マリナロ組の「If I Can't Have You」。

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 アメリカを代表するブルースシンガー、エタ・ジェイムズの楽曲を用いたプログラムですが、上述したカララン&シドゥー組のプログラムとはまた趣きは違うものの、やはりこちらも大人のクールな世界観が印象的な作品です。
 色づかいは男女ともに黒一色で、男性は黒いシャツに黒いパンツ。女性は透け感のある生地に刺繍やアップリケを施したワンピース。どちらも奇をてらわずシンプルな作りですが、そのシンプルさがプログラムが持つカッコよさを引き立てていて、ぴったり合っているなと思います。


 9位はイタリアのニコーレ・デラ・モニカ&マッテオ・グアリーゼ組の「Magnificat」。

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 イタリアの歌手ミーナが歌う「Magnificat」、壮大かつ荘厳な空気感に満ちた楽曲です。「Magnificat」=「マニフィカート」というのはキリスト教の聖歌の一つ。西方教会では晩の祈りの際に用いられる聖歌だそうです。
 そういった宗教的な曲とあって、衣装は二人とも神聖な白を基調としたものとなっています。そこに金色のビジューなどで植物を想起させるデザインがなされています。金色を使うと場合によっては派手すぎたりチープになったりすることもあるのですが、デラ・モニカ&グアリーゼ組の衣装は白と合わせ、デザイン的にも簡素な作りにすることで、品のある金色の使い方ができていると思いますし、神聖な楽曲にもよく合っていますね。


 10位はアメリカのマリッサ・カステリ&マーヴィン・トラン組の「サマータイム」です。

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 ガーシュウィン作曲の名曲「サマータイム」ですが、こちらで使用されているのは男性と女性のダブルボーカルのカバーバージョンです。
 男性が非常にシンプルな黒いTシャツと黒いパンツ、女性は華やかなゴールドのホルターネック風ドレスと対照的な組み合わせ。曲が「サマータイム」ですから、夏のけだるい感じや照りつける太陽のようなイメージが女性のキラキラと輝くゴールドのドレスに反映されているようにも感じますし、一方男性の方は黒一色の服装で女性の引き立て役に回っているという感じがしますが、半袖Tシャツというところで夏らしいといえば夏らしいと強引にこじつけることもできますね。それはともかくとして、女性のドレスは全体にゴージャスな金色を用いながらも嫌らしい派手さではなくて、品の良い絶妙な色づかいだと思いますし、女性の方がかなりゴージャスだからこそ、男性の方はこれくらい地味な方がバランスが取れて良いと思います。



 さて、ペアのSPベスト10は以上です。続いてフリーですが、こちらはもうしばらくお待ちください。


:記事冒頭の写真はInternationa Figure Skating」の公式フェイスブックページから、マルケイ&ホタレク組の写真、イリュシェチキナ&モスコヴィッチ組の写真、隋&韓組の写真、彭&張組の写真、カララン&シドゥー組の写真、デラ・モニカ&グアリーゼ組の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、ジェームズ&シプレ組の写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、ボロソジャー&トランコフ組の写真は、スケート情報サイト「icenetwork」が2015年11月13日に配信した記事「Volosozhar, Trankov comfortably in front after short」から、ムーア=タワーズ&マリナロ組の写真は、カナダのスケート組織「スケートカナダ」の公式サイトのフォトギャラリーから、カステリ&トラン組の写真は、「icenetwork」が2015年9月17日に配信した記事「Castelli, Tran grab lead with sultry 'Summertime'」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2016-05-20 17:43 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

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 前回の男子ショートプログラム部門に引き続き、ベストコスチューム15/16をお送りします。今回は男子フリー部門です。ベストコスチュームシリーズのルールについては、こちらの記事をご覧ください。

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 男子フリー部門第1位は、日本の宇野昌磨選手の「トゥーランドット」です。

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 フィギュア界大定番中の大定番「トゥーランドット」。重厚で壮大な曲想とあって、宇野選手のコスチュームもクラシカルかつ本格的な作りです。色はグリーンで統一しまとまりのある色づかいとなっていますが、同じグリーンでも抹茶色から黄みがかった緑のグラデーションになっているシャツ、鮮やかな緑のベスト、モスグリーンのパンツと色味を変えていて、のっぺりした感じではなく印象に変化を与えています。そして布づかいも巧みで、下に着たシャツは透け感のある柔らかなシースルー生地、ベストとパンツは光沢感のあるビロード風と、服ごとに素材を変えることで同じグリーンながらバリエーションを持たせています。デザイン的にもベストの植物のアップリケや、襟元のくしゅくしゅした感じなど、細かいところまでこだわって気品溢れる作りにしていて、本当に美しい衣装だなと思いますね。


 2位はロシアのマキシム・コフトゥン選手の「ベートーヴェンセレクション」。

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 ベートーヴェンの有名な交響曲などを組み合わせたダイナミックで荘厳なプログラム。ということで衣装はベートーヴェンの時代をイメージしたデザインになっていますね。
 下に着た白いシャツは首元をきゅっと白いスカーフで締めていて、有名なベートーヴェンの肖像画と同じような感じです。上に着たベストはシックな色合いの紫で、びっしりと並んだ金ボタンがさらに高貴な雰囲気を強調しています。そのボタンに沿うように銀糸で蔓草の刺繍がなされていて繊細さもあり、重厚さと柔らかさが共生している練られたコスチュームだなと思います。


 3位はアメリカのアダム・リッポン選手の「ビコーズ/ゲット・バック/ブラックバード/サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」。

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 ビートルズの楽曲4曲をメドレーにしたプログラム。コスチュームはロックらしさを強調した斬新なデザインで、人によっては好き嫌いが分かれるかもしれないのですが、リッポン選手ならではの、彼にしか着こなせない衣装だと思います。
 ベースとなる素材は紫のスケスケ生地。体にぴったり密着してリッポン選手の体の線の美しさを活かしています。そして最も特徴的なのはミリタリー風のシンメトリーなデザインですね。“肋骨服”というそうですが、左右両側のボタンを飾り紐で繋いだ装飾的な意味合いが強い軍服のスタイルの一つで、それをアレンジしてビジューやラインストーンを贅沢に使用し、一昔前のロックスターのステージ衣装のような派手派手しさを再現しています。ビートルズもアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のジャケットでミリタリー風の衣装を着ていますが、ミリタリールックというのは歌手のステージ衣装の定番でもあるので(特に一昔前)、リッポン選手もビートルズを滑るにあたってそういったイメージを用いたのでしょうし、あえてギンギラギンな感じが往年のロックスターっぽくて良いですね。


 4位は日本の川原星選手の「ピアノ協奏曲「宿命」」。

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 日本を代表する作曲家、千住明さんの「ピアノ協奏曲「宿命」」は2004年に放映されたドラマ『砂の器』で使用されたことで知られ、壮大かつ華麗、まさにピアノ協奏曲の正統を往く趣きのある曲想です。ということで川原選手の衣装も奇をてらわず、シンプルな白シャツ&ジャケットというスタイルとなっています。しかしそこに細かな工夫がなされていて、シャツは大きめの襟にジャケットと同系色の大きめのボタン、淡いシルバーのカマーバンドとアクセントをつけながらも色味のバランスを揃えています。そして青いジャケットはビロードの光沢感で高級感を持たせ、襟の部分のみにビジューをあしらうことで控えめながらも華やかさを演出。シンプルなコーディネートの中にも色づかいや素材感、細部の装飾など、全体的にバランスの取れた衣装だなと思いますね。


 5位は日本の村上大介選手の「Anniversary」。

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 X JAPANのドラマーであり、ソロでも作曲家として活躍するYOSHIKIさん作曲のピアノ曲「Anniversary」を使用したプログラムで、ダイナミックかつ静謐な音楽の世界観を個性的なコスチュームで表現しています。
 衣装は3つのパートで構成されていて、白いシャツと金色のベスト、黒いジャケットの組み合わせ。全体的にアシンメトリーな作りで、ジャケットの襟も左右でデザインが違いますし、シャツも右から左に下がるような形になっていて、ともするとバランスの悪い印象になりかねないと思うのですが、ジャケットとシャツのあいだにシンメトリーなベストを挟むことでちょうど良くバランスを取っているように感じます。色づかいという面でも白と黒と金色というハッキリした色の組み合わせですし、布づかいも柔らかな素材のシャツ、硬めでかっちりした印象を与えるベスト、ジャケットと全く異なる素材感の組み合わせで、全体的にいろんなイメージを盛り込んだコスチュームなのですが、奇抜になりすぎたりゴテゴテしすぎたりしないよう考えられていて、音楽とぴったり合った品の良い衣装になっていると思います。


 6位はチェコのミハル・ブレジナ選手の「海賊」です。

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 アドルフ・アダン作曲のバレエ「海賊」。14/15シーズンに本郷理華選手がSPで用いたことでも日本のフィギュアファンにはおなじみでしょう。
 「海賊」の物語の舞台はギリシャ、西欧から見た異国です。実際のバレエの衣装でもエキゾチックさが前面に押し出されていますが、ブレジナ選手のコスチュームもその世界観を忠実に再現しています。ゆったりとした長袖の白シャツ、赤字に金糸の刺繍が施されたベスト、腰に巻いた赤や黄の縞々のベルト、そして写真では切れていますが、膝下から足首まであしらわれたアラベスク柄の刺繍など、細部まで異国情緒漂うデザインを凝らしていて、プログラムとぴったり合った素晴らしい衣装だと思います。


 7位はフィリピンのマイケル・クリスチャン・マルティネス選手の「ロメオとジュリエット」です。

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 ロシアの作曲家、セルゲイ・プロコフィエフのバレエ「ロメオとジュリエット」を使用したプログラムということで、衣装は高貴なロメオのイメージを反映した非常にゴージャスなものとなっています。下に着た白いシャツの袖は肩の部分が膨らんだ“レッグオブマトンスリーブ”で中世やルネサンス期のクラシカルなイメージを表現。そして何より特徴的なのは上着の贅沢な装飾でしょう。金や銀のビジューなどをふんだんに用いたかなりデコラティブなデザインで、ロメオの高貴さを表しています。この装飾自体は非常に豪華ですが、それ以外の部分をシンプルにまとめることでいやらしくないゴージャスさを作り出していると思います。


 8位は日本の羽生結弦選手の「SEIMEI」です。

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 映画『陰陽師』のサントラを使用した「SEIMEI」。衣装は映画の中で主人公・安倍晴明が着ている平安装束に近いデザインです。
 形式としてはいわゆる“狩衣”をベースにしたものだと思いますが、下に着た単は古代の日本で最も高貴な色とされた紫、上に着た狩衣は神聖さを醸し出す白、袖をくくる紐は黄緑となっています。狩衣全体に黄緑と金色の糸で細かな刺繍がなされていて、パッと見はシンプルながらも、よくよく見ると非常に贅沢な作りとなっていて、シンプルさと華やかさをうまく両立させたコスチュームだと思いますね。


 9位はウズベキスタンのミーシャ・ジー選手の「夜想曲第19番」。

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 ショパンの「夜想曲第19番」、“夜想曲”ですからもちろん静かさでしっとりとした曲調の作品です。衣装は鮮やかな水色一色とシンプルで、清らかな音楽の世界観を壊さない色合いですね。装飾は右肩から広がるような形でビジューやラインストーンが散りばめられていて、華やかさというよりはささやかに光る星々のような控えめさを感じさせます。静謐な雰囲気のプログラムにふさわしい、音楽を引き立てるような衣装ですね。


 10位はスペインのハビエル・フェルナンデス選手の「映画『野郎どもと女たち』より」。

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 フランク・シナトラのボーカルが入った軽快かつコミカルなプログラムで、それに合わせて衣装もカジュアルなものとなっています。ブルーの五分袖シャツにグレーのサスペンダー、ストライプのパンツと、一見シンプルでよくありそうなコーディネートですが、全体のバランスだったり色づかいだったり、何でもないコーディネートだけど何となくおしゃれという雰囲気が醸し出されていて、これもフェルナンデス選手の個性がなせる業なのかもしれません。
 余談ですが、このコスチュームには2パターンあり、欧州選手権まではシャツのあいだから下着(?)がのぞくスタイル、世界選手権ではボタンを上の方まで留めているスタイルとなっていて、下に着たランニングが見えるか見えないかというだけの違いなのですが、個人的な好みでなんとなくランニングが見えている方が良いかなと思い、今回はこちらを選びました。



 さて、ベストコスチューム15/16、男子フリー部門は以上です。次はペアかアイスダンスのどちらかを取り上げると思いますが、次の記事までもう少しお待ちください。


:記事冒頭の写真はフィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから、宇野選手の写真、コフトゥン選手の写真、村上選手の写真、マルティネス選手の写真、フェルナンデス選手の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、リッポン選手の写真、ジー選手の写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、川原選手の写真、羽生選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、ブレジナ選手の写真はスケート情報サイト「icenetwork」のブレジナ選手のプロフィールページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2016-05-12 17:25 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

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 15/16シーズンのコスチュームをランキング形式で振り返るベストコスチューム15/16。各カテゴリーのショート、フリー別に、1位から10位まで個人的に好きなコスチュームを紹介していきたいと思います。それに関して、例年通り以下のようなルールを設けました。


●15/16シーズンに着用された衣装が対象。
●グランプリシリーズ、欧州選手権、四大陸選手権、世界選手権に出場した選手の、該当する試合で使用された衣装のみ対象。
●1選手1着のみに限定。1つのプログラムで複数の衣装が使用されている場合でも、1つの衣装しか対象にならない。また、1人の選手が複数のプログラムを使用している場合も、1つの衣装のみが対象となる。
●15/16シーズンに使用された衣装でも、すでに昨季以前に使用されている衣装は対象外となる。



 こうしたルールに基づいて、10着の衣装を選びました。さっそく、まずは男子ショートプログラムの衣装のベスト10から書いていきます。

*****

 男子ショートプログラム部門1位は、スペインのハビエル・フェルナンデス選手の「マラゲーニャ」です。

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 キューバ出身の作曲家レクオーナの「マラゲーニャ」はフィギュアスケート界でも定番のフラメンコプログラムですが、本場スペイン出身のフェルナンデス選手の衣装は伝統的なスペインらしさ、フラメンコらしさ満載のデザインとなっています。赤と黒のオーソドックスな色づかいで、加えて金色のボタンや紐状の金具、フロントから脇にかけてのゴージャスなビジューなど、高級感を漂わせる装飾で本格的な作りとなっていて、さすがスペインのスケーターとうならせる見事な完成度のコスチュームだと思います。


 2位は日本の宇野昌磨選手の「Legends」です。

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 「Legends」はエレクトロニックグループ“Sacred Spirit”の楽曲。エレトロニック独特の無機質さ、近未来的な印象を醸しながらも、抒情的なスローパートもあり、多面的な表情を見せるダンスナンバーです。そのエレクトロっぽさをイメージして、衣装はシルバーと黒を基調としたものになっています。襟や袖、裾を縁取るようにシルバーがあしらわれ、また、大胆な黒いラインが前身頃を切り裂くようにデザインされていて、そのラインもシルバーに光るビジューによって縁取られることでより近未来的な雰囲気を強調していますね。さらに裾は風になびく柳の葉のようで、ズボンと違和感なくうまく一体化しています。
 エレクトロミュージックという難しいイメージを、見事に表現した素晴らしい衣装だと思いますね。


 3位はアメリカのジェイソン・ブラウン選手の「Love Is Blindness 映画『華麗なるギャツビー』より」。

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 2013年に公開された映画『華麗なるギャツビー』の楽曲を使用したプログラムで、まさに映画の世界観を反映した衣装となっています。白いシャツの上に白いウェストコート、黒いジャケットを重ね、クラシカルな雰囲気を漂わせています。しかし、ところどころにブラウン選手らしい遊び心がのぞいていて、まず目に付くのはジャケットの襟でしょうか。シルバー(白?)の細長いビジューと赤い丸いビジューとが交互に組み合わせられ、それが均等に配置されてボーダーのような柄を作り出しています。また、上の写真では見えないですが、シャツの襟にも赤いビジュー(スパンコール?)がびっしりとあしらわれていて、全体的にはオーソドックスなスタイルながら細部にポップさを感じさせる作りとなっていて、ブラウン選手らしいとともに、映画のイメージにもぴったり合った素敵な衣装だなと思います。


 4位はウズベキスタンのミーシャ・ジー選手の「道化師」です。

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 「道化師」はイタリアの作曲家、レオンカヴェッロのオペラですが、赤と白と黒が混じり合う衣装は作品の多面性を表しているように感じます。黒は音楽の重厚さ、白は清らかさ、赤は情熱や狂気を想起させて、その3色が別々に配置されるのではなく絶妙に混じり合って一体化することで、作品の重層的な世界観をうまく表現していると思いますね。


 5位はアメリカのアダム・リッポン選手の「リヴ・フォーエヴァー」です。

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 「リヴ・フォーエヴァー」はイギリスを代表するロックバンド、クイーンの楽曲です。ロック音楽でありながらもオーケストラが入っていてクラシック音楽のような壮大さ、深遠さもあり、黒を基調としたシックな色づかいは音楽のイメージを的確に表現していると思います。また、黒だけだと地味になり過ぎるところですが、シルバーのビジューをふんだんにあしらっているのでロックらしい派手さもあります。これだけたっぷりとキラキラした装飾を使うと派手すぎてチープになりかねないですが、全体的に透け感のある生地の上にシンメトリーにビジューを配置しているので、品や高級感のある派手さになっているんじゃないかなと感じます。


 6位はラトビアのデニス・ヴァシリエフス選手の「踊るリッツの夜」。

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 15/16シーズンは浅田真央選手がエキシビションで使用したことでもおなじみのミュージカルナンバー「踊るリッツの夜」。こじゃれた雰囲気が印象的な音楽ですが、ヴァシリエフス選手の衣装もシャツにベストというオーソドックスかつ、かっちりしすぎないカジュアルさが特徴的で、軽快なプログラムによく合っています。特にアクセントとなっているのはギンガムチェックですね。コスチュームの作り自体もベストを2枚重ねたようなデザインで個性的ですが、さらにベストの柄をギンガムチェックにするというほかではあまり見ないデザインがポップさを醸し出していますし、また、シャツも長袖ではなく半袖にすることによってより軽やかさが強調されています。音楽の世界観とともに、16歳の若いヴァシリエフス選手ならではのフレッシュさも感じさせて、素敵な衣装だと思います。


 7位はフランスのフローラン・アモディオ選手の「Happy」です。

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 ファレル・ウィリアムズの2013年の大ヒット曲「Happy」を使用したプログラム。明るくポップな曲調にぴったりな水玉柄のシャツに赤いパンツで、まさに“Happy”という感じです。カジュアルでユニークなデザインですが、その中にも蝶ネクタイだったりシックな色のフィンガーレスグローブだったり小物づかいの巧さが光っていて、表現にこだわるアモディオ選手ならではのコスチュームですね。


 8位はイタリアのイヴァン・リギーニ選手の「ユー・レイズ・ミー・アップ」。

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 「ユー・レイズ・ミー・アップ」は2002年にニューエイジの音楽ユニット、シークレット・ガーデンが発表し、その後さまざまなアーティストによってカバーされている名曲ですが、リギーニ選手が使用したのはジョシュ・グローバンが歌うバージョンです。
 男性ボーカルの重厚さが印象的なプログラムとあって、リギーニ選手の衣装も黒とゴールドという色づかいで男性的な重厚感を前面に押し出しているように感じます。金色の部分は透け感のある網状になっていて、流れるようにデザインされた曲線が雄大な曲想を表していますね。華やかなラインストーンがふんだんに施されている上に、デザインも個性的で、一目見て斬新さを感じさせるコスチュームですが、ベースとなる色はシンプルな黒にすることで、華やかさとクールさのバランスをうまく取っているように思います。


 9位はカナダのパトリック・チャン選手の「マック・ザ・ナイフ」です。

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 カナダの国民的歌手マイケル・ブーブレが歌う「マック・ザ・ナイフ」。アップテンポで軽快なリズムが爽快な曲ですが、チャン選手の衣装も白い五分袖シャツに鮮やかな紫のニットベスト、シックなグレーのパンツと、全体的に軽やかさを醸しながらも、ゆるくなり過ぎない品のあるコーディネートとなっています。シーズン前半はニットベストがシャツと同じくらいの長さの袖ありのニットセーターだったのですが、それよりはベストの方がよりすっきりとして見えて良いのではないかと思い、こちらを選びました。


 10位はイタリアのマッテオ・リッツォ選手の「マラゲーニャ」。

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 上述したフェルナンデス選手と同じ曲名の「マラゲーニャ」ですが、リッツォ選手が使用しているのはアメリカのギタリスト、ブライアン・セッツァーの楽曲。映画『レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード』で使用されたことで有名で、日本のフィギュアファンには鈴木明子さんの12/13シーズンのSPでおなじみでしょうか。なのでフェルナンデス選手らが使用している定番のスパニッシュ・ソングである「マラゲーニャ」とは全くの別物です。
 こちらの「マラゲーニャ」はエレキギターが奏でる激しいラテン風音楽で、スペインらしさはありません。リッツォ選手のコスチュームも黒と赤でオーソドックスなラテンの色づかいですが、全体的に黒の面積が多く赤は控えめで、ラテンっぽさは抑え気味。身体の中心に赤い細いラインが2本走り、この写真では見えにくいですが、そのラインの両側にフリルがあしらわれています。フリルという男性の衣装では珍しいアイテムを使いアクセントにしながらも、ベースとなる黒と同色にすることで違和感なく溶け込ませていて、考えられた衣装だなと思いますね。



 男子ショートプログラム部門は以上です。次は男子フリー部門に続きます。


:記事冒頭の写真はフィギュアスケート専門誌「International Figure Skateing」の公式フェイスブックページから、フェルナンデス選手の写真、リギーニ選手の写真、リッツォ選手の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、宇野選手の写真、チャン選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」から、ブラウン選手の写真はicenetworkが2016年1月22に配信した記事「Brown files petition for spot on U.S. world team」から、ジー選手の写真はフィギュアスケート衣装情報サイト「フィギュアスケート・コスチューム図鑑」から、リッポン選手の写真、アモディオ選手の写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、ヴァシリエフス選手の写真はフィギュアスケートブログ「FS Gossips」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2016-05-08 16:19 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)