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 いよいよ新シーズン到来が迫り、日本国内ではアイスショーが各地で開催され、新シーズンへ向けて徐々に熱量が高まりつつある今日この頃のフィギュア界ですが、そんな中、選手たちの新プログラムについても少しずつ情報が明かされつつあります。この記事では今のところ公式に判明している選手の新プログラムについて、個人的な感想を交えつつ書いていきたいと思います。


 まずは上の写真でもお分かりのとおり、浅田真央選手の新プログラムについて。6月26日、浅田選手は自身の公式サイトでショートプログラム、フリーともに「Ritual Dance」を使用することを発表しました。
 「Ritual Dance」(日本ではおおむね「火祭りの踊り」と表記、英語では「Ritual Fire Dance」という表記もありますが、ここでは浅田選手の発表に従って「Ritual Dance」で統一します)は、スペインを代表する作曲家マヌエル・デ・ファリャのバレエ作品「恋は魔術師」の中の一曲で、そのエキゾチックな旋律が特によく知られています。浅田選手はこの発表に先立ち、ショートとフリーのイメージについて、前者は黒、後者は赤のイメージ、2つで1つの作品というヒントを明らかにしていました。その言葉から、タンゴとかラテン系の音楽を想像していたのですが、やはりスペインの作曲家のスペインの文化が反映された作品ということで、その点では予想どおりでした。
 ですが、それがファリャの楽曲であるというのは意外でしたし、何より今回驚かされたのはショートとフリーで同じ楽曲を使用するということです。同じ楽曲といってもショートはピアノバージョン、フリーはオーケストラバージョンでコンセプトをガラリと変えるようですし、また、当然演技時間も違うわけなので、フリーではショートに含まれていない旋律も入っているでしょうから、100%同じというわけではないと思います。ただ、ショートとフリーで全く同じメロディが流れるというのは異例のことですし、浅田選手にとってももちろん初挑戦となります。
 フィギュア界ではこれまでもショートとフリーで同じ作品を使用するということは(ほぼないですが)あって、近年そういったプログラム作りで個性を発揮しているのがカザフスタンのデニス・テン選手ですね。彼は世界選手権で初めてメダルを獲得した12/13シーズン、ショートもフリーも映画『アーティスト』のサントラを用いましたし、また、15/16シーズンはショートもフリーも「ミサ・タンゴ」という楽曲でした。ただ、前者は映画のサントラなのでもちろん複数の楽曲の組み合わせでしたし、後者も数十分ある長い楽曲なのでその中の異なるパートを抜き出してショートとフリーそれぞれで用いるという感じでした。なので、浅田選手のように元々4分くらいしかない短い楽曲をショート、フリー両方で用いるというのは、やはり前例のほとんどない、斬新なチャレンジだなと思います。
 浅田選手は自身が座長を務めるアイスショー「THE ICE」の名古屋公演でSPを初お披露目する予定であることを明かしていて、復帰2シーズン目に向けて着々と準備を進めていることが伝わってきます。
 15/16シーズンは復帰1季目とあって、シーズン前もシーズン中も浅田選手にとって未経験の感覚を味わったと思うのですが、現在はそうした経緯を経てさらなるタフさを手に入れたように感じるので、来季はまた進化を遂げた浅田選手が見られそうで今から本当に楽しみですね。


 続いては浅田選手の同門の後輩でもある宇野昌磨選手です。

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 宇野選手も自身の公式サイトで早々と新プログラムを発表していて、ショートは「ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジア」、フリーは「Buenos Aires Hora Cero/Balada Para Un Loco」とのことです。
 SPは映画『ラヴェンダーの咲く庭で』の劇中曲で、浅田真央選手の07/08シーズンのSP、引退された町田樹さんの14/15シーズンのSPとして使用されていて、その曲を三度日本の選手が使用することにとても感慨を覚えますね。ヴァイオリンの音色がとても抒情的で、本当に心に染み入るような美しい旋律を持つ音楽なので、繊細な表現力を持つ宇野選手に合っていると思いますし、決して簡単に演じられる作品ではないでしょうが、宇野選手本来のスケーティングの美しさを引き出す選曲だなと思います。
 そしてフリーはタンゴ界の巨匠であり変革者であるアストル・ピアソラのタンゴの組み合わせ。「Buenos Aires Hora Cero」は靴音から始まるモダンなタンゴ。「Balada Para Un Loco」はボーカル入りのタンゴで、実際にボーカル入りを使うのか、それともインストゥルメンタルなのかは分かりませんが、ピアソラの定番のタンゴとは違う趣きがある曲です。ラテン系のプログラムに関してはジュニア時代に「タンゲーラ」や「ドンファン」など滑っていますし、ラテン特有の色気、熱っぽさを表現するのがうまい選手なので、異彩を放つタンゴプログラムですが、きっと宇野選手の“色”を見せてくれるんじゃないかなと期待しています。


 ここからは海外選手です。
 まずはアメリカの実力者ジェイソン・ブラウン選手。ブラウン選手は15/16シーズンを負傷でほとんど棒に振ってしまったため、プログラム作りも他の選手たちより先倒ししていて、新SPは4月に行われたチームチャレンジカップで披露済みの「Appassionata」、フリーは15/16シーズンから継続の「愛の香気 映画『ピアノ・レッスン』より」となっています。
 ショートはニューエイジグループ、シークレット・ガーデンの楽曲で、チームチャレンジカップで拝見しての印象はとても抒情的で神秘的、どちらかというとゆったりとした曲調なのですが、“Appassionata”=熱情というタイトルにふさわしい情熱的な曲想で、表現力豊かなブラウン選手の得意分野だなと感じました。
 そしてフリーは持ち越しプログラムですが、15/16シーズンは満足に滑り切ることができなかったプログラムだと思うので2季連続は嬉しいですね。継続することでプログラムの進化も望めるでしょうから、楽しみです。


 現カナダ女王のアレーヌ・シャルトラン選手も自身の公式フェイスブックで新プログラムを発表していて、ショートは「スウェイ」、フリーは「テレビドラマ『ROME[ローマ]』より」であることが分かっています。
 「スウェイ」はアメリカの歌手ニコール・シャージンガーの楽曲(正確にはニコール・シャージンガーがリードボーカルを務めるアイドルグループ、プシーキャット・ドールズの楽曲)で、元々はラテン音楽のスタンダードナンバーだそうです。セクシーさを前面に押し出した感じの楽曲なので、はたしてシャルトラン選手もそういった路線でプログラムを制作しているのかは分かりませんが、今までのシャルトラン選手のイメージとは少し異なる曲かなと思います。フリーは古代ローマを舞台にした歴史ドラマのサントラなので、たぶん重厚でダイナミックな感じでしょうから、ショートとフリーでそれぞれ全く違ったシャルトラン選手の表情が見られそうですね。



 今回はここまで。今後も選手たちの新プログラムが判明し次第、お伝えしていきますので、もうしばらくお待ちください。では。


:記事内の写真は全て、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。

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宮原知子選手、16/17シーズンのプログラムを発表&新プログラム情報② 2016年7月23日
各選手の16/17シーズンの新プログラムについて・その③  2016年8月19日
羽生結弦選手、16/17シーズンのプログラムを発表&新プログラム情報④ 2016年9月15日
各選手の16/17シーズンの新プログラムについて・その⑤ 2016年9月24日
各選手の16/17シーズンの新プログラムについて・その⑥ 2016年10月9日


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by hitsujigusa | 2016-06-27 16:18 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 ベストコスチューム15/16、いよいよこれがラストとなる女子フリー部門です。なお、衣装を選ぶ際のルールについてはこちらの記事を、女子のショートプログラム部門はこちらの記事をご覧ください。

*****

 女子フリー部門第1位は、日本の宮原知子選手の「ため息」です。

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 フランツ・リストのピアノ曲「ため息」は、「3つの演奏会用練習曲」というピアノ曲集の中の一曲。リストらしいエレガンスで、タイトルのとおりため息をこぼすような優しい旋律が印象的な作品です。
 そんな音楽を用いたプログラムに宮原選手が掲げたテーマは“初恋”。ということで、コスチュームはまさに初恋を思わせる鮮やかなピンク色です。ですが、ひとえにピンク色といっても衣装の場所によって異なるピンク色を配置していて、特にスカートは5枚以上の生地を重ねてグラデーションになるように作られていて、単調なピンクにならない工夫が凝らされています。また、特徴的なのは布づかいで、上半身は3種類の生地を組み合わせたアシンメトリーなデザインになっていて、この異素材感がピンク一色の衣装に効果的に変化を与えているように思いますね。
 プログラムの世界観を余すことなく伝えた、甘美で素晴らしい衣装です。


 2位はアメリカのグレイシー・ゴールド選手の「火の鳥」です。

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 定番の「火の鳥」をゴールド選手らしく優雅に、しかし力強くダイナミックに演じたプログラムですが、衣装にも彼女らしいフェミニンさというのが反映されているように感じます。
 色はまさに“火の鳥”といった感じの赤。衣装の形はストラップレスで、胸部に羽やビジューがあしらわれ、鳥の翼のようなデザインとなっています。首元や腕にも同じ赤でアクセント的に装飾が施されていて、特に腕の装飾があることによってよりいっそう“鳥感”が出て良いですね。
 火の鳥らしい激しさや情熱的なさまを表しながらも、女性的な美しさも表現した見事なコスチュームだと思います。


 3位はフランスのマエ=ベレニス・メイテ選手の「トリスタンとイゾルデ」です。

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 古典作品「トリスタンとイゾルデ」を元にフランスの作曲家マキシム・ロドリゲスが作曲した音楽作品で、壮大でありながら悲哀漂うプログラムとなっています。
 コスチュームは紫を基調としていて、両袖とも長袖ですが、襟ぐりが斜めになっているアシンメトリーなデザインです。そして最も特徴的なのが上半身に大きく描かれた独創的な絵柄。鳥の羽のようにも見えますし、葉っぱっぽくも見えます。この部分が色とりどりのビジューによって描かれていて、まるでアート作品といっても過言ではないような美しさです。
 オリジナリティーを存分に発揮しながらも、奇抜になり過ぎず、ほかにない唯一無二の美しさを表現した素晴らしい衣装ですね。


 4位はアメリカのアシュリー・ワグナー選手の「映画『ムーラン・ルージュ』より」。

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 14/15シーズンからの持ち越しプログラム「映画『ムーラン・ルージュ』より」ですが、コスチュームは14/15シーズンの赤いワンピースから一新しました。
 新しいコスチュームはガラリと変わって白いストラップレスのワンピースで、胸の部分に金糸でさまざまな文様や植物をかたどった少しエキゾチックなデザインな施されています。そして首元も金色やブロンズ色のゴージャスなネックレス風の装飾がなされていて、プログラムの世界観にふさわしい華やかさをいっそう強調しています。白をベースにすることで可憐さも醸し出しつつ、ゴールドを多用することで品の良い豪華さもプラスしていて、14/15シーズンの赤い衣装も素敵でしたが、そこから全く違うコスチュームにすることでプログラムのイメージをも新たにしていて、プログラムと衣装のコンビネーションというのを改めて感じさせてくれましたね。


 5位は日本の浅田真央選手の「蝶々夫人」です。

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 日本を舞台にした王道のオペラ「蝶々夫人」。ということで衣装は着物風となっています。色は淡いラベンダー色を基調とし、うっすら透け感があります。袖はたっぷりと広がっており、腰の帯は繊細な刺繍がなされ、写真では見えませんが背中側は実際の着物で用いられる帯の結び方っぽくなっていて、さらには帯紐もしっかり施されていて、本物の着物の趣きに近い、上質な和服アレンジコスチュームになっています。また、タイトルにかけて上半身には蝶もあしらわれていて、蝶を衣装の中にデザインとして取り入れると、ともすればそこだけ浮いてしまったり子どもっぽっくなったりしかねないと思うのですが、この衣装の蝶は明らかに蝶と分かるデザインを用いながらも、うまく衣装の中に溶け込ませていて、絶妙だなと思いますね。


 6位は日本の本郷理華選手の「リバーダンス」です。

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 アイルランドの伝統音楽や舞踊などを取り入れた舞台作品「リバーダンス」の楽曲を使用したプログラム。本郷選手がこのプログラムで使用した衣装は2パターンあり、シーズン前半から四大陸選手権までは黒地に青や白のビジューを散りばめたもの、世界選手権以降は同じ黒地で胸の部分に大ぶりのビジューをあしらったものでしたが、今回はより華やかな後者を選びました。
 ベースとなる色はシックな黒ですが、胸元を中心にダイヤモンド風のビジューで花がいくつも連なったようなデザインとなっており、腕の部分はシースルー生地に細かなビジューが施されています。全体的に際立って目立つ色は使われていないのですが、贅沢に用いたビジューが放つ輝きがアクセントとなっていて、黒と青の寒色系のコスチュームですがしっかり華やかさもある衣装ですね。


 7位はロシアのアデリナ・ソトニコワ選手の「Je Suis Malade」。

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 「Je Suis Malade」はフランスの歌手ララ・ファビアンが歌う情熱的なラブソングです。ソトニコワ選手が纏う衣装で何より特徴的なのは左胸のハートでしょう。複数の立体的なビジューによってハート形が作られていて、まさにラブソングにぴったりなデザインです。コスチュームのベースとなる素材は黒いシースルー生地で(この写真だと光の効果でかなりスケスケに見えますが、実際に映像などで見るとここまで透けてません)、放射線状の黒いラインがハートに引き寄せられるようなデザインになっています。
 パッと見の華やかさやゴージャスさはないものの、一方で黒地にピンクのハートというインパクト大のデザインによって新鮮な印象を見る者に与える、考えられた衣装だなと思います。


 8位は日本の木原万莉子選手の「映画『ブラック・スワン』より」。

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 バレエ「白鳥の湖」をテーマにした映画『ブラック・スワン』のサントラを使用したプログラム。衣装はまさに“白鳥の湖”らしいもので、上半身は白、腰から下は黒というツートーンで白鳥と黒鳥の両方を表しています。その色づかいも完全に白と黒に分かれているんじゃなくて、絶妙に白と黒が混じり合うようなデザインになっていますし、胸元の羽の部分にもところどころ黒が交じっていて、表裏一体の白鳥と黒鳥の世界観をコスチュームで見事に表現しているなと思いますね。


 9位はアメリカのポリーナ・エドマンズ選手の「映画『風と共に去りぬ』より」。

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 名作『風と共に去りぬ』のサントラを使用した壮大で華麗なプログラム。衣装は白を基調としていて、決して一目で分かる豪華さはないのですが、よく見ると上半身全体に生地と同系色の細かなビジューが施されていて、気品のある華やかさを演出しています。そしてワンポイントとして目を引くのが蝶々結び風のリボンで、この部分が本物のリボンだとより素朴な感じになると思いますが、これは服と一体化したアップリケになっていてリボン自体がキラキラとしたビジューをあしらっているのでやはり華やかです。また、リボンや服の縁取りは深みのあるグリーンで、映画の主人公スカーレット・オハラがアイルランド系で、アイルランドのナショナルカラーがグリーンという点をしっかり踏まえています。
 プログラムの音楽自体がわりと重々しい部分もあるので、衣装の色も濃い色にすると音楽と相まってより重厚さを漂わせる作品になったと思いますが、白という軽やかな色を選択したことで重厚さと軽快さのバランスをうまく取っているように思います。


 10位はアメリカの長洲未来選手の「映画『華麗なる・ギャツビー』より」。

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 1920年代のアメリカの富裕層の人々の姿を描いた映画『華麗なるギャツビー』。長洲選手のコスチュームはその華麗さ、ゴージャスさ、アメリカらしさというのをよく表わしていますね。
 ベースとなる色は落ち着きのあるベージュですが、衣装の装飾や腕のバングルなどきらめくビジューが多用されていて、色の印象以上の華やかさを感じさせます。衣装は体の線を強調する形・デザインでセクシーさが前面に押し出されていますが、色づかいが淡く柔らかさを感じさせる分、いやらしいセクシーさではなくて上品なセクシーさになっていると思います。
 古き良き時代のアメリカの華々しさ、リッチさを伝える素晴らしい衣装ですね。



 ベストコスチューム15/16、女子フリー部門は以上です。そして15/16シーズンのベストコスチュームシリーズもこれで全て終了となります。フィギュアスケートのシーズンも7月1日から新シーズンとなり、今から選手たちの新プログラム、そしてそれに伴う新コスチュームが楽しみでなりません。来季もプログラムとともに、衣装にも大いに注目していきたいと思います。では。


:記事冒頭の写真はフィギュアスケート誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから、宮原選手の写真、浅田選手の写真、本郷選手の写真、長洲選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、ゴールド選手の写真はマルチメディアサイト「Newscom」から、メイテ選手の写真、木原選手の写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、ワグナー選手の写真、エドマンズ選手の写真は、マルチメディアサイト「Zimbio」から、ソトニコワ選手の写真はフィギュアスケートブログ「FS Gossips」内の記事「Adelina Sotnikova: people love me」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2016-06-23 15:26 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(4)

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 ベストコスチューム15/16、女子ショートプログラム部門です。15/16シーズンに使用された女子のSPの衣装のベスト10を1位から見ていきたいと思います。衣装を選ぶ際のルールはこちらの記事をご覧ください。

*****

 女子ショートプログラム部門第1位は、アメリカのポリーナ・エドマンズ選手の「ピアノソナタ第14番」です。

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 ベートーヴェンの「ピアノソナタ第14番」、いわゆる“月光ソナタ”として知られる名曲を使用したプログラムです。
 衣装は青を基調としたものですが、胸の辺りには緑色も交じっており、上から下に向かって緑から青、さらに濃い青へと絶妙なグラデーションになっています。そのグラデーションの作り方もただ色が薄い方から濃い方へ変化するというのではなく、複雑に色を重ねながら全体的に一体感のある色合いになるように計算されていて、工夫が素晴らしいなと思います。また、胸元のネックレス風のビジューや、上半身全体に施した細かなビジューなど、装飾づかいもちょうど良い華やかさです。
 夜空を想起させる深い青、きらめく星々のようなビジューなど、“月光”のイメージを忠実に反映していて、シックさと華やかさのバランスも、重厚であり優雅でもある音楽の世界観にぴったりで、ため息の出るような美しい衣装ですね。


 2位は日本の宮原知子選手の「ファイヤー・ダンス 『リバーダンス』より」です。

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 アイルランド発の舞台作品『リバーダンス』の中の一曲である「ファイヤー・ダンス」を使用し、フラメンコの要素をふんだんに盛り込んだプログラムとなっています。
 ということで、衣装もスペインらしさ、フラメンコらしさを存分に意識したデザインですね。鮮やかな赤を基調とし、スカートや袖口からレース調の黒い生地が少しだけ覗いています。上半身はレースっぽい作りの蔓草模様の生地でちょっぴり透け感がありセクシーさを感じさせますし、スカートも左腰の方できゅっと布を絞るようなデザインになっていて、短めのスカートからのぞく脚がこちらも大胆な印象で、全体的に大人びた雰囲気を醸し出しています。
 一見奇をてらわずオーソドックスなデザインですが、素材のチョイスの仕方だったりスカートの丈のバランスだったり、細部にまでこだわりの感じられる素晴らしいコスチュームだと思います。


 3位はアメリカのアシュリー・ワグナー選手の「Hip Hip Chin Chin」です。

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 「Hip Hip chin Chin」はドイツのクラブ・デ・ベルーガというジャズ・バンドの楽曲で、ジャズをベースにしつつ、サンバのリズムも織り込まれていて、どこの国の音楽と一言で言えないような魅力のある、ノリノリのダンスナンバーとなっています。
 そんな陽気な雰囲気の音楽ですが、ワグナー選手は黒一色の衣装でシックにまとめています。ワグナー選手がこのプログラムで使用した衣装は2種類あり、今回取り上げたのはシーズン前半で使用したものです。黒のホルターネックのミニスカートドレスで色づかいとしては非常にシンプルですが、服の線に沿うようにあしらわれた大ぶりのビジューや、上半身前面に散りばめられた細かなビジューなど、キラキラと光るビジューが黒い生地に映えてとてもゴージャスです。また、スカートの裾もフリンジにすることでほかの衣装にはないオリジナリティーを演出しています。
 明るいプログラムながらあえてクールな黒を使うことで、プログラムに漂う“大人の世界”のイメージをうまく表現し、そこにビジューやフリンジなどで華や個性をプラスしていて、シンプルながら個性的という相反するイメージを見事に両立させた衣装になっていると思います。


 4位は中国の李子君(リ・ジジュン)選手の「月の光」です。

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 ドビュッシーの代表曲「月の光」を使用したプログラムで、まさに夜空のような群青色を基調としたワンピース姿です。両肩のストラップの太さが異なるアシンメトリーな作りで、左側は細いシルバーのストラップ、右側はヌーディーな肌色の生地と群青色のストラップを組み合わせたデザインになっています。このワンピースのデザインの肝となるのはやはり右肩から胸元にかけての部分で、肌色の生地に左肩のストラップと同じシルバーの縁取りをしたり、群青色やシルバーのビジューをあしらったりしていて、この部分をそのまま群青色の生地だけで作ってしまうと、群青色が暗めの色なだけにずっしりと重い印象になりかねないと思うのですが、肌色の生地でパッと見シースルーっぽい感じにすることで軽やかさが生まれています。
 シックさと華やかさ、重厚さと軽やかさのバランスが美しいコスチュームですね。


 5位はカナダのケイトリン・オズモンド選手の「ばら色の人生」です。

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 シャンソンの定番「ばら色の人生」のシンディ・ローパーバージョンを使用したプログラム。普通ならタイトルに合わせてバラっぽいピンクや赤を選びそうなところですが、そこをあえてグレーという無彩色にしてきたところが新鮮ですね。やはりグレーというのは地味な印象を与えやすいカラーなので難しさもあると思うのですが、この衣装はストラップから胸元にかけてビジューでピンクや白の植物をあしらっていて、そのピンクと白がベースとなるグレーにとてもマッチしていて、色合わせの妙というのが感じられます。グレーという色の美しさを存分に活かした素晴らしいコスチュームだと思います。


 6位はアメリカのグレイシー・ゴールド選手の「エル・チョクロ」です。

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 「エル・チョクロ」はタンゴの名曲で、情熱的な部分もありつつ、哀愁漂う大人びた空気感が印象的な音楽。ゴールド選手の衣装もそれに合わせて黒でクールに仕上げています。ワンピースの形は実にシンプルで、正面から見るとほぼ黒一色ですが、ほかの角度から見るとスカートの裏地だったり左腰の赤いバラの装飾だったり、ところどころに赤がのぞくデザインになっていて、その黒と赤のバランスが絶妙だなと思います。全体的には黒の面積が多いのでシックな印象ですが、効果的に使われている赤がアクセントとなって秘めた情熱のようなものをイメージさせて、プログラムの世界観とぴったりだなと思いますね。


 7位は日本の村上佳菜子選手の「ロクサーヌのタンゴ 映画『ムーラン・ルージュ』より」。

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 フィギュア界でもすでに定番になっている「ロクサーヌのタンゴ」。女子スケーター、男子スケーターともに人気の曲ですが、村上選手は男性ボーカル入りで迫力のあるパワフルなプログラムに仕上げています。
 衣装も女子選手にしては珍しいパンツスタイルで、全身黒一色。腕や背中などベースとなる生地は黒のシースルーで、その上に重厚感のある黒いハイネックを重ね、シンプルなミニスカートに、黒いストッキングを履いて、ほぼ全ての肌を覆っています。非常にシンプルな色づかいですが、トップスの前面に細かなビジューで模様を付けたり、何よりコスチュームの形でオリジナリティーを表現していて、ほかの女子選手にはないカッコいい衣装になっていると思います。


 8位はロシアのエフゲニア・メドベデワ選手の「映画『白夜の調べ』より」。

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 日本とロシアを舞台にした日本映画『白夜の調べ』のサントラを使用したプログラム。しっとりとしたエレガンスなピアノ曲ですが、メドベデワ選手の衣装も落ち着いた色合いのワイン色でシックにまとめています。長袖のシンプルな形のワンピースですが、腕や肩部分はシースルー生地で、胴から下は透け感のない生地と変化がつけられています。また、ビジューの使い方が光っていて、胸からお腹にかけて生地を埋め尽くすように施されたビジューがまるで星空のような美しい絵柄を作り出していて、ワイン色一色の衣装にゴージャスさをプラスしています。露出の少ない衣装で少女らしい清楚さを醸し出しながらも、大人っぽい雰囲気もうまく表現していますね。


 9位はラトビアのアンゲリーナ・クチヴァルスカ選手の「星は光りぬ オペラ「トスカ」より」。

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 大定番のオペラ「トスカ」の中でも有名なアリア「星は光りぬ」に乗せた壮大で重厚なプログラム。コスチュームはタイトルにふさわしい、まさにきらめくイメージを前面に押し出した豪華なデザインです。
 ベースとなる色は鮮やかな紫で、衣装のフォルムとしては長袖ワンピースですが、体の中心や腰に布の切れ目のようなラインが入った独創的な作りです。上半身全体にふんだんにビジューがあしらわれ、首元のジュエリーっぽいデザインの装飾もそうですし、ワンピースを縦断するようなシルバーの曲線など、個性的なデザインが印象的です。また、そのシルバーのラインが複数交差することによって、胸元に菱形模様を作り、その菱形の部分にまた別の色のビジューがあしらわれ……という重層的な色の組み合わせになっていて、これだけ色とりどりだとごちゃごちゃしかねないのですが、ベースとなる紫からそんなに離れていない色合いのビジューを使っているので、それぞれの色がうまく溶け合って、一体化していますね。


 10位はロシアのアデリナ・ソトニコワ選手の「ある恋の物語/ラテン・セレクション」。

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 さまざまなラテンの楽曲を組み合わせたメドレー・プログラム。陽気でノリの良いダンスナンバーとあって衣装も派手なピンクでラテンらしさを表現しています。ピンクの色合いも淡いと優雅で大人しいイメージになりますが、ちょっと紫の入った濃いピンクなので良い意味でチープでキッチュな感じが出ています。また、形としてはオーソドックスなワンピースなのですが、スカートはフリンジでしかもイエローとの2色づかいによってさらに明るい雰囲気になっていますし、上半身の方もところどころ肌色の生地を使うことでシースルーっぽくしていたり、水玉模様をあしらったり、左胸にのみワンポイントでフリンジを付けたりと、そこここにアクセントとなるモチーフを用いていて、全体的にとても賑やかで楽しいコスチュームになっていますね。



 さて、女子ショートプログラムの衣装ベスト10は以上です。次はいよいよベストコスチューム15/16の大トリ、女子フリー部門です。またしばらくお待ちください。


:記事冒頭の写真は、フィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから、エドマンズ選手の写真は、マルチメディアサイト「Zimbio」から、宮原選手の写真、ゴールド選手の写真、メドベデワ選手の写真、ソトニコワ選手の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、ワグナー選手の写真は、スケート情報サイト「icenetwork」が2016年1月13日に配信した記事「2016 U.S. Championships Viewer's Guide」から、李選手の写真、オズモンド選手の写真、村上選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、クチヴァルスカ選手の写真は、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから引用させていただきました。


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by hitsujigusa | 2016-06-16 17:41 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

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 ベストコスチューム15/16、アイスダンスのフリーダンスの衣装のベスト10を見ていきます。ショートダンス部門はこちら、また、衣装を選ぶにあたってのルールはこちらの記事をご覧ください。

*****

 アイスダンスフリーダンス部門第1位は、イタリアのアンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ組の「映画『甘い生活』より/映画『カビリアの夜』より/映画『フェリーニのアマルコルド』より/映画『8 1/2』より」です。

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 プログラムはイタリアを代表する映画監督フェデリコ・フェリーニの作品のサントラを組み合わせたもので、全てこちらもイタリアを代表する作曲家ニーノ・ロータ作曲です。
 プログラムは全体的に明るさや陽気さが印象的なのですが、衣装は男性が主に白、女性が主に黒というモノトーンで統一。明るいプログラムだと衣装も明るい暖色系の赤やオレンジを選びがちだと思うのですが、あえてモノトーンにすることで逆に新鮮味を感じさせます。男性はシンプルな白いシャツ姿で、爽やかな印象。女性はストラップレスの黒いドレスですが、単なる黒一色ではなく細かなビジューを散りばめて華やかさを演出。また、ダイヤモンド風のビジューでベルトマークすることでアクセントを付けていて、いっそうエレガンスな雰囲気を作り出しています。シンプルなデザイン、色づかいながら、目を引く美しさがある素晴らしいコスチュームですね。
 ちなみにカッペリーニ&ラノッテ組はショートダンスでもモノトーンの衣装を使用していて、ショートダンス部門でも第4位として取り上げていますので、ぜひご覧ください。


 2位は中国の王詩玥(ワン・シーユエ)&柳鑫宇(リュー・シンユー)組の「映画『グリーン・デスティニー』より」。

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 中国を舞台にし世界的に大ヒットした映画『グリーン・デスティニー』のサントラを使用したプログラムで、衣装もまさに中国らしい本格的なデザインとなっています。このプログラムで使用された衣装は2種類あり、シーズン前半は女性がチャイナドレス風の濃い青のワンピース、男性がグレーの漢服風の衣装を使用していたのですが、シーズン後半に使用し始めた写真の衣装の方がより現代的に洗練された印象で、素敵だなと思いこちらを選びました。
 女性は前身頃が着物風になっているラベンダー色のワンピースで、お腹の右側に金色や紫色の糸で繊細な刺繍が施されています。他方、男性は鮮やかな青の詰め襟風の上着に黒いパンツといういでたちで、肩は肩パッドっぽい作りとなっていて、この肩部分や腰の帯に施された金色の模様によってゴージャスな雰囲気も醸し出しています。女性も男性も中国らしいデザインや模様を用いながらも、現代のコスチュームとして違和感のないおしゃれさもしっかりあって、トラディショナルかつモダンという素晴らしい衣装だと思います。


 3位はロシアのアレクサンドラ・ステパノワ&イワン・ブキン組の「Rachmaninov's Revenge」です。

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 使用している「Rachmaninov's Revenge」は、イギリスのロックバンド、クイーンのボーカリストとして知られる歌手フレディ・マーキュリーの楽曲です。タイトルのとおりラフマニノフの楽曲をサンプリングしつつ、もちろんボーカルも入っていて、いわゆるクラシカルオーバーといった感じの曲です。
 衣装は男性は黒一色ですが、上半身はシースルー生地で、そこに黒いうねるような曲線が描かれています。女性は淡いピンクのドレスで、胸元が大きく開いてそこだけがベージュ色の異なる生地となっています。スカートは端に行くにつれてピンクが濃くなるグラデーションとなっていて、全体的にフェミニンで清らかな印象を与えています。このプログラムは男性ボーカル入りなので力強さやパワフルさもあるのですが、ベースはラフマニノフなのでラフマニノフらしい優雅さもあり、そういった意味で男性と女性がそれぞれの曲想を表しているように感じますね。


 4位はアメリカのマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組の「ピアノ協奏曲第2番」です。

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 フィギュア界大定番、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」の第2楽章と第3楽章を用いたプログラム。男性は黒を基調とした中に肩から胸にかけて赤い生地が使われている衣装。女性は赤を基調としたワンショルダー型のドレスで、上から下にいくにつれて色が薄くなりスカートの部分はシースルーのピンクとなっています。壮大で激しさもある曲想に赤がよく合っていますし、それでいて女性の衣装は真紅というよりはピンク寄りの赤なので女性的なエレガンスさもあって、プログラムの世界観にぴったりですね。


 5位は日本の平井絵己&マリオン・デ・ラ・アソンション組の「トゥーランドット」です。

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 おなじみの「トゥーランドット」を使用したプログラムで、男女ともにシックな色づかいの衣装で統一しています。男性のデ・ラ・アソンション選手はグレーのトップスに黒のパンツで、トップスは襟ぐりがゆったりとしたドレープ状になっていてエレガンスです。そして女性の平井選手は紫を基調としたオフショルダーのドレス。紫の色合いも一色ではなく濃いめの鮮やかな紫の部分と、にじんだような淡い紫の部分と分かれていることで変化をつけていて、そこから服の端っこに向けて薄くなるグラデーションになっているのが美しいですね。男女ともにシンプルな色づかいではあるのですが、その中にもグラデーションなど繊細な色づかいの工夫がなされているので見た目にも変化があって、音楽にあった深みのある清らかな雰囲気のコスチュームになっていると思います。


 6位はウクライナのアレクサンドラ・ナザロワ&マキシム・ニキーチン組の「幻想曲第3番」です。

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 「幻想曲第3番」はモーツァルト作曲のピアノ曲で、静謐かつ抒情的な旋律が印象的なプログラムとなっています。
 男性は濃いめのグレーのトップスと黒のパンツ姿で、襟ぐりはくしゅっと布を寄せて立体的な作りにしています。女性は淡いブルーのアシンメトリーなデザインのワンピースで、右側が細いストラップ、左側が長袖となっています。長袖も完全に腕を覆うものではなく、布を体に纏わせるようなデザインが軽やかさを演出していて、素材感の柔らかさといい色づかいといい、全体的に軽快さを印象付けます。男性女性ともに、シンプルな音楽にふさわしい華やかさを控えたコスチュームですね。


 7位はフランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組の「Rain In Your Black Eyes/To Build a Home」です。

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 イタリアの作曲家エツィオ・ボッソの楽曲と、イギリスのニュージャズグループ“The Cinematic Orchestra”の楽曲のメドレープログラムで、盛り上がる部分もありますが、激しかったり情熱的だったりというわけではなく、全体的に穏やかな曲想が続くプログラムです。
 なので男女ともに深みのあるネイビーを基調としていて、男性は襟ぐりが丸いトップスで、うっすらと透けるシースルーの向こうに赤がほのかに見えるような作りです。女性はワンショルダー型のワンピースで、上半身はネイビー、スカートは赤という対照的な色づかいが印象的です。上半身はシースルーの生地と透けない生地とが組み合わされていて、一見無造作に生地に穴ぼこが開いたかのようなデザインがモダンな雰囲気を醸し出しています。
 クラシカルな雰囲気もありながら装飾性を極力排し、布地の特性をそのまま生かしたようなデザインの衣装はコンテンポラリーアートのようなイメージも想起させ、クラシックの要素もありつつ現代的な要素も多く含んでいる音楽の世界観にぴったりですね。


 8位はポーランドのナタリア・カリシェク&マクシム・スポディレフ組の「Crystallize」。

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 「Crystallize」はアメリカのヴァイオリニスト、リンジー・スターリングの楽曲です。なのでもちろんヴァイオリン曲で、ヴァイオリンが奏でる硬質な音色が特徴的なプログラムなのですが、ポップスっぽい要素もあって、スタンダードなクラシック曲とは少し趣きが異なります。
 衣装は男女ともにモノトーンで、男性は黒の上下、女性はブルーを帯びたグレーの長袖ワンピースです。どちらの衣装も細かなビジューが散りばめられていて、“クリスタル”という名の音楽のイメージを忠実に反映したデザインとなっています。色づかいは地味ですが、ふんだんに施されたビジューがスケーターの動きに合わせてきらめいて、それがいかにも“クリスタル”らしいですね。音楽自体が静かな曲調だったりオーソドックスなクラシックだったりすると、この衣装は地味過ぎるかもしれませんが、「Crystallize」はかなりアップテンポでノリの良い曲なので、これくらい地味でもいいのかなと思いますね。


 9位はアメリカのマディソン・ハベル&ザカリー・ドノヒュー組の「トロンのためのアダージョ」です。

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 「トロンのためのアダージョ」はフランスのエレクトロ・デュオ“ダフト・パンク”が映画『トロン:レガシー』のサントラとして手がけた楽曲です。ダフト・パンクはジャンルとしてはハウスやエレクトロニックとされますが、この曲は映画音楽なのでクラシックの色合いが濃く、壮大で深遠な曲想です。
 衣装はシーズン中2種類使用され、シーズン序盤から四大陸選手権までは女性のハベル選手は白い衣装を用いていましたが、世界選手権で写真の衣装に変更しました。この写真ではちょっと分かりにくいかもしれませんが、上半身はマットな質感の黒一色で、スカートが前は短く、後ろが膝くらいまであるアシンメトリーな長さとなっています。また、色も黒からグレー、白というようにグラデーションになっていて、光と闇が混じり合うような重層性を感じさせる凝ったデザインです。一方、男性は黒一色でこちらはシーズン序盤から変わらず、“シンプル・イズ・ベスト”で女性を引き立てています。ダークで重厚なプログラムの世界観によく合った衣装だと思います。


 10位はロシアのヴィクトリア・シニツィナ&ニキータ・カツァラポフ組の「これからも僕はいるよ」。

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 イタリアのテノール歌手アンドレア・ボチェッリさんの「これからも僕はいるよ」(原題をそのままカタカナにした「イオ・チ・サロ」という曲名でもおなじみですね)は、15/16シーズンをもって引退した小塚崇彦さんや、14/15シーズンをもって引退したペアの龐清(パン・チン)&佟健(トン・ジャン)組も使用していて、フィギュア界でも徐々に定番化しつつあるクラシカルオーバーのボーカル曲です。
 女性のシニツィナ選手はロイヤルブルーのノースリーブドレスで、胸の下をベルト風の装飾で締めるデザインとなっています。男性のカツァラポフ選手は上下黒の衣装で、トップスには少し薄めの黒でシンメトリーな模様が描かれています。重厚でありソフトでもある男性ボーカル入りのプログラムで、女性がやわらかさを、男性が重厚さを想起させて、男女でうまくバランスを取っているように感じますね。



 アイスダンスフリーダンス部門は以上です。1か月ほど前から始まったベストコスチューム15/16シリーズですが、次の女子でいよいよ最後です。記事アップまでまたしばらくお待ちください。


:記事冒頭の写真は、フィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから、カッペリーニ&ラノッテ組の写真、平井&デ・ラ・アソンション組の写真、シニツィナ&カツァラポフ組の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、王&柳組の写真、ナザロワ&ニキーチン組の写真、カリシェク&スポディレフ組の写真、ハベル&ドノヒュー組の写真は、アイスダンス情報サイト「ice-dance.com」から、ステパノワ&ブキン組の写真は、アメリカのファッションデザイナー、ニック・ヴェレオス氏の公式サイトが2016年4月5日に配信した記事「ICE STYLE.....ISU World Figure Skating Championships 2016: Figure Skating Costumes Recap PAIRS and ICE DANCE!」から、チョック&ベイツ組の写真は、アメリカの新聞「The San Diego Union-Tribune」の公式サイトが2015年11月7日に配信した記事「Asada wins Cup of China in comeback at Grand Prix series」から、パパダキス&シゼロン組の写真は、フィギュアスケート情報サイト「GOLDEN SKATE」が2016年4月1日に配信した記事「Papadakis and Cizeron defend World title」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2016-06-08 20:18 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)

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 15/16シーズンのコスチュームのベスト10を選ぶベストコスチューム15/16。今回はアイスダンスのショートダンス部門です。衣装を選ぶ際のルールについてはこちらの記事の冒頭をご覧ください。

*****

 第1位は、アメリカのマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組の「モア/アンチェインド・メロディ」です。

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 15/16シーズンのショートダンスの課題は、パターンダンスが「ラベンスバーガーワルツ」、クリエイティブパートが「ワルツと、フォックストロットかマーチかポルカ」という指定でしたが、チョック&ベイツ組はイタリアの歌手アンドレア・ボチェッリのカバーによるスタンダードナンバー「モア」(元々はイタリア映画『世界残酷物語』のテーマ曲)と、映画『ゴースト/ニューヨークの幻』の主題歌として知られる「アンチェインド・メロディ」をクラシカルボーカルグループのイル・ディーヴォがカバーしたバージョンとを組み合わせたプログラムを用いました。
 全体的にゆったりとしてロマンチックな空気感が特徴的なプログラムですが、チョック&ベイツ組はこのプログラムで2種類の衣装を使用。女性のチョック選手の衣装はシーズンを通して1着でしたが、男性のベイツ選手の衣装はシーズン前半はシャツもタキシードも黒一色というコーディネート、シーズン後半は上掲の写真の、白いシャツに黒いタキシードという衣装を用いました。どちらも素敵なのですが、個人的にプログラムの雰囲気により合っていると思った方を今回は選びました。
 女性の方は肩を大胆に露わにしたロイヤルブルーのストラップレスドレス。胸と腰に色とりどりのビジューがあしらわれ、2枚重ねのスカートの下に着た方は鮮やかなグリーンで、ブルーと美しいグラデーションを作り出しています。男性ボーカルによって高らかに歌い上げられる恋をテーマにした作品と、深みのある青のフェミニンなドレス、そしてスタンダードで紳士的な男性のタキシード姿がよくマッチしていて、素晴らしいと思います。


 2位はイタリアのアンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ組の「オペレッタ『メリー・ウィドウ』より」。

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 タイトルの“メリー・ウィドウ”とは陽気な未亡人という意味ですが、その名のとおり明るく陽気な空気感が印象的なプログラムとなっています。シーズン前半は女性が濃いピンクのドレス、男性が黒地に金ボタンがついた衣装を使用していましたが、シーズン後半は今回選んだ衣装に変更しました。
 男性のラノッテ選手は白いシャツにグレーのネクタイ、黒いベストという軽快でシンプルなコーディネート。女性のカッペリーニ選手は白い五分袖のドレス姿。ドレスは生地と同色の繊細な刺繍が施され、首元の大ぶりのネックレスや腰の細いベルト(背中側で蝶々結びになっている)は黒でまとめられ、モノトーンの色づかいがシンプルではありますがアイスダンスの衣装の中では珍しく、新鮮味を感じさせます。シーズン前半で使用していた衣装は女性はかなり派手めで、男性も凝ったデザインのものだったのですが、プログラム自体が華やかで明るい分、衣装はこれくらいシンプルな作りで色味を抑えた方がバランスが取れていいのかなと思いますね。


 3位はロシアのアンナ・ヤノフスカヤ&セルゲイ・モズゴフ組の「Ribellione 映画『シチリア!シチリア!』より/映画『My Sweet and Tender Beast』より」。

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 マーチとワルツのリズムを用い、優雅ながらどこか勇ましさやダイナミックさも感じさせるプログラムで、コスチュームは女性の衣装に2種類あり、スケートアメリカで使用された白いドレスと、エリック・ボンパール杯以降に用いられたワイン色のドレスとがありましたが、今回は後者を選びました。
 女性はネックレス風の装飾を施した首元の詰まったノースリーブドレス。衣装全体には装飾は一切なく、模様もないですが、ビロードのような光沢が美しく、色合いや素材感をシンプルに活かした衣装ですね。そして男性の方はボタン周りにフリルの付いた白いシャツに、黒いアスコットタイ、中に着たグレーのウェストコートは花柄っぽい模様入りで、上着はシックな黒で引き締めています。女性の方がわりと簡素なので、男性の方がむしろ装飾的で、大きめのアスコットタイやウェストコートの模様がアクセントを付けています。男女のバランスがしっかり考えられた衣装だと思います。


 4位はフィンランドのセシリア・トルン&ユッシヴィレ・パルタネン組の「The World(With You)/Witchcraft」。

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 フランク・シナトラの歌を組み合わせたプログラム。エレガンスな大人の世界観が特徴的です。男性の衣装は白いシャツに白い蝶ネクタイ、白いウェストコート、黒いタキシードというクラシカルな正装。女性は淡いピンクのドレスで、細かなビジューによって斜めにラインが描かれていて、柔らかな雰囲気を醸し出しています。そのままパーティーに出かけられそうな優雅で気品溢れるコスチュームですね。


 5位はイギリスのペニー・クームズ&ニコラス・バックランド組の「オペレッタ『こうもり』より」。

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 フィギュア界の定番、ヨハン・シュトラウス2世のオペレッタ『こうもり』を使用した華やかなプログラム。男性の方は白いシャツに白い蝶ネクタイ、白いカマーベルトと黒いタキシードというオーソドックスなスタイル。一方女性はオレンジとピンクの中間の明るい色合いのドレス。胸元や腰には金色やピンクの花のアップリケが施されていて、ベースとなっているピンクオレンジと近いけれどまったく同じではない色合いが絶妙です。音楽の明るさをシンプルに表現した衣装ですね。


 6位はロシアのアレクサンドラ・ステパノワ&イワン・ブキン組の「映画『スタントマン』より」。

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 1980年公開のアメリカ映画『スタントマン』のサントラを使用していて、上述したカップルたちのプログラムとは多少趣きが異なります。
 男性の方はシルクっぽい光沢感のある白いシャツにブラウンのベスト、同系色のパンツというカジュアルなスタイル。女性はオレンジのストラップレスドレスで、デコルテ部分にふんだんにビジューがあしらわれています。プログラムはアメリカ映画らしい明るさやポップさに溢れており、女性のまばゆい衣装はもちろん、男性の衣装がシャツ+ベストというコーディネートなのも、アメリカらしいイメージを反映してのことだと思いますね。


 7位はカナダのケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組の「美しき青きドナウ/アンネン・ポルカ」です。

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 ワルツ王、ヨハン・シュトラウス2世の代表曲「美しく青きドナウ」と「アンネン・ポルカ」を組み合わせたプログラム。男性は白いシャツに白い蝶ネクタイ、白いウェストコート、黒いタキシードという定番スタイルですが、それに加え首からメダルを下げ、右肩からワイン色の太いサッシュをたすき掛けするという、正式に近い勲章の装着の仕方をしていて、西洋の高貴な男性の雰囲気をうまく演出しています。女性は淡いピンクのハイネックドレスで、真珠が上半身全体に贅沢にあしらわれています。ただ真珠を散りばめるのではなく、ネックレスを複数重ねたようなシンメトリーな配置の仕方になっていて、バランスがよく考えられています。男女ともにトラディショナルなワルツを演じるにふさわしいヨーロッパのクラシカルな服装をうまく再現していて、細部まで工夫が凝らされた素晴らしい衣装ですね。


 8位はロシアのエカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組の「仮面舞踏会/モンタビュー家とキャピュレット家 バレエ『ロメオとジュリエット』より」。

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 ハチャトゥリアンの「仮面舞踏会」とプロコフィエフのバレエ「ロミオとジュリエット」を組み合わせたプログラムで、前半はワルツ、後半はマーチとなっています。ボブロワ&ソロビエフ組が使用した衣装には2パターンあり、シーズン前半は女性の衣装がクリーム色のドレスでしたが、今回は欧州選手権で使用された方を選びました。
 男性の方は白いシャツに黒いアスコットタイ、黒い上着とパンツで、全体的に黒の面積が多くなっています。女性は群青色のドレス姿で、植物の枝葉のようなシルバーの模様と、首元のシルバーのネックレスがアクセントとなっています。男女ともに濃いめの色合いの衣装となっていますが、重厚なプログラムの雰囲気と衣装の色味が合っていて良いですね。


 9位はアメリカのアナスタシア・カヌーシオ&コリン・マクマヌス組の「バレエ『シンデレラ』より」。

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 ロシアの音楽家プロコフィエフのバレエ『シンデレラ』を使用したプログラム。衣装は男女ともに水色が基調となっていますが、女性は上半身に金糸で伝統的な模様の刺繍が施され、クラシカルな雰囲気を醸し出しています。男性は水色のシャツに水色の上着、さらにその上から黒いベストを重ねるという変わったスタイルとなっています。女性も男性も金色がアクセント的に使われていますが、特に男性は刺繍や金ボタンなど印象的に用いられていて、ファンタジーである「シンデレラ」の世界観を見事に表す華やかさもあり、可愛らしさもありというコスチュームになっていて、素敵だなと思います。


 10位はスロバキアのフェデリカ・テスタ&ルカーシュ・チェーレイ組の「Waltz In Swing Time 映画『有頂天時代』より/誰にも奪えぬこの想い 映画『踊らん哉』より/映画『ザッツ・エンターテインメント』より」。

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 テスタ&チェーレイ組は15/16シーズンは2つのプログラムを滑りましたが、今回選んだのはシーズン前半のプログラムの方です。アメリカのミュージカル映画のサントラのメドレーで、ミュージカル映画全盛期の陽気さに溢れています。
 衣装はそれと比べると比較的シックで、男性は白シャツ&白蝶ネクタイ&黒タキシードというこの記事の中でもたびたび登場してきたおなじみのクラシックスタイル。女性は淡いブルーのストラップの細いドレスで、体の中心に向かって布がキュッと寄せられたギャザーが繊細な印象を作り出しています。プログラムの音楽が華やかなので、もう少し衣装にも華やかさがあってもいいのかなという気もしますが、この写真では隠れていますがブルーのスカートの下にピンクのスカートがのぞく作りとなっていて、そのあたりで女性らしい華や可愛らしさを表現しています。二人ともシックですが、王道のコスチュームならではの美しさがあるコスチュームですね。



 ベストコスチューム15/16、アイスダンスのショートダンス部門は以上です。15/16シーズンのSDの課題が“ラベンスバーガーワルツ”とあって、男性の衣装は全体的に似通ったものが多くバリエーションには欠けましたが、それぞれ本格的な作りでワルツならではの正統派の良さを感じられる衣装が多く見られました。女性の衣装もクラシカルなものが多々あり、うっとりさせられる衣装がたくさんありましたね。
 次はフリーダンス部門に続きます。


:記事冒頭の写真は、フィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから、チョック&ベイツ組の写真、カッペリーニ&ラノッテ組の写真、ボブロワ&ソロビエフ組の写真は、アイスダンス情報サイト「ice-dance.com」から、ヤノフスカヤ&モズゴフ組の写真、トルン&パルタネン組の写真、クームズ&バックランド組の写真、ステパノワ&ブキン組の写真、カヌーシオ&マクマヌス組の写真、テスタ&チェーレイ組の写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、ウィーバー&ポジェ組の写真はカナダのニュース専門チャンネル「CTV News」の公式サイトが2016年1月22日に配信した記事「Weaver and Poje poised to capture another Canadian ice dance title」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2016-06-02 21:37 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)