凍りついた香り (幻冬舎文庫)



【あらすじ】
 ある日、フリーライターの涼子の元に恋人で調香師の弘之が無水エタノールを飲んで自殺したという連絡が入る。弘之が死んで初めて、弟と母親が存在すること、スケートが上手いこと、数学の天才だったことなど、彼の隠された過去を涼子は知る。しかし、肝心の自殺した理由に関しては何一つわからない。弘之が高校生の頃、プラハで開催された数学コンテストに参加していたことを知った涼子は、弘之のことをもっと深く知るため、自ら死を選んだ手掛かりを探るため、プラハを訪れるが――。


 まだまだ夏の名残りが漂う今日この頃ですが、9月も最終盤となり、いよいよ秋本番の10月を迎えようとしています。その10月の最初の日、10月1日はさまざまな事物の記念日となっていますが、日本フレグランス協会が定めた香水の日でもあります。ということで、香水の日を記念して、香水が重要なモチーフとなる小川洋子さんの小説『凍りついた香り』を紹介します。
 『凍りついた香り』は恋人の自殺を発端に、主人公の女性が恋人の過去を訪ね、恋人が生きていた頃は知ることができなかった秘密に迫る物語です。小川さんの長編小説としてはさほど多くない恋愛を主題とした作品ですが、にもかかわらず生きている恋人との恋愛模様を描いたものではなく、死んだ恋人の足跡を追う、いわば死から始まる物語という点が、“失われしもの”を描く作家・小川洋子らしいところです。

 物語の語り手となるのはフリーライターの仕事をしている女性・涼子ですが、物語全編に渡って最も色濃く存在感を示しているのは凉子の自殺した恋人・弘之です。弘之は凉子や弘之の弟・彰、兄弟の母親など、人々の記憶や語られる思い出の中にしか登場しません。もちろん弘之本人の気持ちや想いが描写されることもありません。ですが、だからこそ、弘之を巡る人々の言葉から、弘之を失った悲しみ、なぜ自殺したのかという苦悩、それでも抑えきれない愛情が溢れんばかりに滲み出ていて、弘之という一人の人間が生きていたという実感、死んでしまったという取り返しのつかない空洞を、ありありと浮き上がらせています。
 そんな弘之を形作るキーワードとして登場するいくつかのモチーフが、物語の進行の上でも、彩りを添えるという点においても、重要な役割を果たします。
 最も重要なキーワードは何といってもタイトルにもなっている“香り”です。
 まず特筆すべきことは弘之が調香師であるということ。調香師という職業の人に、日常生活の中で私たちはなかなかお目にかかれません。普段どういった形で仕事をしているのか、業務内容はどういったものになるのか、調香師に関する多くの事実は雲に隠れています。“香り”そのものも実に不思議なものです。嗅覚は視覚や聴覚などと同等に大切な感覚の一つですが、そのわりに視覚や聴覚などと比べると扱いとしては低いように思われます。たとえば視覚なら失明は言うまでもなく、少し見えにくくなるだけでも人生を左右しかねない重大事ですし、聴覚にしても音が聞こえなくなる、聞こえにくくなるというのはやはり日常生活を脅かす出来事でしょう。ですが、嗅覚の場合、鼻が詰まったりなんかしてにおいが感じづらくなるなんてことは誰でも一度は経験することですし、多少鼻が利かないからといって大騒ぎする人もいないでしょう。そんなふうに嗅覚に関すること、においに鈍感であるとか敏感であるということは何となく軽視されているというか、その人を形成する上で大して重要視されない要素と言えます。そうした“香り”という非常に曖昧なものを専門的に取り扱う弘之という人物も、ミステリアスでつかみどころのない人間であるという雰囲気が、ほかの職業であるよりもいっそう強く感じられるのではないでしょうか。
 そして弘之を語る上でもう一つ欠かせないキーワードが、“数学”です。小川洋子作品で数学といって誰もが真っ先に思い浮かべるのは、『博士の愛した数式』でしょう。『凍りついた香り』はそれより5年ほど前の作品ですが、すでに『博士の愛した数式』の“博士”の面影が弘之からうかがえます。
 しかし、“博士”が年老いても数学を愛し数学と向き合い続けたのに対し、弘之は幼少時からたまたま天才的な数学の才能を持っていたために、母親に半ば強引にありとあらゆる数学の大会に出場させられたという隠したい過去を抱え、にもかかわらず日常のなにげない場面で突発的に数式が思い浮かんでしまうというジレンマもあり、“数学”は弘之にとって苦々しい存在として描かれます。
 一方で、自ら職業として選択した“香り”に関しても、異常なまでににおいに敏感でこだわりを持つがゆえに、涼子へのプレゼントとして自ら調香した香水“記憶の泉”を贈るといったポジティブな方向に働くこともあれば、キッチンの調味料のにおいが気になってそれぞれの位置を並び替えようとするといった強迫観念的な方向に働くこともあり、“香り”は弘之にとって必ずしも幸福を与えてくれるだけの存在とはなっていません。
 作中で弘之について病気や障害などの言及はありませんが、特定の物事に過剰にこだわる姿からはアスペルガー症候群的な印象を受けます。才能をうまく活かせれば自らの強みとすることもできる一方で、その度合いが極端すぎると心の負担となり自らを縛りつける鎖にもなる。“香り”と“数学”は単なる物語の小道具ではなく、弘之の死の鍵を握るモチーフとして、物語のそこここに色濃く影を落とします。

 ここまで読まれた方はどれだけ暗い話かと思われるかもしれませんが、確かに“死”を描いた小説なので決して明るい話ではないですが、かといって絶望を描いた話でもありません。むしろ主人公にとっての“救済”の物語です。
 弘之に関する描写の多さに比べ、主人公である涼子についての描写はそう多くありません(涼子自身が語り手なのだから当たり前ですが)。また、弘之に対する心情描写が主で、涼子が自分自身に対してどう思うとかどう感じるといった描写もあまりありません。涼子にとって弘之を失った世界も自分自身も手触りを失い、弘之に関すること以外は意味を持たないからです。ゆえに、何をしても何を見ても弘之と関連付けてしまうという場面がたびたび描かれます。


 橋に敷き詰められた石はどれも黒ずみ、すり減っていた。この石のどれかを、弘之も踏んだに違いない。プラハに来てからずっと、私はそうした思いから逃れることができないでいた。このドアノブをルーキーも握ったかもしれない。このテラスでコーヒーを飲みながら、広場の鳩を眺めたかもしれない。この通りで、カーブしてゆくトラムのブレーキ音を聞いたかもしれない。


 大切な人を突然失った虚無感が、決して声高ではなく、染み渡るような切なさを伴ったリアルな言葉で書かれ、ひしひしと迫ってきます。
 小川さんは著書『物語の役割』の中で、“物語”についてこう述べています。


 たとえば、非常に受け入れがたい困難な現実にぶつかったとき、人間はほとんど無意識のうちに自分の心の形に合うようにその現実をいろいろ変形させ、どうにかしてその現実を受け入れようとする。もうそこで一つの物語を作っているわけです。


 涼子もまた、弘之の死を受け入れ、乗り越え、現実を生きていくために、自分なりの物語を無意識に作ろうとします。そして、かつて弘之が訪れ、弘之にとって契機となる時間を過ごした街、プラハを訪れ、弘之の足跡をたどります。
 恋人の自殺の理由を探るストーリーというと、ショッキングで生々しい内容を想像される方もいるやもしれませんが、この作品は謎解き的要素もしっかり盛り込みつつ、あくまで一人の人間が自ら死を選ぶまでの心の軌跡、そして残された人々がその死を受け入れるまでの心の軌跡に寄り添った物語となっています。その一環として、涼子のロードムービーになっていることが大きなポイントかと思います。
 ロードムービーというと小説にしても映画にしてもいろんな名作がありますが、大半はハッピーというよりも、何かしらの問題を抱えて旅するという話が多いような気がします。実際に自分の足で未知の場所を旅するという体の動きの変化が、心の動きの変化にも繋がるのでしょうか。プラハを旅する涼子の心にも徐々に変化が訪れますが、読み手からすると美しいプラハの風景描写がこの小説の一つの見どころにもなっていて引きつけられます。


 突然彼が外を指差した。私ははっとして窓ガラスに顔を寄せた。いつの間にかヴルダヴァ川が姿をあらわしていた。幅の広い静かな流れが闇に溶け込み、その前方にはカレル橋が横たわり、さらにそれを見下ろすように、丘の頂きにプラハ城がそびえていた。
 橋と城は特別な光で照らされていた。派手な照明ではないのに、塔に施されたこまやかな飾りや、欄干に並ぶ聖像の輪郭がくっきりと浮かび上がって見えた。そこだけが闇も届かない宙の深いところから、すくい取られてきた風景のようだった。



 同じヨーロッパでも、パリでもなければロンドンでもなくなぜプラハなのか。その確かな理由は定かではありませんが、プラハという街が持つ特性――街の大きさ(大きすぎない)、人口(多すぎない)、知名度(それなりに有名)、歴史や文化(パリやロンドンに引けを取らない)、芸術性(音楽の都)――がこの物語にはちょうど好いサイズ感であり手触りであり温度だったのでしょう。特に印象的なのは静けさ。特別プラハの街が静かだとか描写されてるわけではないですが、中世から続く古い街並みから醸し出される空気感と、恋人の死と向き合う主人公の心の空虚さとがぴたりと合わさって、“死”を描く物語にふさわしい静けさが全てを包み込んでいるように思います。

 物語の最終盤、涼子は弘之が参加した数学コンテストにまつわる一つの真実にたどり着きますが、だからといって弘之の自殺の理由が暴かれるわけでも、涼子が劇的に救われるわけでもありません。しかし、涼子は自分の足でプラハを巡り、弘之の過去に触れたことで、ようやく弘之の死を実感として受け入れます。まさにそれが、小川さんの云う、“自分の物語を作る”ということで、その哀しく、切実であり、美しくもある道のりを描いたこの小説は、現実の“死”と向き合わなければならない全ての人に当てはまる普遍的な作品なんじゃないかと思います。


:記事内の引用文の青字の部分は、小川洋子著『凍りついた香り』(幻冬舎、2001年8月)から、緑字の部分は、小川洋子著『物語の役割』(筑摩書房、2007年2月)から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
小川洋子『妊娠カレンダー』―感覚で味わう“雨” 2013年6月29日
小川洋子『アンネ・フランクの記憶』―アウシュヴィッツと零戦 2013年7月25日
小川洋子『博士の愛した数式』―フィクションと現実の邂逅 2014年3月14日
家族を描いた小説・私的10撰 2014年6月5日  記事内で小川洋子氏の『ミーナの行進』を取り上げています。
『それでも三月は、また』―2011年の記憶 2016年3月9日  記事内で取り上げている短編集に小川洋子氏の短編「夜泣き帽子」が収録されています。


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by hitsujigusa | 2016-09-30 02:27 | 小説 | Trackback | Comments(0)

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 フィギュアスケーターたちの新プログラム情報についてお届けするこのシリーズももう5弾目。グランプリシリーズの開幕まで残り約1か月と迫り、チャレンジャーシリーズなどの小規模の国際大会でのプログラムのお目見えも増えてきています。そんな選手たちのプログラムについて今回もつれづれなるままに書いていきます。


 まずは世界選手権2連覇中のスペインのエース、ハビエル・フェルナンデス選手のプログラムについて。
 SPは昨季からの持ち越しの「マラゲーニャ」、フリーは「エルヴィス・プレスリー・メドレー」を演じるようです。
 ショートはフェルナンデス選手の代表作といっても過言ではない「マラゲーニャ」を続けるということで、個人的には好きなプログラムなのでうれしい気持ちもありますが、一方で「マラゲーニャ」は昨シーズンである程度行くところまで行ったプログラムというか、完成し切ったプログラムなのかなという気もするので、違うプログラムも見たかったなーという気持ちもないことはないですね。ただ、2シーズン続けるからにはさらなるブラッシュアップを目指すでしょうし、昨季との違いもあるでしょうから、そのあたりを期待したいですね。
 フリーは往年の大スター、エルヴィス・プレスリーのメドレーだそうですが、詳しい使用曲はわかりません。フェルナンデス選手は今までも70年代に活躍したアメリカのロックバンド、ラム・ジャムの「Black Betty」だったり、50年代から60年代にかけて放送されたアメリカのドラマ『ピーター・ガン』のサントラだったり、1955年公開のアメリカ映画『野郎どもと女たち』のサントラだったり、いわゆる往年のアメリカの雰囲気やアメリカらしさを表現したようなプログラムというのを複数演じているので、「エルヴィス・プレスリー・メドレー」もその系統のように感じます。フェルナンデス選手はもちろん男の色気もありますし、他方で軽快さや陽気さもあって、そういった部分ではエルヴィス・プレスリーのイメージとも被るかもしれません。フェルナンデス選手がプレスリーをどう演じるのか、注目したいと思います。


 続いては前世界女王、ロシアのエリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手です。

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 SPはモーツァルトの「ピアノ協奏曲第23番」、フリーは「映画『クレオパトラ』より」です。
 今まではエキゾチック系のプログラムが多かったトゥクタミシェワ選手ですが、ショートはモーツァルトという古典派、その中でも大々的なというよりは静謐で優雅な音楽ですから、これまでのトゥクタミシェワ選手のイメージを良い意味で裏切りますね。
 フリーは1963年公開のアメリカ映画『クレオパトラ』のサントラからで、こちらはトゥクタミシェワ選手らしい華やかでゴージャスなプログラムになりそうですね。トゥクタミシェワ選手のエキゾチックで艶のある雰囲気とクレオパトラのイメージが何となく合いそうで、エキゾチックな表現が巧い彼女の得意分野と言えるのではないでしょうか。
 そんなトゥクタミシェワ選手といえば現役選手では浅田真央選手と並ぶ数少ない貴重なトリプルアクセルジャンパーですが、今シーズンはどういった形で3アクセルを扱っていくのかはまだ未知数な部分が大きいですね。インタビュー記事によるとトゥクタミシェワ選手自身は、「今季はよりリスクを少なくする」と語っていて、3アクセルの使い方に関しては慎重さがうかがえます。コンディション次第というのもあるでしょうが、ぜひあの素晴らしい3アクセルをまた見せてほしいですね。


 ロシア選手権3連覇中のマキシム・コフトゥン選手は、SPは「L-O-V-E/シング・シング・シング」、フリーは「ルールド・バイ・シークレシー」だそうです。
 ショートはジャズのスタンダード・ナンバーのメドレー、フリーはイギリスのバンド、ミューズの楽曲。クラシカルな印象が強いコフトゥン選手ですが、昨シーズンはショートでロック音楽を使用するなど表現の幅を広げる試みをしていて、彼のイメージも変わりつつあります。ジャズは彼にとっては初挑戦ですし、洒落た感じや粋な感じをどういうふうに彼のスタイルで表現するのか興味深いですね。また、フリーはミューズの楽曲ですが、コフトゥン選手は2季前にもミューズの楽曲で滑っているので初挑戦というわけではありません。ですが、2季前のフリー「エクソジェネシス交響曲」はロックですがクラシックの要素を大いに取り入れた作品だったので、今回はそれとはまた違った空気感、世界観になるのではないかと思います。コーチを変更したことも含め、コフトゥン選手の新たな一面が見られることを期待したいですね。


 シニア2年目の成長株、アレクサンドル・ペトロフ選手は、ショートプログラムが「火祭りの踊り バレエ「恋は魔術師」より」、フリーが「フランク・シナトラ・セレクション」となっています。
 国際スケート連盟のプロフィールではSPは「The Dance of Fire」となっていますが、これは浅田真央選手がショートとフリーで使う予定の「Ritual Dance」と同じ曲ですね。さほど使用頻度の高くない曲なのでこんなふうに被るのは珍しいですが、プログラムのコンセプトがそれぞれ違いますし、そもそもスケーターの持ち味も性別の違い以上に差異がありますから、同じ音楽でもどれだけ変わるのかというところが注目ポイントですね。
 フリーはフランク・シナトラのセレクションなのでもちろん歌詞入りでしょう。まだ17歳と若いペトロフ選手がフランク・シナトラを表現するというのは思い切ったチャレンジでもあるように思うのですが、端整な顔立ちでスケーティングも正統派なので、シナトラの美しいボーカルと相性は良さそうな気がします。


 今季からシニアに参戦する新星、セラフィマ・サハノヴィッチ選手は、SPが「Goodbye 映画『HACHI 約束の犬』より」、フリーが「The Man with the Harmonica」というマニアックなチョイス。
 ショートは日本人なら誰もが知る忠犬ハチ公の物語をアメリカに置き換えた映画からの楽曲。このあたりの映画から曲をピックアップするというのは珍しいですね。そしてフリーは“Apollo440(=アポロ・フォー・フォーティー)”というイギリスのロックバンドの曲。シニア1年目にかかわらず通好みな選曲をしてくるところがやはりロシアの選手らしいなと思います。


 カナダの前チャンピオン、ガブリエル・デールマン選手はSPが「オペラ『エロディアード』より」、フリーは「ラプソディー・イン・ブルー」です。
 ショートは「タイスの瞑想曲」で有名なフランスの作曲家ジュール・マスネのオペラ作品。ですが、日本ではたぶんほとんど上演機会もないでしょうし、フィギュア界でも使われることのほぼない作品なので、どんな世界観か想像がつかなくて新鮮ですね。
 対照的にフリーは誰もが知るガーシュウィンの代表曲で、躍動感に満ち、ダイナミックな演技が魅力的なデールマン選手によく合いそうだなと感じます。


 アイスダンスのパイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組は、SDが「Oh What a Night for Dancing/Disco Inferno」、FDが「Con Buena Onda」
 SDは前者がアメリカの歌手バリー・ホワイトの楽曲、後者がアメリカのディスコ・バンド、ザ・トランプスの代表曲。後者はかの有名なディスコ映画『サタデー・ナイト・フィーバー』でも使われたようで、いかにもディスコらしい派手でノリのいい歌ですね。ただ、とても有名な曲でカバーも多くなされているので、どのバージョンが実際に用いられているのかは不明です。
 FDはタンゴ。あまり有名なタンゴではないようですが、動画でギレス&ポワリエ組の演技を拝見すると、タンゴなので情熱的な感じはもちろんありつつ、全体的にわりとゆったりとしたテンポで、しっとりと抒情的なメロディですね。


 同じくカナダのペア、リューボフィ・イリュシェチキナ&ディラン・モスコヴィッチ組は、SPが「タンゴ・ジェラシー」、フリーが「When You Say You Love Me」だそうです。
 ショートはデンマークの作曲家ヤコブ・ゲーゼが作曲したコンチネンタル・タンゴの名曲、フリーはアメリカの歌手ジョシュ・グローバンの楽曲。ショートはタイトルのとおり、“ジェラシー”を感じさせる情熱的な大人の世界を想起させる曲想で、男女のペアならではの雰囲気づくりが楽しみだなと思いますね。


 次はイスラエルの実力者オレクシイ・ビシェンコ選手。SPは「Chambermaid Swing」、フリーが「オペラ『道化師』より」であることがわかっています。
 ショートの曲はオーストリアのDJ兼音楽プロデューサー、パロヴ・ステラーさんの楽曲で、カナダのケヴィン・レイノルズ選手が11/12、12/13シーズンのショートで使用した曲でもあります。DJ兼音楽プロデューサーの作曲する音楽というとエレクトロで近未来的なイメージがありますが、この曲はレトロでちょっと昔懐かしいようなメロディが特徴的。
 一方フリーは重厚なイタリアのオペラで、なんと村上大介選手、アメリカのグラント・ホフスタイン選手のフリーと同じ選曲です。有名なオペラではありますが、フィギュア界ではそうしょっちゅう用いられるほどの大定番というわけでもないので、珍しい現象ですね。それぞれを見比べられるのもフィギュアの醍醐味だと思うので、楽しみにしたいと思います。


 アメリカのジェイソン・ブラウン選手はすでに2試合を消化していて、当初はSPは「Appassionata」を使用するとしていたのですが、実際のショートは「ライティングズ・オン・ザ・ウォール」を演じています。「Appassionata」も素晴らしかったので残念なのですが、「ライティングズ・オン・ザ・ウォール」はイギリスの歌手サム・スミスの楽曲で、2015年に公開された“007シリーズ”の最新作『007 スペクター』の主題歌であり、ブラウン選手にとっては初の歌詞入りでもあって、楽しみな選曲だなと思います。


 2016年世界選手権3位のドイツのペア、アリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組はSPが「That Man」、フリーが「Lighthouse」です。
 SPはオランダのジャズ歌手カロ・エメラルドの楽曲。カロ・エメラルドという歌手について私は初見だったのですが、調べてみるとオランダではデビュー直後から売れまくりの超有名人のようですね。「That Man」はデビューアルバムの幕開けを飾る曲で、彼女の作品の中でも特に知られたもののようです。ジャズですがレトロなポップっぽい世界観で、こういったかわいらしい音楽でダイナミックな技を繰り出しながら演技する場面を想像すると、ある種のギャップがあっておもしろいかもしれませんね。
 そしてフリーはカナダのロックバンド、パトリック・ワトソン(ボーカルの名でありバンド名)の楽曲。ロックバンドではあるのですが、この歌はボーカリストのハイトーンボイスとピアノが奏でる旋律がセンチメンタルで抒情的な空気感を醸し出していて、また、ヴァイオリンやトランペットなどの楽器も加わっていて、クラシックっぽい壮大さもあり、ロックとクラシックのクロスオーバーな感じですね。SPはジャズとポップスが合わさった感じですが、フリーはロックとクラシックで、全体的に見て今季のサフチェンコ&マッソ組のプログラムは音楽のジャンルにとらわれていない選曲という印象で楽しみですね。


 アイスダンスの元世界王者、イタリアのアンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ組は、SDが「Cry For Me/ Choo Choo Boogie」、FDが「チャップリン・メドレー」です。
 ショートダンスは2曲の組み合わせで、前者はミュージカル映画『ジャージー・ボーイズ』の劇中曲、後者はいわゆるポピュラー・ソングですね。前半から中盤にかけては哀愁漂うブルースのリズムでゆったりと、テンポが急展開を迎える終盤はスウィングのリズムでノリノリに踊るプログラムです。ベテランのカップルならではの深みのある表現はもちろんのこと、陽気で明るいダンスにも長けたカッペリーニ&ラノッテ組の強みを活かした構成になっていますね。
 フリーはチャップリンのメドレーということで、やはりカッペリーニ&ラノッテ組らしい感じがします。チャップリン独特のどことなく哀愁漂うユーモラスさが彼らの持ち味とぴったりですね。



 さて、今回はここまで。第6弾をやるかやらないかはまだわかりませんが、ひとまずジュニアのグランプリシリーズが終わりましたら一つの記事にまとめたいと思います。また、チャレンジャーシリーズについても、何かしらの記事を書きたいと思いますので、しばらくお待ちください。では。


:フェルナンデス選手の写真はマルチメディアサイト「Zimbio」から、トゥクタミシェワ選手の写真はフィギュアスケート情報サイト「Absolute Skating」から引用させていただきました。

【参考リンク】
Rejuvenated Tuktamisheva skates clean, takes lead ネーベルホルン杯に関する記事で、記事内にトゥクタミシェワ選手のインタビューが掲載されています。

【ブログ内関連記事】
浅田真央選手、16/17シーズンのプログラムを発表&新プログラム情報① 2016年6月27日
宮原知子選手、16/17シーズンのプログラムを発表&新プログラム情報② 2016年7月23日
各選手の16/17シーズンの新プログラムについて・その③ 2016年8月19日
羽生結弦選手、16/17シーズンのプログラムを発表&新プログラム情報④ 2016年9月15日
各選手の16/17シーズンの新プログラムについて・その⑥ 2016年10月9日


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by hitsujigusa | 2016-09-24 22:30 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 選手たちの16/17シーズンの新プログラムについてお届けするこのシリーズ。今回は第4弾です。現在のフィギュア界はジュニアのグランプリシリーズ真っ最中で、シニアの方でもグランプリシリーズのワンランク下に位置付けられているチャレンジャーシリーズも始まっていて、本格的なシーズン開幕を前に選手たちも動き始めています。そんな中で判明してきた各選手のプログラム情報を書いていきたいと思います。


 まずは日本男子のエース、羽生結弦選手についてです。
 羽生選手は9月13日、練習拠点としているカナダのトロントで報道陣に練習を公開し、新ショートプログラムと新フリーを発表しました。SPは「レッツ・ゴー・クレイジー」、フリーは「Hope & Legacy」です。
 ショートは今年4月に亡くなったばかりのアメリカの歌手プリンスが1984年に発表したヒット曲。プリンス自身が主演した映画『パープル・レイン』のサントラに収録されている曲でもあり、いわばプリンスの代表曲の一つといっても過言ではないのでしょう。私は今までこの曲を知らなかったのですが、実際に聴いてみると羽生選手のイメージとは全く正反対の歌ですね。羽生選手は以前にもブルース・ロックの「パリの散歩道」で滑ったことはありますが、「レッツ・ゴー・クレイジー」はそれとは全然違った雰囲気のロックですから、良い意味で想像を裏切られて期待が募ります。
 フリーは久石譲さんの楽曲を使用したプログラムで、プログラムのタイトルとしては「Hope & Legacy」となっていますが、これは曲名ではなくあくまでプログラム名です。実際に使用される曲としては「View Of Silence」など複数の曲を繋ぎ合わせるようです。作曲者が日本の作曲家ということで日本らしさも織り交ぜられつつ、正統派のクラシックの趣きもしっかりあるプログラムなのかなと想像します。羽生選手の言葉によると、「(14/15、15/16シーズンのSP)「バラード」で培った音の取り方と、(15/16シーズンのフリー)「SEIMEI」で学んだ表現をさらにグレードアップ」させたものになるようで、フリーでのクラシックというのは久しぶりなので楽しみですね。
 また、羽生選手はショート、フリーともに新技4ループを取り入れることも明かし、世界最高得点を叩き出した昨季を上回る、とどまるところを知らない向上心をうかがわせました。唯一怪我だけが心配の種ではありますが、ここまで来たら体に気を付けつつ思いっきり突き進んでほしいですね。


 次は今季シニアデビューとなる樋口新葉選手。

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 樋口選手はチャレンジャーシリーズ第1戦のロンバルディアトロフィーに出場し、そこで新プログラムをお披露目。SPは「映画『ラ・カリファ』より」、フリーは「シェヘラザード」です。
 ショートの映画『ラ・カリファ』は1970年公開のイタリア映画で、映画音楽界の巨匠エンニオ・モリコーネが音楽を担当しています。樋口選手のプログラムをさっそく拝見しましたが、ピアノと管弦楽による華麗でありながら哀愁漂うメロディで、聞き覚えのある曲だったので以前にも誰か選手が使用していたかもしれませんが残念ながら覚えがありません。それはともかくとして樋口選手はシーズン初戦とは思えないほどこの音楽を自分のものにしていて、元気で躍動感溢れる樋口選手とはまた違った雰囲気が醸し出されていて今後がさらに楽しみになりましたね。
 そしてフリーは定番の「シェヘラザード」。さまざまな名スケーターが滑ってきたこの音楽でどう自分の個性を発揮していくか、どう自分のカラーを出していくか、楽しみにしたいと思います。なお、ロンバルディアトロフィーについてはもうしばらくあとに別の記事で書きたいと思いますので、それまでお待ちください。


 一方、村上佳菜子選手も同じくロンバルディアトロフィーに出場しました。フリーに関してはアイスショーで「トスカ」をお披露目済みでしたが、この大会でショートの「カルメン」も披露。定番中の定番である「カルメン」ですが、村上選手の演じる「カルメン」は女性ボーカル入りの軽快なプログラムで、よく見聞きする「カルメン」とは少し違う変化球の「カルメン」という感じがしました。女性的な仕草や振り付けも多く盛り込まれていて、大人のスケーターとなった村上選手が魔性の女カルメンをどう表現していくのか楽しみです。


 ここからは海外選手のプログラム情報。
 まずはアメリカの若手ポリーナ・エドマンズ選手です。

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 SPは「Palladio」、フリーは「サラ・ブライトマン・メドレー」でどちらもルディ・ガリンドさん振り付けだそうです。
 ショートの「palladio」はニューエイジのミュージシャンであるカール・ジェンキンスさんの楽曲。エドマンズ選手への取材記事によると、モダンダンスやモダンバレエの要素が盛り込まれたプログラムになるようで、若手の中でも類まれな多彩な表現力を持つエドマンズ選手にさらに新たな魅力がプラスされることになりそうですね。
 フリーは世界的ソプラノ歌手サラ・ブライトマンのメドレーで、曲は「Bilitis-Gènèrique」と「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」を使用するとのこと。サラ・ブライトマンの美しくもダイナミックな歌声と、透明感がありながら力強さもあるエドマンズ選手のスケートがどんな化学反応を見せるのか、期待大ですね。


 続いては今季シニアデビュー、全米3位のネイサン・チェン選手です。

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 SPはバレエ「海賊」、フリーは「だったん人の踊り」になるようです。
 チェン選手といえば踊りの巧さで知られていますが、ショートもフリーも思いっきり正統派のクラシックにしてきたというのが興味深いですね。昨季のショートは「マイケル・ジャクソン・メドレー」でノリノリで踊りまくったわけですが、今回の「海賊」はそれとは対極にあるようなバレエ音楽。ですが、チェン選手のこれまでのプログラムを振り返るとクラシックも数を多くこなしてきているので、やはり基礎的なダンスの素養があるからこそ、「マイケル・ジャクソン」もバレエ音楽も同じように滑りこなせるのかなという感じがしますね。「海賊」は比較的陽気でアップテンポな曲でもありますから、そういった意味でもチェン選手の“踊り”をアピールしやすい選曲かもしれません。そしてフリーの「だったん人の踊り」はロシアの作曲家ボロディンの代表曲。スラブらしいエキゾチックで優雅な曲想が美しい楽曲で、「海賊」とはまたジャンルの違った“踊り”が見られそうですね。


 同じくアメリカ男子のロス・マイナー選手は、ショート、フリーともに昨季と同じ「New York State of Mind」「クイーン・メドレー」を持ち越すようです。プログラムの内容としてアレンジが加えられているのか、加えられていないかなどはまだわかりません。


 シニア2年目となるカレン・チェン選手はSPが「映画『黄昏』より」、フリーが「タンゴ・ジェラシー」であることを明かしています。ショートは老夫婦を描いた映画のサントラなので、チェン選手の年齢にしては大人びたテーマ性を持った音楽かなという気がします。フリーの「タンゴ・ジェラシー」も大人の女性のタンゴというイメージなので、シニア2年目で表現面でのステップアップを目指しているのでしょうね。2年目の進化を楽しみにしたいと思います。


 そして、フリーのみ演目を発表済みだったベテランのアシュリー・ワグナー選手は、インスタグラムに動画付きでショートプログラムについても発表。イギリスのポップスグループ、ユーリズミックスの「Sweet Dreams (Are Made of This)」であることがわかりました。動画はごく短いものでどういったプログラムになるのかはわかりませんが、毎シーズン新たな表情を見せてくれるワグナー選手なので、新フリーとともに今季もとても個性的なプログラムになりそうですね。


 アイスダンスの全米王者であるマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組は、SDが「That's Life」、FDが「Evolution」であることがわかっています。
 SDはアメリカのポピュラーソングで、使用するのはその中で最も有名なフランク・シナトラバージョンのようです。今季のショートダンスの課題はブルースがメインなので、この曲をブルース風に滑るということですね。
 FDは「Evolution」というタイトルと、アーティストは“various artists”=さまざまなアーティストと表記されているのみなので、具体的な使用曲だったり内容は不明です。元々はクラシカルな印象が強いシブタニ兄妹ですが、昨季のフリー「フィックス・ユー」で新境地を開拓し、今季もその延長線上でさらなるチャレンジに邁進しているというのが選曲からも伝わってきますね。


 ペアの前全米チャンピオン、アレクサ・シメカ&クリス・クニーリム組はSPが「Come What May 映画『ムーラン・ルージュ』より」、フリーが「アンチェインド・メロディ ミュージカル『ゴースト』より」です。
 SPはフィギュア界定番の『ムーラン・ルージュ』からの楽曲で、リチャード・ドーンブッシュ選手が昨季のショートで使用していましたね。フリーは世界的に大ヒットした映画の主題歌ですが、映画からの使用ではなくて映画を基にしたミュージカル版からの選曲なので、映画版とはちょっと違うのでしょうか。


 アイスダンス全米3位の実力者、マディソン・ハベル&ザカリー・ドノヒュー組はSDが「Feeling Good/ヒップホップメドレー」、FDが「ラブ・メドレー」であることがわかっています。
 ショートに関しては往年のアメリカのR&Bやジャズの歌手ニーナ・シモンの歌と、さまざまなアーティストによるヒップホップのメドレーの組み合わせだそうです。今季のショートダンスの課題はパターンダンスが“ミッドナイトブルース”、クリエイティブパートがブルースとスウィングもしくはヒップホップからの選択となっているので、まさにそれに合致する選曲ですが、個人的にはハベル&ドノヒュー組は上品でクラシカルなイメージの強いカップルなので、ヒップホップというのが意外でしたね。フリーは「ラブ・メドレー」というタイトルのみで、詳しい使用曲などは分かっていません。


 カナダの元世界チャンピオン、パトリック・チャン選手は、すでにフリーの演目のみ発表していましたが、SPに関しても「ビートルズ・メドレー」であることが判明しています。「ビートルズ・メドレー」の中身は詳細には分かりませんが、チャン選手は昨シーズンのエキシビションで「ビートルズ・メドレー」を滑っているので、それをアレンジしたものを用いるのかもしれません。


 世界選手権2連覇中の圧倒的なペア王者、メ―ガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組はインタビュー記事などで、SPが「Killer」、フリーが「水に流して」であると明かしています。
 SPはイギリスのソウル歌手シールの楽曲。ソウルミュージックというのはフィギュア界では頻繁に用いられるジャンルではないので、新鮮で楽しみですね。一方、対照的なのがフリーでこちらはシャンソン。シャンソンもそんなに使用頻度が高いというわけではないですし、特にペアでは珍しいんじゃないかなという気がします。ただ、デュハメル&ラドフォード組は毎シーズン定番ではない挑戦的な選曲をしているという印象があるので、ある意味彼ららしいとも思いますね。


 アイスダンスの元世界王者でバンクーバー五輪金メダリストのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組はカナダのスケート団体「スケートカナダ」の公式You Tubeの動画で、SDが「キス/パープル・レイン/5 Women」、FDが「Latch」であると語りました。
 SDは羽生選手と同じプリンスの楽曲で、偶然の一致なのでしょうが、プリンスが先日亡くなったばかりというのが影響しているのでしょうか。FDはイギリスのハウスミュージックのグループ、ディスクロージャーが2012年にリリースした楽曲。フィギュア界ではアメリカのジェレミー・アボット選手が14/15シーズンのエキシビションで演じていますし、かなりヒットした曲なので有名ですね。
 久方ぶりに競技に戻ってくるヴァーチュー&モイア組があえてクラシックなど王道のものではなく、定番を外してきたのがおもしろいなと思いますし、競技から離れているあいだアイスショーなどで競技とは別の経験を積み重ねてきた2人がどんな新たな表情を見せてくれるのか、注目ですね。


 同じくカナダのアイスダンサー、ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組も「スケートカナダ」の公式You Tubeの動画に出演し新プログラムについて話し、SDが「Black Velvet/Swingin'」、FDが「アランフェス協奏曲」であると説明。
 ショートはカントリーがテーマと言い、ブルースパートで使う「Black Velvet」はカナダのロック歌手アランナ・マイルズが、スウィングパートで使う「Swingin'」はアメリカのカントリー歌手リアン・ライムスが歌っています。フリーはフィギュア界大定番ですね。男性のポジェ選手は男の色気ムンムンでこういった情熱的な音楽にぴったりですし、女性のウィーバー選手も上品さの中に力強さがあって、「アランフェス協奏曲」での二人のユニゾンが楽しみです。


 イタリアのベテラン、ロベルタ・ロデギエーロ選手はロンバルディアトロフィーに出場し、SP「ブエノスアイレスのマリア」、フリー「Non Dimenticar/L-O-V-E/スマイル/イッツ・オンリー・ア・ペーパー・ムーン」を披露。
 ショートはピアソラのタンゴですね。ベテランスケーターならではの味を出せる選曲だなと感じます。フリーはアメリカの歌手ナタリー・コールが父であるナット・キング・コールの曲をカバーしたアルバム『アンフォゲッタブル』に収録された曲のメドレー。動画でロデギエーロ選手の演技を拝見しましたが、少し曲のつぎはぎ感が目立って一つの作品としてまとまりに欠けているように感じました。3曲以上の楽曲を組み合わせたプログラムの場合、いかに全体的に調和をもたらすかというのがやはりポイントになると思うので、そのあたりの完成度を期待したいですね。


 韓国の朴小宴(パク・ソヨン)選手はすでにフィリピンのマニラで行われたアジア杯、ロンバルディアトロフィーと精力的に2つの試合をこなしていて、SP「映画『黄金の腕』より」とフリー「アランフェス協奏曲」を披露しています。
 ショートは1955年公開のアメリカ映画のサントラで、いわゆる“カッコいい系”のプログラムになっていますね。朴選手の昨季のショート「黒いオルフェ」と雰囲気は違うものの、クールさだったりシャープさという共通点で延長線上にある感じがします。フリーはウィーバー&ポジェ組のところでも書いたようにフィギュア界定番の曲で、朴選手は情熱的な演技もうまい選手なのでハマると代表作になりそうだなと思います。


 同じく韓国の期待の新星であるチェ・ダビン選手はアジア杯に出場して演技を披露していて、ショートは「ある恋の物語/Qué rico el mambo」、フリーは「映画『ドクトル・ジバゴ』より」であることがわかっています。
 ショートの曲は日本のフィギュアファンには高橋大輔さんが演じたことでも馴染み深いラテン音楽ですが、さまざまあるラテン系の曲の中でもわりと濃厚度の高い方かなと思うので、シニア本格参戦1年目のチェ選手にとっては背伸びした感じの選曲ですね。一方でフリーも大人びた曲調ではありますが、ジュニアでもしばしば使われている曲なので、比較的スローペースの曲調で滑りやすいかもしれません。



 とりあえずこの記事はここで終了しますが、まだまだ情報が入ってきているので、今後も新プログラム情報をお伝えしていきます。では。


:羽生選手の写真、樋口選手の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、エドマンズ選手の写真はマルチメディアサイト「Zimbio」から、チェン選手の写真は、フィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから引用させていただきました。

【参考リンク】
Edmunds focused on musicality of new programs エドマンズ選手の新プログラムについて報じた記事です。
Chen hopes to put injury bug behind him in 2016-17 ネイサン・チェン選手の近況について報じた記事です。
Wagner, Gold hit Champs Camp in different places 記事の中にカレン・チェン選手の新プログラムについての言及があります。
New short program a ‘release’ for Duhamel and Radford デュハメル&ラドフォード組の近況について報じた記事です。

【ブログ内関連記事】
浅田真央選手、16/17シーズンのプログラムを発表&新プログラム情報① 2016年6月27日
宮原知子選手、16/17シーズンのプログラムを発表&新プログラム情報② 2016年7月23日
各選手の16/17シーズンの新プログラムについて・その③ 2016年8月19日
各選手の16/17シーズンの新プログラムについて・その⑤ 2016年9月24日
各選手の16/17シーズンの新プログラムについて・その⑥ 2016年10月9日


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by hitsujigusa | 2016-09-15 01:12 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 フィギュアスケーター衣装コレクション第13弾。今回取り上げるのはロシアのベテランスケーター、アリョーナ・レオノワ選手です。
 レオノワ選手は1990年生まれの現在25歳。日本の浅田真央選手やカナダのパトリック・チャン選手、引退された韓国の金妍兒(キム・ヨナ)さんなどと同い年の、いわゆる黄金世代の一人ですね。現在の最強ロシア女子軍団の一角をなす選手ですが、ロシア女子が今のように世界を席巻する前、まだ日本女子やアメリカ女子に押されていた時代からロシア女子を引っ張る存在として活躍し続けてきました。最近は10代の若い選手たちに押され気味で、なかなか以前のように存在感を発揮できてはいませんが、数少ない20代半ば過ぎのベテラン選手として、円熟味を増した演技を披露し続けてくれています。そんな彼女の衣装を、振り返っていきます。

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by hitsujigusa | 2016-09-03 00:32 | フィギュアスケート(衣装関連) | Trackback | Comments(0)