c0309082_17583977.jpg


 スケートアメリカ2016、男子とアイスダンスについてお伝えします。
 男子の金メダリストとなったのは日本の宇野昌磨選手。驚異的な高難度のプログラムをまとめパーソナルベストでの優勝となりました。2位はジェイソン・ブラウン選手、3位はアダム・リッポン選手と、地元アメリカの選手2人が実力を発揮し表彰台に乗りました。
 アイスダンスは全米王者のマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組が実力どおりの演技で貫録の優勝を果たしています。

ISU GP 2016 Progressive Skate America この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 優勝はGPファイナル2015の銅メダリスト、宇野昌磨選手です!

c0309082_18101517.jpg

 SPは「ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジー 映画『ラヴェンダーの咲く庭で』より」。2種類の4回転を組み込んだ高難度の構成で挑み、まずは新たな代名詞となった4フリップから、こらえながらの着氷ではあったもののしっかり回り切って着氷。続く4トゥループ+3トゥループ、ファーストジャンプはきれいに下りますがセカンドジャンプで回転が足りずあえなく転倒となります。2つのスピンはクリアにレベル4でまとめると、後半のジャンプは得意の3アクセルでしたが、こちらは着氷で少しバランスを崩します。ですが、終盤はヴァイオリンの抒情的な旋律に乗って優雅なステップシークエンスを披露し、評価の高いスピンで演技を締めくくりました。得点は89.15点で僅差の首位に立ちました。

c0309082_14480640.jpg

 フリーは「ブエノスアイレス午前零時/ロコへのバラード」のピアソラメドレー。冒頭はショート同様4フリップ、これをショートよりも完璧な回転とランディングで決め、1.43点の加点を得ます。続く4トゥループ、3ループは難なくさらりと成功させ、前半は圧巻の内容となります。スピンとステップシークエンスを挟んだ後半、まずは前日失敗した3アクセルから3トゥループへ繋げる高難度の連続ジャンプ、パーフェクトな跳躍で2.43点の高加点。そして勝負の4トゥループ+2トゥループも見事に決め、自身初のフリー3本の4回転成功を達成。続いて若干苦手としている3ルッツもクリーンに着氷。次のジャンプは3アクセル+1ループ+3フリップというオリジナルのコンビネーションジャンプでしたが、3アクセルで転倒しここは単独に。しかし直後の3サルコウですぐに立て直すと、終盤はシャウトするような激しい女性ボーカルと調和した情熱的な滑りで会場を沸かせ、演技後は唯一のジャンプミスを悔しがるそぶりも見せつつ、満足感を漂わせました。得点は自己ベストまで0.13点と迫るハイスコアをマークし1位、トータルではパーソナルベストでもちろん1位となり、GP2勝目を飾りました(昨年のフランス大会での優勝はテロ事件の影響によりSPの結果が最終結果となったので、ショート、フリー通しての優勝は今回が初めてとなります)。
 ショートは全てのジャンプで減点される内容ではあったものの、演技自体は体がよく動いていてフィジカル的にも精神的にも充実した様子をうかがわせた宇野選手。そこから一転、フリー直前の6分間練習では4フリップがことごとく決まらず、普通ならそこで不安を抱えて半信半疑のまま本番に臨んでしまうところですが、自分にとってポジティブとはいえない状況でもまるでスイッチを切り替えるように気持ちを切り替えられてしまう心の強靭さが、現在の宇野選手の最大の武器ですね。もちろん表現面でも昨シーズン以上の進化が感じられ、特にフリーではピアソラのタンゴ独特のリズムで進む前半、激しく叫ぶようなハスキーな女性ボーカルの後半と、複雑な演じ分けが必要とされるプログラムのリズムや間(ま)をしっかりとらえられていて、今後はさらにブラッシュアップされるでしょうからますます楽しみが募ります。
 今大会は時差のことも考慮して早めに現地入りしたことが調子の良さに繋がったのだと思いますが、今後は必ずしもベストコンディションではない時も出てくるかもしれません。そういう場合にこの高難度のプログラムをいかに滑り切るか、次のロステレコム杯ではそういったところにも注目して見ていきたいと思います。スケートアメリカ優勝、おめでとうございました。


 銀メダルを獲得したのはアメリカのジェイソン・ブラウン選手です。

c0309082_15313766.jpg

 SPは「ライティングズ・オン・ザ・ウォール」。冒頭は今季からショートでも跳ぶようになった4トゥループ、回転は十分でしたが転倒となり大きく減点されます。しかし、直後の3アクセルはお手本のような美しい跳躍とランディングで加点2。後半の3+3もクリーンに下り、終盤のステップシークエンスでは男子ショート唯一のレベル4を獲得。中盤のスピンで回転が足りず無得点となる珍しいミスはありましたが、それでも高いクオリティーのエレメンツと全選手中最高評価となった演技構成点でパーソナルベストに近い得点をマークし、3位と好発進しました。
 フリーは昨季からの持ち越しである「愛の香気 映画『ピアノ・レッスン』より」。冒頭は前日転倒した4トゥループ、これをしっかり片足で着氷し成功かと思われましたが判定はアンダーローテーション(軽度の回転不足)で惜しくも初成功とはならず。しかし続く3アクセル+2トゥループを成功させ、ショートで取りこぼしがあった足替えキャメルスピン、ステップシークエンスとどちらも1点以上の加点を得て、前半は上々の出来。6つのジャンプ要素を固めた後半、まずは単独の3アクセルをパーフェクトに成功。スピンを挟んで、3ルッツ、3+3、2アクセルと次々にクリーンに着氷(3+3はファーストジャンプの3フリップの踏み切りのエッジが不正確とされわずかに減点)。さらに終盤、コレオシークエンスから3ループ、3ルッツ+1ループ+3サルコウとたたみかけるように美しいジャンプを相次いで成功させ、フィニッシュしたブラウン選手は満面に笑みを浮かべました。得点は自己ベストとなる182.63点でフリー2位、トータルスコアでも自己ベストで2位と、3年連続でこの大会のメダルを獲得しました。
 本当に言葉で表せられないくらいショートもフリーも美しく素晴らしい演技でしたね。ショートは転倒こそありましたが、サム・スミスの透き通るような歌声とブラウン選手のしなやかな体づかいがピタリとハマっていて引き込まれましたし、それ以上にフリーでは4回転も含め目立ったミスのない最初から最後まで流れの途切れない演技でブラウン選手の特徴であるつなぎの密度の濃さを存分に堪能することができ、これこそがフィギュアスケートなんだと改めて感じさせられました。もちろん勝負事なので現在の男子フィギュア界において4回転は必須で、その中ではブラウン選手のショート、フリー合わせて4トゥループ2本というのは決して際立って難しい構成ではありませんが、見ている側からすると、4回転を何本も跳んだり難しい4回転を跳んだりすれば凄いとは思いますし興奮はしますが、それだけでは感動したり心に深く染み入ったりということはないので、ジャンプの難易度に関係なく、ブラウン選手の演技は心の琴線に触れるような演技でしたし、今シーズンの忘れられないワンシーンになると思います。
 今回は残念ながら4トゥループは決まりませんでしたが、あともう少しというところまで来ていると思いますし、今の時点でこれだけ1つ1つのエレメンツの質が高く、加点も多く、濃密なプログラムに、完璧な4回転が加わったらどうなるんだろうと、今から期待してしまいます。ブラウン選手の次戦はNHK杯なのでかなり間が空きますが、うまく調整してベストコンディションで臨んでほしいと思います。


 銅メダリストとなったのは全米王者のアダム・リッポン選手です。

c0309082_16391953.jpg

 SPは「Let Me Think About It」。今季から男子選手の袖なし衣装が解禁されたということで、さっそくノースリーブの斬新なコスチュームで臨んだリッポン選手。SPは4回転を回避し、まずは3+3を確実に成功。続く3アクセルも完璧に決めて加点1.29の高評価。後半に組み込んだ3ルッツは両手を上げる“リッポン・ルッツ”で観客を沸かせます。ノリノリのダンスナンバーに合わせ、時にセクシーに、特にパワフルに滑り切り、満足そうな表情を浮かべました。得点はパーソナルベストまであとわずかの87.32点で2位につけます。
 フリーは「Arrival of the Birds 映画『The Crimson Wing: Mystery of the Flamingos』より/O」。冒頭は近年チャレンジしていた4ルッツではなく、より難度の低い4トゥループに挑戦し、回り切ってはいたものの転倒となります。しかし、直後の3+3、3サルコウはクリーンに下りてすぐに挽回。後半に入ると勢いはますます加速し、3アクセルからの連続ジャンプ、単独の3アクセル、3+2+2、3ループ、そして代名詞の3ルッツと、全てのジャンプを予定どおりに、しかもパーフェクトに着氷。演技後は納得した表情で一つ頷き、観客の拍手に応えました。得点は自己ベストに迫る174.11点でフリー3位、総合も3位で表彰台をしっかり確保しました。
 上述したブラウン選手も素晴らしかったですが、リッポン選手も同じくらいミスの少ない演技で魅せられましたね。昨季と比較してのリッポン選手の変化として、まず挙げるべきは4ルッツではなく4トゥループに挑んだことでしょうか。リッポン選手の4トゥループ挑戦は2013年のNHK杯以来ということで、やはり平昌五輪を見据える上で、昨季からの熾烈な4回転戦争状態が彼にも少なからず影響を与えたのではないかと思いますが、4ルッツを諦めたわけではなく、シーズン後半には4ルッツも入れる可能性をほのめかしています。4回転に関してはリッポン選手はクリーンなものを成功させたことはほとんどないので、4回転を確実なエレメンツにするために、まずは4トゥループで地ならしということなのかもしれません。
 また、今大会からの変化としてはプログラムの変更も挙げられます。9月のUSインターナショナル、10月初旬のジャパンオープンでは「Bloodstream」という音楽で滑っていましたが、短期間に思い切って全く別のプログラムにチェンジ。フラミンゴを描いたドキュメンタリー映画のサントラと昨シーズンからのショーナンバー「O」とのメドレーで、衣装もショーで使用したものをそのまま用いています。前のプログラムで2試合戦ってみてしっくりこなかったのもあるかもしれませんが(インタビュー記事によると特にコーチの方がそう感じていたようですね)、それ以上にアイスショーで「O」に手応えを感じていたからこその思い切った決断なのでしょうね。そうした思い入れの深さが、今大会の演技からも滲み出ていたように感じました。
 リッポン選手の次戦はフランス杯。そちらでもリッポン選手らしい演技を楽しみにしています。


 4位となったのはロシアの大ベテラン、セルゲイ・ボロノフ選手。

c0309082_17580552.jpg

 SPは「映画『私が、生きる肌』より」。冒頭は得点源の4トゥループでしたが、回転は十分だったものの転倒となります。しかし、後半の3アクセル、3ループ+3トゥループはクリーンに決め、また、しばしば取りこぼすことも多いスピンも全てレベル4を獲得。ミスを最小限に抑え、78.68点で5位発進します。
 フリーはミューズの「エクソジェネシス交響曲第3部」。まずはショートで転倒に終わった4トゥループを完璧に下り、加点2の高評価を得ます。さらに3アクセル+2トゥループを成功させると、続く4トゥループからの連続ジャンプが3+3となったものの、ジャンプとしてはきれいなものにまとめて序盤は上々の内容。中盤から終盤にかけても単独の3アクセル、3ルッツ、3+2+2など、全てのジャンプをミスらしいミスなく着氷。演技を終えたボロノフ選手は控えめながらも何度もうなずき、充実感をうかがわせました。得点はパーソナルベストに迫る166.60点でフリーも5位、総合では4位となりました。
 昨季はロシア選手権で表彰台を逃すなど不完全燃焼のシーズンとなったボロノフ選手。今季は初戦のオンドレイネペラメモリアルで優勝して好スタートを切り、そこからさらに状態を上げて今大会に臨めたのかなという印象ですね。ショートで転倒した4トゥループ含め、全体的にジャンプは好調という感じで、ボロノフ選手のジャンプはしばしば成功しても質としては低いものもままあるのですが、今回は決まったジャンプ全てが美しかったです。ジャンプが決まれば演技としても余裕が生まれると思いますから、今後はさらにプログラムのブラッシュアップ、エレメンツ以外の部分の強化も期待したいですね。


 5位は世界選手権2016の銅メダリスト、中国の金博洋(ジン・ボーヤン)選手です。

c0309082_18350916.jpg

 SPは「スパイダーマンのテーマ」。まずは代名詞の4ルッツ+3トゥループのコンビネーションジャンプからでしたが、4ルッツで転倒してしまい単独になります。さらに3アクセルではステップアウト、後半の4トゥループでも回転こそ十分なものの転倒という金選手らしからぬジャンプが続きます。演技面ではユニークなプログラムを生き生きと軽快に演じ切りましたが、ジャンプのミスが響き、得点は72.93点で8位とまさかの順位に沈みます。
 フリーは「映画『道』より」。まずは前日失敗した4ルッツ、今度はこれを完璧に決め好調な滑り出しを見せると、続く4サルコウは着氷で乱れつつも踏ん張って最小限のミスに抑え、3アクセル+1ループ+3サルコウもクリーンではないものの成功。後半はまず1本目の4トゥループが回転不足で転倒とはなったものの、直後の2本目の4トゥループには2トゥループを付けてしっかり連続ジャンプに。その後のジャンプでもポロポロとミスがある中でも何とか耐えて大きなミスにはせず、演技を終えた金選手は安堵したように破顔しました。得点は172.15点でフリー4位、総合5位と順位を上げました。
 金選手らしくないジャンプのミスが散見され、年齢的にまだ身長が伸びている可能性もあるのでその影響かなとも思いましたが、それでもフリーは2本の4回転を綺麗に決めていてやはり凄いなと感じさせられました。ただ、それ以上に印象的だったのは表現面での成長で、特にSPは“スパイダーマン”という難しい役どころをまだ粗さは目立つものの精一杯演じていて、身体能力の高い彼だからこそ表現できる映画さながらのダイナミックさやキレキレな動きが印象に残りましたね。金選手はジャンプばかりが注目されがちですが、昨シーズンのエキシビションでスーパーボールを使った演技をしたりと、エンターテイナーとしての才能も大いにあって、SPはそうした彼の気質が満載のプログラムなように思います。フリーは名作映画『道』で、頭をかく振り付けの場面ではバンクーバーの時の高橋大輔さんを思い起こさせもしましたが、金選手の方はより喜劇色の濃いプログラムになっていて、まだ表現としては雑な感じもありましたが、やはりエンターテイナーとしての性質を活かせるプログラムになっているのではないでしょうか。
 今回はジャンプがあまりハマらず残念でしたが、次戦の中国杯ではジャンプ含め、金選手らしい演技が見られることを願っています。


 6位はカナダの若手ナム・グエン選手です。

c0309082_21384416.jpg

 SPは「Love Me or Leave Me」。冒頭は高難度の4サルコウ+3トゥループから、これを完璧に決めて確実に加点を得ると、3アクセルもクリーンに着氷。後半の3ルッツも問題なく下ります。後半のスピンで回転数が足りず無得点となる場面はあったものの、演技全体としてはグエン選手の本領を十分発揮し、得点は79.62点でパーソナルベスト、4位と好発進します。
 フリーは「パリのアメリカ人」。まずは4サルコウ、着氷で若干詰まり加点は伸びなかったもののきっちり下ります。次の3アクセル、3サルコウと相次いで成功させ、ほぼ完璧な前半。後半も3アクセル+3トゥループ、3+2+2、3+2など全てのジャンプを予定どおりに着氷。フィニッシュしたグエン選手は嬉しそうに天井を見上げました。得点は159.64点でフリー7位、総合6位で大会を終えました。
 フリーの後半グループは好演技続出となりましたが、その流れを最初に作りだしたのはグエン選手でした。シニア2年目の昨シーズンは成長期による影響もあってかなりジャンプに苦労していましたが、今大会のジャンプを見る限りある程度本来のジャンプが戻ってきたのかなという感じですね。あとはジャンプもスピンも加点が抑えめなので、ただエレメンツをこなすだけではなくより加点を積み重ねるための工夫、クオリティーの向上が必要なのかなと感じます。プログラム的にはショートもフリーもグエン選手の明るさ、体の軽やかさを活かした雰囲気のものになっていて、演技構成点でもさらなる積み重ねが期待できるのではないかなと思いますね。



 さて、ここからはアイスダンス。

c0309082_00153741.jpg


 優勝は全米チャンピオンのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組。SDはGP初戦とあってかステップのレベルが2にとどまるシーンもありましたが、そうはいってもハイレベルな演技でパーソナルベストに迫るスコアで堂々の首位発進すると、FDも初戦にして完成度の高い内容で他の追随を許さず、2位に約10点もの差をつけて圧勝しました。
 昨季の世界選手権で銀メダルを獲得し、今季はオリンピックに向けてしっかりとポジションを固めるシーズンになるかと思いますが、全く油断も死角もなく、ほかのカップルに付け入る隙を与えませんでしたね。昨シーズンも素晴らしかったですが、今季はさらに飛躍する予感を漂わせる今大会の戦いぶりでした。スケートアメリカ優勝、おめでとうございました。
 2位は同じくアメリカのマディソン・ハベル&ザカリー・ドノヒュー組。SDは自己ベストに近い得点をマークして3位の好位置につけると、FDは取りこぼしのほとんどない演技でフリー2位、総合でも2位に上がりました。
 昨シーズン初めてGPファイナルに出場し、世界選手権でも6位入賞と躍進したハベル&ドノヒュー組。その好調をそのまま維持したかのような今大会の内容でしたね。国内にはシブタニ兄妹とチョック&ベイツ組という二大巨頭がそびえていますが、GP初戦でこのような良い結果、得点を出せたことは強いライバルに立ち向かっていく上で大きな追い風になると思いますので、ハベル&ドノヒュー組が今シーズンどれだけ上述した2組に迫れるかという点にも注目していきたいですね。
 3位は元欧州王者、ロシアのエカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組。SDはほぼノーミスの演技で2位と好発進。FDはリフトの時間超過など細かい取りこぼしがありハベル&ドノヒュー組に逆転を許す形となりましたが、表彰台は逃しませんでした。
 昨シーズンはボブロワ選手のドーピングの問題があって、世界選手権に出場できなかったボブロワ&ソロビエフ組。今季ここまではその影響は感じさせません。それどころか、シーズン初戦、そして今大会としっかりトータル170点台をマークして、上々のシーズン序盤を送っていると言えるのではないでしょうか。


 日本の村元哉中&クリス・リード組は8位となりました。

c0309082_01290389.jpg

c0309082_01320437.jpg

 SDは「レイ・チャールズメドレー」。前半のエレメンツはほぼクリーンにまとめましたが、後半のツイズルでミスがあり減点。得点を伸ばし切れずパーソナルベストより5点ほど低いスコアで最下位に留まりました。
 FDはビセンテ・アミーゴの「アルバム『ポエタ』より」。まず冒頭のスピンでしっかりレベル4を取ると、前日失敗したツイズルでもクリーンにこなしてレベル4。その後も目立ったミスなくプログラムをまとめ上げ、わずかながらパーソナルベストを更新。フリー8位で、トータルでも8位に上がりました。
 ショートでらしからぬミスがあり出遅れてしまったのはもったいなかったですが、FDはSDを引きずることなく切り替えて演技できていて素晴らしかったですね。9月のUSインターナショナルでも自己ベストでの2位、そして今回もフリーの自己ベスト更新と、滑るたびに以前の自分たちを超えていっているように思うので、ぜひ次のNHK杯ではSDから自己ベスト更新できることを期待したいですし、日本開催ということを考えても実現性は高いですから、楽しみにしたいですね。



 スケートアメリカ男子&アイスダンスの記事は以上です。男子は特にフリーの後半グループで素晴らしい演技が続いて、とっても見応えのある試合になりましたね。
 そして男女、ペア、アイスダンス全体を見渡すと、どのカテゴリーにおいてもアメリカ勢がしっかり表彰台に乗っていて(しかもペア以外では複数)、改めてフィギュア大国アメリカの層の厚さを見せつけられた大会でもありました。正直男子では、宇野選手と金選手が軸になると思っていて、ブラウン、リッポンの両選手がここまで仕上がりが早いというのは、いくら自国開催とはいえ驚かされたと同時に感嘆させられましたし、一方女子はワグナー選手の安定感は予想どおりであったものの、全米女王のゴールド選手が今ひとつ調子が上がらないという中で、伏兵のベル選手がその隙を突いてメダル獲得というサプライズもあり、そういったダークホースが突如として現れてくるところも、フィギュア王国だからこそという感じがしました。
 しかし、その点においては日本も負けておらず、男子は村上大介選手が直前で不出場となって宇野選手一人となりましたが、見事な完全優勝で今季の主役に名乗りを上げましたし、女子は実力者の浅田選手が振るわなかった一方で、メダル候補ではなかった三原選手が予想外の好結果を残したことで、日本女子の層の厚さを印象付けられたのではないかと思います。
 次戦はスケートカナダ。男子は羽生結弦選手とパトリック・チャン選手のソチ五輪金銀対決が最大の注目。1年前のこの大会ではチャン選手が勝ってはいるものの、現時点では普通に考えれば羽生選手が勝つと思うのですが、ジャンプの出来によって何がどうなるかはまだ読めません。また、女子は世界女王であるエフゲニア・メドベデワ選手が圧倒的な優勝候補で、そこに日本のエースである宮原知子選手が挑む構図ですが、チャレンジャーシリーズで好調だったケイトリン・オズモンド選手や長洲未来選手、そして何といっても前世界女王のエリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手もおり、メダル争いは混沌としています。では。


:記事冒頭の男子メダリスト3選手のスリーショット写真は、AFPBB Newsが2016年10月24日の8:24に配信した記事「宇野が自身2度目のGP制覇、スケート・アメリカ」から、宇野選手の写真、ブラウン選手の写真、リッポン選手の写真、ボロノフ選手の写真、金選手の写真、グエン選手の写真、アイスダンスのメダリストの写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、村元&リード組の写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
スケートアメリカ2016・女子&ペア―アシュリー・ワグナー選手、貫録のGP5勝目 2016年10月25日


[PR]
by hitsujigusa | 2016-10-28 02:49 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_14512414.jpg


 グランプリシリーズ16/17が開幕し、1戦目のスケートアメリカが行われました。実力者の貫録のある勝利あり、若手のサプライズありの充実した大会となりました。そんなスケートアメリカ2016、この記事では女子とペアの結果についてお伝えしていきます。
 女子を制したのは地元アメリカのベテラン、アシュリー・ワグナー選手。そして、2位に同じくアメリカのマライア・ベル選手、3位に日本の三原舞依選手が入り、サプライズに満ちた結果となりました。
 ペアはカナダの若手ジュリアン・セガン&シャルリ・ビロドー組が優勝し、記念すべきGP初タイトルとなりました。

ISU GP 2016 Progressive Skate America この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 優勝は世界選手権2016の銀メダリスト、アシュリー・ワグナー選手です。

c0309082_15080983.jpg

 SPは「Sweet Dreams (Are Made of These) 」。ロック調のノリノリの曲調に乗せてまずは得点源となる3フリップ+3トゥループ、セカンドジャンプがアンダーローテーション(軽度の回転不足)となり加点は付きませんでしたが確実に着氷。後半に入り3ループ、2アクセルはパーフェクトで高い加点を獲得し、プログラム最終盤のステップシークエンスではワグナー選手らしいパワフルでエネルギッシュな滑りで観客を大いに沸かせました。得点は69.50点と70点に迫るハイスコアをマークし、堂々の首位に立ちました。
 フリーは「エキソジェネシス交響曲第3部」。ワグナー選手にしては珍しいゆったりとした曲調でプログラムが始まり、まずは得意の2アクセルで順調にスタート。続いて前日で回転不足を取られた3+3はこちらも回転不足で減点を受けますが、直後の2アクセルは問題なく下り、上々の前半となります。後半はまず3ループを成功させたものの、次の3フリップは回転不足。3ループからのコンビネーションジャンプは3ループの着氷で勢いが止まったためセカンドジャンプが1回転に。苦手としている3ルッツからの連続ジャンプはしっかり着氷したもののエッジの判定で減点を取られ、後半は見た目にはわかりにくい細かなミスが続きました。しかし、演技の流れが途絶えることはなく、徐々にテンポアップしていく力強い音楽を全身でエモーショナルに表現し、観客の拍手喝采を浴びました。得点は126.94点でフリー2位、総合1位とトップの座を守り切りました。
 世界選手権のメダリストとなって初めてのシーズン、初めてのGPでしたが、いつもと変わらない貫録に満ちた演技でしたね。細々としたミス、減点はあるのですが、それくらいのことでは揺るがない圧倒的な自信、余裕がオーラとなってワグナー選手の体から溢れているようにさえ感じられる雰囲気がありましたね。アンダーローテーションは練習を重ね、試合を重ねていくことで修正可能なものでしょうから、全く心配はないと思いますし、年齢を重ねていくごとに安定感を増し、しっかりと芯の通った自分というものを持っている気がするので、このままの状態を維持して次の中国杯に向かっていってほしいなと思います。スケートアメリカ優勝、おめでとうございました。


 銀メダルを獲得したのはマライア・ベル選手です。

c0309082_15382609.jpg

 SPは「映画『シカゴ』より」。まずは大技の3ルッツ+3トゥループでしたが、2つ目が回転不足となります。後半に2つのジャンプを固め、3フリップ、2アクセルともに大きなミスなく着氷。終盤のスピン、ステップシークエンスはレベル2にとどまり取りこぼしもありましたが、まとまった演技で先月のUSインターナショナルでマークした自己ベストを更新し、6位につけました。
 フリーは「テレビドラマ『エデンの東』より」。フリーは冒頭の3ルッツ+3トゥループを完璧に降り好スタートを切ると、続く3ループ、2アクセル+2トゥループもクリーンに成功させます。後半に入り最初の3フリップ+1ループ+3サルコウは3サルコウが2回転になったものの、その後の3ルッツ、2アクセル、3フリップは全てきれいに着氷。演技を終えたベル選手は破顔し、喜びを隠しませんでした。得点はワグナー選手をも上回る130.67点のハイスコアを叩き出しフリー1位、総合2位に大きく順位を上げました。
 今季はチャレンジャーシリーズの2大会で表彰台に上っているベル選手。今シーズンは大きく飛躍する可能性もある選手だとは思っていましたが、スケートアメリカでのいきなりの2位にはさすがに驚きました。しかも、この大会は元々出場予定はなく、同じアメリカのアンジェラ・ワン選手の出場辞退に伴うピンチヒッター。そうしたビッグチャンスの場でさっそくを結果を残し、存在をアピールできたことは今後の国内の競争に向けても大きな追い風になりますね。また、チャレンジャーシリーズの記事でベル選手は、“持っている選手”なのではないかと書きましたが、今回も強豪の浅田選手やゴールド選手が崩れるなどして接戦の中でチャンスをつかむことができたわけなので、やっぱり今季のベル選手はそうした運を持っている選手なのかなという感じがします。
 とはいえそれもこれも彼女自身の努力があってこそ。ベル選手はシーズン開幕後(新シーズンは7月から)の8月になってからコーチを変更していて、練習環境が変わるということは場合によっては悪い方向に転がることもあると思うのですが、それが見事にハマったと言えます。ベル選手が現在師事しているのはラファエル・アルトゥニアンコーチで、同じチームにはワグナー選手やリッポン選手もいるので、そういった強い先輩たちが揃う環境が彼女にも良い影響を与えたのかもしれませんね。
 GP出場はこの1試合のみで、もう1試合あればファイナルの可能性もあるので少し残念ですが、世界選手権の出場権が懸かる全米選手権に向けて頑張ってほしいですね。


 銅メダルを手にしたのは今季シニアデビューの三原舞依選手です。

c0309082_20001258.jpg

 SPは昨季と同じ「序奏とロンド・カプリチオーソ」。まずは3ルッツ+3トゥループ、これを完璧に下りて1点以上の加点を得ます。続く2つのスピンはレベル4。そして後半、2アクセルを決めると、レイバックスピン、ステップシークエンスでますます流れに乗り、3フリップとともに終わりを告げる斬新なラストでしたが、着氷でステップアウトしパーフェクトとはならず。しかし、得点は65.75点でパーソナルベストをマークし、2位と好発進しました。

c0309082_20210424.jpg

 フリーは「映画『シンデレラ』より」。冒頭は得点源の3ルッツ+3トゥループ、これを前日同様にパーフェクトに決め最高の滑り出しを見せると、3フリップ、2アクセルと前半のジャンプは全てクリーンに成功。後半に入り、まずは重要なジャンプとなる2アクセル+3トゥループでしたが、セカンドジャンプが2回転となります。続くジャンプは3ルッツ+2トゥループ+2ループの予定だったところ、3ルッツに急遽3トゥループを付けてリカバリーを図りますが、勢いが足りずあえなくダウングレード(大幅な回転不足)に。終盤のジャンプは3ループはきれいに下りたものの、3サルコウは2回転と、後半は多少ミスが重なりましたが、最後まで躍動感のある演技を披露しました。得点は自己ベストに迫る123.53点、総合では自己ベストとなる189.28点で見事3位に入りました。
 GPデビューとは思えない素晴らしい演技でしたね。先月のネーベルホルン杯での優勝の勢いそのままに、始終自信を持って攻めた演技だったように思います。シニアデビューの国際大会で優勝できたこと、そしてGPデビューの試合で表彰台に上がれたことと、良い結果がさらに良い結果を生んで、歯車が噛み合って連鎖したのではないでしょうか。いくつかのミスは次への宿題として決してマイナスなことではないと思いますし、フリーの後半で機転を利かせて3+3を跳ぼうとしたところなど、1点でも点を多く稼ごうというガッツもうかがえて、また次戦が楽しみになりました。
 次戦は11月中旬の中国杯。少し間が空きますし、今大会のチャンピオンであるワグナー選手やロシアのエレーナ・ラディオノワ選手、エリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手、日本からは本郷理華選手など実力者が集まるので、ファイナル出場に向けてはギリギリの争いになるかと思いますが、万全の準備をして臨んでほしいと思います。


 4位はカナダのガブリエル・デールマン選手です。

c0309082_20394665.jpg

 SPは「歌劇『エロディアード』より」。冒頭はまず3ルッツ+3トゥループからでしたが、ダウングレードでの着氷で大きく減点されます。しかし、後半に跳んだ3フリップ、2アクセルは完璧な跳躍で、どちらも1点以上の加点。そのほかのスピンは全てレベル4で揃え、ステップシークエンスは女子ショート唯一のレベル4の高評価。冒頭のミスを見事取り返し、64.49点で4位の好位置につけました。
 フリーは定番の「ラプソディー・イン・ブルー」。冒頭の連続ジャンプはSPより難度を落とした3トゥループ+3トゥループ、これを確実に決め1.7点の高い加点を獲得。続く3ルッツは着氷で大きく乱れますが、直後の3フリップですぐに立て直します。後半は前半で失敗した3ルッツからの3連続ジャンプでしたが、全てのジャンプをクリーンに着氷。次の3ループは回転が抜けて2回転になったものの、終盤の2アクセル、3サルコウ+2アクセルはしっかり下りて、全体的にはまずまずの演技を見せました。得点は122.14点でフリーも4位、総合も4位と表彰台には届きませんでしたが、順位を落とすことなく大会を終えました。
 ショート、フリーともにミスはありましたが、そこまで深刻なミスではなく、演技全体のスピードだったり動きのキレは素晴らしく、最初から最後までデールマン選手らしい滑りだったなと思います。個人的にはデールマン選手に対しては波のある選手という印象だったのですが、今回はミスを連発することもなく安定感があって、昨年の今頃と比べるとかなり安心感を持って見られましたね。元々ジャンプのポテンシャルは高い選手ですが、なかなかクリーンにまとまることがなかったのが、今大会は全体的によくコントロールされていましたし、また、表現面でもゆとりが感じられて、1年を経て随分成長を感じられました。次戦のフランス杯でもこの調子のまま、デールマン選手らしいダイナミックな演技を見せてほしいですね。


 5位は全米女王のグレイシー・ゴールド選手です。

c0309082_01360603.jpg

 SPは「Assassin's Tango 映画『Mr.&Mrs. スミス』より」。まずは得点源の3ルッツ+3トゥループを完璧に決め加点1.4の高評価を得ます。後半に2つのジャンプを組み込み、最初は若干苦手としている3フリップでしたが、アンダーローテーションで転倒となってしまいます。しかし、直後の2アクセルは問題なく下り、情熱的なステップシークエンスで演技を締めくくりました。得点は64.87点で3位となりました。
 フリーはバレエ「ダフニスとクロエ」。プログラムはコレオシークエンスで幕を開ける珍しい構成。そこからまずは難度の低い2アクセルを決め、続いて3ルッツ+3トゥループでしたが、ファーストジャンプの着氷で詰まり気味になったため2つ目は2トゥループに抑えます。そして直後の3ループでも空中で軸が傾いてしまい転倒となります。立て直したい後半、最初の2アクセル+3トゥループ+2トゥループはクリーンに成功。続く単独の3ルッツも難なく決めますが、ショートで失敗した3フリップは2回転に、次の3サルコウでも転倒とミスが相次ぐ演技となり、フィニッシュしたゴールド選手は肩を落としました。得点は119.35点でフリー5位、総合5位と表彰台を逃しました。
 ショート、フリーともに転倒という大きなミスがあり、狂った歯車を最後まで直せなかったかなという印象ですね。特に元々踏み切り時のエッジに課題がある3フリップで苦労していた印象ですが、めったに大きなミスのない得意な3ループや3サルコウで転倒したのは意外でしたね。全体的に慎重になってしまったのかもしれません。今月初旬にはジャパンオープンに出場してそちらではまだ調整の真っ最中という感じでしたが、今大会でもまだベストな状態まではもう少しという感じでしょうか。次のフランス大会ではゴールド選手の笑顔が見られることを期待したいですね。


 6位は日本のベテラン、浅田真央選手です。

c0309082_14392825.jpg

 SPは「Ritual Dance バレエ『恋は魔術師』より」のピアノバージョン。SPはまず得意の2アクセルで開幕。続く3フリップ+2ループはきれいに着氷したかに見えましたが、ファーストジャンプがアンダーローテーションと判定されます。後半の3ループはわずかにこらえるような着氷ながらも確実に下り、終盤のステップシークエンスでは妖しげながらも美しい魔術師を演じ切り、フィニッシュ後は納得の表情を見せました。得点は64.47点とフィンランディア杯でマークしたシーズンベストとほぼ同じスコアで、5位発進となります。

c0309082_14491857.jpg

 フリーもショートと同じ「Ritual Dance バレエ『恋は魔術師』より」のオーケストラバージョン。まずは前日と同じく2アクセルから入り、難なく成功。続くコンビネーションジャンプは3フリップ+3ループを予定していましたが、セカンドジャンプを2回転にまとめて確実に加点を稼ぎます。次の3ルッツは判定こそ回転不足となりますが、課題としている踏み切り時のエッジでは減点を取られることなくしっかり跳び切り、前半は上々の内容。フィンランディア杯ではミスのあった後半、まずは2アクセルからの連続ジャンプでしたが、珍しく2アクセルが1回転になった上にステップアウトとなり単独に。そのミスを引きずってしまったのか、3サルコウもステップアウト、3フリップは2回転にとミスを連発。最後の3ループはクリーンに成功させ、フィナーレを飾るステップシークエンスでは激しく情熱的な滑りでプログラムを盛り上げましたが、演技後はミスの多い内容に残念そうな表情を浮かべました。得点は112.31点でフリー6位、総合も6位となりました。
 SPは3アクセルや3+3を外しジャンプの難度を下げた分、安定感のある演技で余裕も感じられましたが、フリーは後半に余裕がなくなってしまったのかなという演技でしたね。昨季から続く左膝痛の影響でシーズン前から100%の練習ができなかったということで、SPはアイスショーでも披露している分プログラムに慣れているのでしょうが、フリーはショートよりも本格的に取り組み始めるのが遅くなる上に、練習も控えめにしかできないというところでその影響が出てしまったのでしょうね。フリーのフィニッシュでは浅田選手にしては珍しく満面に汗を浮かべ肩で息をしていて、激しい疲労が感じられました。ただ、裏を返せば課題は明確で、フリーを最後まで滑り切るスタミナ、プログラムのリズムの中でジャンプをまとめることだと思うので、あとは左膝の状態を悪化させないように、不具合とうまく付き合いながら滑り込んでいければ全日本までにはしっかり間に合うのではないでしょうか。また、フィンランディア杯のフリーでは今回ほどにはミスは多くなかったわけなので、調整面でベストではなくても、気持ちの持ちようでより良くなる部分もあるはずなので、その点今回はGP初戦とあって気負いもあったのかもしれませんね。ジャンプ以外の部分で言えばどの面においても現役随一で、今季のプログラムは今までに見たことのない浅田選手の表情や妖艶な身のこなしを存分に見ることができ、プログラムの完成が待ち遠しくなりました。だからこそあまり無理はしてほしくないなという感じもして、浅田選手の試合後のインタビューでの言葉を聞いていると、焦りを感じているのかなという印象を受けるのですが、今後のことを考えると全日本にさえベストな状態で間に合えばいいわけですし、正直GPでの内容や結果はそんなに重要ではないと思うので、次のフランス大会で無理をして左膝を悪化させては元も子もないですから、GPは調整ととらえてうまくバランスを取って臨んでほしいなと思いますね。


 日本の村上佳菜子選手は10位という結果となりました。

c0309082_15344362.jpg

 SPは王道の「カルメン」。冒頭は単独の3フリップでしたが、ダウングレードで下りてきてしまい大幅に減点されます。続く2つのスピンはレベル4にまとめて後半に向かいますが、得点源の3トゥループ+3トゥループは1つ目がアンダーローテーション、2つ目がダウングレードとなります。最後の2アクセルは無難にまとめてステップシークエンスで演技を終えますが、フィニッシュした村上選手は顔を曇らせました。得点は47.87点で10位にとどまります。

c0309082_15554224.jpg

 フリーはオペラ「トスカ」。まずは3ループをクリーンに着氷したかに見えましたがアンダーローテーションの判定。直後の3サルコウはきれいに成功。続いて前日のショートで回転不足となった3フリップ、クリーンに決めたいところでしたが再びアンダーローテーションとなります。スピンとコレオシークエンスを挟んだ後半、2アクセルからの連続ジャンプは1+2に。さらに2本目の3フリップはダウングレードでコンビネーションにならずミスが続きます。終盤の3+2+2、2アクセルはクリーンに下りて立て直しを見せましたが、悔しさの残る演技に村上選手は顔をしかめました。得点は97.16点でフリー9位、総合10位と順位を上げることはできませんでした。
 今シーズンは例年より始動を早めてしっかり練習を積んで今大会に臨んだという村上選手。それだけに複数のミスが出てしまい残念でした。シカゴ入りしてからの練習で不安があり、その精神的動揺が本番にもそのまま表れてしまったようですが、演技面でも村上選手らしい元気の良さ、ほとばしるような情熱が鳴りを潜めてしまいましたね。ですが、演技後の村上選手の表情に落ち込んだ様子はなく、次のロシア大会に向けてすでに「やってやるぞ」という気合は十分といった印象で、ぜひロシアでは村上選手らしい演技でリベンジしてほしいと思います。



 ここからはペアです。

c0309082_16271033.jpg


 優勝したのはカナダのジュリアン・セガン&シャルリ・ビロドー組。SPは3ループが2回転になるミスがあったものの、そのほかのエレメンツをクリーンにまとめて3位につけると、フリーは減点要素の一つもないほぼノーミスに近い演技でフリー唯一の130点台に乗せ、3位からの逆転優勝を果たしました。
 昨シーズンからシニアに上がったセガン&ビロドー組。昨季はシニア1年にもかかわらずトップペアのあいだに割って入り、ファイナルにも出場。しかし、シーズン後半はセガン選手の怪我のため全ての試合を欠場しました。そうした中で真価が問われる今季ですが、シーズン初戦であるチャレンジャーシリーズのオータムクラシックでパーソナルベストをマークしてさっそく優勝すると、今大会も優勝と、申し分ないスタートダッシュ。若手のペアにしては珍しいくらい安定感があり、世界のペア界でもどんどん存在感を増していますね。次のロシア大会でも十分に優勝を狙えると思うので、頑張ってほしいですね。スケートアメリカ優勝、おめでとうございました。
 2位はアメリカのヘイヴン・デニー&ブランドン・フレイジャー組。ショートでは3サルコウでミスがありましたが最小限の失敗に抑え、全体をまとめて自己ベストで2位と好発進。フリーもサイドバイサイドのジャンプ2つでミスがありましたが、それ以外では目立ったミスなく、こちらも自己ベスト。ショートと変わらず総合2位のポジションを守り切りました。
 昨シーズンはデニー選手の大怪我によりフル休養せざるを得なかったデニー&フレイジャー組。復帰1季目ということで未知数の部分もありましたが、GP初戦にして素晴らしい内容でしたね。さっそくパーソナルベストの演技を披露できたことは、今後に向けて大いに自信、励みになるでしょう。次戦はカナダ大会ということで間がほとんどありませんが、うまく調整して臨んでほしいと思います。
 3位は世界選手権2016で5位の実力者、ロシアのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組。SPは全てのエレメンツに加点がつく完璧な出来で自己ベストを更新し首位に立ちます。大きなリードを持って臨んだフリーの冒頭、最高難度の4ツイストに挑みますが着地で失敗し転倒。続く3サルコウは1回転となります。その後は演技を立て直し挽回しますが、ジャンプやデススパイラルなど細々したミスがあり、自己ベストより20点近く低いスコアでフリーは5位、総合でも3位と順位を落としました。
 SPでの安定感、2位との点差を考えてもタラソワ&モロゾフ組がフリーでも優位を保つだろうと感じましたが、冒頭の大きなミスから負の連鎖に陥ってしまいましたね。ただ、高難度の4ツイストはタラソワ&モロゾフ組がさらに一段上のレベルに上がるために必要な武器なのでしょうし、当然リスクは伴いますが素晴らしいチャレンジだと思います。次のフランス杯では4ツイストの成功のみならず、二人らしい演技が見られることを願っています。



 さて、スケートアメリカ女子&ペアの記事は以上です。女子に関してはこの出場選手が発表された当初は、浅田選手、ワグナー選手、ゴールド選手の三つ巴を予想しましたが、全く違う結果となり、改めてフィギュアスケートは難しいなと感じました。ただ、まだGP1戦目なので、ここでうまくいかなかった選手もこの試合の結果にとらわれず次の試合で頑張ってほしいなと思います。
 次の記事ではスケートアメリカの男子とアイスダンスについて書きます。少しお待ちください。


:記事冒頭の女子メダリスト3選手のスリーショット写真、ワグナー選手の写真、三原選手のSPの写真、浅田選手のフリーの写真、村上選手のSPの写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、ベル選手の写真、デールマン選手の写真、ゴールド選手の写真、浅田選手のSPの写真、村上選手のフリーの写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、三原選手のフリーの写真は写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、ペアのメダリストの写真はフィギュアスケート誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
スケートアメリカ2016・男子&アイスダンス―宇野昌磨選手、圧巻のGP2勝目 2016年10月28日


[PR]
by hitsujigusa | 2016-10-25 17:51 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_22424793.jpg



 ジュニアのグランプリシリーズ(以下、JGP)が8月末から10月初旬にかけて全7試合行われました。今シーズンは歴史的な快挙もあり、シニアに負けず劣らず日進月歩でレベルが上がり続けているジュニアの現状を如実に表したJGPとなりました。そんなJGP全体の結果をカテゴリー別に振り返りつつ、ファイナルに向けてのちょっとした予想もしていきたいと思います。


Junior Grand Prix Standings Men 男子のスタンディング(シリーズ全体の順位)が見られます。
Junior Grand Prix Standings Ladies 女子のスタンディングが見られます。
Junior Grand Prix Standings Pairs ペアのスタンディングが見られます。
Junior Grand Prix Standings Ice Dance アイスダンスのスタンディングが見られます。

*****

《女子シングル》

c0309082_01384602.jpg



①アナスタシア・グバノワ(ロシア):30ポイント チェコ大会優勝、ドイツ大会優勝
②ポリーナ・ツルスカヤ(ロシア):30ポイント ロシア大会優勝、エストニア大会優勝
③紀平梨花(日本):28ポイント チェコ大会2位、スロベニア大会優勝
④坂本花織(日本):28ポイント フランス大会2位、日本大会優勝
⑤アリーナ・ザギトワ(ロシア):26ポイント フランス大会優勝、スロベニア大会3位
⑥本田真凛(日本):26ポイント 日本大会2位、スロベニア大会2位
―――
補欠⑦エリザヴェータ・ヌグマノワ(ロシア):24ポイント ロシア大会3位、エストニア大会2位
補欠⑧スタニスラヴァ・コンスタンティノワ(ロシア):22ポイント ロシア大会2位、ドイツ大会4位
補欠⑨白岩優奈(日本):22ポイント ロシア大会4位、ドイツ大会2位




 女子は3年連続で日本3名、ロシア3名というファイナリストの顔ぶれとなりました。
 ポイント数ではグバノワ、ツルスカヤの両選手が2大会とも優勝で一歩リードしていますが、トータルスコアでは全体的に拮抗していて誰にでも優勝の可能性があると思います。特にパーソナルベストでは坂本選手を除く5名が190点台というハイスコアを持っていて、1つの技の成否でファイナルでは順位が大きく変動しそうですね。
 そんな中で最も爆発力がありそうなのはやはり紀平選手ですね。紀平選手といえば何といっても代名詞のトリプルアクセル。優勝したスロベニア大会のフリーで国際大会初成功を遂げ、女子では史上7人目、日本女子では伊藤みどりさん、中野友加里さん、浅田真央選手に続く4人目の成功者となりました。また、3アクセルだけではなく3+3や2アクセル+3トゥループなどの難しいコンビネーションジャンプを含め、6種類のトリプルジャンプをバランス良く跳ぶことができ、そういった意味でもジャンプという点においてはロシアの選手たちをも上回る、最強のジャンパーなんじゃないかなと感じますね。
 一方で昨季の世界ジュニア女王である本田選手はSPで苦戦。自分自身のふがいない演技に悔し涙を流す姿も見られました。今季ジュニア2年目の本田選手はにょきにょき身長が伸びていて、日本スケート連盟のプロフィールでは158cmとなっていますが、国際スケート連盟のプロフィールでは160cmとなっていて、そうした急激な成長が多少なりともジャンプのコントロールに影響を与えている可能性は否めないでしょうね。ただ、ショートで出遅れてもフリーで一気に挽回する爆発力、気持ちの強さがあり、ジュニア選手の中では抜きん出て演技構成点の評価が高いという強みもありますから、ファイナルでの優勝争いという点においては、ショートがポイントとなるのかなと思います。
 そして6選手の中では最年長となる坂本選手は、ものすごく大きな武器というのは持っていないですが、JGPは4年目とあって安定感がありますね。ファイナルは初めてなので未知数ですが、この安定感を発揮できれば優勝争いに加わる可能性も十分ありますね。
 ロシア勢は3人とも強力ですが、安定感という観点では3人とも不安があるのかなという感じもします。グバノワ選手は得点源である3+3でミスする場面がしばしば見られ、この3+3の確率が優勝争いをする上でカギとなりそうです。また、昨季のファイナル女王であるツルスカヤ選手はロシア大会のフリーでミスを連発してしまっていて、昨シーズンの圧倒的に強いというイメージとは少し違いますね。ただ、ジュニア2年目でファイナルも2度目という経験値があるので、そうした経験が最大の武器になるのかなとも思います。そして3人目のロシア代表ザギトワ選手は、ファイナル進出が懸かったスロベニア大会のフリーで4位と不安定さを露出した試合もあったのですが、彼女の特徴としては世界でも3アクセル以上に成功例の少ない3ルッツ+3ループが跳べることと、フリーのジャンプを全て後半に跳ぶという信じられないようなチャレンジをしている選手でもあって、その分リスキーでもあるのですが、全てがハマれば得点を荒稼ぎできる可能性もあり、台風の目的なおもしろい存在ですね。
 ファイナルに進めなかったものの強い印象を残した選手としては、2試合とも表彰台に上った山下真瑚選手やドイツ大会で2位に入った昨季のファイナル進出者である白岩選手などの日本勢、惜しくもファイナルには届かなかった補欠1番手のヌグマノワ選手、補欠2番手のコンスタンティノワ選手などのロシア勢など、ランキング7位以下でも日本、ロシアの選手が目立っていて、当分この流れは続くんだろうなという未来予想図を思い描くことができます。
 また、日本、ロシア以外では韓国の選手の名前も10位台に目立ち、韓国といえばキム・ヨナさんの存在があまりにも大きいですが、それ以来の強化が最近になって実ってきているのかなと思いますね。
 一方で強豪国であるにもかかわらず上位に選手がランクインしていないのがアメリカです。最上位の選手でもシリーズ22位という成績で、シニアではアメリカ女子はベテランのアシュリー・ワグナー選手や現全米女王のグレイシー・ゴールド選手、若手のポリーナ・エドマンズ選手など選手層は厚いですが、その下のカテゴリーの選手があまり育っていないというのは大きなお世話かもしれませんが将来的に少し心配な気もしますね。



《男子シングル》

c0309082_17153967.jpg



①アレクサンドル・サマリン(ロシア):30ポイント ロシア大会優勝、エストニア大会優勝
②チャ・ジュンファン(韓国):30ポイント 日本大会優勝、ドイツ大会優勝
③アレクセイ・クラスノジョン(アメリカ):28ポイント チェコ大会2位、スロベニア大会優勝
④ロマン・サヴォシン(ロシア):26ポイント フランス大会優勝、チェコ大会3位
⑤イリヤ・スキルダ(ロシア):26ポイント フランス大会2位、スロベニア大会2位
⑥ドミトリー・アリエフ(ロシア):24ポイント チェコ大会優勝、スロベニア大会4位
―――
補欠⑦ヴィンセント・ゾウ(アメリカ):24ポイント 日本大会2位、エストニア大会3位
補欠⑧アンドリュー・トルガシェフ(アメリカ):22ポイント ロシア大会2位、ドイツ大会4位
補欠⑨ロマン・サドフスキー(カナダ):20ポイント 日本大会5位、エストニア大会2位




 男子はファイナル進出者6名中4名がロシアという近年稀に見るロシア1強状態で、男子でロシア選手が4名以上というのはJGPファイナル進出者が8名だった2002年以来のこととなります。しかも、さらに言うならアメリカのクラスノジョン選手も生まれはロシアであり、事実上6名中5名がロシアといってもいいくらいですね。
 2大会とも優勝でファイナルの切符を掴んだのはサマリン選手とチャ選手の二人で、2大会のスコアの合計もこの二人が図抜けており、優勝争いとしてはやはりこの二人が有力かなという気がします。サマリン選手は1つのプログラムの中で2つ以上のミスを重ねない安定感があり、JGP5年目の18歳の選手だからこその慣れている感じがありますね。一方のチャ選手はジュニアとしては2年目、JGP参戦は1年目のまだ14歳なのですが(10月21日で15歳)、早々と3アクセルや4サルコウを習得していて、すでに韓国の男子選手史上最高レベルの資質を持った選手となっています。14、15歳という幼さが不安定さをもたらすこともあるかと思いますが、調子の波さえうまくコントロール出来れば羽生結弦選手に次ぐ若さでのJGPファイナルチャンピオンとなる可能性も十分ありえますね。
 そしてこのJGPで一つ大きな話題を提供したのがクラスノジョン選手。スロベニア大会のフリーの冒頭で4ループに挑み見事に着氷。惜しくも着氷で手をついたため史上初の成功とは認定されませんでしたが、回転としては回り切っていて史上初めての4ループ認定とはなりました。大技に挑んでいる分リスキーでもありますし、4ループ以外のところでもまだバラつきが散見されますが、4ループを決めた上でほかのエレメンツもクリーンにまとめられれば一気に高得点を稼ぐことも期待できるので、楽しみな存在ではありますね。
 シリーズ成績4位のサヴォシン選手はそこまで大きな武器を持っているタイプではないので、大技を持っている選手たちに勝つためにはエレメンツを全てクリーンにそろえる必要がありそうです。5位のスキルダ選手は6名中最年少で、その分まだジャンプの難易度としては低く4回転も持っていませんが、出場した2大会ともフリーではノーミスでまとめていて、ほかの選手たちがミスを連発するようなことがあれば上位に加わることもあるかもしれません。そして6位のアリエフ選手は昨年のファイナル銀メダリスト。ファイナル進出が懸かったスロベニア大会のフリーで大崩れしてしまったためにファイナル進出ギリギリの6位となりましたが、本来は実力者。演技構成点も高いので実力どおりの力を発揮できれば優勝争いにも食い込めると思います。
 惜しくもファイナルには進めなかった補欠を見ると、アメリカの選手が二人、カナダの選手が一人です。アメリカ勢は今年はロシア勢の後塵を拝す形となりましたが、ゾウ選手もトルガシェフ選手も2000年以降の生まれとまだ若く伸びしろが大いにあり、女子の方とは対照的にアメリカ男子は将来的に楽しみだなと思います。カナダのサドフスキー選手は一昨年、昨年のファイナル進出者という強豪の一人。得点的には今年もパーソナルベストを更新してしっかりレベルアップしているのですが、それを上回る速度で他国の選手たちもレベルアップしていて、今年はファイナルには届きませんでした。
 日本男子は残念ながら今年はファイナルに選手を派遣することはできませんでしたが、シリーズランキングの10位に友野一希選手、11位に島田高志郎選手、12位に須本光希選手が入りました。3選手とも1大会で表彰台に上り、個人的には大健闘という印象です。来季以降が楽しみですね。



《ペア》


①アナスタシア・ミーシナ&ウラジスラフ・ミルゾエフ組(ロシア):30ポイント ロシア大会優勝、ドイツ大会優勝
②アナ・ドゥシュコヴァ&マルティン・ビダジュ組(チェコ):28ポイント チェコ大会優勝、ドイツ大会2位
③アリーナ・ウスティムキナ&ニキータ・ボロディン組(ロシア):24ポイント エストニア大会2位、ドイツ大会3位
④アミナ・アタハノワ&イリヤ・スピリドノフ組(ロシア):22ポイント チェコ大会2位、エストニア大会4位
⑤アレクサンドラ・ボイコワ&ドミトリー・コズロフスキー組(ロシア):22ポイント ロシア大会2位、ドイツ大会4位
⑥エカテリーナ・ボリソワ&ドミトリー・ソポト組(ロシア):22ポイント ロシア大会3位、エストニア大会3位
―――
補欠⑦エカテリーナ・アレクサンドロフスカヤ&ハーレー・ウィンザー組(オーストラリア):18ポイント チェコ大会8位、エストニア大会優勝
補欠⑧チェルシー・リュー&ブライアン・ジョンソン組(アメリカ):18ポイント チェコ大会3位、エストニア大会5位
補欠⑨ロリー=アン・マッテ&ティエリー・フェルラン組(カナダ):14ポイント チェコ大会6位、ロシア大会4位




 ペアは2013年以来の6組中5組がロシアとなり、相変わらずのロシア1強を改めて誇示しました。
 2試合のスコア合計ではシリーズ1位のミーシナ&ミルゾエフ組が抜きん出ています。このペアは昨年はJGPでこそ1試合のみの出場にとどまっていますが、その後のロシアジュニア選手権では優勝、世界ジュニア選手権では銀メダルと実績もあり、今季はミスも非常に少なく、やはり優勝候補筆頭かなと思います。
 シリーズ2位のドゥシュコヴァ&ビダジュ組は昨季の世界ジュニア王者。今季はその世界ジュニアで出したパーソナルベストにはまだ遠く及んでおらず、少し安定感を欠いているかなという印象ですね。ファイナルまでは時間がありますから、まだまだ挽回の余地ありですね。
 3位のウスティムキナ&ボロディン組は自己ベストはそんなに高くないですが、出場した2大会でマークした得点の差があまりなく、わりと安定感があるのかなという感じですね。
 4位のアタハノワ&スピリドノフ組は昨年のファイナル銅メダリスト。ですが、2試合目のエストニア大会ではフリーで失速するなど、今季はまだ昨季ほどの強さは見せつけられていません。
 5位のボイコワ&コズロフスキー組は今季からJGP参戦のペアで、自己ベストはまだ低いですね。ただ、ファイナルとなると混戦になる可能性もあるので、そうなるとメダル獲得のチャンスも大いにあります。
 そして6位でファイナル進出を決めたボリソワ&ソポト組は昨年のファイナル覇者。自己ベストは170点台を持っているのですが、今季はまだ150点台にとどまっていて、初戦よりも2試合目の方が内容が悪くなっているのが気にかかります。調整が上手くいっていないのかもしれませんが、昨年のチャンピオンがどこまでファイナルで巻き返し存在感を取り戻すか、注目したいと思います。



《アイスダンス》


①アッラ・ロボダ&パヴェル・ドロースト組(ロシア):30ポイント ロシア大会優勝、エストニア大会優勝
②レイチェル・パーソンズ&マイケル・パーソンズ組(アメリカ):30ポイント 日本大会優勝、ドイツ大会優勝
③ロレイン・マクナマラ&クイン・カーペンター組(アメリカ):30ポイント チェコ大会優勝、スロベニア大会優勝
④アンジェリク・アバチキナ&ルイ・トーロン組(フランス):26ポイント フランス大会優勝、日本大会3位
⑤クリスティーナ・カレイラ&アンソニー・ポノマレンコ組(アメリカ):26ポイント フランス大会2位、ロシア大会2位
⑥アナスタシア・シュピレワヤ&グリゴリー・スミルノフ組(ロシア)26ポイント 日本大会3位、ドイツ大会3位
―――
補欠⑦アナスタシア・スコプツォワ&キリル・アリョーシン組(ロシア):24ポイント スロベニア大会3位、エストニア大会2位
補欠⑧アナスタシア・ポリシュチュク&アレクサンドル・ヴァクノフ組(ロシア):24ポイント フランス大会3位、スロベニア大会2位
補欠⑨ニコル・クズミチ&アレクサンドル・シニツィン組(チェコ):22ポイント フランス大会4位、チェコ大会2位




 アイスダンスの上位3組は昨年のファイナルの上位3組と同じ顔ぶれで、現在のジュニアアイスダンス界では最も知られた3組ですね。その3組ともが30ポイントという接戦ですが、2大会のスコア合計ではロボダ&ドロースト組、パーソンズ&パーソンズ組の2組が一歩リードしていて、安定感という意味では強いのかもしれません。その一方でパーソナルベストでは上位3組とも160点台とほぼ差はなく、どのカップルが優勝してもおかしくない状況です。
 4、5、6位のカップルはパーソナルベストでは150点台と上位3組より少し劣りますが、若い分不安定にもなりやすいジュニアの戦いなので、メダル有力な3組にミスが出た場合は、その中に割って入る可能性ももちろんあります。特に5位のカレイラ&ポノマレンコ組はパーソナルベストは150点台後半と160点台まであとわずかのスコアを持っているので、大いにチャンスがあるカップルな気がします。



 さて、この記事は以上となりますが、フィギュア界はこれからが本番。いよいよ今週末からシニアのGPが始まります。このブログのメインはシニアなのでこれからしばらくはもっぱらシニアの記事となります。次なるジュニアの記事は12月のJGPファイナルに関する記事になると思います。では。


:記事冒頭の国際スケート連盟のロゴの写真は、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、女子の写真、男子の写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
ジュニアグランプリファイナル2016―ロシア勢躍動 2016年12月19日
世界ジュニア選手権2017-ジュニア世界歴代最高得点連発 2017年3月22日

[PR]
by hitsujigusa | 2016-10-19 02:41 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_22424793.jpg



 世界のトップ選手たちがグランプリファイナルの出場をかけて争うグランプリシリーズ(以下、GP)の開幕が徐々に迫ってきましたが、その前にGPの前哨戦となるチャレンジャーシリーズが行われました。
 チャレンジャーシリーズは世界各地で開催される国際大会をシリーズとしてひとまとめにしたもの。GPとは違い国際スケート連盟によってどの試合に出場するかが決められたり、GPファイナルのような成績上位者が出場する大会があるわけではありません。ですが、世界ランキングに関係するポイントが与えられ、得点も公式の記録になるということで、近年重要性が増しているイベントでもあります。
 今季チャレンジャーシリーズとして組み込まれている大会は9つあり(本来は10試合でしたが、そのうちのウクライナオープンが開催中止となりました)、現時点では6試合が終了済み。なので、全日程が終わったわけではありませんが、GP前の試合は全て消化され、11月の次戦まではひとまず一段落。チャレンジャーシリーズはGPに出場する選手たちの調整の場でもあり、GPを占うという意味で非常に興味深い試合ばかりでした。そんな今年のチャレンジャーシリーズのこれまでに開催された6試合を大まかに振り返り、内容をまとめてみたいと思います。

*****

《ロンバルディアトロフィー》

c0309082_00313010.jpg


 チャレンジャーシリーズの第1戦目となったのはイタリアのベルガモで行われたロンバルディアトロフィー。日本からは宇野昌磨選手、村上佳菜子選手、樋口新葉選手が参加しました。
 男子はその宇野選手が優勝。パーソナルベストからは17点ほど低いスコアであり、決してベストな演技ではありませんでしたが、新たな武器として昨季手に入れた4フリップにシーズン初戦から果敢に挑戦し失敗こそしたものの、この早い時期から自分の最大の武器に挑めるということ自体が調子の良さを表してもいて、大きく飛躍した昨シーズン以上の躍進を予感させるシーズンの出だしでした。そして、このブログでもすでに記事にしたように、シーズン2戦目となったジャパンオープンでは非公式ながらフリーの自己ベストを上回る得点をマーク。2年目のジンクスという言葉がありますが、宇野選手に関してはその心配は全くなさそうだなと感じました。それどころかすでに世界のトップ選手としての堂々たる風格を漂わせていますね。そんな宇野選手の次戦は、10月21日に開幕するGP初戦、スケートアメリカです。
 2位となったのはアメリカのジェイソン・ブラウン選手。ショート、フリーともに4トゥループに挑み、どちらも失敗に終わったものの、フリーではミスを最小限に抑えた演技で自己ベストにも迫る得点を叩き出し、フリーだけだと宇野選手を上回り1位となりました。4トゥループに関しては、ショートは大幅な回転不足で転倒でしたが、フリーでは転倒したものの回転は回り切ったと認定されていて、徐々にではありますが4回転初成功の日も近づいているのかなという気がします。ブラウン選手の最大の魅力は何よりも唯一無二の表現力、密度の濃いつなぎやステップにありますが、とはいえ今や男子フィギュア界はあたりまえのように4回転を2種類跳び、さらには3種類、4種類跳んでしまう選手まで登場する時代であり、1年半後に迫るオリンピックを目指す上ではやはり4回転を跳ぶというのは大前提であるように思われます。ブラウン選手もその流れに乗らざるを得ないですね。
 3位に入ったのは同じくアメリカのマックス・アーロン選手。しかし、表彰台に立ったとはいえブラウン選手とは総合得点で30点以上の差があり、GP以降の演技の完成度に期待したいですね。どうしてもアーロン選手の場合、ブラウン選手やアダム・リッポン選手といった同国のライバルとは演技構成点で差がついてしまうので、やはり4回転や3アクセルといった得点源のジャンプを確実に決められる選手になることが、世界選手権への、さらにはオリンピックへの近道になるのかなと思います。

c0309082_01065258.jpg


 女子を制したのはこれがシニアの国際大会デビューとなった樋口選手。いきなりの優勝をという華々しいスタートを切ったわけですが、内容的にはSPは自己ベストで首位発進と申し分ない内容だった一方、フリーでは複数ミスが重なり3位、総合得点で2位の選手と約1点差という僅差で辛くも逃げきった形となりました。しかし、その後出場した国内大会の東京選手権ではフリーで2度の3ルッツ+3トゥループを決める難度の高いプログラムをまとめて優勝。かと思えばジャパンオープンではロンバルディアトロフィー同様にミスが重なる内容で、フリーでまだ安定性を欠いている印象です。樋口選手といえば個人的には国内大会でものすごく強いというイメージがあるのですが、今季は国際大会でも国内大会並みの安定感を期待したいですね。シニア1年目なので気負うことは何もないと思うので、とにかく思いっきりのびやかに樋口選手らしい滑りを見せてほしいと思います。樋口選手のGPデビュー戦は、11月のフランス杯です。
 銀メダルを獲得したのは韓国のキム・ナヒョン選手。今季が本格的なシニアデビューとなるキム選手は、ジュニア時代は際立った成績は収めていませんが、個人的には昨季の四大陸選手権で3ループ+3ループという珍しい組み合わせのコンビネーションを決めた選手として名前を覚えました。そして今大会でもショート、フリー両方で3ループ+3ループを完璧に成功させ、フリー順位のみでは1位という好結果で存在を大きくアピールしました。その好成績が影響してか、キム選手は出場を辞退した選手の代わりとしてGPのスケートカナダへの出場が決定。まだ16歳で未知数の部分も大きい選手ではあると思うのですが、その分伸びしろもたっぷりあって、今後の韓国フィギュア界を担う選手の一人として楽しみですね。
 3位はアメリカの長洲未来選手。ショート、フリーともにミスがあり得点は伸びませんでしたが、以前よりは回転不足の数も減り、実力者の一人としての安心感は感じられる内容だったように思います。長洲選手に関しては、優勝したオータムクラシックのところでもう少し詳しく後述します。
 そしてベテランの村上佳菜子選手は6位という順位となりました。この時期の成績がそのままシーズン中盤や後半に直結するわけではありませんが、内容的にはかなり回転不足が多く、修正しなければいけない課題、問題点が多々あるのかなと感じます。元々スロースターターではありますが、全日本のことも見据えて、GPからできるだけ本領を発揮していきたいところですね。


《USインターナショナルクラシック》

c0309082_15062911.jpg


 アメリカのソルトレイクシティで開催されたUSインターナショナルクラシック。日本からは宮原知子選手、無良崇人選手、田中刑事選手、ペアの須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組、アイスダンスの村元哉中&クリス・リード組が出場。
 女子は宮原選手が圧倒的大差で優勝。ショートでもフリーでも細かな回転不足はあり、100%満足いく内容というわけではなかったようですが、それでもトータルで200点を超える圧巻の演技。その後のジャパンオープンでも非公式ながらパーソナルベストを上回る得点をマークし、シーズン序盤でこの内容ですから、はたして今シーズン中にどれだけ上積みしていくのか、また進化していくのか、日本のエースとして着実に足元を固めていますね。
 銀メダルを手にしたのは地元アメリカのマライア・ベル選手。ショート、フリーともに転倒はあったものの、そのほかのエレメンツは無難にまとめ、自己ベストで優勝。母国開催ということで多少得点は気前よく出る傾向はあるでしょうが、昨シーズンの同じ大会での結果、得点と比べてもしっかり上積みされ成長の跡がうかがえて、今季はアメリカ国内でのポジションを高める可能性も十分にあるのではないでしょうか。
 3位はこちらもアメリカのカレン・チェン選手。ショートで2度の転倒があり6位と出遅れましたが、フリーではショートで上位につけた選手が崩れたこともあり順位を上げました。2季前に初めての全米選手権でいきなり3位に入って脚光を浴びたチェン選手ですが、シニアに参戦した昨季はシニアの洗礼を受けたという印象ですね。シニアの雰囲気に慣れた今季は、いかにシーズン前半から自分の演技を見せられるかが、再び全米選手権で上位に食い込むためのカギになりそうです。

c0309082_15451362.jpg


 男子は1週間前のロンバルディアトロフィーにも出場したジェイソン・ブラウン選手が優勝。ロンバルディアトロフィーでの演技同様、4トゥループこそ決まりませんでしたが、そのほかのジャンプはほとんど成功させ、2週連続の試合で安定感を発揮しました。仕上がりは上々と見え、GPでの演技にも期待が募りますね。
 そして2位となったのが無良選手。ショートでは4トゥループの、フリーでは3アクセルのミスがありましたが、フリーでは冒頭の2本の4トゥループを完璧に決め、また、前半に3アクセルを失敗したあと予定を変更して再びチャレンジし、見事2本の3アクセルを成功させるなど、日本を代表するジャンパーとしての実力を発揮。もちろん一度も失敗しないことが最高の理想ですが、失敗があった後にすぐに立て直し挽回できたことがGPに向けての好材料になると思いますし、無良選手の場合、難度の高いジャンプを綺麗に成功させても、それ以外の簡単なジャンプで取りこぼしてしまうというパターンがしばしば見られるのですが、今回はそういったこともなく、好調なシーズンのスタートといってよいのではないかと思います。そんな無良選手はスケートカナダが次戦となります。
 3位はアメリカ王者のアダム・リッポン選手。ショートは4回転を外した構成で演技をクリーンにまとめ自己ベストで首位発進。フリーは4ルッツに挑んだものの回転不足となり、また、中盤の3アクセル2本がどちらも失敗に終わるなど大技でのミスが目立つ内容で順位を下げてのフィニッシュとなりました。ただ、以前はしばしば見られた難度の低いジャンプでのミスといったバラつきも少なくなり、4ルッツもアンダーローテーション(軽度の回転不足)にとどめ、GPに向けて良い兆しを感じられる内容でもあるのかなと感じますね。
 昨年この大会で銀メダルを獲得した田中選手は今回は残念ながら10位と下位に沈みました。4回転や3アクセルなど得点源のジャンプがことごとく決まらなかったのが大きいですが、昨年はこの大会でのメダルからその後の躍進に繋がっていったと思うので、ここからGPまでうまくコンディションを整えてほしいですね。

 そしてペアの須藤&ブードロー=オデ組は自己ベストから20点以上低い得点で全5組中4位に終わりました。まだシーズン序盤なのでエレメンツの精度としてはまだこれからかなという印象ですね。

 他方、アイスダンスの村元&リード組は自己ベストを更新して2位と、シーズンのロケットスタートに成功しました。シーズン初戦にしてはエレメンツのレベルも取れている方だと思いますし、何より二人が掲げたSD60点、FD90点という目標を早々と達成し、さらにメダル獲得という目に見える結果が、このカップルにとってますます追い風になるんじゃないかなと思いますね。昨シーズンは結成1年目にして素晴らしいコンビネーション、ユニゾンを見せた二人が、今シーズンはどれだけの進化を見せてくれるのか、楽しみです。


《ネーベルホルン杯》

c0309082_01434452.jpg


 ドイツのオーベルストドルフにて行われたネーベルホルン杯に出場した日本選手は、三原舞依選手と川原星選手の二人です。
 これが本格的なシニアデビューとなった三原選手は居並ぶ実力者を抑え、見事に優勝。ショートを完璧にまとめ首位と僅差の2位発進すると、フリーもほぼクリーンな演技でフリー1位となり、総合1位と逆転優勝を果たしました。トゥクタミシェワ選手やデールマン選手ら実力者を上回っての優勝が素晴らしいのはもちろんですが、内容的にもミスが少なくパーソナルベストというのが良いですね。シニアデビューのシーズンでさっそく結果を残せたことは、大きな自信、収穫になるのではないでしょうか。そんな三原選手は、スケートアメリカでGPデビューとなります。
 女子の2位は前世界女王のエリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手。SPは目立ったミスなくまとめて首位に立ちましたが、フリーでは転倒するジャンプミスがあり三原選手に逆転を許しました。転倒したジャンプはトゥクタミシェワ選手にとっては簡単な2アクセルで、そういったジャンプで転倒するというのは意外ではあるのですが、シーズン序盤なので致し方ない部分もあるのかなと思いますね。ただ、それにしても演技構成点が低めで、2季前の絶好調だった彼女の姿がまだ記憶に新しいだけに、その時と比べるとまだ落差を感じます。またあの時のような勢いに満ち溢れたトゥクタミシェワ選手の演技を見たいですね。
 3位はカナダのガブリエル・デールマン選手。ショート、フリーともに転倒するミスがあり上位二人とは少し点差がつきましたが、元々ジャンプ能力は高いだけあってフリーの3+3や3ルッツなどクリーンに決まったジャンプに関しては高い加点がついていて、以前からの課題ではあるのですが、これで安定感さえ増してくれば常に表彰台争いができる選手になるでしょうね。

c0309082_14524392.jpg


 男子はロシアの若手アレクサンドル・ペトロフ選手が優勝。ショートもフリーも1位の完全優勝で、ショートは4回転を回避した安全策がハマって1位、フリーは4回転に挑戦して失敗に終わったものの、そのほかのエレメンツは全て加点がつくクリーンなものを揃え、自己ベストで他を寄せつけず金メダルをつかみ取りました。
 2位はベルギーのヨリク・ヘンドリックス選手。ショートは転倒する大きなミスがあって5位と出遅れましたが、フリーは細かなミスがありつつも全てのジャンプを予定どおりに着氷し総合2位まで一気にジャンプアップしました。
 3位はアメリカのグラント・ホフスタイン選手。ショートでもフリーでもミスが複数ありあまり良い内容とは言えませんが、総合200点にも届かなかったロンバルディアトロフィーよりは内容的にも得点的にも改善されていて、GPでももう一段調子が上がると良い結果が望めそうですね。
 川原選手はミスが相次ぎ9位となりました。フリーでは4トゥループにも挑戦しましたが、ダウングレードで転倒。ただ、3アクセルからのコンビネーションは成功し、やはり今後の注目点としては、3アクセルや3ルッツのような得点源となるジャンプをどれだけ安定的に着氷できるかというところがポイントかなと思いますね。


《オータムクラシック》

c0309082_14242040.jpg


 カナダのモントリオールで行われたオータムクラシック。日本からは羽生結弦選手、本郷理華選手、木原万莉子選手が参加しました。
 男子を制したのは予想通り羽生選手。しかも2位に約30点差をつけての圧勝です。今大会で羽生選手は初めて大技4ループに挑戦。見事にショートでもフリーでも成功させ、ISUによって史上初めての4ループ成功であると認定されました。ちなみにこの羽生選手の快挙から1週間ほど前のJGPのスロベニア大会では、アメリカのアレクセイ・クラスノジャン選手がこちらも4ループに挑み着氷が不完全ながら回転は認定されていたので、こちらの方が先の成功なのかなと思っていたのですが、クラスノジャン選手の場合着氷で手をついてしまっているので、正式な“成功”としては羽生選手が最初の選手ということですね。ただ、この4ループの成功以外では、4サルコウや4トゥループのでミスが目立ち、羽生選手自身不満を露わにしました。しかし、こうした“悔しさ”こそが羽生選手を支え、向上させる動力源になるので、GPではどんな逆襲を見せてくれるのか、今から楽しみですね。
 2位はウズベキスタンのミーシャ・ジー選手。細々としたミスはありましたが、シーズンの初戦としてはまずまずの内容かなとも思いますね。ジー選手の場合、今大会のSPでは4トゥループを跳び、フリーでは外すという戦略で来ましたが、今後はどのように4回転を扱っていくのかも注目ポイントですね。
 そしてロンバルディアトロフィーで3位だったマックス・アーロン選手がこちらでも3位となりました。ショートで4サルコウが2回転となりキックアウト(無得点)になる大きなロスがあり5位と出遅れたものの、フリーではミスを最小限にまとめ実力を発揮しました。アーロン選手本来のポテンシャルからするとこれでもまだまだ物足りない内容かもしれないですが、ロンバルディアトロフィーよりは得点もアップしていて、GPに向けて調整は順調に進んでいると見えますね。

c0309082_14595046.jpg


 女子のチャンピオンはアメリカの長洲未来選手。ショートは圧巻の演技で2010年の世界選手権以来となるパーソナルベスト更新で断トツの首位発進。フリーはその勢いが鳴りを潜め回転不足が散見されましたが、SPのアドバンテージを活かして逃げ切りました。ショートとフリーでは内容に落差が出てしまいましたが、そうしたバラつきさえ改善されればGPでも大いに活躍が望めるではないかと思います。長洲選手にとって現在は、ブレイクしたバンクーバー五輪シーズン以来の第2のブレイク期だと思うので、この状態を維持してミスのあったジャンプを修正して、GPに臨んでほしいですね。
 2位はカナダ王者のアレーヌ・シャルトラン選手です。ショートではミスを連発してしまい6位と出遅れたものの、フリーではほぼノーミスの演技でパーソナルベストをマークし、銀メダルを獲得しました。シャルトラン選手の場合、落とし穴にはまって大崩れする時もあれば、かと思うと爆発的な演技で予想外の結果を残すこともあり、良い時と悪い時の差がハッキリ分かれるタイプの選手という印象があります。だからこそショートとフリーが揃えばさらなる飛躍の可能性も十分にあると思うので、今季のシャルトラン選手の安定感に期待したいですね。
 3位はカザフスタンのエリザベート・トゥルシンバエワ選手。ショート、フリーともにミスはありつつも大崩れはせず、コンスタントにジャンプを揃えましたね。ただ、フリーではスピンの取りこぼしが目立ったので、まだ若い選手ならではの不安定さもうかがえました。ですが、16歳と若いわりにはどっしりと肝の据わった感じもして、シニア2年目となる今シーズン、どんな成長を見せてくれるか楽しみな存在です。
 日本の本郷選手はらしからぬミスが相次いで4位となりました。本郷選手といえばシニア1年目から本当に大きなミスをしない、ミスをしても崩れない選手というイメージなのですが、今回に関しては珍しくミスが次のミスを呼んでしまったような印象ですね。昨季のジャンプ構成と比べるとガラリと変わって意欲的なチャレンジの姿勢がうかがえますし、このジャンプ構成に慣れるのに少し時間がかかるかもしれませんね。
 木原選手は5位でフィニッシュ。ショートではスピンでミスがありましたがジャンプはきっちり揃えてパーソナルベスト。フリーは得点源となるジャンプでミスが続き得点は伸びませんでした。ジャンプ構成的には昨季と大きな変化はありませんが、フリーで挑んでいる苦手の3ルッツや、後半に2つ組み込んだ2アクセル+3トゥループの精度がカギとなりそうですね。


《オンドレイネペラメモリアル》


 スロバキアの首都ブラチスラヴァで開催されたオンドレイネペラメモリアルに参加した日本選手は、村上大介選手、宮田大地選手の男子2選手です。
 優勝したロシアのベテラン、セルゲイ・ボロノフ選手はショート、フリーともに3アクセルのミスが見られたものの、4トゥループは1本ずつきっちり着氷。この時期にしては上々の仕上がりと言えますね。
 2位はカナダのケヴィン・レイノルズ選手。ショートで2度、フリーで4度の4回転に挑んだレイノルズ選手。残念ながらクリーンに決まった4回転は1本もありませんでしたが、現在ほど4回転競争が熾烈になる前から4回転ジャンパーとして名を馳せていた彼らしく、果敢なチャレンジでしたね。大怪我もあり、それに伴う手術もあり、なかなか以前ほどの高い確率で4回転を成功させることはできていないですが、チャレンジし続けることによって徐々に取り戻せる感覚があるでしょうから、遠くないうちにレイノルズ選手らしい美しい4回転が見られるのを楽しみにしたいですね。
 3位はロシアの新星ロマン・サヴォシン選手です。今シーズンはジュニアを主戦場とし、JGPのフランス大会で優勝、チェコ大会で3位に入り、ファイナルの進出も決めているサヴォシン選手。ショートは4回転のミスで5位に留まりましたが、フリーでは2本の4回転を成功させ、シニアの国際大会デビューにもかかわらず銅メダルを獲得しました。現在のロシアのジュニア男子は本当にタレントが豊富で、それぞれ力の拮抗した才能溢れる若手が多くいるのですが、サヴォシン選手もその一人。この世代から誰が抜け出すかというのが楽しみなのですが、まずはサヴォシン選手がシニアの国際大会で名を売った形となりましたね。
 日本の村上選手は4位と表彰台に一歩届きませんでした。SPで4回転がパンクして2回転に、3ルッツからの連続ジャンプが単独にと大きなミスが続き、8位と大幅に出遅れた村上選手。フリーでは挽回して4位、トータルでも4位にまで順位を上げましたが、内容的にはまだまだ村上選手本来の出来ではないですね。村上選手は昨季は出場した全ての大会のSPで80点台をマークしていますし、そういった安定感が持ち味かなと思うのですが、今回は得意の4サルコウが不発に終わり、自分の流れでスケートができなかった印象ですね。GPのスケートアメリカに向けて、焦らず調整してほしいと思います。
 これがシニア国際大会デビューとなった宮田選手は10位となりました。順位的には10位ですが、ショートでミスを重ねたところからフリーではまずまず立て直したかなという感じですね。スピンでのミスも見られたので、まずは難度の低いジャンプだったりジャンプ以外のエレメンツをコンスタントに揃えることが自信に繋がるでしょうし、4回転の成功にも繋がるのかなと思いますね。

 女子は昨季の世界ジュニア銀、ロシアのマリア・ソツコワ選手が優勝を果たしました。ショートは3+3が3+2となる取りこぼしがあり2位でしたが、フリーはほぼノーミスのまとまった演技で自己ベストを更新、2位に大差をつけての金メダルとなりました。シニアデビューの試合として内容的にもスコア的にも申し分ないと思いますし、GPを見据える上で十分アピールできたのではないでしょうか。
 2位は同じくロシアのユリア・リプニツカヤ選手。SPはジャンプの細かいミスがありつつも得意のスピンで得点を稼いで首位発進しましたが、フリーは回転不足が相次ぎ得点は伸びず、2位と順位を落としました。第二次性徴による身体の変化からジャンプの調子を崩し低迷が続いているリプニツカヤ選手。今大会もフリーではミスが連鎖してしまいましたが、回転不足がありながらもとりあえず着氷している、転倒はしなかったというところが、明るい兆しと言えないこともないですね。回転不足になってしまうクセみたいなものがついているようなので、当面のあいだはそのあたりが修正課題になるでしょうね。
 3位はUSインターナショナルクラシックで2位だったアメリカのマライア・ベル選手。総合は3位ですがショートとフリーのみの順位ではそれぞれ5位、4位で、銅メダルはほかの選手のミスに助けられたラッキーの部分が大きいかなと思います。内容も得点も自己ベストだったUSインターナショナルクラシックと比べるとあまり良くはないのですが、それでも銅メダルを獲得できたという“持っている”選手なのかもしれないですね。このチャレンジャーシリーズ2戦での経験を今後に活かしてほしいですね。


《フィンランディア杯》

c0309082_01141365.jpg


 フィンランドのエスポーで行われたフィンランディア杯には、浅田真央選手、日野龍樹選手、アイスダンスの平井絵己&マリオン・デ・ラ・アソンション組が日本から出場しました。
 女子を制したのはカナダのケイトリン・オズモンド選手。SPは自己ベストタイとなるスコアで3位につけると、フリーではミスを最小限にとどめ、自己ベストを更新しての逆転優勝を勝ち取りました。フリーは3+3や3+2+2といった重要なコンビネーションジャンプでミスがあり決して完璧な内容ではありませんでしたが、大怪我をしてからリハビリをしてここまで戻ってくるまでのことを思うと、このレベルを取り戻したということが素晴らしいと思いますね。昨季は復帰1季目で不安定さが目立ちましたが、復帰2季目となる今季はシーズン序盤から100%に近い状態で臨めるでしょうし、ここからがオズモンド選手にとって本当の再スタートと言えるかもしれません。
 2位は浅田選手。今回はショート、フリーともに代名詞の3アクセルを外した構成で挑みましたが、どちらでも細かいミスがあり得点を伸ばし切れませんでした。浅田選手にしては珍しくジャンプのミスだけではなく安定感抜群のスピンのレベルを取りこぼしているところが多々見られ、どうしたのかなと思いましたが、試合後に佐藤信夫コーチが明かしたところによると左膝に痛みがあるとのことで、その影響があったのかもしれませんね。浅田選手が脚に不安を抱えるというのはそんなにないことなので今後が心配ですが、まずはカナダに渡航して振り付け師のローリー・ニコルさんの元で膝に負担ができるだけかからないよう振り付けを変更し、日本には帰国せずカナダから直接スケートアメリカに向かうとのこと。例年とは違うシーズンのスタートになってしまって浅田選手の中ではもしかしたら焦りとかもどかしい気持ちとかがあるかもしれないのですが、GPはともかくとして、全日本にさえ間に合えば大丈夫なので、焦らず調整していってほしいですね。演技自体はジャンプミスは別にして、ショートもフリーも本当に素晴らしいプログラムで、新たな浅田選手の一面を目にして背筋がゾクゾクするような感覚を味わいました。浅田選手にしか表現できないものが凝縮された、浅田選手にしか演じられないプログラムだと思うので、また次戦で見られるのがとても楽しみです。
 3位はロシアのアンナ・ポゴリラヤ選手です。ショートはほぼクリーンな演技で1位に立ちましたが、フリーでミスを連発しショートのリードを保てませんでした。この大会の少し前に出場したジャパンオープンではこれより良い演技を披露したポゴリラヤ選手ですが、どうしても良い演技がなかなか続かないという印象がありますね。ただ、この場合はジャパンオープンからフィンランディア杯まであまり時間もなかったので、調整が難しかったのかもしれません。GPではぜひ、また彼女らしい演技を見せてほしいですね。

c0309082_01383497.jpg


 男子はアメリカの新星ネイサン・チェン選手がシニアデビューにしてさっそく優勝。しかも、ショートでは4ルッツ+3トゥループに挑みクリーンに着氷するという史上2人目の快挙を達成し、続いてチャレンジした4フリップは転倒したものの、翌日のフリーでは史上初となる4回転4種類4本に挑戦。しかし、前半に組み込んだ4ルッツ+3トゥループ、4フリップ、4トゥループはすべて失敗。ですが、後半に急遽予定を変更して4トゥループに再び挑み見事成功。続く4サルコウはあえなく転倒してしまい、結果的に成功したのは後半の4トゥループのみとなりましたが、それでも高い技術点を稼いで金メダルを手にしました。歴史的な試みは残念ながら成功には結びつきませんでしたが、すごいのは4回転が全て回り切っていたということ。失敗はしていても回転不足ではないので、成功の日は近いのかなという感じですね。ただ、4回転1本1本は成功させられても、プログラムの中でそれらを全て揃えるのは尋常なことじゃないので、本当にそんなものすごいジャンプ構成が完成する日が来るんだろうかと、まだ半信半疑というか、信じられないような気分ですね。でも、この年代の男子選手の進化の速度というのはとてつもないものがあるので(宇野選手や金博洋選手のように)、意外とその歴史的な日はあっさりと訪れたりするのかもしれません。
 2位となったのはカナダのパトリック・チャン選手。ショートで4回転と3アクセルでミスを連発してしまい3位にとどまると、フリーでは苦手の3アクセルをクリーンに2本決めた一方で4回転が入らず、チャン選手にしては平凡な得点に終わりました。ただ、彼のことですからシーズンが進むにつれてしっかりとコンディションを上げてくるでしょうし、GOE加点や演技構成点の高さは揺るぎないものなので、GPが楽しみですね。また、8月にキャシー・ジョンソンコーチと師弟関係を解消した後、コーチが不在となっていたチャン選手ですが、9月下旬にアイスダンスのコーチで振り付け師でもあるマリナ・ズエワさんが新たなコーチに就任することを発表しました(正式にはズエワさんを始めとしたアイスダンスのコーチチームですね)。ズエワさんといえば多くのアイスダンサーを育てきた名コーチでもあり、中野友加里さんや小塚崇彦さん、村上佳菜子選手らのプログラムを手がけたきた名振り付け師でもあり、現在は村元&リード組のコーチでもあり、とにかく日本のフィギュアファンにもよく知られた存在です。基本的にアイスダンスのコーチなのでチャン選手と組むと知ったときは驚きましたが、アイスダンスの指導者とタッグを組むことでチャン選手のスケートにも新たな魅力が加わるかもしれませんし、二人の良い化学反応が楽しみだなと思います。
 3位はロシアのマキシム・コフトゥン選手。ショートでは4サルコウ+3トゥループを決めてトップに立ったものの、一転フリーではその4サルコウが決まりませんでした。ロシア国内は男子の競争も女子に負けず劣らず厳しくなってきているので、ロシア選手権を3連覇しているコフトゥン選手にとっても、今シーズンは勝負の年となるかもしれませんね。

 アイスダンスの平井&デ・ラ・アソンション組は10組中9位でした。SD、FDともにパーソナルベストからは遠い得点で、シーズン序盤の難しさがうかがえましたね。3度目となるNHK杯では実力を出し切れるよう、頑張ってほしいですね。



 さて、チャレンジャーシリーズ16/17振り返りは以上です。昨季からの好調を維持している実力者もいれば、これがシニアデビューとなったルーキーの活躍も目立ちました。特に女子は6戦中3戦でシニア1年目の選手が優勝していて、男子のチェン選手含め、新星の4選手がGPでもチャレンジャーシリーズの勢いそのままに躍動するのかが個人的には気になりますね。また、GP前哨戦という位置付けではありますが、宇野選手の4フリップに始まり、羽生選手の史上初の4ループ成功、チェン選手の4種類4回転チャレンジなど、フィギュアの最先端を行くシーンが多々あり、見どころの多い6戦だったのではないかと思います。GPがますます楽しみになりました。
 次の記事ではジュニアのGPについて取り上げたいと思いますので、記事アップまでしばしお待ちください。では。


:記事冒頭の国際スケート連盟のロゴは、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、ロンバルディアトロフィーの写真、オータムクラシックの写真、フィンランディア杯の女子の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、USインターナショナルクラシックの写真、ネーベルホルン杯の写真、フィンランディア杯の男子の写真は、フィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
ジャパンオープン2016―日本、大差で優勝 2016年10月6日


[PR]
by hitsujigusa | 2016-10-13 03:01 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_15223019.jpg



 10月になり、グランプリシリーズの開幕も間近に近づき、選手たちの新プログラムもその多くがB級国際大会などでお披露目されています。そんな中でまだこの記事シリーズで取り上げていなかった選手の新プログラムについてまとめたいと思います。


 まずは上の写真でお分かりのとおり、世界女王のエフゲニア・メドベデワ選手から。SPは「River Flows in You」、フリーは「映画『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』より」であることがわかっています。
 ショートに関してはまだ拝見していないのでわかりませんが、フリーは先日のジャパンオープンでお披露目されたものを拝見。昨季のフリー同様、ストーリーが感じられる独創性のある振り付けになっていて、想像を掻き立てられる内容でしたね。映画『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』は9.11をきっかけに変化していく家族を描いたヒューマンドラマですが、そうした物語の要素がどれくらいプログラムにも生かされているのかはわかりません。表現面やメッセージ性にとてもこだわる選手なので、このプログラムもただ映画のテーマやメッセージをそのまま反映させるのではなく、オリジナルのアイデアを織り交ぜているんじゃないかなという気もしますね。


 続いては世界選手権2016の銅メダリスト、アンナ・ポゴリラヤ選手です。

c0309082_20145406.jpg

 今季はすでにジャパンオープン、フィンランディア杯と2試合こなしているポゴリラヤ選手は、SPが「映画『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』より」、フリーが「Modigliani Suite/Le Di a la Caza Alcance/Memorial Requiem」です。
 ショートは映画の劇中曲のタンゴを用いたプログラム。艶やかな表現に長けたスケーターですので、タンゴはぴったりですね。そしてこのプログラムの振り付けはウズベキスタンのミーシャ・ジー選手。自身も現役選手として活動しながらコレオグラファーとしても活躍の幅を広げていて、ポゴリラヤ選手とジー選手のコラボがどんな感じになるのか楽しみですね。
 フリーはさまざまな曲を組み合わせていて、「Modigliani Suite」は『モディリアーニ 真実の愛』という映画から、「Le Di a la Caza Alcance」はスペインのフラメンコ歌手エストレラ・モレンテさんの楽曲、「Memorial Requiem」は『英国式庭園殺人事件』や『ピアノ・レッスン』などの映画音楽を手がけたことで知られるマイケル・ナイマンさん作曲の、『コックと泥棒、その妻と愛人』という映画からの一曲です。いろんなジャンルの曲を編集しているので、どういうふうに一体化させて一つの作品として完成させるかというのはスケーターの力量がかなり試されるような気がするのですが、五輪プレシーズンということでより表現の幅を広げる、積極的なチャレンジができるシーズンでもありますね。


 世界選手権2014の銀メダリスト、ユリア・リプニツカヤ選手は、SPが「枯葉」、フリーが「映画『キル・ビル』より」となっています。
 ショートの「枯葉」はシャンソンの名曲ですね。ただ、歌うのは劉思涵(英名はコアラ・リウ)という中国の女性歌手で、おなじみの「枯葉」とは少し違うアレンジになっているでしょうか。また、振り付けはあのステファン・ランビエールさんとのことで、リプニツカヤ選手とランビエールさんの初のコラボ、化学反応が楽しみですね。。
 一方、フリーは映画『キル・ビル』のサントラを使用したプログラムということで、鈴木明子さんの12/13シーズンのSPを思い起こさせますが、リプニツカヤ選手のプログラムは歌詞入りですので、だいぶ雰囲気も違います。ブレイクし脚光を浴びていた頃はまだまだ少女の面影が濃かったですが、今では18歳となり大人の女性の色気も漂わせているので、現在のリプニツカヤ選手ならではの選曲だなと感じます。
 大舞台の主役の一人となったソチ五輪から早2年半あまり。それ以降はなかなか理想的な演技を披露できていないリプニツカヤ選手。今季はすでにチャレンジャーシリーズのオンドレイ・ネペラ・メモリアルで初戦を終えていて、そこではSPこそまとまった演技で首位に立ちましたが、フリーで崩れて2位となりました。リプニツカヤ選手が彼女らしい演技を取り戻す特効薬みたいなものがあるわけではないので、地道に経験と自信を積み重ねていくしかないのでしょうが、ぜひ今季こそ彼女の心からの笑顔を見たいですね。


 同じくロシアのベテラン、アリョーナ・レオノワ選手は、SPが「It's Oh So Quiet」、フリーが「四季」だそうです。
 ショートの「It's Oh So Quiet」は世界的歌手ビョークの楽曲で、レオノワ選手とビョークという組み合わせは新鮮ですね。女性的な可愛らしさもあり、でも単なる可愛いだけでは終わらないパワフルな歌でもあり、おもしろいチョイスです。
 そしてフリーはヴィヴァルディの「四季」という正統派クラシック。こちらもレオノワ選手が王道のクラシックを選ぶのは珍しいので、新しさを感じます。25歳とベテランのレオノワ選手ですが(今年で26歳)、まだまだ新境地を見せてくれそうですね。


 男子の成長株、ミハイル・コリヤダ選手。こちらはショートが昨季と同じ「Nightingale Tango アニメ『ヌー、パガジー!』より/ジョン・グレイ」、フリーは「シルク・ドゥ・ソレイユ」だそうです。
 ショートは昨シーズンからの持ち越しということで、ユーモラスで個性的なプログラムをさらにブラッシュアップ、進化させたものが見られることを期待したいですね。フリーは“シルク・ドゥ・ソレイユ”と表記されていて、普通に考えるならばあのエンターテインメント集団のシルク・ドゥ・ソレイユのことだと思うのですが、実際にどの音楽を使用するのか詳細はわかりません。


 一方、ベテランのセルゲイ・ボロノフ選手は、SPが「映画『私が、生きる肌』より」、フリーが「エクソジェネシス交響曲第3部」であると発表されています。
 SPはスペイン映画のサントラですね。フリーはフィギュア界ではもう定番となったイギリスのバンド、ミューズの楽曲で、今季はアメリカのアシュリー・ワグナー選手もこの曲をフリーに用いています。ボロノフ選手は昨季のショートで同じミューズの曲を演じているので、その延長線上にある感じかもしれません。


 今季シニアデビューのマリア・ソツコワ選手は、ショートは「Butterflies Are Free」、フリーは「Adagio」で、どちらも旧ソ連の作曲家アルフレート・シュニトケの楽曲です。
 シュニトケはドイツ系のロシア人で、日本のフィギュアファンには浅田真央選手の10/11シーズンのSPがシュニトケ作曲だったことで多少なじみがあるかもしれませんが、フィギュア界全体を見渡せばさほど人気のある作曲家とは言えません。なので、ショートもフリーもシュニトケというのは意外性があっておもしろいなと思います。
 オンドレイ・ネペラ・メモリアルで優勝し、好調な滑り出しを見せたソツコワ選手ですが、その演技を拝見すると、とてもシニア1年目とは思えない大人びた雰囲気をまとっているなと感じます。身長がすでに170cmもあって、手足もかなり長いので、そういった見た目からの印象も強いですが、体の動かし方も洗練されていて、音楽自体も決して表現するのがたやすいタイプの曲ではないですがしっかり滑りこなしていて、今季の飛躍を予感させてくれる演技でした。


 ペアの大ベテラン、川口悠子&アレクサンドル・スミルノフ組に関しては、SPが「オール・アローン」、フリーが「月の光」であることが判明しています。
 これらのプログラムは両方とも以前使用したことのある楽曲で、数年の時を経ての再登板ということになります。あえて同じプログラムをもう一度演じる意図、目的について、具体的なことはわかりませんが、かつて演じた時から時間が経っているからこそ、また違うものが表現できるというのもあるでしょうし、より良いプログラムを作りたいという想いはあるでしょうから、同じプログラムというよりは、新しいプログラムを見るような気持ちで見たいですね。


 伸び盛りのペア、エフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組は、SPが「New Swing」、フリーが「Music」とのことです。
 ショートに関しては作曲者名など明記されていないので、具体的にどの曲のことを指しているのかは不明です。フリーはイギリスの歌手ジョン・マイルズが1976年に発表した楽曲。出だしはゆったりと抒情的に、かと思うと急激にアップテンポに、再びスロー、また、アップテンポと、コロコロと展開が移り変わるという印象のプログラムで、曲のイメージが一定ではないのでなかなか難しそうですが、完成した時には想像以上のものを見せてくれるプログラムにもなりそうだなと思います。


 アイスダンスの元ヨーロッパチャンピオン、エカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組は、SDが「Mercy On Me/シング・シング・シング」、FDが「前奏曲第20番/四季」であることがわかっています。
 今季のショートダンスの課題に合わせ、ブルースパートはアメリカの歌手クリスティーナ・アギレラの「Mercy On Me」、スウィングパートはスウィングジャズのスタンダードナンバー「シング・シング・シング」というメドレーですね。一方、フリーはショパンの前奏曲にヴィヴァルディの代表曲という正統派クラシックメドレー。とはいえ、ショパンのピアノ曲とヴィヴァルディのヴァイオリン曲では雰囲気も違うので、それらをどういうふうに組み合わせて表現するのか興味深いですね。


 ここまでロシアの選手についてお送りしてきましたが、ガラリと変わって今度はカザフスタンのデニス・テン選手です。

c0309082_01344205.jpg

 SPはバレエ「ロメオとジュリエット」、フリーは「トスカ」とのことで、テン選手にしては珍しくショートもフリーも王道のクラシックです。
 テン選手は昨シーズンの途中からチャイコフスキーの「ロメオとジュリエット」をフリーに使用していて、なので今季のショートはそのアレンジかなと思ったのですが、作曲者がチャイコフスキーではなくプロコフィエフなので、同じ“ロミジュリ”でも全く別物ですね。
 そしてフリーは定番のオペラ「トスカ」。今季は村上佳菜子選手もフリーで「トスカ」を演じています。テン選手が本格的なオペラで滑るのは初めてですね。重厚で壮大な作品ですが、そういった世界観のプログラムはテン選手にとってはお手のものかなという感じがします。テン選手の正統派で美しいスケーティング、端正な表現力、パワフルで力強い演技力が存分に活かせる選曲だなと思います。
 また、振り付け師に関していうと、これまでテン選手のプログラムはほとんどローリー・ニコルさんが手がけてきましたが、今回はショート、フリーともにニコライ・モロゾフさんが担当。振り付け師の変更というのは選手にも大きな影響や変化を与えるでしょうから、今までのプログラムとの違いのみならず表現の仕方の違いにも注目したいと思います。
  昨シーズンは負傷の影響がシーズン終盤まで響き、また、世界選手権では羽生結弦選手との間で練習を巡るトラブルも勃発し、いろいろと難しいシーズンだったと思うのですが、今季はテン選手らしいスケートが一つでも多くみられることを楽しみにしたいですね。


 元カナダ女王のケイトリン・オズモンド選手については、SPが「Sous le ciel de Paris/Milord」、フリーはオペラ「ラ・ボエーム」であることがわかっています。
 SPはエディット・ピアフの楽曲2曲のメドレー。オズモンド選手は昨季のショートもシャンソンを使用していて、大怪我からの復帰1季目とあってジャンプはあまり伴わなかったものの、プログラムとしては見応えのあるものを見せてくれました。今季のショートも同じシャンソンということで、昨季のSPの延長線上で、さらなる進化が見られるんじゃないかなと思いますね。
 一方のフリーはプッチーニの代表的オペラ「ラ・ボエーム」。オペラなのでもちろん重厚さもありますが、ゴージャスで女性的な華やかさもある作品だと思うので、元々華のある表現が特徴的なオズモンド選手に合いそうですね。この記事を書いている現在開催中のフィンランディア杯では並みいる強豪たちを退けてパーソナルベストでの優勝を飾っていて、長く怪我に苦しめられたオズモンド選手が今季は世界の舞台でもようやく本領発揮となりそうで今から楽しみだなと思います。


 こちらもカナダの実力者、ケヴィン・レイノルズ選手は、SPが「Puutarhautuminen/Kesäillan Tvist/Muuttosarja」、フリーが昨季と同じ「映画『グランドピアノ 狙われた黒鍵』より」です。
 SPは北欧のフォークグループ、Hohkaの楽曲2曲と、同じく北欧のフォークグループ、Trokaの楽曲1曲を組み合わせたプログラム。なかなかにマニアックなチョイスですが、フィギュア界では北欧のフォークはなかなか見ないので新鮮味を覚えますね。
 フリーは昨シーズンと同じプログラムですが、2季前からの怪我の影響で昨季もレイノルズ選手の本来の演技というのはあまりできなかったと思うので、今季は2季連続の体になじんだプログラムでシーズン前半からレイノルズ選手らしい滑りができることを祈っています。



 いよいよ2週間後にはグランプリシリーズも開幕。オリンピックのプレシーズンである今季は、選手たちにとってもオリンピックを見据えた1年間となります。女子では新世代の台頭、男子では新しい種類の4回転登場による新たな4回転時代に突入し、ますます目が離せません。ですが、フィギュアの最大の魅力はやはりプログラムそのもの。今季はどんな名プログラムが生まれるのか、期待したいですね。では。


:メドベデワ選手の写真はマルチメディアサイト「Newscom」から、ポゴリラヤ選手の写真はフィギュアスケート情報サイト「Absolute Skating」の公式フェイスブックページから、テン選手の写真はフィギュアスケート情報誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
浅田真央選手、16/17シーズンのプログラムを発表&新プログラム情報① 2016年6月27日
宮原知子選手、16/17シーズンのプログラムを発表&新プログラム情報② 2016年7月23日
各選手の16/17シーズンの新プログラムについて・その③ 2016年8月19日
羽生結弦選手、16/17シーズンのプログラムを発表・新プログラム情報④ 2016年9月15日
各選手の16/17シーズンの新プログラムについて・その⑤ 2016年9月24日


[PR]
by hitsujigusa | 2016-10-09 20:53 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_16174764.jpg



 フリー演技のみで地域別の順位を競うジャパンオープン2016が今年もさいたまで開催されました。今年は男女の世界チャンピオン2名が揃ったことに加え、女子は世界選手権2016のトップ5が勢ぞろいという豪華な顔ぶれで、この時期の大会にしてはハイレベルな内容となりました。その模様をざっくりとお伝えします。

Kinoshita Group Cup Japan Open 2016 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 ジャパンオープンは日本、北米、欧州のチーム対抗戦。各チーム男子2名、女子2名でフリー演技を行い、その合計得点でチーム順位を決定します。なお、現役選手のみならず、引退したプロスケーターも参加可能です。
 今年のジャパンオープンは日本が637.65点で優勝、2位は欧州で595.66点、3位は北米で574.20点となりました。
 ここからはチームごとに内容と結果を振り返っていきます。


●日本チーム


 日本チームの今回のメンバーは、女子はエースの宮原知子選手、今季シニア参戦の樋口新葉選手、男子はシニア2年目となる宇野昌磨選手、そして2013年に引退された織田信成さんです。
 まず何といっても最大の注目を浴びたのは、4月のチームチャレンジカップで世界初となる4フリップを成功させた宇野選手でしょう。今大会も新たな代名詞となった4フリップをプログラムに組み込むことを明言し、実際に成功。しかもチームチャレンジカップでは若干着氷で詰まったりこらえたりした感じもあったのが、今回は流れも素晴らしい完璧な4フリップで、完全に自分のものにしたジャンプだったと思います。その直後の4トゥループでは転倒してしまいましたが、その後は見事に立て直し、後半の4トゥループからのコンビネーション、3アクセル+3トゥループ、さらにオリジナルの組み合わせである3アクセル+1ループ+3フリップもクリーンに成功させ、非公式ながら198.55点というハイスコアで男子のトップに立ちました。昨年もこのジャパンオープンで圧巻の滑りを見せ、そこからあれよあれよという間に世界のトップレベルに駆け上がった宇野選手ですが、一方でグランプリファイナルを絶頂に調子を落としてしまったといういきさつもあります。今季はその教訓を活かして、さらなる進化を目指すでしょうから、4フリップを始めとした高難度のジャンプはもちろん、表現者としても宇野選手らしい見応えのあるプログラムを期待したいですね。
 女子のエースの宮原選手は、相変わらずの安定感を発揮。約1点ほどパーソナルベストを上回る得点で女子の2位となりました。2週間ほど前のUSインターナショナルでは回転不足を取られる場面もありましたが、短期間でそういった課題も修正していて、さすが宮原選手という演技でしたね。プログラムに関しては逆に宮原選手らしからぬ壮大さを前面に押し出した内容になっていて、表現面でもすでに進化というのがうかがえましたが、シーズンが進むにつれてさらに勢いだったり躍動感というのも現れてくると思うので楽しみですね。
 初出場となった樋口選手は、緊張のためかところどころ珍しいジャンプミスがありましたが、滑り自体は彼女らしい雄大でスピード感に溢れていて、決してシニアの先輩たちに交じっても見劣りしないものだと感じました。プログラムも定番の「シェヘラザード」ですが、「シェヘラザード」のおなじみのパートをあまり用いていてなくて、全体的にゆったりした曲調なのが印象に残りました。その中で樋口選手の体の使い方が以前よりもとてもしなやかになっていて、女性的な表現というのが見違えるように美しくなっていますね。迫力たっぷりのジャンプはもちろん、表現面でも注目したいと思います。
 そして予想外の活躍を見せたのがプロスケーターで解説者やタレントとしても活動する織田さん。4+3、3アクセルを含む難度の高いプログラムを大きなミスなく滑り切り、得点も何と現役時代のパーソナルベストを超える178.72点をマークし、男子の3位という好成績でチームに貢献しました。試合後のインタビューではまさかの自己ベスト更新に、「あの涙の引退は何だったんだろう」とジョークまじりに笑顔で語った織田さんですが、引退したのが2013年の全日本選手権で、そこから約3年経っているにもかかわらず4+3や3アクセルを跳べるというのは本当に凄い超人的なことですし、それだけこのジャパンオープンに向けて練習を積んできたんだなというのが感じられましたね。


●欧州チーム


 欧州チームは女子は現世界女王、ロシアのエフゲニア・メドベデワ選手と世界選手権3位のアンナ・ポゴリラヤ選手、男子は世界選手権2連覇中のスペインのハビエル・フェルナンデス選手、今年1月の欧州選手権を最後に現役を引退したフランスのフローラン・アモディオさんが出場。現在の世界王者が二人も揃うゴージャスなメンバーで臨みました。
 圧巻の演技を見せたのはメドベデワ選手。ストーリー性豊かで哲学的な印象も与えるプログラムの表現の仕方はもちろん、ジャンプも変わらず2つの3+3やタノジャンプなど工夫が凝らされていて、それでもまだシニア2年目なんだというのが信じられないほどの風格を漂わせました。今のところ成長期によるジャンプへの悪影響は感じられませんでしたし、この調子でいくと今シーズンも快進撃は続くのかなという感じがします。
 ポゴリラヤ選手は細かなジャンプミスがいくつかあり会心の演技とはなりませんでしたが、序盤のミスを後半ではしっかりと取り返し、世界のメダリストとして存在感を見せつけました。彼女もまだ18歳なのですが、どこかしらベテランのような重厚感というのもまとっていて、全く若手という感じがしませんね。
 そして世界王者として君臨しているフェルナンデス選手。小さなミスはあったものの、3つの4回転をどれもクリーンに下りていて、スロースターターというか、シーズンの終盤にピークを持ってくるのが上手いフェルナンデス選手のこの時期にしては、早い仕上がりだなと感じました。プログラムは「エルヴィス・プレスリー・メドレー」で、フェルナンデス選手らしい喜劇役者的な軽快さを存分に発揮しつつ、往年のスターさながらに観客を見事に自分の世界に引き込んでいて、その中で何でもないことのように力みなくさらりと4回転3本を跳んでいるのがさすがでしたね。プログラムも滑りこなれてくるともっともっとノリノリになるでしょうから楽しみにしたいと思います。
 アモディオさんは引退して8か月あまり経ってのこの大会で、メンタル的にここに合わせて調整するのは難しかったんじゃないかなと想像します。エレメンツの数を少なくした演技でしたが、その分、演技や表現に多少なりとも集中を注げたんじゃないかなと思いますね。


●北米チーム


 北米チームは女子のアシュリー・ワグナー選手、グレイシー・ゴールド選手、男子のアダム・リッポン選手、休養中のジェレミー・アボット選手という全員アメリカの選手で構成されました。
 最も輝きを放ったのは世界選手権銀メダリストのワグナー選手。細かなジャンプミスこそ複数ありましたが、壮大な「エクソジェネシス交響曲第3部」の旋律に乗せて、ワグナー選手らしいダイナミックでエレガンスな滑りを存分に見せてくれました。昨シーズンとうとう世界選手権の表彰台に到達したワグナー選手が、そこからいかに上積みしてさらなる躍進を見せるのか、要注目ですね。
 現全米女王のゴールド選手は、まだ調整が間に合っていなかったのか、ミスの散見される内容となりました。昨シーズンは期待されながらも望むような結果を手に入れられなかったゴールド選手。今季こそ強固にそびえている壁を乗り越えるシーズンとなるのか、シーズン前半からの仕上がり、完成度にも注目したいですね。
 こちらも全米王者のリッポン選手。今回も4ルッツに挑戦し、残念ながらダウングレード(大幅な回転不足)で転倒となり成功には至りませんでしたが、それ以外はおおむねまとまった内容だったのではないでしょうか。昨季はシーズンを通して比較的安定した演技を続け、悲願の全米チャンピオンとなりましたが、アメリカ男子は上位の実力が拮抗しているというイメージなので、リッポン選手も全米2連覇に向けて厳しい戦いが続くでしょう。また、世界選手権2016の結果によってアメリカ男子は次の世界選手権の枠が3から2に減ってしまったので、その2枠に入るだけでも大変な事だと思います。平昌五輪出場に向けても今季いかに安定した結果を出し続けていくかがカギになってくると思うので、リッポン選手に限ったことではありませんが、注目のシーズンになりますね。
 引退こそ正式発表していないものの、長らく競技会からは遠ざかっているアボット選手は、それでもミスを最小限に抑えた演技でリッポン選手を上回る男子の4位となりました。4回転は入っていませんが、2本の3アクセルを組み込み、しかもそのうちは3アクセル+1ループ+3サルコウという難しい組み合わせで、現時点での最大限の力を発揮できたんじゃないかなと思います。プログラム全体を評価するプログラムコンポーネンツの点数もやはり高くて、“ジェレミー・アボットここにあり”という存在感を示しました。


 さて、ジャパンオープンが終わり、チャレンジャーシリーズでは浅田真央選手やエリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手、パトリック・チャン選手という世界チャンピオン経験者が顔を揃えるフィンランディア杯も開幕が迫り、ジュニアのGPシリーズも最終戦を残すのみ。GPシリーズ開幕前からいろいろと話題の豊富なフィギュア界ですが、五輪プレシーズンとなる今季が一体どんなシーズンになるのか、まだ全然想像がつきません。が、いろんな意味でにぎやかなシーズンになるのは間違いないのではないかと思います。では。


:記事内の写真はスポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
ISUチャレンジャーシリーズ16/17について 2016年10月13日


[PR]
by hitsujigusa | 2016-10-06 14:22 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)