c0309082_23445059.jpg


 大阪にて行われた全日本選手権2016。女子&ペア編ですが、この記事では女子の1~6位の選手までを取り上げます。なお、男子&アイスダンス編はこちらをご覧ください。
 優勝したのは一昨年、昨年とこの大会を制しているディフェンディングチャンピオン宮原知子選手。圧倒的な強さで3連覇の偉業を成し遂げました。2位には昨年の銀メダリストである樋口新葉選手が入り、3年連続で表彰台に立ちました。3位は今季躍進している三原舞依選手で、GPでの勢いそのままに全日本初表彰台となりました。
 ペアは須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組が制し、2連覇を達成しています。

第85回全日本フィギュアスケート選手権大会 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 3年連続で女子を制したのはGPファイナル2016銀メダリストの宮原知子選手です。

c0309082_00012039.jpg

 SPはまず得意の2アクセルをきっちり決めて好調な滑り出し。続くステップシークエンスは軽やかかつ丁寧な滑りでレベル4を獲得。後半に2つのジャンプ要素を組み込み、まず最初の3ルッツ+3トゥループをしっかりと回り切って着氷。さらに3ループもクリーンに下り、安定感抜群のスピンも全てレベル4と隙の無い演技を披露。フィニッシュした宮原選手は満面に笑みを浮かべました。得点は参考記録ながらパーソナルベストを上回る76.49点をマークし、堂々の首位発進となります。

c0309082_01122001.jpg

 フリーはまず3ループを難なく下り、続いて得点源の3ルッツ+3トゥループでしたが、セカンドジャンプの着氷でバランスを崩し珍しくステップアウトします。しかし、直後の3フリップは若干耐えながらもクリーンに着氷。基礎点が1.1倍になる後半、最初の3ルッツからの3連続ジャンプはルッツがアンダーローテーション(軽度の回転不足)と判定されますがジャンプ自体は良い流れでスムーズに成功。続いて2アクセル+3トゥループはパーフェクトに着氷。残りの3サルコウ、2アクセルもきれいに成功させ、ダイナミックなプログラムの世界観を全身で生き生きと表情豊かに演じ切りました。得点は138.38点でフリー1位、総合1位と完全優勝で3連覇を飾りました。
 フリーは珍しくステップアウトするミスがありましたが、ステップアウトという些細なミスでさえ珍しいと思わせてしまうのが、“ミス・パーフェクト”の宮原選手の凄さを物語っています。3連覇という期待が懸かる中で、さらに濱田美栄コーチからも「狙って勝つ」ということを言われていたそうですから、ただ自分の演技に集中するだけではなくあえてプレッシャーを作った状況であの確実に勝てる演技ができたというのは素晴らしいですし、宮原知子という選手が勢いのある若手ではなく、日本女子のエースとして「勝って当然」の領域まで足を踏み入れているのだということを、今回の演技と3連覇という結果によって改めて感じさせられました。
 今後の宮原選手は2月の四大陸選手権とアジア冬季大会の2連戦、3月の世界選手権という厳しいスケジュールを戦い抜かなければいけないわけですが、体調にだけは気を付けて頑張ってほしいですね。全日本3連覇、おめでとうございました。


 2位は今季シニアデビューの樋口新葉選手です。

c0309082_01351335.jpg

 SP冒頭は2アクセルをクリーンに決めて良い流れを作ります。2つのスピンとステップシークエンスを挟んで後半、得点源の3ルッツ+3トゥループを完璧に成功。続く3フリップはエッジエラーを取られたものの着氷、ランディングともに綺麗にまとめ、ラストはレイバックスピンで演技を締めくくった樋口選手は安堵したような笑みを浮かべました。得点はこちらも非公式ながらパーソナルベストを上回る68.74点で3位と好発進します。

c0309082_14035309.jpg

 フリーはまず3ルッツ+3トゥループから、これをパーフェクトに着氷して1.4点の加点を獲得。さらに3ループも1.4点の高加点で最高のスタートを切ります。しかし中盤の3サルコウがダウングレード(大幅な回転不足)での着氷で転倒と珍しい形でミス。後半に入り最初は2アクセルを難なく下りると、2本目の3ルッツ+3トゥループも完璧な成功で1.4点の加点。終盤の3フリップは踏み切りが不正確となったものの加点が付く出来でまとめ、最後の2アクセルからの3連続ジャンプもクリーンに成功。中盤の転倒を忘れさせるような挽回を見せ、130.75点でフリー4位、総合2位と順位を上げました。
 今季の樋口選手はしばしばジャンプのパンクがありもったいない取りこぼしをするというパターンが散見されたのですが、今大会もフリーの転倒はあったとはいえ課題だったパンクはなく、2年連続で全日本の表彰台に乗っている実力者の底力を見せつけましたね。今大会の結果によってシーズン後半の主要国際大会への派遣も決まった樋口選手ですが、個人的に期待することとしてはGPから今大会にかけて樋口選手らしい躍動感というのは抑え気味な気がするので、今シーズン手に入れた女性的な柔らかい表現に加え、本来の樋口選手の持ち味であるダイナミックな表現がさらに表れると良いなと思います。


 銅メダルを獲得したのはこちらも今季シニアデビューの三原舞依選手。

c0309082_14292570.jpg

 SPはまず得意の3ルッツ+3トゥループを軽やかに成功。後半の2アクセル、そして最後の3フリップと全てのジャンプをクリーンに下り、フィニッシュした三原選手は満足そうな笑顔を見せました。しかし得点は思ったほど伸びず65.91点で5位となります。

c0309082_14442562.jpg

 フリーもまずは3ルッツ+3トゥループから、これをショート同様パーフェクトに決めて1.4点の高い加点を得ます。さらに3フリップ、2アクセルと次々ジャンプを成功させます。後半もまずは2アクセル+3トゥループを決めると、3ルッツからの3連続ジャンプもクリーンに着氷。終盤の3サルコウ、3ループと全く危なげなく下り、演技を終えた三原選手は控えめながらガッツポーズで喜びを露わにしました。得点は132.26点でフリー2位、総合3位と順位を上げ、全日本初表彰台となりました。
 GP同様に微塵も失敗する気配のない安定感抜群の演技で、まるでリプレイ映像を見ているかのような気分にさえなりました。普通なら初めての世界選手権の出場権が懸かる特別な試合で緊張して縮こまってしまってもおかしくないと思うのですが、そんなプレッシャーなどまるで感じていないような、むしろこの状況を楽しんでいるかのようなのびやかさで、これはやはり彼女が昨季難病を経験して滑れない時期があったというのが影響しているのでしょうね。これから未知の世界に足を踏み入れることになる三原選手ですが、シーズン前半と同じように三原選手らしくのびのびと演技できればおのずと結果もついてくると思うので期待したいですね。


 惜しくも表彰台まであと一歩の4位だったのは世界ジュニア2016女王の本田真凛選手です。

c0309082_15131064.jpg

 SPは「スマイル」。まずは得意のレイバックスピンで幕を開け、続いて得点源の3フリップ+3トゥループを完璧に下ります。中盤のステップシークエンスはレベル2にとどまりますが、後半の3ループ、2アクセルと確実に成功。フィニッシュした本田選手は感極まった様子で目に涙を浮かべました。得点はシーズンベストの67.52点で4位と好位置につけます。

c0309082_15200741.jpg

 フリーは「映画『ロミオとジュリエット』より」。まずは単独の3ルッツを踏み切り、ランディングともに完璧に成功。続いて3フリップからの2連続3回転でしたが、これは3フリップがパンクして1回転となり単独に。後半に5つのジャンプ要素を固め、まずは2アクセル+3トゥループ+2ループを決めると、次の3サルコウに急遽3トゥループを付けて序盤のミスをリカバリー。その後の3つのジャンプは予定どおりに着氷し、演技後はホッとしたような笑顔を見せました。得点は128.59点でフリーは5位、総合ではショートから変わらず4位で全日本自己最高位を更新しました。
 12月上旬のジュニアGPファイナルをインフルエンザで欠場した本田選手。体力回復が最大のポイントとなっていましたが、短期間でよくここまで戻してきたなと感嘆させられる演技でした。まだこれでも本田選手の本来の出来とは言えないと思いますが、万全じゃない状態でも世界ジュニアの切符獲得に向けてやれるだけのことをやろうという戦う気持ちの見える滑りでした。シーズン前半は本田選手にとって苦しい試合が多かったでしょうが、世界ジュニアではジュニアの集大成として悔いのない演技ができるよう願っています。


 5位となったのは本郷理華選手です。

c0309082_15411051.jpg

 SP冒頭は得意の3フリップを確実に着氷。レベル4のスピン2つを挟んで後半、3トゥループ+3トゥループをパーフェクトに成功させると、最後の2アクセルも問題なし。終盤のステップシークエンスとスピンもレベル4でまとめ、本郷選手らしい壮大さと新たな魅力となったエレガンスさが融合した表現で観客を沸かせました。得点は69.20点で2位と好発進します。

c0309082_16504798.jpg

 フリーはプログラムを昨季の「リバーダンス」に変更し、まず得点源の3フリップ+3トゥループでしたが、3フリップの着氷でこらえ気味となったため単独となります。続く3ループは回転が抜けて2回転に。3ルッツは踏み切りが不正確と判定されたものの着氷はしっかりとまとめます。後半に入り最初の2アクセル+3トゥループ+2トゥループは3トゥループがアンダーローテーションとなりますが大きな乱れなく着氷。2アクセル、3+2と終盤のジャンプを予定どおりにこなし、最後の3サルコウに急遽3トゥループを付けて冒頭で跳べなかった分をカバー。代表作である「リバーダンス」の軽快なメロディに乗せて最後までリズミカルに生き生きと演じ切りました。ですが、複数のジャンプミスが響き、得点は125.08点でフリー6位、総合5位と表彰台を逃しました。
 ショートは今季最高の演技で理想的なスタートを切った本郷選手でしたが、フリーは好演技連発の後の最終滑走とあってミスできないという重圧は相当あったのではないかと想像します。フリー序盤は硬さもあって暗雲漂う出だしとなりましたが、最後の3サルコウに3トゥループを付けるという攻めの姿勢からは、最後まで諦めないという本郷選手の意地が伝わってきました。残念ながらシニアに上がって初めて四大陸選手権や世界選手権の切符を逃すという結果にはなりましたが、この気持ちの強さがある限り、来季にも必ず良い形で繋がると思うので、まずは2月のアジア冬季大会で本郷選手らしい演技を楽しみにしたいですね。


 6位に入ったのは全日本ジュニア銀メダリストの白岩優奈選手です。

c0309082_17145435.jpg

 SPは「アイ・ガット・リズム」。まずは3ルッツ+3トゥループを完璧に決めて加点1の高評価を獲得。さらに後半の3ループもクリーンに下りて良い流れでしたが、最後の2アクセルがパンクして1回転となり、規定の回転数を満たしていないため無得点に。そして、プログラムを締めくくるコンビネーションスピンの途中で手袋がスケート靴のエッジに引っかかり落下。スピンも予定していた形にならず0点になり、演技を終えた白岩選手はショックを受けたように肩を落としました。得点は54.30点で17位と大きく出遅れます。

c0309082_23363041.jpg

 フリーは昨季のプログラムに戻した「ナイト・ワルツ/悲しみのクラウン」。冒頭は3ルッツ+3トゥループをパーフェクトに下り1.4点の加点を得ます。次の3サルコウもクリーンな跳躍で1.2点の加点と好調なスタート。後半に5つのジャンプ要素を集め、1つ目は大技3フリップ+3トゥループ、これを完璧に成功。続く3ルッツからの3連続ジャンプなど、全てのジャンプを予定どおりに着氷し、フィニッシュした白岩選手は破顔しガッツポーズを見せました。得点はフリー3位となる131.07点のハイスコアをマーク、トータルでも6位と大きくジャンプアップしました。
 SPは予想外のハプニングがありましたが、そこから1日で見事な切り替えでしたね。今季の白岩選手はシーズン前の怪我で調整が遅れましたが、JGPの2戦目では2位、全日本ジュニアでも2位とシーズンが進むにつれて着実に本来の力を取り戻しつつあって、だからこそショートのミスは悔しかったと思うのですが、フリーでは引きずることなく吹っ切った演技ができていたと思います。1年前はJGP2連勝という勢いそのままに初出場の全日本でもいきなり5位に入りましたが、今季は決して好調な滑り出しというわけではないところから徐々に調子を上げての6位ですから、昨年とはまた違った価値のある6位なのではないでしょうか。この調子で世界ジュニアでもぜひ白岩選手らしい元気いっぱいの演技を見せてほしいですね。



 さて、前編はここまでです。後編に続きます。


:記事冒頭の女子メダリスト3組のスリーショット写真、宮原選手のSPの写真、本郷選手のフリーの写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、宮原選手のフリーの写真、樋口選手の写真、本郷選手のSPの写真は、デイリースポーツのニュースサイト内の写真特集記事から、三原選手の写真、本田選手の写真、白岩選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
全日本選手権2016・男子&アイスダンス―宇野昌磨選手、大差で初優勝(前編) 2016年12月27日
全日本選手権2016・男子&アイスダンス―宇野昌磨選手、大差で初優勝(後編) 2016年12月28日
全日本選手権2016・女子&ペア―宮原知子選手、大差で3連覇(後編) 2017年1月6日

[PR]
by hitsujigusa | 2016-12-30 00:38 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_17134303.jpg


 前の記事に続いて、全日本選手権2016の男子とアイスダンスの結果について書いていきます。前編はこちらからお読みください。

第85回全日本フィギュアスケート選手権大会 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます

*****

 6位となったのは西日本選手権2016銅メダリストの中村優選手です。

c0309082_22402851.jpg

 SPは「フィーリング・グッド」。まずは冒頭の得点源となる3アクセルをクリーンに成功させて良い滑り出しを見せます。そして、後半に2つのジャンプ要素を組み込みましたが、3+3、3ループともに着氷ミスがあり、また、スピンでも取りこぼしがあり得点は伸び切らず、66.96点で7位となります。

c0309082_00063921.jpg

 フリーは「映画『ムーラン・ルージュ』より」。まずは得点源の3アクセルでしたがこれは着氷で大きく乱れます。しかし、直後の3+3、3フリップと比較的基礎点の高いジャンプをしっかり着氷。後半は2アクセルを確実に成功させて始まりましたが、続く3ルッツで転倒します。しかし、2アクセル+1ループ+3サルコウ、3+2、3ループと残りのジャンプは全てクリーンに着氷し、大崩れすることなく演じ切りました。得点は135.20点でシーズンベストをマークしフリーも7位、総合では6位と全日本自己最高位で大会を終えました。
 ショート、フリーともにミスがあり満足いく演技にはならなかったと思いますが、ショートの3アクセルやフリーのコンビネーションジャンプのようにここぞという得点源のジャンプでミスを重ねることはなかったのが、自己最高の6位という結果に繋がったのではないでしょうか。今シーズンからシニアに上がった中村選手。国際大会の出場は今のところなく、国内大会で着実に地力を蓄えている段階だと思いますが、それと比例するように毎年全日本での順位も上がって今年はとうとう入賞。20歳になって表現面でも成長が感じられて、このあとのシーズンで試合に出場することがあればぜひ全日本での悔しさを晴らせるよう頑張ってほしいですね。


 7位は全日本ジュニア銀メダリストの島田高志郎選手です。

c0309082_00315234.jpg

 SPは「Art On Ice」。冒頭は3ルッツからの2連続3回転でしたが、ルッツの着氷で乱れセカンドジャンプに繋げられません。しかし、直後の3ループに2トゥループを付けてリカバリーすると、後半の2アクセルは難なく成功。ステップシークエンスではレベル4を取るなど才能の片鱗をのぞかせ、62.66点で10位につけます。

c0309082_00401796.jpg

 フリーは「映画『ロミオ+ジュリエット』より」。まずは3サルコウを確実に決めると、続いて3ルッツ+3トゥループを完璧に成功させて1.2点の加点を獲得。さらに2アクセルも下りてほぼノーミスの前半となります。後半に5つのジャンプ要素を固め、最初は3ルッツをクリーンに着氷。次の3フリップも着氷しますがこちらは踏み切りのエッジエラーで減点となります。終盤の3つのジャンプは全て予定どおりに下り、演技を終えた島田選手は破顔しました。得点はシーズンベストとなる137.52点でフリー6位、トータル7位で2度目の全日本にして初入賞を果たしました。
 11月の全日本ジュニアでは2位で世界ジュニアの切符確定はならず、そのため今大会の結果に大舞台のチャンスが懸かっていた島田選手。ショートはそのプレッシャーで力が入らず震えていたそうですが、フリーではしっかり気持ちを切り替えた安定感抜群の演技で見事に順位を上げました。曲が「ロミオ+ジュリエット」ということもあって、感情のこもった情熱的な滑りはどこかかつての羽生選手を思わせる部分もあり、中学3年生の15歳という若さであれだけ自分の表現、世界観を持っているというのは素晴らしいなと感じました。まだ試合では3アクセルや4回転は入れていませんが、3アクセルは練習では着氷しているそうなので将来的にジャンプのレベルも上がっていくと考えると、次世代の日本男子を引っ張っていく存在の一人になりうる逸材だと思うので、今後を楽しみにしたいですね。まずは初出場が決まった世界ジュニアで思いっきり弾けてほしいなと思います。


 8位は東日本選手権2016王者の佐藤洸彬選手です。

c0309082_00561638.jpg

 SPは「トーテム」。まずは得点源の3アクセルをきっちり決めると、3+3もクリーンに成功。後半の3ルッツは踏み切りのエッジエラーでマイナスとなったものの、スピン、ステップシークエンスでも目立った取りこぼしなく、佐藤選手らしい個性的なプログラムを存分に演じ切りました。得点はシーズンベストの72.01点で5位と好発進します。

c0309082_01022216.jpg

 フリーはオペラ「セビリアの理髪師」。冒頭は前日綺麗に決めた3アクセルからの連続ジャンプでしたが、着氷で乱れ若干減点されます。続けて2本目の3アクセルも着氷でミス。3ルッツはショート同様にエッジエラーとなった上に着氷が崩れます。後半もほとんどのジャンプで何かしらのミスを犯してしまい、スピンやステップシークエンス、コレオシークエンスでは本領を発揮したものの、120.69点でフリー10位、総合10位と大きく順位を落としてしまいました。
 オリジナリティー溢れる演技が魅力の佐藤選手ですが、ショートとフリーでくっきりと差が出てしまいましたね。ショートがまとまった好演技だっただけに、フリーではもしかしたら欲が出てしまったのかもしれません。表現力やフットワークは素晴らしい選手なだけに、あとはジャンプの安定感に尽きると思うので、ここからまた来季に向けて実りのあるシーズン後半にしてほしいですね。



 さて、男子はここまで。ここからはアイスダンスです。

c0309082_01282323.jpg



 2連覇を達成したのは結成2季目の村元哉中&クリス・リード組です。

c0309082_01362068.jpg

c0309082_01485193.jpg

 SDはステップがレベル2にとどまったものの、目立ったミスなく演技をまとめシーズンベストの62.04点でトップに立ちます。フリーもスピンやステップでレベルが2になる場面がありましたが、全体的にクオリティーの高い演技で加点を積み重ね、こちらもシーズンベストで1位となり、完全優勝となりました。
 今シーズンはリード選手の怪我によってNHK杯を棄権するというつまずきもありましたが、それから約1か月という短期間でここまで仕上げてきたのは素晴らしかったですね。村元&リード組は世界選手権でトップ10に入ることを目標として掲げていて、そのためにはまだまだ超えなければいけないハードルがいろいろあるでしょうが、二人のポテンシャルを持ってすれば十分達成可能な目標でもあると思うので、ぜひ頑張ってほしいですね。全日本2連覇、おめでとうございました。
 6年連続の2位となったのは平井絵己&マリオン・デ・ラ・アソンション組。SDはレベルの取りこぼしも少なくシーズンベストで2位発進すると、FDもステップ以外のエレメンツは全てレベル4を揃え、銀メダルを獲得しました。
 3位には今季からペアを結成した小松原美里&ティモシー・コレト組が入りました。ショート、フリーともに3位で見事初表彰台を射止めました。



 ということで、全日本の男子とアイスダンスの振り返りは以上ですが、ここで世界選手権、四大陸選手権、アジア冬季大会、世界ジュニア選手権の代表選手をまとめたいと思います。その前に、代表選考の基準、条件についてもおさらいします。


《世界選手権代表選考方法(男女シングル)》

①1人目は全日本選手権大会優勝者を選考する。
②2人目は、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
 A) 全日本選手権大会2位、3位の選手
 B) グランプリファイナル出場者(①の選手を除く)上位2名
③3人目は、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
 A) ②の A)又は B)に該当し、②の選考から漏れた選手
 B) 全日本選手権大会4位~6位の選手
 C) 全日本選手権大会終了時点でのISUワールドスタンディング上位3名
 D) 全日本選手権大会終了時点でのISUシーズンベストスコア上位3名


《四大陸選手権代表選考方法(男女シングル)》

全日本選手権大会終了時に、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
① 全日本選手権大会10位以内
② 全日本選手権大会終了時点でのISUワールドスタンディング上位6名
③ 全日本選手権大会終了時点でのISUシーズンワールドランキング上位6名
④ 全日本選手権大会終了時点でのISUシーズンベストスコア上位6名


《アジア冬季大会代表選考方法(男女シングル)》

① 1人目は全日本選手権大会優勝者を選考する。
② 2人目は、参加資格のある選手の中で、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
 A) 全日本選手権大会上位6名
 B) 全日本選手権大会終了時点でのISUワールドスタンディング上位6名
 C) 全日本選手権大会終了時点でのISUシーズンワールドランキング上位6名
 D)全日本選手権大会終了時点でのISUシーズンベストスコア上位6名


《世界ジュニア選手権(男子シングル)》

① 1人目は全日本ジュニア選手権大会優勝者を選考する。
② 2人目はジュニア対象年齢で派遣希望のある選手の中で、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
 A) 全日本ジュニア選手権大会3位以内の選手
 B) ジュニアグランプリファイナル出場者
 C) 全日本選手権大会参加者のうち上位3名
 D) 全日本選手権大会終了時点でのISUワールドスタンディング上位3名
 E) 全日本選手権大会終了時点でのISUシーズンベストスコア上位3名


《世界選手権代表》

男子シングル:宇野昌磨、羽生結弦、田中刑事
アイスダンス:村元哉中&クリス・リード組


《四大陸選手権代表》

男子シングル:宇野昌磨、羽生結弦、田中刑事
アイスダンス:村元哉中&クリス・リード組、平井絵己&マリオン・デ・ラ・アソンション組


《アジア冬季大会代表》

男子シングル:宇野昌磨、無良崇人
アイスダンス:村元哉中&クリス・リード組、森衣吹&鈴木健太郎組


《世界ジュニア選手権代表》

男子シングル:友野一希、島田高志郎
アイスダンス:深瀬理香子&立野在組




 まずは世界選手権代表から。
 初めに例外的扱いとして全日本を欠場した羽生選手ですが、本来ならばシーズン後半の主要国際大会に派遣されるためには全日本の出場が必須とされていますが、過去に世界選手権3位以内に入賞した実績のある選手がやむを得ない理由で全日本を欠場した場合、その選手の今季の成績を選考基準に照らし合わせて対象となる大会時の状態を見通しつつ選考するとなっています。羽生選手の場合、ファイナルでも優勝していますし、ワールドスタンディング1位という代表に選出するに値する圧倒的な理由があるので、問題なく選出となりました。
 そして、①の全日本優勝者である宇野選手もいわずもがなで選出。
 問題となるのは3人目の選考ですが、①に該当するのは宇野選手、②に該当するのは羽生選手として、この二人を除外した上で③の条件に当てはまる選手をピックアップすると、②のA)もしくはB)に該当し、なおかつ②の選考から漏れた田中選手と無良選手、③のB)に当てはまる全日本4位の日野選手、5位の友野選手、6位の中村選手、③のC)とD)に当てはまる選手は全員既出なので、③に該当するのはこの5選手ということになります。友野選手はジュニア選手で世界選手権への出場希望もないと思われるため除外して良いと思いますが、そのほかの4選手を比べると田中選手は全日本2位、日野選手は全日本4位、中村選手は全日本6位とそれぞれ1つの条件にしか当てはまりませんが、無良選手は全日本3位かつワールドスタンディング上位3名かつシーズンベストスコア上位3名と3つの条件に当てはまります。なのでこれだけ見ると無良選手が優位に立っているのですが、実際に選ばれたのは実績では劣る田中選手でした。この選考が吉と出るか凶と出るかはわかりませんが、シーズンベストスコアでは田中選手と無良選手はさほど差がないのでそういった面を考慮したというのはあるでしょうし、あくまでも選考は総合的に判断してとなっているので、やはり今シーズン伸び盛りで全日本でも2位になった田中選手の勢いというのを重視したのかなと感じますね。
 一方、アイスダンスは「国際的な競技力を考慮して選考する」という文言のみで、全日本優勝者の村元&リード組が順当に選ばれました。


 そして四大陸選手権。例年ならば世界選手権の選考から外れた選手が選ばれることが多い大会ですが、今季は平昌五輪の試合会場で行われるとあって世界選手権の代表選手がそのまま出場することとなりました。四大陸の場合、世界選手権より選考基準の幅が広いのでそんなに実績のない選手に経験を積ませるという意味で選考することもできますが、今回はさすがに平昌五輪のプレイベントなので例年とは意味合いの違った試合になりそうで楽しみですね。
 アイスダンスも全日本のワンツーが選出されました。


 一方で今季はアジア冬季大会が札幌で開催されるということで、開催国として派遣選手も豪華なメンバーとなっています。
 まず、①にあるように無条件で全日本優勝者は選出されるので宇野選手が選ばれました。そして、2人目は全日本上位6名、ワールドスタンディング上位6名、シーズンワールドランキング上位6名、シーズンベストスコア上位6名から選ぶとなっているので対象になる選手は多くいるわけですが、全日本3位に入りながらも惜しくも世界選手権、四大陸選手権出場を逃した無良選手が選ばれる運びとなりました。
 アイスダンスに関しても全日本王者の村元&リード組に加え、全日本3位の森&鈴木組がチャンスを与えられた形となりました。


 そしてジュニア最高峰の大会となる世界ジュニア選手権は、全日本ジュニアのチャンピオンである友野選手の出場が決定済み。
 昨季の世界ジュニアの結果により男子は2枠しかないので残りは1人のみとなるわけですが、友野選手を除くと、②のA)に該当するのは島田選手と須本光希選手、B)は該当選手はなく、C)は島田選手と三宅星南選手、D)は島田選手と須本選手、E)は島田選手と須本選手ということになります。こうなると、ほぼすべての条件に合致している島田選手が選ばれるのがやはり妥当と言えますね。
 アイスダンスはシニア同様に国際的な競技力を考慮してとなっているので、全日本王者の深瀬&立野組が選出となっています。



 さて、男子&アイスダンスの記事はこれで終了です。女子&ペアの前編に続きます。


:記事冒頭の男子メダリスト3選手のスリーショット写真、村元&リード組の写真は、デイリースポーツのニュースサイト内の写真特集記事から、中村選手の写真、島田選手の写真、佐藤選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、アイスダンスメダリスト3組の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
全日本選手権2016・男子&アイスダンス―宇野昌磨選手、大差で初優勝(前編) 2016年11月27日
全日本選手権2016・女子&ペア―宮原知子選手、大差で3連覇(前編) 2016年12月30日
全日本選手権2016・女子&ペア―宮原知子選手、大差で3連覇(後編) 2017年1月6日

 
[PR]
by hitsujigusa | 2016-12-28 16:26 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_17134303.jpg


 日本の王者を決める全日本選手権が今年は大阪にて行われました。この記事ではまず男子についてお伝えしますが、男子は4連覇中のチャンピオンである羽生結弦選手がインフルエンザにより欠場し、当初予想されたのとは違う試合展開となりました。
 そんな中男子を制したのは一昨年、昨年と2年連続2位の宇野昌磨選手。羽生選手不在で優勝候補筆頭となりましたが、その予想どおりに初タイトルを手にしました。銀メダルを獲得したのは昨年4位、今シーズン躍進を遂げている田中刑事選手、3位はベテランの無良崇人選手で、昨年に続き銅メダルを獲得しました。
 一方、アイスダンスはディフェンディングチャンピオンの村元哉中&クリス・リード組が2連覇を達成しています。

第85回全日本フィギュアスケート選手権大会 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 優勝はGPファイナル2016銅メダリストの宇野昌磨選手です!

c0309082_01032017.jpg

 SP冒頭は代名詞の大技4フリップに3トゥループを付けた新たなコンビネーションジャンプに挑みましたが、4フリップの着氷で乱れ単独に。さらに続く4トゥループでは転倒となり、結果的に連続ジャンプなしの構成となってしまいます。ですが、後半の3アクセルは完璧に決め2.57点の加点。ステップシークエンス、スピンでも高い加点を積み重ね、88.05点で2位につけます。

c0309082_02011577.jpg

 フリーもまずは4フリップでしたが着氷で軽くステップアウトします。続く4トゥループもオーバーターンの着氷と細かなミスが重なりますが、3ループは難なく下りて前半は耐える内容となります。後半最初は3アクセル+3トゥループ、こちらも着氷でこらえ気味となったため単独になります。そして2本目の4トゥループも踏ん張っての着氷となりやはり予定していた連続ジャンプにはならず。しかし、続く3ルッツに急遽2トゥループを付けてリカバリーすると、3アクセル+1ループ+3フリップの難しい3連続ジャンプはクリーンに成功。最後の3サルコウにも3トゥループを付ける機転を利かせ、終盤のコレオシークエンスでは得意のクリムキンイーグルを含めた情熱的な滑りで観客を魅了、盛り上げ、大歓声の中フィニッシュした宇野選手は膝に手をつき疲労をのぞかせ、感極まった様子で涙を拭いながら観客の声援に応えました。得点は192.36点でフリー1位、総合1位と逆転で初優勝を果たしました。
 圧倒的な優勝候補であった羽生選手の欠場により、突如として最大の注目を浴びることになった宇野選手。昨季、今季ともに羽生選手と並び立つ日本男子の双璧を成す存在となっており、ほかにこの二人の牙城を脅かす存在も今のところ国内にはおらず、羽生選手がいないとなると当然宇野選手が優勝するであろうという流れになったわけですが、そうした状況が少なからず影響を与えた演技だったかなと思います。やはり宇野選手はシニア参戦以来常に羽生選手の背中を追いかけていて、先日のGPファイナルでも「ゆづくんとの差を確かめたい」と話すなどしばしば羽生選手を意識した発言をしていましたが、そういった明確に目の前に立ちはだかる壁=目標が突然いなくなってしまったことによって、多少なりとも調子が狂うというようなことはあったのではないかと想像します。練習風景を見ても宇野選手本人の発言を聞いても決してジャンプの調子は悪くなく、むしろ良い調整ができているといった感じでしたが、にもかかわらずショート、フリー通して1本もパーフェクトな4回転がなかったということは調子の良さを上回る精神的な変化があったのでしょう。ただ、その中でもフリーでは大きなミスにはしないという執念、そしてミスしたコンビネーションジャンプをほかのところで取り返すという気迫に満ち満ちていて、演技前から荒い息をし、演技後には大粒の涙を流してという姿を見ても、いろんなことを考えていろんなものを背負っていたんだなと感じましたね。でも、だからこそ苦しんだ末に手に入れた金メダルはとてつもなく価値があると思いますし、全日本王者として歩んでいくシーズン後半がさらに楽しみになりました。まずは年末年始少し休んで、GPからの過密スケジュールの疲労を取ってほしいなと思います。全日本初優勝、本当におめでとうございました。


 2位となったのはNHK杯2016銅メダリストの田中刑事選手です。

c0309082_01584448.jpg

 SPはまず4サルコウでしたが着氷でステップアウトし減点を受けます。ですが、直後の3アクセルはきれいに決めてすぐに立て直します。後半の3+3も問題なく下り、ミスを最小限に抑えた演技で85.68点で3位と好発進します。

c0309082_16183139.jpg

 フリーはまず大技の4サルコウをきっちりと決め好スタートを切りますが、次の2本目の4サルコウは3回転となります。さらに3アクセルは珍しく空中で回転がほどけてダウングレード(大幅な回転不足)と得点源のジャンプでミスが重なります。ですが、後半はまず3+3を完璧に決めると、3アクセルからの3連続ジャンプも確実に着氷。3ルッツはわずかにこらえますが、残りのジャンプ2つはクリーンに下りて、ステップシークエンスやスピンもコンスタントに揃え、まずまずの内容で演技をまとめました。得点は163.70点でフリー2位、総合2位で初表彰台が銀メダルとなりました。
 ショート、フリーともにミスはありましたが、以前とは違ってミスの連鎖で大崩れするという不安定さは全くなく、演技全体から落ち着きが感じられました。ただ、田中選手自身は自分の演技に対して厳しいコメントを残していて、確かに後述する無良選手のミスに助けられての2位という面もあるとは思うのですが、一方で今シーズン飛躍を遂げたことによって田中選手にとっての演技の最低ラインが上がっていることも事実で、だからこそ今回のようにまずまず安定した演技でも本人からしたら全然物足りないという悔しさに繋がっているのだろうと思います。
 出場が決まった四大陸選手権、そして初めての世界選手権ではすべて出し切って清々しい気持ちで終われるよう願っています。


 3位は昨年の銅メダリスト、無良崇人選手です。

c0309082_17075519.jpg

 SP冒頭は得点源の4トゥループ、着氷で身体が傾き手をつきそうになりますがこらえて加点の付くジャンプとしてまとめます。続く代名詞の3アクセルは別格の高さで1.86点の加点を獲得。中盤の3+3もクリーンに着氷させ、終盤のステップシークエンスではタップ音のみで繰り広げられる大人のフラメンコの世界を小刻みに、しかしダイナミックに滑り切り、フィニッシュした無良選手は力強いガッツポーズで手応えを表しました。得点は90.34点で首位発進します。

c0309082_17154137.jpg

 フリー冒頭はショートで成功させた4トゥループ、着氷で何とか耐えて成功に結びつけると、続く2本目の4トゥループはクリーンに着氷して2トゥループに繋げます。さらに3アクセルはパーフェクトで、上々の前半とします。ステップシークエンスとスピンを挟み後半、まずは3サルコウを着実に成功させると、続いては3アクセルでしたが回転が抜けて2回転となる大きなロス。直後の3ループを急遽3アクセルに変えて挑みますが、これは着氷が乱れ連続ジャンプにはならず。その後の3フリップ、3ルッツでもそれぞれミスがあり、演技を終えた無良選手は悔しそうに顔を歪めました。得点は151.77点でフリー3位、総合3位と順位を落としました。
 実に12回目の全日本で初めてショート首位に立ち迎えたフリー。だからといって決して守りに入らず最後まで攻めた演技だったと思いますが、気合いが力みとなって空回りしてしまったのかなという印象ですね。ショートもフリーも4回転は全て減点なく下りただけに、得意な3アクセル始めほかのジャンプでミスが散見されたことは残念で、改めてフィギュアスケートが精神力を試される競技なのだということをヒシヒシと感じさせられましたね。無良選手にとっては悔やんでも悔やみきれない試合になったと思いますが、トップ選手として世界選手権に行けるだけの実力は間違いなく持っていて、あとは本番でどれだけコンスタントにエレメンツを揃えられるかということに尽きるので、シーズン後半は来シーズンに繋がるような無良選手らしい演技を見せてほしいなと思います。


 4位は西日本選手権2016王者の日野龍樹選手です。

c0309082_17362519.jpg
 
 SPは4トゥループは挑まず安定している3回転のみの構成。まずは3+3を確実に決めると、続く3アクセルもクリーンに成功。後半の3ループも難なく着氷し、終始安定したジャンプを見せた日野選手は演技後大きなガッツポーズで歓喜を露わにしました。得点はシーズンベストとなる78.65点で4位につけます。

c0309082_01315296.jpg

 フリーも4トゥループは組み込まず最初に3ルッツ+1ループ+3サルコウの高難度の3連続ジャンプを完璧に成功。続く3ルッツ+3トゥループ、3アクセル+2トゥループと得点源となるコンビネーションジャンプを立て続けに成功させ波に乗ります。さらに中盤の3ループも下り、レベル4の2つのスピンとコレオシークエンスを挟んで後半、2つ目の3アクセルは回転不足で転倒します。次の2アクセルでも乱れがあり、3フリップは踏み切りが不正確になるなど細かなミスが続き、フィニッシュした日野選手はショートの時とは打って変わって顔を曇らせました。しかし、得点は151.66点とまずまずのスコアにキス&クライでは満足そうな表情に変わり、総合4位と全日本自己最高位を更新しました。
 フリーでは終盤で細かなミスが重なりましたが、全体的には崩れそうな気配のない安定感のある内容で、悔しさのみが残ったNHK杯から一段も二段も階段を上がったように感じました。NHK杯で挑んだ4回転は今回は回避しましたが、その分精神的にも余裕を持って自分の演技に自信を持って強い気持ちで臨めたのかなと思います。日野選手の軸のまっすぐな芯の通った綺麗なジャンプ、確実にレベルを取った上で加点も積み重ねられる回転の速いスピンなど、らしさを十分に発揮できていて素晴らしかったですね。あとはステップシークエンスがレベル2だったので、全身の動きの柔軟さやバリエーション含め、スケーティング面の強化も必要でしょうが、今季は初めてのGPも経験し、日野選手にとってスイッチの切り替わるシーズンになったんじゃないかなと思いますし、ぜひそうなってほしいなと思いますね。


 5位には全日本ジュニア王者の友野一希選手が入りました。

c0309082_01564468.jpg

 ショートの演目は「交響曲第5番/The Fifth」。まずは3フリップからの連続ジャンプでしたが、これは予定していた3+3ではなく3+2になります。続く3ループは確実に着氷。後半の3アクセルもパーフェクトに成功させ1.29の加点を獲得。スピンやステップシークエンスでは取りこぼしがありましたが、シーズンベストに近い67.63点で6位と好位置につけます。

c0309082_22090822.jpg

 フリーは「映画『巴里のアメリカ人』より」。冒頭は大技の4サルコウ、これをクリーンに着氷して1点の加点を得ます。さらに3アクセル、3+2、3アクセルからの連続ジャンプと重要なジャンプを次々成功。後半は3サルコウが2回転になるミスはありましたが、それ以外は目立ったミスなく滑り切り、満面に笑みを浮かべました。得点はシーズンベストの148.92点でフリー5位、総合5位と順位を上げました。
 全日本ジュニア王者として4度目の全日本に挑んだ友野選手。フリーでは4サルコウや3アクセルといった高難度のジャンプの安定感はもちろんのこと、表現面でも踊り心満載の滑りをのびのびと披露し、さすがジュニア王者の底力を見せつける内容でした。私は友野選手の演技をじっくり見るのは今季はこれが初めてだったのですが、予想した以上に洗練された印象で見応えのある演技だったと思います。
 名実ともに日本のジュニアチャンピオンとして2度目の世界ジュニアに挑む友野選手。来季からはシニアに参戦する予定とのことなので、ジュニアの集大成として世界ジュニアでは全てを出し尽くせるよう祈っています。



 さて、突然ですがこの記事は一旦ここで終了。後編に続きますので、ぜひそちらもお読みくだされば幸いです。


:記事冒頭の男子メダリスト3選手のスリーショット写真、田中選手のフリーの写真、無良選手のSPの写真は、デイリースポーツのニュースサイト内の写真特集記事から、宇野選手のSPの写真、無良選手のフリーの写真、日野選手の写真、友野選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、宇野選手のフリーの写真、田中選手のSPの写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
全日本選手権2016・男子&アイスダンス―宇野昌磨選手、大差で初優勝(後編) 2016年12月28日
全日本選手権2016・女子&ペア―宮原知子選手、大差で3連覇(前編) 2016年12月30日
全日本選手権2016・女子&ペア―宮原知子選手、大差で3連覇(後編) 2017年1月6日


[PR]
by hitsujigusa | 2016-12-27 22:32 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_16454922.jpg


 シニアのグランプリファイナルとともにフランスのマルセイユにて開催されたジュニアグランプリファイナル2016。大会は全てのカテゴリーにおいてロシア勢が表彰台に立つ面目躍如で歴史的な記録も生まれ、大いに盛り上がりました。ざっくりとその内容を振り返っていきます。

ISU Junior Grand Prix Final 2016/17 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

《女子シングル》


 女子はロシア勢がワンツーフィニッシュ。優勝したのはポイントランキングでは5位だったアリーナ・ザギトワ選手。ショートで70.92点、フリーで136.51点、トータルで207.43点という、それぞれジュニア女子の世界歴代最高得点をマークし、驚異的な強さで圧勝しました。ザギトワ選手の強みは何といってもジャンプ。しかもその強さは2つのアプローチから成る強さで、1つはルッツやフリップといった基礎点の高いジャンプで両手を上げて跳べること。現世界女王のエフゲニア・メドベデワ選手も片手を上げて跳べるという長所を持っていますが、それを凌ぐ両手を上げてですから、難しい体勢であれだけバランス良くコントロールして跳べるのは凄いとしか言いようがありません。そして、もう1つの強さはジャンプ構成です。ザギトワ選手はショート、フリーともに全てのジャンプを後半に跳ぶという驚異的な構成を組んでいます。もちろん演技時間が短いジュニアだからこそできるという面もあるかもしれませんが、それにしてもそれをほぼノーミスでやってのけるスタミナがやはり凄いですね。順調にシニアに上がってくればメドベデワ選手をも凌駕する可能性のある逸材といえ、2002年の5月生まれということで平昌五輪への出場も可能なので、今後の動向が要注目ですね。
 銀メダルを獲得したのがアナスタシア・グバノワ選手。こちらもトータルで194.07点というハイスコアでザギトワ選手に勝るとも劣らない質の高いジャンプの持ち主ですね。シリーズのポイントランキングではグバノワ選手が1位だったので、安定感という点でも申し分ない選手と言えます。演技構成点での評価もザギトワ選手とほとんど変わらないくらいなので、ザギトワ選手とともにロシア女子の次世代を担っていく1人になっていくのではないでしょうか。
 そして、シリーズ成績2位でファイナル進出を決めたエース格のポリーナ・ツルスカヤ選手が負傷で出場辞退したため、その代役として出場したエリザヴェータ・ヌグマノワ選手は実力を発揮し切れず最下位となりました。

 日本勢は3選手がファイナルに進出しましたが、昨年の銅メダリストである本田真凛選手がインフルエンザのためSP前に棄権し、坂本花織選手、紀平梨花選手の2名のみとなりました。
 全日本ジュニア女王である坂本選手は初出場で見事銅メダルを獲得。SPは自己ベストに迫る得点で2位と好発進。しかし、フリーは大きなミスとしては3フリップだけだったものの得点を伸ばせず、ショートのアドバンテージを活かした形で3位となりました。
 銅メダルという素晴らしい結果ではありましたが、実力を出し切れなかったという想いから手放しで喜ぶ姿は見られませんでした。また、ロシア勢との内容の差、点差も開いてしまったというところで、世界をリードするロシアとの差をまざまざと見せつけられてしまった試合でもあったのかなと思います。ですが、坂本選手の演技自体はそんなに悪いものではなかったと思いますし、大崩れしない安定感はしっかりとアピールできたのではないでしょうか。
 もう1人の日本代表、紀平梨花選手は5位となりました。SPはコンビネーションジャンプが入らないという大きなミスがあり5位と出遅れ。フリーでは大技の3アクセルこそ成功はならなかったものの、そのほかは大きなミスなくまとめ3位、総合4位と順位を上げました。
 ファイナル初出場ということでさすがに特別な緊張感があったのかなと想像しますが、フリーはのびやかさを取り戻せていたように思います。3アクセル含め、紀平選手らしい爆発力は鳴りを潜めてしまいましたが、今大会を経験してまた一回り大きくなってくれるのではないかと思いますね。


《男子シングル》


c0309082_15033035.jpg


 男子は6名中4名がロシアという女子以上のロシア優勢となり、そうした状況で男子では2002年以来となるロシアワンツーフィニッシュを達成。
 優勝したのは昨年の銀メダリストであるドミトリー・アリエフ選手。アリエフ選手はシリーズ成績では全体の6位とギリギリでのファイナル進出でしたが、今大会ではショート、フリーともに自己ベストを更新し、昨年のメダリストとしての意地を見せつけましたね。内容的にもフリーは8本のジャンプのうち6本を後半に跳ぶという難しい構成を大崩れせずまとめ、優勝にふさわしい演技だったのではないかと思います。
 惜しくも2位となったのはシリーズ成績1位のアレクサンドル・サマリン選手。こちらもショートでは自己ベスト更新、フリーは2本の4回転に挑み複数のミスが重なったものの技術点ではアリエフ選手を上回る内容で僅差の銀メダルとなりました。

 3位に入ったのは韓国のチャ・ジュンファン選手。SPはコンビネーションジャンプが入らないという痛いミスがあり4位にとどまりましたが、フリーでは1つ転倒がありながらも大技の4サルコウを完璧に決めるなど本領を発揮し銅メダルを獲得しました。韓国の男子選手がJGPFで表彰台に立つのはもちろん初めての快挙。チャ選手は現在羽生結弦選手やハビエル・フェルナンデス選手らとともにブライアン・オーサーコーチの下で練習する韓国期待の星であり、15歳にして4サルコウを完成させているという成長度合いを鑑みても、韓国フィギュア界の歴史を塗り替える選手として今後が本当に楽しみなスケーターですね。

 以下、4位はロシアのロマン・サヴォシン選手、5位はアメリカのアレクセイ・クラスノジョン選手、6位はロシアのイリヤ・スキルダ選手となりました。
 サヴォシン選手はショート3位と好発進しましたがフリーで挑んだ2本の4トゥループが2つとも回転不足となり得点を伸ばせず。
 ショート5位で始まったクラスノジョン選手は、フリーは一発逆転を懸け大技4ループに挑戦しましたが残念ながら成功はならず。
 最年少の14歳のスキルダ選手は唯一3アクセルも4回転も組み込みませんでしたが、フリーは7本のジャンプを後半に跳ぶという難度の高い構成を大きなミスなくこなし、ジュニア1年目としては十分に存在感を示しました。


《ペア》


 ペアも6組中4組がロシア。本来は6組中5組がロシアとなるはずでしたが、シリーズ成績6位のロシアのエカテリーナ・ボリソワ&ドミトリー・ソポト組が出場を辞退したため、補欠1番手のオーストラリアのエカテリーナ・アレクサンドロフスカヤ&ハーレー・ウィンザー組が繰り上がりで出場しました。
 優勝したのはシリーズ成績1位のロシアのアナスタシア・ミーシナ&ウラジスラフ・ミルゾエフ組。ショート、フリーともに大きなミスなくパーソナルベストを更新し、2位に大差をつけて下馬評どおりに優勝を勝ち取りました。
 2位はシリーズ成績2位、チェコのアナ・ドゥシュコヴァ&マルティン・ビダジュ組。ショート、フリー通してツイストリフトが安定せず、ジャンプやスロージャンプでもミスがあり、銀メダルは獲得したもののパーソナルベストには遠く及ばないスコアとなりました。
 3位はシリーズ成績では5位だったロシアのアレクサンドラ・ボイコワ&ドミトリー・コズロフスキー組。ショートはミスを連発し4位でしたが、フリーは得点源となるエレメンツをコンスタントに揃え、昨季までほとんど実績のないペアですが見事に銅メダルを獲得しました。
 以下、4位はロシアのアリーナ・ウスティムキナ&ニキータ・ボロディン組、5位はアレクサンドロフスカヤ&ウィンザー組、6位はロシアのアミナ・アタハノワ&イリヤ・スピリドノフ組となっています。


《アイスダンス》


 優勝はシリーズ成績2位、アメリカのレイチェル・パーソンズ&マイケル・パーソンズ組。ショートで自己ベストに迫る得点で2位発進すると、フリーでは自己ベストを更新し1位となり、逆転優勝を果たしました。JGPに参戦して6季目で、2季目から表彰台に立ち続けているパーソンズ兄妹ですが、ようやくファイナルの頂点を射止めました。今季は出場した全試合で優勝していて、この快進撃が最後まで続くのかどうか楽しみですね。
 2位はシリーズ成績1位のロシアのアッラ・ロボダ&パヴェル・ドロースト組。ショートは自己ベストで首位発進しましたが、フリーは自己ベストには及ばず0.63点差で2位となりました。3年連続でファイナルに進出しているロボダ&ドロースト組ですが、過去2年は銀メダル。今年はSD首位でいよいよ金メダルかというところまで来ましたが惜しかったですね。ですが、シーズン後半もパーソンズ兄妹の手ごわいライバルとして立ちはだかる存在であり続けることに間違いはないですね。
 3位は昨年の金メダリスト、アメリカのロレイン・マクナマラ&クイン・カーペンター組。昨シーズンは全ての試合で優勝し圧倒的な強さでアイスダンスジュニア界をリードしたマクナマラ&カーペンター組ですが、今季は昨季ほどの安定感は発揮できていません。シーズン後半は昨季の輝きを取り戻せるのか、注目ですね。
 以下、4位はアメリカのクリスティーナ・カレイラ&アンソニー・ポノマレンコ組、5位はフランスのアンジェリク・アバチキナ&ルイ・トーロン組、6位はロシアのアナスタシア・シュピレワヤ&グリゴリー・スミルノフ組となりました。



 ということで、ジュニアは男女、ペア、アイスダンス全てでロシア勢が表彰台に立つという活躍を見せました。特に女子ではザギトワ選手がジュニア初の200点台をマークし、平昌五輪後の女子フィギュア界もロシア勢がリードしていくであろう近い未来の勢力図を思わせる試合でしたね。男子もロシアがワンツーフィニッシュとなり、現在のシニアの男子フィギュア界ではロシア勢はアジア勢や北米勢に押され気味ですが、その次の世代はロシア男子の躍進が望めるのではないかと感じさせられました。ペアもロシア勢が変わらぬ層の厚さを誇示。アイスダンスはアメリカ勢の活躍の方が目立ったとはいえ、表彰台の一角はガッチリと確保。とにもかくにもロシアの存在感が鮮烈に印象付けられた今年のJGPFでした。


:記事冒頭の女子メダリスト3組のスリーショット写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、男子メダリスト3組のスリーショット写真は、国際スケート連盟の公式サイトから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
ジュニアグランプリシリーズ16/17について 2016年10月19日
世界ジュニア選手権2017―ジュニア世界歴代最高得点連発 2017年3月22日

[PR]
by hitsujigusa | 2016-12-19 17:34 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_16582149.jpg


 フランスの港町マルセイユにて行われたグランプリファイナル2016。この記事では男子とアイスダンスの結果についてお伝えします。なお、女子とペアの記事はこちらからご覧ください。
 男子の覇者は昨年まで3連覇している日本の羽生結弦選手。自身が持つ連覇記録を4に伸ばしました。2位となったのはアメリカの新星ネイサン・チェン選手で、驚異的なジャンプ構成を武器に初出場にして銀メダルの快挙を成し遂げました。3位は昨年の銅メダリストである日本の宇野昌磨選手となっています。
 アイスダンスは今シーズン競技復帰したばかりの元世界王者、カナダのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組が初優勝となりました。

ISU Grand Prix Final 2016/17 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 男子のチャンピオンは日本の羽生結弦選手です!

c0309082_17091132.jpg

 SPはまず大技の4ループから、しかしこれは着氷で流れが止まり何とかこらえて最小限のミスに抑えます。続く4サルコウ+3トゥループは完璧に成功。さらに後半の3アクセルも難なく下り、終盤のステップシークエンスではロックスターさながらに会場を大いに盛り上げ、エネルギッシュに演じ切りました。得点はシーズンベストとなる106.53点で断トツの首位発進となります。

c0309082_17353357.jpg

 フリーも冒頭は代名詞の4ループ、着氷で若干こらえながらもクリーンに決め加点を引き出します。さらに4サルコウはパーフェクトで2.57点の加点。さらに3フリップも問題なく下り、前半はノーミスとなります。後半1発目は4サルコウからのコンビネーションジャンプでしたが、これはサルコウで転倒してしまい単独に。しかし直後の4トゥループは立て直して着氷。さらに3アクセル+3トゥループを決めます。ですが、3アクセル+1ループ+3サルコウは1ループがダウングレード(大幅な回転不足)、3つ目が2回転と流れの悪いコンビネーションとなり、最後の3ルッツもパンクして1回転になります。終盤にミスが重なった演技に、フィニッシュした羽生選手は悔しそうに顔を歪めました。得点は187.37点でフリー3位、総合では1位と、逃げ切っての優勝となりました。
 男子では初となる4連覇を達成(アイスダンスではメリル・デイビス&チャーリー・ホワイト組が5連覇を成し遂げています)した羽生選手ですが、内容的にはまだまだ理想とするところには遠く、収穫と課題が表れた試合だったかなと思います。課題としてはやはり世界一高難度のフリープログラムをいかにクリーンにまとめるかということで、特に2つ目の4サルコウがポイントとなっていますね。ただ、一方で収穫としてはあれだけ高難度でもある程度まとめることはできるというアベレージの高さを今回も示していて、ミスは複数あったけれども手応えは確実に得た、充実感と悔しさがない交ぜとなった試合だったんじゃないかなと想像します。羽生選手にとって今シーズンは昨季終盤の怪我の回復を優先したところから始まり、例年よりスローペースでのシーズン開幕となったのは間違いないので、そのことを考えるとシーズン前半のハイライトとなるファイナルでこの状態まで持ってきていること自体が凄いことですし、短期間で急激に調子を上げた昨季のGPとは違いますが、緩やかながらも順調に右肩上がりで来ているように感じますね。最重要な世界選手権までのスケジュールを考慮すると、これくらいのペースがちょうどいいのではないでしょうか。
 5連覇が懸かる全日本選手権まではあまり時間がありませんが、今できる羽生選手らしい演技をまた楽しみにしています。ファイナル4連覇、おめでとうございました。


 2位は昨年のジュニアグランプリファイナルのチャンピオンで、今季シニアデビューのネイサン・チェン選手です。

c0309082_18142338.jpg

 SPはまず大技の4ルッツ+3トゥループからでしたが、ファーストジャンプの後にオーバーターンが入ってしまい減点を受けます。続く4フリップは回転不足で転倒。後半の苦手な3アクセルはクリーンに決めますが、2つのジャンプミスが響き85.30点で5位にとどまります。
 フリーも冒頭は4ルッツ+3トゥループ、これをパーフェクトに下りて加点2の高評価を獲得。続く4フリップも完璧に成功。続いて4トゥループからの3連続ジャンプ、単独の4トゥループと4回転を立て続けにクリーンに着氷し、前半を最高の形で終えます。後半も勢いはとどまるところを知らず、まず3アクセルを成功させると、3ループ、3+3、3ルッツと全てのジャンプを予定どおりに着氷。演技を終えたチェン選手はガッツポーズで喜びを表しました。得点は自己ベストを16点以上更新する197.55点でフリー1位、総合2位と大きく順位を上げました。
 ショートは得点源の4回転が失敗に終わり出遅れましたが、フリーは4回転のみならず全てのジャンプをクリーンに下りるという圧巻の演技で、ただただ驚嘆させられました。本来チェン選手は4サルコウも含めた4種類の4回転を跳べるわけですが、今回はNHK杯同様に4サルコウを外し、シーズン初めの頃よりは難度を落とした構成で挑みました。とはいえ3種類の4回転を4本という十二分に難しい構成で、しかもNHK杯からたった2週間でクリーンな形で完成させるという技術力の高さには脱帽せざるをえませんね。
 今大会の結果によってチェン選手は昨年の宇野選手に続く初出場にして表彰台、しかも宇野選手の銅メダルを上回る銀メダルという快挙を成し遂げたわけですが、ちょうど1年前の宇野選手や中国の金博洋(ジン・ボーヤン)選手同様、シニア1年目の選手のシーズン中の急成長というのは、やはり想像の遥か上を行くものがあるなと改めて感じさせられました。この調子で順風満帆にシーズン最終盤まで突き進んでいくのか、それともどこかでつまずきがあるのかはわかりませんが、どちらにしろ羽生選手の次の時代を作っていくであろう、将来の男子フィギュア界のリーダーとしてのポテンシャルを思う存分見せつけた試合でしたね。初優勝の懸かる全米選手権も楽しみにしています。


 2年連続で銅メダリストとなったのは日本の宇野昌磨選手です。

c0309082_20253560.jpg

 ショート冒頭は大技4フリップ、これを着氷で詰まりながらも耐えて大きなミスにはしません。しかし、続く4トゥループはダウングレードで転倒となり、予定していたコンビネーションジャンプにはならず。後半の3アクセルはパーフェクトに決めて2.57点の高い加点を獲得し、ステップシークエンス、スピンはいつもどおり丁寧にこなし全てレベル4を揃えました。得点は86.82点で4位につけます。

c0309082_20330679.jpg

 フリー冒頭は大技4フリップ、これをクリーンに決めて好スタートを切ります。次の4トゥループは着氷が若干乱れますが、直後の3ループは問題なくクリア。後半最初の3アクセルは予定していた連続ジャンプにはならなかったものの、続く4トゥループ+2トゥループは成功。3ルッツは踏み切りのエッジが不正確とされ減点されますが、高難度の3アクセル+1ループ+3フリップはスムーズな流れで決め高い加点を獲得。最後の3サルコウも着氷すると、終盤のコレオシークエンスでは情熱的な滑りと代名詞のクリムキンイーグルで観客を沸かせ、演技を終えた宇野選手は安堵したような表情を浮かべました。得点は自己ベストとなる195.69点でフリー3位、総合3位となりました。
 今大会の宇野選手は時差調整がうまくいかなかったこということでショート前の練習の時点で不調が伝えられていて、実際にショートは全体的に体が重そうな感じがしましたが、フリーは本来の動きのキレが戻った印象で、中1日空いたことが功を奏したのかもしれません。ただ、フリー演技直後の宇野選手の呆然とした表情が物語っていたように、100%の感情を注ぎ込んだ表現だったり体の中に押しとどめておけないような気迫だったりはいつもほどには感じられず、滑り切るということにいっぱいいっぱいだったのかなという気がします。その中でも4フリップ始めジャンプをまとめ上げたのは素晴らしいことで、上述した羽生選手同様、アベレージが上がっているということなのではないかと思いますね。
 今大会の演技には宇野選手本人は全く納得していないでしょうから、全日本にこの悔しさをぶつけて、満足いく演技を見せてほしいと思います。


 4位だったのは世界チャンピオンであるスペインのハビエル・フェルナンデス選手です。

c0309082_02113532.jpg

 ショートはまず4トゥループ+3トゥループを完璧に決めて最高の形で滑り出しますが、直後の4サルコウは着氷で大幅に乱れます。さらに後半の3アクセルでは珍しく転倒。それでもほかのエレメンツをコンスタントに揃えて91.76点で3位につけます。
 フリーも冒頭は4トゥループからでしたが、回転が抜けて3回転に。次の4サルコウからの連続ジャンプは着氷がわずかにぐらつきますが、続く3アクセル+2トゥループはクリーンに成功させます。後半に入り1発目は得意の4サルコウ、これは着氷で何とかこらえます。ですが、次の3アクセルはショートに続き転倒。その後のジャンプは全て予定どおりに着氷したものの、フィニッシュしたフェルナンデス選手は濃い疲労の色を見せました。得点は177.01点でフリー4位、総合4位と、表彰台には届きませんでした。
 GP2連勝と順調にシーズンを送ってきたフェルナンデス選手ですが、今大会は予想外の落とし穴にハマった感じでしたね。特に3アクセルがショート、フリーともに1本ずつ転倒というらしくない内容で、ここまで3アクセルが決まらないフェルナンデス選手の姿はしばらく見ていなかったので驚きました。大会前のインタビューではファイナルについて、まだ1度もタイトルを取ったことがないので優勝したい、と強い意欲を表していましたが、その意気込みが空回りしてしまったのでしょうか。ただ、今回ミスがあったのは4回転や3アクセルといった大技ばかりで、いくら世界選手権2連覇中のフェルナンデス選手といってもちょっとしたコンディションのズレで感覚やタイミングが狂ってしまうということはあって当然なので、ここから次戦のスペイン選手権、そして来年1月の欧州選手権に向けて気持ちを切り替えるのはそう難しくないでしょうし、今大会での失敗を引きずることもないのではないかと思います。次こそはフェルナンデス選手らしい生き生きとした演技を期待したいですね。


 5位は元世界王者、カナダのパトリック・チャン選手です。

c0309082_23202760.jpg

 ショート冒頭は得点源の4トゥループ+3トゥループ、ファーストジャンプで若干詰まりながらもうまくセカンドジャンプに繋げきっちり成功させます。続いて鬼門となっている3アクセルもパーフェクトで2.14点の加点を得ます。後半の3ルッツも難なく下りると、スピンやステップシークエンスでは全て1点以上の高い加点を稼ぎ、演技後チャン選手は満面に笑みを浮かべました。得点はパーソナルベストとなる99.76点で2位と好発進します。
 フリーはショートで決めた4トゥループ+3トゥループからでしたが、4トゥループで転倒し単独になります。さらに3アクセルでも転倒とミスを連発。しかし、今季から取り入れている4サルコウは公式試合で初めて成功させ、高い加点も得ます。勢いを取り戻したい後半、最初の4トゥループは3回転になります。続けて3アクセルは再び転倒。以降のジャンプは全て予定どおりにこなし、終盤のステップシークエンスでは世界屈指のスケーティングを披露し1.9点の高い加点を稼ぎましたが、3度の転倒が響き、166.99点でフリー5位、総合5位と順位を落としました。
 ほぼ完璧だったショートから一転、フリーは3度転倒と滅多にない崩れ方で、ショートの内容の良さからはちょっと予想できない展開でしたね。苦手としている3アクセルも今季フリーではまずまず安定していたので2本とも転倒というのは意外でしたが、転倒という失敗の仕方が必ずしも深刻なものとは限らないので、そんなに心配はないでしょう。そうした失敗の一方、4サルコウの初成功という大きな収穫もあり、習得したばかりの4サルコウがすぐに安定するわけではないかもしれませんが、2種類の4回転を手にしたチャン選手がシーズン後半どんな演技を見せてくれるのか楽しみですね。


 6位となったのはアメリカ王者のアダム・リッポン選手です。

c0309082_14503981.jpg

 SPは4回転を外した構成で臨み、まずは3フリップ+3トゥループを下りますが2つ目がアンダーローテーション(軽度の回転不足)と判定されます。続く3アクセルは着氷で何とかこらえ、後半の得意の3ルッツもいつもほどには加点が伸びず。スピンやステップシークエンスでは高い加点を積み重ねましたが、83.93点で6位となります。
 フリーは冒頭に4トゥループを組み込みましたが、ダウングレードでの着氷で転倒となります。しかし、直後の3+3、3サルコウは難なく決めてすぐに挽回します。後半最初の3アクセル+2トゥループも着氷して前半の良い流れを継続させたかに見えましたが、続く単独の3アクセルはステップアウトし氷に手をつきます。さらに得意の3ルッツでも珍しく転倒。その後の2つのジャンプでもミスが重なり、演技を終えたリッポン選手は残念そうに顔を曇らせました。得点は149.17点でフリーも6位、総合6位で初めてのファイナルを終えました。
 今シーズンは4回転以外は抜群の安定感を誇っていたリッポン選手ですが、ショート、フリーともに自分のペースを築けなかったのかなという印象ですね。特に代名詞ともなっている3ルッツで乱れるというのはあまりない光景だったので、やはりファイナルという特別な舞台が持つ魔力が影響を与えたのかもしれません。ただ、次の重要な大会である全米選手権まではまだ時間もありますし、ベテランで様々な失敗も挫折も経験しているリッポン選手ならば今大会の経験を糧に再び上昇してくれると思うので、またリッポン選手らしい演技をして、全米チャンピオンのタイトルを保持できることを祈っています。



 ここからはアイスダンスです。

c0309082_16034213.jpg


 金メダルを獲得したのはバンクーバー五輪チャンピオン、カナダのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組。SDはパーシャルステップシークエンスがレベル3にとどまったものの、全てのエレメンツで全てのジャッジが加点2もしくは3をつけるクオリティーの高い滑りを見せ、世界歴代最高得点を更新する80.50点で堂々のトップに立ちます。さらにフリーでもステップ以外では全てレベル4を揃え、世界歴代2位となるハイスコアをマーク。トータルでは世界歴代1位の得点で、ファイナル初制覇を果たしました。
 オリンピックも世界選手権も制しているヴァーチュー&モイア組がファイナル初優勝というのは意外ですが、かつてはアメリカのメリル・デイビス&チャーリー・ホワイト組がファイナルでは圧倒的な強さで立ちはだかっていてその後塵を拝し続けていたわけですね。ですが、今大会は2位以下を全く寄せつけない圧巻の勝利でした。これでまだシーズン前半なわけですから、このまま右肩上がりで突き進んでいくとなるとどうなっていくのか、楽しみなような、怖いような感じさえします。ファイナル初優勝、おめでとうございました。
 2位は現世界王者、フランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組です。SDはステップがレベル2となる取りこぼしがあり3位発進。FDもツイズルやステップがレベル3となりシーズンベストには及びませんでしたがフリー2位、総合2位と順位を上げました。
 2週間前のNHK杯でもヴァーチュー&モイア組と直接対決し2位に甘んじたパパダキス&シゼロン組。その借りを返すことはできませんでしたが、その際に9点以上の差をつけられたのと比べると、今回は約4点と点差は縮まっていて、シーズン後半に向けて手応えも得た試合だったのではないかと思います。まだまだパパダキス&シゼロン組も本領を100%発揮したとは言い難いので、次に対決する世界選手権ではどちらが上回るか、今から楽しみです。
 3位はアメリカのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組です。SDは自己ベストを3点以上更新する会心の演技で2位と好発進。FDはステップがレベル2にとどまり得点は伸び切らず順位は落としたものの、表彰台は逃さずファイナル初のメダルを獲得しました。
 昨季の世界選手権での銀メダルから、今季のGP2連勝、そしてファイナル初表彰台と、順調に世界でのポジションを固めているシブタニ兄妹。今回はショートでパーソナルベストを大幅に更新しただけに、フリーもその勢いを持続させたいところだったでしょうが、変わらぬ安定感は十二分にアピールできたのではないでしょうか。



 さて、こうしてグランプリファイナルは無事終了。男子はショートからフリーへと順位が大きく変動し2、3位にフレッシュな10代の2人が入り、平昌五輪後の男子フィギュア界の未来図を垣間見たような気がしました。
 一方のアイスダンスは今季復帰したベテランが優勝によって一段と存在感を増し、ソチ五輪後の世界をリードしてきた若きチャンピオンとの今後の勝負がますます楽しみになりました。
 そして日本国内では来週末に全日本選手権が行われますが、その前に、ファイナルと同時開催されたジュニアのファイナルについても記事にしたいと思いますので、しばらくお待ちください。では。


:男子メダリスト3組のスリーショット写真、宇野選手のSPの写真は、デイリースポーツのニュースサイト内の写真特集記事から、羽生選手の写真、チェン選手の写真、宇野選手のフリーの写真、フェルナンデス選手の写真、チャン選手の写真、リッポン選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、アイスダンスメダリスト3組の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
グランプリファイナル2016・女子&ペア―エフゲニア・メドベデワ選手、パーソナルベストで2連覇 2016年12月13日

[PR]
by hitsujigusa | 2016-12-15 17:25 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_01332942.jpg


 グランプリシリーズ全6戦が終わり、その熾烈な争いを勝ち抜いたポイントランキング上位6名(組)のみが出場できるGPファイナルが今年はフランスのマルセイユで行われました。ディフェンディングチャンピオンの連覇あり、一方で思いがけない勝利や波乱ありの、おもしろい試合となりました。この記事では女子とペアの結果と内容について書いていきます。
 まず、女子を制したのは昨年のチャンピオンでもあるロシアのエフゲニア・メドベデワ選手。パーソナルベストで見事に連覇を飾りました。そして、銀メダリストは日本の宮原知子選手。こちらも自己ベストを更新する素晴らしい演技で、昨年と同じ色のメダルを手にしました。3位にはロシアのアンナ・ポゴリラヤ選手が入り、初めてファイナルの表彰台に立ちました。
 一方、ペアはロシアのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組が初出場にして初優勝を成し遂げました。

ISU Grand Prix Final 2016/17 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 2連覇を達成したのは世界女王のエフゲニア・メドベデワ選手です。

c0309082_01510702.jpg

 SPはまずフライングキャメルスピンから始まり、続けてステップシークエンスとどちらもレベル4を獲得。後半に入り得点源の3フリップ+3トゥループはいつもどおりクリーンに下りると、3ループ、2アクセルと問題なく着氷。終盤の2つのスピンもレベル4を揃え、演技を終えたメドベデワ選手は納得したように微笑みました。得点は世界歴代最高得点となる79.21点をマークし、圧巻の首位発進となります。
 フリー冒頭は3フリップ+3トゥループでしたが、ファーストジャンプでステップアウトする珍しいジャンプミスを犯します。しかし、続く3ルッツをきっちり着氷すると、後半は3ループを下り、次の3フリップは単独の予定でしたが急遽3トゥループを付けて冒頭のミスを取り返します。さらに2アクセルからの3連続ジャンプ、3サルコウ+3トゥループ、2アクセルと、全てのジャンプをクリーンに成功させ、フィニッシュしたメドベデワ選手は悔しさをのぞかせながらも観客の拍手喝采に笑顔で応えました。得点はシーズンベストとなる148.45点でフリーも1位、総合ではパーソナルベストを更新し2連覇を達成しました。
 フリーはメドベデワ選手にしては稀なミスがありましたが、そのミスによって結果的にコンビネーションジャンプを全て後半に跳ぶことになり、通常のジャンプ構成より基礎点が高くなるといういわゆる怪我の功名となりました。ミスがあってもただでは起きない世界女王の名にふさわしい冷静ぶりで、隙の無い強さは今回も揺らぎませんでしたね。シーズン後半に向けて、女王の座をさらに確かなものにする内容だったと思います。グランプリファイナル2連覇、おめでとうございました。


 2位は日本のエース、宮原知子選手です。

c0309082_16303293.jpg

 SPはまず得意の2アクセルを完璧に決めて好スタートを切ります。続くステップシークエンスを丁寧にこなしレベル4を取ると、後半の3ルッツ+3トゥループ、3ループと両方ともパーフェクトに着氷。スピンでも全てレベル4を揃えるなどそつのない演技を見せ、自己ベストの74.64点で3位と好発進します。

c0309082_16362824.jpg

 フリーはまず3ループを綺麗に決めると、続く3ルッツ+3トゥループもしっかり回り切って下り成功。次の3フリップはわずかに回転不足となりこらえた着氷になります。後半は3ルッツの3連続コンビネーションをクリーンに下り、続いて2アクセル+3トゥループも完璧に着氷。さらに3サルコウ、2アクセルと終盤のジャンプも問題なし。終盤まで勢いと躍動感に満ちた滑りを見せ、演技を終えた宮原選手はガッツポーズで満足感を露わにしました。得点はパーソナルベストの143.69点でフリー2位、総合2位とショートより順位を上げ、2年連続で銀メダルを獲得しました。
 ショート、フリーともにほぼノーミスの演技で、“ミス・パーフェクト”の異名を取る宮原選手の本分を見せつける演技でしたね。特にフリーの「惑星/映画『スター・ウォーズ』より」はコロコロと変わる曲想に合わせて柔らかさと力強さ、ゆったりした動きとキビキビした動きなど、相反する表現をしっかり調和させながら緩急豊かに滑りこなしていて、2週間前のNHK杯からさらなる進化がうかがえました。また、NHK杯ではショートで珍しく転倒があり出遅れたことによって優勝には届きませんでしたが、ショートでノーミスできればフリーにその良い流れを持続させてますます加速させることができるというのが今大会の内容によって改めて示されて、来季のオリンピックを見据える上でも意義深く収穫の多い試合だったのではないでしょうか。
 次の全日本までは2週間弱と過密スケジュールが続きますが、再び宮原選手らしい演技を見せてほしいと思います。


 3位に入ったのは世界選手権2016の銅メダリスト、ロシアのアンナ・ポゴリラヤ選手。

c0309082_17072304.jpg

 SPはまず得点源の3ルッツ+3トゥループをパーフェクトにこなし、2つのスピンを挟んで後半、さらに勢いに乗りたいところでしたが3ループは着氷で乱れます。最後の2アクセルはクリーンに下り、終盤のステップシークエンスでは艶やかなタンゴの音色と融合した滑りで加点1.8点を獲得。最後のスピンもまとめ、自己ベストに極めて近い73.29点で4位につけます。
 フリーは冒頭の3ルッツ+3トゥループをショート同様にしっかり決めると、続く3フリップは踏み切りのエッジが不正確とされたものの高く幅のある跳躍で加点を獲得。次の2アクセルもきれいに着氷して前半をパーフェクトに終えます。後半はまず3ルッツ+1ループ+3サルコウの難しい3連続ジャンプを成功。その後のジャンプも全て予定どおりにクリアし、エネルギッシュに演じ切ったポゴリラヤ選手は納得したように破顔しました。得点は自己ベストの143.18点でフリー3位、総合でも自己ベストで銅メダルを獲得しました。
 GP2戦では抜群の安定感を見せたポゴリラヤ選手ですが、その好調をしっかり持続させた演技でした。これまで2度出場したファイナルではなかなか本領を発揮し切れませんでしたが、現在はかつての不安定さはすっかり鳴りを潜めていて、以前のファイナルだったら優勝してもおかしくないくらいの演技内容でしたね。ただ、ロシアの女子選手にとってはこのあとが真のシーズン本番、欧州選手権と世界選手権の切符が懸かるロシア選手権こそが本当の意味で真価を問われる試合になると思うので、世界一厳しい国内大会を勝ち抜いてシーズン後半もポゴリラヤ選手のエレガントな演技を披露してほしいですね。


 惜しくも表彰台まであと一歩の4位だったのはカナダのケイトリン・オズモンド選手です。

c0309082_20253455.jpg

 SPはまず3フリップ+3トゥループを完璧に決めて1.4点の加点を得ると、続く3ルッツも抜群の高さで1.5点の加点。さらに後半の2アクセルも1点の加点とジャンプは全て1点以上の加点を稼ぎます。ステップシークエンス、スピンでも全てレベル4に加え、1つのスピン以外は全て加点1以上と質の高いエレメンツを揃え、自己ベストとなる75.54点で2位と好位置につけます。
 フリーもまずは3フリップ+3トゥループを成功させてショートよりも高い1.8点の加点を獲得。続く2アクセル+3トゥループは2つ目が2回転になりますが、次の3ルッツはクリーンな出来で1.7点の加点を得ます。後半は最初の3ループをクリーンに決めて良い流れを作り出しますが、続く3フリップは着氷で若干こらえ気味に。3サルコウ+2トゥループ+2ループは1つ目が2回転、2つ目が1回転とパンクが続きます。最後の2アクセルは問題なく下り、終盤のコレオシークエンスではパワフルかつエモーショナルな滑りで1.9点の加点を得るなど最後までスピード感のある演技を披露しました。得点はショートに続き自己ベストの136.91点でフリー4位、総合4位で初めてのファイナルを終えました。
 今季のオズモンド選手の課題としてはフリー後半の体力が挙げられますが、今大会もその後半にミスが相次いだものの、滑り自体の質はさほど落ちることなくGP2戦からは改善が見られたのではないかなと思います。そうした中で持ち味であるダイナミックなジャンプは目を見張るような助走のスピードともの凄い高さ、飛距離で、身軽にポンポン跳んでいたティーンの頃より進化しているのは素晴らしいですね。そして今回も際立っていたのは何といっても表現力で、特にシャンソンの名曲を組み合わせたショートはコケティッシュでもあり、エレガンスでもあり、ほかの選手たちが全員10代だからこそ余計に20代のオズモンド選手にしか演じられない世界観というのを強く感じましたね。
 オズモンド選手にとってキャリア最高の成績を収めたシーズン前半。この経験を活かしてシーズン後半もぜひ頑張ってほしいですね。


 5位は今季シニアに参戦したばかりのロシアのマリア・ソツコワ選手です。

c0309082_20520006.jpg

 ショート冒頭は大技3ルッツ+3トゥループ、これをしっかり回り切って下ります。スピンとステップシークエンスを丁寧にこなして後半、3フリップは着氷したもののアンダーローテーションの判定。続く2アクセルも同じくアンダーローテーションとなり、細かなミスが重なります。しかし大きく崩れたり乱れたりすることはなく演技をまとめ、65.74点で6位となります。
 フリーもまずは3ルッツ+3トゥループを確実に決めて良い滑り出しを図りますが、3フリップはわずかに着氷が乱れてこらえます。後半は最初の3ループをパーフェクトに着氷しますが、次の3フリップ+1ループ+3サルコウは1つ目と3つ目のジャンプがアンダーローテーションに。しかし、以降のジャンプは全てクリーンにこなし、ステップシークエンスやスピンも取りこぼしなく美しい出来栄えを揃えました。得点は133.05点でパーソナルベストとなり、フリーは5位、総合も5位でフィニッシュしました。
 シニア1年目にして初出場となったソツコワ選手ですが、豪華なメンバーの中でも縮こまることなく伸びやかな滑りができていましたね。さすがに表現的にはまだジュニアらしさが感じられましたが、170cmという高身長を活かした演技は生来の華やかさとダイナミックさがあって、今後がますます楽しみになりました。課題としてはやはりジャンプの回転不足で、まだ現在の自身の体格に対応し切れていないのだと思いますが、その中でも大きなミスをしない技術力と精神力が今大会の内容からも伝わってきました。群雄割拠のロシア女子の競争を戦い抜いてシーズン後半の大舞台に出場できるかどうかはわかりませんが、ロシア選手権でもソツコワ選手らしさを100%出し切ってほしいなと思います。


 6位は昨年の銅メダリストでもあるロシアのエレーナ・ラディオノワ選手です。

c0309082_00210629.jpg

 SP冒頭は3ルッツ+3トゥループをきっちり跳び切り、続く2つのスピンもレベル4と上々の前半。ですが、後半は3ループがアンダーローテーションでの着氷でこらえ、2アクセルも若干詰まり気味であまり加点は伸びず。しかし、終盤のステップシークエンスとスピンではレベル4かつ1点以上の加点と実力者の本領を発揮し、68.98点で5位につけます。
 フリーも冒頭は3ルッツからの2連続3回転でしたが、3ルッツが回転不足で転倒となります。しかし、直後の3フリップは切り換えて問題なく着氷。後半に入り最初の3ルッツに3トゥループを付けてリカバリーしますが、こちらはセカンドジャンプがアンダーローテーションに。さらに3ループ+1ループ+3サルコウは最後のジャンプがダウングレード(大幅な回転不足)でステップアウトとミスが重なります。その後のジャンプは全てほぼノーミスで下りましたが、演技を終えたラディオノワ選手は悔しそうに苦笑いを見せました。得点は119.83点でフリー6位、総合6位となりました。
 今大会の女子は全体的にミスが少なく、そうした状況で唯一転倒という大きな失敗を犯してしまったラディオノワ選手にとってはメダルというのは難しかったですね。成長期による急激な身長の伸びもあり、ジャンプの回転不足が以前より増えていますが、体の変化が落ち着くまでは我慢の時になるのでしょうね。現在のロシア国内の競争の中でシニア参戦以来安定した成績を残してきたラディオノワ選手ですが、年下の選手たちの猛烈な追い上げもあり、彼女自身の成績や実力がそんなに極端に落ちているわけではないものの、相対的にポジションだったり格付けだったりは変わってきているのかなと思います。ロシア選手権は表彰台に乗るのも至難になるでしょうが、シーズン後半も彼女の演技が世界の舞台で見られることを願っています。



 さて、ここからはペアです。

c0309082_01535131.jpg


 ペアはシリーズのポイントランキングで2位だったドイツのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組が出場を辞退したことによって、補欠1番手のロシアのナタリア・ザビアコ&アレクサンドル・エンベルト組が繰り上がりで出場となり、当初想定していた勢力図からは様相がガラリと変わりました。
 そんな中で優勝を勝ち取ったのは世界選手権2016で5位のロシアのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組。ショートでノーミスの演技を見せ自己ベストで首位に立つと、フリーはジャンプミスはいくつかあったもののほかのエレメンツを目立ったミスなく、その上で高いクオリティーでまとめ自己ベストの1位となり、完全優勝を果たしました。
 ポイントランキング5位で初のファイナル進出を決めたタラソワ&モロゾフ組。正直表彰台はあってもいきなり優勝というのは予想していなかったのですが、ショート、フリーともにトップの座を明け渡すことなく優勝と申し分ない内容でした。GP初戦のスケートアメリカではショートで首位発進しながらもフリーで大崩れして初のタイトルを逃し、フランス杯では細かなミスがあり僅差で2位と惜しいところが続いていましたが、初めてのファイナルで見事にまたとないチャンスをつかみましたね。フリーではジャンプミスがあったので完璧ではありませんでしたが、大技の4ツイストをクリーンに決めるなど重要なポイントでしっかり加点を引き出す質の高さが優勝に繋がったのかなと思います。この金メダルを励みに、今後さらに飛躍してほしいですね。ファイナル初優勝、おめでとうございました。
 銀メダルを獲得したのは中国の于小雨(ユー・シャオユー)&張昊(ジャン・ハオ)組。ショートはスピンで細かなミスがあってGOEで減点を受けたものの、それも含めた全てのエレメンツでレベル4を獲得し、2位と好発進。フリーはサイドバイサイドのコンビネーションジャンプで回転不足と着氷ミスがあり、また、演技最後のスピンでもぐらついて十分な回転ができなかったためレベルがつかず、その流れで行ったフィニッシュでは女性の于選手が尻もちをついてしまう思わぬミスもあり3位でしたが、総合では2位とショートのリードが活きた形となりました。
 今季ペアを結成したばかりの于&張組ですが、今後世界の頂点を狙えるポテンシャルと、新ペアゆえの脆さと両方が感じられましたね。脆さとしてはスピンでの取りこぼしがGP初戦からたびたび見られるので、このあとのシーズンも注目ポイントになるのかなと思います。ただ、それ以外のエレメンツは安定感十分で、今回もレベルがつかなったフリーのスピン以外は全てレベル4という精度の高さがあるので、この勢いで行けばペア結成1季目にして世界の表彰台の可能性も大いにあるのではないでしょうか。
 3位となったのは世界王者のカナダのメ―ガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組です。SPはサイドバイサイドの3ルッツと大技のスロー3アクセルの両方でミスがあり3位にとどまります。フリーもソロジャンプやスロージャンプでミスが相次ぎ得点を思ったほど伸ばせず、総合3位で大会を終えました。
 世界選手権2連覇中で今大会も優勝候補筆頭だったデュハメル&ラドフォード組でしたが、ジャンプがうまくハマりませんでしたね。スロージャンプに関しては3アクセルや4サルコウといったリスクの高い大技に挑戦しているので致し方ない部分もあるのかなと思いますが、本来得意で安定感もあるソロジャンプがGPでは1本もクリーンに決まっていないのが気になりますね。シーズン後半に向けてどう修正してくるか、楽しみにしたいと思います。



 さて、女子&ペアの記事は以上ですが、男子&アイスダンスの記事もアップしますので、もう少しお待ちください。


:記事冒頭の女子メダリスト3選手のスリーショット写真、ポゴリラヤ選手の写真、オズモンド選手の写真、ソツコワ選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、メドベデワ選手の写真、ラディオノワ選手の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、宮原選手の写真は、デイリースポーツのニュースサイト内の写真特集記事から、ペアメダリスト3組の写真は、国際スケート連盟の公式サイトから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
グランプリファイナル2016・男子&アイスダンス―羽生結弦選手、史上初の4連覇達成 2016年12月15日

[PR]
by hitsujigusa | 2016-12-13 15:43 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

c0309082_16542345.jpg


 NHK杯2016、男子&アイスダンスの記事です。女子とペアの記事はこちらをご覧ください。
 男子は日本のエース、羽生結弦選手が昨年に続く2連覇を達成。2位にはアメリカの新星ネイサン・チェン選手が、そして3位には日本の田中刑事選手が入り、それぞれ初めてGPの表彰台に立ちました。
 アイスダンスは元世界王者でバンクーバー五輪金メダリストのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組が世界歴代最高得点をマークして圧勝を遂げました。

ISU GP NHK Trophy 2016 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 男子を制したのはGPファイナル3連覇中の羽生結弦選手です!

c0309082_01075880.jpg

 SPはまず新たな武器となった4ループからでしたが、着氷でバランスを崩し完全なものとはならず。しかし、直後の4サルコウ+3トゥループを完璧に決め2.29点の高い加点を得ると、後半の3アクセルも全く問題なく満点となる加点3を獲得。スピン、ステップシークエンスも全てレベル4を揃え、プリンスの「レッツ・ゴー・クレイジー」のアップテンポなリズムに乗せて、まるでアイスショーのように観客を盛り上がりの渦に巻き込みました。得点はシーズンベストの103.89点で断トツの首位発進となります。

c0309082_01165682.jpg

 フリーも冒頭は4ループ、空中で軸が曲がりながらも着氷はクリーンにまとめ加点に繋げます。さらに単独の4サルコウも成功。前半最後の3フリップも難なく下ります。後半はまず2本目の4サルコウからの連続ジャンプでしたが、こちらは転倒となります。しかし次の4トゥループを若干こらえながらも下りると、3アクセル+3トゥループを完璧に着氷。続く3アクセル+1ループ+3サルコウは3つ目が2回転となりますが、最後の3ルッツもきっちり決め、観客のスタンディングオベーションに満面の笑みで応えました。得点はシーズンベストの107.58点でもちろんフリーも1位、トータルでは自身3度目となる300点超えを達成し、大会2連覇を果たしました。
 2位に終わったスケートカナダでは高難度のジャンプ構成に苦闘し、プログラムとしてのまとまりもまだ形作れない演技でしたが、GP2戦目という早い時期にしてこれだけプログラムを完成形に近い形に持ってくるとはさすが羽生選手でしたね。4ループに関してはもっと美しいフォーム、回転のジャンプもショーや練習では見せているので、それと比べるとステップアウトしたショートも、多少軸が曲がったフリーも、やはり試合ならではの難しさがあるのかなと感じました。しかしそうは言ってもあれだけの難しいジャンプをコンスタントにこなすというのは尋常ではなく、改めて世界屈指のジャンパーである羽生選手の凄味を感じさせられました。もちろん4ループのみではなく、4サルコウはもう同門の仲間であるハビエル・フェルナンデス選手に勝るとも劣らない質の高さだと思いますし、ほぼ失敗らしい失敗をしない3アクセルに至っては機械のごとく正確無比とも言えます。そして何より、そうした数々の美しいジャンプがバランス良く散りばめられたプログラム自体も非常に見応えのあるものとなり、それはもちろんジャンプを見るためだけのプログラムではなく、プログラムを構成する一つの要素として各ジャンプがプログラムに迫力だったりメリハリだったり彩りだったりを与える役割を果たしてもいて、それを叶えるためには質の高いジャンプが何よりも必須なので、いろんなジャンプをバランス良くこなせる羽生選手だからこそできるプログラム、演技だなと思いました。表現的にもスケートカナダより進化していて、“ライブ感”をテーマとして掲げるSPは、何といっても音との一体感というのが素晴らしく、音と体の動きが一致することによって生まれる爽快感、歯切れの良さが印象に残りました。フリーは大きな曲調の変化がないプログラムなので、まだまだこれからブラッシュアップされ、細かい変化も加わっていくでしょうから、今後を楽しみにしたいですね。
 スケートカナダ2位、NHK杯優勝で今年もファイナルに進んだ羽生選手。史上初となる4連覇が懸かりますが、羽生選手らしい伸びやかな演技を期待したいと思います。NHK杯2連覇、おめでとうございました。


 銀メダルを手にしたのは昨年のジュニアGPファイナル金メダリスト、ネイサン・チェン選手です。

c0309082_01543761.jpg

 SP冒頭は大技4ルッツ+3トゥループでしたが、回転は十分だったものの転倒してしまいます。ですが、続くこちらも大技4フリップに急遽3トゥループを付けて史上初となる4フリップ+3トゥループのコンビネーションジャンプを成功させます。苦手としている3アクセルは着氷で大きく乱れますが、スピンやステップシークエンスは目立った取りこぼしなくまとめ、87.94点で2位につけます。
 フリーもまずは4ルッツの連続ジャンプからでしたが、ショートに続き転倒に終わります。しかし4フリップに3トゥループを付けてショート同様のリカバリーを見せます。次の4トゥループは着氷が乱れますが、直後の同じ4トゥループは2トゥループを付けてしっかり着氷。後半に入り苦手な3アクセルは最小限の着氷のミスに抑え、3ループ、3+3+2とクリーンに成功。最後の3ルッツは着氷ミスがあったものの、演技冒頭の転倒を引きずることなくエネルギッシュに演じ切りました。得点は自己ベストとなる180.97点でフリーも2位、トータルも自己ベストで2位となり、自身初となるGPのメダルを獲得しました。
 今大会のチェン選手は前回のフランス杯でおもしろいように決まった4ルッツが安定しませんでしたが、その次に跳ぶ4フリップ、4トゥループが比較的安定していて、一つの大技で失敗してもまた別の大技で取り返すことができる、得点源がいくつもあるというチェン選手ならではの強みが活かされた演技でしたね。また、フリーはフランス杯とは構成を変えて4サルコウを跳ぶことはなく、その時々のコンディションによってバリエーション豊かな構成が組めるのも武器と言えます。そして、チェン選手はジャンプが注目されがちですが、表現面でも姿勢の良さ、身のこなしの美しさ、佇まいだけで絵になる魅力があって、このジャンプ構成に慣れてくれば表現もさらに良くなっていくと思うので期待したいですね。
 フランス杯4位、NHK杯2位という結果によってポイントランキング5位で初のファイナル進出をつかんだチェン選手。ルーキーらしいフレッシュでアグレッシブな演技をファイナルでも見せてほしいと思います。


 3位となったのは日本の田中刑事選手です。

c0309082_15135640.jpg

 SPはまず得点源の4サルコウでしたが、回転は足りていたものの着氷でバランスを崩します。ですが、直後の3アクセルはパーフェクトに決めて加点1を獲得。後半の3+3も綺麗に成功させ、ミスを最小限にとどめました。得点は自己ベストの80.49点で3位と好発進します。

c0309082_15142959.jpg

 フリーも冒頭は4サルコウ、着氷で軽く手をつき減点になります。続いて2本目の4サルコウは着氷でこらえて2トゥループを付けしっかりコンビネーションジャンプにします。次の3アクセルは若干両足着氷となりますが、前半は大きな取りこぼしなくまとめます。勝負の後半、3+3をクリーンに下りると、3アクセルからの3連続ジャンプも完璧に成功。その後のジャンプも全て予定どおりにクリアし、終盤のコレオシークエンスでは「フェデリコ・フェリーニ・メドレー」のポップで軽快なリズムに合わせた躍動感たっぷりの滑りで観客を沸かせ、フィニッシュした田中選手はガッツポーズで喜びを露わにしました。得点はショートに続き自己ベストとなる167.95点でフリーも3位、総合3位でGP初表彰台となりました。
 SPは有力選手たちがミス連発で下位に沈んだことによって3位と好位置につけた田中選手。フリーはメダルが狙えるということで緊張して硬くなってもおかしくないシチュエーションだったと思うのですが、それどころかシニアに上がってから一番のびのびと元気いっぱいの演技ができていたと思います。思えば1年前のNHK杯で4サルコウを初成功させ5位に入ったこともその時は驚きでしたが、それからたった1年で4サルコウを自分のものにして表彰台と、目を見張るばかりの成長ですね。もちろん表現面でもぐっと進化していて、ショートの「ブエノスアイレスの春」は昨季と同じプログラムですが、細かい動きの繊細さや優雅さが1年前よりもずっと巧くなっていますし、フリーはユーモラスな動きの多いプログラムを演じることで今までの田中選手のイメージを良い意味で裏切って幅を広げていて、ちゃんとプログラムで魅せられる選手になっているなと感じますね。
 今大会の結果によって羽生選手、宇野選手に続く日本男子3番手として名乗りを上げた田中選手。世界選手権の切符を巡ってはまだまだ厳しい戦いが続きますが、GP2戦の経験を活かして全日本でも思い切りの良い演技ができることを願っています。


 4位に入ったのはイスラエルのベテラン、アレクセイ・ビチェンコ選手です。

c0309082_15342917.jpg

 SPはまず3アクセルをきっちり決めて1.86点の加点を得ます。ですが、4トゥループは着氷で手をついた上にステップアウトしたため大幅に減点。後半の連続ジャンプは3+2となり、また、スピン2つとステップシークエンスがレベル2にとどまる取りこぼしもあり、自己ベストより10点以上低い75.13点で7位発進となります。
 フリーはまず4トゥループ+3トゥループでしたが、ファーストジャンプが3回転となり3+3に。続いて今度こそ決めたい4トゥループはしっかりと跳び切って加点1。さらに3ループとクリーンなジャンプを続けます。後半は得意の3アクセルを成功させて波に乗るかに見えましたが、2本目の3アクセルはステップアウトし強引に2トゥループを付けましたが、すでにフリーレッグを氷についてから跳んだためコンビネーションジャンプとしては認められず。その後は3+1+3の高難度連続ジャンプ含めすべてのジャンプを下りましたが、スピンやステップシークエンスのレベルの取りこぼしも響き得点は伸び切らず、それでも154.74点でフリー4位、総合4位にまで順位を上げました。
 前回のロステレコム杯ではパーソナルベストを更新する演技で見事に表彰台を射止めたビチェンコ選手ですが、今回は得点源となる4トゥループの安定感を欠き本領発揮とはなりませんでした。また、ビチェンコ選手で気になるのはステップシークエンスやスピンの取りこぼしが多いことで、特にステップはGP2戦通してまだ1度もレベル3以上を取れていないので、こういったところでもさらに質が向上すると、コンスタントに上位で戦える選手になるのではないかと思いますね。
 昨シーズンの欧州選手権銀メダルから今季のGP初表彰台と、確実に世界の第一線での存在感を増しているビチェンコ選手。ヨーロッパの男子勢は世界王者のハビエル・フェルナンデス選手が頭一つ抜けている状況で、それをロシア勢が追随しているわけですが、ビチェンコ選手はそのあいだに割って入る貴重な存在と言えます。シーズン後半も台風の目的な活躍を期待したいですね。


 5位はロシアの実力者ミハイル・コリヤダ選手です。

c0309082_16193646.jpg

 ショートは4トゥループからでしたが3回転になった上にランディングで片手をつきます。得意の3アクセルは高い跳躍とシャープな回転に着氷もクリーンで加点2。後半の単独予定の3ルッツに3トゥループを付けてリカバリーしたいところでしたが、2つ目は2トゥループとなります。スピンは全てレベル4を揃え総合力の高さを見せつけましたが、ジャンプミスが響き自己ベストから12点ほど低い78.18点で4位となります。
 フリーは冒頭に初挑戦となる4ルッツを用意し挑みましたが、回転不足で転倒となります。続いて4トゥループも回転は十分でしたがうまく着氷に繋げられず転倒と、序盤は大きなミスが相次ぎます。しかし次の3アクセルをクリーンに決めると、3+3も何とか下りて挽回。後半は3アクセルが1回転になるなどミスがいくつか重なり、スピン、ステップシークエンスは全てレベル4を獲得しましたが、演技を終えたコリヤダ選手は肩を落としました。得点は147.51点でフリー6位、総合5位と順位を落としました。
 前回のロステレコム杯でもSPで3位という好位置につけながらもフリーで崩れてしまったコリヤダ選手。ショートとフリー両方を揃えるという難しさがあるのはもちろん、コリヤダ選手の場合、ロステレコム杯のフリーでは4サルコウ、今大会のフリーでは4ルッツという新たな4回転にチャレンジしていて、それによって本来のペースをつかみにくくなっている面もあるのかなと感じました。それでも将来的なことを考えると最低でも4回転2種類は欲しいところですし、実戦で跳ばないことには成功するものもしないわけですから、今からどんどん挑戦していくのは良いことだと思いますね。
 ロシア国内の男子の争いはそれぞれの実力が拮抗した混沌とした状況で、コリヤダ選手がロシア王者の座を手中に収める可能性も大いにあると思います。実際に競争の中に身を置いている選手たちには申し訳ないですが、見ている方からすると予想がしづらいおもしろさもあって、今後のロシア男子の頂点を巡る争いがどうなっていくのが注目ですね。


 6位はラトビアの新星デニス・ヴァシリエフス選手です。

c0309082_16514854.jpg

 SPは「Voodoo Child」。まずは得点源の3アクセルをきっちり決めると、続く3+3は3+2になったものの確実にコンビネーションジャンプにします。後半の3フリップは着氷こそまとめたものの回転不足判定。スピンは独創的なポジションも交えつつしっかりレベル4を取り、70.50点で10位発進となります。
 フリーはヴィヴァルディの「四季」。冒頭はショート同様に3アクセルを着氷でこらえながらも成功。続く2つ目の3アクセルは両足着氷になりながらも2トゥループを付けてまとめます。前半最後の3ループは問題なくクリーンに跳び、後半最初は3+3をパーフェクトに着氷。続いて単独の3ルッツ、3フリップと成功させると、終盤の3+2+2、2アクセルと予定どおりにクリーンな出来のジャンプを揃え、フィニッシュしたヴァシリエフス選手は嬉しそうに破顔しました。得点はパーソナルベストとなる153.23点でフリー5位、総合6位と大きくジャンプアップしました。
 昨シーズン、欧州選手権や世界選手権を初めて経験し、今シーズンは満を持してGPデビューを果たしたヴァシリエフス選手。決してものすごくジャンプが上手いというタイプではありませんが、踊りのセンス、音をとらえる能力はGP2戦でも十分に伝わってきました。何より特筆すべきはあの元世界王者のステファン・ランビエールさんが今季からコーチをしていることで、現役時代から世界屈指の芸術性をそなえたスケーターであるランビエールさんが指導するということは、それだけヴァシリエフス選手の滑りに魅力を感じたということだと思うので、ランビエールコーチとのタッグによってこれからヴァシリエフス選手がどう変貌を遂げていくのか、ジャンプなど技術面はもちろんですが、それ以上に表現面に注目したい選手ですね。


 今大会がGPデビューとなった日本の日野龍樹選手は9位となりました。

c0309082_17135671.jpg

 SPは「アルメニアン・ラプソディ」。冒頭は3ルッツ+3トゥループ、これをきっちり決めて好スタートを切ると、次の3アクセルもクリーンに下ります。後半の3ループもしっかり着氷し、終盤のステップシークエンスでは丁寧な滑りを見せ、満員の観客の拍手喝采を浴びました。得点は自己ベストとなる72.50点で9位につけます。

c0309082_20054339.jpg

 フリーはシルク・ドゥ・ソレイユの「キダム」。冒頭はショートでは回避した大技4トゥループでしたが、ダウングレード(大幅な回転不足)で転倒となります。しかし直後の3ルッツからの3連続ジャンプを決めると、3アクセル+3トゥループ、3ループもクリーンに成功させ、冒頭のミスを取り返します。演技後半はまず3アクセルをパーフェクトに着氷。3ルッツはパンクして2回転となり、3フリップは踏み切りのエッジエラーと細かなミスが重なりますが、集中力を切らすことなく最後まで細やかに演じ切りました。得点は自己ベストに迫る134.65点でフリーも9位、総合9位で初めてのGPを終えました。
 本来このNHK杯には今季シニアデビュー予定の山本草太選手がエントリーしていましたが、右足首の疲労骨折により出場辞退となり、同じ長久保裕コーチの門下生である日野選手にチャンスが回ってきました。それによって小学生時代から競い合ってきた羽生、田中、日野の同学年3選手が揃い、今年のNHK杯の見どころの一つともなったわけですが、それぞれの立ち位置の違いを感じさせられるという意味で印象深い試合となりました。今大会の日野選手は確率の低い4トゥループは別として比較的ジャンプも安定していて、今できる演技を精一杯に披露してくれたと思いますが、だからこそ羽生選手や田中選手との差というのも感じられて、日野選手自身がインタビューで話した「現実を突きつけられた」という言葉がまさに彼が置かれている現状を表わしているのかなと思います。初のGPとあって全体的に硬さが見られ、一つ一つのエレメンツをこなすことにいっぱいいっぱいだったでしょうが、今までにない経験をしたことによって日野選手の中で何かが変わるのではないかと思いますし、今大会で得た感情や感覚を大切に、次の全日本ではもっと日野選手らしい伸びやかな演技を楽しみにしたいですね。



 さて、ここからはアイスダンスの結果についてです。

c0309082_22452286.jpg


 優勝は今季競技復帰したカナダのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組です。SDはパーシャルステップシークエンスがレベル3どまりとなりましたがほかのエレメンツを全てレベル4で揃えるハイレベル&ハイクオリティーな演技を見せ、世界最高得点でトップに立ちました。FDでもステップ2つがレベル3だった以外はレベル4を並べ、こちらも世界最高得点。2位に大差をつけてNHK杯初制覇を達成しました。
 現世界王者のパパダキス&シゼロン組とかつての世界王者とのマッチアップということで注目が集まった今大会ですが、予想外に両者の点差が開きました。パパダキス&シゼロン組の珍しい細かなミス、取りこぼしの積み重ねというのもありましたが、それ以上に五輪王者の存在感を前に現世界王者でさえも気圧されてしまったとでもいうような印象でしたね。2年という長期間のブランクにもかかわらずそれを全く感じさせない変わらぬ技術力に改めて彼らの凄さを思い知らされました。
 スケートカナダではフリー2位とミスがある中での優勝でしたが、今大会の優勝はそれとはまた意味合いの違う価値ある優勝になったのではないでしょうか。ファイナルではどんな演技を見せてくれるのか目が離せませんね。NHK杯優勝、おめでとうございました。
 そして2位にはフランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組が入りました。SDはステップがレベル2にとどまり自己ベストより2点ほど低いスコアで2位発進。FDもツイズルがレベル2となる取りこぼしがあり自己ベストから7点低いスコアで2位、総合も2位で優勝には届きませんでした。
 演技構成点ではヴァーチュー&モイア組とそれほど差がありませんでしたが、技術点でかなり差をつけられる形となりました。パパダキス&シゼロン組ももちろん現役随一の正確な技術力の持ち主ですが、今回はその正確さに微妙な狂いがあったのかなと思います。ただ、フランス杯の優勝と合わせて文句なしでファイナル進出ですので、そちらではまた二人らしい演技をして、地元フランスの観客を沸かせてほしいですね。
 3位は世界選手権2014のチャンピオン、イタリアのアンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ組です。SDは自己ベストに0.39点と迫るスコアで3位につけると、フリーも目立った取りこぼしなく演技をまとめ3位、総合3位で銅メダルを獲得しました。
 順位的には3位でファイナル進出は逃しましたが、会場を盛り上げたという意味では上位2組にも劣らぬ演技だったと思います。特にフリーの「チャップリン・メドレー」は陽気な表現を得意とする二人の個性が存分に活かされていて、ベテランのカップルならではの息の合ったお芝居はさすがでしたね。


 日本の平井絵己&マリオン・デ・ラ・アソンション組は9位となりました。

c0309082_23285372.jpg

c0309082_23323533.jpg

 SDは「恋をしようよ/踊るリッツの夜」。ステップがレベル1や2になるなど取りこぼしはありましたが、ミスらしいミスはなく演技をまとめ9位。FDもステップ2つはレベル1となりましたが、それ以外のリフトやスピンはしっかりレベル4を獲得。順位は変わらず総合9位で3度目のNHK杯を終えました。
 1年前のNHK杯ではデ・ラ・アソンション選手の負傷があり消化不良となった平井&デ・ラ・アソンション組でしたが、今回は万全の準備をして臨めたということで、練習の成果を思う存分発揮できた試合だったのではないかと思います。まだまだ修正点はありそうですが、観客やジャッジに自分たちの演技を披露したいという感情のこもったショートとフリーで素晴らしかったですね。ここからさらにコンディションを上げて、全日本にピークが来るよううまく調整してほしいと思います。



 NHK杯2016、男子は予想どおり羽生選手の華麗なる優勝、新世代のジャンパーであるチェン選手の躍進とここまでは予想範囲内でしたが、正直田中選手が3位に入るとは予想していませんでした。もちろん田中選手の安定した演技が何よりもの飛躍の要因ですが、GP初戦で表彰台に上がっているビチェンコ選手やジェイソン・ブラウン選手らの思いがけない不調もあり、波乱含みの試合内容となりましたね。
 一方、アイスダンスもヴァーチュー&モイア組とパパダキス&シゼロン組の優勝争いという点では想像どおりでしたが、僅差にはならず、少し思い描いていたのとは違う試合展開となりましたね。
 また、特筆すべきこととしてアイスダンスの日本代表である村元哉中&クリス・リード組が、リード選手の負傷を理由にSD直前に棄権を発表するという残念な出来事がありました。二人のブログによるとそこまで重傷ではないようで、全日本に向けてさっそく動き始めているようなので、そちらで二人の元気な姿をまた見せてほしいですね。



 ということで、ここからは男子とアイスダンスのファイナル進出者をまとめていきたいと思います。


《男子シングル》

①ハビエル・フェルナンデス(スペイン):30ポイント ロシア大会優勝、フランス大会優勝
②パトリック・チャン(カナダ):30ポイント カナダ大会優勝、中国大会優勝
③羽生結弦(日本):28ポイント カナダ大会2位、日本大会優勝
④宇野昌磨(日本):28ポイント アメリカ大会優勝、ロシア大会2位、
⑤ネイサン・チェン(アメリカ):22ポイント フランス大会4位、日本大会2位
⑥アダム・リッポン(アメリカ):22ポイント アメリカ大会3位、フランス大会3位
―――
補欠⑦金博洋(中国):20ポイント アメリカ大会5位、中国大会2位
補欠⑧セルゲイ・ボロノフ(ロシア):20ポイント アメリカ大会4位、中国大会3位
補欠⑨アレクセイ・ビチェンコ(イスラエル):20ポイント ロシア大会3位、日本大会4位



《アイスダンス》

①テッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組(カナダ):30ポイント カナダ大会優勝、日本大会優勝
②マイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組(アメリカ):30ポイント アメリカ大会優勝、中国大会優勝
③ガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組(フランス):28ポイント フランス大会優勝、日本大会2位
④エカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組(ロシア):26ポイント アメリカ大会3位、ロシア大会優勝
⑤マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組(アメリカ):26ポイント カナダ大会2位、ロシア大会2位
⑥マディソン・ハベル&ザカリー・ドノヒュー組(アメリカ):26ポイント アメリカ大会2位、フランス大会2位
―――
補欠⑦ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組(カナダ):24ポイント ロシア大会3位、中国大会2位
補欠⑧パイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組(カナダ):22ポイント カナダ大会3位、フランス大会3位
補欠⑨アンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ組(イタリア):20ポイント カナダ大会4位、日本大会3位




 男子は、3人の世界チャンピオン経験者に、勢いのある10代の若手二人、経験を積み重ねてようやく花開いたベテランと、非常にバランスの取れたおもしろいファイナリストの顔ぶれになったなという第一印象ですね。
 優勝候補筆頭は今季唯一300点超えを達成している羽生選手であることは間違いないでしょう。しかも、NHK杯はミスが複数ある中での300点超えなので、例年通りにNHK杯からファイナルまでの時間を過ごすことができれば、ほかの選手が上回るのは困難な演技を羽生選手は見せてくれるだろうと思います。
 優勝争い、もしくは羽生選手に次ぐ選手として挙げるならばやはり世界王者のフェルナンデス選手です。ロシア、フランスと2週連続の試合ということでフランス杯では疲労がうかがえましたが、ファイナルに向けては全く問題なくうまく調整してくるでしょう。
 そして上述の二人に最も迫るであろう選手としてはチャン選手が挙げられます。鬼門の3アクセルや今季から取り入れている4サルコウに不安は残りますが、ある程度のまとまった演技をすればSP90点台、フリー190点台はコンスタントに出せる選手なので、GP2戦で順調に階段を上がっていることを鑑みると、ファイナルでもやはり怖い存在です。
 一方、昨年のファイナル銅メダリストである宇野選手もシーズンベストランキングでは3位なので、表彰台の可能性は十二分にあります。上述の3選手がそれぞれまとまった良い演技をしたとしても、そのあいだに割って入るだけの実力は十分持っていますし、ショートとフリー両方を揃えられるという安定感と、4フリップ、4トゥループ、3アクセルといった得点源となる高難度のジャンプを多く持っているというオールラウンダーという強みもあるので、期待したいですね。
 残るはそれぞれ初出場となるアメリカの2選手ですが、一方はシニア1年目、一方はシニア8年目という全く異なる道のりを歩んできた二人でもあります。
 まず、17歳のチェン選手は安定感という点ではまだ不安定さもあり、その点で表彰台の可能性が高いと断言することはできないのですが、何といっても4ルッツ、4フリップ、4サルコウ、4トゥループの4種類の4回転の使い手なので、もしそれが全てハマったらとんでもない技術点が出てしまうので、最下位もありうるし場合によっては優勝もありうるという一番順位を予想しづらい選手です。
 そしてベテランのリッポン選手は初出場という点に関してはメンタル的に影響を受けることはなさそうですが、やはり4回転を武器にしている選手ではない分、ほかの選手たちがミスを連発でもしない限り、表彰台は少し遠いのかなと思います。


 アイスダンスは世界歴代最高得点をマークしたヴァーチュー&モイア組が優勝争いでは一歩抜きん出ていますね。スケートカナダの時のようにミスがあれば状況は変わってくるのですが、NHK杯での演技を見る限り、その可能性は極めて低いように思います。あとは、意外にもヴァーチュー&モイア組は一度もファイナルで優勝したことがないので、そういったジンクス的なものがあるのかないのか分かりませんが、いよいよ初制覇なるのか楽しみですね。
 ヴァーチュー&モイア組の最大のライバルになるのはやはり世界王者のパパダキス&シゼロン組でしょう。NHK杯でこそ後塵を拝しましたが、本来の力を発揮できればもっと接戦になるのではないかと思いますし、開催地がフランスのマルセイユなので、地の利が彼らに有利に働けばというところですね。
 2戦とも優勝でファイナルを決めたもう1組のカップル、シブタニ兄妹は、ポイントランキングでは2位ですが、2戦のスコア合計では上述した2組に差を開けられています。両大会とも185点台と安定感は抜群なのでスコアだけで考えるなら銅メダルを取れる可能性は高いですが、さらにそれ以上の順位となると、パーソナルベストを更新するくらいの好演技が必要なのかなと思いますね。
 シブタニ兄妹とスコア合計で肩を並べるのは同じアメリカのチョック&ベイツ組。今季のGPは優勝こそしていませんが、スケートカナダではさっそくパーソナルベストを出していて、しかもシブタニ兄妹の自己ベストとほぼ同じというハイスコアなので、どちらが上に来るかはその時になってみないと予想は難しいですね。
 ポイントランキング4位のボブロワ&ソロビエフ組も2年ぶりにGPの金メダルを手にするなど調子は良さそうですが、まだ少し波がある感じもするのと、5度ファイナルに出場して一度も表彰台には届いていないという相性の問題が気になるところです。
 ポイントランキング6位のハベル&ドノヒュー組は、6組中唯一パーソナルベストが170台という点でほかの5組には及びませんが、自己ベストを更新できれば昨年の6位以上の順位も十分に臨めそうですね。



 大ざっぱに振り返りまとめてみたNHK杯2016、男子&アイスダンス編。GP6戦があっという間に終わり、あとはファイナルを残すのみ。そのファイナルはフランスのマルセイユで12月8日から始まります。もちろんファイナルに関する記事も書くつもりですので、ご興味のある方はぜひ当ブログにまたお寄りくだされば幸いです。では。


:記事冒頭の男子メダリスト3選手のスリーショット写真、チェン選手の写真、ビチェンコ選手の写真、アイスダンスメダリスト3組の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、羽生選手のSPの写真、田中選手のフリーの写真、コリヤダ選手の写真、ヴァシリエフス選手の写真、日野選手のSPの写真、平井&デ・ラ・アソンション組の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、羽生選手のフリーの写真、田中選手のSPの写真、日野選手のフリーの写真は、デイリースポーツのニュースサイト内の写真特集ページから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
NHK杯2016・女子&ペア―アンナ・ポゴリラヤ選手、大差でGP4勝目 2016年11月29日


[PR]
by hitsujigusa | 2016-12-02 02:17 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)