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 世界国別対抗戦(ワールド・チーム・トロフィー)2017、女子フリーとペアフリーについてお伝えします。なお、この大会のルール、システムについては、こちらの記事をご参考下さい。

ISU World Team Trophy 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 まずは女子です。
 女子フリーを制したのは世界女王、ロシアのエフゲニア・メドベデワ選手。

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 まずは得点源となる3フリップ+3トゥループから、これをいつもどおり手を上げてクリーンに跳び切り2.1点の高い加点を得ます。続く3ルッツも危なげなく下りて前半を終えます。後半はまず3ループ、3フリップを立て続けに成功させどちらも2点前後の加点を得ると、2アクセルからの3連続ジャンプもきれいに着氷。そして鍵となる3サルコウ+3トゥループも確実に成功。最後の2アクセルも難なく決め、ステップシークエンス、スピンも全てレベル4と非の打ちどころのない完璧な演技で今シーズンを締めくくりました。得点は先日の世界選手権でマークしたばかりの世界最高を約6点塗り替える160.46点を叩き出し、キス&クライでメドベデワ選手はロシアチームの仲間たちとともに歓声を上げました。
 150点でも充分にハイスコアにもかかわらず、160点という想像を絶するような数字で女子フィギュア界の新たな扉を開いたメドベデワ選手。技術点も全てのエレメンツに対して全ジャッジが3もしく2という驚くべき評価でもの凄い得点となりましたが、演技構成点ではパフォーマンスの項目で全ジャッジが10点満点という史上初めての快挙を成し遂げました。現在の採点システムにおいてはもうこれ以上伸ばしようがないというくらいの得点ですが、さらに伸ばすとすれば技術点ではGOEの加点3をもっと増やすことができるでしょうし、演技構成点も全ての項目において10点満点を目指すというメドベデワ選手にしかありえない領域に入っていくのかなと思いますね。この演技内容と得点を持って、メドベデワ選手がどんなオリンピックシーズンを送るのか、今から楽しみでなりません。


 2位となったのは四大陸女王、日本の三原舞依選手です。

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 冒頭は得点源の3ルッツ+3トゥループ、いつもより詰まった着氷になりましたが乱れなく下りて加点を獲得。続く3フリップ、2アクセルはスムーズにクリーンに成功させます。レベル4のステップシークエンスとスピンを挟んで後半、最初の2アクセル+3トゥループをしっかり下りると、3ルッツからの3連続コンビネーションもきっちり着氷。終盤の3ループ、3サルコウも全く問題なく、最後まで衰え知らずの勢いに乗った滑りで「シンデレラ」を演じ切りました。得点は自己ベストを約7点更新する146.17点というハイスコアをマークしました。
 ネーベルホルン杯の優勝から始まったまさに“シンデレラ”のようなシーズンを最後まで笑顔で滑り切った三原選手。日本女子歴代最高となる146.17という得点は、日本開催の試合ということもありますし、元々国別対抗戦はシーズン最終戦とあって点が出やすい試合なので、そういったボーナス的な意味合いが強いのかなと思います。ですが、このスコアが公式のパーソナルベストであることは間違いないですし、今後はこの得点を目安に結果を求められていくことになるでしょうから、シニア2季目となる来季は今季以上に難しいシーズンになるかもしれません。その中でも今季と同じようにスケートができる喜びを大切にして、三原選手らしい演技でさらなる飛躍を目指してほしいですね。


 3位は同じく日本の樋口新葉選手です。

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 まずは得意の大技3ルッツ+3トゥループを危なげなくクリーンに着氷させて1.4点の高加点を獲得すると、続く3ループ、3サルコウも余裕を持った着氷で両方とも加点1.4点の高評価を得て最高の前半とします。後半はまず2アクセルを難なく着氷すると、2つ目の3ルッツ+3トゥループも完璧に成功。残りの3フリップ、2アクセル+2トゥループ+2ループも安定してこなし、フィニッシュした樋口選手はショートに続きガッツポーズで喜びを露わにしました。得点は自己ベストを何と15点以上更新する145.30点を叩き出し3位に入りました。
 全てのジャンプが背中に羽が生えているかのように軽やかで見ていて安心感のある演技でしたね。まだ130点も出したことのなかった樋口選手が一気に145点というのはさすがに驚きましたが、ジャンプに関してはジュニア時代からロシア女子を凌ぐくらいのポテンシャルの高さは示していた選手なので、シーズンの最後にしてようやく実を結んだのかなと思います。表現面に関しても、ジュニア時代に得意にしていたアップテンポなプログラムとはあえてイメージの異なるプログラムに挑んだことで産みの苦しみみたいなものもあったのかなと想像しますが、最後にはショートもフリーもしっかり自分のものにしましたね。シニア1季目に新たな挑戦をしたことで今後演技のバリエーションも増えるでしょうし、今季をオリンピック出場に向けて力を蓄えるシーズンと考えるならば、好いシーズンの送り方ができたんじゃないかなと思います。来季は今季よりも笑顔で終われる試合が一つでも増えることを願っています。


 4位は世界選手権2017の銅メダリスト、カナダのガブリエル・デールマン選手です。

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 冒頭の3トゥループ+3トゥループはショート同様2.1点の加点。続く3ルッツも驚異的な跳躍で1.3点の加点を得ますが、次の3フリップは踏み切りのエッジが不正確とされ加点はあまり伸びず。後半はまず3ルッツからの3連続ジャンプをきっちり成功させると、続く3ループは若干着氷が乱れたものの、その後のジャンプは全てクリーンに跳び切り、142.41点と自己ベストを約1点更新しました。
 世界選手権の疲れを感じさせない相変わらずのダイナミックなジャンプとエネルギッシュな演技でしたね。デールマン選手にとってはスケート人生の変わり目となったであろう今シーズン。ジャンプの安定感が増したのはもちろんですが、表現面でも力強さだけではない女性的なしなやかさや優雅さがプラスされて、そうしたプログラムとのハマり具合も演技構成点の評価の高まりに寄与したのかなと思いますね。今季のような好調さを来季も持続し、さらにプラスアルファの進化を見せられればオリンピックのメダルも夢ではないのではないでしょうか。


 5位はロシアのエレーナ・ラディオノワ選手です。

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 冒頭は大技3ルッツ+3トゥループ、これをしっかり回り切って下り1.4点の加点を獲得します。続く3フリップも踏み切りのエッジ、着氷ともにクリーンに成功。スピンやステップシークエンスを挟み、後半最初は3ルッツでしたが回転が足りず着氷でもよろめきます。しかし直後の3+1+3の難しい3連続ジャンプはパーフェクトに成功。続く2アクセルは再び回転不足で着氷でもバランスを崩します。残りの2つのジャンプは着氷でこらえながらも大きなミスなくこなし、演技後は少し疲れた表情を見せました。得点は自己ベストに約2点と迫る137.08点をマークしました。
 久しぶりの実戦だったためか演技後半は疲労が垣間見え、細かなジャンプミスが重なってしまいました。それでも情熱的な演技力はさすがで、18歳とは思えない重厚さや風格を感じましたね。今シーズンは思ったような成績が残せなかったラディオノワ選手ですが、メドベデワ選手を除けばロシア女子勢の実力は横一線で、誰が2番手、3番手と断言できないような状況なので、ラディオノワ選手もさらにジャンプを確実なものにできれば今季の苦境を跳ね返せるのではないかと思います。


 6位となったのはアメリカのアシュリー・ワグナー選手です。

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 まずは得意の2アクセルをさらりとこなして始まると、ショートでは回転不足となった3フリップ+3トゥループも回り切って着氷。続く2アクセル+2トゥループはセカンドジャンプでこらえつつも成功させます。後半は得点源となる3+1+3に挑みましたが、1つ目と3つ目がどちらもアンダーローテーション(軽度の回転不足)の判定。次の3フリップ、3ループは危なげなく着氷し1点前後の加点を得ますが、最後の3ルッツは踏み切りのエッジエラーを取られて減点となります。最後の2つのスピンはレベル4でまとめ、フィニッシュしたワグナー選手は納得したように笑顔で何度か頷きました。得点は133.26点でシーズンベストを更新しました。
 細かなジャンプミスはあり会心の演技とはなりませんでしたが、経験を積み重ねてきたからこその深みのある演技は若い選手たちには醸し出せない魅力に満ちていてひときわ印象に残りましたね。ワグナー選手にとって競技生活の集大成になるであろう来シーズン、もちろんオリンピックのメダルというのは目標としてあるかもしれませんが、どの国も10代の選手たちが若い勢いで躍進している時代だからこそ、ベテランのワグナー選手にしかできない円熟した表現で存在感を示してほしいなと思いますし、ジャンプ以外のフィギュアスケートの魅力というのをワグナー選手らしい演技で伝えるシーズンにしてほしいなと思いますね。


 ということで、女子フリーは以下の順位となっています。

《女子フリー》

1位:エフゲニア・メドベデワ(ロシア)、12ポイント
2位:三原舞依(日本)、11ポイント
3位;樋口新葉(日本)、10ポイント
4位:ガブリエル・デールマン(カナダ)、9ポイント
5位:エレーナ・ラディオノワ(ロシア)、8ポイント
6位:アシュリー・ワグナー(アメリカ)、7ポイント
7位:李子君(中国)、6ポイント
8位:李香擬(中国)5ポイント
9位:カレン・チェン(アメリカ)、4ポイント
10位:ロリーヌ・ルカヴェリエ(フランス)、3ポイント
11位:アレーヌ・シャルトラン(カナダ)、2ポイント
12位:マエ=ベレニス・メイテ(フランス)、1ポイント




 ここからはペアフリーです。
 ペアフリーでトップに立ったのはショートでも1位だったフランスのヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ組です。冒頭のツイスト、3トゥループ+2トゥループ+2トゥループのジャンプを高いクオリティーでまとめると、大技のスロー4サルコウは両足着氷になったものの回転は認定。その後も3サルコウやスロー3フリップを次々とクリーンに決め、リフトやスピンなども全てレベル4を揃え、146.87点とパーソナルベストを約1点更新しました。
 2位はGPファイナル王者かつ欧州王者、ロシアのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組。序盤の3サルコウが2回転になるミスはありましたが、そのほかのエレメンツはほぼレベル4に加えてほぼ1点以上の加点という質の高さを見せつけ、140点台に乗せました。
 3位は中国の彭程(ペン・チェン)&金楊(ジン・ヤン)組。冒頭の2アクセルで転倒する失敗から始まりましたが、その後は大きなミスなく手堅く演技をまとめ、自己ベストに約3点と迫るスコアをマークしました。
 4位はカナダのカーステン・ムーア=タワーズ&マイケル・マリナロ組。3ツイストがレベル2になる取りこぼしはありましたが、全体的には目立ったミスなく滑り切り、130.09点と自己ベストを更新しました。
 5位はアメリカのアシュリー・ケイン&ティモシー・ルデュク組。序盤から前半は細かなミスがありながらもまずまずのエレメンツをこなしていきましたが、中盤のつなぎの部分で氷にエッジが引っかかり女性がバランスを崩し、それにぶつかるような形で男性も倒れ、男女ともに激しく転倒してしまうというアクシデントが発生。しかしその後は気持ちを切り替えて丁寧に滑り切りました。ただ、複数のミスが響き得点を伸ばすことはできませんでした。
 6位は日本の須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組です。

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 冒頭の3ツイストは少しスムーズさを欠いてレベル2にとどまりGOEでもマイナスの評価。続く3サルコウは女性の須藤選手の回転が抜けて1サルコウとなります。直後のスロー3ループはクリーンに成功。波に乗りたいところでしたが、中盤のソロジャンプでも須藤選手にミスが出てしまいます。その後も細かく減点を取られるエレメンツがいくつかあり、97.57点と自己ベストから11点ほど低い得点にとどまりました。
 世界選手権では披露できなかったフリーを日本の観客の前でノーミスでという思いはあったと思いますが、ショートから須藤選手がジャンプに苦労していてなかなか噛み合わなかったのかなという印象ですね。須藤選手にとっては初めての国別対抗戦ということで調整の仕方も難しかったかもしれませんが、こうした試合ごとのバラつきが来季はさらに減っていくと演技構成点の得点アップも狙えるでしょうから期待したいですし、昨季と比べても二人のユニゾン、調和というのは間違いなく成長していると感じるので、来季をまた楽しみにしたいですね。


 ペアフリーの順位は以下のようになりました。

《ペアフリー》

1位:ヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ組(フランス)、12ポイント
2位:エフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組(ロシア)、11ポイント
3位:彭程&金楊組(中国)、10ポイント
4位:カーステン・ムーア=タワーズ&マイケル・マリナロ組(カナダ)、9ポイント
5位:アシュリー・ケイン&ティモシー・ルデュク組(アメリカ)、8ポイント
6位:須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組(日本)、7ポイント




 さて、これで全ての競技が終了しました。ということで、総合順位は以下の通りです。

《総合順位》

1位:日本、109ポイント
2位:ロシア、105ポイント
3位:アメリカ、97ポイント
4位:カナダ、87ポイント
5位:中国、80ポイント
6位:フランス、62ポイント




 2012年以来の優勝を果たしたのは日本チームです!

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 最後の実施となった女子フリーまでどう転ぶかわからない展開でしたが、見事に金メダルを勝ち取ってくれましたね。予想以上の活躍を見せてくれたのは初出場の女子二人で、三原、樋口の両選手ともにショート、フリー合わせてミスらしいミスが一つもなく、ベストの演技をしてくれたというのは来季に向けて明るい材料になったのではないでしょうか。日本女子は浅田真央さん、村上佳菜子さんという日本を引っ張ってきたベテラン選手が引退を表明しましたので、それと入れ替わるように勢いのある10代の選手が頭角を現してきたというのは嬉しい限りですね。
 一方で男子は羽生選手の思いがけないSPこそありましたが、フリーは実力どおりのワンツーフィニッシュ。羽生選手が普通にショートをやれていれば日本チームの優勝はもう少し余裕のあるものになっていたと思いますので、羽生選手の出遅れによって優勝争いが接戦となってより展開がおもしろくなったという意味では、今思うとそれはそれで良かったのかもしれません。


 銀メダルを獲得したのはロシアチームです。

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 日本とは4点差で惜しくも初優勝を逃したロシア。女子はメドベデワ選手は言わずもがな、ラディオノワ選手もまずまずベストに近い力を発揮したと思うのですが、男子はコリヤダ選手はショート、フリーともに上位に食い込んで健闘したものの、コフトゥン選手の方が本調子ではなく得点を稼げませんでしたね。ペア、アイスダンスも実力を考えればもう少し上の順位も狙えたかなという感じもするので、女子以外は全体的に本来取れるポイントを取りこぼしてしまったような印象を受けました。


 銅メダルはアメリカチーム。

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 アメリカは男子が二人とも安定していてチームのポイントリーダーになった感じですね。女子はワグナー選手はしっかりショートもフリーも上位をキープしましたが、全米女王として期待されたカレン・チェン選手は初出場というのも影響したのか中位から下位にとどまりました。ペアもアイスダンスもほぼ予想されたとおりの順位だったので、チェン選手の不振だけが残念だったかなと思います。



 ということで世界国別対抗戦の記事はこれで終了とします。
 女子を振り返ると、メドベデワ選手の世界新のみならず、三原選手、樋口選手とフリー世界歴代4位、5位という目を見張るようなハイスコア連発で、日本開催かつシーズン最終戦といえども、さすがにちょっと大盤振る舞いしすぎ感は否めませんでしたが、それはともかくとして、メドベデワ選手のフリーの演技構成点で初の10点満点が出されたのを見ると、この採点システムの限界が少し見えたというか、行き着くところまで行き着いたのかなという感じはしましたね。将来的な採点システムの根本的な変更も国際スケート連盟で検討され始めているようですし、男子も女子もペアもアイスダンスも年々得点がインフレしているのは間違いないので、何かをどこかの段階で大きく変えなければいけないというのは致し方ないのかなと感じますね。
 ペアはジェームズ&シプレ組がショート、フリーともに1位という完全制覇で、少し予想外ではありましたがこの結果によって来季のペアの勢力図がさらに掻き回されることになればおもしろいなと思いますね。
 選手の皆様には最後まで全力で演技する姿を見せていただいて本当に感謝ですね。来季は4年に1度のオリンピックシーズン。全ての選手にとって五輪シーズンが幸い多きものとなることを祈っています。では。


:メダリスト3チームの集合写真はスケート情報サイト「icenetwork」から、メドベデワ選手の写真、三原選手の写真、樋口選手の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、デールマン選手の写真、ワグナー選手の写真、須藤&ブードロー=オデ組の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、ラディオノワ選手の写真は、アイスダンス情報サイト「ice-dance.com」から、日本チームの写真は、ジャパンタイムズのニュースサイトが2017年4月22日に配信した記事「Japan completes wire-to-wire lead to capture second World Team Trophy title」から、ロシアチームの写真、アメリカチームの写真は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2017-04-29 01:32 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 前記事、前々記事に続き、世界国別対抗戦(ワールド・チーム・トロフィー)2017の内容、結果について書いていきます。今回は男子フリーとアイスダンスフリーダンスです。この大会のルールやシステムについてはこちらの記事をご覧ください。

ISU World Team Trophy 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 まずはさっそく男子から。
 男子フリーで1位となったのは日本の羽生結弦選手です。

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 まずはショートで失敗した4ループ、これを今度は完璧に決めます。続いて4サルコウはパンクして1回転に。続く3フリップは難なく下りてここから後半、鍵となる4サルコウ+3トゥループをクリーンに着氷させると、4トゥループ、3アクセル+3トゥループもきれいに成功。そして初の試みとなる5本目の4回転、4トゥループ+1ループ+3サルコウは最後のジャンプの着氷で若干乱れたものの4トゥループ自体は成功。最後に組み込んだ2本目の3アクセルは珍しく1回転となりますが、初めての構成に挑んだ羽生選手はフィニッシュすると穏やかな笑みを浮かべました。得点は200.49点で1位となり、ショートの7位から挽回しました。
 2月の四大陸選手権では演技途中にプランを変更しての4回転5本というのはありましたが、今回は演技前から5本跳ぶことを決めて臨んだ初めての挑戦。結果的には前半の4サルコウが1回転になったことによって自身初の4回転5本成功はなりませんでしたが、その一方で後半に4回転3本という世界でも史上初の快挙を達成させ、また新たなバリエーションを手にしました。ただ、羽生選手自身は現時点では来季は今季の構成を大きく変えるつもりはないとのことで、現在の4回転4本をベースに完成度を高めて、5本の4回転はあくまでオプションとして考える方向で行くようですね。また、フリー後にはエキシビションの練習で4ルッツを着氷する姿も見せていて新技にも期待がかかりますが、大事なオリンピックシーズンということを考えるとよっぽど自信がない限りプログラムに取り入れることはないのかなと思いますね。個人的には来季の羽生選手にはジャンプを全て完璧に下りるだけではなく、ステップや技と技のあいだのつなぎ、プログラム全体の緻密さや完成度も期待したいですし、そのためには今と同じ構成をさらに極めていくことで体になじんで余裕も生まれてくると思うので、ジャンプはもちろんのこと、それ以外の部分でももっと魅せる演技、プログラムを来季は楽しみにしたいですね。


 2位となったのはSP1位の宇野昌磨選手です。

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 自身初となる4フリップ2本の構成で挑んだ宇野選手。まずは今季後半から組み込んでいる4ループ、これをクリーンに下りて2.29点の加点を得ます。続く4フリップは回転は充分でしたが着氷が乱れ減点となります。直後の3ルッツは回転と着氷は問題なかったものの踏み切りのエッジエラーでこちらも減点。スピンとステップシークエンスを挟んで後半、最初の3アクセル+3トゥループは危なげなく成功で2.86点という極めて高い加点。続いて初挑戦の2本目の4フリップでしたが、ダウングレード(大幅な回転不足)で転倒となり予定していたコンビネーションにはできず。しかしその後は4トゥループ、3アクセル+1ループ+3フリップ、3サルコウと全てのジャンプをクリーンにこなし、しっかり立て直して演技を終えました。得点は198.49点で2位となりました。
 4フリップを2本跳ぶというチャレンジは残念ながら不首尾に終わりましたが、4フリップ自体はすっかり自分のものにしているジャンプなので、オフシーズンの練習次第でこの構成も思ったより早く安定するんじゃないかなという気がしますね。何といっても4フリップにしても4ループにしても武器になったのはこの1年のあいだのことですから、宇野選手の習得と上達の早さを考えると楽しみですね。また4ルッツや4サルコウといった新たな4回転も練習中で、現時点ではまだ確率は低いようですが、“攻める”を常にテーマに掲げている宇野選手なので、オリンピックシーズンといえども守りに入らず新しいことを試していく可能性もあるのかなと想像します。あとは攻めすぎて怪我しないかが心配ですが、そのあたりの冷静さは若いわりにしっかり持ち合わせている選手だと思いますし、今大会中のインタビューでは「世界選手権自体はあまり疲れなかった」とか「もうちょっと試合が多くてもいい」と語っているくらいフィジカル的にも強靭な選手なので、さっそくゴールデンウィークにはアイスショー出演が待ち受けているなどまだまだ過密日程が続きますが、練習と休息のバランスをうまく取って、来シーズンも宇野選手らしく攻め続けてほしいですね。


 3位に入ったのは元世界王者、カナダのパトリック・チャン選手です。

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 まずは得意の4トゥループ+3トゥループをきっちり決めて加点2.71点を獲得。さらに今季からの新技4サルコウもクリーンに着氷させます。続いて鬼門の3アクセルでしたがわずかな乱れにとどめます。そして後半はまず4トゥループ、これも着氷で若干の乱れ。直後の3アクセルからのコンビネーションは1アクセル+2トゥループに。しかしその後のジャンプは全て難なく下り、リズムを大きく崩すことなく演技をまとめ、190.74点をマークしました。
 今季から挑戦している4トゥループ2本、4サルコウ1本、3アクセル2本という構成ですが、シーズン最終戦にしてまとまった形が見えてきたのかなという感じですね。シーズン序盤はなかなか決まらなかった4サルコウも徐々に安定してきましたし、3アクセルも以前よりはミスが少なくなってきている印象があるので、重要な来季に向けてこの構成をベースにさらに完成度が高まっていくと、元々演技構成点はピカイチなので楽しみだなと思います。来シーズンはチャン選手にとってスケート人生の集大成になるでしょうから、演技もプログラムもチャン選手らしい、チャン選手にしかできないフィギュアスケートの魅力を詰め込んだ作品を期待したいですね。


 4位はアメリカの新星ネイサン・チェン選手です。

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 ショート同様に最高難度の4ルッツは回避し、冒頭は4フリップの連続ジャンプから幕を開け、セカンドジャンプは2回転となったものの確実に成功させます。続く2本目の4フリップは着氷で大きくバランスを崩します。さらに4サルコウは2回転にとミスが相次ぎますが、4トゥループからの3連続ジャンプはクリーンに着氷。後半は5本目の4回転となる4トゥループをまず成功させると、苦手の3アクセルもふんばって着氷。残りのジャンプは問題なく予定どおりに下り、最後まで若さ溢れるエネルギッシュな演技を披露しました。得点は185.24点で4位となりました。
 足首を負傷している中での試合となったチェン選手でしたが、そうした不具合をほとんど感じさせない力強いパフォーマンスでした。大きなミスとしては4サルコウのパンクくらいで、4本の4回転を着氷させる安定感はやはりさすがでしたね。不完全燃焼に終わった世界選手権からしっかり切り替えて集中し直せていて、ジュニアとは違うシニアならではの日程だったり、短期間でのメンタルコントロールの仕方だったり、五輪シーズンに向けて貴重な収穫が得られたのではないかと思います。来季チェン選手がどんなジャンプ構成で臨むのかはわかりませんが、何といってもまだまだ若いので攻めてほしいと思いますし、シニアデビューシーズンとなった今季の経緯を見ると昨シーズンの宇野選手の状況と似ているので、シニア2季目に大飛躍した宇野選手同様、今季得たものを来季にさらに昇華させられれば今季以上に強いチェン選手の姿が見られるのではないかという気もしますね。


 5位はロシアのエース、ミハイル・コリヤダ選手です。

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 冒頭は今季からチャレンジしている大技4ルッツ、回転は充分でしたが転倒し初成功はならず。しかし直後の4トゥループはクリーンに跳び切ってすぐに立て直します。さらに3アクセル+2トゥループ、3ルッツ+2トゥループと立て続けに成功させ、上々の前半とします。後半は最初の3アクセルを決めると、得点源となる3+3もクリーンに着氷。その後のジャンプもさらりとこなし、スピン、ステップシークエンスも全てレベル4でまとめ、フィニッシュしたコリヤダ選手は満面に笑みを浮かべました。得点は184.04点で自己ベストを更新し、有終の美でシーズンを締めくくりました。
 ショート、フリーともに自己ベストを更新し、今回出場した男子選手の中でもひときわ輝きを放ったコリヤダ選手。4ルッツの失敗こそありましたが、その後の切り替えは見事で、心身ともに充実していることをうかがわせるパフォーマンスでしたね。現時点で完全に自分のものにしている4回転は4トゥループだけで、羽生選手や宇野選手らトップグループとはまだ基礎点での差がありますが、4ルッツが確実に計算できる武器となれば一気に躍進して台風の目的な存在となる可能性も秘めていると思いますし、スピンやステップもしっかりレベルが取れてしかも加点も稼げるので、今以上に取りこぼしの少ない選手となればおもしろいなと感じますね。ロシアのエースとしてコリヤダ選手が来季どんな活躍を見せるのか、楽しみにしたいですね。


 6位となったのはアメリカの実力者ジェイソン・ブラウン選手です。

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 4回転は外し確実な構成で臨んだブラウン選手。まずは得点源の3アクセル+3トゥループをパーフェクトに決めて2点の加点。続いて2アクセルをこなし、前半のジャンプをきっちりまとめます。後半に6つのジャンプ要素を固め、まずは単独の3アクセルをクリーンに成功。3ルッツ、3+2、2アクセルと危なげなくクリアし、3ループはタイミングが合わなかったのかパンクし1ループになりましたが、最後の3+1+3はスムーズな流れできれいに成功。終始丁寧かつ繊細に演じ切り、自己ベストに迫る179.35点で6位に入りました。
 世界選手権に引き続き、4回転はほぼなしという構成ながらも唯一無二の表現力で観客を引き込んだブラウン選手。今大会あえて4回転に挑まなかったのは、シーズン最終戦だからこそ挑戦してミスを含んだ演技にするよりも自分らしい演技で締めくくりたいと思ったのかもしれませんね。来シーズンのブラウン選手がどこまで上位に食い込んでいくのか、それは4回転次第になりそうですが、4回転があってもなくてもブラウン選手らしい演技で観客を楽しませてほしいなと思います。


 男子フリーは以下のような順位と獲得ポイントになりました。

《男子フリー》

1位:羽生結弦(日本)、12ポイント
2位:宇野昌磨(日本)、11ポイント
3位:パトリック・チャン(カナダ)、10ポイント
4位:ネイサン・チェン(アメリカ)、9ポイント
5位:ミハイル・コリヤダ(ロシア)、8ポイント
6位:ジェイソン・ブラウン(アメリカ)、7ポイント
7位:金博洋(中国)、6ポイント
8位:シャフィク・ベセギエ(フランス)、5ポイント
9位:ケヴィン・レイノルズ(カナダ)、4ポイント
10位:マキシム・コフトゥン(ロシア)、3ポイント
11位:ケヴィン・エイモズ(フランス)、2ポイント
12位:李唐続(中国)、1ポイント




 さて、ここからはアイスダンスのフリーダンスです。
 FDで1位となったのはカナダのケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組です。前半のサーキュラーステップがレベル3となった以外は全てレベル4という極めて質の高いエレメンツを揃えた演技で自己ベストを一気に3点以上更新しました。
 2位はショートで1位だったアメリカのマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組。前半のサーペンタインステップで男性のベイツ選手がバランスを崩す場面があり加点が稼げなかったものの、それ以外のエレメンツはしっかりレベル4でまとめ上げ、2位に食い込みました。
 3位はロシアのエカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組。スピンやステップでのレベルの取りこぼしや思ったほど加点を稼げないエレメンツもいくつかあり100%の演技とはならず3位にとどまりました。
 4位は中国の王詩玥(ワン・シーユエ)&柳鑫宇(リュー・シンユー)組。ステップ以外の要素は全てレベル4というそつのない演技を見せ、パーソナルベストを約1点更新しました。
 5位はフランスのマリー=ジャド・ローリオ&ロマン・ルギャック組。こちらもミスらしいミスなく演技をまとめて自己ベストを更新しました。
 そして6位は日本の村元哉中&クリス・リード組です。

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 序盤のツイズルで若干回転がずれる場面があり、レベルこそ4だったもののGOEではわずかに減点。しかしその後はステップ以外のエレメンツを全てレベル4と目立ったミスなくこなし、自己ベストを約1点上回る92.68点をマークしました。
 ショートではリード選手がガッツポーズを見せるなど達成感と満足感に満ち溢れていた二人。FDはそこまで大きなミスはなかったものの心から満足という表情ではなく、まだまだできる、もっと出せるという感情が滲み出ているように感じました。世界選手権も今大会もツイズルで細かなミスがありもったいないところでしたが、カップルとしての経験を積み重ねるにつれ演技中でもお互いにカバーできる部分も増えてくるでしょうから、結成3季目となる来シーズンは今季得た二人の技術やユニゾンをさらに進化させて、ぜひオリンピックの切符をつかんでほしいと思います。


 ということで、アイスダンスFDは以下のとおりの順位です。

《アイスダンスFD》

1位:ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組(カナダ)、12ポイント
2位:マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組(アメリカ)、11ポイント
3位:エカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組(ロシア)、10ポイント
4位:王詩玥&柳鑫宇組(中国)、9ポイント
5位:マリー=ジャド・ローリオ&ロマン・ルギャック組(フランス)、8ポイント
6位:村元哉中&クリス・リード組(日本)、7ポイント




 男子フリー、アイスダンスフリーの記事は以上です。ショートも含めて振り返ってみると、男子はやはり日本の二人が圧倒的な強さを示しましたね。カナダやロシアが一人は上位に食い込んだけれどももう一人は下位に沈んでしまったという順位のバラつきがあったのと比べると、羽生選手のSP以外は日本は予想どおりの力を発揮できたのかなと思います。一方でアメリカもショート、フリーともに二人ともしっかり上位をキープしていて、オリンピックの団体戦を占う意味でもこの層の厚さは頼もしいなと感じました。
 アイスダンスはアメリカ、カナダ、ロシアのアイスダンス3国が下馬評どおりにトップスリーを独占。ですが、その中でもショートではアメリカのチョック&ベイツ組が1位、フリーではカナダのウィーバー&ポジェ組が1位という結果で、現時点ではアイスダンス界においては北米勢がロシアの先を行っているのかなという印象を受けましたね。
 さて、次の女子フリー&ペアフリーの記事がいよいよ16/17シーズンの最後のフィギュア大会関連記事となります。では。


:メダリスト3チームの集合写真はスケート情報サイト「icenetwork」から、羽生選手の写真、宇野選手の写真、チャン選手の写真、ブラウン選手の写真、村元&リード組の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、チェン選手の写真、コリヤダ選手の写真は、アイスダンス情報サイト「ice-dance.com」から引用させていただきました。

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世界国別対抗戦2017―日本、3大会ぶり2度目の優勝(女子SP&アイスダンスSD) 2017年4月24日
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by hitsujigusa | 2017-04-27 23:53 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 前記事に引き続き世界国別対抗戦(ワールド・チーム・トロフィー)2017の内容と感想をとりとめもなく綴っていきます。この記事では男子のショートプログラムとペアのショートプログラムについて書いていきます。なお、この大会のルールやシステムについては、こちらの記事をご参考下さい。

ISU World Team Trophy 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 まずは男子SPから。
 男子SPを制して1位となったのは日本の宇野昌磨選手です。

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 まずは新たな代名詞となった4フリップ、これを着氷でこらえながらも最小限のミスに抑えます。続く4トゥループ+3トゥループは、ファーストジャンプの着氷で若干詰まったためセカンドジャンプを2回転に。後半の3アクセルはパーフェクトな流れと着氷で満点となる加点3の高評価を獲得。スピン、ステップシークエンスはいつもどおりのレベル4に加え、加点も全て1点以上という安定ぶりを発揮。国際スケート連盟の公式記録では自身3度目の100点超えとなる103.53点でトップに立ちました。
 冒頭の4フリップこそ完全にきれいな着氷とはなりませんでしたが、それも含めていつもどおりの冷静で落ち着いた演技という印象でしたね。演技後は4+3を4+2にしたことについて、「逃げてしまった」と後悔と反省の言葉を口にしましたが、チーム戦ということを考えれば妥当な判断だったんじゃないかなと個人的には思います。ただ、宇野選手の常に攻める姿勢からすると本人にとっては許せないことなのでしょうし、世界選手権の銀メダリストとなっても以前と何ら変わらず、自分のスタンスを保っている姿には安心感というか頼もしさを覚えますね。


 2位に入ったのはアメリカチャンピオンのネイサン・チェン選手です。

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 足首を痛めている影響で最高難度の4ルッツは外した構成で臨み、まずは4フリップ+3トゥループ、これを完璧に決めて加点2を獲得。続く4トゥループは若干こらえ気味でしたが乱れなく成功。後半に組み込んだ苦手の3アクセルもクリーンに下り、スピン、ステップシークエンスも全てレベル4と、手堅く演技をまとめました。得点は99.28点で2位と好発進しました。
 とても足首を痛めているとは思えない猛烈なジャンプ構成でしたね。4ルッツを回避しているとはいえ相当に難度の高いプログラムであることは変わりませんし、持っている4回転の種類が多い分、いろんなバリエーションで戦えるのがチェン選手の強みだなと改めて感じさせられましたね。シニア1季目ということで世界選手権ではスケート靴の問題も含め、長いシーズンを送ってきたことによる難しさが表れてしまったという感じでしたが、このSPは本来のチェン選手らしい演技だったように思います。


 3位は世界選手権2017の銅メダリスト、中国の金博洋(ジン・ボーヤン)選手です。

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 冒頭は代名詞の大技4ルッツ+3トゥループから、少しフェンスに近づきすぎる着氷とはなりましたが乱れなくしっかり成功させます。中盤の3アクセルは珍しく着氷で若干バランスを崩しましたが、直後の4トゥループは問題なく決め、スピン、ステップシークエンスも全部レベル4と取りこぼしなし。得点は97.98点で3位につけました。
 シーズン序盤から終盤にかけて徐々に調子を上げ、確実に世界選手権にピークを合わせた金選手。今年の世界選手権は優勝候補だったハビエル・フェルナンデス選手のミス連発による棚からぼた餅的なところはありましたが、そうした運の良さも含め、2年連続で世界の表彰台に立つ実力は伊達じゃありません。このSPも変わらぬ安定感で、1つ1つのジャンプの綺麗さという点では宇野選手やチェン選手に劣る部分もあるのですが、大崩れしない安定感というのはシニア2季目を経験してさらに増したように思いますね。


 4位となったのはロシアチャンピオンのミハイル・コリヤダ選手です。

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 冒頭は得点源の4トゥループ+3トゥループ、これをきっちりと成功させて好調な滑り出しを見せます。続く得意の3アクセルは加点2の高評価。後半の3ルッツも危なげのない成功で、さらにステップシークエンス、スピンもレベル4を揃え、自己ベストとなる95.37点をマークしました。
 世界選手権に続き90点台をマークしたコリヤダ選手。まだトップ選手としての経験が浅いためか波がある部分もありますが、2大会連続で90点台というのを見ても、規模の大きな国際試合の場数を踏むことで確実に安定感が備わってきているなと感じます。ジャンプだけではなくスピン、ステップでもしっかりレベルを取って加点を稼げる総合力の高い選手なので、毎試合90点台を出せる実力者だと思いますし、来季は層の厚いロシアのエースとしてそれくらいの安定と活躍を期待したいですね。


 5位にはアメリカのジェイソン・ブラウン選手が入りました。

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 まずは得点源の3アクセルを確実に決めて1.86点の加点を得ます。続く3+3も微塵の乱れもなく成功。後半の3ルッツもクリーンに着氷させます。得意のスピン、ステップシークエンスも全てレベル4に加え、柔軟性を活かした個性的なポジションやどこを切り取っても美しい身のこなしでしっとりとしたプログラムの世界観を存分に表現し、笑顔でフィニッシュしました。得点は94.32点と先日の世界選手権でマークした自己ベストを約1点更新しました。
 全てのエレメンツで1点以上の加点という極めて完成度の高い演技を披露したブラウン選手。4回転を数種類組み込んでいる選手はどうしてもジャンプに集中しなければならない部分がありますが、ブラウン選手は確実に跳べるジャンプのみでプログラムを構成している分、ジャンプとジャンプ以外のエレメンツに対して同じだけの熱量を注ぎ込んでいる印象があり、あれだけの美しさに繋がっているのだろうと思います。


 6位はカナダのベテラン、パトリック・チャン選手です。

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 SPでは初めてとなる2種類の4回転という構成で挑んだチャン選手。まずは得意の4トゥループ+3トゥループを完璧に成功させて好スタート。続いてショートでは初チャレンジの4サルコウでしたが、パンクして3回転となります。さらに後半の3アクセルでは回転不足で転倒となり、得点は85.73点で6位にとどまりました。
 今季からフリーでの4回転2種類に挑戦し始めたチャン選手。その新技である4サルコウも徐々に安定してきたということで、今大会はショートでも4サルコウに挑んできましたが成功とはなりませんでした。ただ、今大会はチーム戦とはいえ失うものが何もない大会ですし、来季を見据える上で良いチャレンジだったのではないかと思います。4サルコウをいかに自分のものにするかは、オフシーズンでの強化にもかかってくるでしょうから、チャン選手がオリンピックで優勝争いをするためにはこの4サルコウと鬼門となっている3アクセルが鍵になってきそうですね。


 世界選手権2017金メダリスト、日本の羽生結弦選手は7位となりました。

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 冒頭は代名詞の4ループでしたが、回転がすっぽ抜けて1回転となったため規定違反により0点となります。続く4サルコウ+3トゥループはファーストジャンプの着氷で乱れコンビネーションにならず。後半の3アクセルは危なげなく決めましたが、序盤のジャンプミスによって83.51点と得点は伸びず、まさかの7位に沈みました。
 今シーズンの中でもワーストと言ってもいい演技となってしまいましたね。公式練習では絶好調そのものでパーソナルベスト更新に期待がかかる中での演技でしたが、責任感の強い羽生選手だからこそチーム戦ということで気合いが入りすぎてしまったのかもしれませんし、今季苦戦を強いられていたショートを最後こそは完璧に決めたいという強い意志が逆に空回りしてしまったような印象を受けました。これでショートは今季1度もノーミスがないという結果になり来季に向けて課題と不安を残しましたが、元々ショートが苦手ということはないので、今までもいろんな壁を乗り越えてきた羽生選手ですから、しっかり自分自身を分析してオフシーズンに課題をクリアするのではないかと思いますね。


 ということで、男子SPの順位は以下のようになりました。

《男子SP》

1位:宇野昌磨(日本)、12ポイント
2位:ネイサン・チェン(アメリカ)、11ポイント
3位:金博洋(中国)、10ポイント
4位:ミハイル・コリヤダ(ロシア)、9ポイント
5位:ジェイソン・ブラウン(アメリカ)、8ポイント
6位:パトリック・チャン(カナダ)、7ポイント
7位:羽生結弦(日本)、6ポイント
8位:シャフィク・ベセギエ(フランス)、5ポイント
9位:ケヴィン・エイモズ(フランス)、4ポイント
10位:李唐続(中国)、3ポイント
11位:マキシム・コフトゥン(ロシア)、2ポイント
12位:ケヴィン・レイノルズ(カナダ)、1ポイント




 ここからはペアのショートプログラムです。
 SP首位となったのはフランスのヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ組。冒頭のツイストリフトは男性が女性をキャッチするところでわずかにミスがありレベル1にとどまりましたが、そのほかはレベル3、4を揃え、さらに多くのエレメンツで加点1以上を積み重ね、自己ベストとなる75.72点をマークしました。
 2位は中国の彭程(ペン・チェン)&金楊(ジン・ヤン)組。目立ったミス、取りこぼしなく、ほとんどのエレメンツで加点1以上という完成度の高い演技を披露し、自己ベストに近いスコアで2位につけました。
 3位はカナダのカーステン・ムーア=タワーズ&マイケル・マリナロ組。冒頭のツイストはレベル2となりましたが、その後のエレメンツは大きな乱れなく堅実にこなし、パーソナルベストに約1点と迫る得点をマークしました。
 4位に入ったのは世界選手権2017の銅メダリスト、ロシアのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組。冒頭の3ツイストはレベル4に加え加点2.1点という極めて高い評価を得て好スタートを切りましたが、続く3トゥループは回転不足で転倒。続くスロー3ループでも乱れがあり、自己ベストから10点以上低い得点で4位にとどまりました。
 5位はアメリカのアシュリー・ケイン&ティモシー・ルデュク組。ツイストリフトではレベル1になった上にGOEでも大幅な減点となりましたが、その後のソロジャンプやスロージャンプでは最小限のミスにとどめて自己ベストに近い得点をマークしました。
 6位となったのは日本の須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組です。

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 冒頭の3ツイストは大きな乱れはなかったもののキャッチの場面で若干流れが滞ったためレベル2になりGOEでも減点対象に。続く3サルコウは須藤選手がダウングレード(大幅な回転不足)で転倒してしまいます。次のスロー3サルコウは着氷でこらえ、その後はクリーンにエレメンツをまとめましたが、54.84点とスコアを伸ばせませんでした。
 世界選手権ではパーソナルベストを更新したものの、SP17位でフリー進出にあと一歩届かなかった須藤&ブードロー=オデ組。そのリベンジとして期待された今回の演技でしたが、ミスが重なり本領発揮とはなりませんでした。今季から取り入れている3ツイストは徐々に安定感を増してきていてちょっとしたミスだったと思うのですが、ソロジャンプが大幅な回転不足で転倒となったのは痛かったですね。


 ペアSPの順位は以下の通りです。

《ペアSP》

1位:ヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ組(フランス)、12ポイント
2位:彭程&金楊組(中国)、11ポイント
3位:カーステン・ムーア=タワーズ&マイケル・マリナロ組(カナダ)、10ポイント
4位:エフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組(ロシア)、9ポイント
5位:アシュリー・ケイン&ティモシー・ルデュク組(アメリカ)、8ポイント
6位:須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組(日本)、7ポイント




 さて、これで男子、女子、ペア、アイスダンス、全てのショートが終了しました。次の記事では男子フリーとアイスダンスフリーについて書いていきます。では。


:メダリスト3チームの集合写真はスケート情報サイト「icenetwork」から、宇野選手の写真、金選手の写真、羽生選手の写真、須藤&ブードロー=オデ組の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、チェン選手の写真、コリヤダ選手の写真、ブラウン選手の写真、チャン選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2017-04-26 17:36 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 シーズンの最後を締めくくる世界国別対抗戦(ワールド・チーム・トロフィー)2017が東京にて4月20日から23日にかけて行われました。世界国別対抗戦は国別のポイントランキングの上位6か国が出場し、男女シングル2名ずつ、ペア、アイスダンス1組ずつで構成された6チームが競う団体戦です。試合の内容を書く前に、この大会のシステムをおさらいしたいと思います。


◆出場国

カナダ(8437ポイント)、ロシア(7972ポイント)、アメリカ(7257ポイント)、日本(7068ポイント)、中国(5065ポイント)、フランス(4307ポイント)


◆順位の決定方法

 各種目のショートプログラム(ショートダンス)、フリーそれぞれの順位ごとにポイントが付与されます。1位の選手(組)には12ポイント、2位ならば11ポイントというふうに1ポイントずつ下がっていきます。そのポイントの最終的な合計によって順位を決定します。



 ということで、先に結果を言ってしまいますと(というか記事タイトルに書いていますが)、日本が2012年以来となる3大会ぶり2度目の優勝を果たしました。そして、僅差で2位はロシア、3位がアメリカ、4位がカナダ、5位が中国、6位がフランスとなっています。
 この記事ではまず女子のショートプログラムとアイスダンスのショートダンスの模様をお伝えしますが、このあとも各種目のショートからフリーへと順々に記事にしていきたいと思います。


ISU World Team Trophy 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 まずは女子のショートプログラムから。
 女子ショートで1位に立ったのは世界女王、ロシアのエフゲニア・メドベデワ選手です。

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 まずはスピンとステップシークエンスでしっかりレベル4&加点を取って好スタートを切ると、後半最初の3フリップ+3トゥループはファーストジャンプで片手、セカンドジャンプで両手を上げて完璧に着氷。続く3ループも問題なく下り、最後の2アクセルは珍しく少し軸が外れて着氷が詰まり気味になりましたが問題なく加点を稼ぎ、最後のスピン2つもレベル4といつもどおりそつのない演技を見せました。得点は自己ベストかつ世界歴代最高得点となる80.85点を叩き出し、キス&クライではチームの仲間とともに喜びを爆発させました。
 シーズン最後の疲労など全く感じさせないいつもどおりのパーフェクトな演技でしたね。80点を突破するのは時間の問題だったので、実際に80.85点という得点が出ても驚きはしませんでしたが、男子でも高得点と言われる80点台にとうとう到達したというのを目にすると、やはりここまで来たかと感慨を覚えました。それでも今回のショートは2アクセルでちょっとしたミスがあったので、まだ得点を伸ばせる余地があるという点では80点というのは全くゴールではなく、まだ通過点という感じですね。


 2位となったのは同じくロシアのエレーナ・ラディオノワ選手。

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 冒頭は得点源となる3ルッツからの2連続3回転でしたが、3ルッツの着氷で若干こらえ気味になったため単独にします。しかし後半の3ループに3トゥループを付けてしっかりリカバリー。最後の2アクセルもクリーンに跳び切り、軽快でコケティッシュなプログラムを演じ切りました。得点は自己ベストとなる72.21点で2位と好位置につけました。
 実戦は2月のユニバーシアード以来だったラディオノワ選手。試合間隔があいたことによる調整の難しさもあったでしょうが、ラディオノワ選手らしい躍動感と明るさ溢れる演技だったと思います。一方で、これだけレベルの高い選手が国内では破れて欧州選手権にも世界選手権にも出場できなかったということを思うと、改めてロシア女子の層の厚さを感じましたね。


 3位に入ったのは日本の三原舞依選手です。

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 冒頭は得意の3ルッツ+3トゥループ、これをクリーンに決めて1.1点の高い加点を獲得。続く2つのスピンをレベル4で揃えると、中盤の2アクセルは問題なく成功。終盤のスピンとステップシークエンスもきっちりレベル4でまとめ、そして最後は世界選手権でまさかのパンク&転倒となった3フリップでしたが、今度は完璧に跳び切り、笑顔のフィニッシュとなりました。得点は自己ベストを3点以上更新する72.10点で、世界選手権の悔しさを晴らしました。
 最後の3フリップは世界選手権での失敗があってさすがに嫌な記憶がよぎったと思うのですが、元々得意なジャンプでああいう形での失敗自体が珍しいことなので、今回の演技こそが本来の三原選手の姿で、練習どおりのジャンプが跳べたのではないかと思います。


 4位は世界選手権2017の銅メダリスト、カナダのガブリエル・デールマン選手。

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 まずは代名詞ともなっている3トゥループ+3トゥループ、これを驚異的なスピードと飛距離で成功させ、2.1点の極めて高い加点を獲得します。中盤の3ルッツは着氷でわずかにバランスを崩し減点。ですが、直後の2アクセルは危なげなく下り、スピン、ステップシークエンスも全てレベル4と、世界選手権メダリストの意地を見せつけました。得点は自己ベストに迫る71.74点で4位と好発進しました。
 3ルッツでは細かなミスがありましたが、今季のデールマン選手を象徴するような安定感のある演技でしたね。数週間前の世界選手権でメダルを取ったばかりだからこそ、今大会はカナダチームをリードする存在として期待される立場で変な失敗はできないというプレッシャーもあったと思うのですが、その期待をしっかりと自分のパワーに変えた素晴らしい内容だったと思います。


 5位は日本の樋口新葉選手です。

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 まずは得意の2アクセルを余裕たっぷりに成功させると、後半に組み込んだ大技3ルッツ+3トゥループもクリーンに着氷して加点1。次の3フリップは踏み切りのエッジが不正確と判定されたものの最終的には加点も得て、フィニッシュした樋口選手はガッツポーズで喜びを露わに。得点は71.41点とパーソナルベストを4点以上上回りました。
 今大会は公式練習で3アクセルの練習をしクリーンに着氷する姿も幾度か見せていて、好調さをうかがわせていた樋口選手。その練習のままの演技内容となりましたね。特に冒頭の2アクセルは3アクセルを練習しているだけあってほかの選手の2アクセルと比べても高さや幅、滞空時間など余裕を感じさせて、3アクセルへの期待も抱かせる迫力のある2アクセルでしたね。3+3はファーストジャンプで若干勢いが止まりかけ、3トゥループを付けるのをためらったとのことですが、諦めずに跳び切ったことが自己ベストに繋がったわけなので、こういった部分もシニアで戦ってきたことによる成長なのかなと思います。

 6位はアメリカのベテラン、アシュリー・ワグナー選手です。

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 まずは得点源となる3フリップ+3トゥループ、クリーンに着氷したかに見えましたが、セカンドジャンプがアンダーローテーション(軽度の回転不足)と判定されて細かな減点を受けます。しかしその後の3ループ、2アクセルはパーフェクトに下りて、ダンサブルなプログラムを最後までノリノリで滑り切りました。得点はシーズンベストの70.75点でしっかりと70点台に乗せました。
 今季はショートでなかなか70点台に乗せることができず、フラストレーションが溜まる試合が多かったのかなと思うのですが、プログラム自体はワグナー選手のリズム感の良さを活かしていてシーズン序盤から体に馴染んでいて、シーズン最後の今大会でもらしさを充分に発揮しましたね。技術面では3+3はワグナー選手本来の高さに欠けた印象で回転不足となりましたが、そのほかの安定感はさすがなので、若い10代の選手たちと同等に張り合うためにはやはり来季も3+3をいかに確実に跳ぶかが鍵になってきそうです。


 1位から6位は以上です。7位以下の選手も含めて、このような順位、獲得ポイントとなりました。


《女子SP》

1位:エフゲニア・メドベデワ(ロシア)、12ポイント
2位:エレーナ・ラディオノワ(ロシア)、11ポイント
3位:三原舞依(日本)、10ポイント
4位:ガブリエル・デールマン(カナダ)、9ポイント
5位:樋口新葉(日本)、8ポイント
6位:アシュリー・ワグナー(アメリカ)、7ポイント
7位:李香擬(中国)、6ポイント
8位:カレン・チェン(アメリカ)、5ポイント
9位:李子君(中国)、4ポイント
10位:アレーヌ・シャルトラン(カナダ)、3ポイント
11位:ロリーヌ・ルカヴェリエ(フランス):2ポイント
12位:マエ=ベレニス・メイテ(フランス):1ポイント




 続いてアイスダンスのショートダンスについてお伝えします。
 ショートダンスで1位となったのはアメリカのマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組。5つのエレメンツのうち4つでレベル4を獲得する会心の演技を披露し、79.05点と自己ベストを2点以上更新しました。
 2位はカナダのケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組。5つのエレメンツのうち3つでレベル4と隙の無い演技で、こちらも自己ベストを2点以上上回りました。
 3位はロシアのエカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組。冒頭のツイズルでミスがありレベルが1になった上、GOEも減点となるなど取りこぼしが目立ち、自己ベストより7点以上低いスコアで3位にとどまりました。
 4位は中国の王詩玥(ワン・シーユエ)&柳鑫宇(リュー・シンユー)組。ツイズルやリフトでレベル4を獲得するミスらしいミスのない演技で自己ベストを2点以上更新しました。
 そして5位は日本の村元哉中&クリス・リード組です。

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 5つのエレメンツのうち3つをレベル4でまとめ、世界選手権でミスがあった課題のツイズルもクリーンに成功させる会心の出来で、フィニッシュではリード選手が力強いガッツポーズで手応えを示しました。得点はこちらも自己ベストを2点以上上回る63.77点をマークしました。
 世界選手権ではミスもあり予想以上に低い得点で悔しさを味わった村元&リード組。今回のSDはそのリベンジとして今のベストを出し切ったのではないかと思います。表現面でもカップル結成2季目の集大成として、軽快なプログラムをこの二人にしか出せない雰囲気、空気感で表現し切ってくれましたね。
 6位はフランスのマリー=ジャド・ローリオ&ロマン・ルギャック組。全体的にはそつなくエレメンツをこなしたものの、そこまで大きく加点を伸ばすことはできず、自己ベストにはわずかに及ばず6位にとどまりました。


 ということで、アイスダンスSDの順位は以下のようになりました。

《アイスダンスSD》

1位:マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組(アメリカ)、12ポイント
2位:ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組(カナダ)、11ポイント
3位:エカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組(ロシア):10ポイント
4位:王詩玥&柳鑫宇組(中国)、9ポイント
5位:村元哉中&クリス・リード組(日本)、8ポイント
6位:マリー=ジャド・ローリオ&ロマン・ルギャック組(フランス)、7ポイント




 さて、次の記事では男子SPとペアSPについて書きますので、しばしお待ちください。


:メダリスト3チームの集合写真はスケート情報サイト「icenetwork」から、メドベデワ選手の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、ラディオノワ選手の写真、三原選手の写真、デールマン選手の写真、樋口選手の写真、ワグナー選手の写真、村元&リード組の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
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by hitsujigusa | 2017-04-24 20:49 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 2017年4月10日、浅田真央選手が自身のブログで現役引退を発表し、12日には記者会見を開き引退についての思いを語りました。

◆◆◆◆◆

浅田真央、尊敬を集めた演技と人間性 引退後も語り継がれる希代のスケーター

 浅田真央(中京大)が10日、自身のブログで引退を表明した。現在26歳、言わずと知れた日本フィギュアスケート界の中心的な存在だ。多くの尊敬と注目を集め、人々を魅了し続けたアスリート。そんな彼女との別れは突然やってきた。

 信じ難い気持ちだった。12位と自己最低の結果に終わった昨年末の全日本選手権では、現役続行か否かを問われ、前向きな姿勢を見せていたからだ。ましてや来年には、自身の最終目標としていた平昌五輪が行われる。少なくとも来季までは競技を続けると思われていた。だからこそ突然の幕引きに驚きを禁じえなかった。

 「ソチ五輪シーズンの世界選手権は最高の演技と結果で終えることができました。その時に選手生活を終えていたら、今も選手として復帰することを望んでいたかもしれません。実際に選手としてやってみなければ分からないこともたくさんありました」

 2014年3月の世界選手権は、ショートプログラム(SP)で当時の世界歴代最高得点(78.66点)を更新するなど圧巻の演技で優勝。しかし、1年間の休養から復帰した15−16シーズン以降、彼女は満足いく内容・結果を得られず苦しんでいた。ブログでつづっているように、実際に再び競技生活を歩んだからこそ、未練なく今回の決断に至ることができたのだろう。


スポーツナビ 2017年4月11日 10:35 一部抜粋

◆◆◆◆◆

◇◇◇◇◇

真央、会見の最後に涙 引退決意は2月「フィギュアスケートに恩返しできる活動を」

 10日に自身のブログでの突然の引退発表となったが、自己ワーストの12位に終わった昨年末の全日本選手権後には引退を考え始めていたという。それでも「自分が復帰してからずっと掲げてきた平昌オリンピックに出るという目標があったので、やり遂げないといけないと思っていた。言ってしまったことへの葛藤はすごいありました」。ただ、6位だった14年のソチ五輪後、1年間ほど休養し、現役復帰した決断については「気持ちも体も自分の気力も全部出し切ったので、今は挑戦して何も悔いはないです」とすっきりした表情で語った。

 また、3月の世界選手権で日本が五輪出場権を3枠獲得できず、2枠となったことで代表争いが厳しさを増したが「目標をやめてしまう自分が許せるのかな? 許せないのかな? と思いながら過ごしてきて、最終的に話し合いをして決めたのが2月だったので、世界選手権が影響したというわけではなく、自分自身が最後決めること」と判断には影響しなかったという。

 引退後の初滑りは7月のアイスショーとなることも明言。今後については「どんな形でもフィギュアスケートに恩返しできる活動をしていきたい」と語った。

 質問を受けている間はずっと笑顔の浅田だったが、会見の最後の挨拶でこらえきれずに涙。カメラに背を向け、涙をぬぐいながら笑顔を見せていた。


スポーツ報知 2017年4月12日 12:25 一部抜粋

◇◇◇◇◇

 4月10日の23時前、テレビのニュース速報でこの一報を知り、すぐに浅田選手引退についての記事を書こうかと思い、実際に書き始めましたが、いざとなると何をどう書いていいのかわからず、また、12日に記者会見を行うということで、その会見を見て浅田選手の生の声を聞いて、自分の考えをまとめてから記事にしようと思い直し、引退発表から5日も経ってからの記事アップになりました。

 ここからは私の個人的な話になりますが、私が浅田選手を初めて知ったのはシニアデビューシーズンのグランプリシリーズ。それまでも小学6年生でのトリプルアクセルの成功やシニアの全日本選手権での活躍、世界ジュニア選手権優勝などすでにフィギュアスケート界では知る人のいない有名人になっていたと思いますが、そもそもフィギュアスケートという競技自体知らなかった私は浅田選手のことも知らず。しかしシニアデビューのGP中国大会でいきなり2位に入ると、2戦目のフランス大会では優勝、そして世界の猛者が集うGPファイナルでは当時の世界女王イリーナ・スルツカヤさんを破っての優勝という快挙を成し遂げ、一気に報道は過熱、テレビを始めとしたメディアでの露出も増えていきました。そうした中で私も“浅田真央”という存在を知り、同学年の少女が一躍スターに上り詰めていくさまを、ただただ驚き、感動し、単純に凄いという気持ちでテレビの前で見ていました。そして、“浅田真央”との出会いが、“フィギュアスケート”との出会いでもありました。

 今までこのブログでも幾度となく浅田選手に関する文章を書いてきて、できるだけほかの選手と温度差が出ないようにと気をつけて書いてきたつもりですが、やはり浅田選手に対する特別な思い入れというのがあり、なかなか気持ちは隠し切れなかったように思います。なぜ自分が彼女にそこまで引きつけられたのか、なぜ当時活躍していたほかの日本の女子選手ではなく浅田選手だったのかと考えると、やはり同い年というのは一番大きな理由で、自分と同い年の可愛い女の子がもの凄いジャンプを跳んでいるというインパクトの強烈さから惹かれたのだと思いますが、その最初のインパクトだけで終わらず、その後もずっと浅田選手に惹かれ続けた理由は何だろうと思うと、自分にフィギュアスケートの魅力を最初に教えてくれたのが浅田選手だからというのは後付けの理由に過ぎなくて、やはり彼女が氷の上で見せる演技、表情の豊かさ、また、演技やインタビューなどから滲み出る人間性に魅了されたというのが本質的な理由なのかなと思います。
 そして、それは私だけではなく、多くの人にとっても同じなのではないでしょうか。「フィギュアスケートはその人の生きざまを見せるもの」と言ったのは浅田選手の亡き母・匡子さんですが、まさに浅田選手は氷の上で“浅田真央”という人間の生きざまを見せつけ、それが境遇や世代を超えていろんな人々の心に響いたということなのではないかと思います。

 “浅田真央”というフィギュアスケーターの特徴や魅力については、何といってもトリプルアクセルという女子では数人しか成功させていないジャンプを武器に戦ったという特異性が挙げられますし、そのほかにもさまざまな技術面や表現面での彼女にしかない魅力というのは多々あるのですが、“生きざま”という点に絞って考えてみると、まずは“両面性”というのが重要なポイントかなと感じます。
 浅田選手の両面性、それは“強さ”と“弱さ”です。浅田選手のジュニア時代から引退までの成績を振り返ると、ジュニアGPファイナル優勝、世界ジュニア選手権優勝、6度の全日本選手権優勝、4度のGPファイナル優勝、3度の世界選手権優勝、バンクーバー五輪銀メダルと、日本のみならず、世界のフィギュアスケート史にも残る華々しい経歴を残しているわけですが、しかしその数々の勝利のシーンと同じくらいかそれ以上に強烈な印象を残したのは、失敗から立ち上がる姿でした。
 その印象を最初に強烈に植えつけられたのは初出場となった2007年の世界選手権。金メダルを期待されて臨んだショートプログラム、得点源となる3フリップ+3ループの3ループが1回転になるミスがあり5位。首位とは約10点差、3位までも約5点差と、優勝どころか表彰台に向けても厳しい船出となりました。しかしフリーはトリプルアクセルを含め全てのジャンプを予定どおりに着氷する会心の演技。優勝には僅差で届きませんでしたが、驚異的な追い上げで銀メダルを獲得しました。
 さらに驚かされたのは翌年の世界選手権のフリー。冒頭のトリプルアクセル、軌道に入り跳ぼうとした瞬間にスケート靴のエッジが氷の溝にはまり激しく転倒。誰もが優勝を諦めるような衝撃的なシーンでしたが、浅田選手はすぐに立ち上がると、3フリップ+3トゥループを完璧に着氷。その後も高難度の3フリップ+3ループ含め全てのジャンプを目立ったミスなく下り、初の世界女王に輝きました。
 そして迎えたバンクーバー五輪シーズンでしたが、浅田選手はそれまでにないほどのジャンプの不調に陥り、シニアに上がって初めてGPファイナル進出も逃すというオリンピックに向けて不安の残る演技が続きました。ですが、オリンピックではショート、フリー合わせて3本のトリプルアクセルを全てクリーンに成功させる史上初の偉業を達成し、銀メダルを獲得。
 11/12シーズンは母・匡子さんが浅田選手が出場予定であったGPファイナル直前に死去。その直後の全日本選手権は欠場も予想される中、短期間の調整で出場。身体的にも精神的にも難しい状況でしたが全力を尽くした演技で見事に優勝。
 スケート人生の集大成として臨んだソチ五輪。SPは全ジャンプを失敗というまさかの演技で16位。そして今や伝説となったフリー、練習でもほとんど決まっていなかったトリプルアクセルを冒頭で下りると、その後は怒濤の勢いで全てのジャンプを着氷させる鬼気迫る滑りを見せ総合6位となりました。
 1年の休養から復帰した15/16シーズン。復帰初戦のジャパンオープン、GP中国大会と上々のスタートを切ったものの、2戦目のNHK杯、GPファイナルと不振が続き、全日本選手権もSP5位と出遅れ。しかし引退覚悟で迎えたフリーはミスを最小限にまとめて3位と表彰台に上って世界選手権の切符を手にし、その世界選手権も左膝痛の影響もありSPはミスが相次いで9位となりましたが、フリーはトリプルアクセル、3フリップ+3ループなど、ほとんどのジャンプを大きなミスなく着氷させて笑顔でシーズンを締めくくりました。
 こうして浅田選手が辿ってきた道を振り返ると、やはり思い起こすのは順風満帆にうまくいったシーズンや試合よりも、何か失敗や困難にぶつかりながらもそれを乗り越えた場面の方が強く印象に残っていて、失敗しては立ち上がり、失敗しては立ち上がりというのを、誰よりも繰り返し繰り返ししぶとく粘り強く積み重ねてきた選手なんだと改めて思います。
 浅田選手より安定感のある選手はいます。ライバルとして現役時代比較され続けたキム・ヨナさんはシニア参戦以降は出場した全ての試合で表彰台に上り、2度のオリンピックで2度ともメダルを獲得していますし、羽生結弦選手も優勝したソチ五輪後はほとんどの試合で1位もしくは2位という圧倒的な安定感を誇っています。そういった選手たちと比べると浅田選手は、女子には非常に難しくリスクの高いトリプルアクセルに挑み続けたということもあって、決して安定感抜群の選手だったとは言えません。しかし、そんな失敗の場面をたびたび見せてきたとしても、彼女が私(や多くのファン)を惹きつけてやまなかったのは、彼女が最後には必ず立ち上がって笑顔を見せてくれたからです。もちろん滅多にミスをしないタイプの選手にも魅力はあります。ですが、普通の人々の人生は成功よりも失敗の数の方が多いものです。だからこそアスリートが失敗をした時や厳しい状況に見舞われた時にどう乗り越えるかという部分に関心が集まります。そういった意味で、何度も失敗し、でもそのたびに立ち上がり、そしてまた挑戦してという浅田選手の生きざまは、たくさんの失敗を繰り返すという“弱さ”の点では私のような凡人にも重なる部分があり、一方で立ち上がる姿からは自分自身では考えられない尋常ならざる“強さ”を感じさせて、そうした両面のギャップが、毎回ハラハラドキドキさせられながらも心をとらえて離さない浅田選手特有の不思議な魅力だったのかなと今では思います。

 そんな特別な魅力を放った浅田選手に惹きつけられたのは、一般のファンだけではなく現役選手、元選手も同じでした。日本国内の同じ時代をともに戦い抜いた戦友たちのみならず、たくさんの後輩選手たち、さらには海外の選手や元選手たちも浅田選手の引退に際して次々とコメントを寄せました。それは浅田選手が築いてきた功績や素晴らしい技術、演技に対する尊敬もあるでしょうが、やはり彼女が氷上で見せてきた生きざまが同じスケーターたちでさえも魅了し、これだけフィギュアスケート界の中でも尊敬を集め愛される選手になったということなのだろうと思います。
 それだけ慕われる一方で、浅田選手ほど孤高の選手もいなかったのではないでしょうか。子どもの頃から注目され続け、常に優勝することを求められる。そういうアスリート自体が日本全体を見回しても卓球の福原愛選手くらいしかいないですし、さらには浅田選手の場合、女子では跳ぶ人のほとんどいないトリプルアクセルを10年以上に渡って跳び続けるという後にも先にも例のない試みを続けてきた唯一無二の選手でもあって、同じフィギュアスケーターでも悩みや経験を共有できない、本当に孤独な道を歩んできたのではないかと思います。
 12日の引退会見でもトリプルアクセルに関連する応答はいくつかあり、浅田選手自身トリプルアクセルについて「自分の強さでもあった」とする一方で、「悩まされた」と本音もこぼしました。また、小学6年生の時に参加した新人発掘のための“野辺山合宿”で、トリプルアクセルを跳ぶと目標を定めて臨んで実際に初成功させたというエピソードも披露しました。トリプルアクセルというのを戦略として考えるなら、回避してほかの女子選手同様に3+3の完成度を高める方向で行った方が戦略的には賢いのかもしれませんし、成績ももっと安定したかもしれません。特に佐藤信夫コーチが就任した10/11シーズン以降は浅田選手も20代に突入してますますトリプルアクセルを跳ぶのは身体的にきつくなっていったと思うのですが、技術を基礎から見直している時期に一時的に構成から外していた時を除けば変わらずトリプルアクセルを跳び続け、佐藤コーチに回避を勧められても自分の意志を最後まで曲げなかったというのは、やはり最初に目標を達成した原体験というのがトリプルアクセルであったという強烈な記憶と忘れがたい喜びが大人になっても浅田選手の中に根付いていたということなのでしょう。もちろん浅田選手はトリプルアクセルだけの選手ではなかったですし、むしろ年齢を重ねるほどジャンプ以外の部分の技術や表現もそれまで以上に強化されていきました。しかしそれでもトリプルアクセルは彼女にとって切っても切り離せない相棒のようなものであり、“浅田真央”を“浅田真央”たらしめている最大の要素がトリプルアクセルであったことは間違いなく、たとえトリプルアクセルを外して試合に臨んで金メダルの数が増えていたとしても、それは浅田選手にとってはあまり意味のない勝利だったのではないかと思いますね。

 そんな浅田選手のラストダンスとなった昨年末の全日本選手権。左膝の負傷の影響でGPシリーズでは回避していたトリプルアクセルをショート、フリーともに組み込み、残念ながら成功には至りませんでしたが、演技後の表情からは納得感が滲み出ていました。ですが、まさかそれが最後の演技になるとは露ほども思わず、左膝痛さえ癒えればまだまだ世界のトップレベルで競えると感じていたので、平昌五輪まで1年を切ったこのタイミングでの引退発表は予想外で驚きました。
 浅田選手は引退の理由について自身のブログで「去年の全日本選手権を終えた後、それまでの自分を支えてきた目標が消え、選手として続ける自分の気力もなくなりました」と綴り、記者会見でも「体も気力も全部出し切った」「悔いはない」と明るく語りました。上述したように、幾度となく困難を乗り越えてきた浅田選手なので、今回の自分の身体との戦いもきっと乗り越えてくれるだろうと勝手に期待してしまっていたのですが、それ以上に浅田選手をそれまで支えていたほとばしるような情熱がもう消えてしまったんだなということにブログの文面や会見での言葉から気づかされましたね。その発端となったのは体の不調かもしれませんが、今回の会見でも怪我に関することを一度も口にしなかったように、フィジカル的な問題があってもそれを表に出すことなく強い気持ちで乗り越えてきたのが“浅田真央”というアスリートなので、その気持ち自体がなくなってしまうと、やはり競技者として続けていくのは難しいんだろうなと感じました。
 浅田選手の引退に際して心残りがあるとすれば、できることなら最後の演技が満面の笑みで終われれば最高だったなとは思います。ただ、最後の試合でもトリプルアクセルを跳んだというのは、浅田選手自身が会見でおっしゃっていたように浅田選手らしかったなと思いますし、最後の最後まで“浅田真央らしさ”を貫き通した姿はただただかっこよく、順位や点数は関係なく、私が知っている“浅田真央”の姿そのものだったなと思います。

 浅田選手についてここまで綴ってきて、いろんなシーンが走馬灯のように思い出されるのですが、やはり一番印象深いのは笑顔です。特にソチ五輪のフリーは、フィニッシュのポーズから解き放たれた瞬間にさまざまな想いが詰まった大粒の涙を流し、それでもパッと顔を上げて見せた涙まじりの笑顔というのは、どうしてあの状況であんなに笑えるんだろうと不思議なくらいの美しい笑顔で、目に焼きついて離れません。そして、今回の引退会見の最後、司会者から挨拶を促されて最初は笑顔で話していたのが、途中で感極まったのか言葉に詰まり涙をこらえようとしばらく黙り、それでも涙が流れそうだったのか記者やカメラに10秒ほど背を向けました。しかし再び前に向き直った浅田選手の表情は笑顔で、先ほどの言葉の続きを述べ、また途中で想いが溢れて涙がこぼれそうになるのをぐっとこらえて数秒だけ後ろを向いて指先で涙を拭い、最後はいつもどおりの“真央スマイル”で感謝の言葉で会見を締めくくり、会場を後にしました。まるで涙から笑顔にパッと変わったソチ五輪のフリーと重なるシーンで、会見でさえも最後まで浅田選手らしい“生きざま”を見せてくれましたね。
 その笑顔にこちらが逆に励まされ、元気づけられ、思わず顔がほころんでしまったのと同時に、私のようなファンが浅田選手に笑顔でいることを自分勝手に期待して強いてしまっていたのではないかという気もして申し訳なくも思いました。ただ、いつの時も浅田選手の笑顔というのは誰かから強いられたり求められたりしたものではなく、もちろん笑顔を作ることを意識しなければいけない場面もあったとは思うのですが、それでもその笑顔は作り物ではなく浅田選手の心の中から自然と生まれた笑顔で、見ているこちらにも気持ちが伝わってくるようなありのままの笑顔で、だからこそこれだけの国民的なアスリートになったのかなと思いますね。

 またもや個人的な話になってしまいますが、私にとって浅田選手はフィギュアスケートを見るきっかけを与えてくれた選手であり、“フィギュアスケート=浅田真央”といっても過言ではありません。なので、浅田選手がいないフィギュア界をまだ想像できないのですが、浅田選手が築いたものは確実に今後の若い選手たちが引き継いでいくでしょうし、“浅田真央”のDNAとでもいうべきものは日本のフィギュア界に目に見える形でも見えない形でも受け継がれていくでしょう。
 ですが、浅田選手のような選手はもう二度と現れないのではないかと思います。ジャンプだけなら浅田選手よりうまい選手が出てくる可能性はいくらでもありますし、浅田選手の記録や偉業もいつかは塗り替えられていくでしょう。ですが、ジャンプ、スピン、ステップ、スケーティング、表現、そして氷上での佇まいの全てをそなえた、総合芸術としてのフィギュアスケートを体現する存在として、浅田選手以上の選手は、私にとっては今後現れることはないと思います。
 正直寂しい気持ちが消えることはないですが、今はただ浅田選手が見せてくれた数々の名演技に感謝するとともに、“浅田真央”という人生の新たな章の始まりにおめでとうと言いたい気持ちですね。引退しても浅田選手にとってフィギュアスケートはかけがえのないものであり続けるでしょうし、7月には座長を務める「THE ICE」もあるので、これからもフィギュアスケーターとして大好きなフィギュアスケートを追求してほしいと思います。もちろん、フィギュアスケート以外にもどんどん興味を広げていって、フィギュアスケート以上に夢中になれるものが見つかれば、それも幸せなことだと思いますので、どんな形であれ浅田選手の今後の人生が幸多く、笑顔に溢れたものになることを願っています。
 21年間の選手生活、お疲れさまでした。そして、今までありがとうございました。


:浅田選手の写真は、デイリースポーツのニュースサイトが2017年4月12日に配信した記事「真央、五輪出場枠「3」→「2」は引退の理由じゃない 決断「2月だった」」から引用、文中の浅田匡子さんの言葉はスポーツ誌「Number」の公式サイトが2011年12月26日の11:50に配信したコラム記事「母と一緒に滑った浅田が全日本でV。男子は最強の世界選手権代表トリオ。」を参考にさせていただきました。
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by hitsujigusa | 2017-04-15 00:52 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 世界選手権2017、男子とアイスダンスについての記事の後編です。なお、前編はこちらをご覧ください。

ISU World Figure Skating Championships 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 7位はアメリカのジェイソン・ブラウン選手です。

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 まずはショートには組み込まなかった4トゥループからでしたが、アンダーローテーション(軽度の回転不足)で転倒となります。しかし、次の3アクセル+3トゥループをクリーンに着氷すると、レベル4のスピンとステップシークエンスを挟んだ後半、2本目の3アクセルもパーフェクトに成功。さらに3ルッツ、3+2、2アクセルと中盤のジャンプは全てクリーンで1点以上の加点が付く出来栄え。終盤の3ループがパンクして2回転になりましたが、最後の3ルッツ+1ループ+3サルコウはきれいに着氷。演技を終えたブラウン選手は感極まったように破顔しました。得点は176.42点でフリー7位、総合も7位となりました。
 異次元の4回転ジャンパーたちが優勝争い、メダル争いを繰り広げる中、ショート、フリー合わせて4回転1本という構成で異彩を放ったブラウン選手。4トゥループと3ループの失敗はありましたが、それさえも些細なことに思わせる圧倒的な表現の力、プログラムの力で唯一無二の世界を作り上げましたね。前編の記事でネイサン・チェン選手のフリーの構成について偏っていると指摘したのですが、ブラウン選手も8つのジャンプ要素のうち6つを後半に固めているわけなので偏っているといえば偏っているのですが、ジャンプとジャンプのあいだにつなぎや小技をふんだんに盛り込んだり、スピンを演技全体に均等に配置したりと、ジャンプ以外の部分にも観客の目がいくバランスの良い構成になっていて、ジャンプに注目が集まりがちな最近の男子フィギュア界の中でジャンプ以外のフィギュアスケートの魅力を最も伝えてくれる貴重なスケーターだなと今回改めて感じました。
 4回転が得意ではないブラウン選手が世界のメダル争いに食い込んでいくのは難しいかもしれませんが、今のままのブラウン選手のスケートを追求してどんどんほかの選手にはないオリジナリティーを極めていってほしいなと思います。


 8位はロシアチャンピオンのミハイル・コリヤダ選手です。

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 冒頭は今季からチャレンジしている大技4ルッツ、回転は認定されたものの転倒で初成功とはならず。続く4トゥループはきっちり決めて加点を得ます。しかし直後の3アクセルはタイミングが合わなかったのか抜けて1回転に。次の3+3はクリーンに成功とバラつきの目立つ前半となります。立て直したい後半、まずは3アクセルを今度は完璧に成功。3+1+3は最後のジャンプが2回転に。続いて3ループは問題なく決めますが、最後の2アクセルは若干乱れ、フィニッシュしたコリヤダ選手は納得がいかないというように顔を曇らせました。得点は164.19点でフリー9位、総合8位となりました。
 前半の大技でミスが重なったことによって全体的にリズムに乗りきれなかったという印象の残る演技でしたね。ただ、4ルッツは回り切ってからの転倒でしたし、成功の形も本人には見えているのだろうと思うので、来シーズンに向けて良い収穫になったのではないかと思います。
 今大会はパーソナルベストから10点以上低いスコアで8位とコリヤダ選手自身は消化不良の内容、結果だったかもしれませんが、シーズン全体を俯瞰するとそこまで極端に崩れる試合というのも少なく、何といってもロシア選手権優勝という大きな初タイトルもあり、足元をしっかり固めるシーズンになったのではないでしょうか。来季は4ルッツの成功も含め、さらに飛躍するシーズンになることを期待したいですね。


 19位となったのは日本の田中刑事選手です。

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 まずは得点源の4サルコウ、これをクリーンに着氷します。さらに続けて2本目の4サルコウはしっかり2トゥループを付けて成功させ最高の滑り出しとなります。しかし直後の3アクセルが2回転に。後半に入り最初の3+3は問題なく下りますが、3アクセルは力が入ったのか珍しく回転不足で転倒。残りのジャンプは全て予定どおりにこなしましたが、3アクセルのミスが響いて148.89点でフリー17位、総合19位にとどまりました。
 ショートで失敗した4サルコウをしっかり修正した一方で、今シーズン安定していた3アクセルが1本もクリーンに決まらず、田中選手らしい演技とはなりませんでしたね。単純にこの大会で自己ベストくらいの得点を出せていれば10位には入れていたので残念だなと思うのと同時に、田中選手の実力は19位で終わる選手ではないというのもわかっているので、今大会の演技には少しもどかしさも覚えました。ただ、五輪プレシーズンに世界選手権の雰囲気を経験できたことは貴重な収穫だと思うので、来季は日本男子の第3の男としてさらにベースを底上げするシーズンにしてほしいなと思いますね。



 さて、ここからはアイスダンスです。

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 実に5年ぶりとなる3度目の優勝を果たしたのは、今季競技復帰したカナダのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組です。SDは全てのエレメンツがレベル4という非の打ちどころのない演技で2位に約5点の大差をつけて断トツの首位。FDはサーキュラーステップシークエンスの終わりでモイア選手がバランスを崩して転びかけるというまさかのミスはありましたが、そのほかは全て高いレベルとクオリティーでまとめ自己ベストに近い得点で2位、ショートのリードを守り切って優勝となりました。
 フリーはヴァーチュー&モイア組らしからぬシーンはありましたが、それでも2位という圧倒的な地力の差を見せつけましたね。この結果を見る限り来シーズンもこのカップルを軸に世界のアイスダンス界は回っていきそうですし、二人が引っ張ることによってほかのカップルも追いつけ追い越せとばかりにレベルアップしてくると思うので、そういった意味でもヴァーチュー&モイア組が競技会に戻ってきた意義は大きかったのかなと思います。世界選手権優勝、おめでとうございました。

 銀メダリストとなったのは2015、2016年の世界王者、フランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組。SDはツイズルと2つのステップシークエンスがレベル3にとどまり、1位に点差をつけられての2位。しかしFDはステップは1つレベル3だったものの全体的に完成度の高い演技を披露し、自身が持つ世界最高を上回る119.15点で1位、トータルでは2点差及ばず惜しくも2位となりました。
 ショートで5点というアイスダンスではひっくり返すのが難しい点差をつけられ、ヴァーチュー&モイア組の優勝だろうという大方の予想になりましたが、フリーはディフェンディング・チャンピオンとして意地を見せる演技でしたね。パパダキス&シゼロン組が来季ヴァーチュー&モイア組を上回ってオリンピックチャンピオンになるために鍵となるのはショート。パパダキス&シゼロン組はショートで少し出遅れてフリーで追い上げるというのがパターンが多いので、その鬼門のショートでさらに安定感が増せば、ヴァーチュー&モイア組をもっと脅かせるのではないでしょうか。

 3位はアメリカチャンピオンのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組です。SDは得意のステップシークエンスがレベル2という取りこぼしがあり、アメリカ勢の中でも3番手となる5位と出遅れ。FDも珍しくリフトで時間超過による減点1があり4位でしたが、トータルでは3位で2年連続で表彰台に上がりました。
 圧倒的な技術力を武器とするシブタニ兄妹にしては取りこぼしの多い試合となりましたが、この僅差の接戦を勝ち抜いてメダルを手にした経験は、ある程度余裕を持って2位になった昨年以上の価値があるのではないかと思います。特に今年はショートとフリーが揃わず順位の変動が大きいカップルが例年より多かった中で、ショート5位、フリー4位という不本意な内容でも2年連続で表彰台を死守できたことは、来季に向けて大きなアピールになりますし、大きな意味のある3位なのではないでしょうか。

 日本の村元哉中&クリス・リード組はSD23位で残念ながらFDには進めませんでした。

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 冒頭のパターンダンスは確実に丁寧にこなしましたが、パーシャルステップシークエンスはレベル2どまり。そして終盤のツイズルではリード選手の回転がずれてレベル1になった上GOEでも減点となり、54.68点で23位にとどまりました。
 パーソナルベストの61.10点からはかなり低い得点となってしまい、キス&クライでは言葉を失った村元&リード組。演技全体としては勢いもあって良かったと思うのですが、細かな部分の精密さに欠けてしまったのかなと思いますね。彼らの自己ベストを考えると問題なくフリー進出できると思っていましたし、そのために必死に練習をしてきたと思うので悔しい気持ちは強いでしょうが、この悔しさをバネに来季はさらなる技術の向上と安定感を手に入れて、オリンピックの出場権を獲得してほしいですね。



 男子フリーとアイスダンスの記事は以上ですが、ここで平昌オリンピック(と来年の世界選手権)の国別出場枠をまとめたいと思います。


《男子》

3枠:日本、アメリカ
2枠:カナダ、ロシア、スペイン、中国、イスラエル

《アイスダンス》

3枠:カナダ、アメリカ
2枠:ロシア、イタリア、フランス



 オリンピックと世界選手権の出場枠は、それぞれ国別の出場選手数とその順位によって決められます。
 まず3選手もしくは2選手出場している国は、その上位2選手の順位の数字の合計が13以下であれば3枠獲得。14~28以内であれば2枠、29以上で1枠となります。一方、1選手しか出場していない国は、その1選手が2位以上になれば一気に3枠獲得。3~10位であれば2枠。11位以下だと1枠のままです。
 ということで、男子は日本がワンツーフィニッシュというこれ以上ない最高の形で3枠を確保。そしてアメリカは表彰台も目されていたチェン選手が6位と思ったほど伸びませんでしたが、ブラウン選手が4回転1本のみで踏ん張って7位と、ちょうど13ポイントで見事に3枠を勝ち取りました。
 そして2選手出場で2枠を守ったのはカナダとロシアとスペイン。有力選手がフェルナンデス選手しかいないスペインは別として、カナダとロシアは何とか頑張って3枠を取りたいところだったと思うのですが残念ながら2枠のまま。特にカナダはチャン選手が5位、ケヴィン・レイノルズ選手が9位で14ポイントだったので、本当にあと少しでしたね。
 1選手のみの出場だった中国とイスラエルは上位に食い込んで2枠に増枠。中国は元々2枠が与えられていましたが、出場予定だった閻涵(ヤン・ハン)選手が肩の負傷のため欠場。結果的に金選手一人のみの出場でしたが、全く問題なく余裕で2枠を確保しましたね。そしてイスラエルは唯一の出場のアレクセイ・ビチェンコ選手が10位と2枠に増えるギリギリのラインをクリア。イスラエルが2枠を獲得するのはオリンピック史上初の歴史的な快挙であり、最近のイスラエルはビチェンコ選手のほかにも若手のダニエル・サモヒン選手も台頭してきていますから意味の大きい2枠ですね。
 アイスダンスはアイスダンス大国の北米2国ががっちりと3枠をキープ。一方で同じくアイスダンス大国のロシアは上位2組の合計が15ポイントで惜しいところで3枠を逃しました。5位のエカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組がSD8位と出遅れたのが、FDだけだと3位だっただけにもったいなかったですね。

 今大会全体を振り返ると男子は予想されていたとおり史上最高レベルの戦いとなり、300点を超えたフェルナンデス選手でさえ4位という尋常ではない時代に突入。この過酷な時代を勝ち抜いて勝者となるためには、4回転を数種類跳ぶのは当たり前として、その出来栄えも求められ、また、スピンやステップの些細な取りこぼしでも順位が左右される可能性があり、本当の意味での総合力が必要とされるのかなと思います。難度の高い4回転を何本も跳んでほかの選手に基礎点で優位に立つという方法ももちろんありますが、今やそういったレベルの選手が1人や2人ではなく5人以上いる時代なので、ジャンプの基礎点の足し算で差をつけるだけではなく、その美しさを磨くこともかなり重要になってきそうですね。
 そしてアイスダンスは第一線から退いていたオリンピックチャンピオンが戻ってきたことによって、パパダキス&シゼロン組が頭一つ抜け出ていたここ2年の状況が一転、勢力図が掻き回されておもしろさが増したのではないかと思います。オリンピックシーズンも今季同様もしくはそれ以上に、基礎点でレベル4を取るのは大前提として、GOEをどう稼ぐかという戦いになってくるでしょうね。



 世界選手権2017の記事はこれで終了です。ただ、今年は世界国別対抗戦(ワールド・チーム・トロフィー)も残っていますので、世界選手権に出場した選手たちは連戦で大変でしょうが、怪我のないよう気を付けて今シーズンを有終の美で飾ってほしいと思います。では。


:男子メダリスト3選手のスリーショット写真、田中選手の写真、アイスダンスメダリスト3組の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、ブラウン選手の写真、コリヤダ選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、村元&リード組の写真はフィギュアスケート情報サイト「Absolute Skating」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
世界選手権2017・女子SP―エフゲニア・メドベデワ選手、高得点で首位発進 2017年3月30日
世界選手権2017・男子SP―ハビエル・フェルナンデス選手、世界歴代2位の高得点で首位発進 2017年3月31日
世界選手権2017・女子フリー&ペア―エフゲニア・メドベデワ選手、世界最高得点で2連覇(前編) 2017年4月3日
世界選手権2017・女子フリー&ペア―エフゲニア・メドベデワ選手、世界最高得点で2連覇(後編) 2017年4月5日
世界選手権2017・男子フリー&アイスダンス―羽生結弦選手、逆転で2度目の優勝(前編) 2017年4月5日

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by hitsujigusa | 2017-04-06 18:00 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 フィンランドの首都ヘルシンキで行われた世界選手権2017。この記事では男子のフリーとアイスダンスについてお届けしますが、前編ではまず男子の1~6位までの選手について書いていきます。
 男子を制し2度目の優勝を果たしたのは日本の羽生結弦選手。SP5位からの逆転優勝を狙ったフリーでは自身が持つ世界歴代最高得点を塗り替え、劇的な展開を演出しました。銀メダルを獲得したのは同じく日本の宇野昌磨選手、3位は2年連続で中国の金博洋(ジン・ボーヤン)選手となっています。
 一方、アイスダンスはバンクーバー五輪金メダリストのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組が実に5年ぶり、3度目の優勝となりました。

ISU World Figure Skating Championships 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 SP5位から逆転で金メダルを獲得したのは羽生結弦選手です!

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 冒頭は代名詞の大技4ループ、これをショート同様完璧に決めて全ての審判からプラス2もしくは3の高評価を引き出します。さらに4サルコウも難なく成功。続くスピンとステップシークエンスはきっちりレベル4。3フリップをあっさりと下り、ここから後半。ショートでは失敗に終わった鍵となる4サルコウ+3トゥループでしたが、4サルコウをパーフェクトに下りると綺麗な流れで3トゥループに繋げて2.43点の高加点。次の4トゥループもクリーンに着氷。その後は3アクセルからの連続ジャンプと単独の3ルッツと、羽生選手にとっては簡単なジャンプを全て余裕を持って成功させ、演技を終えた羽生選手に対し嵐のようなスタンディングオベーションと拍手喝采が送られました。得点は世界歴代最高となる223.20点でもちろんフリー1位、総合でも1位となり、2014年以来2度目となる世界タイトルを手にしました。
 ショートでは今季鬼門となっている4サルコウ+3トゥループでのミスに加え、スタートのポジションにつくのが遅れたことによる減点もあり5位にとどまった羽生選手。トップのハビエル・フェルナンデス選手までは約10点差ということで、フェルナンデス選手がミスを連発でもしない限り逆転は難しいだろうとショートの記事の時に書いたのですが、まさにそのとおりの展開となりました。思えば昨年の世界選手権は羽生選手が1位で2位がフェルナンデス選手、2人のあいだには約12点差があったのが、フリーはフェルナンデス選手のキャリアベストの演技と羽生選手の不本意な演技により劇的なフェルナンデス選手2連覇となりましたし、2015年の時も僅差ながら1位羽生選手、2位フェルナンデス選手という順位からフリーでの逆転を許してしまっていて、むしろ追いかける立場となった羽生選手の方に今回は精神的に有利に働いたのかなという気もしますね。
 とはいえ10点差をひっくり返すのはたやすいことではありません。それが成し遂げられたのは、羽生選手の確かな技術と追い詰められれば追い詰められるほど燃えやすい羽生選手の性格によるところが大きいのかなと思います。そう考えるとオリンピックもショート1位よりも2位とか3位の方が良いのかななんて思ってしまいますが、羽生選手本人からしたらショートもフリーも完全無欠の演技が当然の目標でしょうし、昨季のNHK杯、GPファイナルではそうした神がかった演技ができていたわけですから、今後も羽生選手にとっては過去の自分が最大の敵になっていくのかなと思いますね。
 オリンピック前年の世界選手権を制し、最高の形で五輪プレシーズンを締めくくることが出来た羽生選手(まだ国別対抗戦は残っていますが)。とにかく怪我にだけは気をつけて、オリンピック2連覇に向けて頑張ってほしいですね。世界選手権優勝、おめでとうございました。


 2位に入ったのは全日本チャンピオンの宇野昌磨選手です。

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 まずは2月の四大陸選手権から跳び始めた新技4ループ、これをクリーンに回り切って下りて1.43点の加点を得ます。続けてこちらも大技の4フリップを若干着氷でこらえながらもまとめます。次の3ルッツは踏み切りのエッジを気にしすぎたのか、いつもより力の入った跳躍となり着氷でバランスを崩します。後半はまず得意の3アクセル+3トゥループから、これは完璧な流れで満点となる加点3の高評価。続く4トゥループは着氷でわずかにこらえて減点されますが、直後の4トゥループ+2トゥループはクリーンに成功。さらに3アクセル+1ループ+3フリップの高難度3連続ジャンプもパーフェクト。最後の3サルコウも難なく決めると、代名詞の“クリムキン・イーグル”を含むコレオシークエンスでは情熱的な滑りで観客を沸かせ、フィニッシュした宇野選手はショートに続き片手でガッツポーズ。得点は自己ベストかつ世界歴代3位の214.45点でフリーも2位、総合では世界歴代2位のハイスコアで初めての銀メダルを獲得しました。
 1年前はフリーで崩れ大粒の涙をこぼした宇野選手。その借りを返す素晴らしい演技でした。何よりも驚かされるのがジャンプの安定感。すでに宇野選手の代名詞的ジャンプとして定着している4フリップも跳び始めたのは昨年の世界選手権の後で、気分転換でやってみたら成功してしまったという凄いエピソードがありますし、4ループに関しても試合で跳び始めたのは2月の四大陸からにもかかわらずしっかり自分のものにしています。元々ジュニア時代の宇野選手はジャンパーというよりも表現面が注目された選手でしたが、ジュニアラストの14/15シーズンに4トゥループと3アクセルを習得してからはジャンパーとしても安定感、上達の早さは際立っています。また、フリーの演技前には羽生選手の世界最高の演技をモニターで見ていて敵わないと思うことで逆に開き直れたという話もあり、そうしたメンタルコントロールの巧さも銀メダルに繋がったのでしょうね。
 世界選手権から帰国後にははやくも4ルッツの習得に意欲を示していて、個人的にはあまり無理して怪我してほしくないなという老婆心もあるのですが、こうした無限の向上心、攻める姿勢こそが宇野選手らしくもあり、また、彼がここまで技術の進化に貪欲になれるのも同じ国に羽生選手という高い壁であり良いお手本でもある存在からいるからこそで、オリンピック前にこの二人のワンツーフィニッシュが見られたのは本当にうれしいことですね。
 4月20日から始まる世界国別対抗戦(ワールド・チーム・トロフィー)の出場も決まっている宇野選手。去年の4月はチーム・チャレンジ・カップで史上初となる4フリップを成功させたことを考えると、今年の国別対抗戦もまた何か新しいことをやってくるんじゃないかという気もして楽しみですね。


 昨年に続き銅メダリストとなったのは中国のエース、金博洋選手です。

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 冒頭は代名詞の4ルッツをパーフェクトに成功させて2.57点の加点を獲得。さらに4サルコウもスムーズに着氷します。さらに3アクセル+1ループ+3サルコウもクリーンに下りて、前半を最高の形で折り返します。そして後半、まずは4トゥループ+2トゥループをしっかり決めると、続く単独の4トゥループも成功。3+3、3アクセル、3フリップと全てのジャンプを予定どおりにクリアし、スピン、ステップシークエンスも全てレベル4とそつなくまとめ、フィニッシュした金選手は力強いガッツポーズで喜びを露わにしました。得点は204.94点と初めて200点台に乗せてフリー3位、トータルでも自身初の300点台で3位に入りました。
 今シーズンはGP初戦のスケートアメリカこそジャンプ不調で表彰台を逃しましたが、2戦目の中国杯では2位、年明け以降も四大陸、アジア冬季大会と順調に調整を進めて調子を上げつつあった金選手ですが、今大会はショート、フリーともに全てのエレメンツがプラス評価という素晴らしい仕上がりでしたね。演技自体も非常にのびのびと楽しそうに滑っているのが印象的で、今季はネイサン・チェン選手という新たな4ルッツの使い手が登場し脚光を浴びたことで金選手は少し陰に隠れた感がありましたが、それが逆に功を奏したのかもしれません。
 2年連続での銅メダルということで、何か運の良さも感じられる金選手。オリンピックでもメダル候補に挙げられることは間違いないですから、来季も日本勢の手ごわいライバルとして注目ですね。


 惜しくも4位となったのは2015、2016年の世界王者、スペインのハビエル・フェルナンデス選手。

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 SP首位という絶好のポジションでフリーを迎え、まず冒頭の4トゥループをお手本のような流れで決め全てのジャッジが加点3という驚異的な評価を得る最高のスタート。次の4サルコウ+3トゥループは着氷で少し乱れますが、3アクセル+2トゥループはクリーンにまとめます。後半は得意の4サルコウからでしたが、珍しく転倒。次の3アクセル、3ルッツは問題なく下りて立て直したかに見えましたが、その後の3+1+3のファーストジャンプが2回転に、さらに最後の3ループでも着氷ミスと普段失敗しないジャンプでのミスが重なり、演技後フェルナンデス選手は残念そうに肩を落としました。得点は192.14点でフリー6位、トータルでは300点台に乗せましたが3位の金選手にわずかに及ばず表彰台を逃しました。
 世界歴代2位の演技となったショートから一転、フリーはフェルナンデス選手らしからぬ演技で優勝候補がまさかの4位にとどまりました。前半の4+3でちょっとしたミスがありましたがそれだけならまだしも、後半の4サルコウの転倒から終盤の2つのジャンプのミスと、どんどん歯車が噛み合わなくなっていったような印象でしたね。演技前にはすでに羽生選手の得点を知っていたそうなので完璧に滑らなければならないというプレッシャーがあったのかなと想像しますが、フェルナンデス選手のこれまでの優勝というのはSP2位から羽生選手を追いかける立場だったので、SP首位という初経験がいつもとは違う感覚に繋がったのかもしれませんね。
 今までフェルナンデス選手はショート、フリー合わせて2種類の4回転を5本という構成で世界の覇権を争ってきましたが、4回転を3種類、さらには4種類跳ぶ選手がいる現状を考えると、戦略を考え直す必要があるかもしれません。それとも今までどおりの構成でさらに精度を高める方向でいくのか、フェルナンデス選手の逆襲に期待したいですね。


 5位となったのはカナダのベテラン、パトリック・チャン選手です。

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 まずは得点源となる4トゥループ+3トゥループをきっちり決めて2点の加点。さらに今季から取り入れている4サルコウも完璧な跳躍と着氷で加点2.71点と絶好の滑り出しとなります。しかし次の3アクセルは着氷で大きくバランスを崩し減点。2つのスピンを挟んだ後半、1発目のジャンプは4トゥループでしたがこちらも着氷でミス。次の3アクセルはきれいに成功させ、以降のジャンプは全てクリーンに下りましたが、得点源となる大技でのミスが響き、193.03点でフリー5位、総合も5位となりました。
 残念ながら表彰台には届きませんでしたが、チャン選手らしいスケーティング、ジャンプやスピンの質の高さは随所に見られ、世界のトップレベルで戦う力はまだまだ健在であることを示す演技だったと思います。特に今回決めた4サルコウはまるで何年も跳び続けてきたかのような美しさで、このジャンプを手に入れたことはチャン選手にとって構成の幅が広がるという意味でも、26歳にしてまだ伸びしろがあることを証明したという意味でも、来季の大きな武器になるのではないでしょうか。
 フェルナンデス選手同様、下の世代と比べるとジャンプの基礎点ではどうしても劣るチャン選手ですので、2種類の4回転の安定感はもちろん、彼にしかできないスケーティングの世界を極めていくことで、オリンピックのメダルにも繋がっていくのではないかと思いますね。


 6位はアメリカチャンピオンのネイサン・チェン選手です。

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 まずは今季ほとんど失敗がない大技4ルッツでしたが、回転は十分だったもの転倒となります。しかし次の4フリップに急遽2トゥループを付けてリカバリー。さらに続けて2本目の4フリップに挑みきれいに成功させ、直後の4トゥループは着氷でわずかに乱れますが最小限のミスにとどめます。後半はSPで失敗した3アクセル、これをクリーンに下りて良い流れのように見えましたが、次の4サルコウで転倒。続いて6本目の4回転となる4トゥループ+3トゥループに挑戦しましたが着氷で乱れ、最後の3ルッツからの3連続ジャンプも若干減点される出来栄えに。終盤に固めたスピンとステップシークエンスは全てレベル4にまとめましたが、193.39点でフリー4位、総合6位にとどまりました。
 フリーでは何と史上初となる6本の4回転にチャレンジしましたが、そのうち加点が付いたのは2本だけで、転倒も2本と完成度と出来栄えでは劣る内容となりました。ただ、今大会のチェン選手はスケート靴に問題を抱えていたということで、それがなかったらどうなっていたのかというのは気になるところですね。来季チェン選手が4回転を何本入れてくるのかはまだわかりませんが、個人的な要望としては、現在のチェン選手のフリーはほとんどの4回転を前半に跳び、体力がきつくなる終盤に全てのスピンを集めているというかなり偏った構成になっているので、4回転5、6本というのはもちろん素晴らしいのですが、せっかくチェン選手にはバレエで鍛えた美しい身のこなしやフットワークの巧さもあるので、そちらもより活かされたプログラムになることを来季は期待したいですね。



 さて、この記事はここで一旦終了とし、後編に続けます。お手数をおかけしますが、続きは後編でお読みください。


:男子メダリスト3選手のスリーショット写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、羽生選手の写真、金選手の写真、フェルナンデス選手の写真、チャン選手の写真、チェン選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、宇野選手の写真はAFPBB Newsが2017年4月2日の8:55に配信した記事「羽生がFS歴代最高得点で逆転優勝、宇野は銀 世界フィギュア」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2017-04-05 23:49 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 世界選手権2017、女子フリー&ペアの記事の後編です。前編はこちらのリンクからご覧ください。

ISU World Figure Skating Championships 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 女子の7位となったのはアメリカのベテラン、アシュリー・ワグナー選手です。

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 冒頭は得意な2アクセルを難なく成功させ、続いて得点源の3フリップ+3トゥループでしたが、ファーストジャンプの着氷でこらえ気味になりセカンドジャンプは1回転となります。次の2アクセル+2トゥループはクリーンに成功。後半最初は得点源となる3+1+3、確実に決めたいところでしたが最後のジャンプがアンダーローテーション(軽度の回転不足)と判定されます。続く3フリップも同じくアンダーローテーション。3ループはきれいに下りますが、最後の3ルッツは踏み切りのエッジエラーで減点となり、得点は124.50点でフリー10位、総合7位となりました。
 ショートはベテランらしい落ち着きで大きなミスなくまとめたワグナー選手ですが、フリーは鍵を握る3+3のパンクに加え、元々課題だった回転不足も複数あり得点を伸ばし切れませんでしたね。ショートからそうでしたが、今大会のワグナー選手のジャンプは全体的に余裕がなく、余裕がある時のジャンプは高い加点が付くのですが、今回は回り切っていたジャンプでもギリギリのものが多かったので加点を稼げなかったのもスコアを伸ばせなかった要因かなと思います。ただ、フリーの演技後のワグナー選手の放心したような表情は、かつて“The Almost Girl”と呼ばれた時の演技がうまくいかなかった際に見せていた表情とは違って、今回の経験も一つの通過点として潔く受け入れているという勇ましさに溢れていて、昨年メダルを取っているがゆえの余裕なのかなとも感じました。
 来季はいよいよオリンピック。26歳となるワグナー選手にとっては集大成のシーズンになるかもしれませんが、満足のいくシーズンになることを願っています。


 8位はロシアの新星マリア・ソツコワ選手です。

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 まずは得点源の3ルッツ+3トゥループ、これをクリーンに決め、さらに3フリップも完璧で1.2点の加点と上々のスタート。スピンとステップシークエンスを挟んだ後半、最初の3ループをしっかり着氷。続いて3フリップ+1ループ+3サルコウの難しい3連続ジャンプでしたが、ファーストジャンプが2回転となります。その動揺を引きずったのか直後の3ルッツはダウングレード(大幅な回転不足)で転倒。2アクセル+2トゥループは決めますが、最後の単独の2アクセルも乱れ、後半に精彩を欠く内容となりました。得点は122.44点でフリー11位、総合8位とショートから順位を落としました。
 スタミナ面が課題と言われていたソツコワ選手でしたが、その課題が如実に表れたフリー後半となってしまいましたね。また、体力面だけではなく、メンタル面でも一つの失敗の後にどう切り替えて立て直すかというのが今後の課題として残ったのかなと思います。ただ、シニア1年目ということを考えるとこれは当然のことですし、何も焦ったり深刻にとらえたりするものはないので、シニアデビューシーズンに世界の大舞台を経験できたということがオリンピック出場に向けて貴重な財産となったと思いますから、来季はさらに強くなったソツコワ選手を見られることを楽しみにしたいですね。


 11位となったのは日本の樋口新葉選手です。

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 冒頭は大技3ルッツ+3トゥループ、これをパーフェクトに決め1.1点の加点を獲得。続く3ループは着氷が若干乱れますが、最小限のミスにとどめます。次の3サルコウは美しい流れで跳び切りこちらも加点1.1の高評価を得ます。後半1発目は得意の2アクセルをさらりと成功。続いて2つ目の3ルッツ+3トゥループでしたが、力んだのかタイミングが狂い単独の2ルッツに。次の3+2+2もわずかに減点。そして最後の2アクセルに急遽3トゥループを付けてリカバリーしようとしましたが、スピードと跳び上がりが足りずダウングレードで転倒となってしまいます。フィニッシュした樋口選手は悔しそうな表情を浮かべました。得点は122.18点でフリー12位、総合11位で初めての世界選手権を終えました。
 今シーズンの樋口選手はジャンプのパンクが目立ちましたが、今回のフリーも力みから後半の3ルッツが2回転となり予定していた3+3にならなかったのが惜しかったですね。演技中でもいかに自身のメンタルをコントロールできるかが来季の躍進に向けてポイントとなってきそうです。ただ、その中でも最後の2アクセルに3トゥループを付けて1点でも多くの得点を稼ごうとする姿勢からは樋口選手の強い意志がうかがえて、非常に頼もしく感じました。樋口選手にとってシニアデビューの今シーズンは悔しい試合の方が多かったかもしれませんが、全ての経験が来季に繋がっていくと思いますし、シニアの雰囲気や感覚にも慣れたと思うので、シニア2年目となる来季こそ、樋口選手の笑顔がもっともっと増えることを祈っています。


 補欠からの繰り上がり出場となった本郷理華選手は16位となりました。

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 まずは得点源の3フリップ+3トゥループからでしたが、パンクして2フリップの単独となります。しかし続く3サルコウに2トゥループと2ループを付けてすぐにリカバリー。次の3ルッツも正確なエッジでクリーンに決めます。後半はこちらも重要な2アクセル+3トゥループでしたが、勢いが足りず3トゥループは回転不足で着氷でバランスを崩します。直後の3サルコウは危なげなく下りましたが、3フリップ+2トゥループは3フリップが回転不足。そして最後の2アクセルをとっさにより得点の高い3フリップに変更し挑みましたが、こちらも回転し切れずに転倒。ステップシークエンスやコレオシークエンスでは「リバーダンス」の軽快な世界観を元気いっぱいに演じましたが、107.28点でフリー18位、総合16位にとどまりました。
 練習の時からなかなかジャンプが噛み合わなかった本郷選手。それでもベストを尽くそうと笑顔を浮かべながら丁寧にステップをこなしたり、予定を変更してより難しいジャンプに挑戦したりと、最後の最後まで懸命さが伝わってくる滑りでした。今シーズンは足首の怪我もありそもそもコンディションが整わない中で、四大陸、今大会と直前に繰り上がりで出場しなければならない大会が2試合もあり、本当に難しいシチュエーションを強いられたと思います。ですが、こうした経験も決して無駄にはならないと思いますし、本郷選手ならばこの悔しさを糧にしてまた復活してくれると信じています。



 さて、ここからはペアの結果です。

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 優勝したのは中国の隋文静(スイ・ウェンジン)&韓聰(ハン・ツォン)組。まずSPは圧巻の演技で世界歴代2位となるハイスコアを叩き出して首位に立つと、フリーは序盤のソロジャンプで転倒があったものの、そのほかのエレメンツを全て加点1以上のクオリティーの高さで揃える完成度の高い演技でフリーも1位、トータルでも世界歴代2位の得点をマークし、完全優勝を果たしました。
 隋&韓組といえば5月に隋選手が両脚の外科手術を行い、本格的な氷上練習を始めたのは何と年明け以降という急ピッチでの仕上げでしたが、にもかかわらず四大陸選手権でさっそく優勝すると、この世界選手権も勢いのままに初のタイトルを奪取しました。手術から数か月でこのレベルというのが信じられないくらいなのですが、それだけこの大会に懸ける想いが強かったのでしょうし、オリンピック前に何が何でも世界チャンピオンになるんだというオリンピックへの決意の表れでもあったのかなと思います。中国ペアの世界制覇は2010年の龐清(パン・チン)&佟健(トン・ジャン)組以来実に7年ぶり。世界ジュニア選手権を3連覇するなど若い頃から(今も若いですが)世界のトップを争う存在として期待され続けてきたペアですが、2年連続の銀メダルというもう一息という期間を経てとうとう頂点まで到達。このペアの特徴としては男性が170cmとペア選手としては小柄で女性との身長差があまりないということもあり、日本のペアにとっても参考になる部分が多いペアなのではないかとも感じますね。
 オリンピックの前年に世界を制するというのは来季に向けて弾みをつけるという意味でも重要なことですから、この勢いを持って隋&韓組が来季どんなシーズンを送るのか楽しみにしたいと思います。世界選手権初優勝、おめでとうございました。

 2位に入ったのはドイツのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組。SPは大技のスロー3アクセルに挑戦し着氷で大きくバランスを崩しましたがミスらしいミスといえばそのくらいで、ほかをクリーンにまとめて自己ベストの2位につけます。フリーもスロー3アクセルに挑み、着氷で軽く片手が氷に触れたもののほぼ成功に近い形で決め、隋&韓組と0.37点差の2位、総合でも約1点差という超僅差で惜しくも2位となりました。
 何といっても特筆すべきはスロー3アクセルでしょう。シーズン前半のGPではプログラムに取り入れていましたがなかなか成功には至らず。今大会も加点が付く形での成功とはなりませんでしたが、フリーではあともう少しというクオリティーでまとめ、残念ながら金メダルにはわずかに届きませんでしたが、間違いなくオリンピックに繋がる演技になったのではないかと思います。サフチェンコ選手が平昌五輪に出場すれば実に5度目のオリンピックということになりますが、メダル、それも金メダルを取るということになればさらに凄い快挙ですから、ぜひ頑張ってほしいですね。

 3位はロシアのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組。SPはステップシークエンスやリフトなど全ての要素をレベル4でまとめた上、加点の付く質を揃えてパーソナルベストに迫る得点で3位と好発進。フリーは冒頭の大技4ツイストで細かなミスと、終盤のリフトでもレベルが1になるミスがありましたが、そのほかは目立ったミスなく演じ切りフリー4位、総合3位で初表彰台となりました。
 今シーズンはGPファイナル、欧州選手権と主要なタイトルを制し満を持してヘルシンキに乗り込んだタラソワ&モロゾフ組。ショート、フリーともに減点が一つもなかった欧州選手権と比べると細かなミスがあったのは残念でしたが、大きく印象を損なうようなミスはなく今季継続してきた安定感を今回も発揮しましたね。この安定感が来季も続けば、オリンピックのメダルもぐっと近づくと思うので注目したいですね。

 日本の須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組はSP17位で惜しくもフリーに進出できませんでした。

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 SPは冒頭の3ツイストがレベル2にとどまった上、GOEでも減点されるミスがありましたが、その後はミスらしいミスなく演技をまとめ、自己ベストを3点以上更新。しかし17位となり、上位16組が進めるフリーには残念ながら届きませんでした。
 今季の須藤&ブードロー=オデ組は試合に出るたびにパーソナルベストを更新するような状態で、このショートもその目標はクリアできたのですが、惜しむらくはツイストのミスで、ツイストがクリーンに成功していればフリーに進めていた可能性もあるのでもったいなかったですね。ただ、滑るたびに安定感を増し、自信をつけていっているのも間違いないと思うので、今回の経験を来季に活かしてさらなる飛躍を期待したいですね。



 さて、これで世界選手権2017の女子とペアの記事は以上です。ここで今大会の順位によって決まった来年の平昌五輪の国別出場枠(世界選手権の枠を兼ねる)についてまとめたいと思います。


《女子》

3枠:カナダ、ロシア、アメリカ
2枠:日本、イタリア、カザフスタン、韓国

《ペア》

3枠:中国、ロシア、カナダ
2枠:ドイツ、イタリア、フランス、アメリカ



 枠取りの計算方法としては、3人出場している国は上位2人の順位の数字の合計が13以下であれば3枠、14~28であれば2枠、29以上であれば1枠となり、2人出場の国も全く同じ条件となります。1人しか出場していない国は、その1人の順位の数字が11以上だと1枠のまま、3~10だと2枠、2以下だと3枠に増えます。
 女子はフィギュア大国の3国が順当に3枠を獲得しましたが、ロシア、アメリカは別にして、カナダがここまで飛躍することを想像していた人は少ないんじゃないでしょうか。オズモンド、デールマン両選手とも今季は好成績を上げていましたから、3枠を取れる可能性は十分あるという見方は出来ましたが、2、3位という成績でここまで余裕で3枠に繋がるとは予想外でした。
 一方で日本は残念ながらトリノ、バンクーバー、ソチと3大会守ってきた3枠を守りきれませんでした。結果的に見ればやはりエースの宮原知子選手の欠場は痛く、精神的支柱という意味でも初出場の樋口、三原の両選手を引っ張る役目を期待されていたと思うので、そういった存在がいなくなり、シニア1季目の2人と、代役出場の本郷選手ににプレッシャーを背負わせる結果となってしまったのは日本チームの戦略的には失敗ということになりますね。ただ、その中でも3選手ともベストを尽くし、5位と11位で合計16と、3枠獲得までもう少しというところまで粘ってくれて、この経験が若い選手たちの財産になることを願いたいですね。
 そして、イタリア、カザフスタン、韓国はそれぞれ1人のみの出場でしたが、上位に食い込んで見事2枠を獲得しました。イタリアは元世界チャンピオンのコストナー選手を派遣したことで思惑通りとなりましたね。カザフスタン、韓国はエリザベート・トゥルシンバエワ、チェ・ダビン両選手とも年齢的に若く経験も浅い分、枠取りのプレッシャーに押しつぶされてしまうリスクもありましたが、2人ともパーソナルベスト更新という素晴らしい内容で2枠を引き寄せました。特に韓国は母国開催のオリンピックですし、若い選手が台頭してきて国内の競争も激しくなっていることを考えても、何が何でも2枠が欲しいところだったと思うのですが、その重圧を見事に跳ね返しましたね。
 ペアはペア大国の3国が無事に3枠を獲得。ただ、カナダは優勝候補に挙げられていたメーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組が予想外の7位に沈んだことで、6位のリュボーフィ・イリュシェチキナ&ディラン・モスコヴィッチ組と合わせて13ポイントとなり、ギリギリの3枠獲得となりました。
 2枠を獲得した国々も特にサプライズはない順当さだと思いますが、意外だったのはアメリカ。全米チャンピオンのヘイヴン・デニー&ブランドン・フレイジャー組がまさかのミス連発でSP20位でフリー進出を逃したことで、2枠どころか1枠さえ危うい状況になりました。結果的にはフリーに進出したアレクサ・シメカ=クニーリム&クリス・クニーリム組が10位となり、2組の合計ポイントが28(フリーに進出できなかった選手や組は18ポイントで計算されます)という際どいところで2枠を何とかキープ。ある意味ドラマティックな枠取りとなりました。

 オリンピックの枠取りが懸かるということで特別な大会となった今年の世界選手権。女子全体を振り返ると、表彰台に上った3人はミスが少なく210点を超えましたが、4位の選手は200点に届かずという少し差が開いた結果に。昨年は1~5位までが210点台で、6、7位の選手も200点台だったことを考えると、今年はショートとフリーを揃えた選手が昨年より少なかったということが言えそうです。
 ペアは2連覇中のデュハメル&ラドフォード組が7位という波乱があり、勢力図の変化が如実に表れた形に。また、須藤&ブードロー=オデ組が61.70点という自己ベストにもかかわらずフリーに進出できず、昨年はフリー進出ラインとなるSP16位のペアで52点台だったことを思うと、ペアもレベルがどんどん高まっていることを感じさせられましたね。


 さて、次の記事では男子フリーとアイスダンスについて取り上げますので、もう少しお待ちください。


:女子メダリスト3選手のスリーショット写真、ワグナー選手の写真、ペアメダリスト3組の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、ソツコワ選手の写真、須藤&ブードロー=オデ組の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、樋口選手の写真、本郷選手の写真は、デイリースポーツのニュースサイト内の写真特集記事から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2017-04-05 00:17 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 ヘルシンキで行われた世界選手権2017。この記事では女子のフリーについてまとめていきます。なお、女子のショートプログラムについてはこちらをご覧ください。
 女子を2年連続で制したのはロシアのエフゲニア・メドベデワ選手。フリーとトータルの世界歴代最高を更新する会心の演技で2度目の栄冠をつかみました。そして、2位はカナダ女王のケイトリン・オズモンド選手、3位もカナダのガブリエル・デールマン選手とカナダ勢が続きました。
 一方、ペアは中国の隋文静(スイ・ウェンジン)&韓聰(ハン・ツォン)組が初優勝を果たしています。

ISU World Figure Skating Championships 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 金メダルを獲得したのはディフェンディング・チャンピオンのエフゲニア・メドベデワ選手です。

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 冒頭は大技3フリップ+3トゥループ、これを片手を上げて跳びショート同様に完璧に成功させると、続く3ルッツも片手を上げた空中姿勢で高い加点を獲得。中盤のステップシークエンスでは9人のジャッジのうち8人が最高の加点3を与えるという高評価。後半に入っても勢いは全く衰えず、3ループ、3フリップ、2アクセルからの3連続コンビネーションと相次いで成功。そして後半の鍵となる3サルコウ+3トゥループもパーフェクトに着氷。最後の2アクセルも難なくこなすと、ストーリー性豊かなプログラムを最後まで情熱的に演じ切りました。得点は154.40点と自身が持つ世界最高を塗り替え、トータルでも世界最高の233.41点をマークし、圧倒的な大差で2連覇を達成しました。
 メドベデワ選手が連覇するであろうという大会前の予想どおりの展開となったわけですが、多くの人々から予想されていること、つまり期待されていることをそのとおりに成し遂げることほど困難なことはありません。それがなぜメドベデワ選手にはあんなにもさらりといとも簡単にこなせてしまうのか。もちろん日々の練習、努力の賜物であることは間違いありませんが、たとえば10回中1回しか失敗しない選手がいるとして、その1回を練習でするか、本番でするかとでは全く違うもの。メドベデワ選手には試合での並々ならぬ集中力だったり、氷に乗っている時と乗っていない時のメンタルコントロールの違いだったり、完璧を求められるところで完璧を貫き通し、勝つべきところで勝つために必要な何かが備わっているような気がします。
 オリンピックまでは1年を切っていますが、メドベデワ選手がこのまま独走するのか、それを阻む選手が出てくるのか、それはまだわかりません。彼女自身も連覇を達成したからといって微塵も油断はしないでしょうし、来季はさらに自分自身を高めてくるのではないかと思います。今から来季が楽しみですね。世界選手権2連覇、おめでとうございました。


 銀メダルを手にしたのはカナダのベテラン、ケイトリン・オズモンド選手です。

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 まずは得点源の3フリップ+3トゥループを高い跳躍と大きな幅で跳び切って1.4点の加点を得ると、続く2アクセル+3トゥループはセカンドジャンプの着氷でわずかに乱れますがこらえて最小限のミスに抑えます。直後の3ルッツは問題なく下りて上々の前半とします。今季課題となっている後半、最初のジャンプは3ループでしたがパンクして2回転に。しかし次の3フリップはパーフェクトに成功させると、3サルコウ、2+2+2と次々クリーンに着氷。終盤のステップシークエンスではレベルこそ3でしたが、スピード感のあるエネルギッシュな滑りで観客を魅了。演技を終えたオズモンド選手は表情に達成感を漂わせました。得点は自己ベストの142.15点、トータル218.13点で2位となりました。
 フリーの特に後半で崩れるパターンが今季は多かったオズモンド選手。今大会も後半最初の3ループが失敗となっていつもの負のスパイラルに陥ってしまうのかという思いがよぎりましたが、全く引きずることなく演技を立て直しました。今シーズン経験してきた様々な失敗も、昨季までの怪我で苦しんだ日々も、全てがオズモンド選手の肥料となってこの日に繋がったのかなと思いますし、キス&クライでの溢れんばかりの笑顔からいろんな感情が伝わってきて見ているこちらも思わず感慨深くなりましたね。
 今シーズンをステップの1年として、オリンピックが控える来季はさらに飛躍し、オズモンド選手の笑顔が輝くことを願っています。


 3位となったのはこちらもカナダのガブリエル・デールマン選手です。

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 冒頭はショートで極めて高い評価を得た3トゥループ+3トゥループ、これをまたもや完璧に成功させてショートと同じく2.1点の加点を得ます。続く3ルッツ、3フリップも完璧に着氷。後半に入ってもジャンプを全て予定どおりに下り、最後の2アクセルのランディングが多少乱れたほかはミスらしいミスなく滑り切り、フィニッシュしたデールマン選手は歓喜を爆発させました。得点は自己ベストを一気に12点以上更新する141.33点でフリーも3位、総合3位で初めての銅メダルを手にしました。
 今シーズンはぐっと安定感が増して存在感を強めていたデールマン選手ですが、まさか一気に世界の表彰台にまで到達するとは素晴らしい演技を見せた四大陸の後でさえ予想もしませんでした。以前と何が変わったのか、きっかけとなるような出来事があったのかどうかはわかりませんが、何よりもコツコツと積み上げた成果がこの大舞台で結実したということなのでしょうね。
 トップスピードのまま跳び上がってその勢いを殺すことなく下りてくるデールマン選手のジャンプは、見ている方も胸がスッとするような痛快で気持ちの良いジャンプですし、年々磨かれているスケーティングから繰り出される演技面も明らかな成長を感じさせて、日本勢にとってはまた一人恐ろしい選手が覚醒してしまったなという感じですね。世界のメダリストとなったデールマン選手が来シーズンどんな姿を見せてくれるのか、今まで以上にプレッシャーがかかり真価が問われるシーズンになりそうですね。


 4位はアメリカのチャンピオン、カレン・チェン選手です。

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 まずは大技3ルッツ+3トゥループをしっかり回り切って下り1.2点の加点を獲得。続けて3フリップも成功させ最高の形でスタートを切ります。後半に5つのジャンプを固め、最初の2アクセル+1ループ+3サルコウを美しい流れで成功。3ループと3サルコウ+2トゥループもクリーンに下りて波に乗るかに見えましたが、続く3ルッツは回転不足で転倒します。最後の2アクセルも着氷が乱れますが、最後は柔軟性を活かしたしなやかなスパイラルを含むコレオシークエンス、回転速度と美しいポジションが特徴的なレイバックスピンで締めくくり、チェン選手は苦笑いを浮かべました。しかし得点は自己ベストを8点以上更新する129.31点をマークし、総合4位と初めての世界選手権で好成績を収めました。
 終盤でミスが重なってしまったのはもったいなかったですが、そのこともほとんど気にならないくらい演技全体の勢いや雰囲気の良さが印象に残りましたね。今季はショートもフリーもチェン選手の年齢からすると少し背伸びしているのかなという選曲でしたが、それが見事にピタリとハマり彼女の新たな魅力を引き出していて、プログラムの成功とも言えそうです。もちろんそれ以上にチェン選手自身のメンタル面の成長もうかがえて、全米女王として初めて臨んだ四大陸で12位に沈んでから短期間でまるで別人のように仕上げてきたのを見ると、四大陸での失敗があったからこそ一皮剥けて選手としても一段レベルを上げられたのかなと思います。
 アメリカの女子は本当に層が厚いのでチェン選手にとってもまだまだ難しい局面が続くでしょうが、この経験を活かして来季も頑張ってほしいですね。


 5位となったのは日本の新星、三原舞依選手です。

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 まずは得点源の3ルッツ+3トゥループ、これをいつもどおりの軽やかさで成功させて加点1.3を獲得すると、続く3フリップ、2アクセルも危なげなく着氷。後半に入るとますます勢いを増し、2アクセル+3トゥループ、3+2+2と重要なコンビネーションジャンプを相次いで成功。終盤の2つの3回転ジャンプもクリーンにまとめ、フィニッシュした三原選手はガッツポーズで喜びを表しました。得点はパーソナルベストの138.29点でフリー4位、総合5位とショートの15位から大幅に順位を上げました。
 SPは予想外のミスで思いがけず下位に沈んだ三原選手でしたが、元々練習は絶好調だったのでフリーは本来の姿がようやく見られたという感じでしたね。三原選手の今シーズンを振り返ると、まず9月のネーベルホルン杯での優勝から始まって、GPスケートアメリカでの3位、全日本での3位、そして四大陸では日本女子史上4人目の200点超えでの優勝と順調そのもののシーズンを送ってきました。最後にまさかの落とし穴があったわけですが、それさえも自分の力で跳ね除けてさらなる歓喜をつかんだのは素晴らしいとしか言いようがなく、シニア1年目でこの活躍は称賛しかないですね。
 オリンピック出場を目指す来季は今季以上に厳しい戦いを強いられるでしょうが、「滑れる幸せ」を感じながら演じた今回のフリーのように、自身の原点、初心を忘れず三原選手らしさを貫いてほしいなと思います。


 6位に入ったのは元世界女王、イタリアのカロリーナ・コストナー選手です。

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 最初のジャンプは得点源の3トゥループ+3トゥループでしたが、着氷で若干乱れて減点を受けます。続く3フリップ、3ループはクリーンに成功させすぐに立て直します。中盤のステップシークエンスは加点1.7点の高評価で勢いに乗って後半に向かいましたが、3ループからの連続ジャンプは1+2に、2アクセル+1ループ+3サルコウは最後のジャンプが2回転にとミスが重なります。その後は目立ったミスなく深遠な世界観のプログラムを演じ切り130.05点でフリー5位、トータル5位とショートから順位を上げました。
 ショートもフリーも大きくリズムを乱すというようなことはありませんでしたが、多少ブランクの影響もあったのか細かなジャンプのズレを完全には修正し切れなかったのかなという印象を受けます。ただ、ミスがある中でも演技構成点では9点台が普通に出る選手なので、来シーズンもやはり怖い存在だなと思います。今季は復帰戦となった12月のゴールデンスピンからしっかりとした練習の跡というのがうかがえましたし、復帰シーズンだからと焦ったり気負ったりする感じもなくほどよい余裕を漂わせた佇まいで、ベテランならではの強みを感じさせられました。来シーズンはどんなプログラムでどんな演技を見せてくれるのか楽しみにしたいと思います。



 さて、前編はここまで。残りの女子選手とペアについては後編に続きますので、しばらくお待ちください。


:女子メダリスト3選手のスリーショット写真はマルチメディアサイト「Newscom」から、それ以外の写真は全てスポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2017-04-03 01:55 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)