図書館戦争  図書館戦争シリーズ(1) (角川文庫)


※2013年5月21日、注を追記し、引用リンクを追加しました。
※2014年7月10日、ブログ内関連記事のリンクを追加しました。


【あらすじ】
公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まる「メディア良化法」が存在する2019年。不適切な本の取り締まりのためには武力も辞さない「メディア良化隊」と、本と利用者の自由のために自ら武装した図書館組織「図書隊」は、長く抗争を繰り広げていた。そんな中、自分を助けてくれた図書隊員に憧れて図書隊に入隊した主人公笠原郁は、精鋭部隊といわれる図書特殊部隊配属となるが……。




最近実写映画も公開されて再び注目されている『図書館戦争』。それ以前に、本屋大賞に入賞したりアニメ化されたりコミカライズされたりと、小説界では知らぬ人はいないと言ってもいいくらいの人気作である。
かくいう私もだいぶ前からその存在は知っていたものの、手に取ったのはようやく去年のこと。
関心を抱きつつも尻込みしていた。
その理由はアマゾンのレビュー。
「ライトノベル」「恋愛メイン」みたいな評に、どうも一歩踏み出せずにいた。(というのもライトノベル的なものがあまり得意でないので)

で、2012年、初『図書館戦争』。
面白いじゃないか。レビューに踊らされてはいけないなあと反省。

たしかに恋愛小説の色も濃いが、SFとしてのリアリティもしっかりしている。
図書隊員の装備、訓練、図書隊の組織体制、階級といった基本設定の緻密さ。
抗争では図書隊とメディア良化隊の息詰まる攻防が生々しく描かれる。銃火器がぶっ放され血が流れる、まごうことなき“戦争”である。

メディア良化隊の描き方も実にリアル。現実にこういう組織が存在するわけではないのでリアルというのも変かもしれないが、実際に存在していても不思議じゃないなあと思わせる妙な説得力がある。
そう感じられるのは現代日本の延長にこの作品があるからだろう。
wikipediaでは、メディア良化隊の存在理由となっている「メディア良化法」についてこう書かれている。

〈スキャンダルを追いかけることに血道を上げる余りマスメディアが持つ権力監視機能が機能していなかったことと、国民の政治への無関心が、本来なら成立するはずのないこの法律を成立させた背景にある。〉

これって今の日本の状況そのもの?

作者の有川浩さんは、図書館に掲げられている「図書館の自由に関する宣言」から発想を得て、「図書館の自由に関する宣言が一番ありえない状況で適用されたらどうなるか」と考え、この作品を執筆するに至ったそうだ。
抗争にまで発展するかはともかく、国家権力等によるメディアへの表現規制、なんてのは現実にあるわけで、単なるフィクションだといって笑い飛ばせない部分もある。

と、まあお堅いことばかりを書いてしまいましたが、この作品の一番の魅力はハードとソフトのバランスの良さであると思う。
レビューに書かれるところの「ライトノベル」的な軽さがなければ、こんなに面白い小説にはならなかっただろうし、これほど広まりもしなかっただろう。
SFとして楽しむもよし、恋愛小説として楽しむもよし。
私のようにライトノベル慣れしていない人でも、偏見を持たずぜひ手に取ってみて欲しい良作である。


:文章内のwikipediaからの引用部分は、2013年5月15日9時14分更新の版からのものであり、現在は内容が変更されている可能性があります。以下に、私が利用した版のリンクを貼ります。

【引用リンク/参考リンク】
「図書館戦争」(2013年5月15日(水)09:14 UTCの版)『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』 

【ブログ内関連記事】
SF小説・私的10撰 2013年10月6日  有川浩『図書館戦争』を取り上げています。


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# by hitsujigusa | 2013-05-17 16:49 | 小説 | Trackback | Comments(0)