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 世界選手権2017、男子とアイスダンスについての記事の後編です。なお、前編はこちらをご覧ください。

ISU World Figure Skating Championships 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 7位はアメリカのジェイソン・ブラウン選手です。

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 まずはショートには組み込まなかった4トゥループからでしたが、アンダーローテーション(軽度の回転不足)で転倒となります。しかし、次の3アクセル+3トゥループをクリーンに着氷すると、レベル4のスピンとステップシークエンスを挟んだ後半、2本目の3アクセルもパーフェクトに成功。さらに3ルッツ、3+2、2アクセルと中盤のジャンプは全てクリーンで1点以上の加点が付く出来栄え。終盤の3ループがパンクして2回転になりましたが、最後の3ルッツ+1ループ+3サルコウはきれいに着氷。演技を終えたブラウン選手は感極まったように破顔しました。得点は176.42点でフリー7位、総合も7位となりました。
 異次元の4回転ジャンパーたちが優勝争い、メダル争いを繰り広げる中、ショート、フリー合わせて4回転1本という構成で異彩を放ったブラウン選手。4トゥループと3ループの失敗はありましたが、それさえも些細なことに思わせる圧倒的な表現の力、プログラムの力で唯一無二の世界を作り上げましたね。前編の記事でネイサン・チェン選手のフリーの構成について偏っていると指摘したのですが、ブラウン選手も8つのジャンプ要素のうち6つを後半に固めているわけなので偏っているといえば偏っているのですが、ジャンプとジャンプのあいだにつなぎや小技をふんだんに盛り込んだり、スピンを演技全体に均等に配置したりと、ジャンプ以外の部分にも観客の目がいくバランスの良い構成になっていて、ジャンプに注目が集まりがちな最近の男子フィギュア界の中でジャンプ以外のフィギュアスケートの魅力を最も伝えてくれる貴重なスケーターだなと今回改めて感じました。
 4回転が得意ではないブラウン選手が世界のメダル争いに食い込んでいくのは難しいかもしれませんが、今のままのブラウン選手のスケートを追求してどんどんほかの選手にはないオリジナリティーを極めていってほしいなと思います。


 8位はロシアチャンピオンのミハイル・コリヤダ選手です。

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 冒頭は今季からチャレンジしている大技4ルッツ、回転は認定されたものの転倒で初成功とはならず。続く4トゥループはきっちり決めて加点を得ます。しかし直後の3アクセルはタイミングが合わなかったのか抜けて1回転に。次の3+3はクリーンに成功とバラつきの目立つ前半となります。立て直したい後半、まずは3アクセルを今度は完璧に成功。3+1+3は最後のジャンプが2回転に。続いて3ループは問題なく決めますが、最後の2アクセルは若干乱れ、フィニッシュしたコリヤダ選手は納得がいかないというように顔を曇らせました。得点は164.19点でフリー9位、総合8位となりました。
 前半の大技でミスが重なったことによって全体的にリズムに乗りきれなかったという印象の残る演技でしたね。ただ、4ルッツは回り切ってからの転倒でしたし、成功の形も本人には見えているのだろうと思うので、来シーズンに向けて良い収穫になったのではないかと思います。
 今大会はパーソナルベストから10点以上低いスコアで8位とコリヤダ選手自身は消化不良の内容、結果だったかもしれませんが、シーズン全体を俯瞰するとそこまで極端に崩れる試合というのも少なく、何といってもロシア選手権優勝という大きな初タイトルもあり、足元をしっかり固めるシーズンになったのではないでしょうか。来季は4ルッツの成功も含め、さらに飛躍するシーズンになることを期待したいですね。


 19位となったのは日本の田中刑事選手です。

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 まずは得点源の4サルコウ、これをクリーンに着氷します。さらに続けて2本目の4サルコウはしっかり2トゥループを付けて成功させ最高の滑り出しとなります。しかし直後の3アクセルが2回転に。後半に入り最初の3+3は問題なく下りますが、3アクセルは力が入ったのか珍しく回転不足で転倒。残りのジャンプは全て予定どおりにこなしましたが、3アクセルのミスが響いて148.89点でフリー17位、総合19位にとどまりました。
 ショートで失敗した4サルコウをしっかり修正した一方で、今シーズン安定していた3アクセルが1本もクリーンに決まらず、田中選手らしい演技とはなりませんでしたね。単純にこの大会で自己ベストくらいの得点を出せていれば10位には入れていたので残念だなと思うのと同時に、田中選手の実力は19位で終わる選手ではないというのもわかっているので、今大会の演技には少しもどかしさも覚えました。ただ、五輪プレシーズンに世界選手権の雰囲気を経験できたことは貴重な収穫だと思うので、来季は日本男子の第3の男としてさらにベースを底上げするシーズンにしてほしいなと思いますね。



 さて、ここからはアイスダンスです。

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 実に5年ぶりとなる3度目の優勝を果たしたのは、今季競技復帰したカナダのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組です。SDは全てのエレメンツがレベル4という非の打ちどころのない演技で2位に約5点の大差をつけて断トツの首位。FDはサーキュラーステップシークエンスの終わりでモイア選手がバランスを崩して転びかけるというまさかのミスはありましたが、そのほかは全て高いレベルとクオリティーでまとめ自己ベストに近い得点で2位、ショートのリードを守り切って優勝となりました。
 フリーはヴァーチュー&モイア組らしからぬシーンはありましたが、それでも2位という圧倒的な地力の差を見せつけましたね。この結果を見る限り来シーズンもこのカップルを軸に世界のアイスダンス界は回っていきそうですし、二人が引っ張ることによってほかのカップルも追いつけ追い越せとばかりにレベルアップしてくると思うので、そういった意味でもヴァーチュー&モイア組が競技会に戻ってきた意義は大きかったのかなと思います。世界選手権優勝、おめでとうございました。

 銀メダリストとなったのは2015、2016年の世界王者、フランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組。SDはツイズルと2つのステップシークエンスがレベル3にとどまり、1位に点差をつけられての2位。しかしFDはステップは1つレベル3だったものの全体的に完成度の高い演技を披露し、自身が持つ世界最高を上回る119.15点で1位、トータルでは2点差及ばず惜しくも2位となりました。
 ショートで5点というアイスダンスではひっくり返すのが難しい点差をつけられ、ヴァーチュー&モイア組の優勝だろうという大方の予想になりましたが、フリーはディフェンディング・チャンピオンとして意地を見せる演技でしたね。パパダキス&シゼロン組が来季ヴァーチュー&モイア組を上回ってオリンピックチャンピオンになるために鍵となるのはショート。パパダキス&シゼロン組はショートで少し出遅れてフリーで追い上げるというのがパターンが多いので、その鬼門のショートでさらに安定感が増せば、ヴァーチュー&モイア組をもっと脅かせるのではないでしょうか。

 3位はアメリカチャンピオンのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組です。SDは得意のステップシークエンスがレベル2という取りこぼしがあり、アメリカ勢の中でも3番手となる5位と出遅れ。FDも珍しくリフトで時間超過による減点1があり4位でしたが、トータルでは3位で2年連続で表彰台に上がりました。
 圧倒的な技術力を武器とするシブタニ兄妹にしては取りこぼしの多い試合となりましたが、この僅差の接戦を勝ち抜いてメダルを手にした経験は、ある程度余裕を持って2位になった昨年以上の価値があるのではないかと思います。特に今年はショートとフリーが揃わず順位の変動が大きいカップルが例年より多かった中で、ショート5位、フリー4位という不本意な内容でも2年連続で表彰台を死守できたことは、来季に向けて大きなアピールになりますし、大きな意味のある3位なのではないでしょうか。

 日本の村元哉中&クリス・リード組はSD23位で残念ながらFDには進めませんでした。

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 冒頭のパターンダンスは確実に丁寧にこなしましたが、パーシャルステップシークエンスはレベル2どまり。そして終盤のツイズルではリード選手の回転がずれてレベル1になった上GOEでも減点となり、54.68点で23位にとどまりました。
 パーソナルベストの61.10点からはかなり低い得点となってしまい、キス&クライでは言葉を失った村元&リード組。演技全体としては勢いもあって良かったと思うのですが、細かな部分の精密さに欠けてしまったのかなと思いますね。彼らの自己ベストを考えると問題なくフリー進出できると思っていましたし、そのために必死に練習をしてきたと思うので悔しい気持ちは強いでしょうが、この悔しさをバネに来季はさらなる技術の向上と安定感を手に入れて、オリンピックの出場権を獲得してほしいですね。



 男子フリーとアイスダンスの記事は以上ですが、ここで平昌オリンピック(と来年の世界選手権)の国別出場枠をまとめたいと思います。


《男子》

3枠:日本、アメリカ
2枠:カナダ、ロシア、スペイン、中国、イスラエル

《アイスダンス》

3枠:カナダ、アメリカ
2枠:ロシア、イタリア、フランス



 オリンピックと世界選手権の出場枠は、それぞれ国別の出場選手数とその順位によって決められます。
 まず3選手もしくは2選手出場している国は、その上位2選手の順位の数字の合計が13以下であれば3枠獲得。14~28以内であれば2枠、29以上で1枠となります。一方、1選手しか出場していない国は、その1選手が2位以上になれば一気に3枠獲得。3~10位であれば2枠。11位以下だと1枠のままです。
 ということで、男子は日本がワンツーフィニッシュというこれ以上ない最高の形で3枠を確保。そしてアメリカは表彰台も目されていたチェン選手が6位と思ったほど伸びませんでしたが、ブラウン選手が4回転1本のみで踏ん張って7位と、ちょうど13ポイントで見事に3枠を勝ち取りました。
 そして2選手出場で2枠を守ったのはカナダとロシアとスペイン。有力選手がフェルナンデス選手しかいないスペインは別として、カナダとロシアは何とか頑張って3枠を取りたいところだったと思うのですが残念ながら2枠のまま。特にカナダはチャン選手が5位、ケヴィン・レイノルズ選手が9位で14ポイントだったので、本当にあと少しでしたね。
 1選手のみの出場だった中国とイスラエルは上位に食い込んで2枠に増枠。中国は元々2枠が与えられていましたが、出場予定だった閻涵(ヤン・ハン)選手が肩の負傷のため欠場。結果的に金選手一人のみの出場でしたが、全く問題なく余裕で2枠を確保しましたね。そしてイスラエルは唯一の出場のアレクセイ・ビチェンコ選手が10位と2枠に増えるギリギリのラインをクリア。イスラエルが2枠を獲得するのはオリンピック史上初の歴史的な快挙であり、最近のイスラエルはビチェンコ選手のほかにも若手のダニエル・サモヒン選手も台頭してきていますから意味の大きい2枠ですね。
 アイスダンスはアイスダンス大国の北米2国ががっちりと3枠をキープ。一方で同じくアイスダンス大国のロシアは上位2組の合計が15ポイントで惜しいところで3枠を逃しました。5位のエカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組がSD8位と出遅れたのが、FDだけだと3位だっただけにもったいなかったですね。

 今大会全体を振り返ると男子は予想されていたとおり史上最高レベルの戦いとなり、300点を超えたフェルナンデス選手でさえ4位という尋常ではない時代に突入。この過酷な時代を勝ち抜いて勝者となるためには、4回転を数種類跳ぶのは当たり前として、その出来栄えも求められ、また、スピンやステップの些細な取りこぼしでも順位が左右される可能性があり、本当の意味での総合力が必要とされるのかなと思います。難度の高い4回転を何本も跳んでほかの選手に基礎点で優位に立つという方法ももちろんありますが、今やそういったレベルの選手が1人や2人ではなく5人以上いる時代なので、ジャンプの基礎点の足し算で差をつけるだけではなく、その美しさを磨くこともかなり重要になってきそうですね。
 そしてアイスダンスは第一線から退いていたオリンピックチャンピオンが戻ってきたことによって、パパダキス&シゼロン組が頭一つ抜け出ていたここ2年の状況が一転、勢力図が掻き回されておもしろさが増したのではないかと思います。オリンピックシーズンも今季同様もしくはそれ以上に、基礎点でレベル4を取るのは大前提として、GOEをどう稼ぐかという戦いになってくるでしょうね。



 世界選手権2017の記事はこれで終了です。ただ、今年は世界国別対抗戦(ワールド・チーム・トロフィー)も残っていますので、世界選手権に出場した選手たちは連戦で大変でしょうが、怪我のないよう気を付けて今シーズンを有終の美で飾ってほしいと思います。では。


:男子メダリスト3選手のスリーショット写真、田中選手の写真、アイスダンスメダリスト3組の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、ブラウン選手の写真、コリヤダ選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、村元&リード組の写真はフィギュアスケート情報サイト「Absolute Skating」から引用させていただきました。

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# by hitsujigusa | 2017-04-06 18:00 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 フィンランドの首都ヘルシンキで行われた世界選手権2017。この記事では男子のフリーとアイスダンスについてお届けしますが、前編ではまず男子の1~6位までの選手について書いていきます。
 男子を制し2度目の優勝を果たしたのは日本の羽生結弦選手。SP5位からの逆転優勝を狙ったフリーでは自身が持つ世界歴代最高得点を塗り替え、劇的な展開を演出しました。銀メダルを獲得したのは同じく日本の宇野昌磨選手、3位は2年連続で中国の金博洋(ジン・ボーヤン)選手となっています。
 一方、アイスダンスはバンクーバー五輪金メダリストのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組が実に5年ぶり、3度目の優勝となりました。

ISU World Figure Skating Championships 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 SP5位から逆転で金メダルを獲得したのは羽生結弦選手です!

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 冒頭は代名詞の大技4ループ、これをショート同様完璧に決めて全ての審判からプラス2もしくは3の高評価を引き出します。さらに4サルコウも難なく成功。続くスピンとステップシークエンスはきっちりレベル4。3フリップをあっさりと下り、ここから後半。ショートでは失敗に終わった鍵となる4サルコウ+3トゥループでしたが、4サルコウをパーフェクトに下りると綺麗な流れで3トゥループに繋げて2.43点の高加点。次の4トゥループもクリーンに着氷。その後は3アクセルからの連続ジャンプと単独の3ルッツと、羽生選手にとっては簡単なジャンプを全て余裕を持って成功させ、演技を終えた羽生選手に対し嵐のようなスタンディングオベーションと拍手喝采が送られました。得点は世界歴代最高となる223.20点でもちろんフリー1位、総合でも1位となり、2014年以来2度目となる世界タイトルを手にしました。
 ショートでは今季鬼門となっている4サルコウ+3トゥループでのミスに加え、スタートのポジションにつくのが遅れたことによる減点もあり5位にとどまった羽生選手。トップのハビエル・フェルナンデス選手までは約10点差ということで、フェルナンデス選手がミスを連発でもしない限り逆転は難しいだろうとショートの記事の時に書いたのですが、まさにそのとおりの展開となりました。思えば昨年の世界選手権は羽生選手が1位で2位がフェルナンデス選手、2人のあいだには約12点差があったのが、フリーはフェルナンデス選手のキャリアベストの演技と羽生選手の不本意な演技により劇的なフェルナンデス選手2連覇となりましたし、2015年の時も僅差ながら1位羽生選手、2位フェルナンデス選手という順位からフリーでの逆転を許してしまっていて、むしろ追いかける立場となった羽生選手の方に今回は精神的に有利に働いたのかなという気もしますね。
 とはいえ10点差をひっくり返すのはたやすいことではありません。それが成し遂げられたのは、羽生選手の確かな技術と追い詰められれば追い詰められるほど燃えやすい羽生選手の性格によるところが大きいのかなと思います。そう考えるとオリンピックもショート1位よりも2位とか3位の方が良いのかななんて思ってしまいますが、羽生選手本人からしたらショートもフリーも完全無欠の演技が当然の目標でしょうし、昨季のNHK杯、GPファイナルではそうした神がかった演技ができていたわけですから、今後も羽生選手にとっては過去の自分が最大の敵になっていくのかなと思いますね。
 オリンピック前年の世界選手権を制し、最高の形で五輪プレシーズンを締めくくることが出来た羽生選手(まだ国別対抗戦は残っていますが)。とにかく怪我にだけは気をつけて、オリンピック2連覇に向けて頑張ってほしいですね。世界選手権優勝、おめでとうございました。


 2位に入ったのは全日本チャンピオンの宇野昌磨選手です。

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 まずは2月の四大陸選手権から跳び始めた新技4ループ、これをクリーンに回り切って下りて1.43点の加点を得ます。続けてこちらも大技の4フリップを若干着氷でこらえながらもまとめます。次の3ルッツは踏み切りのエッジを気にしすぎたのか、いつもより力の入った跳躍となり着氷でバランスを崩します。後半はまず得意の3アクセル+3トゥループから、これは完璧な流れで満点となる加点3の高評価。続く4トゥループは着氷でわずかにこらえて減点されますが、直後の4トゥループ+2トゥループはクリーンに成功。さらに3アクセル+1ループ+3フリップの高難度3連続ジャンプもパーフェクト。最後の3サルコウも難なく決めると、代名詞の“クリムキン・イーグル”を含むコレオシークエンスでは情熱的な滑りで観客を沸かせ、フィニッシュした宇野選手はショートに続き片手でガッツポーズ。得点は自己ベストかつ世界歴代3位の214.45点でフリーも2位、総合では世界歴代2位のハイスコアで初めての銀メダルを獲得しました。
 1年前はフリーで崩れ大粒の涙をこぼした宇野選手。その借りを返す素晴らしい演技でした。何よりも驚かされるのがジャンプの安定感。すでに宇野選手の代名詞的ジャンプとして定着している4フリップも跳び始めたのは昨年の世界選手権の後で、気分転換でやってみたら成功してしまったという凄いエピソードがありますし、4ループに関しても試合で跳び始めたのは2月の四大陸からにもかかわらずしっかり自分のものにしています。元々ジュニア時代の宇野選手はジャンパーというよりも表現面が注目された選手でしたが、ジュニアラストの14/15シーズンに4トゥループと3アクセルを習得してからはジャンパーとしても安定感、上達の早さは際立っています。また、フリーの演技前には羽生選手の世界最高の演技をモニターで見ていて敵わないと思うことで逆に開き直れたという話もあり、そうしたメンタルコントロールの巧さも銀メダルに繋がったのでしょうね。
 世界選手権から帰国後にははやくも4ルッツの習得に意欲を示していて、個人的にはあまり無理して怪我してほしくないなという老婆心もあるのですが、こうした無限の向上心、攻める姿勢こそが宇野選手らしくもあり、また、彼がここまで技術の進化に貪欲になれるのも同じ国に羽生選手という高い壁であり良いお手本でもある存在からいるからこそで、オリンピック前にこの二人のワンツーフィニッシュが見られたのは本当にうれしいことですね。
 4月20日から始まる世界国別対抗戦(ワールド・チーム・トロフィー)の出場も決まっている宇野選手。去年の4月はチーム・チャレンジ・カップで史上初となる4フリップを成功させたことを考えると、今年の国別対抗戦もまた何か新しいことをやってくるんじゃないかという気もして楽しみですね。


 昨年に続き銅メダリストとなったのは中国のエース、金博洋選手です。

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 冒頭は代名詞の4ルッツをパーフェクトに成功させて2.57点の加点を獲得。さらに4サルコウもスムーズに着氷します。さらに3アクセル+1ループ+3サルコウもクリーンに下りて、前半を最高の形で折り返します。そして後半、まずは4トゥループ+2トゥループをしっかり決めると、続く単独の4トゥループも成功。3+3、3アクセル、3フリップと全てのジャンプを予定どおりにクリアし、スピン、ステップシークエンスも全てレベル4とそつなくまとめ、フィニッシュした金選手は力強いガッツポーズで喜びを露わにしました。得点は204.94点と初めて200点台に乗せてフリー3位、トータルでも自身初の300点台で3位に入りました。
 今シーズンはGP初戦のスケートアメリカこそジャンプ不調で表彰台を逃しましたが、2戦目の中国杯では2位、年明け以降も四大陸、アジア冬季大会と順調に調整を進めて調子を上げつつあった金選手ですが、今大会はショート、フリーともに全てのエレメンツがプラス評価という素晴らしい仕上がりでしたね。演技自体も非常にのびのびと楽しそうに滑っているのが印象的で、今季はネイサン・チェン選手という新たな4ルッツの使い手が登場し脚光を浴びたことで金選手は少し陰に隠れた感がありましたが、それが逆に功を奏したのかもしれません。
 2年連続での銅メダルということで、何か運の良さも感じられる金選手。オリンピックでもメダル候補に挙げられることは間違いないですから、来季も日本勢の手ごわいライバルとして注目ですね。


 惜しくも4位となったのは2015、2016年の世界王者、スペインのハビエル・フェルナンデス選手。

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 SP首位という絶好のポジションでフリーを迎え、まず冒頭の4トゥループをお手本のような流れで決め全てのジャッジが加点3という驚異的な評価を得る最高のスタート。次の4サルコウ+3トゥループは着氷で少し乱れますが、3アクセル+2トゥループはクリーンにまとめます。後半は得意の4サルコウからでしたが、珍しく転倒。次の3アクセル、3ルッツは問題なく下りて立て直したかに見えましたが、その後の3+1+3のファーストジャンプが2回転に、さらに最後の3ループでも着氷ミスと普段失敗しないジャンプでのミスが重なり、演技後フェルナンデス選手は残念そうに肩を落としました。得点は192.14点でフリー6位、トータルでは300点台に乗せましたが3位の金選手にわずかに及ばず表彰台を逃しました。
 世界歴代2位の演技となったショートから一転、フリーはフェルナンデス選手らしからぬ演技で優勝候補がまさかの4位にとどまりました。前半の4+3でちょっとしたミスがありましたがそれだけならまだしも、後半の4サルコウの転倒から終盤の2つのジャンプのミスと、どんどん歯車が噛み合わなくなっていったような印象でしたね。演技前にはすでに羽生選手の得点を知っていたそうなので完璧に滑らなければならないというプレッシャーがあったのかなと想像しますが、フェルナンデス選手のこれまでの優勝というのはSP2位から羽生選手を追いかける立場だったので、SP首位という初経験がいつもとは違う感覚に繋がったのかもしれませんね。
 今までフェルナンデス選手はショート、フリー合わせて2種類の4回転を5本という構成で世界の覇権を争ってきましたが、4回転を3種類、さらには4種類跳ぶ選手がいる現状を考えると、戦略を考え直す必要があるかもしれません。それとも今までどおりの構成でさらに精度を高める方向でいくのか、フェルナンデス選手の逆襲に期待したいですね。


 5位となったのはカナダのベテラン、パトリック・チャン選手です。

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 まずは得点源となる4トゥループ+3トゥループをきっちり決めて2点の加点。さらに今季から取り入れている4サルコウも完璧な跳躍と着氷で加点2.71点と絶好の滑り出しとなります。しかし次の3アクセルは着氷で大きくバランスを崩し減点。2つのスピンを挟んだ後半、1発目のジャンプは4トゥループでしたがこちらも着氷でミス。次の3アクセルはきれいに成功させ、以降のジャンプは全てクリーンに下りましたが、得点源となる大技でのミスが響き、193.03点でフリー5位、総合も5位となりました。
 残念ながら表彰台には届きませんでしたが、チャン選手らしいスケーティング、ジャンプやスピンの質の高さは随所に見られ、世界のトップレベルで戦う力はまだまだ健在であることを示す演技だったと思います。特に今回決めた4サルコウはまるで何年も跳び続けてきたかのような美しさで、このジャンプを手に入れたことはチャン選手にとって構成の幅が広がるという意味でも、26歳にしてまだ伸びしろがあることを証明したという意味でも、来季の大きな武器になるのではないでしょうか。
 フェルナンデス選手同様、下の世代と比べるとジャンプの基礎点ではどうしても劣るチャン選手ですので、2種類の4回転の安定感はもちろん、彼にしかできないスケーティングの世界を極めていくことで、オリンピックのメダルにも繋がっていくのではないかと思いますね。


 6位はアメリカチャンピオンのネイサン・チェン選手です。

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 まずは今季ほとんど失敗がない大技4ルッツでしたが、回転は十分だったもの転倒となります。しかし次の4フリップに急遽2トゥループを付けてリカバリー。さらに続けて2本目の4フリップに挑みきれいに成功させ、直後の4トゥループは着氷でわずかに乱れますが最小限のミスにとどめます。後半はSPで失敗した3アクセル、これをクリーンに下りて良い流れのように見えましたが、次の4サルコウで転倒。続いて6本目の4回転となる4トゥループ+3トゥループに挑戦しましたが着氷で乱れ、最後の3ルッツからの3連続ジャンプも若干減点される出来栄えに。終盤に固めたスピンとステップシークエンスは全てレベル4にまとめましたが、193.39点でフリー4位、総合6位にとどまりました。
 フリーでは何と史上初となる6本の4回転にチャレンジしましたが、そのうち加点が付いたのは2本だけで、転倒も2本と完成度と出来栄えでは劣る内容となりました。ただ、今大会のチェン選手はスケート靴に問題を抱えていたということで、それがなかったらどうなっていたのかというのは気になるところですね。来季チェン選手が4回転を何本入れてくるのかはまだわかりませんが、個人的な要望としては、現在のチェン選手のフリーはほとんどの4回転を前半に跳び、体力がきつくなる終盤に全てのスピンを集めているというかなり偏った構成になっているので、4回転5、6本というのはもちろん素晴らしいのですが、せっかくチェン選手にはバレエで鍛えた美しい身のこなしやフットワークの巧さもあるので、そちらもより活かされたプログラムになることを来季は期待したいですね。



 さて、この記事はここで一旦終了とし、後編に続けます。お手数をおかけしますが、続きは後編でお読みください。


:男子メダリスト3選手のスリーショット写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、羽生選手の写真、金選手の写真、フェルナンデス選手の写真、チャン選手の写真、チェン選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、宇野選手の写真はAFPBB Newsが2017年4月2日の8:55に配信した記事「羽生がFS歴代最高得点で逆転優勝、宇野は銀 世界フィギュア」から引用させていただきました。

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# by hitsujigusa | 2017-04-05 23:49 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 世界選手権2017、女子フリー&ペアの記事の後編です。前編はこちらのリンクからご覧ください。

ISU World Figure Skating Championships 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 女子の7位となったのはアメリカのベテラン、アシュリー・ワグナー選手です。

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 冒頭は得意な2アクセルを難なく成功させ、続いて得点源の3フリップ+3トゥループでしたが、ファーストジャンプの着氷でこらえ気味になりセカンドジャンプは1回転となります。次の2アクセル+2トゥループはクリーンに成功。後半最初は得点源となる3+1+3、確実に決めたいところでしたが最後のジャンプがアンダーローテーション(軽度の回転不足)と判定されます。続く3フリップも同じくアンダーローテーション。3ループはきれいに下りますが、最後の3ルッツは踏み切りのエッジエラーで減点となり、得点は124.50点でフリー10位、総合7位となりました。
 ショートはベテランらしい落ち着きで大きなミスなくまとめたワグナー選手ですが、フリーは鍵を握る3+3のパンクに加え、元々課題だった回転不足も複数あり得点を伸ばし切れませんでしたね。ショートからそうでしたが、今大会のワグナー選手のジャンプは全体的に余裕がなく、余裕がある時のジャンプは高い加点が付くのですが、今回は回り切っていたジャンプでもギリギリのものが多かったので加点を稼げなかったのもスコアを伸ばせなかった要因かなと思います。ただ、フリーの演技後のワグナー選手の放心したような表情は、かつて“The Almost Girl”と呼ばれた時の演技がうまくいかなかった際に見せていた表情とは違って、今回の経験も一つの通過点として潔く受け入れているという勇ましさに溢れていて、昨年メダルを取っているがゆえの余裕なのかなとも感じました。
 来季はいよいよオリンピック。26歳となるワグナー選手にとっては集大成のシーズンになるかもしれませんが、満足のいくシーズンになることを願っています。


 8位はロシアの新星マリア・ソツコワ選手です。

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 まずは得点源の3ルッツ+3トゥループ、これをクリーンに決め、さらに3フリップも完璧で1.2点の加点と上々のスタート。スピンとステップシークエンスを挟んだ後半、最初の3ループをしっかり着氷。続いて3フリップ+1ループ+3サルコウの難しい3連続ジャンプでしたが、ファーストジャンプが2回転となります。その動揺を引きずったのか直後の3ルッツはダウングレード(大幅な回転不足)で転倒。2アクセル+2トゥループは決めますが、最後の単独の2アクセルも乱れ、後半に精彩を欠く内容となりました。得点は122.44点でフリー11位、総合8位とショートから順位を落としました。
 スタミナ面が課題と言われていたソツコワ選手でしたが、その課題が如実に表れたフリー後半となってしまいましたね。また、体力面だけではなく、メンタル面でも一つの失敗の後にどう切り替えて立て直すかというのが今後の課題として残ったのかなと思います。ただ、シニア1年目ということを考えるとこれは当然のことですし、何も焦ったり深刻にとらえたりするものはないので、シニアデビューシーズンに世界の大舞台を経験できたということがオリンピック出場に向けて貴重な財産となったと思いますから、来季はさらに強くなったソツコワ選手を見られることを楽しみにしたいですね。


 11位となったのは日本の樋口新葉選手です。

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 冒頭は大技3ルッツ+3トゥループ、これをパーフェクトに決め1.1点の加点を獲得。続く3ループは着氷が若干乱れますが、最小限のミスにとどめます。次の3サルコウは美しい流れで跳び切りこちらも加点1.1の高評価を得ます。後半1発目は得意の2アクセルをさらりと成功。続いて2つ目の3ルッツ+3トゥループでしたが、力んだのかタイミングが狂い単独の2ルッツに。次の3+2+2もわずかに減点。そして最後の2アクセルに急遽3トゥループを付けてリカバリーしようとしましたが、スピードと跳び上がりが足りずダウングレードで転倒となってしまいます。フィニッシュした樋口選手は悔しそうな表情を浮かべました。得点は122.18点でフリー12位、総合11位で初めての世界選手権を終えました。
 今シーズンの樋口選手はジャンプのパンクが目立ちましたが、今回のフリーも力みから後半の3ルッツが2回転となり予定していた3+3にならなかったのが惜しかったですね。演技中でもいかに自身のメンタルをコントロールできるかが来季の躍進に向けてポイントとなってきそうです。ただ、その中でも最後の2アクセルに3トゥループを付けて1点でも多くの得点を稼ごうとする姿勢からは樋口選手の強い意志がうかがえて、非常に頼もしく感じました。樋口選手にとってシニアデビューの今シーズンは悔しい試合の方が多かったかもしれませんが、全ての経験が来季に繋がっていくと思いますし、シニアの雰囲気や感覚にも慣れたと思うので、シニア2年目となる来季こそ、樋口選手の笑顔がもっともっと増えることを祈っています。


 補欠からの繰り上がり出場となった本郷理華選手は16位となりました。

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 まずは得点源の3フリップ+3トゥループからでしたが、パンクして2フリップの単独となります。しかし続く3サルコウに2トゥループと2ループを付けてすぐにリカバリー。次の3ルッツも正確なエッジでクリーンに決めます。後半はこちらも重要な2アクセル+3トゥループでしたが、勢いが足りず3トゥループは回転不足で着氷でバランスを崩します。直後の3サルコウは危なげなく下りましたが、3フリップ+2トゥループは3フリップが回転不足。そして最後の2アクセルをとっさにより得点の高い3フリップに変更し挑みましたが、こちらも回転し切れずに転倒。ステップシークエンスやコレオシークエンスでは「リバーダンス」の軽快な世界観を元気いっぱいに演じましたが、107.28点でフリー18位、総合16位にとどまりました。
 練習の時からなかなかジャンプが噛み合わなかった本郷選手。それでもベストを尽くそうと笑顔を浮かべながら丁寧にステップをこなしたり、予定を変更してより難しいジャンプに挑戦したりと、最後の最後まで懸命さが伝わってくる滑りでした。今シーズンは足首の怪我もありそもそもコンディションが整わない中で、四大陸、今大会と直前に繰り上がりで出場しなければならない大会が2試合もあり、本当に難しいシチュエーションを強いられたと思います。ですが、こうした経験も決して無駄にはならないと思いますし、本郷選手ならばこの悔しさを糧にしてまた復活してくれると信じています。



 さて、ここからはペアの結果です。

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 優勝したのは中国の隋文静(スイ・ウェンジン)&韓聰(ハン・ツォン)組。まずSPは圧巻の演技で世界歴代2位となるハイスコアを叩き出して首位に立つと、フリーは序盤のソロジャンプで転倒があったものの、そのほかのエレメンツを全て加点1以上のクオリティーの高さで揃える完成度の高い演技でフリーも1位、トータルでも世界歴代2位の得点をマークし、完全優勝を果たしました。
 隋&韓組といえば5月に隋選手が両脚の外科手術を行い、本格的な氷上練習を始めたのは何と年明け以降という急ピッチでの仕上げでしたが、にもかかわらず四大陸選手権でさっそく優勝すると、この世界選手権も勢いのままに初のタイトルを奪取しました。手術から数か月でこのレベルというのが信じられないくらいなのですが、それだけこの大会に懸ける想いが強かったのでしょうし、オリンピック前に何が何でも世界チャンピオンになるんだというオリンピックへの決意の表れでもあったのかなと思います。中国ペアの世界制覇は2010年の龐清(パン・チン)&佟健(トン・ジャン)組以来実に7年ぶり。世界ジュニア選手権を3連覇するなど若い頃から(今も若いですが)世界のトップを争う存在として期待され続けてきたペアですが、2年連続の銀メダルというもう一息という期間を経てとうとう頂点まで到達。このペアの特徴としては男性が170cmとペア選手としては小柄で女性との身長差があまりないということもあり、日本のペアにとっても参考になる部分が多いペアなのではないかとも感じますね。
 オリンピックの前年に世界を制するというのは来季に向けて弾みをつけるという意味でも重要なことですから、この勢いを持って隋&韓組が来季どんなシーズンを送るのか楽しみにしたいと思います。世界選手権初優勝、おめでとうございました。

 2位に入ったのはドイツのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組。SPは大技のスロー3アクセルに挑戦し着氷で大きくバランスを崩しましたがミスらしいミスといえばそのくらいで、ほかをクリーンにまとめて自己ベストの2位につけます。フリーもスロー3アクセルに挑み、着氷で軽く片手が氷に触れたもののほぼ成功に近い形で決め、隋&韓組と0.37点差の2位、総合でも約1点差という超僅差で惜しくも2位となりました。
 何といっても特筆すべきはスロー3アクセルでしょう。シーズン前半のGPではプログラムに取り入れていましたがなかなか成功には至らず。今大会も加点が付く形での成功とはなりませんでしたが、フリーではあともう少しというクオリティーでまとめ、残念ながら金メダルにはわずかに届きませんでしたが、間違いなくオリンピックに繋がる演技になったのではないかと思います。サフチェンコ選手が平昌五輪に出場すれば実に5度目のオリンピックということになりますが、メダル、それも金メダルを取るということになればさらに凄い快挙ですから、ぜひ頑張ってほしいですね。

 3位はロシアのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組。SPはステップシークエンスやリフトなど全ての要素をレベル4でまとめた上、加点の付く質を揃えてパーソナルベストに迫る得点で3位と好発進。フリーは冒頭の大技4ツイストで細かなミスと、終盤のリフトでもレベルが1になるミスがありましたが、そのほかは目立ったミスなく演じ切りフリー4位、総合3位で初表彰台となりました。
 今シーズンはGPファイナル、欧州選手権と主要なタイトルを制し満を持してヘルシンキに乗り込んだタラソワ&モロゾフ組。ショート、フリーともに減点が一つもなかった欧州選手権と比べると細かなミスがあったのは残念でしたが、大きく印象を損なうようなミスはなく今季継続してきた安定感を今回も発揮しましたね。この安定感が来季も続けば、オリンピックのメダルもぐっと近づくと思うので注目したいですね。

 日本の須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組はSP17位で惜しくもフリーに進出できませんでした。

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 SPは冒頭の3ツイストがレベル2にとどまった上、GOEでも減点されるミスがありましたが、その後はミスらしいミスなく演技をまとめ、自己ベストを3点以上更新。しかし17位となり、上位16組が進めるフリーには残念ながら届きませんでした。
 今季の須藤&ブードロー=オデ組は試合に出るたびにパーソナルベストを更新するような状態で、このショートもその目標はクリアできたのですが、惜しむらくはツイストのミスで、ツイストがクリーンに成功していればフリーに進めていた可能性もあるのでもったいなかったですね。ただ、滑るたびに安定感を増し、自信をつけていっているのも間違いないと思うので、今回の経験を来季に活かしてさらなる飛躍を期待したいですね。



 さて、これで世界選手権2017の女子とペアの記事は以上です。ここで今大会の順位によって決まった来年の平昌五輪の国別出場枠(世界選手権の枠を兼ねる)についてまとめたいと思います。


《女子》

3枠:カナダ、ロシア、アメリカ
2枠:日本、イタリア、カザフスタン、韓国

《ペア》

3枠:中国、ロシア、カナダ
2枠:ドイツ、イタリア、フランス、アメリカ



 枠取りの計算方法としては、3人出場している国は上位2人の順位の数字の合計が13以下であれば3枠、14~28であれば2枠、29以上であれば1枠となり、2人出場の国も全く同じ条件となります。1人しか出場していない国は、その1人の順位の数字が11以上だと1枠のまま、3~10だと2枠、2以下だと3枠に増えます。
 女子はフィギュア大国の3国が順当に3枠を獲得しましたが、ロシア、アメリカは別にして、カナダがここまで飛躍することを想像していた人は少ないんじゃないでしょうか。オズモンド、デールマン両選手とも今季は好成績を上げていましたから、3枠を取れる可能性は十分あるという見方は出来ましたが、2、3位という成績でここまで余裕で3枠に繋がるとは予想外でした。
 一方で日本は残念ながらトリノ、バンクーバー、ソチと3大会守ってきた3枠を守りきれませんでした。結果的に見ればやはりエースの宮原知子選手の欠場は痛く、精神的支柱という意味でも初出場の樋口、三原の両選手を引っ張る役目を期待されていたと思うので、そういった存在がいなくなり、シニア1季目の2人と、代役出場の本郷選手ににプレッシャーを背負わせる結果となってしまったのは日本チームの戦略的には失敗ということになりますね。ただ、その中でも3選手ともベストを尽くし、5位と11位で合計16と、3枠獲得までもう少しというところまで粘ってくれて、この経験が若い選手たちの財産になることを願いたいですね。
 そして、イタリア、カザフスタン、韓国はそれぞれ1人のみの出場でしたが、上位に食い込んで見事2枠を獲得しました。イタリアは元世界チャンピオンのコストナー選手を派遣したことで思惑通りとなりましたね。カザフスタン、韓国はエリザベート・トゥルシンバエワ、チェ・ダビン両選手とも年齢的に若く経験も浅い分、枠取りのプレッシャーに押しつぶされてしまうリスクもありましたが、2人ともパーソナルベスト更新という素晴らしい内容で2枠を引き寄せました。特に韓国は母国開催のオリンピックですし、若い選手が台頭してきて国内の競争も激しくなっていることを考えても、何が何でも2枠が欲しいところだったと思うのですが、その重圧を見事に跳ね返しましたね。
 ペアはペア大国の3国が無事に3枠を獲得。ただ、カナダは優勝候補に挙げられていたメーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組が予想外の7位に沈んだことで、6位のリュボーフィ・イリュシェチキナ&ディラン・モスコヴィッチ組と合わせて13ポイントとなり、ギリギリの3枠獲得となりました。
 2枠を獲得した国々も特にサプライズはない順当さだと思いますが、意外だったのはアメリカ。全米チャンピオンのヘイヴン・デニー&ブランドン・フレイジャー組がまさかのミス連発でSP20位でフリー進出を逃したことで、2枠どころか1枠さえ危うい状況になりました。結果的にはフリーに進出したアレクサ・シメカ=クニーリム&クリス・クニーリム組が10位となり、2組の合計ポイントが28(フリーに進出できなかった選手や組は18ポイントで計算されます)という際どいところで2枠を何とかキープ。ある意味ドラマティックな枠取りとなりました。

 オリンピックの枠取りが懸かるということで特別な大会となった今年の世界選手権。女子全体を振り返ると、表彰台に上った3人はミスが少なく210点を超えましたが、4位の選手は200点に届かずという少し差が開いた結果に。昨年は1~5位までが210点台で、6、7位の選手も200点台だったことを考えると、今年はショートとフリーを揃えた選手が昨年より少なかったということが言えそうです。
 ペアは2連覇中のデュハメル&ラドフォード組が7位という波乱があり、勢力図の変化が如実に表れた形に。また、須藤&ブードロー=オデ組が61.70点という自己ベストにもかかわらずフリーに進出できず、昨年はフリー進出ラインとなるSP16位のペアで52点台だったことを思うと、ペアもレベルがどんどん高まっていることを感じさせられましたね。


 さて、次の記事では男子フリーとアイスダンスについて取り上げますので、もう少しお待ちください。


:女子メダリスト3選手のスリーショット写真、ワグナー選手の写真、ペアメダリスト3組の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、ソツコワ選手の写真、須藤&ブードロー=オデ組の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、樋口選手の写真、本郷選手の写真は、デイリースポーツのニュースサイト内の写真特集記事から引用させていただきました。

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# by hitsujigusa | 2017-04-05 00:17 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)